パリ防衛戦線

 ディアボロスは不滅のネイを撃破。パリの機械化を阻止し、パリを自動人形による支配から解放しました。
 この事態に対し、『観測のジョミニ』より情報を得た、断片の王『人形皇帝ナポレオン』は、ブローニュ=シュル=メールに集結した大陸軍から、『オーギュスト・マルモン』率いる軍団をパリ奪還の為に差し向けたのです。
 この圧倒的な大陸軍の進軍を止めなければ、パリは再び大陸軍の制圧下に入ってしまうでしょう。
 敵の行軍の遅滞戦術を駆使して遅らせて敵の前線指揮官を撃破、指揮系統が乱れた所で、軍勢に打撃を与え、パリを護り切ってください。

※特殊ルール1

 この事件が成功せずに攻略期限を迎えた場合、パリは再度自動人形の支配下に戻ります。

※特殊ルール2

選択肢「【🔑】遅滞戦術」を成功させずにシナリオが完結するごとに、この事件の必要成功数が+1されます。

オーギュスト・マルモン

観測のジョミニ

戦乱の都パリ、自動人形の軍勢を斃せ(作者 塩田多弾砲
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#断頭革命グランダルメ  #パリ防衛戦線  #オーギュスト・マルモン  #観測のジョミニ 


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 トップに立つ者は、常にその精神を『研ぎ澄ませる』必要がある。
 が、今回ばかりは、己は『研ぎ澄まされてない』と、疑念をいだいてしまっていた。
「『失陥した』とはどういう事だ! パルマ公国! オーストリア! それだけにとどまらず、パリまでもがなぜ墜ちた! 答えよ!」
「……申し訳、ございません」
 玉座に座るナポレオン。その近くに控える『観測のジョミニ』は、そう答えるのみ。
「……不可能だ。忠勇たる『ダブー』と、『ネイ』。『不敗』『不滅』の力を、報告されただけの戦力で破るなど、常道では『不可能』! だが、それを実現した……なぜだ! なぜ、不可能が可能になったのだ!」
 考え付くのは、我らが敵『ディアボロス』が、『常識外の、情報収集能力』を有しているか。あるいは、『可能性』を識っているか。
『観測のジョミニ』は、それを自身への問いかけと判断したのか、
「……皆目、検討も付きません」
 そう答えた。否、そう答えるしか無かったのだが。
 ナポレオンは、
「…………ジョミニ、もしも奴らが『勝利の可能性』を辿らんとするならば……それを断ちうるのは、『力』以外にない。純然たる力のみが、奴らを、ディアボロスを打ち破る事が出来よう」
 と、己に言い聞かせるように述べ、言い放った。
「命じるッ! 『観測のジョミニ』よ、『オーギュスト・マルモン』とともに、パリ奪還軍を編成せよ! だが、警戒は怠るな! 我らの動きは、ことごとくがディアボロスに見透かされていると知れッ!」
「はっ! 命令のままに!」
 ジョミニは一礼し、執務室を後にする。
「不滅のネイの『仇討ち』! そして『パリ奪還』! そのための『軍勢の編成』は、貴様に任せたぞ。『観測のジョミニ』よ!」
 一人残されたナポレオンは、自身の精神を再び研ぎ澄まさんと、思考し、今後の対策を練り始めた。

「これから、状況についての説明をしたいと思う」
 リュカ・アルページュが、東京新宿駅、グランターミナルにて、君たちに説明を始めた。
「1804年、機械化パリ最終決戦に勝利した事から、ジェネラル級機械人形『不滅のネイ』を撃破。それに伴い、パリの機械化を阻止し、パリの解放を成し遂げた事は、まだ記憶に新しいと思う」
 まさにその通り、『不敗のダブー』に続き、『不滅のネイ』も撃破。これらは、断頭革命グランダルメに大きな打撃を与えたことは想像に難くない。
「しかし、良い事ばかりではない。この状況を打開せんと、断片の王ナポレオンは……行動を開始した」
 具体的には、イギリス対岸『ブローニュ=シュル=メール』に集結した、大陸軍の大軍勢。その中の、ジェネラル級自動人形『オーギュスト・マルモン』元帥の軍団に、パリ奪還を命じたらしい。
「マルモンのパリ奪還軍には、『観測のジョミニ』……かつての『不滅のネイ』の配下も同行している。そしてそいつらは、ディアボロスに対し警戒しつつ、着実にパリへ進軍してきている。ゆえに、こちらも手をこまねいているわけにはいかない」
 今回の作戦内容、それは『《七曜の戦》まで、パリを護り切る事』。
「『遅滞戦術の実行』『敵指揮官の撃破』など、敵軍をパリに接近させない為の『遊撃戦』を行って欲しいのだ」

 では、具体的にこちらはどうやって戦うのか、何をすればいいのか。
 その質問を受けたリュカは、
「今回は『遅滞戦術の実行』をしてもらいたい。可能な限り『敵の行軍速度を低下させる』事が、今回の重要な点と心得てほしい」
 幸いと言うべきか。敵軍の副将『観測のジョミニ』は、パリにおけるディアボロスの活躍を見ており、ディアボロスの事を非常に警戒している。
 しかしこれは、逆に言えば『こちらを注視している』事と同義。ディアボロス側がこれ見よがしに怪しい動きを見せれば、彼らは警戒し、周囲の捜索・探索を行い、その分進軍のスピードを遅くせざるを得ない。……たとえそれが、ブラフであったとしても、あからさまであったとしてもだ。
「ジョミニは、『ディアボロスはブラフを続け、自軍の警戒を疎かにさせる事で、本命の奇襲をしかける、という作戦を取る』と予測している。なので、その心理を利用し、行軍の遅滞を成功させてほしい。その作戦で、敵が周囲を探索すれば、その隙をついて敵前線指揮官の本陣へ潜り込める。そこで指揮官を撃破してもらいたい」
 指揮官の撃破とともに、周囲のトループス級も多く撃破できれば、それに越したことはない。なおの事、今後の戦闘を有利に進める事が出来るだろう。

『行軍する敵の近くで目立つような事をして、注目させる』
『敵がそれを調べに来て、警戒が薄れた隙を突き、敵の懐に潜り込む』
『そして、敵の指揮官と、その周囲の手下どもできるだけ多くぶっ潰す』

「……と、すべき事を平たく言えば、こういう事だ」
 しかし、当然ながら簡単ではない。
「敵軍は、トループス級『コンキスタ・ダイバーカスタム』が敵一般兵として周囲を固めている。空間を『泳ぐ』能力を持つ征服人形で、粒子光線や魚雷、右手に装備した爪を武器とする。まず、探索にはこの人形たちが出張ってくるだろう」
 続き、本陣のアヴァタール級を護衛する、トループス級。
「前線指揮官を護衛するのは、コンキスタの他には、『ヴィエルジュ・キャヴァリエル』。ケンタウロスのような姿の、少女騎兵の自動人形たちだ。統率の取れた動きの集団戦闘を得意として、手にしたマスケット銃での射撃戦を仕掛けてくる。接近戦も同様だ、腰に下げたサーベル、或いは銃に取り付けた銃剣で戦うが……その腕前は馬上の騎士やサムライすらも凌駕するだろう」
 そして、アヴァタール級。この前線指揮官は、処刑する自動人形『慈悲深いメリザンド』。
「見た目は可憐な少女姿の自動人形だ。しかし肩や腰から伸ばす副腕の他、その全身には刃を始めとした武器……あるいは凶器が内蔵されている」
 もとより『罪人を苦痛なく、速やかに処刑する』ための人形ゆえ、人体の急所を熟知しているとの事。多数でかかっても、返り討ちに遭うだろう。

「以上が、内容のあらましだ。このブローニュ=シュル=メールの大陸軍、軍の内容やその総数からして、恐らく『奪還戦レベル』の戦力を集めなければ、対抗は難しいだろう。だからこそ、可能な限り行軍を遅らせ、こちらにも対処するための準備と作戦の時間を稼がなければならない」
 そしてこの作戦が成功したら。パリの防衛のみならず、オーギュストおよびジョミニの撃破の糸口がつかめるかもしれない。
「……《七曜の戦》の開始時に、断頭革命グランダルメの首都であるパリをディアボロスが確保していれば、敵の戦略を大きく制限させる事が出来るだろう。厳しい戦いになる事は予測できるし、簡単にはいかないだろう。だが、簡単な事などこの世には無い。この困難を乗り越え、なんとしても……パリを護りきってほしい」
 何か質問は? 語り終え、リュカは君たちに聞いた。

『戦車』……いわゆる、無限軌道と大砲を供えた『タンク』ではなく、ローマにおける『チャリオッツ』に乗った自動人形の少女は、目前に広がる大地を見て、物思いにふけっていた。
 チャリオッツを引いているのは、馬ではなく、半人半馬の、ケンタウロスのような姿をした少女二人。彼女たちは人でも、人獣でもない。『ヴィエルジュ・キャヴァリエル』の二体が、彼女を……指揮官『慈悲深きメリザンド』を乗せたチャリオッツを引いていたのだ。
『指揮官、報告します。現在全て異常ありません。予定の進軍速度で、パリへと侵攻しております』
 チャリオッツに並走した、『ヴィエルジュ・キャヴァリエル』の一体が、報告していた。
『……周囲の状況は?』
『先行しているヴィエルジュ・キャヴァリエルの一隊および、『コンキスタ・ダイバーカスタム』部隊によると、現時点ではディアボロスらしき存在は確認しておりません。このまま進めば、予定より早くパリへと到着が可能かと』
『……油断をするな。おそらくは、敵はこちらの進軍を把握しているはず。となると……そろそろ何かを仕掛けてきてもおかしくはない』
『……敵が、襲撃してくると?』
『ああ。私が敵の立場ならば、そろそろ仕掛ける……。このまま進めば、バーリー湖付近を通るな? その畔には、廃村があったはずだが』
『はっ。先行隊によれば、現在も無人であるとの事ですが……』
『しかし、我々はその近くを通る。……奴らが潜むにはもってこいだ、可能な限り進軍ルートをそこから離れるように調整せよ』
『よろしいのでありますか? 予定より行軍の時間がかかってしまいますが』
『構わん。距離を置けば、ディアボロスが潜んでいたところで、対処しやすくなるだろう。いいか、やつらはどんな卑怯な作戦を用いるか分からん。周囲を警戒し、怪しいと感じたら、どんなに些細な事でも構わぬ、報告せよ』
『はっ! 命令のままに!』
 そして、キャヴァリエルに対し、
『……いいか。これは「弔い合戦」だ。ネイ元帥の弔いになる、ゆえに……失敗は許されぬ。仮に進軍が遅れたとしても、ディアボロスどもを一人でも処刑できたならば、それは後の我々にとって大きな勝利となる。私も、処刑と言う慈悲を以て、やつらの命を切り刻んでくれよう……他の者たちにもそう伝えよ!』
『はっ! 命令のままに!』
 去っていく彼女を見つめつつ、メリザンドは、
『……必ずだ、必ず……ディアボロスどもを血祭りにあげ、地獄に送り込んでくれる』
 自身に誓うように、呟いていた。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【水源】
1
周囲に、清らかな川の流れを出現させる。この川からは、10秒間に「効果LVトン」の飲用可能な水をくみ上げる事が出来る。
【飛翔】
1
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【未来予測】
2
周囲が、ディアボロスが通常の視界に加えて「効果LV×1秒」先までの未来を同時に見ることのできる世界に変わる。
【強運の加護】
1
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【神速反応】
1
周囲が、ディアボロスの反応速度が上昇する世界に変わる。他の行動を行わず集中している間、反応に必要な時間が「効果LVごとに半減」する。
【罪縛りの鎖】
1
周囲に生き物のように動く「鎖つきの枷」が多数出現する。枷はディアボロスが命じれば指定した通常の生物を捕らえ、「効果LV×2時間」の間、移動と行動を封じる。
【浮遊】
1
周囲が、ディアボロスが浮遊できる世界に変わる。浮遊中は手を繋いだ「効果LV×3体」までの一般人を連れ、空中を歩く程度の速度で移動できる。
【プラチナチケット】
1
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【隔離眼】
1
ディアボロスが、目視した「効果LV×100kg」までの物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)を安全な異空間に隔離可能になる。解除すると、物品は元の場所に戻る。
【トラップ生成】
2
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【光学迷彩】
3
隠れたディアボロスは発見困難という世界法則を発生させる。隠れたディアボロスが環境に合った迷彩模様で覆われ、発見される確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【断末魔動画】
1
原型の残った死体の周囲に、死ぬ直前の「効果LV×1分」に死者が見た情景が動画として表示される世界になる。この映像はディアボロスだけに見える。
【エイティーン】
2
周囲が、ディアボロスが18歳から「18+効果LV」歳までの、任意の年齢の姿に変身出来る世界に変わる。
【活性治癒】
1
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【建造物分解】
1
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。
【水面走行】
1
周囲の水面が凪ぎ、ディアボロスが地上と同様に走行や戦闘を行えるようになる。ディアボロスと手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人も同行可能。
【パラドクス通信】
2
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【通信障害】
2
ディアボロスから「効果LV×1,800m半径内」が、ディアボロスの望まない通信(送受信)が不可能な世界に変わる。
【アイテムポケット】
1
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。
【水中適応】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が水中で呼吸でき、水温や水圧の影響を受けずに会話や活動を行える世界に変わる。
【防衛ライン】
3
戦場が、ディアボロスが地面や床に幅10cm、長さ「効果LV×10m」の白い直線を出現させられる世界に変わる。敵はこの直線を突破できず、上空を飛び越える場合、最低「効果LV」分を要する。直線は戦場で最初に出現した1本のみ有効。

効果2

【能力値アップ】LV4 / 【命中アップ】LV5(最大) / 【ダメージアップ】LV10(最大) / 【ガードアップ】LV1 / 【アクティベイト】LV2 / 【リザレクション】LV1 / 【ドレイン】LV2 / 【アヴォイド】LV1 / 【ダブル】LV1 / 【ロストエナジー】LV1 / 【グロリアス】LV2

●マスターより

塩田多弾砲
 こんにちは、塩田です。
 今回は、『敵の進軍を遅らせる』事が目的です。
 まず、①遅滞戦術(👑7)で、敵の目を引いてください。どのような方法でも構いませんが、敵を注目させて誘い出し、軍勢の足を止めるように行動して下さい。
 ただし今回、敵はかなり用心しており、不用意に接近すると確実にこちらが被害を受けます。調子に乗って敵をあおり過ぎたり、近づき過ぎたりすると、かなりマズい状況になってしまう事を心得て下さい。
 続き、③👾大群のトループス級『コンキスタ・ダイバーカスタム』の一隊が、探索に向かってきます。遅滞させたディアボロス諸氏は、これらの自動人形たちを相手にする事になりますが、『混乱させ、敵軍を遅滞』が重要です。
 敵の探索隊を全滅させるのも良いですが、戦いが長引けば敵の増援が無数に繰り出されてくるため、消耗戦になり、確実にこちらが敗れます。
 なので、一隊を全滅させるか、あるいは敵一隊を可能な限り遠くに引き付けるかした後、それ以上はとどまらず、離脱して敵本陣にむかう事を推奨します。

 最後に、②👾護衛するトループス級『ヴィエルジュ・キャヴァリエル』、および④👿アヴァタール級との決戦『慈悲深いメリザンド』となります。
 ③でダイバーカスタムが探索に赴いている際、逃れて、あるいは別の一隊が向かっていく事になります。ですがこのトループス級は、指揮官の元では統率された集団戦闘を行うため、集団の敵としてはかなり手ごわいものと思ってください。しかも、大陸軍の先兵でもあるので兵の練度もかなり高く、仮に殲滅できたとしても時間をかけ過ぎたら、後方からすぐに援軍が駆けつけてきます。
 しかし逆に言えば、『統率の強さは、指揮系統次第』とも言えます。故にこちら側がそれを利用し、敵を混乱させる事も可能です。
 トループス級、そしてアヴァタール級を倒せばクリアとなりますが、それを実行するためには工夫が必須です。正面から力業でぶつかったら、こちらが確実に『苦戦』し、『致命的な失敗』の確率が大きくなるものと心得て下さい。
 また、この一部隊はあくまでの行軍の一部なので、戦いが終わったら即座に離脱する事も忘れないで下さい。
 ややムズかしい戦術が必要になるかもしれませんが、皆様のご参加をお待ちしています。
75

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


月城・木綿紀
「遅滞戦術……つまり時間稼ぎ」
敵の侵攻方向中心に敵軍を囲むようにパラドクスによる罠ワッペンやキルトラップ、金属糸による簡単な狩猟罠を仕掛けていく。後は軍から少し離れたメンツからランダムで各個撃破で仕留めておく。


マリアラーラ・シルヴァ
復讐者を凄く警戒しつつも
進軍より敵討ちを優先したい
そんな複雑な思いを抱えた指揮官さんなのかな?

なら【水源】で湖から水が溢れ
小川になってしまったかのような仕掛けを
進軍ルートを遮るように作って廃村に隠れるよ

敵の戦術を予想し警戒していると
想定した敵がどんどん強大に思えて来る
そこに湖の水が溢れたかのような小川の跡を発見する

きっと先行隊が調査した廃村が
無人だった事に納得しつつ歓喜するよね
復讐者は湖底に隠れ大掛かりな罠を仕掛けていたのだ!
だがその企み見破ったぞ!って

敵がミスして出した尻尾を掴めたような感覚…
嬉しくて無視できないでしょ?

でも湖底探索させるための部隊再編なんて
凄く時間使っちゃうね
いいのかなー?


草薙・美珠
●目的
進軍してくる敵の注意を引き付けて、警戒させて進軍を遅らせましょう。

●心情
相手は強敵ですが、戦術さえ間違えなければ、指揮官を撃破する機会でもあります。
神様の策に従って、敵を破りましょう。

●行動
神様の立てた作戦通り、敵軍から見える場所で神楽を舞いましょう。
神楽を見れば、敵も注目して警戒するはず。
これこそ、アマテラス作戦です。

……ほんとに、こんな作戦で上手くいくのですか、神様!?

敵軍が偵察部隊を出してきたら、草薙流退魔術・石兵八陣で進軍を阻みましょう。
これで敵軍の足止めができるはずです。

ところで、ここ、どこでしょうか?
自分も迷ってしまったところで、敵にばったり出会わなければいいのですが……


旗楽・清政
ネイ元帥と戦い奪還したからこそ、パリを再度奪われるわけには行かぬ。
されども戦力不足で彼奴等の足を止めるしかないとなれば、
しかとその歩みを鈍らせると致そう。

さて、それがしの遅滞戦術でござるが、ある程度距離を取ったところにて【光学迷彩】で身を隠しつつ、
大音声(【大声】)で「かかれー! かかれー! 彼奴等を討ち果たせ!」と叫び、
「すわ敵襲か!?」と思わせると致そう。
可能であれば、大戦乱群蟲三国志風に銅鑼をジャーン、ジャーンと打ち鳴らしたいところでござるな。
もちろん、叫んだ後は接近される前に場所を移すでござるよ。

それを頃合いを見て幾度か繰り返せば、その都度警戒によって彼奴等の足は止まるでござろう。


アッシュ・シレスティアル
※アドリブ、連携歓迎
今回は自動人形だけ…通りでたゆんセンサーが反応しないわけだ。
まぁ参加するからにはしっかり仕事させてもらうぜ。

【トラップ生成】を発動して地面や物陰にトラップを仕掛けてる振りをしつつ相手が来るのを観察して待機。
トラップは地面に仕掛けて踏むか遠隔操作で起動し派手な爆発音と多めの煙が出るもの。

相手が見えたら慌てた感じで後退しつつ、双銃スコールエリュシオンで
定期的に振り返り相手前方の地面に仕掛けたトラップを撃って起爆し足止めを図る。

【トラップ生成】の範囲以上に離れたら【光学迷彩】で身を隠しつつ、相手が湖の中に目を向けるよう水辺に足跡を残し、そのまま人工川を降って仲間との合流を図る。


伊藤・真九郎
少数にて敵の進軍を遅らせるならばはったりを効かせるが王道か。
身を潜めつつ遠距離から敵軍の動きを観察。【光学迷彩】を拝借する。
【鋼艦砲陣】を使用する。
鋼鉄艦の幻影を現し、砲撃にて攻撃するパラドクス。
これのみでの使用ならば幻影召喚系パラドクスと見破られるやも知れぬ。ならば【水源】を借りる。
自身と敵との間に水を湧かせ、その上に戦艦を召喚。
敵に命中させぬ迫撃にて威嚇した後、幻影を消し撤退。
敵が調べに来たら残るのは湧水。戦闘時は使わぬ残留効果、敵は知らぬ可能性が高い。
「水脈を利用し移動する神出鬼没の戦艦」との疑いを誘う。警戒させるには警戒対象を具体化する事。水場に警戒する様になるのではなかろうか。


●兵は拙速を好む
「…………」
 月城・木綿紀(月城家三女の【裁縫】の魔術師・g00281)は、バーリー湖の畔、廃村となったシャニー村へと赴いていた。
 空は普通に晴れており、周囲に特徴的な物は見られない。薄手の目隠しを通して見ても、取り立てて変わった点は見受けられない。
「……んー、まったく何もないな」
 そう語るは、木綿紀の隣に立つアッシュ・シレスティアル(蒼破拳・g01219)。
(「……何か、考えているようだけど……」)
 敵を、いかにして誘き出すか。その作戦を考えているのだろうか。
 木綿紀のその思惑とは別に、
(「……以前に見た事のある、たゆんなお姉さんの裸の写真集。その背景がこういう感じの田舎の村だった……ような気がする。やっぱ屋外で全裸を晒すのは良き」)
 などと、他者が聞いたら『マジどうでもいい』的な事を考えているアッシュ。
 しかし、
(「さて……それで、どうやって誘き出してやろうか」)
 ちゃんと作戦そのものに関しても、考えてはいた。
 村の入り口、湖を臨む場所では、
「奪還したパリ、それを再度奪われるわけにはいかぬ」
 旗楽・清政(知勇兼備の昼行灯・g08816)と、
「然り。そして此方は、少数にて敵の進軍を遅らせる必要がある」
 伊藤・真九郎(人間の戦国武将・g08505)、日本の戦国武将二人が、話し合っていた。
 大軍に対し、少数で向かう事は自滅以外の何物でも無し。そして今回は、そんな軍の末端の一つと、事を構えねばならない。
「……やはり、『はったりを効かせる』以外にはないか?」
「それが王道であろう、まずは……」
 地の利を活かすため、周囲の調査。
 頷き合った二人は、駆け出した。

「……というわけで、二人は本陣の方へ向かった。そろそろ戻って来るぜ」
 アッシュからそれを聞き、
「わかったの」
 マリアラーラ・シルヴァ(コキュバス・g02935)と、
「はい、わかりました!」
 草薙・美珠(退魔巫女・g03980)は、大きくうなずいていた。
 ここは、廃村を構成する小屋の一つ。元は宿屋か何かだったらしく、広めの部屋の中央に、大き目のテーブルが。
 その上に、即席で書いた周辺の地図を前に、マリアラーラと美珠は作戦を練っていた。
「…………?」
 地図を一瞥し、木綿紀が首をかしげる。表面に書かれている事が、目隠しで少し読みにくかったのだ。
「? ああ、これは、今考えている作戦の概要なの」
 と、マリアラーラがそれに気づき、口を開く。
「……マリアたちの行うべき事を、『整理』するのね。まずは何とかしてこちらに、『慈悲深きメリザンド』の率いる一個大隊を注目させる事が必要なの」
「そのための『方法』は?」
 問いかけた木綿紀だったが、
「……マリアラーラ殿、ただいま戻った」
 そこへ、戦国武将二人が戻って来た。
「お帰りなの。それで……周囲の地形はどうだったの?」
「うむ、それは……」
「それがしが調べたところでは……」
 と、清政と真九郎は、知りえた『周囲の地形』に関し、マリアラーラに報告する。
 それを聞いて、
「……うん、よくわかったの。それじゃ……これから、『作戦』をみんなに伝えるのね」
 マリアラーラは、自身が『整理』し考え出した『作戦』を、それを実行するための『方法』を、仲間たちに語り出した。

「……さて、位置はこの辺で良いでしょうか」
 美珠は木綿紀とともに、マリアラーラが指定した場所に赴いていた。
 そこは、大き目の岩が目印のように転がっている、緩い丘陵の麓。
「……ええ。このあたりで良いと思う。私はこれから、トラップを仕掛けてくるわ」
 頷いた木綿紀は、手にした『ワッペン』とともに、その場を後にしていた。
 それを見送りつつ、美珠は自身のすべき事を脳内で確認する。
「ええと、神様の立てた作戦……間違えなければ、指揮官を撃破する事が出来ますよね」
 その『作戦』とは、
『敵軍から見える場所で、神楽を舞う』。神楽で気を引き、敵軍勢を惹きつけるというもの。
 曰く、「……天照大神が御隠れになった際、アメノウズメノミコトの踊りに気を引かれ、天岩戸を開いた故事と同じ事を行う、これぞ『アマテラス作戦』! 巫女にふさわしい作戦じゃ!」
 ……と、ドヤる顔が浮かぶような感じの神託だった。
 美珠もまた、巫女の端くれ。本職の神事の関係者であるがゆえ、日本神話は一通り覚えており、この神話も学んで知ってはいた。いたが……、
「……ほんとに、こんな作戦で上手くいくのですか?」
 どうにも気になってしまう。何より件の神話では、アメノウズメは踊りの際、
『胸をさらけ出し、裳(当時の女子向け衣類。腰から下に着用していた)の紐を、陰部までおし下げて踊った』
 ……と、伝わっている。
「……『神話通りに行うべきじゃ!』と、服を……いやいやいや、さすがにそこまでは」
 ない事を祈りつつ、マリアラーラからの指示を思い出す美珠。
 美珠自身としては、マリアラーラが立てた戦術の方が、詳細もしっかりしている分、信用がおける……気がしていた。
「本当に、マリアラーラさんはしっかりしてます」
 ドジっ子の自分とは大違い……と言おうとして、思わず口をつぐむ。
 いけないいけない、今から失敗するような事を考えてどうするのですか自分。
 両頬を叩いて気合を入れ直した美珠は、
『神楽』の準備を始めた。

●亀は歩みで、兎を追い越した事がある
『ヴィエルジュ・キャヴァリエル』
 ケンタウロスの少女自動人形たち、先行部隊の彼女たちは、
 困惑の感情とともに、発見した目前の現象の前に立ち止まっていた。
 先行隊の彼女たちは、数体の小部隊として編成され、『コンキスタ・ダイバーカスタム』を数体引き連れている。
『……莫迦な、数日前に偵察した時には、この川は枯れていた! なのになぜ、『水が流れている』!? しかも……『逆流』している!』
 信じられないが、それは事実。
 枯れた河川に、逆流した水の流れがあったのだ。

 そして、この『逆流』を起こした張本人……、
 マリアラーラは、湖に面する場所にて、パラドクスを用いていた。
 マリアラーラの作戦:第一段階。
『進軍先を横断している『水が枯れた河川跡』に、水流を逆流させて注目させる』

「……まず、マリアが『覆水可返(アンドゥホワイル)』を用いて、河川を逆流させるの。川は進行方向を横切る位置にあるし、枯れてるはずの川に水が流れて、しかもそれが逆流してるとなると、どうしても目を引かざるを得ないのね……」

(「どうやら、成功したみたいね」)
 続き、バーリー湖、そしてシャニー村の方へと誘き出さないと。
「……清政、お願いするの!」
 マリアラーラが、仲間へ呟くと、
「……次鋒はそれがし! 任されよ、マリアラーラ殿!」
 遠くで待機していた清政が、それに返答するかのように呟いた。

『クイック! 貴様はすぐに、後方のメリザンド殿へ報告に向かえ! 場合によっては行軍そのものを一時的に中止する必要があると伝えろ!』
『命令のままに! トロット隊長!』
 部下・クイックを向かわせたヴィエルジュの先行隊隊長『トロット』は、コンキスタを下がらせた。
 困惑しているトロットたちへ、
「やあやあ! 遠からん者は音に聞け! 近くば寄って目にも見よ!」
 そのような声が、いきなり響いてきた。
 トロットと部下たちは、銃を構え銃口を向ける。しかし、
『……居ない? どこだ!?』
『わかりません。先刻の声の主らしき存在の姿は、確認できません!』
 見つからなかったのだ。
 トロットは自分も含め、背中合わせに円陣を組み、外へと銃を向けた。コンキスタも身構える。
「……かかれー! かかれー!」
「彼奴等を討ち果たせ! 我らが敵、今こそその首を取らん!」
 姿なき何者かの『声』が、再び響く。どこかからか、『ジャーン! ジャーン!』と、何かの楽器を打ち鳴らす音も聞こえてきた。
『敵襲!? しかし……』
 何者かがこの『声』と『音』を出している事は間違いないが、姿は見えない。
 ヴィエルジュたちは困惑し、浮足立つ。その様子を……、
 さほど遠くない場所から、その声の主……長政は見ていた。

 マリアラーラの作戦:第二段階。
『川の逆流で戸惑ったところを、更にシャニー村へ進むように注目させる』

「……敵は用心してるから、奇妙な状況には立ち止まるはずなのね。そこから、更に目を引くような事を行って、『注目させ続ける』ようにしてほしいの……」

 まずは最初に、清政が『光学迷彩』で自身の姿を消し、襲撃するかのように大声を張り上げた。
 敵の自動人形たちは困惑し、浮足立っている。
「我らの見えない剣は、鋭き刃なり! 貴殿らにはそれをかわす術はなし! 恐怖に震え、うちひしがれるがいい!」
 清政は何度か鬨の声とともに、銅鑼を鳴らしまくり、
(「……そろそろ、潮時でござるか?」)
 頃合いを見て、後退した。後退しつつ、彼は、
「……次は、頼むでござる。アッシュ殿!」
 仲間の名を、呟いていた。

 立ち止まって、周囲を警戒するヴィエルジュたち。
『ダイバーカスタムを、もっと広域に広げて探索するべきか、あるいは周囲を無場別攻撃するか……』
 そう考えていた彼女たちは。その視線の先に、
 アッシュの姿を発見した。

 清政が『声』と『音』とで、湖側へと注目させた。
 それを受け継ぐかのように、アッシュは。あえてその姿を、敵の前に晒し、『何かを仕掛けている』ような作業をしていた。
 そして、視界にヴィエルジュたちを捕えた彼は、その距離を見て取る。まだ距離的にかなり遠い。
(「……来たか?」)
 アッシュは立ち上がり、駆け出した。
『逃がすな! 奴は何かを知っているはずだ! この地形なら、走行速度は我らの方が上……』
 途端に、先方のヴィエルジュが、
『トラップ』を踏んで、爆発に巻き込まれた。
『なっ!?』
「……『トラップ生成』! そして、トラップの発動! 威力はお前らの胸同様に控えめだが、爆発と爆炎は、爆乳サイズだぜ!」
 振り返りつつ、自身の二丁拳銃……『双銃スコールエリュシオン』が更にトラップを狙い撃ち、ヴィエルジュたちを、そしてコンキスタを、その爆発に巻き込んだ。
『隊長! 敵は地雷を埋設していた模様です! 数名の突撃兵が小破!』
『コンキスタも数体が、軽微なダメージを負った模様! 指示を!』
 部下たちの報告を聞き、トロットは、
『全員待機! 煙が晴れるまでその場に留まれ! 奴は間違いなく、我々の敵だ! 発砲及び射殺・破壊も許可する!』
 すぐに指示を下す。
 それに従い、コンキスタが先行。それに続きヴィエルジュが続いた。
 宙を泳ぐように進むコンキスタ・ダイバーカスタムは、踏むタイプのトラップに引っかかりにくい。なのでアッシュがそれを狙い撃つが、発動したトラップの跡を、ヴィエルジュは踏み、進んでくる。
 それどころか、途中からヴィエルジュは、多数のコンキスタにあえて自分から『トラップを踏ませ』、そうする事で『トラップを減らす』という人海戦術を取り始めた。
 爆発と爆炎が吹き上がるが、その中を両者は突っ切ってくる。
『敵の目を惹きつける』。当初のその目的は果たせそうだが、その前に、自分が補足されそうだ。思った以上に、行動や対応が早い。
「……アッシュ殿! 大事ないか?」
「大丈夫だ」
 隠れていた清政の元へと、辿り着くアッシュ。トラップの煙が晴れつつあり、ヴィエルジュとコンキスタの群れが、集まっているのが見えた。
「そちらの『声かけ』と、俺の『トラップ』とで、完全にこちらに注意を向けたようだぜ」
「……現時点では、マリアラーラ殿の目論見通りにことは進んでいるようでござる。しかし……」
「ああ。ちょいとばかし、気になるな」
 二人は隠れ、その場から彼らの様子を見た。
 トロットの命令が、その場に居る二人の耳にも、聞こえてきたのだ。
『……スピーダー!』
 一人のヴィエルジュを、トロットは呼びつける。
『お前は先刻のクイックと同じく、メリザンド殿へ報告に向かえ! 我々はこれから、湖の方を調査に向かう。バーリー湖に、何かが潜んでいるのは確実。それを探り出すと司令官に伝えよ!』
『了解! 命令のままに!』
 トロットの指示に、ヴィエルジュ・キャヴァリエル『スピーダー』は即座に従った。
 それを見て、
「……本当に、気になるでござるな。ここまで……『作戦通り』とは!」
 呟いた清政に、アッシュは同意するように頷いていた。

●遠回りが一番の近道もある
 メリザンド、および彼女が搭乗するチャリオットを中心に広がる、広域部隊中心部。
 先刻の、アッシュのトラップ発動による爆発音は、メリザンドおよび本陣にも届いていた。
『……あれは?』
『詳細は不明。現在あの地点には、トロット先行部隊が偵察に赴いているはずです』
『現在トロット隊長が対処しておりますので、何かあった場合、兵士が報告に来るはずです』
 チャリオットをけん引する、二体のヴィエルジュ・キャヴァリエル、『ナッシャー』『グラインダー』が、それぞれ答えた。
『報告は?』
『まだ来ておりません』
『ふむ……だが、敵が仕掛けてきたとなると、こちらも用心せねば。行軍を一時停止せよ。あれが敵のトラップだとしたら、我々もそれに引っかかるわけにはいかない……』
 メリザンドが、それを言い終わらぬその時、
『緊急報告です!』
 行軍の先端部に居るヴィエルジュの一体が、メリザンドに近づいた。
 先刻にチャリオットに並走していた、本部隊副司令官『ギャロップ』だ。
『何事だ!』
『報告! 部隊先頭の兵士が発見! トロット先行部隊の兵士・クイックと思しきヴィエルジュが、トラップにかかり破損・捕縛状態のところを発見! 本部隊の行軍先に、トラップと思しきものが仕掛けられている可能性あり!』
『行軍、一時停止! 全員その場で待機!』
 ギャロップの報告を聞き、メリザンドは即座に命じた。
『やはり、仕掛けてきたか……クイックはどんな状態だ? あの爆発の詳細は聞いたか?』
『ワッペンらしきものから生じたトラップ、および金属糸による、簡素な狩猟罠にかかった様子です。先行していたトロット部隊より報告に戻る途中で、トラップにかかってしまったとの事です。爆発音に関しては、その前に戻ったために詳細は不明と。本人は中破状態ですが、修理を施し、すぐに復帰は可能です』
『……ふむ、ならば……トロットは仕掛けを行った敵と、既に交戦しているか、新たな罠にかかっているか……クイックから詳細を聞いた後、すぐにこちらからも援軍を向かわせよ』
『了解! 命令のままに!』

「……敵本陣の、進行方向に仕掛けた罠。かかってくれたようだけど……」
 木綿紀は、クイックが、ヴィエルジュ・キャヴァリエルの一体が、自身の仕掛けたトラップに引っかかった様子を確認していた。
『切嵌計略(カッティングストラテジー)』。『ワッペン』を生成し、それを張り付けた場所に、殺傷性のあるトラップを発生させられるという、木綿紀のパラドクス。
 そのワッペンを、彼女はメリザンドたちの進行方向へ貼りつけ、トラップを仕掛けていた。

 マリアラーラの作戦:第三段階。
『敵の本陣にも、その進行方向先に、囲むようにして罠を仕掛けておく』

「……そして、敵の本陣、メリザンドもおそらく用心してるの。だから行軍する先にも罠を仕掛けておいて、湖の方に向かわなかった場合。目を引くようにしておくのね……」

 ……と、彼女が語った作戦内容を思い出す。
「……けど、まだこの程度では、行軍を止めるには弱い。後は……真九郎さんと、草薙さんのパラドクスの出番、だね」
 木綿紀は、静かに呟いた。
 彼女の隣には、
「任せて下さい! 『神楽』の準備は終わりました。後は実際に……舞うのみです!」
 請け合う美珠の姿があった。

 同様に、真九郎もまた、
「そろそろ、それがしの出番か」
『光学迷彩』の効果を拝借し、その姿を隠しつつ、トロットの部隊を遠距離から観察していた。
「拙者たちの手助けは?」
「何かあったら、手伝うぜ?」
 清政とアッシュが、サポートを申しでる。が、
「心配ご無用。お二方はマリアラーラ殿の元へ戻られよ」
 かぶりを振り、真九郎は立ち上がった。

「木綿紀さんは、マリアラーラさんの元に戻っていてください」
「わかった、気を付けて」
 去っていく木綿紀を見届けた後、
 美珠は、正面を向いた。
 その視線の先には、多数の軍勢が……『慈悲深きメリザンド』の部隊を構成する兵士たちが、ヴィエルジュ・キャヴァリエルと、コンキスタ・ダイバーカスタムの群れの姿があった。
(「来ましたね……!」)
 美珠は合掌し、祝詞を口にする。

「……掛けまくも畏き、草薙の大神。
 筑紫の日向の橘の、小門の阿波岐原に禊ぎ祓え給いし生りませる、
 祓戸の大神等。
 諸々の禍事罪穢を、祓い給い清め給えと申す事の由を、
 天津神、国津神、八百万の神等とともに、
 聞食せと畏み畏みも白す……!」

 そして、
 シャン……と、手にした鈴を鳴らし、
 神楽を舞い始めた。

『……副司令官殿、あれを!』
『む……? あれは……東方のシャーマンか?』
 その神楽舞は、
 ギャロップが率いる、ヴィエルジュの一部隊の目に留まった。

 シャン……シャン……、
 神楽鈴……いわゆる『三番叟鈴』を鳴らしつつ、美珠は舞う。
 幸い、アメノウズメのように服はずらさずに、舞い続け、
 そして、
(「!……来ましたね……!」)
 ギャロップらが、ヴィエルジュの部隊が接近するのを知った。
(「彼らが、部隊を出してきたなら……!」)
 それを悟った美珠は、神楽舞を、退魔術へと切り替える。
「……掛まくも畏き、草薙の大神よ、諸々の悪しき敵、禍事罪穢を、惑わし給えと申す事の由を、畏み、畏みも白す……」
『草薙流退魔術・石兵八陣(ロスト・フィールド)』。
 陣により、敵を混乱させ、或いは惑わせる、美珠のパラドクス。
 今回もその効力はいかんなく発揮され、
『副司令官殿! これは一体……!?』
『ばかな! このような荒野の平原で、しかも迷わせる遮蔽物も無い場所だと言うのに! なぜ……「迷う」!』
 ヴィエルジュの部隊は、浮足立ち、迷っていた。超常的な、神々の力による『迷い』『惑わせる』ための退魔術。そう簡単には破れない。
「……マリアラーラさんの作戦通り、です! これで、敵の本陣はこのまま、真っすぐ行軍する事はできませんね!」
 そして、美珠は成功を確信していた。

 マリアラーラの作戦:第四段階。
『当初の進軍する方向には、予定通りに進む事は困難だという事を知らしめる』

「……普通に進んでも進めないという事を、相手に知らしめるの。そうすれば、その根本的原因が、湖側に……逆流した水流の源にあるものだと、敵は判断するのね……」

「……うまく、いきました! 敵は後退していきます!」
 あとは、自分もマリアラーラの元に戻るだけ。しかし……、
「……ところで、ここ、どこですかっ!?」
 この『石兵八陣』には一つ欠点があった。強力な分、術者本人である美珠もまた、例外なく迷ってしまうのだ。
「いえっ! いくら私でも、こんな何もないところで迷うなんて、おばかさんな事はしません! ……えっと、皆さんの居る方角は……どちらでしたっけ?」
 かくして美珠は。
「す、すぐに戻ってみせます! ええと……あれ? こっち……でしたよね? ……ひゃあっ! 木綿紀さんのワッペン踏んじゃいましたっ!」
 遮蔽物も、目印も無い荒れ地の平原を、何故かあっちこっち進みつつ迷うのであった。

●早いか遅いかは、その状況により異なる
 部隊本陣。メリザンドのチャリオット待機地点。
『……ギャロップ、それは確かか?』
 メリザンドは、迷いつつもなんとか帰還したギャロップより、事の次第を聞いていた。
『はっ! 敵は何らかの手段で、幻覚、もしくは認識障害を発生させる事が可能です。我々はそれにより判断能力に支障をきたし、報告するために退却しました!』
『…………やはりな。先刻にトロット隊から戻った、クイック、そしてスピーダーの報告からして、何やら湖側に「何か」がいるらしい事は判明したが』
『……メリザンド司令官、いかがいたしましょうか? 湖に、あるいは畔の廃村に、復讐者どもが潜んでいる事は間違いないでしょうが、そやつらを相手にしていたら、パリに到着する予定時間が遅れます』
 ギャロップ副司令官の言う事は正しい。
『……しかし……トロットがまだ帰還していないのが気になる……』
『司令官。行軍ルートを変更し、パリへの到着を優先すべきでは? おそらく敵の規模はそれほどではないはず、少数の工作員でもなければ、直接攻撃を仕掛けてくるはずです』
『うむ……ならば、トロットに連絡員を送り、戻るように命令を……ん?』
 メリザンドの視線が、湖方面へと向けられた。
 トロットの部隊が、帰還してきたのだ。

 スピーダーを向かわせた後、トロットたちはすぐに湖へと向かっていた。
 トラップはまだいくつか残っていた。ワッペンのトラップや、アッシュが仕掛けたトラップが発動したが、コンキスタ・ダイバーカスタムを先行させていたために被害は軽微だった。
 だが、あらたに踏んだトラップの爆炎と煙を抜いて、バーリー湖と、シャニ―村が見えた地点に到着すると、
 いきなりの号砲と、着弾音が。煙が未だに周囲を取り巻き、視界が効かない。
『全体止まれ! 大砲と思しき砲撃音を確認した。警戒せよ!』
 やがて、煙が晴れてくると、
 トロットは、目前の地面に見た。いきなり、『水が湧きだした』のを。
『全体止まれ! ……いったい、これは?』
『幻影ではありません、本物の水のようです!』
 湧きだした水は、大量に吹き出し、目前に巨大な水たまりを作り出した。
 空には、先刻のトラップから放たれた煙が広がっている。
 その煙を割って、
『あれは……なんだ!? 戦艦だと!?』
 驚愕するトロットの目前に、巨大な鋼鉄の『戦艦』が出現し、着水したのだ。
 その鋼鉄の戦艦は、いくつも砲塔を兼ね備え、それらを旋回し……トロットたちヴィエルジェへと狙いを付ける。
『おのれ! 全体、構え! 撃てーっ!』
 トロットを始めとする、ヴィエルジェ全員が銃を構え発砲、コンキスタも魚雷を発射する。
 が、それらは効果なし。
 戦艦の方も、砲撃を繰り返す。まるで咆哮し威嚇する猛獣のように数度、砲撃すると……、
 戦艦はそのまま、消えていった。
『くっ……なんと面妖な……』
 幻影だろうか? いや、幻影にしてはあまりに迫真があり過ぎた。なにより、目前にいきなり湧いた『水』は本物。
『……コンキスタの分析は……先刻の、逆流する川の水と同じく、『本物』か……』
 一体、何者か。水源や水脈を、自在に移動できる新兵器の戦艦なのだろうか。幻影か、それとも実体があるのか……。
『……判断が付きかねる。いったん戻り、メリザンド殿に指示を仰ぐ!』
 トロットたちは、混乱しつつ……踵を返した。

「……ふむ」
 ヴィエルジェたちが戻っていったのを見て、真九郎が姿を現した。
「『鋼艦砲陣(コウカンホウジン)』 戦艦の幻影を呼び出すそれがしのパラドクス、うまくいったようでござるな」

 マリアラーラの作戦:第五段階。
『湖に向かう部隊に対し、パラドクスで幻影を見せて、疑いを確信させる』

「……湖に向かう部隊に対して、決定打とも言えるほどインパクトがある幻影を見せて、目を離せなくするの。そして、疑わせて、警戒させれば……シャニー村には、強大な敵がいると思えてくるの……」

「アッシュ殿と清政殿は、マリアラーラ殿の元に戻った様子。敵の注意も……こちらに向けられたならば……あとは実際に、交戦するのみ」
 敵がこちらの意図通りに、向かって来るかどうかはまだわからない。だが……これだけ派手に幻影を見せたなら、そして行軍ルート先にも罠が仕掛けられているのなら、こちらを無視することはないだろう。
 あとは、神のみぞ知る。自分もマリアラーラの、仲間たちのもとへと戻り、次に備えねば。
「いざ!」
 大きな水たまりを一瞥し、真九郎は戻っていった。

『……トロット、それは真か?』
『はっ。あれは幻影である可能性もありますが、仮に幻影だったとしても……あれだけの仕掛けを行う何者かが居るのは事実。放置するのは危険と判断します』
 メリザンドの元に戻ったトロットは、彼女へそう報告していた。
『……クイックも、何かしらの罠にかかった。ギャロップも、道を惑わせる何らかの術にかかった……改めて同じ状況に陥った時、同時に攻撃されたなら……被害は免れんな』
 メリザンドは、僅かな時間を用いて思考し、
『全員に通達! 我々メリザンド大隊は、これより行軍を一時中止し、バーリー湖畔・シャニー村へと向かう! 全員戦闘準備! 攻撃目標は、村に潜伏していると思われる復讐者! コンキスタ・ダイバーカスタムを先行させよ!』
 ……覚悟を決めたかのように、言い放った。
『了解! 命令のままに! 全体……整列! 進め!』
 ギャロップが、新たに命じる。
『了解! トロット隊、先行します! クイック、スピーダー、続け!』
『『了解!』』
 ケンタウロス型の自動人形、ヴィエルジェ・キャヴァリエルたちは、
 メリザンド、およびナッシャー、グラインダーの、ヴィエルジェ二体の引くチャリオットとともに、進みだした。

「みんな、お疲れ様なの」
 そして、シャニー村、湖の畔では。
 アッシュに清政、真九郎に木綿紀が、マリアラーラの元へと戻っていた。
「ここまでは、こちらの作戦通りなの。けど……ここからが本番だから……改めてみんな、よろしくなの」
 マリアラーラは皆を労いつつ、次なる作戦へと気を新たにした。
 しかし、木綿紀は、
「……あの、美珠さんは?」
 約一名が、戻っていない事に気付いた。

「……す、すみませんー! 今戻りましたー!」
 その直後に、迷いつつも戻って来た美珠だった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【未来予測】LV1が発生!
【水源】LV1が発生!
【防衛ライン】LV1が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【水中適応】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV3が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!

ユヴィ・レリオ
さて…敵を翻弄?
お前らのは只の隠れんぼ…遊びだ

基本攻撃は残像剣で
【未来予測】を使用し【トラップ生成】で罠をしかけ

【光学迷彩】【神速反応】で残像を沢山作り本体を攻撃をする

仲間の位置は常に把握見方の攻撃の邪魔に成らないよう注意

自分の怪我は一切厭わず積極的に行動し判断は遅れないよう

可能なら一隊を全滅
厳しいなら目的地と逆へ残像を残しながら誘う様に引っ張るか

任せられるようなら残像を使い
【光学迷彩】で隠れ次の戦地へ援護に向かう

口調
武器を手にすると無機質な殺戮兵器
私、呼び捨て、言い捨て

感情欠落しているので感情抜きで状況を的確に見極をする

他のディアボロスに迷惑をかける行為はしません

アドリブ、合わせ歓迎です。


アッシュ・シレスティアル
※アドリブ、連携歓迎
水中戦になんなくて良かったぜ…。
そんでもって先遣隊はどのぐらいくるかな。

村の入口の外側から入り口がギリギリ見える位置で【光学迷彩】使って隠れつつ先遣隊の個体数を観測する。
よほど少なければ全撃破も視野に入れるが、先遣隊が村内に入りきったら入口に【防衛ライン】を引いたら双刃ヴァルディールを持ち、展開したであろう先遣隊の一部にバックアタックを仕掛ける。

時間経過もしくはある程度撃破出来た辺りで戦線離脱に移行。
【トラップ生成】で先ほどと同じトラップを生成、起爆で追手をばらけさせつつ迫ってきた相手は攻撃して数を減らし、建物なども利用して追手を撒き【光学迷彩】で移動する。


天ヶ瀬・月兎
★アドリブ&連携歓迎
ユヴィと協戦します。

手は抜かねぇよ?
攻撃される前に叩き潰して動作不良にしたる!!
手にした武器にオーラ操作でオーラを纏わせて強化。

フルスイングの強打・粉砕・破壊を載せた悪鬼粉砕撃を叩き込みます。

戦闘時に感情が抜け落ちるユヴィを十二分に理解しているので
無理しすぎないようにサポートに回ります。


草薙・美珠
●目的
想定通り、敵はシャニー村に向かってきています。
先行してくる空間を泳ぐ妖魔を混乱させて進軍を止めている間に、敵将の元に向かいましょう。

●準備
妖魔は空間を泳ぐ能力を持っているようです。
開けた場所で戦うのは、機動力的に不利ですので、
廃村の廃屋に潜んで妖魔が向かってくるのを待ち受けます。
【トラップ生成】で村中の廃屋の中に罠を仕掛けておきましょう。

●行動
妖魔が狭い廃屋に入って罠にかかったら行動開始です。
罠で混乱しているところに、さらに【封魔の鎖】を使用して動きを封じます。
廃屋内の罠と【封魔の鎖】による鎖で行動を制限している間に、敵将の元に向かいます。

●代償
ですが、私も鎖に囚われて身動きが……


月城・木綿紀
「どうするかな……」
とりあえず、自分が担当する範囲は【トラップ生成】で地面一帯をトランポリン以上に跳ねる床に変える。
これで敵の体勢を崩せるし、進行を阻める。
後は自分がパラドクスと【トラップ生成】による触れたモノを弾く板を空中に展開することで足場にして機動力を確保、飛び杼を使って各個撃破で片付けていく


旗楽・清政
この数を相手に無闇に戦っても呑み込まれてしまうのみ。
では如何するかでござるが、御味方はトラップを仕掛けたり
迂回して回り込んだりする様子。
それと、ネイ元帥の弔いに前のめりになっておる敵将の心情を考えるならば、
それがしは御味方の動きを悟られぬよう、囮となると致そうか。

「何と言う大軍でござるか! これは敵わぬ!」
御味方の策が待ち受ける場所の先にて、彼奴等の数を見て怖じ気づき逃れる演技をして、
御味方が策を仕掛けている位置へと誘導するでござる。

囮が功を奏して彼奴等が御味方の策にハマったならば、東南の風で反転攻勢。
ある程度敵が混乱したならば、此処を離脱して、大将首を狙いに行くと致そう。


マリアラーラ・シルヴァ
皆のお陰で虚実織り交ぜる敵だって
ベーダ達に強く印象付けれたよ
そして「弔い合戦」…

なら不滅な元帥で
皆が認める勇者なお兄ちゃんに
パラドクスで来てもらうね

湖の真ん中でホバリングするお兄ちゃんは
直接刃を交えた仲間から聞いた特徴も備え
本物より本物らしい存在感を放ってくれるよ

幻だとしても幻であってほしくない
そもそも不滅が滅するわけがない
だがあの勇者の剣は何故我らに向けられている
そんな願望と混乱をベーダに抱かせられれば
きっと敵軍のほとんどは湖に惹き付けられる

そうすれば村側を担当する少数のベーダを倒すだけで
お兄ちゃんを幻と看破しつつも指揮系統を掌握し直そうと躍起になってる指揮官達に
肉薄できるんじゃないかなって


伊藤・真九郎
アドリブ、連携歓迎致す。

誘い込まれてくれたか。
さて、釣り野伏と参ろう。

【パラドクス通信】で仲間と連絡を取れる様にしておく。
【トラップ作成】による罠地帯へ誘い込み、伏兵で仕留める。
先行部隊の任務が偵察である以上、怪しい挙動を探らぬ訳にはいくまい。
【紫電流疾走】使用。大小二振りの太刀を擦り合わせ「電撃使い」、刀身に雷を纏わせる。
轟く雷鳴と眩い電光で離れた敵の気を引き、罠へと誘い込む。動きを止めた処へ突入、斬り払ってゆく。
このパラドクスの肝要は雷の刃ではなく、高速移動術。雷速の「ダッシュ」で戦場を駆け巡り撹乱。
逃走による誘導で更なる罠地帯へと誘い込み、仲間の攻撃の間合いへと連れ込んでゆく。


●水中のように、空中を泳ぐ者たち
 シャニー村。
 同・元宿屋の、ディアボロスたちの臨時作戦室。
 新たな二人の仲間が加えたディアボロスたちの、目下の目的。それは、自動人形『コンキスタ・ダイバーカスタム』の迎撃。
「さて……で? オレたちはナニすればええんや?」
「…………」
 新たに駆けつけてくれた、二人のディアボロス。そんな二人の男女と相対し、
「今、伝えるの。ええと……」
 マリアラーラ・シルヴァ(コキュバス・g02935)が自己紹介しようとするが、
「ああ、挨拶はいらんで? オレは天ヶ瀬・月兎(鬼狩兎・g09722)。こいつが……」
「…………」
「ユヴィ・レリオ(幸せを探して・g09587)。普段は違うんやけど、今は『戦闘中』やからな。ちょいと感情がクールになっててアレやけど、気にせんといてな?」
「ああ、気にしないぜ。頼りになりそうなネコっ子ならば、俺は大歓迎だ」
 アッシュ・シレスティアル(蒼破拳・g01219)は、
 マリアラーラ、それに月城・木綿紀(月城家三女の【裁縫】の魔術師・g00281)と草薙・美珠(退魔巫女・g03980)の方をちらりと見て、
「それに露出度多めで、たゆんっぽいのがまたいい。なにせこちらに居る女性陣は、たゆんに程遠いお子様もしくは断崖絶壁ばかりだからな。目の保養になるってもんだ」
……などと言いかけたが、即座に引っ込めた。
(「昨今のコンプライアンス的にも、失言しないようにしなくっちゃあな。自重しろ、俺」)
「? ……ともかく、マリアラーラさん。私達はどうすれば?」
 アッシュになぜか不穏な何かを感じつつ、美珠が訊ねる。
「そうね。まずは……『パラドクス通信』で、仲間と連絡を取れるようにしてほしいの」
「うむ、心得た」
 請け合うは、伊藤・真九郎(人間の戦国武将・g08505)。
「囮役が必要ならば、それがしが承ろう」
 もう一人の武将、旗楽・清政(知勇兼備の昼行灯・g08816)が進み出る。
「ありがとうなの。それじゃ……」
 と、マリアラーラは作戦内容を説明し始めた。

 メリザンド大隊。
 同、中心部。
『メリザンド司令官。トロット率いる先行隊は、あと数分で敵が生じさせた、湖手前の水たまりに到着します』
『うむ……だが、ギャロップ副指令。こちらも決して油断をするな』
『はっ、敵は必ず……攻撃する際に、幻覚やそれに類した攻撃を行って来る事を想定し、全部隊にそれを徹底しております。トラップ関連も含め、用心してはおりますが……』
『わかっている。やつらは少数だが、全員かなりのやり手だ。特に、司令官はな。トラップももちろんだが、『幻影』、もしくはそれに伴う混乱を生じさせることだろう』
 とはいえ……と、メリザンドはほくそ笑んだ。
『……敵の作戦に『あえて』乗る事も、また一興かもしれん』
 見抜いたがゆえの、笑み。
 メリザンドの表情から、ギャロップはそんな感情めいたものを感じ取っていた。

 バーリー湖手前。巨大な『水たまり』。
 池や沼ほどの大きさではあるが、迂回できる程度の大きさのそこは、
 少し前に、トロットたちが交戦し、撤退した場所。
『全体止まれ! 周囲に警戒! コンキスタ・ダイバーカスタムを先行させよ!』
 トロットは先行隊を止め、周囲を見回した。
『……司令官と、ギャロップ副司令からの命令通り……これを迂回して進み、村へとたどり着かねばなるまいが……』
 もう、先刻のような失敗はしない。そして、先刻のような敵が出てきたとて、容赦もしない。
 しかし、ただ突進するだけのような事もしない。ギャロップからは、色々と言われていた。そして、トロット自身も、
『……そうやすやすと、敵の策に引っかかりはしない』
 その事を、充分心得ていた。
『……何者かは知らぬが、我らに戦いを挑んだならば……』
『……相応の報いを受けさせてやる。覚悟しておけ』
 クイックとスピーダーもまた、トロットとともに……にやりと、笑みを浮かべていた。

●泳ぎつつ、切り付ける者たち
『コンキスタ・ダイバーカスタム』
 それらの自動人形は、『首と腰に多くの歯車を装着したマネキン』といった姿をしていた。右腕には大きな爪を持つ籠手が装着され、左腕よりも一回り大きい。
 その体内には、大砲および魚雷発射管が内蔵されており……遠近両用で対処が可能。整列しつつ、巨大な水たまりを臨む場所で待機していた。
『全体を三分の一ずつに分ける!』
 待機しているそれらに、トロットが後方より命令を下した。
『A分隊とB分隊は、それぞれこの水たまりを左右から回避しつつ進め! C分隊はこのまま水中に入りこみ、直進せよ! 全体、進め!』
 命令通りに、コンキスタは三方向から再び進軍を開始した。
 C分隊は水たまりにそのまま入り、首と腰の歯車をスクリューのように回転させつつ水中を進む。
 水たまりの左側からはA分隊、右側からはB分隊が進んでいた。トロットが率いるヴィエルジュの先行部隊は、A分隊の後ろからついてくる。
 その数は、かなり多い。少なくとも……相手をするにはかなりの手勢が必要だろう。
『……あれが廃村、シャニー村か……あの中に?』
 が、人影は見当たらない。
『A分隊は、これよりシャニー村に攻め込む! トラップに用心しつつ進め!』
 トロットは突撃をかけた。

「……どうやら、敵さんのお出ましだ」
 シャニー村、入り口。
 光学迷彩でその姿を隠していたアッシュは、その数を認めた。
「ちっ。思った以上にいやがるな。これはちょっとばかし……骨が折れそうだ」
 迫り来るは、コンキスタ・ダイバーカスタムの群れ。その数は……正直数えたくないほど。
 トラップを警戒しているらしく、周囲を注意深く探索している。
「アッシュさん、それでは……作戦通りに」
 美珠に声をかけられ、アッシュは頷く。
「ああ。やるしかないな!」
 言いつつ、敵が来るのを待ち構えた。
 その視線の先には、コンキスタ・ダイバーカスタムの異様な姿があった。

『水たまり』、右側。
 そちらは、二体のヴィエルジュ・キャヴァリエル。トロットの部下であるクイックとスピーダーが指揮を担当していた。
『進め! もたもたするな! 奴らは何かしらの罠を仕掛けているはず!』
『トラップに警戒しつつ、大きく回り込んで村に進め!』
 が、そこに、
「おお、何という大軍でござるか! これは敵わぬ!」
 わざと大仰に、そして目立つような声を張り上げつつ、
 清政が、彼女らの前に姿を現していた。
『! 敵か!』
 クイックが銃を構え、即座に発砲。
『待て! あの緑の鎧を着た奴を追え! 情報を吐かせるんだ! 行け、コンキスタ!』
 スピーダーは制止し、自動人形たちを向かわせた。
「あな恐ろしや、退散いたす!」
 できるだけ情けない声を上げ、怖気づいたように見せかけ、逃れていく清政。
(「……このまま敵軍を、罠を仕掛けた場所まで誘導できれば……!」)
 マリアラーラから授かった作戦では、自身は恐れをなして逃げ出し、敵を誘導する……という役割を受けた。
 戦って負ける気はしないが、何分相手が多すぎる。故に……、このような作戦は必要不可欠。
『あの臆病者を追撃せよ! コンキスタ、行け!』
 と、コンキスタ・ダイバーカスタムを追わせるスピーダー。
(「よし! 作戦通り!」)
 敵の自動人形の群れは、不気味な動きとともに、
 清政に誘導されていった。

 数刻前。
 マリアラーラは、先刻同様に皆へと指示していた。
 アッシュと美珠。
「二人は、シャニー村の入り口で待機してほしいの。そこで、『光学迷彩』で姿を消して、できるだけ敵の軍勢と、その数を確認したうえで、村の中へ誘い込んでもらいたいのね……」
「……村の中に入り込んだら、アッシュは『防衛ライン』を引いて、その軍勢を後ろから攻撃してなの……」
「……美珠は、村の廃屋の中に潜んで、『トラップ生成』で村の各所に罠を仕掛けて、混乱させてなの。その状態で美珠のパラドクスで攻撃したり、動きを封じたりできればなおいいの……」
「……敵を封じるか、ある程度撃破して時間が過ぎたら、二人はメリザンドの元へと向かって欲しいの……」
 清政、木綿紀、真九郎。
「……清政は、先刻のように敵を誘導してほしいの。ただし今度は、その姿を現して、『敵の数を見て、恐れをなして逃げる』……というふうにしてほしいのね……」
「……そして、木綿紀と真九郎は、村の手前付近に、『トラップ生成』で罠を仕掛けておくのね。清政がここに誘い込んだ敵が、トラップにかかって混乱したところを、皆で攻撃するの……」
「……木綿紀は、湖畔近くを、真九郎は、村の入り口付近を、それぞれ担当するの。混乱したところで、清政のパラドクスで反撃して、ある程度数を減らしたところで真九郎と木綿紀も攻撃……という想定なの」
 ユヴィ、月兎。
「……二人は、いわば用心のための切り札なの。マリアと一緒に待機して、混乱の中に乗じて攻撃してもらいたいのね。マリアは、パラドクスで『お兄ちゃん』に……『不滅な元帥』に、来てもらうね。そうすれば湖に敵は惹きつけられて、指揮系統も乱れるだろうから、司令官に肉迫できるんじゃないかなって……」

(「ふむ、マリアラーラ殿の読み通り! 敵はそれがしを追ってきているな!」)
 コンキスタ・ダイバーカスタムが、迫り来る。
 それらの後方から、スピーダーとクイックも追随する。
 だが、清政は聞こえなかった。二人のヴィエルジュが会話を交わしていた事を。

『……臆病者のサムライめ。『また』逃げるか?』
 スピーダーの言葉を聞き、
『奴が? ……成程、そういう事か』
 クイックは、笑みを浮かべていた。

●回転しつつ、襲い掛かる者たち
 シャニー村。
 その入り口にコンキスタの一部隊が到着し、立ち止まった。
『…………』
 そして、周囲を見回し、すぐに村へと侵入していく。
(「……おいおいおいおいおいおい、なんだよ、この大量の自動人形は!」)
 村の入り口に潜むアッシュは、群れるそれらを見て若干焦りを感じ、
(「……落ち着け自分。あれら全部をたゆんなお姉さんだと思えば、絶望も希望に……なるか!」)
 と、『光学迷彩』で隠れながら、心中でノリツッコミしつつ焦りをごまかさんと試みた。
 そして、廃屋内の美珠もまた、
(「……あれだけの数、果たして拘束できるのでしょうか……?」)
 アッシュ同様に、やや焦りを感じていた。
(「ですが……やるだけです!」)
 が、すぐに立ち直り、戦闘体勢を。
 アッシュも、
(「……予想より数が十倍程度、多かっただけだ!」)
 当初の作戦通り、内部へ入り込んだ事を見定め、『防衛ライン』を引いた。
「……さーて、それじゃあおっぱじめるとするか」
 アッシュの両手には、双刃ヴァルディール……長い刃の二振りの剣が握られていた。

 村、入り口前地帯。
 真九郎は、半分以上崩れ落ちた、小屋に身を潜んでいた。
「……こちら真九郎。聞こえるでござるか? 敵の人形共は、村の中へと入っていったでござる。その兵力、予想以上! それがしは周囲に罠を仕掛け終え、敵が来るのを待つのみでござる」
 パラドクス通信で、清政たちへと連絡を入れる真九郎。
「……こちら清政。敵は誘導されつつあるでござる! こちらもかなりの数の人形共を確認! 木綿紀殿も、共に注意されたし!」
「……了解でござる」
「……了解」
「こちらマリア、了解なの」
 木綿紀は、大き目の岩の陰に隠れ、
 マリアラーラは、ユヴィ及び月兎とともに、湖畔に打ち捨てられたボートの残骸内部に、それぞれ身を潜めていた。
「…………」
「落ち着くんや、ユヴィ。もうじきオレらの出番が来るで?」
 そう言う月兎も、どこか落ち着いていない。
 実は、マリアラーラもそうだった。予想以上の戦力が来ることを垣間見て、『不安』を覚えていたのだ。
(「……けど、それも織り込み済み! マリアの作戦……開始するよ!」)
 己を叱咤激励し、マリアラーラは、
 絶望を超える力を、己の中に沸き立たせるのを感じ取っていた。

 湖畔前。
『巨大水たまり』の右側から、清政を追って来たコンキスタ・ダイバーカスタムの群れは、
 突如として、顔のない顔面をかしげ、不思議そうな仕草を見せた。
 その場に踏み込んだとたん、地面から『弾かれた』のだ。
『……!?』
 それはまるで、『トランポリン』に知らずに乗った者のよう。大きく弾み、バランスを崩して転んでしまうコンキスタたち。
『なっ……これは!』
 クイックとスピーダーもまた、追撃のスピードを緩めざるを得なかった。ケンタウロスのように四本足を供えたヴィエルジェ・キャヴァリエルであっても、この足場の悪さの前には、安定できず足踏みしてしまう。
「…………世界は『布』、私は、『糸』……」
 そこに、『彼女』が出現した。
「……魔の『針』に従い、私で『彩る』」
 彼女は、木綿紀は、
 再び『トラップ生成』の効果を用い、今度は空中に、人が乗れるほどの『板』をいくつも展開した。
 それに飛び乗ると、それもまた、弾むトランポリンのように、あるいは磁石の同極同士が離れるように、
『弾かれ』た。
『貴様か! 撃て!』
 ヴィエルジェは銃を、コンキスタは内蔵した大砲を向け、発砲する。が、木綿紀はそれらを、
『虚構空間』へと消える事でかわし、
『現実空間』に再び現れ、
「…………!」
『飛び杼』、柄にワイヤーの付いた投げナイフを放った。
 まさにそれは、糸を通した、裁縫の『針』の如く。
 放たれた『飛び杼』の刃は、布地にアップリケを『縫い留める』かのように、
 数体のコンキスタを貫き、破壊した。
 反撃するコンキスタもいたが、木綿紀は、
『虚構空間』へと消え、『現実空間』に現れる事で回避し、攻撃を繰り返す。
『縫跳躍(ソウリープ)』、それが、木綿紀の、天使のレジェンドウィザードの放つ攻撃。
 目隠しごしに、何体ものコンキスタ・ダイバーカスタムを破壊し、残骸と化していくのを確認する彼女は、
「…………」
 作戦が上手く行った事の『満足感』と同時に、
『困難』をも、感じ取っていた。

 そして、木綿紀を避けたコンキスタたちは、
 また別の罠を踏み、一体がひっくり返る。
 注意深く探りを入れ始めた、そこへ、
「……いざ、参る!」
 真九郎が、突進した。
 その両の手に握る二刀、二つの白刃を擦り合わせ生じるは火花。
 それは消えず、刃に纏われ……二振りの紫電と化し、雷撃の太刀として顕現する。
 その疾走は電光石火。疾風のごとく有象無象の敵へと入り込み、翻弄し、撹乱していく。
 高速で移動すると同時に、閃光が刃より迸り、
「受けてみよ、雷電の太刀!」
 雷鳴とともに、二刀が振り下ろされ、敵陣へと切り付けられた。
 二刀が放つ斬撃は、雷のごとく。それらがコンキスタ共に襲い掛かり、切り捨て……。
「……『紫電流疾走(シデンリュウシッソウ)』! 切り捨て、御免!」
 多くの自動人形たちを、破壊していった。
 反撃を許さぬ、その剣戟は。顔を持たないコンキスタ・ダイバーカスタムの群れを、戸惑わせているかのようにたたらを踏ませていた。
 その斬撃を警戒し、コンキスタの一部群れが新たなトラップの地帯へと誘われ、数体がそれを踏み転倒し、拘束され、要り捨てられた。
 まだまだ敵残機の数は多い。
「……来るがいい。貴様ら全てを倒すまで、我が剣は休まぬ!」
 再び二刀を構え、真九郎は、
 その切っ先を、群れる敵へと向けた。

●切り裂き、破壊し、殲滅する者たち
 村の内部。
 廃村内部にコンキスタの群れを追い込んだアッシュは、
「どうした、ゼンマイ仕掛けのガラクタども! ……この攻撃、かわしてみろ!」
 単騎で、敵の群れへと後方から切り込んでいた。
 その両の手には、双刃ヴァルディール。それらで切り付け、コンキスタを斬り捨てていく。
 叫びとともに、彼は、
 己のパラドクスを発動させた。
「俺の、『この技』。もしも見切れたなら……褒めてやるぜ!」
 アッシュの背後に、数名の……『騎士』が出現した。
 幻影の騎士たちは、コンキスタを包囲するかのように立ち、手にした剣を掲げる。
「……いけーっ!」
 アッシュのヴァルディールが輝くとともに、幻影騎士たち全員が突撃。携えた剣を振るい、容赦無き斬撃を繰り出した。
「……はっ!」
 生じたわずかな隙に、止めの一太刀。
「……『七輝剣(セブンエッジフラッシュ)』。どうやら、見切れなかったようだな」
 その場に居た、最後のコンキスタ一体を斬り捨て、アッシュは言い放った。
「……さてと、もう少し倒しておくか……この戦いが終わって戻れたら、たゆん分を補給しなきゃあな」
 そんな軽口を叩きつつ、彼は廃村の奥へ、足を踏み入れていった。

「……来ましたね」
 美珠は、『倉庫』に潜んでいた。
 廃村の廃屋内。元は商店の倉庫として用いていたらしいそこは、当然ながら今は何もない。
 扉も壊れ、蝶番からぶら下がっているだけ。それをぶち破り、
 コンキスタ・ダイバーカスタムの群れが扉を破って内部へと入り込んできた。
「来ないで下さい……近づいたら……」
 美珠のその言葉を無視し、コンキスタどもは足を踏み入れ、接近し、
「……近づいたら……あなた達が『不利』になります!」
 そして、倉庫内の床に仕掛けられた『罠』を踏んだ。
 途端に爆発が起き、自動人形をひっくり返す。その爆破音は、他の場所でも景気良く響いていた。美珠の『トラップ生成』によるものだ。
「言ったでしょう? 『不利』になると! 狭い倉庫内で、爆発を起こしてひっくり返ります! しかもそちらの数が多すぎて、統率も取れません!」
 そのまま美珠は、畳みかける。
「かけまくも畏き草薙大神よ! 諸々の禍事罪穢れを縛り給え封じ給えとも白すことを、畏み畏みも白す!」
 印を結んだ美珠に応えるように、周囲の空間から無数の『鎖』が出現し、敵へと伸びるとそれらを拘束した。
『草薙流退魔術・封魔の鎖(チェイン・バインド)』
 魔を束縛し動きを封じる、『神聖なる鎖』を放つ美珠のパラドクス。
 封魔の鎖は、床に、壁に、或いは空間に、コンキスタ・ダイバーカスタムの群れへ伸びて絡みつき、縛り上げ、その動きを封じていた。
 自動人形の群れは無力化され、動けない。
 そして、
「……きゃあああっ! またっ! なぜいつも私にも鎖が絡みつくんですかっ! ……って、いやっ! こんな格好見ないで!」
 ……美珠自身にも鎖が絡みつき、その動きが封じられてしまった。今の美珠は、両足を大きく開いた格好で、倉庫天井から宙ぶらりんになっている。
 見ないでと言ったが、コンキスタの頭部には顔が無く、目もない。
 が、美珠は痴態を見られたと思い込み、赤面する。
 アッシュがやってきて、助けられるまで。美珠はいつも通りに羞恥に晒されるのであった。

『……』
 そして、廃村に入らず、離れた場所の小屋に隠れていた彼女……、ヴィエルジュ・キャヴァリエルのトロットは、
 そのまま、村の外で待機していた。

 木綿紀と、真九郎。
 当初は軍勢を屠りつづけていたが、数の前に押され、
 今は追い詰められつつあった。
 互いに背中合わせになり、周囲を敵が囲っているのを改めて見る。
「…………」
 無言のまま、木綿紀は身構え、
「……ここまで数の差とは……予想外でござったな……!」
 真九郎もまた、余裕が無くなりつつあった。
『ばかめ、これで終わりだ!』
 周囲を囲むコンキスタと、それを指揮するヴィエルジュ・キャヴァリエル、クイック。
 クイックは長銃を構え、コンキスタは、体内から大砲や魚雷管を展開した。
 だが、次の瞬間。
「……いざ! 風よ吹け! 炎よ放たれよ! 戦場の敵へ、降り注ぐでござる!」
 清政の声とともに、『風』が戦場に吹き荒れ、
 続いて、無数の『火矢』が、どこからともなく出現。戦場へと『降り注いだ』。
『!? これはっ!?』
 狼狽えるクイックの周囲で、発砲寸前のコンキスタに、火矢が容赦なく突き刺さる。
 続き、爆発! 爆発! 更なる爆発!
 まるで誘爆するかのように、木綿紀と真九郎を囲っていた無数のコンキスタたちは、次々に爆発していった。
「人呼んで『東南の風』! 諸葛亮の見様見真似でござるが、それがしのこれも……なかなかのものでござろう?」
 まさに然り、赤壁の戦いが再来したかのように、
 圧倒的戦力差が、圧倒的火炎の前に覆されていた。

●作戦は、概ね成功。しかし……、
『お、おのれ! だがまだだ! 残存のコンキスタ! 隊列を組みなおせ! 改めて攻撃……を……』
 クイックは、命令を下そうとしたが。
 いきなり、言葉を失ってしまった。
 それは、部下たち……クイックにスピーダーも同じ。
 なぜならば、バーリー湖の頭上に、
『不滅のネイ』、倒されたはずの、既に存在していないはずの、グランダルメの英雄が、
 鎧めいた身体で、剣と盾を構える英雄が、
 そこに姿を現していたのだ。
『ネイ様?』
『ネイ様だ!』『不滅のネイ元帥? 生きて、おいでで……』
『やはり不滅だったか! 我らのために来て下さった! ブラヴォー!』
 ほぼその場に居たヴィエルジュ・キャヴァリエルは、全員がそちらに目を奪われていた。
 羨望とともにそちらに注目するヴィエルジェたちだが、その『ネイ』は、
 その剣を振り下ろし、剣圧による攻撃をヴィエルジェたちへと放つ!
『ぎゃああっ!』
『な、何故だ! 我らが元帥!』
 コンキスタも多くが薙ぎ払われ、ヴィエルジェたちも何体かが同じく薙ぎ払われる。
「……幻だとしても、幻であってほしくない。当然だよね、そして……」
 存在してほしいという『願望』と、それが攻撃してくる『混乱』とで、その場は、混沌と化した。
「『SuperMariaBros.(マリアノステキナオニイチャンタチ)』。絶対無敵で最強のお兄ちゃんを呼び出したよ。……今だよ、月兎、ユヴィ!」
 マリアラーラの声を聞き、
「待ちくたびれたで! いっちょかましたる!」
「……!」
 月兎にユヴィが、戦場へと躍り出た。

 普段のユヴィは、親しげで楽しげな、ウェアキャットの少女。
 しかし、戦いの際には、無機質かつ無口な殺りく兵器へと変わる。
 コンキスタ・ダイバーカスタムの群れが、彼女に襲い掛かる。右腕のその爪が襲い掛かるが、
 神速で駆ける彼女は、残像をその場に多く発生させ、自動人形たちを翻弄した。
 そのまま、超高速で移動するユヴィは、
 すれ違いざまに、あるいは相対しつつ、虚と実、両方を交えた攻撃を放ち、自動人形たちを確実に破壊していった。
『残像剣』、それが彼女のパラドクス。
 浮足立つコンキスタたちなど、彼女の敵ではない。
『ならば! 銃撃してやる!』
 ヴィエルジェの一隊が、並んで銃にて狙い打たんとするが、
「やらせへん! うぉりゃああああああっ!」
 すでに『オーラ操作』を用い、武器の大金棒にオーラを纏わせた月兎が、
 そいつらに殴りかかった。
「ユヴィが撃たれる前に、叩き潰して動作不良にしたるで! 『悪鬼粉砕撃』!」
 銃は銃身を折られ、彼女たちヴィエルジュたちも上半身を吹っ飛ばされ、下半身を破壊され、
 文字通り、叩き潰され、引導を渡された。
『く、クイック殿! 指示を……ぐわああっ!』
 ヴィエルジュの一体が、木綿紀の『飛び杼』に刺され、
 ユヴィにより、その首を刎ねられ、破壊される。
「清政殿、どうやら……」
「うむ、我等に勝運が向いてきたようでござるな!」
 真九郎と清政は、余裕を取り戻しつつあった。
「へっ、コンキスタとかいう歯車オバケのガラクタは、どうやらあらかた片付いたんちゃう?」
 二人に背中を預けつつ、月兎は確信した。自分たちの勝利を。

●果たして、勝利したのはどちらか
 シャニー村から出てきたアッシュと、美珠。
「二人とも、大丈夫なの?」
 出迎えたマリアラーラは、
「俺は大丈夫だが……」
「あ、あまり大丈夫じゃないかもしれませんが、大丈夫です……」
 どうやら、問題は無さそうだ。
「村の中に誘い込んだコンキスタたちは、美珠の鎖で動きを封じ、俺が全部破壊したぜ。……こっちの方も、どうやら片付いたらしいな」
 アッシュの指摘に、マリアラーラが返答しようとしたその時。
『水たまり』、ないしはその水中から、
 青い薔薇のような、花のような何か、砲弾めいた何かが発射され、
 それはバーリー湖・湖上に浮かぶ『不滅のネイ』、マリアラーラの作った幻のそれへと直撃し、破壊した。
「……!」
 マリアラーラが、顔を引き締める。
「あれは……!」
「マリアラーラさん、あれが……最初に言っていた……」
 アッシュと美珠に、
「……指揮官が、ようやくお出ましみたい、なのね」
 静かに、マリアラーラは返答した。

「!」
「……?」
 ほぼ全てのコンキスタ・ダイバーカスタムを破壊し終えた木綿紀とユヴィは、
 無言のまま、粉砕された幻のネイ、ないしはそれが漂っていた場所へと視線を向けた。
「……いったい、何なんや?」
「敵の攻撃? しかし……」
 月兎と真九郎も、それにあっけにとられる。
「……あの『水たまり』から、放たれたように見えたでござるが……?」
 清政が、水たまりへと視線を向けたその時。
「ぐっ!?」
 真横からの、何者かによる銃撃が、清政に命中した。
 幸い、鎧が彼を守り、ダメージは受けずに済んだが……、
「清政殿!」
「おい、どないした!? 大丈夫か!」
 月兎と真九郎が駆け寄ろうとしたその時、
『そこかっ!』
 ヴィエルジュ・キャヴァリエル……、
 クイックとスピーダーを従えた、副司令官・ギャロップが、
 突撃してきた。
「くっ……それがしを、狙っている!?」
 地面を転がり、新たな銃撃をかわす清政。
「何するんや! こん卑怯もんのボケが!」
 月兎が金棒で打ち据えんとするが、ギャロップの突撃の衝撃はそれ以上。
 彼女が抜いた剣に薙ぎ払われて、月兎は後方へと吹っ飛ばされた。
「ぐあっ! ……なんやこいつら。アホみたいに強え……!」
 まさに然り、正確、かつ素早く動き回るヴィエルジュ・キャヴァリエル三体は、
 隊列を組みつつ油断なく、銃と剣を構え、言い放った。
『……卑怯だと? 恐れをなしたとみせかけて逃げ回り、罠や敵の居る場所に誘き出す事は卑怯ではないのか? 同じ手を二度も行えば、流石に気が付く』
『あえて引っかかってやる事で、そこの緑のサムライと、お前たちの意図を確認したが……まさか、あのような火矢を放つとは予想外。しかし……手の内はわかった』
『ああ。コンキスタを大量に失いはしたが……これで対処法はできた。また罠をしかけて場所に誘き出すか? あるいは、素早く接近戦を仕掛けるか? それとも他に武器か能力でも隠し持っているのか? 飛び道具で遠くから攻撃してくるか?』
「……くっ!」
 マズい事になったと、清政は感じていた。もう『逃げて罠に誘導する』という手段は通用しないだろう。
『……おっと、そこの目隠した小娘と、ネコの小娘。お前たちも動くな』
 木綿紀とユヴィも、狙われている。
 周囲にはすでに、かけつけた数十のヴィエルジュに囲まれ、銃で狙いを付けられていた。
 それだけでなく、
『水たまり』から、現れたのは。
 先刻に分けられた、ヴィエルジュのC分隊。それとともに、
 ヴィエルジュ二体、ナッシャーとグラインダーが引くチャリオットに乗った、メリザンドの姿があった。。

「……こいつが……」
「……司令官、でござるか……!」
 月兎と真九郎は、冷や汗が流れるのを感じていた。
「……!」
「…………」
 ユヴィと木綿紀も、戦いを挑まんとするが……、
 できなかった。自動人形のくせに、そいつが放つ『気配』は、ディアボロスたちが行動する事を許さなかったのだ。
 メリザンドは、清政を一瞥すると……口を開いた。
『ふん、サムライとは正々堂々と戦うものと聞いていたが、違ったようだな。小賢しい小細工しか弄せぬ虫けらという事が、よくわかった。おい』
 メリザンドは、傍らのヴィエルジェから銃を受け取ると、
 上空へと銃口を向け、数発撃った。
「!」
「!? 何を!」
『お前らの司令官へ、攻撃命令を下した』

 まさに然り。
 メリザンドが現れ、嫌な予感がしたアッシュは、
「……二人とも、逃げた方がいいかもしれないぜ」
 と言いつつ、周囲を警戒しはじめたまさにその時、
 周囲に、銃弾が撃ち込まれてきた。
「!」
「マリアラーラさん!」
 マリアラーラと美珠の近くへと、接近していたヴィエルジェ・キャヴァリエル……トロットが銃撃してきたのだ。
「このっ! 畏み畏みも白す! ……きゃっ!」
 とっさに美珠が、『封魔の鎖』を放ち、トロットを鎖で絡めんとするが、
 鎖が束縛したのは、長銃だけだった。そして当然ながら、美珠自身にも鎖が巻きつき、絡めとられる。
『ちっ! 面妖な術を使いおって!』
 銃を失ったトロットは、不利と判断したのか。そのまま……退却。
「……間一髪だったな。あと少し遅かったら……」
 アッシュは焦り、マリアラーラは……、
「……撃たれて、いたの。敵の司令官を、誘き出せはしたけど……」
 そいつは、思った以上に恐るべき相手。その事が、本能的に理解できた。
 侮っていたつもりはなかったが、注意が十分ではなかった。それを想い知らされた。
「……いったん引いて、体勢を立て直すの!」
「ですがマリアラーラさん! 清政さんたちが……」
 自身の鎖で束縛されつつ、美珠が言う。
 彼女の言う通り、味方の彼らは……逃げられない状況だった。


『お前たちに、また小細工を弄されるわけにはいかないからな。私自らが、お前たちを惨殺処刑してくれよう』
 メリザンドがチャリオットから降りると、周囲のヴィエルジェたちは下がった。
(「これは……あかん!」)
(「どうするで、ござる?」)
(「何か策は……ん?」)
 月兎、真九郎、清政は、
「…………」
 ユヴィと木綿紀が、何やら合図を送っているのに気付いた。
(「……仕掛けた、罠?」)
 そして、ユヴィが目を押さえる。
『? なんだ、お前たち……』
 メリザンドが反応する前に、木綿紀が『飛び杼』を放つ。
 その切っ先が、『トラップ生成』で作ったトラップを発動させ、
『!』
 その場に、強烈な光と轟音とを放った。その場に居たヴィエルジェたちは一瞬で、視覚と聴覚を奪われ……、
「今や!」
 示し合わせたように、ディアボロスたちは駆け出した。

●果たして、この勝負の行方は
『……司令官、大丈夫ですか?』
 数刻後、メリザンドおよびヴィエルジュたちは回復するが、
『……ふっ、あの状況でも逃げを打てるとはな。相手にとって不足はない。敵は、廃村に逃げ込んだのだな?』
 メリザンドは、満足げに笑みを浮かべていた。
『司令官! 申し訳ありません、攻撃に失敗しました』
 そこに、トロットが戻ってくる。
『構わん。改めて倒せばいい。敵の司令官は?……小娘だと? なるほど……ますます面白い』
 メリザンドは、改めて命じた。
『全員に通達! 動かせるコンキスタ・ダイバーカスタムを全機攻撃に回せ! ヴィエルジェ・キャヴァリエルも全機攻撃体勢を取れ!』
 ヴィエルジェたちは即座に、命令に従う。
『あのサムライ共への対処は、いかがいたしますか?』
『誘いには乗るな。緑の奴は特にな。遠方からの射撃戦で対処しろ。接近戦をしかけるならば、複数で相手をしろ。あの罠や、幻覚なども警戒せよ』
 おそらく、敵は追い詰められ、最後の戦いを仕掛けてくるはず。ならば、それを叩き潰してくれよう。
『敵を殲滅せよ! ……幻とはいえ、不滅のネイ様を私に攻撃させたことを、後悔させてやる』

「……って、おそらく敵はそう考えているはずなの」
 シャニー村、中心部。
 先刻にアッシュと美珠が倒した自動人形たちの残骸を横目に、マリアラーラを中心としたディアボロスたちは、全員そこに集まり、態勢を整えていた。
「あの、メリザンドっちゅうけったいな司令官。フンドシ締め直してかからんと、オレらの中から死人が出るかもしれへんで」
 月兎の呟きが、全員の耳に突き刺さる。
「うん。けど……相手は、マリアたちを追い詰めたと考えてるだろうけど……まだ、手はあるはずなの!」
 その通り、ヴィエルジュの総数はまだ多いが、コンキスタよりかは少ない。そして、メリザンドという司令官を倒せば、ヴィエルジェは混乱し、その統率力が乱れて弱体化するはずだ。
 ここからが、本当の勝負。その事を肝に命じ直したディアボロスたちは、
 改めて、闘志を燃やすのだった。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【神速反応】LV1が発生!
【防衛ライン】がLV2になった!
【隔離眼】LV1が発生!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
【トラップ生成】がLV2になった!
【通信障害】LV1が発生!
【プラチナチケット】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV4になった!
【ダブル】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV4になった!

ユヴィ・レリオ
邪魔だから…メンドイ……
さっきのが私の戦い方だと思わないで…

光学迷彩で隠れながら動きを観察、未来予測を使用しつつ
トロットが来たタイミングで罪縛りの鎖発動
その時点で動いている敵から優先的に神速反応も使い確実に仕留め
トロットは先に黙らせる
踊るかの様に滑らかに動きかつ確実に狩り仕留め月兎の動きに合わせ殲滅していく

invisible bladeと紅い死の香りの両刀で動く
ミラージュスラストを攻撃手段とし急所を狙い確実に倒す

仲間の位置は常に把握見方の攻撃の邪魔に成らないよう注意

自分の怪我は一切厭わず攻撃する
◆月兎と行動しディフェンスする

他のディアボロスに迷惑をかける行為はしません

アドリブ、合わせ歓迎です


天ヶ瀬・月兎
◇アドリブ&連携歓迎
護衛を散らす為、『光学迷彩』で姿を隠しつつ、ユヴィと共に戦場へ

冷静に戦況を「観察」し『パラドクス通信』で状況を共有
行き過ぎるユヴィの舵取りも行います。

鎧のように纏うことでの防御の向上
状況に応じて装備を変更できるのが
PD【紅天遊戯】の強み

『防衛ライン』で進軍の方向を縛り

「オーラ操作」装甲強化&「忍耐力」防御力を底上げ
重装歩兵のように、作り出した身体を隠せるサイズのラウンドシールドを前方に構え
視線を切り仲間を守りつつ
接近する相手には「捨て身の一撃」のシールドアタックの強打を
遠距離には「砲撃」を敵軍に叩き込みます。

インパクトの瞬間、鈍い音と共に、周囲に「衝撃波」広がります。


草薙・美珠
●目的
妾は草薙大神。
美珠の身体を借り受け、神としての力を示そうぞ。

●作戦
敵軍の厄介なところは、指揮官の戦術に沿って忠実に動くことじゃ。
しかし、それは相手の戦術を読めば裏をかけるということでもある。
この戦、相手の動きを読み切った方の勝ちとなるじゃろう。

●行動
美珠の身体に降臨したことで、妾の能力を十全に使うことができる。
神通力を用いて未来を見通し、敵軍の動きを予測するとしよう。
妾が見た未来は仲間に伝え、敵の裏をかくことができるようにするかの。

●戦闘
戦いとなれば、妾の神通力で敵の攻撃を防ぎつつ、まとめてなぎ倒してくれよう。

なに?
美珠がドジをしないのはおかしい?
今回は状況が状況じゃから特別じゃ。


旗楽・清政
うむ、敵もさるもの。
ヴィエルジュ・キャヴァリエルとは既に一度刃を交えたが、
やはりクロノヴェーダでなければそれがしの麾下に迎えたきところ。
されど、仮に誘ったところで、聞く耳は持たぬであろう。
形(なり)もよく、もったいないが、殲滅すると致そう。

それにしても彼奴等、それがしの策には随分と警戒しておる様子。
軍師としては、いささか光栄。
では、搦め手も飽いたし、ここからは軍師ではなくいくさ人の時間と致そう。

射撃戦で対処せんとする敵に、幻影による数を頼みとした接近戦を仕掛けると致そう。
此度は、数と数、力と力の真っ向勝負。
それがしも傷を負うであろうが、最後に大将首を取る力さえ残っておれば、それで良い。


アッシュ・シレスティアル
※アドリブ、連携歓迎
遠距離主体になると俺の手持ちじゃちときついが、弱音は無しだな。
援軍に来てくれたエトヴァが動きやすくなるよう、
顔が割れてるこっちは取り巻き共の気を引きつつ数を減らすぜ。

間に合わせの遮蔽物越しに【未来予測】込みで相手の挙動を見つつ
パラドクスで生み出し得物に纏わせた雷撃を飛ばして
射撃体勢の相手の注意を引き、キャヴァリエルどもを
メリザンドから少しでも離れさせられるか試みるぜ。
接近戦を仕掛けられたら相手を引き付けつつ後退して
装備で受けて斬撃と共に雷撃を叩きこんで反撃するぜ。

相手の攻撃は【未来予知】で致命傷になりそうな攻撃だけ対処し、
残りは適度に受けて相手にほっとかれないようにする。


伊藤・真九郎
追い詰められたか。
仔細無し。腹括って迎え撃つのみ。

天魔短筒による射撃で対抗。接近戦を挑む仲間を後方より援護。
パラドクスの光弾を放つ。着弾箇所で爆発する魔力球で鉄砲隊を牽制。
列びに突入した味方の死角を補い支援する。
白兵部隊がこちらを狙ってくるならば、限界まで魔力を充填した光弾を放つ。直線ではなく稲妻の様に蛇行する光弾で意表を突き、前衛をなぎ払い後衛を吹き飛ばす。

敵各々の戦力は我等以上。練度高し。主戦術は機動力を活かした一撃離脱、及び鉄砲隊による制圧射撃。罠や幻覚等の布石により行動は慎重と見る
それらの条件より「戦闘知識」「計略」技能で敵軍の動きを「看破」。通信による即時の連携で隙を突き瓦解させる。


月城・木綿紀
「どう立ち回るかな」
 水源を発動して川を発生させる。自分は【トラップ生成】で張ったワイヤー陣で空中に足場を張って川に落ちないようにする。
目的としては敵を川に落として濡れさせること。
川から上がって来た敵から対処して、パラドクスで水を氷に再構築させて衣服を凍らせたり武器を詰まらせたりして妨害、敵が川から上がって来られなくなって来たところで川を再構築させて全部氷にする


●いざ行かん、戦いの地へ
「……くっ、この敵との戦い。どうやって対処すれば……」
 シャニー村。その村の入り口にて、
 草薙・美珠(退魔巫女・g03980)は、ディアボロスの仲間たちとともに、敵の迎撃に赴いていたが、
 焦燥している事が、周囲の仲間たちにばれていた。不安に苛まれていたのだ。
「……? どないしたん? 怖いんか?」
 天ヶ瀬・月兎(鬼狩兎・g09722)が言葉をかけるが、
「い、いえっ! ただその、ちょっと心配と言うか、不安になっただけで……」
 いつも通りだが、いつも以上に……慌てている。
「……まあ、落ち着かれよ。美珠殿は剣も使えると聞く。ならば……」
 旗楽・清政(知勇兼備の昼行灯・g08816)と、
「左様。それがしたちとともに、そのいさおしを敵にみせつけるでござる」
 伊藤・真九郎(人間の戦国武将・g08505)が、力づけるように言った。
「……メンドイ……邪魔だから……メンドイ……」
 そして、ユヴィ・レリオ(幸せを探して・g09587)もまた、誰に伝えるともなく呟く。
 先刻の戦いは『不本意』、もしくは『自身の戦い方』ではないとでも考えているように、心底面倒くさそうな呟きだった。
「……どう、立ち回るかな」
 月城・木綿紀(月城家三女の【裁縫】の魔術師・g00281)からも、言葉が漏れる。
「……とにかくだ、俺たちは面が割れてるからな。取り巻き共の気を引きつつ、数を減らそう」
 アッシュ・シレスティアル(蒼破拳・g01219)も力づけるように、そう言ってのける。
「でも、どうやって……」
 不安げな表情の美珠が、不安げに言葉を紡ぐが、
「……やれやれ、今回はどうやら、妾が借り受けるしかないようじゃの。美珠よ、暫く眠っておれ」
 その口調が変化した。それとともに、『雰囲気』も変化する。
「……? どうした?」
 アッシュが語り掛けるが、
「……いや、何でもない……です」
『草薙流退魔術・祭神降臨(クサナギ・オオカミ)』。美珠と、こっそり入れ替わった草薙大神は、
(「さて……この戦い、思った以上に大変なことになりそうじゃ。美珠にはちと、荷が重すぎるだろうが……」)
 しかし、自分が降臨しても、おそらく楽には敵を倒せないだろう。
 加えて、敵方もこちらの意図を知り、『対抗策』を立てているはず。
 どうしたものかと、草薙大神=美珠は、思考を巡らせ始めた。

 ディアボロス側の想定した『策』。それは、
『仲間を二手に分け、片方は、ヴィエルジュ・キャヴァリエルをメリザンドから引き離す』
『離した隙に、分けたもう片方がメリザンドへと肉迫。これを打ち倒す』
『司令官を失った敵は、命令系統が失われ、逃走、もしくは掃討が容易になる。それを利用し敵勢力に大打撃を与え、然る後に撤退』
 ……といったものだった。
 しかし、どうやら敵はこれらを見越している。
「……来るで。奴ら……うじゃうじゃ群れとる!」
 月兎が、『光学迷彩』で隠れつつ、村の入り口付近から、戦況を『観察』している。
 だが……、
「……おかしい、どこか『妙』でござるな……?」
「妙? ……確かに」
 月兎の後ろに控えていた清政と真九郎は、『違和感』を覚えていた。
 ヴィエルジュ・キャヴァリエルは、ほぼ全ての個体が『隊列』を組み、進軍していた。
 しかし、奇妙な事が『二つ』。
『一つ』。隊列は『密集』していたのだ。広がることなく、大きな塊になっていた。
 ヴィエルジュは『機動性』が優れており、四足で高速移動した一撃離脱戦、及びそれを利用し連携を活かした集団戦を得意としている。
 なのに、『密集』していては、それが使えない。なぜこんな事を?
 密集した中には、コンキスタも混じっていた。まるで矢面に立つためだけに、周囲に存在している。
『一つ』。その隊列の、ほぼ前方に。見えるところに、
『慈悲深きメリザンド』が、姿を現していた。相変わらず、ヴィエルジュ二体が引くチャリオットに乗っている。
(「……トロットは? やつは、奴の手下たちはどこに?」)
 ユヴィは、ヴィエルジュの一体……『トロット』、およびその部下たち、クイックにスピーダーを探していた。
 そいつらを、とくに『トロット』は先に黙らせ、確実に仕留める必要がある。
 だが、ヴィエルジュたちは『個体』の判明を避けるためか、
(「! ……こんなの、ズルい! ますますメンドイ事を……!」)
 ユヴィはぼやいた。ヴィエルジュたちは『仮面』を、その顔に装着していたのだ。
 それも、目の部分だけを覆うマスクではなく、顔全てを覆う、いわゆるフルマスク。
 今までディアボロスたちは、その『顔立ち』で、ヴィエルジュたちの個体を判断していた。これでは、見分けがつきにくい。
「……それでも、やってみせる!」
 木綿紀のつぶやきが、ユヴィと月兎にも聞こえてくる。彼女も、何らかの『策』がある事は聞いていた。
そして。美珠=草薙大神もまた、それらを見て思う。
(「……あの、トロットやらギャロップやらといった個体は、副司令や行動隊長として有能じゃった。だが、それを隠すとは……」)
 指揮官、もしくはそれに値する存在を『隠している』。こちらがそれらを狙い攻撃してくる事を、警戒しているに違いない。
 今まで、清政たちによる作戦……罠などで雑兵を誘き出し、本陣に肉迫するという作戦に、してやられている。つまりは……もう引き離したり、分断したりする作戦は通じない。
 間違いなく、これは、
『ディアボロスたちを警戒している』
 そして、
『何かを、仕掛けている』
「……やれやれじゃ。美珠よ、この身体を返す時には、チっとばかし負傷しているかもしれん。もしそうなっていたら、すまん」
 もちろん、そんなつもりはない。傷ついたとしても、敵は殲滅してみせる。
 草薙大神=美珠は、腰の剣の柄に手をかけた。

●そして聞かん、戦場の喧騒を
『全体、止まれ!』
 と、村を臨める位置まで迫った、ヴィエルジュたちの隊列は、そのまま止まった。
『聞こえるか、ディアボロスの諸君。私は『無慈悲なるメリザンド』。諸君らとの戦い、実に興味深いものだった。諸君らの戦闘能力と指揮官の力量、そしてここまで食い下がった事に関し、敬意を表す』
 拡声器を通し、メリザンドの声が聞こえてくる。その口調には、見下しや、嘲りは感じられない。
『だが、我々は諸君らを倒さねばならない。おそらく諸君もそうだろう。引き分けや和解はない。倒すか、倒されるか。殺るか、殺られるか。勝者は生き、敗者は死ぬ。それだけだ。これから我々は、全力で諸君らに戦いを挑む。諸君らも、全力で我々に攻撃してくるがいい』
 見ると、メリザンドも……ヴィエルジェたちに囲まれつつ、その姿を見せている。……直立不動で、チャリオットに乗り、微動だにしない。
『攻撃部隊全騎、攻撃開始!』
 と、隊列から、一部のヴィエルジェたちが、
 大きな群れから分離するように別れ、進んできた。
「……彼奴等、どうやら……」
「うむ。頭領と突かず離れずで、兵士たちと可能な限り離れず、戦いを挑む腹積もりでござろう!」
 清政と真九郎は、それぞれ槍と剣とを、己の得物を握りしめた。
 ユヴィと月兎は、光学迷彩で見えざる姿で立ち、
 木綿紀も、先刻同様に飛び杼を手にしていた。
 美珠もまた、腰に下げた刀剣の鞘を払う。
 互いに、戦いへの気力は十分。後は……少しでも気圧されれば、それが敗北につながる。
「「「「「……いざ!」」」」」
 全員が、立ち上がり、
 全員が、敵へと向かっていった。

 迫り来る敵。その軍勢を迎え撃つは、清政と真九郎。
「いざ進まん! 我が家臣たちよ、その苛烈なる力を見せよ!」
 清政の鎧兜の輝き、翠玉の輝きが、白昼の闇を払拭するかのようにより一層の煌めきを見せる。
『進め! 敵は皆殺しだ!』
 突進するヴィエルジェたちは、走りながら長銃を撃つ。弾丸が、清政の周囲に飛び交うが……、
「出会え、出会え! 来い、家臣たちよ!」
 清政は『旗印』を掲げ、戦国の武者たちの幻影を己の後方へと出現させ、切り込んだ。
『家臣団突撃』、緑色の鎧武者が槍を携え、半馬の自動人形たちへと突撃する。
 その後ろからは、真九郎の天魔短筒による援護射撃が。それは自動人形たちを牽制し、何体かは倒していく。
 が、ほとんどは突進し、清政へと襲って来る。接近したヴィエルジェらは、乱戦で同士討ちを避けるべく、長銃の銃身に取り付けた銃剣で突きかかった。
 その連携した動き、機動性を活かした動きには、清政もさすがに翻弄されるが……、
「はーっ!」
 緑の宝石のごとき輝きの、『緑玉の片鎌槍』は。振るわれるたびに煌めき、薙ぎ払われるたびに敵を倒していく。
 武器において、『槍』の攻撃法は『刺突』ではあるが、それだけではない。特に日本の鎧武者の槍は、長く太い柄を有し、それを以て『打ち』『薙ぎ払う』事でも攻撃する。ゆえに槍は、戦場では最強の武器とされていた。
 幻影ながら、旗印を掲げつつ。家臣たちとともに一騎当千の戦いを繰り広げる清政。
『やるなサムライ! 策を弄するだけの臆病者と思いきや、戦いもそこまでこなすとは! 見直したぞ!』
 ヴィエルジェの一人が言い放ち、長銃を捨て剣を抜く。それとともに、周囲のヴィエルジェたちも銃から剣に持ち替えた。
『だがこれで終わりだ! 行くぞ!』
 切りかかってくる彼女らに対し、
「……参られよ!」
 武士として鍛えられた、清政の武道の技と心、そして消せぬ意志とが、槍に宿り一撃!
 そして、圧倒的な正確さが、容赦のない攻撃力と化して、また一撃!
『ひっ! ……な、なぜだ! なぜここまでの力を持つ……!』
 敗れ去っていく自動人形たち。ヴィエルジェらはそこから、恐れをなしたようにたたらを踏み始めた。
「清政殿! 敵は後退し、長銃で一斉射撃を行うようじゃ!」
 美珠からの言葉が響く。
「……ならば!」
 目くばせし、清政がその射線から離れ後退、
 真九郎が、進み出た。
「我が戦国砲術! とくと味わうがいい!」
『筒』の撃鉄を押さえたまま、引き金を引きつづけ、その銃口に強大なる力が充填。そして、
「……薙ぎ払えぃ!!『砲術·蠎薙(オロチナギ)』!」
 解き放たれた。放たれた光球は、大きく、破壊力が強く、まるで蛇や竜がその身をくねらせ空を飛ぶかのように、
 戦場の敵たちのもとに飛び、蛇行し、粉砕し爆破する!
 まさにそれは、現世に八岐大蛇が顕現しても、その首を薙ぎ払い刎ねるかのごとく。
『こ、これはっ! こんな魔法までぇぇぇぇっ!』
 ヴィエルジェ隊の一波は、それで崩壊した。
『……第二波! 行け!』
 しかし、本体からは新たな騎馬兵隊が出て来る。戦いはまだ終わらない、ここからが本当の戦い。
「真九郎殿、かたじけない」
「……礼は後だ、来るぞ!」
 二人のサムライは、改めて戦いへの気力をみなぎらせた。

 清政と真九郎。彼らとともに対峙するのは、破邪の力を持つ刀剣、草薙剣を持つ巫女の少女・美珠。
 その刀剣は、かの三種の神器とは異なるが、魔を断つ刃の一振りとして、草薙神社より神代の世から伝わるもの。
「いざ、ゆかん。……吐普加身依身多女(トオカミエミタメ)、寒言神尊利魂陀見(カンゴンシンソリコンダケン)、払い給う、清め給う!」
『三種太祓(みくさのおほはらひ)』を口にする事で、己を落ち着かせた美珠の身体の草薙大神は、
 剣を手に、未来を見た。
(「未来視! 今の妾ならば、神通力で敵の攻撃を『見て』、予測が可能!」)
 先刻の清政たちの相手の動きも、それを用い見たもの。草薙大神として降臨している今ならば、神としての力を用いることは可能。
 しかし、気がかりだった。
 未来とは、無限。無限ゆえに、こちらの予想が付かない行動や結果も生じる。
 そして、敵のヴィエルジェたち、その指揮官たち、なによりメリザンド本人の未来視が、今だ見えない。
「敵の『戦術』は読めた。だが、相手の意図……こちらは簡単には読み切れておれぬ」
 おそらく、敵も読み切れてはいないだろう。この心理戦を制するのはどちらか。
「……死ね!」
 と、回り込んできた敵ヴィエルジェとコンキスタが、攻撃してきた。その銃弾を、剣で弾く美珠。
『……ちっ! 惜しい!』
「やるな。だが、お主らが攻撃してくるのは既に『見て知っていた』! 不意打ちを試みた事もな!」
『ならば勝負だ! コンキスタ・ダイバーカスタム! やれ!』
 襲い掛かる自動人形たちへ、草薙剣を抜いた美珠は、
 それらと切り結び、薙ぎ払う。
(「おそらくこの勝負を制する『鍵』は、ユヴィ、月兎、そして木綿紀! 頼むぞ、お主らこそが『勝利の鍵』じゃ!」)
 ヴィエルジェのサーベルと鍔迫り合いしつつ、美珠は思った。

●いざ振るわん、その手に握る武器を
「……あいつも、違う。あっちの奴も……」
 光学迷彩で隠れつつ、敵全体の右側から回り込んで、
 ユヴィは、戦場全体を見ていた。現在の彼女もまた、今の美珠同様に『未来視』を使っていたのだ。
「……ちっ、まったくこすい真似しおってからに。ほんま腹立つで!」
 その隣で、憤慨する月兎。憤慨しつつ、彼らは自分たちの『策』を、頭の中で整理していた。
 ヴィエルジェ・キャヴァリエルは、指揮官からの指揮を受けるとその本領を発揮する。
 全体の指揮官は、自動人形のメリザンド。
 その下にはヴィエルジェの副官(ギャロップ)が付き、メリザンドのチャリオットも、ヴィエルジェ二体が引いている(ナッシャー、グラインダー)。これらは司令官直属ゆえ、現在は対象外。
 むしろ、今一番警戒せねばならないヴィエルジェは、『トロット』。
 あの個体は、クイック、スピーダーという部下を伴い、先行部隊を任され、前線で指揮を執っている。
 それ故に、最も警戒し倒すべきは、『トロット』。彼女を倒せば、前線指揮は乱れ、混乱する。
 だが、おそらくは敵方もその重要性を知ったのだろう。だからマスクを付けさせ、個体の差異を消させたのだ。
「……なあ木綿紀、いっそあなたのパラドクスで……」
「それも考えたけど……成功するだろうか?」
「……未来視してみたけど……半々ってところ?」
 月兎から問われ、ユヴィから返答された木綿紀は、
「……わかった、やってみる。『パラドクス通信』で、みんなに連絡して」
 決意とともに、戦場に向かった。

「この稲妻からは、逃れられねぇぞ!」
 撃剣スタンエッジを用い、刃無き刀身から電撃を放つアッシュは、
 小屋の残骸やら、岩やらに身を隠しつつ、
「もういっちょ、くらえ! 『ライトニングテンペスト』!」
 迫り来るヴィエルジェたちへ、剣を振りかぶり、振り下ろした。
 途端に放たれる、強烈な電撃の奔流。それはヴィエルジェの一隊を薙ぎ払うも……、
 やはり自分の目的である、『メリザンドの周囲から、ヴィエルジェ・キャヴァリエルを少しでも引き離す』という試みは、あまり上手くいっていない。
 見ると、やはり清政、真九郎、そして美珠も苦戦している様子。
「……『引き離されない事』を、狙ってるな。さて、どうしたものか……」
 アッシュが呻いたその時、
 敵ヴィエルジェが、正面から突撃。振り下ろしたその剣を、アッシュは自身の剣で受け止める。
 が、
『いいぞ、そのままだ! あとは私が仕留める!』
「! しまった!」
 別方向から現れた、もう一体のヴィエルジェに、長銃を向けられていた。
(「まずい、やられる……!」)
 覚悟したその時、
「……動くな!」
 駆けつけた彼女……ユヴィが、
 その両手の得物……右手の不可視の刃『invisible blade』と、左手の具現化した紅きオーラの刃『紅い死の香り』とで、切り付けた。
「オレも、ぶっ飛ばす!」
 と、赤黒いオーラを……彼自身のパラドクス『紅天遊戯(シュテンユウギ)』をまとった月兎が、赤黒い武器を形成し、アッシュを襲っていたヴィエルジェへを薙ぎ払った。
 斬撃と、打撃が、
『お、おのれ……』
『無念……』
 二体のヴィエルジェに、引導を渡していた。
「……トロット、じゃないな」
 ユヴィは倒した敵の仮面を剥がす。その下の顔は、クイックだった。
「こっちも違うで」
 月兎が倒した方は、スピーダー。つまり、まだ前線指揮官は健在。ピンチを見て、すぐに駆け付けたのだが。やはり都合よくはなかったか。
「……助かったぜ、ありがとよ。で……」
 と、アッシュが問う。
「……先刻のパラドクス通信で聞いたが、やるんだな?」
 彼の問いに、二人は頷いた。

 戦場を駆けるユヴィは、
「……『ミラージュスラスト』」
 先刻同様に、残像により敵を『幻惑』し、その急所へと必殺の一撃を食らわせていく。
 が、やはりトロットは出てこない。そしてそれに加えて、敵の数も多すぎた。
 致命傷は負わずとも、徐々に負傷を受け、時折手足に銃撃を受け、刃を受け、確実にダメージが蓄積されていく。
「……はあっ、はあっ……くそっ、ほんま、こすい奴らや!」
 ユヴィのそばで、『紅天遊戯』を用い、月兎は巨大なラウンドシールドを作り出した。それを用い、ユヴィへの攻撃を防ぐ。……彼のこの献身が無ければ、ユヴィは致命傷を負っていただろう。
 またも接近する敵が。銃剣をランスのように構え、突撃してくる。
「こなくそ! やれるもんならやってみい!」
 と、月兎はシールドを構え、彼自身も突撃。
 ヴィエルジェを吹き飛ばした。
 アッシュ、そして清政と真九郎も、
 美珠もまた、大人数の相手の前に、疲弊し、膝を屈しつつあった。
 既に敵大隊を薙ぎ払い、百騎以上は破壊している。が、敵の数は一向に減った様子を見せない。
「……はあっ、はあっ……まったく、美珠め。この程度で音を上げる程度の体力しかないとは、運動不足も良いところじゃ」
 美珠の中の草薙大神が、危機的状況を笑い飛ばさんとするが、その試みは失敗。
 が、
『……皆さん、月城です。実行します、そのまま下がって下さい』
 木綿紀からの、パラドクス通信が、
 皆に新たな希望を抱かせた。

『……ふん、敵は確かに強いな。だが!』
 兵士たちの中に紛れ込み、『トロット』は確信していた。
 ギャロップ、およびメリザンドからの命令で、このマスクを着用させられた時には疑問に思っていたが、
『敵は前線指揮官を狙って来る』と聞き、納得した。おそらく敵は見分けるすべを持っているだろうが、だからこそ容易に視認できないようにする必要がある。
 しかし、敵の不意を突けるかもしれない。実際、先刻は敵のシャーマン(美珠)をあと少しの所で討てそうだったが……。廃村の時のような抜けたところがなく、歴戦の勇士といった貫禄が感じられた。なので、何人かの味方を呼び寄せ、自分は撤退したが……。
 こうやって自身の姿を偽り指示を下すのは、実に効率的。この戦い、勝てる。
 敵たちも撤退したという。この隙に、畳みかけるとしよう。
『前線指揮官より通達! 全部隊そのまま前進!』
 まさか指揮官と隊員が同じ場所にいるとは思われまい。さあ、行くぞ……、
『……おい、あれはなんだ!?』
 肩を並べている部下が、左手の方向……あの巨大水たまりのある方へと促した。
 トロットもそちらを向くと、
『これは……洪水?……いや、『川』か!??』
 どこから出てきたのか。
 大量の『水』が発生し、『河川』と化していたのだ。
 いきなり発生した『川』は、
 メリザンドの居る本陣、そしてほぼ全ての、ヴィエルジェの群れへと流れ、それを飲み込んだ。
 飲み込まれた中には、トロットの姿もあった。

●そして掴まん、戦いの果ての勝利を
「うまく、いきました……!」
 木綿紀は、川の流れを臨む場所で、
『トラップ生成』を応用して発生させたワイヤーを張り、その上に立つ事で、宙に浮いていた。
 木綿紀は『水源』を発動させ、大量の水を溢れさせ、『河川』を発生させたのだ。その川は先刻の水たまりとも繋がり、大量の水が流れる、幅のある河川として、ディアボロスたちと敵の前を横断していた。
「……こっちは全員無事に、村の入り口まで下がっているで。やつらがアップアップしてるのは、こっからでもよう見える!」
「……トロットも、恐らく来るはず。すぐに……そっちに向かう……」
「……了解しました」
 パラドクス通信での通話を追え、木綿紀は敵を待った。

『……ディアボロス! 味な真似をしてくれる! だが、流されたのは数騎で、ダメージはほぼゼロ! 当てが外れたな!』
 そして、ヴィエルジュの一隊が、川から上がり、迫ってくるのが見えてきた。
『面食らったが、水浴びをしただけに終わった。我々を錆びさせるつもりだったか?』
『面妖な策もここまでだ。まずは貴様から殺してやろう!』
 と、長銃を構え、自動人形たちは突撃してきた。
「……ちゃんと『濡れた』みたいね。ならば……」
 それを確認し、木綿紀は、
「……世界は『布』、私は『糸』」
 己のパラドクスを、
「……その『形』を解き、『織り直す』。全ては我が『糸』と、『針』の赴くままに」
 織り上げた『力』を、解き放った。
『何をしているかわからんが……撃て!』
 ヴィエルジュたちが発砲した。続く瞬間、
 長銃は全て、爆発した。

『な、なんだこれは!』
『わかりません! いきなり周囲の空気が低下し……銃も凍り、目詰まりしています!』
『ならば、接近して攻撃を……お、おおおお……』
『こ、凍る! 凍ってしまう! なんだこれはぁぁぁぁ……!』
 広範囲で、この『低温』は発生していた。
「……『織物錬成(ファブリックアルケミー)』。錬金術の力よ」
 周囲の物全てを、錬金術で作り替え攻撃する、これが木綿紀のパラドクス。
 その効力は、川から出てきたヴィエルジュたちのみならず、まだ川から出ようとしているヴィエルジュたちにも襲い掛かる。
『か、川自体が……』
『こ、凍るッ! 凍ってしまうッ! う、動けな……』
 ほぼ全てのヴィエルジェたちが、川から上がる前に、川ごと凍らされていた。四本足も凍ってそのまま囚われてしまい、動けない。
『か、川を作り、濡らしたのはこのためか! ま、まだまだ!』
 それでも、数騎は凍りかけても、まだ地上を疾走する個体が十数体。それが木綿紀へと向かって来る。
『まだ負けん! ならばお前の首を取ってやる! 全員、かかれ……ぐっ!?』
 しかし、その十数体のヴィエルジュの一体に、
「……見つけた」
 駆けつけていたユヴィが、『罪縛りの鎖』を発動させ、動きを止めていた。
 仮面が低温で砕け、その顔から落ちる。そこにあったのは、トロットの顔だった。
「ユヴィ! やっちまえ!」
 同じく駆けつけていた月兎の声援を受け、
「……!」
 ユヴィは神速で、トロットへ襲撃した。
『させるかああああっ!』
 トロットもまた、剣を振るい、そして、
 ユヴィの肩口に、切り付けていた。
「……おのれ、ディアボロス……メリザンド様に、栄光あれ……」
 だが、ユヴィは、
『invisible blade』でトロットの剣を受け、『紅い死の香り』で、止めを刺していた。
『なっ! トロット殿が!』
『おい、我々はどうすればいい!』
『攻撃か? 撤退すべきか?』
 そして、命令を下す者が倒された事で、
 僅かな生き残りも、混乱し始めた。

「グッジョブやで、ユヴィ! 前線指揮官のトロットをやっちまえば、後は烏合の衆や!」
 月兎がサムズアップで賞賛。
「うむ、ユヴィ殿、それに木綿紀殿も、よくやってくれた! あとはそれがしたちが……」
「このまま、凍って足を取られている自動人形どもを倒していけばいいだけでござるな」
 清政と、真九郎もまた、その場にやってきた。
「……どうも」
 木綿紀は礼ととも頭を下げるが、
「…………」
 ユヴィは黙ったまま。トロットを倒したとはいえ、まだ戦闘は終わっていない。ゆえに神経をとがらせ、戦闘状態継続中。
 美珠とアッシュも、駆けつける。
「よし、最後の大掃除と行こうぜ。これだけやっつけりゃ、メリザンドの元に向かった嬢ちゃんと、援軍に来てくれたあいつも、動きやすくなるだろう」
 アッシュの言葉に、
「そうじゃな……そうですね。それでは、残る雑魚を狩るとするかの……しましょう」
 美珠の中の草薙大神も、頷いた。
(「さて、もうちょっとだけ身体を借りるぞ、美珠よ。まだまだ最後まで、油断は出来ぬからな」)
 そう、メリザンドはまだ健在。ディアボロスたちはそいつが倒れるまで、油断できないし、するつもりもなかった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【光学迷彩】がLV2になった!
【水面走行】LV1が発生!
【未来予測】がLV2になった!
【防衛ライン】がLV3になった!
【通信障害】がLV2になった!
【断末魔動画】LV1が発生!
【エイティーン】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV6になった!
【命中アップ】がLV5(最大)になった!
【グロリアス】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV4になった!

エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎

救援機動力で、仲間達に合流する
味方の作戦に合わせて行動

ヴィエルジュが交戦態勢に入った、護衛の隙を突く
光学迷彩と迷彩コートを纏い、地形の利用し物陰に潜み
メリザンドの隙を看破し狙撃し一撃離脱を繰り返し
指揮の攪乱を狙う

味方とパラドクス通信で連携
鈴を結んだワイヤーを巡らせたトラップ生成で、後背や周囲へ気を散らさせる

偵察、観察しつつ戦況把握
二挺の銃を連射して足止め、注意を惹きつつ
地面や周囲の遮蔽物に跳弾させて、弾丸を穿つ
未来予測しつつ、居場所を悟らせずに忍び足で移動

反撃には魔力障壁を展開し防御
敵の攻撃動作を観察、盾を掲げて爆風を防ぎつつ
素早い行動で、味方の支援を


マリアラーラ・シルヴァ
指揮の恩恵があるお馬ベーダは強いし
籠城展開になったら幻ネイを倒した青バラ花束砲が怖いから
何とかするため指揮官へ向かうよ

戦う前に皆で地図を完成させてるし
道中邪魔なお馬ベーダは
【トラップ生成】で出した煙へ注目させてるうちに迂回するの

指揮官を見つけたら戦車を観察するよ
だって水底を戦車で踏破なんて不自然だし
お馬ベーダに引かせるのも馬力過剰
きっと花束砲の反動で狙いがブレないよう指揮官を固定したり
内臓武装が過積載な指揮官の機動力を補う特注品だよ

パラドクスで戦車を壊したら
指揮系統破壊のダメ押しに【通信障害】もしつつ一度撤退
追われたら【水源】した井戸に【ちょうど良い石】をドボン!と落とし
物陰で【光学迷彩】なの


伊藤・真九郎
残兵掃討後、メリザンドに向かった仲間の援護に参るでござる。

【四条一天流】。森羅万象に宿る「気」の流れを看破し、敵の動きを先読みし攻撃を回避、もしくは太刀受けにて流し防ぐ。
血潮通わぬ人形とて、意志があるなら「気」は流れている。処刑の為に洗練された刃ならば尚更意を読むは容易いでござる。

心技体合一し、己が「気」を刃に込め、万物を両断せしめる斬撃にて狙い撃つでござる。
剣風激しく、動きを読もうと近寄れぬなら、太刀を鞘に収め居合の構え。
抜き打ちと共に放たれる「気」の刃で敵の間合いの三歩外から切り裂くでござる。
サムライについて詳しい様だが、ついでにこれも憶えておけ。
侍は「魂」で敵を斬るもの也。でござる。


草薙・美珠
●目的
引き続き、美珠の身体を借り受けて、敵将を討つとしようかの。
草薙神社の主神の力、見せてくれよう。

●作戦
敵軍は混乱しておる。
ここは一気呵成に敵将の首を取り、そのまま撤収するとしようぞ。

●戦闘
妾の真の力を見せてくれよう。
【神気解放】で戦闘能力を向上させ、草薙剣で近接戦を挑もうぞ。
仲間と協力しつつ、敵将を両断してくれよう。
敵が放つ神速の刃は、不幸を跳ね除ける妾の神威で回避しよう。

弔いであれば我が草薙神社が神葬祭を執り行ってくれようぞ。
慈悲深いメリザンド、そなたの葬儀じゃがな。

なお、連続して妾を降臨させた美珠は、しばらくは疲労感、脱力感、筋肉痛に苦しめられることじゃろうて。
これも修行不足ゆえじゃ。


アッシュ・シレスティアル
※アドリブ、連携歓迎
たゆんが絡まないだけで冷静に戦える自分に気づく一方でいまいちギアが入り切ってない感じもある…。
あの人工物の膨らみをなんとかたゆん認定するか…?

ある程度取り巻きの数が減ったのを確認したらメリザンドに狙いを変更するぜ。
仲間との連携を意識しながら相手の隙を窺い、誰かを攻撃するタイミングなどで【飛翔】や翼で加速をかけて接近しパラドクスを打ち込んでそのまま一撃離脱でひたすら最大打点を叩き続けよう。

相手の攻撃特に哀悼の刃による首狩りは【未来予測】込みで常に警戒し、仕掛ける時以外はいつでも防御体制を取れるように行動する。
逆説連鎖戦において命中は確実だな訳だが、首は流石に守りたくもなる。


天ヶ瀬・月兎
▼アドリブ&連携歓迎
▼ネメシスモードへ

『メリザンド』相手に舐めてかからへん
神速の「哀悼の刃」で狙われるんが
「首」と分かっとるなら…それなりに準備するちゅうねん!!

PD「常在戦場」は
オーラで覆うことで、治癒力を強制的に活性化させ、負ったダメージを瞬時に回復させる効果があります。
対象を自身に選択することはもちろん仲間も対象にすることが出来るため
ゾンビタンク及び緊急時のヒーラーとしての役回りも兼ねます。

そもそもは無理し過ぎるユヴィの保険なんやけどね、、、

ツツツ、、、アホ
平気な訳あるかい痛覚はそのままや言うねん!

未来予知の先読みと
忍耐力と肉体改造でむりくり抑え込み仲間の攻撃のスキを作ります


ユヴィ・レリオ
当たればざっくりね…
どんな攻撃でも当たらなきゃ意味ない…
それが私の戦い方…

未来予測、光学迷彩で敵の動きや攻撃のチャンスを図り
罪縛りの鎖で動きを止め
神速反応で邪魔な部位破壊をし、攻撃する

◆月兎と行動しディフェンスする
万が一月兎に何かあった場合純白獣人型のネメシス形態となり戦う

invisible blade
紅い死の香りの両刀で動く
ミラージュスラストを攻撃手段とし急所を狙い確実に倒す

仲間の位置は常に把握見方の攻撃の邪魔に成らないよう注意

自分の怪我は一切厭わず積極的に行動し攻撃する

口調 武器を手にし無感情
私、呼び捨て、言い捨て

他のディアボロスに迷惑をかける行為はしません

アドリブ、合わせ歓迎です。


月城・木綿紀
「条件は揃った!」
エイティーンで大人の姿にして竜鎧を纏う事でネメシス状態に。膨大な視覚情報による脳への負荷ゆえ、210秒の制限時間とNATOフォネティックコードによる英文と一部の単語のみと語句を絞った状態になる。

【飛翔】による低空飛行に加えてパラドクスの爆発による機動力を【神速反応】【未来予測】、自分の眼の三つで食らいついて高速機動戦闘を可能にする。
後は槍のテイルを振り回し爆風と爆発で敵の視覚と聴覚を妨害させて荒々しく攻め立てる!


旗楽・清政
残るは貴様のみ、と。その首頂戴する前に、冥土の土産として一つ教えておこう

侍が正々堂々戦うなど、後の泰平の世の概念であろう。
それがし、戦国乱世にて御家を支えし者。なれば、策略だろうが謀略だろうが、何でもありでござるよ。
正々堂々でなくば卑怯など、力無く敗れ去った者の戯言に過ぎぬ。

さて、講釈はこれぐらいにするとして。此奴は、制圧射撃をしてくるようでござるからな。
なればそれがしも、射撃・砲撃で相手を致そう。
エメラルド・ストーム・シージにて、エメラルド色の砲火の集中攻撃を叩き込んでくれる。

反撃の青き薔薇による制圧射撃は、ビームシールドを構えて防ぐでござるよ。
砲火の嵐と青薔薇の雨、何れが上でござろうか。


●敵の司令官を確認
『全体、止まれ!』
「!」
『戦慄』。
 マリアラーラ・シルヴァ(コキュバス・g02935)は、
『慈悲深きメリザンド』に対し、『戦慄』していた。
 村を臨める位置まで迫った、ヴィエルジュたちの隊列は、そのまま止まっている。
『聞こえるか、ディアボロスの諸君。私は『無慈悲なるメリザンド』。諸君らとの戦い、実に興味深いものだった。諸君らの戦闘能力と指揮官の力量、そしてここまで食い下がった事に関し、敬意を表す』
 拡声器を通し、メリザンドの声が聞こえてくる。
 チャリオットに乗ったメリザンドの周囲には、多数のヴィエルジュ・キャヴァリエルが隊列を組んで警備している。それらは全て、顔立ちが分からぬようにとマスクを被っていた。前線指揮官が誰か、個人の特定を容易に判断しにくくするための処理だろう。
 が、同じ自動人形なのに、比べるとメリザンドは『特異』だった。
『殺気』、『怖気』、そして『凄味』といったものが、メリザンドからは醸し出されていたのだ。しかも彼女は、『生物ではない』。
 単なる機械であり。からくり……自動人形に過ぎないというのに。
(「……やっぱり、ただものじゃないのね」)
 幸いにして、今彼女はメリザンドとは距離を取っている。現時点でマリアラーラは、海岸に打ち捨てられた船の残骸、そこに隠れてメリザンドを観察していた。
 が、こうやって距離をおいていても、やはりメリザンドから放たれる殺気めいたものは薄れない。
「……マリアラーラさん、あれが『敵』ですか」
 駆けつけてくれたエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)も、戦慄を覚えているようだった。怯えてはいない、恐怖しているわけではない。しかし……『警戒』はしている。
「……うん。見て分かったとおもうけど、『ただの自動人形』じゃあないの」
「確かに。見ただけですが、『理解』させられました。『禍々しい相手』であり……『油断ならない相手』である事を!」
 エトヴァの厳かな口調を聞き、マリアラーラは更に警戒心が高まるのを感じた。今、彼女の隣にいる青き瞳の美丈夫は、元レジスタンスとして戦場を駆けている。過去には何度も肩を並べ、様々な敵と戦い、葬っても来たし、その様子を目の当たりにもしている。
 そんな彼ですらも、警戒している。メリザンドの底知れなさを、改めて実感させられ、更に怖気が増すのをマリアラーラは知った。
 他の仲間たちは、今は正面からあの軍勢とぶつかっている。その隙に、自分たちがこうやって回り込み……、
 あのメリザンドへと近づき、直接勝負を仕掛ける。それがマリアラーラの立てた作戦。
『攻撃部隊全騎、攻撃開始!』
 と、隊列から、一部のヴィエルジェたちが、
 大きな群れから分離するように別れ、進んできた。
「……敵が攻撃を開始しました。こちらも向かいますか?」
 エトヴァが問いかけるが、
「……『まだ』なの。まだ、マリアたちが向かうその時じゃないの」
 焦りそうになる己を押さえつけ、マリアラーラは待った。

「出会え、出会え! 来い、家臣たちよ!」
 旗楽・清政(知勇兼備の昼行灯・g08816)の、緑玉の煌めきと旗印。それらに誘われた武者たちが、彼の振るう槍とともに敵ヴィエルジェたちを薙ぎ払い、
「……薙ぎ払えぃ!!『砲術·蠎薙(オロチナギ)』!」
 伊藤・真九郎(人間の戦国武将・g08505)の放った光球が、ヴィエルジェたちを吹き飛ばす。
 攻め込んできた第一陣は、それらの攻撃に全滅したが、すぐさま第二陣が向かっていくのを、マリアラーラは見た。
(「……まずい、のね」)
 圧倒的に、数の差がある。
 ディアボロスたちは、単身であっても集団に対抗できるほどの能力を有する。いわば、『一人ひとりが、強力な攻撃軍団』。
 しかし、だからと言って最強無敵というわけではない。やはり単身ゆえの弱点もあり……能力で劣っても数で勝る相手には、押されていき、ダメージも負う。
「……ベーダの数に対して、やっぱりこっちの数が少なすぎるの」
「……マリアラーラさん?」
「まだ……マリアたちの出番じゃないの」
 これは精神の戦いだ。自分の中の、『焦燥』という感情との戦い。
 ある意味、戦いそのものより、精神を消耗する。戦士に必要なのは『頑強な肉体や戦いの技術』、『戦術や攻略のための知恵や知識』だけでなく、
『感情に流されず、容易に動じない、鋼の精神』。それも重要である事を、マリアラーラは改めて実感した。
 エトヴァもそれを察し、精神を落ち着かせ、神経を研ぎ澄ますように深呼吸している。
 やがて、
「……?!」
「……もしもし、こちら天ヶ瀬・月兎(鬼狩兎・g09722)。聞こえるか?」
 パラドクス通信が、入って来た。
「……もしもし? こちら、マリアなの。エトヴァもいっしょなの」
「こっちには、ユヴィ・レリオ(幸せを探して・g09587)と、月城・木綿紀(月城家三女の【裁縫】の魔術師・g00281)もいっしょや。……木綿紀が、『始める』とのことやで?」
 月兎からの言葉に、マリアラーラは頷いた。
「……わかったの。それじゃ……お願いするのね」

「……ああ、了解したぜ」
 アッシュ・シレスティアル(蒼破拳・g01219)と、
「……うむ、わかった……わよ」
 草薙・美珠(退魔巫女・g03980)にも、パラドクス通信で木綿紀の作戦を伝えたマリアラーラは、
 自分の出番が近づいている事を、エトヴァとともに肌で感じ取っていた。

●敵の司令官へ接近
『これは……洪水?……いや、『川』か!??』
 出現した大量の『水』が『河川』と化し、ヴィエルジェたちへと流れ、飲み込んでいった。
 そして、
『こ、凍る! 凍ってしまう! なんだこれはぁぁぁぁ……!』
 広範囲で『凍結』が発生。水を被ったヴィエルジェたちは凍結し、あるいは水に浸かったままで川に浸かったままで、氷に囚われてしまった。
 これが、木綿紀の作戦。
『水源』を用いて大量の水を溢れさせ、『川』を作り、ヴィエルジェたちを飲み込み濡らす。
 そして、濡れたところへ彼女のパラドクス……錬金術の力を用い、浴びた水分を凍結させる。
 この『凍結』。正確には、パラドクスの『錬金術』による『化学反応』がもたらしたものであり、『低温』を発生させて凍らせたわけではない。
 しかし、ヴィエルジェたちは混乱し、誤解していた。
『な、なぜ低温が起こった!』『まだ雪が降る季節ではない! 魔法か?』『し、しかし! これほど広範囲で凍結が起こるなど……』『敵は季節や気象を操れるのか?』
 前線指揮官のヴィエルジュ・トロットも敗れた様子。そして、
 マリアラーラの視線は、メリザンドの居る本陣へ向けられていた。
「……今だよ!」
 小さく呟いた彼女は、エトヴァとともに、
 すぐそばを流れる『川』を横目に、飛び出し、
 混乱しているメリザンドの本陣へと向かっていった。

『……煙?』
 マリアラーラの『トラップ生成』で、周囲に生じた煙。
 ヴィエルジェの副司令官・ギャロップは、事態に対応できずにいた。さすがにこの中心部は、水を浴びてはいないようだったが……、
『くそっ、洪水と凍結だけで、9割方の兵士が動けぬというのに!』
 慌てている彼女の周囲には、僅かな……十数体のヴィエルジェたちと、
『落ち着け、ギャロップ。動けるヴィジュエルと稼働しているコンキスタを確認せよ! 残存兵力をすぐに集めるのだ……!』
 チャリオットに乗ったメリザンドの姿が、そこにはあった。
(「……!」)
 煙幕に隠れつつ、そしてエトヴァとともに『光学迷彩』でその姿を隠しつつ、マリアラーラはチャリオットを観察する。
『……!? 誰だ!』
 だが、メリザンドに気付かれた。
 気配を感づいたのか、あるいは視覚以外で感知したのか。彼女はチャリオッツに乗ったまま、
『ブルーロジエ』、青きバラの砲撃を放つ。
 それは煙を晴らし、
 マリアラーラとエトヴァが、その場に姿を現した。

『……そうか、お前らも、ディアボロスだな!』
 メリザンドは、驚き、言葉を失っていたが……、
 すぐに立ち直った。その華奢にも見える身体から、副腕を伸ばし……、
『……ギャロップ! ナッシャー! グラインダー! やれ!』
 残されたヴィエルジェたちへと指令を下す。
『了解! 全機、攻撃開始!』
 ギャロップは周囲の一般兵ヴィエルジェたちとともに、長銃を構える。
 マリアラーラは身構えるが、その前に、
「マリアラーラさん、下がって!」
 騎士や守護者のように、エトヴァが立ちはだかった。
 
(「……直接、メリザンドを攻撃するつもりだったが……」)
 先刻に、すぐに見つかった事から、エトヴァは戦法を切り替えた。魔法盾『Αιγίς』で敵の弾丸をかろうじて防御しつつ、攻撃の『隙』を伺う。
「……踊れ、導け、祈りの下に」
 その両手には、銃が、『Νέμεσις―α』および『β』の名を持つ大ぶりな銃が収まっている。
「……これなる弾丸に込められしは、聖なる祈り。白銀が其よ、我が銃口より放たれ、我が敵を、我が意のままに撃ち抜かん!」
 エトヴァの両の手に構えられた銃は、
 エトヴァが引金を引くとともに、連射された。
『ばかめ、狙いも定めずに無差別にただ撃っただけで、当たるとでも……』
 ギャロップの嘲りは、すぐに恐怖のそれに変わった。
 エトヴァが放った銃撃は、縦横無尽に飛び交い、ヴィエルジェたちを貫き、撃ち抜き、確実に仕留めていたのだ。メリザンドにも一部は飛んでいったが、それらは跳ね返されてしまった様子。
 しかし……彼女の周囲の、僅かな生き残りは次々に掃討されていき、地面に倒れていく。
 部下たちの、ヴィエルジェたちのそんな見て、ギャロップは……狼狽えていた。
 これこそが、『Silberner Freischütz-Ⅲ(シルベルナー・フライシュッツ・ドライ)』。エトヴァの祈りと魔力にて……、
「……ただ撃っても、『当たる』し、『当てる』。それが、俺のパラドクスだ」
 それを聞いて、ギャロップの身体にも弾丸が当たり、彼女に膝をつかせた。
『……そうか、ならば……』
『……我々も、全力を以てお前に対抗せねばならんな』
 ギャロップの側に、チャリオットから離れたナッシャー、グラインダーが近づき、彼女を立たせる。
『……その通りだ。お前は手ごわい相手だと認識した。故に……全力で相手をする!』
 ギャロップは立った。そして、
 ナッシャーとグラインダーは、エトヴァの目前に、立ちはだかった。

「エトヴァ! マリアも……」
 彼に、マリアラーラが加勢しようとするが、
「こちらは任せて下さい。マリアラーラさんは、メリザンドを!」
 そうだ。メリザンドはこちらをすでに注視している。
「わかったの! 気をつけて!」
 すぐに司令官の方へと向かう。
 チャリオットの上に立つメリザンドは、
『なんだ、小娘……?』
 余裕でマリアラーラの方へと、顔を向けていた。
「そんな余裕、今のうち……負けないよ、愛の凄さなら!」
 駆け出したマリアラーラは、大地から『呼び出した』。
 無数の『手』を。
『……これは!?』
「……『がんじからめの愛(ゴッドマザートーナメント)』。全地母神による、ママ会だよ」
 マリアラーラの言う通り、大地より生えた無数の手、『母の手』たちは、
 チャリオットを掴むと、宙に掲げる。
『……くっ! 小娘、お前の仕業か! なぜ……このチャリオットを狙った!』
「……『不自然』だったから、なの」
 マリアラーラは、それに答えた。
「水底を、そんなもので踏破する事がまず不自然。なぜなら、チャリオットは馬などに引かせる乗り物。ゆえに軽く作られるものなの! 水に入ったら沈むより浮かんでしまい、潜行なんかできるわけがないの!」
『……ふむ、よく観察したな。お前がディアボロスたちの、司令官か!』
「そうなの! ……それに、お馬ベーダに引かせるのも馬力過剰。きっと花束砲の反動で狙いがブレないよう、指揮官を固定したり、内臓武装が過積載な……指揮官の機動力を補う特注品だよ。そうでしょ?」
『その通り! そしてこのチャリオットは、変形が可能! シェルモード!』
 途端に、チャリオットは装甲が閉じ、蛹(コクーン)のような形態に。
『この形態で、水中を踏破した! ついでに防御も完璧だ、お前のこの『手』にも、破壊など……』
「それは、どうかな……なの!」
『………!』
 まさに、マリアラーラの言う通り。
『がんじがらめの愛』で生じた多数の手は、チャリオットを掴むと、多方向へと引っ張り、
「……壊しちゃえ!」
 文字通り、バラバラにしてしまった。
 そして中のメリザンドが露出すると、その腕も掴み、引っ張り、
『……ぐあああっ!』
 もぎ取った。

 美珠は……今現在は草薙大神がその中に入っている彼女は……、
「……ここは一気呵成に、『敵将の首を取り』、『そのまま撤収』と行きたいところじゃが……」
 すぐにも、事態を解決するつもりではあった。しかし……、
 そうは問屋が卸さない。混乱させられたとはいえ、敵の数が多かった。予想以上に、多かったのだ。
 しかし今は、ほとんどが倒され、破壊され……掃討されつつあった。今交戦しているのは、かろうじて稼働している個体のみ。
 それでも数が多さから用心し、草薙大神は続けて降臨して戦う事にした。このような状況だったら美珠に身体を返し、彼女に任せても良かったかもしれない。
「『草薙流退魔術・神気解放(ゴッド・オーラ)』! ……我が草薙剣を受けるがいい!」
 草薙剣が、ヴィエルジュたちを薙ぎ払う。神代の時代における草薙の剣……天叢雲剣は、今手にしているこの剣、後世の日本刀を模した刀剣とは形状が異なるが。
 それでも目前の敵たちに対しては、充分に役立ってくれている。切れ味を失うことなく、彼女は自動人形たちを屠り続けていた。
 だが……それでも美珠の中の、草薙大神は。二つ『気になる事』があった。
 一つは、大したことはない。
(「連続して妾を降臨したからな。美珠はしばらく、己の身体の疲労感と脱力感、倦怠感に……筋肉痛に悩まされることじゃろう」)
 しかしそれは、美珠自身の修行不足ゆえの事。大した問題ではない。
 むしろ、気になるのはもう一つの方。
「あのマリアラーラという娘の作戦、上手くいっているようじゃが……」
 だからこそ、気になっていた。敵もおそらくは、簡単に倒されはしないだろう。
 何か、『隠し玉』を持っているかもしれない。そんな嫌な予感がしてならず、それゆえに……彼女は続けて降臨していたのだ。
「……杞憂に終わればいいが」
 そう思いたかったが、思えなかった。それだけ『嫌な予感』は、強かったのだ。

 その予感は、他のディアボロスたち……美珠と肩を並べ戦う彼らも、同様だった。
「……いざ、参る!」
『四条一天流(シジョウイッテンリュウ)』、気の流れを読み、練り上げ操る剣技をもって、
 真九郎は有象無象の敵を切り払っていく。
「逃がしはせぬ! 吹き荒れよ、翠緑の砲火の嵐!」
 剣の刃が届かぬ場所からの、銃撃に対しては、
 清政がビームシールドを構えて防御し、『エメラルド・ストーム・シージ』による、無数のビームガトリングとビームカノンの集中砲火で反撃した。
「……思った以上でござるな、この数は!」
「左様! ……しかし……」
 二人の武士、サムライもまた……不安の炎が胸中を襲う。
 なぜか、『安心』できなかった。美珠の中の草薙大神同様に、なぜか嫌な予感が晴れない二人は、その予感の原因となる『何か』を打つべく、神経を尖らせ続けていた。

 そして、
(「……なんや、この嫌な空気は。アホみたいにひりついとる!」)
 月兎と、
「…………」
 ユヴィもまた、例外では無かった。
(「未来予測によると、目前のヴィエルジュたちは、もう効果的な反撃はしないし、できない。それはわかってるのに……」)
 なぜだか、『このままでいたら、手遅れになる』感が、どんどん強まっていく。
「……なあ、お二人さん。俺はマリアラーラとエトヴァの加勢に向かっていいか?」
 二人と肩を並べ、木綿紀とともに戦っていたアッシュは、そう口にする。
 取り巻きの数は多かったが、そのほとんど全てがかろうじて動いているといった様相で、大きな危機にはならない事が見て取れた。
 あとは時間の問題。後始末は、他の仲間たちに任せてもいいだろう。
 むしろそろそろ、メリザンドへと攻撃目標を変更して、自分も敵の親玉の自動人形退治をするべき……という、己の勘に従いたかった。
 たゆんが無いから、冷静に戦える自分を再発見した……と、おどけた事を考えて、その勘を否定したかったが、
「「「「!?」」」」
 全員が、次の瞬間に『目を疑った』。
 傷だらけのマリアラーラが吹き飛ばされ、地面を転がされていたのだ。
 続き、それを拾い上げ、後方へと下がるエトヴァ。彼の身体もまた、傷ついていた。
『……我が部下たちよ、よく戦った。後は、我等に任せよ』
 そして、不穏かつ、不吉にして不安を醸し出す、強烈な気配を纏わせつつ、
『武装した』メリザンドと、ナッシャー、グラインダー、
 そして、『翼を広げ空中を舞う』ギャロップが、その場に現れていた。

●敵の司令官と対決
 先刻。
『……そうか、ならば……』
『……我々も、全力を以てお前に対抗せねばならんな』
 ギャロップの側に、ナッシャー、グラインダーが近づき、彼女を立たせる。
『……その通りだ。お前は手ごわい相手だと認識した。故に……全力で相手をする!』
 ギャロップは立ち、
 ナッシャーとグラインダーは、エトヴァの目前に、立ちはだかった。
「……? 一体、何を……」
 エトヴァはそのまま攻め込まんとしたが、踏みとどまった。
 感じ取ったのだ。『何か』がある。もしもこのまま突撃したら、間違いなく致命傷を負わされるような『何か』が。
 まさにその通り、ナッシャーとグラインダーはエトヴァの目前で、
 高速で、『変形』し始めたのだ。

「! ……これは?」
 ナッシャーとグラインダーは、体内に収納していた『装甲』を展開。己の身体を、すっぽりと包み込むようにして装着したのだ。
 その姿は、中世の騎士の鎧のようでもあり、甲殻類や甲虫を思わせる姿でもあった。変形に要したその時間、わずか数秒。
『我々は、司令官に次ぐ権限を持ち、ほぼ同等の戦闘力を所持している』
『この装甲は、お前たちディアボロスといえど、簡単には破壊できない。覚悟するがいい』
 変形を完了した二体が携えるは、片手にランス、片手に盾。ランスには根元に銃口および引金も内蔵され……遠近両方の攻撃が可能と見て取れた。
『……ナッシャー、グラインダー。副司令官として、緊急空間戦闘装備の使用を申請する』
『『承認』』
 そして、ギャロップは、
 二体からの承認を得て、その背中に、
『翼』を生やし、空へと浮かんだ。
『司令官直属ガーディアン、ナッシャー!』
『同じく、グラインダー! 緊急装甲装着形態!』
『副司令官ギャロップ・空中疾走形態!』
 重装甲を纏った直属の近衛兵に、飛行能力を付加した、ヴィエルジェの最強個体。
 それらはエトヴァへと、予想外の、強力な攻撃を仕掛けてきた!

「……壊しちゃえ!」
『がんじがらめの愛』の『母の手』は、チャリオットを掴み、バラバラにした。
 そして中のメリザンドが露出すると、その四本腕も全てを掴み、引っ張り、
『……ぐあああっ!』
 もぎ取った。
(「あとはダメ押しに、『通信障害』しつつ一度撤退……え?」)
 しかしマリアラーラは、予想外の行動に……その動きを止めてしまった。
 腕をもぎ取られたメリザンドは、そのまま跳躍し、『手』から逃れて地面に降り立つと、
『チャリオット、最終装着合体モード!』
 叫んだ。
 マリアラーラは気付いた。
『母の手』はチャリオットをバラバラにはしたが、分解しただけで、ほとんど破壊していないという事を。
 分解したチャリオットの一部は、確かに破壊されてはいた。が、破壊を免れた各部品は、回転し、あるいは勢い良く飛び、『母の手』を貫き薙ぎ払い、
 腕を失ったメリザンドに向かい、その身体に装着合体していった。
 チャリオットの大きな車輪二つは、円盤のように宙を切り、メリザンドの両足に装着。
 チャリオットの外装の一部は、メリザンドの装甲となり、両足に、胴体に装着。
 更に、チャリオット内に内蔵されていた部品は、メリザンドの新たな腕に変化し、合体。
「こ……これは……!?」
 マリアラーラは、合体を終えたメリザンドを見て、うめいた。
 彼女はまるで阿修羅のような、より大きい、新たな四本腕を得ていたのだ。その手の爪や回転刃もまた、前よりも大きい。
『……メリザンド、最終武装形態! この姿にさせた事、褒めてやるぞ!』
 両足の車輪を回転させ、高速で移動すると、
 驚愕したマリアラーラへと、メリザンドは強襲した!

 そして、現在に至る。
「……ごめん、みんな。あのベーダ、マリアの予想を超えてたの……」
「すみません……俺が参加しておきながら……」
 マリアラーラとエトヴァの傷は、決して浅くはなかった。
「待っとれ! 今治療したる! ……ったく、何ちゅうけったいなオモチャ持っとるんや。あんなアホで非常識なもん、どんな知恵者でも予想なんかできへんで!」
『常在戦場(ジョウザイセンジョウ)』。月兎は己がパラドクスで、マリアラーラとエトヴァを治癒していく。
 そして他のディアボロスたちは、メリザンドと最強のヴィエルジュ三体へと戦いを挑んでいった。
「……嫌な予感、的中したな。やはり美珠でなく妾で良かったのじゃ」
 と、草薙大神=美珠は剣を構え駆け出し、
「……腕、多いけど……」
 当たらなきゃ無意味とばかりに、『invisible blade』『紅い死の香り』の二刀流で、ユヴィも向かっていく。
「ならばそれがしたちは、あの鎧の騎馬武者たちを!」
「承知!」
 清政と真九郎、二人のサムライも闘志を改めて燃やし、突撃。
「くそっ、流石に空は……」
 アッシュはどうしたものかと逡巡していたが、
「……条件は揃った!」
 木綿紀が、この時の事を予見していたかのように、彼女もまた変身した。
『エイティーン』で大人の姿になり、その身体には、竜鎧を纏う。ヴィエルジェたちに匹敵する鎧姿になった彼女は、
 そのまま、空中に飛翔した。
「……じゃ、任せた! 俺は他の奴らをぶっ潰す!」
 と、アッシュはナッシャーとグラインダーへと向かっていった。

 神速の『哀悼の刃』。前よりより強く、大きくなったメリザンドのその刃が、美珠とユヴィの首元に迫るが……、
「……ちいっ!」
「……!」
 二人とも、刃を盾にして、辛うじてその斬撃を防いだ。
 先刻まで掃討していたヴィエルジュの残りが、戦いに巻き込まれ破壊されていく。
(「しかし、どうしたものか。妾の神威で回避はできたが……あの人形の刃の攻撃、いつまでもかわし切れんぞ!」)
 草薙大神は焦りつつある自分を自覚した。やはり何名かで攻撃し、あの腕を封じたうえで攻撃するしかないだろう。
 それならば、二人だけでは無理だ。あと二人、少なくとも一人は欲しい。でないと……ジリ貧になる。
「!」
 考えているうちに、メリザンドは、
 車輪で高速移動し、
『猫の少女! まずはお前からだ!』
 その四本腕で、同時に切りかかった。
(「! まずい、かわしきれない?!」)
 二つは、彼女の両の手の刃で受け止めたが、
 後の二本は、回避できなかった……。

 ナッシャーとグラインダー、それらのランスからの銃撃は、
 かろうじてビームシールドが防いでくれた。
 しかし、こちらの攻撃は……、
「……だめか! 通らぬ!」
 清政の『エメラルド・ストーム・シージ』は、直撃させられはした。が、装甲のため、ダメージは軽微なままだった。
 火器がだめならと、真九郎と切り結ぶも、
「ぐあっ!」
 敵はケンタウロス形態であり、突進力は馬に乗った武士と同じ。その勢いで槍を突かれたら、徒歩のこちらは吹っ飛ばされるのみ。
『……どうした! サムライもやはり、徒歩では馬上の敵には敵わぬようだな!』
『貴様らの技量には敬服した。ゆえに……次で葬ってくれよう!』
 それを聞き、真九郎は、
 太刀を鞘に納め、『居合』の構えを取った。
 清政もまた、次が最後とばかりに、
 エメラルド・ビーム・ガトリングと、エメラルド・ビーム・カノンを構える。
 次の一撃は、殺るか、殺られるかの必殺の攻撃。それを互いに感じ取り、
 その場の空気が、張り詰めた。

『貴様も空を飛ぶか!!』
 空中を飛び回るギャロップとともに、木綿紀は、
 宙を舞い、竜鎧の副武装である槍を振るっていた。
「…………!」
 体質ゆえ、膨大な視覚情報を受ければ、木綿紀は脳へ多大なる負荷を受ける。
 ゆえに、この姿の制限時間は210秒。加えて、NATOフォネティックコードによる英文と、一部の単語のみと語句を絞った状態になる。
 しかし、このままでは効果的な攻撃を行えない。時間切れになったら、その途端に敗北となる。
 木綿紀は、『神速反応』と『未来予測』、そして自身の眼。それらを用い、見極めんとしていた。
 ……ギャロップの、敵の一瞬の隙を。
 見極められねば、こちらは負ける。だが、見極められたら……、
 その前に、
『なかなかやるな、だが……これで終わりだ!』
 ギャロップは高速で空中移動し、木綿紀へと襲い掛かった!

●敵の司令官と終焉
 空中を飛ぶギャロップは、勝利を確信していた。
 敵も、自分と同じく飛行能力を持つが。攻撃力は弱い様子。加えて……どうやら長時間は飛行できないらしい。
 ならば、こちらからの攻撃を連続で仕掛けてやれば、こっちの勝ちだ!
 銃剣を取り付けた長銃で、突撃したギャロップだったが、
「……ロメオ チャーリー ヴェクター アイ コピー」
 木綿紀は、『見極めた』。見極め……一瞬だけ隙を見つけた。
 たった一瞬。僅かな時間。
 しかし、それだけあれば十分。
 木綿紀は、超高速で飛行し、移動し、槍のテイルを振り回して『爆風』と『爆発』とを起こし、
 ギャロップの視覚と聴覚を妨害した。
『!? ふん、そんな子供だましなど……』
 だが、ギャロップが認識し、反応するより早く。
 木綿紀の攻撃は、既に放たれていた。
 爆発が放たれ、『魔法弾』が乱射し、竜のような咆哮が響くとともに、強力な音・光・衝撃波が炸裂する。
『え?』
 ギャロップは、攻撃を受けたと気づいた時点で、
 木綿紀からの『掌撃』を受けた。そのまま空中より地面に叩きつけられたギャロップは、空中から槍を投げつけられ、突き刺される。
『な、何が……!』
 理解が追い付かぬうち、空中から強襲した木綿紀の『爪撃』、爆風からの『斬撃』『翼撃』を立て続けに喰らう。
 これでも足りぬと言わんばかりに、再び放たれた魔法弾の直撃。それは分裂し、広範囲にぶち当たり、燃焼した。
『……ひっ!』
 防御しようとしたギャロップは、同時に悟った。
 手遅れ、だと。
 超火力の爆炎と燃焼、その一撃が彼女を包み込み、キノコ雲が発生。そのまま、その存在を消され、果てた。
『竜撃魔法(エアクラフトウェポン)』。
 ギャロップに引導を渡すとともに、210秒の制限時間が経過した木綿紀は、
 地面に、静かに降りたつのだった。

「……っと、2対3は卑怯かもしれないが、俺も混ぜてくれ」
 真九郎と清政のもとに駆け付けたアッシュは、拳を握り……身構えた。
『構わんぞ』
『これが、最後だ!』
 ナッシャーとグラインダーは、僅かに頷き合い、
 そのまま、突進した。
 ナッシャーとグラインダーは、突撃しつつランスから銃撃する。が、それらを、
「防ぐ!」
 清政がビームシールドで防ぐ。防ぎつつ、
「改めて、受けよ! 翠緑の砲火の嵐!」
『エメラルド・ストーム・シージ』を直撃させた。
 しかし、やはり歯牙にもかけず。ナッシャーとグラインダーは突進する。
『馬鹿め! 効かぬわ!』
『我らの装甲にひびを入らせはしたが! それだけだ!』
 ランスの直撃を、二人は突きささんとしたが、
「……!」
 真九郎の『剣』と、
「……破ーっ!」
 アッシュの『拳』が、二人を迎え撃った。

『!』
 真九郎は、間合いの三歩外から切り込み……、
「……サムライについて、詳しい様だが……ついでにこれも覚えておけ」
 再び、刃を鞘へと納めていた。
「……侍は、『魂』で敵を斬るもの也。で、ござる。……切り捨て、御免」
 返答はなかった。ナッシャーは、その首を飛ばされ、そのまま果てていた。

『!!』
 アッシュは、翼で飛翔し、すれ違いざまに……グラインダーに拳を叩きこんでいた。
『……ばかめ、我が装甲は、その程度の打撃で……』
 グラインダーの呟きは、そこまでだった。
 破壊の魔力は、拳を通じ、内側に送り込まれていたのだ。堅い殻の内部を攻撃され、破壊されたグラインダーは、
 そのまま、四つ足を折り、倒れ、果てた。
「……『ブーストスマッシュ』。サムライとはちと違うが……日本にゃ、鎧の上から内部にダメージ与える技がある。冥途の土産話にでもするんだな」
 そう言って、アッシュは清政へとサムズアップするのだった。

 メリザンドの攻撃は、ユヴィには届かなかった。
 月兎が突き飛ばしたのだ。
「つっ! 大丈夫か!」
「……ん」
『……ふん、惜しいな。だが……次はない!』
 四本腕をくねらせつつ、メリザンドは改めて構える。
 が、マリアラーラとエトヴァがそこに駆け付けたのを見て、
『お前たち、生きていたか。まあいい……改めて始末するのみ!』
 美珠、ユヴィ、月兎、マリアラーラ、エトヴァ。
 五人に囲まれていても、メリザンドは余裕の態度を崩さない。その両足に装着した車輪を回転させつつ、高速で移動する。
『猫は後回しだ! 司令官の小娘! お前から切り裂く!』
 マリアラーラに強襲するメリザンドだが、
「……止まれ!」
 ユヴィの『罪縛りの鎖』が、その動きを止めた。
『!?』
 その途端に、残像により幻惑し、
 装甲の隙間から、『invisible blade』と、『紅い死の香り』を深く、突き刺した。
『ミラージュスラスト』、幻惑した後に、手持ちの武器で急所を貫く必殺の攻撃。
 だが、
『……やるな、だが! 捕まえた! このまま首を切り落としてくれる!』
 爪を食いこむほどに、その両肩を掴まれ、固定された。
「ユヴィ! ……痛っ! こんアホが! 放さんかい!」
 月兎が、『常在戦場』でその痛みを肩代わりし、治癒するが、
『動くな! 動くとこのウェアキャットを即座に殺す!』
 と、回転する刃をユヴィの首に突きつけるメリザンド。
 しかし、
「……踊れ! 導け! 祈りの下に!」
 エトヴァが再び、『Silberner Freischütz-Ⅲ』を放ち、その身体に弾丸を叩きこんだ。両足の車輪が破壊され、腰と腹部に弾丸が入り、メリザンドはその身体を揺らがせる。
「……いい加減、放せ!」
 そのまま、美珠が。ユヴィを捕えているメリザンドの両腕を切断する。
「ユヴィ!」
 再び月兎がユヴィを助け出し、そして、
「……これで、終わりだよ!」
 二度目の、そして止めとなる『がんじがらめの愛』を、マリアラーラは放った。
『……ふっ』
 改めて生じた、無数の『母の手』に捕まれたメリザンドは、微笑みつつ……、
 破壊されていった。

「……どうやら、終わったみたいだな」
 アッシュが、清政と真九郎とを連れて戻り、
「……疲れました」
 木綿紀も、疲れた様子で戻って来た。
「……他のヴィエルジェも、それがしたちが退治した」
「うむ。仕事は、終わったと考えて良かろう」
 清政と真九郎が請け合う。
「大丈夫か、ユヴィ。はぁ……最後の最後までけったいな奴やったな」
「……ん、大丈夫」
 ユヴィを気遣う月兎。
「……では、そろそろ帰るのじゃ……です」
 美珠……の中の草薙大神が促す。
「……そうだな。これは、パリに迫る大軍勢のごく一部、なのだろう? 今の状態で新手に襲われたら……」
 エトヴァの言葉が、重く響く。
 全員が、疲れ果てていた。負ったダメージは、月兎の『常在戦場』で回復してはいても、精神が休息を求め、悲鳴を上げているような気分だった。
 しかし、勝利した事の、心地良さも同時にあった。この勝利、たとえ大勢に与える影響が僅かであっても、いつかは大きな結果の礎になるはずだ。
「……みんな、お疲れ様。帰ろう」
 マリアラーラの言葉に、皆は、
 身体を引きずるようにして、帰還の途に就くのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【パラドクス通信】がLV2になった!
【浮遊】LV1が発生!
【エイティーン】がLV2になった!
【強運の加護】LV1が発生!
【建造物分解】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【光学迷彩】がLV3になった!
【飛翔】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV10(最大)になった!
【グロリアス】がLV2になった!
【リザレクション】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
【ドレイン】がLV2になった!
【アクティベイト】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2023年07月10日