暗夜のポラリス(作者 月夜野サクラ
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#蹂躙戦記イスカンダル  #アラビア半島沿岸偵察作戦  #アラビア半島 

「これでよし……と」
 足下の甕に水を満たして、娘は額の汗を拭った。日中のそれに比べれば随分と和らいだものの、揺らめく地平線に落ちかけた太陽の光は依然として熱い。泉を取り巻くささやかな緑も今は夕日に赤らみ、見渡せば一面のオレンジから次第に紅へ、紫へ移ろってゆく砂漠の夕暮れが息を呑むほどに美しかった。この水甕を持ち帰れば、今日の仕事はお仕舞いだ。
「今日も一日頑張ったなあ」
 彼女は、この村の暮らしが好きだった。決して豊かではない、変わり映えもしない暮らしだけれど、そこには確かな平穏があった。朝がくれば目覚め、決められた役割をきちんとこなして、夜がくればまた眠る。ただそれだけの日々でも、家族と、家族のような隣人達の笑顔に彩られた時間に飽きることはなかった。この暮らしが明日も明後日も続いてくれるのなら、それ以上は何も望むまい。
 そう、思っていた。砂をはらんだ熱風が、ただならぬ声を運んでくるまでは。
「……今のは?」
 絹を裂くような女の悲鳴。男達の呻く声。ざわりと背筋を撫でた悪寒に集落の方を振り返ると、女達が血相を変え、こちらに向かって駆けてくるのが見える。そして、その向こうには。
「……何、あれ」
 人でもない、獣でもない何者かが、女達を追っていた。逆光に黒く浮かび上がった巨躯は屈強な男のそれのようでありながら、その頭部には牛のような巨大な角が生えて――いるのではない。頭部そのものが牛なのだ。
 逃げなさい、と叫ぶ年嵩の女と目が合った。しかし次の瞬間、牛頭の怪物がその身体を易々と掴み取り、荷物のように担ぎ上げる。そして嫌悪と恐怖に叫ぶ彼女の声などまるで聞こえぬかのように、何処かへと連れ去ってしまった。
 その身に何が起きるのか、想像はしたくない。
「……あ」
 逃げなければ。
 頭では分かっているのに、足は竦み、震えて言うことを聞かない。耳を塞ぎたくなるような喚声の向こう側で、聞き覚えのないしわがれ声が何やら言っていた――見れば牛頭の背後には、緑色の肌をした醜い老爺の姿が見える。
「蹂躙せよ、ミノタウロス達よ! この地に暮らす者どもに、己が定めを知らしめるのじゃ!」

●CAUTION
 低く垂れ込めた鉛色の空の下、新宿島に雨が降る。しとしとと落ちる海糸越しに望む世界は、いつもより少しくすんで見えた。滲む高層ビル群を背にホームへ立って、ハルトヴィヒ・レーヴェンブルク(殲滅のカノーネ・g03211)は復讐者達を振り返り、いつものように話し始める。
「アラビア半島の探索作戦が始まった。手の空いてる奴は、力を貸して欲しい」
 エジプト奪還を経て、中東から中央アジアに広がる改竄世界史『蹂躙戦記イスカンダル』との戦端が開いて凡そ半年が経つ。この間さまざまな時間と出来事が起きてきたわけであるが――仔細は割愛するとして、現在同ディヴィジョンでは、攻略旅団の方針に基づいた探索作戦が進行している。これは来たるべき七曜の戦に向け、各地で救出された現地民達の生活・防衛拠点となっている『カナンの地』より更に南方に位置するアラビア半島、紅海周辺の偵察を目的とするものである。
「これまで亜人どもはアラビア半島の集落には手を出してこなかったらしい。それが今になって、この地域の人間達を襲い始めた……どういう理屈かは知らねえが、何か理由があるんだろうな」
 そして今まさに、とある村に亜人達の魔手が迫りつつある。紅海沿岸に程近い名もなき集落を、ゴブリンの将に率いられたミノタウロスの集団が蹂躙しようとしているのである。
「俺はクロノヴェーダが殺せればそれでいい。でも、……お前らはそうじゃねえだろ」
 亜人の殲滅と紅海の偵察は、目的ではあるがすべてではない――今ならばまだ、救えるものがあるかもしれない。
 言外にそう含めて、ハルトヴィヒは続けた。

「とにかく、まずは亜人どもを無力化する。偵察や民家なんかの建て直しは、それが済んでからだ」
 亜人の襲撃を受ける集落は海岸線から少し内陸に入ったオアシスの畔に位置している。周囲一帯は一面の砂漠であり、パラドクストレインで近隣に乗りつければ見落とす心配はないだろう。
 たとえ紛い物の歴史の中であっても、平和を謳歌する人々を、亜人達に蹂躙させるわけにはいかない。何をおいてもまずは亜人の撃破と人々の救出が先決であり、然る後に、破壊された集落の建物や負傷者の手当といった支援を行うべきだろう。こと、水も物資も限られた砂漠の暮らしは苛酷であり、被害を放置すれば餓死者が出るような惨事にもなりかねない。
「その辺の片がついたら、帰還する前に紅海方面の偵察を頼む。って言っても、海岸線は千キロ以上……あくまで今回の襲撃地点周辺から、分かる範囲での偵察になるだろうけどな」
 まさに千里の道も一歩から。複数地点からの調査を積み重ねることで、得られる情報はほぼ確実なものとなるだろう。

 現在、蹂躙戦記イスカンダルでは、ミウ・ウルがバビロン、インド方面に向かっている。また、エルサレムでの決戦に勝利した後は、史実のセレウコス朝で首都であったアンティオキア、そして、トルコ、ギリシャ方面に進むことになるだろう。したがって、アラビア方面を探索することにも少なからず意義はあるはずだ。
 生温い風に吹かれて雨の雫がホームに吹き込んだ。濡れた頬を無意識に拭い、ハルトヴィヒは呟く。
「……ここの六月は、雨ばっかりだな」
 碑文の謳う七曜の戦まで、凡そ二か月。残された時間は決して多くない。助けを求める人々のためにも、彼ら自身の未来のためにも、立ち止まっている暇はないのだろう。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【水源】
1
周囲に、清らかな川の流れを出現させる。この川からは、10秒間に「効果LVトン」の飲用可能な水をくみ上げる事が出来る。
【飛翔】
2
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【怪力無双】
2
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わる。全力で力仕事をするならば「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げる事が可能になる。
【悲劇感知】
1
「効果LV×1時間」以内に悲劇が発生する場合、発生する場所に、ディアボロスだけに聞こえる悲劇の内容を示唆する悲しみの歌が流れるようになる。
【現の夢】
2
周囲に眠りを誘う歌声が流れ、通常の生物は全て夢現の状態となり、直近の「効果LV×1時間」までの現実に起きた現実を夢だと思い込む。
【一刀両断】
2
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【神速反応】
1
周囲が、ディアボロスの反応速度が上昇する世界に変わる。他の行動を行わず集中している間、反応に必要な時間が「効果LVごとに半減」する。
【避難勧告】
1
周囲の危険な地域に、赤い光が明滅しサイレンが鳴り響く。範囲内の一般人は、その地域から脱出を始める。効果LVが高い程、避難が素早く完了する。
【動物の友】
1
周囲の通常の動物がディアボロスになつき、意志の疎通が可能になる。効果LVが高い程、知能が高まり、友好的になる。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【隔離眼】
1
ディアボロスが、目視した「効果LV×100kg」までの物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)を安全な異空間に隔離可能になる。解除すると、物品は元の場所に戻る。
【泥濘の地】
1
周囲の地面または水面が泥濘に変わり、ディアボロスは指定した「飛行できない対象」の移動速度を「効果LV×10%」低下させられるようになる。
【エアライド】
2
周囲が、ディアボロスが、空中で効果LV回までジャンプできる世界に変わる。地形に関わらず最適な移動経路を見出す事ができる。
【モブオーラ】
1
ディアボロスの行動が周囲の耳目を集めないという世界法則を発生させる。注目されたり話しかけられる確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【活性治癒】
5
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【修復加速】
2
周囲が、破壊された建造物や物品の修復が容易に行える世界に変わる。修復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」する。
【植物活性】
1
周囲が、ディアボロスが指定した通常の植物が「効果LV×20倍」の速度で成長し、成長に光や水、栄養を必要としない世界に変わる。
【土壌改良】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の地面を、植物が育ちやすい土壌に変える。この変化はディアボロスが去った後も継続する。
【液体錬成】
1
周囲の通常の液体が、ディアボロスが望めば、8時間冷暗所で安置すると「効果LV×10倍」の量に増殖するようになる。
【使い魔使役】
1
周囲が、ディアボロスが「効果LV×1体」の通常の動物を使い魔にして操れる世界に変わる。使い魔が見聞きした内容を知り、指示を出す事もできる。
【口福の伝道者】
6
周囲が、ディアボロスが食事を摂ると、同じ食事が食器と共に最大「効果LV×400人前」まで出現する世界に変わる。
【おいしくなあれ】
1
周囲の食べ物の味が向上する。栄養などはそのまま。効果LVが高いほど美味しくなる。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【クリーニング】
1
周囲が清潔を望む世界となり、ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建造物や物品が、自動的に洗浄殺菌され、清潔な状態になる。
【建物復元】
6
周囲が破壊を拒む世界となり、ディアボロスから「効果LV×10m半径内」の建造物が破壊されにくくなり、「効果LV日」以内に破壊された建物は家財なども含め破壊される前の状態に戻る。
【アイテムポケット】
3
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。
【防衛ライン】
1
戦場が、ディアボロスが地面や床に幅10cm、長さ「効果LV×10m」の白い直線を出現させられる世界に変わる。敵はこの直線を突破できず、上空を飛び越える場合、最低「効果LV」分を要する。直線は戦場で最初に出現した1本のみ有効。

効果2

【能力値アップ】LV10(最大) / 【命中アップ】LV5(最大) / 【ダメージアップ】LV6 / 【ガードアップ】LV4 / 【凌駕率アップ】LV3(最大) / 【フィニッシュ】LV1 / 【反撃アップ】LV4 / 【アクティベイト】LV1 / 【先行率アップ】LV1 / 【ドレイン】LV5(最大) / 【アヴォイド】LV1 / 【ロストエナジー】LV3

●マスターより

月夜野サクラ
お世話になります、月夜野です。
以下シナリオの補足となります。
==================
●選択肢について
 ③&④→①&②の順でプレイングを受付・執筆予定です。
 ②については採用数に制限を設けませんのでお気軽にご参加ください。

==================
●時間帯と場所
 舞台となるのはアラビア半島・紅海沿岸の砂漠にあるオアシスの集落。時間帯は夕方です。
 ③④は日没前、①②は宵の口から深夜を想定しています。
 急いで駆けつければ、ギリギリ『蹂躙』を未然に防ぐことができるでしょう。

 無事に村人達を救出できれば、戦闘後は人々のフォローと共に住居の修繕、食料調達、食事の用意など支援を行いつつ、砂漠の夜と星空をお楽しみください。
 食料はある程度なら新宿島から持ち込んでも構いませんし、村周辺ではナツメヤシの実なども採れるでしょう。
 日没後の砂漠はそれなりに冷え込みますので、寒暖差にはご注意くださいませ。

==================
●諸注意
・選択肢①③④は、必要成功数を大幅に上回る場合はプレイングの内容に問題がなくても採用できない場合がございます。何卒ご容赦ください。
・いずれの選択肢でも「まとめて採用、まとめてリプレイ」となる可能性がございますため、特定の同行者以外の方との絡みがNGの場合は、お手数でもプレイング中でお知らせ下さい。
・プレイングの採用は先着順ではありません。受付状況については選択肢ごとにご案内いたしますので、MSページも合わせてご確認ください。
・アレなシナリオですがアレな雰囲気には『なりません』ので予めご了承下さい。

==================

それでは、皆様のご参加をお待ちしております!
152

このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


ユート・チュールスキー
平和な暮らしを突如壊される理不尽
覚えがないはずなのに我が事のような心地で心が苦しい
絶対に救い出そう
理不尽が許される世界なんて間違ってる……!

ペニュはなんだかいつも僕の心配をしているね
大丈夫。僕は冷静だよ

パラドクスで攻撃
斧を受け止め風を払う等防御時もパラドクス使用
欲に駆られて猪突猛進か
品性の欠片もないね
もっと落ち着いたら?
なんて言っても無駄か
言葉を理解する理性残ってる?

後のことは考えないで全力でいくよ
もっと強い将はもっと強い仲間達が仕留めてくれるはず
蹂躙なんて絶対にさせない
一匹でも多く仕留めてやる……!

……あ、いけないいけない
ちょっと熱くなりすぎてたね
ごめんね、ペニュ
気付かせてくれてありがとう


ゼキ・レヴニ
僻地まで大軍で踏み荒らして虱潰しってか
ま、この地の虱は奴ら亜人の方だが

機械の脚を肉体改造*、脚の出力を上げ
ダッシュ*で迅速に接敵
襲われそうな住民がいれば身を挺してでも守り
落ち着いて逃げるよう呼びかける
金属塊『躯』を鉄条網に変じ
集落を背に、敵陣先鋒中央に鉄の茨で【防衛ライン】を敷いて
侵攻の阻害、敵陣の分断を狙うぜ
ここが死線だ、越える覚悟はあるかい

ライン付近で守りを固めつつ
鉄条網を鋼鉄の腕にも巻き付けて敵を強打*
集落に近い奴、弱った奴を優先狙いで
敵の斧の一撃は鉄条網で絡めとる、腕で受けるなりでカウンターを狙おう

「己が定め」なんざこのコインと一緒さ
指でちょいと弾いてやれば、ほらよ
簡単に裏返る

*=技能


茜來・雪璃
わぉ、綺麗な空
ゆっくり見たいけど…先にやること済ましちゃお

蹂躙なんてさせない
一掃されるのはお前達だ

お前の相手は私
余所見するなら喉元食い破ったげる
敵が連携できぬよう、狐火の蝶と桜蝶で撹乱・孤立させよう

逃げようだなんて…思ってないよねえ?
逃がさない、絶対に
一挙手一投足、敵の動きを読み
いづと連携して逃げ道を潰し、他の敵との合流を妨害

斧とソレを振るう腕を狙い、貫き、両断
ソレが無ければ風も起こせない
武器を失い、腕を振うこともできない気分はどう?

これから朽ちる者に
武器も角も蹄も腕も不要でしょ?

どれだけ足掻き、吼え、得物を振るおうと結果は同じ
力無き者達を狙った
それがお前達の運の尽き
此処で一人残らず朽ち果てろ


「わぉ。……綺麗な空」
 広がる世界の美しさに、零れた言葉はただの本音だった。辺り一面、見渡す限りの砂漠の只中で停まった列車を背にして、茜來・雪璃(朧夜ノ蝶華燈・g00793)は息を呑んだ。
 限りなく白に近い淡金の髪も、深い森の泉水のような瑠璃色の瞳も、今ばかりはすべてが燃える太陽の焔に染まっていた。砂の地平を見下ろす雲は端ばかりが煌々と輝いて、群青に移りゆく空を飾っている。
 蹂躙戦記イスカンダルはアラビア半島、紅海沿岸――その昼と夜の狭間に、復讐者達は立っていた。遥かに望むオアシスの傍らに点々と見える集落からは、鮮やかな黄昏には似つかわしくない鉛色の煙が立ち昇っている。
「こんな僻地まで大軍で踏み荒らして虱潰しとはな。……ま、ここじゃ虱は奴らの方だが」
 足元の砂が、不意に翳った。降る声の方へ視線を向けてみれば、ゼキ・レヴニ(Debaser・g04279)の長身が逆光に黒い影を落としている。
 砂漠という苛酷な環境で、それでも懸命に日々をつなごうとする人々。そのささやかな暮らしを、脅かさんとする者達がいる。黒鞘の刀を握る手にぎゅっと力を込めて、雪璃は言った。
「もう少し、この空を眺めていたいところだけど……先にやること済ましちゃおっか」
「ああ。それがいいだろうな」
 ごくぶっきらぼうに応じてゼキは背を屈めた。夕映えに染めた機械の脚は、忌まわしくも懐かしい故郷の残滓だ。せいぜい、活用させてもらうとしよう――触れればフォンと軽やかな機械音と共に、風が起こり、赤い熱砂を巻き上げる。
 俄かに緊張感を増す空気に息を呑みつつ、ユート・チュールスキー(氷晶・g08952)は口を開いた。
「絶対に、救い出そう」
 呼び掛けに口々に呼応して、復讐者達は動き出す。茜さす銀色のパラドクストレインを背に残して、めざすのは小さな水の畔だ。一歩前をどたどたと走るダンジョンペンギンを追いながら、ユートは唇を引き結んだ。
(「理不尽が許される世界なんて間違ってる……!」)
 罪を犯したわけでもなく、誰に迷惑を掛けるわけでもない。ただそこに在るだけの平穏な暮らし。それを突如として打ち壊されるのを、理不尽と言わずしてなんと言おう。記憶の糸はふつりと途絶えたまま、思いだせることは何もないはずなのに、今この瞬間にも恐怖に慄いているのだろう人々のことを思えば我がことのように胸は騒いだ。
 クア、と鳴く声に気づいて視線を下げれば、ペンギンが心なしか心配そうに視線だけを此方へ向けている。
「……大丈夫。僕は冷静だよ、ペニュ」
 きっと自分で思うよりもずっと、険しい顔をしていたのだろう。案ずるようなペンギンの頭を軽く叩いて、ユートは掌に氷の輝輪を浮かび上がらせる。狙うのは、疎らに茂る椰子の木の間――斧を掲げて女達を追い回す、牛頭の背中だ。
「輝け!」
 掲げた掌に宿る光に照らされて、一輪、また一輪と、咲き零れる六花が廻り出す。凍てつくような殺気に気づいてか、怪物達は咄嗟に反転するやその手の斧を一閃したが、血風は吹きつける冷気とぶつかり合って消滅した。
「欲に駆られて猪突猛進か。品性の欠片もないね……もっと落ち着いたら?」
 心からの軽蔑を込めて、ユートは言った。もっとも、言ったところで無駄だということは理解している――これを皮肉と受け止められるだけの理性を持った相手なら、そもそもこんな状況にはなっていないのだろう。
「後のことは考えないで、……全力でいくよ!」
 今は一人でも多くの住民を助け出すために、与えられた力を振るうのみ。罪なき人々を蹂躙の憂き目より救うには、一刻の猶予もならないのだ。
「怪我はないか」
 草叢に倒れ込んだ女を庇うようにミノタウロス達の背後へ回り込み、ゼキは言った。
「お前さん達を助けに来た。落ち着いて逃げろ――と、言いたいところだが」
 日干し煉瓦の家と天幕が散在する小さな集落には、囲いらしい囲いもない。亜人の一団が既に集落の中に入り込んでいる以上、彼らを一掃しない限り安全な場所はどこにもないだろう。
「……仕方ねえな」
 片が付くまで、隠れてな――そう言って、ゼキは無造作にコートの内側を探ると、鈍く光る金属塊を取り出した。盾とも刃ともなる変幻自在の合金で、編むのは鋭い棘を持つ鉄条網だ。
(「この地形じゃ、あんまり役には立たないだろうが」)
 この場で生み出すことのできる『防衛ライン』の白線は、凡そ十メートル。だがそれでも、木と家屋の間に隠れた村人達を匿うくらいはできる。猛然と斧を掲げて突っ込んでくる牛頭達を冷ややかに睨んで、男は言った。
「ここが死線だ。越える覚悟はあるかい?」
 鼻息も荒く斬りかかる分厚い斧を鉄条網で絡め取り、相手の勢いを逆手に取っていなせば、行き場を失ったミノタウロスの巨体が宙を舞い、朦々と砂煙を巻き上げる。尻餅をついたまま、何が起きたのかも分からない様子の牛頭はいっそ哀れにも思われて、ゼキは皮肉げに口角を上げた。
(「『己が定め』なんざ、コインと一緒さ」)
 軽く弾いてやるだけで、いとも容易く裏返る。そんなことも知らずに吼え猛る獣達の姿は、滑稽と言ってもいいだろう。
「助けて――誰か!」
 剣戟の間をすり抜けて、助けを求める声がした。ぴくりと大きな狐耳をそばだてて、雪璃は家屋の間を突き進む。そして天幕の陰に一人の女を組み敷いたミノタウロスを見つけると、大きく砂を蹴り跳躍した。亜麻の衣を暴くのに夢中になった牛頭が、刺すような殺気に気づいた時にはもう遅い。
「お前の相手は、私」
 蹂躙なんて、させない。砂漠に巣食う毒虫達は、今宵この手で一掃してくれる。ふわり舞い上がる桜花にも似た蝶達は、払っても払っても消えることなく牛頭に群がり、その視界を妨げる。
 命ある限り奪うことしかできない生き物――それが亜人だ。逃せば遅かれ早かれどこか別の場所で狼藉を繰り返すと知っていて、逃がすわけにはいかない。ふらふらと当てどなく彷徨う亜人の進路には、小さなクダギツネが一匹回り込んだ。
「逃げようだなんて、思ってないよねえ?」
 そちらが無辜の人々から奪い、踏み躙るというのなら、同じ行いを返すだけ。がむしゃらに振り回す斧を神樹の枝で貫けば、鮮血色の旋風は一瞬、咲いて少女の頬を裂き、けれどすぐにも衰えた。底冷えのするような視線を向けて、雪璃は酷薄に告げる。
「此処で、一人残らず朽ち果てろ」
 武器も角も、蹄も腕も、これから朽ちる者には必要ない。力なき人々を狙ったその時に、彼等の運命は決したのだ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【活性治癒】LV1が発生!
【防衛ライン】LV1が発生!
【植物活性】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!

ラヴィデ・ローズ
性懲りもなくこいつらは

邪魔する、よ!
パラドクスは『レゼル(長剣)』にて
最高速の低空【飛翔】で急行
『sweetie』の結界(術)を展開しつつ
一般人と敵間に割り込むまたは
先手が取れれば、体当たるように敵へ斬ってかかり気を引きたい
以降は着地して戦う
一体ずつ確実にだ

居合わせた仲間と共に
民を背に庇う形で戦おう
人間の汚い面だけ煮詰めたかの亜人には
得物を握る手にも力が入る
けれども、冷静に
巻き上げるように、喰らいつくように
斧の叩きつけに叩きつけ返す花嵐
多少の傷を負おうと、弾いた先へ刃が届くといい
悪いねぇ
今回も無駄足ご愁傷様

間に合ったんだ
もう大丈夫と希望を見出してもらえるよう
退かず、笑みでも見せて勝たなきゃね


永辿・ヤコウ
風を切り疾く駆け
荒くれ者の眼前に銀針を閃かせて
人々を、集落を、背に守り立つ

眇める視線の先には
理性も感じぬけだものの姿

猛々しい?
雄々しい?
いいえ
何れの言葉も贈るに値しない程の
浅ましき所業

戦斧も血色の風も野望も
砂漠の夜の如き極寒へ閉じ込めて
粉々に砕いて
清めて差し上げる

ひたりと見据える眼差しは
氷襲の詠唱の如く冴え冴え
感情を向けるべき相手はお前達ではないのだと
冷えた双眸が雄弁に物語る

戦況把握に努め
共に駆ける仲間と声を掛け合い連携
死角を補い合いながら
ディフェンスで攻撃の手を増やしながら
冰の閃華を咲かせよう

汚らわしき思惑を砕き清める檻の中
夕景に煌く氷の粒の美しさを餞にあげるから
その目に焼き付けて逝くと良い


 夕陽に焼けた砂を蹴り往けば、吹き付ける風が生温い。ぐんぐんと近づく集落の中に逃げ惑う女性と牛頭の怪物を目に留めて、ラヴィデ・ローズ(la-tta-ta・g00694)は一段、翔けるスピードを上げた。手にした剣のまとう呪炎は、暮れゆく世界の中で煌々と焔の花を散らしている。
「邪魔する、よ!」
 砂に触れるか触れないかの高さを、放たれた矢の如く突き抜けて急旋回。ぶつかるように突き立てた刃が、ミノタウロスの背を貫いた。ブモッとくぐもった悲鳴が上がり、前のめりに膝をついた獣の腕から若い女性が這い出してくる。すかさずそこへ割り入って、永辿・ヤコウ(繕い屋・g04118)は言った。
「お怪我はありませんか」
「あ……いえ……」
 弱々しく首を横に振るだけで精一杯の彼女が、どんなに恐ろしい思いをしたかは計り知れない。へたり込んだ娘を庇うように銀色の針を差し出して、黒い狐は荒くれ者の群れを見る。眇めた菫の瞳は夕映えの中にあってなお冷たく、かつてない嫌悪の色を宿している。
「……けだものが」
 雄々しい? 否。
 猛々しい? ――否。
 理性の欠片も感じさせない獣欲の化身には、どんな言葉も贈るに値しない。何しろ相手は、人間の汚い部分を寄せて集めて煮詰めたような獣達だ。その行いを強いて表すとすれば、浅ましいと言うより他にはないだろう。
 のたうつ牛頭を冷ややかに一瞥して、ラヴィデは爪先を地面につけた。
「悪いけど、君らの相手はオレ達だよ」
 長剣を汚す血を払えば、刻々と沈みゆく宵の中で紫色の焔がちらりと舞う。集落を強襲したつもりが逆に強襲される形となり、獣達は明らかに動揺していた。それでもどうにか斧を手に体勢を立て直すのを見て、竜人は呆れた様子で片眉をひそめる。
「まったく、性懲りもなくこいつらは……ヤコウくん、いける?」
「勿論。そのためにここへ来たのですから」
 細く鋭利な針の先が、夕闇に銀色の弧を描く。たじろぐ牛頭を真正面から見据えるヤコウの眼差しは氷の如くに冴え冴えとして、冷たい。
「粉々に砕いて、清めて差し上げる」
 無骨な戦斧も、薄汚れたその野望も何もかも。
 ヒュ、と風を鳴かせた長針の先は砂漠の夜よりもなお冷たい極寒の氷気を呼び寄せる。触れるものすべてを切り裂く剃刀のような薄氷の華は、血色の旋風とぶつかり合って解けた。しかしその後には、ラヴィデがしっかりと詰めている。
「一体ずつ、確実に仕留めよう」
 混迷と狂騒は相手の土俵だ。呑まれるわけにはいかない。
 亜人の膂力は凄まじく、叩きつけるような斧の一撃を受け止めるだけで、剣を握る手はじんじんと痺れた。しかし負けじと力を込めて、ラヴィデはその刃を跳ねのける。返す手で水平に薙ぎ払えば、腹を裂かれた一体がもんどり打って疎らな草叢に倒れ込んだ。
「……お前達を滅ぼしたところで、終わるものではないのでしょうが」
 なおも立ち上がろうとするその眼前へ針の先を突きつけて、ヤコウは言った。その欲望を野放しにすれば、無辜の人々が命を脅かされ、消えない傷を負わされることは目に見えている。だからこそ。
「これはせめてもの餞です。……その目に焼き付けて、逝くと良い」
 紅い斜陽を背に舞い散る、透き通った六花の輝き。それを最後に、牛頭達の意識は凍りつく。ふうと吐き出した息と共に肩の力を抜いて、ラヴィデは言った。
「悪いねぇ。今回も、無駄足ご愁傷様」
 前のめりに倒れ込んだ獣達を取り巻いて、熱砂が踊る。口も聞けずにいる娘へ手を伸べて助け起こし、もう大丈夫とラヴィデは笑った。
「他の人達も、オレ達が助けてみせるよ」
 そう言って、復讐者達は新たな敵へと向き直る。もう心配は要らない間に合ったのだと胸を張れるように、災いの芽は一つ残らず摘み取らなければならないのだ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】LV1が発生!
【使い魔使役】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV2になった!

エイレーネ・エピケフィシア
史実のアラビア半島は、アレクサンドロス3世の領土になっていません
侵略が進んでいなかったのはそのせいでしょうか……?

疑問は尽きませんが、今は考えるよりも行動ですね
亜人どもから無辜の民を護るため──ひたすらに、前へ!

仲間がミノタウロスと戦うことで生じる敵の陣容の乱れを縫って、頭目の元まで攻め込みます
≪神護の長槍≫と≪神護の輝盾≫を手に、迷いなく突撃!
魔力塊は槍の薙ぎ払いと盾のガードで捌き、身に受けて足止めされる頻度を低くします

そして駆け抜ける勢いのまま接敵し、渾身の攻撃を
『敢然たる正義の猛撃』──盾で頭を殴ってから心臓を狙う槍の一突きと畳みかけ、命脈を絶ちます
あなたこそ、死すべき定めを知りなさい!


朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と

アラビア半島って確か長靴みたいな形した場所だっけ
言葉も、どういう文化かもわからないところだけれど
ひとつ確かにわかってることがあるのは助かるね
クロノヴェーダが悪さをして人々を困らせてる
なら勿論、ぶっ飛ばしにいこうか

集落にはまっすぐ急いで向かわないとね
牛頭が並ぶ中、わかりやすいゴブリン顔を見つけたら
レオと狙いを定めて距離を詰めよう
誰かを狙うなんてする前にこっちに注目させたいね

影に地雷を仕込むのだったかな
悪そうな顔で悪いことするよね
これ見よがしな影があるならエアライドで飛び越えて
そのまま懐まで詰めてぶん殴っちゃおう
レオを狙う暇なんて与えないようにね


朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と

長靴……?それはイタリアでは?
でもそうだね、初めて行く場所だね
だから私たちは何も分からないけれど
リオちゃんの言う通り!やるべきことは一つだけだものね

集落には急行しなくちゃね
いかにも悪者ですって顔のゴブリンのおじいちゃんだね
リオちゃんとタイミングを合わせてエアライドと飛翔を活用しつつ
最短かつ最適な経路でおじいちゃんへ距離を詰めるよ
敵は誰だか分からせてあげないとだもの

リオちゃんが敵に殴りかかるのに合わせて双翼魔弾を撃ち込むね
敵の攻撃で一瞬私の動きが止まったとしても
それはリオちゃんの攻撃チャンスにも繋がるかな

早く敵を片付けてこの辺りの人達も早く安心させてあげたいな


 アフリカ大陸とユーラシア大陸とをつなぐ、アラビア半島は紅海沿岸。燃える斜陽に赤らむ砂に長々と伸びた影を踏み、エイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)は呟くように口を開く。
「史実のアラビア半島は、アレクサンドロス三世の領土になっていません。侵略が進んでいなかったのはそのせいでしょうか……?」
「アラビア半島ってどこだっけ。確か長靴みたいな形した場所だっけ?」
「リオちゃん……それはイタリアでは……?」
 至って真顔で首を捻る朔・璃央(昊鏡・g00493)の言葉に、朔・麗央(瑞鏡・g01286)が口を挟む。いかにも知的そうな綺麗な顔をして、この兄は本当に時々とんでもないことを言う。
 遠慮がちな指摘に一瞬ハッとしつつ、しかし何事もなかったかのように璃央は続けた。
「言葉も、どういう文化かもわからないところだけれど、ひとつ確かに分かってることがあるのはいいね。……クロノヴェーダが悪さをして、人々を困らせてる」
「それはそう! その通り!」
 心なしか安堵の表情を見せて、麗央が頷く。これまで様々な改竄世界史を渡り歩いてきたが、この時代のこの場所を訪れるのは初めてのことだ。馴染みのあるはずもないが、それでも復讐者として、彼等のやるべきことは変わらない。
 双子の微笑ましいやりとりに釣られるようにくすりと笑み、エイレーネは言った。
「ギリシア生まれのわたしでも、この世界のすべてを知るわけではありません。あれこれ、疑問は尽きませんが……今はお二人の仰る通り。考えるよりも、行動すべき時ですね」
「お話が早くて助かります」
 時を超え、空を超え、この地を訪れた目的はただ一つ。無辜の人々に迫る魔の手を祓うこと。胸の前に掲げた右手をぱきりと鳴らし、澄ました顔で璃央は応じた。
「では早速、ぶっ飛ばしにいきましょう」
 燃えるような黄昏から夜へ、移ろう空に枝を広げた鈍色の煙の根源を断つがため。砂も風も突き抜けて、復讐者達は前進する。既に集落のそちこちでは戦端が開き、先行した仲間達が屈強なミノタウロス達と刃を交えているようだ。混迷を極める戦場で、彼等が狙い定めるのは――。
「! いた! あそこ!」
 び、と突きつけた麗央の指先を視線で追えば、人と怪物の入り乱れる現状を一人、遠巻きに眺める小さな影が目についた。杖を手にした魔導士風のゴブリンは、にやけた顔に黄ばんだ歯を覗かせながら集落の様子を見渡している。
「いかにも悪者ですって顔のおじいちゃんだね」
「本当に。わかりやすいゴブリン顔で手間が省けるよ」
 人々を襲うミノタウロス達が群れの手足なら、あのゴブリンは頭だ。視線を交わしてこくりと頷き合い、双子は一気に飛翔のスピードを上げる。家屋と家屋の間の狭い隙間を抜けて、最短距離で敵の元へ――宙をひと蹴りゴブリンの後背へと回り込んで、璃央は拳を振り翳した。
「どこを見ているので?」
 問う声は明らかな軽蔑を孕んで、氷のように冷ややかに響く。思わぬ方向から掛かる声に驚いたのか、ゴブリンの老爺は弾かれたようにローブの袖を翻し、昏い灯りを点した杖を掲げた。
「な、なんじゃ貴様らは! まさか――」
 ディアボロス、と口にした瞬間、老爺の顔から笑みが消えた。間を置かず突き入れられる璃央の拳撃は波状の衝撃を生み、小柄なゴブリンを弾き飛ばす。宙を舞うその矮小な躯体を目で追って、麗央は黒い悪魔の翼を広げた。
「敵が誰だか、分からせてあげなくっちゃね!」
 翼をひと打ち、炸裂する魔弾に弾かれて、ゴブリンメイジはさらに後退する。そこへ畳み掛けるのは、槍と盾とで武装した軍略の女神・アテーナー――ではなく、銀髪に猫の尾をなびかせたエイレーネだ。
「蹂躙されて然るべき者など、この世のどこにもありません。あなたこそ、死すべき定めを知りなさい!」
 毅然と、そして猛然と振るうのは、罪なき人々に害為す者を叩き伏せる義憤の盾。薙ぎ払うその縁はゴブリンの額を捉え、力の限りに弾き飛ばす。しかし続く第二撃、心臓を狙って突き下ろさんとした槍は老爺の胸に触れる間際でぴたりと制止した。
「!?」
 それはほんの一瞬の空白。だが狡猾なゴブリンが、復讐者達の間合いから逃げ出すのには十分だった。立て続けに振るう杖で鳥の形の魔力塊を撃ち出しながら転がるように距離を取り、老爺はぜえはあと荒い息をつく。
「いきなりやってくれるわい……!」
「お褒めに与り、どうも。何も嬉しくないですけど」
 いともすげなく応じて、璃央はふんと鼻を鳴らした。ランプの火が燃え広がったのだろう、壊れた天幕を焦がす炎は薄闇の中に揺らめいて、砂地に無限の影を揺らしている。
(「――影に地雷を仕込むのだったかな」)
 まったく悪そうな顔に違わず、分かりやすい悪党だ。しかし、だとすれば――この環境で不用意に動けば、厄介なことになるかもしれない。
 きゃ、と短い悲鳴に顔を上げれば、撃ち出される魔力の翼に触れて麗央が硬直するのが見えた。腹の底からどろどろとした感情が込み上げるのを感じながら、少年はギロリと老爺を睨みつける。
「レオに手を出したら、その頭ブチ抜きますよ」
「ほほ。やれるものならやってみるがよいわ!」
 薄ら笑いを浮かべるゴブリンは、あくまで強気の姿勢を崩さない。恐怖に惑う人々に安寧をもたらすには可及的速やかに、彼等を排除するより他になさそうだ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【悲劇感知】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
【飛翔】がLV2になった!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【ガードアップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!

鐘堂・棕櫚
【KB】
折角の牛さん討伐だというのに
あんまり美味しくなさそうなのは至極残念ですね
…骰さん、せめて今日は帰りに焼き肉でも行きません?
なら牛さん沢山倒せた方が奢って貰えるって事で!

フィジカルに差がありすぎそうなんで
ガチンコではやりたくない相手
極力建物か何かの物陰を探して
バールで不意打ちができないかを試してみましょう
せめて骰さんが追撃できる隙でも作りたいところです
敵からの攻撃は真っ向受け止めず
受け流したりしてダメージを減らせるよう努めます

日々を真っ当に生きている人々を狙うのは許されざる行為…
なんて言ったところで、牛の耳に念仏でしょうねえ
来世は優しい酪農家さんの所にでも生まれられるといいですね


鬼歯・骰
【KB】
…旨そうだったら食う気なのか、食材じゃねぇんだぞ
てかなんだツリガネ腹減ってんのか、それとも焼肉奢ってくれんの?
まぁ勝負事が加わるならやる気もより出るな
それじゃさっさと不味そうな肉は解体して捨てちまおう

見るからに馬鹿力そうな牛どもだが
冷静さはあんまりなさそうなツラしてんな
斧の一撃はなるべく避け、直後の隙を狙って攻撃したいところ
ツリガネの攻撃にタイミング合わせて踏み込み
鬼の腕で思い切りぶん殴って怪力勝負だ
ツリガネ殴ろうとしてるのがいれば、そいつの横っ面も狙っていこう

野性味の溢れる所業が過ぎんだよ
女口説くならもうちょっと上手くなってから出直しな
まぁどのみち、今生じゃ無理な話だろうが


 夕映えに黒い影と化した集落が近付くにつれ、燻る木と油の焦げたような臭気が強くなる。柔らかな砂を蹴散らして駆けながら、鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)はうーんと首を捻った。いつにない憂いを帯びたその表情に気が付いて、鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)は訝るように眉を寄せる。
「どうした。何か、気になることでもあんのか」
「ええ、まあ。せっかくの牛さん討伐だというのに、あんまり美味しくなさそうなのは至極残念だなあ……と思いまして」
「一瞬でも心配して損したわ」
 旨そうだったら食う気なのか、とひと睨みしてやれば、あははと軽やかに笑って棕櫚は応じた。
「ねえ骰さん、せめて今日は帰りに焼き肉でも行きません?」
「いや、まず否定しろよ――っつかなんだアンタ、腹減ってんのか? それとも奢ってくれんの?」
 訳もなくそんな美味しい話があるはずもない、と思いつつ、一応訊くだけは訊いてみる。するといかにも良いことを思いついた風に眼鏡の奥の瞳を輝かせ、悪友は言った。
「なら、こういうのはどうでしょう。牛さん沢山倒せた方が奢って貰える、ってことで!」
「ゲーム感覚か。……まぁ、勝負事が加わるなら、やる気も余計に出るってもんだが」
 世界のすべてが変わった『あの日』から、もうすぐ二年。抗い、戦い続ける中で侵略者達の悪行は嫌というほど目にしてきたが、中でもここはタチが悪い。胸の悪くなるような状況に呑まれないようにするためには、多少の遊び心は有効なのかもしれない。
 右手の鋸刃を無意識に握り込んで、骰は言った。
「それじゃさっさと不味そうな肉は解体して、捨てちまおう」
 絹を裂くような叫び声が、夕闇を引き裂き響き渡った。合わせた視線で頷き合って、復讐者達は駆ける足を速める。布を張った家屋の間を縫っていくと、湧き水を縁取る草の茂みに一体のミノタウロスが屈み込み、若い女性を組み敷いているのが見えた。
「見るからに馬鹿力そうな牛どもだな」
「ガチンコではやりたくない相手ですね。……でも」
 筋骨隆々とした大柄な亜人はいかにも屈強で、正面切ってやり合いたい相手ではない。だが、状況が切迫しているのも事実だ。目の前の彼女を無事に救い出すためには、もはや一刻の猶予もない。
「骰さん」
「ああ」
 お互いの意思を汲み取るのに、然したる言葉は必要ない。阿吽の呼吸で散開すると、棕櫚は一旦天幕の陰に身を潜め、白いバールを握り締める。幸か不幸かミノタウロスは娘の衣を剥ぐのに夢中で、二人の存在には気づいていない。仕掛けるならば、今だ。
 音もなく、声もなく。気配を殺して敵の後背へ忍び寄り、棕櫚は二本角の頭を目がけて白いバールを振り下ろす。無防備な後頭部を力の限り殴打されたミノタウロスはぐらぐらと身体を揺らしながら、どうにか手斧を掴んだが――。
「野性味が溢れ過ぎてんだよ、お前らは」
 何が起きたのかも分からぬまま、振り下ろした斧が革靴の足元に沈み込む。前のめりになった牛の頭を真下に見て、骰は鬼の拳を振り上げた。
「女口説くなら、もうちょっと上手くなってから出直しな」
 真っ直ぐに落とした拳が、ミノタウロスの脳を揺らした。頭から砂地に突っ込んで、獣は程なく動きを止める。汚い物にでも触れたというように手を払い、侮蔑を込めて鬼人は言った。
「まぁどのみち、今生じゃ無理な話だろうが」
 無造作に脱いだスーツの上着を水辺にへたり込んだ娘へ掛けてやり、骰はネクタイの襟元を緩める。お見事、と賛辞を贈って獣の骸を一瞥し、棕櫚は続けた。
「日々を真っ当に生きている人々を狙うのは、許されざる行為……なんて言ったところで、牛の耳に念仏でしょうねえ。来世は優しい酪農家さんのところにでも生まれられるといいですね」
 冗談めかした軽口は、皮肉か――それとも。
 慈悲深いなと呟く骰へいつもの笑顔を向けて、棕櫚はバールを握り直した。狩るべき獣は未だ数多く、休んでいる暇はなさそうだ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【モブオーラ】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV3になった!

マティアス・シュトローマー
ラト(g00020)と

どこまでも続く砂漠に砂を朱く染める夕焼け
景色はエジプトにそっくりなのに敵は大違い
ここまで分かりやすい悪だと戦い易くていいね

村人を狙う敵を足蹴に高く跳躍。さらに【エアライド】で宙を蹴り、衝撃波を伴う一撃をお見舞いするよ
狙うのは斧を持った手元か急所の鳩尾。一瞬でもこちらが態勢を整える為の時間を稼げたら

力任せに見えてもそのスピードは侮れない
まあまあ、そんなに怒らなくても…
俺と遊ぶのは不満?
反撃は斧を握る手元を狙った銃撃でその軌道を逸らすか【エアライド】で距離を取り、致命傷だけは負わないようにしたい
ラトへの攻撃はディフェンスを
でも修道女様には近付かないでね

ああ。それじゃもう一度!


ラト・ラ
マティアス(g00097)と

許せません
平穏な暮らしを、ささやかな幸せを
無惨に壊すだなんて
敵を冷たい眼差しで睨みつける
あなたたちに大切なものはないのかしら
――じゃあ、自分の“命”は?

呼吸と変わらず息を吸い
次の一息で大きな炎を生む
砂漠の砂より…いいえ、太陽より熱く
あなたちを燃やし尽くして灰にする
隙を狙い足下から
火がつけば一気に燃え上がらせる

こちらへ距離を詰めようとするなら
翼をはためかせ風を送ることで炎を煽る
大丈夫、近付かせません――
…なんて言っても
しっかり彼に攻撃を止めてもらう形に
そこで冷静さを取り戻した
ごめんなさい、
昔の記憶と重なったような気がして

気を取り直し
次こそしっかり連携で繋いだ攻撃を


「いや――来ないで! 誰か!」
 剣戟と怒号の飛び交う夕映えの砂漠に、助けを求める女の声が響き渡る。踏む砂は柔く足元は決していいとは言えないが、だからといって悠長にしてはいられない。逃げる女を下卑たにやけ面で追い掛ける牛頭の背を視界に捉えて、マティアス・シュトローマー(Trickster・g00097)は思いきり地を蹴り飛び出した。
「グオッ!?」
 まずは敵の背中で一歩。さらに宙を蹴りもう一歩。高々と跳躍した茜空の中で、少年は振り上げた右手に鋼鉄の籠手をまとわせる。せーの、と気合を入れて突き下ろせば、放射状に迸る衝撃波に当てられて牛の巨体が宙を舞う。
 立ち竦む女性をすかさず背に庇って、ラト・ラ(*☽・g00020)は言った。
「今のうちに、早く」
 すいと流した視線で示す先では、仲間の復讐者達が村人達を集めて守っている。彼女の意図を察したのだろう、慌てふためきながらも逃げていく女性を見送ってから、ラトは憤慨したように口にした。
「許せません。平穏な暮らしを、ささやかな幸せを……こんな風に」
 人々を脅かしたことだけではない。崩れた日干し煉瓦の家屋と燃える天幕を見れば、彼等が欲望のまま無残にも踏み躙ったものの大きさが窺える。
 ほんとに、と手短に応じて猫のような瞳を細め、マティアスは地平線に半ば沈みかけた夕陽を仰いだ。
「ここまで分かりやすい悪だと、戦い易くていいね」
 どこまでも続く朱い砂漠を砂煙が渡りゆく夕映えは、いつかエジプトで見た景色によく似ていた。だが、敵の性質は大違いだ――もっともいずれもクロノヴェーダ、どちらが良いも悪いもないのだろうけれど、亜人達のやり口に嫌悪が募るのもまた致し方のないところである。
 斧を手に起き上がった牛頭が、ブルブルと首を振って再びこちらへ向き直った。醜悪としか呼べないその姿を氷の眼差しで睨みつけ、ラトは問う。
「あなたたちに大切なものはないのかしら。それを奪われる気分を、想像したことはある? ……もし、ないと言うのなら」
 自分の『命』で、想像してご覧なさい。
 冷ややかに告げて、竜の娘は平素と変わらぬ様子で瞼を伏せ、すうと息を吸い込んだ。而して砂漠の熱風は、竜の肺腑で燃え盛る焔へと変わる。それは熱砂よりも、斜陽よりもなお熱く、けだもの達を灰燼に帰す浄化の焔だ。
「易々とは近付かせませんよ……っ!」
 吹き付けるブレスに巻かれて、ミノタウロスはわずかにたじろぐ素振りを見せた。しかし次の瞬間、獣は全身を発条のように収縮させ、高々と跳躍する。思わぬ動きにはっと息を詰めたラトであったが――。
「おっと。修道女様には近付かないでね」
 火炎の帯を飛び越え迫る獣の進路に割り込んで、マティアスは言った。どけとばかりに唸りを上げるミノタウロスの動きにはこれといった考えもなければ技巧の一つも見当たらないが、その力とスピードだけは本物だ。まあまあとおどけてみせながらも見据える瞳は真剣そのもの、口許だけを笑みの形にして少年は続ける。
「俺と遊ぶのは不満?」
 縦横無尽に薙ぎ、振るい、叩きつける斧の連撃は、極めて重い。しかしマティアスは退くことなく、鉄の籠手を盾の代わりに敵の行く手を阻み続ける。彼が今、何を守ろうとしているのか――幼さの抜けきらぬ背中を見つめて、ラトは唇を引き結んだ。
「ごめんなさい。わたし……冷静ではありませんでしたね」
 わけもなくただ奪われ、傷つけられようとしている人々の姿に、いつかの記憶が重なったような気がした。それゆえに一人先走ったのだと、今ならば理解できる。
 しかしマティアスはあっけらかんとして、なんのこと、と嘯いた。
「それより行くよ、もう一度!」
「ええ。次こそは、合わせます」
 どんな敵が相手でも、今は乗り越えられると識っている。独り抗い、潰えたかつての自分とは違う――今の彼らはこの世界で、隣り合う仲間を得たのだから。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【エアライド】がLV2になった!
【隔離眼】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!
【命中アップ】がLV3になった!

李・風美
連携アドリブは歓迎

どの陣営も生存競争。作戦行動自体は意義有ると察するアルが。
おどれらの都合を“定め”ちゅうんは納得せぇへんで!

パラドクス【袖舞鞭闘】を使用。【避難勧告】で安全確保。
自身の袖を伸縮自在の鞭として
集団を薙ぎ払い、巻きつけて視界を奪ったり、動きを封じたり。
攻撃と妨害を両立して立ち回ります。

暴れ牛には存分に鞭を食らわしたる!


ナディア・ベズヴィルド
未だ亜人の手が及んでいないオアシスがある事に安堵しました
急ぎ現場に駆けつけて、オアシスの民を蹂躙させぬと敵の前に立ち塞がろう
ひしめき合う様にやって来る脳筋牛頭共を駆逐してやるわ

弱者から奪い、蹂躙するしか脳の無い亜人どもめ
やる事一つ一つに反吐が出る
貴様らの様な輩は骨の欠片すら残さず滅してやろうぞ
オアシスの民に指一本、髪の毛一本すらも触れさせはせぬ!

同行する仲間と連携をとれるように動こう
【泥濘の地】で奴らの動きを鈍らせた所をPDで攻撃を
弱った個体から狙いを定めて確実に数を減らしていくわ

地に沈め、愚か者ども
闇の底、冥府に堕ちるがいい

反撃には魔力障壁を展開しダメージの軽減を図る


荒田・誠司
アドリブなど歓迎

【心情】
さて、大掃除といきましょうか
ただただ突っ込むだけの力押しの戦いだけじゃないって教えてやるよ
前の敵ばかり見ていると足元を掬われるぞ

【行動】
パラドクス通信を使い仲間と積極的に連携していく

まずはパラドクスを使い麻痺毒の鱗粉を撒く蝶型の機械を製作
盾のフェイク・プリドゥエンの内側に隠してから敵を挑発
俺に攻撃を向けさせたら盾や電光警棒で敵の攻撃を防ぐ
俺が敵の気を引き囮になっている間に蝶型の機械を遠隔操作して
敵の頭上に向かわせ鱗粉を撒き攻撃する

必要なら臨機応変に対処する


「ディアボロスだ! ディアボロスがいるぞ!」
「どうして奴らがこんなところに!?」
 悲鳴と苦悶の呻き声が、いつしか怒号と剣戟に変わっていく。亜人達の戸惑う声が喧騒の中に入り混じり、暴虐と蹂躙の渦中にあった集落の空気には明らかな変化が生じ始めていた。
「どの陣営も生存競争。作戦行動自体は意義有ると察するアルが――」
 ヒュン、と風を切り唸るのは祥雲漂う紅い袖。分厚い瓶底眼鏡をキラリと光らせて、李・風美(胡乱でチャイナな瓶底眼鏡・g00381)は朗々と声を張る。
「おどれらの都合を『定め』ちゅうんは納得せぇへんで! かくなる上はこの世にも珍しき『袖の舞』! ご覧アルヨロシー!」
「うわあ、なんだあれ!」
「暴れ牛には存分に鞭を食らわしたる! 逃がさへんでー!」
 鞭のようにしなる袖と風美本人の勢いに気圧されて、後退する亜人。追う風美。一見コメディ映画の一幕のようにさえ映る光景を見送って、ナディア・ベズヴィルド(黄昏のグランデヴィナ・g00246)はぽつりと口を開いた。
「未だ亜人の手が及んでいないオアシスがあるとは、驚きでした。といっても……今となっては、安心とは程遠い有り様ですが」
 アラビア半島には亜人の手が伸びていないと聞いた時は驚いたが、同時にささやかな安堵もあった。郷里は違えど、ナディアもまた砂の大地に生を受けた者の一人だ。ここもまた一つの改竄世界史の中とはいえ、砂漠に暮らす人々の営みがそこで連綿と紡がれているのだと思うと胸が躍った。それだのに――まったくこの脳筋の牛頭どもときたら。
 隠す気もなく憤慨して、ナディアは手にした杖を西日に灼けた砂へと突き立てる。逃げても倒れても未だ数多いミノタウロス達をじろりと睨んで、術師は言った。
「弱者から奪い、蹂躙するしか脳の無い亜人どもめ……やること一つ一つに反吐が出る」
「同感だ。まあ、まずは大掃除といこうか」
 どれほどの嫌悪を向けられても、彼等はきっと何を感じることもないのだろう。獣欲に塗れた亜人達と、分かり合えることなど何もない。ゆえにこそ――排除するのみ。
 身の丈ほどはあろうかという黒い盾を身体の前に構えて、荒田・誠司(雑草・g00115)は言った。
「ただただ突っ込むだけの力押しだけが戦いじゃないって、教えてやるよ」
 背中を見せたところで彼等に逃がすつもりがないことは、さしもの牛頭達にも伝わっているのだろう。敢えて挑発的に告げれば、斧を握ったミノタウロスが数体、額に青筋を浮かせていきり立つ。鬨の声を上げて迫り来る姿は正に猪突猛進の体現であり、誠司はくつりと喉を鳴らした。
「前の敵ばかり見ていると足元を掬われるぞ」
 掲げた盾の裏側から、手を添え立たせるのは機械仕掛けの毒の蝶。闇雲に、力任せに振るう斧の連撃は盾を持つ手を痺れさせたが、そこはお互い様だろう。猛攻を耐え抜けば操る蝶は屈強な牛頭を取り巻いて、烈しい電撃を奔らせる。ギャッと汚らしい悲鳴を上げて悶える怪物達を前に、ナディアは厳しい口調で告げた。
「貴様らの様な輩は骨の欠片すら残さず滅してやろうぞ。これ以上は、オアシスの民に指一本、髪の毛一本すらも触れさせはせぬ!」
「オノレ……女……!」
 不愉快極まりないことではあるが、亜人達にとっての女とは、嬲り、慰み者にするためだけに存在する生き物なのだ。そんな『女』に見下されるのは、彼等にしてみれば屈辱の極みであろう。であればこそ――ここへ来た甲斐がある、というもの。
 脇目も振らず殺到するミノタウロス達を前に堂々と立ち、ナディアは言った。
「地に沈め、愚か者ども」
 砂の大地が、ぐにゃりと歪んだ。牛頭の無骨な手は滑らかな肌に届く前に、均衡を崩して宙を掻く。その足元ではまるで蟻地獄の如く、砂が渦を巻いていた。
「喰らえ、『アルバリ』」
 呼ぶ声に応えて、人の身の丈ほどはあろうかという巨大な爪が砂の大地を突き破る。悲鳴を上げることはおろか、何が起きたのかを把握する暇もなく、二頭の牛頭が爪持つ手に連れられて地の底へと呑まれていった。その手の斧をどんなに振り回そうと、巻き起こる血風はもう、彼女には届かない。
「闇の底、冥府に堕ちるがいい。そして……そこで見ていなさい」
 自らの行いが招いた結末を。亜人達の末路を。一条の光も届かぬ死の淵で見届けること――それが彼等にとっての罰なれば。
 ばくんと鯨が口を閉じるように、巨大な爪は牛頭達を完全に飲み込み、消えた。跡を見つめる女の宵色の衣を舞い上げて、一陣の風が赤茶けた砂を運んでいく。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【避難勧告】LV1が発生!
【泥濘の地】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV2になった!
【命中アップ】がLV4になった!

ノスリ・アスターゼイン
魔力塊に口笛
浮かべる笑みは不敵に楽し気

鳥対決と行こうじゃないの

陽を背に負い、影を纏い
地を擦るかに翔けるのも得手と懐に踏み入って
眼前で刃を薙ぐ、突く、斬り上げる

敵技からも視線は外さず
返すナイフと魄翼でダメージ軽減

いやぁね
封じられた一瞬が命取り、と言いたいところだろうけれど
生憎此方は独りじゃない

受けた攻撃の隙も仲間の攻撃に繋げるべく託し
また
仲間が繋いでくれた連携を絶やすことなく刃を振るう
積極的なディフェンスで反撃のチャンスも掴むよ

あんまり美味そうじゃないけども
熱砂と夕陽で炙れば
香ばしくなるかなぁ
なんて

上げた口角に覗く牙
翻すナイフに弾ける陽光
喰っても喰っても満ちない飢えを
あんたの血肉で慰めてくれる?


咲樂・祇伐
🌸樂祇

熱砂の舞う……此処がイスカンダル
勿論です
お兄様
砂まみれになるのも結構
日々を生きる人々を、彼らの尊き日々を蹂躙などさせません
そんなの誰も望んでいない

行きましょう、お兄様!
熱砂を桜と変えて差し上げましょうか
どんな強敵でも皆で協力すれば超えられるわ

魔力には魔力を
全力魔法灯して放つは桜蜜ノ夢幻
お兄様の身を隠し、精神攻撃…思考拐かす幻惑をみせる
あなたが穿つは虚像の私達だと惑わせて
敵の動きや様子をよく観察し
返る攻撃は風魔法にのせた桜蜜ノ夢幻で吹き飛ばし和らげる
絶対、絶対っ負けないわ!
連携を繋いで庇いあい、死角を無くして
背を守るが如くフォローも然りと!

美しい逢魔が時に映えるよう
綺麗に咲かせてあげるわ


咲樂・神樂
⚰️樂祇

砂埃塗れになっちゃいそうだわ
祇伐、気をつけるのよ
でもそれ以上に……こんなに醜く、儚くも尊き生命を蹂躙する、だなんて──反吐が出るでしょう?

ええ!祇伐!
逢魔が時の頃は特に心地がいい
さて、湧いて出た魔のもの達を屠ろうか
……何でもない日々の大切さは、私もしれた事だから

美しい桜花が咲くのに笑って、光の刃を抜き放つ
──窕
神速反応の力をかりダッシュで踏み込み、薙ぎ払うが如く斬撃を放つ
地面の影が地雷だ、なんて面倒ね
爆発には窕の斬撃に結界を重ねて備え耐え
返しの刃で放つは光の衝撃波

臨機応変に立ち振る舞い駆け抜けて
フォローや庇うのも積極的に
…私が誰かを守ると祇伐が喜ぶから

宵の帳が下りる前に
砂塵に帰りなさい


渦中・百
基本的に口元は笑みの形

大切な家族と営む日常は愛しいもの
世界は違えど、幸せな日々が続いて欲しいと願う気持ちは同じでしょう
私はかつての日常を失いましたが…だからこそ
…許せませんねぇ?

村人を守る為にも敵を引き付けておかなくては
さあ、この地を踏み荒さんとする貴方がたに、悪しき侵略者の定めを知らしめてさしあげます

パラドクスで狙うは敵の喉元、あるいは目を
めいじが何か分かりませんが、見たところ術者の様子
ならば術を唱える喉、対象を確認する視界を奪えば優位に立てるかと
本音を言うならば首を斬りたいところですが

黄昏時を逢魔が時と申します
私にとっては貴方が「魔」ですが…
貴方から見たら、私の方が「魔」かもしれませんね?


 紫に燃える魔炎が、鳥を象り宙を裂く。小鬼の杖から飛び出したその暗い輝きを眼で追って、ノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)は不敵な笑みを浮かべた。
「はは――いいね」
 鳥対決といこうじゃないのと嘯いて、青年は手にしたナイフを逆手に握り直す。広げた翼を羽ばたかせ、戯れるように炎の小鳥と追いかけっこを演じながら、潜り込むのは敵の懐――地面すれすれを這うように翔んで肉薄し、勢いのまま垂直に転じれば、鈍く光るその刃は小鬼の膚をざっくりと斬り裂いた。
「ぐぬ……おのれディアボロスめが……!」
 戦いの火蓋が切って落とされ、わずか数分。亜人達の足並みは大いに乱れていた。お世辞にも見栄えのするとは言えないギザ歯を悔しそうに軋らせて、ゴブリンメイジは小さな足を踏み鳴らす。
「お前達、何をしておる! もっときびきび戦わんか!」
 集落のそちらこちらには、戦いに敗れたミノタウロス達の骸が転がっていた。人々を蹂躙するどころかこのままでは自らの命すら危ういということにようやく思い至ったのか、老獪な小鬼の横顔には俄かに焦りの色が滲み出す。
 舌打ち一つ踵を返せば、その背中を鈴音の声が呼び止めた。
「そんなに慌てて、どちらへ行かれるのですか?」
 ぎくりとローブの肩を跳ね上げて、老爺は背後を振り返る。視線の先には、浅葱の袴に両手を重ねて楚々と立つ渦中・百(猫に九生・g08399)の姿があった。
「皆さんの邪魔をされては困ります。……大切な家族と営む日常は愛しいもの」
 銀雪の長い髪は落ちゆく太陽の残照の中、茜色に揺らめいて見える。ぽつぽつと語る口許は柔らかな弧を描きながら、蒼く透き通る氷のようなその瞳はしかし、笑ってはいない。
「世界は違えど、幸せな日々が続いて欲しいと願う気持ちは誰しも同じことでしょう。私はかつての日常を失いましたが……」
 そう言って一度言葉を切り、百はしばし黙してから続けた。
「だからこそ、……許せませんねぇ?」
 己が『定め』を知るべきは、この村の人々ではない。この地を踏み荒さんとする、悪しき侵略者達の方だ。
 細くしなやかな指先に魔晶剣を握り締め、佳人は一歩、二歩と前へ出る。劣勢のミノタウロス達はもはや頼りにはならない――やるしかないと悟ってか、老いたゴブリンは長い杖を振り翳す。
(「めいじが何か分かりませんが、……見たところ術者でしょうか? ……であれば」)
 誰も幻惑できぬよう、悪しき言葉を紡げぬように、その目も喉も潰してくれる。ふ、と鋭い呼吸と共に振るう百の剣は、おっとりとした見た目からは思いもつかぬほどに疾い。
「くっ!」
 しかし相手もみすみすやられたくはないのだろう。そのまま引っ繰り返りそうなほどに上体を逸らして刃の直撃をかわすと、ゴブリンは一目散に逃げ出した。この場を逃れさえすれば、襲う村を変え、配下を補充して、やり直すことは十分にできる――そう思ったのに違いない。だがそんな悪足掻きを、復讐者達が許すはずもなかった。
「行きましょう、お兄様!」
「ええ、祇伐! 儚くも尊き生命を蹂躙するだなんて、反吐が出るわ!」
 遁走するゴブリンの行く手を阻んで並び立つ影は、咲樂・神樂(離一匁・g03059)と咲樂・祇伐(花祇ノ櫻禍・g00791)の兄妹が二人。赤鞘の刀の鯉口を切って、神樂は挑むような笑みを浮かべた。
「逢魔が時に湧いて出た、魔のもの達を屠りましょう」
 昼と夜、光と影の混じり合う残照の時間。未だぬるく照りつける陽射しと冷えゆく風が心地良い。そこをどけ、と喚く小鬼を睨みつけ、祇伐は毅然として告げる。
「いいえ、どきません――日々を生きる人々を、蹂躙などさせません。だってそんなの、誰も望んでいないから!」
 どんな敵が相手でも、皆とならば超えられる。事実、今日まで何度も超えてきたのだ。
 だから退かない。畏れもしない。守るべき命と暮らしがそこにある限り、彼女達は立ち向かう。花咲く袖を胸の前に差し出して、娘は言った。
「熱砂を桜と変えて差し上げましょう」
 風に吹き散る砂の一粒一粒が、降り頻る桜の花に変わって見る者の視界を覆っていく。強行突破は不可と見るや、窮地の小鬼は長い杖を振り翳した。ままよと放出する魔力は連鎖的な爆発を引き起こし、夕闇を飾る花達を吹き飛ばしたが――。
(「絶対、絶対っ、負けないわ!」)
 閃光に触れた肌が灼けるように痛んでも、怯みはしない。全身に巡る魔力を集めて、祇伐は夢幻の花を咲かせ続ける。そして互いの魔力が尽きんとしたその刹那、散りゆく白い花群から神樂の姿が飛び出した。
「綺麗な花を咲かせるでしょ。あたしの自慢の妹なの」
 ふ、と紅い唇を笑みの形にして、神樂は光の刃を抜き放つ。彼にとって彼女と過ごした日々がそうであったように、何でもない日々こそは人生において時に大きな意味を持ち、生きる力を与えてくれる。そう、痛いほどに知っているから――これ以上、奪わせはしない。
「宵の帳が下りる前に、砂塵に帰りなさい」
 力強い踏み込みから放つ刃は爆ぜる影を突き破り、老爺の身体を切り刻む。情けのない悲鳴を上げて逃げ出した小鬼には、もはや一分の余裕も残されてはいなかった。傷ついた手足を引きずり退路を探すその背後に舞い下りるのは、悠然と翼を広げた猛禽の影――ノスリだ。
「そろそろ観念した方がいいんじゃない?」
 突き刺すような西日の中で琥珀の魄翼を輝かせ、男はからかうように言った。もはや多勢に無勢、意気軒高に斧を振り上げていたミノタウロス達も、今や誰一人として残ってはいない。点々と黒ずんだ血の痕を砂の大地に残しながら、しかし小鬼は力尽き、その場にがくりと膝を折った。
「これで終わりと、思うな……小童どもが」
 悔しまぎれに発した言葉に、青年の唇が歪な笑みを描く。上げた口角にやけに白い牙を覗かせて、ノスリは言った。
「さあて、どうしようか。あんまり美味そうじゃないけども、熱砂と夕陽で炙れば香ばしくなるかなぁ? ――なんて」
 終わりだなどと、思うつもりは更々ない。今日この村を守ったとても、懲りる亜人達ではないだろう。だが彼らが蹂躙を繰り返すというのなら、何度でもそれを阻むだけだ。
 右手に持ち替えた一振りのナイフは、掲げれば赤光を受けてぎらりと苛烈な輝きを放った。
「喰っても喰っても、満ちないんだ。……あんたの血肉で、慰めてくれる?」
 突き下ろした刃が小鬼の首筋を破り、抜けば濁った血が一筋、飛沫を上げた。それが最期だった。
 崩れ朽ち往く亜人の骸を見下ろして、百が粛々と口を開いた。
「わたくし達の言葉では、黄昏時を逢魔が時と申します。私にとっては貴方が『魔』ですが……貴方から見たら、私達の方が『魔』だったのかもしれませんね?」
 紡ぐ言葉の終わりが、死にゆく亜人の耳に届いたかは分からない。ほうと深く息をついて、百は知らず強張っていた肩を下ろした。
「……皆さん、お疲れ様でした」
 戦いは終わった――復讐者達の勝利だ。もっとも無事に事が済んだとはいえ、斯様に危険な場所へ一人赴いたなどということが心配性の弟に知れたら、叱られてしまうかもしれないけれど。
 お疲れ様、と努めて陽気に労い返して、神樂は刀を鞘に納めるとぐっと大きく伸びをした。
「それにしてもさすが砂漠、右も左も砂だらけね。砂埃塗れになっちゃったわ……祇伐、大丈夫だった?」
「はい、お兄様。それに……砂まみれだって、いいんです」
 集落の後方をちらりと振り返って、祇伐はやんわりと頬を緩めた。涙を流して家族や友人の無事を喜ぶ人々の姿を見れば、温かい想いが溢れてくる。罪なき人々の命と、暮らしと、尊厳を守ることができたのだ――胸を満たす誇らしさは、忘れ得ぬ勲章となることだろう。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【活性治癒】がLV2になった!
【現の夢】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
効果2【ドレイン】がLV2になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【命中アップ】がLV5(最大)になった!

フルルズン・イスルーン
壊れたのどこだい? 直しにきたよー。
おや、聞いてた襲撃の規模よりだいぶ被害少な目な感じ?
みんな頑張ったんだねぇ。

じゃ、【建物復元】にパック・ゴーレムくんカモン!

修理用の子ゴーレムくんワサワサ増産してねー。
んーむ、オアシスの集落と聞くとすでに懐かしさすらある。
サフィーナミウトラップ用防衛拠点作ったり伝承の遺物直しまくってたものなのだ。

ふむ、エジプトとはちょっと文化違う風味かな? 地盤も少し違うだろうし。
村人はどこだい?
ちょいと借りてどこが壊れてるかとか聞きながら回りたいね。
一応1日制限に引っかからないよう手早く行かないとだ。
追加で効果来るなら心配はいらないんだけどね。


エイレーネ・エピケフィシア
無事に亜人どもを滅ぼすことが出来ましたが、まだ終わりではありません
この調子で……苦境の人々を救うために、もう一仕事と参りましょう

集落に入ったら、まずは人々に危機が去ったことを伝えましょう
わたし達は亜人どもから平和を守る、冒険者の集いです
此度攻め寄せてきた輩は全て討ち果たしましたが、皆様の生活を立て直せなければ意味はありません
どうか、我々に手伝わせていただけないでしょうか?

集落に迎え入れられたら、【建物復元】で壊れた家を直していきます
また「完全に壊れてはいないが老朽化している」建物についても
新宿島から持ち込んだ大工道具を使ったり
【怪力無双】で運び込んだ建材によって補強することで修繕したいですね


荒田・誠司
アドリブなど歓迎

【心情】
ひとまずの危機を切り抜けられて良かった
色々やっていこうか

【行動】
まずは子犬くらいの大きさの蟹型の機械を製作

蟹の鋏で瓦礫などを砕かせて
その破片などを怪力無双を借りて運び出し片付ける
出来そうならキャンプの時のように石くらいの大きさの瓦礫を並べて
かまどを作ってもいいかもな
それでアイテムポケットで持ち込んだ食料を使って料理を作って振る舞いたい

現地の人に材料とか作り方を聞いてこの時代にあった料理を作ろう
俺たちだけでやっても手持ち無沙汰だろうし
こういう時こそ馴染んだ味の方がいいはずだ


 遥かな砂丘を染めた残照も、今は昔。嵐が去り、夜の帳に包まれたオアシスの集落はようやく静けさを取り戻しつつあった。未だ動揺冷めやらぬ人々に向けて、エイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)は努めて落ち着き払った声音で問い掛ける。
「皆様、ご無事ですか。連絡のつかない方などは、いらっしゃいませんか」
 砂漠の集落には、老若男女あわせて三十名ほどの人々が暮らしていた。襲撃により怪我を負った者達も中には少なからずいたが、いずれもきちんと手当てをすれば命に別状はないだろう。
「ひとまず、切り抜けられて良かったな」
「ええ、被害も最小限に食い止められたようですし」
 安堵の笑みを滲ませる荒田・誠司(雑草・g00115)の言葉に頷いて、エイレーネは姿勢を正し、改めて人々へと向き直った。
「わたし達は、亜人どもから平和を守る冒険者の集いです。此度、攻め寄せてきた輩はすべて討ち果たしましたが……皆様の生活を立て直すため、どうか我々に手伝わせていただけないでしょうか?」
 老獪なゴブリンも、屈強なミノタウロス達も、この村に牙を剥いた亜人達は復讐者達の手によって尽く滅ぼされた。だが、彼女達の仕事はそれで終わりではない――突如として苦境に立たされた人々には、破壊された日常を取り戻すためのサポートが必要だ。ほんの十数分にも満たないわずかな時間の中で、亜人達が残した爪痕はそれほどに深い。
 村人達は繰り返し礼を述べて、復讐者達を快く集落に迎え入れてくれた。頭を垂れる老人の肩を励ますように軽く叩いて、エイレーネは荒れ果てた家屋の並びに目を向ける。
「では……この調子で、もう一仕事と参りましょう」
 砂漠の只中の、それも紀元前の小さな村だ。元より建物といっても簡素なものだが、崩れた日干し煉瓦の建て直しには残留効果が大いに効果を発揮するだろう。破れてしまった天幕の修繕も然りだ。
「おーい、みんな大丈夫かい?」
 朗々と呼び掛ける声に振り返ると、小柄な人影が一つ、手を振り小走りに駆けてくるのが見える。見つめる住民達にやあとにこやかに笑い掛けて、フルルズン・イスルーン(ザ・ゴーレムクラフター・g00240)は言った。
「壊れたところ、直しにきたよー。どこを直せばいいんだい?」
「強いて言えばそこら中、かな。建物の方までは手が回らなかった」
 蟹の形をした機械に足下の瓦礫を運ばせながら、誠司が答える。人的被害を最小限に抑えた分、建物の方まで気にかけている余裕はなかったというのが実情だが、直せばいいだけこちらの方がリカバリーが利く。了解、と軽やかに応じて、フルルズンは言った。
「じゃ、早速直していこうか。パック・ゴーレムくん、カモン!」
 ぱちんと指を鳴らせばその足下から、大型のゴーレムが砂を零して立ち上がる。自身とうり二つのミニチュアを多数生みだして使役するこのゴーレムは、人手の必要な作業にはうってつけだ。せっせと働きに出る小さなゴーレム達を一体一体ねぎらって送り出しつつ、女は言った。
「だけど、みんな頑張ったんだねぇ。思ってたより被害は少なそうだよ」
 人家の集まるオアシスの風景は、防衛拠点の建設に心血を注いだエジプトでの日々を思い起こさせる。家屋や生活用品から垣間見える文化はエジプトとは似て非なるもののようだが、それもまた興味深いものだ。なんとも言えない感慨を胸に、フルルズンはゴーレムたちを指揮して崩れた煉瓦の家屋を修復していく。
「この辺の石はどうする? 片付けるかい?」
「いや、どうせならソレでかまどを作ろう。キャンプの時みたいに」
 手の平から溢れる程度の手頃な大きさの石を拾い上げて、誠司が言った。こんなこともあろうかと、新宿島から持ち込んだ食糧もそれなりにある。この時代と土地に合った食事を振る舞えば、精神的に疲弊しているだろう人々を勇気づけることができるかもしれない。
 いいねと笑って、フルルズンは言った。
「じゃあ尚更、手早く片付けよう。ちょいと村人を借りて、どこが壊れてるのか訊いてみようか」
「そうですね。それに、できれば古い建物の修繕もしていきたいところです」
 老朽化した建物、今にも壊れそうな建物は残留効果の適用範囲には当たらないが、それは手作業で直していけばいい。この村の人々が明日を生きていくためには、揺るぎない生活の基盤が必要なのだ。頑張りましょうと仲間達へ呼び掛けて、エイレーネは足元の瓦礫に手を掛けた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【建物復元】LV2が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV3になった!
【ダメージアップ】がLV4になった!

咲樂・祇伐
🌸樂祇

随分と冷えてきましたね
腕をさすれば、すかさず掛けられる羽織
お兄様、それじゃあお兄様が寒く……うん、ありがとう
これは私の…甘えね

皆さんを助けられて良かったですね
お兄様、まずは安心出来る場所をつくらねばです!
家を修復する間に、クリーニングで綺麗にしていきます
清潔は大切です!
そして、怪我人がいれば活性治癒で治していきましょう
大丈夫です
これからもあなた達の日々は続きます
変わらずに明日は訪れるの
少しでも安心できるように

食べ物…お兄様
ナツメヤシがあると聞きました
とりにいきましょう

つられて見上げた星空に咲む
綺麗な星空…
夜の闇はこんなに賑やか
ずっと一緒と伝うように身を寄せる
こうすればほら
暖かいでしょ?


咲樂・神樂
⚰️樂祇

祇伐、寒い?
ならこれ掛けときなさい
羽織を被せて優しく撫でる
甘えが素直に嬉しい

そうね祇伐
先ずは寝床や住処を整えないと
建物復元の力を借りて、家を直していくわ
祇伐がクリーニングをしてくれたなら清潔を保てるかしら!
安心してご飯を食べて寝て、明日も明後日も過ごせる!大丈夫、砂漠の環境にも負けないあなた達だもの…なんて励ましてみたり

この辺の人達って普段どんなのを食べてるのかしらね…
ナツメヤシ?実を採りにいきましょ!
お腹も満たさなきゃ

ふと、見上げた星空が美しくて息を飲む
人は星を目印にして
願いを託すのよね
──私も…明日も明後日も過ごしたいな
君と、皆と

儚くも美しい星の光が心地よい
うん、とってもあたたかい


 砂漠の空気は日没と共に急速に冷え込み、昼夜の気温差は最大で三十度を超えるという。日が沈みきって間もない今でさえも、踝を撫でる風はひんやりとして涼しいというよりも寒さを感じるほどだ。
「随分と冷えてきましたね……」
 紅白の袖から伸びる腕をさすりながら、咲樂・祇伐(花祇ノ櫻禍・g00791)が呟く。すると間を置かず、柔く温かな感触が両肩に触れた。被せられた羽織の前を無意識に掻いて振り返れば、咲樂・神樂(離一匁・g03059)が笑っている。
「寒いんならそれ掛けときなさい、ね?」
「でもお兄様、それじゃあお兄様が寒く……」
「だぁいじょうぶよ。それに、女の子なんだから身体冷やしちゃダメでしょ」
 幼子をあやすように触れる手は優しく、祇伐は続く言葉を飲み込んだ。いくつ年を重ねても、兄にとって自分は守り慈しむべき妹であり、その逆も然り――はにかむように眉を下げて、ありがとうと娘は微笑む。
「私、お兄様に甘えてばっかりね」
「いいのよ、甘えられるうちは甘えていらっしゃい。で……本題はここからね」
 そう言って、神樂はオアシスの集落を見渡した。そこには、人々の生活の『痕跡』があった。人的な被害こそ最小限に留めることができたものの、家屋や家財道具の方は残念ながら無傷とは言えないようだ。
 痛ましげに眉をひそめ、しかしすぐさま気を取り直して祇伐は言った。
「お兄様、まずは安心出来る場所をつくらねばです!」
「そうね、まずは寝床や住処を整えないと。ここの人達が今晩寝る場所もないんじゃ、困っちゃうもの」
 拳を握って意気込む妹に頷いて、神樂は袴の裾を翻す。破壊された家屋は集落の広範にわたったが、残留効果の力を借りれば復旧はそれほど困難ではないだろう。
 崩れた日干し煉瓦は元の通りに積み重なり、根元から折れた天幕の柱も元通り。鼻唄に口遊む祇伐の童歌に連れられ射した浄化の光は、人々の居住空間をより清潔に整えていく。
 そんな中――。
「……あら」
 怪我をしたのだろうか。それとも、襲撃のショックが冷めやらぬのだろうか。壊れた建物の傍らにぐずる幼子を抱えた母親の姿を見付けて、祇伐は小走りに駆け寄った。
「どうかされましたか?」
 訊けば逃げ惑う中で、転んだ子どもが足を挫いたのだという。あの混乱を思えばその程度で済んでよかったと言うべきところなのだろうが、幼い子どもにとっては今ある痛みがすべてだろう。大丈夫、と微笑んで、祇伐は母に抱かれた女児の足首に手を触れた。分け与える治癒の力は、すぐに痛みを忘れさせてくれるだろう。
「これからもあなた達の日々は続きます。変わらずに明日は、訪れるの」
「そうよ。だから明日も明後日も、安心してご飯を食べて、寝てちょうだいね。砂漠の環境にも負けないあなた達だもの、きっと大丈夫!」
 安全だと思っていた場所を脅かされたのだ。その不安を拭うことは容易ではないだろう。しかし少しでも人々が安心できればと、屈託のない笑顔で神樂は重ねる。
 すると何かを思い出した様子で、祇伐が言った。
「食べる……といえば、お兄様。この辺りでは、ナツメヤシが採れると聞きました」
「あら、そう。この辺の人達の常食なのかしら?」
 だったら、早速採りにいきましょ――そう言って、神樂は妹の手を引いた。腹が減ってはなんとやら、という言葉があるように、人間の気力はまず食事からだ。美味しいもので腹を満たせば、住民達も前を向く気になれるかもしれない。
 集落を背に連れ立ち、駆けてゆけばその先には、遮るもののない一面の砂漠と満天の星空が広がっている。
「綺麗な星空……」
 互いの息を呑む気配が、感嘆の息遣いが聞こえるようだった。それほどに見事な空だった。夜は決して暗闇ではなく、儚くとも美しい星の明りはこんなにも賑やかに地上を照らしてくれる。
 吸い込まれそうな天を見上げて、呟くように神樂は言った。
「人は星を目印にして、願いを託すのよね。なら――あたしの願いは、」
 君と、皆と。
 明日も明後日も、変わらぬ日々を過ごしたい。風に紛れたかに思われた言葉をしっかりと耳に留めて、祇伐は兄の肩に寄り添った。傾ければ艶やかな長い黒髪が、流れるように着物の胸に落ち掛かる。
「こうすれば、ほら。お兄様も暖かいでしょ?」
「うん。……とってもあたたかい」
 この砂漠に、本当の意味での未来はない。けれど、だからこそ、この地に住まう人々が目の前の暮らしを恙なく営んでいけるように――傍らの温もりが心地良くあればあるほどに、そう願わずにはいられなかった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【クリーニング】LV1が発生!
【建物復元】がLV3になった!
効果2【ドレイン】がLV3になった!
【能力値アップ】がLV4になった!

朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と

すっかり日が落ちちゃったね
本物のアラビアンナイトだー
ってわくわくするかと思ったけど
そんなことより聞いてた以上に冷え込むものだね
レオは寒くない?大丈夫?

これは身体動かして温めないとだね
ってことで集落のお手伝いをしよう
集落をまわって手助けが必要な人や場所を見つけていこう
瓦礫の撤去だったりの力仕事ぐらいしか出来ないけれど
その分人一倍働けるからね
おまかせあれ

見回りながらふと見上げる空は
嘘みたいに綺麗で、思わずわぁと声を漏らす
隣から聞こえた同じ言葉に思わず顔を見合わせて
二人で笑ってまた空に見惚れる時間

東京にいるだけじゃ見れなかったもの
また素敵な思い出がひとつ


朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と

広い砂の海と星空のコントラストが美しすぎて
本当に物語の中の世界みたいだな、なんて思いながらも
今は先にお仕事だね
でも本当、冷えてきちゃったね
私は平気だけどリオちゃんも大丈夫?

そうだね!いっぱい動いて温まりつつ
集落の人たちのお手伝いをしよう
友達催眠も活用しつつ
集落の人たちに安心してね、お手伝いするよと話かけて
ちょっとでも安心してもらえるようにするね

それから瓦礫の片付けや必要な資材の運び込みなんかを
怪力無双も活用しながらお手伝いするね

お手伝いが終わった後に改めてみた星空が
宝石を散りばめたみたいに綺麗で思わずわぁと声が漏れちゃう
隣からも同時に聞こえて思わず笑っちゃう


「すっかり日が落ちちゃったね」
 砂混じりの夜風に長いプラチナブロンドを遊ばせて、朔・璃央(昊鏡・g00493)は足を止めた。
 巡らせた視線の先、砂丘の彼方に覗いていた燃えるような斜陽も今はない。砂の描く曲線と空の他には何も見えない砂漠の景色は風に吹かれて刻々と移ろい、踏みだしたが最後、自分の居場所さえも見失ってしまうのではないかという感覚に襲われる。頬に触れる空気は日没前の熱気が嘘のように冷えて、涼しいを通り越して寒いくらいだ。
「これぞ本物のアラビアンナイトだー……ってわくわくするかと思ったけど、聞いてた以上に冷え込むね。レオは寒くない? 大丈夫?」
「私は平気! だけど、リオちゃんも大丈夫?」
 問えば一歩先を行く朔・麗央(瑞鏡・g01286)が、くるりと振り返ってこちらを見る。広がる砂の海は燃えるような赤からうって変わって群青に沈み、砂漠を背に立てばまるで、星空の下で彼女一人だけがこの世界に存在しているかのように映る。
 大丈夫、と唇を綻ばせて、璃央は言った。
「レオが平気なら俺も平気だよ。でも、ちょっとは身体動かして温めないとだね」
「そうだね。ここの人達のためにも、お手伝い頑張らなくちゃ!」
 亜人の襲撃を復讐者達が迎撃し、これを全滅させるまでわずか十数分の間の出来事だった。混乱の只中にあった集落の住民達も、時間が経つに連れて少しずつ落ち着きを取り戻しつつある。復讐者達の迅速な行動によって人的被害は最小限に抑えることができた一方、家屋の方まで完全に守り切ることは困難であったが、残留効果を最大限に活用して復旧に当たれば、彼らの生活基盤が回復するのにそう時間は掛からないだろう。
 壊れた天幕を立て直そうとしている村人の元へすたすたと淀みなく歩み寄って、璃央は言った。
「よろしければ、お手伝いしましょうか」
「あ、ありがとうございます。よろしいのですか……?」
「おまかせあれ。話すと長くなりますが……私達、人一倍働けるので」
 太い柱も瓦礫の山も、力自慢の少年にしてみれば羽根のようなものだ。その分、気の利いたことは言えないのだけれど、そこは勿論、麗央の出番である。
「安心してね。みんなが元の暮らしに戻れるまで、私達がちゃんとお手伝いするからね!」
 突然の出来事に途方に暮れた人々にとっては、何よりも力強い言葉だ。ありがとうございますと繰り返し礼を伸べる住人達が気負い過ぎないよう、双子は気さくな会話を挟みながらせっせと住居の修繕にあたる。手近な瓦礫を道の脇へ積み上げて何気なく天を仰げば頭上には、今にも星の降り出しそうな空が広がっている。
「わあ……」
 期せずして、熱に浮かされるような感嘆の声が二つ重なった。思わず顔を見合わせて、兄妹はどちらからとなく笑み零す。こんな小さなことまで一緒なのだから、双子というのは不思議だ。
「……嘘みたいに綺麗な空だね」
「本当に。物語の中の世界みたい」
 世界中のダイヤモンドを集めた宝石箱をひっくり返しても、きっとこの空には及ばない。夢を見るように応じて、麗央はうっとりと瞳を細めた。焚き染める香の匂いも、燈火の色、風の匂いさえも、ここでは何もかもが異国の彩を帯びる。すべてを吸い込むかのような空に惹きつけられたまま、璃央は呟くように口にした。
「こんな空……東京にいるだけじゃ、一生見られなかったんだろうなあ」
 世界がこんな風に変わってしまったことを、よかったと思うわけではない。もはや過去と未来のどこにもない場所に、確かに存在した愛しい日々を、懐かしまない日はきっと来ない。けれど――。
 傍らの妹の瞳を覗き込んで、璃央は口角を和らげた。
「素敵な思い出がまたひとつ、だね」
 この壊れた世界の中で、確かに紡いだものがある。そうして積み重ねた思い出をよすがにして彼らは、これからも生きていくのだろう。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【怪力無双】がLV2になった!
【友達催眠】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV5になった!
【ダメージアップ】がLV5になった!

ノスリ・アスターゼイン
現地の人達とも協力しあって
資材や食料運びなど
一緒に修復活動をして行けたら良い

ふと黙した瞬間に辛い記憶が蘇って飲み込まれてしまうこともあるし
震える人々の傍らに寄り添ったり
ぐずる赤子をあやす手助けをしたり
疲れて眠った子を抱き上げたり
安心させるようぽんぽんと
背や肩に手を添えることも支援のひとつになるだろうか

砂が描く地形も
砂漠のオアシスも
見上げる星空も美しく
記憶は失くせど寒暖差は懐かしい

口福の伝道者で
温かい食事を存分に味わえば
冷えた身にいっそう滋味と沁み渡る

オアシスの民には
支援に走る俺達が導きの星のように思えるかもだけど
人々の間に笑顔が咲けば
彼らこそが
俺達を幸福に導いてくれる星の煌きのようにも思えるよ


 行き交う人のざわめきに混じって、子どもの泣く声がする。壊れずに残った日干し煉瓦の家の陰、赤子を抱いて座り込んだ母親の姿を見つけて、ノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)
は足を止めた。
「大丈夫? ご機嫌斜めのようだけど」
「あ……すみません。ちっとも泣き止んでくれなくて……」
 泣きじゃくる我が子を腕に、若い母親は途方に暮れているようだった。どれ、と運びかけの資材を足元に置いて、ノスリは赤子へ手を伸ばす。そして引き取ったその瞬間――女の腕が、酷く震えているのに気がついた。
「この子も怖かっただろうけど――それは大人だって同じだと、俺は思うよ」
 生きるか死ぬかの恐怖に晒されて、何も感じない者はない。何に脅かされることもなく平和を享受してきた人々ならば、尚のことそうだろう。見つめる琥珀の瞳は何もかもを見透かすようで、若い母親は恥じ入るように視線を下げた。
「……さっきから、震えが止まらないのです」
 母親として我が子を守らねばならないのに、不甲斐ない――そうとは直接口にしなくとも、言葉の端々にはそんな思いが滲んでいる。しかしノスリは、それはどうだろうと首を傾げた。
「親だって人間だからね。怖い思いをすれば震えが来るし……もう大丈夫だと思っても、ふとした瞬間に辛い記憶が蘇って、飲み込まれてしまうこともある。自分が悪い、なんて風には、思わない方がいいんじゃない?」
 泣き疲れてしまったのかそれとも、揺り籠のようにゆらゆらと揺れる腕の中が心地良かったのか。赤子の泣き声はいつのまにか聞こえなくなっていた。お疲れ様、と一言労って、ノスリは母親の腕に赤子を返し、再び荷運びへと戻る。
「思い出せない、はずなんだけどなあ」
 緩やかな曲線を描く砂の原に、風の冷たさ、オアシスの匂い。遥かに広がる星屑の空。
 白む記憶は途絶えて戻る気配もないというのに、この地はどこか懐かしい。
(「ここの皆にしたら俺達は、導きの星みたいに見えてるかもしれないけど――」)
 なんでもない日々に咲く人々の笑顔こそは、復讐者達の道標。それを一つでも多く、一日でも長く守り抜くことが、あるべき未来を手繰り寄せるのだろう。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【凌駕率アップ】LV1が発生!

ジズ・ユルドゥルム
皆の奮戦のおかげで、村人達は無事のようだな
さて。戦闘を皆に任せた分、たくさん働かねば

口福の伝道者で今日の夕食や当面の保存食を増やし
建物修復の材料が足りなければ運んで回り
怪我人を活性治癒で癒し
寝付けない子がいれば、強い冒険者達が守っているから大丈夫だと安心させよう

…ふと
星空と、月明かりに照らされた遠景の砂丘を見やる
復讐者として初めて獣神王朝に降り立った時―
目にした光景も、確かこんな星空だった
…あの星を眺めた時から、ずいぶん遠くに来た

目線を下ろし、焚火に照らされた村人たちの様子を眺める

誰かの平穏な日常
ささやかな日々の暮らし
家族皆が揃って今日を生きること
それを守るためなら、私はまだまだ進み続けられる


「本当に、ありがとうございました。なんと御礼を言ったらいいか……」
「構わんよ。面倒事は皆に任せてしまったし、このくらいはな」
 傷つき、座り込んだ女の褐色の腕に包帯をきちんと巻いてやり、ジズ・ユルドゥルム(砂上の轍・g02140)は努めて穏やかに応じた。騒動の最中に怪我を負った村人達は少なくなかったが、いずれも命に別状がなかったのは幸いだ。活性治癒の残留効果も味方して、この分なら多少の深手も明日の朝までには完治するだろう。
「……これでよし。安静にしていれば、すぐによくなるよ――」
 包帯の端を結んで仕上げ、敷き布から立ち上がろうとすると、ふと、袖を引く気配がする。傍らへ視線を落とせば年端も行かぬ男児が、黒くゆったりとした袖の端を掴んで不安そうに見上げていた。
「お姉ちゃんたち、帰っちゃうの……?」
「大丈夫。この村は強い冒険者達が守っているから、安心しておやすみ」
 明日になればきっと、何もかも元通りになっているはず。黒褐色の短い髪をそっと撫でてやれば、この騒ぎに疲れ果てたのだろう、大きな瞳を半分ほどにして、男児は眠たげに瞬きを繰り返す。繰り返し礼を述べる母親を片手で制して、ジズは男児の手を解き、長い外套を翻した。
「……すっかり夜だな」
 厚い天幕の布を引けば、蒼い星明かりが落ちてくる。さやかなその光は暗さに慣れた瞳を射るようで、思いのほかに明るい。見渡せば半壊した建物と椰子の木の隙間から、広がる砂丘の輪郭が目に入った。
(「ずいぶん、遠くに来たものだ」)
 復讐者として獣神王朝に降り立った、あの夜。あの時目にした光景も、思えばこんな星空だった。抗い、敗れて、遠い未来に流れ着いてどれだけの時間が経ったのか、正確なところはもうジズ自身にも分からない。この道がどこに続いているのかも、そこで何が待ち受けているのかもまた、同じだ。
 けれど――。
(「あの光景を守るためなら、私はまだまだ進み続けられる」)
 足を止めて振り返れば、壊された日常を取り戻さんと慌ただしく行き交う人々の姿が直向きに胸を打つ。
 どこかの誰かの日常、家族皆が揃って今日を生きるだけのささやかな平穏。それを守るためならば、どんなに道に迷おうとも構うものかとジズは思う。そうして守った『何か』はいつか辿り着いた場所で、彼女の来た道を鮮やかに彩ってくれるのだろう。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【口福の伝道者】がLV2になった!
効果2【凌駕率アップ】がLV2になった!

永辿・ヤコウ
ラヴィデさん(g00694)

怪我人は活性治癒で手当て

建物復元の後
以前からの倒壊部の修繕や
衣類の解れ、不足があれば裁縫
営繕屋・繕い屋としての腕を発揮したいな

ラヴィデさんは器用だもの
助手ではなく立派な職人ですよ

オアシスの皆さんと炎を囲んで
ゆったり語らいのひとときも

伝統柄や織物、染物を見せて頂いたり
皆で星々を刺繍してみるのも素敵

だってこんなに綺麗な空だから

夜空に心奪われるラヴィデさんの横顔へ微笑んで
大判の布を彼の肩に掛けつつ
支援お疲れ様ですの労い

一緒に包まれれば
わぁ、と擽った気に笑って

僕達が去った後にも
僕達のことを忘れてしまった後でも
此の地の人に勇気と希望を与えてくれるように、と
清く瞬く星達へ願おう


ラヴィデ・ローズ
ヤコウくん(g04118)と

活性治癒で怪我の手当て
修復加速発動
永辿先生の助手として励もう

伝統を感じる布ってカッコいいよねぇ
この刺繍とか手縫いなのかい? すごいな
現地民との対話も楽しみつつ修繕、文化に触れてみたい
仕上げにはローズとネロリの香水をひと吹き
よく眠れるおまじないだよ
いっときとて血臭を忘れ、安らいでもらえるよう

新宿島の暮らしに馴染んでしまったが
日が沈み、炎と星月の明かりだけの夜は懐かしい
空は遠く続いているようで
ふと
空から、掛かる布へ彼へと笑いかける
ばっさり! 折角大きな布だ、も一度広げて彼にも一緒に被せちゃおっと
今日も一日働いたねぇ
何が無くとも失いたくないと、願った、願う
平穏の尊さを思う


 新宿島の夜は明るい。高層ビル群に点々と灯る規則的な明かりから、看板にネオンサイン、街灯に信号――色とりどりの光が溢れる街は建物の中も外も昼間のように目映くて、初めは驚いたものだった。それに比べるとこの村の夜は、油に点した小さな灯だけが頼りの静かなものだが、今はそれが心地良い。
「伝統を感じる布ってカッコいいよねぇ」
 明滅する炎に薄ぼんやりと照らされた天幕の中。腕に広げた織物の細かな刺繍に目を瞠って、ラヴィデ・ローズ(la-tta-ta・g00694)は言った。奥の机では永辿・ヤコウ(繕い屋・g04118)が針を手に、村人達が持ち込んだ衣類を繕っている。もっともここは臨時の救護所で、先ほどまでは怪我人達が手当を受けていたのだが、残留効果の影響もあって看るべきものは多くなかった。さしずめ今は破れた衣類や敷物を扱う営繕屋、といったところであろう。
「こういう刺繍とか、手縫いなのかい? すごいなあ」
 仕上がりを待つ村娘の居心地が悪くならないように、ラヴィデは気さくに話し掛ける。そして粛々と手を動かすヤコウの手元を覗き込み、銀色の瞳をふわりと和らげた。
「それを直せる永辿先生もすごいけど」
「これが本職ですからね。……はい、お待たせいたしました」
 引き裂かれた布地はしっかりと縫い合わせられた上、直した部分が目立たないよう星柄の細工が施されている。しかし、手渡そうとするヤコウをちょっと待ってと引き留めて、ラヴィデは言った。
「最後に、よく眠れるおまじないだよ」
 繕い終えた織物をまとめ、色のついた小瓶に揺れる液体をひと吹きすれば、漂う香はネロリ&ローズ。華やかに匂うその香は、血と獣の生臭さを忘れさせてくれるだろう。そうしてたとえ一時でも、身も心も安らげるような時間があの娘に訪れればいい、と思う。
 重ねて礼を述べ天幕を出て行く娘の背を見送って、竜人は仕事を終えた『繕い屋』へと向き直った。
「にしても、ヤコウくんは流石だね。オレは助手がいいとこだなあ」
「ラヴィデさんは器用だもの。助手ではなく立派な職人ですよ」
 裁縫の依頼も、今の娘で最後。外へ出ようかと声を掛け合って、二人は連れ立ち天幕の入り口を潜る。そして思わず、感嘆の声を洩らした。
「……こんな夜は、いつぶりだろう?」
 いつしか落ち切った日の代わりに、篝火と星光だけが世界を照らす夜。どこまでも続く紺青の空では、無数の星々がまるで宝石のように壮麗な輝きを放っている。
「なんだか、懐かしいな……」
 心奪われたように夜空を仰ぐ竜の横顔は、童心に返ったように幼い。ひとしきり立ち尽くしてはっと我に返り、ラヴィデはあたふたと傍らの青年を振り返った。
「ごめん。……ぼーっとしてた?」
「仕方ありませんよ。だって、こんなに綺麗な空だから」
 微笑ましげに眦を下げて、ヤコウは荷物の中から一枚の掛け布を取り出した。村人からの預かり物ではなく、砂漠の冷たい夜に備えて持ち込んでおいたそれは、広げればふわりと和香の匂いがする。
「お仕事、お疲れ様でした。どこかで少し、休みましょうか」
 隣り合う肩へ布をかけてやれば、返る笑顔が次第に深くなっていく。そういうことなら、と笑って、ラヴィデは言った。
「焚火の傍とかで語らっちゃおうか?」
 暖かな布地に二人一緒に包まって、今日のこの日に守った景色を肴にして。何がなくとも失いたくはない、なんでもない夜の平穏を享受しよう。
 楽しそうですねと微笑んで、ヤコウはふと空へ視線を送り、そして応じた。
「僕達が去った後にも――僕達のことを、忘れてしまった後でも。あの星が、この地の人に勇気と希望を与えてくれるといいですね」
 清く瞬く空の星は、この先何があろうとも砂漠の夜を照らし続けるのだろう。いずれ訪れる終焉の日まで、その下に生きる人々の暮らしが穏やかに続くことを、今は静かに願うばかりだ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【建物復元】がLV4になった!
【修復加速】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV7になった!

ユート・チュールスキー
怪我人がいれば活性治癒
不安げな人がいれば寄り添い話を聞く
もう大丈夫だよ
あいつらはもう来ない
もしまた来ても僕達が倒すから安心して
ねえ、よければ一緒に食料調達にいかない?
僕達はどこに何があるか分からないから教えてもらえると助かる

(きっと何かしてるほうが気が紛れるよね

ナツメヤシって初めて見たよ
ペニュがすごく食べたそうに見てる…
え、食べていいの?
ありがとう
良かったね、ペニュ
美味しそうに食べる姿に和む

ふと見上げた星空に感動
すごい…!
零れ落ちてきそうな程たくさん輝いてる…
夕焼けは堪能する余裕なかったけど綺麗な星空を見られて良かった

少し冷えてきたかな
ペニュをストールで包んで抱き上げる
こうしてると僕も温かいよ


「大丈夫。あいつらはもう来ないし、もし来ても僕達が倒すから」
 安心して、と、努めて抑制的な声を作って、ユート・チュールスキー(氷晶・g08952)はエメラルドグリーンの視線を下げた。つないだ手の先では、七、八歳ほどの男児が二人、俯きがちに歩いている。残留効果の影響もあって怪我はほぼ癒えているものの、精神的なショックは如何ともしがたいのだろう。
(「何かしてるほうが気が紛れると思ったんだけど……」)
 本来ならば親をはじめ村の大人達が彼らのケアに当たるべきなのだろうが、今夜の事件ではその大人達もまた被害者だ。全員が全員、平気な顔をしていられるわけではない。だからせめてもの気晴らしになればと、ユートは子ども達を食糧調達に誘ったのだが――。
「みんなに元気を出してもらうためにも、美味しいものを採って帰ろうよ。僕達はどこに何があるか分からないから、教えてもらえると嬉しいな」
「……ナツメヤシ、なら……」
 あっちと指さす先を視線で追えば、砂原に椰子のシルエットが黒々と突き立っていた。子ども達は背の低い椰子の根元にトコトコと走り寄ると、鈴生りのナツメヤシを房ごともいで持ち帰ってくる。そして物欲しげなペンギンの視線に気づいたのか、一粒を千切って差し出した。
「貰っていいの? ……ありがとう」
 よかったね、とユートは足下のペンギンに笑い掛ける。手のひらサイズの果実を咥え、感情の読みにくい顔で首を傾げるその姿から味に対する評価は窺えないが、見慣れぬ生き物の無邪気な仕種は子ども達の気持ちをいくらか軽くしたようだ。零れた笑顔に頬を緩めて天を仰げば、紺青の夜空には無数の星々が零れ落ちんばかりに輝いている。
「……すごい」
 見たこともない光景に、素直な感嘆が溢れた。へくち、と人間のようなくしゃみをしたペンギンをストールに包んで抱き上げれば、丸々とした身体が湯たんぽのように温かい。
「こんな綺麗な星空が見られるなんて、思わなかった。ねえ、ペニュ」
 宝石箱のようなこの夜空は、時を超え、世界を超えて人の営みを守った彼らへのささやかな報酬だ。そう思うと少しだけ誇らしい気分で、ユートは腕の中の小さな相棒に頬を寄せた。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【活性治癒】がLV3になった!
効果2【ドレイン】がLV4になった!

ゼキ・レヴニ
敵サンが言う“定め”はひっくり返せた訳だし
あとは前向いて進んでくだけってな

先ずは雨風凌げる場所をどうにかしねえと
【修復加速】【怪力無双】ディガーパックも活用し
救護室に使える大きめの建物から修復していく
一通り済んだら農具や日用品の修繕を申し出よう
住民に気さくに話しかけ、壊れた物がないか尋ねて回るぜ
こういう作業が好きなんだ、見た目より手先は器用でよ

ふと見上げた空は故郷の山岳の星空にも似ていて
ああ冷えるねえなんて、一服がてら住民と焚火を囲む口実に
雑談しつつおれたちの活動を伝え、少しでも不安を和らげてやりたい
なァ、この村に伝わる歌とかないのかい
得意のハーモニカで歌をなぞる
ささやかな日々への賛歌として


「他に壊れたモンはないか? なあに、これでも見た目より手先は器用なんだ」
 任せておきなとニヤリ笑って、ゼキ・レヴニ(Debaser・g04279)は困り顔の女の手から壊れた土器を受け取った。家屋の修繕は一通り済んで、臨時の救護所も既に機能している今、残るは細々とした家財道具を直すだけ――だけといっても、これも極めて重要な問題だ。寝起きする家屋があれば風雨を凌ぐことはできるけれど、水を汲み、食事をとって日々をつなぐためにはこうした日用品が欠かせない。持ち込まれる品々は素材や紋様からして近代では目にする機会のないものも多く、ゼキはそれらの一つ一つを興味津々の様子で眺めながら、持ち前の器用さで修繕を施していく。
(「敵サンが言うとこの『定め』はひっくり返せたわけだし、あとは前向いて進んでくだけ……ってな」)
 いつか世界のすべてが元の姿を取り戻すのだとしたら、この世界に本当の意味での明日が来ることはないのだろう。それは、時空の狭間に消えていった改竄世界史のこれまでを見れば分かることだ。しかしだからこそ尚更に、直した品物を受け取り微笑む人々が、目の前の日々を前向きに、幸せに全うできればと思う。
「それにしても、結構冷えるねえ」
 作業の手をふと止めて、ゼキは言った。仰ぐ空には、故郷の山岳で見たそれにも似た満天の星が広がっている。
「アレだ――焚火でも起こしてみるか?」
 焚火を囲んで食事を摂れば、緊張も少しは解れるはず。男の提案に異論を唱える者はなく、ほどなくして村の中心には明々とした火が灯った。こいつはいいとその傍らに腰を下ろして、ゼキは村人達へ問い掛ける。
「なァ、この村に伝わる歌とかないのかい」
 それはこの地に暮らすすべての人と、ささやかな日々への賛歌。炎を映して揺らめくハーモニカが異国の調べをなぞるほど、ぎこちなくとも確かな笑顔が小さな村に広がっていく。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【修復加速】がLV2になった!
効果2【能力値アップ】がLV8になった!

花塚・夜壱
シャルロット(g00467)と一緒に

少しでも早く、痛ましい記憶が消える様に
この場所をよりより集落にしよう

シャルロットと一緒に、怪力無双で大きく砂地を耕そうか
こう言った力仕事は、あまりした事がないから新鮮だ
…怪力の逞しいシャルロットも新鮮だな
2人とも、あまり無理しすぎないようにな
休憩も大事だ

無事に育つと言う種も持ってきたが…
折角だから、夏野菜の種を持って来てみた
蒔いてみても良いだろうか

はは、ちゃんと防寒対策ができてるんだな、偉い偉い
え、俺にも?ありがとうシャルロット
…日本の星空とは、やはり違うな
どれも煌きが違うと言うか…今にも降って来そうな星空だ
確かに、素敵な宝物を見せて貰った
贅沢な一夜だ


シャルロット・アミ
花塚さん(g00016)とご一緒に

ええ、いたましい記憶を少しでも忘れるように
この地にできることをしていきましょう?

食料調達のために開墾をしましょうか
【怪力無双】をお借りして花塚さんと一緒に畑を作るわ
【土壌改良】を施せば少しは育ちやすい環境になるかしら
モラさんも一緒に種まきしてくれるのね、ありがとう「もきゅ!」
花塚さん、どんな種を持ってきてくれたの?
わあ、育つといいわね、育ちますように

このあたりは昼夜の寒暖差が大きいから
ブランケットを2枚持ってきたの、一枚、花塚さんへ
本当、ここの夜空は綺麗
降るような星空はきっとここの宝物ね


 月と星の明りの下、オアシスの村が揺れる篝火に照らされ浮かび上がる。幻想的なその光景を遠目に眺めて、花塚・夜壱(月下鬼人・g00016)は口を開いた。
「死者が出なかったのは不幸中の幸いだったな」
 先行した復讐者達の健闘の結果、彼らが村に辿り着いた時にはもう、亜人の群れは一掃された後だった。村人達は突然の出来事に放心してこそいたが、徐々に落ち着きを取り戻しつつあるようだ。
「怪我をした人達も、命に別状はないそうだ」
「そう。それは本当に、何よりね」
 ほっと安堵の表情を浮かべて、シャルロット・アミ(金糸雀の夢・g00467)はワンピースの胸を撫で下ろした。でも、と続ける深緑の瞳には、気遣うような色が揺れる。
「驚いたでしょうし、怖かったでしょう。その傷は、きっと簡単には消えないわ」
 明日も、明後日も、連綿と続いていくと思われた当たり前の平穏が打ち砕かれた衝撃は、推して知るべきだろう。結果的に蹂躙は防げたと言っても、この村の人々が負った傷は浅くない。
 そうだなと同意を示して、夜壱は真摯に頷いた。
「少しでも早く痛ましい記憶が消えるように、ここをよりよい集落にしよう」
 今、彼らにできることはそれしかない。頑張りましょうと意気込んで、シャルロットは両の拳を握り締める。
「もっとこの場所を住みよい場所にできたらいいわね。ね、モラさん」
「もきゅ!」
 そうと決まったら、やることは一つ。元気いっぱい応じるモーラットに思わず笑みを零して、二人は持参した農具を取り上げた。オアシスにほど近い土地の土壌を改良し、耕せば、この一帯は今よりもっと作物の穫れやすい地域になるかもしれない。砂地を耕すのはなかなかに骨が折れそうだが、大事なのは根気である。砂漠の夜は冷えるとはいえ肉体労働をしていればそれなりに身体は温まるもので、夜壱は足下の砂に鍬を突き立て、薄らと汗の滲んだ額を拭った。
「こういった力仕事は、あまりしたことがないから新鮮だ」
「そうなの? なんだか少し、意外な気もするわね」
「怪力の逞しいシャルロットも、新鮮だな。……いや、斬新か……?」
 千里の道も一歩からの精神で、一歩ずつ、一歩ずつ。時折冗談を言い交わしながら、二人は砂漠に鍬を入れていく。休憩を挟みながら小一時間も作業を続けると、砂、もとい土の感触も段々と畑らしく変わり、達成感が広がってくる。こんなものかと農具を置いて、夜壱は小さな紙の包みを一つ取り出した。
「せっかくだから、夏野菜の種を持ってきてみた。蒔いてみても良いだろうか?」
「勿論、試す価値はあると思うわ! ちゃんと育つといいわね」
「もきゅ、もきゅ!」
 何が根付くか分からないので、いくつか持ってきてみた種を上向けた掌に広げると、自分もやる、というようにモーラットが右肩から左肩から顔を出してまとわりついてくる。こらこらと窘めながら毛玉のおでこを撫でてやり、シャルロットは笑う。
「モラさんも一緒に種まきしてくれるのね。ありがとう」
「もきゅ!」
 間隔を空けて二、三粒ずつ種を撒き、上からやんわりと土を掛けたら小さな畑はひとまずの完成を見る。埋めた種がうまく根付くかは神のみぞ知るところだが、仮にそれらが芽吹かなくとも、土壌に手を入れたことはこの地に自生する植物に対して何らかの効果を持つはずだ。
 仕事を終えてふうっと長い息をつき、シャルロットは星空に向かい大きく伸びをした。
「それにしても本当に、ここの夜空は綺麗ね」
「ああ。日本の星空とはやはり違うな」
 煌びやかなビル街の夜景もそれはそれで良いけれど、今にも零れて落ちてきそうな星の輝きには吸い込まれてしまいそうな、気圧されるような美しさがある。遥か星天に見入り、立ち尽くす青年の薄着は冷え込む砂漠の夜の中では些か涼しげに見えて、そうだ、とシャルロットは鞄を探った。
「花塚さん、よかったらブランケットを使う? 二枚持ってきたから」
「え――俺にも? 準備がいいな。さすがシャルロットだ」
「ふふ、この辺りは寒暖差が激しいから」
 時を超え、空間を超え、遥々やってきたのだ。残りの時間はブランケットに包まって、この星空を楽しめばいい。この上なく贅沢で静かな一夜は復讐者達にとっても、明日を戦い抜くための力となることだろう。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【アイテムポケット】がLV2になった!
【土壌改良】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV9になった!

渦中・百
【渦中姉弟】

怖いものはもうおりません
皆さんに安心して頂くためにも紅茶を煎れましょう
お砂糖を入れて甘くしましょうか
口福の伝道者で皆さんに行き渡るように
お茶もですが…傷の手当や食事の為にもお水が沢山あるといいですね

あら、水源をここに?
それは何とも素敵なていあ…
(そっと顔を逸らし、戻してにっこり)ちぃ君、こんなところで会うなんて奇遇ですねぇ
誤魔化す?
いえいえ、開き直っているだけですよ?

ええ、はいはい、危ないことはいけませんねぇ
でもね、ちぃ君
私だって新たに得た日常を守り抜きたいのですよ
大切な弟や友人のいる愛しい「今」を

ですから…はい、ちぃ君(茶器を押し付け)
お茶を配るのを手伝ってくださいな(にこー!)


渦中・浪刃
【渦中姉弟】

既に危機は去っているようですね…
人々が日常を取り戻す力を養う為にも、心を癒す時間は必要でしょうね
姉上が紅茶を用意するのならば、私は水源を呼び水を用意しましょう

…姉上。姉上、こちらを見てください
奇遇ではないのですよ
貴女が飛び出していったと聞いて慌てて追いかけて来たのですから
そんな笑顔で誤魔…って開き直らないでください……(額押さえ)

分かっているのですか?
どの世界もそうですが、一人で向かうには危険です
「今」を守りたいお気持ちはよく分かります
ならばせめて、私をお連れくだ(反射的に茶器を受取り)

…分かりました。手伝います(嘆息)
ですが、話はまだ途中
この続きは私達の日常に帰ったらにしましょう


 広大な砂漠の真ん中に、橙色の篝火が揺れている。近付くほどに明確な輪郭をとって浮かび上がるオアシスの村は、慌ただしくも穏やかな空気に包まれていた。その事実にひとまず安堵して、渦中・浪刃(渦隠・g02250)は短く息を吐く。
「どうやら既に危機は去っているようですね……」
 いつの間にかいなくなっていた――のんびりしているように見えて意外と行動的で、もっと言えばやや落ち着きに欠ける――姉を追い掛けて、パラドクストレインに飛び乗り、揺られることしばらく。辿り着いたイスカンダルの空気は新宿島の蒸し暑さから一転、驚くほどに冷えている。さてどうしたものかと辺りを見回していると、耳に馴染みのある声が聞こえてきた。
「さあさあ、温かい紅茶をどうぞ。怖いものはもうおりませんからね。もう少し、自由に使えるお水があるといいのですが……」
「なるほど。姉上が紅茶を用意されるのなら、私はここに水源をご用意しましょう」
「あら、水源をここに? それは素敵なご提案……」
 満面の笑顔で顔を上げた渦中・百(猫に九生・g08399)は、目の前の青年を目にするや、笑顔のままで固まった。かと思うと、そのままふいと顔を背ける。いやいやいや、と思わず前のめりになって、浪刃は言った。
「姉上。姉上、こちらを見てください」
 あれだけはっきり目が合ったのに、どうしてこれで間に合うと思うのか。語気を強めて呼び掛ければ観念したのか、百は白々しくもすんなりと弟の方へ向き直った。
「まあ、ちぃ君。こんなところで会うなんて奇遇ですねぇ」
「奇遇ではないのですよ。貴女が飛び出していったと聞いて慌てて追いかけて来たのですから、そんな笑顔で誤魔化さないでくだ」
「誤魔化すだなんて。開き直っているだけですよ?」
「…………」
 なお悪いのですが、と喉元まで出かかった言葉は、結局そのまま呑み込んだ。口を酸っぱくして言ったところで、誰かが困っていると見聞きして悠長にしていられる姉ではないのだ。眉間の皺を二本指でぐいぐい揉んで、盛大な溜息と共に浪刃は言った。
「本当に分かっているのですか? どの世界もそうですが、一人で向かうには危険です」
「はいはい、勿論分かっていますよ。危ないことはいけませんねぇ。誰だって、進んで危ない目に遭いたくなんてありませんから」
「でしたら……!」
「でもね、ちぃ君」
 茶器を並べる手を止めて、百はすいと顔を上げた。見つめる眼差しはあくまでも穏やかで優しくありながら、揺るぎのない信念に満ちている。
「私だって、新たに得た日常を守り抜きたいのですよ。大切な弟や友人のいる愛しい『今』を」
 そのためには、これもまた必要なことでしょう――そう、言われてしまえば頭ごなしに否定することもできずに、浪刃は喉の奥でぐうと唸った。そしてしばし難しい顔で考えを巡らせた後、やっとのことで『仕方ありません』と歩み寄る。
「姉上が『今』を守りたいお気持ちは、私とてよく分かります。ですが、そういうことならばせめて一人で突っ走る前に、私をお連れくださ――」
「では水の準備もできそうですし、皆さんに安心して頂くためにもお茶を淹れるといたしましょう。お砂糖をたくさん入れて、甘くしましょうか」
「……分かりました。手伝いましょう」
 有無を言わさず押しつけられた茶器を受け取って、浪刃は上機嫌の姉を前に頷いた。この集落の人々が日常を取り戻すためには、明日を生き抜く力を養い、疲弊した心を癒す時間が必要だ。それは、浪刃とて承知している。ですが、と続けて、青年は言った。
「この話はまだ終わりではありませんよ」
「ええ、ええ、分かっていますよ。この続きはまた後で、ね?」
 お説教のその先は、彼ら自身が日常に戻ってから。もっとも――その頃にはもう、咎める気も失せているような気はするのだけれど。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【口福の伝道者】がLV3になった!
【水源】LV1が発生!
効果2【凌駕率アップ】がLV3(最大)になった!
【反撃アップ】がLV2になった!

紫空・千景
【星明】

先ずは支援を
損壊状況把握し
私の役目は建物復元で破壊された物を廻らせ
元の形に戻し人々にも声を掛けながらフォローを
食事の準備なら私も手伝おう
…味見?
最高の約得
頂けば優しい彗の味だと

空仰ぐ頃には屹度
満天の星が鏤んで居る筈
大きめのストールをふたりで羽織って
引き寄せる力に身を任せて

――なあ、彗

私みたいな星はあるか?
一人っ子なのに双子座なの不思議だったが
噫、でも
宝石として彗に見つけて貰えるなら嬉しい事だ
いつか…私の片割れに出会えるだろうか

私な、星の話を聞くなら彗と決めていたんだ
星の様に
…誰かに見つけて欲しいのは同じな気がしたから
違ったら笑って良いぞ

彩繋の星巡
倣って、なぞって
冬には私の星を
ん、約束だ


朔・彗藍
【星明】

皆さんの力に少しでも成れたなら
頼もしい千景と協力をして分担を
私は食事のお手伝いの支援へ
温かな野菜たっぷりスープを振舞わせて下さい
ふふ、じゃあ千景は味見、お願い出来る?

倣う様に天を仰いで声を上げる
広大な砂漠の地に星屑が降ってくるみたい
羽織るストールと傍らの貴女をそっと引き寄せて

千景の星はジェミニ、寄り添う双子座でしたね
私が冬の星を見つけるときは双子座の一等星を含めた
冬のダイヤモンドが好きなのです
貴女の星も失くしちゃいけない大切な目印

――同じ、です。笑ったりなんてしません
誰かに見つけて欲しいし、見つけたい
星を指先でなぞって彼方を彩繋に映し
冬にまた千景の星を探しに行きましょう?
約束、ですよ


「彗」
 呼び掛ける声に気づいて、朔・彗藍(ベガ・g00192)は大鍋をかき混ぜる手を止めた。見ればどこかこの辺りの家屋を建て直してきたのだろう、紫空・千景(夜明の導べ・g01765)が刀の峰を肩に預け、いつも通り背筋を伸ばして歩いてくる。
「食事の支度というからどこに行ったのかと思ったが、こんなところに調理場ができたんだな」
「ええ、仮ですけれど。少しでも、皆さんの力になれればと思って……そっちは、どう?」
「ああ、目につくところは復元を終えたよ」
 復讐者達の迅速な行動によって人的被害が抑えられた反面、踏み荒らされた家屋の被害は少なくなかったが、それも村人達との協力の下、大体の目途がついたところだ。この様子なら、人々が元の生活に戻るのにも支障はないだろう。
 何か手伝うことはあるか、と問う千景に調理台を見回し考えて、そうだ、と彗藍は口許を綻ばせた。
「それじゃあ、千景は味見をお願いできる?」
「……それはなんとも、役得だな」
 ふつふつと気泡の弾ける鍋の中身は、冷ややかな砂漠の夜に嬉しい野菜スープ。新宿島から持ち込んだ種々の野菜は柔らかく煮えて、触れればほろりとほどけていく。小皿に取ったスープは塩気に野菜の甘みが染み出して、どこかほっとするような優しい味がした。
「……うん。優しい、彗の味だな」
「ふふ、ありがとうございます。皆さんにも喜んでもらえるといいんですが――……千景?」
 傍らで、すうと息を詰める気配がした。返る言葉が途切れたのを不思議に思い目を向けると、夜明けの空に似た双眸はまるで吸寄せられるように、天穹を見つめていた。倣うように上方を仰げば、広大な砂漠を見下ろす空には零れんばかりの星屑が鏤められ、ダイヤモンドの如き輝きを放っている。
「わあ……」
 無意識に零れたいとけない歓声に眦を下げ、千景は傍らの友人に視線を戻した。なあ、と呼び掛ける声はビロードのように滑らかで、柔らかい。
「私みたいな星はあるか?」
「千景のような星……ですか?」
 戯れに問えば一瞬面食らったように瞳を瞬かせ、けれどもすぐに笑顔に立ち返って、彗藍は続けた。
「千景の星はジェミニ。……寄り添う双子座でしたね」
「私な、星の話を聞くなら彗と決めていたんだ。……一人っ子なのに双子座と言われて、昔はそれが不思議だった」
 星と宙をこよなく愛する彼女ならば、きっと誰より素敵な物語を教えてくれる。それに何より、『誰かに見つけて欲しい』と願う想いが、二人の間に通底しているような――そんな気がしたから。
 そう言って、千景はくつりと喉を鳴らした。
「違ったら笑っていいぞ」
「同じ、ですよ。笑ったりなんてしません。誰かに見つけて欲しいし――見つけたい、ですから」
 考える素振りで視線を廻らせて、彗藍は千景の腕を引き寄せた。篝火に長く伸びた影は双子のように並んで融け合い、千景の長い黒髪が彗藍の肩で雪白の糸と混じり合う。瞬く星を数えながらしばし、先ほどの問いに想いを巡らせて、彗藍は言った。
「私、冬のダイヤモンドが好きなのです。第六角形、とも言いますね」
「ふむ?」
 牡牛座のアルデバラン。オリオン座のリゲル――そのほか六つの一等星が形づくる、冬の夜空のビッグジュエル。首を傾げる友人を微笑ましげに見つめて、星の魔女は言った。
「双子座のポルックス――あなたの星も、失くしちゃいけない大切な目印なんです」
「……なるほど。そういうことか」
 彼女が見つけてくれるのなら、それはきっとこの上なく、嬉しいこと。穏やかに口角を上げて、千景は再び空へと視線を投げた。
「いつか、私の片割れに出会えるだろうか」
「探しに行きましょう。冬になったら二人で――ね?」
 掲げた手の指先で夜空の星を一つ一つなぞって、約束ですよと彗藍は笑った。空気の澄み渡る冬には、きっと星がよく見える。その頃世界がどんな彩をして、二人が何をしているのかは、今はまだ分からないけれど。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【建物復元】がLV5になった!
【口福の伝道者】がLV4になった!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!

ナディア・ベズヴィルド
襲撃が日中なら夜に寒さに震えながらバタバタする事もなかったのに
…と、亜人だからこっちの都合なんてお構いなしよね

【アイテムポケット】で豆や穀物等、当座の食料を運び入れ【口福の伝道者】を使い数を増やしましょう
私一人だと限度があるから他の方にも協力を申し入れるわ…
ん、デーツが美味しい(もぐぅ)

数が増えたら豆のスープを作り集落の人に配りましょう
まずは体を温めて、元気になってから明日の事を考えて…
今夜はゆっくりと休んでください
その間に私たちがやれる事をやっておきます

建物の修復のお手伝いをしたり、資材を運んだりと復旧を急ぎましょう
夜が更けてきたらもっと冷えてくるわ
みんな風邪を引かないように気を付けてね


「ん……デーツ、美味しい」
 干したナツメヤシをもぐもぐと咀嚼しながら、ナディア・ベズヴィルド(黄昏のグランデヴィナ・g00246)は呟いた。目の前に敷いた布の上には、ひと山のデーツと、新宿島から運び込んだ豆や穀物を使って作った温かなスープが並んでいる。木製の匙で透明なそれを掬い上げてみれば、煮えた野菜の甘い匂いが鼻先にふわりと香り立った。
「食材から増やせるなら手っ取り早いのだけどねえ……」
 どうも、痒いところに手が届かないが、それでもここでスープを増やしておけば、村人達の明日の食糧には困るまい。特に濃厚な甘みが特徴のデーツは保存が利くため、この近辺で採れるとはいっても増えるに越したことはない。他の仲間達にも頼んでこれを食事として摂取すれば、かなりの数が確保できるはずだ。
(「それにしても襲撃が日中なら、寒さに震えてバタバタすることもなかったのに……なんて、亜人にこっちの都合なんて関係ないわね」)
 日中の苛酷な陽射しもさることながら、砂漠の夜はひどく冷える。そんな気候にはとうに慣れているつもりだったが、褐色の膚を撫でて行き過ぎる風は涼しいというよりも寒いくらいだ。身に染みる温かなスープを飲み干して、ナディアは新しい器を手に取ると立ち上がった。
「さて、それじゃあこれを配っていきましょうか」
 エジプト生まれのナディアとは若干味覚が近いのだろうか、豆のスープは住民達の口にもあったようで、柔らかな笑顔が少しずつ広がっていく。繰り返し礼を述べて頭を垂れる老婆の肩に手を添えて、妖狐の娘は微笑んだ。
「まずは体を温めて、夜が更ける前にしっかりと休んでください。その間に、私たちがやれることをやっておきますから」
 先のことを考えるのは、それからでも遅くない。風邪を引かぬよう気をつけてと労って送り出せば、向けられる眼差しは心からの謝意に溢れて温かかった。 
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【アイテムポケット】がLV3になった!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!

鐘堂・棕櫚
【KB】
俺は寒暖差に慣れられる気がしませんが
骰さんなら根性論で乗り切れそうなのが不思議ですね
なんとかは風邪をひかないってやつです?

そりゃもう俺は仰る通り善良で温厚で人畜無害な生き物ですし
力仕事はお任せしておやつでも作りますか
つまり台所の修繕を大急ぎでお願いします!
ふは、対価がおやつで済む骰さんのが余程善良ですよね

ナツメヤシを混ぜ込んだ素朴な蒸しパンができたら
味見と称して【口福の伝達者】で数を確保し村の皆さんにお配りも
疲れた時も悲しい時も、甘いものはよく効きますからね

大丈夫、明日からはきっと良くなるばかりですよなんて
未来は誰にもわからないからこそ
つとめて楽観的に笑いながら、断言しておきましょう


鬼歯・骰
【KB】
砂漠の夜は冷えるもんだな
風邪ひきそうだがが、やっぱ生活してりゃ慣れなんかね
って、誰が馬鹿だはっ倒すぞ

ツリガネのぱっと見善良そうなとこは
こういう時にこそ役立てるもんだろ
いや、中身は全然違うだろが良い方向に盛ろうとするな
愛想担当は任せたとばかりに村人の対応は押し付けといて
瓦礫片付けたり、建物の修繕みたいな力仕事あれば怪力無双で手伝おう
…まぁ取り敢えずは注文のあった台所からやるか
あとで蒸しパン一個寄越せと注文だけつけとこう

嫌な騒動があった直後だ
働くのは俺らに任せてもらって
村の人らにゃゆっくり休んでて貰えりゃいい

頭上の馬鹿みたいに綺麗な星空ぐらい
地上もさっさと平和になるといいんだが


「砂漠の夜は冷えるって聞いたが……」
 見渡す限りの砂原を渡り、吹き付ける風は涼しいというよりも寧ろ冷たい。同じ季節でも新宿島の夜とは大違いだが、焚火を囲む村人達は特別に着込む様子も見えず、鬼歯・骰(狂乱索餌・g00299)は感心したように口にした。
「思った以上だな。風邪引きそうなくらいだが……やっぱ生活してりゃ慣れなんかね」
「うーん、俺は慣れられる気がしませんが」
 応じる声に目を向ければ、鐘堂・棕櫚(七十五日後・g00541)が新宿から持ち込んだ硝子のボウルを腕に抱いて、何かを泡立てている。色味からして、卵液だろうか? 泡だて器の先についたものがややもったりとして落ちるのを確かめてから、男はようやくこちらを振り返った。
「骰さんなら根性論で乗り切れそうなのが不思議ですね。なんとかは風邪をひかないってやつです?」
「誰が馬鹿だはっ倒すぞ」
「そんな……誰も馬鹿だなんて言ってませんのに……」
 しゅんと眉を下げるその言葉は、事実ではあるが納得がいかない。もっともこの人好きのする面構えこそ、事件に見舞われた村の人々にとっては親しみやすいのだろうけれど――被害者面するなと毒づいて、骰は言った。
「せっかくぱっと見善良そうな顔してんだ。こういう時くらい役に立ってもらうぞ」
「善良そうも何も。俺は実際、善良で温厚で人畜無害な生き物ですからね」
「良い方向に盛ろうとするな」
 善良で温厚で人畜無害な生き物は、人をナントカ呼ばわりしたりするまい。じろりと睨みつければ怖い怖いとおどけながら、棕櫚は抱えたボウルを平らな瓦礫の上に載せると、牛乳を加えてさらに混ぜ合わせていく。
「まあそういうわけで、力仕事は骰さんにお任せします。俺はおやつの蒸しパンを作りますので」
「その心は?」
「台所の修繕を大急ぎでお願いします!」
「…………」
 ためらいの一かけらもない笑顔で言い切られると、言い返す気も起きない。分かったよ、とぶっきらぼうに応じて、骰は辺りに散らばる瓦礫に手を掛けた。
「その代わり、愛想振り撒くのは任せるからな。あと、蒸しパンができたら一個よこせ」
「ふは、対価がおやつで済む骰さんのがよっぽど善良ですよねえ」
 ナツメヤシましましにしておきましょうね、と笑って、棕櫚は清潔な俎板の上に干したナツメヤシ――デーツをいくつか並べると、慣れた手つきで刻みだす。ぐにぐに、ねっとりとした食感と濃厚な甘みが特徴的なデーツを細切れにして、卵液に小麦粉を篩った種に混ぜ合わせれば、しっかりとした甘みと食感が楽しい蒸しパンができるはずだ。
「疲れた時も悲しい時も、甘いものはよく効きますから」
「まあな。……嫌な騒動のあった後だ。働くのは俺らに任して、村の人らにゃゆっくり休んで貰わねえとな」
 そう言って、骰は砕いた瓦礫の欠片を取り上げた。手頃な大きさのそれを組み合わせていけば、即席のかまどの完成だ。まともな石窯には程遠いが、蒸しパンを膨らせるだけならなんとかなるだろう。
「前から思ってたんですが、骰さんって意外と手先が器用ですよね」
「悪いか。それから、意外とは余計だ」
 叩き合う軽口もそこそこに、紙の型に小分けにした蒸しパンの種をかまどの内側に収め、これでよしと棕櫚は言った。焼き上がり次第このパンで二人が食事をすれば、村人全員に行き渡る数は十分確保できるだろう。
 余分な瓦礫を邪魔にならないよう道の脇に積み上げて、天を仰いで骰は言った。
「地上もさっさと平和になるといいんだがな。この――馬鹿みたいに綺麗な、空くらいに」
 頭上遥かに広がる空は無数の星彩を抱いて、白々とした耀きを放っている。大丈夫ですよと軽やかに笑って、棕櫚はきっぱりと断言した。
「明日からはきっと、良くなるばかりですよ」
 未来のことは誰にも分からない。それは言い換えれば、悲観的な想像なんてするだけ無駄ということだ。
 返る言葉に小さく鼻を鳴らして、骰は応じた。
「楽観的だな」
「性分なもので」
 爆ぜるかまどから立ち上る白煙が、ほのかに甘い匂いを帯びる。災禍に見舞われた人々の傷を癒すことは容易ではないけれど、優しい甘味は少なからず、彼らを慰めてくれることだろう。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【口福の伝道者】がLV5になった!
【活性治癒】がLV4になった!
効果2【ガードアップ】がLV4になった!
【ドレイン】がLV5(最大)になった!

茜來・雪璃
さてさて、此処の人達のためにもう一仕事といこうか!いづ!

被害を受け邪魔になってる瓦礫をスパッと【一刀両断】
持ち運びしやすいサイズにしておこ
使えそうな物は形を整えて、そうでない物と分けて置いておくね
他にも手伝えそうなことがあれば、お手伝いしていくよ

疲れた時は甘い物がいいんだよ
はい、おすそわけー
少しでも気持ちが落ち着きますように、て
持ち込んでいたゼリーを配って回ろうかな

んー
此処はほんと空が綺麗だねえ
星もいつもよりぴっかぴかだ
いづを抱き、持ってきたショールを巻いて
刻一刻、移り変わる色と瞬く星を見上げる

瞳に映る星空から連想した歌を口ずさみ、願い事ひとつ
此処の人達に沢山のしあわせが訪れますようにって


「こっちは他に手伝うことはない? ……大丈夫? ならよかった!」
 焚火を囲む人々の顔を一人一人覗き込んで、茜來・雪璃(朧夜ノ蝶華燈・g00793)は朗らかに笑い掛ける。瓦礫を斬って片して摘み直すことしばらく、復旧作業が進んで人々の表情にも幾許かの余裕が見え始めた。ぎこちなくも零れる笑顔を眺めていると、彼らも必死に立ち直ろうとしているのだと頼もしくも喜ばしい気分になる。そして――そんな今だからこそ、腹拵えは欠かせない。
「はいはい、おすそわけだよー。疲れた時は、甘いものがいいんだよ!」
 人間、空腹の状態ではなかなか前を向けないものだ。遠慮なく食べてねと手渡すフルーツゼリーはこの地の人々にはまるで馴染みはないだろうが、その物珍しさもまた、襲撃に張り詰めた彼らの気を紛らわせてくれるだろう。
「ふう……私もちょっと、休憩しよ」
 パッケージを開けられずに悪戦苦闘する人々を一通り手伝ってから、雪璃は焚火の傍らに腰を下ろした。振袖パーカーの腕を駆け上がって肩に飛び乗る桔梗の彩のクダギツネは、ご苦労様、と言っているかのようだ。
「いづもお仕事お疲れ様! それにしても、ここはほんとに空が綺麗だねえ――星もいつもよりぴっかぴかだ!」
 新宿島で見上げる空をくさすつもりは毛頭ないけれど、それはそれ、これはこれ。この地の夜空は普段、どれほど多くの星々が街の灯りに埋もれているのかを教えてくれる。空を見上げて吐く息は僅かに曇って、いつの間にか随分と気温が下がっていることに気がついた。
「寒いでしょ、いづ。ここにおいで」
 ぽんぽんと膝を叩けば降りてくるクダギツネを片腕に抱き、持参したショールを巻けば一安心。見渡す砂漠の風景は夜の中でも千変万化で留まることがなく、集落を照らす篝火の光と相俟って無限の彩を魅せてくれる。夜空を満たす星々の白々とした輝きに瞳を細めて、雪璃は誰にともなく口にした。
「この村の人達に、沢山のしあわせが訪れますように」
 頬を撫でる風に身を委ね、目を閉じ口遊むのは星の歌。この空でいっとう耀く綺羅星がもし、彼女の願いを叶えてくれるのなら、村人達の明日はきっと恙ないものになるはずだ。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【一刀両断】がLV2になった!
効果2【反撃アップ】がLV3になった!

フィオリナ・ネージュ
【雫猫】

自家製のハーブを持参して
村人さん達へハーブティーのお裾分け
カモミールとレモンバームを選んで
どうかリラックス出来ますように
栄養満点のヨーグルト、私も少し食べてみたい……!

砂漠の宵は少し肌寒いから
いとちゃん、こっち。一緒に入りましょう?
ブランケットに包まれて
見上げた夜天に燦然と煌めく星々
……不思議です、星はいつも空に在るのに
ここでいとちゃんと一緒に眺めると
違う景色みたいに耀いていて胸がぎゅって、なります

そうです、ね
一人より二人、素敵も楽しさも倍になるから
特等席から私達の星も見つけちゃいます?

いとちゃんの指先のフレームの中を覗いて
ふふ、想い出の写真ですね!
きっとずっと残っていく一枚は心の中に


雫芽・いとり
【雫猫】

私はヨーグルトを持っていってみよう
んー、せっかくだから現地の物も…
木の実…取れないかなあって
ナツメヤシの実に目をつけて
これで栄養沢山にもなるはず!
おいしくなぁれのトッピング
ハーブティーは今日も優しい香り!


夜空を見てから帰りたいな
…くしゅんっ
やっぱりちょっと寒いね?
フィオちゃんありがと…!
ブランケットに一緒に包まる
見上げる夜空はどこまでも続いてて
寄り添う温もりは寒さも忘れるみたいで

きっとね、一人なら一人分
二人なら二人分なんだよ
空からは誰にも等しく変わらないけど
見上げる私達からはここが特等席

あ、そうだ!
夜空に向かってそっと手を伸ばして
指でカメラの形を作ったなら
記念に一枚ね?なぁんて微笑んで


 復旧作業が軌道に乗り、家屋の復旧のめどが立つに連れて、村の広場には人の姿が増えてくる。焚火を囲んで座った村の大人達を訪ねて、フィオリナ・ネージュ(華たそがれ・g09310)は遥か新宿島から持参したティーポットを掲げてみせた。
「もしよろしければ、皆さんでどうぞ。気持ちが落ち着きますよ」
 いかがかしらと首を傾げれば、春の陽のような金色から淡く澄み渡る空色に移ろう長髪がふわりと揺れる。中身はカモミールとレモンバームのハーブティー――材料のハーブからフィオリナが育てたとっておきだ。亜人達の突然の襲撃からの復旧作業と慣れないこと続きの村人達が一息つくのに、これ以上のものはないだろう。
 ふわりと漂う香草の匂いを胸いっぱいに吸い込んで、雫芽・いとり(芽吹ノ雫・g09163)は屈託のない笑顔で言った。
「フィオちゃんのハーブティーは今日も優しい香りね!」
「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいです。いとちゃんのそれは、なあに?」
「私のはね、ヨーグルト! せっかくだからと思って、そこで採れたナツメヤシの実を入れてみたの。だから栄養もばっちりだよ!」
 おいしくなあれと魔法を掛けて、木の器に盛ったヨーグルトには賽の目切りのナツメヤシがトッピングされている。わ、と口許で白い指先を合わせ、フィオリナは碧眼を輝かせた。
「おいしそう。栄養満点のヨーグルト、私も食べてみたいです……!」
「たくさんあるから、一緒に食べよ! 夜空も見て帰りたいもんね」
 周囲の村人達に一通りお茶とヨーグルトを振る舞って、残りを二人分の食器に盛りつけ、少女達は集落を背に歩き出す。腰を落ち着けた椰子の木の根元からは、荒涼たる砂漠を照らすオアシスの燈火と、星の明かりを余すところなく見渡すことができる。
 くしゅん、と可愛らしいくしゃみが飛び出したのを耳に留め、フィオリナは荷物の中から大きめのブランケットを取り出した。
「いとちゃん、こっち。一緒に入りましょう?」
「う、ありがとフィオちゃん……やっぱり、ちょっと寒いね?」
「砂漠の宵は肌寒いと言いますから」
 肌触りのよい布の中で肩を寄せ合い、振り仰げば遥かな夜天には数えきれないほどの星々が燦然と耀いている。
「……不思議ですね」
「うん?」
 木の匙で掬ったヨーグルトを口へ運びながら、いとりはミントグリーンの鮮やかな髪を傾ける。生のナツメヤシはドライフルーツとは異なる爽やかな甘みで、フィオリナはほんのりと頬を緩めて続けた。
「星はいつも空に在るのに、……ここでいとちゃんと一緒に眺めると、全然違う景色みたい」
 今にも星の降り出しそうな空が見渡す限りどこまでも続く世界には、胸に迫るような美しさがあった。傍らの温もりが寒さを忘れさせてくれるから尚のこと、このままいつまででも見つめていられるような気がする。
 ふふ、と軽やかに笑み零して、いとりは応じた。
「きっとね、一人なら一人分、二人なら二人分なんだよ」
 たとえ一人で見上げても、この空はきっと美しいのだろう。けれど砂地に布を敷き、肩を並べて座った椰子の木陰が、彼女達の特等席だ。素敵、綺麗、楽しい――感じたことを一つ一つ分け合えば、弾む気持ちは二倍にも、三倍にも膨らんでいく。
 そうだ、と朗らかな声を上げて、いとりは星天に両手を掲げた。
「ね、フィオちゃん。記念に一枚、どお?」
 生憎と、カメラは持ってきていない。けれどフィオリナはすぐさま彼女の意図を汲み取ると、拳一つ分距離を詰め、細く滑らかな友の肩に頬を寄せた。
「想い出の写真、ですね」
 両手の指で作ったフレームが切り取る空は、小さな宇宙そのもの。形に残ることはなくともその輝きは、少女達の行く道を清らかに照らしてくれることだろう。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【口福の伝道者】がLV6になった!
【おいしくなあれ】LV1が発生!

マティアス・シュトローマー
ラト(g00020)と

こっちは家屋の修理が終わったところ
残留効果ってすごいよなー
「タネも仕掛けもありません」
なんて、本当の意味で使う日が来るとは思わなかった!
しかも俺の手品よりウケが良い……

【建物復元】で建物の修理をした後、同じく作業を終えたラトの元へ
焚き火の側に腰を下ろして、コインを弾きながらそんな冗談を

あんな事があった後だからね
心の傷までは治せないけど
その痛みを一瞬でも忘れられる時間になればいいなって

目が合えば、彼女の言葉を肯定するようにこくりと頷く
ラトがそう言ってくれるなら間違いないや

どうか彼らと(隣の彼女の)行く先が光に溢れたものでありますように
ついでに俺のも!
こっそりと星空に祈って


ラト・ラ
マティアス(g00097)と

復讐者たちにより村は守られた
…守ることができた
【活性治癒】で可能な限りの治療を終えて
修繕を完了させたマティアスと合流する

お疲れさま、と隣に腰を落ち着け
…手品も披露してみたの?
冗談にくすりと笑いながら、視線は空へ
新宿島では見られない数の星々
見守るように浮かぶ月
傷の深さはわかりかねるけれど、
此処の皆は力強く乗り越えるでしょう
そして未来には新たな幸せが……
……待っているはずです
自分に当て嵌めて無理矢理言い聞かせているみたい
つい言葉尻が弱くなる

隣を向けば、夜空に煌めくグレーゾイサイトの瞳が
そこに希望を――確かな幸いを見出して
わたしはそう信じます、としっかり言い直した


 ぱちぱちと薪の爆ぜる音が、夜の静寂に聞こえている。壊れた家屋の修繕を終え、和やかな食事の時間も過ぎて、多くの人々はそれぞれの寝床へ帰っていった。人影の疎らになった広場で一人、焚火の前に腰を下ろして、マティアス・シュトローマー(Trickster・g00097)は右手の銀貨を弾いた。再び握り込んだそれを何をするでもなく見つめていると、背後からさくさくと砂を踏む音が聞こえてくる。
「ここにいたの、マティアス」
 お疲れ様と少年を労って、ラト・ラ(*☽・g00020)はその傍らに座り込んだ。揺れる炎に瞳を輝かせて、マティアスは女の名を呼ばわる。
「ラトもお疲れ様。そっちはどうだった?」
「怪我をした人達の治療に当たっていました。多少、怪我の残る人はいるかもしれませんが……大事はないでしょう」
 復讐者達の奮闘の甲斐あって、オアシスの小さな村は最悪の事態を免れた。毎回こう上手くいくとは限らないのが辛いところだが、罪のない人々の命と暮らしを守ることができたことは素直に喜ばしい。
 そちらは、と首を傾げるラトへ得意気に笑い返して、マティアスは言った。
「こっちは、建物の修理が終わったところ。残留効果ってすごいよなー。『タネも仕掛けもありません!』なんて、本当の意味で使う日が来るなんて思わなかった。……しかも」
「しかも?」
「……俺の手品よりウケがいい」
「まあ」
 嘘か真か、冗談めかした言葉にくすりと笑み零して、ラトは焚火の煙の行方を追って遥かな空を仰ぎ見る。今やすっかり見慣れた新宿島の夜景も嫌いではないけれど、この満天の星々は凡そ、東京で見られるものではないだろう。
「村の人達は、もう休んだのでしょうか」
「みたいだよ。でも、食事は結構、楽しんでたみたい」
 問う声に再びピンとコインを弾きながら、少年は応じた。
「あんなことがあったからね。心の傷は治せないけど……一瞬でも痛みを忘れられる時間になったなら、よかったよ」
 『蹂躙』を未然に防ぐことができたとはいえ、亜人の襲撃があったことは事実だ。この村の人々の心に刻まれた本物の恐怖は、当分褪せることがないだろう。怪我を負わされた者、襲われた者――今宵の出来事はそれぞれの中に、深さや形の違う傷となって残り続ける。
 そうですね、と引き取って、ラトはしばし黙り込み、慎重に言葉を選びながら続けた。
「傷の深さはわかりかねるけれど、ここの人達は力強く乗り越えるでしょう。そして未来には新たな幸せが……」
 待っているはず、です。
 そう続けた声は自分でも分かるほどに細く、頼りなく響いた。まるで自分自身に言い聞かせているかのように思われて、ラトは長いワンピースの裾を無意識に掻いた。この世界に――少なくとも、この改竄世界史に暮らす人々に、本当の意味での『未来』はない。だがそれでも明日の幸福を願ってしまうのは、間違いなのだろうか?
 迷い掛けた意識を現実に引き戻したのは、そっか、と応じた屈託のない声だった。はっとして傍らへ視線を向ければ、グレー・ゾイサイトの星のような双眸が、信頼に満ちてきらきらと彼女を見つめている。
「ラトがそう言ってくれるなら間違いないや。そうだよな――きっとそう!」
 満面の笑顔で頷いて、マティアスは胸の前で手を組み、目を閉じた。
「どうか彼らの行く先が、光に溢れたものでありますように。それから……」
 それから、と、紡いだ言葉の先は小さく窄んで、聞き取ることができない。けれども分かるような気がして、ラトは柔らかに頬を緩めた。
「少なくとも、わたしはそう信じます」
 彼のように真っ直ぐに、未来を信じる人がいるということ。それ自体が希望なのだと、識っているから――道の先が見えなくても、歩いていける。
 嵐の後の穏やかな風に包まれて、砂漠の夜は粛々と更けていく。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【建物復元】がLV6になった!
【活性治癒】がLV5になった!
効果2【能力値アップ】がLV10(最大)になった!

ナディア・ベズヴィルド
襲撃を受けた街から離れて
紅海沿岸より少し陸側、南東に向かって目立たぬ高度で【飛翔】を用いて周囲を偵察を

なぜ今になって侵略してこなかった地を侵略するか
新たな大灯台を作るのかそれとも――
本来の目的から私たちの目を逸らすためにわざと亜人共を向かわせたか

そんな策を凝らすのは例の蟲将しか思い当たらない
噂に聞けばバビロンの塔で色々指示を出して動いているらしいな

亜人の形跡がないか慎重に移動し
万が一敵影を発見したら、見つからないように遠くから様子を伺う
また【動物の友】を使い、鳥や動物を見かけたら亜人や変わったものが流れ着いていないかも聞いてみよう


胡・夢瑶 (サポート)
『一名様、ご案内致します』
モーラット網々は必要に応じて召喚
所持しているパラドクスはどれでも使用可/アイテム・残留効果の使用に制限無し

どのような依頼にも、真摯に取り組ませて頂く所存でございます。
ですが依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動は控え……堅物? さようでございますか?
融通が利かぬ所もございましょう。改善するよう心掛けますわ。
腹黒い? うふふ、何の事でございましょう。
では少々はしたのうございますが、暴力で解決と参りましょうか。

(コミカルなシナリオやキャラ崩壊もどんとこいです!
 どのような役割でも問題ありません。
 他の参加者様を格好良く描写する為に便利にお使いください)


アンナ・ローザ (サポート)
復讐に燃え、真面目に依頼に取り組む少女です
自身の感情より任務の成功優先、一般人の安全も可能な限り優先

日常、冒険はマリアと共に頑張ります

戦闘は、手に持った大きな旅行鞄から自分と同サイズの球体関節人形を取り出し戦わせたり、マリアに協力してもらったりします
人形はただの武器であり道具であると思っているので素体のまま飾り付けず、丁寧に扱うこともありません

己を律し真剣に戦う姿、マリアに振り回されつつ頑張る姿、どちらを描写いただいても嬉しいです

●マリア
かわいいもの大好き、マイペースなモーラット
アンナを遊びに巻き込むのが得意
もきゅとかきゅーとか好きに鳴いて動いていると嬉しいです!

あとはお任せします!


 朝ぼらけの砂漠に、風の鳴く声が渡っている。
 夜の明けきらぬうちにオアシスの村を発ち、闇に紛れて低空飛行で西進すること凡そ十数キロメートル――ナディア・ベズヴィルド(黄昏のグランデヴィナ・g00246)をはじめとした復讐者達は、紅海の岸辺に到達していた。岸壁の縁から見渡す世界は、一面の砂漠と海を照らす曙光の中で茜色に染まっている。
「何も――見えないわね」
 長い髪をはためかす潮風に眉をひそめながら、ナディアは言った。亜人の形跡がないか、敵影がありはしないかと目を凝らし、耳を澄ませてみても、周囲一帯は風と波の音だけが打ち寄せるだけで静かなものだ。勿論、クロノヴェーダの根城や軍備のようなものも見当たらない。
 そちらはどう、と尋ねれば、アンナ・ローザ(ヴェンデッタの糸・g03283)がくるりとこちらを振り返る。白いボレロの腕の先、差し出した細い手の甲の上では、桃紅色のリボンをつけたモーラット・コミュが身振り手振りを交えながら何がしかを訴えている。
「もきゅ! もきゅもきゅ! もきゅう!」
「こっちの方角は何も見えないそうよ。辺り一面、砂漠ですって」
「もきゅっ! もきゅ! もきゅきゅう!」
「こちらも同じくにございます。いささか拍子抜けする思いではございますね」
 こちらは明るい若草色のリボンが目を引くモーラットを撫でながら、胡・夢瑶(インセクティアの特級厨師・g03336)も言葉を重ねた。そうですか、と応じてナディアが首を傾げると、髪を飾った金の細工がしゃらりと軽やかな音を立てる。
 集落からここへ至るまでの道中にも特筆すべきものは何もなかった。皆が注意深く目を光らせていたし、そうでなくともこの見通しの良い砂漠地帯で亜人のような目立つ者達を見落とすとは考えにくい。となると――本当にこの辺りでは敵の動きがないのだろうか?
 ここで取り立てて目につくものといえば、乾き、ひび割れた地面をトコトコと行くトカゲが一匹だけ。すいとその傍らに屈みこんで、ナディアは尋ねる。
「この辺りに、何か変わったものが流れ着いていないか知らない?」
 残留効果の影響もあり、小さなトカゲは逃げ出したりはしなかったが、残念ながら有益な情報は何も持っていないようだ。ふむと口元に手を添えて、ナディアは思案する。
「……気になることは、それだけじゃないのよね」
 少なくともこれまで、亜人達はアラビア半島には手を出してこなかった。それがなぜ今頃になって、この地の『蹂躙』を始めたのか。その背景には、クロノヴェーダ側に何らかの変化があったと見て然るべきなのだろうが、今のところ何かを断定できるような情報はない。イスカンダルの地で起きたこれまでの出来事を頭の中でなぞりながら、宵色の狐は続けた。
「ここに新たな大灯台を作ろうとしているのか……それとも本来の目的から私たちの目を逸らすために、わざと亜人どもを向かわせたのか。……なんにしても、奴らにそんな頭があるとは思えない」
 策を凝らし、彼らに入れ知恵をしている者がもしあるのだとすれば、それは。先の歴史の奪還戦で中国は三国志の地より逃げ延びた、件の蟲将以外には考えられぬと思うのだが――。
「法正、でございますか」
 蜜柑色の鮮やかな漢服の胸にモーラットをぎゅうと抱き締めて、夢瑶は複雑そうに眉をひそめた。かの地に生を受けた者として、そこから染み出した異物がこのイスカンダルで暗躍することには思うところがあるのだろう。
 ええと重々しく頷いて、ナディアは応じた。
「聞けばバビロンの塔で、色々指示を出して動いているらしいわ。何を考えているのかしら……」
「…………」
 答えを持たない問い掛けを浚うように、砂混じりの風が吹き抜けた。トリコローレの長いリボンが絡むアンナの長い銀髪が、紅海の空をひらりと泳ぐ。
 旅行鞄を両手に携え海を見つめる薔薇色の瞳には、幼さの多分に残る横顔に反して強く、確固たる意志が覗いていた。それはあの日守れなかったものへの悔恨であり、復讐への情熱、誓いでもあるのだが――。
「もきゅ?」
 モーラットの細い手が、ぶに、と少女の頬に沈み込んだ。何をするのと俄かに慌て、アンナは毛玉を腕の中にしまい込む。一連のやり取りに思わずくすくすと声を立てて、夢瑶は笑った。
「あまり難しいお顔をなされませんように、と、おおせのようでございますよ」
「もきゅもきゅ!」
 そうだそうだというように、トラツリアブの少女の腕でもう一匹のモーラットが両手をばたつかせる。微笑ましい光景に毒気を抜かれるような思いで、ナディアは微笑み、そして言った。
「それじゃ、そろそろ戻りましょうか」
 クロノヴェーダ達の思惑について、確かなことはまだ分からない。だがこの一帯に敵の姿が見えないと分かったのは、一つの成果と言えるだろう。そしてもう一つ、はっきりと言えるのは――来たる七曜の戦に向け、世界が大きく動き出しているということだ。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​
効果1【動物の友】LV1が発生!
【液体錬成】LV1が発生!
【現の夢】がLV2になった!
効果2【反撃アップ】がLV4になった!
【ロストエナジー】がLV3になった!

最終結果:成功

完成日2023年07月03日

アラビア半島沿岸偵察作戦

 攻略旅団の提案に従い、アラビア半島の紅海方面の探索に向かいます。
 制圧したカナンの地から南方に向けて、探索の手を伸ばしていきましょう。

 アラビア半島は、アレキサンダー大王の統治が始まってから間もないようで、一般人が平和に暮らす砂漠のオアシスなども存在しているようです。
 しかし、この住民達を狙い、亜人達が砂漠を徘徊しています。
 彼らは集落を見つけ出しては、男を皆殺しにして、女を蹂躙するような悪行を繰り返して、亜人戦力の強化を目論んでいます。

 アラビア半島沿岸地域の偵察と合わせ、亜人の暴虐から、蹂躙される住民を助け出してあげてください。


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#アラビア半島


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選択肢『アラビア半島で情報収集』のルール

 攻略旅団の方針に従って、紅海方面の情報収集を行います。
 救出した集落から近い、海岸を偵察して情報を確認しましょう。

 紅海の情報以外にも、望むのならば、アラビア方面の情報収集を行なう事も出来ます。
 詳しくは、オープニングやリプレイを確認してください。


 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、シナリオは成功で完結する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢『復興支援』のルール

 クロノヴェーダの襲撃などで困窮している人々を救う、復興支援を行います。
 事件で破壊された直後の建物の修復はパラドクスで行う事ができるので、事件以前から壊れていた建物の修復、食料の支援、農地の開墾などの支援を行ってください。  どのような支援が必要であるかは、オープニング及びリプレイで確認してください。

 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 なお、この選択肢には、特殊ルールはありません。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👾一般人を襲うトループス級『ミノタウロスの狂戦士』のルール

 周囲の一般人を襲撃するトループス級クロノヴェーダ(👾)と戦闘を行います。
 放置すると村や町を破壊したり一般人を虐殺してしまうので、被害が拡大する恐れがあるでしょう。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「沢山」出現します(現れる敵の数は、オープニングの情報やリプレイの記述で提示されます)。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『この選択肢の🔵が👑に達すると、この敵集団を倒す。完結までにクリアしていない場合、この敵集団は撤退する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👿アヴァタール級との戦闘『ゴブリンメイジ』のルール

 事件解決の為に、アヴァタール級クロノヴェーダ(👿)と戦います。
 👿を撃破するだけでは事件を解決できないので、戦闘終了後、必要な行動を行ってください。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「1体」出現します。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 なお、この選択肢には、特殊ルールはありません。
※このボスの宿敵主は「シメオン・グランツ」です。
※クロノヴェーダには、同じ外見を持つ複数の個体が存在しますが、それぞれ別々のクロノヴェーダで、他の個体の記憶などは持っておらず、個体ごとに性格なども異なっています。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。