【大戦乱群蟲三国志奪還戦】陰差す春(作者 猫鮫樹)
#大戦乱群蟲三国志
#【大戦乱群蟲三国志奪還戦】慈愛の賢女『張春華』
#大戦乱群蟲三国志奪還戦
#兵馬俑坑
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「はぁ……」
その吐息は憂いを帯び、空気に溶けていく。
慈愛の賢女『張春華』が見つめる先には、石造りのように動かない蟲将の群れがあった。
兵馬俑地下に並べられた蟲将に、困り顔をその美しい顔に浮かべて再度溜め息をつく。
「本当に困りましたわ。まさか、曹操がディアボロス如きに敗れ。劉備が断片の王になるなんて……」
それも予定よりも3か月以上早い決戦となるなんて。吐息混じりに零された言葉にさらに憂いが重なり落ちる。
張春華は動かぬ蟲将をもう一度見つめてから、すぐに考えるように目を閉じた。
「兵馬俑の蟲将は、七曜の戦で最大の力を発揮できるように調整していたというのに……しょうがありません」
そうして呟いた言葉とともに目を開けた張春華。彼女の瞳には強い光があった。
「育成中の戦力の一部を兵馬俑の防衛に回しましょう。本当に、不甲斐ないことです」
眉を下げた張春華は強い光を湛え、決戦へと挑むのだった。
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「やあ、集まってくれてありがとう。前哨戦の案内をさせてくれるかい?」
いくつものパラドクストレインが行き交う新宿駅グランドターミナルでゼタ・ドゥーリヤ(星の雫・g03218)が、集まったディアボロスたちに息つく間もなくそう告げる。
「案内するのは大戦乱群蟲三国志だよ。このディヴィジョンでは、曹操・劉備・孫権の三英傑を争わせる事で強大な断片の王を生み出し、七曜の戦の勝利を目指していたのは知っての通り。だけど、皆のおかげで三英傑の1体『呉王・孫権』を倒し、更に三国最大勢力だった『魏王・曹操』も倒すことに成功」
端末を操作しながらも、ゼタはディアボロスたちが力を尽くしてくれたことに笑みを浮かべてみせる。
孫権、曹操を倒したことにより、消去法的に『蜀王・劉備』が断片の王に覚醒するも、その権力基盤は弱く、排斥力の低下もあり周辺のディヴィジョンの侵略を許してしまっていると、ゼタは続けた。
「この状況を打開するため、蜀王・劉備は『魏への北伐』と『呉への東征』を宣言したんだよ。諸葛亮に『出師表』を読み上げさせて、史上最大規模の大戦乱を引き起こそうと全軍に出動命令を出しているんだねぇ」
大戦乱により、魏や呉の領土内の全ての人間を殺し尽くし、そこから生まれるエネルギーとその死体を利用して生み出すトループス級の大軍勢で、隣接ディヴィジョンからの侵略者とディアボロスの双方を討ち取ろうというらしい。
ゼタは眉根を寄せて、端末を睨みつけて小さくため息を吐いた。
「こんな暴挙許せるはずもないよねぇ……。劉備が大戦乱を引き起こす前に『大戦乱群蟲三国志奪還戦』を仕掛け、大戦乱から人々を救いつつ、中国大陸の最終人類史への奪還を目指す……これを君たちにお願いしたいんだ」
中国全土で大戦乱を引き起こそうとする蟲将の軍勢と、周辺ディヴィジョンからの侵略者の軍勢に対して、戦争直前に攻撃を仕掛けて戦力を削る事で、戦争の機先を制する事ができるだろう、とゼタはギザ歯を見せて笑いながらそう言った。
「敵は大戦力だよ、だから引き際を間違えず、充分な打撃を与えたらすぐに撤退することが重要だからねぇ?」
そこまで説明を終えたゼタが端末をしまう。
青色の澄んだ瞳がゆっくりとディアボロスを見つめ、それからすぐに言葉を紡いでいく。
「蜀の劉備勢力とは、小競り合い程度しかしてないからその戦力はかなり温存されているみたい。だけれども君たちなら大丈夫だと信じてるからねぇ」
しっかりと力を見せつけてきて、とゼタは微笑むといつものように両手を組んだ。呟かれるのは祈りの言葉だ。見送る背中に星々の加護があらんことを、そう口にしたゼタはゆっくりと瞳を細めるのだった。
リプレイ
御守・樹
アドリブ連携歓迎
有効な残留効果は適宜使用
まさかはるかちゃんの名をこのディヴィジョンで聞くとはなぁ。(三国志ゲームやってた友人が張春華のことを「はるかちゃん」と渾名してたのがうつってる)
割と有名どころは武将に限らず蟲将になってんのか。
感慨深いが決戦だし、気合入れてくか。
先手必勝、パラドクス神立で銃弾の雨を叩き込む。
数もいるし殲滅できないってんなら少しでも不意打ちして倒せるだけ倒してしまおう。
完全視界で吹雪による視界不良は何とかなるだろうしこれで氷塊や氷刃は回避できそうだ。寒冷適応があれば動きを鈍らせられる事もなさそうだけども、ないなら忍耐力で耐えるしかないか。
無銘・黒
連携・アドリブ歓迎
油断は出来ないし、する気も無い。
というか、育成するなら少しは見た目に気を遣って油断を誘うとか逆に威圧するとかカッコ良くするとか…量産型気分だとしても浪漫が無いと俺は主張する!
何処かで得た知識で言えば、こういう敵には炎攻撃が効くんじゃなかろうか?よし『ナナシ』ブレスだ。焼き払え!いや、薙ぎ払え?取り敢えずなるべく近付かれ無い様に削って行け!
敵のPDにはこっちも選択PDで対抗!精神を集中し【完全視界】で闇に紛れてもキッチリ確実に燃やして刻んで一丁上がり!
適当に暴れて数を減らしたら仲間に当たら無い様にブレスで牽制と、ちょっぴり明るくなれば良いなの精神を見せながら、囲まれる前に離脱。
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春の温かな空気に陰が差す。兵馬俑坑を支配する慈愛の賢女『張春華』が防衛に回した大群のトループス級が陰鬱な気を纏って連なっていた。
「まさか、はるかちゃんの名をこのディヴィジョンで聞くとはなぁ」
しみじみとそう口にしたのは御守・樹(諦念の珪化木・g05753)だ。どうやら三国志ゲームを嗜んでいた友人が『張春華』のことを「はるかちゃん」と渾名で呼んでいたのが、樹(諦念の珪化木・g05753)にうつったのだろう。
感慨深い、と鬱々とした空気を漂わせている『屍魔・陰』を見つめていると、
「というか、育成するなら少しは見た目に気を遣って油断を誘うとか逆に威圧するとかカッコ良くするとか……量産型気分だとしても浪漫がないと俺は主張する!」
声高に言ってのける無銘・黒(旅する人の子・g02914)に、確かにと思わず頷いてしまいそうになるのは何故だろうか。
兵馬俑坑を支配し、戦力として育てているなら見た目にこだわるべきなのだと主張したい気持ちも否定はできない。しかし、今はそんなことを言うよりも戦力を削る方が優先だ。
「決戦だし、気合入れていくか」
「油断出来ないし、する気も無い」
春風に乗せた二人の言葉が屍魔・陰の大群に向けられる。駆けだした足が土を蹴り上げ宙を舞う。二人の背中を追うように他のディアボロスたちも動き出していた。
先手必勝――樹が向けて放ったのは春雨なんて優しいものではない。
樹が降らせたのは銃弾の雨だ。パラドクス『神立』によって放たれた銃弾の雨が、屍魔の体を貫いていく。
春にばら撒かれた憂いを払うかのような一撃が開戦の合図となり、屍魔もディアボロスたちを迎撃するためにその力をふるう。
暖かな春を消し去ろうというのか、冷たい氷の刃が樹の肌を切り裂いていた。数も多く殲滅することが叶わなくとも、樹は少しでも多くの屍魔を倒そうと強い思いを胸に立ち向かっていく。
「よーく狙って……刈り取るっ」
銃弾の雨と氷の刃が飛び交う中で、黒が樹の背後から勢いよく飛び出していた。
こういう敵には炎攻撃が効くんじゃなかろうか? と何処かで得た知識を口にして、黒は共に戦場に来ていたミニドラゴン『ナナシ』にブレスを指示する。
ナナシとの協力技でもある人竜葬撃を受けた屍魔が地面に倒れていく姿を見る事もなく、黒は足を止めることなく走り続けた。
戦場全体を包む闇に恐れることなく、勇気を胸にナナシと仲間である樹たちと協力しながら、その身が傷つくのも厭わずに戦い続けていく。
兵馬俑坑には倒しても倒しても、すぐに屍魔が現れる。持久戦になってしまえばこちらに利がないのは明白だ。
「囲まれる前に離脱っすね」
「そうだな! 皆が逃げれられるように道を開きながら撤退だ」
黒と樹を顔を見合わせると、攻撃を続けながら撤退するために後方へと走り出していくのだった。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【完全視界】LV2が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
音羽・華楠
大戦乱群蟲三国志の最終決戦です――
気合い入れていきますよ!
敵は毒の花粉を撒き散らしてくる……と。
厄介ですが、対策はあります――
――《雷幻想・瑞鳳》!
私自身が毒に蝕まれて動きが鈍ろうと、雷で構成された式神である《瑞鳳》なら、如何にパラドクスによるものでも毒花粉の影響は薄いはずです。
少なくとも、私自身よりは毒花粉の中でも動けるはず。
《瑞鳳》に命じ、屍魔・陰たちを蹴散らします!
ですが、あまり《瑞鳳》を高く飛ばせると恰好の的にされそうですし。
低空の雷速飛行で翻弄、すれ違いざまに爪や嘴で敵を引き裂かせます。
……私自身が倒れるまで毒に侵されては本末転倒です。
意識が朦朧とする前に、敵陣の混乱に乗じて撤退を。
ルーシド・アスィーム
アドリブ、連携歓迎
死者を弄ぶ聖女に相応しき罰を与える為、哀れな死者に再度の死を
……代わりにその憎しみ、怨み、必ずや晴らします
紡ぐは『バステトの託宣』
女神が御言葉である、汝ら悉く自害せよーー!
対象は集団の中心部に近い敵、及びそこから幾らか距離を置く敵
呪華毒陣、或いは滅界氷獄を己自身に使わせ、攻撃の妨害と自傷での死に導くと共に、毒や荒れ狂う氷獄で周りの屍魔も傷つけさせる事を狙います
難しくとも、集団の足並みを乱せば仲間も追撃しやすい筈
また、相手の追撃を避ける為、ジンにフェイントを交えた風の力を纏う斬撃を放って貰い体勢を崩したり、結界術で一時的に籠の鳥にしての妨害も試み囲まれないよう立ち回りましょう
モリオン・スモーキー
アドリブ・連携歓迎
SPDにて周囲の味方ディフェンス
どのような相手だとしても侮るわけにも行きません。
倒せるものは倒すのみ。
ダッシュで近寄りつつパラドクスで吶喊します。
毒であろうが何だろうがパラドクスの火で燃やし尽くしていきます。
もしくは薙ぎ払いの風圧や衝撃波で吹き飛ばします。
全てを燃やし尽くす火の華を見ていくといいです。
後は適当なところで撤退すればよいかなと。
「大戦乱群蟲三国志の最終決戦です。気合い入れていきますよ!」
先行していく黒と樹の背中を追いかけながら、音羽・華楠(赫雷の荼枳尼天女・g02883)の凛とした声が響き渡る。
華楠の隣にはルーシド・アスィーム(星轍・g01854)とモリオン・スモーキー(存在奪われし魔術発明家・g05961)が、それぞれ武器を構えて大群の屍魔に突撃していく姿があった。
前哨戦であるこの戦い。戦力を削る為に三人は春疾風の如く駆け出していく。
「どのような相手だとしても侮るわけにも行きません」
倒せるものは倒すのみ。モリオンの灰色の瞳が燃えるような強い光を魅せると、闘志を籠めた武器を大きく一振りする。
その一振りからは空をも焦がさんばかりの炎熱の波が巻き起こり、四体の屍魔の体を吹き飛ばし燃やし尽くしていったのだ。
その熱を消し去ってやろうとする凍てつく吹雪を生み出した屍魔も、氷の刃で応戦するもモリオンの攻撃に次々とその陰を消し去っていた。
地面に倒れる数も相当ではあったが、大群で押し寄せるクロノヴェーダの数は減っている様に感じられない。
「死者を弄ぶ聖女に相応しき罰を与える為、哀れな死者に再度の死を」
冷ややかな赤い瞳が屍魔を捕らえる。その瞳に溢れるものは一体何か。それはルーシド本人にしかわからないことだろう。
モリオンを襲う吹雪を消し去るように、ルーシドが『バステトの託宣』を紡ぐ。
「女神が御言葉である、汝ら悉く自害せよーー!」
力強い言葉が屍魔の鼓膜を揺らしていく。神力を込めて発せられた言葉によって、屍魔はその命を散らしていく。
まるで桜の花が風で散らされていくがの如く、数体の屍魔の亡骸が地面に転がる。
戦場というのは恐ろしく惨たらしいものである。毒の花粉が舞い散れば、なおなら悲惨な空間と成り果てていく。
モリオンとルーシドは共に追撃によるダメージを抑え、囲まれないように立ち回っていくがやはり数の暴力というのは酷いものだった。
「毒の花粉を撒き散らしてくる……と。厄介ですが、対策はあります――」
――《雷幻想・瑞鳳》!
凛とした声がふわりと戦場に満ちた。銃弾の雨が降りしきり、燃える炎が滾り、託宣が下るその場所へ、華楠が軽やかに地面を蹴り上げて突き進む。
共に突き進む仲間とともにパラドクスで雷の化身である鳳凰の姿の式神を降臨させた華楠もまた、群れる屍魔の体を鳳凰の鋭い嘴や爪で切り裂き焼き尽くす。空に走る稲妻のような、激しい雷霆で焼かれる屍魔の体は黒く焦げ付き異臭を放った。
毒の花粉もまた激しく撒かれ、華楠たちの体を蝕み思わず膝をついてしまいそうになるが、ここで倒れてしまっては本末転倒だ。
必死に意識を保ちながら、パラドクスによる攻撃の手を緩めないように力を籠めていく。
「深追いはせず撤退をしましょうか」
「ええ、敵の足並みは乱れているようですから、このまま……」
「そうですね、この混乱に乗じて撤退しましょう」
モリオンの言葉にルーシドと華楠はいまだに数多く残る屍魔に視線を向けてから、すぐに撤退へと走り出した。
仲間が切り開いた撤退するための時間を無駄にしないように三人は再び来た道を駆けていくのだった。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
効果1【飛翔】LV1が発生!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
【防空体制】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV2が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
湯上・雪華
絡み、アドリブ等完全受け入れ
大怪我描写大歓迎
今回は数を食べないとですからね……
アレに明け渡しましょう
そのほうが早いですからね
口上はいらないか、貪り喰らいましょう
妖刀に宿る渇望の呪詛に器を明け渡します
はぁ……よくにたものばかりくらわねば、か
いくさとなればさもありなん
であれば、われはくらうのみ
ひょうせつていどぜひもなし
それらもいたみもくらい、がらんをみたすのみよ
……ここまでとするか
たしょうなりともみたされたゆえ、しりぞかん
陳・桂菓
敵兵が想定より万全でないらしいのは、僥倖だな。
こちら陣営も連戦につぐ連戦になるが、まあ、私含めあいにくと元気一杯なようだ。残念だったな、張春華。
使用武器は双短戟『騰蛟昇竜』
数が相手ならば、こちらの攻撃は手数と範囲を重視した【砕空狼牙】で対抗しよう。
飛来する氷刃や氷塊は斬撃波でも、あるいは武器に纏わせた闘気の渦に巻き込む形ででも迎撃できるだろう。
吹雪に負けずに体を動かせるか、敵の弾幕量に負けず手数を生み出し、斬撃波を敵まで届けられるかの勝負になってくるが……まあ、この辺は気合いで何とかするしかあるまい。
何となれば、こちらが敵の攻撃を引き受けている間に味方が攻めてくれるという格好になってもいい。
屍魔の大群の中で陳・桂菓(如蚩尤・g02534)は普段と変わらぬ堂々とした姿で、双短戟『騰蛟昇竜』を構えていた。
「敵兵が想定より万全でないらしいのは、僥倖だな」
「そうですね、今回は数を食べないとですからね……」
風に舞う髪を抑え、数え切れないほどの陰鬱な空気を生み続けている屍魔に湯上・雪華(悪食も美食への道・g02423)は金色の瞳をゆるりと細める。
激化する戦場の音は絶え間なく不穏な音色を奏で、春の優しい空気を淀ませていく。すでに先陣を切り、屍魔を倒す仲間たちも疲労感が滲んでいた。
撤退するにも、屍魔の群れを切り崩さなければいけないだろう。
桂菓が騰蛟昇竜をしっかりと両手に握り、屍魔の群れに飛び込んだ。勇ましい気迫で、闘気の渦を纏わせた騰蛟昇竜を高速で振り回し、広範囲に斬撃を放っていく。
「アレに明け渡しましょう。その方が早いですからね」
桂菓が放つ斬撃に倒れていく屍魔を見つめながら、雪華はぽつりと呟いた。雪華の手には一振りの妖刀がある。何かを求め続け、渇望し続ける呪いを有した妖刀だ。
すらりと鞘から引き抜かれた刀身が、艶めかしい銀色の光を揺蕩えた――その刹那、雪華の雰囲気が変わった。
見目は変わらない、しかし纏う空気は虚ろであった。
「はぁ……よくにたものばかりくらわねば、か」
うつろはくらう。くらうはうつろ。
屍魔は雪華の異変に気付いたのか、その手を向けるが……届くことはなかった。
渇望の呪詛を黒い手として実体化した、貪り喰らうモノ――雪華のパラドクス攻撃によって屍魔の命が散ったからだ。
がらんをみたすために、いたみもすべて、くらいつづける。
屍魔をまるで取り込もうとするように蠢く黒い手が屍魔を食らい離す事はなかった。氷の刃が降り注ごうと、肌を切り付け赤い血が流れようとも、雪華は「くらうのみ」と唇に弧を描いた。
「吹雪というか、氷の刃の弾幕量は凄まじいな」
雪華の隣に戻った桂菓が思わず零す。仲間が削った屍魔は山のように重なり倒れているはずなのに、いまだに増えている様に感じてしまう。
「樹たちが撤退し始めたな……」
桂菓がちらりと後方へ視線をむけると、銃弾の雨を降らしながら撤退する仲間たちの姿が見える。ならば、と桂菓は押し寄せる軍勢へとさらに再び飛び込んでいた。
その姿を雪華もうつろな瞳で見つめながら、屍魔を食らい続けていく。
敵の攻撃を引き付ける桂菓に合わせて、雪華も深い傷を負いながらも貪り喰らうモノを発動させ続けた。
蝕む痛みも、流れ出る血液の温かさも、すべて伽藍の体を満たせるものなのか。
「……ここまでとするか」
「ああ、これ以上深追いをしてしまえばこちらが危険だろう。華楠たちも撤退できたようだし、私たちも戻ろう」
多少なりとも満たされたのだろう雪華の言葉に、桂菓も同意するとすぐさま屍魔を蹴散らしながら走り出していく。
兵馬俑坑を支配する慈愛の賢女『張春華』の姿は見えなくとも、奪還戦のときに相まみえることとなるのだ。
焦るべきではない、と。かくしてディアボロスたちは慈愛の賢女『張春華』が防衛に回した屍魔・陰を全てではないが倒して戦略的撤退を無事にしたのだった。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【温熱適応】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
【反撃アップ】がLV2になった!