リプレイ
一騎塚・喜一
復興作業はこれまで何度かお手伝いさせて頂いたことがあります
そこまで器用なことは出来ませんが力仕事で些かなりともお役に立てましたら
それでは家屋の修理をお手伝いします
攻略旅団で準備して頂いた物資はありがたく持っていき現地の方々に配布します
皆様どこかギクシャクしているご様子…?
ならばこちらも水路側に倣って歌ってみます?
少しでも楽しく作業が出来たら打ち解けて頂けるのではないかと
思いを込めて、歌います
えっ、下手くそだなぁって?
それじゃあ貴方が歌って下さいよー!
私の下手な歌で笑って少しでも気楽になって打ち解けて頂けたら
作業も捗るかなと
あとは【怪力無双】を発揮して資材の運搬や瓦礫の撤去を行います
文月・雪人
圧政からの解放にほっとする思いだよ
住みよい村に国にしていけるように
俺も出来る限りの手伝いをしたい
仲間と協力【怪力無双】も借りて
時代に合わせた支援物資として
なるべく多くの食料や農具や大工道具を持って行く
急に人が増えたなら道具も足りていないだろうから
建設や修理を行う村人達をお手伝い
古い家屋や道具の修復には【修復加速】で効率UP
コミュニケーションは大事大事
作業しながら新しい村人達の本音を聞いてみよう
受け入れてくれた村の人々に感謝してるなら
建築のスペシャリストになって恩返しするのはどうかな?
専門家に教わったこの時代の建築技術を伝えるよ
喜一の案に俺も賛同
この村に伝わる歌を皆で歌えば
団結力も高まりそうだね
野本・裕樹
復興してこそ伊賀国は圧政から真に解放されたと言えるのでしょうね。
あと少し頑張ればきっと良い未来が訪れる、頑張りましょう。
まずは住む場所ですね、【修復加速】で家屋の修理から手伝いましょう。
新宿で家屋の建設、修理方法を確認しておき都度村人に説明しながら修理していきます。
修理でやり方を覚えておけば建設する時も要領良く進めていけるでしょう。
実演して、村人にもやって貰い、誉めて励まして…やっていく内に自信も付いて最後は全面的に任せられると良いですね。
新旧の村人たちを途中で何人か交代、チーム分けして習得した技術を教え合い作業するのはどうでしょう、きっと打ち解け合うキッカケになるのではないかと思います。
●序幕
レールが敷かれていない草原に、JR山手線の車両に似た列車が停まっていた。
異様な光景ではあるが、その列車がパラドクストレインとなれば、話は別だ。
「これまでにも何度か復興や支援のお仕事をさせてもらったっけ。ベルファストで、パルマ公国の孤児院で、それに京の郊外の村々で……」
車両側面に並ぶ黄緑色の扉が一斉に開き、眼鏡をかけた白髪の少年がそのうちの一つから降り立った。
「この地でもお役に立てると良いな」
誰ともになく呟く少年――一騎塚・喜一(一騎刀閃・g04498)に続いて、一組の男女が降りてきた。
クダギツネを肩に乗せた狩衣姿の青年――文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)。
地に着きそうなほど長い金髪を有した妖狐の少女――野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)。
三人ともに平安鬼妖地獄変出身。彼らや彼女からすれば、ここは自分たちが生まれた時代の約六百年後であり、自分たちが生きている時代の約四百年前でもある。
「ようやく、圧政から解放されたか。ほっとする思いだよ」
戦火の煙が一筋も立っていない未来/過去の景色を見回しながら、雪人は感慨深げに述懐した。
「いいえ」
同じように視線を巡らせつつ、裕樹が静かに異を唱えた。
「真に『圧政から解放された』と言えるのは、復興が成された時です」
「それもそうだね。では、真の解放をもたらすお手伝いに励むとしようか」
喜一と裕樹を促して、雪人は歩き出した。
行き先は、草原の向こうに見える小さな村。
●一騎塚・喜一(一騎刀閃・g04498)
伊賀国には、ディアボロスが訪れたことのない村がいくつもある。
この村もその一つだけど、村人たちはディアボロスの存在を知っているはず。九鬼嘉隆の圧政部隊に徴集されていた(そして、ディアボロスによって救出された)人たちがいるから。
そんな確信を抱いて、ディアボロスだと名乗ってみると――
「わざわざ手伝いに来てくれただか?」
「こいつぁ、ありがてえ!」
「でぃあぼろす様々だべさ!」
――案の定、村人たちは大歓迎してくれた。排斥力のせいでディアボロスに関する記憶は消えていたようだけれど、僕らの顔を見ると同時に思い出してくれたみたい。
「あまり器用なことはできませんが、力仕事で些かなりともお役に立てましたら……」
と、恐縮して言う僕に対して、村人たちは屈託のない笑顔を返してくれた。
「なあに。イササカでも大助かりだぁ。こちとら、猫の手だって借りてえほどだでよ」
「猫の手はないけれど、狐の手はいくらでも貸せるよ」
雪人さんが、肩に乗ってるクダギツネのクダ吉を指先で撫でた。
「それに狐の手よりもっと便利なものもある」
彼が言うところの『便利なもの』というのは、新宿島から持ってきた農具や工具だ。この時代の技術に則ったものだから、排斥力に弾かれることはない。数は充分にある。雪人さんだけじゃなくて、僕も持ってきたから。
「壊れた家の修理と新しい家の建設を平行して進められているようですが、暫くは前者に絞りましょう。修理の作業に慣れておけば、一から建設する時も要領よく進めていけますからね」
村人たちに工具を配りながら、裕樹さんが今後の方針を伝えた。
「それと、作業毎に班分けをしたほうがいいですね。途中で班の面子を何人か交代して、習得した技術を実地に教え合うようにしましょう」
場を取り仕切り、てきぱきと指示を出してる。現場監督の素養があるかも。
●文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)
村人たちは複数の班に分かれて作業を再開した。当代最新(もちろん、この場合の『当代』は戦国時代のこと)の工具を手にしている上に僕と裕樹がパラドクス効果『修復加速』を発動させたので、四倍速で仕事ができる。
もっとも、『修復加速』で以て容易に進めてばかりいては村人たちがなにも学べないから、しっかり指導しないといけない。
その点についても裕樹は抜かりなかった。丁寧に説明したり、実演して手本を示したり、それに村人たちの作業を見て回って――
「うん。筋がいいですね」
――褒めて伸ばしたりもしてる。良い先生振りだ。
喜一は当人が言った通りに力仕事に励んでいた。『怪力無双』を発動させて、自分の身の丈ほどもある木材を軽々と肩に担いで運んでいる。
俺も班の一つに加わり、村人たちと一緒に工具を振るった。最終人類史で言うところの『こみゅにけーしょん』ってやつを図りながら。
「君もよそから来たクチかい?」
慣れない手付きで鉋を動かしている青年に問いかけた。
「そんだ。住んでいた村が焼かれちまって、家のもんと一緒にここに流れてきただよ」
「この村は、君の他にも沢山の避難民を迎え入れてくれたみたいだね」
「ああ、ありがてえ話だ。だども、食い扶持を増やしちまって申し訳ねえというかなんというか……」
青年は手を止めて顔を曇らせた。同じ村の住人になったんだから、感謝の気持ちだけで充分だと思うんだけど……割り切れないものがあるらしい。
「だったら、恩返しをすればいいんじゃないかな」
「恩返し?」
「たとえば、裕樹や俺に教えられた技術を活かして建築の『すぺしゃりすと』になるとかさ。貰った以上の恩を返してあげることができるかもしれないよ」
「なるほどー!」
青年の表情が一転し、童のような笑顔になった。
その表情の変化に伴って……というわけでもないだろうけど、村の外から聞こえてくる歌声が大きくなった。
「九つ、今宵はコチドリがー♪」
「あ、どーした♪」
「十、トンビと床入りだー♪」
「えんやこーら♪」
鳥の名を並べた数え歌だ。水路を掘ってる人たちが歌っているんだろう。
「ねえ、皆さん」
喜一が足を止めた。
「あちら側に倣って、私たちも歌ってみませんか?」
●野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)
「いいね」
喜一さんの提案に対して、雪人さんが賛意を示しました。
「で、なにを歌うの?」
「あちらが鳥の歌ですから、こちらは魚の歌でいきましょうか」
喜一さんは木材を下ろし、『あーあーあー』と軽く発声練習をした後、歌い出しました。
「一つ、ヒイラギ、ひらり舞い♪」
『あ、どーした』と合いの手を入れる村人はいません。
「二つ、フナ行く、ふらふらと♪」
『えんやこーら』と合いの手を入れる村人もいません。
入れたくても入れられないのでしょう。
なぜなら、喜一さんの歌唱はあまりにも独創的に過ぎるというか、常人には到達できない領域にあるというか……。
「……有り体に言って、音痴だね」
雪人さんが私の耳元で囁きました。まあ、そういうことです、はい。
「三つ、身立てる、ミミズハゼ♪」
村人の誰かがついに堪え切れなくなり、ぷっと吹き出しました。それが切っ掛けとなって、他の人たちも笑い出しました。
「四つ、世を倦む、ヨウジウオ♪」
「いや、もう勘弁してけろ」
村人の一人――でっぷり太った老人が喜一さんを止めました。笑い涙を拭いながら。
「そんなヘタクソな歌を聴かされちゃあ、仕事になんねえだよ」
「えー」
と、唇を尖らせた喜一さんですが、本気で気を悪くしているようには見えません。もしかして、場を和ませるためにわざと下手に歌ったのでしょうか?
「それじゃあ、あなたが歌って下さいよー」
「おう! 望むところだべさ!」
老人は胸をどんと叩き、高らかに歌い出しました。
「一つ、ヒナゲシ引っ張れば♪」
「あ、どーした♪」
今度は合いの手が入りました。旧来の村人たちの声。
「二つ、踏ん張るフデリンドウ♪」
「えんやこーら♪」
合いの手が大きくなりました。新参の村人たちも加わったのです。
「三つ、ミズヒキ見つめたら♪」
「あ、どーした♪」
「四つ、よろけるヨウラクラン♪」
「えんやこーら♪」
雪人さんも老人と声を合わせて歌っています。
喜一さんは合いの手を入れてます。
クダ吉はツンと澄まし顔。でも、歌声に合わせて尻尾を揺らしています。
「五つ、イラクラいらついて♪」
「あ、どーした♪」
「六つ、むくれるムカゴソウ♪」
「えんやこーら♪」
村人たちは歌い続けました。
希望を奮い立たせるように。
いまだ残る不安を吹き飛ばすように。
「七つ、ナズナは泣き明かし♪」
「あ、どーした♪」
「八つ、自棄酒ヤグルマソウ♪」
「えんやこーら♪」
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【怪力無双】LV1が発生!
【修復加速】LV2が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV2が発生!
御守・敬斗
フム…農地の水路を引こうとして、障害物に阻まれている訳ですか。
そういう力仕事なら、武辺たる僕の役割でしょう。
切り株は基本、軽く周囲を掘った後
怪力無双を発動しつつ梃子を使って掘り起こし
最大の障害たる大岩は、超熱振動破砕掌を直接叩き込んで粉砕するか
いっそPDを起動して出力を絞り出し、鉄塊太刀での強打で破壊する
こういった厄介な障害物は率先して排除していくが
水路の掘削自体は村人達に行って貰い、頼られすぎぬ様にしつつ
共同作業をする事で新旧の住人の溝が少しでも埋まる様
新旧の住民を上手く取り混ぜて組ませて作業して貰うなど
それとなく仲を取り持つ様試みる
アドリブ連携絡みOK
梼原・彩葉
恋人のリオーネ(g01176)と一緒に
灌漑のお手伝いね。
村の女性たちに挨拶をしてまずは仲良くなりたいわね。
男性たちの仕事が終わった後に労えるように食事を用意するのを手伝うわ。
たくさん用意して、水路を作る人も、村の復興をする人もみんなで分かち合えるようにしましょう!
あっ、リオーネがんばってる…。
やっぱり働く姿ってかっこいいわね。がんばれーって大きな声で応援しようかしら。
彼、大学で農業を習っていたみたいだけれど、知識が役に立ってるみたい。
村の人たちも楽しそうに作業ができていればいいけれど。
リオーネ・クア
恋人の彩葉(g06256)と一緒
灌漑について大学で教わったけどあまり記憶にないんだ
(農学科の学生だが大学に通って数ヶ月で刻逆が発生したし、戦ってばかりで出席率も良くないため)
事前に新宿島の図書館で昔ながらの技術を頭に詰め込んでおくよ
当時のものを再現した農具を持ち込み、それを使って村人達と一緒に大岩や切り株を抜き、運び出す
整地が終わったら勉強してきた技術を活用しながら水路を引いて
俺達が帰った後に田んぼを作れる状態にまではしておきたいな
作業中はずっと元気に振る舞ってみんなの士気を高められたらいいね
ロッソを召喚して応援してもらおう
彩葉にも声援貰っちゃった
ありがとー!と手を振る
彩葉達の料理、楽しみだな
●幕間
村の中で家屋の修理を手伝うディアボロスもいれば、村の外で水路の工事を手伝うディアボロスもいる。
前者がそうであったように後者もまた村人たちに歓迎された。
しかし――
「いやー、本当に助かるわー」
「だともよぉ。あんたらも忙しかろうから、今日だけしか手伝えねえべ? だったら、あまり無理せんでええべさ。テキトーにやっとくれ」
「んだ、んだ。これは一日で終わるような仕事じゃねえさけぇ。人数がちょこっと増えた程度じゃあ、どうにもならねえべ」
――歓迎と感謝はされても、期待はされていないようだ。
それも無理からぬこと。水路(というよりも、未完成の現段階では細くて浅い溝だが)の進行方向にはいくつもの大きな切り株が根を張り、それらよりも更に大きな岩が鎮座している。一日どころか一箇月かけても終わらないかもしれない。
だが、助っ人たるディアボロスたちは悲観していなかった。
その中でも特に自信に溢れているのは、サーフボードと見紛うほどの長さと厚さを有した大剣を携えた小柄な少女――梼原・彩葉(Cheering DIVA・g06256)だ。
「灌漑工事の一つや二つ、なんてことないわよ。なにせ、こっちには専門家がいるんだから。ね?」
傍らに立つデーモンの青年に彩葉は微笑みかけた。
「めぇー」
青年の足下でメーラーデーモンが鳴いた。彩葉に同調するかのように。
「専門家っていうのは大袈裟じゃないかな……」
彩葉から期待と信頼の眼差しを向けられ、メーラーデーモンのロッソにはつぶらな瞳で見上げられ、『専門家』ことリオーネ・クア(ひつじの悪魔・g01176)は苦笑するばかり。
「専門家といいますと?」
リオーネにそう尋ねたのは、左腕が機械化された青年。
サイボーグの御守・敬斗(鋼腕剛剣・g08591)だ。
当人より先に彩葉が答えた。
「リオーネは大学の農学科に通ってたの」
「ほほう。それは心強い」
「いや、そんなに心強くないから……」
リオーネは慌てて否定したが、敬斗は耳を貸さずにその場から離れ、村人たちの作業の輪に加わった。
「生憎、僕は専門家ではありません。しかし、力仕事はお任せください」
村人たちに語りかける彼の表情は柔和なものであったが、同時に力強さも感じさせた。確固たる自信に裏打ちされた力強さ。
「それこそ、武辺たる僕の役割ですから」
●リオーネ・クア(ひつじの悪魔・g01176)
確かに俺は農学科に在籍してるけれど、出席日数はボロボロなんだよね。大学に通い始めてから半年も経たないうちに刻逆が起きてしまったし、段階的に授業が再開されてからもディアボロスの任務を優先してるから。
だから、事前に図書館に行って、昔ながらの農耕のあれやこれやについて頭に詰め込んでおいた。一夜漬けの『専門家』だ。
用意してきたのは知識だけじゃない。農具もいっぱい持ってきたよ。この時代の技術について合わせて作られたものだから、排斥力には引っかからないはず。
村の人たちに農具の使い方を説明し、手渡していると――
「彩葉といいます。微力ながら、色々とお手伝いさせていただきますので、よろしくお願いします」
――聞き慣れてるけど決して聞き飽きることのない声が耳に入ってきた。
声の主である彩葉は丁寧に挨拶して回ってるけど、その対象は水路を掘ってる男の人たちじゃなくて、少し離れた場所にいる女性陣。そう、ここでは女の人たちも働いているんだ。炊飯係としてね。
「おいおい、兄ちゃん。いつまであの娘っ子に見とれてんだ?」
農具を受け取った村人の一人がニヤニヤと笑いながら、脇腹を肘で軽く突いてきた。『あの娘っ子』というのは彩葉のことだろう。
べつに彩葉だけをガン見していたわけじゃなくて、女性陣の働き振りを観察していたんだよ……と、言い訳する間もあらばこそ、敬斗さんが村人たちに言った。
「では、作業を始めましょうか。皆さんは水路を掘削してください。木の株などの除去は僕がやりますので」
それから、彼は俺のほうを見て問いかけた。
「リオーネさんも手伝ってくださいますか?」
「もちろん」
●梼原・彩葉(Cheering DIVA・g06256)
「もちろん」
と、元気よく答えたレオーネに続いて――
「めぇー」
――ロッソが袖をまくるジェスチャーをして、腕を曲げてみせた。力瘤をアピールしたつもりなのかな? もふもふの被毛に覆われているので、本当に力瘤が盛り上がっているかどうかはよく判らない(というか、絶対に盛り上がってないよね)けれど、やる気だけは認めてあげてもいいと思う。
かく言う彩葉のやる気も上昇中。村の奥様がたや娘さんたちと一緒にがんばるぞー。
「今回、シロの出番はなさそう。ここで待っててね」
頼れる相棒――機械剣のシロを地面にぶすっと突き刺して、女性陣のリーダー格といった感じのおばさん(既に挨拶済み)に彩葉は近寄った。
「なにかお手伝いできることありますか?」
「今はねえべよ。あれが炊きあがったら、握り飯をしこたま作っから、その時に手伝ってくんろ」
おばさんが首を捻るようにして顎で指し示した先には、とても大きな(現代だったら、間違いなく業務用のサイズ)釜が焚き火にかけられていた。
「昼餉の握り飯は粟が多めだったけんども、晩のやつには白い米をたっぷり混ぜといたべさ。せっかく、ディアボロスが来てくれたんだからなあ」
おもてなしに感謝しまーす。
その感謝を行動で現している人たち――リオーネと敬斗さんのほうを見てみた。二人とも、切り株を相手に奮闘中。
「いきますよ、リオーネさん」
「うん」
縄がかけられた切り株の根本に敬斗さんが鋤を突き入れ、梃子の原理で浮かしたところで、リオーネが(一応、ロッソも手伝ってる)縄を思い切り引っ張って……と、行動をいちいち説明すると、なにやら重労働みたいな印象を受けるかもしれないけれど、切り株はいとも簡単に抜けちゃった。栓抜きで開栓したかのように『スポーン!』って。パラドクス効果の『怪力無双』のおかげかな?
それにしても……肉体労働で汗を流してるリオーネの姿はかっこいいなあ。
●御守・敬斗(鋼腕剛剣・g08591)
「がんばれー!」
女性たちがいる一帯から黄色い声援が送られてきました。
送り主は彩葉さんです。
「ありがとー!」
と、手を振って応えた受け取り主はリオーネさん。
僕は思わずロッソに尋ねました。
「もしかして、僕たちはお邪魔虫なんじゃないでしょうか?」
「めぇー」
ロッソが肯定とも否定ともつかない返事をすると――
「いやいやいやいや。そんなことはないよ」
――リオーネさんは照れ笑いを兼ねた苦笑を浮かべて、木の根をまた引っ張り始めました。
そんな一幕を挟みつつも作業は順調に進み、すべての木の根を除去することができました。残るは大岩のみ。
「なあ、兄ちゃんよ」
水路を掘削していた村人の一人が声をかけてきました。
「やっぱし、その岩をあんたらだけで除けるのは無理でねえか。オラたちも手伝うべさ」
「それには及びません」
僕は大岩の前まで移動し、鋤を地面に置きました。
代わりに手にしたのは、背中に差していた傾奇刀。
「パラドクスを使うの?」
「はい」
リオーネさんの問いに答えると同時に刀を大岩に打ち込みました。柄越しに伝わってくる衝撃。それは大岩の最後の抵抗。衝撃が去った時には大岩もまた消えていました。いえ、『変わった』と言うべきでしょうか? 無数の破片に……。
村人たちがどっと歓声をあげました。
リオーネさんとロッソは拍手をしてくれています。
暫くすると歓声は収まりましたが――
「よーし! オラたちも負けてらんねえで!」
――興奮は収まってないようです。
その興奮を力に変えて、村人たちは掘削を再開しました。新旧両派ともに息を合わせ、声を揃えて、作業歌を歌いながら。
「九つ、今宵はコチドリがー♪」
「あ、どーした♪」
「十、トンビと床入りだー♪」
「えんやこーら♪」
「お米が炊けたよー!」
歌声に混じって聞こえてきたのは彩葉さんの声。そちらに目をやると、村の女性たちとともにおにぎりを作り始めた彼女の姿を見えました。
そして、村のほうからも――
「一つ、ヒイラギ、ひらり舞い♪ 二つ、フナ行く、ふらふらと♪」
――なにやら素っ頓狂な歌声が流れてきました。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【怪力無双】がLV2になった!
【飛翔】LV2が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
【アヴォイド】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV2になった!
●幕間
とうに日は暮れたが、村の中央にある広場は明るかった。
いくつもの篝火や焚き火が設けられているからだ。
どの篝火の傍にも大きな皿が置かれ、玄米混じり(割合からすと、『白米混じり』という表現のほうが適切かもしれない)の握り飯が山と積まれていた。
どの焚き火にも大きな鍋がかけられ、その中では山菜の味噌汁がぐつぐつと音を立てていた。
粗末な食事だが、ディアボロスたちは知っている。
村人たちにとっては、これが御馳走なのだと。
そして、自分たちにとっても御馳走なのだと。
「さあ! 遠慮なく食ってくんろ!」
と、村人の一人が『御馳走』をディアボロスたちに勧めた。
梼原・彩葉
恋人のリオーネ(g01176)と一緒に
おにぎりもたくさん用意した、お味噌汁の加減も良さそうね。
作業に加わったみんなに、どんどんよそってあげるわ!
労働のあとのご飯っておいしいって聞くし、喜んでもらえるといいけれど。
ロッソもリオーネも、おいしそうに食べてる。よかった。
さいはも少しだけ頂きます。ん、おいしい♪
そういえば夢の中でシロが見せてくれる風景はこういった建物が多かったのよね。
地面に刺したシロに目をやって、何か教えてくれないかなって声をかけるわ。
(※シロの教えてくれる内容はマスター様にお任せいたします。シロの口調は彩葉にそっくりですが一人称が「私」です)
リオーネ・クア
恋人の彩葉(g06256)と一緒に
わぁ…すごいご馳走!
白米入りのおにぎりに具だくさんのお味噌汁
歓迎してくれてるのがよくわかる
俺、これに応えられるくらい仕事できたかな…
すぐ自信を無くすのは俺の良くないところだよね
美味しくご馳走をいただいて
おにぎりを夢中で頬張るロッソの様子も見る
お味噌汁は俺が食べさせてあげよう
山菜は初めて食べるけど気に入ったみたいだね
ありがとう!って満面の笑みで村人みんなにお礼を言うよ
ねえ、彩葉
ここが天正大戦国
どう、気に入った?
シロさんはなんか反応してたりする?
この時代がシロさんのルーツではないかと思っているから
今回彼女達と一緒に来たんだよね
…シロさんの大事なものも取り戻したいね
一騎塚・喜一
皆様本日はお疲れ様でした
そして仕事のあとは当然お腹も空きますよね!
先程から良い匂いがしていて、もうお腹ぺこぺこです
先ずは御馳走を用意して下さった方々にもお礼を述べたいです
ありがとうございます、いただきます
最終人類史では様々な美味しい料理もありますが
おにぎりとお味噌汁の組み合わせはやっぱり格別ですね
…なんだか家族と一緒に食事をしていた頃を思い出します
えっ、やだな!泣いてないですよ!
そ、そうだ、先程歌って下さったご老人に一曲お願いしちゃおうかな
勿論、無理強いは致しませんが良いお声でしたのでもう一回聞きたいなって
お腹いっぱい食べて、歌って、笑って、ゆっくり休んで
そしてまた明日から皆で頑張れますように
御守・敬斗
春の山菜の香りに、玄米が主な握り飯。
いっそ乾し飯やら粟の握り飯の方が懐かしい位ですが…
こうして故地の『馳走』を見ると、改めて新宿島の食事は夢の様ですね。
土地に手を出せなかったのが心残りですが…
水を引けた事で、田畑が少しずつ生まれるのを信じましょう
叶うならまた、手伝いに来るのも良いかも知れません
無論、その必要無く平和に暮らせるのが最上ですが…
心の言は胸の内に仕舞い、宴が盛り上がってきた所で
素人芸ですが、鉄塊大太刀を用い演舞と唄でも披露しましょうか
(イメージは黒田節)
娯楽がそう多くない時代です。芸を楽しんで貰うと同時に
勝利の凱歌として響かせて、明日への勇気と活力にして頂ければ
アドリブ連携絡みOK
文月・雪人
※アドリブ連携歓迎
成程これは御馳走だね!
お礼を言って、ありがたくいただきます
たくさん働いた後のご飯は、やっぱり格別の美味しさで
味噌汁なんてもう、疲れた体に染み渡るようだよ
そしてご飯を更に美味しくするのが、村人達との楽しい会話
村に伝わる昔話とかあるのかな
新しい村人達はどんな所から来たのだろう
にゃふふ、クダ吉も興味津々だね
歌や踊りが始まったら、待ってましたと拍手を送り
此方もまた歌に合わせて竜笛を演奏
宴会を盛り上げるよ
敬斗の心残りの言葉を聞いて
そういう事なら手を貸すよと笑み返し
皆の作る田畑を感慨深く眺めつつ
【土壌改良】で土地の神様に願い祈ろう
豊かな実りと共に、これからも笑顔咲き誇る村となりますように
野本・裕樹
『白米混じり』、もうこれだけで御馳走なのが十分伝わってきます。
それを私たちにも振る舞ってくれるなんて嬉しいに決まっているじゃないですか。
どうもありがとう、いただきますね。
暖かくてどこか懐かしい味、お味噌汁もありがたいです。
お握りとの組み合わせも最高ですね。
貰ってばかりでは申し訳無いです、【口福の伝道者】で少しでもお返しを。
皆でお腹いっぱい食べようという意図もありますが、本命は食べ物を増やした際に出てくる「食器」。
伊賀焼には劣るかもしれませんが良ければ是非使ってください。
予備にしてくれても良いですし、もしこの先村人が増えたらその人の分にでも。
村のこの先が明るい未来である事を願っています。
●御守・敬斗(鋼腕剛剣・g08591)
「なるほど、これは御馳走だね!」
村の皆さんの心尽くしの料理を前にして、雪人さんが目を輝かせています。
「おにぎりだけでなく、お味噌汁まであるのが嬉しい限り」
「ですよねー。おにぎりとお味噌汁という組み合わせに敵うものはありません」
頷き合う裕樹さんと喜一さん。
この白米混じりの握り飯や山菜の味噌汁が仮に心尽くしのものでなかったとしても、平安鬼妖地獄変出身のお三方からすれば、間違いなく『御馳走』でしょう。
もちろん、天正大戦国で生まれた僕にとっても。
こうして故郷の『御馳走』を見ていると、新宿島の食の豊かさというものを改めて実感しますね(刻逆が起きる前はもっと豊かだったのでしょうが)。
村の女性たちが味噌汁を椀によそい、皆に手渡し始めました。
いえ、村の女性だけではありません。彩葉さんの姿もあります。
「はい、どうぞ!」
と、彼女が真っ先に差し出した相手がリオーネさんであることは言うまもでありませんよね。
「ありがとう」
椀を受け取り、味噌汁から立ちのぼる湯気をたっぷり吸い込むリオーネさん。肩に乗って湯気の相伴にあずかってるロッソともども、世にも幸せそうな顔をしています。
しかし、その表情をふと不安げなものに変えて、首をかしげました。
「俺、この御馳走に見合った仕事をできたかな?」
すると、リオーネさんに続いて彩葉さんから椀を受け取っていた村人が――
「できたに決まってるでねえだか」
――と、間髪容れずに断言しました。
●梼原・彩葉(Cheering DIVA・g06256)
「まったくもって、そんとーりだべさ!」
「兄ちゃんやそっちのおさむれえさんが木の根っこだの岩だのをどけてくれたおかげで、オラたちは水路掘りにセンネンできたんだからな」
「んだ、んだ。むしろ、オラたちのお礼のほうが兄ちゃんたちの手伝いに見合ってるかどうか心配になってくらあ」
お味噌汁を受け取ったおじさんがリオーネを褒めそやすと、他の村人さんたちも(自分の分のお味噌汁をゲットしつつ)口々に同意した。
「汗顔の至りです」
と、『おさむれえさん』こと敬斗さんがはにかみ気味の微笑で皆の賞賛に応えると、リオーネも笑顔に戻った。もっとも、綻んだ口元から漏れ出たのは反省の呟きだけどね。
「こうやってすぐ自信をなくしちゃうのは俺の良くないところだよね」
そうかしら? ある意味、良いところでもあるかも。見方を変えたら、謙虚ってことだし……と、励ましてあげようと思った矢先に、横から大声が飛んできた。
「ちょーっと待った!」
声の主は、ねじり鉢巻きをしたおじさん。灌漑工事の現場では見かけなかったから、村のほうで家の修理をしていた人でしょうね。
「兄ちゃんやおさむれえさん、それに女房どもと一緒に飯を作ってくれたそこのお嬢ちゃんもたいしたもんだが、こっちを手伝ってくれたディアボロスだって負けちゃいねえぞ」
鉢巻きおじさんが雪人さんと喜一さんと裕樹さんを順番に指し示して我がことのように自慢すると、同じく村の中で作業していたであろう人たちも(自分の分のおにぎりをゲットしつつ)口々に同意した。
「まったくもって、そんとーりだべさ!」
「あの見事な仕事振りを水路組のほうに見せてやりたかったな」
「歌はヘタクソだったけどもな」
それを聞くと、喜一さんが照れくさそうに頭をかいた。
「カンガンのイタリです」
●一騎塚・喜一(一騎刀閃・g04498)
全員に料理が行き渡り、質素でありながらこれ以上はないほどに贅沢な宴が始まった。
「労働のあとのご飯はおいしいって聞いたけど、ホント?」
にこにこと笑いながら、彩葉さんが誰にともなく尋ねた。
「ホントだとも。そりゃあもう格別だよ」
雪人さんが同じくにこにこ笑顔で答え、味噌汁を一気に飲み干し――
「あー! 疲れた体に染み渡るー!」
――満足げに吐息をつくと、空になった椀を置いて、新たな椀を手に取った。
……ん? 新たな椀?
違和感に気付いて、周囲を見回してみた。いつの間にやら、料理のおかわりが……そう、おにぎりの乗った皿や味噌汁の椀が地面を埋め尽くしている。
「誰かが『口福の伝道者』を使ったようですね」
僕と同じように周りを見回しながら、敬斗さんがパラドクス効果の名を口にすると――
「はい」
――その『誰か』であろう裕樹さんが頷いた。
「もらってばかりでは申し訳ありませんから、少しでもお返しをと……」
「これ、『少し』の範疇を超えてるよね?」
二杯目の味噌汁を食べる手を休めて、雪人さんがまたも笑顔を見せた。
「まあ、なんにせよ、ありがたい。過ぎたるは及ばざるが如しと言うけど、これは良い具合に及んでるよね。村の皆さんもお腹いっぱいになるまで食べることができるし」
「『口福の伝道者』を使ったのは、食欲を満たすためだけではありません」
裕樹さんはおにぎりの皿を手に取り、縁を指先で軽く叩いた。
「食べ物と一緒に増える食器こそが本命です」
なるほど。食べ物は食べてしまったらお終いだけど、食器はずっと残り続けるから(この時代に即した食器なので、排斥力の影響は受けないはず)、村の人たちの生活に役立つかもしれないね。
●文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)
百人前の追加料理がどこからともなく出現したので、村人たちはそこそこ驚いているようだ。『そこそこ』という程度で済んだのは、昼間の作業で(あるいは以前に救出された際に)ディアボロスの超人振りをさんざん目の当たりにしたからかな?
「増えた器は差し上げますので、御自由にお使いください」
と、裕樹は村人たちに言った。
「予備にしてくれてもいいですし、この先、住人がまた増えるようなことがあれば、その方々の分にでも。椀は木製ですから、火にくべて燃料にするという使い道もありますよ」
「いっそ、村を挙げて什器屋でも始めるべか」
そんな冗談で応じる村人もいたけれど、彼も他の村人たちも裕樹の心遣いに感謝していることは間違いない。きっと、その感謝の度合いは『そこそこ』という程度じゃないだろう。
「じゃあ、もっと食べて食べて食べまくって、食器を増やして増やして増やしまくろうか。什器屋さんの品揃えが豊富になるようにね」
「そうしましょう」
俺の軽口に喜一が力強く頷いた。
そして、旺盛な食欲を発揮してみせた。
「さっきも言ったように……もぐもぐ……おにぎりと味噌汁という組み合わせは最高ですね……ずずずっ……新宿島で様々な美味しい料理を味わいましたが……もぐもぐ……やっぱり、これは格別です……ずずずっ……」
おにぎりをもぐもぐ貪ったかと思うと、お味噌汁をずずずっと啜り、おにぎりを再びもぐもぐ、それをお味噌汁でずずずっと流し込み、またおむすびをもぐもぐ。村人たちの歓待を無下にしないために一生懸命に食べているようにも見えるし、本当にお腹が空いているので一心不乱に食べているようにも見える。
たぶん、その両方なんだろうね。
●野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)
「それに、こうやって沢山の人に囲まれていると……もぐもぐ……更に美味しく感じますね……ずずずっ……なんだか……家族と一緒に食事をしていた頃を……思い出します……」
喜一さんの言葉の合間に挟まっていた咀嚼音が消えました。
もぐもぐ運動を繰り返していた頬に一筋の涙が流れたように見えたのは気のせいでしょうか?
同じものを見た(ような気がした)のは私だけではないと思います。
しかし、それについて触れるような野暮な人は一人も――
「おいおい! なに泣いてんだ、兄ちゃんよぉ」
「ディアボロスのくせに泣き虫だべなぁ」
「しめっぽくするでねえや」
――いました。一人どころか何人もいました。皆、村の方々です。殊更に明るい声を出しているのは、喜一さんを……いえ、彼だけでなく、似たような境遇の村人たち(乱世ですから、家族を失った人は少なくないはず)を励ますためでしょうか。
「やだなあ! 泣いてないですよ!」
と、言い返す喜一さんの声もまた明るいものでした。
「しめっぽい話がお気に召さないのなら――」
明るい声の応酬は続きます。今度の発声者は雪人さん。
「――なにか楽しい話を聞かせてよ。この辺りに伝わる昔話の類とかさ」
その要求に応じて、村人たち(主に年嵩の方々)が自分の知っている昔話を次々と語ってくれました。最終人類史の時代には体系化されているであろう類型的な話ばかりですが、独特の語り口が耳に心地良く、聞いていて飽きません。
言い出しっぺである雪人さんは無論のこと、クダ吉も『一言も聞き逃してなるものか』とばかりに耳をピンと立てて謹聴しています。
一通り語り終えたところで、村人の一人がどこか誇らしげに言いました。
「だけども、こんな昔話なんかより、オラたちが実際に見聞きした話のほうが面白えべさ」
「実際に見聞きした話?」
雪人さんが聞き返すと、その村人はにっこりと笑いました。
「おめえさんたちの武勇伝に決まってるでねえか。オラたちは子々孫々まで語り継ぐぞ。ディアボロスに助けられた話をな」
●リオーネ・クア(ひつじの悪魔・g01176)
「天正大戦国のことは気に入った?」
機械剣のシロさん(すぐ横の地面に突き刺さしてあるんだ)のほうを見ていた彩葉に俺は尋ねた。
「うん。でも――」
彼女は頷いたけれど、ちょっと顔を曇らせた。昔話をしてくれたおじいさんたちに視線を移しながら。
「――ちょっと寂しいよね。『子々孫々まで語り継ぐ』という言葉に嘘はないんだろうけど、いずれは排斥力のせいで彩葉たちのことを忘れちゃうんだから」
「大丈夫。忘れるのは一時だけだよ。このディヴィジョンがクロノヴェーダから解放されたら、排斥力もなくなるはずだから」
そう、天正大戦国が最終人類史に『帰還』した暁には、ディアボロスに関わった人たちが残した記録が現代に出現するかもしれない。絡繰り仕掛けの大きな剣を携えた女の子が料理を手伝ってくれた記録とか、小さなヤギみたいな生き物を連れた男が木の根を引っこ抜いた記録とか……。
その『小さなヤギみたいな生き物』であるロッソといえば、自分の頭ほどもあるおにぎりを食べ終えたところ。
「お味噌汁もいっとく?」
「めぇー」
お椀を差し出してあげると、顔を突っ込んで、ぺちゃぺちゃと舐め出した。山菜を食べるのは初めてだけど、気に入ったみたい。お椀の中身が減るのに合わせて傾けつつ、彩葉をちらりと一瞥。シロに視線を戻してなにか話しかけているけれど、ロッソのぺちゃぺちゃに邪魔されて聞こえない。
「さて……」
ロッソがお味噌汁を完食したのと同じタイミングで敬斗さんが立ち上がった。
「御馳走になったお礼に唄と舞いでも披露しましょうか。素人芸ではありますが、多少なりとも楽しんでいただければ幸いです」
「よっ! 待ってました!」
雪人さんが声をかけ、裕樹さんが拍手を響かせた。村人たちも同じく歓声と拍手で追随。
それらが収まると、敬斗さんは大岩を壊す時にも使った傾奇刀をすらりと抜き放ち――
「~~~♪」
――朗々と歌いながら、演武とも演舞とも取れるステップで動き回った。もちろん、口と足だけでなく、両手も動いてる。傾奇刀で虚空を斬り払い、あるいは突き刺し、流れるような動きで鞘に戻したかと思うと、また素早く抜刀。
やがて、彼の歌声に別の音が交じった。
雪人さんが横笛を吹き始めたんだ。
●終幕
敬斗の演舞/演舞が終わった。
雪人の笛の音も消え、広場は静寂に包まれた。
ほんの数秒だけ。
言うまでもなく、その数秒の後に轟いたのは村人たちの拍手喝采である。
「喜んでいただけたようでなにより……」
懐紙で汗を拭きながら、敬斗は呟いた。
「しかし、水路の工事が完遂できなかったのは心残りですね」
「いえ、あれだけやれば充分でしょう」
と、裕樹が声をかけた。
「後は仕上げだけですから、村の方々に任せておいて大丈夫です」
「とはいえ、心残りがあるのは理解できるよ」
笛を丁寧に仕舞いながら、雪人が敬斗に笑いかけた。
「念のため、帰る前にパラドクス効果の『土壌改良』を使っておこうか。裕樹が増やしてくれた食器と同様、『土壌改良』による変化も消えないはずだ」
「『帰る前』とか言ってるけど、今すぐに帰ったりはしないわよね?」
名残惜しそうに彩葉が確認すると、雪人より先にリオーネが答えた。
「うん。もうちょっと楽しんでいこうよ。なんなら、彩葉もシロさんを使って演舞とかしてみたら?」
「いえ、さすがにそれはちょっと……」
苦笑を浮かべて辞退する彩葉。
「よーし! それじゃあ――」
すっくと立ち上がったの喜一だ。
まさか、あの個性的(ポリティカル・コレクトな表現)な歌声を披露するつもりか……と、他のディアボロスたちは慄いたが、それは杞憂だった。
「――あのかたに歌って盛り上げてもらいましょうか!」
喜一が指し示したのは、ともに作業をしていた老人である。
「おう! 臨むところだべさ!」
作業時の光景を再現するかのように老人は胸をどんと叩いた。
そして、高らかに歌い出した。
「一つ、ヒナゲシ引っ張れば♪」
「あ、どーした♪」
と、村人たちが合いの手を入れた。
「二つ、踏ん張るフデリンドウ♪」
「えんやこーら♪」
と、ディアボロスたちも合いの手を入れた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
【飛翔】がLV3になった!
【活性治癒】LV1が発生!
【勝利の凱歌】LV1が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【ラストリベンジ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV4になった!
【ガードアップ】LV1が発生!