救出、山道の戦い(作者 相馬燈
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#天正大戦国  #多脚城塞『千早城』からの救出  #河内国  #於犬の方  #千早城 

●機械の脚を持つ城
 その異形の城は険しい山の奥にあった。
 小城ではあるが、それも『移動可能な城塞』と化しているとなれば不思議ではない。
 城は名を、多脚城塞『千早城』と言う。
「信長様の安土城とは比べ物にもなりませんが、この千早城も難攻不落の名城。於犬の方の居城として相応しい」
 その威容を、天魔武者である豊臣秀吉が、於犬の方と共に見上げていた。
「あとは、燃料になるヒルコ達が届けば起動できる……という訳ですね」
 於犬の方が、淑やかな口調で物騒なことを言う。
「そちらもワイが万事手配しておりますから、ご安心を。於犬の方は、動力部の最終調整を行っていてください」
 秀吉の言葉に、於犬の方は満足そうに頷いた。
「これでこの私も、一国一城の主ですね。『燃料』が届くのが待ち遠しいです」

●無辜の民を救うべく
「河内国で、豊臣秀吉が新たな城を築いたとのこと。既にご存知の方もおられるかと存じますが」
 宵星・影晃(人間の陰陽師・g03235)がディアボロスたちに向き合い、そう口火を切った。
 その城の名は、多脚城塞『千早城』。
「千早城は、南北朝時代の楠木正成が築いた城。今回はそれを再建したもののようなのですが……本丸らしき部分に蜘蛛の脚のような機械を取り付け、移動可能にしたとなると……もはや別物ですね」
 天正大戦国では、国境を越える為に、その国の城を落とさなければならない。
「落とすべき城が自由に動き回るとすれば、攻略は至難の業です。その前に対処しなければなりません」
 多脚城塞『千早城』は既に完成しているが、今すぐ動かせるかと言えば、話は別だ。
「城を動かすためには、ヒルコと一般人が必要なようです。天魔武者どもは、彼らを多脚城塞の燃料にしようと……赦し難い暴挙です」
 ヒルコや一般人を犠牲にして城を動かすというのだ。その非道に、影晃が眉を寄せた。
「千早城を動かすため、秀吉は配下に、ヒルコと一般人の護送を指示しています。そこを狙い、山道にて人々を救出してしまえば、城を動かすことは不可能」
 移動城塞も、動かなければただの城である。
「城の動きを封じたのち、攻略することかなえば、河内国の制圧も可能となるはずです」

 千早城に向かっているヒルコと一般人は、河内国から強制移住させられた住民達のようだ。
「元は追われた人々ですから、河内国に帰還できることを喜ぶのは道理。ですが予想に反して、山中の千早城へと護送されることになりました。そのため、やはり困惑しているようです」
 彼らを護送するクロノヴェーダの警備は厳重であり、戦闘は避けられない。
「注意すべき点があります。皆様が一般人を救出しようとすると、トループス級『禍ツ災禍ノ眷族『未怨龍』』が介入してきて一般人を殺そうとするでしょう」
 一般人を守る対策も、必要不可欠と言える。
「今回の護送を担っている責任者はアヴァタール級の『百々爺』。護衛は『天魔武者・大鉞衆』です。一般人を守り、それらの敵を討ち取って頂きたく」
 山道での戦いだ。大鉞衆は護衛らしく堅固であり、山地を得意とする百々爺も油断ならぬ敵となるだろう。

「そしてもう一つ……お願いがあるのですが」
 一呼吸置いて、窺うように影晃は言った。
「可能でしたら、事前に、救出した方々が生きていけるような隠れ里を用意いただければと……」
 救出が成功しても、その後、生きていけなくては……。
 隠れ里を用意しておくことには意味がある。
「見つかりにくい場所に、雨風を凌げるような建物を建てるだけでも、助けとなりましょう」
 折よく、攻略旅団の提案を受けて新宿島の人々が用意した、支援グッズもある。
「こちらの支援物資は、古い時代からある未改良の米を植物活性で量産したもの。そしてこちらは、大根などの、野菜の漬物です。これらは保存がききますので、隠れ里を作りつつ、当面の保管場所を用意するのも良いでしょう」

 一通りの説明を終えると、影晃はディアボロスたちに真剣な眼差しを向けた。
「築城を得意とする秀吉らしい策ですが、多脚城塞も動かせなければ強みを活かせません」
 今こそ敵の思惑を挫くときだ。
「城の動きを止めるため、そして人々を救出するため、皆様のお力をお貸しください。何卒、よろしくお願いします」

●山奥に護送される人々
 故郷に帰れるとばかり思っていた。
 山中を護送されるヒルコが数名、そして百名あまりの一般人たちが、列をなして進んでいく。
「さあ、歩け」
 天魔武者・大鉞衆が列を見張っており、山の木立には禍ツ災禍ノ眷族『未怨龍』が潜んで、目を光らせていた。
「あの、私たちはこれから何を……」
 少女のようなヒルコが問うと、木の上で百々爺が声を放った。
「お前達は、この先にある城で働くことになるのじゃよ。なァに、仕事はすぐ終わる。すぐ終わるぞよ。カッカッカ!」
 嘘ではない。
 燃料にすることなど、造作もないのだから。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
2
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【怪力無双】
5
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わる。全力で力仕事をするならば「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げる事が可能になる。
【神速反応】
1
周囲が、ディアボロスの反応速度が上昇する世界に変わる。他の行動を行わず集中している間、反応に必要な時間が「効果LVごとに半減」する。
【腐食】
1
周囲が腐食の霧に包まれる。霧はディアボロスが指定した「効果LV×10kg」の物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)だけを急激に腐食させていく。
【罪縛りの鎖】
1
周囲に生き物のように動く「鎖つきの枷」が多数出現する。枷はディアボロスが命じれば指定した通常の生物を捕らえ、「効果LV×2時間」の間、移動と行動を封じる。
【動物の友】
1
周囲の通常の動物がディアボロスになつき、意志の疎通が可能になる。効果LVが高い程、知能が高まり、友好的になる。
【光学迷彩】
1
隠れたディアボロスは発見困難という世界法則を発生させる。隠れたディアボロスが環境に合った迷彩模様で覆われ、発見される確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【スーパーGPS】
1
周囲のディアボロスが見るあらゆる「地図」に、現在位置を表示する機能が追加される。効果LVが高ければ高い程、より詳細な位置を特定できる。
【完全視界】
2
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【液体錬成】
1
周囲の通常の液体が、ディアボロスが望めば、8時間冷暗所で安置すると「効果LV×10倍」の量に増殖するようになる。
【水面走行】
1
周囲の水面が凪ぎ、ディアボロスが地上と同様に走行や戦闘を行えるようになる。ディアボロスと手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人も同行可能。
【ハウスキーパー】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建物に守護霊を宿らせる。守護霊が宿った建物では、「効果LV日」の間、外部条件に関わらず快適に生活できる。
【建物復元】
1
周囲が破壊を拒む世界となり、ディアボロスから「効果LV×10m半径内」の建造物が破壊されにくくなり、「効果LV日」以内に破壊された建物は家財なども含め破壊される前の状態に戻る。
【アイテムポケット】
3
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。
【防衛ライン】
1
戦場が、ディアボロスが地面や床に幅10cm、長さ「効果LV×10m」の白い直線を出現させられる世界に変わる。敵はこの直線を突破できず、上空を飛び越える場合、最低「効果LV」分を要する。直線は戦場で最初に出現した1本のみ有効。

効果2

【能力値アップ】LV2 / 【命中アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV10(最大) / 【ガードアップ】LV1 / 【フィニッシュ】LV1 / 【反撃アップ】LV1 / 【先行率アップ】LV1 / 【アヴォイド】LV1 / 【ダブル】LV1

●マスターより

相馬燈
 『多脚城塞『千早城』からの救出』のシナリオをお送りします。
 今回の攻略順は(正攻法でいけば)①→②→③→④になるかと思います。
 もう春なので、冬を越す段取りはそこまで重要ではなく、①はクリア必須ではありません。ただ、隠れ里を作っておけば、救われた人々が事件解決後に助かるのは確かです。他の選択肢のリプレイが執筆されると、①の攻略は不可能になりますので、ご注意下さい。
 また②をクリアしない場合、一般人が殺害されてしまいますので、こちらも注意が必要です。
 補足は以上となります。
 皆様のご参加をお待ちしております。
49

このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


伊藤・真九郎
アドリブ、連携歓迎致す。

人々を無事に救出するにせよ、まずは安全な隠れ里を構築してからか。
聞き込みや地図を当たり、人の住みやすい水場近くの平地を探す。井戸の生きている廃村などがあれば利用しよう。
支援物資や工具、保存食を持ち込む。【怪力無双】にて持てるだけ担いでゆこうか。
近くの森等から材木を切り出し、怪力で村へ運んでゆく。
組み上げて住居を造る。廃村で建物があるなら修理しよう。
余ったら乾かしておき、燃料に出来るようにする。春先とは言え煮炊きの燃料も必要だろう。
敵を殲滅した後はこの地に留まるは叶わぬ。人々の生活の基盤を作っておけば、安心して戦えるというものよ。


鳩目・サンダー
隠れ里かぁ……。偵察と観察技能を使って、それらしい場所を探してみよう。
外からわかりづらく、外に出ずともある程度自給自足が出来て、それなりの人数が住める場所……。

場所が決まれば自分はアイテムポケットを駆使して食料や衣服などの支援物資を運搬がてら作業に参加する。

建物に田畑に作るべきものが幾らでもある。お呼びがかかるところに体を貸し出すとしよう。

美術(アート)にできる事が無いのなら、技術(アート)でお手伝いするしかねえ。
サイボーグの身をサイボーグらしく使うとしよう。

アドリブ、連携歓迎です。


相原・相真
アドリブ・連携歓迎です

新宿島で大工道具や食料を中心とした支援品を準備
【アイテムポケット】や鞄など使ってできるだけ持っていきます

現地ではドローンを用いての[偵察・情報収集]で隠れ里としてよさそうな場所がないか探索
いい場所が見つかったら早速準備をしていきましょう

作業は建物の準備を優先
可能であれば【怪力無双】も使わせてもらい作業を行います
木を切って、運んで、加工して、…やることはいっぱいだ、こりゃ

建物の準備を終えたらあとは食料を保管場所へ
穴掘って地下倉か、近くに洞窟でもあればそこか
適当な場所を見繕い置いておきます

出来ることには限界があるけども、
それでもなるべくちゃんと準備しておいてあげたいですね


眉立・人鳥
アドリブ絡み歓迎

無事越冬出来た事は喜ばしいねェ、重要度が下がったとはいえ
衣食住ってのは人にとって必要な事だしな、なるべく整えてやりてえぜ

いい立地をスムーズに探すにゃあ、まあやっぱこれだろ
動物の友で現地の案内を受けるとするぜ
水場が近く、敵の巡回ルートから外れた見つかりにくい場所
これは外せねェ……食料の備蓄も考えると、洞穴なんかも近けりゃいいな

場所が見つかったら仲間と作業を分担してやってくか
力仕事は優先的に手伝うとしよう
雨風をしのぐための小屋作りは木組みと板倉工法を使う
まあ慣れてきたもんだぜ……

時間が余ったら周辺の地形を把握しに出るとすっか
次の戦いまでに情報が欲しいところだ


●安住の地はいずこに
「まずは隠れ里の候補地を探しましょうか」
 パラドクストレインから降り立った相原・相真(人間のガジェッティア・g01549)は、荷物を詰めた鞄をひとまず地面に降ろした。
 アイテムポケットにも出来る限りの大工道具や食料などを収めていて、運搬の効率化を図っている。
 春の到来を告げる鳥の鳴き声が、涼やかに響いていた。
 漂う花の香りが空気に彩りを添えて、気持ちよく作業ができそうな、麗らかな日和だった。
「無事越冬出来た事は喜ばしいねェ、重要度が下がったとはいえ」
 相真と共に降り立った眉立・人鳥(鳥好き兄ちゃん・g02854)が、快げに言った。
 今まで積み重ねてきた努力が報われつつある。あと一息、といったところだろう。
「衣食住ってのは人にとって必要な事だしな、なるべく整えてやりてえぜ」
 衣食足りて礼節を知る。生活をしていくための基礎がなければ、この過酷な世界で生き延びるのはそれだけ難しくなる。
「人々を無事に救出するにせよ、まずは安全な隠れ里を構築してからか」
 伊藤・真九郎(人間の戦国武将・g08505)は、先程から地図を広げて、ううむと唸っていた。
 一口に隠れ里を探すと言っても、何処でも良いというわけではない。天魔武者どもに見つからぬような、それでいて百名余りの人々が生活を立てて行ける土地を選ばなければならないのだ。これはなかなかどうして、容易なことではない。
「隠れ里かぁ……ありそうでなさそうだよな。できそうなことをやってみて、それらしい場所を探すしかないか」
 磨いた偵察や観察の技を活かして少しばかり周囲を見回っていた鳩目・サンダー(ハッカーインターナショナル同人絵描き・g05441)が、戻ってくるなり、頭をわしゃわしゃしながら難しい顔を浮かべていた。
「外からわかりづらく、外に出ずともある程度自給自足が出来て、それなりの人数が住める場所……」
 考えれば考えるほど、思考の深みに嵌まっていくようでもある。
「ああ、それに水場が近く、敵の巡回ルートから外れた見つかりにくい場所……これは外せねェ。食料の備蓄も考えると、洞穴なんかも近けりゃいいな」
「うむ」
 分かりやすく必要条件を纏めて口にしたサンダーや人鳥に、共に思案していた真九郎は深く首肯していた。
「確かに、水も重要であろう。……井戸が生きている廃村などがあれば、或いは」
「そのことなんだがな」
 言った人鳥の肩には、いつしか小鳥が留まっていた。
「空から探してくれるらしいぜ」
 動物の友の効果によって、先程から意思の疎通を図っていたものらしい。多少なりとも知能が高まった小鳥は、人鳥に応えるようにひと鳴きした。
「いい立地をスムーズに探すにゃあ、まあやっぱこれだろ」
「では俺はドローンを使って探してみましょう」
 広い範囲を探るとなれば、空から情報を集めるというのも有用な手だ。相真も多機能ドローンをセッティングし、それと連動した特殊なゴーグルを装着していた。
「至極妙案。お任せ致す」
「あー、それじゃあっちの山裾の方なんてどうかと思うんだが」
 真九郎が頷き、ついさっき足を使って集めた情報を活かしてサンダーが助言を加える。
「ってことで、頼んだぜ」
 相真のドローンと前後して、人鳥の手の甲に移っていた小鳥が、軽やかに飛び立った。
 もちろん、間違っても天魔武者に見つからぬよう、慎重に事を運んだのは言うまでもない。
 
●隠れ里の建設
 やがて四人が見つけ出したのは、山裾に並ぶ人家の跡であった。と言っても打ち捨てられて久しいようで、残るのは井戸や、壊れた小屋など、大勢の人間が生活するのには不足なものばかりだ。
 だが捨てられて時が経っているとなれば――それだけ、天魔武者の眼から逃れやすい地ということでもある。
「木を切って、運んで、加工して……やることはいっぱいだ、こりゃ」
 周囲の状況を把握すると、相真が早速、工具を手に山へと入っていく。
 山裾となれば、材木の入手は容易であった。そして土地柄、水の入手も難しくはない。山から流れる湧水を、そこかしこに見つけることが出来たからである。
 人が生きていくために何が必要なのかを、四人のディアボロスたちはしっかりと押さえていた。
「うむ、良き水だ。これがあれば生活も立つであろう」
 先に森に足を運んでいた真九郎が湧水を手で掬い、確かめるように口に運んでいた。
 民の生活を支えるのは、やはり水である。それがなければ、命を繋ぐことも、農作物を育てることもかなわない。山から流れてくる清水は、苦難に翻弄されていた人々の心をも潤すだろう。
「出来ることには限界があるけども、それでもなるべくちゃんと準備しておいてあげたいですね」
「然り。力を尽くすとしよう」
 真九郎は持ち込んだ伐採用具を手にして、材木を切り出し、建築資材とすべく汗を流す。刀を手にしている時とは一寸異なる手際と工夫で、これと見た木を次々に切り倒していくのだ。
 相真もまた建材として使えそうな木を選び出すと、持ち込んだ道具を活かして手際よく切っていった。
「さて、ひとまずこれくらいか」
 用途別に分けて、縄を以て束ねれば、あとは怪力無双の力を存分に活かして運んでいくだけである。
「手分けしましょう。こっちは俺が」
「かたじけない。それがしも全力で運ぶとしよう」
 真九郎がもたらした怪力無双の効果を用いて、相真も共に材木を運搬する。
 
「隠れ里にするにはぴったりの場所だな……」
 小手をかざして辺りを見回しつつサンダーが言い、アイテムポケットから、この時代に合わせた米や漬物、そして衣服を取り出して纏めていた。
「保管場所も作るべきか。流石にあのままじゃなぁ……」
 損壊した民家や小屋は、そのままでは使えない。
「補修すれば雨風を凌ぐこともできよう」
 そこで真九郎は、山から運んできた建材と、持ち込んだ道具を駆使して、まず民家の補修に乗り出した。屋根を繕い、壁を整え――炊事場も設えることになる。
「少々手を貸してくれぬか。一人では手が足りぬゆえ」
「ああ、任せてくれ」
 家の補修や建築をするにしても、協力して事に当たった方が効率的なのは間違いない。
 サイボーグのサンダーにとって、その体は望んで得たわけではないのだが、こういう時に力を発揮するのは確かだった。力仕事を筆頭に、その他の細々した作業まで、見事にやってのける。
 建築や補修も、やはりある面では、芸術と似通ったところがあるのだろうか。
「器用なもの。感服致した」
「美術(アート)にできる事が無いのなら、技術(アート)でお手伝いするしかねえからな」
「力仕事か。俺も手伝うぜ」
 人鳥もまた補修を手伝い、また、大工のみでも建てられる工法を用いて手際よく小屋を建てていく。何度も繰り返したことだからか、その作業は実に効率的で、無駄がなかった。
「なんだか専門家みたいだな」
 衣服や食料を抱えてきてサンダーが言えば、 
「こう頑丈であれば、大風でもびくともしないであろうな」
 建てられた柱を掌で叩くようにして真九郎が頷いた。
「まあ慣れてきたもんだぜ……」
 人鳥が笑みを見せる。
「木材の余りは乾かしておくとしよう。春先とは言え煮炊き用の薪も必要であろうからな」
 薪置場も必要だろうか――真九郎も民の生活を思い、心を砕いていた。
「食料の貯蔵についてですが」
 相真もアイテムポケットの中から、米や漬物などの食料を取り出して、
「山に入ったときに、良さそうな洞窟を探しておきました。運び込んでも良さそうです」
「それじゃ、当座の分はこっちの小屋に運んでくれ。残りはその洞窟ってのもいいな」
 人鳥の言葉に頷くと、相真はまず貯蔵用の小屋に、食料を運んでいく。洞窟もそう遠くなく――現状まず起こり得ないことと思われるが、仮に天魔武者が襲ってきた場合、そこに隠れることもできるかも知れなかった。
「やってみりゃ結構できるもんだなぁ」
 湧水の流れを考慮しつつ、田畑に適していそうな場所の低木や雑草を払って、サンダーが一息。出来上がった隠れ里を眺めた。
 細々とした気配りを行き届かせて――四人の工夫と尽力により、隠れ里が完成したのだ。
「敵を殲滅した後はこの地に留まるは叶わぬ」
 額に浮かんだ汗を拭い、真九郎も作り上げた隠れ里を見渡した。
「人々の生活の基盤を作っておけば、安心して戦えるというものよ」
「ええ、これで心置きなく戦えるでしょう」
「後は救い出すだけだな」
 相真が言い、人鳥が彼方を見据えた。
 隠れ里を整えた以上、後顧の憂いはなくなったと言っていい。
 厳重な警備を敷いて人々を移送する非道の敵軍に、ディアボロスたちは戦いを挑もうとしていた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【怪力無双】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV2が発生!
【動物の友】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV4が発生!

「仕事……。一体、どのような……」
 人々が列をなして険しい山道を歩いていた。
 少女のような外見のヒルコが、百々爺に投げられた言葉について考えていたが、もちろん、答えなど出るはずがない。
 考えもしないだろう。まさか、燃料にされるなどとは――。
 天魔武者・大鉞衆が目を光らせ、行列は護送と呼ぶに相応しい様相を呈している。未怨龍までが緊急事態に備えているとなれば、秀吉らの周到さが窺えよう。
 真実を知らされぬまま、行列は死地へと近づいていく。
鳩目・サンダー
一般人に手を出されないように戦う……。
つまりは未怨龍を残らず素早く叩き潰せばいい訳だな?
飛び込む前に未怨龍の位置を確認、機を見て呼吸を合わせて仲間と救出を開始する。

使うパラドクスはエコーチェンバー。
未怨龍と一般人の間に割って入る。
【怪力無双】で未怨龍の体のどこでもひっつかんでぶん投げてでも。

一般人を巻き込まないためにも、敵との間に入り一般人に背を向けるという位置取りを重視する。

「大事に運んでる獲物をわざわざ殺すとか意味わかんねーことやってんじゃねーぞクソトカゲがぁ!」

アドリブ、連携歓迎です。


眉立・人鳥
アドリブ絡み歓迎

うし、悪くねえ仕上がりなんじゃねえの?
後は無事ここへ送り届けるためにも……

一般人達のスムーズな避難のために
敵の視界を潰しやすい森か、進行方向と逆側から攻めたいかねェ……
まずは敵の位置の把握から始める
動物の友を引き続き使い、目立たないよう小動物に偵察して貰おう

仲間と連携してあたるとして、俺は森側から仕掛けるかな
完全視界で目を、木の上辺りに紛れて射線を確保しつつ
バイビークを射撃モードにして待機、タイミングを合わせる

まずは不意打ちの一射……その無防備な頭、抜かせて貰うぜ
いただきィ!

後は適時味方が動きやすいよう支援射撃に回るとするか
ま、倒しちまってもいいんだよな?


伊藤・真九郎
アドリブ、連携歓迎致す。

仲間と合わせ、奇襲を仕掛けるが如く人々の救出に向かう。
敵陣と人々の間に割り込みつつ【防衛ライン】展開。接近を阻み庇おう。
「騙されてはならぬ!こやつらは其方らを生かして帰す気は無い!我等、救出に参った!」と声をかけ、身を守って貰う。

【一騎当千陣】を使用し、影武者群を召喚。展開させ人々を守らせる。
太刀を抜き放ち、感覚を同じくする分身同士の一矢乱れぬ連携にて集団攻撃。敵陣を斬り払ってゆこう。
反撃は太刀受けにて切り払い防御。庇う人々へ被害が及ばぬ様、押し戻す。


相原・相真
隠れ里へ一般人を案内している暇はないだろうから、
事前に木に布を縛って目印を用意
逃がすときにはそれを辿っていくように伝えます

他の皆さんとタイミングを合わせて攻撃開始
できれば最初の攻撃で敵と一般人をある程度分断したいです
その後は敵陣に切り込み、
できる限り注意をひきつけ一般人が逃げる時間を稼ぎます
「このままついていけば皆さんは殺されます! どうか俺たちを信じて、逃げてください!」

戦闘時は魔力の刃を纏った手刀での[斬撃]で攻撃
敵の攻撃は身体強化や装備による[残像・フェイント]を活かしての回避でしのぎましょう
ただ、一般人が狙われている場合には割り込んでいってかばいます

アドリブ・連携歓迎です


神那岐・修
己が業を以て万難を砕くが武というもの
無道の輩は討ち果たす

確認次第正面から
意識誘引を兼ねる

己の五体は万物を掴む
なれば風すらも望めば踏みしめる大地と同じ
空間全て疾駆し狙いを外し、一足の間に踏み入ったら“瞬”にて侵略
幻陽にて撃つ


魂の奥底まで刻み込んだ武は己が意志の外ですら応える
幻影が万物を撃つが如く。故に“幻”
向けられる攻撃を打ち払いつつ最速で近接
魂まで染み付いた動きに停滞はない
猛炎も利刃もパラドクスなれば砕き得る

近接後は敵勢から離れず戦闘
手脚が届かねば己は役立たずと自覚する
手傷は動ける程度に己を書き換え戦闘継続


数が如何程であれ一切問題はない
“真”の眼で捉え“瞬”で追い詰め討つ

※アドリブ・連携歓迎


 険しい山道は、木立に挟まれていた。
 行列を作って進む無辜の人々に狙いを定めながら、木々の間を、未怨龍の群れが登ってくる。
「一般人に手を出されないように戦う……。つまりは未怨龍(やつら)を残らず素早く叩き潰せばいい訳だ」
 巨木の影に身を潜めながら、鳩目・サンダー(ハッカーインターナショナル同人絵描き・g05441)は敵軍を待ち伏せる。
「腹減ってんだかなんだか知らねえが」
 喰わせてたまるか――サンダーは思いながら、味方の攻撃に合わせようとしていた。
 未怨龍からすれば、人々を喰い殺せるような状況に至ったほうが、却って好都合なのかも知れなかった。 生者を殺して肉を喰らうことを求める貪欲なる怪異の群れが、飢えた獣そのものに見えた。

 死地へと護送されゆく人々の連なり。そして天魔武者や妖怪ども。
 木の枝に留まった小鳥が、それを遠目に見ていた。
 暫くそうした後、何度か首を傾げて飛び立つ。
 樹上で目を凝らしていた眉立・人鳥(鳥好き兄ちゃん・g02854)が小さき友を迎えた。
「なるほどなァ。となると、ここで待ち伏せするべきかねェ」
 隠れ里の出来栄えは悪くないものだった。人々を無事そこへ送り届ける為にも、天魔武者や妖怪どもを倒さねばならない。
 そこで人鳥は、まず敵の様子を窺うことから始めたのだった。
 肩に乗る小鳥は動物の友で意志の疎通が可能になっていたが、集められる情報には限りがあり、万が一にも見つかって警戒されれば人々に危害が及ぶ可能性もあった。そのため、得られた情報はそう多くないものの、
「やって来たな」
 待ち伏せが功を奏して、山林を登ってくる未怨龍の群れを、人鳥は捉えることができていた。
(「進行方向と逆側から攻めるのも手だが……そいつは任せるとするか」)
 知己も含めた多くのディアボロスが、人々を護るために動き出しているはずだ。
 人鳥は早速、愛用の大型銃槍――バイビークを射撃モードに移行。鳥の嘴を思わせるその先端を、遠くの未怨龍に向ける。
 牽制も考えたが、今が攻撃を仕掛ける絶好の機会だった。
「ま、倒しちまってもいいんだよな?」
 パラドクスの発動と共に、天魔の真眼が力を発揮する。
「まずは不意打ちの一射……その無防備な頭、抜かせて貰うぜ」
 狙いを定め――そして射つ。
「いただきィ!」
 口の端を不敵に吊り上げた人鳥の連続射撃が、二体の未怨龍の頭蓋を見事に撃ち抜いた。
 何も出来ぬまま倒れ伏した同胞と立て続けの銃声に異常を察して、他の未怨龍どもが咆哮し始める。
「流石に気付いたか。だがもう遅いぜ?」
 援護射撃しようとバイビークを構え直した人鳥の目が、敵軍に攻撃を仕掛けゆく味方を捉えていた。

「始まりましたね」
 人鳥とは逆方向の木立の中に、相原・相真(人間のガジェッティア・g01549)は身を潜めていた。未怨龍の群れは、事が起これば山道に突っ込んで、護送されている人々を喰い殺すつもりであったのだろう。
「……好きにはさせません」
 人鳥のものであろう銃声が轟くや否や、相真は動き出していた。
 未怨龍の群れに、側面から仕掛ける。駆けながら、彼の代名詞とも言える右腕に装着した銀色の腕甲――『機構腕 -アームズアーム-』に意志と力を込める。
 ――接続、起動。
 魔力の刃を纏わせた手刀が輝きを帯び、相真は人々に注意を向けていた未怨龍めがけてそれを閃かせた。
 魔装接続:幻光閃撃(マジックコネクト・ミラージュストライク)。
 それは高速で敵に間合いを詰めて連続攻撃を仕掛ける、対集団戦用のパラドクスだ。
 不意を突かれた未怨龍の片腕が、鋭き手刀に斬り飛ばされて宙を舞った。振り抜く動作に合わせて相真の前髪がさらりと揺れ――その一瞬に、別の未怨龍が早くも反撃を開始していた。頭部の特徴的な角が高速回転し出したかと思うと、高出力レーザーが相真に放たれる――。
「遅いですよ」
 しかしその直前、光の残像を引いた相真の手――魔力の刃を纏わせた手刀が、未怨龍の首を、下から上へと斜めに切り裂いていた。
「ガアァァァァッ!?」
 思わずのけぞり、大きく狙いを外したレーザーが、高空へと放たれる。
 背中からドウと倒れた未怨龍を横目に、相真は素早く山道へ飛び出した。

「グォルルルルルルルッ!」
 木々の間から跳躍してきた未怨龍が、着地したかと思うと、罪なき人々に飛びかかる。
「させねえよ!」
 だが、先んじて山道に出ていたサンダーが、そのとき既に一般人を背に護っていた。両手を広げて腰を落とすレスリングのような構えを取ると、大口を開けて突っ込んできた未怨龍を迎え撃ち、タックルを見舞う!
「大事に運んでる獲物をわざわざ殺すとか」
 ザザザと足で地を抉って敵の勢いを殺し、全身全霊で受け止めるサンダー。
「意味わかんねーことやってんじゃねーぞクソトカゲがぁ!」
 サイボーグ化した体を活かして、食い止め、押し返す!
「ガッ、ァァァァァッ……!?」
 たたらを踏んだ未怨龍が、直後、周囲の凶龍ともども目を見開いて苦しみ始めた。
 エコーチェンバー。鼓膜を破るような特大音響が絶え間なく襲いかかる密閉空間――その中に閉じ込められた未怨龍の群れが、自らの叫び声を増幅させられていたのだ。
 涎を垂らしながら暴れ狂い、互いに体をぶつけ合い、のたうちまわったのちに未怨龍どもが息絶える。

「ひぃっ……!?」
 突如として殺伐たる鉄火の間と成り果てた山道で、ヒルコを始めとした人々が退がろうとする。それは、自らの命を守ろうとする本能的な行動と言えた。
「勝手に動くな! お前らはそこでじっとしていろ!」
 天魔武者・大鉞衆が叫ぶが、それら護衛の者どもは、百々爺を護れば良いのか、はたまた退がろうとする人々を止めれば良いのか、一瞬迷いが生じていた。
「騙されてはならぬ! こやつらは其方らを生かして帰す気は無い! 我等、救出に参った!」
 疾風のように山道を駆け上がってきた伊藤・真九郎(人間の戦国武将・g08505)が、人々の前に立って声を張り上げる。
 救うべき無辜の民草を背にして、真九郎は防衛ラインを展開。と同時に、素早く無銘の愛刀を抜き払い、その剣気を以て敵軍を圧倒する。
「影武者、顕る可し!」
 烈々たる下知に呼応して現れいでた者どもこそ、伊藤・真九郎の影武者。彼と同じ具足に身を固めた、太刀の武者衆である。
 パラドクス、一騎当千陣――喚び出された武者輩は、人々を護り、そして突っ込んできた未怨龍を迎え撃つ!
「我らの邪魔をするな……!」
「貴様らから喰らってやろうか……!」
 火山の岩肌めいた体から炎を発し、高速で爪の一撃を繰り出してくる未怨龍ども。罪なき人々を喰らわんとした卑怯なる龍の魔手はしかし、真九郎と彼が率いる影武者たちの閃かせた太刀に斬り飛ばされて宙を舞った!
「ガァァァァァァッ!?」
「此処は我らに任せよ!」
 太刀を構えたまま声だけを背後に送り、真九郎は人々に避難を促す。

 救出すべき人々と敵軍との分断は、成功したと言っていい。
「木に布を縛って目印を用意しておきました。それを辿って逃げて下さい」
 隠れ里に案内できれば一番良かったけれど――考えていた通り、それだけの余裕はない。
 だから敵の注意を引き付けつつ、相真は声を励ました。
「このままついていけば、皆さんは殺されます! どうか俺たちを信じて、逃げてください!」

「奇襲か……やってくれる」
 天魔武者・大鉞衆が低く呻く。
 一斉に山道へと飛び出した未怨龍の群れは、ディアボロスたちの水際だった急襲に混乱しているのか、唸りながら左右に首を降っていた。
 無辜の人々はディアボロスたちに護られて山を下り始めており、それを追うことさえ天魔武者や妖異どもには許されない。
 何故なら――、
「己が業を以て万難を砕くが武というもの。無道の輩は討ち果たす」
 満身から闘気を放って拳を構えた神那岐・修(紫天修羅・g08671)が、正面――即ち坂の上から敵陣に飛び込もうとしていたからである。
(「挟撃を仕掛ければ、意識をこちらに向けざるを得んだろう」)
 もし逃げた人々を追おうとすれば、未怨龍どもは、真九郎を始めとしたディアボロスを突破しなければならないばかりか、修に背中を晒すことになってしまう。それが自殺行為であることは、狂乱する龍にも理解できたのだろう。
「邪魔をするか!」
「焼き尽くしてくれる!」
 牙を剥いて振り返り、複数ある異形の角を猛回転させる未怨龍。生じた莫大な熱エネルギーが、直後、目に見える光条として放たれた。
 ――己の五体は万物を掴む。なれば風すらも望めば踏みしめる大地と同じ。
 しかしそれよりも早く地を蹴って宙に身を躍らせていた修は、卓越した空中戦の技倆を駆使して体を捻った。虚空を裂いて迸った熱線は、彼の丈夫な道着を焼くのみに留まる。
 そうして肉薄すれば、もはや無双武人たる修の間合いだ。
 修練の果てに達した一つの境地――即ち無念無想の拳が、転瞬、未怨龍の胸を盤石でも砕くように破砕する!
「ガアァァァァァッ!?」
 叫び、ぐらりと揺れて仰向けに倒れる未怨龍。
「数が如何程であれ一切問題はない。“真”の眼で捉え“瞬”で追い詰め討つのみ」
 残心して息を吐いたのも束の間、修が禍ツ龍の群れに飛び込んでいった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【ハウスキーパー】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
【防衛ライン】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【命中アップ】LV2が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!

ルキウス・ドゥラメンテ
【黒荊】

世は弱肉強食とは言うが…燃料…
正義を気取るつもりもないが、ヒトをヒトとも思わぬ所業は端的に言って不愉快だ

敵の戦法に何やら居直りを感じるな
卑怯の誹りは気にせぬと?いっそ高潔だ、気に入った
一般人を背に庇い、敵の動線を遮る位置に陣取ろう
可能であれば先制で蹴撃を叩き込み、魔力の成した茨で敵がヒルコらへ近寄る道を断つ
…おい、リュカ
このトカゲ達は随分と躾が悪いようだが、何か気の利いた手はないものかね
彼に背中を預けつつ、一般人の危機には捨て身の一撃も辞さない

生者の肉さえ喰らえれば、か…己の嗅覚の鈍さを恨むと良い
今お前の目の前にいるのは死そのものだよ


リュカ・テネブラルム
【黒荊】
嗚呼、お労しい
獣が如きその道理…貴方がたには理性は欠片もないのでしょうか?
…では、安寧を奉りましょう

愛馬に騎乗して卿の後方に控えつ、敵の反撃と機を合わせて我が愛するバイオリンを掻き鳴らします
…と見せかけて
審判の喇叭に震えるが宜しいでしょう、獣ども
我が氷雪使いの異能にてその炎を減じることが能えば僥倖
おやおや、自棄でございましょうか?
我が身を傷つけることそれ即ちこの美を成したる造物主への不敬と見做しますゆえ…
向かい来るその身に火炎使いの炎を降らせつ、機を見てその首の両断を狙いましょうか
しっかりウェルダンに焼きますとも
メインディッシュは爬虫類のグリル?
嗚呼、失礼
燃料でしたっけ、そう言えば


 未怨龍が流涎し、唸り、そして咆哮する。
 山地に轟く声には、飢え切った獣が恰好の獲物を逃した時のような怒りと怨嗟が混ざり合っていた。まさに呪わしき不快な雑音だ。
 生者の肉を喰らいさえすれば救われる――歪んだ望みに突き動かされた禍ツ龍の血色の瞳には、狂的な光が揺れていた。
「嗚呼、お労しい。獣が如きその道理……貴方がたには理性の欠片もないのでしょうか?」
 無双馬ビーマイナーに騎乗したリュカ・テネブラルム(彼岸へと愛をこめて・g05363)が、群がる未怨龍どもに、詠うが如く問いかけた。
 もとより凶龍に満足な返答など期待してはいない。
「喰わせろ……肉を……生者の肉を……!」
 未怨龍は狂乱してか、はたまた欲望に耐え兼ねてか、逃れゆく無辜の民草の最後尾めがけて襲いかかろうとしていた。
 けれど彼らはこの地に集った精強なるディアボロスたちに護られており、そして――、
「生者の肉さえ喰らえれば、か……己の嗅覚の鈍さを恨むと良い」
 凶龍の目の前に、宙に身を躍らせたルキウス・ドゥラメンテ(荊棘卿・g07728)が割って入っていた。否、木立から山道に飛び込みざま、牙を剥いた龍の側頭部を、強かに蹴り飛ばしたのだ。
 敵前に着地するルキウス。
「今お前の目の前にいるのは死そのものだよ」
 蹴撃は本命の一撃を繰り出すために放ったものに過ぎないが、しかし喰らった未怨龍は頬を張られでもしたように、よろめいていた。
「……おい、リュカ。このトカゲ達は随分と躾が悪いようだが、何か気の利いた手はないものかね」
 ビーマイナーに乗ったまま、荊棘卿(ルキウス)の後方へ控えたリュカは物思わしげに吐息して、
「……では、安寧を奉りましょう」
 馬上より奏でるのは、Kyrie――即ち慈悲の音色を生ずる弦楽器(バイオリン)である。それは人を喰らうことであえかな希望を果たさんとする未怨龍を鎮めるようでもあったが――。
「審判の喇叭に震えるが宜しいでしょう、獣ども」
 歴史侵略者(クロノヴェーダ)の尖兵に向けるのは当然、癒しなどではない。具現化したトランペットの吹鳴が未怨龍の頭上より響き、雹と火とを降り注がせた。
 氷雪使いの技倆を注ぎ込んだリュカのパラドクスは未怨龍どもにとって脅威そのものだ。降り注ぐ雹を必死に振り払い、無様な舞踏を見せていた二体の未怨龍が、体を回転させながら馬上のリュカめがけて突っ込んでいった。
「おやおや、自棄でございましょうか?」
「ガアァァァァァァァッ!」
 そしてほぼ同時。
 怒りを燃え上がらせ、活火山の岩盤を思わせる体表から火を噴いた残りの未怨龍が、炎を纏ったまま、ルキウスに狙いを定めて襲いかかっていた。
 一体だけではない。
 もう一体は、他のディアボロスに斬り裂かれて、地に倒れ伏していた個体だった。肉を、命を喰らえれば、どのような方法でも構いはしない――そう言いたげな窮余の戦法である。
「卑怯の誹りは気にせぬと? いっそ高潔だ、気に入った」
 当然、そのような手で不意を打ったとて、ルキウスを驚かせることなどできはしない。
 炎纏いし爪が、業(ゴウ)と大気を灼く。
 紙一重でそれを躱しつつ、ルキウスは軽やかなステップで地を蹴った。
 リュカのバイオリンの旋律に合わせた黒蹄の円舞曲(ワルツ・カヴァリーノ・ランパンテ)。華麗な回し蹴りが禍々しい龍の顔を強かに蹴り飛ばし――地を滑るように倒れた龍は今度こそ二度と動かなくなる。すかさずもう一体の龍の顎を蹴り上げれば、黒き体躯はふわりと宙に浮かび、そして間もなく墜落した。
 魔力の残滓が敵の行く手を阻むように薔薇咲き誇る黒き茨を形成する中、トランペットの音は未だ響き続けている。
「我が身を傷つけることそれ即ちこの美を成したる造物主への不敬と見做しますゆえ……」
 火炎使いの技を以てその吹奏を後押しすれば、降り注ぐ炎は一瞬、瀑布のようになって、突っ込んでくる未怨龍どもを阻んだ。
「しっかりウェルダンに焼きますとも。メインディッシュは爬虫類のグリル?」
 リュカが言い、そして笑みを浮かべた。
「嗚呼、失礼。燃料でしたっけ、そう言えば」
 外から焼き尽くされ、恐らくは自らの心火にも焼かれて、最後に残っていた未怨龍どもが倒れ伏した。
「我らを愚弄するか……! 燃料とするはこやつらではないわ!」
 護衛の大鉞衆が思わず言葉で横槍を入れたが、それは一般人を燃料にしようとしていることを、自らバラしてしまったのも同じである。
「嗚呼……語るに落ちるとはこのこと」
「世は弱肉強食とは言うが……燃料……」
 そこらに転がる黒龍の屍には見向きもせず、ルキウスが屈強な敵を睨んだ。
「正義を気取るつもりもないが……ヒトをヒトとも思わぬ所業は――端的に言って不愉快だ」
 赤き瞳から放たれる刃のように研ぎ澄まされた視線が、天魔武者どもを射抜いた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【怪力無双】がLV2になった!
【スーパーGPS】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!

「やれやれ、邪魔が入りおったか。もう少しじゃったのにのう」
 木の上で百々爺が口惜しげに言った。けれどやはり老獪なる妖怪変化。さほど狼狽した様子もなく、ディアボロスたちを見下ろして、
「大鉞衆よ、折角じゃ、相手してやれい。こやつらを首にすれば、申し訳も立つじゃろうて」
「御意」
「仰せのままに」
 天魔武者・大鉞衆がその名の通りの武器を引っ提げてディアボロスたちの前に出る。重装甲と攻撃力を誇る反面、動きは鈍重そうだが……ロケットブースターを駆使した戦法は脅威だ。
 勿論、ディアボロスは護衛を無視して百々爺を直接狙うことも可能である。どう戦うかは、連携や作戦次第となるだろう。
 大鉞衆がギラリと目を輝かせ、ディアボロスたちに襲いかかる。
伊藤・真九郎
アドリブ、連携歓迎致す。

主君を守らんとするか。
仔細無し。立ちはだかるならば、片端から撫で斬るまで。

大小二振りの太刀を抜き、【二天一流】にてお相手致す。
懐に踏み込み、双刀による斬撃を装甲の隙間に打ち込み「両断」する。
鉞の噴射を「精神集中」し見切り、軌道を「看破」。振り下ろされる刃に横から太刀を合わせ、角度をねじ曲げ打ち逸らす。己が技量による打ち込みならば手の内締める事も出来ようが、絡繰に頼ったが其許の不覚よ。
生じた隙を狙い追撃を喰らわす。

人々を追わせぬ様、仲間と連携し殲滅してくれよう。


鳩目・サンダー
老獪そうなジジイが率いているとなると、余り同じ手を何度も使いたくはないかな。
使うパラドクスはデジタルディバイド。

【光学迷彩】も併用してあわよくば奇襲や側面攻撃を図る。
さっきのトカゲ共と違って統率の取れた敵と正面からのぶつかり合いだから効果は薄いだろうが、少しでも搦め手になればそれでいい。
武者とまともに斬り合うなんておっかないからね。

間合いは遠目に、大振りは徹底回避、隙を見て刃の先端で掠め斬るぐらいでいい。


アドリブ、連携歓迎です。


神那岐・修
隠れるのなら引き摺り出すまでの事

小細工は出来ぬ故正面より
“瞬”にて瞬刻で間合いを侵略し肉薄
雷轟にて撃つ

正面より挑めば自慢気な鉞を振るってこよう
故に得物も撃つ対象としそちらから砕く

“纏”“幻”“瞬”を合わせ引くか振るうかの力を込めた所へ一撃
如何に速く強くとも捉えてみせよう
躱しながらの動きも無問題
地も空も、敵の体躯も得物すら己の足場と駆けるのみ

適度に敵勢が互い邪魔となる位置で交戦
得物を潰し、首を取る
一つずつ重ねて殲滅すれば良い

手近に此方から意識を切る輩があれば遠慮なく狙う
戦に手を抜くなど無作法故
手傷は動ける程度に己を書き換え、残らず倒れるまで戦うのみ

※アドリブ・連携歓迎


眉立・人鳥
アドリブ絡み歓迎

うし、サンキュー……お前も逃げな
偵察に協力してくれた小鳥を逃し、俺も仲間に合流する

分断は出来たが、万一があっちゃならねえ
一般人を巻き込まないよう気をつけつつ
ここからは射撃モードを解除したバイビークで近接戦と行こう

パラドクスにより、血を触媒に巨大な魔剣槍へと変貌させ
ロケットブースターを使わせる前に突撃、一気に踏み込み
纏めて薙ぎ払ってやろうじゃねえか

立ちはだかるってんなら、容赦はしねぇぞ
お前らの醜悪な企みごと残さずぶった斬ってやんよ


相原・相真
まずは無事に逃げてもらえましたか
そして彼らを追わずにこちらを狙ってくれるなら好都合
それじゃあしっかりお相手願いましょうか…!

念のため逃げた人たちを追わせないように陣取り相対
変に小細工はせず正面からぶつかりましょう

戦闘時はパラドクスで形成した巨大な腕での打撃で攻撃
【強打】で思い切りぶん殴ります
敵の攻撃には巨腕や魔力障壁での防御を行い受け止めましょう

アドリブ・連携歓迎です


●対峙
「我々の邪魔をして、ただで済むと思うなよ」
 重く籠もったような声が天魔武者・大鉞衆から発せられた。
 ずしりと山道を踏みしめ、恐るべき機巧を備えた大鉞を構える。
「主君を守らんとするか」
 雁首を揃えた堅牢なる武者衆を前に、伊藤・真九郎(人間の戦国武将・g08505)は大小二振りを抜き払った。
「仔細無し。立ちはだかるならば、片端から撫で斬るまで」
 二刀を遣うその構えこそ二天一流のもの。高名な流派を、真九郎は自らのパラドクスとして昇華させている。
 大鉞衆たちはその動きの鈍重さ故か、逃れゆく一般人に何も出来なかったが――今や護衛という本来の任を果たすべく機械の体に闘志を滾らせていた。
「護衛けしかけて様子見てんのか。老獪そうなジジイだな……」
 がさりがさりと木々が揺れていた。
 百々爺が飛び回っているのか――思いながら 鳩目・サンダー(ハッカーインターナショナル同人絵描き・g05441)が少し後方で護衛の出方を窺う。
「隠れるのなら引き摺り出すまでの事」
 呼吸を整え拳を構え、 神那岐・修(紫天修羅・g08671)が丹田に気を充溢させながら静かに言葉を口にした。相手が如何なる戦法を取ろうと、正面から仕掛け、打ち破るのみ。
 護衛を討ち漏らすことがあれば、それはそれで百々爺との決戦の邪魔になるかも知れないのだ。
(「余り同じ手を何度も使いたくはないかな」)
 あたしは搦め手で行くか……一方、サンダーはそう考え、敵味方がぶつかりあう瞬間を狙う。
「まずは無事に逃げてもらえましたか」
 坂の下り方向を背にしつつ、相原・相真(人間のガジェッティア・g01549)は内心、ひとまず安堵していた。少女のようなヒルコを始めとした人々が、逃げる直前、その瞳に宿していたのは感謝と希望の光であったのだ。
「うし、サンキュー……お前も逃げな」
 眉立・人鳥(鳥好き兄ちゃん・g02854)が言うと、肩に乗っていた小鳥が鳴いて、素早く元いた場所へと帰っていく。
 人鳥の鳥好きが伝わったのか、意思疎通を交わした小鳥は随分と役立ってくれた。ほんの少しだけ名残惜しくもあるが、此処からの戦闘に巻き込んでしまうわけにはいかない。
 巻き込めない――それは、助け出した一般人もまた同じだ。
(「分断は出来たが、万一があっちゃならねえ」)
 山道に立った人鳥は、射撃モードを解除したバイビーク――大型銃槍を天魔武者どもに突きつけて、笑って見せる。 
「図体がでかい奴らだな。俺らを倒して追いかけるなんてマネができんのか?」
「おのれ愚弄するか!」
 人鳥の言葉は挑発の意味もあるが、事実、大鉞衆の不得手をさらりと突いていた。ディアボロスを差し置いて、動きの鈍重な彼らが人々を追うことなどできはしない。
(「こちらを狙ってくれるなら好都合」)
 機械腕を構えつつ、相真は冷静な中にも刃のような鋭さを秘めて、頑強なる天魔武者と対峙する。
「それじゃあしっかりお相手願いましょうか……!」

●ディアボロス、奮闘せり
 堅牢な分、天魔武者・大鉞衆の体は重い。その鈍さを、得物である大鉞のロケットブースターが補っていると言っても良い。
 よって人鳥は散開した大鉞衆めがけ、恐れなく一気に踏み込んだ。
 点火した大鉞が唐竹割りのように襲い来るが、半身を逸らして軽傷に留める。
「今度はこっちから行くぜ?」
 迸る鮮血を触媒にパラドクスの力を解放すれば、Chaos Coreが励起し、銃槍バイビークが唸りをあげて変貌した。条理を超えたその力で瞬く間に近接強化形態――即ち魔剣槍へと移行。異形の武器が、紅き軌跡を描いて大鉞衆に襲いかかる!
「ヌゥッ……!」
「装甲が……有り得ぬ……!」
 自らの頑強さを誇っていた大鉞衆から溢れ出たのは、呻きと驚きの声であった。さもありなん――ダメージアップの効果で威力を増大させたバイビーク・ブラッドヴェイルは、大鉞衆の装甲を断ち切って深々とした損傷を刻んでいたのだ!
「小癪な……!」
「その武器ごと断ち切らん!」
 もう一体の大鉞衆が武器のロケットブースターを点火して攻撃を仕掛けてくる。
 死をもたらす筈の一閃はしかし、念動力とオーラ操作の技能を注ぎ込んだ人鳥のバイビークにより弾かれていた。
「立ちはだかるってんなら、容赦はしねぇぞ」
 跳ね返された衝撃に、たたらを踏む大鉞衆。
「お前らの醜悪な企みごと残さずぶった斬ってやんよ」
 損傷部から火花を散らしたかと思うと、天魔武者どもの体が爆発した。
「流石ですね、人鳥さん。こちらは俺が」
「おう、頼んだ」
 果敢に敵に接近して掻き乱していた相真は、人鳥と背中合わせになる形で死角を消しつつパラドクスを解放していた。
「舐められたものだ」
「我らを侮るなよ」
 四体の大鉞衆が、口々に言いながら大鉞を振り被る。常識的に考えればまだ距離があり鉞の間合いではないが、これはディアボロスとクロノヴェーダの戦いである。ロケットブースターを点火すれば、凄まじい斬撃が瞬時に相真を襲うだろう。
 だが――仕掛けようとしているのは、相真も同じ。
「接続、起動。巨人憤激……!」
 大地が鳴動する。
 瞬間、地面を突き破るような巨腕――土の巨人のそれを思わせる腕が出現し、ロケットブースターで加速した大鉞の連続攻撃を防ぎ切る!
 機装接続:巨人憤激(アームズコネクト・フューリーオブギガース)。
 パラドクスの力により、ナノマシンが大鉞衆も気付かぬうちに散布されていたのだ。
 弾け飛ぶ土塊。そして相真の意思により操られた剛腕が、斬撃を刻まれたのにも構わず、四体の大鉞衆を機械仕掛けの玩具のように薙ぎ払った!

「やりおる……だが相手にとって不足なし……!」
 先程までは目立った動きもなかったが、いざ戦闘となれば、大鉞衆は勇敢であり、また死をも恐れぬ武者どもであった。
「踏み込んできたか」
 態勢を崩そうとする大鉞の連撃を、修は手の甲で弾いて、逸らしていく。鋼と鋼、刃と刃とがぶつかり合うような音が山地に木霊する中、修は飽くまで冷静な面持ちを動かすことはない。
 呼吸を乱さず、無意識に体が動くまでに到達した修練の冴えを見せて、却って敵の姿勢を崩していく。
「ならばこれでどうだ」
 だが敵もなかなか侮れないもの――大鉞を弾かれればその状態からロケットブースターを点火させ、今までとはまるで違う速度の横薙ぎを仕掛けてきた。
 身を逸らした修の目の前を、刃がかすめ、風が黒髪を揺らす。
 好機と見た修はパラドクスの力を発揮しながら、僅かに笑みを含んだようだった。
「大振りが仇となったな」
 いま修と打ち合っているのは一人なれど、広く見れば衆対衆の戦いである。見境無き武器の大振りは却って自陣の形を崩すことにもなる。それを誘うような体捌きで、接近戦を繰り広げていた修であった。
「おのれ……」
 ぬかったとばかりに、天魔武者が呻く。
 勝利を掴むため、出来うることを最大に行うのが戦いだ。
「戦に手を抜くなど無作法故」
 修の拳が敵の胴鎧めいた装甲を穿つ。
 たたらを踏んだ天魔武者の首を、颶風のような回し蹴りが吹き飛ばしていた。
 大鉞衆の頭が転がっていったその傍らで、真九郎が複数の武者どもと斬り合っている。相真や人鳥も連係して戦いを繰り広げていた。
「おのれ……この上は……!」
 天魔武者どもは旗色が悪くなっているにも関わらず、最後まで戦おうとしていた。残存する者たちが捨て身のようになって、せめて一撃でも見舞おうと大鉞を振るう。
「我が身を捨ててでも汝らの首を獲らん!」
 機械の体を持つ天魔武者の、如何にも武士らしい口振りであった。
 しかし猪突猛進の勇敢さが、あえなく挫かれることもまた戦場の常だ。
「息巻いてるところ悪いがな」
 突如として背後から飛び込んできた影に、鈍重な大鉞衆は満足に振り返ることさえ出来なかった。
「後ろ、がら空きだぜ?」
 サンダーである。
 その手により虚空に閃いたのは、何ぞ図らん――スタイラスペンであった。万物をデジタルデータに変換するデジタルディバイドのパラドクスで、ペンが、剣さながらの武器へと変貌を遂げていたのである。
 突き刺せば大鉞衆の堅牢な体を穿ち、払えば装甲を断ち切る。
 二体を瞬く間に斬突したかと思うと、サンダーは即座に飛び退いていた。
「っぶね……!」
 その鼻先を、ロケットブースターに後押しされた大鉞がかすめる。
「背後から、とは」
 責めるような天魔武者に、サンダーは口の端を歪めた。
「武者とまともに斬り合うなんておっかないからね」

「腕に覚えがあるのは確かのようだな、二刀の武者よ」
「だが我らを相手取って何処まで戦えるか」
 同胞が次々に斃されていく中でも、大鉞衆に狼狽える気配はなかった。牽制の連撃を見舞う真九郎の二刀を大鉞や装甲で防ぎ、火花を散らせながら、必殺の一撃を叩き込もうと狙いを定める。
「流石に頑丈なもの。だがそう鎧兜に頼るようでは身ごなしが疎かになろう」
「ぬかせッ!」
 挑発に乗って、阿吽のように並んだ二体の大鉞衆が大鉞を振り被った。ロケットブースターが点火し、ぼうぼうと火を噴いて、急加速した得物が真九郎に襲いかかる!
「己が技量による打ち込みならば、手の内締める事も出来ようが」
 大上段からの打ち下ろし、それも加速が必要となれば、達人である真九郎にとってその軌道を読むのは難しくない。精神集中して看破した真九郎は、右から襲い来る大鉞の刃に太刀を当て、敵の力も利用して逸らしてのけた。
「絡繰に頼ったが其許の不覚よ」
 二刀流だ。もう一方も同様に逸らせば、真九郎の足元に敵の大鉞が突き刺さる。
「その首、頂戴致す」
 態勢を崩した大鉞衆に二刀が閃く。
 最後の二体の武者首が断ち斬られ、ごろんごろんと地面に転がった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【怪力無双】がLV4になった!
【光学迷彩】LV1が発生!
【水面歩行】LV1が発生!
【建物復元】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV8になった!
【ダブル】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV2になった!
【ガードアップ】LV1が発生!

「カッカッカ、見事、見事。お主らの強さ、ようく分かったぞよ」
 百々爺が木の上からディアボロスたちを見下ろして、干からびた笑い声をたてた。
 天魔武者・大鉞衆の全滅など、まるで気にもかけていないかのような口振りである。
「あたら燃料を逃したのは業腹じゃが、代わりに良き獲物を見つけたもの。お主らは既に死地におるのじゃ」
 戦場は山だ。そのことに百々爺は絶対の自信を持っているようだった。
 けれど如何に飛び回られようとも、捕捉していればパラドクスは届く。
 誘い込むもよし、狙い撃つもよし、ここからは老獪なる妖怪との力比べであり知恵比べだ。
 百々爺が妖気を漲らせて、その両目を光らせた。
リュカ・テネブラルム
【黒荊】

嗚呼、何という…その歪んだ心根が滲み出たかの様なその御姿、実にお労しい……
神も憐れみをくださる筈です
心して安寧を奉りましょう

愛馬に騎乗して戦地を駆けます
敵がどう動けど我が刃はその頸を両断することだけが目的なれば、接敵あるのみ
氷雪使いの技能にて氷雪を纏わせながらパラドクスを使用
おやおや、どうやら使い魔のお姿までもあまり麗しくないようで
ですが、蛙というものは寒さに強くはないのでしょう?
飛翔の残留効果もお借りして攪乱する様に立ち回り、連携を阻害いたしましょう
卿の邪魔をする岩の塊を腐食させて道を開けるお手伝いも

ところで、この場所が私たちの死地だと先刻仰いましたね
今もその様にお思いで?


ルキウス・ドゥラメンテ
【黒荊】
その老体で今尚戦地に立つとは感心だな、ご老公
ちなみに今年で齢は幾つだ?
成る程、それがお前の享年だよ

攻守共に神速反応を活用
あまりダンスをご一緒願いたい相手でもないが仕方ない
邪魔くさい岩の塊にもげんなりするが
そこらの木々と併せて障害物は蹴り砕くか吹き飛ばして排除
近接距離での戦闘を狙う
距離があればあるほど邪魔が増えそうな為
蛙どもはリュカに任せておきたいが、捌ききれないなら蹂躙あるのみ
爬虫類はあまり好きじゃないんだ

あえて先の戦いと同じパラドクスを使用するのは、見切られたと見せかけて捨て身の一撃を叩き込む為
敵が老獪な分、命知らずな策で意表を突ければと


「その老体で今尚戦地に立つとは感心だな、ご老公。今年で齢は幾つだ?」
 百々爺が木の上で妖しく目を光らせる。
 その視線を受けたルキウス・ドゥラメンテ(荊棘卿・g07728)が、討つべき敵を見上げながら、まるで年寄りの冷水とばかりに声を浴びせかけていた。
 当然ながらその皮肉を額面通りに受け取るような百々爺ではなく、また挑発に激する素振りも見えはしない。
「どうじゃったかのう。なにぶん耄碌しておってな。二百か三百か、ひょっとすると千かもしれんのう」
「成る程――それがお前の享年だよ」
 全く食えない年寄りである。
 ルキウスは会話を切り上げると、その場に立ったまま微動だにせず精神を統一する。
 何処からでも仕掛けてこいと言わんばかりの不敵かつ泰然とした姿に警戒したか、ムゥと唸りながら目を細めた百々爺は――瞬間、真横から馬で疾駆してきたリュカに目を向けた。
「嗚呼、何という……その歪んだ心根が滲み出たかの様なその御姿、実にお労しい……」
 木の上で目を光らせる醜怪な妖異を見て、リュカ・テネブラルム(彼岸へと愛をこめて・g05363)は吐息混じりの声を口にのぼせる。
 瘴気にも似た妖気を滾らせて、百々爺が今にもパラドクスを放とうとしていた。それを、無双馬『ビーマイナー』に騎乗して一陣の黒き風さながらに疾駆するリュカが鋭く見て取る。
「神も憐れみをくださる筈です。心して安寧を奉りましょう」
 追いかけてくるリュカを警戒するように、妖気を纏いながら木から木へと高速で飛び移る百々爺。
「そうまで儂の首が欲しいか」
「ええ、どう動けど我が刃はその頸を両断することだけが目的なれば」
「カッ、馬に追いつかれるような儂ではないぞよ。甘く見られたものじゃ」
 滾らせていた妖気を発散すると、百々爺は木立を疾駆するリュカの頭上から巨大な化け蛙の群れを落としてきた。
「おやおや、どうやら使い魔のお姿までもあまり麗しくないようで」
 鳴き声を発しながら落下してくるそれに触れでもすれば、病毒はたちまち全身を冒し、如何な手練の騎手さえ落馬の憂き目を見ることだろう。
「……ですが」
 そう思われた刹那、リュカはパラドクスの力を解放。ビーマイナーを疾駆させたままその鐙を蹴るようにして、宙に身を躍らせ飛翔していた。ビーマイナーが化け蛙を引き付けるように駆け、リュカは大鎌を手に百々爺へと迫る。
「上手くやったつもりであろうがの。読めておるわッ!」
 流石に老獪な妖怪だけあり、リュカに注意を向けながらも、百々爺はルキウスへの対処を忘れてはいない。近づけさせぬとばかりに巨大な岩の塊を地面から噴出させ、それを地にうねる波濤の如くにけしかける。
「あまりダンスをご一緒願いたい相手でもないが仕方ない」
 精神集中したルキウスは襲い来る広範囲攻撃を迎え撃ち、恐れなく突っ込んだ。舞い上がった岩石を蹴り砕き、超常の舞いを舞うように土の波濤を越え、跳び――醜怪なる妖異との距離を詰める!
「蛙は遠慮願いたいな」
 爬虫類は余り好きではない。
 精神集中の妨げになるので、ゲコゲコ鳴く化け蛙の声も意識の外に追い出していたルキウスである。
「カッカッ! 愚か者め、二番煎じが通用するとでも思うたか! その攻撃は既に見切ったわ!」
「その慢心が命取りだと知るがいい」
 放つは黒蹄の円舞曲――未怨龍を瞬く間に屠ったそのパラドクスを、百々爺にも放とうというのだ。
 妖怪は嘲笑ったが、状況も違えば連係の有り様も異なる。
「蛙というものは寒さに強くはないのでしょう?」
 冠するは哀れみ・敬虔・慈悲の名。リュカの身の丈を越える大鎌が宿せし呪いを発散し、冴え冴えとした冷たき一閃が化け蛙どもを斬り裂いて、吹き飛ばしていた。
 虚空に翻るは黒き死鳥の尾を思わせる髪と外套。
 身も心も凍るような大鎌の一閃が、木の上で目を見開いた百々爺を捉える。
 独楽のように横回転して振るわれた刃が、深く妖怪の体を切り裂いた!
「ヌゥッ……!」
「見切ったと言ったな。真偽の程を確かめてやる」
 そこへ捨て身で距離を詰めたルキウスが、大きく眼を見開いた百々爺めがけて跳ぶと、まさしく宙を舞うように連続蹴りを仕掛けた。周囲に薔薇の咲き誇る黒茨を描き出しながら、老いた敵の体を地面に蹴り落とす!
「ば、馬鹿な……ッ!」
 地に叩きつけられた百々爺が弾かれたように起き上がり、目前に着地したルキウスに恨めしげな顔を向けた。
「捨て身とは……なんという命知らずよ……」
 ルキウスもまた無傷ではないが、百々爺の言い草に鼻で笑ってみせる。
「予測されているならそれを超えるまでだ。こんなものだろうと思い込んだお前の失策だよ」
「嗚呼、ところで……この場所が私たちの死地だと先刻仰いましたね」
 いつしか戻っていたビーマイナーの首を撫でながら、リュカが言った。
「今もその様にお思いで?」
「グヌゥゥ……!」
 痛いところを突かれた百々爺が、言葉を返すこともできずに二人のディアボロスを睨みつけた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【腐食】LV1が発生!
【怪力無双】がLV5になった!
効果2【ダメージアップ】がLV10(最大)になった!

鳩目・サンダー
はてさて、平安鬼妖の敗残者か、それとも窮地を生き抜いた古強者か。

今回の三手目はリアライズペイント。
日本画めいた画風もここらで身に付けて見ようかい。
格上相手に後手には回らん、まずは見たまま描いてぶつける。
後は一挙手一投足逃さず観察し、奴に出来る事、攻撃の規模、動きの癖を読み取り、二作目三作目をグレードアップしていく。

肉体はより頑丈に、動きはより素早く。攻撃は広く大きく強く。

これを「たかが偽物」と侮る相手ならまだ有難いが……。

ま、こちらも一人じゃねえ。あたしが警戒されるならいっそ囮になって味方の攻撃を通させる。



アドリブ、連携歓迎です。


神那岐・修
逃げ回るのも飽きた頃か
では首を置いていけ

環境の差異など些細な問題だ
常の通り討つ

山中なれば地は元より梢も風も己が身を運ぶ一助
“真”にて捉え“圓”“瞬”にて迫り間合いを侵略
斬風にて断つ

蛙は病を撒くようだが構わぬ
全てにおいて都合の良い戦など有りえぬこと
己の身体とて万全でないほうが当然
要は討つまで動くに問題がなければ良い

よって動きに支障が出ない範囲で己を書き換え戦闘に注力
邪魔なものは斬り捨て首魁の首を狙うまで

仕留めればその後でどうとでもすれば良いのだからな
常に肉薄し狙い続け首を取る

※アドリブ・連携歓迎


伊藤・真九郎
部下を全て失い、なお気勢を吐かれるか御老。
ならば此方も老を敬う必要無し。全力でお相手致す。

深く息を吸い、身体に気を蓄え呼吸を止める。毒気を吸わねば多少は持ち堪えよう。
地妖の類いならば天より攻めるが定石。【飛翔】し接敵。
定石なればこそ読まれてもいよう。ならば【飛天の太刀】にて参る。
爺の近くの樹の幹に「着地」。大地踏みしめる様に幹に立ち、重力無視して駆け登る。
木々の間を縦横無尽に跳躍。慣性や天地上下を無視した、残像を生じる高速の三次元機動で撹乱し、蛙との連携攻撃を回避。
跳躍で頭上を取り、太刀を振った勢いで軌道を変える二段跳躍。
独楽の如く旋回、連撃の刃で切り刻む。
大義、我等に有り。その首貰い受ける!


相原・相真
配下を戦わせて俺たちの戦い方を見て、それで強さが分かったと?
ずいぶんと嫌なやり方をする…
…なら、この戦い方はどうです!

ドローン:スクワイアを複数展開、戦闘形態をとらせて敵と相対
敵の動きに合わせて【臨機応変】に射撃・斬撃など形態を切り替えながら攻撃を仕掛けます
敵の攻撃はスクワイアに防御形態をとらせて防ぎましょう

必要に応じてスクワイアを割り込ませて他の皆さんをかばったり、
攻撃を当てやすいよう追い込むなどサポートを意識して動きます

死地など今更、舐めてかかったつもりはありません
貴方の配下と戦う時から俺たちは死地にいますよ
――そして今、それはあなたも同じです!


眉立・人鳥
アドリブ絡み歓迎

いいねェ、やっぱ妖怪はこうでなきゃな
遠慮なくぶっ潰せるからよ

山中がやつの有利なフィールド、だという自信砕かせて貰おうか
完全視界で目を確保しつつ、奴の動きを確実に捉えるために
神速反応を使用し機を伺う
仲間の攻撃で追い込まれそうな先に、魔血の鎖を張り巡らせる
罠使いの本領発揮と行きますかね
これがブラッドヴェイルの新しいバリエーションッ!

鎖に捉えたら、飛翔も併用し一気に突撃。最短距離で詰めるぞ
妖怪は頭や心臓狙っても生きてる可能性が高いってのは身に沁みて解ってっからな
だったらよォ……全部纏めて吹っ飛ばせばいいって事だよなァ〜〜

これがホントの出血大サービスってやつだ、流石にぶっ倒れそうだけど


●剣と拳
「ちょいとばかり戦えるというだけで図に乗っておるな。お主らの断末魔の顔が見ものじゃわい」
 先行したリュカとルキウスに傷を負わされつつも、百々爺は木に駆け登って態勢を整える。対してディアボロスたちも、討つべき怪異を包囲するような位置取りで今にも攻撃に打って出ようとしていた。
「逃げ回るのも飽きた頃か。では首を置いていけ」
 寸鉄人を刺すような、淡々としていながらも鋭い言葉をさらりと敵に突きつけて、神那岐・修(紫天修羅・g08671)は拳を構えた。
「その意気や良し。若造はそうでなくてはならぬがな……カッカッ、すぐにその生意気な鼻ッ柱を叩き折ってくれようぞ」
 百々爺が言い返すが、妖怪の口にする言葉に、一々顔色を変えるような修ではない。
「部下を全て失い、自らも手負ってなお気勢を吐かれるか御老」
 眼光鋭く見下ろしてくる百々爺に、太刀を構えたまま伊藤・真九郎(人間の戦国武将・g08505)が返した。
「所詮は借り受けし手駒に過ぎぬからのう。よもや全滅するとは思わなんだが、十分に役立ってくれたわい」
「配下を戦わせて俺たちの戦い方を見て、それで強さが分かったと? ずいぶんと嫌なやり方をする……」
 部下を手駒どころか使い捨てのように扱う百々爺に、相原・相真(人間のガジェッティア・g01549)は冷静な面持ちのまま不快感を口にした。妖しく眼光を光らせる老人めいた妖怪は、相変わらず木の上で醜い笑みを浮かべている。
「なんとでもほざくが良い。お主らに責められて痛む肚など持っておらぬわ」
 自らもまた天魔武者に良いように扱われているのだろうが――自身のことは棚に上げて百々爺はからからと笑った。敵に情けは無用だが、こう開き直られれば、いっそやりやすいというものである。
「ならば此方も老を敬う必要無し。全力でお相手致す」
「ほう、面白い。この儂を容易く斬れるとは思わぬことじゃ」
 言うが早いか、百々爺とディアボロスは殆ど同時に動き出していた。
 百々爺が木から木へと飛び移って翻弄しようとすれば、対する真九郎は地を蹴り、飛翔して老獪なる妖異へと果敢に突っ込んでいく。
 ――地妖の類いならば天より攻めるが定石。
「カッカッ、一直線に飛んでくるとはのう! 大した猪武者じゃ!」
 百々爺が妖気を発した瞬間、病毒にぬらぬらとぬめる化け蛙どもが雨あられと降りそそいできた。近づけば瘴気を発し、肺を蝕み、全身を毒で冒そうとする怪異の使いだ。
 ――定石なればこそ読まれてもいよう。ならば。
 邪魔な蛙どもを斬り捨てながら、真九郎は息を詰めて木へと突っ込んでいった。激突するかと思われたその時、パラドクスの力を解放した彼は木の幹を蹴って、斜め上から跳んできた百々爺めがけて弾かれるように斬り込んでいく!
(「環境の差異など些細な問題だ。常の通り討つ」)
 一方、修は樹木林立する傾斜地を駆ける。
 木と木の間を猿(ましら)の如く飛び回る百々爺は、魚が水を得たのにも似て、俊敏であるとともに変幻自在であった。
「早いのう。若いというのは良いもの。じゃが、いつまで駆けておれるものか」
 言葉と共に頭上から降ってきたのは、巨大な化け蛙の群れであった。蝦蟇(ガマ)にも見えるそれらが、けたたましい鳴き声を発しながら襲いかかってくる。舞い散る体液を吸い込みでもすれば、病毒が健やかな体をたちまち冒すだろう。
 それは剣術家や武闘家に欠かせぬ呼吸を乱す、老獪なる妖異の目論見と思われた。
「……微温いぞ」
 風を切って閃く拳打と蹴撃は、磨き抜かれた白刃さながらだ。四方八方から襲い来る化け蛙が凶器そのものとなった拳足に吹き飛ばされ、消え去る。回し蹴りが蛙どもを山なりに吹き飛ばし、
「馬鹿な!」
 老獪な妖怪が驚きの声を発したのも道理。
「大義、我等に有り。その首貰い受ける!」
 修と合わせ、独楽の如く猛回転した真九郎が百々爺の斜め上より、太刀を閃かせたのだ。一太刀入れると、反対側の木を蹴った真九郎は、尚も降り注ぐ化け蛙ども諸共、討つべき妖異を斬り裂いていく。閃光が一筋、また一筋と木々の合間に閃いて、回転しながら真九郎が着地したその目の前に、傷だらけの百々爺が降ってきた。
 と思った瞬間、地を蹴って恐ろしい疾さで修に襲いかかる!
「獲ったわ!」
「甘い」
 未だ降り注ぐ蛙を遮蔽物として飛び込んできた百々爺を、修の足刀蹴りが吹き飛ばした!
「ぐぬぅっ!」
 転がった百々爺が怒りに燃える眼を向けた先で、修が口の端から溢れた地を、手の甲で拭っていた。
「全てにおいて都合の良い戦など有りえぬこと」
 そして何事もなかったかのように拳を構え直す。
「己の身体とて万全でないほうが当然」
 要は、儘ならぬ中でどのように戦うかである。武を極めんとする者の研鑽と覚悟。それを若造のものと侮った百々爺が、手痛い一撃を食らったのはむしろ当然であった。
「方や息を詰め、方や身を捨てて、とはのう……」
「まだ動くか。なるほど、天魔武者を率いるだけのことは……」
 太刀を構えた真九郎が言いさして咳き込み、喀血する。
 呼吸を止めての立ち回りは体を冒す毒の量を抑え――血を吐きながらも、真九郎が膝をつくことなどありはしない。

●山中の決戦
「いいねェ、やっぱ妖怪はこうでなきゃな。遠慮なくぶっ潰せるからよ」
 高速で飛び回る百々爺の妖気を肌に感じつつ、眉立・人鳥(鳥好き兄ちゃん・g02854)は身じろぎもせずその場に立っていた。木暗がりに隠れられることを考えて完全視界の効果も発揮しつつ、精神を集中する。
(「山中がやつの有利なフィールド、だという自信砕かせて貰おうか」)
「諦めの悪い奴らじゃのう……この山で儂を捕まえられると思うておるのか」
 なるほど確かに、百々爺の変幻自在な身のこなしとパラドクスは、山中を戦場にその威力を遺憾なく発揮していると言っていい。
 小細工は却って手痛い反撃として跳ね返ってくるだろう。
「……なら、この戦い方はどうです!」
 敵の動きを見極めていた相真の周囲に展開したのは、戦闘用ドローン:スクワイアだ。瞬時に戦闘形態を取ったそれらが、ふわりふわりと浮かんで、その照準を百々爺に定める。
 ――接続、起動。従機戦陣……!
 機装接続:従機戦陣(アームズコネクト・マルチドローンスコードロン)。一糸乱れぬ、それでいて緩急自在なドローンの動きに、百々爺は目を細める。
「これは奇っ怪な」
 そうかと思うとニカリと笑い、ドローンの攻撃を受ける前に木から木へと飛び移り始めた。
「逃しませんよ」
 相真の指示に応じてドローンが飛ぶ。

「はてさて、平安鬼妖の敗残者か、それとも窮地を生き抜いた古強者か」
 どちらでも有り得そうだと、 鳩目・サンダー(ハッカーインターナショナル同人絵描き・g05441)は俊敏に飛び回る百々爺を警戒しつつ思う。老獪なる妖怪のこと、天魔武者どもに取り入って上手く立ち回ろうとしているのかも知れない。
「ま、どっちだってやることは変わらねえ」
 サンダーが手にしてるのは、先程のスタイラスペンとは似て非なる画材――すなわち絵筆であった。それを手の中でくるくると回しつつ、ディアボロスと戦いを繰り広げる百々爺を観察していたサンダーである。
 絵を描くには物を見る目が必要不可欠だ。
 対象を精確に捉えることが出来なければ、脚色を加えたり誇張させることも出来なくなる。集中して百々爺の姿と戦い振りを捉えようとしていたサンダーは、おもむろに宙に絵筆を走らせると、さらりさらり、淀みなく流れるような筆触で見る間に妖怪画を描き出していく。

 ――肉体はより頑丈に、動きはより素早く。攻撃は広く大きく強く。

 卓越したアートの技量を遺憾なく注ぎ込んだ作品は、浮世絵師の妖怪画さながらだ。仮初の命を注ぎ込まれたかのような老妖が、地に四ツ足をついた瞬間、ザザザと駆け出した。木を駆け登って風のように飛び、百々爺を猛追する!
「カッカッ! 儂の似姿とでも言うのか? なかなか悪くない手並みじゃが」
 百々爺とそれを描いた実体を持つ絵図が、ほとんど同時に攻撃に打って出た。方や吸血ムササビの群れを呼び出し、実体化した絵図の方はそれに似せたような黒々とした瘴気を放出する。
「ヌゥ……これは……」
 百々爺にも避けようなく攻撃が刺さるも、吸血ムササビは瘴気に突っ込み、不気味な鳴き声をあげながら一直線にサンダーへと襲いかかった!
「油断はしてくれねえか。だがな……!」
 地を転がるようにして避け、再び絵筆に力を込めるサンダー。
「一作目で納得いくもんが描けたら苦労はしねえ。まだまだ行くぜ」
 味方の攻撃に合わせて、更に絵のクオリティを上げようと宙に筆を走らせる。
「ええい、小賢しい!」
 サンダーの描いた百々爺の絵姿や相真の解き放ったドローンが、百々爺を着実に追い詰めていく。苛立ちを露わに舌打ちをすると、百々爺は吸血ムササビの群れを喚び出して、近づいてくるドローン群めがけてそれをけしかけた。
 キイキイと鳴くムササビが、瞬時に防御形態を取ったドローンに体当りしては、捨て身で墜落させていく。
 防ぎきれなかったムササビの群れが、まるでミサイルのように相真めがけて飛来してきた。
 機械腕を構えて魔装:ADレジストシールドを展開、防御態勢を取る相真。
 喰い付こうと牙を剥いたムササビが、機装:パスファインダーコートにも噛みついてくる。
「カッカッ、数には数ということよ。言うたはずじゃ、お主らは死地にいるのだとな!」
「死地など今更、舐めてかかったつもりはありません」
「なんじゃと」
「貴方の配下と戦う時から、俺たちは死地にいますよ。そして――それは今のあなたも同じです!」
 相真が言った瞬間、攻撃のために分散させていたドローンが左右から百々爺を襲い、接近しながらの一斉射撃を見舞う。形態を切り替えると、今度は斬撃が老いた妖怪の体を斬り裂いた!
「捉えたぜ」
 相真を始めとした多くのディアボロスたちが、俊敏かつ老獪な妖異を討ち果たそうと猛攻を仕掛けていた。それに乗じて、敵の動きを見極めていた人鳥が遂に動く。
「罠使いの本領発揮と行きますかね――!」
 ニヤと口の端を不敵に吊り上げて、パラドクスを解放した。
「なんじゃと……!?」
 百々爺がディアボロスたちの攻撃を受けて逃れようとした、その先。
 動きを読み切ったかのように展開したものを見て、百々爺は思わず驚きの声を発していた。
 魔血の鎖。人鳥自身の血と悪魔の魔力を組み合わせて連ねたそれが、まるで獣を捉える網もさながらに、木々の間に張り巡らされていたのだ!
「これがブラッドヴェイルの新しいバリエーションッ!」
 その名も、ブラッドヴェイル・ピアシングロアー。
 名が示す通り、鎖に捉えるだけのパラドクスではない。
「動けぬ……千切れぬじゃと……!」
 鎖に捕えられて藻掻き苦しむ百々爺が、必死の抵抗を見せる。
 妖気を発散して地より巨大な岩の塊を噴出させたのだ。
「最後の悪あがきってところか」
 飛翔した人鳥が岩に体を打たれながらも縫うようにして飛び、銃槍バイビークの機能を解放。変貌した紅き魔剣槍を突き出した!
「妖怪は頭や心臓狙っても簡単に死なねえ。そいつは身に沁みて解ってっからな」
 魔血の鎖に捕えられた百々爺が、焦りと憎しみに顔を醜く歪ませる。
 直後、魔剣槍が百々爺の体に突き刺さった。
「だったらよォ……全部纏めて吹っ飛ばせばいいって事だよなァ〜〜」
「ガァッ!? ……ま、待て……!」
「これがホントの出血大サービスってやつだ!」
 刀身を展開し、無理矢理に射撃モードへ移行。零距離で放たれた天使と悪魔の混合魔力が、最大出力で解き放たれる。
 断末魔の声さえあげることもできずに、百々爺が爆発四散した。

「終わりましたね……」
 相真を始めとしたディアボロスたちが戦闘を終えて一息つく。
 山を降りた人々は難を逃れ、やがて隠れ里に辿り着くことだろう。ディアボロスの得難い支援を当面の糧として、知恵を尽くして生き抜いていくに違いない。
 去り際、災禍の去った山に、穏やかな鳥の鳴き声が戻ってきていた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【液体錬成】LV1が発生!
【完全視界】がLV2になった!
【飛翔】がLV2になった!
【アイテムポケット】がLV3になった!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!

最終結果:成功

完成日2023年03月20日

多脚城塞『千早城』からの救出

 妖怪一夜城によって、ディアボロスを足止めした豊臣秀吉は、河内国に新たな城を築いたようです。
 その名も、多脚城塞『千早城』。
 多脚城塞『千早城』は、鎌倉時代の名城『千早城』があった場所に造られた、戦国時代の城の本丸に蜘蛛のような機械仕掛けの脚を取り付けた異形の城です。
 多脚城塞『千早城』は、魔力の扱いに長じたジェネラル級天魔武者『於犬の方』を城主とし、ヒルコを含めた河内国の住民を生贄にする事で、城ごと移動が可能になるという特殊能力を持ちます。
 豊臣秀吉は、多脚城塞『千早城』を、河内国中で逃げ回らせる事で、ディアボロスの攻撃を躱す事を目論んでいるようです。
 多脚城塞『千早城』は既に完成しており、残るは、河内国のヒルコや一般人を運び込み動力源とするだけとなっています。
 彼らが、動力源とされてしまえば、自由に移動する『千早城』の補足が困難となるので、移動中を襲撃して、彼らの救出を行ってください。

於犬の方


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#天正大戦国
🔒
#多脚城塞『千早城』からの救出
🔒
#河内国
🔒
#於犬の方
🔒
#千早城


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選択肢『河内国に隠れ里を作ろう』のルール

 豊臣秀吉の命令で、強制移住させられた河内国の人々が安全に暮らす事が出来る隠れ里を用意します。
 救出した河内国の人々が、冬を越せる程度の備えを準備しておきましょう。

 彼らが、快適に暮らす事ができれば『圧政』で力を得る天魔武者に、ダメージを与える事が出来るかもしれません。
 詳しくは、オープニングやリプレイを確認してください。

 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【🔑】他の選択肢のリプレイが一度でも執筆されると、マスターはこの選択肢のリプレイを執筆できなくなる。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👾一般人を襲うトループス級『禍ツ災禍ノ眷族『未怨龍』』のルール

 周囲の一般人を襲撃するトループス級クロノヴェーダ(👾)と戦闘を行います。
 放置すると村や町を破壊したり一般人を虐殺してしまうので、被害が拡大する恐れがあるでしょう。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「沢山」出現します(現れる敵の数は、オープニングの情報やリプレイの記述で提示されます)。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『この選択肢の🔵が👑に達すると、この敵集団を倒す。完結までにクリアしていない場合、この敵集団は撤退する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👾護衛するトループス級『天魔武者・大鉞衆』のルール

 事件の首魁であるクロノヴェーダ(👿)を護衛するトループス級クロノヴェーダ(👾)と戦闘を行います。
 👾を撃破する前に👿と戦闘を行う場合は、👾が護衛指揮官を支援してくるので、対策を考える必要があるでしょう。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「沢山」出現します(現れる敵の数は、オープニングの情報やリプレイの記述で提示されます)。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『この選択肢の🔵が👑に達すると、この敵集団を倒す。完結までにクリアしていない場合、この敵集団は撤退する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👿アヴァタール級との決戦『百々爺』のルール

 事件の首魁である、アヴァタール級クロノヴェーダ(👿)と戦います。
 👿を撃破する事で、この事件を成功で完結させ、クロノヴェーダの作戦を阻止する事が可能です。
 敵指揮官を撃破した時点で、撃破していないクロノヴェーダは撤退してしまいます。
 また、救出対象などが設定されている場合も、シナリオ成功時までに救出している必要があるので、注意が必要です。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「1体」出現します。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、敵を倒し、シナリオは成功で完結する。ただし、この選択肢の🔴が🔵より先に👑に達すると、シナリオは失敗で完結する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※このボスの宿敵主は「マルケト・キサウェ」です。
※クロノヴェーダには、同じ外見を持つ複数の個体が存在しますが、それぞれ別々のクロノヴェーダで、他の個体の記憶などは持っておらず、個体ごとに性格なども異なっています。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。