シテ島秘密工場攻略作戦

 ディアボロスの調査により、シテ島に機械化ドイツ帝国の技術を用いた自動人形を製造する秘密工場がある事が判明しました。
 攻略旅団の方針により、この秘密工場を破壊する作戦が行われる事になりましたので、まずは、シテ島周囲の防衛陣地の攻略を目指してください。
 シテ島の防衛陣地の場所について、1793年で攻略した『シテ島の敵の防衛陣地』の情報を利用する事が出来たので、効率的に攻略が可能となっています。

鉄血の残滓を拭いて(作者 月夜野サクラ
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 セピア色の市街地を貫いて、川は今日も滔々と流れている。
 1804年、パリ。セーヌ川の中洲に位置するシテ島は、物々しい空気に包まれていた。かの高名なノートルダムの広場には大聖堂の荘厳な佇まいには似ても似つかぬ無骨な機械が整然と列を成している。立ち並ぶバリケードなどの障害物を飛び越え行き交う報告は人工音声のようにぎこちなく、けれども彼らの密な連携を顕しているようだ。
「左岸、右岸、ともに異常なし」
「異常なし了解。引き続き上空を含め、警戒を継続せよ!」
 機械化ドイツ帝国の技術により量産された、パリ製のシュプールフート・クリーガー。元はどこの誰とも知れないその暗い眼と銃口は、欧州の青い空を黙々と見据えている。

●ACHTUNG
「パリのシテ島に、新型自動人形の秘密工場があるらしい」
 開口一番、そう告げた少年の淡い瞳は、褪せることのない憎しみに燃えていた。新宿駅構内の一角で、ハルトヴィヒ・レーヴェンブルク(殲滅のカノーネ・g03211)は集まった復讐者達に向けて告げる。
「機械化ドイツ帝国の技術を使った新型自動人形だ。絶対に、放っておくわけにはいかねえ――潰しに行くぞ」
 シテ島の調査に向かった仲間達によって明らかにされた、新型自動人形の存在とそれを実現する新技術。量産体制が確立されれば、それが復讐者達の脅威となることは火を見るよりも明らかだ。ゆえにこれを阻止するべく、断頭革命グランダルメの攻略旅団は秘密工場の破壊作戦を実施する方針を固めたのである。
 鉄の籠手を嵌めた拳を握り締め、少年は続けた。
「シテ島の守りは堅い。鳥一匹見逃さないくらいにな。けど、連中の布陣は1793年のダブーの防衛網そのものだ。だったら、突破できない理由はねえ」
 1793年でのダブー将軍との交戦時の情報を基に、速やかにこの防衛網を突破し、秘密工場を守る敵の集団を駆逐する。それが、今回の作戦である。

「作戦の流れは、こうだ」
 まずはセーヌ川の底を渡り――川の中洲に位置するシテ島は見通しがよく、対空警戒も厳しいため、上空からの侵入は自殺行為となるだろう――目標地点に位置する敵の防衛陣に攻撃を仕掛ける。
 本来であれば、敵の動きなどから秘密工場の中枢の位置を割り出すような調査も必要になるのだが、こちらも1793年の攻略情報から、ノートルダム大聖堂が最有力である事が判明している。したがって防衛拠点を叩いた後は、速やかに撤退することができるだろう。調査の必要がない分、電撃的な作戦が可能となるため、敵側の増援も間に合わないはずだ。

「先遣隊が遭遇した、『A7Vメフィスト』……奴は、機械化ドイツ帝国の技術を利用して造られた新型自動人形だった。しかも、ジェネラル級の力を持ってる」
 あれほどの力を持つ自動人形が量産されることはないだろうが、それはあくまでこちらの希望的観測だ。最悪の事態を防ぐためにも、敵戦力の強化を放置するわけにはいかない。パリにおける最大の秘密工場と目されるシテ島の拠点を叩けば、敵にとっては大きな痛手になるだろう。
「余計なことを考える必要はねえ。行って、そこにいる連中を一匹残らずブチのめすだけだ。……俺は、同じ列車には乗れねーが」
 頼むぞと加えた声には、少年自身気付いてもいないだろう信頼が滲んでいた。1793年と1801年、時代を超えて重ねた復讐者達の努力が今、実を結ぼうとしているのだ――この好機をふいにしてはならない。警笛を鳴らしホームへと滑り込んでくるパラドクストレインに乗り込んで、復讐者達は一路、遥かなるパリへと旅立つのであった。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
2
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。【怪力無双】3LVまで併用可能。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【怪力無双】
1
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わり、「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げて運搬可能になる(ただし移動を伴う残留効果は特記なき限り併用できない)。
【泥濘の地】
1
周囲の地面または水面が泥濘に変わり、ディアボロスは指定した「飛行できない対象」の移動速度を「効果LV×10%」低下させられるようになる。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【光学迷彩】
1
隠れたディアボロスは発見困難という世界法則を発生させる。隠れたディアボロスが環境に合った迷彩模様で覆われ、発見される確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【スーパーGPS】
1
周囲のディアボロスが見るあらゆる「地図」に、現在位置を表示する機能が追加される。効果LVが高ければ高い程、より詳細な位置を特定できる。
【建造物分解】
1
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【アイテムポケット】
1
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。
【水中適応】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が水中で呼吸でき、水温や水圧の影響を受けずに会話や活動を行える世界に変わる。
【猫変身】
1
周囲が、ディアボロスが猫に変身できる世界に変わる。変身した猫は最大「効果LV×10m」の高さまで跳躍できるが、変身中はパラドクスは使用できない。

効果2

【命中アップ】LV1 / 【ダメージアップ】LV4 / 【ガードアップ】LV1 / 【反撃アップ】LV2 / 【リザレクション】LV1 / 【ドレイン】LV1 / 【ダブル】LV1 / 【グロリアス】LV1

●マスターより

月夜野サクラ
お世話になります、月夜野です。
以下シナリオの補足となります。
==================
●選択肢について
 純戦闘シナリオで、①→②の順でプレイング受付・執筆予定です。

 ①については、敵がトーチカやバリケードなどの防衛拠点を利用して迎撃してくるため、これを突破する工夫がない場合は🔵🔵🔵が出ません。
 またオープニングにもあります通り、対空警戒が非常に厳しいため、飛翔による突入は推奨されません。

 期限内のシナリオ完結を目標にごく少数採用にて運営したいと思いますので、ご参加人数が多くなった場合いつもよりも不採用が発生しやすいことを予めご了承いただけますと幸いです。

==================
●時間帯と場所
 舞台はパリ・シテ島、ノートルダム寺院前広場あたり。時間帯は全編日中です。

==================
●諸注意
・前述の通り、ごく少数採用を予定しております。ご参加人数が必要成功数を上回る場合、プレイングの内容に問題がなくても採用できない場合がございますので、何卒ご容赦ください。
・まとめて採用になる可能性が高いです。特定の同行者以外の方との絡みがNGの場合は、お手数でもプレイング中でお知らせ下さい。
・プレイングの採用は先着順ではありません。受付状況については選択肢ごとにご案内いたしますので、MSページも合わせてご確認ください。

==================

それでは、皆様のご参加をお待ちしております!
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このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


秋津島・光希
※連携、アドリブOK

ドイツで戦った
あるゾルダートを思い出す
アイツは自分の意志でゾルダートとして俺達と戦い、散った
敵ながら天晴と思ったよ

でも、此処のやり方は全然違う
一刻も早く止めてやる!

【光学迷彩】で上陸直後のサポート
(共闘する仲間がいる場合、皆に適用)
こちらが動くまでに敵に見つかるリスクを減らす

トーチカやバリケードがあるなら
無くしちまえば敵の策通りにはいかねえよな?
パラドクスによる攻撃で
敵群ごと巻き込んでぶっ壊す!

具現化した刃は防御にも使用
地に突き刺して敵の足並みを乱す

襲い来る敵をなぎ倒しつつ『ダッシュ』
障害物は時に敵を踏み台に『ジャンプ』で越えて
防衛拠点を目指し進撃

仲間が重ねた努力、必ず繋ぐ


夜明・瑠奈
ディアボロスになって日が浅い瑠奈だけどさ、あの頼むぞって声を聞くとやる気出ちゃうね!
良い報告を持って帰れるように気合入れて戦いますか☆

瑠奈は思いっきり戦場を全力で走り回ることで攻撃を避けながらかく乱を狙った動きをしてみるよ!
そのためにも真っ先に敵陣へと向かって駆けだすことでトーチカやバリケードからの攻撃を瑠奈に集中させることで仲間が攻撃するチャンスを作りたいな☆
なんかほどよく追いかけて来てくれてる子も居るみたいだし♪

仲間の攻撃が始まって戦場がもっと混乱してきたらそれに乗じて瑠奈もナイフで辻斬りしていくよ!
こういう立ち回りも頼れる仲間がいるからこその醍醐味だよね♪

(連携・アドリブ大歓迎です)


マティアス・シュトローマー
祖国の技術がここまでパリに影を落としているなんてね
華やかな街並みに無骨な工場は不釣り合い。早々に撤退してもらおうか

【水中適応】で川底を進み、上陸後に仲間と連携してパラドクスを発動。具現化した水の渦を放ちバリケードを破壊。近くに敵がいれば彼らも巻き込んでダメージを与えよう
その後も障害物の破壊と仲間の援護を最優先に立ち回り、障害物が無くなれば敵本体を狙った一撃を。戦況をよく見て判断する

なんだか懐かしい顔触れだけど、ここまで嬉しくない再会は初めてかも
反撃は崩れた障害物を盾に躱すか、キャタピラを狙った銃撃で敵の進路を妨害し致命傷を避ける
手厚い歓迎をありがとう
次からは距離の詰め方をもう少し考えてほしいな


ナディア・ベズヴィルド
【奴崎組】
アドリブ・連携お任せ
仲間の残留効果を使用させてもらいます

シテ島の秘密工場を潰し、A7Vメフィストのツラを今一度拝む為に敵をさっさと掃除していかないとね

水中適応をお借りして川底の移動
パラドクス通信で仲間と密に連絡を取り合い上陸するタイミングを計り一斉に行動に移るわ

後に続く人たちに障害物の破壊を優先に行動
根元からバリケードを崩してやりましょう

突入できる箇所が出来たら皆に通達し中にいるゾルダート共の一掃を
負傷の大きい相手から確実に潰していく

有象無象の雑魚に用は無いのよ、片っ端から壊してやるからかかってきなさい!
反撃にはこちらも遮蔽物を利用したり、魔力障壁を展開して防御


ソレイユ・クラーヴィア
連携アドリブ歓迎

シテ島を好き勝手に要塞化しただけでは飽き足らず、秘密工場まで作るとは度し難い
全部破壊して、一体残らず追い出してしまいたい所ですが…
焦りは禁物、堅実に出来る事からやっていきましょう

静かに川底から上陸したら
仲間とタイミングを合わせて一斉攻撃を行います

宙に展開した鍵盤で「月虹」を演奏
月の化身を喚び、攻撃を指揮しましょう

待ち構えた相手に、突出して攻撃するのは危険ですから
仲間と狙いを揃えて壁を破壊するように攻撃していきます
体力の低いゾルダート、誰かの流れ弾が当たって少し壊れかけている防衛壁
少しでも綻びがある所を集中攻撃し1箇所ずつ、着実に崩したい所
グロリアスで回復しながら粘り強く攻めます


アストリッド・ヴァルトシュタイン
【奴崎組】
アドリブ・連携おまかせ
好きにやっちゃってください
川底を渡る際など、他所様の残留効果にもちゃっかり便乗します

機械化ドイツ帝国の技術が、グランダルメにまで流れ着いているとは。
確かに放置する訳にはいきません。
……それは、この時代のこの地にあってはならないもの。
機械の帝国は既に滅んだのですから。

バリケード?
仔細なし。塹壕、泥濘、障害物。
生中な悪路は戦車で蹂躙します。
足回りに自信のない方は戦車にひっついていてください。
こういうの、タンクデサントと言うらしいですよ。

トーチカ? 
結構。主砲で【破壊】してやりますとも!
邪魔っけな雑兵は機銃の【制圧射撃】で押さえつけ、突入の進路を切り開きます。


●Avant la tempête
 ぴんと張り詰めた空気の中に、ざあざあと川の流れる音が続いていた。青い空を照り返すセーヌの川面には、華やぐパリの街並みには似ても似つかぬ異形の機械人形達が、無粋な影を落している。
「こちら異常なし」
「こちらも異常なし」
 シテ島西端。暗い眼で周囲の警戒を続けながら、機械仕掛けの『新兵』達は淡々と交わし合う。対岸に人の姿はなく、上空も然り――要塞化されたこの中州に、のこのこと乗り込んでくる命知らずもそうはあるまい。
 そう、思っていた。互いに背を向けたその瞬間、カッと目映い光が弾け、石畳に黒い影を落とすまでは。
「! 何事だ――グアッ」
 その時、何が起こったのか。彼には理解する暇も与えられはしなかった。畳みかけるように殺到する光の刃が真新しい装甲を貫いて、哀れ一体のゾルダートは白煙を噴いて停止する。緊張は瞬時に島全体へと伝播し、居並ぶ兵士達の間から殺気だった声が上がった。
「敵襲! 敵襲!」
「総員戦闘配備!」
 配備されたバリケードやトーチカの内側へ流れるように移動する兵士達の動きは、まるでマスゲームを見ているかのようだ。具現化した光の刃をその手に岸辺へ跳び上がり、秋津島・光希(Dragonfly・g01409)は水滴を払うように濡れた翅を震わせた。
「さすがに統率が取れてんな。よくも悪くも量産型ってことか」
「だね。にしても――祖国の技術が、こんな風にパリに影を落とすなんて」
 同じく苦もなく護岸の縁に降り立ちながら、マティアス・シュトローマー(Trickster・g00097)は悔しげに唇を噛んだ。時空の彼方に潰えたとても、機械化ドイツ帝国と呼ばれた国は彼にとって紛れもない祖国だ。自身に咎はなくとも、負い目を感じてしまうのは致し方ないところだろう。そしてそれは、後に続いたアストリッド・ヴァルトシュタイン(Löwenzahn・g04015)にとっても同様である。
「確かに、放置する訳にはいきませんね。あの技術は、この時代のこの地にあってはならないもの……機械の帝国は、既に滅んだのですから」
 思うところがあるのだろう。金髪の少女はそう言って、音が鳴るほどに両手を握り込んだ。未遂に終わったとはいえ機械化改造をされそうになったことといい、帝国軍には何度も煮え湯を飲まされた――けれど間違った歴史と断じられても、そこは彼女達にとっては故郷だったのだ。確かにそこに存在したはずの家族や友人のことを思えば、複雑な想いは禁じ得ない。そしてだからこそ、故郷の悪しき文明が他の世界に持ち込まれるのを見過ごすわけにはいかなかった。
(「まあ、複雑だよな」)
 仲間達の複雑な胸中を慮り、けれど掛ける言葉は見つけられずに、光希は眉根を寄せる。その脳裏には、今は亡いドイツで刃を交えたとあるゾルダートの姿が浮かんでいた。
(「アイツは自分の意志でゾルダートとして戦い、散った――」)
 クロノヴェーダの在り方を、肯定するつもりは更々ない。だが『彼』の散りざまを、敵ながら天晴と思ったことを否定もしない。それに引き換え、目の前の人形達はどうだ――望むと望まざると関係なくこんな姿に作り替えられた彼らは、兵士ですらない、ただの哀れな道具ではないか。
「……一刻も早く、止めてやる」
 軋るほどにきつく長柄の爆撃槌を握り込み、少年は呟く。その隣にはいつの間にか、ナディア・ベズヴィルド(黄昏のグランデヴィナ・g00246)、そしてソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)も肩を並べている。
「今一度『A7Vメフィスト』のツラを拝むためにも、さっさと掃除していかないとね」
「ええ。全部破壊して、一体残らず追い出してしまいたいところですが……、焦りは禁物です」
 挑むようなナディアの言葉に応えて、ソレイユは目の前に広がる光景への不快感を露わにする。シテ島を好き勝手に要塞化しただけでは飽き足らず、秘密工場まで作るなど、フランス生まれの彼にすれば度し難い暴挙だ。指抜きのグローブを手首の上までしっかりと引き上げて、少年は言った。
「堅実に、できることからやっていきましょう」
 ジャケットの黒い腕を一振りすれば、流れる川を背景にピアノの鍵盤が浮かび上がる。奏でるのは、『幻想ソナタ』月虹――ぽろぽろと零れる音色に誘われ注ぐ真昼の月光が、少年の指の動きに合わせて踊り出す。総員準備完了、と機械の一体が叫ぶのが聞こえたが、それはこちらも同じことだ。
 すうと大きく息を吸い込んで、ナディアは耳元に浮かんだ小さな通信機を口許へ寄せた。
「さあ、一気に行くわよ!」
 パラドクスの力で具現化した小型の通信機は、復讐者達の声を戦場の味方全員に届けてくれる。鉄の兵士達はこれに対し、させるかとばかりに防御を固めるのだが。
「ぐおっ」
「な、なんだ!?」
「どこを見てる! 敵は前方――ぎゃっ」
 味方しかいないはずのバリケードの内側で、ゾルダート達は次々に動揺の声を上げた。しかし――それもそのはず。
「あは、奇襲大成功だね!」
 高い声を弾ませて、バリケードの陰から夜明・瑠奈(うそつきキャットウォーク・g09029)がひょこりと顔を出した。光希が初手で派手に攻撃を仕掛けたのは、偶々ではない。その目的は、敵の注意を彼らに引き付けるのと同時に、眩い光が生み出す光学迷彩を別動隊の瑠奈にまとわせることにあったのだ。そして彼女は敵の設置した障害物を隠れ蓑に利用しながら、敵陣深くへ分け入り、その後背を取ったのである。
「いつの間に!?」
「撃て、撃て!」
 口々に叫んで、ゾルダート達は一斉に一人の少女へと向き直る。しかしそれこそ彼女の思惑通り――冷やかに光る躯体の中心で、瑠奈はにんまりと笑みを浮かべた。
(「瑠奈はまだ、ディアボロスになったばっかりだけど」)
 頼むぞ、と託されたなら。応えぬわけにはいかないのだ。
 手にしたナイフを軽やかに取り回して握り直し、ウェアキャットの少女は言った。
「いい報告を持って帰れるように、気合入れて戦いますか☆」
 迫り来る無限軌道の突撃を、敢えては避けず。黒い猫の尾をひらりと揺らして、瑠奈は敵の装甲の隙間にナイフを突き立てると、力いっぱい斬り払った。悪戯猫はあくまでも楽しげに、戦場を右へ左へ駆け巡る。
「ほらほら、早く逃げないと食べちゃうぞー!」
 敵の攻撃が腕や足を掠めても、瑠奈は構わず走り続ける。この作戦、囮となる彼女の危険と負担は極端に大きいのだが、敵の注意が彼女に集中しているこの瞬間は、仲間の復讐者達にとってはこれ以上ない好機だ。
「今のうちに、障害物を排除するわよ! 根元から崩してやりましょう!」
 共に戦う仲間達に向けて、ナディアは朗々と呼び掛ける。シテ島攻略のうえで最大の関門となっているのが、この防衛網だ――後に続く者達のためにも、障害物はできる限り破壊しておいた方がいい。
 了解と呼応して、光希は爆撃槌を振り翳した。
「頑丈なトーチカもバリケードも、なくしちまえば役に立たねえよな?」
「ああ、この街並みに不細工な城塞は不釣り合い。悪いけど、早々に壊させてもらうよ!」
 同調するマティアスの声に連れられて、流れる川面がにわかにざわめき出す。この世界に足を踏み入れてから一年と半年――その間、仲間が連綿と重ねてきた努力は、ここで必ずつないでみせる。ドンと破裂するような音を立てて天高く巻き上がったセーヌの水は渦を激しく渦を巻きながら、バリケードを押し流していく。水に巻かれて身動きが取れなくなっている鉄人形はよく見た顔にそっくりで、マティアスは辟易したように顔をしかめた。
「なんだか懐かしい顔触れだけど、ここまで嬉しくない再会は初めてかも。……手厚い歓迎も、いいけどさ」
 次からはもう少し、距離の詰め方を考えて?
 そう言ってぎゅっと右手を握り締めると、逆巻く水は急速に収束し、兵士の一体を圧し潰した。そして一体、また一体、ゾルダート達が物言わぬ鉄塊に変わっていく。
「喰らえ、『アルバリ』」
 戦況を広い目で見渡しながら、ナディアは褐色の胸に蒼く輝く宝珠を寄せ、そして何事か紡ぎ出す。唱える言の葉は、断罪の調べだ――詠い上げて高々と宝珠を掲げれば、兵士達の足元で敷き詰められた石畳に亀裂が奔る。
「血の盟約により、我が声に応えよ!」
 地面を裂いて現れるのは、巨大な爪。文字通り人形のように掴み取られた兵士達の悲鳴代わりの破壊音を聴きながら、女は吼える。
「有象無象の雑魚に用はないのよ! 片っ端から壊してやるから、かかってきなさい!」
 分厚く配備されていたバリケードはその半数以上が破壊され、今や敵の陣形は見るも無残に崩れていた。その残骸に背を預け、瑠奈はその場にへたり込む。
「はあ、ちょっと頑張りすぎちゃったかな……」
 仲間の攻撃が始まったら、それに乗じてさらに攻撃を加えていく――つもりだったが、小さな身体で囮を一身に引き受けたのはさすがに負担が大きかったようだ。
(「ちょっと、疲れちゃった――けど」)
 遠いピアノの調べに耳を傾け、目を閉じると、細い手足に穿たれた傷がじわじわと癒えていくのを感じる。敵が一体倒れる度、身体に力が戻ってくる。それは復讐者であり、演奏家でもあるソレイユが奏でる栄光の調べの効果に他ならない。
「……パラドクスって、不思議だね」
 ふと、光遮る影を感じて瑠奈が顔を上げると、こちらに向かって手を伸べる金髪の少年と目が合った。そうですね、と微笑んで、ソレイユは応じる。
「ですがやはり、一人で突出するのは無茶ですよ」
「でも、大丈夫だったでしょ?」
 えへへと屈託のない笑顔で、瑠奈は言った。自分は決して、一人ではない――仲間がいると分かっていたから、こんな無茶ができたのだ。頼れる仲間の存在なくして、こんな立ち回りはあり得ない。
 まったくもうと苦笑して、ソレイユは再び輝く鍵盤に指を添えた。
「とにかく、ご無事なら何よりです」
 踊る月光に飲み込まれて、また一体の敵兵が潰えた。押し切るならば今が好機と踏んで、アストリッドは天に拳を突き上げた。
「貴方に魂あるならば、わたしの声に応えなさいッ! 蘇れ! シュタルク・ティーガー!」
 高らかに叫ぶ声に応えて、具現化するのは一両の頑強な戦車。身のこなしも軽くその屋根に飛び乗って、少女は仲間達へ呼び掛ける。
「さあ、皆さんこちらへ!」
「お、おう!?」
 なんかすげーなと呟いて、光希は動かなくなった敵兵のキャタピラを踏み切り跳躍すると、戦車の後方に取りついた。その調子で次々と仲間達を回収し、アストリッドはしたり顔で告げる。
「こういうの、タンクデサントというらしいですよ」
 全員が揃ったならば、いざ――しっかり掴まってて下さいと言い置いて、少女は戦車のスピードを上げた。陸上のあらゆる悪路を踏破する無限軌道は、唸りを上げてもはや止まらない。
「バリケード? トーチカ? 仔細ありません。すべて、蹂躙してやります!」
 戦車の主砲がぐるりと回転し、進路上にわずかに残ったバリケードに照準を合わせる。障害物の残骸を踏み越える度にがたつく戦車の上で器用にバランスを取りながら、アストリッドは主砲に手を触れた。
「さあ、行きますよ! 主砲・フォイア!」
 どんと腹の底に響くような音と共に、鋼の主砲が火を噴いた。爆ぜる砲弾はバリケードごと残った敵兵を吹き飛ばし、その残骸を踏み越えながら敵陣の奥深くに突き刺さる。すると――。
「なんですの、騒々しい。まったくこんなに散らかして……」
 どこからか、美しくも耳障りな女の声がした。停まった戦車の砲台が睨むその先には、黒に黄色の鮮やかなドレスで着飾った貴婦人の人形が一体、悠然と佇んでいる。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【水中適応】LV1が発生!
【泥濘の地】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
【スーパーGPS】LV1が発生!
効果2【リザレクション】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
【グロリアス】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!

秋津島・光希
※連携、アドリブOK

この光景を見た第一声が「散らかして」か
量産型のトループス級に
思うところなんざ無いってか
いや、そもそもコイツに人の情とかねえのかな
仮にそうなら
こっちもやりやすくて助かるよ

皆で無事撤退する為にも速攻で片付ける
出し惜しみは無しだ

【飛翔】使用
速度・機動力を上げて攻める

接敵後も常に敵を『観察』
『機械知識』を生かし
敵の腕の軌道・射程を『看破』

敵周囲を飛び回ることで間合いを調整
被ダメージ軽減に努めつつ
効果的な一撃を決める機を伺う

爆撃槌でパラドクスを叩き込んでからの『一撃離脱』
俺の最も得意とする
ヒットアンドアウェイ戦法をな

ああ、とっとと潰してやる
目の前の敵も
誰かが人形にされちまう可能性も!


夜明・瑠奈
さーてと。あとはあのお高くとまってる貴婦人をぶっ飛ばして終わりかな。
良い報告の締めには親玉撃破を添えたいとこだしもうひと頑張りといきますか!

お相手さんが爪なら瑠奈もオーラの猫爪で対抗しちゃうぞ☆
とはいえ、真っ向から手を取ってダンスを踊るには物騒な爪をしてるからね~。【光学迷彩】と使いながら隠密、強襲、離脱のワルツを繰り返してくよ!

瑠奈がいつ襲ってくるか分からない。そんなプレッシャーを与えることでみんなに向ける集中力を削いだり。
仲間の攻撃が当たりやすくするために不意打ちで隙を作ったり、動きの邪魔をしたりして今回も連携も重視して動いてくね!
みんなで勝利を掴み取ろうぜー☆

(アドリブ・連携大歓迎です)


ナディア・ベズヴィルド
アドリブ可・仲間と連携を図る

あらあら、来客を持て成すには部下の躾が成っていなかったのではなくて?
貴方の代わりに私たちが躾けて差し上げたのよ感謝して欲しいものだわ
上に立つものが成っていないと下の教育も成らないからしょうがないわね
貴婦人というのも格好だけかしら?

あの大きな爪が痛そうね
敵の動きを阻害するのにパラドクスを発動
影の鎖で縛り付け、【泥濘の地】も利用し
連携を取りながら仲間が攻撃しやすいように動きを鈍らせる

反撃には【飛翔】で回避を試みる

敵を撃破したら速やかにパラドクス通信で皆に撤収を呼びかけよう

何度でも、幾らでも潰してやる
この島にいる敵は悉く鏖殺だ


ソレイユ・クラーヴィア
連携アドリブ歓迎

騒々しいのは、一体誰のことでしょうね
所構わず小動物相手にも砲撃をしていた配下の事ですか?
ゾルダートの残骸が転がる戦場にドレスの貴婦人とは…
まったく、趣味が悪い

宙に展開した鍵盤で「福音」を演奏
聖なる光で邪悪なるものを貫きましょう
速攻で撃破すべく、仲間と連携し絶え間なく攻撃していきます
見た目は美しく繕っていても、その本性は禍々しい機械腕から明らか
仲間と声を掛け合って、不意な方向から攻撃を受けぬよう立ち回ります

反撃には魔力障壁を展開し多少でも軽減を
人形らしい冷たい口づけですね
その程度の冷気では凍ってあげられませんよ

撃破完了すれば、水中へ潜り離脱
シテ島を取り戻す日まで、何度でも来ますよ


マティアス・シュトローマー
この程度のやんちゃでお小言をいただけるなんて
片付けはもうじき終わるから安心してよ。口煩い貴婦人に退場いただく事でね

パラドクスを発動。具現化した大鴉達を足場に戦場を駆け、蹴りや銃撃の連続攻撃を浴びせる。トリッキーな動きに【飛翔】も交えてさらに敵を錯乱させよう
狙うのは既に傷を負っている箇所か機械腕。銃を撃ち込みながら接近、鉄爪を躱しながら蹴撃を与え、ご自慢のダンスを見せてもらおう

へえ、上流階級としてその辺の嗜みはある訳か
反撃は自身の周りに【泥濘の地】を展開。敵の動きが鈍くなった隙を突いて【飛翔】で距離を取り、致命傷を避けるよう躱していく
その爪じゃあ手を取ってあげられないな
次はちゃんと切ってきてね


アストリッド・ヴァルトシュタイン
連携・アドリブ歓迎

……散らかす?
いえいえ、これでも後片付けに来たんですよ。
機械化ドイツ帝国の痕跡、一欠片も残すつもりはありません。
そして貴女たち自動人形を見過ごすつもりもない。

ああ、そうだ。これからもっと五月蝿くなりますよ。
あれこれ散らかりもするでしょうが、綺麗に片付けてから帰ります。
貴女を倒したその後で。

多腕の可動範囲を観察し、癖を把握。
隙を突き忍び足で接近し、懐に飛び込みナイフでの暗殺を試みる。

……何の為にあれこれ装備を身に着けていると思います?
その沢山ある腕に剥ぎ取られてもどれか一つ残れば足りるからです。
リュックもコートもヘルメットも差し上げます。

……この一本さえ残っているなら事足りる。


●Danser avec toi
 ノートルダムを望む広場は、ひどく剣呑な空気に包まれていた。貴婦人の如く着飾った自動人形の声はフルートのように透き通って、そのくせ如何ともしがたい不快な険を帯びている。戦車の屋根からひょいと飛び降りて、夜明・瑠奈(うそつきキャットウォーク・g09029)は口を開いた。
「さーてと。あとはお高くとまった貴婦人をぶっ飛ばして終わりかな?」
「貴婦人と呼ぶのも憚られるわね。これから来客を持て成そうという割には、部下の躾がなっていなかったのではなくて?」
 気高いのは格好だけかしらと敢えて挑むような口ぶりで、ナディア・ベズヴィルド(黄昏のグランデヴィナ・g00246)は冷やかに自動人形を睨みつける。青い色硝子の瞳はヒトならざるものの冷たい光を宿して、秋津島・光希(Dragonfly・g01409)は嫌悪感を露わに呟いた。
「この光景を見て第一声が『散らかして』か……」
 壊れた機械兵の、ましてその素体に使われた人の命など意にも介さないといった口ぶりは、不愉快なことこの上ない。それはこの場の誰もが同じ想いのようで、マティアス・シュトローマー(Trickster・g00097)は灰銀色の瞳を半眼にすると、嫌味と皮肉をたっぷり乗せて言った。
「この程度のやんちゃで、ご婦人からお小言をいただけるなんてね。片付けはもうじき終わるからそんなに心配しないでよ」
「その通り。これでも後片付けに来たんですよ。機械化ドイツ帝国の痕跡、一欠片も残すつもりはありません」
 そして彼女達、自動人形の行いを見過ごすつもりもまたない。アストリッド・ヴァルトシュタイン(Löwenzahn・g04015)は無表情に拳銃に弾を込め直し、そして続けた。
「悪いけど、これからもっと煩くなりますよ。あれこれ散らかりもするでしょうが、綺麗に片付けて帰ります――貴女を倒した、その後で」
 告げた言葉を宣戦布告と捉えたのだろう。美しい人形のぽってりとした唇が、ニタリと薄い笑みを刷いた。そこに相容れる余地は一切ない――どんなに姿は似せていても人の温度を持たない人形達は、一つの例外もなく排撃せねばならない敵である。
「さあて、それじゃあ口煩い貴婦人にはご退場いただこうか!」
 マティアスがシャツの袖を一振りすると、大きな黒鴉の群れがどこからともなく現れ、けたたましい鳴き声を上げる。すると人形は長い機械の爪の先で口許をなぞり、呟くように言った。
「ああ本当に、騒々しい」
 長く尖った指先が、蜘蛛か百足の脚のようにぞろりと蠢く。しかし怖気づく気配は微塵もなく、ソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)は静かな軽蔑を込めて言った。
「騒々しいのは、いったい誰のことでしょうね。ところ構わず小動物相手にも砲撃をしていた、配下の方々のことですか?」
 手袋の指先で宙をなぞれば、何もない空間に洋琴の鍵盤が顕現する。奏でるメロディは『福音』――どこからか響く鐘の音を背に駆け上がる音の驟雨は、聖なる光に変わって女の頭上に降り注ぐ。しかし美しくも醜悪な自動人形は、足下に転がる兵士達の残骸に長い鉄爪を突き刺すや盾のように翳してその直撃をかわしてしまう。吹き付ける冷気は黄泉の風の如くで、少年は整った眉をひそめた。
「人形らしい冷たい口づけですね。その程度の冷気では、凍ってあげられませんよ」
 凍てつく袖に力を込めると、パキンと澄んだ音と共に砕け散った薄氷が宙を舞った。
 切っては結び、弾いてはまた結び――捲れ上がった石畳を境に距離を取り合えば、セーヌの川面を渡る風が一陣、枯葉を散らして吹き抜ける。汗の粒一つ流すことのない人形は涼しい表情を崩さず、優美な装いには凡そ不釣り合いな機械腕を絶えずうぞうぞと動かしている。
 まったくと嘆息して、ナディアが言った。
「着飾るだけ着飾って、上に立つものの風上にも置けない輩のようね。それはそれとして、あの大きな爪は痛そうだけど」
「だねー。でも、いい報告持って帰りたいし。もうひと頑張りといきますか!」
 にひ、と猫のように口角を上げて、瑠奈が応じた。唾棄すべき邪悪は、ここで必ず仕留める――仲間達が連綿とこの地で成果をつなげてきたように、彼女達もまた、今日この日を明日につなげなければならないのだ。
「さ、仕切り直してもっかい、もっかい!」
 愛用のナイフを軽やかに取り回して握り直し、猫はその手を天に突き上げる。OKと力強く呼応して、マティアスは不敵な笑みを浮かべた。
「来ないんなら、こっちから行くよ!」
 ヒュウと鋭い口笛に応じて再び、黒鴉の翼が羽ばたいた。軽やかにその背を渡って肉薄し、少年は上着の裏側から一丁の拳銃を取り出すやくるりと回して身構える。
「ご自慢のダンスを見せてもらおうじゃないか」
 一発、鉄爪の腕の継ぎ目を目がけ、二発、穿たれた傷口を目がけ。放つ銃弾は機械仕掛けの女の身体を貫いていく。しかし痛みを感じることのない人形が、怯む気配はまったくない。極めて優雅な所作で両腕を広げ、人形は踊るようなステップでこちらへ向かってくる。
「へえ、上流階級としてその辺の嗜みはあるわけだ? でもその爪じゃあ、手を取ってあげられないな」
 次はちゃんと、切ってきなよ――皮肉めいた笑みを手向けて、マティアスは大鴉の背を踏み切ると、振りかざす鉄爪の上を飛び越え、人形の胸に痛烈な蹴撃を叩き込む。バリケードと兵士達の残骸が散らばる戦場は足場が悪く、咄嗟に飛び退った人形は一瞬ぐらりと身体を傾けると、恐らくは邪魔だと思ったのだろう、兵士の骸を蹴り飛ばした。
「……量産型のトループス級に、思うところなんざないってか」
 分かってはいたが、胸糞悪い。グローブの手をきつく握り込んで、吐き捨てるように光希は言った。そもそもが生き物とも無機物ともつかぬ人形には、人らしい感情などないのだろう。そうでなければ、顔色一つ変えずに死体を足蹴にできるはずもない。虫唾の走るような嫌悪は拭えないが――。
「それならそれで、こっちもやりやすくて助かるよ」
 目の前の敵が悪辣であればあるほどに、何の遠慮も躊躇もなく、叩き潰すことができる。
 皆で無事、最終人類史に帰るためにも、この場で出し惜しみは無用だ。軽く地を蹴って背中の翅を羽ばたかせれば、すらりと黒いシルエットが矢の如く敵の懐に突き刺さった。勢いに乗せて振り抜く爆撃槌で敵を打ち据え、巻き起こる風と煙に紛れて距離を取るヒット・アンド・アウェイは、光希が最も得意とする戦法の一つである。しかし――。
「……見た目の割に、硬ってえな」
 手応えはあった。だが、足りないということもすぐに分かった。煙を裂いて襲い来る鉄爪を槌の柄で咄嗟に受け、光希は大きく跳び退り、そして小さく舌を打った。
「しかも案外速いぞ。あんなごてごて着飾ってるくせに」
「で、あれば。こちらも相応の対策を取らせていただきましょう」
 毅然と告げて両の手を胸の前に掲げ、ナディアは目を閉じ紡ぐ。星空を透かしたヴェールをはためかせて、編み上げるのは影の鎖だ。
「繋ぐ漆黒、囁く呪いは死を紡ぎ、四方を望む。生死の境を嘲笑い、顕れよ――不浄の鎖!」
 ぎゅるると唸りを上げて走る漆黒の鎖が人形の細い脚に巻きついた。逃れようともがけばもがくほどに喰い込む鎖にクンと引かれて体勢を崩しかけ、美しい人形はためらいなく、捉われた脚の足首から先を切り落とす。その思いきりはさすが、人形であって生き物とは呼べない彼女達特有の性質なのかもしれない。
 片足で平然と立つ婦人の前へ一歩進み出て、アストリッドは拳を振り上げた。
「何のために、あれこれ装備を身に着けていると思います?」
 リュックにコート、ヘルメット。あれこれ着込んでいるのは何も、この冬の寒さのせいではない。貴婦人の鉄爪の届く距離を注意深く測って、少女は言った。
「その腕に剥ぎ取られても、どれか一つ残ればこと足りるから、です」
 上着の裏に忍ばせた拳銃でも、手榴弾でもない。真に警戒するべきは、懐に忍ばせたたった一振りのナイフだけ。瞬時に距離を詰めて片手の刃を振りかざし、アストリッドは人形の胸を目がけて力いっぱい振り下ろす。深々と突き刺さった刃に胸を抉られて、人形はかくりと腰を折った。その表情には動きこそ見えないが、ダメージは確実に蓄積しているはずだ。
 その背にいそいそと忍び寄る影を見つけて、ナディアは挑むような口ぶりで言った。
「前にばかり気を取られていていいんですか?」
 何を言っているのか、分からない。そんな顔をした自動人形のすぐ背後に、黒猫の尻尾がひらりと揺れる。いつの間に後背に回ったのか――悪戯な笑みを浮かべながら、瑠奈が言った。
「余所見しちゃだーめ。あたしとあなた、どっちか消えてなくなるまで一緒に踊り狂うんだから!」
 相手が爪を使うのならば、こちらもそれに応えるべきなのだろう。反射的に振り返った人形の醜い鉄爪を意にも介さず潜り抜け、猫は両手に形成した輝くオーラの爪をクロスさせ、貴婦人の胸元に十字の瑕を穿つ。不意打ちは悪戯猫の十八番――予期せぬ方向からの一撃を御しきれずに一瞬、たじろいだ人形の動きは、瑠奈の目にはまるで停まっているかのように見えた。
「あはっ! おっそ~い! そんなんじゃ瑠奈のスピードにはついてこれないよっ!」
 一度戦いの均衡が崩れれば、後は雪崩を打つように。畳み掛ける復讐者達の猛攻を前に、冷たく光る鉄の爪がもげて形を失っていく。ふうと乱れたシャツの襟元を正して、マティアスは言った。
「ようやく、爪を切ってくれたみたいだね」
 けれどもう、ワルツは踊れない。
 耐久値の限界を超えた人形の身体は、がしゃんとけたたましい音を立ててその場に瓦解した。言葉を遺す暇さえ与えられぬまま、黒華の貴婦人は事切れる。よしっと両手の拳を握り締めて、瑠奈は黒猫の尾を振り跳び上がった。
「みんなで掴み取った勝利だねっ! ぶい!」
「ええ、この場は我々の勝利です」
 唇の端に見えるか見えないかの微かな笑みを浮かべて、アストリッドは銃を下ろした。
 そう――これは確かな勝利だ。しかしこのシテ島を巡る戦いは、未だ終ったわけではない。むしろこれは、序曲に過ぎないのかもしれない。
 頬に掛かる金糸を川風に靡かせて、ソレイユはそびえるノートルダムの双塔を睨んだ。
「シテ島を取り戻す日まで、私達は何度でも来ますよ」
「ああ。そんで、とっとと潰してやる――目の前の敵も。誰かが人形にされちまう可能性もな!」
 胸の前で拳を打ち合わせ、光希が応じた。胸に秘める想いは、皆同じだ。歪んだ技術がもたらす悲劇を、それによって犠牲になる人々を、これ以上は生まないためにできることは何でもする。それが、復讐者としてこの場を訪れた彼らの矜持なのだ。
「……帰りましょう。次の仕事が待ってるわ」
 努めて静かな口調で紡いで、ナディアはそっと得物を下ろした。ここを訪れるのは、次が恐らく最後になるのだろう。けれど仮に違ったとしても構わない――何度でも、幾らでも潰してやる。あるべき世界の姿を取り戻すために、敵は例外なく打ち倒すのみである。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【怪力無双】LV1が発生!
【猫変身】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
【飛翔】がLV2になった!
【建造物分解】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
【ダブル】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
【反撃アップ】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2023年02月18日