リプレイ
エイレーネ・エピケフィシア
亜人共を率いているのが、タロースの如き金属の戦士とは面妖な
空を自在に舞う戦士の偵察は気がかりですが
まずは一刻も早く人々を救いに参りましょう
ウェアキャットへの悪感情を躱すため、耳と尾を衣服に隠して集落へ
突然の訪問失礼いたします
わたしはエイレーネ、亜人と戦う「冒険者」の一人です
我々はカナンの地から亜人と召使を追放し、街の解放に成功しました
そこで皆様に、平和な住処に移り住んでいただくべく参ったのです
とは言え、今はカナンの地まで渡り歩く物資の余裕はないでしょう
【口福の伝道者】で増やした干し肉などの保存食と、清潔な衣服や履物、更に目的地までの地図を渡しますね
暫し英気を養った後、カナンの地にお越しください
●施し、導く
「亜人共を率いているのが、タロースの如き金属の戦士とはまた面妖な。他のディヴィジョンより流れ着いた空を自在に舞う戦士……気にはなりますが、まずは一刻も早く人々を救いに参りましょう」
機械化ドイツ帝国のゾルダート。当然ながら、蹂躙戦記出身のエイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)に彼らと矛を交えた経験はない。未知なる敵に懸念を覚えつつも、今は人々の避難が最優先だと意識を切り替えてゆく。そうして暫く周囲を探索すると、数件のあばら屋を見つける。
(早速声を掛けたいところですが、この見た目は余り晒さぬ方が良いでしょうね)
人々にとってはウェアキャットも恐怖の対象だ。エイレーネは持参した外套で全身を覆うと、旅人を装いながら集落へと近づいてゆく。
「突然の訪問で失礼いたします。少し宜しいでしょうか?」
「おっと、こんな場所に誰がか来るなぞ珍しい。しかも、女性が一人でとは」
外で作業していた村人たちへ声を掛けると、驚きつつも手を止めてくれる。亜人は殆どが男の為、女性というだけで警戒心も幾分か弱まるのだろう。第一印象は悪くないと感じつつ、女神官は先を続けてゆく。
「わたしはエイレーネ、亜人と戦う『冒険者』の一人です。我々はカナンの地から亜人と召使を追放し、街の解放に成功しました。そこで皆様に、平和な住処に移り住んで頂くべく参ったのです」
「なんですと? もしもそれが本当なら願ってもない話だ。しかし、今日の糧すら事欠く我らに旅などとても……」
相手は一瞬訝しんだものの、亜人に狙われやすい女性が単独で行動しているという事実に一定の説得力を感じているらしい。だが先立つ物が無いと嘆く人々に対し、乙女は幾つかの頭陀袋を取り出して見せる。
「勿論、それは承知の上です。今はカナンの地まで渡り歩く物資の余裕はないでしょう。ですので、これを」
中身は保存の効く食糧に清潔な衣服や履物、目的地までの道を記した地図だ。これならば十分な余裕をもって移動できるだろう。
「亜人は奪いこそすれ、施す事などあり得ない。まさか、本当に……?」
「ええ。猶予は余りありませんが、英気を養った後でカナンの地にお越しください」
彼らからすれば上等過ぎる物資に目を見開く村人たちへ、エイレーネは神官らしく穏やかな微笑みを浮かべて見せる。斯くして彼女は呼び掛けと物資提供を終えると、次なる集落を探しに行くのであった。
大成功🔵🔵🔵
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
ディアナ・レーヴェ
※機械化ドイツ帝国元軍人です
よくもまあ、こんな遠くの国にね!(苦笑)
ま、私も人のこと言えないんだけどーっ
…さて、後始末をしましょうか
極力空の様子を見渡しやすい高所で、岩影等に隠れつつ【防空体制】【観察】
双眼鏡を片手に、周囲の地形に紛れる色の布でも被って伏してるわ!
私は空を中心に見るけど、徒歩の隊を見逃したり鉢合わせたりしないよう、地上も完全には目を離さない
航空兵相手だし、風向きも注意ね
なるべく飛行音を拾い易い位置に居たいわ
敵を見つけた時、集落に向かって急降下するとかの緊急性の高い動きを見せるようなら、射撃して注意を私の方に
まだ余裕がありそうなら仲間に合図して、複数人での先制と各個撃破を狙うわ!
●国破れても兵在りき
「よくもまあ、欧州からこんな遠くの国まで流れ着いたものね! ま、新宿島に漂着した私も人のこと言えないんだけどーっ」
祖国の景色とは似ても似つかぬ荒野を前に、思えば随分流離ったものだと列車から降り立ったディアナ・レーヴェ(銀弾全弾雨霰・g05579)は苦笑を浮かべゆく。
「早ければもう、仲間がどこかの集落に接触した頃合いかな? さて、と。それじゃあ、こっちも後始末をしましょうか」
故郷である改竄世界史は消え去れど、己も敵も未だこの世に在る。なればこそ、かつての同胞たる者の責務として敗残の将を討ち取らねばなるまい。ディアナの表情から子供っぽさが鳴りを潜めると、代わりに軍人としての怜悧さが顔を覗かせた。
(周囲は一面の荒野、良くも悪くも視界を遮る物が無いわ。偵察に出て逆に見つかるなんて本末転倒も甚だしいし、下手に動き回るの悪手でしょうね)
彼女は手頃な大きさの岩を見つけると、持参しておいた砂色の麻布を被り物陰へと身を伏せてゆく。視野の広さ、目の数では相手の方が圧倒的に上だ。なればこそ、まずは自分が発見されない事が最優先である。
(空を中心に見つつ、徒歩の隊を見逃さないよう地上からも完全には目を離さない……航空兵相手だし、風向きも注意ね。なるべく飛行音を拾い易い位置に居たいわ)
一番の脅威は上空を飛翔する指揮官だが、それに随伴する歩兵部隊の存在も忘れてはならない。移動速度の差によって互いの歩調を合わせる事が難しいという点は戦いにおいて好都合だが、同時にそれぞれが全く予期せぬ方向から姿を見せる可能性も示していた。
一方の捜索に気を取られ、もう一方の接近に気付けなかったなどと言うのは余りにも間抜けすぎる。故にそんな事態へ陥らぬよう、ディアナは双眼鏡で空を覗きつつ、時折それを外して地上へも視線を巡らせてゆく。
(もしも敵が集落を見つけた場合、どう動くのかしら。飽くまで哨戒が目的なら一旦トループス級との合流を優先するでしょうけど……もしも単騎で制圧する素振りを見せるのなら、こちらも動かざるを得ないわね)
今のところそれらしい機影は見当たらないが、いつ事態が急変するやも分からぬ。故に軍師はそっと軽機関銃に初弾を装填し射撃準備を整える。敵が此方へ迫りつつある以上、どこかで接敵するのは間違いない。
そうしてディアナは息を潜めながら、舐める様に赤茶けた荒野と蒼い空へ視線を巡らせてゆくのであった。
成功🔵🔵🔴
効果1【防空体制】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
クロエ・アルニティコス
移住させるのは分かります。そのために集落に赴くのも。
しかし説得なども全て私一人で行うのは……もっと得意な人がいるでしょうに……はぁ、仕方ありません。
【友達催眠】を使い集落を訪れます。
初対面の人間から友人のように接されるのも戸惑いますが、警戒されて話が通じないよりはいいでしょう。
私は「冒険者」です。
伝えたいことがあり、仲間たちとともにこの地の集落を回っています。
ここよりそう遠くない街。
そこにいた亜人は斃れ、ウェアキャットたちは全員逃げ去りました。
そこならばこんな冷たい風が吹く荒野ではなく、しっかりとした家で休み、亜人から隠れる必要もなく大勢の人たちと暮らすことができます。
そこに移住しませんか?
●やれる事、出来る事
「ふむ……人々を移住させるのは分かります。そのために集落へ赴くのも必要な事でしょう」
雨風を凌ぐ為だろうか。渓谷に居を構えた集落を遠巻きから観察しつつ、クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)は少しばかり微妙そうな表情を浮かべていた。
「しかし、説得なども全て私一人で行うのは些か効率的でないと言うか……もっと得意な人がいるでしょうに。はぁ、ですがそうせざるを得ないのであれば仕方ありません」
集落はカナンの地各所に点在しており、どうしても手分けして当たらざるを得ない。とは言え口振りこそ露悪的だが、算段があったからこそクロエもこうして村へと足を運んだのだ。
彼女は小さく息を吐いて呼吸を整えると、母屋と思しき家の戸を叩く。出て来た住人は一瞬だけ怪訝そうな表情を浮かべるも、復讐者は相手が口を開くよりも先に自らの訪問目的を告げる。
「私は『冒険者』です。皆様に伝えたいことがあり、仲間たちとともにこの地一帯の集落を回っています。すみませんが、少しばかり耳を貸し頂けませんか?」
「ん……ああ、勿論だとも! こんなところまで来なすった方を邪険に扱えるものかね」
言葉に乗せた微弱な魔力が精神へと干渉し、初対面であるにも関わらず相手はまるで友人の如き親しさを以て接してくれる。その変わり様に若干の戸惑いを覚えつつも、クロエは警戒されるよりかはマシだと先を続けてゆく。
「ここよりそう遠くない街。そこにいた亜人は斃れ、ウェアキャットたちも全員が逃げ去りました。正真正銘、人間だけの街となったのです」
「ほう! 俄かに信じがたいが、冒険者殿の言う事ならば真実なのだろう。こんな良い報せは久方振りだ」
催眠効果もあってか、村人はすんなりと復讐者の話を受け入れてくれた。元より食うや食わずの毎日を送っている為、明るい話題に餓えていたのかもしれない。なればと、クロエは畳み掛ける様に言葉を重ねる。
「そこならばこんな冷たい風が吹く荒野ではなく、しっかりとした家で休み、谷の底で亜人から隠れる必要もなく暮らすことができます。皆様もそこに移住しませんか?」
「ふむ。元々、已むに已まれず逃げ込んだ土地だ。より良い場所があるならば、居を移すのに否やはない。相分かった、直ぐに準備するとしよう!」
問い掛けに対して鷹揚に頷きながら、村人は一旦家の中へと引っ込んでゆく。
「ふぅ……何とか上手くいきましたね」
それを見届けながら、クロエは無事に目的を果たせたと内心安堵するのであった。
成功🔵🔵🔴
効果1【友達催眠】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
一角・實生
厳しい環境で日々を生き抜くのに必死な人々
発見した集落の状態に思わず足が早まるけれど
落ち着こう
敢えて数歩足音を立て歩み寄り、俺から声をかけてみる
胃に馴染みやすいスープ類を持ち込み人々に配ろう
温かいものは凝り固まった心をほどく効果もある
飲んで。おいしいよ
人心地ついたところで集落のリーダー的な人を中心に話をしてみるよ
【活性治癒】を使い人々の疲労や傷を癒しながら
その効果に勇者や冒険者の姿を重ねて貰えたらいいなあ
ここにいる皆で街へ移住してみないかい
あなた方と同じような環境で生き抜く人々がいてね
彼らにも俺の仲間が話をしているところなんだ
皆が集まれば今よりできることが増える
先細りの未来より変革を求める時だよ
●明日の為に
「やれやれ、幾ら取り除いても小石が無くならん」
「仕方あるまい。誰も見向きもしない土地だからこそ、亜人の眼も届かぬのだからな」
荒地の片隅に佇む、数軒の掘っ立て小屋。その周囲では村人たちが粗末な道具で畑を耕していた。それを一目見ただけで、彼らの暮らしぶりが分かろうと言うものである。
(厳しい環境で日々を生き抜くのに必死な人々、か。思う所が無い訳ではないけれど、今は一旦落ち着こう。警戒されては話も出来ないからね)
集落を発見した一角・實生(深潭鷲・g00995)はその有り様に思わず歩みを早めかけるが、一呼吸入れて逸る気持ちを抑えてゆく。彼は敢えて足音を立てて近づきながら、来訪者に気付いた村人たちへと声を掛けた。
「どうもこんにちは。すみません、この集落のリーダーはどなたでしょうか?」
「アンタはいったい……ああいや、長老に御用か。待っててくれ、今呼んでこよう」
「ええ、ついでに他の方も集めて貰えると助かります」
相手は警戒感を滲ませるが、それも一瞬。すぐに親し気な笑みを浮かべると復讐者の求めを快諾してくれる。彼は村人たちが集まると、本題へ入る前に持参したスープを配りつつ怪我や疲労を治療してゆく。
「少し長い話になるからね。これを飲んで、おいしいよ?」
「すまんこってす。客人をもてなす余裕もありゃせんでなぁ」
己を『勇者』や『冒険者』と重ね合わせて貰おうという狙い込みの行動ではあるが、ホッと安堵する人々の姿は純粋に喜ばしいものだ。そうして村人たちの信頼を取り付けると、實生は己の訪問目的を掻い摘んで説明していった。
「……という訳で、ここにいる皆で街へ移住してみないかい? あなた方と同じような環境で生き抜く人々がいてね。彼らにも俺の仲間が話をしているところなんだ」
「はぁ~、そげな場所が。この飯や治療も納得だぁな」
「十人かそこらじゃいずれ限界が来るだろう。だけど、皆が集まれば今よりできることが増える。先細りの未来より変革を求める時じゃないかな」
事前の行動も相まってか、村人たちはすんなりと話を受け入れてくれた。長老はポンと膝を叩くと、うむと頷く。
「そうだな。今日明日も知れぬ日々ならば、誘いに乗るのも良いかもしれん」
「それが聞けてこちらも安心だよ」
少なくともこの場所で暮らし続けるよりかは遥かにマシなのは間違いないだろう。善は急げと支度を始める村人の姿に、實生は静かに微笑を浮かべるのであった。
大成功🔵🔵🔵
効果1【活性治癒】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
エリザベータ・シゲトヴァール
●心情
空の黒騎士、フォン・シュライヒ……。
敵国で屈辱の日々を過ごすのではなく、新天地で上手くやっていたのね。
彼は訓練教官としても有能だったと聞く。
部下の亜人達が新たな脅威となるのもそう遠くはないでしょう。
少し胸が痛むけど、危険な芽は早めに摘み取っておかねば。
●行動
【飛翔】し航空偵察・空中哨戒。
彼も空から私達を探している。
陸と空、どちらも警戒せねば。
【戦闘知識】【地形の利用】を活かし、探知を避けるべく丘陵等の地形に沿って匍匐飛行。
砂塵等を巻き上げぬ様留意し、静かに飛ぶ。
逆に航跡雲や地上部隊の砂塵、野営跡等をから【追跡】技能で足取りを追う。
接敵時は遮蔽物の元に着陸して身を潜め【偵察】する。
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携、アドリブ歓迎
残留効果を活用
……亜人に蹂躙以外の思考はないものか
人を所有物扱いとは、片腹痛い事だ
奴らが得た知識も、活かす場なく封じる
まずは避難する人々の安全を確保したい
荒地に合う迷彩服を着用、地形の利用し、なるべく姿を隠しながら移動と偵察を行う
地上、上空、両方の警戒と敵の早期発見に努めよう
【パラドクス通信】で付近の仲間と連携を取り手分けし、死角のないように哨戒
双眼鏡を用い偵察、情報収集
動くもの、土埃、景色に馴染まぬ色や異変を見落とさず観察
敵兵の所在を看破しよう
移動は飛翔があれば借り、地を這うように極低空飛行
仲間が向かった集落の周辺と、街へ向かうルート付近は特に警戒
鉢合わせのないように計らう
●天を睨み、地に這いて
「空の黒騎士、フォン・シュライヒ……まさか、こんな辺境へ流れ着いていたとは。敵国で屈辱の日々を過ごすのではなく、新天地で上手くやっていたのね」
領土を接したロシアやフランスよりも遥かに遠い蹂躙戦記へと流れ着いたゾルダート。敵ながらよく生き残ったものだとエリザベータ・シゲトヴァール(聖イシュトヴァンの剣・g00490)は呆れる一方、表情にそれ以外の感情が混じっている様に見えるは気のせいだろうか。周囲へ油断なく視線を巡らせるその相貌には、もう常の兵士然とした凛々しさが満ちている。
「彼は訓練教官としても有能だったと聞く。技術的な格差があるとは言え、部下の亜人達が新たな脅威となるのもそう遠くはないでしょう。少し胸が痛むけど、危険な芽は早めに摘み取っておかねば」
本来であれば技術発展は言祝ぐべきものだが、それが人類弾圧に繋がるのであれば話は別。下手に機械化技術によるブレイクスルーが発生すれば、亜人の脅威度が跳ね上がりかねないのだ。
エリザベータはそんな忌むべき可能性を断ち切る為、脚部飛行ユニットを起動させふわりと身体を浮かび上がらせてゆく。
(彼も空から私達を探している。可能であれば相手よりも高高度から哨戒を行いたいけれど、現時点ではそれも望めない……となれば)
空戦に置いて何よりも重要なのは高度と速度だが、どちらも今の段階で相手を上回る事は難しい。である以上、選ぶべきはその逆か。航空突撃兵は一旦高度を落とすと、地形に沿って舐める様な匍匐飛行で飛翔し始める。
(機動力を活かしつつ、相手の眼を掻い潜るにはこれしかないわね。それに空へばかり意識を向けて、歩兵に見つかるのも本末転倒よ。陸と空、どちらも警戒せねば)
航跡雲やエンジン音、足跡に野営跡。高度を取れないなら取れないなりの方法があると言うものだ。斯くしてエリザベータは慎重に注意を払いつつ、索敵を進めてゆき、そして――。
一方、二重帝国の航空兵が調査を始めた頃。エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)もまた、仲間とは別の場所で偵察活動を始めていた。改竄世界史の一部とはいえ、カナンの地は広大だ。こういう場合、薄く広く観測範囲を広げる事が肝要である。
(……亜人に蹂躙以外の思考はないものか。人を所有物扱いとは、片腹痛い事だ。者と物が同じである筈など無いと言うのに)
改竄世界史における人間の扱いはどれも非道極まるが、このイスカンダルはその中で群を抜いて残虐と呼べるだろう。数に物を言わせた弾圧が技術発展による効率化と結びついた場合、どれ程の悪夢と化すのか。想像するだに恐ろしい。
「奴らが得た知識も、活かす場なく此処で封じる。そろそろ各集落への説得も佳境に入った頃合いだ。一先ず、避難する人々の安全を確保したい」
エトヴァは普段の蒼を基調とした服装から砂色の迷彩服へ装いを変えると、地を這うような超低空飛行で飛翔してゆく。こういった場合、放射状に探索するのが定石だ。幸い、相互通信によって仲間の位置は互いに共有出来ている。彼はまだ未探索の方角を選び、哨戒を進めていった。
(蛮族じみた連中だが、相手も馬鹿ではない。見知らぬ土地を探るなら、補給も兼ねて集落伝いに進軍するだろう。万が一街へ繋がる道を発見されたら、移動中の人々が襲われかねない。そうなる前に敵の位置を把握しなければ)
こうした作業に奇を衒う必要はなく、故にこそ手法もまた似通うものだ。青年は航空兵同様、双眼鏡を用いながら敵の痕跡に目を光らせる。一帯は荒れた大地で視界は良好、動く物も敵を除けば空を流れる雲だけだ。視界内で何か違和感があればすぐに気付く。
(尤も、それは敵とて同じこと。どれだけ身を隠そうと、空と地上の双方から視線を向けられれば此方の存在を気取られる。別行動中であれば好都合なのだが……さて)
そうしてエトヴァは途中途中で足を止めながら、注意深く周囲の風景へと視線を巡らせ続け、そして――。
「ふむ……どこまで行っても赤茶けた荒れ野ばかり、シュトゥットガルトの黒き森とは大違いだな。もう随分長く飛んでしまった。そろそろ一旦戻るべきか」
航空兵は見た。蒼穹を単騎で征く、黒き翼を。
「これまで見た集落はスベテもぬけの殻カ。ただの偶然トハ考えにくイ。速やかニ教官殿へ報告しなけれバ」
画家は見た。無人の集落を調べる、単眼鬼の集団を。
別々の場所で、ほぼ同時に。復讐者たちは探し求めていた敵集団を捕捉する。刹那、彼らは手元の通信機を口元へ寄せ、そして――。
「『ユサール』より各員に報告。単独行動するアヴァタール級を視認したわ」
「こちら『フェーデル』、同じくトループス級の集団を見つけた。運が良い、どうやら別行動中の様だ」
目標発見の一報を、仲間たちへと伝え共有してゆくのであった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
●鋼鉄の航空兵、単眼の工兵
復讐者たちの行動によって、『カナンの地』各所に点在していた集落の説得に成功した。人々はそれぞれの荷物や受け取った物資を背負い、一路亜人やウェアキャットの居なくなった街を目指して移動を開始している。
一方、偵察に向かった面々からもまた敵発見の報告が入りゆく。どうやら幸運にも、アヴァタール級とトループス級は別行動中だったらしい。だが、喜んでばかりもいられない。シュライヒは帰投する素振りを見せており、他方ではキュクロプスもこちらの意図に気付きつつあった。下手に時間を与えてしまえば双方が合流し、折角の好機が無駄になってしまうだろう。
故に、いま重視すべきなのは一にも二にも『時間』である。戦力を割いてまずは単眼鬼を殲滅するか。或いは航空兵の元へと向かい、足止めをして合流までの時間を遅らせるのか。そのまま指揮官を討ち果たせば配下の一つ目鬼も撤退するだろうが、彼らが得た知識は残ってしまう。まだ初歩も初歩なれど、『切っ掛け』と『答え』を既に得ているのだ。今後、何かしらのブレイクスルーが発生しないとも限らない。
何であれ、先に敵を発見できたと言うイニシアチブは時間の経過とともに失われるのだ。正に『兵は拙速を尊ぶ』と言った所か。
さぁ、復讐者たちよ。どう行動すべきか、決断の時だ。
クロエ・アルニティコス
救援機動力でエトヴァの方へと向かい、アンティゴノス・キュクロプスに攻撃を仕掛けます。
今後のことを考えた戦略も、教官による亜人の調練も。
私にとっては判断の基準にはなり得ません。
亜人が無防備に歩いているなら、殺す以外の択はありません。
まだこちらに気づいていないのであれば奇襲を行います。
【ハルピュイア・ヒペリカム】でオトギリソウの種を急成長させ、ハルピュイアを模した怪物の群れを作り出します。
鉤爪と嘴で亜人の肉を、その大きな目を抉り、解体させます。
超抜個体の攻撃はハルピュイアに庇わせ、私へのダメージを軽減します。
……これで、あちらの集落も無事でしょう。
エイレーネ・エピケフィシア
クロエ様や他の仲間と共に、トループス級を早急に仕留めに向かいます
亜人どもが鉄の翼を身に着けて飛び回るなど、悪夢以外の何物でもありません
今ここで禍根を絶ちます!
隊長の合流を妨害するために【通信障害】を発動しながら奇襲を
もし「未来の技術」による連絡手段を持っていたとしても、これで封じられるはずです
≪神護の長槍≫と≪神護の輝盾≫を手に取り参戦
クロエ様と挟撃する形で突撃し『雷光旋舞斬』で敵陣深く切り込みます
単眼を突き、脳まで貫く貫通撃でのトドメを狙いましょう
反撃に対しては一撃離脱の動きで狙いを付けづらくしつつ
躱しきれない分は盾で受けます
神々の鍛冶師たるキュクロープスの名を、あなた達に穢させはしません!
●知識の伝播を断ち切るべし
敵目標、発見。その一報を受けた復讐者たちの反応は極めて早かった。まず真っ先に動いたのはエイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)とクロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)。彼女らは一先ず人手が要るであろうトループス級集団を目指し急行してゆく。
「技術革新、ですか。既に滑空しながら爆弾を投じる手合いも出てきていると聞きます。亜人どもが鉄の翼を身に着けて飛び回るなど、悪夢以外の何物でもありません。故に今ここで禍根を絶ちます!」
纏っていた外套を脱ぎ去り、代わりに長槍と円盾を取り出す猫人。既に兆しとも呼べる存在が確認されているのだ。発想と概念、そして結果が揃ってさえいれば、過程をある程度吹っ飛ばしてもそう驚く事ではないだろう。一方、その傍らで追走する魔女の反応は至ってシンプルなものだ。
「今後のことを考えた戦略も、教官による亜人の調練も……私にとっては判断の基準にはなり得ません。亜人が無防備に歩いているなら、殺す以外の択はないのですから」
脅威度が高かろうと低かろうと、敵が敵である事に変わりなし。警戒も無く隙を晒しているのであれば、有難く食い破るだけである。
「技術レベル的に遠隔通信手段はまだ無いと思いますが、念のために妨害を行っています。一先ず、合流されない限りは互いの状況を把握はされないでしょう」
「ありがとうございます。幸い、まだこちらには気づかれていませんし……空には空で対抗してみると致しましょう」
そうこうしている内に集落で屯している工兵部隊が視界に飛び込んで来た。鎚を振るったり何やら議論を交わすなど、暇な時間を利用して知識の復習でも行っているのか。だが、奇襲する側からすれば好都合だ。クロエは植物の種子を取り出すや、昏い魔力を籠めて急成長を促してゆく。
「種子に宿るは我が怨恨、芽吹け『ハルピュイア・ヒペリカム』!」
芽吹いたオトギリソウは瞬く間に繁茂するや、有翼女怪の姿を模して動き始める。葉と花で出来たハーピーの群れは猛禽の如く敵の頭上から襲い掛かっていった。
「がああアッ、ナンダこれは!? 草で出来た亜人、なのカ?」
「恐らく、コレが教官殿の言っていたでぃあぼろすのチカラだ。総員、戦闘準備!」
数体の単眼鬼が群がられ、瞬く間に緑を朱に染めてゆく。だが相手も鍛冶を生業にしているとは言え、戦士である事に変わりはない。手にした鎚を握り直すと、仲間の骸ごとハーピーを叩き潰す。
「対応が早いですね。ですが、そのお陰で注意が逸れました。このまま切り込みます!」
しかし、空からの強襲によって相手の意識が外ではなく内へと引き寄せられている。その混乱に乗じ、エイレーネは一気に距離を詰めて敵陣へと切り込む。構えた槍の穂先がバチリと瞬いたかと思うや、踏み込みの速度が一気に高まりゆく。
「雷霆よ、人々を脅かす慮外者どもに裁きを下したまえ!」
刹那、勢い良く繰り出された刺突が手近な単眼鬼の頭部を穿ち、そのまま威力を殺すことなく敵陣を蹂躙する。だが、敵のしぶとさも然るもの。急所を串刺しにされ、感電で痙攣しながらも長槍を掴んで見せた。
「ご、が……イマ、だッ!」
「下手人はうぇあきゃっとダト? 寝返りでもしたのカ。まぁ良い、身の程をオシエテやる!」
相手が良く知る種族だったからだろうか。単眼鬼は原始的な武器を手に取るや、一斉に女神官へと襲い掛かる。流石にこの数に囲まれたら無事では済まぬと、エイレーネは瀕死の敵から得物を引き抜きながら、円盾を構えつつ後退を試みる。
「それはこちらの台詞です! 神々の鍛冶師たるキュクロープスの名を、あなた達に穢させはしません!」
盾越しに響く衝撃に全身が悲鳴を上げながらも、猫人は負けじと叫び返す。しかし、敵群の中から異質な雰囲気を纏う個体が飛び出して来る。その顔には他と異なる知性が滲んでいた。
「否、奴はディアボロスだ! 下僕たるウェアキャットの中から目覚める者が現れ始めたのだ! 周りに別の者も居るはずだ、探せ!」
流暢な言葉遣い。技術だけではなく、種族としても一段上を行く特異個体が居たのだろう。その単眼鬼が手にしている陶器製の小さな壺。口から出ている紐から察するに、恐らくは原始的な手榴弾に違いない。火薬の調合だけでも数百年は時代を先取りしているそれを、敵は周囲へとばら撒いてゆく。
「威力を構成する要素は熱と衝撃。であれば、対処の仕方もまた分かりやすいと言うものです」
しかし、クロエの対応力が一手上だった。彼女はハーピーを爆発物目掛けて吶喊させるや、その身を犠牲にして威力を封じ込める。水分を含んだ生木は燃えにくく、複雑に絡み合った茎葉が衝撃を押し留めたのだ。それでも漏れ出た炎風が魔女の身を焦がすも、想定の範囲内。残った女怪はわっと無防備な得意個体へ群がるや、肉を食み目を抉り解体してしまう。
「……これで、あちらの集落も無事でしょう」
その無残な姿を一瞥しつつ、魔女は先程説得に向かった集落の人々へ思いを巡らせるのであった。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【飛翔】がLV2になった!
【通信障害】LV1が発生!
効果2【グロリアス】LV2が発生!
エリザベータ・シゲトヴァール
●心情
友軍は敵地上部隊を先に叩こうとしている。
今合流されると厄介な事になる。時間を稼ぐか……。
●行動
【地形の利用】で身を隠したまま【偵察】を継続。
フォン・シュライヒに帰投、或いは合流の素振りがあれば離陸。
気付いていない振りをしながら【飛翔】し、敵の目の前に姿を晒す。
単独行動中の遭遇戦に見せ掛け、救援を呼びつつ逃げる様に偽装し、注意を惹く。
【戦闘知識】から敵機の突撃の機動を読み、【空中戦】技能を駆使してプガチョフ・コブラで槍の穂先を回避しつつ背後を取る。
私の目論見が遅滞戦闘と露見しない様にドッグファイトを挑むけど……でもこんな手練れが相手。全力を尽くさないと直ぐにでも墜とされてしまいそうだわ。
●異郷にて翼舞う
(友軍は敵地上部隊を先に叩こうとしている。負けるとは思わないけれど、もしいま航空戦力に合流されると厄介な事になるはず。一先ず、今は時間を稼ぐか……)
エリザベータ・シゲトヴァール(聖イシュトヴァンの剣・g00490)は身を潜めながら鋭く空を睨む。その視線の先では漆黒の機影がゆっくりと旋回していた。彼女はアヴァタール級を発見した後、そのまま敵の合流を阻止すべく足止め役を買って出たのだ。
(相手はまだ此方に気付いていない。奇襲を仕掛けてみる? いや、危険を察知されれば離脱を優先されかねない……なら、此処は敢えて偶然を装ってみましょうか)
敵機が帰投する素振りを見せた瞬間、エリザベータは即座に離陸。そのまま背後を撃つ事も可能だったが、何と彼女は無造作に敵の眼前を横切って見せたのだ。刹那、二つの視線が交錯する。
「ッ、ゾルダート!?」
「……は? 航空突撃兵、だと。いや待て、まさか!」
復讐者がさも気付かなかったという体を装う一方、黒騎士は一瞬の空白の後に怒気を爆発させる。ゾルダートでも亜人でもない、空を飛ぶ存在。その正体なぞ今更確かめるまでも無かった。
「ハ、ハハハ! こんなにも早く相まみえるとはな。恥を忍んで落ち延びた甲斐があったと言うものだ。そうだろう、ディアボロスッ!」
「こちら『ユサール』、アヴァタール級と不意遭遇! 至急増援を求む!」
踵を返して後退する航空兵に対し、シュライヒは馬上槍を構えながら猛然と襲い掛かってゆく。一先ず、足止めと言う目的は達成した。然れども、エリザベータの表情に余裕は無い。
(このまま、私の目論見が遅滞戦闘と露見しない様にドッグファイトを挑むけど……でもこんな手練れが相手。全力を尽くさないと直ぐにでも墜とされてしまいそうだわ)
果たして鋭い殺気を感じた瞬間、後ろ斜め上方より強烈な重量突撃が叩き込まれる。寸前で身を捻り直撃だけは避けたものの、衝撃の余波で姿勢が崩れ、躯体が軋みを上げてゆく。
「く、ぅ!?」
「援軍を呼んだ事に感謝しよう。我が恨み、たかが一機墜とした程度では到底贖い切れぬのだからな!」
弧を描く様な上昇機動を取りながら、再度の吶喊を狙う黒騎士。高度を速度に変換した一撃を放つが、不意に視界から復讐者の姿が掻き消えた。
「なに!?」
身を起こす事で空気抵抗を増大させて一気に減速し、墜落の危険と引き換えに相手の背後を取る空戦技巧『プガチョフ・コブラ』。生半可な技量では為し得ぬ機動を目の当たりにした黒騎士は思わず目を剥く。
「皇帝陛下を討った実力、やはり侮れん……!」
「お褒めに預かり光栄ね? 悪いけれど、もう暫く付き合って貰うわよ!」
「っ、狙いは我が教え子たちか。賢しらな真似をッ!」
復讐者の目論見は露呈したが、黒騎士側も今の交錯で敵が無防備に背中を見せられる相手ではないと悟る。斯くして、二つの機影は機銃弾と馬上槍を激しく交わしてゆくのであった。
成功🔵🔵🔴
効果1【飛翔】がLV3になった!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
ディアナ・レーヴェ
『周りに別の者も居るはずだ、探せ』――ね!
なら私は第一陣に出遅れた分、駆けつけながら全体を目視で確認するわ
残敵はどの方角に、どう散開しようとしてる?
状況は【パラドクス通信】で連携、皆で取り零しに注意しながら回り込む
※フェーデル辺りから総数聞けてたら話早いわね!
被っていた布は道中でポイ!
中の服はパッと見「人間」風、翼は服の背に押し込んでおく
使う技は【Licht fällt】
もう奇襲って段でもないでしょう?普通に姿は現すわ!
但しわざと「やや怯えた顔」して敵の嗜虐心を煽り、それで行動の誘導を試みる
命中したら演技はおしまい!ニッコリ堂々微笑んで
結婚前の女だもの、両目を大きく開いて見ないと駄目でしょう?
一角・實生
仲間が偵察や戦闘で得た情報を【パラドクス通信】で共有させて貰おう
その情報を基に、グラナトゥムのスコープを使い遠方から数と位置を把握する(偵察・観察)
仲間がアヴァタール級の足止めを行ってくれている間に可能な限り素早くトループス級を殲滅したい
低空を【飛翔】し一気に敵集団へ肉薄しよう
敵の真ん前で勢いをつけたままパラドクスを発動、奴らの頭上を越え背後に回り込むような形で頭部を狙う
あんなに大きな目があると狙いたくなるものだよな……胸の内で苦笑い
飛来する武器は【エアライド】と【飛翔】を織り交ぜ最小の動きで回避していくよ
情報を持ち帰られると困るんだ
お前達が持って行くとするなら……そうだなあ。苦痛と絶望、とか
●天より来たりて
「忠告ノ御言葉、決して疑っテイタ訳では無いガ……ヨモヤ、これ程とハ」
「教官殿がお戻りにナルまで何とシテも持ち堪えロ! 襲撃者は先ノ連中以外にも居るハズだ!」
猫人と魔女の奇襲攻撃により、単眼鬼たちは半数近くが戦闘不能となっていた。だが、彼らの士気は衰えるどころか、徹底抗戦の構えを見せている。彼らの希望、それは別行動中の黒騎士との合流だ。
ある意味で強固な信頼関係とも言えるだろう。しかし敵集団の動きをスコープ越しに観察する一角・實生(深潭鷲・g00995)は、その望みが決して叶わぬ事を仲間からの報告で把握していた。
(頼みの綱であるアヴァタール級は足止め中、と。一先ずは合流される心配は無いだろうね。その間に可能な限り素早くトループス級を殲滅したい所だけれど……)
「『周りに別の者も居るはずだ、探せ』――ね! ねぇ、残敵はどの方角に、どう散開しようとしてる? 万が一にも取り零したら後々厄介な事になりそうだし、出来れば一網打尽にしたいところだけれど」
とそんな時、不意に横から声を掛けられる。そちらを見やれば、ディアナ・レーヴェ(銀弾全弾雨霰・g05579)が傍らに姿を見せていた。第一陣から少しばかり遅れたものの、彼女もまた工兵部隊を殲滅すべく駆けつけて来たのだ。軍師の問い掛けに対し、狙撃手は己が見た情報を共有してゆく。
「残存戦力は集落の中央に陣取りつつ、周囲に斥候を出しているみたいだ。完全に持久戦の構えだね」
「成る程……厄介だけど、もう奇襲って段でもないでしょう? なら、ここは敢えて姿を晒して注目を集めるのも一手よ」
ふむと暫し思案した後、ディアナは何かしらの策を考え付いたらしい。彼女は實生と手短に打ち合わせを行うと、徐にそれまで纏っていた麻布を脱ぎ捨てて歩き出す。悪魔の翼は可能な限り折り畳んで背中へ隠し、飽くまでも普通の人間であるかのように装っている。
「それじゃあ、派手に行きましょう?」
軍師はある程度まで距離を詰めるや、取り出した火砲を構え天高く砲撃を行った。炸裂した砲声は当然ながら単眼鬼の耳目を集め、一斉に斥候役の視線が少女へと引き寄せられてゆく。
「イマの音は何ダ?」
「間違いない、アレは教官殿がおっしゃっていた大砲と言う武器だ。我がディヴィジョンにはまだ存在しない技術……やはりディアボロスに違いない!」
訝しむ者が多い中、やおらと出て来たのは一際大きな体躯の単眼鬼。超抜個体は相手の武器や正体について看破しながら、鎚を手に距離を詰めてきた。それにつられてか、他の者らもジリと包囲を狭めてゆく。
「っ、次の弾を
……!?」
一方、ディアナはやや怯えた表情を浮かべつつ、さも火砲の再装填に時間が掛かっている様に見せかける。そんな嗜虐心を煽る言動を敢えて見せつけながら、彼女はそれとなく相手の動きを誘導し――。
「……なんて、ね?」
「あ?」
ふっと、丸い影が差す。何事かと見上げた次の瞬間、時間差で落下して来た初弾が着弾地点に密集していた斥候役を纏めて叩き潰した。重量と高度、そして速度。それらが三乗した威力は凄まじく、単眼鬼の屈強な肉体が無惨な肉塊へと変わり果てる。
そんな哀れな敵群を一瞥しながら、軍師は先程とは打って変わって不敵さ混じりの笑みを浮かべゆく。
「結婚前の女だもの、両目を大きく開いて見ないと駄目でしょう? 斥候役であれば猶更、目移りしてる暇なんて無いわよ!」
「ガアアアアアッ!」
だが、先の優秀個体は辛うじて息があったらしい。せめて一矢報いんと、千切れかけた腕ごと鎚を振るう。しかし、密かに装填を終えていた火砲の一射によって、完全に沈黙させられていった。
「オノレ……挑発には乗るナ、持チ場を堅持セヨ!」
単眼鬼たちはやおら血気に盛りながらも、飽くまで守勢に徹さんとする。だが部隊の目耳たる斥候を失い、かつ嫌が応にも注意が軍師へと向いてしまった。である以上、別方向から距離を詰めて来た實生に反応できなかったのも当然か。これこそが彼らの狙った作戦なのだ。
「情報を持ち帰られると困るんだ。お前達が持って行くとするなら……そうだなあ。苦痛と絶望、とか。冥途の土産に相応しいだろう?」
「っ、チィッ!」
咄嗟に雑多な武器を引っ掴んで投擲出来ただけでも上出来だが、対する青年は敵前で大きく跳躍。肌身や翼を切り裂かれながらも直撃だけは回避すると、愛用の狙撃銃で狙いを付けてゆく。
(あんなに大きな目があると狙いたくなるものだよな……まぁ、弱点である事に変わりはないけれどね)
大きすぎる的が雁首揃えて並んでいるのだ。狙撃手としての矜持が擽られるのもむべなるかな。内心苦笑を漏らしつつも、それをおくびにも出さず流れる様な手並みで弾丸を叩き込む。
単眼鬼も絶え間なく武器を投じて迎撃を試みるが、飛翔と跳躍を織り交ぜた動きの前に有効打を与える事は叶わない。一体、また一体と為す術もなく数を減らされてゆき、そして。
「申し訳、アリマセン、教官、ドノ……――」
飽くまでも抵抗を続けたトループス級、その最後の一体が大地に斃れ伏す。實生は油断なく周囲へ視線を巡らせるも、どうやら逃げ隠れしている個体も居ない様だ。
「さて、と。これでトループス級の殲滅は完了だね」
「ええ、後はアヴァタール級の討伐だけよ!」
斯くして狙撃手と軍師は足止めを続ける仲間と合流すべく、再び無人と化した集落を後にするのであった。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【照明】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【命中アップ】がLV2になった!
フレデリカ・アルハザード
コードネーム・ホワイトムーン
防空体制を使い、飛翔で奇襲を仕掛ける
残留効果はありがたいですね…
パラドクスによって演算能力を強化し、機械兵器を召喚
突撃も奇襲攻撃も包囲攻撃も可能なありとあらゆる戦術に対応できる様に統率し、航空兵の幻影を対処していきます
聞けば貴様らゾルダートは『戦争』による人間の恐怖等や落命の際生じるエネルギーを回収していたそうだな
成程、亜人とは異なるが確かに同じだ
そして…身の程を弁えろ
貴様らクロノヴェーダは、私達復讐者によって破滅させられる為だけに在る!
復讐される側がする側に回る事が許されるとでも?
どこに行かれるのですか?
イスカンダルも皇帝とやらも行く先は同じ
虚ろなる敗死、だ!
ディアナ・レーヴェ
※【飛翔、パラドクス通信】使用
ねえ、何だか懐かしい空気感ね!
敵も味方もドイツだらけなら当然かしら?
(さて、私はCCTSの人ではないけれど――救援を伝える通信で、軍時代のコードネームを用いたのはほんの戯れ)
こちら『グレートヒェン』。単眼鬼の殲滅は完了したわ。
これより合流する!
…と
今の飛翔Lvだと高度が微妙かしらねー…ああ、丘陵を利用すればあるいは?
というのも、【天候予測】で手頃な雲が見つかったら、旋回戦からの強引な突撃でも挑んで押し込んであげたいのよね
復讐者側は【完全視界】で問題ないでしょう?
攻撃は【Rat】
多分敵に頭を抑えられがちな気はしてて、反撃には急旋回や突き上げの動きを駆使して対応ね!
●繋がりと謀りと
「くっ、おのれディアボロスめ……忌々しいが、今は友軍との合流を優先すべきか。彼らはまだ奴らの脅威を真の意味で理解していない。このままだと損害は免れん!」
航空兵の遅滞戦闘によって値千金の時間を奪われた黒騎士。彼は負った負傷具合を確かめるよりも先に、トループス級の元へ向かわんと身を翻す。怨敵を前にしながらも、異郷の部下を慮る姿は美徳と言えるだろう。が、しかし。
「飛翔に防空体制……つくづく、残留効果というものは有難いものですね」
「ッ!」
その眼前にふわりと浮かぶ人影が一つ。アヴァタール級の進路を塞いだのはフレデリカ・アルハザード(軍勢の聖女・g08935)であった。新たな敵の出現にシュライヒは忌々し気に怒気を吐く。
「退け、と言っても従う連中ではあるまい。もはや先の様な失態は犯さん。罷り通らせて貰うぞッ!」
「随分と勇ましい事だな、ゾルダート。だが速度を誉れとする航空突撃兵とて、今回は遅きに失したと言わざるを得ないだろう」
「なに?」
フレデリカの言葉に訝しむ黒騎士。対する聖女は語るに及ばずとばかりに手にした通信機を掲げて見せた。そっと指先で受信ボタンを押すや、スピーカーから小気味の良い声が飛び出してくる。
『こちら「グレートヒェン」。単眼鬼の殲滅は完了したわ。これより合流し、航空戦へ参加する!』
在りし日に名乗っていたコードネームを口遊んだのはある種の戯れか、それとも集った面々がかつて在りし故国を思い出させた故か。ディアナ・レーヴェ(銀弾全弾雨霰・g05579)の高らかな言葉に対し、シュライヒは思わず絶句した。
「ば、かな
……!?」
「異種族同士でありながら、随分と仲を深めていたようだな。聞けば貴様らゾルダートは『戦争』による人間の恐怖や落命の際生じるエネルギーを回収していたそうだな? 成程、亜人とは異なるが確かに同じだ。それが復讐だと?」
衝撃を受ける航空兵を一瞥しながら、フレデリカは通信機の代わりに取り出したUSBを己へと差し込んでゆく。すると周囲の空間がジワリと歪み、鉄と鋼で形成された機械兵器群が姿を見せた。それらを従えながら、彼女は敵対者を喝破する。
「……身の程を弁えろ。貴様らクロノヴェーダは、私達復讐者によって破滅させられる為だけに在る! 復讐される側がする側に回る事が許されるとでも?」
「ほざけぇッ!」
事此処に至りては最早問答無用。四方八方から襲い掛かる兵器に対し、黒騎士もまた航空兵たちの幻影を展開。瞬く間に敵味方入り乱れる熾烈な空中戦が繰り広げられてゆく。
「これはまた、何だか随分と懐かしい空気感ね! 敵も味方もドイツだらけなら当然かしら?」
他方、戦闘空域に到着したディアナはそんな光景を興味深そうに見渡していた。彼女の言う通り、まるでかつての機械化ドイツ帝国が如き戦場だ。我知らず口元に笑みが浮かぶものの、いざ参戦しようとした少女へ理性が待ったを掛ける。
(……っと。今の状態だと高度がちょっと微妙かしらねー。ああ、いや。あの丘陵を利用すればあるいは?)
彼女は飽くまでも軍師、端的に言えば歩兵である。空中でエースクラスの航空突撃兵とぶつかるのは些か以上に分が悪い。どうしたものかと視線を下に向けて見れや、幾つものなだらかな丘が荒れ野に凹凸を形作っていた。次いで視線を上げれば、蒼穹にゆっくりと雲が流れゆく。
「ふむ……よし、これなら行けるわね!」
思考は数瞬。ディアナは何がしかの策を取り纏めると、すぐさま実行に移す。彼女は大きく戦場を迂回しながら雲に紛れると、幻影たちに指示を出す黒騎士へ狙いを定める。そうして敵の注意が別方向へと逸れた瞬間、一気に飛び出して奇襲を仕掛けた。
「さぁ、こっちの土俵まで降りて来て貰うわよ!」
「っ、不意を突かれたか!? だがッ!」
軽機関銃による牽制射で距離を詰め、勢いそのままに体当たりをかまして地上目掛けて押し込まんと試みる。だが敵も然るものだ。騎槍を繰り出して復讐者を文字通り突き離すや、格闘戦へと縺れ込む。
(うーむ、やっぱり純粋な空戦技量だと分が悪いみたい。的確にこっちの頭を押さえてくるわね)
丘陵地形を利用した攻防戦。繰り出される刺突と砲撃がディアナの身体を削りゆくも、彼女の表情に焦りはない。軍師の狙い、それはただ一瞬刹那の間隙のみ。その為ならばこの程度の傷など許容範囲内である。
「何を狙っているかは知らんが……これで墜とす!」
しかし一方、相手も直感的に何か不穏なものを悟ったのだろう。一旦上昇し高度を稼ぐと、それらを速度へ転化。強烈な破壊力を秘めた一撃を繰り出す。当たれば必殺の急降下突撃に対し、軍師はというと。
「ここで決めに来る……ええ、予想通りよ?」
「ですね。こちら『ホワイトムーン』、陽動に感謝します」
くるりと振り返るや、手にした通信機を相手へ見せつける。それが意味するところを黒騎士が悟った瞬間、頭上より鋭い声が響く。ハッと振り返れば、機械兵器を引き連れたフレデリカの姿があった。
「部下を放って、いったいどこに行かれるのですか? イスカンダルも皇帝とやらも行く先は同じ。虚ろなる敗死、だ!」
「抜かった、無線による情報共有か!?」
挟撃されたと思った時には時すでに遅し。鋼鉄の軍勢、軍師の火砲。両者の一斉攻撃により、シュライヒは大きな痛手を負ってゆくのであった。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!
クロエ・アルニティコス
……これが未来の技術、未来の戦いですか。興味深いですね。
いいでしょう。
私のものなど神代のそれには遠く及びませんが。
この時代の魔術と戦い、お見せしましょう。
魔術の女神ヘカテーよ。あなたを信じる者に目を掛けて頂けるなら、どうか私に鋼の人種も焼き尽くす炎を!
【テュポーン・ガランサス】を使用し、テュポーンを象った巨大な怪物を作り出します。
エースたちの技量で仕掛けてくるアヴァタール級に対し、こちらは怪物の持つ純粋な火力と攻撃範囲で対抗し、幻影のエースたちごとアヴァタール級を焼き払います。
お前は亜人を教練しているらしいですね。
亜人に与するのであれば、お前も亜人と同じです。
●旧き今より明日の過去へ
「……勝手知ったる戦術に一杯食わされるとは、些か実戦より長く離れ過ぎたか」
集中砲火を受け、大きく高度を下げた黒騎士。躯体は軋みを上げ、僅かに白煙を立ち昇らせている。だがそれでも、ゾルダートは依然として蒼穹に在り続けていた。そんな敵の様子を、クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)は仔細を見逃すまいと目に焼き付けてゆく。
(鉄の塊が宙を舞い、囁きで情報を交わし合う……これが未来の技術、未来の戦いですか。興味深いですね)
平面的な地上戦とは文字通り次元が異なる、立体機動を主軸とした空中戦。この改竄世界史に生まれた彼女にとって、どれも目新しいものばかりだ。しかし故にこそ、対抗心が胸中に火を灯す。
「いいでしょう……私のものなど神代のそれには遠く及びませんが、さりとて見下ろされるばかりも面白くはありません。この時代の魔術と戦い、お見せしましょう」
彼女が徐に取り出したのは待雪草の種。それらは撒かれた場所が荒れ野にも関わらず、瞬く間に発芽。巨人も斯くやという巨躯まで育つと、まるで大蛇が如く茎先の花弁を蠢かせ始める。
「魔術の女神ヘカテーよ。あなたを信じる者に目を掛けて頂けるなら、どうか私に鋼の人種も焼き尽くす炎を! 種子に宿るは我が滅び、芽吹け『テュポーン・ガランサス』!」
果たして、術者の意に応じ樹怪は花弁より強烈な炎を噴き上げてゆく。正しく神話の具現とも言うべき威容に対し、黒騎士は航空兵部隊の幻影を召喚。狙いを分散させる事で事態の打破を狙っているのだ。
「見てくれは仰々しいが、こうした手合いの対処法など決まり切っている。即ち、攪乱と一撃離脱だ」
幻影たちが速度を活かして樹怪を翻弄するのと横目に、黒騎士が復讐者目掛けて吶喊する。肉弾戦を得手としていないクロエにとって、その一撃は直撃すれば致命は必須。咄嗟に回避と試みるも、強烈な衝撃が全身を襲う。脇腹を深く抉られた。そう悟りながらも、しかして魔女に動揺はない。
「随分と物知りな事で。聞くところによれば、お前は亜人を教練しているらしいですね。亜人に与するのであれば、お前も亜人と同じです。一匹残らず、駆除しましょう」
「虚勢だな。頼みの化物は我が戦友に身動きを封じられて……なに!?」
手応えを確信したゾルダートだったが、不意に横から飛び出して来た花弁に絡め取られてしまう。樹怪は文字通り、植物で構築されているのだ。である以上、新たな頭部を生やす事など造作も無い。
「た、たかが草花如きに……ッ!」
「進歩は確かに有用でしょう。ですが、旧きを侮るのは退化以外の何ものでもありませんよ」
斯くして、黒騎士は超至近距離から猛烈な劫火に包まれてゆくのであった。
成功🔵🔵🔴
効果1【植物活性】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
エイレーネ・エピケフィシア
空の戦士よ
あなたは蹂躙への加担で矜持を守れるとお思いですか?
その行いが、亡き王と国に報いるものと心より信じているのですか?
いずれにせよ、虐げられる人々のため──あなたを野放しにはできません
【防空体制】の下、敵が空を軽快に動き回ろうとすぐ見付けられる状態を整えます
≪神護の長槍≫を手に槍投げの姿勢を取り、精神集中して狙いをつけ
仲間の攻撃に合わせ畳みかけるように『流星が如く燃え立つ投槍』を放ちます!
狙うは敵の翼を貫き機関部を破壊する貫通撃です
アテーナー様!この槍に、タロースの如き金属の体すら貫く力をお与えください!
反撃に対しては槍を手元に戻し
敵の槍を絡め取って軌道を逸らしたり、盾で受けて応じましょう
一角・實生
俺の位置がばれている方が都合が良い
相手もそれだけ俺に意識を割く時間が生まれる
極力地上からの戦闘を試みるよ
短時間の低空飛翔とエアライドを組み合わせ、空中戦の戦闘知識も使い攻撃を躱すと同時に敵の意識内に留まろう
グラナトゥムによる狙撃でも横入りを
実際の動きとパラドクス通信で仲間とも連携を図る
敵の意識から俺が外れた瞬間パラドクスを発動
凝縮した呪詛を送り込む
お前や俺がいた世界に存在し、この世界にも在り続けるものだ
重ねた飛翔の効果を初めてフルで使い反撃に応戦、威力軽減に努めよう
……今なら言って大丈夫かな
人々が無事に街へ辿り着くことが最優先事項
俺が見ているのはお前じゃないし、お前も俺を見ている暇はない筈だよ
●地より天を見上げて
「この程度の手傷、何するものか……! 一度逃げ延び、この辺境まで辿り着いたのだ。今再び敵に背を向ける事など、我が矜持が許さぬ」
度重なる戦いの果て、ゾルダートの負った損傷は目に見えて分かるレベルにまで達しつつあった。装甲板は焼け焦げ、骨格は歪み、複葉は所々が欠け落ちている。それでも逃げる事を許さぬのは、ひとえにこれまでの受けた恥辱と最後に残った誇り故か。
「……空の戦士よ。あなたは蹂躙への加担で、本当に『矜持』を守れるとお思いですか? その行いが、亡き王と国に報いるものと心より信じているのですか?」
だが、此処に問いを投げ掛ける者が居る。それはこの大地で生まれ育ちしエイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)。都市国家に根付く神官が、異郷の航空兵を見上げていた。それは敵意でも殺意でもない、もっと別の感情に基づいた言葉。
しかし言葉は伝われど、常に真意が通ずるとは限らない。況や、相容れぬ者同士であれば猶更だ。
「今さら世迷い事を! 皇帝陛下を弑逆した張本人であるディアボロスがそれを口にするのか! 復讐者を名乗る者が、手段の是非を問うのかッッ!!」
「もはや、これ以上の問答は不要という事ですか。残念ですが良いでしょう。虐げられる人々のため──あなたを野放しにはできません」
分かり切っていた筈の決裂。その返答に一瞬だけエイレーネは瞳を閉じると、手にした長槍をクルリと翻す。瞬間、甲高い発砲音が鳴り響き、アヴァタール級を掠めてゆく。狙撃に気付いた黒騎士が咄嗟に視線を巡らせると、微かな硝煙越しに一角・實生(深潭鷲・g00995)の姿を見つけた。
(本来、狙撃手が身を晒すは最も避けるべき事態だ。だが、今回に限っては俺の位置がばれている方が都合が良い。相手もそれだけ俺に意識を割く時間が生まれるのだから)
意識外や死角から己を狙う者が居る、その事実だけで嫌が応にも動きが制限されてしまうもの。それを狙い、實生は敢えて定石を外したのだ。一方、シュライヒは装甲に刻まれた傷跡を軽く指先で撫ぜると、騎槍を握り締め直す。先の一発は開戦の号砲に他ならない。後はもう、刃を交えるのみ。
「良かろう。こちらもお前たちの存在を受け入れ難く思っているのだ。である以上、どちらかが消えねばなるまい。無論……答えなど知れているがなッ!」
そう言うや否や、ゾルダートは大きく身を捻りながら急降下。高度を速度へと転化する事で、複葉とは思えぬスピードで吶喊して来た。狙いを定めたのは少女ではなく青年の方だ。恐らく、横槍を入れられる事を嫌ったのだろう。
(接近を嫌って下手に飛び上がってしまえば相手の思う壺か。空中こそ相手の独壇場だ。地上に留まれば、少なくとも三次元的な立体機動に制限を掛けられる筈……!)
實生はバサリと翼を広げるやほんの僅かに身を浮かせ、滑る様に地面を移動してゆく。後ろ向きに後退しつつ牽制射を放つも、宙空での戦い方は敵の方が一枚上手である。咄嗟に跳躍して衝突を回避するが、斬り裂かれた軍装から鮮血が舞い散ってゆく。
「考えたようだが、複葉翼の制動性を甘く見、っ!?」
「輝ける槍よ、悪しき者の命を過たず穿たんことを!」
そのまま立て直す暇を与えずに畳み掛けんと狙う黒騎士だったが、不意にハッと背後を振り向いた。見えたのは視界いっぱいに広がる白銀の長槍と、投擲態勢後の女神官。意趣返しの如き一撃にさしもの黒騎士も回避が間に合わず、兜型の頭部装甲を抉り飛ばされる。
「成る程、長槍か……種類こそ違えど同じ得物とは。だが、手持ちはそれきりらしいな」
逃げ続ける狙撃手と武具を手放した女神官。どちらが与し易いか瞬時に判断を下すや、シュライヒは標的をエイレーネへと変える。投擲した槍は独りでに戻って来るが、どうしても時間差があった。飛翔する黒影と銀槍。果たして、復讐者の元へ先に辿り着いたのは……。
「速度勝負で突撃航空兵が後れを取ると思ったのか?」
「っぅ!?」
漆黒の騎士であった。少女も回避は困難と悟り円盾を構えるが、次の瞬間に襲い掛かって来た強烈な衝撃によって吹き飛ばされてしまう。堪らず地面を転がるエイレーネの額から、つぅと一筋の朱が流れ落ちる。
そのまま勝負を決さんとするシュライヒ。しかし今、彼の意識からは確かに狙撃手の存在が消え去っていた。その好機を青年は決して見逃さない。
「衝突によって一時的に速度が落ちたね。再び加速される前なら、まだ目は在る……これはお前や俺がいた世界に存在し、この世界にも在り続けるものだ」
即座に反転していた實生は狙撃銃を槍の如く構えると、先端へ装着した銃剣による呪詛刺突を狙う。対する黒騎士もまたそれに応じんと旋回軌道を取るが、視界の端に映ったモノに思わず目を剥く。
「っ……アテーナー、様!この槍に、タロースの如き金属の体すら貫く力を、お与えくださいッ!」
「な、あの一撃を受けてもう動けるだと!?」
それは激痛に悲鳴を上げる身体に鞭を打ち、再び長槍の投擲態勢を取るエイレーネの姿だった。奇しくも狙撃手の刺突と合わせて十字の軌道を描く、必中の同時攻撃。回避は勿論、防御すらも許さぬ双撃がシュライヒを襲う。
「が、ああああっ!?」
これには堪らず、ゾルダートも錐揉み状態で落下してゆく。上下を入れ替える様にその姿を見下ろす實生は、一抹の寂しさを滲ませながら首を振る。遠くへ向けた視線が見出すのは、敵ではなく無辜の人々の姿。
「……今なら言って大丈夫かな」
――俺が見ているのはお前じゃないし、お前も俺を見ている暇はない筈だよ。
はたして、孤独な兵士に届いたかどうか。その独白は蒼穹へと流れ溶け消えてゆくのであった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
【飛翔】がLV4になった!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
【アヴォイド】LV1が発生!
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
連携アドリブ歓迎
PD通信で積極連携・情報共有
あちらは仲間達が上手くやるだろう
俺は一足先に教官の方へ急行
援軍と見せユサールと合流し挟撃
攻勢に転じる様子で時間稼ぎ
獲物を追うものは視野が狭くなる
合流時は超低空飛行から、急上昇で強襲、そのままループで離脱
二対一だ。どう出るかな
戦況を偵察、観察し情報収集
【飛翔】し空中戦
敵の背を狙って脅かし続け
緩急フェイントかけた射撃で格闘戦のユサールを援護
相手の間合いに詰められぬよう撹乱軌道で飛行し
攻め手は緩めない
反撃には魔力障壁を展開し防御し
航空兵達にも本能があるならば、地を恐れるだろうか
隼の如く翼を引き、地面スレスレまで急降下し、直前で翼を広げて減速滑空し振り切ろう
エリザベータ・シゲトヴァール
●心情
亡き祖国と皇帝陛下への愛国心と忠義は変わらずか。
仏露に降ったゾルダートの不甲斐なさには敵ながら怒りと情けなさを感じていたけど、ドイツ帝国の誇りは死んでいなかった様ね。
騙す様な真似をして申し訳なかった。
今更白々しいかも知れないけど、ここからは互いの誇りをかけて勝負よ、黒騎士!
●行動
【飛翔】し【空中戦】技能と【戦闘知識】を元に真っ向勝負。
フェーデルとも連携しロッテを組んで死角を庇い合う。
僚機への攻撃位置に付かせない様に【制圧射撃】で牽制して機を待ち、
タイミングを合わせてV-EXTRAを発動。共同撃墜を狙う。
見た目にそぐわぬ軽快な動きは脅威だけど、死角や多方向から波状攻撃を仕掛ける。
●かつて在りし誇りを此処に
「負け、られん……負けられん、のだッ! かつては皇帝陛下と祖国を、そして此度は異郷の部下を失い、どうしてこれ以上の恥を晒せようかッ……!」
身動ぎする度に躯体から赤黒い油が零れ、全身の骨格が軋みを上げてゆく。エドゥアルト・フォン・シュライヒの名を冠するアヴァタール級はもはや瀕死の状態と言って良い。だがそんな状態でもなお瞳から怨讐の念は消えず、黒煙を昇らせながらも空へと飛翔してゆく。
「……死に瀕しても尚、亡き祖国と皇帝への愛国心と忠義は変わらずか」
攻撃する機会なぞ幾らでもあっただろうに、再び戦場へと舞い戻ったエリザベータ・シゲトヴァール(聖イシュトヴァンの剣・g00490)は好敵手の到着を静かに待ち受けていた。その表情に浮かぶのは敵意や侮蔑ではなく、ある種の敬意。
「仏露に降ったゾルダートの不甲斐なさには敵ながら怒りと情けなさを感じていたけど、ドイツ帝国の誇りは死んでいなかった様ね。余り醜態を晒されては、それに従わされていた私たちは何だったのかと思ってしまうもの」
「わざわざ引き返して来たかと思えば、それは皮肉か? それとも、敗残兵の大言壮語でも笑いに来たのか? であればその侮り、命を以て贖わせるぞ」
ゾルダートとて馬鹿ではない。幾ら感情が荒れ狂おうとも、理性は既に大勢が決した事を悟っているのだろう。その上で戦い続ける意志を見せる黒騎士へ、航空兵は否と首を振る。
「いいえ。寧ろ、先ほどは騙す様な真似をして申し訳なかった。今更白々しいかも知れないけど、ここからは互いの誇りをかけて勝負よ、黒騎士!」
「……おっと、俺を抜きで始めて貰っては困る。やや遅れてしまったが、援軍としてやって来た立場が無くなってしまうからな」
改めて宣戦を布告する航空兵の傍らへ、不意に別の機影が姿を見せた。その正体はエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)である。単眼鬼の殲滅を仲間へと任せた画家は、いまこうして戦場へと辿り着いたのだ。当初は足止め役の仲間をそのまま援護する予定だったが、得てして多少の想定外は戦いについて回るもの。彼は友と敵の双方へと視線を向けてゆく。
「二対一だが問題はないだろう? 航空戦の最小単位はケッテかロッテだ。決闘の作法に則って挑むのが礼儀だと考えるが、如何に」
「是非も無し……僚機の当てならばこちらにもある」
黒騎士が騎槍を掲げると、航空兵の幻影が幾つも現れ実像を結ぶ。己が教え導き、いつか肩を並べるかもしれなかった無数の『もしも』。だが、その未来が訪れる日はもう永劫も来ない。
「機械化ドイツ帝国がゾルダート、エドゥアルト・フォン・シュライヒ……参る」
そんな悲哀を振り切る様に漆黒の機影は好敵手目掛けて挑み掛かってゆく。対して、復讐者側の反応は二つに分かれた。一方は真っ向から格闘戦に応じ、もう一方は地面スレスレまで大きく高度を落としたのだ。
(獲物を追うものは視野が狭くなる。下方からの一撃離脱であればなおさら対応は難しいはずだが……二対一だ。さて、どう出るかな)
後者を選んだエトヴァは追従する幻影たちの攻撃を緩急織り交ぜた機動で躱しつつ、チラと上方を見やる。下から見上げる形となるが、これで視野を確保できた。彼は両手に二挺の拳銃を握り締めつつ、首元に固定した通信機へと囁きを送りゆく。
「こちら『フェーデル』、航空兵はこちらで惹き付けよう。合図さえあれば、いつでも援護は可能だ」
「『ユサール』了解、機を見てお願いするわ。だけど今はまだ、宣言通り真っ向から挑むとしましょう!」
画家の頭上では、黒騎士を釘付けにすべく航空兵が熾烈な巴戦を繰り広げていた。互いに機銃や火砲を浴びせかけながら、時折交錯し爆撃鎚と騎槍をぶつけ合う。実力から言えばほぼ互角か、疲労度の差を鑑みれば敵方の方が幾分か上といった所だろう。
「まさか、そこまでの傷を負ってまだこれほど動けるとは……流石ね!」
「この総身、全ては祖国の空を覆う諸悪の悉くを駆逐せんが為なり! 些かガタが来たところで容易く下せると思ってくれるな!」
これもひとえに背負った覚悟の重さ故か。失っても尚、否、失ったからこそ、その信仰と矜持は更なる強固さを得たとも言える。しかし、それは復讐者とて同じことだ。史実と改竄、二つの歴史を失っているのだから。
「ええ、勿論。だからこそ、こちらも出し惜しみはしないわ……『フェーデル』!」
「ああ、心得た!」
故に、彼らは決着をつけるべく勝負を仕掛けた。通信機へ呼びかけるや、エトヴァが瞬時に反応。彼は背後から身を掠めてゆく攻撃を振り切るかの如く、隼の如く翼を絞りながらほぼ直角度で急降下を敢行。幻影たちもその背を追うが、地面との衝突を危惧してどうしても動きが鈍ってしまう。
「――Sei frei」
果たして、死と隣り合わせのチキンレースを制したのは画家だった。彼は衝突直前で大きく翼を広げるや急制動。まるでターンするかの様に直上へと一気に飛翔し、速度を落とした幻影を置き去りにしてゆく。
そしてそれに合わせて航空兵もまた自らの枷を解き払い、躯体性能の限界まで出力を引き出す。多大な負荷と稼働時間の大幅減と引き換えに、彼女は敵機を凌駕する高機動性を得る。
「僚機の上昇は間に合わない、か。だが、だとしてもッ!」
天地上下から迫る連携攻撃。ロッテとしてこれ以上ない戦い振りを前に、ゾルダートは回避や防御ではなく敢えて迎撃を選ぶ。雄々しき騎槍を構え、己の出せる最高速度を以て繰り出し、そして。
「嗚呼……勝てぬ、か」
復讐者たちの放った弾丸が黒騎士の身体を穿ち貫き、反対に彼が繰り出した得物はは度重なる戦闘の負荷に耐え切れず、半ばより砕け折れていた。もう、浮力を得るだけの出力など残っていない。グラリと体を傾がせ、荒野へ向けて自由落下し始める。
「さようなら、フォン・シュライヒ。貴方は確かに、ゾルダートの名に恥じぬエースだった」
「国破れ、過去すらも消え果てようと……少なくとも、俺たちはその名を覚えておこう」
エリザベータとエトヴァは遠ざかる敵影を見送りながら、漆黒の空騎士へと手向けの言葉を送りゆく。その姿がただの点となった果てに、微かに響いた衝突音が戦いの終わりを告げていた。
此処に『エドゥアルト・フォン・シュライヒ』は墜ち、単眼の探求者が悉く斃れた事で、『勝利王セレウコス』が放ちし偵察部隊は壊滅した。
斯くして、復讐者たちは避難を促した人々の先行きを祈りつつ、最終人類史へと帰還を果たすのであった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】がLV6になった!
効果2【グロリアス】がLV3になった!
【ダメージアップ】がLV5になった!