サンダルフォンの最後の足掻き

 ディアボロスが『築地配給宮殿』を攻略した事で、中央区における食料の配給は滞り、区民の大天使に対する『信仰』の低下は急激に低下し、歯止めがかからなくなっています。
 既に台東区からの支援が奪還により失われ、墨田区のミカエルからの支援も、ディアボロスに妨害されています。
 中央区の支配者であるジェネラル級大天使『サンダルフォン』は、追い詰められているのでしょう。

 この状況を打開する為、サンダルフォンは『全ての不都合を、ディアボロスのテロ行為のせいだ』として、区民の不満を逸らす作戦を開始しました。
 築地配給宮殿をディアボロスが破壊している映像などを公開した上で、区民の生活に不都合が出ている事を、大天使が頭を下げて丁寧に詫びる事で区民の信仰を繋ぎ留め、ディアボロスへの敵愾心を高めようというのです。

 クロノヴェーダである大天使が、一般人に頭を下げるまで追い詰められている状態は、もはや末期と言う他ありません。
 この作戦を阻止すれば、信仰を完全に失ったジェネラル級大天使『サンダルフォン』の撃破と、中央区の奪還は目前となるでしょう。


サンダルフォン

全部復讐者が悪い(作者 唐揚げ
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●TOKYOエゼキエル戦争:東京中央区某所
 教会のチャペルを思わせる荘厳な空間に、多数のアヴァタール級大天使が集められていた。
「おのれ、ディアボロスどもめ……!」
 招集をかけたのは、ここ中央区を支配するジェネラル級大天使『サンダルフォン』……なのだが、なにやら憤懣やるかたないようで、手にした天秤がカタカタと左右に振れていた。

「諸君、集まってもらったのは他でもない。築地配給宮殿がディアボロスに破壊され、区民への食糧配給が不可能になってしまったのだ」
 大天使たちにざわめきが走る。
「再建は出来ないこともない。だが、その間に区民の信仰が完全に失われることになるだろう」
「で、ではサンダルフォン様、一体どうなされるおつもり……」
「……黙れ」
 迂闊に口を挟んだ大天使を、サンダルフォンはギロリと睨みつけた。
「ひっ!?」
「そもそも、原因はなんだ。誰が悪い? 私か、それとも貴様か? ……違う」
 カタカタ左右に触れる天秤が……カタン、と一方に完全に振れた。

「悪いのはすべてディアボロスどもだ!!」
 次の瞬間、サンダルフォンの怒りが爆発した。
「周囲の区を海に変えて流通を途絶えさせたのも、肝心の宮殿を破壊したのも、すべて奴らだ! 奴らの仕業だ!!」
「さ、サンダルフォン様……」
「おまけに奴らは、これ幸いとばかりに区民に食糧を配給し、我々への信仰を揺るがせていると来た!」
 サンダルフォンは、もう片手に持った剣を思いきり降り下ろし、風を切った。
「なんという卑怯卑劣な連中なのだ! おのれディアボロス、おのれぇ……ッ!!」
 あまりの剣幕に、大天使たちは言葉を失い唖然とする。サンダルフォンは両手を振り上げた!

 ……カタンと、天秤が反対側に振れる。サンダルフォンは大きく息を吐き、力なく両手を下ろした。
「すまない、少々冷静さを失ったな。諸君らにやってもらいたい仕事がある」
 天秤が均衡を取り戻し、大天使たちも胸をなで下ろした。
「なによりも重要なのは、区民の信仰を取り戻すことだ。そのためには我々が正義であることを知らしめねばならん。
 憎きディアボロスどもの悪行を『正しく』区民に広め、真実を伝道する……それが、皆にやってもらいたい仕事だ」
「ではその仕事、まずはこのわたしにお任せいただけないでしょうか」
 さきほどの剣幕に気圧された大天使たちの中から、ひとりが歩み出た。
 サンダルフォンは声の主を見やり、「ほう」と声を漏らす。

「貴様か、『ウィリエル』。たしかに、お前の交渉能力は向いているが……」
 サンダルフォンがそう言うと、『慈愛天使・ウィリエル』はにこりと微笑んだ。
「ご安心ください、サンダルフォン様。あなたの仰りたいことは、すでに理解しております。
 ディアボロスどもの攻撃を防ぎきれなかったことは、我ら天使の責。誠意を込めてお話すれば、区民の皆様もおわかりいただけるでしょう」
 サンダルフォンは目を細める。ウィリエルの理解は正しく、それこそがこの作戦の重要なところだ。
(「だが、もしも何かの間違いで、区民が納得しなければ……」)
 ウィリエルは自愛に溢れた大天使だが、自らに従わない者を悪と断じる苛烈な一面もある。そこが懸念点だった。

「……いいだろう、ウィリエルよ。ひとつだけ私の言いつけを遵守しろ」
「なんなりと」
「ただ説得するだけではいかん。区民に頭を下げ、流通を途絶させてしまったことを謝罪するのだ」
 ぴくり、と慈愛天使の眉が動いた。
「……謝罪、ですか」
「そうだ。原因はディアボロスにあるとはいえ、守りきれなかったことは我ら大天使の非に他ならぬ。
 我らへ信仰を向けさせるには、悪と戦うという一点において、我々が同志であることを理解させねばなるまい」
「……」
 ウィリエルはしばし、微笑したまま黙っていたが、やがて「かしこまりました」と一礼した。
 ウィリエルにとって愛は与えるものであり、共有するものではない。あくまで天使が上位にあってこその慈しみだ。
 一般人に頭を下げるという行為は、さしもの慈愛天使にとっても自尊心を損ねる命令だったらしい。

「この作戦は非常に重要だ。いまは少しでも信仰を取り戻さねばならん。さもなくば……中央区は滅びるだろう」
 冷静になったサンダルフォンは、的確に状況を認識していた。
「皆の献身に期待している。以上」
 慈愛天使・ウィリエルは、他の大天使たちとともに、変わらない笑みで頭を下げた……。

●新宿駅グランドターミナル
「祝! 築地配給宮殿攻略成功~! ッス!」
 ぱぱーん! と、なぜか持参したクラッカーを鳴らす七田・ナナ(エンジョイガール・g05125)。
「え、これッスか? いや~、先輩がたと一緒にお祝いしようと思って、去年のクリスマスに用意しておいたんスよ~。
 けど色々あって出来なかったから、せっかく攻略が進展したし使ってみようと思って持ってきたッス!」
 ナナはいそいそと、持参したポケットゴミ袋にクラッカーの中身をしまいこんだ。

 で、片付けが終わったところで、改めてディアボロスらを見渡す。
「てわけで! 先輩がたのカッケー活躍で、中央区の奪還に王手がかかったって感じッス!
 サンダルフォンもかなり追い詰められているみたいで、なんと……部下に区の人たちを説得させるつもりなんスよ!」
 驚きッスよね! と、実際驚いた様子で語るナナ。
「信仰は奴らの力の源ッス。とはいえ、クロノヴェーダが自分たちの支配下にある人たちに頭を下げるなんて前代未聞ッス。
 逆に言うと、それだけウチらはうまくやれてるってことッス! となれば……そうッス、今回も出鼻を挫いてやるッスよ!」
 ナナは握った拳をぐぐっと見せつけるようにして、力の入りっぷりをアピールした。

「肝心の奴らの動きなんスけど、どうも中央区の事情をぜーんぶウチらに押し付けるつもりでいるみたいッス!
 ウチらディアボロスが悪で、自分たちが正義! ……ってことを、もっぺんアピールするってわけッスねぇ」
 ナナは腕を組んで、クロノヴェーダの欺瞞に溜息をついた。
「たしかに食糧の流通を途絶させたのはウチらッスけど、そもそも勝手に東京支配してんのあいつらじゃないッスか!
 こーゆーの、キベンっつーんスよね? ともかく、あいつらが正義なわけないッス、ハイパーありえないッス!
 だったらやることはひとつッス。あいつらの演説を邪魔して、どっちが悪者かをみんなに見せてやるッスよ!」
 敵の土俵にあえて上がり、反証することで、より効果的に信仰を打ち砕けるというわけだ。

「最終的には、アヴァタール級を倒す必要があるッスけど、まずなにより重要なのは奴らの『説得』を邪魔することッス」
 と繰り返し強く主張するナナ。そこで、ディアボロスから「だったら先手を打って倒せばいいのではないか」という声が挙がる。
 するとナナは、「さすが先輩、ハイパー力強いアイディアッス!」と感服した上で、こう答えた。
「あいつらはムカつくことに、ウチらのことを「中央区の人たちを苦しめる悪のテロリスト」みたいに扱ってるッス!
 だからこっちから手出しちゃったら、たとえ大天使をやっつけられたとしても、あいつらの主張を認めることになるッス。
 サンダルフォンが「謝罪」なんて手段を選んだのも、ウチらが妨害しにくくするためだと思うんスよね~」
 ナナはうーむ、と敵の知恵に唸った。平和的手段で誠意をもって対話しようとしている相手を、暴力で黙らせる……なるほどいかにも「悪のテロリスト」がやりそうな、残忍で強引な手口だ。

 と思ったらナナは、ふふんとにんまり意味深な笑みを浮かべた。忙しい小娘である。
「ってことは~? あいつらのほうから手を出させれば、あいつらの説得力なんてゼロッス! ハイパーゼロ!
 ……自分で言ってよくわかんないッスけど、とにかく向こうが慌てて攻撃してくるようにすればいいッス!」
 ナナは勢いでゴリ押しした。
「だからなにより重要なのは、先輩がたが大天使の演説を否定して、区の人たちを納得させてあげることッス!
 ついでに問題も解決すれば、きっと話に耳を傾けてくれるはずッス。つまり、市民のハートは胃袋で掴め! ッス!」
 急に話が俗っぽくなってきた。
 が、宮殿を攻略したのはすべてこのため。食糧支援も同時に行うのは、まさしく一石二鳥というわけだ。

「あ、そうそう! 実はこのことをウチからお話したら、新宿島の人たちが手伝ってくれることになったッスよ!」
 ナナは嬉しそうに、両手を胸の前で合わせた。
「テレビ局で働いてたCGデザイナーさんとか、映像編集者の方とか、ハイパー豪華なスタッフが勢ぞろいッスよ~!
 きっと先輩がたにも、そーゆーのが得意な先輩、いらっしゃるッスよね? 百聞は一見にしかず、ってやつッス!
 ニュース番組みたいに、あいつらの悪事を再現した映像とか作っちゃえば、きっと説得力もハイパーうなぎ登りッスよ!」
 また話が俗っぽくなってきた気がする。
 言うまでもないが、完全な作り話は論外だ。あくまで大天使の悪事を暴くことが重要なのだから。

「説得にやってくるのは、『慈愛天使・ウィリエル』っていういつもにこにこしてる大天使と、『魔法円の天使』っていう……こっちも子供みたいに見えるトループス級の天使ッス。
 もともと信者を獲得する仕事とかに向いた奴らみたいで、説得もハイパーへりくだってやるつもりみたいッスよ」
 甘言に長けたアヴァタール級と、大天使の威光を知らしめることに特化したトループス級。
 奴らにイニシアチブを握らせてしまうと、説得の難易度も上がってしまうだろう、とナナは語る。
「あいつらが全部悪いことなんてハイパーわかりきってんスから、議論みたいなのふっかけられてもシカトッス、シカト!
 先輩がたのペースに大天使も区の人たちもみーんな巻き込んじゃえば、カッケー先輩がたならヨユーッス!」
 肝心なところが勢いで誤魔化されてる気がするが、どのように挑むかはディアボロス次第ともいえる。

「それに、いっくら優しいふりしても、クロノヴェーダはクロノヴェーダッス。あいつ絶対、あの笑顔の裏でハイパー腹立ててるに決まってるッス!」
 絶対そうに違いない、とやけに力説するナナ。今回の大天使が個人的に地雷なタイプだったんだろうか?
「だから、うまくディスって余計なこと言わせたりするのもアリかもッスね! ウチには絶対無理ッスけど!
 とにかく、カッケー先輩がたの頭脳を使えば、大天使のキベンなんてカンタンにぶち抜けるはずッス!」
 ズバッ! と、正拳突きのように拳を突き出すナナ。
「……よね? 先輩!」
 無邪気な笑顔の信頼に応えられるかどうか。それはすべて、ディアボロスの頑張り次第だ。

●TOKYOエゼキエル戦争:中央区・某高級ホテル、大食堂
「大天使様、これはいったいどういうことなんです?」
「てっきり食事を振る舞っていただけるのかと思ったら、折り入って話ですって?」
 壇上に立つウィリエルに、困惑する区民らの声が突き刺さる。当人は微笑を浮かべていた。
「……皆さん、本日はお集まりくださりありがとうございます。今日はわたしから、大事なお話が」
「そんなことはいい! 食糧はどうなってるんだ、配給を再開してくれよ!」
「……」
 ウィリエルは笑顔のまま、男性の方を向いた。
「そのことについてなのです。お気持ちはわかりますが、どうか今はわたしの言葉に耳を傾けてください」
「しかし……」
「皆さん、申し訳ございません」
 食い下がる男性の言葉を遮り、ウィリエルは背後の部下たちとともに深く頭を下げた。

 その姿を目の当たりにした区民は、当然のようにざわめく。
「すべては我々の力不足です。あの悪魔よりも邪悪で狡猾なディアボロスどもから、皆さんをお守り出来なかったのですから」
「ディアボロスですって? どういうことなのですか、天使様」
 区民から質問が飛ぶと、ウィリエルはことさら柔らかい笑顔を見せた。
「まずはこちらをご覧いただきましょう」
 背後の壁に映像が投影される……いかにして撮影したのか、それは築地配給宮殿を攻略中のディアボロスたちの姿だ!
「こ、これは!」
「おわかりいただけましたか? この事態は、他ならぬ奴らの仕業であるということが」
 ウィリエルは水を得た魚のように語調を早めた。
「現在の中央区を襲う未曾有の混乱、そして皆さんが味わうこの苦しい状況は、すべて奴らのテロによるものです。
 しかし先ほど申し上げた通り、本来であれば我々が奴らの毒牙から、皆さんをお守りしなければならなかったのです」
 ですから、と言ってウィリエルがもう一度頭を下げようとすると、先ほどの男性が「ま、待ってくれ!」と遮った。
「どうか頭を上げてください、天使様。そうとは知らず、なんという失礼を……お許しください!」
「……よいのです。この苦難は、我らの団結を試す試練のようなものでしょう」
 ウィリエルはにこりと、優しい笑顔で諭した。

「我らの……団結?」
「そうです。我ら大天使はここに誓います。今度こそ、諸悪の根源であるディアボロスどもを滅ぼし尽くすと」
 天使たちは背筋を伸ばし、はっきりと言い放った。
「ですからどうか、皆さんは我々を信じてお待ちください。今こそ愛をもって手を取り合い、平和を取り戻すのです!」
 区民たちがどよめく……先刻のものと異なり、そこには宗教的熱狂の前触れがあった。
 ウィリエルは会心の笑みを浮かべる。まもなく訪れるであろう万雷の拍手に備え、ウィリエルは両腕を広げようとする……。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【怪力無双】
1
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わり、「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げて運搬可能になる(ただし移動を伴う残留効果は特記なき限り併用できない)。
【託されし願い】
1
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【平穏結界】
1
ディアボロスから「効果LV×30m半径内」の空間が、外から把握されにくい空間に変化する。空間外から中の異常に気付く確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【無鍵空間】
1
周囲が、ディアボロスが鍵やパスワードなどを「60÷効果LV」分をかければ自由に解除できる世界に変わる。
【完全視界】
1
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【植物活性】
1
周囲が、ディアボロスが指定した通常の植物が「効果LV×20倍」の速度で成長し、成長に光や水、栄養を必要としない世界に変わる。
【口福の伝道者】
3
周囲が、ディアボロスが食事を摂ると、同じ食事が食器と共に最大「効果LV×400人前」まで出現する世界に変わる。
【クリーニング】
1
周囲が清潔を望む世界となり、ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建造物や物品が、自動的に洗浄殺菌され、清潔な状態になる。
【通信障害】
1
ディアボロスから「効果LV×1,800m半径内」が、ディアボロスの望まない通信(送受信)及びアルタン・ウルク個体間の遠距離情報伝達が不可能な世界に変わる。
【アイテムポケット】
4
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。

効果2

【能力値アップ】LV3 / 【ダメージアップ】LV4 / 【ガードアップ】LV1 / 【凌駕率アップ】LV3(最大) / 【アクティベイト】LV1 / 【リザレクション】LV1 / 【先行率アップ】LV2 / 【ドレイン】LV1

●マスターより

唐揚げ
 追いガツオです。中央区奪還戦、いよいよ佳境に突入といったところですね。
 サンダルフォンは信仰を取り戻すため、なりふり構わない作戦に出ました。
 この一手を崩すことが出来れば、決戦の時も近いはずです!

 執筆順は、①&②→③→④を想定しています。
 ④をクリアすればシナリオは成功になりますが、①を達成しているかどうかで色々話が変わってきますので、OPと各選択肢の内容をよくお読みの上ご参加ください。
 なお、戦闘の際の一般人の避難を考慮する必要はありません(向こうにとっては信仰のリソースですからね)

 では、皆さんのハイパーカッケープレイング、お待ちしてるッス!
198

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


奉利・聖
【聖竜】
話を聞いてはくれませんか
お察しの通り…復讐者です

我々は流通を途絶えさせた
皆様に混乱と不安を強いたこと、弁明の余地も無い
…ですが考えて欲しい ならばなぜこうして、食料を持ち込んだか
悪を敷くなら独占してしまえばいい 還元する必要は無いはずだ

溜飲が下がらないのなら(頭を叩きつける土下座)
石を投げていい 火あぶりにしてもいい 自害もしましょう
信じて頂けるのなら、なんでもします 我が身の犠牲で叶うなら本望

──対抗がこうして、土下座をし 命まで捧げると言ったのなら
最低限それに見合うほどの覚悟を見せなきゃいけない
そういう『空気』が出来る
できますか?根に残るプライドを捨て去り
這い蹲って許しを請うことが


十埼・竜
【聖竜】
真実の端っこを事の本質だと見せかける、誇大報道の基礎テクニックだね
……他所にやられるとこれすごーく腹立つんだよな!

ぼくは群衆の目立たない後ろから、聖が作る空気を煽って火種に変える
「検閲」──だめだよ、それは見せられない
あいつらが投影する映像を〈ハッキング〉画と音声を「正しく」書き換えてしまおう!
ぼくたちも築地配給神殿攻略のとき、沢山食料支援したはずだ
それから大天使たちへの不安を口にしていた人々の声
ついでに他の区のだって天使と住民のいい画、あるでしょ
それら映像と音声を被せ、または群衆の声に混じらせて問いかける
今そこで身を擲つ若者と、口先だけお綺麗な天使たち
さあ、本当に誠実なのはどっちだ?


「待ってください!」
 その時、食堂の大扉が勢いよく開かれた。
「……どなたです?」
 ウォリエルは、表向きは動揺も苛立ちも見せず、穏やかな笑みで誰何する。

 ツカツカと歩み出たのは、奉利・聖(クリーナー/スイーパー・g00243)だった。
「我々にも、弁明をする機会を頂きたいのです」
「まさか、君たちは」
 男性が問いかけると、聖はこくりと頷く。
「ええ、お察しの通りディアボロスです。話を聞いてはくれませんか」
 聖は、十埼・竜(スカイセンサー・g02268)が紛れ込むチャンスを作るため、あえて威風堂々と前に進み出た。
 まさかの登場に、人々はどよめく。トループス級が動こうとすると、ウォリエルは片手を挙げてそれを制した。

 ところで肝心の竜だが、さすがにこれだけの人々の注目を浴びて姿を隠すのは難しい。
 残留効果があれば話は違ったかもしれないが、めちゃくちゃバレていた。
「あ……ど、どうもー。ぼくのことはお気になさらず……」
 苦笑いで誤魔化す竜。近くの席の方々の視線が、痛い。

 しかし人々の注目が、聖に集まったのは事実。
 聖は、大天使が手を出してこないことを確認すると、人々をゆっくりと見返す。
「我々は流通を途絶えさせました。その結果、皆様に混乱と不安を強いたこと、弁明の余地もありません」
「では、認めるのね?」
「そんなテロリストどもが、のこのこ何しにきたんだ!」
 人々からヤジが飛ぶ。ウォリエルは笑顔の裏でこう考えていた。
(「何か企んでいますね、ディアボロス。しかしここで手を出せば、我々の信仰は台無し……出方を伺うとしましょう」)
 正々堂々とした登場のおかげで、奴らは黙って反証を見届けざるを得ないのだ。

「宮殿を破壊したのは事実です。ですが、こちらをご覧ください」
(「そろそろ本領発揮といこうか。そっちは任せたよ、聖」)
 聖が投影された映像を指差、アイコンタクトする。竜はこくりと頷き、素早く機器を操作した。すると、築地配給神殿襲撃の際に、ディアボロスたちが行った食糧配給の様子が映し出される!
「これは……!」
 再びどよめく人々。
「よく考えて頂きたい。目的がテロなら、なぜ食糧を持ち込んだのかを。悪を敷くなら、独占すればいいのです。還元する必要はありません」
「た、たしかに」
 筋の通った主張に、人々は呻いた。真に彼らのことを考えて積み重ねてきた行いが、連鎖した証だ。

「詭弁ですね」
 しかしそこで、ウォリエルが口を挟む。
「……どういう意味でしょうか?」
「あなたがたは、我々を妬み、人々の感謝を集めるために自作自演をしたのでは? なんという醜悪で下卑た考えでしょう。やはりあなたがたには、愛が必要なのですね」
(「うわぁ……よそにやられると、すごーく腹立つなあ、これ!」)
 針小棒大とはまさにこのこと。ウォリエルは、ディアボロスが破壊行為をしたという事実を巧みに利用している。
 一方的にレッテルを貼り、会話のイニシアチブを握って反論の余地をなくすつもりだ。
 しかも、そんな連中さえ愛するという器の大きさのアピールも忘れない。狡猾な天使である。

 竜は怒りを抑えつつ、さらに機器を操作する。
(「ちょっと流れが違うけど……そっちがその気なら、徹底的だ」)
 竜が新たに流したのは、他区での大天使の様々な蛮行の再現VTRだ。
 あるいは、ディアボロスの活動で信仰が揺らぎ、天使に対する不安を口にする人々の声を矢継ぎ早に流す。
「本当に天使が正しいなら、こんな風にあちこちで疑問の声が挙がるなんてこと、あるかな?」
 竜が不敵に言い放つと、ウォリエルは笑みながら彼を睨みつけた。

 再び会話の流れを取り戻すと、聖はやおら突然両膝を突いた。
「それでもなお皆様の溜飲が下がらないのなら。僕はなんでもします」
 そして彼は、地面に額を叩きつける勢いで土下座したのだ!
「き、君!」
「石を投げようと、火あぶりにしようと構いません。僕ひとりの犠牲で叶うなら本望です」
 まだ若い少年が、躊躇いもせず土下座をするという事態に、人々は困惑する。
 良識ある大人なら、こんな光景が異常であると思わないはずがないのだ。
(「やっぱりすごいな、聖は。打ち合わせ通りではあるけど」)
 と思いつつ、竜はさらに追い打ちをかけた。
「ぼくらは覚悟の上で来てるんだ。口先だけのお綺麗な天使たちに、ここまでのことが出来る?」
「……」
 真っ向からの挑戦。ウォリエルは無言だ。
 くだらないと一蹴するのは容易い。だがそれでは、取り戻すべき信仰は歪なままだろう。それでは意味がない。
「て、天使様……」
「惑わされてはいけません。正しいのは我々なのです」
 女性にそう語りかけつつも、ウォリエルはけして聖を真似ようとはしなかった。

 いや、しなかったのではない。大天使としてのプライドが邪魔して、出来ないのだ。
 一度は完成しかけた宗教的熱狂の気配が、引いていく。人々は何を信じるべきか、判断しあぐねていた……。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
【通信障害】LV1が発生!
効果2【凌駕率アップ】LV1が発生!
【リザレクション】LV1が発生!

カタリナ・スノーホワイト
はーい、ご飯だよー
召喚した大天使サブリエルとサーヴァントのリリアナと一緒に
【口福の伝道者】で増やした食料をいっぱい届けるよ!

んー……難しい話は分かんないけど
ほら、お腹が空いたらちゃんと判断出来ないでしょ?
Mind Educationで納刀したSymphonyからどんどん追加のお料理を出して
一緒に冷静になって考えてみる
団結を試す試練とか、なんかおかしくない?
苦しくなる事が目的だなんて、むしろ苦しいからこその言い逃れで
思い出した! これ多分、カルトの手法って奴ムゴゴゴ……
サブリエルあたりに口を押えられて退散。これ以上いけない

まあ、お腹がいっぱいになってちゃんと考えればわかる筈
本当に悪い奴が誰なのか


ネリリ・ラヴラン
お腹が空いてる人はたぶん今すぐにでも暖かい食事が欲しいかもだから
缶詰やレトルト食品等の日持ちする食品の他に
その場で食べられる食事や甘味、スープなんかも持ち込みたいね

【口福の伝道者】でそれらを増やして
皆に行き渡るように配って行くよ
人数が多そうなら、順番待ち中に食べられるようにおにぎりやスープを出そう、甘いのが良い子には餡団子

個人的には、どちらが食料を配るかだなんて小さい事って思うんだよ
ここでお腹を空かせてしまってた皆をほおっておいてまで
”誰が”を気にするのが大事だとは、わたしは思わないもの

なので、もし天使様達がきちんと配給に来てくれたら
それはそれで有難く頂いちゃって欲しい気持ちだよ


●思考には栄養が必要
「……それにしても、なんだ。こんな場所で話していると、余計に腹が減るな……」
 集まったうちの誰かが呟くと、人々は「余計なことを言うな」とばかりに溜息をついた。
 考えないようにしていた空腹が、いまさら彼らを苦しめる。ウォリエルは頭を振った。
「嘆かわしい……それもこれもすべてディアボロスが……」
 彼が言いかけたその時、新たにふたりのディアボロスが現れたのである。

「ナイスタイミングかな? みんなに食事を持ってきたよ」
「たくさんあるから三振してね! リリアナも手伝って!」
 ネリリ・ラヴラン(★クソザコちゃーむ★・g04086)と、カタリナ・スノーホワイト(Tears Drop・g05001)のふたりだ。
 カタリナはオラトリオの『リリアナ』と協力し、食糧……ネリリが持ち込んだ、甘味やスープといったすぐに食べられる上に誰にでも受け入れられやすいメニューを配り始める。
「め、飯だ!」
「君たちもディアボロスだろう? 本当にいいのか?」
 人々はすぐに手を出すわけでなく、やや困惑気味にふたりに問う。
「んー……難しい話はわかんないけど」
 カタリナは頬に人差し指を当て、しばし考えたあと答えた。
「ほら、お腹が空いたらちゃんと判断できないでしょ? だからまずは食べてから考えるといいんじゃないかな!」
「うんうん。それに個人的には、どちらが食糧を配るかなんて小さいことって思うんだよ」
 ネリリはカタリナの言葉にこくこく頷いて、自論を述べた。
「えっ? でも、あなたたちは天使様と敵対してるんじゃ……」
「それはまあ、そうだけどね。わたしたちと天使様たちの間のことは、みんなには関係ないじゃない」
 ネリリのあっけらかんとした言葉に、人々はテーブルごとに顔を見合わせ、言葉を失った。
 ウォリエルの言葉は筋が通っている。だが、彼の主張は「自分たちを信じろ」……つまり正当性をアピールし、ディアボロスを一方的に敵対者と決めつけるものだった。
 対してディアボロスたちは、決して自分たちが正しいとは主張していない。天使たちの正当性を指摘し、あくまで人々の頭で考えることを求めている。

「お待ちなさい。毒が入っているかもしれません、テロリストの施しなど受けるべきではありませんよ」
 ウォリエルが言うと、人々は納得しかけた。が、ネリリとカタリナは、こっそりにやりと笑う。
「それってつまり、わたしたちが食べたら心配ない、ってことだよね!」
 カタリナは嬉しそうに言うと、手に持っていたプリンをぱくりと一口。
「ん~っ、甘くて美味し~! みんなもどうぞ!」
 実のところ、ディアボロスが食べるのは何も問題がない。というよりむしろ、【口福の伝道者】のトリガーとなるのだから、食べなければいけないというぐらいだ。
 つまり、ウォリエルは墓穴を掘ってしまったのである。カタリナが自ら毒味をしたことで安心した人たちは、我先にと食糧を求めた。
「お、俺にもくれ!」
「私もお願い!」
「大丈夫、みんなのぶんを用意してあるから。順番に並んで待ってね」
 ネリリはにこりと微笑んで、人々をなだめた。

 こうなるとウォリエルとしては困りものだ。ゆえに彼は、直接手を出すことはしないものの、なおもディアボロスを弾劾する。
「人々の心を扇動し、味方につけようなど……あなたたちはどこまで邪悪なのですか!」
「……?」
 ネリリは首を傾げる。
「ここでお腹を空かせてしまってた皆を放っておいてまで、"誰か"を気にするのが大事だとは、わたしは思わないよ」
「なっ……!」
「ていうかそもそも、団結を試す試練とか、なんかおかしくない?」
 カタリナは毒味という名目で餡団子をもぐもぐして増やしつつ、冷静に呟いた。
「苦しくなることが目的だなんて、むしろ苦しいからこその言い逃れっていうか……あ、そうだ! これカルトの手……」
「は、はーい、おにぎりもあるから食べてねー」
「ムゴゴゴ!」
 ネリリとリリアナが、慌ててカタリナを黙らせる。色々問題がありそうなことを言いそうになったからだ。
 きょとんとする人々に対し、ネリリは改めて言った。
「だからね、わたしはもし天使様たちが配給に来てくれたら、それはそれでありがたく頂いちゃってほしい気持ちなんだ」
 みんなが苦しまないのなら、それが一番いい……というネリリの率直な言葉は、満たされた人々の心に深く刺さった。
「お、おのれディアボロス……偽りの愛で人々の目を曇らせるなど……!」
 旗色が悪いことを察し始めたウォリエルは、拳を握りしめて汗を流す。
 だんだんと、彼を見る人々の視線が胡乱なものになっていた。食糧の配給は、反証に大きく味方したようだ!
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【口福の伝道者】がLV3になった!
効果2【凌駕率アップ】がLV3(最大)になった!

フェリックス・ローゼンブルク
さっきの謝罪からここまで、カメラを持ち込んで収めてみたいな

愛をもって手を取り合おう、と
貴方は言ったな、ウィリエル
なるほど、では貴方と人々は『対等』なわけだ
だって、慈愛を分かち合うのでしょう?
ところでサンダルフォンは?貴方の上司で中央区の管理者でしょう?
あぁ、貴方がサンダルフォンの謝意を代わりに伝えにきたと。では先ほどの謝罪と、手を取り慈愛を分かち合おうという意志の発言は、中央区の天使の総意であると思っていいのか

素晴らしい!その慈愛に満ちた精神に感服した!他の中央区民と「区外の皆々様にも」伝えなくては!

…許せるわけないだろうな、そんなこと
アークデーモンと他区の天使に知られるのは、恥だものなぁ?


エヴァ・フルトクヴィスト
我々を妬み…ですか。

宮殿を破壊しなければいつまでも。
信仰とやらで食糧などの物資の供給量を決めていたからですよ。

映像で新宿島の援助物資が山積みの倉庫の映像を見せつつ。
アイテムボックスを用いた形で大量の物資が持ち込めることをも証明。
私達は先程の映像でも見ていただいた通り、
いつでも食糧をはじめとした物資の支援をする用意もしているのですが。
宮殿があるから不要、とでも?

見てわかる通りに、人が生きるのに必要な物資を独占し、
人々の感謝を向ける様に仕向けたいのはどちらなのでしょうか?

同じ人として。
差し出す手を掴んで貰うためなら手段は選べませんでした。
大天使様は支配者たる自尊心故に頭も下げられないようですが。


●潮目
 ディアボロスたちの食料配給により、人々の天使に対する疑念は徐々に強まりつつあった。
 注目の温度からそれを感じたウォリエルは、ディアボロスにこれ以上反証させまいと言葉を垂れ流した。
「よくお考えください、皆様。我々はずっと皆様の傍に寄り添い、よき隣人として接してきました。
 突然姿を表したディアボロスは、いわば悪魔の誘惑のようなもの。お願いします、わたしたちの愛を信じてください!」
「……」
 必死な言葉は、人々の耳を否応なくそちらに傾かせる。実際、必死なのは確かだったからだ。

 しかし、だからといって、容赦してやる理由がディアボロスたちにはなかった。
「愛をもって手を取り合おう、と……あなたは言ったな、ウィリエル」
 カメラを手にしたフェリックス・ローゼンブルク(“過分卿”・g07310)が、挑戦的に言った。
「ええ、そうですとも。よもやわたしの愛を疑うつもりですか?」
「いやあ、まさか。私が言いたいのは、つまりあなたと人々は『対等』だということですよ」
「……」
 ウォリエルの表情から、笑みが消えた。
「だって、慈愛を分かち合うのでしょう? 何かおかしな点が?」
 フェリックスはまくし立てる。今しがたのウォリエルを真似るように。
「ところでサンダルフォンは? あなたの上司で、この中央区の管理者なのでしょう?」
「……サンダルフォン様に代わり、人々に謝罪するためにわたしはここにいるのです」
「なるほど。では先ほどの謝罪と、手をとり慈愛を分かち合おうという意思の発言は、中央区の天使の総意であると思っていいのですね」
「何を言いた……」

「素晴らしい!」
 フェリックスは突然、演技がかった仕草で言葉を遮った。
「その慈愛に満ちた精神に感服した! これはぜひ、他の中央区民……いいえ、『区外の皆々様にも』伝えなくては!」
 ウォリエルは目を見開く。フェリックスにとっては、その表情だけで十分だった。
 認められるわけがないのだ。人間どもに自らへりくだったことを、他の連中に知られることなど……!

「私からもひとつ申し上げておきましょう」
 震えるウォリエルに対し、エヴァ・フルトクヴィスト(星鏡のヴォルヴァ・g01561)が言い放った。
「あなたが仰った言葉……天使を妬んだがゆえの犯行、でしたか? それは大きな間違いです」
「……では、なんだと?」
「宮殿を破壊しなければ、あなたたちはいつまでも「信仰」とやらで物資の供給量を決めていたのでしょう?」
 エヴァは機器を操作し、映像を投影した。
 そこには、新宿島に大量に備蓄された、様々な補給品の山が映し出されている。
「なっ! あ、あんなに資材が!」
「ご覧の通りです。私たちは、必要であればいつでも物資の支援をする用意があります。
 食糧であろうと、なんであろうと。皆さんの生活を助けるためならば、いくらでも」
「……!」
 エヴァの赤い瞳が、ウォリエルを睨みつける!
「それともあなたは、宮殿があれば不要だとでも? だとすれば不思議な話です。人が生きるのに必要な物資を独占し、人々の感謝を向けるように仕向けたがっているのは、まるでそちらの方では?」
 ざわめきが生じた。ウォリエルは人々をなだめようとしたが、もはや生まれたさざなみは消えない。

「し、しかしだ。現に君たちが、破壊行為をしたのは確かなんだろう?」
 立派な身なりの男性が言った。
「そこは偽る余地もありませんね。この状況は、私たちが招いたことでもある」
 フェリックスは大げさなほど慇懃に、深く頭を下げる。天使に対しての皮肉だ。
「だから我々は今日ここへ来たのですよ。逃げも隠れもしません。ああ、それとも私も石の標的にしますか?」
「い、いや、そんな野蛮なことは」
「そう、野蛮な行為です。どんな理由があれど、破壊行為など本来したくありませんでした」
 エヴァが嘆息し、続けた。
「ですが、同じ人として。差し出す手を掴んでもらうためなら、私たちはどんな手段でも取る覚悟でいました。
 皆さんを対等な人間として認めているからこそ、一時の混乱と敵意を呑んででもああしたのです」
 深い決意と覚悟を秘めた言葉だった。

 そしてふたりは、ウォリエルを睨みつける。
「……さて、自尊心の強い大天使様はどうお考えですか?」
「ああ、心配はしなくていいよ。一度言葉にした以上、このことはちゃんと区外まで広めておくとも!」
 ウォリエルは拳を震わせ……やがてふっ、と力を抜いた。

「いいでしょう!」
 浮かべたのは、満面の笑みだ。
「どうやらあなたがたには、愛のなんたるかを教えないといけないようだ。その身と魂にね!」
 人々は戸惑い恐怖した。ウォリエルの目は殺意に血走り、これっぽっちも笑ってはいない!
「あーあ、まあそうだろうとも。知られるのは恥だものなぁ? 許せるわけないだろうとも!」
 フェリックスは殺意の視線を浴びて楽しげに笑った。
 隣でエヴァは武装を構える。ウォリエルの背後、トループス級もまたすさまじい殺意を放っていたからだ!
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【植物活性】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!

神那岐・修
戦の場には間に合ったか
ならば業を振るうとしよう

離れては無能故、真正面より敵勢へ飛び込む
一足の間に捉えたら“瞬”にて更に加速、飛び込み雷轟にて撃つ

以後は敵勢から離れず交戦
“真”にて敵勢の動きを捉え、此方を狙う個体との間に他の個体を挟んで遮蔽としつつ各個撃破
“幻”と“瞬”で捌きつつ、“纏”の手刃にて武器や手脚を穿ち、撃った相手を遮蔽とし、時に空を掴んで身を翻し次を狙う

手にする得物が魔術であろうと形を成したのなら砕いてみせよう
実体が無かろうと不都合はない。この手脚は万象を掴み穿ち破る
神にでも祈れ。祈りの時間は短いぞ

※アドリブ・連携歓迎


●雷の如く
 ウィリエルの殺意に呼応した『魔法円の天使』たちが、ディアボロスたちにパラドクスを放とうと力を集める。
 奴らにとって、区民は大事な信仰のリソースだ。間違っても殺すわけにはいかない。
 むしろこれは、邪悪なる敵を討つ絶好の……いや、最後のアピールチャンスというべきだった。ゆえに、その狙いはディアボロスらにのみ絞られている。

 そして神那岐・修(紫天修羅・g08671)もまた、敵だけを見据えて矢のようにまっすぐ跳んだ。
「苦し紛れに魔術を振るうか。しかしどんなものであれ、形を成したのなら砕くまで」
 魔法円の天使の中から一体の敵が飛び出し、手中に風を集める。風は短剣の形に固まり、ぎらりと照明を反射した。
 鋼鉄をも切り裂く、鋭いダガーだ。喰らえば手足など軽く両断されてしまうだろう。
「風で俺の武に先の先を得られるか、試してみるがいい」
 両者は大食堂のど真ん中で、さながらギャングの一騎討ちめいてぶつかり合う!

 魔法円の天使は殺意に顔を歪ませ、修の首を狙って短剣を突き出した。
 わかりやすい攻撃だ。刺突は当たれば致命的だが、直線的かつ点の攻撃であるため、命中しにくい。そのぶんスピードに優れる。必要なのはどこを狙うかを見切ること。
 修はたゆまぬ鍛錬で得た武功と観察眼を発揮し、天使の手首を弾くことで刺突の軌道をそらした。体捌きで回避しなかったのは、さらに前に進むため。軌道をそらされた風の短剣が、肩口を切り裂く。骨まであと一歩まで切り裂かれた傷口から血が噴き出し、床を汚した。

 だがその瞬間、彼は目論見通り間合いに踏み込んでいる。
「神にでも祈れ。祈りの時間は短いぞ」
 ズン! と床を踏みしめ、威力を倍増する。まるで相手のそれを真似るかのように、握られた拳の形は手刀……いや、槍というべきか。神速の貫手が空気を焦がしながら奔った!

 修の言葉は正しかった。
 魔法円の天使は、捨て身の貫手を胸部に受け、抜けた手首が背中から血まみれで顔を覗かせる。
 修は無造作に腕を引き抜くと、残心を切りながら天使の軍勢を威圧した。
 雷の如き武技。それよりもなお鋭きは、研ぎ澄まされた彼の双眸と、その奥に宿る鋼のような敵意だった!
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【怪力無双】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!

十埼・竜
【わくモ】
さあ、そろそろ立ち上がろうか、聖
どうやらこのシチュエーション、きみの得意分野に縺れ込んだよ!

(ぼくは耳がいいし、よくなくても多分わかる)
(この人すごーく白々しいな)
あの流石に命乞いはこの状況、無理では…ほらめちゃめちゃヘイト集まってる!
ああもう、これカバー入ったほうがいいよね!?

"波"だったら何だって掴んでみせる
奴らの精神波を「I.C.F.5800」で受け止め
〈情報収集〉解析、〈早業〉で波を弄って魔改造
あいつらの脳を揺さぶる形に変換し、叩き返して〈精神攻撃〉!
戦列乱したら──あとは聖、任せた!

(…カバー入んなくてもこの人普通に強いな…?!)
あっ はい…
…ぼくもそう思うよ、聖


奉利・聖
【わくモ】
ようやくシンプルな問題になってくれましたね
申し訳なさなんて欠片も思ってないくせに、慣れない謝罪なんてするからそうなるんですよ
それでは──暴力の時間です

魔法円による攻防一体の戦術…悪くはありませんが
竜の手管で乱されたその隙は致命的ですし
何より──我が一投はあらゆる障害を砕く
『天破ノ槍』 極大貫通と急速崩壊の錬気を宿している
これによる龍骨の<投擲>で、魔法円ごと貫き殺してやりましょう

勿論龍骨だけじゃない…そこらに石くれであろうと、投げられるものであれば致命的な一投となり得る 消え去れ…偽物の救世主め
ところで竜?その人…なんだかこう
只者じゃなさそうな雰囲気ありませんか?僕の気のせい?


フェリックス・ローゼンブルク
【わくモ】
わぁ、すごい笑顔でピキピキしていないか?
私は親切で言ってあげただけなのにな…やれやれ
じゃあ私はこれで…嘘嘘、冗談だ ちゃんとやるよ

それでは無様な命乞いでも見ていってくれ
敵に背を向けて逃げたって構わないんだ 私にはプライドが無いのでね…君達とは違って プライドの高い者は『恥』に耐えられないのさ
ほら、目が引き付けられてる間に…事は進行しているというのに
既に血は広く浸透し、奴らの足元が罠に囲まれてるのだ
罠が手足を拘束し、ぐいっと地に倒し…複数のスパイクがその身を貫くだろうさ
そも、拘束の段階で心強い味方が片付けてくれよう

いやはや助かった 私は戦いが苦手でね
よければ君達を大いに頼らせてもらうよ


●その傲慢を叩き潰せ
 修の乱入をきっかけに本格化した戦線。人々は突然の非日常……つまり暴力を目の前にして、恐怖の叫びを上げた。
「あー、皆さん落ち着いて! 大丈夫です、皆さんはじっとしていてくだされば安全ですよ!」
 十埼・竜(スカイセンサー・g02268)は"音酔い"をこらえて片手を頭に当てながら、人々をなだめる。
 天使が彼らに危害を加えることはない。信仰の源を自分たちから殺せば、サンダルフォンの怒りはいよいよ爆発するだろう。
「その通りです皆さん、どうか我々を信じてください! これなる邪悪な者どもを今に打ち砕いてさしあげます!」
 ウィリエルもまた、キラキラとした笑顔で呼びかけた。もっともその瞳は、これっぽっちも笑ってはいないが。
「わぁ、すごい笑顔でピキピキしていないか? 私は親切で言ってあげただけなのになあ」
 ある意味激怒の引き金を引いた――もっともそれがディアボロスたちの狙いなので問題はないのだが――当人ことフェリックス・ローゼンブルク(“過分卿”・g07310)は、さも心外だとばかりに両手を広げて頭を振った。
「やれやれ。こうなっては、私としては恐ろしくて仕方ない。じゃ、私はこれで」
「いやいやいや! ここからですからね、ここから!」
 当然のようにそそくさと帰ろうとするフェリックスに、竜は思わずツッコミを入れた。
 あの白々しい振る舞いといい、この男はかなり「いい性格」をしていると思った。

「ほら、聖! そろそろ立ち上がらないと! このシチュエーション、きみの得意分野にもつれこんだよ!」
 竜の呼びかけに、奉利・聖(クリーナー/スイーパー・g00243)は身体を起こす……表情はさきほどとは別人のようだ。
「ようやくシンプルな問題になってくれましたね。申し訳なさなどかけらも思ってないくせに、慣れない謝罪なんてするからそうなるんですよ」
 聖の呆れた指摘に、ウィリエルはいっそう笑みを深める。
「さあ、邪悪なディアボロスたちに愛を与えてあげるのです!」
「問答無用ですか。まあそうでなくては困ります」
 聖はぱきり、と強張らせた指を鳴らした。
「それでは、暴力(しごと)の時間です」
 静かに放たれた殺意が、天使どもの殺意とぶつかりあい、大食堂の窓ガラスにぴしりとヒビを走らせた。

「いや、ここは私に任せてくれ」
 と思ったら、そこでいきなり待ったをかけたのがフェリックスだ。
「え、いやでも今逃げようとして」
「そうだよ、私はキミたちのように勇敢じゃないからね。逃げようと思ったがキミに引き止められて、そのチャンスを失ったようだ」
「ぼくのせい!? なんで!?」
 ペースに翻弄される竜をさておいて、フェリックスは殺気立つ天使たちの前に立ちはだかった。
 何をするつもりなのかと、魔法円の天使は防御シールドを展開しながら訝しむ。フェリックスは、おもむろに膝を突いた。そして……!

「……助けてください」
「は???」
「えーーーー!?」
 唖然とする聖、そして声を上げる竜。
 さもありなん。フェリックスはさきほどの聖を真似するかのように、その場で深く土下座したのである!
 おまけに、天使たちに命乞いをしているではないか。なんたる無様!
「いまさら慈悲を乞うのですね、ディアボロスよ。なんと愚かな」
 ウィリエルは傲慢な笑みで、フェリックスを見下した。
「その無様さ、見るに耐えません。愛を知らぬ悪はこうも哀れだとは……」
「ああ、私にはプライドがないのでね。『恥』に耐えられないどこかの誰かと違って、生き延びるためなら敵に背を向けるし命乞いだってするさ」
 ウィリエルの目尻がぴくりとひくついた。
「というわけで、助けてくれ。いや、助けてください。最悪、そこのふたりはいいから私だけでも」
「当然のように売られてるし!?」
 竜はツッコミを入れつつ、天使の様子をうかがう……敵の魔法円は解除されていない。当たり前だ!
「殺しなさい」
 ウィリエルが冷酷な命令を下した!
「ですよね! ああもう!」
 魔力が放たれようとしたその瞬間、竜がカバーに入った。

 魔力の光弾が、竜から放たれた見えない波によってかき乱され、バラバラな方向に飛び散る。
 魔法円の天使は防御シールドを展開したまま、竜を睨みつけた。人間には理解不能な神の智慧を孕んだ狂気の精神波が、竜を襲う。
「ぐっ……! 感度、良好だね……"波"だったら、なんだって掴んでみせるよ」
 頭を両手で抑えながら、竜はにやりと笑った。
 浴びせられた精神波をその場で分析し、逆位相の波動に変えて投げ返したのだ。
 見えない力の波がこだまのように広がると、魔法円の天使は頭を抑えて悶え苦しんだ。かろうじて影響を受けなかった天使は、今度こそ魔力の光弾でフェリックスを処刑しようとする、が!

「残念だったね。とっくに事は進行しているんだよ」
 フェリックスは立ち上がった。よく見れば、彼を中心に蜘蛛の巣を思わせる血の模様が広がっている。
 当然それらは、壇上にも届いていた。ウォリエルはとっさに翼を広げ上空に跳んだ。魔法円の天使はそうもいかない。
「私が本気であんな命乞いをすると思ったかい? まあ本気だったが、しなくてもよさそうなのでね」
 ザザザザ……と、血の結界は茨のように立体化し、鋭い血のスパイクが突き出す。
 魔法円の天使は足を貫かれ、何体かが防御シールドを解除してしまう。痛みに耐えながら光弾を放った敵もいたが、両手で頭を抱えてみっともなく床を転がったフェリックスは、ダメージを抑えることが出来た。
「いたたた。やれやれ、あれで無力化とはいかないのか。私死んだんじゃないか?」
 フェリックスは光弾の命中箇所を抑えながら、わざとらしく言う。
 こんなあからさまな罠に、普通はひっかからない。だが"何故か"敵は見落としてしまっていた。
「嗚呼、幸運だな。私は運だけはいいんだ」
 フェリックスは嘯いた。
「なにせ、頼りになる仲間がいるんだからね」
 その台詞で、天使たちは引き戻された。3人目のディアボロスはどこに?

 答えは、頭上だった。
「魔法円による攻防一体の戦術、悪くはない」
 気功術によって、天井近くまで高く飛び上がった聖は、冷たい瞳で敵を見下ろす。
「ですが、それだけだ。評価には値しないし、僕を仕留めるには足りなさすぎる」
 魔法円の天使は、咄嗟に防御シールドを展開した。逃げようにも、足を貫く血棘がある。
「聖……任せた!」
 竜は再び精神波を放った。何体かが激痛に苦悶し、シールドを解除してしまう。
「利口ですね。ないほうが苦しまずに死ねますよ」
 ブンッ、と『屍龍帝ノ魂』を無造作に投げつけると、それは隕石じみた速度で着弾! 地響きがホテルを揺らし人々を恐怖させる。
 もはや魔法円の天使は、跡形も遺さず消滅していた。
「消え去れ、偽物の救世主め。お仲間もじきに送ってあげますので、ご心配なく」
 反撃の魔法弾による痛みも意に介さず、聖は無感情に言った。

 愕然とするウィリエルをよそに、3人は駆けより集まった。
「いやはや助かった。私は戦いが苦手でね。よければ君達を大いに……どうしたのかな?」
 顔を見合わせる聖と竜の視線に、フェリックスは首を傾げる。
「……この人、なんだかこう、ただ者じゃなさそうな雰囲気ありませんか? 僕の気のせい?」
「うん、ぼくもそう思うよ、聖」
 呆れと得体の知れなさに対する警戒心がないまぜになった表情に、フェリックスは肩をすくめる。
 崩れた壇上に降り立ったウィリエルは、血走った目で「愛なき者ども」を睨んだ。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​
効果1【無鍵空間】LV1が発生!
【アイテムポケット】がLV3になった!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
【先行率アップ】LV2が発生!

十埼・竜
【わくモ】
(さっきの命乞いが半ばマジであることを聴き取っている)
…まあ、でもそっか
「嘘」ってのは使えるね
巻き込む?まっさかー大丈夫大丈夫運がいいんでしょ?
ぼくどころか聖まで売られた恨みとかじゃなくって、本当に

ぴしぴし、ばきばき、建物が砕ける"轟音"
低周波を操って振動も再現
『ねぇ、嫌な予感しない?
例えば──空が落ちてくるとかさ!』
それを一瞬でも信じさせたら、虚像は共有される
実体化した崩落で舞い散る羽ごとあいつを叩き潰そう
派手に瓦礫落として土煙上げれば閃光も弱まるでしょ?
最悪ぼく、眼やられても耳さえあれば問題ないし

あいつ、やっと這いつくばる気になったんじゃない?
…それじゃ、ちゃんと繋いで下さいよ!


奉利・聖
【わくモ】
所詮は救世主気取りの圧政者だ
無意識に人々を下に見て、一時の恥すらも耐えられない
皆さん、あれが天使の本性だ
これで理解出来るでしょう…生きていきたければ信仰していろ、盲目的に
言葉はなくとも伝わるはずだ

不当な搾取に抗いたいのなら、どうか願って
僕がその【託されし願い】を背負って、奴らを消し去ります
歌は面倒だ 最初から耳を潰して対処しておきます
竜の瓦礫が降り注ぐタイミングで距離を詰めましょう
そしてトラップの終着点は…そう、僕ですよね そういう眼をしていた
──『遍く死を紡ぐ者』
僕には見えている 理解できる どうやったらこの下劣な天使が死ぬのかを
狙うはそれのみ 決断的一撃で以て致命を与えんっ!!


フェリックス・ローゼンブルク
【わくモ】
い、嫌だなぁ……そんな顔をしないでくれたまえよ
ほんの出来心というか、私って保身に走りがちで…あ、これ私ごとやるつもりだね?はー、もうしょうがないな

先の戦いで浸透した血を再利用しようか
水面下で全ては編まれている ではそれがどのように致命的な瞬間を与えるかだが…少年、君の手管を『始点』にしようか
瓦礫を黙って受け続けるわけにもいくまい 故にどこかに自分の立ち位置を移したいはず
もうすでに、取り囲んでいるよ…次の仕掛けがね
そして罠は罠へと繋がり、最後には──死神が待っている
私はちょーっと中継ぎをやっただけ 恨まないでおくれよ

ふっ、キマった…あだっ
瓦礫が頭に降ってきた…私何も悪いことしてないのに


●因果応報(ふたつの意味で)
「……」
 十埼・竜(スカイセンサー・g02268)の絶対零度の視線が、フェリックス・ローゼンブルク(“過分卿”・g07310)に突き刺さる。
 痛い。マジで痛い。物理的に作用するパラドクス使ってんのかってぐらいグサグサ来る。良心は痛まないけど。
「マジだったんですね?」
「い、嫌だなぁ……そんな顔をしないでくれたまえよ」
「マジだったんですよね? 半分ぐらいは」
「だからね、ほんの出来心というか、私って保身に走りがちで」
「マジだったんですよね?」
「すみませんでした……」
 フェリックスは年下相手にも弱かった。辛い状況や苦しい立場になると即逃げを打つ、一番アレなタイプだ。

 コントやってるふたりをよそに、奉利・聖(クリーナー/スイーパー・g00243)は人々をじっと見つめていた。
「どうですか皆さん、ご覧になったでしょう」
 人々は唖然としている。
「あれが天使の本性だ。所詮は救世主気取りの圧制者に過ぎません。無意識に人々を下に見て、一時の恥すらも耐えられない」
 ウィリエルは慈愛の笑みを崩さない。もはや、怒りは一周回って振り切れていたからだ。
「それでも生きていきたければ信仰していればいい。盲目的に」
 突き放すような言葉が、人々に突き刺さる。

「ですが、不当な搾取に抗いたいのなら、どうか願って。僕がその願いを背負い、奴らを消し去ります」
 もはや言葉は不要だった。だが、あえて発した聖の言葉は、なによりも人々の心を強く動かした。
 【託されし願い】を感じる。ディアボロスとは、人々の怒りを背負い戦う復讐者だ。

 世界でもっとも広まった書の神話に曰く、神は言い給うた――復讐するは我にあり。
 全部復讐者が悪い。それでいい。戦いという血腥い暴力に手を染めるべきは、自分のような人間であるべきだ。
 力を振るい暴れる罪をも、聖は請け負う。まるで書の神、創造を司る大いなる主の如く傲慢に。
「おふたりとも、そろそろ始めますよ。気を引き締めてください」
「あ、うん。……え、あれ? これぼくもふざけてた判定されてるやつ??」
「ダメだなぁ少年、戦いの場では真面目にしてないと」
「気を引き締めてくださいね」
「「はい」」
 いまいちカッコはつかなかった。

 ウィリエルはおもいっきり深呼吸し、とびきりの笑顔を見せた。
「ご安心ください、救われぬ悪しき者たちよ。わたしの愛は平等です。たとえ許し難き敵でさえ救ってあげましょう」
「よく言うよ。どこかの誰かみたいな嘘つきぶりだ」
「……待ってくれ、それって私のことでは」
「まあ、でもそっか。「嘘」ってのは使えるね。うん」
「なあそれやっぱり私のことだよな??」
 しつこいフェリックスをシカトしつつ、竜は両手をヘッドセットに添え、目を閉じる。
「嘘ですって? わたしがいつ嘘を……」
「待って。耳を澄ませてごらんよ、何か聞こえない?」
 ウィリエルは訝しんだ。先ほどの騙し討ちを見ている以上、相手にするのは無駄だと判断し、ばさりと白い翼をはばたかせて浮かび上がる。きらきらと七色に輝く光が散った。
「おいおい相手にしてないぞ、さすがに同じ手は二度食わないというやつじゃないか?」
「あなたがあんなことするからいけないんでしょう」
「私は別に嘘なんてついていなかったよ! ……あっいや違う、だから命乞いはマジだったとかそういう話ではなくてね」
 聖の絶対零度の視線がぶっ刺さって苦しむフェリクスの戯言……とは別に、たしかに何かが聞こえた。
 ウィリエルは無意識に耳を澄ませてしまっていた。たとえ罠であるとわかっていても――というよりも、認識した時点で多かれ少なかれ意識は向いてしまうものだ。肉体はそういうふうに出来ている。天使であれ。

「ほら、聞こえるよ」
 ぴしり、ぴし……ぴしぴし、ぱきばき。
 何かが歪み、ひび割れ、崩壊に向かっていく音がした。
「ねぇ、嫌な予感しない? たとえば――」
 ウィリエルは相手にしてはいけないと理性で警鐘を鳴らす。だが感覚は冴えてしまう。一度聞こえたものを意識的に無視することは難しい。
 羽とともに光が舞い散り、雪のように降り注ぐ。竜の視界は白く灼けた。意識が遠のく。だが彼は言った。

「……空が落ちてくる、とかさ!」
 直後、びきっ!! という、致命的な音がした。
「バカな!?」
 ウィリエルは頭上を仰いだ。誰も触れていないはずの天井の一部がひび割れ、崩落したのだ!
 起きた物事に言及するのではなく、言葉から物事を起こす。まさしく逆説(パラドクス)だ。因果は逆転し、虚像は共有された!
「おい待て何も見えないんだがこれもしかして私ごとやるやつだな!?」
 で、そのウィリエルの下にフェリックスもいた。だって閃光で目灼かれたから。
「はー、もうしょうがないな……なら少年、君の手管を『始点』としよう」
 ガラガラと音を立て、瓦礫が飛礫のように落ちてくる。
 ウィリエルは、飛行していたのだが仇になった。人間ほどの大きさもある瓦礫を背中に喰らい、血を吐きながら態勢を崩す。必然、回避のために危なっかしく飛ばざるを得ない。

 避けて避けて、低く低く。ウィリエルはどこかへ導く何者かの作為を感じた。
(「誘導されている? あの男のパラドクスか!」)
 フェリックスに八つ当たり(でもないが)の光を浴びせてさらに苦しめつつ、ウィリエルは神の慈愛の歌で喉を震わせた。
 聴く者の心を蕩かせる天使の歌。もはや騙されるものはいない。だが、それが害とわかっていても、浴びれば心は反応する。竜の言葉が虚像を生み出したことと同じだ。

 ウィリエルにとって最悪だったのは、よりにもよってその相手が聖だったということ。
 耳から血を流し、だが表情は不変。パラドクスのダメージを意に介してもいない。定めた仕業はだた一つのみ。
「ほうら、最後には死神が待っているぞ」
 フェリックスは目元から溢れた血を拭い、にやりと笑った。ウィリエルはぎろりと睨みつける。
「おっと、私はちょーっと中継ぎをやっただけだ。恨まないでおくあだっ!」
 ゴイン! と真上から落ちた瓦礫が頭にド命中し、格好はつかなかった。ウィリエルには嘲る暇もない、なぜなら聖の間合いに誘い込まれていたからだ。

「あなたは隣人に対する敬意が足りなかった」
 聖が言った。
「だから、人々はあなたの隣に寄り添わない。「自らを愛するように、あなたの隣人を愛せよ」というやつですよ」
 何が来るかはわかる。わかるが回避出来ない。フェリックスのパラドクスがそういうふうに導いている。
 何をすべきかはわかる。わかるから考える必要はない。聖のパラドクスはそういうふうに結果を引き寄せる。
「お前の隣に立つのは――」
 跳んだ。拳を握りしめ、腰だめに。呼吸が気息を整え、経絡を巡った気が、拳を鋼より硬くさせた。
「死(これ)だけだ」
 それは優しき眠り。されど下劣なる者には災厄のなお最悪を。
 全力を以て繰り出された一撃は、ウィリエルの鳩尾に弾丸じみて叩き込まれた。
「ぐはッ!?」
 天使はくの字に折れ曲がり吹き飛ばされる。壇上の壁に激突。衝撃が全身を駆け抜け、しかし苦痛は抜けていかなかった。
 床に落下し、ウィリエルは血を吐いて苦悶した。因果応報を味わい悔いる地獄の時間が与えられた。赦されはしない。
「ああ、ようやく這いつくばる気になったんだね」
 竜は鼻で笑った。苦悶する天使の背後、ディアボロスは悪だと伝える映像は、壁ごt砕けていた。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​
効果1【平穏結界】LV1が発生!
【託されし願い】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV2になった!
【アクティベイト】LV1が発生!

カタリナ・スノーホワイト
おっと、逃がさないわよ?
空中戦で逃げられない様相手を抑える
通信障害で援軍も呼べないでしょ
ここで足止めさせて貰うわ、大天使様!

大体アンタが悪いのに♪
全部復讐者が悪いなんて~
言わないで天使様♪
ふざけた替歌を歌唱しつつ敵の攻撃を引き付けて時間稼ぎ
その隙にリリアナにひっそりと手早く布石の香水と羽根を撒いて貰う

って、危ないじゃないのもう!
直視して目を焼かれない様距離を取り
Buster Signsを長銃形態に変形し浄化の光で迎撃
あくまで牽制、リリアナの動きを悟られない為――そして!

掛かったわね、布石は撒いた……後は討つだけ!
布石から発する結界術で敵の動きを封じてターゲットロック!
全力の攻撃でやっつける! 


神那岐・修
では討つぞ。大天使とやら
納得するまで祈れたか

最速で近接
離れては無能故、真正面より敵勢へ飛び込む
一足の間に捉えたら“瞬”にて更に加速、飛び込み斬風にて断つ

声が思考を曇らせるか
だが問題はない。魂の奥底まで刻み込んだ武は己が意志の外で応える
幻影が万物を撃つが如く。故に“幻”
例え俺の意識を刈り取ろうと肉体は止まりはせぬ

そも修羅という名の破壊神が棲み着いたこの魂
神に頭を垂れる筈もなし
修羅の魂を以て自身を書き換え影響を排し尚攻める

“真”の眼で捉え“瞬”と“圓”の動きで追い詰め脅威を払い、“纏”を合わせた手刃足刀にて貫き穿ち斬り捨てる
大層な名乗りもこの場で散らして逝け

※アドリブ・連携歓迎


エヴァ・フルトクヴィスト
自分達を崇拝し信仰を向けて貰い、
それを上位者として優越に浸っていて。
崩れればこれは違うと壊して、畏怖で信仰を人々へと縛る。
取り繕っても、それが貴方達の本質。
愛などと軽々しく!

精神集中し高速詠唱で魔法陣を素早く生み出して統率しつつ、
相手の攻撃も包むようにして殺気から相手の攻撃を看破。
魔法陣からの砲撃で閃光を遮りながら、魔法陣の効果による残像やフェイントを駆使して回避を試みて、結界術の魔法陣を急所に展開して致命傷は喰らわない様にして。
そして弾幕の連撃で相手を吹き飛ばして。
自分が最初に立っていた場所へ向かう様に誘導。
そこで撃滅陣の集中砲火を喰らわせます!

中央区の人々を愛で弄ぶのはこれでお終いです!


●信仰の終わり
 大食堂には、水を打ったような静寂が訪れていた。
「が、は……ぐ……っ!」
 超然と慈愛を振りまく大天使は、どす黒い血反吐を吐きながら壇上で悶え苦しんでいる。
 一抹の真実を孕んだ欺瞞の映像は、銃痕めいて砕けた壁のひび割れによって、いびつな大天使の本性をあらわにしたかのように、歪んだモザイク模様をしていた。

「己の行いの報いです、大天使よ」
 エヴァ・フルトクヴィスト(星鏡のヴォルヴァ・g01561)は厳しい表情で言い放った。
「自分たちに崇拝と信仰を向させ、それを上位者だと優越に浸っておきながら、自らの足場が崩れれば「これは違う」などと嘯き破壊と暴力を振りまく……。
 そうして人々を畏怖させ、さらなる信仰を得ようとする浅ましさこそが、あなたたちの本質に他なりません。そんな輩が、慈愛などと軽々しく口にするとは!」
 古今東西、世界に神の教えとされるものは数あれど、それはどれも――偽善であれ欺瞞であれ――他者に手を差し伸べ、互いに与え合うことを美徳とし、そうあれかしと説いている。
 愛とは与えること。無論、過ぎればただの害悪となろうが、少なくとも奴らの仕業が愛と呼べないことは誰でもわかる。
 そう、当然なはずなのだ。だがクロノヴェーダの支配は、あって当然の人々の判断さえも奪い去る。心の自由をも。
 エヴァは憤っていた。これこそが、己が滅ぼさねばならぬ圧制なのだと、改めて痛感したからだ。

 死にかけの芋虫のようにもがくウィリエルが、苦悶しながら立ち上がる。
「……報い、などと。慈愛を振りまいてきたわたしが受ける筋合いはありませんね」
 心の底からの台詞だった。ウィリエルの中で、人間を見下すことと敵すらも「愛する」ことは矛盾しない。
 人類では理解不可能な精神構造だった。クロノヴェーダとはそれゆえにわかりあえない。
「そうか。ならば祈れ、大天使とやら」
 神那岐・修(紫天修羅・g08671)は能面めいた無表情で言った。
「そして納得できたのならば、あとは完膚なきまでに討つ。大層な名乗りもこの場で散らし、神の身許とやらに逝くがいい」
 みしりと、握りしめた拳が鋼鉄のような異音を発した。
 無窮の鍛錬と武功を経た修の拳足は、鋼にさえ勝る。無手を以て万物を砕く、物理法則に矛盾した力。パラドクスの名に相応しい、異能にまで昇華された絶無の武だ。
「あ、ちなみに増援なんて呼ばせないし、アンタを逃がしもしないわよ? 手を出した時点でもうおしまいなのよ」
 金髪をこれみよがしにかきあげて、カタリナ・スノーホワイト(Tears Drop・g05001)がふふんと鼻で笑った。
「だいたいアンタが悪いのに♪ 天使様、どうか言わないで、全部復讐者が悪いだなんて♪ ……なんてね?」
「ふざけた、ことを抜かす方々です……やはり慈愛を以て救済してさしあげねば……」
 ウィリエルは血を吐き捨て笑った。広げた翼が後光のように白く輝き、威圧的にディアボロスを睥睨する。

 ちらちらと雪のように舞い散る光の粒の中へ、修が最初に切り込んだ。
 卓越した観察眼と身体能力で光を躱し、稲妻のようなジグザグ軌道を描きながら間合いを詰める。しかし!
「聞きなさい、愚かで哀れな敵対者よ! わたしはあなたを、大いなる慈愛で包みましょう!」
 大気を震わせる歌声が、ディアボロスの心を蕩かせる。どれだけ心を強く保とうと、甘言で人々を弄してきた大天使の力には抗えないのだ。
「くっ……瀕死の状態で、まだこれだけの力を……!」
「眩しいしやかましいし、わたしはあんまり近づきたくないわね。ほらほら、悔しかったら狙ってごらんなさい♪」
 エヴァは精神を沈静させ、研ぎ澄まされた思考力で集中し素早く呪紋を詠唱する。すると彼女の眼前に魔法陣が生じ、左右に展開する。数え切れない魔法陣は、エヴァの意のままに陣形を広げ、ウィリエルを上部と左右の三方向で包囲した。
 対してカタリナは後ろへ跳ぶ。閃光の影響から目を保護しようという狙いだが、パラドクスに距離の多寡は存在しない。しかし、彼女の「敵の攻撃を惹きつける」という意図は功を奏した。ウィリエルの血走った目は、修よりも彼女に集まっている。

 そう、ウィリエルは修に注意を払っていなかった――少なくとも、本来彼を警戒すべきレベルには達していなかった。
 自ら近づいてくる愚か者など、慈愛の歌で蕩かせてしまえばよい。愛なき悪人は、皆そうて跪いてきたのだから。
「言ったはずだ。もはや討つまでと」
 だが修は止まらなかった。魂にまで染み付いた武の真髄は、たとえ心を蕩かせられたとしても、無意識レベルで肉体を突き動かす。
 意思と肉体の乖離は、強烈な負担となって現れる。目から血が溢れ脳が屈服を求めても、身体は止まらない。まるで人間の形をした駆動機械のようだった。
「なっ!?」
 がら空きの胴に、閃光を思わせるスピードの連打が叩き込まれた。すでに強烈な一撃で負傷していた胴体へのダメージにより、ウィリエルはぞっとする量の血を吐く。己の血が清廉な白い衣を汚しても、嘆く余裕すら与えられない。

 ウィリエルは修の連打から逃れようと、もつれるように空を舞い、光の粒をあちらこちらへばらまいた。
「あーもう、動くんじゃないわよ!」
「その通りです。彼女が言っていたでしょう、もう逃げ場はないと!」
 エヴァの魔法陣が光り輝き、見えない結界を展開する。壇上は内向きの牢獄と化した。魔法陣の中央に、ブラックホールを思わせる空間の裂け目が生じると、様々な武装や純粋魔力の光弾が砲台のように放たれる!
「くっ!?」
「中央区の人々を愛で弄ぶのは、これでおしまいです! 我が師より受け継いだ撃滅陣をその身で味わいなさい!」
 ドガガガガガ!! と、機動力をはるかに凌駕する飽和攻撃がウィリエルを襲う。避けきれずまともに攻撃を浴びたウィリエルは、導かれるように吹き飛ばされる……己が最初に立っていた場所へ。
「そんな、バカな……わたしが、こんな鳥籠に閉じ込められるなど……!」
 ウィリエルはもがいた。無意味に。

「残念ね。わたしに気を取られずに、もっと周りを見ていたらよかったのに」
 カタリナが不敵に微笑む。注意を惹きつけたのはこのためだった。すでに布石は蒔かれていたのだ。ウィリエルはまんまと罠にかかり、修とエヴァへの対処が遅れた。そして、オラトリオの『リリアナ』が戦場にばらまいた香水と羽根。必殺の一撃の呼び水が戦いの最中に配置されていた。
 つまりは、チェックメイトである。
「あとは討つだけ。全力で行くわ、跡形もなく消えなさい!」
 自由を奪われたウィリエルは、嘆き悲しんだ。信仰してもいなかったの神々に救いを求める。しかし奴は天の御遣いなどではない。その姿と名を簒奪し、僭称した偽者だ。
「いっけぇー!!」
 長銃から放たれた浄化の光が、ウィリエルを飲み込んだ。閃光が視界を白く灼き、やがて晴れると……そこにはもう、何も遺らない。

 逆説連鎖戦を知覚できない人々には、何が起こっていたかはわからなかった。だが、どう決着したかはわかる。
「ディアボロス……すまなかった。そしてありがとう。我々の覚まさせてくれて」
「何もかもわけがわからないけど、もう天使を信じてはいけないことはよくわかったわ!」
 人々の声援と感謝の声に、ディアボロスたちは安堵と達成感の籠もった溜息をつき、互いを見やった。
 サンダルフォンの悪足掻きは、もはやこれまでだろう。中央区奪還の日は、目の前まで近づいている。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​
効果1【クリーニング】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
【アイテムポケット】がLV4になった!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV4になった!

最終結果:成功

完成日2023年01月23日