リプレイ
乱獅子・零
【焔(g07134)と】アドリブ歓迎
パイを投げるとか…ここにマスターがいたら
「食べ物で遊ぶんじゃない!」とか怒りそうだな
じゃあ僕は安全地帯から見守っているから、目一杯楽しんでこい
は?いや僕は……うわ危なっ!!?
高速で飛んできたパイを、ディアボロスの身体能力でギリギリ回避
お前、遠慮なく顔面を狙ってきたな…!
いいだろう、売られた喧嘩は買ってやる
焔と違って僕は普段着だが構うか
~仁義なきパイ投げタイム~
…お互いに服も髪の毛もクリームまみれ(ぐったり)
恥も外聞もなくパイ投げまくるのは案外楽しかったがな
…うん、確かに程良い甘さでなかなか美味しい
コーヒーと一緒にゆっくり味わいたい
結局は食い気だな僕ら
乱獅子・焔
【零(g07135)と】アドリブ歓迎
会場のサンタ服に着替える
いや~?どうだろうな?
マスターは意外とこういう遊びにガチで熱くなりそうな気もする!
えっ? 何言ってんだ、零?
お前も一緒にパイ投げするに決まってんだろ!
そーーれっと!!
近くにあったパイを零に向かって思いっきり投げつける
チェッ、先手必勝は失敗か!
わはははは!そうこなくっちゃなー!
~男達の熱いパイ投げタイム~
(尺の都合で大幅カット)
いやー投げた投げた!(大の字)
投げるのに一生懸命で味わっている暇無かったけど
このパイ、結構美味いじゃん!
手についたパイクリームをペロペロ舐める
記念に綺麗なやつをお土産に持って帰りたいかも!
●パイ投げに主を想う
「零、こっちだこっち。もう始まってるみたいだ!」
「はいはい」
赤いサンタ服に着替えて興奮気味の乱獅子・焔(幼き炎帝・g07134)に引き摺られるようにして、乱獅子・零(氷晶の歌姫・g07135)が普段着のままパイ投げ会場のホールに入って来る。
「パイを投げるとか……ここにマスターがいたら『食べ物で遊ぶんじゃない!』とか怒りそうだな」
「いや~? どうだろうな?」
投げる為に用意された大量のパイを見て零が零した呟きに、焔は軽くかぶりを振って返してきた。
「マスターは意外とこういう遊びにガチで熱くなりそうな気もする!」
「あー……」
梓の言葉に、零の口からそんな声が漏れた。
ふっと脳裏に浮かんで来たのは、かつて仕えていた『マスター』と、その『相棒』の顔。
「あの人に引っ張られてやってる内に、熱くなるマスター……ありそうだ」
「だろ?」
同じ顔を思い出していたのだろう。焔は、零の呟きに笑みを見せる。
「そうだな」
懐かしい気分になりながら、零は視線を巡らせ、『飲み物はこちら』と立て札が置かれたテーブルを見つける。
「じゃあ僕は安全地帯から見守っているから、目一杯楽しんでこい」
コーヒーでも飲んでいようと、そちらに向かおうとする零。
零は誤解していたようだが、ドリンクコーナーは別に安全地帯ではない。ただ、コーヒー他のドリンクがあるだけだ。そこでパイを投げてはいけないルールはない。
「えっ? 何言ってんだ、零?」
だから焔はパイを手にして、零の後を追った。
「お前も一緒にパイ投げするに決まってんだろ!」
「は? いや僕は……」
「そーーれっと!!」
振り向いた零の声を遮って、焔がパイをぶん投げた。
勿論、至近距離からである。
「うわ危なっ!!?」
投げると言うより、直にぶつけるように放たれたパイを、よくこれで倒れないな流石ディアボロス、と言うくらいのけ反って避ける零。
「チェッ、先手必勝は失敗か!」
「お前、遠慮なく顔面を狙ってきたな……!」
舌打ちする焔に、零がジトッとした視線を向ける。
その瞳の奥に、冷たい炎が燃え上がる。
「いいだろう、売られた喧嘩は買ってやる」
「わはははは! そうこなくっちゃなー!」
静かに闘志を燃やしパイを取る零に、焔も笑ってパイに手を伸ばした。
●何事も最初が肝心と言う
最初に至近距離で始まってしまったからだろうか。
焔と零のパイ投げは、パイ投げらしからぬパイ投げになった。
「零ぃぃぃッ!」
「焔ぁ!」
パイを取ってはダッシュで1mを切る距離まで間合いを詰めて、そこでパイを投げ合う。
投げたパイが当たろうが当たるまいが、次のパイを取りに駆けていく。
何とも、運動量の多そうなパイ投げである。
「避けるなよ、零!」
「避けるに決まってんだろ、こっちは普段着だ!」
言い合い投げ合う2人の周りから、パイがモリモリと減っていく。
パイがなくなるのが先か、2人のスタミナがなくなるのが先か。
「クリーニングで綺麗になるんだから構う事ないじゃん!」
「構うだろ!」
『マスター』のオカン気質は、零の方に強く出ているようであった。
「いやー投げた投げた!」
スッキリした顔で疲れた体を冷たい床の上に投げ出す焔。
「……疲れた」
その隣で、真っ白になった零がぐったりと椅子に腰を下ろした。まるで「燃え尽きたぜ……」って感じだが、真っ白なのはパイ塗れになっているだけの事である。焔も似たり寄ったりの真っ白具合なので、勝負は引き分けになるのだろう。
「でも、楽しかったろ?」
「まあな。恥も外聞もなくパイ投げまくるのは、案外楽しかった」
焔の弾んだ声に、零は頷き返す。
「ところでさ」
クールダウン出来たのか、焔が身を起こす。
「さっきまで投げるのに一生懸命で味わっている暇無かったけど……このパイ、結構美味いじゃん!」
確かめるように手についたままのクリームを舐めて見て、焔が声を上げた。
「確かに……」
焔と話している内に、零もその甘さに気づく。
顔もクリーム塗れのまま喋っていれば、自然と甘さが口に入って来ていた。
「コーヒーと一緒にゆっくり味わいたい」
そう言えばコーヒーがあったのだと、自分の言葉で零はその存在を思い出す。
再び視線を巡らせれば、『飲み物はこちら』と立て札が置かれたテーブルかなり遠くになっていた。今度こそコーヒーを飲もうと、零は椅子から立ち上がろうと――。
ガシッ。
「零」
またその腕を、焔に掴まれた。
「まだパイ残ってたらさ、記念に綺麗なやつをお土産に持って帰りたいかも!」
――冷凍よろしく。
言外に焔が求めている事を察して、零は苦笑を浮かべる。
「結局は食い気だな僕ら」
「別にいいじゃん」
焔が笑って返して来るように、零もそれが良いと思えてしまっていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】LV2が発生!
効果2【反撃アップ】LV2が発生!
タオタオ・ザラ
【まの黒】まの赤と勝負、負けない
出来るだけ狙いは野郎ふたり
女子の顔にぶつけた日にゃあタオが集中砲火を受ける
知ってるぞ、タオは詳しいんだ
……いや、待て、なぁんでぶつけてないのに狙われてんのかにゃあ!?
しかも味方からも!?可笑しくねえか!?
しょうがねえにゃあお前さんたちタオのこと大好きなんじゃから――……
なんて!言うと!思ったか!!ひとり残らず潰してやんよ!!
残念だったなマティアス
タオの取り柄は顔と金と、少年少女には言えないことだけだ!
ついでに彗藍にはケペシュが付いてる!!なんも問題ねぇ!
発言がアウトだとしても歴史は勝者が作る、勝てばいい
そんでゼキお前、なにひとりで纏めに入ってるんだ逃がすか!!!
印歌・良空
【まの赤】
色違いのサンタ服着てくださってると
敵味方が分かりやすて助かりますね
パイとは言えウチの力で思いっきり投げたら当たった方痛いでしょうか?
女の子は狙えへんのでアリア嬢とサーシャ嬢が味方でよかったわぁ
どなたを狙いましょう?
彗藍嬢に当てるなんてとんでもありません
未成年のケペシュ君やカラス君も罪悪感が……
タオ君は集中砲火受けるでしょうし…
ルーシド君とクーガ君、お覚悟を……!
力加減は致しますけど痛かったらすみませんっ
は。ゼキ君やマティアス君にパイ攻撃が
仇は討たせていただき……う、未成年の方に投げるんはちょっと
ぐぬ。連帯責任で敵チームの殿方(成人済み)の方に全力投球さしてもらいます、ごめんなさい!
サアシャ・マルガリタ
【まの赤】
赤いサンタ衣装に身を包み参戦です!
食べ物粗末にするのはちょっと気が引けるなーと思いましたが、投げる用ならだいじょぶですね!
【まの黒】の皆さん、これでも食らえーですです!
ららとアリアが味方。何でしょう、とてもたのもしい
マティアスは遊撃頑張ってー!
ゼキも当てにしてるですよ、盾役よろしくです!(勝手に背後へ隠れる)
狙いはタオちゃんを中心に、他の男性陣にも隙あらば投げつけるです
すいらんにも…あっダメです、頑張る姿が可愛すぎて手元が狂う…!(男性陣の方へ飛んでくパイ)
銀シャリ、次のパイ持ってきて下さい!(サンタ帽を被ったペンギンへ合図)
んむっ!…甘くておいしーですね
コーヒーもらって小休止です!
マティアス・シュトローマー
【まの赤】
赤いサンタ服を着て参戦
パイを投げても許されるなんて最高のイベント!
ふふん、黒いサンタ服には白いクリームがよく映えそうだなー
おう!…ってゼキの力の入り方も、サアシャのタオへの集中砲火もいろんな念が入ってそう
食らった男性陣にご愁傷様!なんて声を掛けつつ追撃
油断してると足元を掬わr…っ、ぐ!
くそ、誰だよ今俺に当てた奴…狙うならゼキだけで!
前線に立つ彗藍を見れば、まの黒のお兄さん達に向かってブーイングを
へえ、カッコいいのは顔だけなんだ?
さっさと出てきn…っわ!
…犯人はあのお兄さん達です。それからタオにまた保護者会案件が
ケペシュとルーシドを指差し、しょんぼりした顔で良空とアリアに訴えてみたり
ルーシド・アスィーム
【まの黒】から黒サンタで僕参戦!
投げパイって味は度外視な噂ですが…って実食した!?落ち着いた銀シャリちゃんとの違い。美味しい?そっか…(隣でパイを幸せそうに食べるダンペン)
彗藍さんとケペシュくんがカッコいい
お二人の献身を無駄にしない!そしてタオくんはそれフラグっすね、って事で彼の後ろからわたゆきと一緒にパイをどーん!盾にします!
年下のマティアスくんも女の子達も平等狙い打ち!……(少年の煽りを聞き)……成長には試練が必要!(強く投げる)
ふ、これも戦術で(顔に良空さんとアリアさんのパイが命中)いった首ぐきって鳴ったァ!?
何も見えませんがクーガくんはご無事ですか…お互い、モノローグまで頑張ろうね…!
朔・彗藍
【まの黒】
パイを投げる文化が有るのですね
躊躇いますが、頑張るのです!とパイを装備
まの黒の皆は強そうですので頼りになります
お揃いの黒サンタです
タオが女子に投げれないなら私が
でも良空やアリアにぶつけるなんて…(震える手元)
サアシャが怯んでいる……!?
もしや私が先頭に立ってれば
皆さんの盾にもなれ、隙も生まれるのでは!
さあ、遠慮なく投げるですよ……!(両手を広げる)
ケペシュ……!このままではパイ塗れに!
ええと、私も守ります!えいっ!
あ、適当に投げてみましたが
マティアスかゼキ辺りの方に飛んでった気がします
カラスもクーガも凄い投げ方を!
いけいけー!ですよう
ルーシド……お顔が見えなくなってます……
クーガ・ゾハル
【まの黒】
たべものを、なげるブンカか
ちょっともったいない、けどワクワクする
黒サンタにきがえて
まの黒、ファイト―、だ
……すでにすごいイキオイだ
ええと、だれから――ぶわ
やったな、お返しするぞ
男をねらうのか、わかった
両手にひとつずつかまえて、ジャンプ投げ
スイラン、かっこいいぞ
ケペシュのギセイ、わすれない
タオはどのパイ山だろう
こんどは、三ついっぺんに高くなげてみる
どこにおちるか、勝負のセリフは、と
ここで会ったが、ええと――4587年め、だ!
ゼキだ、よし、かこみこもう
ものろーぐ、って何だろう
前はもう見えないが
合間にクリームちょっとなめてみる
うまい
――たのしい
ゼキ・レヴニ
【まの赤】
サンタ服を借り
「まの黒」チームとパイ投げバトル
まの赤ァ!連携して行くぜ!
野郎には力いっぱい投げる!むしろ塗りたくる!
一足先のホワイトクリスマスだ!食らいやがれェ!
無礼講だ、女子にも容赦なく…と思ってたがよ
くっ…彗藍とケペシュが眩しくて投げられねえ…若いっていいなァ…
って何か盾にされてら。仕方ねえお前さん達はおれが守うぶっ(直撃)
すげえ標的にされてる気がすんだがキノセイ?ねえマティアスくんよ??
腹いせにタオ辺りにパイをぶん投げ
あー楽しいなァ
何がって…お前さん達と無事馬鹿騒ぎやってることがよ…
としんみり纏めに入る
本当は人の顔をパイ塗れにするのがクソ愉快なだけだけどな!がはは…がはっ(直撃
ケペシュ・ナージャ
【まの黒】
これって考え方によってはパイ食べ放題のようなものなのでは…?
と妙な食い意地を発揮しつつ
俺は誰が相手だろうと手は抜きません
正々堂々勝負といきましょう
はっ、やってくれるじゃないですか!
楽しいですね
相手チームから猛攻があれば、ついつい戦い好きの血が滾ってしまいます
彗の突飛な行動にぎょっとしつつ
彼女に向かうパイは代わりに全受けします
きっちりマティアス殿にもパイをお見舞いして
まだ纏めるには早いですよ、ゼキ殿
食らえ!
アリア・パーハーツ
【まの赤】
サンタ服でいざ参戦!
まの黒サンタを白く染め上げてやるのだぜ
マティアス君狙うのじょーず、…だいじょぶ?
待って、ららさんの剛速球やば…味方でよかった
サアシャちゃんいけーやれータオさんを潰せー
両手に持って乱舞投げ、喰らえ男性陣!!
どこに当たるかは運次第
メインターゲットはパパン(ルーシド)容赦はない
んぶぇっ、……誰だ顔を狙ったの……おいしい……喰らえ反撃ぃ!
いや待ってなんで前線にいるのすいらんちゃん!?
ケペシュ君かっくいー(遠慮なくパイを投げる)
うお、クーガ君どこから投げてきたの!?
ゼキさんボク様も守って(勝手に背後へ隠れる二人目)
……鼻も口も砂糖まみれ……(こっそりポテチを食べて塩を補給)
帷・カラス
【まの黒】
俺はアップルパイみたいのを想像してたんだが、これが投げる用のパイか?
へぇ、美味そうだ
投げるついでに舐めてみよ
黒サンタ衣装でご機嫌に
着てみたかったんだよなー!これから白くなんのかね
さてお仕事を始めますか!
覚悟しろよと腕捲り
彗藍は勇ましいな、おやケペシュ先輩が男をみせるな!うんうん、美しいものよ
その隙に遠慮なく、投げさせて貰うぜ
タオは紳士だな…男達は任せたぜ
男女構わず、まの黒サンタからのあまーい贈り物だ
ぶわ?!
激突すればパイまみれ
だけどそれが楽しい
わはは!
クリーム塗れだ!上手いし美味いな!
やるな、まの赤の皆
クーガの三つ投げを真似してみたり
この投げ方もいいな?
まだまだお楽しみはこれからだ!
ノスリ・アスターゼイン
ツリーが無いと聞いたので
緑色のモミの木総柄のアグリー・クリスマス・セーターを着こんで
ツリーに擬態し会場の隅に
紙で作った緑の三角帽の天辺には勿論、金色折り紙の星つき
飛び交うパイを眺めながら
優雅にシャンパンを傾けているけど
俺はツリーです
飛んできたパイをイナバウアーで華麗に躱したけど
俺はツリーです
避け切れなかったクリームもなかなかの美味だったから
ついでにパイも味わおう
口福の伝道者でどんどん増やしてあげるよ
存分に投げ合って!と
やんや拍手喝采で皆を応援する縁の下の力持ちだけど
俺はツリーです
でも顔面に受けた時は果敢に応戦するね
ライラや女子が狙われている時もガードしよう
ツリーが動いた?
気のせいデスヨ
木だけに
●甘い空気に集う
ぞろぞろとパイ投げ会場に入って来る、赤と黒のサンタたち。あとクリスマスツリー。
めいめいに着替えた【まのもの】の面々である。
「わお。空気があっまーい」
文字通りに甘い空気と言う空間に、辛党であるアリア・パーハーツ(狂酔・g00278)が思わず声を上げた。
まあ、これ程にクリームの甘い香りが満ちた空間と言うのは、辛党甘党関わらず、そうそう経験出来るものではないだろう。
「これが投げる用のパイか?」
その甘い香りに吸い寄せられるように、帷・カラス(神遣・g08316)が近づいていく。
「アップルパイみたいのを想像してたんだが……」
想像と違う――とカラスが意外そうな顔をした。
ここにあるパイは、焼いたパイ生地に白いクリームをたっぷりと盛ったもの。
パイと聞いて多くの人が連想するであろう、パイ生地で材料を包んで焼いたものとは見た目が違う。
「こういう投げパイって、味は度外視って噂ですよね……」
投げる前提で作られたパイを見下ろし、同じくルーシド・アスィーム(星轍・g01854)が眉を顰める。
口に入っても大丈夫だが、美味しさは二の次、三の次――と言う噂を小耳に挟んだようだ。
だがそんな主の心配をよそに、ルーシドの足元でダンジョンペンギン『わたゆき』が、ぴょんっと跳び上がった。
「わたゆき!?」
そして嘴で器用に紙皿を掴むと、掠め取ったパイを突き出す。
「って実食した!?」
まだパイ投げも始まってないのに、勝手に嘴周りを白くしていくわたゆきに驚くルーシド。
「……」
「ルーシド、どしたですか?」
「いや、別に……」
思わず視線を向ければ、サアシャ・マルガリタ(えいえいお!・g05223)のダンジョンペンギン『銀シャリ』は、サンタ帽を被って彼女の足元に佇んでいた。パイに興味がないのかは判らないが、少なくともいきなり食べたりしていない。
(「落ち着いた銀シャリちゃんとの違いよ……」)
「へぇ、美味そうだ。投げるついでに舐めてみよ」
同じダンジョンペンギンなのにこうも違うものかと、内心頭を抱えるルーシドの横で、カラスがそんな事を呟く。
そう思わせる程に、わたゆきの食べっぷりが幸せそうなのだ。
「美味しい? そっか……でもおかわりはナシです」
しかしルーシドは沸々と湧いてくる危機感から、2皿目を取りそうなわたゆきを掴んで止めた。
パイを食べ過ぎてもサーヴァントは太らない筈だが、まあ気分の問題だ。
「おかわり……そうか!」
そのやり取りが、ケペシュ・ナージャ(砂蠍・g06831)に閃きを齎す。
「おかわりが幾つも出来る。これって考え方によってはパイ食べ放題のようなものなのでは……?」
「投げる為のパイですよ?」
妙な食い意地を発揮し出したケペシュに、朔・彗藍(ベガ・g00192)がくすりと笑って告げる。
「今日は投げ放題を頑張りましょう。食べ放題はまた機会があれば、です」
「それもそうだな」
くすくすと微笑み告げる彗藍に、ケペシュが小さく頷き返す。
「あらあら」
「あらあら」
「あらあら」
そんな2人に、印歌・良空(沙羅双樹の夜想詠・g05874)とサアシャとアリアが何やら言いたげな視線を向けていた。
気づけば、他のメンバーもニマニマしているのがいる。
「そ、それにしても……本当にパイを投げる文化があるのですね」
顔を赤くして、彗藍は話題をパイに戻した。
「投げるの、躊躇ってしまいそうです」
「わかる。たべものを、なげるブンカか。ちょっともったいない」
彗藍の逡巡に、クーガ・ゾハル(墓守・g05079)もぽつりと呟く。
本当に、投げて良いのかと。
勿体ないと感じるクーガは、しかしそう思う以上に感じているものもありそうだ。それはまのものの誰の目にも明らかだった。
楽しそうだと輝いている、クーガの左眼を見れば。
「サアシャも食べ物粗末にするのはちょっと気が引けるなーと思いましたが、投げる用ならだいじょぶですね!」
「うん。勿体ないけどワクワクする」
内心を見透かしたようにサアシャが告げれば、クーガが頷く。
「わかる! パイを投げても許されるなんて最高のイベント!」
クーガの肩に、マティアス・シュトローマー(Trickster・g00097)がぽんと手を置いた。
その顔は、満面の笑みである。悪戯そうな――と付くが。
勿体ないと思うからこそ、心が躍る。
誰も傷つけない『ワルイコト』は楽しい――そう感じる心は、人間誰しも、多かれ少なかれ持っているものだ。
「ほんじゃその最高のイベント、そろそろはじめよーか」
タオタオ・ザラ(大喰らい・g05073)の放った一言で、パイの話に咲いていた花がサァッと散った。
黒いサンタ服姿のメンバーがタオタオの周りに集まっていく。
「まの赤はこっち集合な」
「色違いのサンタ服用意してくださってるなんて、敵味方が分かりやすて助かりますね」
片手を挙げて呼びかけたゼキ・レヴニ(Debaser・g04279)の元に集まるのは良空をはじめとした赤サンタ服のメンバー。
「いよいよだな……」
【まの黒】と【まの赤】に分かれていく仲間達を、蜜色の瞳のクリスマスツリーがシャンパン片手に見守っていた。
●メンバー紹介
「まの赤ァ! 連携して行くぜ!」
「おう!」
気合の入った声を上げるゼキと、力強く頷くマティアス。
「パイとは言え、ウチの力で思いっきり投げたら当たった方が痛いでしょうか?」
「ららさん、気にせずやろう。まの黒サンタを白く染め上げてやるのだぜ」
「ららとアリアが味方。何でしょう、とてもたのもしいです」
2人に加えて、全力で投げて良いのかと首を傾げる良空を、両手にパイを持ってそそのかすアリア。その言葉に頼もしさを感じるサアシャの女性陣3人の5人チームが、赤いサンタ服姿の【まの赤】である。
ゼキが【まの赤】のキャプテンのような感じになっているのは、元軍人の経験故か。
「これ着てみたかったんだよね。これから白くなんのかね?」
「何で楽しそうなんですか」
パイが当たっても楽しめそうだと笑うカラスに、ルーシドがツッコミを入れる。
「何で楽しそうなんですか」
「まの黒、ファイトー、だ」
「おう。赤にゃ負けない」
ゼキの声に対抗するように、【まの黒】側でもクーガがパイを手に声を上げれば、タオタオもパイを取りながら頷く。
「正々堂々勝負といきましょう」
ケペシュは両手にパイを構えて頷いた。
双剣をパイに変えても、その構えに隙が無い。
「頑張るのです!」
一方、倣って両手にパイを持ってみた彗藍は、比べてしまうと何処か危なっかしい。
以上の6人がちょっと悪そうな黒サンタ服姿の【まの黒】である。
人数が1人多く、かつ女性が彗藍ひとり。その点で【まの黒】の方がやや有利だろうか。とは言え、1人の差はそんなに大きいものでもないだろう。【まの赤】にも勝機はある筈だ。
「……と言うか、これは勝敗はどうつけるんだ???」
両チームの戦力分析をしていたクリスマスツリーが、優雅にシャンパングラスを傾けながら素朴な疑問を口にしていた。
●第一次まのものパイ投げ
「ホワイトクリスマスだ! 食らいやがれェ!」
「はっ、やってくれるじゃないですか!」
赤のゼキと黒のケペシュ。
共に両チーム随一の身長と血の気の多さの持ち主たちが前に出て、高い位置からパイを投げ放つ。
どちらも避けるより投げる事に集中して投げたパイは、ほとんど同時にゼキとケペシュのサンタ服の一部を白くした。
「マティアスは遊撃頑張ってー!」
「ふふん、黒いサンタ服には白いクリームがよく映えそうだなー」
サアシャの声に背中を押され、ゼキの後ろからマティアスが飛び出す。
「赤に白だって映えるぞ、マティアス」
「年下でも遠慮なしですよ、マティアス君」
隙を伺うようにパイを手に動き回るマティアスに、タオタオとルーシドが先んじて牽制のパイを投げる。
「さて、お仕事を始めますか」
それでマティアスが攻めあぐねる隙に、カラスが投げたパイがゼキのボディをべしゃっと白く染めた。
人数の差が前衛の差となり、序盤は【まの黒】が優勢か。
しかし【まの赤】も負けてはいない。
「まの黒の皆さん、特にタオちゃん! これでも食らえーです!」
「今日は俺まだ何もしてないだろ!?」
まの赤後衛からサアシャが、次々とパイを投げて来る。特に自分に若干多く飛んでくるパイに、タオタオがサッと身を翻した。
「喰らえ男性陣!!」
乱舞投げと、アリアは両手で交互にパイを投げて来る。
「うわっ!?」
あまり狙いを付けずにアリアは投げていたが、その1つがカラスの肩を白く染めた。
「待って、僕だけ多くないですか!?」
特にルーシドには、アリアの投げたパイが若干多く飛んで来ていた。
「……」
明後日の方に飛んでったパイを、クリスマスツリーがひょいと身体を傾けやり過ごす。
始まってしまえば、パイ投げの熱は一気に高まっていく。
そんな中での迷いは、隙だ。
「……すでにすごいイキオイだ。ええと、だれから――ぶわ」
「隙アリィ!」
誰を狙おうかと迷っていたクーガの顔に、マティアスの投げたパイが直撃した。
「ご愁傷様! 油断してると足元掬わrっ!?」
笑ってパイを補充しようとしたマティアスの顔面にも、パイが直撃。
「くそ、誰だよ今俺に当てた奴……狙うならゼキだけで!」
「はは、そうはいくか。覚悟しろよ」
しれっと味方に標的を移そうとするマティアスに、カラスがサンタ服の袖をまくりながらパイを投げて来る。
一発くらった事で、火が付いたか。
「やったな、お返しするぞ」
クーガもやられっぱなしではいられないと、パイを手に――跳んで、投げた。
そんな激戦の中で、良空も迷っていた。何故だろう。クーガはああなったのに、迷っていられた。
(「はて。どなたを狙ったら良えんやろ」)
迷いを胸中で呟き、良空が視線を彷徨わせる。
「カラスもクーガも凄い投げ方を! まの黒の皆、頼りになりますね……」
今の所、まの黒でクリームが掠りもしていないのは、パイを両手に感心しきりな彗藍だけだ。
「いけいけー! ですよう」
味方を応援してるその姿は、隙だらけである。
(「彗藍嬢に当てるなんてとんでもありません」)
けれども良空はそっとかぶりを振って視線を逸らした。彗藍とはついこの間、砂漠の闘技場ではペアを組んだ間柄だ。そうでなくとも女子を狙う気にはなれない。
(「アリア嬢とサアシャ嬢が味方でよかったわぁ」)
胸中で呟いて良空は他の標的を探して視線を彷徨わせる。
(「未成年のケペシュ君やカラス君も罪悪感が……」)
そうなると良空が躊躇わずに狙えそうなのは――。
その1人、タオタオは今度はゼキとパイを投げ合っていた。
「タオよぉ。お前さん、さっきからおれとマティアスくんしか狙ってねえじゃん」
「そりゃ、野郎ふたりだけ狙ってるからな」
訝しみながらゼキが投げたパイに、タオタオがパイを投げてぶつける。
「女子の顔にぶつけた日にゃあタオが集中砲火を受ける。知ってるぞ、タオは詳しいんだ」
真顔でキリッと告げるタオタオ。
「タオは紳士だな……男達は任せたぜ」
「全くです。俺は誰が相手だろうと手は抜きませんが」
カラスとケペシュがアリアや良空を狙って投げたパイは、クリスマスツリーに遮られる。
そんなタオタオの気遣いとクリスマスツリーの存在が、良空がじっくり迷ってられた理由だったりする。
けれども、気遣いは報われるとは限らない。
「タオくん、それフラグっすね」
ルーシドが本人が気づいてなかったフラグを立てれば、それは秒で回収された。
「タオちゃんがぶつけなくても、サアシャはぶつけるです!」
「サアシャちゃんいけーやれータオさんを潰せー」
「……いや、待て、なぁんでぶつけてないのに狙われてんのかにゃあ!?」
顔だけは守ろうと、投げる手を止めタオタオが逃げ惑う。
「フラグ立てるから……ってことで、盾にします!」
困惑するタオタオの背後に、ルーシドとわたゆきが回り込んで――何故かわたゆきが、跳んだ。床、クリームで滑ってたかな?
兎にも角にも、タオタオの背中にわたゆきがパイからどーんっと突っ込んでった。
「あ、ごめん」
「しかも味方からも!? 可笑しくねえか!?」
悪びれないルーシドに内心頭を抱えたタオタオの顔に、サアシャのパイが直撃した。
「別におかしかねーよ、タオ。世の中、そんなもんだ」
それをカラカラと笑い飛ばして、ゼキは既にクリーム塗れの腕でクーガが投げたパイを叩き落す。
「おれなんて、すげえ標的にされてる気がすんだが? ねえマティアスくんよ??」
「ナンノコトカナー?」
ゼキの声に、マティアスは露骨に視線を逸らした。
味方にも完全に気を許せないのは、【まの黒】も【まの赤】も変わらんようだ。
そしてこの光景が、良空に標的を定めさせた。
「タオ君は集中砲火受けて……おいたわしい。ではルーシド君とクーガ君、お覚悟を……!」
腹を決めた良空が、遂にパイを投げる。
ヒュゴォッ!
ルーシドとクーガの耳に届く、謎の風切り音。
少し遅れて、パァンッと2人の後ろの壁でパイが粉微塵に砕け散る。
「……え?」
「パイ、くだけた」
「待って、ららさんの剛速球やば……」
これが当たっていたらとルーシドとクーガが肝を冷やし、アリアは良空が味方でよかったと、思わず胸を撫で下ろした。
「ついに良空まで……」
それを見た彗藍が、自分も投げねばと意を決した。
「タオが女子に投げれない。なら私が……!」
キリッと良空に向き直り――。
「でも良空やアリアやサアシャにぶつけるなんて……っ」
その決意は、しおしおとしぼんでいった。どうしても、投げようとする手が上手く動かない。
「投げようとするなら、すいらんでも――」
その躊躇いを好機と見て、サアシャがパイを構えて向き直る。そして気づいた。彗藍の震える手元に気づいてしまった。
「あっダメです。すいらんの頑張る姿、可愛すぎますっ」
その必死な姿に、サアシャの手元がおおいに狂った。
サアシャの手からすっ飛んだパイが、明後日の方向に飛んでいく。その先にいたクリスマスツリーが、ひょいと頭の星が床に付きそうなくらいのイナバウアーでパイを避けた。
「あら? 何故かサアシャが怯んでいる
……!?」
そんなサアシャの様子に、彗藍の中で天啓が閃くように考えが浮かんで来た。
(「もしや私が先頭に立ってれば、皆さんの盾にもなれ、隙も生まれるのでは!」)
何とか役に立ちたいと思っていた彗藍は、その考えを躊躇う事無く実行に移す。
つまり、迷いなく前に出た。
「さあ、遠慮なく投げるですよ……!」
まの黒の誰よりも前に出て、両手を広げたる彗藍。
「いや待って、なんで前線にいるのすいらんちゃん!?」
「彗!?」
その突飛な行動に、赤のアリアが目を丸くし、黒側ではケペシュがぎょっとしつつ迷わず彗藍の前に出る。
――俺が守る。
そう、無言で【まの赤】の面々に告げるケペシュ。
「くっ……」
そんな2人の様子に、ゼキの手が止まった。
「無礼講だ、女子にも容赦なく……と思ってたがよ。彗藍とケペシュが眩しくて投げられねえ……」
40歳のおじさんの情緒に、2人の若さがクリティカルヒットしていた。
「若いっていいなァ……」
わかる。
「良くわかりませんが……これはチャンスでは?」
半分くらい自分のせいだと判ってなさそうな顔で、彗藍がえいっとパイを投げる。
しかしそれは明後日の方向に飛んでって――。
その先にいたクリスマスツリーが、刻逆以前、20世紀後半の某映画のような凄い仰け反り方でパイを避けた。
●I am The christmas tree
「ちょーい! ちょい、待った! タイム! 流石に気になるんじゃけど!」
タオタオの声に、全員の動きが止まった。
なにを気にしてのタイムなのかは、全員、何となく察している様子だ。
「確かに、さっきからちょいちょい凄い動きしてますからね」
「ツリーが動いた? 気のせいデスヨ。木だけに」
ルーシドがしみじみと呟けば、クリスマスツリーからダジャレが飛んで来た。
全員の視線がクリスマスツリーに集まる。
「なにしてるんですかノスリ」
「俺はツリーです」
「なんでツリーなんですかノスリ」
「ツリーが無いと聞いたので。あと俺はツリーです」
サアシャが立て続けに問い詰めても、ノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)は、しれっとツリーだと言い張ってみせた。
「待って待って。すごい緑だと思ってたけど、それ駄セーターの類じゃん!」
ノス――クリスマスツリーの緑がモミの木総柄の緑のセーター、所謂アグリー・クリスマス・セーターを着ているからなのだと気づいてしまい、アリアが爆笑していた。
「頭の三角と星は、紙の帽子? まさか作ったのですか……?」
「おもろい人ですわぁ」
そこまでするかとケペシュが感心し、良空はからからと笑う。
「そうだよなぁ。ツリーは普通動かねえんだよなぁ」
「クリスマスツリーに擬態とか!! その発想はなかった
!!!!!」
ゼキがなぜか天井を仰いで、マティアスは悪戯心で負けた気がして膝を叩いた。
「パイ投げ、クリスマスツリーにも、なれるブンカ?」
クーガに至っては、何かを誤解しつつあった。
どうすんだこのカオス。
「あの、動かしてしまったみたいですみません」
「気にするな。こちらこそ、水を差したみたいになってすまない」
恐縮する彗藍に、ぺこりと星を下げるノス――クリスマスツリー。
もうクリスマスのツリーならぬクリスマスノスリーとかで良いんじゃないかな。字面似てないですか。ダメですか。
「どうか俺の事は気にせずに続きをどうぞ。ついでにパイも増やしてあげるよ。クリームも中々の美味だったから」
クリスマスノスリーの言葉に、カラスが「あっ」という顔になった。
「投げるついでにクリーム舐めてみるの忘れてた。そっか、美味いのか」
今度こそ舐めておこうと、カラスが決意を新たにする。
「今日の俺は赤も黒も応援する縁の下の力持ち。皆、存分に投げ合ってくれ」
それではと、ノスリはクリスマスツリーに戻っていく。
「但し、俺はツリーです」
そこんとこ、念押すのを忘れないノスリであった。
●第二次まのものパイ投げ
そして再び始まるパイ投げ。
【まの黒】側は相変わらず前に出てきてる彗藍をケペシュが守っていた。
「あーもう、やりにく!」
「ケペシュ君かっくいー」
「ふっ」
マティアスが焦れながら、アリアは容赦なく投げて来たパイを、ケペシュは避けずに不敵に笑って受け止める。
「ああ、ケペシュがパイ塗れに……」
サンタ服の黒い部分がほとんどなくなって来たケペシュの姿を見て、彗藍がその前に出ようとする。
(「あら? ケペシュ、楽しそうですね?」)
けれども並んだ所でその横顔に潜む感情に気づいて、彗藍は踏み出しかけた脚を戻した。
(「これは、存外に楽しいですね」)
実際、ケペシュは楽しんでいた。
彗藍を背に猛攻を防ぐ内に、戦い好きの血が滾っていたのだ。身体と心が、パイ投げと言う闘争を求めている。
「ケペシュ、かっこいい」
「ケペシュ先輩、男をみせるな! うんうん、美しいものよ」
パイ塗れすら楽しめるケペシュの姿に、クーガが羨望の眼差しを向け、カラスもしきりに感心して頷いている。
2人とも意図したわけではないだろうが、結果的に、ケペシュと彗藍の姿はまの黒の味方を鼓舞する事になっていた。
「彗藍を立たせるなんて、ずりーぞー! まの黒のお兄さん達!」
この状況を打破しようと、マティアスが声を大にする。
「カッコいいのは顔だけなんだ?」
「残念だったなマティアス」
煽るマティアスに、タオタオがイイ笑顔を返した。
「タオの取り柄は顔と金と、少年少女には言えないことだけだ! ついでに彗藍にはケペシュが付いてる!! なんも問題ねぇ!」
うわあ。
「問題だらけだよね!? また保護者会案件だよね?」
「発言がアウトだとしても歴史は勝者が作る、勝てばいい!」
マティアスのツッコミに、タオタオは清々しい笑顔できっぱりと言い切った。
「銀シャリ、次のパイ持ってきて下さい!」
確信犯なタオタオの発言を聞いて、サアシャが銀シャリに合図を送る。
「ふ、これも戦術です。成長には試練が必要!」
「いやいや。戦術とか言ってないで、さっさと出てきn……っ」
ルーシドもしたり顔で尤もらしく言いながら、力強くパイを投げる。それはまだ煽ろうとしていたマティアスの顔に直撃した。
「さっきからのお返しです、マティアス殿」
そこにすかさずケペシュもパイを投げ、もうひとつパイをマティアスの顔に直撃させる。
「あらぁ……」
「マティアス君、だいじょぶ?」
「……犯人はあのお兄さん達です」
心配した顔を向けて来る良空とアリアに、マティアスは殊更しょんぼりとした顔で言ってみた。
まあクリームで見えてなかったかもしれないが、言わんでも明らかな事だから問題ない。
「うん、仇は取ったげるからねぇ」
「そうですなぁ。仇は討たせていただき――」
笑顔で頷いたアリアに続いて、良空も黒の方へ向き直りかけて、しかし、ぐぬ、と固まった。
(「未成年の方に投げるんは……ちょっと……」)
どうしても拭いきれない罪悪感が、良空の狙いをルーシドひとりに向けさせる。
「連帯責任言う事で、まの黒の大人の殿方に全力投球さしてもらいます!」
「え、待って」
「力加減は致しますけど、痛かったらすみませんっ!」
「待たない。ルーシドパパン、かくごしろー!」
どうしてこうなると慌てるルーシドに、良空がパイを投げ、便乗してアリアもパイを投げた。
パァンッ!
べしゃっ。
良空のパイが額に当たった衝撃で仰け反って顎が上がった所に、アリアのパイが立て続けにルーシドを襲う。
「いった首ぐきって鳴ったァ!?」
骨にまで響いた衝撃に、ルーシドが投げようとしていたパイは手元が狂ってすっ飛んでいた。
飛んでった先は、タオタオの背中。
「またかよ!?」
「きっと、さっきのギルティ発言の天罰ですよう、タオちゃん!」
そんな流れ弾なパイに合わせて、銀シャリが運んで来たパイをサアシャがぶん投げれば、それは見事にタオタオの顔を直撃した。
「しょうがねえにゃあ。お前さんたちタオのこと大好きなんじゃから――……」
フルフルと首を振ってパイを振り落としたタオタオが、顔を上げる。その眼は、笑っていない。
「なんて! 言うと! 思ったか!! ひとり残らず潰してやんよ!!」
何かがキレた様子で、タオタオはついにサアシャに反撃のパイをぶん投げた。
「ゼキ、盾役よろしくです!」
それを見たサアシャは、ゼキの返事も待たずに、ささっとその背後に隠れた。勝手に。
「ルーシドのギセイ、わすれない」
首ぐきってなったルーシドの肩をぽんと叩いて、クーガがパイを手に取る。
ルーシドの分まで投げようと、両手で3つ纏めて。
「こういう時の勝負のセリフは……ここで会ったが、ええと――4587年め、だ!」
古代エジプトから数えてなんだろうけど人の寿命が凄い事になりそうな事を言いながら、クーガは抱えた3つのパイを纏めて、高く放り投げてみた。
「うお、クーガ君なにその投げかた!?」
「どこにおちるか、おれにもわからない。ふふふ」
驚くアリアに、クーガが楽し気に笑って告げた。
たしかに球体ではないパイが描く歪な放物線は、落下になればその軌道は読めそうにない。
「よし、ゼキさんボク様も守って」
クーガ自身にも判らないと聞いたアリアは、迷わずゼキの背後に隠れた。やっぱり勝手に。
「仕方ねえ、お前さん達はおれが守――って待て服引っ張んうぶっ」
盾にされるのを享受したゼキに、パイは容赦なく降って来た。
「クーガの投げ方もいいな?」
それを見たカラスが、三つ投げを真似しようとパイを纏めて取り――。
「なーんて。まの黒サンタからのあまーい贈り物だ」
「んぶぇっ」
幾らゼキの背が高いと言っても、2人分の盾にはさすがに足りない。そう見たカラスが、回り込んで投げたパイがアリアの顔を直撃。
「……誰だ顔を狙ったの……おいしい……喰らえ反撃ぃ!」
「ぶわ?!」
アリアの反撃が、カラスの顔を直撃する。
次第に、誰もがクリーム塗れになってきた。
●第三次まのものパイ投げ――或いは男子達の延長戦と女子会
やがて、飛び交っていたパイがパタリと止まる。
その頃には、男性陣は赤も黒も、元のサンタ服が見えなくなるくらい白くなっていた。
「タオ? ルーシド? ケペシュ? カラス? 誰がどのパイ山だ……?」
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【現の夢】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【未来予測】LV2が発生!
【強運の加護】LV1が発生!
【水源】LV1が発生!
【使い魔使役】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV2が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
【書物解読】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
【ドレイン】LV2が発生!
【ダメージアップ】LV3が発生!
【アヴォイド】LV2が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!
【凌駕率アップ】LV1が発生!
佐伯・みゆ
【安らぎの館】
チーム名
赤いジャージ姿で来たものの、サンタ服に着替えるのです?パイ投げの正装はジャージだと聞いたのですが……?
とりあえずサンタ服に着替えて参戦です!……が、投げる前に見事に顔面にパイが!びっくりして硬直。(誰か助けてあげてください)
顔のパイを取ってクリームまみれになりながら、死ぬかと思いました……。こうなったら私もパイ投げますよー!うりゃー!
戦術も何もなく、とにかく手当たり次第に投げまくります!意外と当たったりして?
パイ投げのパイって甘いんですね……。自分がケーキになった気分です。
服も髪も顔もクリームまみれになりながらも、すごく楽しかったです!
南雲・葵
【安らぎの館】
・Rチーム
俺は赤いサンタ服、姉貴(オラトリオ)はサンタワンピで参戦!
よし、俺がコッチのチームって事は、戦力がプラス1って事だね
俺と姉貴(オラトリオ)の阿吽の呼吸を見せてやろう!
俺がパイを渡すから姉貴はジャンジャン投げちゃってよ!
女の子にパイを投げるのは抵抗あるから、俺は男子にッ
陸塞龍バルギュラスの首をへし折った(誇大表現)俺の強肩、見せてやるぜーー!
第一球、投げま…ブヘッ!(パイを顔面キャッチ)
痛ッ目に入った!
ギャー、鼻にも詰まったッ
姉貴たっけてー ティッシュてぃっしゅー!
甘いッ美味いけど痛いー
っしゃー、リベンジ!
姉貴ッ、今度は俺にパイ渡してくれ!
遠原・いぶき
【安らぎの館】
Bチーム
みゆ(g08231)廉也(g02175)と同チーム
アドリブ◎
黒のサンタ服に着替え決戦だ!
こっそりと【アイテムポケット】にパイをたくさん放り込んでおいてっと
Rチームに素早く近づき皆の顔へ容赦なくパイを投げつける!
梓に対しては力を加減
その分朔太郎、アルラトゥ、葵へは全力投球!
パイが無くなれば【アイテムポケット】から補充だ
パイまみれのみゆを見たら
汚れてない袖で軽くみゆの顔を拭おう
綺麗にするのはまた後で
廉也、みゆ、ここからまた攻めるぜ!
Rチームのパイはよく見て避け…ってぶへっ!
自分の顔に当たればペロッと舐め
んーあっま!普段なら顔が汚れて怒る所だが
パイが美味しいからどうでもいいや!
大崎・朔太郎
【安らぎの館】R組
アドリブ・連携可
僕ら世代はバラエティーで懐かしい感じですが一体何で知ったのやら全員集合なのか皆さんのおかげなのか。
さて、こういうのは遊んだ物勝ち。
ドリンク置き場のシャンパンコルクで飛んできたパイを迎撃しようとしたり、三対三がわちゃわちゃやってる中で数の利を生かして横から投げて貰ったりしますか。
後は顔にパーンと来たらパイ皿を顔で受け止めたまま無言で近づいて、もう何も怖くないという感じで喰らいながら相手の顔に直接ポスンと。これもバラエティーでよくあった奴ですよね、【完全視界】で見えなくもないでしょうし。
こういうバカをやり切る青春はやってこなかったので新鮮ですね。
アルラトゥ・クリム
【安らぎの館】R組
アドリブ&絡み連携歓迎
…なんか一般人のおねーさま方に、やたら着せ替えさせられて
結局ミニスカサンタ服に落ち着いてしまった…
パイ、なんか勿体ない気もするけど…美味しいのかな?
(一口囓って)うーん。甘いけど、なんか微妙…
これなら遠慮無く投げられるかはぶっ!?
…ほう。それじゃ、お見せしよーかな。XMAパイ投げの妙技!
うおりゃーっ!
XMA宜しき体捌きで、飛来するパイを極力避けつつ
適当な所で補充したパイを、狙い澄ましてB組メンバーへ投擲
…投げる方はXMA関係無いかも知れない
うへー。最初の直撃パイで、髪が超キシキシする…
とりあえず終了時間が来たら、クリーニングで全員を身綺麗に
黒城・廉也
【安らぎの館】B組
アドリブ連携歓迎
赤サンタのR組と黒サンタのB組で対決
さてさて……館の皆ともパイ投げを楽しむッス!ほら、いつかアイドルとしてバラエティに出るかもしれないですし!
でも、やるからには本気ッスよ?
花のように舞い、ハチのように鋭く……投げる!
戦闘で投げ技は使ったこと無いけど結構様になってるッスよね?って佐伯さんの顔に……!
遠原さん、かたき討ちッスよ!
相手も相手で猛攻だから避けるのも限界が、へぶっ!う…顔中クリームまみれッス。
美味しいのが嬉しいけども、出来れば普通に味わいたかったです……
もう、当たったらどう汚れても一緒です!
ガンガンせめて攻めまくるッスよ!
●女性の着替えは長いとよく言うけれど
甘い空気が充満したホールに、ズラリと並んだ白い物体。
(「やっぱり。こう言うパイか」)
土台のパイ生地以外は、白いクリームだけ。そんなテレビで見たパイに、大崎・朔太郎(若返りサキュバスアイドル・g04652)は懐かしさを感じて胸中で呟いた。
「一体、何で知ったのやら」
刻逆以前、昭和や平成と呼ばれていた時代のバラエティー番組が朔太郎の脳裏に浮かぶ。
どれも別に記録媒体が残っていてもおかしくないものではあるが、何故見た、と思わないでもない。
「別にいいじゃないッスか」
朔太郎の肩に、黒城・廉也(後輩サキュバス・g02175)がぽんっと手を置いた。
「ほら、いつかアイドルとしてバラエティに出るかもしれないですし!」
バラエティと言い出す辺り、廉也も大体同じものを連想していたのだろう。
「今は館の皆ともパイ投げを楽しむッス!」
「そうだな」
廉也の言葉に、朔太郎もふっと笑みを零す。
けれど2人のサンタ服の色は、黒と赤。
黒と赤に分かれてのパイ投げ対決が始まれば、廉也と朔太郎はしばし敵同士だ。
「おーい」
そこに南雲・葵(お気楽姉弟の弟の方。・g03227)の声が響いた。
「姉貴とお揃いにして貰ったぜ」
声を弾ませる葵の隣には、同じ赤茶色の髪のオラトリオ『梓』が浮かんでいる。葵の赤いサンタ服に合わせるように、梓も同じ色のサンタワンピ姿になっていた。
「待たせてしまったか?」
その後ろから、黒いサンタ服姿の遠原・いぶき(開幕ベルは鳴り響く・g01339)をはじめとした女性メンバーも顔を出す。
「……なんか一般人のおねーさま方に、やたら着せ替えさせられてしまってた」
どうやら、一番時間がかかったのはアルラトゥ・クリム(現代の魔法使い・g05088)だったようだ。
その口ぶりからすると、本人の意志よりも一般人の『おねーさま方』と色々あったのだろう。最終的に着ているのは丈の短いスカートの赤いサンタ服、所謂ミニスカサンタだが、そこに落ち着くまでに一般人の『おねーさま方』と色々あったのだ。
「2人もいたのに……」
「アルラトゥは小柄でスタイルもいいからな。あのおねーさま方が色々試したくなったのもわかる」
「はい、どれもお似合いでしたよ」
なぜ自分だけ、とアルラトゥから少し不満そうな視線を向けられ、いぶきと佐伯・みゆ(悲歌。・g08231)が微苦笑を返す。
黒いサンタ服に着替えたみゆも、背丈だけならアルラトゥとそう変わらない。アルラトゥには何か『おねーさま方』をそそるものがあったのだろう。
「まあ……うん、良いんだけど」
とは言え、アルラトゥもミニスカサンタはまんざらでもなさそうだった。
●3対3
廉也、いぶき、みゆの3人がBチーム、黒サンタ。
葵、朔太郎、アルラトゥの3人がRチーム、赤サンタ。
3対3のチーム戦――の予定だったのだが。
「ふっふー。こっちのチームは俺の姉貴がいるから、戦力がプラス1だぜ!」
葵の隣では梓もやる気満々なので、Rチームは実質4人。
だがそれで、Bチームの誰からも不満の声は上がらなかった。梓も着替えた時点で、予想は付いていたし。
「葵、梓。俺がまとめて相手してやる」
それどころか、いぶきがやる気満々と言った様子で2人を見据えている。
「え――。俺、女の子にパイを投げるのは抵抗あるから、男子狙いで行きたいんだけどな」
そうぼやきながら葵が視線を巡らせるが、Bチームの黒一点、廉也は既に別の相手を狙って動き出していた。
「葵さんはそう言うだろうと思ったッスよ! だから遠原さんに任せるッス!」
廉也の声が返って来る。
葵のシスコンぶりが隠れていないのは、いつもの事。だから、いぶきも葵と梓の相手を買って出た。
「女の子、か。――葵。俺は、役者だぜ?」
口の端に笑みを浮かべて、いぶきが告げる。
なりたいと思うなら、何にだってなれる。
それが役者としてのいぶきだ。いぶきが、そうであらんとする理想と言ってもいいか。
「女相手がやりにくいってんなら、男らしくやってやるぜ」
並の男ではそこまで中々出来ないだろうと言うくらいに不敵に笑って、いぶきは葵に言い放ってみせた。
一方その頃。
「うーん」
アルラトゥは、パイを前に手に取るでもなく眉をひそめていた。
どうにも味が気になって、クリームを一部、指で掬って舐めてみたのだ。
「甘いけど……なんか微妙?」
甘かった。口の中に、クリームの甘さが広がった。
けれど、それだけだった――甘さしかない。他の具材やトッピングが何もないのだから、当然と言えば当然だ。下のパイ生地ごと齧ればまた違うのだろうけれど。
「これなら遠慮無く投げられるかはぶっ!?」
気を取り直して振り向いたアルラトゥの顔に、避ける間もなくパイが直撃した。
「やるからには本気ッスよ?」
「……ほう」
クリームの向こうから、少しくぐもって聞こえた廉也の声に、クリームを拭うアルラトゥの瞳が輝く。
「それじゃ、お見せしよーかな。XMAパイ投げの妙技を」
顔に付いたクリームを全て拭うのを後回しにして、アルラトゥは廉也を追って駆け出した。
こうなると必然的に、朔太郎とみゆが対峙することになる。
(「うーん。僕以外が3対3でわちゃわちゃやってるところに、数の利を生かして横から投げようと思ってたのに」)
当てが外れてしまって、朔太郎はどうしたものかと胸中で思案する。
まだどう転ぶかわからない段階ではあるが――。
「と言うか、佐伯さん?」
「……あ、はい?」
朔太郎が呼びかければ、みゆが少しびっくりした様子で返して来た。
緊張しているのか、どうにも表情が硬い。
「こういうのは遊んだ物勝ちですよ」
「そ、そうですよね」
朔太郎が微笑みながら穏やかに告げるが、みゆの声はまだ少し硬さが残っている。
「いきなりクリムさんの顔にパイがぶつけられて、びっくりしちゃって……」
「ああ。廉也君、いきなりやりますよねぇ」
みゆに相槌を打ちながら、朔太郎は内心、これは困ったと頭を抱えたくなっていた。
見た目こそみゆとあまり変わらない年代に見えるが、朔太郎の精神は40歳近い。ついでに、恋愛経験の類もほとんどない。
朔太郎は、硬くなっているみゆに、先制のパイを投げられずにいた。
●ディアボロスが全力でやれば、大体エクストリームパイ投げになると思う
三者三様に始まったパイ投げの状況は、刻々と変化していく。
「姉貴! 俺がパイを渡すから、姉貴はジャンジャン投げちゃってよ!」
葵が取ったパイを振り向きもせずに後ろに投げれば、ふわりと浮かんで梓がキャッチする。
「俺と姉貴の阿吽の呼吸を見せてやろう!」
梓が両手でパイを投げたのを見計らって、葵は次のパイを取って投げ渡した。
しかし――ぐしゃっ。
梓の投げたパイが、空中でいぶきの投げたパイとぶつかって、床に落ちる。
「梓には手加減してやるけどな。葵には容赦しないぜ!」
そう言い放ったいぶきは、葵が梓にパイを投げ渡すよりも早く、次々とパイを投げてきた。
「ちょ、多、多いって! 姉貴、負けないでー!」
ジャンジャン投げるつもりがジャンジャン投げられて、葵が舌を巻く。
いぶきの手数の正体は、アイテムポケットだ。
1mの立方体の空間と言っても、クリームを崩さずにパイを入れられる数は限られる。だが、ここは新宿島だ。10個のアイテムポケットがあれば、手よりも多くのパイを運ぶ事が出来る。
「だめだこれ、抵抗があるとか言ってられない!」
準備の段階で物量の差がついた事を悟って、葵は梓の代わりにパイを手に前に出た。
「陸塞龍バルギュラスの首をへし折った俺の強肩、見せてやるぜーー!」
それは嘘ではない。
嘘ではないが、バルギュラスの首をへし折ったのは葵が操縦した巨大神像だ。
「報告見たけどな。あれは巨大神像込みだろう!」
「第一球、投げま――ブヘッ!」
あの時を思い出してパイを投げようとした葵の顔面に、いぶきの投げたパイが勢い良く命中した。
その瞬間、葵の手から投げようとしていたパイが放り出されて――。
「え?」
歪な放物線を描いて落ちるパイの先にいたのは、みゆだった。
気づいた時には、パイはベシャッとみゆの顔に直撃していた。
「むーーっ!? もご」
「姉貴たっけてー! ティッシュてぃっしゅー!」
予想外のパイをくらったみゆも、結果的にその偶然を齎した葵も、どっちも大変な事になっている。
「ええいっ」
「どういう事ですかこれ!」
いぶきと朔太郎は、互いに同チームの味方を助けに駆け出した。
「って、佐伯さんの顔に……!」
みゆが不意のパイをくらったのは、廉也も気づいていた。
「他人の心配してる余裕、あると思う?」
しかしアルラトゥが、そちらに向かうのを許さない。
「うおりゃーっ!」
「あぶっ!」
アクロバティックに跳んで回ったりしながらアルラトゥが投げて来るパイを、からくも避ける廉也。
「なんッスか、その動き」
「XMAパイ投げだよ」
驚く廉也に、アルラトゥは事も無げに返した。
XMA――エクストリーム・マーシャル・アーツ。ダンスと武術を組み合わせたアクロバティックな近代スポーツの一種のようだが、それをパラドクスに組み合わせるのはアルラトゥの得意とする所。
ある程度、動きが身体に染みついている。
(「投げる方は、XMA関係ない気もするけど……」)
関係ない部分も若干ありそうだとは感じつつ、アルラトゥはそれをおくびにも出さずに攻め続ける。
「花のように舞い、ハチのように鋭く……投げる!」
廉也も踊りは好きで負けじと跳び跳ねるが、業の早さでは及ばない。
「花もハチも、叩き落すまでだよ」
「へぶっ!」
距離を詰めてアルラトゥが狙い澄まして投げたパイが、廉也の顔面に直撃した。
「大丈夫か、みゆ」
「うう……まだ投げてもいないのに、死ぬかと思いました……」
いぶきの袖に軽く顔を拭って貰って、みゆが復活する。
「ありあとー、姉貴。あー、甘美味いけど痛かったー」
葵も梓が持ってきたティッシュペーパーで、復活しつつあった。
「みゆ。綺麗にするのはまた後で。廉也、みゆとここからまた攻めるぜ!」
葵が完全に復活する前にと、いぶきが声を張り上げる。
だがその時丁度、廉也が「へぶっ」とアルラトゥにパイをお見舞いされ、しりもちをついた所だった。
「う……顔中クリームまみれッス」
真っ白な顔の廉也が、顔を拭って復活するまで、少しかかるだろう。
「っしゃー、リベンジ! 姉貴ッ、今度は俺にパイ渡してくれ!」
「ぶへっ!?」
そうしている間に、葵が復活して、いぶきの顔にパイが飛んでくる。
「タイミングが悪いぜ……」
この時、いぶきのアイテムポケットの中のパイは、尽きつつあった。
この瞬間はBチームの方が、不利である。
「こうなったら私もパイ投げますよー! うりゃー!」
自分を鼓舞するように声をあげて、みゆはやおらパイを投げ出した。
「とりゃー! おりゃー!」
「うぉっと!」
「……やりづらいね」
狙いも付けず手当たり次第にパイを投げて来るみゆに、葵もアルラトゥも反撃のチャンスを掴み損ねていた。
「……」
そんな中、朔太郎は無言で近くのテーブルからシャンパンの瓶を取り、コルクに指を当てる。
ググッと指に力を入れて――ポンッ!
瓶に溜まっていたガスによってコルクが飛ばされる小気味良い音が響く。
「ひゃっ」
「おぶっ!」
その音に驚いたみゆが投げたパイが朔太郎の顔に直撃し、天井に当たったコルクがコンッと床に落ちてきた。
「コルクでパイを落とそうとした……のか?」
いぶきの問いに、朔太郎は顔にパイを付けたまま頷く。
「佐伯さん、ナイスッス!」
パイを拭って復活してきた廉也が、クリーム塗れの顔で笑う。
これで、今度はRチームの方がしばし人数的に不利になる――と思われたのだが。
「……」
なんと朔太郎、パイをパイ皿ごと顔に付けたまま、別のパイを持って動き出したのだ。
「なんだとっ」
「ガ、ガンガンせめて攻めまくるッスよ!」
(「何か驚かれてる? これもバラエティでよくあった奴ですよね?」)
驚きながらもいぶきと廉也がパイを投げるが、朔太郎は避けようともせず、完全視界でクリームの向こうを見てズンズン歩いていく。
既に顔に当たっているのだ。もうパイは怖くない。
「こ、こうなったら俺が。これ以上どう汚れても一緒です!」
意を決した廉也が、パイを手に前に出る。
そして、朔太郎と廉也は同時に相手の顔(或いはその上のパイ)にパイを叩き込んだ。
●確かな事は
【安らぎの館】のパイ投げは、周囲からパイがなくなるまで続いた。
「俺としては、こういうバカをやり切る青春はやってこなかったので新鮮ですね」
適当な椅子に腰を下ろし、朔太郎が疲れた顔に笑みを浮かべる。
まるで、真っ白に燃え尽きたボクサーのようだ。
「おっさんくさいぞー」
ツッコむ葵も、床にへたり込んでいる。近くを漂う梓が、甲斐甲斐しく顔のクリームを拭っていた。
「うへー。髪が超キシキシする……」
手櫛で整えようとした髪が指に絡んで、アルラトゥが溜息を零す。クリーニングはしたけれど、シャワーでも浴びたいところだ。
「普段なら顔が汚れて怒る所だが……」
こちらも顔と髪に残るクリームを拭って、いぶきは笑みを浮かべる。
「パイが美味しいし、楽しかったからからどうでもいい気分だ」
「うん、美味しいのが嬉しいッスね」
「服も髪も顔もクリームまみれになったけど、自分がケーキになった気分で、すごく楽しかったです!」
廉也もみゆも、いぶきに笑みを返す。
「パイ投げのパイって甘いんですね……始めて知りました」
「出来れば普通に味わいたかったッスね」
更に声を弾ませるみゆに、廉也が頷く。
(「……そんなに美味しかったかな?」」)
そのやり取りに、アルラトゥが首を傾げていた。
そう言う事もあるだろう。味の好みはそれぞれだ。
確かな事は――楽しい一時を6人で共有できた、という事である。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
【士気高揚】LV1が発生!
【クリーニング】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV5になった!
【アクティベイト】LV1が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【ドレイン】がLV3になった!
【ダブル】LV1が発生!
ファルディゴール・バレットレイン
ジェト(g01750)と
赤サンタ服をばっちり決めよう(ドヤッ)
エジプトとは全く異なる文化だが、パイ投げは知っているぞ
愉快でそれで、楽しむべき理だ
なあ、そうだろう(と話しながら流れ弾にべしゃっされる)
楽しみ方も人それぞれではあるが、没頭するのも一興
俺はお前に投げつけた数で負けたくはないな
サンタBATTLE、でかい俺が明らかに不利!
しかし、そこはいい姿勢でのらりくらり躱したりぶつけたりしてやろう
「めりーくりすます!いい感じクリームまみれだぞ!ジェト、笑い事レベルでべっしょりだ!」
指さして笑っておこう、お前面白いぞ
夢に見そうだ
……ライラどちらのほうがクリームまみれだ?
教えてくれ、これは真剣勝負なんだ
ジェト・ネヘフ
ファル(g00078)と赤サンタで参戦
パイ投げ、やった事はないけどすまほや動画で知識はある
大変楽しげで夢のある良い遊び
やるならガチ
ファル、メリクリ&お覚悟!
その真っ黒ボディを白で染め上げてやる
残留効果は使い放題なので
まずアイテムポケットにパイを詰め込み
飛翔してパイ投げラッシュ
ラッシュの掛け声があったような
オラ無駄ドラ、だったっけ?
風使いでパイの軌道を調節
ヒット&アウェイを心掛けつつ
たまに接近してパイを直接パァン!
身長差を活かし、未来予測も使ってちょこまかする
汚れてなんぼです
私の顔付近に当たったパイは勿体無いので食べる
あ、結構美味し
ライラ、どっちの勝ちだと思う?
これは真剣勝負なので忌憚ない意見を
●愉快にガチるサンタBATTLE
「赤も似合うじゃないか、ジェト。俺はどうだろうか」
「いいんじゃない? 赤いファルも新鮮」
何やら得意気な様子のファルディゴール・バレットレイン(凍壁の鉾・g00078)に、ジェト・ネヘフ(白昼夢・g01750)は思ったままを素直に口にした。
2人とも、赤いサンタ服姿である。
互いに黒系統の服装が多く、ほぼ赤い出で立ちと言うのは新鮮さがあった。
「ところでファル。パイ投げ知ってる?」
これから始めるパイ投げについて。
「私はやった事はないけどすまほや動画で知識はある」
「エジプトとは全く異なる文化だが、俺もパイ投げは知っているぞ」
ジェトが訊ねれば、ファルディゴールはあっさりと頷いて話を続けた。
「愉快でそれで、楽しむべき理だ。なあ、そうだろう」
「うん。大変楽しげで夢のある良い遊び」
ファルディゴールの言葉を、ジェトが首肯する。
そこに何処からか飛んで来た流れ弾なパイが、ジェトの頭上を過ぎてファルディゴールの顔にベシャッと当たった。
「これはノーカンだ」
背伸びしてファルディゴールの顔のクリームを拭いてやりながら、ジェトが告げる。
「やるならガチがいい」
ジェトは外から飛び込んできた偶然に左右されない勝負をご所望。
「そうしよう。俺も流れ弾で負けたくはないからな」
二つ返事で、ファルディゴールも頷く。
パイ投げの楽しみ方は人それぞれ。真剣勝負として没頭するのも、きっと一興だ。
「それじゃあ――」
「ああ、サンタBATTLEだ!」
そして顔を拭けるほど近づいていた2人の距離は、同時に後ろに跳んで一気に離れていった。
「ファル、メリクリ&お覚悟!」
ジェトがパイを手に空中に飛び出す。
「その真っ黒ボディを白で染め上げてやる」
照明を背に投げられたパイに、ファルディゴールは背中の翼を大きく広げた。
バサァッと大きく羽搏いた勢いで、一瞬、パイが浮く。
「めりーくりすます!」
その隙にファルディゴールは悠々と一歩引いてから、頭上のジェトへパイを投げ返す。
「流石に単発じゃ当たらないか」
未来予測で悠々と避けたジェトの両手に、忽然とパイが現れた。
――アイテムポケットだ。
新宿島ならば、10個作れる。クリームを崩さずに入れられる数は限られるが、それでも素手で運べるより多い。空中戦を挑む上で、パイの数を確保する為にこれ以上はあるまい。
「なら、ラッシュだ。確か掛け声は――オラ無駄ドラ、だったっけ?」
色々混ざった声をあげながら、ジェトは空中を飛び回りながら次々とパイを投げ放つ。
「ジェトは数で来るか」
その全てを避けるのは諦めて、ファルディゴールは翼を盾代わりにのらりくらりとやり過ごし、合間に両手でパイを投げて応戦。
ジェトと同じことをしようと思えば出来た。
けれどそれでは――楽しくない気がする。
「やるなファル。なら――」
手数では中々勝負がつかないと見たジェトは、急降下。床スレスレを飛んで、低い位置からパイをぶつけに行くつもりだ。
「それを待っていたぞ、ジェト」
接近戦を待っていたのは、ファルディゴールも同じ。
パァンッ!
ジェトが下から掬い上げるようにぶつけたパイと、ファルディゴールが振り下ろしたパイが、同時に相手に叩きつけられた。
●決着、そして
2人の勝負は、周りのパイがなくなるまで続いた。
「ふ、ふふははは!」
ファルディゴールの口から上がる笑い声。
「いい感じクリームまみれだぞ! ジェト、笑い事レベルでべっしょりだ!」
「夢の使者たる私には褒め言葉――あ、結構美味し」
指差して笑って来るファルディゴールに返して、ジェトは顔の周りについたクリームをなめとる。
「クリームまみれはファルもだろう。翼が天使みたいに真っ白だぞ」
ジェトもファルディゴールを指差し言い返す。
そして――。
「……ライラどちらのほうがクリームまみれだ?」
「ライラ、どっちの勝ちだと思う?」
お互いに譲る気が無いと察して、2人は同時に案内人のライラ・バルターグ(星刻道導・g03371)に裁定を求めた。
「教えてくれ、これは真剣勝負なんだ」
「これは真剣勝負なので忌憚ない意見を」
「真剣勝負ですか。そう言う事でしたら、私も真剣に計測致します」
2人の声音に、ライラも真剣な声で返して――チャキッと物差しを構えた。
――計測中。
「勝者、ファルディゴール様」
「っし!」
「……負けたか」
ライラの告げた結果に、ファルディゴールが拳を掲げてジェトがぽつりと呟きを漏らす。
2人の身長差は約30cm。それはそのまま、表面積差だ。どちらがクリーム塗れかを競うのであれば、表面積は言わばHPだ。
「途中から見ていましたが、お二方とも、避ける気、あまりなかったですよね?」
ライラの指摘に、2人は思わず顔を見合わせた。
そう言えば、避ける事よりもパイをぶつける事の方を考えていた。
「ま、パイ投げだからな?」
「汚れてなんぼだろう」
顔を見合わせたまま、2人は小さく笑い合った。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【冷気の支配者】LV1が発生!
【現の夢】がLV2になった!
効果2【ロストエナジー】がLV3になった!
ハーバート・コールフィールド
(サポート)
クリスマス…寒いけども楽しそうだね。
ゆっくり楽しめたらいいね、ジェリー。
冬仕様の厚着で参加。
パーティー楽しみつつ場に合わせた曲を奏でたりもして盛り上げ手伝ってみるよ。
この場所に似合う雰囲気…クリスマスだし何だか楽しくなってくる曲とか?
一応新宿で定番の曲は覚えて練習してきたから頑張る…!
あと名物とか特徴的な出し物とかあったら内心興味津々、控えめにそっと近づき楽しんでみたいな。
他の時先案内人とか近くにいるなら見所とか聞いてみたいかも。
・ジェリー
騎士らしい性格の保護者役。寒さには強い。
基本的に主の傍にいて一緒に穏やかに楽しんでいる風な感じ。
たまに抱え上げられてふかふかされたり。
※アドリブ絡み等お任せ
●いつか映像化しても良い様にEDを付けよう(しません)
――♪ ――♬
パイ投げが終わり、ディアボロス達が去ったホールに、ゆったりとしたメロディが流れている。
ハーバート・コールフィールド(奏で語る竜・g03385)が、愛用のアコーディオンでクリスマスの定番メロディのひとつを弾いていた。メーラーデーモンの『ジェリー』も、シャンシャンと鈴を鳴らしている。
「パイ投げのエンドロールっぽいの一曲、お願いします」
あちこちのクリスマスパーティを見て回り、求められれば場に合う曲を奏でる。そうしてクリスマスを過ごしていたハーバート達は、ライラ・バルターグ(星刻道導・g03371)のそんな一言でここに連れて来られていた。
「それでは、綺麗にしましょう」
ハーバートの演奏に合わせて、ライラが【クリーニング】を発動すれば、会場がみるみる綺麗になっていく。
壁も床も窓も、天井までも着いていたクリームが消えていく。
常人のパイ投げだったら、此処までにはならないだろうと言う光景が消えていく。
クリスマスが終わり、元の日常にまた戻るように。
――♪♪
「……これで良いかな?」
「はい。ありがとうございます。良いエンディングが録れたかと」
一曲弾き終えたハーバートに、ライラはぺこりと頭を下げた。
エンディングとか、エンドロールとか、まるで映像が残っているかのような話である。
あるのだ。実はあるのだ。
パイ投げに参加していたディアボロス諸兄はそんな事いつしていたのかと思うかもしれない。
けれど、此処はホテルのホールである。
監視カメラくらいあるさ。
「まあ始まってから思いついて録ってたので、編集前に皆様に許可を頂かないといけないんですけどね」
仕方ないじゃないか。OP段階では思いついていなかったんだから。
成功🔵🔵🔴
効果1【通信障害】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】がLV3になった!