【獣神王朝エジプト奪還戦】偉大なる蘇生の果て(作者 湊ゆうき)
#獣神王朝エジプト
#【獣神王朝エジプト奪還戦】セケンエンラー・タア
#獣神王朝エジプト奪還戦
#ファーストアタック
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●死体捨て場に宿る命
最終人類史において、『エジプトはナイルの賜物』という言葉が知られているように、ナイル川は古代エジプトの人々を支えてきた肥沃な川である。その一方、毎年氾濫することも知られ、それが肥沃な大地を生み出す要因でもあった。
その氾濫したナイル川によって辺りがすっかり水没してしまった低地に、無数の死体が浮かんでいた。その死体は人間のものではなく、力が弱く役に立たなかったとみなされたマミーや、マミーに覚醒できなかったリターナーなどが打ち捨てられているのだった。おおよそ、役立たずの死体を遺棄する死体捨て場といったところだろう。
死体で溢れるその場所は当然のように水は淀み、穢れに満ち、耐え切れないほどの腐臭が漂っている。
訪れるのは死体を捨てに来る者だけと思われるその場所に姿を現したのは、セケンエンラー・タアであった。
「ヨロコブがイイ。オマエ達に、真のファラオに仕える力を与えてヤル」
誰もが見放し、打ち捨てられた死体に向け、そう語り掛ける。
「屑人デにしかナレナイ、オマエ達が、ファラオの役にタツは、望外のコトでアルぞ」
今度こそ役に立ってみせるのだと尊大に言い放つ。
「セケンエンラー・タアの名の元ニ、そのチカラを見せヨ」
その言葉に力を与えられたように、水に浮かんでいた死体たちが、マミー屑人兵となり、役立たずだった頃とは違う、新たな力を得て立ち上がる。
新たな命と増大した力を与えられたマミー屑人兵達は、セケンエンラー・タアの偉大な力に感謝し、平伏すると、祈りを捧げる。
「オマエ達の体ハ、その力ニ耐えラレず、自滅スルだロウ。僅かナ時間でアルが、その忠義を示すノダ」
感謝を捧げられたセケンエンラー・タアは、再び命を得たマミー屑人兵達の未来を無慈悲に予言する。死体から作った即席の戦力ではあるが、その数は夥しく、忠義に応えようと恐怖を知らぬ捨て石の兵は厄介な敵となって立ちはだかることだろう。
●新宿駅グランドターミナルにて
「皆様、お集まりいただきありがとうございます」
新宿駅に集まったディアボロスたちへと、ファナン・トゥレイス(人間の風塵魔術師・g01406)が頭を下げ、今回の作戦の説明を始める。
「いよいよ獣神王朝エジプトでも大地を奪還する好機がやってきました」
一般人のリターナー化による『見せかけの死者の復活』を利用し、一般人から絶大な信仰のエネルギーを収奪していた獣神王朝エジプト。そうすることで、信仰のエネルギーから生み出した強力なクロノ・オブジェクトにより、断片の王の戦いである『七曜の戦い』に備えて盤石の態勢を整えていた。
「皆様の目覚ましい活躍により、強大なクロノ・オブジェクトを生み出していたジェネラル級エンネアド『大いなるトート』の撃破を始め、『巨大砂上船スフィンクスの奪取』『アスワン大城壁の破壊』『トループス級エンネアドの生産地であったナセル湖の機能停止』……更には、信仰の礎であった『死者の書の破壊』により、クロノ・オブジェクトの有意性を失い、人々の信仰を失うことになりました」
そしてこの機を逃さず、百門の都テーベに攻め寄せたディアボロスは、ルクソール会戦に勝利して、テーベの城壁を破壊。クフ王を守護するべく出撃して来た『神域の守護神』マフデトも撃破し、断片の王である『クフ王』をいよいよ追い詰めたのだ。
「追い詰められたクフ王は、七曜の戦いに勝利する為に準備していた『太陽の船』を始め、歴代のファラオであるジェネラル級マミーを解き放ち、決戦態勢に入りました」
もはや戦力を温存してはいられないほどクフ王も窮地に立たされているのだろう。
そしてこの決戦に乗じるように、排斥力の弱まった獣神王朝エジプトの土地を奪おうと、幻想竜域キングアーサーのドラゴンや断頭革命グランダルメの自動人形も戦いに介入しているという。
更に、南からは『巨獣大陸ゴンドワナ』の巨獣の群れが、東のシナイ半島からは、『蹂躙戦記イスカンダル』のジェネラル級ディアドコイ『救済者プトレマイオス』が多数の亜人を率いて、攻め寄せてきているのだ。
「獣神王朝エジプト奪還戦では、エンネアドやマミーに加えて、4勢力のクロノヴェーダとも戦う事になるでしょう。ですので、これらの軍勢に対して戦争直前に攻撃を仕掛けて戦力を削ることが出来れば、戦争の機先を制することが可能となるのです」
だが、敵は大戦力。全てを倒すことは不可能。ならば引き際を間違えず、充分な打撃を与えたらすぐに撤退することが重要となるだろう。
「皆様に対処していただきたいのは、セケンエンラー・タアが命と力を与えた死体……マミー屑人兵です。知能が低く動きも鈍いため、皆様が苦戦するような相手ではありません。ですが、セケンエンラー・タアへの感謝と忠義から、いずれ朽ちゆくその身を惜しむことなく、怯むことなく立ち向かってくるでしょう。特に集団になると厄介な相手かと思います」
どうか退き際を間違えないでください、とファナンは表情を引き締め告げるのだった。
「このように奪還戦へと至ることが出来たのは、数々の素晴らしい提案を上げてくださった攻略旅団の皆様とそれを実現してくださった皆さまのおかげです。敵も大きく弱体化している……そう考えて間違いと思います」
だが、断片の王・クフ王は健在。これまでの奪還戦とは状況が違っている。
「ですが油断はできません。確実に勝利に近づくために、事前に敵の戦力を削ることが望まれます。どうか皆様、よろしくお願いいたします」
獣神王朝エジプト奪還戦。
その前哨戦も歴史を取り戻す重要な戦いになるだろう。
リプレイ
御髪塚・小織
世界を奪回するための戦。私の力でお役に立てるかは分かりませんが、微力を尽くしましょう。
仲間と連携し、敵を迎え撃ちます。戦場全体の動きに注意し、孤立や突出を避けます。
包囲や逃走阻止を受けない様に、なるべく遠距離から仕掛けます。
【清蕩献上】使用。敵の足元から湧き上がる清らかな液体で包み込み、酩酊させると同時に【浄化】し消滅させてゆきます。
取り囲まれない様に走り位置を変えつつ反撃に対抗。
大天使の宿った「髪の剣」を操り斧を受け止め受け流し、防御します。
引き際を見逃さぬ様に。仲間と機を合わせ、迅速に撤退しましょう。
奴崎・娑婆蔵
よう各々方
包帯ぐるぐる巻き仲間同士、仲良くしやしょうぜェ?
(嘯きつつ進み出、『トンカラ刀』と『トンカラ大刀』のニ刀流を抜く)
そちらさん方は……成る程、鉄砲玉か
ではせめて、その干乾びた骨身にも染みるような熱い喧嘩で送ってやると致しやしょう
手前、姓は奴崎名は娑婆蔵
人呼んで『八ツ裂き娑婆蔵』
その死に花、いっぺん八ツ裂きにしてやりまさァ
・敵勢のうち最先頭付近の個体に目星を付け、斬り込む
・下肢や脚腱等、移動にまつわる身体構造を破壊し、敵の転倒を誘発、敵側の後続の機動を覚束なくさせる狙い
・敵の行軍速度を鈍らせて回り、一太刀と返す刀程度の手間で斬れそうな個体は足を止めずに斬りと、包囲されぬよう留意し立ち回る
一角・實生
命を弄ばれ利用されて
それでも忠義を尽くす姿はどこか悲しく映る
ならば可能な限り一撃で――それが俺にできることだ
仲間とは連携していくよ
グラナトゥムを手にいつでも援護できる位置に
囲まれるのは避けたいので後方や側面にも気を配ろう
偵察・観察し仲間と情報を共有していく
敵の動きの鈍さに付け込みたい
存分に惹きつけたらパラドクスを発動
呼び寄せた敵諸共熱波で焼き尽くしてしまうよ
また蘇って利用されるよりかは眠った方が良いと思うんだ
そのまま【泥濘の地】の効果を使い敵の鈍足に拍車をかける
仲間が攻撃しやすくなるし、撤退もよりしやすくなるだろう
退く時は仲間と同時に
狙いは殲滅じゃない、敵の戦力を削り皆が無事に帰ること
レイア・パーガトリー
*連携アドリブ歓迎
ただそのまま死ぬよりも希望のある未来に縋ってしまっただけなのでしょうけれど…
酷いわ、こんな風に命をもてあそぶなんて
せめて私たちに出来ることといえば、そんな歪な生をここで終わらせてあげるしかないわね
そして必ず奪還戦で一矢報いましょ
なるべくはぐれた敵を探し、家臣団突撃に巻き込んで
反撃で取り囲まれる前に一撃離脱の要領で撤退するわ
死への恐れが無いからといって足が速くなれるわけじゃないもの
リンバスのスピードについて来れるかしら?
(無茶して自壊してくれれば助かるのだけど…)
【防衛ライン】を役立てて、仲間も安全に離脱できるようにしましょ
仲間を取りこぼさないように、撤退のフォローもするわね
ハーリス・アルアビド
クロノヴェーダの思惑のままに冥界から引き離されたばかりか打ち捨てられるとは…。
大地の神ゲブよ、お力添えを。未だ冥界に戻る事すらできぬ者達を御身に迎え入れて下さいますよう。
いかなる大群も地を行くのであれば神の掌の上。迸る砂礫と衝撃波に飲み込まれるなら進軍速度も鈍るでしょう。
味方と連携を取り、孤立して囲まれないよう常に状況を観察して動きます。
有用な残留効果も全て利用して確実に数を減らして行きましょう。
一部の進軍速度に乱れがあれば、その周囲も隊列が乱れます。その隙を突いて味方と共に粉砕します。
●ナイルの激闘
テーベ北方、ナイル川周辺を守護するファラオの一体『セケンエンラー・タア』によって、死体捨て場に遺棄されたマミーやリターナーは、『マミー屑人兵』となり新たな力と命を得ていた。そうして、彼らは来るべき決戦の日に捨て石の兵として投入されるはずだった。
パラドクストレインでやってきたディアボロスたちが目にしたのは、ナイル川周辺で次々と蘇った無数のマミー屑人兵たちの姿。包帯を巻いた身体に衣服とも呼べないぼろぼろの布を纏い、手に粗末な石斧を持つ姿は共通していたが、再利用された死体たちは腐りかけた顔をしていても全く同じ顔の者はいない。それは彼らがかつてリターナーとして存在していた証のようだった。
(「ただそのまま死ぬよりも希望のある未来に縋ってしまっただけなのでしょうけれど……」)
その姿を見ては、レイア・パーガトリー(毒棘の竜騎士・g01200)は痛む胸を抑えるように、拳をきゅっと握りしめる。
レイアはディアボロスに覚醒する前は地方領主の娘であった。仕えられる身分であったが故に、主君に尽くそうと、忠義を果たそうとする気持ちはわかるのだ。けれど、与えられた力の大きさによってすぐ先に滅びが待っているだけの命を与えるなんて。
「酷いわ、こんな風に命をもてあそぶなんて……!」
レイアは【女王の棘】を手に、無双馬『リンバス』に跨った。
(「せめて私たちに出来ることといえば、そんな歪な生をここで終わらせてあげることしかないわね」)
ディアボロスが奪還を果たせば、このような悲劇はもう起きないだろう。
レイアと同じように、ハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)もまた目の前のマミー屑人兵たちの姿に秀麗な顔を歪めては呟いた。
「クロノヴェーダの思惑のままに冥界から引き離されたばかりか打ち捨てられるとは……」
自らもリターナーであるが故、ハーリスは再び命を与えられたマミーたちが蘇生者の命令に逆らえないことを知っている。ハーリス自身は、被差別民であった自分を友として家族として愛してくれた主人を今でも敬愛する強い気持ちで自我を確立しているのだ。
ならば彼らを解放するには倒すしかない。
「大地の神ゲブよ、お力添えを。未だ冥界に戻る事すらできぬ者達を御身に迎え入れて下さいますよう」
楽園への送り手である古代の戦士はそう神へと祈りを捧げると、メヌのヒエログリフが彫られた黄金の鎖を大地に打ち据えた。大地神が応えるかのように、マミー屑人兵が立つ大地へと衝撃が走るとともに、砂礫が迸ると、群れを飲み込んでいく。
「いかなる大群も地を行くのであれば神の掌の上。迸る砂礫と衝撃波に飲み込まれるなら進軍速度も鈍るでしょう」
知能が低く、連携攻撃などは出来ないであろうマミー屑人兵ではあるが、その数の多さから集団に取り囲まれ集中攻撃を受ければ、いかにディアボロスと言えど危険だ。だからこそ動きを鈍らせ、囲まれないように気を配る。
それは、一角・實生(深潭鷲・g00995)も考えていたことだった。
手にした石斧でディアボロスを殴ろうと、砂礫の衝撃に身を削られても怯まず前進してくるので、取り囲まれないよう周囲に意識を払い、狙撃銃【グラナトゥム】を手に仲間が孤立しないよう警戒。
(「命を弄ばれ利用されて、それでも忠義を尽くす姿はどこか悲しく映る……ならば可能な限り一撃で――それが俺にできることだ」)
實生もまた、レイアやハーリスと同じように利用されているだけのマミー屑人兵に思うところがある。この場でその全てを倒し、セケンエンラー・タアの支配から解放することは出来なくても、力に堪え切れず自滅する前に眠らせてやることはできるはずだ。
實生は自分に狙いを定めて石斧を振るうマミー屑人兵の集団を引きつければ、天使の翼を羽ばたかせ、呪詛に塗れた大熱波を放つ。何体かのマミーたちがその身を焼き尽くされ動かなくなる。
「……また蘇って利用されるよりかは眠った方が良いと思うんだ」
身体があればまた蘇らされかねない。彼らにとっての安寧は、肉体から解き放たれてこそ得られるものかもしれない。
實生のパラドクスによってマミー屑人兵たちの立つ大地はぬかるみ、ますます移動速度を落とす。
「よう各々方、包帯ぐるぐる巻き仲間同士、仲良くしやしょうぜェ?」
そう嘯きながら動きの鈍ったマミー屑人兵の前に進み出たのは、【トンカラ刀】と【トンカラ大刀】の二刀流を構えた奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)だ。
いなせに着こなした白い着物の下、全身に巻かれた包帯姿は確かに同類と言えるのだろう。娑婆蔵もまたリターナーであった。
「そちらさん方は……成る程、鉄砲玉か」
極道の世界において、鉄砲玉とは自らの命を顧みずに敵対者を殺害する者を指す。
「ではせめて、その干乾びた骨身にも染みるような熱い喧嘩で送ってやると致しやしょう」
そう宣言する娑婆蔵の黒の羽織の背中に描かれているのは奴崎組の桐紋。
「手前、姓は奴崎、名は娑婆蔵。人呼んで『八ツ裂き娑婆蔵』。その死に花、いっぺん八ツ裂きにしてやりまさァ」
マミー相手にも丁寧に名乗りを上げた娑婆蔵は、最も先頭を行く個体へと向かって斬り込んでいく。狙うのは、下肢だ。移動にまつわる身体構造を破壊することで、転倒を誘う。集団で行動しているが故に、一体の転倒は後続の機動を阻害する。
「あっしの刀の切れ味はどうでございやしょう?」
二刀流を操り、一太刀斬り込むと同時に返す刀で付近のマミーも斬りつけ、囲まれないよう注意しながら脚を狙い、行軍速度を鈍らせていくのだった。
(「動きを鈍らせてもらえるのはありがたいですね。私の力でお役に立てるかは分かりませんが、微力を尽くしましょう」)
仲間たちの考えられた攻撃に感謝しながら、御髪塚・小織(人間の奇蹟使い・g08859)もまた、この世界を奪還するための戦いに意欲を燃やしていた。
小織もまた包囲されないよう戦場全体の動きに注意を払い、戦況を見つめていた。
この世界では、信仰をエネルギーとして人々から集めている。小織はかつて宗教団体の神の依代として崇められていたが、神は信じていなかった。けれどディアボロスとして覚醒した際に信仰にも目覚めた。だが、命を弄ぶような奇跡を認めるわけにはいかない。
「死出の旅のお供に。一献お傾けを」
辺りに浮かび上がるのは、死体で濁ったナイルの川の水ではなく、清らかな透き通った液体。それが数体のマミーを包み込むと、酩酊させ、浄化していく。
「先頭の進軍速度が乱れたおかげで、後続の隊列も乱れているようですね」
仲間たちの攻撃により、思うように進軍できないマミー屑人兵たちは、ディアボロスを囲むことが出来ず、石斧での攻撃も真価を発揮できていない。
その隙を見抜いたハーリスは、仲間と共に攻撃を叩き込んでいく。
そんな中にも集団からはぐれて進軍する個体もいた。そういった個体が多いと囲まれる危険性もあるので、レイアははぐれた敵を優先して狙うことにした。
「リンバス、行きましょう!」
花を飾ったたてがみと尻尾を靡かせて、美しい無双馬はレイアに応えるようにいななくと、雄々しく駆けていく。
馬上のレイアが掲げた旗印の元へ集うように、パラドクスで現れた無数の武者たちの幻影が敵陣へと斬り込んでいく。
それは集団からはぐれた個体を沈黙させ、集団をかき回し、足を止めさせる。
敵陣へと乗り込めば取り囲まれる危険も増すが、レイアは無理をせず一撃を与えればすぐさまその場から離脱。
「死への恐れが無いからといって足が速くなれるわけじゃないもの。リンバスのスピードについて来れるかしら?」
怯む様子は見せないが、持てる力には限りがあるのだろう。セケンエンラー・タアに与えられた力のせいか、胸の赤い魔石が鈍く光る。無理をすれば、かりそめの命はすぐに燃え尽きるだろう。
相手の動きを鈍らせ、優位に立って戦闘を行うディアボロスの攻撃に、マミー屑人兵たちも石斧で反撃を試みるが、大ダメージを与えるほどではなかった。
ハーリスが放つ衝撃と砂礫が敵を呑み込み動きを鈍らせ、娑婆蔵とレイアが斬り込み多くのマミー屑人兵の動きを止める。小織のパラドクスは、腐臭漂う戦場に芳しい香りと浄化をもたらした。
そうして實生が放つ大熱波がマミー屑人兵の身体を焼き尽くしていく。
「もうこれ以上利用されることがないように……」
實生の緑瞳に憐憫の色が滲む。
その時だった。
「ファラオに仕える屑人を燃ヤスなど、許されるコトではナイ!」
戦場に響いた声は怒気をはらんでいて、ディアボロスの行為が相当頭にきていることが声音からも伝わった。
現れたのは、傷だらけの身体を包帯で覆った凄絶な姿をしたジェネラル級マミー、セケンエンラー・タアであった。
「あれがジェネラル級……」
「鉄砲玉を放った親玉は随分とお怒りのようでさァ」
小織がその壮絶な姿に息を呑み、娑婆蔵が親玉を引っ張り出せたとにやりと笑う。
セケンエンラー・タアは包帯に包まれた顔から覗くぎょろりとした落ち窪んだ目を燃やされたマミー屑人兵、続けてパラドクスを放った實生の方へと向けると呪詛を紡ぐように言葉を吐き出す。
「お前達が燃ヤシた屑共ハ、肉の一片までクフ王ニ捧げラレルモノ」
マミー屑人兵を憐れんでいるのではない。ファラオのものを焼き尽くしたことが逆鱗に触れ、ディアボロスの前に姿を現したのだ。その様子からはクフ王への異常なまでの忠誠心が窺えた。
「王のモノヲ侵シたモノに、裁キを下ス」
セケンエンラー・タアの全身を覆う包帯が意思を持っているかのように解け、触手のごとき動きを見せたと思うと、實生の身体を絡めとり、巻き付いては締め上げる。
「この裁キから逃レるコトは出来ナイ」
「ぐっ……!」
骨を砕くほどの締め付けと同時に体内に流れ込む呪いが肉体と精神を蝕み、凄まじい苦痛を与える。
それは余りにも圧倒的な力であり、反撃することも叶わなかった。
「ここは退きましょう」
戦況を判断し、ハーリスは仲間を促す。十分な戦果は上げた。狙いは殲滅じゃない、敵の戦力を削り皆が無事に帰ることだと實生も言っていたのだから。
「包帯ぐるぐる巻き仲間の親玉に一太刀お見舞いしてやりたかったところではありやすが、それは次回にとっておきやしょう」
「實生さん、大丈夫ですか?」
悔し気に太刀を収めた娑婆蔵と、ぐったりした實生に駆け寄る小織。
「こんな風に命をもてあそぶ相手は許せない! でも今はみんなで無事に帰ることが大事。必ず奪還戦で一矢報いましょ」
負傷した實生をリンバスに乗せると、レイアは仲間たちを先導する。
「撤退よ!」
セケンエンラー・タアの次の攻撃が来る前に、ディアボロスは素早く撤退。【防衛ライン】の存在もあって心強い。
自身の力を見せつけたことに満足したのか、これ以上の損害を免れたと思ったのか、セケンエンラー・タアがディアボロスを追いかけてくることはなかった。
ジェネラル級の力の差を見せつけられたが、それはディアボロスたちが十分な戦果を上げたからこそ。前哨戦でやるべきことはしっかり果たせたのだ。
来るべき日、全ての大地の奪還を目指し、ディアボロスは決戦に挑む。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
【泥濘の地】LV1が発生!
【防衛ライン】LV1が発生!
【動物の友】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV2が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!