ホワイトハントレス ブラックハート(作者 土師三良
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#吸血ロマノフ王朝  #パイプライン北上作戦  #バクー油田  #コーカサス地方 

●吸血ロマノフ王朝にて
「らららららららぁ~♪」
 張りのある声が空気を震わせ、雪に彩られた木々にぶつかっては跳ね返り、森の中に浸透していく。
「んー! 今日はいつにも増して喉の通りがいいわー」
 発声練習を終えて満足げに微笑んだのは、軍服を着た金髪紅眼の美女。
『軍歌劇のナージャ』という通称で知られるアヴァタール級ヴァンパイアノーブルである。
 ナージャの前には、同じく軍服姿の娘たちが並んでいた。深く被られた軍帽と厚く巻かれたマフラーの間から覗く双眸には生気がない。しかし、べつのものが彼女たちの生命力(と呼ぶには禍々しすぎる力かもしれない)を主張している。
 全身を包む暗い血の色のオーラだ。
「戦いの必勝法を知ってる?」
 微笑みを浮かべたまま、ナージャは娘たちに語りかけた。
「答えは簡単。絶対に勝てる段取りをつけた上で戦えばいいのよ。つ、ま、り、なにが言いたいのかというと――」
 微笑みの質が変わった。
 より残虐で邪悪なものへ。
「――小汚い野鼠どもを見つけても、いきなり攻撃を仕掛けちゃダメだってこと。他の部隊に連絡して充分な人数を集め、きっちり包囲してから叩きなさい。わかった?」
 娘たちは無言で敬礼を返すと、音も立てずに散開した。
『小汚い野鼠ども』を狩るために。

●新宿駅グランドターミナルにて
「このパラドクストレインの行き先は『吸血ロマノフ王朝』だ」
 パラドクストレインの車内に足を踏み入れたディアボロスたちにそう告げたのはインセクティアの精悍な青年。
 時先案内人の李・令震である。
「吸血ロマノフ王朝のコーカサス地方では、攻略旅団が立案したパイプライン北上作戦が進められている。名前の通り、バクー油田から伸びるパイプラインを北上して敵の拠点へ向かうという作戦だ。今回の任務もその一環。パイプラインに沿って進むだけの簡単なお仕事です……と、言いたいところだが、現実はそんなに甘くない」
 パイプラインは非常に長大であり、一度の任務で最終地点に到達することはできない。
 しかも、行く手にはクロノヴェーダが立ち塞がっている。
「『マリア・ボチカリョーワ』と『ロマン・ウンゲルン・シュテルンベルク』なる二体のジェネラル級クロノヴェーダによって編成されたいくつもの遊撃部隊が動いている。奴らの最終目的はバクー油田の奪還であり、俺たちとは逆にパイプラインを南下しているらしい。その道程でディアボロスを発見したら、他の部隊と連携し、包囲し、殲滅しようとするはずだ」
 百戦錬磨のディアボロスといえども、複数の遊撃部隊に包囲されてしまえば、苦戦は必至。よって、敵に先に発見されないように(言い換えると、こちらが先に敵を発見できるように)慎重に慎重を重ねて進む必要があるだろう。

「コーカサス地方は広大な上に山や森が多い。今回、おまえたちに行ってもらう区域も、パイプラインにブチ抜ぬかれた森の中だ。敵の遊撃部隊と戦闘する際には木々を利用して立体的な動きをすることができるかもしれないし、木々を遮蔽物にすることもできるかもしれない」
 だからといって、ディアボロスだけが有利というわけでもない。敵もまた同じ条件で戦えるのだから。
「場合によっては何日間もの長丁場になる任務だ。現地に到着してもいきなり北上したりせず、まずはウォーミングアップでもして雪の森林での戦いに慣れておくのもいいかもしれないな」
 そう提案すると、令震は力強い声で宣言した。
「では、行くぞ!」
 パラドクストレインが走り始めた。

●吸血ロマノフ王朝にて
 雪に染まった針葉樹の森をヴァンパイアノーブルの少女兵士たちが行く。
 静かに。
 とても、静かに。
 ヒトでないとはいえ(しかも、小柄であるとはいえ)体重を有していないわけではないらしく、雪面には足跡がしっかりと刻まれているが、新雪を踏む際に生じる小気味よい音はまったく聞こえない。
 息遣いも聞こえない。
 もちろん、話し声もない。
 ただ、小さな体から立ちのぼる暗いオーラだけが多弁に雄弁にゆらめいていた。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
10
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【怪力無双】
2
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わる。全力で力仕事をするならば「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げる事が可能になる。
【強運の加護】
3
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【照明】
1
ディアボロスの周囲「効果LV×20m」の空間が昼と同じ明るさに変化する。壁などで隔てられた場所にも効果が発揮される。
【腐食】
2
周囲が腐食の霧に包まれる。霧はディアボロスが指定した「効果LV×10kg」の物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)だけを急激に腐食させていく。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【隔離眼】
1
ディアボロスが、目視した「効果LV×100kg」までの物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)を安全な異空間に隔離可能になる。解除すると、物品は元の場所に戻る。
【泥濘の地】
1
周囲の地面または水面が泥濘に変わり、ディアボロスは指定した「飛行できない対象」の移動速度を「効果LV×10%」低下させられるようになる。
【エアライド】
1
周囲が、ディアボロスが、空中で効果LV回までジャンプできる世界に変わる。地形に関わらず最適な移動経路を見出す事ができる。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【光学迷彩】
5
隠れたディアボロスは発見困難という世界法則を発生させる。隠れたディアボロスが環境に合った迷彩模様で覆われ、発見される確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【モブオーラ】
2
ディアボロスの行動が周囲の耳目を集めないという世界法則を発生させる。注目されたり話しかけられる確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【平穏結界】
3
ディアボロスから「効果LV×30m半径内」の空間が、外から把握されにくい空間に変化する。空間外から中の異常に気付く確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【完全視界】
4
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【活性治癒】
2
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【使い魔使役】
3
周囲が、ディアボロスが「効果LV×1体」の通常の動物を使い魔にして操れる世界に変わる。使い魔が見聞きした内容を知り、指示を出す事もできる。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【通信障害】
2
ディアボロスから「効果LV×1,800m半径内」が、ディアボロスの望まない通信(送受信)及びアルタン・ウルク個体間の遠距離情報伝達が不可能な世界に変わる。
【寒冷適応】
4
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が、摂氏マイナス80度までの寒さならば快適に過ごせる世界に変わる。
【コウモリ変身】
2
周囲が、ディアボロスが小型のコウモリに変身できる世界に変わる。変身したコウモリは最高時速「効果LV×50km」で飛行できるが、変身中はパラドクスは使用できない。
【水中適応】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が水中で呼吸でき、水温や水圧の影響を受けずに会話や活動を行える世界に変わる。

効果2

【能力値アップ】LV10(最大) / 【命中アップ】LV5(最大) / 【ダメージアップ】LV7 / 【ガードアップ】LV3 / 【フィニッシュ】LV2 / 【リザレクション】LV2 / 【ドレイン】LV5(最大) / 【アヴォイド】LV9 / 【ダブル】LV3 / 【ロストエナジー】LV3 / 【グロリアス】LV2

●マスターより

土師三良
 土師三良(はじ・さぶろう)です。よろしくお願いします。

●このシナリオの概要
 森の中のパイプラインに沿って北上しつつ、クロノヴェーダの遊撃部隊を倒してください。
 攻略の順序は②→①→③→④です。
 他の同タイプのシナリオと違い、集落の一般人は登場しません。代わりにウォーミングアップの選択肢があります。

●選択肢について
 ①敵部隊哨戒任務(👑7)
 トループス級クロノヴェーダ『『婦人血死隊』骸兵』を警戒しながら移動します。敵に見つかる前にこちらが先に見つけましょう。骸兵たちはオーラがあるので視覚的にはそこそこ(暗いオーラなので、あくまでも「そこそこ」レベル)目立つものの、音はまったく立てません。
 この選択肢を成功させずに敵と戦闘をおこなうことも可能ですが、その場合はディアボロス側が著しく極めて物凄くめっちゃベリー不利になります。

 ②ウォーミングアップ(👑3)
 現地でウォーミングアップをします。誰かと模擬戦をするもよし、雪景色に映えるパラドクスを披露するもよし、剣豪よろしく瞑想にふけるもよし、筋肉を裏切らせないために運動をするもよし。「後半の戦闘に備えてパラドクス効果を残留させておける」という実利的なメリットもあります。

 ③👾巡回警備のトループス『『婦人血死隊』骸兵』(👑7)
 トループス級クロノヴェーダ『『婦人血死隊』骸兵』との戦いです。

 ④👿アヴァタール級との決戦『『婦人血死隊』軍歌劇のナージャ』(👑11)
 アヴァタール級クロノヴェーダ『『婦人血死隊』軍歌劇のナージャ』との戦いです。
 ナージャはオペラが大好きですが、さすがに行軍中は骸兵と同様に静かにしています。でも、戦闘が始まったら歌いまくります。ららら~♪

●【光学迷彩】について
 パラドクス効果【光学迷彩】を使いたくなるシチュエーションだとは思いますが、あまり過信しないほうがよろしいかと。【光学迷彩】の恩恵を受けるのは「隠れたディアボロス」です。はなから隠れていない状態では意味がありません。また、発見される確率が半減するだけであり、絶対に見つからないわけではありません。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。
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このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


神那岐・修
気候も結構違うだろう
まずは身体を慣らしておくか

適当な瓦礫や岩など探し雷轟で打岩
なるべく大きさを保って真球になるよう励む
足首から膝へ。腰へ。肩、肘――拳まで
動作する部位だけの限界稼働を瞬間的に連ね無形から完遂までの間を限りなく無に
基本を忘れず、かつ最速最巧を常に心がけ繰り返す

終えたら岩の完成形を変えて同様に
空中から、低姿勢から、後背へなど想起しうるあらゆる動きを試しておく

ついでに時間による明暗や気温の変化を経験と知識両面で補完し後に活かす

※連携・アドリブ歓迎


渡月・兎良
ウォーミングアップ、経験が不足している私には欠かせないわね。
新しい薬品を試すには良い機会かしら。
手近な場所、とは言っても人の居ない場所を目掛けて薬品を投擲。
パラドクスの効果や範囲などを検証して行くわね。
持参したタブレット端末に手早くデータを入力。
……なるほど、もう少し改良の余地がありそうね。
一通り検証を終えたら休憩しようかしら。
他の人の様子を眺めるのも悪くはなさそうね。


佐伯・雪香
《寒凪》
アドリブ歓迎

ナータ(レナータ)に肩慣らしの模擬戦付き合って貰ってウォーミングアップしようかな
お互い怪我させないよう寸止めを心掛けていこう

機動力は……[天魔融装]、[ソニックブーツ]込みでも地形活かされるとナータが上かな
[大いなる双鍵]の頁を[念動力]で沢山従えて、手数を優位に戦っていこう
木々を利用した三次元的な機動で近付いて、従えた頁を飛ばしての[斬撃]を牽制に、ソニックブーツの斬撃や衝撃波を打ち込むね
隠密能力も明らかにナータが上だし、姿を見失ったら即座に[天環の加護]で付与した闇で目眩しして仕切り直しを図るよ

ボクがナータを視認出来る僅かな隙間に【光陰流転】を打ち込んでみせる


レナータ・ペトリェンコ
【寒凪】
アドリブ・連携OK

肩慣らしということで雪香との近〜中距離を想定した模擬戦をします
手合わせをする機会も多くないでしょうし
全力は出しませんが、手は抜きませんよ

木の陰や盛り上がった雪などあらゆる場所を遮蔽物や視線を切る目的で使います
雪中戦で地形や空気を肌で感じ取るのは大事です

機動力を活かし[ダッシュ]や[ジャンプ]で[ダンス]をするように攻撃を避けつつ隠れ、”秘密の棘”の[投擲]や”ガットショット”の[制圧射撃]で牽制をします

時折歩いたり立ち止まったり、わざとらしく笑います

隙を見せたら《ビー・クワイエット》、【モブオーラ】で視線を切りつつ距離を詰めて首元に”シルバーフォックス”を突き付けます


リップ・ハップ
迂回しろ迂回。そいか綺麗に切り拓け
もなーんでこんなとこパイプライン通すかなーー

静かにイメトレ。精神集中。休憩ともゆー
……英気を養うとか言った方がかっこよさげ? わはは
何度か赴いた鮮血狩猟場でのこと思い返す
あっこでも雪の森の中を行動した。救助すべき人ら探して駆けずり回った

雪を踏みしめ、樹々を縫い、迅速に駆ける走法
敵に気取られず密やかに事を為す立ち回り
経験を選りすぐり、研ぎ澄まして、身体に最適を描かせる準備をする【精神集中、肉体改造】

ついでと言っちゃなんだけど、そこで見てきた、そして起きかねなかった奴らの所業も
八つ当たり?
違うね
ロマノフで起きてる事に対する怒りだ、ロマノフの何処にぶつけたって正当よ


ギオルギー・ルバソフ
シシシ、野鼠ねぇ……
いーじゃねェの、野鼠
群れて牙を剥いて柱や食料を食い尽くし
気づかぬ内に内側から食い破る
ネズミの怖さってモンを知らしめてやんヨ

オレ様の技は血液を大量に使うから
今のうちに輸血用パックの補充やら栄養補給やらしとくかね
肉とかねェの?肉

メシ喰いながらあたりをブラブラしつつ【地形の利用】が出来そうな場所や立地
ついでに敵が【地形の利用】してきそうな場所を見てまわるゼ
相手の立場に立って考え、相手がされて嫌なことを立案する
戦闘の基本ジャン?シシシ


●序幕
 雪化粧という言葉でもまだ足りないほどに白い装飾が施された森の中。
 密集した木々を押し倒し、厚く積もった雪に半ば埋もれるような形で、JR山手線の車両に似た列車が停まっていた。
 異様な光景ではあるが、その列車がパラドクストレインとなれば、話は別だ。
「なーんで、こんなとこにパイプラインを通すかなー。迂回しろ、迂回。そいか、綺麗に切り拓けっての」
 車両側面に並ぶ黄緑色の扉が一斉に開き、大きな黒いマスクで口元を隠した少女がそのうちの一つから降り立った。
 ダークハンターのリップ・ハップ(Reaper Harper・g00122)である。
「ホント、なんで森の中を突っ切らせたんだろうね。コストを抑えるためかな?」
「長期的に見ると、逆にコストが嵩みそうな気もしますけどね」
 言葉を交わしながら、二人の娘が列車から降りてきた。デーモンの佐伯・雪香(天魔の翼・g01694)と、リップと同じくダークハンターのレナータ・ペトリェンコ(“Кпык”(クルィーク)・g01229)だ。
 その後に続くのは、雪香のサーヴァントであるオラトリオのシエロ。
 そして、道着を纏った長身の少年。
「あたりまえだが、新宿島とは気候がかなり違うな。まずはしっかり身体を慣らさないと……」
 静かに独白する彼――神那岐・修(紫天修羅・g08671)の声には十代後半らしからぬ貫禄が滲んでいる。
 次の降客の声は対照的に幼かった。
「無理して慣らす必要はないわよ。気候のほうを身体に合わせるから」
 渡月・兎良(睡蓮・g08789)。声だけでなく、外見も幼い。だが、リップや修よりも年上であり、レナータや雪香とは同年齢――二十歳である。
 そう、彼女はヒルコなのだ。
「つまり、パラドクス効果の『寒冷適応』を使ってくれるってことっすか? そいつぁ、ありがたいっすねえ。シシシシシッ……」
 卑屈な笑い声を漏らしながら、青白い顔をした猫背の少年が列車から降りてきた。
 兎良と同様、この見るからに不健康な少年――ギオルギー・ルバソフ(創贋卿・g07323)も人間ではない。
 吸血鬼である。

●リップ・ハップ(Reaper Harper・g00122)
 兎良が『寒冷適応』を発動してくれたから、ぬっくぬくのほっかほかだ。
 シャレになんない寒さから解放されて人心地ついたところで、改めて周囲を見回してみる。
 所狭しと立ち並んだ木(チクチクしそうな針葉樹ばっかり)と、これでもかとばかりに積もった雪。なんつーか……ジョーチョ? オモムキ? まあ、よく判んないけど、良い感じの景色じゃね。
 ただし、森を貫通しているブッといパイプラインが視界に入ると、ジョーチョもオモムキも一瞬にして消えちゃうけど。
 無粋極まりないパイプラインは十数メートル置きに支柱が設けられていて、地面よりも高い位置を走っていた。でも、余裕があるのは下の空間だけ。さすがにパイプラインと重なる場所の木は伐採されてるみたいだけど、左右に生い茂ってる木はそのまんまの状態。
「こういう地形もアリっちゃあ、アリだわな。森に身を潜めてパイプラインを辿ってけるわけだしよ。けど、敵も同じ条件で南下できるんだよなぁ……イタしカユしってやつだ
 そう言いながら、ギオルギーが血液パックを取り出し、ストローをぶすっと突き刺した。吸血鬼用の携行食?
 心身ともに不健全そうな吸血鬼はパックの中身をちゅうちゅう吸い始めたけど、すぐにストローから口を離した。
「やっぱ、血だけでは物足りんわ。リップ、肉とか持ってねえ?」
「持ってるわけないっしょ。私、飲み食いは一切しないんだ」
「マジで!? もしかして、サイボフォビア? 将来の夢は即身仏?」
「うっせーわ。あっち行け」
 しっしっと手を振って、ギオルギーを追い払っていると――
「令震の助言に従って、まずはウォーミングアップに励むとするか」
 ――修が皆に提案した。
「うん」
 と、同意したのは兎良。
「ウォーミングアップは欠かせないわ。私は経験が不足しているから」
「じゃあ、ボクは――」
 雪香がレナータのほうを見た。
「――肩慣らしに模擬戦でもしようかな。つきあってくれる、ナータ?」
「喜んで」
 レナータが頷いた。

●渡月・兎良(睡蓮・g08789)
「シシシッ……面白そうなことが始まったじゃねえか。なあ、修よぉ」
 ギオルギーが修の脇腹を肘で軽くつついた。
「どっちが勝つか賭けね? 四百CCの血液パック二つってとこでどうだ?」
「血液パックなど持ち合わせていない。そもそも、賭けるつもりもない」
 けんもほろろ。
 話題の主の雪香はといえば、そんな外野のやりとりに気を取られてはいないみたい。もう一人の話題の主であるレナータを真っ直ぐに見据えてる。
 レナータも雪香を直視していた。その手にあるのはSFっぽい造形の散弾銃。
 一方、雪香が持ってる武器は……いえ、武器と言えるのかしら? それは一冊の本だった。戦いに使うからにはただの本じゃなくて、魔導書の類なんでしょうけれど。
「準備はいい?」
 本の背表紙を指先で撫でながら、雪香が問いかけた。
「はい」
 レナータが答えた。散弾銃のポンプを動かす『ガシャン!』という音を添えて。
 一拍の間を置いて、シエルが片手をさっと上げた。
 見えない大きな指で弾かれたかのように雪香とレナータが同時にダッシュ。
「これはパラドクスじゃなくて、クロノ・オブジェクトによる攻撃に過ぎないから――」
 魔力の翼を大きく広げて走りながら、雪香は魔導書を開いた。
「――実戦では通用しないんだけどね」
 魔導書から一枚のページが千切れ、風に乗って……いえ、風を切って飛んだ。手裏剣さながらに。
 レナータは真横に飛び、木の陰に身を隠した。
 その木にページが突き刺さり、『カッ!』と音を立てた。そして、端を木に食い込ませた状態のままで普通の紙に戻り、ひらひらと力なく揺らめいた。

●神那岐・修(紫天修羅・g08671)
 雪香は狙いを外したわけではあるまい……というよりも、命中させるつもりでページを放ったのではないだろう(『通用しない』と自分で言ってたしな)。おそらく、目的は相手を牽制すること。
 レナータは牽制に牽制で応じた。
 木の陰から飛び出すなり、散弾銃を轟かせたのだ。
 雪香は先程のレナータと同じように真横に飛んだ。傍にあった木が彼女に代わって散弾を浴び、雪と木っ端の混じり合ったものが煙のように飛び散った。
「容赦ないなあ。もしかして、本気で殺り合ってる?」
 冗談めかした調子でリップがレナータに尋ねた。
「さすがに本気は出しませんよ。でも――」
 レナータは足を止め、にっこりと笑った。
 そして、散弾銃のポンプを操作して排莢し、第二射を見舞う……と、見せかけて、素速く散弾銃を捨て去り、小さなダガーを投擲した。
「――手は抜きません」
「それはこっちも同じ!」
 雪香は斜め前方にジャンプして、ダガーを回避。木を蹴って空中で軌道を変化させつつ、魔導書のページを再び射出した。
 咄嗟に木の陰へと滑り込むレナータ。その木にページが命中して紙に戻り……と、先程と同じ光景が繰り返されている間に、雪香が距離を詰めていく。
 しかし、木の陰に身を隠したはずのレナータがあらぬ方向から姿を現し、雪香に襲いかかった。
 しかし、雪香は瞬時にレナータに向き直り、魔力の翼から光の剣を生成して投擲した。
 しかし、レナータは……と、戦いは二転三転。
 そして、数分後――
「あぶねえ、あぶねえ。どっちかに賭けてたら、大損こいてるとこだったぜ」
 ――ギオルギーが冷や汗をぬぐう仕種をしてみせた。
 彼の視線の先では、雪香とレナータが密着せんばかりの超近距離で対峙している。雪香は魔力の翼から生み出した光の剣を、レナータは刃が湾曲したナイフを、互いに相手の喉元に突きつけて。
「いえ、どちらに賭けていようが、損はしないでしょ」
 しらけた顔をして、兎良がギオルギーに言った。
「他の誰も引き分けに賭けてないんだから」

●レナータ・ペトリェンコ(“Кпык”(クルィーク)・g01229)
 雪香との模擬戦の際にはパラドクス効果の『モブオーラ』を活用するつもりだったのですが、上手くいきませんでした。よく考えてみたら、あれは戦闘に利用できるような効果ではありませんね。人から注目されたり話しかけられたりする確率が減少するだけであり、敵の目から消えるわけでもなければ、敵に忘れ去られるわけでもないのですから。
 ……と、模擬戦を振り返って一通り内省を終えた頃には、他の人たちも各々で訓練を始めていました。
 たとえば、修さん。
 高さも幅も人の背丈ほどある大きな岩の前に立ち、目を閉じて呼吸を整えています。
「あの岩を拳で叩き割るのかな?」
 私の横で雪香が呟きました。
「いや、ちょっと違うな」
 と、答えたのは修さん。雪香の声が聞こえていたようです。
「使うのは拳だけじゃない。それに叩き割るのではなく――」
 閉じられていた目がゆっくりと開きました。
「――削り砕く!」
 次の瞬間、彼は拳の一撃を岩にぶつけました。いえ、『一撃』に見えたのは錯覚。目にもとまらぬ速さで続け様に何回もの攻撃を繰り出したようです。
 そして、本人が言った通り、拳だけでは終わりませんでした。掌底、指先、肘、膝、爪先、踵……四肢のあらゆる箇所を武器にして、岩を削り、その形を変えていきます。
 数秒後に修さんが動きを止めた時、その前にあるのは『岩』とは呼べない代物になっていました。
 滑らかな球体です。
「たいしたもんだね」
 雪香が拍手をしました。それに合わせるかのようにシエルも拍手。
「こうなると、武道家っつーよりも芸術家だな」
 少し離れた場所で見物していたリップさんが言いました。雪香とシエルのように拍手こそしていませんが、目には感嘆の色が少しばかり滲んでいるような気がしないでもありません。
 修さんはといえば――
「……」
 ――誇る様子も見せず、球体を無言で凝視しています。リップさんが言うように、その姿は作品の出来映えを確認している芸術家を彷彿とさせますね。

●ギオルギー・ルバソフ(創贋卿・g07323)
 レナータさんと雪香さんとのバトルを観戦した後、オレは自分なりのウォーミングアップに精を出した。そりゃあもう出しまくった。森の奥に向かって進み、ある程度のところでUターンして元の場所に戻り、今度は別の方向に歩き、ちょいと小休止して血液パックで栄養補給し、また元の場所に戻って……。
 ブラブラ歩いてるだけに見えるって? そいつぁ、半分間違ってるぜ。確かに『ブラブラ歩いてる』けども、それ『だけ』じゃない。周りの景色をよく見て、地形をしっかりチェックし、イメージトレーニングに励んでるんだよ。
 イメージしているのは自分じゃなくて、敵の戦い方だ。敵の立場になって考えれば、敵/自分がされて嫌なことも判るかもしれねえ。で、その『嫌なこと』を実戦に活かすって寸法よ。
 ……もっとも、なにも思いつかなかったけどな。
 これといった収穫もないまま皆のところに戻ってみると、風景が少しばかり変化していた。修の前に鎮座していたゴツゴツの岩がスベスベの玉になってんだ。
「修がパラドクスで削りまくって丸くしたんだよ」
 と、リップが説明してくれた。
「そいつぁ、すげーや。石工としても食っていけるな」
 テキトーに軽口を叩きつつ、オレは考えた。修との接し方を改めるかどうかについて。岩を削るほどのおっそろしい輩となれば、もうちょっと下手に出たほうがいいかもしれない。年齢はほぼタメだけど、『修』から『修さん』に格上げしようかしらん?
「まだ終わってない……」
 修(とりあえず、さん付けは保留だ)が誰にともなく呟き、ゆらりと動いたかと思うと、例の玉にパンチだのキックだのを浴びせ始めた。別の形に変えるつもりらしい。
 なかなかダイナミックな見世物だが、その光景に興味を一ミリも示してない奴もいた。
 兎良さんだ。
「私も今からパラドクスを使うわ。流れ薬品が当たったりするといけないから、あまり近寄らないでね」
 と、兎良さんは警告したが……『流れ薬品』って、なんだよ?

●佐伯・雪香(天魔の翼・g01694)
 兎良さんが謎の言葉を口にしたけれど、彼女の手にあるもの――緑色の液体が入ったフラスコを見たら、その意味が理解できた。
 ナータ(レナータのことよ)も判ったみたい。
「なるほど。流れ弾ならぬ流れ薬品ですか……」
「そういうこと」
 兎良さんはナータの呟きに頷き、フラスコを放り投げた。
 それは太めの木にぶつかって粉々に砕け散り、ドッカァーン! ……と、爆発するのがお約束だけど(シエルもそう思っていたらしく、フラスコが割れた瞬間にビクリと肩を震わせた)、液体が引き起こした現象は爆発とは似て非なるものだった。
 超局地的な小さい吹雪だよ。
 小さいと言っても、ボクとナータが模擬戦で披露した魔導書『大いなる双鍵』の攻撃やショットガンの銃撃と違ってパラドクスを伴ったものだろうから、実戦でクロノヴェーダにダメージを与えることはできるだろうけど。
「ふむ。これはもう少し改良の余地がありそうね……」
 吹雪が消え去ると、兎良さんはタブレットになにごとかを入力した。
 そして、今度は赤色の液体を投げて、またタブレットをいじり、次に青色の液体を投げ、タブレットをいじり、続いて黄色の……と、同じような作業を繰り返した。修さんは芸術家に例えられてたけれど、兎良さんは実験にいそしむ化学者に見えるね。
 いつの間にか、修さんのほうは第二のウォーミングアップを終えていた。丸かった岩が立方体になってる。
 その立方体の上でリップさんが胡座をかいていた。両目を閉じて、どこか虚無的な表情をしている……のかしら? 顔の下半分がマスクで隠されているので、よく判らない。
 なにやら話しかけにくい空気を漂わせているけれど――
「なーにやってんだ?」
 ――ギオルギーさんが無遠慮に声をかけた。
「見りゃ判るだろ。精神集中してんだよ」
 リップさんは目を片方だけ開き、ギオルギーさんを睨みつけた。
「まあ、休憩ともゆーけど。いや、『英気を養ってる』なんて言い方のほうがカッコよさげ? わははー」
 もう片方の目も開き、マスク越しの笑い声が辺りに響いた。
「で、充分に養えた?」
 ボクが尋ねると、リップさんは笑うのをやめて肩をすくめた。
「いや、英気じゃなくて怒りがふつふつと湧いてきたよ。鮮血狩猟場で目の当たりにしたヴァンパイアノーブルどもの所業を思い返しちゃったからさ」
 気持ちは判る。ボクもリップさんと同じ戦場で同じような光景を見たことがあるから……。
「まあ、この怒りも今回の敵にまとめてぶつけてやるけどね」
「それって、八つ当たりじゃね?」
「違うぞ、ギオルギー。私の怒りは吸血ロマノフ王朝で起きてることすべてに対するもんだ。だから、吸血ロマノフ王朝のどこにぶつけたって正当よぉ」
 シエルがまたビクリと震えた。
 リップさんのマスクの奥に浮かんでいる表情を想像したのかもしれない。
 
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【怪力無双】LV1が発生!
【寒冷適応】LV1が発生!
【平穏結界】LV1が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
【強運の加護】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV2が発生!
【ロストエナジー】LV2が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!

ノイン・クリーガー
【旭日革命軍団】で参加。
コードネーム:ゴースト

[人物]
基本的に淡々と任務を遂行する兵士。
隠密行動、偵察などが得意な忍者タイプ。

[心境とか]
ロシアは久し振りだな。
脚が鈍ってないといいがね…。

[行動とか]
針葉樹の森か。
冬季迷彩服に現地の植物で偽装を施す。
ただ植物を付ければ良いというものでもない。バランスが大事だ。
銃やガスマスクも白く塗らないとな。

偽装ができたら仲間の射撃訓練に付き合う。

「いいね、やろうか。
ただし、俺を発見できたらね」

身を隠しつつ【地形の利用】を行いながら【忍び足】でこっそり移動しつつ死角から忍び寄り、雪玉を投げる。


イオナ・ガルバローゼ
【旭日革命軍団】

※連携・アドリブ歓迎
【寒冷適応】は使えたら自分も使います
これまでの村落を通るルートと違い敵の数が分からないのは難しい戦いになりそうですね
最大何人が何組に分散して
どこまで広がって待ち構えて居るのか分からないというのは

哨戒に備え【コウモリ変身】で飛行に慣れておきます
蝙蝠は普通冬眠するので飛べば目立つと思いますが。
上手く木に隠れて飛べるよう移動しましょう。

おや射撃訓練をされている方が
ええ奴らは銃も使います射撃に慣れるのも訓練になるでしょう。
レイさんの射撃を逃げ回り。
Ophelia Butterflyを解き放ち射撃の的に見立ててみせましょう。
ノーブルヴァンパイアも飛びますからね……。


レイ・シャルダン
【旭日革命軍団】
チーム外連携・アドリブ歓迎です。
コードネーム:スカイレイダー

訓練……。
現地訓練とは珍しいですね、良い機会と思って頑張りましょうか。

『アクロヴァレリア』を点火して【飛翔】
『Boeotia』による武装の制御で
上空から勢いよくメンバーの周りをくるくると精密機動で飛び回ります。
うん、今日も絶好調かな?
高速で飛翔しつつ、木々の間をすり抜け、そして瞬時に動きを止め木に身を隠す。

飛翔訓練が終われば次は機械魔導弓に矢を番えて
射撃の訓練。
まぁ訓練と言っても、全部AUTOAIMなのですけどね!
誰か、受けて見ませんか??(シュバババッ)


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
【旭日革命軍団】
連携アドリブ歓迎
コードネーム:フェーデル
効果を活用

寒冷適応があるとはいえ、雪も凌がないとな
冬装備、スノーブーツで臨む

今から【平穏結界】を張っておこうか
心置きなく準備運動だ
気温を計り
低温用ガンオイルが凍らないか確認しとこう……
サイレンサーつけて銃の動作確認

【飛翔】を借り空中戦でウォーミングアップ
双眼鏡を使って環境の偵察、観察、情報収集を
――針葉樹の森、か
樹木の高さや密度を把握
落雪、動物、風など音はあるか

樹上を音を立てずに飛び移り
雪を落とさずに枝に乗る
いかに音なく移動するか

射撃訓練には回避で付き合おう
樹を遮蔽にしつつ撹乱軌道で飛び回る

気持ちは……ウォッカでウォーミングアップしとく?


●幕間
「ここに来る度に『寒冷適応』のありがたさを実感するな」
「実感どころか、痛感してるよ」
 二人の男が言葉を交わしていた。
 実感しているのは、天使のエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)。コートの背中のスリットから突き出した翼、防寒仕様の帽子から流れる髪、周囲の銀世界を映している瞳――そのすべてが青い。
 痛感しているのは、サイボーグのノイン・クリーガー(ゴースト・g00915)。雪中迷彩が施されたフード付きの衣服は雪の森にそぐわしいものだったが、フードから覗く顔は異様だった。いや、正確に言うと、顔は覗いていない。そこに見えるのはガスマスクだ。
「改めて考えてみると、このディヴィジョンの住人はすごいですね」
 電脳ゴーグルを装着した銀髪の少女が話に加わった。
 ガジェッティアにして航空突撃兵のレイ・シャルダン(SKYRAIDER・g00999)である。
「パラドクス効果が使えないにもかかわらず、厳しい寒さに耐えて生き抜いてるんですから」
「うむ。イオナもディアボロスになる前は必死に寒さに耐えてたのか?」
 そう問いかけて、エトヴァは視線を横に向けた。
 だが、そこには誰もいない。先程までは、吸血鬼の少年――イオナ・ガルバローゼ(空染めの一輪・g07485)が立っていたのだが。
 ノインも少年の消失に気付き、きょろきょろと辺りを見回した。
「どこに行ったんだ?」
 彼の呟きに応じて、誰かが頭上で返事をした。
 言葉ではなく、パタパタという羽音による返事だ。
 反射的に空を見上げたノインたちの目に映ったのは、小さなコウモリであった。

●イオナ・ガルバローゼ(空染めの一輪・g07485)
 皆様の頭上を何回か旋回した後、僕はそこから離れて、木々の間を飛び回りました。使用しているパラドクス効果は『飛翔』ではなく、『コウモリ変身』です。小さなコウモリの姿を取れば、斥候や哨戒がやりやすくなるのではないかと思った次第。
 この辺りにも野生のコウモリはいるようですから、敵に見咎められることはないはず。もっとも、それは野生動物らしく自然に振る舞った場合の話です。いかに姿がコウモリであろうとも、怪しげな行動を取れば、警戒の目を向けられるでしょう。
「御一緒させてもらいます」
「俺も付き合おう」
 左右から声が聞こえてきたか思うと、二つの大きな影(僕が小さくなっているから、相対的に大きく見えるだけですが)が僕を挟み、伴走ならぬ伴飛行を始めました。
 レイさんとエトヴァさんです。
「木の密集度が高く、日の射し込む領域が少ない。地上からは上空の様子が把握しづらく――」
 誰にともなく口述するエトヴァさん。ただ飛んでいるのではなく、周囲の環境をチェックしているようです。
「――上空から地上についても同様。森を見下ろせるほどの高度を取ったとしても、アドバンテージは得られないだろうな」
 高度云々ではなく、飛行という行為そのものにアドバンテージがないかもしれません。敵も空を飛べますから。
 レイさんも同じことを考えたのか――
「空中戦にも備えていたほうがいいかもしれませんね」
 ――フライトデバイスを噴かして、僕たちから離れました。
 そして、あちらの木の裏に回り込んだかと思うと、そちらの木の裏から飛び出し、今度はこちらの木へ……。
「そうだな。生来的に飛べる敵に対して、アクロバティックな機動がどこまで通じるかは判らないが……いや、判らないからこそ、今のうちに慣れておくか」
 エトヴァさんも縦横無尽に目まぐるしく飛び回り始めました。

●レイ・シャルダン(SKYRAIDER・g00999)
「うん。今日も絶好調かな?」
 アクロバット飛行に切りをつけ、ボクはパイプラインの傍に着地しました。
 ここは樹海と言ってもいいくらい広大な森林ですが、南北に伸びるこのパイプラインに沿って歩く限り、遭難という事態は起こり得ません。ただし、戦いは必ず起きます。ボクらはパイプの終着点を目指して北上し、敵はバクー油田を奪回するために南下しているのですから、いずれどこかで接触するはず。問題は接触のシチュエーションですね。出会い頭にぶつかったり、敵に先に見つけられたりしまったら、大きな被害が出るかもしれません。
 そんなことを考えていると、青い羽根がはらはらと舞い落ちてきました。そして、それらの主たるエトヴァさんが静かに降り立ちました。天使の降臨ですね。いえ、比喩ではなく。
 続いて降りてきたのはコウモリのイオナさん。ちっちゃな足が雪面に触れる寸前にくるっと一回転して、本来の姿――女装した男の子に戻りました。
「ん?」
 と、イオナさんは訝しげな顔をしました。
 その視線の先にいるのはノインさん。小振りな木の前で葉っぱをむしっています。
「なにをされているのですか、ノイン様?」
「迷彩服に御当地の味付けってやつを付け足してるんだ。より自然に見えるように……いや、『見えないように』と言うべきか?」
 イオナさんの問いに答えながら、ノインさんは自分の衣服のそこかしこに葉っぱをくっつけていきました。
「言っておくが、植物をやたらめったら着ければいいってもんじゃないんだぞ。こういうのはバランスが大事なんだ」
 彼が施したバランスは絶妙なものでした。黒い斑点が散った白地の衣服に緑の葉っぱのアクセントが加わり、輪郭が捉えづらくなっています。『光学迷彩』等のパラドクス効果は便利ですが、こういうアナクロな手法も馬鹿にはできませんね。

●ノイン・クリーガー(ゴースト・g00915)
「『寒冷適応』で寒さは凌げるが、雪のほうは如何ともしがたいな」
 美しい象眼が施された大型のリボルバーの手入れをしながら、エトヴァが言った。先程からずっと足踏みしているが、それは落ち着きがないからではなく、『如何ともしがたい』存在に対抗するための装備――スノーブーツの調子を確かめているからだろう。
「そうですね」
 レイがエトヴァの足下を見やり、それから俺に目を向けた。
「ノインさんの足まわりは大丈夫なんですか?」
「ああ。吸血ロマノフ王朝には何十回となく来てるし、ついこの間も鮮血狩猟場で一暴れしたばかりだ。足が鈍る暇もないよ」
「腕も鈍らないようにしないといけませんね」
 レイの声に『ピン!』という軽やかな音が重なった。弓形ガジェットウェポンの弦を鳴らしたんだ。
 それに矢を番えて、彼女は皆を見回した。
「飛行訓練の次は射撃訓練といきませんか?」
「やってみよう」
 即答したエトヴァの声に『カチャリ』という小気味よい音が重なった。リボルバーのシリンダーをインしたんだ。もっとも、訓練に使うつもりはないらしく、腰のホルスターに納めたが。
「ただし、避けるほうに専念させてもらう。俺にとっては、射撃訓練じゃなくて回避訓練だ」
「では、わたくしも……」
 と、イオナが挙手した。
「銃撃を避けることに慣れておきたいのです。ヴァンパイアノーブルたちは銃も使いますから」
「ノインさんはどうされますか?」
 レイがまた俺を見た。
「いいね、やろう。遠慮なく射ってくれ。ただし――」
 ガスマスクのレンズ越しにレイを見つめ返しながら、俺はゆっくりと後退した。
「――俺を見つけることができたらね」

●エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)
 ノインさんがじりじりと後ずさり……そして、いきなり見えなくなった。横走りして森の中に姿を消したんだ。
 レイさんが無言で矢を引き絞った。ノインさんが消えた森ではなく、空に鏃を向けて。
 電脳ゴーグルの表面に鏡文字(レイさんから見れば、正しい向きなんだろうけど)の列が次から次へと映し出されていく。標的を射るために有用な情報を装着者に伝えているんだろう。
 標的の一人である俺は翼を広げ、再び舞い上がった。地を蹴って走り出すイオナさんの姿が視界の隅に入ったが、彼の逃避行を見届ける余裕などあるはずもない。すぐにその場から飛び去った。
「でも、射撃訓練にはならないかもしれませんね。このパラドクスは自動照準ですから」
 後方からレイさんの声が聞こえた。いや、後方だったのはほんの数秒だけ。俺はジグザグに、あるいは弧を描き、あるいは垂直に上昇して、木々の間を縫うように飛んだので、彼女の相対的な位置は常に変わり続けた。
 にもかかわらず、こちらの位置は筒抜けらしい。風を切る音が響き、一本の矢が空から降ってきた。それは地に突き刺さることなく、軌道を何度も変え、意思を有する生物のように俺を追った。自動照準の上に誘導弾とは……確かに射撃訓練にはならないな。空中戦闘機動の訓練にはもってこいだが。

 結局、矢を振り切りことはできなかった。三十秒ほど経ったところで足に命中。鏃が丸められていたので、負傷はしなかった(実戦用の鏃だとしても、致命傷にはならなかっただろうが)。
 レイさんのところに戻ると、彼女の傍にはイオナさんがぽつねんと立っていた。俺と同じく、矢を受けたらしい。
「ノインさんは?」
「補足済みです」
 俺の問いに答えるなり、レイさんは横を向いて矢を飛ばした。
 ほぼ同時に彼女の左脇腹でなにかが弾け、白いものが飛び散った。誰かが雪玉をぶつけたんだ。
「やれやれ。見つかってしまったか」
 矢が飛んでいった方向から、『誰か』であるところのノインさんが姿を現した。わざとらしく肩を押さえているのは、そこに矢が命中したことを伝えるためだろう。
「ほぼ相打ちですね。ノインさんもお見事でした」
 一礼するレイさん。
「さて、次は――」
 と、イオナさんが口を開いた。
「――レイ様だけではなく、ノイン様とエトヴァ様も撃つほうの訓練をされてはどうでしょう? 標的はわたくしが用意しますので」
 イオナさんの背後から蝶の群れが飛び立った。どの蝶も薄紅色の輝きを帯びている。パラドクスの産物か?
「綺麗な蝶だなあ。標的にするのは気がひける」
 そう言いながらも、ノインさんは消音器付きの小型拳銃を抜いた。
 
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
【コウモリ変身】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
【平穏結界】がLV2になった!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
【アヴォイド】がLV2になった!
【ガードアップ】LV1が発生!

ロキシア・グロスビーク
アドリブ連携ご自由に

【寒冷適応】はあれば使う感じで
最近、守りが疎かになっている気がするんだ
そのせいか大怪我しがちだから、その辺を練習するよ

服下に這わせたMoon-Childを外骨格化させる挙動の確認
腕、胸、お腹、太腿など一通り流動体を移動させては外骨格化を試す
これは問題ないかな……

あとは【飛翔】をもうちょい巧みに使いたいんだ
足先に力を込めて、踏み込み。超低空【飛翔】を試みる
地面を滑るかのように
これが咄嗟に前後左右へ出せると攻防の幅が広まるんだけども……

後は【ジャンプ】から空中で【飛翔】挙動に切り替えを試みたり
できる、できないを重ねるのも大事だからね
他の人のを見学したり何か応じてみるのも良いかな


風宮・優華
【旭日革命軍団】
連携やアドリブは歓迎するわ。
コードネーム:スノーホワイト

防寒の魔術がかかった制服を身に纏い、相棒のシラユキと一緒に周囲を探索するわ。
ここなら、邪魔にならないかしら?

【高速詠唱】を使用し「吹雪よ」の一節を唱え、氷魔術のパラドクスを発動。
辺り一面に美しい淡雪が降り注ぎます。

魔術の調子もいいわね。やっぱり、スノウメイジの生まれたディヴィジョンなだけあって、相性がいいのかしら?
その後も、得意な氷雪系魔術を疲労しない程度に発動させていき、魔術の調子をあげておくわ。


レイラ・イグラーナ
【旭日革命軍団】
コードネーム:アサー

敵の迎撃は厄介ですが、私たちが解放したチャイコフスキーの大領地などまでは気が回っていない様子。
引き付けて、あちらで暮らす人民の皆様が無事に暮らせるよういたしましょう。

そのためにもまずはできることから準備ですね。
機を逃がさなければ、準備はいくらしても足りることはございません。

2着「雪色のコート」を持ってきていますので、今回の地形や木の生え方を確認して、より姿が隠しやすい物を選びます。
雪色のコートを着用し、雪の中でもしっかり踏みしめて歩けるよう「スノーブーツ」を着用したら気配を断って【光学迷彩】で隠れる訓練や、仲間と次の作戦行動について打ち合わせを。


十野・樞
アドリブ連携歓迎
有用な残留効果は有り難く使用させてもらう

【旭日革命軍団】
コードネーム:フェルラ

こう、ツンドラ、一面の雪、とにかく寒い!と視覚的にクルものがあると、精神的なウォーミングアップが必要だと、しみじみ思うぜ……
俺も年かね?

敵部隊発見のための使い魔を見繕うべくあたりを【観察】
仲間が【飛翔】で偵察するなら、森の中を探るためにコーカサスヤマネコといったところかね(猫大好き)
新宿から持参したささみジャーキーで懐柔するか

使い魔がゲットできたら
【風使い】で音を遮断しつつ魔術を放ち、術の威力と遮音のほどを確認

また、以降の作戦行動について仲間と詳細を相談する


エリザベータ・シゲトヴァール
●心情
バクー油田の破壊は成った。次に繋げる行動こそが肝要ね。
敵はこちらを迎撃するべくジェネラル級を二人も起用して来ていると言うけれど……その片割れのロマン・ウンゲルンがまるで動いていないのは何故かしら。

●行動
【旭日革命軍団】
コールサイン:ユサール

【パラドクス通信】の感度確認と共に【飛翔】。
【光学迷彩】は寒空や雪の積もった地形に合わせて白やグレー基調。
【偵察】【地形の利用】と【戦闘知識】から周囲の地形を読み、交戦時に優位に働くと思しき地点をピックアップしておく。

【空中戦】の肩慣らしもしておきましょう。
フライトレッグへの着氷にも警戒したいし、気流の向きや強さも頭に入れておきたい。

連携や連絡も密に。


●幕間
 白い長毛種の犬が雪面を行く。
 本人(本犬)は雪に足を取られまいと必死なのだろうが、もこもこした体をよたよたと揺らして歩く様は大きな雪塊か大福が這い進んでいるようにも見えてユーモラスだった。
 しかし、ひとたび戦いとなれば、ユーモラスな雰囲気など消し飛ばされるだろう。
 背中に装着された砲によって。
 そう、シラユキという名のこの犬はパンツァーハウンドなのだ。
「名は体を表すたぁ、このことだな」
 飄々とした空気を纏った四十がらみの男がシラユキに近付き、白雪のごとき被毛を撫でた。
 レジェンドウィザードの十野・樞(division by zero・g03155)だ。
「あ、そう」
 シラユキの前を歩く眼鏡姿の女児――風宮・優華(氷結の魔女/スノーホワイト・g08699)が素っ気なく返した。まだ十歳にもなってないが、彼女も歴としたディアボロスである。
「天然の雪中迷彩ってところね。私にも分けてほしいわ」
 枝を白く染めた大樹の傍でシラユキを眺めながら、フライトデバイスを装備した少女――エリザベータ・シゲトヴァール(聖イシュトヴァンの剣・g00490)が冗談めいたことを真顔で口にした。
「防寒仕様の優れものだもんねー。でも、夏場は色々とキツそう」
 と、楽しげに言ったのはロキシア・グロスビーク(啄む嘴・g07258)。優華と同世代の女児……に見えるが、実は男児だ。
「そうですね」
 銀髪の娘――吸血鬼のレイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)が頷いた。エリザベータと同様に真顔で。
「もっとも、このディヴィジョンに夏場が訪れることはありませんが。クロノヴェーダから奪い返さない限りは……」

●十野・樞(division by zero・g03155)
 雪の上をむっくらむっくら歩くシラユキの姿は猫派の俺でさえ悶絶しそうなほどの破壊力があった。動画を撮ってSNSにあげれば、バズること間違いなし。だけども、優華嬢ちゃんが『邪魔だ! あっち行け!』というオーラを露骨に出してるもんだから(俺の被害妄想?)、俺は泣く泣くシラユキから離れた。
 で、他の仲間たちのところに来てみると――
「こちらがいいでしょうか? それとも、こちらでしょうか?」
 ――レイラが二着の白いコートを交互に体の前に当てて、エリザベータとロキシアに意見を求めていた。
 ブティックで衣服をとっかえひっかえ試着してるシチュエーションを彷彿とさせる(『ブティックは死語だぞ』なんてツッコミは受け付けないぜ。俺みたいなオッサンにとっては現役バリバリの言葉なんだ)が、レイラはお買い物気分でそんなことをしているわけではないようだ。どうやら、どちらのコートがより目立たないかを確認しているらしい。
「私はこっちのほうがいいと思う」
「うん。こっちだね」
 エリザベータが片方のコートを指さすと、ロキシアも同意した。
「そうだな。こっちだ、こっち」
 と、俺もとりあえず同意しておいた。正直、違いはよく判らなかったけどな。女房のショッピングにつきあわされてる旦那の心境ってのはこんな感じなのかもしれない。
「では、こちらにしましょう」
 雪色のコートを羽織るレイラ。
 途端に彼女の姿は銀世界に溶け込み、見えなくなった……なんてことは流石になかったが、ちょっとだけ目立たなくなったのは確かだな。

●レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)
 パイプラインを辿るという本来の目的は当然として、この作戦には別の意義もあります。
 それは、敵の注意と戦力をこのコーカサスの地に引きつけること。そう、私たちがここで作戦を進行している限り、敵も他のこと(たとえば、ヴォトキンスクの奪回など)に気を回す余裕がないはず。
 ヴォトキンスク等で暮らす人民の皆様が無事に過ごせるよう、より多くの敵を引きつけ、そして、倒さなくては……。
 心中で決意を新たにしていると――
「しっかし、ナンだなあ」
 ――樞様が緊張感のない声を出しました。口元を苦笑で歪ませて、ほぼ三色(雪の白、葉の緑、木の茶色)だけで構成された景色を見回しながら。
「兎良の『寒冷適応』のおかげで快適に過ごせるとはいえ……『一面の雪!』とか『とにかく寒い!』ってな視覚的イメージにこうドォーンと迫られると、精神的なウォーミングアップの必要性がしみじみと感じられるぜ」
「肉体的なウォーミングアップも必要だけどね」
 ロキシア様が屈伸運動めいた動作を始めました。
「最近、僕は守りが疎かになってる気がするんだよね。そのせいか、孫権だの司馬懿だの曹丕だのといった大物の蟲将を相手にした時は深傷を負っちゃったし……」
 動作に合わせて、四肢や胸やお腹が衣服を突き破らんばかりに膨らんでは縮み、膨らんでは縮み……鍛え上げられた筋肉が躍動しているように見えますが、実は違います。御本人から聞いたところによると、流動する人工筋肉のようなものを衣服の下に仕込んでいるのだとか。
「装備のチェックも必要よ。とくに着氷には気をつけないと……」
 エリザベータ様が雪の上で軽く足踏みした後、片足の踵で反対の足を軽く蹴り、左右の足を入れ替えてまた同じことをしました。踵が触れる度にコツコツと音がしたのは、フライトレッグを装備しているからです。
「さて、肩慣らしならぬ翼慣らしといきましょうか」
 エリザベータ様は背中のフライトユニットを起動させて、空高く飛び立ちました。
「僕も慣らしておこうっと」
 ロキシア様もまた飛翔しましたが、エリザベータ様のように『空高く』ではありません。雪面を滑っているかのような超低空飛行です。

●エリザベータ・シゲトヴァール(聖イシュトヴァンの剣・g00490)
 空を飛びながら、気流の向きや強さをチェック。
 それに眼下の地形もチェック……しておきたいところだけど、木が生い茂っているので、よく見えないわね。敵の姿も視認しにくいでしょうから(敵も上空の相手を視認しにくいということだけど)空で戦うメリットはないかもしれない。ヴァンパイアノーブルは飛行能力を有しているので、空対地じゃなくて空対空の戦いになる可能性もあるけど。
 続いて、通信機(ノインさんのパラドクス効果で出現したのよ)をチェック。
「ユサールより各員へ。通信機の感度を確認」
『ユサール』というのは私のコールサインよ。
 仲間たちもコールサインを添えて返事を送ってきた。
『こちら、アサー。感度良好です』
 これはレイラさん。
『こちら、フェルラ。りょーこー、りょーこー』
 これは樞さん。
『こちら、スノーホワイト。右に同じ』
 これは優華さん。
『わん!』
 ……あー、シラユキも優華さんの通信機に向かって吠えてるみたいね。
 しばらく飛び回って十二分に『翼慣らし』をした後、私は森の中に降りた。
 そこにいたのは優華さん。シラユキを従えて、パラドクスの試射をしているみたい。
「――」
 小さな口から呪文らしきもの(高速詠唱しているらしく、正確な言葉は聞き取れなかった)が紡ぎ出され、彼女の前面の空間に吹雪が巻き起こった。
 輝きを帯びた吹雪。
 今は亡きジェネラル級ドラゴンに由来するパラドクス『ベディヴィアスノウ』ね。幻想画のように美しい光景だわ。これを浴びせられる敵からすれば、幻想画どころか地獄絵図でしょうけれど。
 吹雪が消え去ると、優華さんは小さく頷いた。
「うん。いい調子ね」
「わん!」
 と、シラユキも頷いた。

●風宮・優華(氷結の魔女/スノーホワイト・g08699)
 誰の邪魔にもならない場所でひっそりと『ベディヴィアスノウ』のウォーミングアップ(氷雪系のパラドクスだから、ウォーミングアップよりもクールダウンという表現のほうが相応しいかしら?)をするつもりだったのだけれど、いつの間にやらエリザベータが現れて見学を始めた。
 それでも気にせずにウォーミングアップ/クールダウンを続けていると――
「精が出るねー」
 ――今度はロキシアがやってきた。パラドクス効果の『飛翔』を使って、雪面から数センチ上を飛んでいる。遠目にはスケートかなにかで滑っているように見えるかもね。
 あたしは手を休めて、彼(見た目は彼女だけど)に尋ねた。
「どうして、そんなに低いところを飛んでいるの?」
「戦闘時の体の制動に『飛翔』を活かすための練習だよ。でも、期待していたほどの成果はないなー。咄嗟に前後左右に移動できたりしたら、攻防の幅が広まるかもしれない……なんて思ってたんだけど、普通にダッシュするのとさして変わらないかも」
「飛行中は踏ん張りが利かないというのもネックだな」
 そう言いながら、樞が木々の間から姿を現した。
「まあ、地雷とか落とし穴とか犬のフンとかのトラップに引っかからないというメリットもあるが……」
 話に加わりながらも、樞はロキシアやあたしのほうは見ていなかった。ちょっとだけ中腰になって、きょろきょろと視線をさまよわせてる。
「なにか探してるの?」
 エリザベータが訊いた。
 樞はそれに答える代わりに――
「あ!? いたいた!」
 ――一本の木を指し示した。
 その幹の陰から小さな動物が顔を覗かせてる。あれは……ヤマネコの類? 詳しいことは判らないけど、ネコ科の動物であることは間違いないわね。
 そして、とても可愛いということも間違いないわ。
 ええ、間違いないわ。

●ロキシア・グロスビーク(啄む嘴・g07258)
 ヤマネコ(なのかな?)は短くて厚い耳をピンと立て、僕らの様子をうかがっている。
「ばう?」
 きょとんとした目でヤマネコを見つめ返すシラユキ。
 一方、主人の優華ちゃんはクールな澄まし顔。だけど、心の中ではヤマネコの可愛さにメロメロになってると見た。賭けてもいいよ。
「チッチッチッチッチッ!」
 樞くんが舌を鳴らして手を差し出した。
 警戒心の強い野生動物がそんな誘いに乗るわけがない……と、思いきや、ヤマネコは木の裏から飛び出し、樞くんのほうにとことこ近付いてく。もしかして、パラドクス効果?
 エリザベータちゃんも同じことを思ったらしく、樞くんに確認した。
「『動物の友』を使ったの?」
「いや、『使い魔使役』で操ってんだ。斥候として利用できるかもしれないからな。だけど、タダ働きさせるつもりはないぜ」
 樞くんは懐中からなにかを取り出し、使い魔と化したヤマネコに与えた。
「ほら、食いな。新宿島から持ってきたささみジャーキーだ」
「うなうなぅーっ!」
 と、奇声を発してヤマネコはジャーキーを貪った。その姿はもはやイエネコ。
「うーん。なかなか可愛らしいけれど――」
 エリザベータちゃんが首をかしげた。
「――猫に斥候役が務まるかしら?」
「務まるかもしれませんが、あまり遠くに移動させることはできないと思います。『使い魔使役』によって操れるのは周囲にいる動物だけですから」
 と、近くの木陰から声が聞こえてきた。
 見ると、そこにいたのはレイラちゃん。今の今まで気付かなかったけど(声を出さなかったら、ずっと気付かなかったかも)、『光学迷彩』を使って身を隠す練習をしていたみたい。
「まあ、近場の斥候しかできないとはいえ、いないよりはマシじゃないかしら」
 と、優華ちゃんがヤマネコにちょっと辛目の評価を下した。あいかわらずの澄まし顔。でも、目はヤマネコに釘付けだ。ジャーキーを必死に貪る姿を見て、メロメロ度が更に上昇している模様。
 同じように澄まし顔をして、レイラちゃんが言った。
「そうですね。こちらはそれこそ猫の手だって借りたい状況ですから……」
「なぁーっ!」
 ジャーキーを食べ終えたヤマネコが大きく鳴いた。
『任せておけ!』とでも言ったつもりなのかもしれない。
 それとも、ジャーキーのおかわりを要求しただけかな?
 
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【光学迷彩】LV2が発生!
【飛翔】がLV3になった!
【使い魔使役】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!
【グロリアス】LV1が発生!
【アヴォイド】がLV4になった!
【能力値アップ】がLV3になった!

●幕間
 ヴァンパイアノーブルの少女兵士たちは山林の緩やかな勾配を下っていた。
 行軍を始めた時と同じように一切の音を立てずに。
 暗いオーラをゆらめかせて。
 しかし、歩みにまったく変化がないわけではない。進行速度が少しばかり落ちていた。敵に近付いている(あるいは敵が近付いている)ことを感じ取り、警戒心を強め、慎重にゆっくりと移動しているのだ。
 実に賢明である。
 そして、愚かでもある。
 彼女たちは想定していないのだから。
 敵たるディアボロスが自分たちよりも強い警戒心を持っていることを。
 自分たちよりも慎重に行動していることを。
 
レイ・シャルダン
【旭日革命軍団】
コードネーム:スカイレイダー
連携・アドリブ歓迎です。

充実した訓練でしたね、定期的にやりたいくらいですよ。
……では次は実戦ですね、その成果を試しましょうか。
『アクロヴァレリア』を点火して【飛翔】
『Boeotia』のテンプルを弾いて起動
そして【完全視界】を併用した【観察】による【情報収集】を行います。

飛行技術を駆使して木々の間に隠れつつパイプラインを北上
もっと上空から観測を行う場合は
『リージョン・ヴァント・アルヴァーレ』にてこちらの姿、音、魔力を完全に遮断し
【パラドクス通信】にて仲間に情報を伝達します。

お互いが邂逅する瞬間というのは少しヒリヒリしますね。
ですが、こちらが上手です。


エリザベータ・シゲトヴァール
●心情
フライトレッグの暖気運転も終了。
オイルも暖まって来たわね。

……さて、かくれんぼの時間と行きましょうか。

●行動
【旭日革命軍団】

【飛翔】し【偵察】技能を活かして早期警戒・空中監視。
【光学迷彩】を起動し【地形の利用】で木々の枝葉等を遮蔽物を活用。
【空中戦】技能を活かして縫う様に、【平穏結界】も併用し静かに飛ぶ。
迷彩の内容は木々の葉や雪雲の色を元に風景に溶け込める様に。

逆に【完全視界】を用いて雪雲や枝葉の間から見透し、敵影を捜索。
自分が敵の立場ならどう動くか【戦闘知識】で裏打ちしながら目星を付ける。

会敵時は【パラドクス通信】で伝達と同時に、気付かれていないなら【追跡】しながら味方との合流を待つ。


ノイン・クリーガー
【旭日革命軍団】
コードネーム:ゴースト

[心境とか]
たいへん良い訓練だった。
みんな以前よりも練度を増しているな。

「ゴーストより各員、状況を開始する」

[行動]
森の木々や【地形の利用】と【光学迷彩】により身を隠しつつ【完全視界】で【偵察】を行い、【パラドクス通信】で味方と情報交換を行いながら周囲の状況を探る。

前進する時は姿勢を低くしながら【忍び足】で木に身を隠しながら移動する。

敵を発見したら味方に報告し、【忍び足】で【追跡】しつつ有利な位置に移動する。


レナータ・ペトリェンコ
《寒凪》
※連携・アドリブ歓迎

雪香と哨戒任務です
敵に気取られずに先に敵を発見できれば、後の戦闘を有利に進めることができるでしょうね

[雪中戦]の心得はありますよ
戦闘服がそもそも雪中迷彩ですからね
【寒冷適応】【完全視界】である程度の視界を確保、低空【飛翔】による足跡を残さない移動や[忍び足]で木々や雪の陰などを[地形の利用]で縫うように移動します
隠れる際はその地形の陰などで【光学迷彩】で潜みます

[精神集中]し僅かな足跡などの痕跡を[看破]、移動する様子を捉えられたら【パラドクス通信】で皆さんに情報を共有しましょう
敵も感覚を研ぎ澄ませてこちらを探しているので慎重に

事が済んだら速やかに隠密しつつ離脱です


佐伯・雪香
《寒凪》
※連携・アドリブ歓迎

敵は南下、こっちは北上中
なんとかこちらだけが先に見つけてしまいたいね
ボクは偵察するナータのサポートをしようかな

【コウモリ変身】して枝葉の影に隠れ進む事で【光学迷彩】を常時掛けて、ナータについて行くね
【平穏結界】、【モブオーラ】で2人による草木や葉の揺れ等を怪しまれるのを抑制、飛行で足跡も残さず、場合によっては最大速度の【飛翔】も活かして物陰を飛んで敵に接近、会話内容や進行予定の相談なんかを盗み聞きできないか試しに行くね

勿論無理は避けつつ、めぼしい情報が得られたら、音の漏れ難い場所まで行って【パラドクス通信】で全体に共有する

離脱する時もしっかりナータについて行くよ


●レイ・シャルダン(SKYRAIDER・g00999)
 実に充実した訓練でした。定期的にやりたいくらいです。
 ……と、満足感に浸っていたら、パラドクス通信機から声が聞こえてきました。
『こちら、ゴースト。作戦を開始する』
『ゴースト』はノインさんのコールサイン。
 訓練の充実振りを成果として示す時が来たようです。
「スカイレイダー、了解」
 私も自分のコールサインで答えました。フライトデバイス『アクロヴァレリア』を起動して垂直上昇。
「ユサール、了解」
 ユサールことエリザベータさんも上昇して、私の横に並びました。
「さあ、かくれんぼの時間といきましょうか」
「はい、エリザベータさん。でも、これがかくれんぼだとしたら、私たちとクロノヴェーダとのどちらが鬼なんですか?」
「両方が鬼にして子よ。そして、先に見つけたほうが勝者」
「なるほど」
 言葉を交わしながら、垂直飛行から水平飛行へ。もっとも、大空を超高速で翔けているわけではありません。高度は木よりも低いところに留め、生い茂った枝々の間をゆっくりと縫うように移動しているのです。水平飛行とは言いましたが、上下から見れば、軌道はジグザグですね。
「地上の鬼/子たちも張り切ってるみたいね」
 エリザベータさんの言葉に釣られて下を見ると、そこにはレナータさんの姿がりました。
 でも、おかしいですね。エリザベータさんは『たち』をつけていましたが、レナータさん以外には誰も……あ? いました! 小さな黒い影がレナータさんの傍を飛んでいます。

●佐伯・雪香(天魔の翼・g01694)
 ナータことレナータと一緒にボクは森の中を進んでいた。
 進んではいるけど、歩いてはいない。どちらも飛んでるんだよ。でも、ナータのほうは遠目には飛んでいるようには見えないかもね。地面に足が触れそうなほどの超低高度を維持してるんだから。足跡を残すことなく滑るように移動する様はさながらホバークラフト。
 一方、ボクはちっちゃな翼をぱたぱた動かして飛んでいた。そう、コウモリに変身しているんだ。
 飛び方はまったく違う二人だけど、慎重を期しているという点は変わらない。ほんの少しだけ進んでは木の陰などに隠れて周囲の様子を伺い、敵の気配がなければ、またほんの少しだけ進んで……といった具合。体力は温存できるけども、気を張ってるせいで精神力がごりごり削られていく。だけど、ペースは絶対に乱さない。焦りは禁物。敵に見つかったら、元も子もないもんね。
 移動を始めてから小一時間ほどが過ぎた頃、同じく慎重に移動しているノインさんと行き合った。
『行き合った』とは言ったけども、その存在に気付くずっと前から視界には入っていたのかもしれない。葉っぱ等をつけまくった雪中迷彩服を着ている上にパラドクス効果の『光学迷彩』を発動させているから、雪景色に溶け込んでいるんだよね。
 ノインさんは、ガスマスクに隠された顔をこちらに向けて――
「お? いたのか」
 ――と、小さな声で言った。
 どうやら、向こうもナータの姿がよく見えてなかったみたい。彼女も『光学迷彩』を使ってるから。

●ノイン・クリーガー(ゴースト・g00915)
 姿勢を低くして息を殺し、静かにゆっくりと森の中を行く。
『光学迷彩』の他に『完全視界』を発動させているが、晴天の昼間なので、今のところはとくに意味はない。むしろ、雪眼炎を警戒したいところだな。
 まあ、なによりも警戒すべき対象は他にいるんだが……。
 レナータと合流してから二時間ほどが経過した頃、その『なによりも警戒すべき対象』らしきものを発見した。
 クロノヴェーダだ。
 どす黒いオーラを纏った軍装の少女。おそらく、トループス級だな。
「……」
 無言でレナータに目をやる。
「……」
 レナータもまた無言で頷いた。彼女も同じ相手を捕捉したらしい。
 少女兵に視線を戻した。俺がそうであったように静かにゆっくりと歩いている。こちらの存在にはまだ気付いていないようだ。後方の木々の隙間に陽炎のごときゆらめきが見える。他のトループス級のオーラだろう。そうやって各自がしっかりと間隔を取っているのは、訓練が行き届いている証拠……と、評価したいところだが、逆説連鎖戦においては無意味な隊形だな。間隔を空けているからといって、パラドクスの対象人数より少ない標的しか狙えないなんてことはないし、逆に密集しているからといって、対象人数よりも多い標的にダメージを与えられるわけでもない(どちらのケースも『パラドクスの射的距離内であれば』という枕詞がつくが)。
 レナータが『後退』のハンドサインを示したので、俺はそれに従った。もちろん、レナータの傍を飛んでいた雪香も。
 敵方に声が届かぬように充分に距離を置いたところで停止し、パラドクス通信機で飛行組に連絡。
「こちら、ゴースト。クロノヴェーダを発見した」
 すぐに返事が戻ってきた。
『こらら、スカイレイダー。それらしき影をボクたちも捉えました』
『こちら、ユサール。もう少しだけ近付いてみるわ』

●エリザベータ・シゲトヴァール(聖イシュトヴァンの剣・g00490)
 山林の斜面を縦に断ち割るように設置されたパイプライン。
 そこから少し離れた場所をトループス級が歩いている。斜面の上から下に向かって。
 私はそれを樹上から観察していた。フライトデバイスは停止中。大振りな枝を足場にして幹に掴まっている状態。隣の木では、レイさんが同じようにしている。
 当然のことながら、眼下のトループス級はぶらぶらと歩いているわけじゃない。周囲を警戒しながら、慎重に進んでいる。もし、私たちがなんの対策も立てずに移動していたら、間違いなく先に見つけられていたでしょうね。
 そのトループス級の後ろには(一定の距離を置いた上で)沢山の仲間が続いているみたい。奴らの頭上を飛び回って、隊形の全容を把握したいところだけど……姿を隠すことに注力しているとはいえ、さすがにそれはリスクが高いわね。そういうのはコウモリに変身している仲間たちに任せて、私は隊形の外枠を把握することにしましょう。
 レイさんのほうを見て、指先を下から上に動かして左半円を宙に描く。
 彼女は意図を理解してくれたらしく、小さく頷いて静かに飛び立った。トループス級の向かって左側に。
 私は右側に飛んだ。
 木や枝や葉の隙間から漏れ見えるオーラを目印にして隊形の外枠に沿って進み、最後尾の隊列の端に達したところで左折。そのまま暫く直進して、左回りで飛んできたレイさんと再合流。
「敵は三角系の隊形を組んでいるように思えたけど……レイさんはどう見る?」
「ボクも同じです。二等辺三角形っぽくて、頂点を先頭に向けてますね」
 索敵重視のフォーメーションなのかしら?
 でも、重視の具合が足りなかったようね。
 かくれんぼは私たちの勝ちよ。

●レナータ・ペトリェンコ(“Кпык”(クルィーク)・g01229)
「きいきい」
 コウモリの雪香がコウモリの鳴き声でなにかを言い残して、飛び立ちました。敵の様子を探りに行ったのでしょう。
 入れ代わるようにして、二つの影が私とノインさんの傍に着地しました。
 エリザベータさんとレイさんです。
「兵士の数は少なくないようだけれど――」
 敵について報告した後、エリザベータさんは自らの見解を告げました。
「――一隊だけで戦うことを意識した編成ではないと思う。令震さんが言ってたとおり、複数の部隊での連携包囲を前提として行動しているんでしょうね」
「では、私たちの攻撃を受けたら、他の部隊に援軍を要請するかもしれませんね」
 私が危惧を口にすると、ノインさんがかぶりを振りました。
「いや、その恐れはない。作戦を開始する前、樞やエトヴァがパラドクス効果の『通信障害』を発動させていたからな」
「きいきい」
 雪香が帰還。そして、数時間振りに人間(正しくはデーモンですが)の姿に戻り、私たちに報告しました。
「トループス級たちの会話だの相談だのを盗み聞きしてやろうと思ったんだけど……ダメだったわ。あの子たち、一切お喋りしないんだもの」
「練度は高そうか?」
 ノインさんが尋ねると、雪香は首を傾げて複雑な表情を見せました。
「うーん。低くはないと思うよ。お喋りに限らず、無駄な動きがまったくない感じだしね。そのせいで主体性のない兵隊アリみたいな印象も受けるけど」
 実際、アリのようなものですよね。格上のクロノヴェーダに逆らうことのできない哀れなトループス級たちは……。
「それでは――」
 電脳ゴーグルのアームを操作しながら、レイさんが宣言しました。
「――アリの駆除を始めましょうか」
 
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【光学迷彩】がLV4になった!
【飛翔】がLV4になった!
【トラップ生成】LV1が発生!
【平穏結界】がLV3になった!
効果2【ダブル】がLV2になった!
【ダメージアップ】LV1が発生!
【ドレイン】がLV2になった!
【アヴォイド】がLV5になった!
【能力値アップ】がLV4になった!

リップ・ハップ
見つからねい限りイーブンだ、じっくりやろっか【忍耐力】

隠密重視で索敵と移動をきっちし分けて動く
樹木に茂み、起伏や樹から落ちて局所的に積もった雪。索敵では【平穏結界】と【光学迷彩】を使いつつそゆのに身を隠しながら【完全視界】で周囲を確認

確認済んだら【浮遊】と【飛翔】で移動
別に目一杯高くとか最高速とかも必要ねい
地面の少し上を、気配殺せる中で最大限迅速に動けりゃ十分よ

風下から風上へ、敵か敵の痕跡見つけるまで繰り返す
風は匂いを運び音の進みにも変化をつける
出す情報は少なく、拾う情報は多くって思えばあっちもそうしていとこでしょ

マスクの裏で呼吸は密やかに、平静保って心音だって抑えてやらぁ【呼吸法、精神集中】


ロキシア・グロスビーク
アドリブ連携ご自由に

これでも秘密結社のエージェント
スニーキングミッションくらいはこなしちゃうのさ
それにしても、音を立てないトループスだなんて厄介だなー

それじゃ【寒冷適応】を使って……
超低空【飛翔】で足跡付けずに動いたほうがいいかな?
でも速度が欲しい時は自前の【ダッシュ】で素早くね
隠れる必要がある時は樹木や雪とか地形を活用して【光学迷彩】
【完全視界】も使って偵察に従事っ

後は【使い魔使役】で。ベストは鳥だけど選り好みはしないよ。耳目を増やせればOK
身を隠せる場所、敵の情報とかいろいろ【パラドクス通信】で共有して貢献したいね

ちょっと危ないかなって時は【コウモリ変身】で樹上に隠れたり徹底したいところ


神那岐・修
※アドリブ・連携は歓迎

さてここからだな
狩るのはどちらか教えてやろう

残留効果で情報共有と隠形は問題なく可能だろう
飛翔効果で足跡を残さず移動
上からは見る者がいるようだし、地上から見ておくとする

木々や積雪を遮蔽に平穏結界、光学迷彩を用いて身を隠しつつ窺う
“真”の瞳でオーラを捉え逃さぬように
降雪があれば完全視界での利が大きくなる
不用意な音で情報を与えぬよう忍び足、静音での呼吸法も実行

気取られそうな様子があれば使い魔使役で小動物を走らせ気を引き、味方へも注意を促しておく

状況が変わったらなるべく味方へ共有
複数の情報を集めれば痕跡や偽装の看破もスムーズだろう


ギオルギー・ルバソフ
腹もまんぷく、血の補充もオッケー👌
つーわけでェ
敵にバレねェよーにしながら野鼠狩りのオジョーチャン達を出し抜きに行きますかね…シシシ

移動は常時【飛翔】で足跡を残さねェようにすんゼ

ウォーミングアップン時に確認した地形を
【モブオーラ】を纏いつつ【コウモリ変身】で探索
雪とかで視界が悪くなったら【完全視界】を使用
うっかりハプニングが起こっても【強運の加護】があっからなんとかなるっしょ

敵の進行状況を確認したら【光学迷彩】や【平穏結界】を使いつつ
身を隠しつつ相手の会話とかを盗み聞きして情報収集
シシシ
コソコソ隠れて動くのって野鼠らしいジャン?

しっかしせっかくのカワイコちゃん達なのに敵ってェのは残念だよなー


●ロキシア・グロスビーク(啄む嘴・g07258)
 敵の姿を求めて、白い森の中を深く静かに斥候中。
 こう見えても僕は秘密結社の工作員だったりするから、この種のスニーキングはお手の物なんだよね。
 時には木の陰に身を隠し、時には雪の窪みに身を屈め、パラドクス効果の『飛翔』で以て地面ぎりぎりを超低空飛行。急がず、慌てず、ゆっくりと、慎重に……。
 僕の右を行くのはリップちゃん。左を行くのは修くん。二人とも静かなもんだ。僕と同じように超低空飛行で移動しているから、足音がしない(それに足跡もつかない)のは当然なんだけど、呼吸の音すら聞こえないよ。
「すごいね、リップちゃん」
 と、僕は囁きかけた。
「タイトなマスクをしてるのに息の音が聞こえないよ」
「私にとって、マスクは皮膚も同然だかんな。慣れたもんよ」
 リップちゃんはこともなげに言ってのけたけど、実際は慣れだけじゃないと思う。きっと、意識して息を殺してるよ。修くんもそうだろうね。
 おっと! 言い忘れたけど、僕と一緒に行動しているのはこの二人だけじゃない。
 頭のすぐ上をギオルギーくんが飛んでるんだ。
 彼の呼吸音も聞こえないけども、それは息を殺しているからじゃなくて――
「シシシッ……」
 ――金属の擦過音みたいめいた笑い声を漏らしてるからだよ。

●リップ・ハップ(Reaper Harper・g00122)
 修が足を止めて顔を見上げたもんで、私とロキシアもそれに倣った。
 見上げた先にいるのはギオルギー。私らは超低空飛行だけど、このお調子者の吸血鬼は『超』の字が抜けていて、二メートルちょっとのところを飛んでたりする。
「それでは目立ちすぎる」
 ヘラヘラと……いや、シシシと笑うギオルギーに修が無表情で忠告っつーか警告をした。
「俺たちと同じところまで降りたほうがいいんじゃないか。あるいは高度を上げて、枝の中に隠れて進むとか……」
「シシシッ! 言われなくても判ってるつーの。今、本格索敵モードにチェンジするとこだったんだよ」
「ほんかくさくてきもーど?」
 ロキシアが聞き返した次の瞬間、ギオルギーの姿が消えた。
 代わりに現れたのは小さなコウモリ。
 そう、パラドクス効果の『コウモリ変身』を使いやがったんだ。妙に小憎たらしいツラをしたコウモリに見えるけど、それはギオルギーのイメージがダブってるからだろう。正体を知らない奴らの目には普通のコウモリとして映るはず。
「きいきい」
 コウモリなギオルギー――略してコウモルギーは鳴いてみせた。おなじみの『シシシッ』という笑い声をあげる代わりに。
「……」
 修はなにも言わずに肩をすくめると、また進み始めた。後に続く私とロキシア。アンド、コウモルギー。
『飛翔』が重ねがけされてっから、時速二百キロほどでカッ飛ぶこともできるんだけど、そんな真似はしねえ。周囲の様子を探りつつ、亀にも追い抜かれそうなスローペースで前進だ。実にめんどくさい。でも、苦にはならねえ。こう見えても、忍耐力はあるほうなんだ。
 で、何時間か経った後、その忍耐力がついに報われた。
 敵を見っけたんだ。

●神那岐・修(紫天修羅・g08671)
 倒木に雪が積もることによって出来たであろう天然の防壁の陰に身を伏せて、俺たちは敵の様子を伺っていた。
 はっきりと視認できる数は一体。黒に近い赤のオーラを纏った、軍服姿の少女だ。俺たちに左側面を向けた状態で歩いている。ここは傾斜になっており、相手の進行方向は下方だ。
 奥のほうに複数のオーラがぼんやりと見える。おそらく、視認できた兵士は横隊の左端にいるのだろう。
「どっちも見つからねい限り、今回の勝負はイーブン。逆に言うと――」
 リップがマスクの奥から呟きを漏らした。
「――見つけちまえば、こっちのもんよ」
「そうだな」
 なにも知らずに傾斜を下っていく敵に視線を固定したまま、俺もまた呟いた。
「奴らは俺たちを狩っているつもりなのだろうが、本当の狩り手は俺たちのほうだ。それを教えてやろう」
「きいきい」
 ギオルギーが鳴いた。おおかた、つまらん冗談でも吐いているのだろう。
「鳥を使い魔にして、敵の様子を探ってみたよ」
 と、ロキシアが報告した。
「三角形の隊列を組んで、角の一つを前方に向けて移動してるみたいだね」
「俺たちが見つけたあの兵士の後方に敵はいるか?」
「見たらないね。たぶん、彼女のいる横隊が最後尾の列――三角形の底辺じゃないかな」
 ふむ。敵がもう少し前進するのを待てば、こちらは背後を取ることができるな。もちろん、このまま側面を突くこともできるし、前方に回り込んで正面からぶつかることもできるが……。

●ギオルギー・ルバソフ(創贋卿・g07323)
 ロキシアがパラドクス通信機を耳にあて、ぼそぼそと喋ってる。使い魔による偵察の次は他の仲間との情報交換ってわけだ。
「皆も敵を見っけたって?」
 交信が終わったところを見計らって、リップが確認した。
「うん。敵を見つけて、なおかつ敵には見つかってないという状況。僕らと同じだね」
「では、いつでも奇襲をかけられるな」
 修がそう言ったけども……ちょっと待って。攻撃を始める前に俺にも偵察させてくれよ。念のためにさ。
「きいきい!」(訳:ちょっとテーサツ行ってくる!)
 俺は修たちから離れた。最初に見つけた兵士の頭上を通過し、更にその先へ……横隊をなぞるように進み、列の真ん中あたりに達したところでゆっくり旋回。もちろん、怪しまれないようにフツーのコウモリっぽく振る舞ってるぜ。
 しっかし、アレだ。こうして近くから見下ろしてみると、どの兵士もカワイコちゃんじゃないの。できれば、敵として出逢いたくなかった。ホント、残念だわー。
 ……と、嘆いていてもしょうがない。お仕事、お仕事。なんか有用な情報を掴めるかもしれないから、カワイコちゃんたちの女子トークをちょいと盗み聞きさせてもらおうか。
 どれどれ――
「……」
「……」
「……」
 ――って、誰一人として喋ってねーし!
 つまんねえなあ、もう。
 
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【腐食】LV1が発生!
【光学迷彩】がLV5になった!
【完全視界】がLV2になった!
【コウモリ変身】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
【ダブル】がLV3になった!
【ドレイン】がLV3になった!

エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
【旭日革命軍団】
連携アドリブ◎

有意義な訓練だったな
ロマノフでの今後の戦いに活かそう
まずは……目の前の敵からだ

フェーデル、了解。行動を開始する

通信で連携を取りつつ隠密行動
雪中迷彩服、雪靴に
平穏結界、光学迷彩、完全視界、寒冷適応は常に
効果を活用
【通信障害】で敵部隊の連絡を遮断

パイプラインから少し距離を保ちつつ
ライン沿いの北方向を広めに偵察、観察、双眼鏡も併用
地形の利用、忍び足で樹の陰に紛れて移動
上空の視線も注意
難所は音を立てず極低空飛翔
足跡は偶に逆につけ痕跡を撹乱
潜んで周囲確認→移動を繰り返す

雪上の足跡を見落とさず
敵のオーラを早期発見
味方の情報も総合し情報共有
急接近時はコウモリ変身で高い葉陰に潜む


イオナ・ガルバローゼ
【旭日革命軍団】
訓練は勉強になりました
これからもロマノフの大地で戦い続ける以上役立てて行きたいですね。

慎重に【寒冷適応】、【モブオーラ】、【光学迷彩】を使用
周りの木の状態に合わせ迷彩を使い分け
【完全視界】で見渡します

木の影から木の影へと渡りながら【飛翔】で地表を滑るように走り
物が隠れそうな影を警戒します。
上空の事は飛翔で飛んでいる仲間がよく気が付く筈なので
あちらこちらへと注意を逸らさず自分は上空からは影となる位置を
【パラドクス通信】で連絡を取り合い確認してゆくとしましょう。

オーラも外から見える事は解っているでしょう
一つ見えても気を緩ませず
ソレが見える場所に潜んでいる者が他に居ないか注意します


風宮・優華
【旭日革命軍団】
コードネーム:スノーホワイト

ウォーミングアップ、クールダウンも充分ね。
さぁ、ここからが本番よ。

【使い魔使役】を使用し、わたしもヤマネコを一匹、二匹、お借りしようかしら。
……別に愛でたいわけじゃないけどね。

シラユキや、ヤマネコたちと手分けして、地上から捜索するわ。
『雪中戦』や『追跡』は慣れてるわ。それに【光学迷彩】【モブオーラ】も併せて慎重に進んでいくわね。
常に警戒しつつ【パラドクス通信】で連絡を密にするわ。
敵を先に見つけようと先行しすぎて、敵にみつかっちゃ本末転倒よ。
敵も警戒してるはず。用心と慎重を重ねるに越したことはないわ。


十野・樞
アドリブ連携歓迎

【旭日革命軍団】
コードネーム:フェルラ

【パラドクス通信】で仲間と密に情報共有

【光学迷彩】で周囲に同化
【風使い】で遮音・匂いを消す
【忍び足】で慎重に歩く

あちらも此方を探してるんだ
それなりの偽装はしていると思うべきだな

仲間が【飛翔】で上空から偵察するなら
【使い魔使役】で得たヤマネコを先行させ
特に森林中などの障害物が多い箇所を
その低い視点と獲物を狩る感覚
――足跡、藪を掻き分けた痕、其処に存在するオーラを感じとる野生の感覚を借りて【観察】【看破】【情報収集】【偵察】するぜ

任務の成功が最優先だが
ヤマネコの安全には配慮

先に発見されても【通信障害】にて敵同士の連絡妨害、敵連携を遮断


●風宮・優華(氷結の魔女/スノーホワイト・g08699)
『こちら、ゴースト。作戦を開始する』
「フェーデル、了解」
 パラドクス通信機から聞こえてきたノインの声に答えて、エトヴァが歩き出した。『ゴースト』と『フェーデル』というのは二人のコールサインよ。
「了解でございます。上空からの索敵はエリザベータ様とレイ様にお任せします」
 イオナもまた歩き出し……いえ、滑り出した。訓練時のロキシアと同じようにパラドクス効果の『飛翔』で超低空飛行しているの。
「スノーホワイト、了解」
 あたしも出発。
 数メートル先をシラユキが行く。
 その更に先をヤマネコが行く。
 樞がパラドクス効果の『使い魔使役』でヤマネコを操っていたけれど、このヤマネコはそれとは別の個体。操っているのはあたしよ。
 念のために言っておくけど、べつに愛でたいから同行させてるわけじゃないからね? 森の中での斥候にこれ以上の適任者はいない――そう判断したのよ。実際、役に立ってるし。
 ただし、問題もあるわ。ヤマネコ自体の問題ではないけど。
 その問題とは――
「おやおや、優華さぁん? そちらもにゃんこ連れですかー?」
 ――樞が茶々をいれてくることよ。
「にゃんこと戯れている俺を見て、うらやましくなっちゃったのかな? で、真似しちゃったと? かわいいとこ、あるじゃないか」
「ちょっとなに言ってるのか判らない。あたしは使い魔使役の有用性を認めただけであって、べつにうらやましいとか思ったわけじゃないし。愛でたいとかモフモフしたいとかお腹に顔をうずめたいとかも思ってないし。ヤマネコを選んだのも、他に適当な生物がいなかったからだし」
「はいはい。そうでしょうとも」
 樞はニヤニヤ笑ってる。笑い続けてる。
 敵を倒すより先にこのウザいオヤジをパラドクスで始末しようかしら?

●十野・樞(division by zero・g03155)
 優華は実にイジり甲斐のあるツンデレ娘だが、このへんでやめておこう。親の仇でも見るような……いや、全人類の敵を見るような目で睨みつけてるから。
 なによりも今は慎重さを求められる任務の真っ最中だ。しっかり集中しないとな……と、気を引き締めた矢先におかしなものが視界に入った。
 エトヴァだ。
 なにがおかしいのかというと……さっきまでは前に進んでいたはずなのに今はこっちに向かって歩いてきてる。
「なにやってんだ、エトヴァ? 忘れ物でもしたか?」
「逆向きの足跡をつけてるんだ。進行方向に敵がいると仮定して移動しているが、すれ違った末に背後に回り込まれる可能性もある。そうなった場合、この足跡で敵を攪乱できるかもしれない」
 色々とめんどくさいことを考えてるな。
 さすがに俺はそこまで心配性というか凝り性にはなれないが、かといって無警戒に進んだりはしないぜ。さっきも言ったように慎重さを求められる任務だからな。
 優華と同じようにヤマネコを斥候として先行させ、敵が知らず知らずのうちに残したかもしれない痕跡の有無を確認しつつ(ヤマネコは視点が低いから、人間なら見逃すようなものにも気付くかもしれない)、一歩一歩ゆっくりと……。
「にゃあ」
 ヤマネコの目がなにか捉えた。
 木の陰に潜む怪しげな人影。
 その人影もまたヤマネコに目を向けた。そして、唇の前に指を立てて『しーっ』と注意した……って、なんだ。よく見たら、イオナじゃないか。

●イオナ・ガルバローゼ(空染めの一輪・g07485)
 索敵行軍を開始してから数時間が経過しました。いまだに敵は見つからず。
 エトヴァさんは、僕の右手の森――パイプラインにより近い場所を移動している模様。こちらからは見えませんが、例の足跡の偽装も何度かおこなっているかもしれません。
 樞さんと優華さんは当初は僕の後方にいたのですが、いつの間にか前方にいます。お二人の更に前方には、使い魔のヤマネコたちとシラユキがいるのでしょう。
「慎重に進んでよね」
 と、優華さんが樞さんに声をかけました。
「敵を見つけるために先行しすぎて、こっちが逆に見つかっちゃったら、本末転倒もいいところよ」
「百も二百も承知だよ。あと、にゃんこの安全はしっかり配慮してるので、その点も御心配なく」
「はぁ? べつにヤマネコの心配なんかしてないけど?」
 真意とは正反対であろうリアクションをする優華さん。なるほど。これが新宿島で『ツンデレ』と呼ばれている事象ですか。
 そんな彼女に対して、樞さんはからかいの言葉を……投げるのかと思いきや、なにも言いませんでした。にやけていた表情が少しばかり引き締まっています。
 優華さんのほうも顔付きを厳しいものに変えました(いえ、先程までの顔付きも一応は厳しかったのですが、あれはあくまでもツンデレモードですから)。
 どうやら、お二人が使役しているヤマネコたちがなにかを見つけたようですね。
 僕がそれについて確認するよりも先にエトヴァさんが右の森から姿を現して簡潔に報告と質問をしました。
「敵を発見。そっちは?」
「ああ、見つけたよ」
 と、樞さんが答えました。
「気付かれる前に後退して距離を取りましょう」
 優華さんがそう提案している間にシラユキと二匹のヤマネコが前方から走ってきました。

●エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)
 俺たちが発見したのはトループス級のヴァンパイアノーブル――赤黒いオーラを漂わせた軍服姿の少女たち。
 この地には複数の部隊が展開しているらしいが、少女兵たちが他部隊に連絡を取ることはできないだろう。俺や樞さんがパラドクス効果の『通信障害』を発動させているからな。
 さて、敵を孤立させた後は情報収集といこうか。まずは優華さんの提案に従って退却し、それから敵を迂回するコースを取り、後方へと回り込む。その間、気付かれぬように(樞さんと優華さんはヤマネコを使って、俺は双眼鏡越しに)敵を観察しつつ、他の場所にいる仲間たちと交信して互いの状況を確認する。
「リップ様、エリザベータ様、ノイン様、レイ様、レナータ様、雪香様、ギオルギー様、ロキシア様、修様――全員が敵を捕捉されたそうです」
 と、イオナさんが交信を終えて、俺たちに報告した。
「それと、敵は三角形のフォーメションを組んでいるのだとか……」
「そういうのは傘型隊形って言うんだっけ?」
 優華さんが首をかしげて呟いた。
 そして、物騒な言葉を付け足した。
「随分と大きな傘だけど、これから降る血の雨は一滴も防げやしないでしょうね」
「傘の骨はどんな具合だ? 簡単に折れそうか?」
 俺は樞さんに尋ねた。もちろん、『骨』というのはトループス級たちのこと。
「にゃんこを近付けるだけ近付けて観察した限りでは、しっかり訓練されてるように思えたな。しかし、意思のないロボットみたいな印象も受けた。まあ、良く悪くもトループス級だわな」
 ふむ。油断することなく臨めば、折るのは容易いか……。
 傘の中軸たるアヴァタール級も同じくらい容易く折れるといいのだが……。
 
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【通信障害】LV2が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【使い魔使役】がLV2になった!
効果2【リザレクション】LV2が発生!
【ドレイン】がLV4になった!
【能力値アップ】がLV5になった!

●幕間
 ヴァンパイアノーブルの少女兵たちはまだ勾配を下っていた。
 行く手にディアボロスたちが現れたとしても、高所を取っている自分たちのほうが有利……などと考えるほど、彼女たちは楽天家ではない。もちろん、側面を突かれる可能性や後方から急襲される可能性も頭に入れている。
 しかし、ディアボロスに葬り去られてきた無数のクロノヴェーダの怨霊がこの場にいたとしたら、少女兵たちに諄々と説いて聞かせることだろう。
 なにかを想定しているからといって、想定通りに対処できるとは限らない、と……。



※マスターより
 まとめ&おさらいです。

○現在の時間帯は昼間。雪は今のところ降っていません。
○敵は三角形の隊形で勾配を降下中。
○敵はディアボロスに気付いていません。前方から、あるいは側面から、あるいは背後から、あるいは上空から、あるいは複数の方向から同時に、あるいは時間差を置いて……お好みのやり方で攻撃を仕掛けることができます。
○敵は無駄口を叩きません。陰キャ。
○パラドクス効果の『通信障害』が働いているので、ディアボロスの半径六百メートル以内(もっと広がる可能性あり)にいる限り、敵は仲間と交信できません。陰キャ&ぼっち。
○『『婦人血死隊』骸兵』を放っておいて、いきなり『『婦人血死隊』軍歌劇のナージャ』に挑むこともできますが、なんのメリットもありません。というか、デメリット(ナージャとの戦闘を骸兵に邪魔される)しかありません。
○技能だけで特殊な行動を取ることはできません(「【氷雪使い】で吹雪を起こす」「【結界術】で結界を張る」など)。
 
ロキシア・グロスビーク
アドリブ連携ご自由に
【寒冷適応】は引き続き

身を隠しつつ【光学迷彩】で準備段階
【パラドクス通信】で仲間と案を擦り合わせ備えよっか
仕掛けるタイミングを計りかねてる人もいるかな?
じゃあ一つ設けてみよ。僕ったら親切だねー、と傍らの妖精に語り掛け
いつものよろしく。そそ、上からね

樹上に配置した妖精に雪・氷柱・枝などを落とさせ攻撃開始
小振りの量産型“魔槍”を射出し仲間を援護しつつ、“魔槍”を手に疾走

ケオスに飛び込むのは慣れっこでね!
突き刺し、敵を蹴って飛び回る……
のを落とそうと反撃に迫る敵の【ジャンプ】を技量差で見切り、
小振りの“魔槍”で撃ち落としたり
妖精に敵のマフラーを引っ張らせたりトリッキーに戦闘継続!


エリザベータ・シゲトヴァール
●心情
包囲殲滅の好機よ。みすみす見逃してやる訳無いじゃない。
奴らは私達を捜し出して掃討する腹積もりだったんでしょうけど、狩られるのはどちらか、しっかり教えてあげましょうか。

●行動
【旭日革命軍団】
コールサイン:ユサール

【光学迷彩】を維持したまま【パラドクス通信】で味方と連絡を取り合い、気付かれていない内に包囲網を形成。
【通信障害】で分断・孤立化させ、タイミングを合わせて【飛翔】し【不意打ち】を仕掛ける。

【弾幕】【空中戦】【一撃離脱】で派手に飛び回って敵の視線を上空に向けさせ、
地上部隊が効果的な奇襲を仕掛けられる様に下拵え。

友軍の攻勢が始まればこれに呼応してダイブアンドズームで各個撃破を狙うわ。


レイラ・イグラーナ
【旭日革命軍団】
コードネーム:アサー

えぇ、先に見つけられた今、立場は既に変わっています。狩を始めましょう。

私は地上班として行動し、飛翔班の先制攻撃後に攻撃開始、包囲し一気に殲滅します。
【光学迷彩】を使用し、隠れつつゆっくりと側面へ移動。
飛翔班の攻撃が始まるのを待ちます。
飛翔班の攻撃が始まってもすぐには飛びださず、【パラドクス通信】で連絡を取りつつじっくりと機を待ちましょう。
機会が来たら飛び出して【手製奉仕・嵐】。血のオーラの爆発や血液操作による強化などさせる前に一気に殲滅します。

他の部隊は来ませんよ。
貴女たちは、ここで終わりです。


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
【旭日革命軍団】
連携アドリブ歓迎
コードネーム:フェーデル
残留効果活用し、光学迷彩で潜み移動
パラドクス通信で味方と連携

後は罠にかけるだけ……か
狩人の座はこちらが頂こう

俺は飛翔班で【飛翔】しタイミング合わせ、上方から奇襲
好機を見計らい、可能なら俺は敵隊列の後方から
竜巻を起こして、敵を巻き込み視界ごと撹乱し攻撃
敵の隊列を崩させ、注意を引きつけ、一呼吸後の地上班の攻勢に繋げる
好機を報せ、合図を取り合おう

戦況を偵察、敵味方の動きを観察しつつ把握
空からの攻撃を続けよう
反撃の突撃は高速飛翔でフェイントかけて避け
猟犬や攻撃は魔力障壁を展開し防御

飛翔班同士、地上との連携を取り立体的挟撃
狙いを合わせて撃破していく


レナータ・ペトリェンコ
《寒凪》

気取られずに敵の情報を収集できたようですね
では各個撃破しつつ敵を追い込んで狩ってしまいましょう
狩りでは手を抜かないものです

積もった雪の陰や木の陰などに隠れて【光学迷彩】で気取られずに様子を窺います
ついでに【トラップ生成】で予めスネアトラップや催涙ガス地雷を雪の中に埋設しておきましょうか
敵の身動きの自由を奪う保険でもあります

【パラドクス通信】で他の皆さんと罠や敵の位置共有などで連携を図りながら[雪中戦]を開始、分散したところを『銃弾の大嵐』で[暗殺]し数を減らして再び隠れます
それを繰り返して敵を追い込みましょう
[忍び足]や時には[ダッシュ]をしつつ物陰を移動し、慢心せずに敵を殲滅します


佐伯・雪香
《寒凪》

進軍方向と位置、陣形まで分かれば端から切り取ってくだけだね
随分大きいケーキの1ピースだけど、これだけディアボロスが居れば完食も早そうかな

【光学迷彩】、【コウモリ変身】を活かして樹上に隠れ、敵の陣形端が罠に掛かる、もしくは罠解除の為に手を取られてるのを狙って奇襲を繰り返そう
【平穏結界】から逃さず、外に気付かれない様にね

元の姿で堂々と敵中に降り立って、群がってくる所をカウンター気味に【咲き誇る蒼天】を発動
シエルと放つ氷の魔法で一気に凍て付かせて、それでも止まらない攻撃は敵の凍結部位を利用して受け流す
後はボクに意識が集まってる所にナータ(レナータ)の痛撃が決まれば何口かは食べられるかな


●骸兵(認識番号:Н-10)
 先頭を行くЙ-18が足を止め、停止の合図を送ってきた。
 私も立ち止まり、同じ合図を後続に送った。
 Й-18は首だけを動かして視線を巡らせているようだ。なにかの気配を感じ取ったのか?
 待つこと暫し。彼女は前進の合図を出して再び歩き出した。気のせいだったらしい。
 私も歩き――
「うふふ……」
 ――出そうとした時、小さな笑い声らしきものが頭上から落ちてきた。弦が軋む音にも似た不愉快な声だ(正直に告白すると、木の妖精だの森の小人だのが笑っているという幻想的なイメージも脳裏に浮かんだが)。
 そして、何本もの氷柱が降り注いできた。白味を帯びた半透明のそれらは私の体のそこかしこに突き刺さり、たちまちのうちに赤黒く染まった。
 そう、血の色に。
 ヴァンパイアノーブルたる私が氷柱ごときで血を流すはずがない。ならば、これはパラドクス! ……と、当然の結論を出した瞬間、小さな影が私の懐に飛び込み、槍を抉り込んできた。

●レナータ・ペトリェンコ(“Кпык”(クルィーク)・g01229)
 木の陰に隠れてトループス級たちの様子を伺っていると、パラドクス通信機越しにロキシアさんの囁き声が聞こえてきました。
『誰もタイミングを計れずに『どーぞ、どーぞ』ってなっちゃうのもアレだから、僕が先鞭をつけさせてもらおっかなー……では、いつものよろしく。そそ、上からね……』
 そして、狩りが始まりました。
 ロキシアさんが発動させたパラドクスは『フェアリーコンボ』だと思われます。まずは妖精たちに氷柱を落とさせて(先程の囁きの後半部は妖精たちに向けてのものだったようです)、次に自身が襲いかかりました。とても俊敏な動きですから、獲物となったトループス級はロキシアさんのことを小さな影としか認識できなかったでしょう。
 続いて、樹上に隠れていたエリザベータさんが急降下。彼女のことは一回り大きな影ではなく、人の姿として認識できたかもしれませんね。
 息絶える寸前に。

●骸兵(認識番号:И-03)
 敵襲。二時の方向。攻撃を受けているのは、Н-10を始めとする四人の同胞。そして、敵は十歳かそこらの女児……いや、男児か?
 私は、体を覆う血のオーラを爆発させて身体能力を上昇させ、襲撃の場に飛び込んだ。女児だか男児だかにめがけて短剣を突き出す。しかし、相手は紙一重で回避。
 もう一撃を繰り出すも――
「うふふ……」
 ――横から首をぐいと引っ張られ、狙いが逸れた。見ると、小さな妖精らしき者が私のマフラーを掴み、楽しげに笑っている。
 そいつを払いのけている間に男児は離脱。
 代わりに別の敵が出現した。
 頭上からだ。
 飛行用の機械らしきものを装備したその女は、折れた枝々やそれらに積もっていた雪を撒き散らしながら、Н-10に向かって急降下した。
 そして、ハンマーのような武器を一振り。
 Н-10の左肩が粉砕され、左腕がちぎれ飛んだ。心臓も砕け散ったことは間違いない。彼女は倒れて動かなくなったのだから。
 その死に様を見届けることもなく、敵は一気に上昇して姿を消している。
 次なる急降下に備えて上に目を向けつつ、例の男児の攻撃も警戒しながら、私は後退した。
 途端になにかが足首に絡みついた。

●ロキシア・グロスビーク(啄む嘴・g07258)
 レナータちゃんが事前にパラドクス効果の『トラップ生成』を発動させたから、周囲はトラップだらけになってるんだよね。
 一体のトループス級(僕を刺そうとした奴だ)がそのうちの一つに引っかかった。シンプルなスネアトラップ。
 トループス級は体勢を崩しながらもナイフを振り、トラップのワイヤーを切断した。うん、実に素早い。あと半秒でも遅かったら、ワイヤーに宙吊りにされていただろうね。
 でも、実に惜しい。あと半秒でも速かったら――
「たぁーっ!」
 ――咆哮とともに二度目のダイブアンドズームを仕掛けてきたエリザベータちゃんに対処できただろうにね。
 対処できなかったから、結果は一度目と同じ。エリザベータちゃんは爆撃槌を振り抜き、トループス級の心臓を周辺の肉や骨ごと粉々にした。

●骸兵(認識番号:Т-37)
 行軍が停滞している。前方が騒がしい。なにも情報は伝わってこないが(いや、伝わってこないからこそか?)、敵の襲撃を受けていると考えるべきだろう。
 最後尾の横隊に属する私は他の仲間たちとともに振り返った。前後からの挟撃に対応するためだ。
 予想に反して、後方に敵の姿はない……が、密集した枝の隙間から差し込む冷たい陽光がなにかに遮られ、疾風が頭上から襲いかかってきた。いや、疾風というよりも竜巻。それは雪を巻き上げて荒れ狂い、横隊の面々のうちの三人(И-06、К-36、そして、私)を傷つけた。
 しかし、この程度の奇襲で不覚を取る骸兵ではない。陽光を遮った『なにか』――枝が絡み合った空間を飛んでいる有翼のディアボロスを標的にして、私と他の二人は『ツピェーザザ』を発動させた。血のオーラを猟犬に変えるパラドクス。
 オーラ製の三頭の猟犬が牙を剥いて跳躍した。
「猟犬を放って、狩人気取りか?」
 青い翼をはばたかせて飛び続けるディアボロス。フェイントを織り交ぜた不規則な軌道。猟犬の牙が次々と躱されていく。
「しかし、生憎だったな。この場で狩人の座についているのは俺たちだ」
「ヒンメルグリッツァ様の仰るとおりです」
 と、横から第二の声が聞こえ、体に激痛が走った。右半身に何本もの銀色の針を突き立てられたのだ。
 そして、針の投げ手であろう者が右側の森から飛び出してきた。雪色のコートを纏った銀髪の娘。
「立場は既に変わっているのです。あなたたちは狩人ではありません。無力な獲物です」
 娘はコートの裾をめくりあげ、新たな針を取り出した。

●レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)
 華麗に舞うヒンメルグリッツァ様にヴァンパイアノーブルたちは気を取られていたようですが、私に針を浴びせられると、こちらを睨みつけてきました。全員が無言かつ無表情であるものの、不意打ちによって喚起されたであろう感情――怒りや驚きやは伝わってきます。
 その感情を攻撃という手段で表現するためか、一体のヴァンパイアノーブルが私のほうに向かってこようとしました。
 しかし、一歩目を踏み出した瞬間、灰色の靄が足下から噴き出しました。ペトリェンコ様謹製の催涙ガス地雷に触れてしまったのでしょう。
 非パラドクスの罠でクロノヴェーダが傷つくことはありません(もとより『トラップ生成』の罠は非殺傷性ですしね)が、翻弄して動きを鈍らせることは可能。パラドクス効果の『完全視界』が働いているおかげで、ガスの中で慌てふためく敵の姿(もっとも、まだ無表情をキープしていますが)がよく見えます。
「これはもう獲物なんてものじゃないね」
 魔力の翼を展開した佐伯様が降り立ちました。オラトリオのシエル様を伴って。私とトループス級たちとの間に堂々と。
「どこからでも切り取って食べることができるケーキだよ」

●骸兵(認識番号:Я-19)
「どこからでも切り取って食べることができるケーキだよ」
 私たちをケーキ扱いするとは……調子に乗るなよ、ディアボロスども。目にもの見せてくれん。
 鬱陶しいガスの外に走り出る。視界はガスのせいでぼやけているものの、先程の声の主らしき悪魔のような女をなんとか捉えることができた。その傍らにいる天使のような少女も。
 パラドクス『ディマンタシュ』を発動。血のオーラを爆発……させようとしたのだが、悪魔と天使に先手を取られた。
「随分と大きなケーキだけど、優秀・勇猛・有能の三ユウ揃ったディアボロスがこんなにいるんだから――」
 悪魔と天使を中心にして、青い吹雪が渦を巻いた。
 いや、目がガスにやられたせいで見間違えた。
 吹雪ではなく、花吹雪だ。風に乗って乱舞する無数の青い花片。
「――完食は楽勝かな?」
 体に花片がまとわりつき、生命力を奪っていく。私はなんとか耐えることができたが、少し離れた場所にいた同胞が倒れた。二度も攻撃を受けて深傷を負っていたТ-37だ。
 仇は討つ! ……と、花片まみれのТ-37の死体に私は誓い、今度こそ『ディマンタシュ』を発動させた。
 覚悟しろ、ディアボロス!

●佐伯・雪香(天魔の翼・g01694)
 トループス級たちの反撃。ナイフを構えて、ものすごい勢いで向かってくる。ケーキなのに甘くないね。
 ボクは右に跳んで、シエルは左に跳んで、トループス級の突進を躱した。マタドールを彷彿とさせる華麗な動き……かどうかは判らないけれど、敵の剣幕は猛牛並み(それでいて無表情だけど)。一点に気を取られているところも同じかな。牛さんの場合は赤い布。トループス級たちの場合はこのボク。
 気を取られたのはほんの一瞬かもしれないけれど、戦場ではその一瞬が命取り。反転してこっちに向き直ったトループス級たちの後方に人影が現れ、機関銃を連射した。
「……!?」
 声もあげずに倒れるトループス級たち(本当は声を出したのかもしれないけど、銃声のほうが大きいから、どっちしろ聞こえなかっただろうね)。
 弾丸の雨を浴びせた人影は硝煙だけを残して消えてしまったけれど、それが誰なのかボクには判っていた。
 ナータだよ。

●骸兵(認識番号:М-20)
 弾雨に晒された同胞は四人。その全員が力尽きた……と、思いきや、Я-19だけは立ち上がった。
 しかし、すぐにまた俯せに倒れた。
 一度目に倒れた時、その背中には無数の弾痕が穿たれていた。
 二度目の今は新たな物が加わっている。
 何本もの銀の針だ。
 それらを投擲した者――雪色のコートの女が赤い瞳をこちらに向けた。私を次の標的に定めたのだろう。
 もちろん、座して死を待つつもりはない。私は『ディマンタシュ』を発動させ、針の女に向かって走り出した……と、見せかけて、目隠しの天使を連れた悪魔の女に軌道変更。
 だが、フェイントは通じなかった。悪魔の女はいとも簡単に(悔しいが、私にはそう見えた)回避して、目隠しの天使に呼びかけた。
「いくよ、シエル!」
 無数の青い花片が視界を埋め尽くした。体から力が抜け、膝が雪面に落ちる。
 そして、何十発分もの銃声が轟き、青く染まった視界に赤い斑点が加わった。私の体から飛び散った血の色。
「さすが、ナータ。容赦ないね」
「当然です。狩りで手を抜いてはいけません」
 悪魔の女と銃撃手(だろう、たぶん)のやりとりが聞こえる。そう、聞こえるだけ……二人の姿は見えない……もう、なにも……見えな……い。

●エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)
 狩り場と化した森の中を飛びながら、俺はパラドクス通信機に報告した。
「こちら、フェーデル。狩りはつつがなく進行中。獲物たちを始末しつつ、隊列の前部に向かっている」
『ユサール、了解』
 エリザベータさんの声が帰ってきた。
『私たちは後部に向かってるわ。レナータさんは一足先にそちらに移動したようだけれど、もう合流できた?』
「ああ。自慢の喉を聞かせてくれてるよ」
 通信機を地上に向けた。レナータさんの機関銃の音がエリザベータさんの耳にも届いたかな?
 報告を終えた後は狩りを再開。レナータさんを独唱者の立場から解放すべく、『ホルストルネード』で竜巻の合唱を響かせる。
 獲物という名の聴衆のうちの何人か(他の何人かはなにも聴こえない世界に旅立った)が俺を見上げた。
 その隙をついて、レイラさんがとどめを刺した。銀の針を飛ばして。
「圧倒的にこちらが有利な状況だな。しかし、レナータさんが言っていたように手を抜くわけにはいかない」
「そうですね」
 と、地上でレイラさんが頷いた。俺の独白が聞こえていたらしい。
「一人たりとも撃ち漏らすことのないよう、気をつけてまいりましょう」

●骸兵(認識番号:А-40)
「ベラヤ・ヴァローナ隊より各隊へ。現在、メストЬ-89でディアボロスと交戦中。至急、応援求む」
 通信機越しに他の部隊に呼びかけるも(定期連絡以外で声を発したのは十九時間四十二分振りだ)返答はなし。そもそも、こちらの声が届いていないようだ。ディアボロスによる通信妨害か?
 そうしている間にまた一人の同胞(Р-32)が倒れた。飛行機械を背負った娘の急降下攻撃によって。
 役に立たぬ通信機にはもう構ってはいらない。上昇して離脱した飛行娘の再攻撃に備えて、私は身構えた。思い知らせてやるぞ、人間め! 不格好な機械に頼らねば空も飛べぬ下等生物め!
 九時の方向で人影が跳ねた。敵ではない。同胞のО-80だ。もっとも、その動きは自発的なものではなかった。スネアトラップに引っかかり、ワイヤーに宙吊りにされてしまったのだ。
 上下が反転した彼女を助けに行こうとした時――
「いやー、トラップだらけでカオスなことになってるね」
 ――男児とも女児ともつかぬ十歳前後のディアボロスが木々の間から現れた。その周囲には二種多数の異物が浮遊している。一種は、くすくすと笑っている妖精。もう一種は、小型の槍。
「でも、カオスに飛び込むのは慣れっこなんだ!」
 性別不明のディアボロスは妖精の群れとともにО-80に攻撃を仕掛けたが、私はそれを止めることができなかった。
 すっかり失念していた存在――あの飛行娘が真上から襲いかかってきたからだ。

●エリザベータ・シゲトヴァール(聖イシュトヴァンの剣・g00490)
 爆撃槌『Hohlladungen Hammer』を打ち込んだ瞬間、敵と目が合った。赤い瞳孔に蔑みの色が滲んでいるように見えたのは気のせいじゃないと思う。どうせ、人間のことを『機械なしでは飛べない下等生物』だとでも思っていたのでしょう(ディアボロスは『飛翔』で飛べるけどね)。だけど、私からすれば、ヴァンパイノーブルこそ蔑まされて然るべき存在よ。生来の飛行能力にかまけて科学技術の発展を疎かにした古生物。時代遅れの生きた化石。
 死んだ化石になったけどね。
 ぴょんぴょんと飛び跳ねるようにして他の化石たちを殺していくロキシアさん(妖精たちが可愛いだけに却って凄惨な印象を受けるわ)を横目で見つつ上昇すると、そこにはエトヴァさんの姿があった。パラドクス通信機で言葉を交わしていたのも今は昔。いつの間にやら、距離が縮まっていたみたい。
 眼下の化石たちに竜巻のパラドクスを見舞いながら、エトヴァさんはこちらに声をかけてきた。
「合流できたな。首尾はどうだ?」
「捗ってるわ」
 簡潔に答えて何度目かのダイブアンドズーム。視界からエトヴァさんが消え、代わりにトループス級が現れ……そして、死んだ化石に変わった。

●骸兵(認識番号:З-88)
 Г-86が悪魔の女に向かっていったが、青い花吹雪で返り討ちにされた。
 もとより、Г-86は勝てるなどとは思っていなかっただろう。私のために時間稼ぎをしてくれたのだ。その意思を無駄にはできない。
 私は全力疾走し、通信兵А-40(飛行型ディアボロスのハンマーを食らい、頭部が砕け散っている)の死体を飛び越え、雪面に投げ捨てられていた通信機の傍に滑り込んだ。
「こちら、ベラヤ・ヴァローナ隊」
 通信機に呼びかける(声を発したのは九十五時間七分振りだ)。
「メストЬ-89でディアボロスの襲撃を受け……」
「無駄です」
 静かな声が背後から割り込んできた。
 振り返ると、そこには雪色のコートの女が立っていた。
「他の部隊は来ませんよ。あなたたちは、ここで終わりです」
 女の手の中で銀色の光が閃き、世界が闇に包まれた。どうやら、光の発生源に目を貫かれたようだ。
 闇の中で私は待った。
 数秒後に訪れるであろう死を。
 
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【エアライド】LV1が発生!
【飛翔】がLV6になった!
【完全視界】がLV4になった!
【友達催眠】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
【アヴォイド】がLV6になった!
【能力値アップ】がLV7になった!
【ダメージアップ】がLV4になった!

神那岐・修
下準備は終わり
戦だ

自身は地上から
光学迷彩は引き続き
低姿勢で飛翔し側面より接近
空を捉え「駆けて」向かう

一足の間に捉えたら“瞬”にて更に加速、飛び込み雷轟にて撃つ
その際、隊列中程へ飛び込み他の者の仕掛けの機を作るため耳目を集める

以後は敵勢から離れず交戦
“真”にて敵勢の動きを捉え、此方を狙う個体との間に他の個体を挟んで遮蔽としつつ各個撃破
“幻”と“瞬”で捌きつつ、“纏”の手刃にて武器や手脚を穿ち、撃った相手を遮蔽とし、時に空を掴んで身を翻し次を狙う

前座に時間など掛けておれん
兵は拙速を尊ぶ、ということだ

※アドリブ、連携歓迎


リップ・ハップ
先頭の頂点と後続の片側分断させに側面から仕掛ける
適当に残留効果使って待ち、タイミングは最速に合わせで
パラドクスで操る足場を駆けて斬り込むよ【忍び足、ダッシュ】
奇襲がきまったら【泥濘の地】も使っとこか

その後も血の足場による立体的な動きで敵陣を斬り崩しにかかる
痛いとこ見っけて突き回し、隊列って生き物を捌いちゃる【解体、看破】

……こいつら私と似たよな事する手合
ま『伯爵』介してやってる事だ、私が真似てるってほが正解か

似てんなら勝負所は差異の部分
接近に合わせて血を操り鋼糸の如く糸を一本引いてやる
斬る為の力と速さは向こう持ちだ
足場を作る? いやいや
私が作んのは狩場だから。獲物が立ち入りゃ結果は明白でしょ


レイ・シャルダン
【旭日革命軍団】
連携・アドリブ歓迎です。
コードネーム:スカイレイダー

引き続き【飛翔】状態を維持、木に隠れ
【パラドクス通信】を使用して仲間と連携します。
一方的にこちらが優位を取れている。
その状況を利用しない手は無い。

飛翔班とタイミングを合わせて一斉に奇襲を行います。
掌に魔力で紡いだ蒼い灯火を発生させ、機械魔導弓『ACRO』に番えパラドクスを発動します。
放たれた矢は、この空を泳ぐように敵に接近し、その急所を捉えます。
地上班との連携が成功したら【空中戦】をしかけ
アクロバット空中機動で敵を翻弄し、常に場を支配

敵の攻撃は『アルヴァーレ』による【結界術】で防ぎ
接触の瞬間フラットスピンでいなして回避します。


風宮・優華
【旭日革命軍団】
コードネーム:スノーホワイト
連携やアドリブ歓迎よ。

あたしは地上班として【光学迷彩】で息を潜め、警戒されないように【殺気】を消しつつ、様子を伺うわ。
空中班の奇襲後に【パラドクス通信】で地上班の皆とタイミングを合わせてパラドクスで追撃するわ。
【氷雪使い】【高速詠唱】により「吹雪よ」の一節で魔術を発動、吹雪で敵兵の体力と視界を奪っていくわ。

相手の反撃に対しては、左手五指に対応した5つの氷結輪を自在に操り、氷結輪に展開させたアイスシールドによる防御、シラユキの【砲撃】で迎撃するわ。

スノウメイジのあたしとシラユキにとって【雪中戦】は最も得意なフィールド……あたし達の全力、見せてあげるわ。


イオナ・ガルバローゼ
【旭日革命軍団】
連携やアドリブ歓迎です。

【光学迷彩】を維持したまま【パラドクス通信】で味方と連絡を取り合い、仕掛けるタイミングを合わせます。
地上から仕掛ける班ですが、雪に足を取られないよう地表すれすれを【飛翔】で接近
飛翔がこのレベルになれば歩行よりも速度の方が速いでしょうからね
Jaune ancienneを使用、回る花弁型の結界を展開しながら敵に突っ込みます
他の方角から攻める仲間が戦い安いよう盾となりましょう


ギオルギー・ルバソフ
シシシ…無口で陰キャなカワイコちゃん
血のお味はいかがなもんでショーかねぇ、ってな

【コウモリ変身】で木々の合間を抜けつつ【トラップ生成】で罠をしかけてくゼ
オレ様のパラドクスに使うための輸血パックの設置
他にも足を引っかけるための縄に、縄に連動して木がしなって枝に積もった雪を滑り落とすトラップに、氷のタライ落下に、【泥濘の地】でびしょ濡れにさせっとかな
ま、後者は時間稼ぎっつーか、嫌がらせ、みたいな?シシシ

隙が出来たらそーっと後ろから近づいてェ
オジョーサン、あっそびましょー?
耳元でささやいてやったらどんな反応すっかねェ?
声を出す前に串刺しにしちゃうんだけどよ
シシシ


●屍兵(認識番号:Н-18)
 斜め前を行く同胞のЬ-04がなにかを察知したらしい。こちらを振り返り、片手を上げて『要警戒』の合図を送ってきた。
 その手はすぐに下がった。
 いや、腕ごと雪面に落ちた。
 木の陰から男が飛び出し、駆け抜けざまに手刀を見舞い、Ь-04の腕を肘から断ち切ったのだ……と、理解できるまで数十分の一秒の時間を要した。その信じ難い現実を受け容れるのにも同程度の時間を要した。
 当事者であるЬ-04は私よりも早く理解し、また受け容れることもできたらしい。切り落とされた腕に見向きもせずに振り返り、男に反撃を加えようとした。疾風もかくというスピードで。
 しかし、男は回避した。雷光もかくやというスピードで。
「前座の始末に時間をかけておれん。兵は拙速を尊ぶ」
 男のその呟きは誰かに向けたものではなかったのだろうが――
「いえいえ、修様の攻めは巧速と言っていいでしょう」
 ――そう応じながら、少年とも少女ともつかぬ者が現れた。雪煙を上げながらも、足跡を一つも残さずに。雪面の数センチ上に浮かび、飛ぶように滑って……いえ、滑るように飛んでいるのだ。

●レイ・シャルダン(SKYRAIDER・g00999)
 私もイオナさんが言うところの『巧速』で参りましょう。
 休ませていた『アクロヴァレリア』を再起動。樹上から飛び立つと、トループス級たちがこちらを見上げてきました。
 その隙に乗じて、イオナさんがパラドクスを発動させました。薔薇の形をした白い結界が彼を中心にして広がり、刃のように鋭利な花片の先端部が三体のトループス級を斬り裂きました。そのうちの二体は傷を負うだけで済みましたが、残りの一体は死亡。修さんに腕を切り落とされた、あのトループス級です。
 もっとも、残りの二体の運命も風前の灯火でしょうね。
「さあ、痛いとこ見っけて突き回し、隊列って生き物を捌いちゃおっかー」
 リップさんが戦いに加わったのですから。
 彼女もまた足跡を刻まずに移動していますが、飛んでいるわけではありません。パラドクスの産物であろう薄い板状の物体を周囲に浮かべ、次々と飛び移っているのです。
 板状の物体はどれも赤く染まっていました。
 血の色です。

●屍兵(認識番号:О-07)
 薔薇のような結界を展開した少女(少年のようにも見えるが)。
 頭の上を飛び回っている銀髪の少女。
 私たちのパラドクスと同じような芸当をしているマスク姿の少女。
 どの新手も厄介な相手に思えたが、最初に現れた敵――東洋の衣服を着た黒髪の男をまず倒すことにした。
『イェーズカ』を発動。全身から発しているオーラを四方に拡散すると同時に硬質化させて、いくつもの足場を作った。そう、マスク少女の芸当と似ているパラドクスとはこれのこと。
 足場から足場へと飛び移り、飛び移り、また飛び移り……立体的な動きで男の背後に素早く(三秒とかかっていない)回り込んだ。
 だが、回り込めただけ。攻め込むことはできなかった。
 マスク少女がこちらと同じように足場を利用して立体的に動き、行く手を遮ったのだ。
「ふーん。あんたら、私と似たよなことする手合いなんだね」
 身構えるマスク少女。
 私は咄嗟に飛び退ったが、足になにかが引っかかった。木と木の間に張られていた細縄だ(白く塗られていたために見えなかった)。縄はトラップに繋がっていたらしい。大きな氷塊が降ってきて、私の頭を直撃した。
 なぜだか判らないが、その氷塊は盥の形をしていた。

●イオナ・ガルバローゼ(空染めの一輪・g07485)
 頭に氷塊を受けて体勢を崩してしまった(パラドクスではありませんから、ダメージはないはず)トループス級にリップさんの攻撃が命中!
 すると、傍らで笑い声があがりました。
「シシシッ!」
 言うまでもないとは思いますが、声の主はギオルギーさんです。
「なにがおかしいのですか、ギオルギー様?」
「あのトラップは俺様が仕掛けたんだよ。『トラップ生成』で以てな」
 ギオルギーさんの仕業でしたか。道理で氷塊がふざけた形をしていたわけですね……と、納得している間にまた一つ罠が発動して氷塊が落下。
 その氷塊の横をレイさんが通過しました。フライトデバイスを噴かし、青い光の軌跡を描いて。
 光の発生源は彼女の手。そして、その手にあるのは機械式の弓。訓練の際にも持っていた弓ですね。あの時に披露したパラドクスを使われるのでしょうか?
 だとすれば、標的になったトループス級の命運は尽きましたね。

●屍兵(認識番号:С-82)
 マスクの少女と戦っていたО-07がいきなり倒れ、足場から落ちた。即死だ。死因は明白。一本の矢が左頸部から右頸部を貫いている。
 射手が誰なのかも明白だ。弓を手にして飛び回っている銀髪のディアボロスだろう。しかし、О-07が倒れた時、そのディアボロスは二時の方向にいた。矢が飛来してきた方向は九時。曲線を描いて襲い来る矢とは……魔術の類か?
 とはいえ、我らがヴァンパイアノーブルのパラドクスに比べれば、そんなものは児戯も同然。本物の魔術で屠ってやる……と、意気込んで対空攻撃を仕掛けようとした時、新たな敵が視界に入ってきた。
 十歳にも届かぬであろう女児と、背中に砲を装着した白い犬だ。
 両者がこちらを狙っていることを察し、私は瞬時に目標を銀髪のディアボロスから女児に変えた。
 パラドクス『ツピェーザザ』を発動。血のオーラが体から離れて流れ落ち、雪面に触れる寸前に猟犬の形を取った。
(「行け、クラースニィ・スニェーク!」)
 オーラの猟犬に思念で命じる(我ながら秀逸なネーミングセンスだ。異論は認めない)と同時に私自身もまた女児へと突進し、短剣で斬りかかった。
 しかし、その刃は届かなかった。女児の周囲を飛び回っているいくつかの氷結輪が氷の障壁を展開して、斬撃を防いだのだ。私が短剣を振っている間にクラースニィ・スニェークが障壁の内側に回り込んだものの、白い犬の砲撃を受け、それ以上は踏み込めなかった。
「スノウメイジのあたしとシラユキにとって、雪中戦は最も得意なフィールド……」
 眉一つ動かさずに女児が言った。
 そして――
「あたしたちの全力、見せてあげるわ」
 ――パラドクスの吹雪を浴びせてきた。

●ギオルギー・ルバソフ(創贋卿・g07323)
 赤い血のオーラを猟犬に変えて嗾けるトループス級のカワイコちゃんと、白い吹雪のパラドクス『アイスエイジブリザード』で対抗する優華。
 日本には紅白ナンタラ合戦とかいう目出度いイベントがあるらしいが、こっちの紅白の合戦は本当に人死にが出るやつ。バイオレンス増し増し。惨烈を極めてるぜ。
「わおーん!」
 自身も白いシラユキが『白組がんばれ!』とばかりに吠えたけれども、優華のほうはクールなもんだ。ニコリともせずに『はぁ? がんばるまでもないんだけど?』みたいな顔をして、指先で眼鏡をクイッと上げちゃったりなんかして。
 もっとも、クールっぷりじゃあ、敵のカイワコちゃんたちも負けてないぜ。ディアボロス側に圧されてるのに誰一人として泣き声どころか呻き声一つあげてない。優華が雪のお姫様なら、こいつらは氷の女王様ってところか。
 くぅー! ワクワクが止まんねえや。氷の女王様の血のお味はどんなもんでショーかねえ。シシシシシッ!

●屍兵(認識番号:Б-19)
 弓弦が鳴り、矢が唸り、詠唱の声が吹雪に乗って流れ、犬の咆哮に大砲の轟音が重なって……ディアボロスどものおかげで、静かなはずの森が騒音のカタログと化してしまった。
 それらに混じって――
「シシシッ!」
 ――何者かの笑い声が聞こえた。実に不愉快な笑い声だ。鼓膜に鑢をかけられているかのよう。
 反射的に視線をさまよわせた。しかし、視界に入ったのは声の主ではなく、少年とも少女ともつかぬあのディアボロス。
「どなたかをお探しですか?」
 そう尋ねながらも答えを待つことなく(もとより答えるつもりなどなかったが)、少年/少女は白い薔薇の結界を展開した。Ь-04にとどめを刺したパラドクスだ。
 私は後方に跳ね飛んだが、薔薇が広がる速度のほうがわずかに勝っており、鋭い剣弁に向こう脛を斬られた。おまけに着地した瞬間にトラップの縄に足を取られた。その縄に繋がっていた枝が勢いよく跳ねて(しなった状態で固定されていたらしい)雪を撒き散らし、一瞬だけ視界を白く染めた。
 その一瞬の間に矢が飛来し、右胸に突き刺さった。銀髪のディアボロスの攻撃か。対単体用のパラドクスらしく、かなりのダメージを受けたが……まだ動ける。まだ戦える。
 少年/少女か銀髪かのどちらかに(できれば、両方に)一矢報いるべく、私は足を踏み出した。
 途端に雪面が崩れ、足下で赤いものが弾けた。血だ。しかし、私の血ではない。よく判らないが、またもやトラップに引っかかってしまったらしい。今度のそれはパラドクスが介したトラップ。
「シシシッ!」
 あの笑い声が背後から聞こえ、視界に闇が降りた……。

●風宮・優華(氷結の魔女/スノーホワイト・g08699)
「シシシッ!」
 二体のトループス級の胸から赤い凶器が突き出た。ギオルギーが背後から串刺しにしたのよ。邪な笑いに口元を歪めながらね。
 その凶器の材質は、凝固した血液。事前に雪面の中に仕込んでいた輸血パックの中身を使ったみたい。
「オジョーサン、あっそびましょー」
 そう囁いて、ギオルギーは二本の凶器を引き抜いた。
『オジョーサン』の片方は反応なし。今の攻撃で死んだから。
 もう片方は振り返りざまに反撃を仕掛けた。オーラを足場に変えて敵に迫るパラドクス。
「なにこれ? バルクールごっこ? オレが求めてるのはこういう遊びじゃないんだけどな」
 邪な笑いを浮かべたまま、ギオルギーはふざけた動き(古典的なギャグ漫画なら、足がぐるぐる回転しているでしょうね)で回避。
 トループス急は懲りずに追いかけようとしたけれど――
「ギオルギーに気ぃ取られすぎだって」
 ――リップが割り込んできた。
「クールな顔してっけど、意外と男に振り回されるタイプ?」
 リップは、血で出来た足場を相手よりも巧みに使ってトッリキーかつスピーディーに動き、あっという間にとどめを刺した。

●屍兵(認識番号:О-01)
 マスクの少女はЛ-03を倒すだけでなく、三人の同胞にも攻撃を加えていた(体複数用のパラドクスなのだろう)。
 三人はЛ-03のように深傷を負っていなかったため、その時点では死ななかった。そう、『その時点では』だ。数秒後には、三人のうちの一人――О-52が死体に変わった。黒髪の男に掌底を叩きこまれて。
 敵は各個撃破の戦術を取り、こちらの数を着々と減らしている。劣勢に立たされているという事実を受け容れねばなるまい。だが、時間を稼ぐことができれば、潮目は変わるだろう。いずれ、他の部隊が駆けつけてくれるはず……そのことに希望を繋ぎ止めつつ、私は『イェーズカ』で生み出した足場を蹴り、黒髪の男に攻撃を仕掛けた。
 だが、男は回避した。軽快なフットワークで同胞Г-01の後方に回り込み、彼女を盾にするという形で。
「他の部隊からの援軍はあてにしないほうがいいぞ。おまえたちの通信は遮断されている。とっくの昔にな」
 と、Г-01の体越しに男は言った。
 その生意気な口を黙らせるべく、Г-01が攻撃を加えようとしたが――
「他の部隊どころか、同じ部隊の仲間の助けもあてにはできないわよ」
 ――白い犬を連れた女児にパラドクスの吹雪を浴びせられ、力尽きた。
「今頃、あたしたちの仲間に狩られているでしょうからね」
「わん!」
 勝ち誇るかのように犬が吠えた。

●リップ・ハップ(Reaper Harper・g00122)
 そーそー、優華の言うとおり。敵の隊列を捌いてるのは私たちだけじゃない。他の連中も別の場所で鱗を取ったり、頭を落としたり、ワタを抜いたりしてるはず。三枚に下ろされるのも時間の問題じゃね? まな板の鯛ってやつ?
 だけど、鯛ならぬトループス級たちは往生際よく逝っちゃうつもりはないらしく、抵抗を続けてる。まあ、当然っちゃあ、当然か。
「苦戦を強いられているにもかかわらず、泣き言を口にせず、命乞いもしない……その意思の強さだけは賞賛に値するかもしれませんね」
 イオナがトループス級たちを誉めた。
 一方、優華のほうは辛辣。
「そうかしら? 語るだけの言葉を持ち合わせてだけじゃないの」
 意見は異なっているけれど、どちらも攻撃の手は緩めていない。イオナは薔薇の結界で、優華は『アイスエイジブリザード』で、複数のトループス級にダメージを与え続けている。
「なんにせよ、無言で死なれると、萎えちまうよなあ。シシシッ!」
 あ、そうそう。ギオルギーもいたっけ。
「陰キャなカワイコちゃんは死に際にどんな声を出すのかなぁ? ……なぁーんて、楽しみにしてたのによぉ」

●屍兵(認識番号:К-61)
『シシシッ!』と不愉快な笑い方をする男の攻撃を避け損ねた。
 よろけながらも、オーラで作った足場の一つに手をついて(これでは足場ではなく、手場だな)体勢を立て直し、短剣を振って斬撃を繰り出す。
 しかし、空振りに終わった。
 にもかかわらず、鮮血が散った。
 笑い男ではなく、私の血だ。左肩に矢を抉り込まれた。
 私はすかさずパラドクス『ディマンタシュ』を発動させた。矢を飛ばした銀髪の女に反撃するために。笑い男の始末は後回しだ。
 血のオーラを爆発させ、雪面を蹴って跳躍。空中にいる銀髪の女へと一気に迫り、短剣で斬りつける。
 手応えあり。
 だが、標的を刺した手応えではない。
 刃がなにかにぶつかった手応えだ。
 その『なにか』は障壁だった。幾何学模様を描く光の障壁。女と私との間にいきなり出現したのだ。
 障壁は一瞬にして消え去ったが、二撃目を繰り出す暇はなかった。女はきりもみ急降下のごとき動きで私の前から離脱している。
 私もまた降下した。
 足が雪面に着くか着かぬかのうちに美しくもおぞましい物――大きな白い薔薇が迎えてくれた。

●神那岐・修(紫天修羅・g08671)
 イオナがまた大輪の花を咲かせた。
 本物の花ではなく、殺傷能力を有した結界だ。
 レイに空中戦を挑んだ(といってもジャンプして斬りかかっただけだが)トループス級が着地ざまに結界に触れて死亡した。
 結界の攻撃を受けた敵は他に二体。その両方にリップが攻撃を仕掛けた。今までと同様、血で生成した足場を用いて立体的に動きながら。
 二体のトループス級もまたパラドクスで足場を作り、立体的な動きでリップに襲いかかった……が、そのうちの一体はリップと接触する前に足場から落下した。
 レイの矢に射抜かれたんだ。
「即席の足場の使い方はリップさんのほうに一日の長があるようですね」
「違うよ、レイ。私のこれは『足場』じゃなくて『狩り場』だし」
 空中のレイと言葉を交わすリップ。動くのをやめて、トループス級が来るのを待ち構えている。カウンターを狙っているのは明白だが、トループス級は立ち止まらない。逆にスピードを上げた。後の先の更に先を狙える自信があるのか。それとも、退くに退けぬのか。
「狩り場に獲物が飛び込んだりしたら――」
 リップは水平チョップを繰り出すかのように腕を薙いだ。指先から赤い滴が飛び、細くなり、長くなり、糸状に変わっていく。
「――どうなるかは言うまでもないっしょ」
 もしかしたら、トループス級は自分の過ちに気付き、急停止を試みたのかもしれない。だが、間に合わなかったらしく、猛スピードのままで突っ込んだ。
 首の高さにピンと張られた血液製の糸に。
「はい、さいならー」
 リップが手を振って別れを告げた。
 トループス級の頭部が体から離れて落下し、数秒の間を置いて、残された体も後を追った。

●屍兵(認識番号:Я-89)
 О-04とГ-09が続けざまに討ち取られた。前者は眉間を矢で射抜かれ、後者は首を切断されたのだ。
 残るは――
「――あなただけね」
 犬を連れた少女が冷ややかな視線をくれた。
「他の人たちのところはだいたい片付いたそうです」
 バイザーに手をやりながら、銀髪の女が皆に言った。別の場所にいる仲間と通信機で交信しているらしい。
「俺たちも片付けようか」
 黒髪の男が迫ってくる。
 そう簡単に片付けられると思うなよ、人間どもめ……と、言いたいところだが、私の力ではどうすることもできまい。
 しかし、ナージャ様なら。
 ナージャ様なら……必ず……。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【怪力無双】がLV2になった!
【泥濘の地】LV1が発生!
【飛翔】がLV7になった!
【使い魔使役】がLV3になった!
【照明】LV1が発生!
【強運の加護】がLV2になった!
効果2【能力値アップ】がLV10(最大)になった!
【アヴォイド】がLV8になった!
【ガードアップ】がLV2になった!

●幕間
「屍兵から兵の字が抜けて、ただの屍になっちゃったわね。こりゃ、まいったわ……」
 金髪紅眼の美女――アヴァタール級ヴァンパイアノーブルの『軍歌劇のナージャ』は肩をすくめてみせた。
 ディアボロスたちに取り囲まれた状況で。
 ナージャが立っている場所は、三角形の隊列の中心に位置するポイント。もっとも、配下の屍兵たちは全滅し、隊列は崩壊している。孤立無援だ。
 にもかかわらず、彼女は微笑を浮かべ、余裕を漂わせていた。
「だけど、悪いことばかりでもないわね。敵に見つかっちゃったからには、もう息を殺しておく必要はない。そう、思い切り歌える!」
 その言葉は冗談ではなかったらしい。
 言い終えるなり、本当に歌い出したのだから。
 ディアボロスたちの耳朶に飛び込んできた歌声は尋常なものではなかった。雄々しくて優しくて美しくて妖しい歌声。古代の戦記を歌う吟遊詩人のようでありながら、赤ん坊を子守歌を聞かせる慈母にも似て、情熱に身を焦がす恋人も思わせるし、船乗りを惑わすセイレーンのような印象も受ける。
 歌声ばかりでなく、それを紡ぎ出す歌唱能力も並外れていた。ヴァンパイアノーブルの魔力によるものか。あるいは不死者として生きてきた長い年月を研鑽に捧げてきたのか。
 ただし――
「おお、コーカサス、コーカサス、コォ~カサァァァ~ス♪ コーカサスは『白い雪』という意味なんだって♪ でも、野鼠どもが汚いハラワタぶちまけて死んじゃうから、白い雪も赤く染まっちゃうわぁ~♪」
 ――作詞のセンスはひどい。ひどすぎる。
 あの屍兵たちもこんな歌をいつも聴かされていたのだろうか? だとすれば、無口・無表情になったのも頷けよう。
「だ、け、ど、だいじょ~ぶ♪ すぐにまた白い雪が降り積もって、野鼠どもの死体を隠してくれるから♪ おバカな野鼠どもよぉ、あなたたちの死体は腐って大地に還ることも許されなぁ~い♪ 雪に埋もれてカッチンコッチンに凍りつくのよぉ~♪」
 最後にビブラートをきかせて、ナージャは歌唱を終えた。
 そして、どうでもいい注釈を加えた。
「『野鼠ども』のところには『ディアボロス』っていうルビを入れておいてね!」
 
ロキシア・グロスビーク
アドリブ連携ご自由に
寒いのヤダし【寒冷適応】は引き続き

あれは!
ディアボロスから殴られると反撃でいい感じに苦しめてきて
いい感じにディアボロスに倒されることに定評のあるナージャさんだよ
その生態から親の顔より見たナージャとして知られているね

とまあ与太はここまでにして
“魔槍”を構えMoon-Childを両脚に集中、活性化
オペレッタ、公演開始だっ!
障壁を展開し魚雷の如き【ダッシュ】で突撃
一当てしたら【飛翔】機動に切り替え、
ロールを絡めた曲芸飛行による【一撃離脱】で銃撃の被弾低減に努め
雷は障壁で受けつつ親衛隊を蹴散らし戦闘継続

戦意はどうするかって?帰ったら学園のお姉さん達にいっぱい甘える!
だからがんばるよ


神那岐・修
頭か
では叩く


“圓”“幻”にて向けられる攻め手を捌き“瞬”も重ね最速で
手脚が届かねば無能である以上離れる意味もない
取り付いたら以後は離れず嵐砕にて

兵団は面倒だが撃ち込む邪魔でなければ良い
打撃や軌道で生じる衝撃を自身の体内で増幅、衝撃波として触れる剣槍に叩き込み弾きつつ通し、近い個体は「ついで」に巻き込んで討つ
砕こうと動くのだろうが結構。目の前から無くなれば同じだ
元より自壊を前提としたもの
先に砕けばそれで仕舞い
自身の肉体は破損した部分を書き換え動かして攻め続けるのみ

※連携・アドリブ歓迎


ノイン・クリーガー
【旭日革命軍団】で参加。
コードネーム:ゴースト

[心境とか]
これは稀に見る酷いセンスだ。
だがそれを知らずに済むのなら、それほど幸せなことはない。
もう好きなだけ歌わせておいてやろう……

「そろそろ幕引きの時間だ、満足したかね?」

[行動]
右手にP218、左手にカランビットを持って戦う。
やたらと兵団を出してくるようなので、【地形の利用】を行い攻撃を避けつつ銃撃で応戦する。
そしてドサクサに紛れて発煙弾で煙幕を張り、煙幕にまぎれながら【完全視界】で敵を捉え【モブオーラ】を使いながら【忍び足】で死角から接近してカランビットで喉を裂き【暗殺】する。


レイラ・イグラーナ
【旭日革命軍団】
コードネーム:アサー

作曲家たるチャイコフスキーの名を騙る者はいましたが、作詞家はいないのですか……?
死体が雪に埋まる? 隠してくれる?
そんなことはございません。
この国に降りつもる白い雪も、永久凍土でさえ、死を、人民の流す血の赤を覆い隠すことはできません。
貴女たちが流した血は、ただ貴女たちの血によってのみ贖われる。そこから逃げることはできません……いえ、私たちが逃がしません。

他の復讐者と【パラドクス通信】で連携を行い、親衛隊の隊列の合間を縫い確実に一本一本呪詛の針をナージャへと撃ち込みます。
8本全て撃ち込んだら【天上奉仕・七星】を。死兆の呪詛で生命を刈り取ります。


●ロキシア・グロスビーク(啄む嘴・g07258)
 軍歌劇のナージャといえば、パイプライン北上作戦のリピーターにとってはおなじみの敵だよね。おなじみ過ぎて、ちょっと食傷気味。『親の顔より見たアヴァタール級』だの『トループス級並みの量産体制』なんて言われてるとかいないとか(でも、いっぱい動員されているのはそれだけ優秀ってことなのかもしれない)。
 僕たちの前にいるナージャがそれを知っているかどうかは判らないけど、知っていたとしても気にしちゃいないだろうね。ものすごくハッピーな顔をして歌ってたから。
 だけど、歌を聴かされた側の顔はハッピーには程遠い。レイラちゃんも修くんも無表情。ノインさんの顔はガスマスクに隠されているけど、たぶん同じようなものでしょ。僕? もちろん、こんな時でもにこにこ可愛く笑ってるよ。ほとんど苦笑いだけどね。
 ナージャと僕たちの間に冷たい風が吹き抜けていった後(いや、極寒のディヴィジョンゆえに冷たい風はずっと吹きっぱなしなんだけど、ナージャの歌が呼び起こした風は別物だから)、レイラちゃんが口を開いた。
「作曲家たるチャイコフスキーの名を騙るクロノヴェーダはいましたが……作詞家はいないのですか?」
 無表情なので、皮肉なのかマジな疑問なのか判らない。
 ナージャは後者と受け取ったらしく、ハッピーな顔を崩すことなく再び歌い出した。
「作詞家なんて必要ないわぁ♪ 魂が衝動に駆られればぁ、美しい詩が自然と紡ぎ出されるのよぉ~~~っ♪」
 魂さん、衝動に駆られすぎ。『とりあえず落ち着け』と言ってやりたい。
 美しくも苛立たしい歌声の残響が空気に染み入るようにして消え去ったところで、修くんがナージャに尋ねた。
「終わったか?」
 そして、答えを待つことなく、襲いかかった。
「では、叩く」
 脳筋じみた突撃に見えるけれど、攻めだけじゃなくて守りも意識しているだろう。敵が素早く殴打や蹴りを仕掛けてきたら、それ以上に素早く捌くはず。
 でも、ナージャは手技も足技も繰り出してこなかった。考えてみれば、当然か。彼女の最大の武器は――
「頭に血がのぼった凶暴な野鼠が迫ってくるわぁ~~~っ♪」
 ――歌声なんだから。こればかりは捌きようがないね。

●神那岐・修(紫天修羅・g08671)
「怒っちゃダメよ、野鼠さぁ~ん♪」
 ナージャは歌い続けている。
「ゴォ~リゴリなイーゴリ公も『怒れる心に安らぎなし』って言ってるじゃなぁ~い♪ いえ、言ってなかったかしらぁ?」
『怒っちゃダメよ』などと抜かしているが、逆に挑発しているとしか思えない。にもかかわらず、俺は怒りを燃え上がらせることができなかった。むしろ、怒りの火勢は弱くなっている。
 パラドクスの歌がもたらした現象は怒りの低下だけではない。ナージャの前に赤い霧のようなものが発生し、俺の行く手を阻んだ。おそらく、トループス級たちが纏っていた血のオーラと同じようなものだろう。
 オーラは兵士たちの形を取り、剣や槍で攻撃を仕掛けてきた。
 パラドクス『嵐砕(ランサイ)』で反撃。肉体が自壊するほどの激しい動きで以て敵を討つ技だ。たちまちのうちに俺は傷だらけになり、血塗れになった。兵士たちから受けた傷もあれば、自壊によって生じた傷もある。
 だが、無傷で済まなかったのは敵も同じ。何体かの兵士を倒すことができたし、そのついでに(いや、兵士のほうがついでなのだが)ナージャを攻撃することもできた。
「ああ、野鼠に殴られちゃったぁ~♪ そんなに痛くはないけれど、ちょっと屈辱だわぁ~♪」
 不愉快な歌声が遠ざかっていくのは、俺が後退したから。
 途中で白い影とすれ違った。雪中迷彩服を纏ったノインだ。右手に持つは消音器付きの自動拳銃。左手に持つは三日月型のナイフ。
「充分に歌って満足したかね?」
 ノインはエージャに問いかけたが、俺と同様に相手の答えなど待たなかった。
「では、幕引きといこうか」
「なに言ってるの? 重要なのは私じゃなくて聴衆の満足度でしょ。私の歌を求めている者が一人でもいる限り、幕を下ろすわけにはいかないわ!」
「いや、一人もいないが?」
 と、俺はナージャに言ってやった。
「うん。一人もいないねー」
 と、ロキシアが大きく頷いた。
「一人もいません」
 と、レイラが同意した。
 そして、ノインも……と、思いきや、奴の声は聞こえなかった。それどころか、姿も見えない。木の陰にでも身を隠しらしい。

●レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)
 クリーガー様に続いて、ナージャの姿も消えました(『完全視界』が働いているので、私たちの目には見えますが)。しかし、自分の意思で消えたわけではありません。発煙筒が投じられたのです。
 ナージャが煙幕に包み込まれると、発煙筒の投げ手であろうクリーガー様がその背後に現れました。そして、忍び足で近付き、左手のナイフで喉を一掻き! ……しようとするも、ナージャが素早く身を躱したため、三日月型の刃は肩を斬り裂くに留まりました。
 二太刀目が繰り出される前にナージャは垂直に上昇。一気に煙幕の中から飛び出ると――
「おお、偉大なるツァーリ♪ イヴァン雷帝よぉ♪」
 ――空中で歌い出しました。イヴァン皇帝に関する歌でしょうか? 今度の歌詞はそれほど酷い印象は受けませんね。
「あなたの覚えめでたき親衛隊にバァ~ンバンと銃撃させちゃってくださいなぁ~♪ そう、イヴァンだけにバンバンとぉ~♪」
 前言撤回。やっぱり、酷かったです。
 歌に応じて、長銃を手にした兵士たちが地上に出現しました。先程の兵士たちは血のオーラだけで構成されていましたが、今度のそれは雪も混じっているらしく、体色が赤と白の斑になっています。それに武器も違いますね。剣や槍ではなく、長銃です。
 兵士たちは背中合わせに円陣を組むと、『下手な鉄砲も云々』という日本の諺を体現するかのように三百六十度全方位に向かって銃弾を発射し、同時に雷撃も放ちました。
 クリーガー様は即座に反応。傍にあった倒木の裏側に滑り込み、身を伏せました。しかし、数瞬ほど遅かったのか、少しばかり傷を負ったようです。ちなみに言っておくと、全方位への激しい攻撃であるにもかかわらず、あくまでも反撃として用いたパラドクスなので、クリーガー様以外のディアボロスは被害を受けていません。逆説連鎖戦には付き物の不条理。
「随分と派手な歌劇だねえ」
 と、空中のナージャに語りかけたのはグロスビーク様。電磁槍を構えて、体をぐっと沈めています。両足が膨らんでいるように見えるのは、例の流動型人工筋肉を活性化させているからでしょう。
「だけど、僕の公演も派手さでは負けてないと思うよ。さて、どっちが――」
 縮んでいたバネが弾けるようにグロスビーク様の小さな体が跳ね上がりました。
「――観客に受けるかな?」

●ノイン・クリーガー(ゴースト・g00915)
「オペレッタ、公演開始だっ!」
 ジェット噴射の煙と見紛うほどの雪煙をあげてロキシアは急上昇し、ナージャに向かって一直線に飛んだ。
 ナージャは空中で身を翻したが、完全に避けることはできず、脇腹の辺りを槍で抉られた。名無しの雑魚ならば、悲鳴の一つでもあげるところ。しかし、アヴァタール級たるナージャの口から出てきたのは悲鳴ではなく、歌声だった。
「おお、偉大なるツァーリ♪ イヴァン雷帝よぉ♪」
 また、この歌か。稀に見る……いや、稀に聴く酷いセンスだ。
「うわー、聴いてるだけで戦意がガリガリ削られてくよぉ」
 ナージャから槍を引き抜いて間合いを広げながら、ロキシアが情けない声をあげた。その嘆きが嘘でも冗談でもないことを俺は知っている。同じパラドクスを食らったばかりだからな。どうも、あの歌には標的を脱力させる効果があるらしい。
 だが、それは前菜に過ぎない。厄介な主菜――血と雪で出来た兵士たちが再び出現し、飛行中のロキシアめがけて銃弾や雷を連射した(煙幕はもう晴れているので、今度はちゃんと狙いをつけているようだ)。
「新宿島に帰ったら、知り合いのお姉さんがたにいっぱい甘えて戦意を回復させようっと!」
 けしからん発言をしつつ、ジグザグの軌跡を刻むロキシア。航空突撃兵のお株を奪うかのような回避機動だが、何発かの銃弾を食らった模様。
 その間にナージャは着地したものの――
「あなたは『雪が死体を隠してくれる』などと歌っていましたね?」
 ――休む暇を与えることなく、レイラが迫った。握り拳を作った指の間から彼女のシンボルとも言える武器が突き出てて、鈍い光を放っている。
 銀の針だ。
「ですが、それは間違いです。この国に降りつもる白い雪も、人民の流す血の赤を覆い隠すことはできません」
「あはっ!」
 ナージャが憎たらしげに笑った。
「雪に隠されなかったとしても、『人民』とかいう下等生物の血がこの世に残ることはないわ! だって、私たちヴァンパイアノーブルが一滴残らず飲み干しちゃうからー!」
 そして、歌い始めた。おなじみとなった(耳と心はなじむことを全力で拒絶しているが)あの歌を。
「イヴァンだけにバンバンとぉ~♪」
 見飽きた兵士たちがまたもや出現し、銃撃と雷撃の嵐をレイラに見舞った。
 だが、レイラは怯まない。
「あなたたちが流した血は、あなたたちの血によってのみ贖われるのです。そこから逃げることはできません……いえ、私たちが逃がしません」
 傷だらけになりながらも、彼女は四本ずつの針を保持した両手を上げた。
 そして、俺たちに声をかけた。
「誘導、お願いします」
「左斜め上を狙え」
「次は十一時の方向だ」
「ちょい右!」
 地上の修と俺、空中のロキシア――別々の角度から敵陣を捉えてる三人のナビに従い、レイラは八本の針を投擲した。
 矢継ぎ早ならぬ針継ぎ早に放たれたそれらは兵士たちの間を縫うようにすり抜け、そのすべてがナージャに突き刺さった。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【水中適応】LV1が発生!
【隔離眼】LV1が発生!
【モブオーラ】がLV2になった!
【腐食】がLV2になった!
効果2【ガードアップ】がLV3になった!
【命中アップ】がLV4になった!
【フィニッシュ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV5になった!

エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
【旭日革命軍団】
連携アドリブ歓迎
CN:フェーデル
通信で密に連携

猟犬は狩り終えた
ええと……さぞや歌劇向きの声だろうにな
内容はお粗末か……
そんな茶番には付き合えないな

偵察、観察し戦況把握
【飛翔】し空中戦で地上との連携攻撃を行う
兵団や親衛隊が現れれば動きを妨害しつつ
PDで連射銃撃、敵を地上に縫い留め、隙を看破し穿つ
多方向から味方と攻撃を畳み掛ける

【トラップ生成】で敵の足場へ小さな雪崩を起こし
上へ飛んだら空中連携で撃ち落とそう

反撃には魔力障壁を張り
飛翔に緩急のフェイントかけて狙いを逸らし、銃弾の射線を観察、エアライドで高く回避
稲妻はラバースーツで軽減

雪原に刻む礎だ
お疲れ様だ
北上は続く。着実に前進しよう


リップ・ハップ
こっそり忍んでばっかじゃ肩が凝っちまう
ここらで一つバカ騒ぎと行こっか
精々舞台に相応しい一曲を奏でろよ、踏み躙ってやるから

やるこた単純、肉迫して斬り裂く【ダッシュ、突撃、斬撃】
それをなるだけ長くだ。パラドクスによる斬撃で敵の血を啜り、傷を癒しながらの持久戦。粘り強く至近で注意を引き続けるよ【吸血、忍耐力、時間稼ぎ】
簡単にゃ動きを止めねいそうだけど、私のタフネスとどっちが上か勝負しよっか

怒りの消失は、さて。消されたところでねぇ?
私の目の前を怪物がちょこまか動いてる。それだけで次から次に怒りは湧いてくる
獲物が囀ったところで狩人にゃ無意味よ【精神集中】


風宮・優華
【旭日革命軍団】
コードネーム:スノーホワイト
連携やアドリブ歓迎よ。

くだらないわ。あなたの戯言を聞いてる暇はないのよ。
敵の攻撃を左手五指で操る5つの氷結輪に纏わせたアイスシールドで防御。
右手のリボルバーから放つ氷の魔弾にパラドクスを付与した【誘導弾】で攻撃を相殺したり、敵の本体を狙うわ。
【高速詠唱】で即座に氷の弾丸を装填よ。

【雪中戦】で雪の中を駆けるシラユキは砲撃で援護。
味方やシラユキが危ない時は氷結輪のアイスシールドでディフェンスするわ。

【魔術知識】で敵のパラドクスの隙を見切って、味方の攻撃に対処している隙を狙って、両手で聖銃ヘレナを構えるわ。
パラドクスを込めた聖銀弾を放つ。
チェックメイトよ。


ギオルギー・ルバソフ
シシシ……こりゃぁ顔と体は上玉じゃねェの
ああ、声もか?
でも話す言葉はサイアクだから大減点だなァ

血の杭をにょきっと生やしたり
【照明】で目くらましかけたり
【怪力無双】でそこらへんに落ちてる元カワイコチャンの体を投げつけてみたり
動きの邪魔をさせてもらうぜ

だが、それは全部【トラップ】
元カワイコチャンを投げつけて杭に刺して出血させて
美人の周りに血だまりを作るンが目的ヨ
光も周りの雪で反射して強烈になっから、気づけないッショ

ある程度準備が整ったらパラドクス発動!
シシシシシ!キューソ美人の首を噛むってなァ!
自分が用意したお人形ちゃん達の血で潰されるってのァ、どんな気持ち?
ねえ、どんな気持ち?
シシシシシ…


●リップ・ハップ(Reaper Harper・g00122)
「身の程を知りなさぁ~い♪」
 体に突き刺さった針を抜きながら、ナージャが歌ってる。仲間たちの攻撃で結構なダメージをもらったくせして涼しい顔してんな。
「たとえ、天地がグルッとひっくり返っちゃったりなんかしてもぉ♪ 無様に地を這う野鼠ごときがぁ♪ 華麗に天を翔けるヴァンパイアノーブルに勝てるわけないのよぉ~~~♪」
 小学三年生くらいのガキンチョが作詞したのかって感じの歌だね。声だけは凄く良いけど。
「声は歌劇向きなのだがな……」
 と、エトヴァが同じような感想を漏らした。その顔は、なんていうか……ブゼンとした面持ちってやつ?
 それと対照的なのはギオルギー。やらしく笑いながら、舐め回すようにナージャを見てる。
「シシシシシッ。声だけじゃなくて、顔と体も上玉じゃねえのぉ」
 女も見る目がないね。
「でも、言ってることはサイアクだから、大減点だな。この俺様にサイアク呼ばわりされるなんて、相当なもんだぞぉ。うん、相当なもんだ」
「……それ、自分で言う?」
 優華が白い目でギオルギーをちらりと見た。『ちらり』で終わったのは、すぐにナージャに視線を戻したから。『ぎろり』って感じの視線だ。
「随分と怖い目で睨んでくれるじゃな~い♪」
 視線を受けて、ナージャは歌の調子を変えた。
「だ、け、ど、本当に怖い目を見るのはそっちよぉ~♪ 怖すぎておしっこを漏らすかもしれないから♪ 今のうちにおむつでもつけといたほうがいいわよ、お嬢ちゃ~ん♪」
「わおーん!」
 主人をバカにされたことに腹を立てたのか、シラユキが吠えた。
 一方、主人たる優華は声を荒げたりせず、でも軽蔑しきったような冷たい眼差しはそのままに――
「あなたのたわごとを聞いてる暇はないわ」
 ――拳銃を構えた。
 だけど、トリガーにかけられた指が動くより先に銃声が轟いた。
 エトヴァが雪を蹴って舞い上がり(ナージャは『華麗に天を翔けるヴァンパイアノーブル』とか歌ってたけど、天使の飛び方のほうがずっと華麗だってことは認めざるえないだろうね)、ナージャの頭上から二丁の銃を連射したんだ。
「おまえの言動は歌劇には程遠い。茶番劇ですらない」
 エトヴァがナージャに言い捨てた言葉は辛辣だったけど、銃撃の激しさはその比じゃない。何発かの弾丸が茶番劇の主役気取りに命中し、血が弾け飛んだ。
 その『何発か』に新たな一発を加えるべく、優華が今度こそ拳銃のトリガーを引いた。

●風宮・優華(氷結の魔女/スノーホワイト・g08699)
『聖銃ヘレナ』と名付けた銃から撃ち出されたのはただの銃弾じゃない。パラドクス『シルバーバレット』の力を込めてあるのよ。
 銀色に輝くそれはナージャに新たな傷をつけた。
 でも、奴は動じる様子を微塵も見せず――
「暗くて寒い森の中で、年老いたイヴァンは逝っちゃうのぉ~♪ 若きツァーリへの忠誠心だけをともにしてぇ~♪ あ~ん、泣けちゃうわぁ~ん♪」
 ――歌いながら、パラドクスで反撃してきた。今まで見せてきた(聴かせてきた)ような、召喚系のパラドクスじゃない。エトヴァと同じく、二丁拳銃の連射。
 あたしは両手で構えていたヘレナを右手だけに持ち替え、左手で五つの氷結輪を操り、氷の障壁を展開した。更に銃弾を銃弾で相殺すべく、ヘレナをまた発砲した。
 でも、すべてを防ぐことはできなかった。数発の銃弾が氷の障壁を砕き、あるいはヘレナの銃弾をすり抜けて、あたしの体へと撃ち込まれた。
「わふっ!」
「大丈夫よ」
 気遣うように鳴くシラユキを落ち着かせながら、ヘレナに銃弾を再装填。
 完全なる回避ができなかったのは、恐怖が動きを鈍らせたせいかもしれない。そう、あまり認めたくないけれど、あたしの心にはちょっぴり恐怖が生じていた(あくまでも『ちょっぴり』だからね?)。ナージャの素っ頓狂な歌によって呼び起こされた恐怖。彼女が言ってた『怖い目を見る云々』というのはこのことだったのね。
「あ~ん、泣けちゃうわぁ~ん♪」
 歌と銃弾による反撃は飛行中のエトヴァにも及んだ。
 エトヴァは両手につけてる指輪から荊のような魔力障壁を発生させたけど、数発の銃弾を受けた。あたしと同様、恐怖心も覚えたかもしれない。あたしと同様、ちょっぴりだろうけど。
「わんわんわんわぁーん!」
 あたしやエトヴァを励ますように吠え立てながら、シラユキが背中の砲をナージャめかげて連射した。パラドクスの攻撃じゃないから、相手はかすり傷一つ負ってないけど。
「咆哮と砲声の二重唱は聞き応えがあるな」
 と、エトヴァが言った。
「少なくとも、誰かさんの歌よりは……」

●エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)
「わっせ! わっせ! わっせ!」
 シラユキの砲撃にタイミングを合わせるようにして、ギオルギーさんがナージャにものを次々と投げつけた。その『もの』というのは投擲用の武器なんかじゃない。周囲に転がっているトループス級の死体だ。パラドクス効果の『怪力無双』で持ち上げているのだろうが、この攻撃自体はパラドクスではないので、ナージャは無傷。そもそも、命中していない……いや、当のギオルギーさんも命中させるつもりなどないらしい。敵の周囲に死体をばらまいているだけだ。嫌がらせにしては悪趣味に過ぎないか?
「さーて」
 リップさんも動き出した。担いだ大鎌で肩をとんとん叩きながら、ゆっくりとナージャに迫っていく。
「こっそり忍んでばっかで肩が凝ってたところだし、ここらで一つバカ騒ぎといこっか」
「いいね! バカ騒ぎ、大好き!」
 ギオルギーさんが死体投げを中断して合いの手を入れたけど、リップさんもナージャも無視した。
「せいぜい、バカ騒ぎに相応しい歌ってろよ。拍手の代わりに――」
 大鎌を構え直すリップさん。
「――踏み躙ってやっからさ」
「言われなくても歌ってあげるわぁ~~~♪」
 ナージャもまたリップさんに向かって歩き出した……が、その途端、足下の雪が崩れた。俺が『トラップ生成』で作り出した罠だ。
 にもかかわらず、ナージャはよろけたりしなかった。よろける寸前に空に飛び上がったりもしなかった。肩で風を切るようにして、堂々と歩き続けている。よく見ると、足の裏が雪に触れてない。地面のすぐ上を超低空飛行してるらしい。何人かのディアボロスがトループス級たちを相手にしてた時と同じように。
「ああ、なんて底の浅い罠かしらぁ♪ こんなものに私が引っかかるとでも思ったのぉ? ホントにおバカな野鼠だことぉ~♪」
「いやいやいやいや。その『おバカな野鼠』の皆様が披露した飛行テクを臆面もなくパクっといて、偉そうなこと言ってんじゃねえよ」
 と、ギオルギーさんが切り返した。彼にしては(と言っては失礼か)筋の通った意見だ。
「てか、さっきから俺たちのことを野鼠呼ばわりしてっけどよぉ。ネズミってのは、あんたが思っているよりコワァ~い生き物なんだぜ? 群れて牙を剥き、壁や柱を齧り、食料を食い尽くし、おまけに疫病まで流行らせちゃったりして……シシシッ」
 ギオルギーさんはわざとらしく手を口にあて、これまたわざとらしく肩を揺らして笑ってみせた。
「今からネズミの怖さってもんを教えてやんよ」

●ギオルギー・ルバソフ(創贋卿・g07323)
 俺様の御高説に対して、ナージャはなにか言い返そうと……いや、歌い返そうとしたようだが、そんなもん聞いてやるもんかい。そーれ、パラドクス発動!
 辺りに転がってるカワイコちゃんたちの死体(そう、俺が投げまくったやつよ)から流れ出ていた血がギュっと凝縮されて、なんか凶悪な形のもんになって、ナージャにぶつかった。はい、大当たりー!
「シシシシシッ! キューソ、美人を噛むってなぁ! 自分が用意したお人形ちゃんたちの血でぶっ叩かれるって、どんな気持ち? ねえ、どんな気持ちぃ?」
 と、俺様がせっかくインタビューしてやったのに、ナージャは意外とノリが悪いらしく、答える代わりに反撃してきた。
「怒っちゃダメよ、野鼠さぁ~ん♪ ゴォ~リゴリなイーゴリ公も『怒れる心に安らぎなし』って言ってるじゃなぁ~い♪ いえ、言ってなかったかしらぁ?」
 いや、べつに怒ってねーし……なんて言い返す間もなく、血のオーラでできた兵士たちが現れて、剣だの槍だので突っついてきやがった。痛ぇなぁ、もう!
 だけど、俺が兵士たちにいじめられてる間に――
「思っていた以上に派手なバカ騒ぎだね」
 ――リップがナージャの横に回り込み、でっかい鎌で斬りつけた。
「んじゃ、約束した通り、踏み躙ってやんよ。いや、斬り刻んでやんよ!」
 鎌がブンブンと振り回されて、ナージャの血がドバドバと飛び散った。すんげえ迫力だわ。リップ……いや、リップさん、ハンパねえっす!
 ナージャは堪らず後退し、さっきと同じ歌で反撃した。
「ゴォ~リゴリなイーゴリ公も『怒れる心に安らぎなし』って言ってるじゃなぁ~い♪」
 あいかわらずヘンな歌だが、威力はバカにできねえ。ナージャの体から飛び散った血が新たな兵士たちに変わり、リップさんを攻撃した。
「うわー……なんかよく判らないけど、この歌を聴いてると、怒りが消えてくわー」
 槍で突かれ、剣で斬られ、リップさんは血塗れになったけども、目元からは余裕が感じられるな(でっかいマスクをつけてっから、目元しか見えねえのよ)。
「でも、消されたところでねぇ? クロノヴェーダが目の前でちょこまか動き続けてる限り、後から後から湧いてくるし」
 いや、余裕じゃなくて、静かな怒りなのかも?
「ホント、いくらでも湧いてくるわね」
 優華がズドンと発砲し、ギンギラギンに輝く弾丸をナージャに食らわせた。
「この茶番劇が終わるまで尽きることはないだろうな」
 エトヴァも両手に持った拳銃を撃ちまくった。その容赦のない激しさは最初に銃撃した時に勝るとも劣らないっていうか、完全に勝ってんじゃん! エトヴァ……いや、エトヴァ、ハンパねえっす!
 
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【飛翔】がLV8になった!
【活性治癒】がLV2になった!
【寒冷適応】がLV2になった!
【強運の加護】がLV3になった!
効果2【グロリアス】がLV2になった!
【ドレイン】がLV5(最大)になった!
【命中アップ】がLV5(最大)になった!
【アヴォイド】がLV9になった!

エリザベータ・シゲトヴァール
●心情
聴くに堪えないわ。
お前の歌声は耳には届いても心には届かない。
端的に言えば……お前の『歌』は、音楽じゃない。

●行動
【旭日革命軍団】
コールサイン:ユサール
【パラドクス通信】での連携を密に。
雪中の視界不良は【完全視界】で対応。

【飛翔】し【空中戦】技能と【戦闘知識】を駆使した近接航空支援を実施。
敵親衛隊の動きを阻む様に【制圧射撃】で足を止め、友軍地上部隊の攻勢に呼応して空対地攻撃を行い、敵陣の突破口をこじ開ける。

敵アヴァタール本体へ攻撃の手が届く段階になればV-EXTRAを発動。
機動性を活かした【残像】と【一撃離脱】の反復攻撃で畳み掛ける。

敵が飛ぶなら寧ろ望む所。
空の戦いなら誰にだって負けない。


レイ・シャルダン
【旭日革命軍団】
連携・アドリブ歓迎です。
コードネーム:スカイレイダー

ええっ……と…。
ロマノフの民謡か何かかな?
実に…個性的な歌詞ですね…。

ふぅ…。
変な歌に油断してはいけない。
この人数差でこの余裕、敵も相当の手練れです。
気を引き締めていきましょう。

こちらも、もう隠れる必要は無い。
全力で、そして自由にこの空を駆けましょう。
『アクロヴァレリア』の出力を全開にしてパラドクスを発動
右手に『シュトライフリヒト』
左手に『シャルダント』
生まれた残像兵と共に隊列を組み、敵に突撃を慣行します。
さぁ、空中機動戦闘の極致を見せてあげる!

親衛隊による反撃にはシャルダントによる【結界術】で阻み
残像兵の攻撃で撃破を狙います


レナータ・ペトリェンコ
【寒凪】
アドリブ・連携歓迎

何やら急に雑音が…
……アレが歌?
彼女はユーモアのセンスが皆無のようですね
まぁ、彼女には死ぬほど愉快に踊っていただきますが

【完全視界】【パラドクス通信】で密な連携を準備
潜んで【光学迷彩】で物陰を移動しつつ相手の死角にホログラムデコイを複数設置します
“アレ”でもアヴァタール級です

改めて【光学迷彩】で別の物陰に潜みSVSを構えます
狙撃手はどんな状況でも弾を当てるよう[精神集中]させる経験を積んでいますから
デコイで[撹乱]、『吹雪貫く弩砲』で[暗殺]や[雪中戦]の経験を頼りに急所を狙撃、隠れて移動しまたパラドクス狙撃…
チャンスは多くとも3回、必ず仕留めます
斃れるまで踊りなさい


佐伯・雪香
【寒凪】
アドリブ・連携歓迎


「その耳障りな喉、凍て付くまで歌わせて上げるよ」

[天魔融装]で自身を強化、[静夜の羽々守]や[天環の加護]の強化を[ソニックブーツ]に集め高い機動力を攻防に活かすよ

何よりまず【浸渾晦冥】を打ち込み続けて、動く程凍結される状態に追い込む

【パラドクス通信】で周囲と連携の上包囲攻撃されて、どれだけ保つかな?
それも、【トラップ生成】した「クロノヴェーダやその被召喚物に反応し拘束ワイヤーを連射するセントリーガン」を無数に配置した殺し間で

決定打に至らずとも弾く必要はあるよね?
足掻けば足掻く程に使い物にならなくなる喉と肺で、最期の歌を楽しんでね
うちのナータがトドメをさす、その時まで


●エリザベータ・シゲトヴァール(聖イシュトヴァンの剣・g00490)
 貴族にして将校にして歌姫といった凛然かつ優美な出で立ちをばっちり決めていたナージャだけど、皆の猛攻を受けて、今は見る影もないわ。白い肌は血で斑になっているし、軍服は襤褸も同然。
 にもかかわらず、その顔には傲岸不遜な笑みがまだ貼り付いている。
「しぶとい野鼠だこと」
「いえ、しぶといのはそちらでしょう」
 と、レナータさんがすかさず言い返したけど、ナージャはなにも聞こえなかったような顔をして、また歌い出した。
「さっさと死ねば、楽になるのにぃ♪ どうして、ちっぽけな生にしがみつくのぉ~♪ あ、判ったわぁ♪ 私の歌をずっと聞き続けたいからぁ、死ぬに死ねないのねぇ~♪」
 ……ある意味、こいつは天才よね。こんなに美しい声と優れた歌唱力を持っていながら、聴衆を激しく苛立たせることができるんだから。
 もっとも、聴衆の一人であるレイさんの場合は苛立ちよりも当惑のほうが大きいみたい。眉を八の字にして、珍獣でも見るような眼差しをナージャに向けているわ。
「あの人、さっきから個性的な歌ばかり歌っていますが……あれらは吸血ロマノフ王朝の民謡の類でしょうか?」
「いやいやいやいや」
 と、雪香さんが苦笑を浮かべて首を左右に振った。
「あんなのを民謡扱いしたら、本当の民謡を歌い継いできた人たちが黙ってないと思うよ」
「そうよ♪ 私の歌は民謡なんて低俗なものじゃないわぁ~♪ もっと高尚なのよ~♪」
 ナージャが歌で相槌を打つと、雪香さんの顔から苦笑が消えた。
「いいかげん黙ってよ……なんて言ったところで、黙るわけないか。まあ、べつにいいけどね。好きなだけ歌いなさい」
 雪香さんは魔導書を取り出し、ページをぱらりとめくった。もっとも、そこに視線を落としてはいない。人を苛立たせる天才をずっと睨み続けてる。
「その喉が凍り付くまでね」
 彼女が起こすであろう攻撃の余波を避けるためか、その左側にいたシエルが音もなく後退した。
 右側のほうにはさっきまでレナータさんが立っていたのだけれど、いつのまにか消えている。どこかに身を隠したのかしら? ……と、思っていたら、あちこちに姿を現した。
 そう、『あちこち』よ。
 何人ものレナータさんが別々の場所に同時に出現したの。高速移動による分身の術とかじゃなくて、立体映像を投影する機器を使ったのでしょうね。

●佐伯・雪香(天魔の翼・g01694)
「地上は満杯のようですから――」
 活人画のようにポーズを決めて動かずにいる(というか、立体映像なので最初から動けないんだけど)ナータたちを興味深げな目で見回しながら、レイさんがエリザベータさんに声をかけた。
「――私たちは上から攻めましょうか」
「そうね」
 二人は同時にフライトデバイスを起動。雪を蹴立てて急上昇した。
 さて、実体なきナータたちに囲まれたナージャの様子はというと……動揺する素振りを微塵も見せてない。あいかわらず、余裕綽々。
 まあ、ナータの攪乱作戦の成否がどうであれ、ボクがやることは変わらない。攻撃あるのみ!
 シエルが祝福してくれた(ミニドラゴンからのドラゴンオーラに相当するものだよ)レガリアスシューズ『ソニックブーツ』で細い溝を雪に刻みながら、ボクはあっちからこっちへ、こっちからあっちへと走り回った。少しでも捕捉を困難にするために。
 足を止めることなく、魔導書『大いなる双鍵』に一瞬だけ目を走らせてパラドクスを発動。
 すると、ボクの前面から水が迸った。ホースで水撒きって感じのレベルではなく、深くて冷たい大河のような……いえ、『ような』はいらないか。大河そのものだよ。
 虚空より流れ出た大河はナージャにぶつかり、幻のように消え去った。
 当然、ナージャはびしょ濡れ。ダメージも受けたはず。それでも――
「ふふん! 水も滴るいい女ってやつね!」
 ――体をぶるんと震わせて水滴を飛び散らせ、強がってみせた。
 そして、本人曰く『高尚』な歌のパラドクスで反撃した。
「怒っちゃダメよ、野鼠さぁ~ん♪ ゴォ~リゴリなイーゴリ公も『怒れる心に安らぎなし』って言ってるじゃなぁ~い♪ 」
 彼女の纏っている血のオーラが兵士の一団へと代わり、こっちに襲いかかってきた。
 ボクは敵の動きを少しでも鈍らせるため、クロノヴェーダとその被害召喚物だけに反応する連射するセントリーガンを『トラップ生成』で作り……出そうとしたのだけれど、そんな高度な(というか、ほぼ不可能な?)判別機能を有した重火器はトラップの範疇を越えているらしく、生成できなかった。残念。
 兵士たちは澱みなく動き、ボクに剣を振り下ろし、あるいは槍を突き出してきた。

●レナータ・ペトリェンコ(“Кпык”(クルィーク)・g01229)
 私は木の陰に身を潜めて、狙撃銃『ルサールカSVS』を構えていました。
 歌に応じて出現した……いえ、訂正しましょう。あれは歌とは言えません。ただの雑音ですね。
 雑音に応じて出現した兵士たちが雪香を攻撃している間にナージャに狙いを定め――
(「あなたにはユーモアのセンスが皆無のようですが……死ぬほど愉快に踊っていただきましょう」)
 ――心の中で呟きながら、トリガーを引き絞りました。パラドクス『吹雪貫く弩砲(ブリザードバリスタ)』による狙撃です。
 命中。
 しかし、致命傷には至らなかった模様。
「暗くて寒い森の中で、年老いたイヴァンは逝っちゃうのぉ~♪」
 銃声の残響を雑音でかき消しながら、ナージャは両手の銃をこちらに向けて、新たな銃声を響かせました。
 今度は私が弾丸を受けることとなりました(しかも、稲妻を伴った弾丸です)。木の陰に隠れていますし、周囲にはホログラフも投影されていますから、捕捉されないはず……と、思っていたのですが、甘かったようです。
「若きツァーリへの忠誠心だけをともにしてぇ~♪ あ~ん、泣けちゃうわぁ~ん♪」
「聴くに堪えないわ」
 不愉快な雑音を吐き続けるナージャの頭上を飛びながら、エリザベータさんが言い捨てました。
「おまえの歌声は耳には届いても、心には届かない。端的に言うと……おまえの歌は音楽じゃない」
 私も同意見です。
「審美眼ならぬ審美耳のない野鼠がぁ~♪ 偉そうなことを言ってんじゃないわよぉ~♪」
 ナージャはエリザベータさんを見上げもせず、小馬鹿にするように肩をすくめました。
「あなたたぢごときにぃ~っ♪ 高尚な音楽のなにが判るというのぉ~♪」
「正直、よく判りません」
 と、エリザベータさんより先にレイさんが答えました。
「判りたくもありませんが……」
 レイさんのフライトデバイスから噴き出ている青い炎にグラデーションが生じ、赤に変色しました。
 そして、彼女自身にも変化が生じました。
 といっても、姿が変わったわけではありません。
 数が増えたのです。
 私の分身たちはホログラムでしたが、レイさんの分身たちは超スピードによって発生した残像でしょうね。

●レイ・シャルダン(SKYRAIDER・g00999)
 パラドクス『GipfelManöver』が生み出した分身たちは残像であっても、虚像にあらず。己の意思で戦う兵士たちなのです。
 彼女らとともにボクは眼下のナージャめがけて急降下し、光刃のレイピア『シュトライフリヒト』を繰り出しました。
 手応えあり!
 しかし、手応えに続いて、耳応えとでも呼ぶべきものも返ってきました。
 例によって例のごとく、ナージャが歌のパラドクスで反撃してきたのです。
「おお、偉大なるツァーリ♪ イヴァン雷帝よぉ♪ あなたの覚えめでたき親衛隊にバァ~ンバンと銃撃させちゃってくださいなぁ~♪ そう、イヴァンだけにバンバンとぉ~♪」
 ああ、雪香さんの言ってたとおりです。こんなものを民謡と呼ぶのは、この地の文化に対する冒涜も同然でした……などと反省している場合ではありません。新たな兵士たちが出現し、銃撃と雷撃を浴びせてきたのですから。
 左手に装着したガントレット『シャルダント』で結界を発生させたものの、完全に防ぎ切ることはできませんでした。
 しかし、これしきのダメージで怯んだりはしません。残像兵たちを連れて再び急降下……しかけた時、また銃撃が起こりました。ただし、火線が伸びる方向は先程とは逆。上から下です。
「お望み通り、バンバン撃ちまくってやるわ。イヴァン雷帝ではなく、聖イシュトヴァンの使徒がね」
 銃撃しているのはエリザベータさん。得物は軽機関銃。彼女もまたパラドクスを発動させたらしく、フライトデバイスの駆動音が大きくなり、飛行速度が増し、おまけに残像まで生じています。
「今日は残像祭りだね」
 雪香さんが冗談を口にしている間も雷雨のごとき銃撃は続き、ナージャは蜂の巣になりました。
 しかし、息絶えたわけではありません。それどころか、声量が更に上がっています。傷口から流れ落ちる血の量に比例するかのように。
「おお、偉大なるツァーリ♪ イヴァン雷帝よぉ~っ♪」
 両腕を大きく広げて、彼女は垂直に上昇しました。
「あなたの覚えめでたき親衛隊にバァ~ンバンと銃撃させちゃってくださいなぁぁぁぁぁ~っ♪」
 イヴァン雷帝の『覚えめでたき親衛隊』であるところの兵士たちも次々と追随して飛翔し、エリザベータさんに攻撃を加えました。
 もっとも、ボクがそうであったように彼女もまた怯んだりはしませんでしたが。
「判断を誤ったわね。足を地から離した時点で勝敗は決したわ。なぜなら――」
 勇ましい咆哮に機関銃の連射音が重なりました。
「――空の戦いなら、私は誰にも負けないから!」

●終幕
 エリザベータの機関銃が吠え、レイの剣が唸り、レナータの狙撃銃が叫び、雪香の生み出した大河が轟々と流れ……軍歌劇のナージャはついに力尽き、雪に背中を沈めるような形で倒れ伏した。
 しかし、死を前にしても――
「あまり調子に乗らないことね。これは束の間の勝利に過ぎないわ」
 ――彼女の顔から憎々しい笑みが消えることはなかった。
「敗者らしからぬ尊大な態度ですね」
「ある意味、敗者らしいかも。負け惜しみを言ってるだけだし」
 レナータと雪香のやり取りを無視して(あるいは、もうなにも聞こえていないのかもしれない)、ナージャは言葉を続けた。
「あなたたちはパイプラインの終結点にたどりつけないわ。第二第三の私が現れて、行く手を阻むでしょうからね」
「いえ、第二も第三もとっくの昔に現れて、とっくの昔に死んでるわよ」
 と、エリザベータが無情な事実を告げた。
「たぶん、あなたは第七か第八くらいです」
 レイの追い打ち。
 ナージャはなにも反論せず、ゆっくりと目を閉じた。
 代わりに口を開いた。
『高尚』なる白鳥の歌でも聴かせようとしたのかもしれない。
 だが、口から出てきたのは『ひゅう』という寒風の音にも似た断末魔の息だけだった。
 
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【飛翔】がLV10になった!
【寒冷適応】がLV4になった!
効果2【ダメージアップ】がLV7になった!
【ロストエナジー】がLV3になった!

最終結果:成功

完成日2023年01月20日

パイプライン北上作戦

 バクー油田の制圧に成功したディアボロスは、攻略旅団の方針に従い、バクー油田から繋がるパイプラインに沿って北上し、吸血ロマノフ王朝の心臓部に向けて侵攻を開始しました。
 これに対し、吸血ロマノフ王朝は、バクー油田の奪還を視野に『ロマン・ウンゲルン・シュテルンベルク』と『『ヤーシカ』マリア・ボチカリョーワ』の2体のジェネラル級を指揮官とした遊撃部隊を結成。ディアボロスを発見して撃破しようと哨戒活動を積極的に行っています。
 この遊撃部隊を撃破し、敵拠点に向けて北上していきましょう。
 なお、パイプラインの周辺には一定間隔で、一般人の集落があるようなので、集落に潜入して接触を取り、『吸血ロマノフ王朝の地方の一般人から得られる程度の情報』を得られるかもしれません。

※12/02:攻略旅団の提案により攻略期限が延長されました。23年1月2日以降のシナリオで攻略難易度が上昇します。
ロマン・ウンゲルン・シュテルンベルク
『ヤーシカ』マリア・ボチカリョーワ

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🔒
#吸血ロマノフ王朝
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#パイプライン北上作戦
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#バクー油田
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#コーカサス地方


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選択肢『敵部隊哨戒任務』のルール

 周囲を警戒し、近づいてくる敵部隊を発見します。
 うまく成功すれば、敵に発見される事無く、一方的に発見する事が出来ます。
 一方的に敵を発見する事で、後の行動の成功率が大きく上昇する場合があります。
 周囲の状況や、近づいてくる敵部隊に関する情報などは、オープニング及びリプレイを参照してください。

 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 なお、この選択肢には、特殊ルールはありません。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢『ウォーミングアップ』のルール

 パラドクストレインで現地に向かった後、事件が発生するまでの間、個人或いは仲間達と、訓練などを行います。
 パラドクスの試し打ちをしたり、仲間同士で組み手をするなどして、万全の態勢で敵を迎え撃てる準備をしましょう。
 詳細は、オープニングの情報を確認してください。

 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【🔑】他の選択肢のリプレイが一度でも執筆されると、マスターはこの選択肢のリプレイを執筆できなくなる。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👾巡回警備のトループス『『婦人血死隊』骸兵』のルール

 事件の首魁であるクロノヴェーダ(👿)と共に、周囲を巡回・警備するトループス級(👾)と戦闘を行います。
 敵は、巡回・警備を行っている為、うまくやり過ごして戦闘を避けたり、わざと発見されるようにして陽動するなど、状況に合わせた対応を行う事で、有利に戦う事が出来るでしょう。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「沢山」出現します(現れる敵の数は、オープニングの情報やリプレイの記述で提示されます)。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『この選択肢の🔵が👑に達すると、この敵集団を倒す。完結までにクリアしていない場合、この敵集団は撤退する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👿アヴァタール級との決戦『『婦人血死隊』軍歌劇のナージャ』のルール

 事件の首魁である、アヴァタール級クロノヴェーダ(👿)と戦います。
 👿を撃破する事で、この事件を成功で完結させ、クロノヴェーダの作戦を阻止する事が可能です。
 敵指揮官を撃破した時点で、撃破していないクロノヴェーダは撤退してしまいます。
 また、救出対象などが設定されている場合も、シナリオ成功時までに救出している必要があるので、注意が必要です。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「1体」出現します。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、敵を倒し、シナリオは成功で完結する。ただし、この選択肢の🔴が🔵より先に👑に達すると、シナリオは失敗で完結する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※このボスの宿敵主は「冰室・冷桜」です。
※クロノヴェーダには、同じ外見を持つ複数の個体が存在しますが、それぞれ別々のクロノヴェーダで、他の個体の記憶などは持っておらず、個体ごとに性格なども異なっています。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。