ロマンティックコーディアル(作者 藍鳶カナン
22


#断頭革命グランダルメ  #オーストリアの淫魔の街  #1802年 

●ロマンティックコーディアル
 ――甘露に満ちるこの街に、酒精など必要ないの。
 ――だってそうでしょう? 恍惚となるほどに美味な甘露ばかりではなく、あたくしという極上の甘露に、この街の誰もが酔いしれているのだもの。
 秋の艶めかしさを纏い始めた夜が深まり、元は帝室に連なる大貴族の離宮であったという麗しき領主館から零れるあかりや庭園に燈る常夜灯があたりを夢のごとく彩る頃合に、領主館の奥深くの主寝室で、甘やかな艶めきに濡れた唇がそう嘯いた。唇を甘く濡らし、瞳に蕩けるような煌きを燈すのは、この街を我がものとする淫魔フルーティア。
 彼女が好むのは果実や香草をたっぷり使った濃厚な甘露、即ちコーディアルを天然の炭酸水で割ったもの。
 酒精はなくとも飲めば上質のワインにも劣らぬ充足感や陶酔感を齎す甘露と思えば、官能的な魅力を滴るように溢れさせた淫魔が己を極上の甘露に喩えるのも当然のことだった。少なくとも、彼女とこの街の人々にとっては。
「ああ、ああ、だけど甘露に満ちるこの街で唯ひとり、極上の甘露に酔えない存在がいるの」
「ええ、ええ、存じております、フルーティア様。この街の者すべて、甘露の虜たる私達を陶然と酔わせてくださる貴女様の美しさも艶めかしさも……貴女様ご自身を酔わせることだけは叶わない」
 彼女が切なげに身を震わせれば、サロンでの宴から唯ひとり主寝室に招かれた男性の声音がまるで熱に浮かされるがごとく掠れたのは、領主を前にする緊張のみならず――甘露祭と呼ばれるコーディアルのコンテストで男性が献上した甘露、フルーティアの唇を甘く濡らしたそれのひとしずくが、艶めかしい肌もあらわな彼女の胸元へ滴り落ちたがゆえ。
 純真無垢な雪薔薇姫が、初めての恋と官能の悦びを識った夜に味わった杯――そんなロマンティックな逸話を添えられて、美しいグラスに踊った甘露は強大な淫魔たる己の心をも存分に酔わせてくれたから、
「今夜はあたくしが、あなたを魂が蕩けるほどに酔わせてあげる」
 白く豊かな双丘の谷間へ伝う深紅の滴。
 それを唇で追う栄誉を甘露祭の勝者へ与えれば、二人で溺れる先は寝台の、褥の波間。

●時先の導
 断頭革命グランダルメの勢力圏、オーストリアへ向かうパラドクストレインが扉を開く。
「只今発車準備中! 私のお話きいてくれますか? もしよければ手を貸してくれるかしら!?」
 どうぞどうぞ、よろしくね!!
 新宿グランドターミナルで迎え入れるべきディアボロス達を待つ列車、その扉の前で溌剌たる笑顔と明るい声音で同胞達を招いたのは、クレメンティア・オランジュリー(オランジェット・g03616)と名乗った時先案内人。件の改竄世界史におけるオーストリアでは幾つもの街がクロノヴェーダたる淫魔に支配され、退廃の都と化しているというのは多くのディアボロスの識るところだろう。時先案内人が皆へ語るのもそんな街のひとつ。
「行先は甘露に満ちる街! 今回は皆様を、甘露祭と呼ばれるコンテストが行われる街へ御案内させていただきます!」
 この街の主、淫魔フルーティアの支配は決して高圧的なものではなく、この種族に共通する精神に強い影響を与える能力で甘やかに人々の心を蕩かして、皆を退廃と享楽に耽溺させるもの。言わば洗脳している状態だ。
 街の人々を洗脳から解き放つためには淫魔フルーティアを撃破せねばならないが、街の領主であり強大な淫魔たる彼女には取り巻きの淫魔や領主の使用人のごとく仕える自動人形(オートマタ)といった配下のクロノヴェーダも多く、真っ向からの撃破は至難。だけれども、
「ねえ、暗殺……っていうと、あなたは眉を顰めるかしら? それとも浪漫の香りを感じてしまうかしら?」
 ショコラの瞳に共犯者めいた煌きを覗かせて、時先案内人が続ける話は、甘露祭と呼ばれるコンテストへ戻る。
 淫魔フルーティアが時折催す甘露祭、その入賞者は領主館での祝宴に招かれるのだが、彼女は招待客のうち特に気に入った者と二人きりで『お楽しみ』に興じることがある。取り巻きも配下も、街の人々さえもそれを識っているから、決して邪魔をすることはない。
 たとえ二人きりになった直後に幾人ものディアボロス達が駆けつけて、派手な戦いになったとしても、
「一般人の皆様も配下のクロノヴェーダ達も『今夜のフルーティア様は激しいプレイをお楽しみだな』って」
 勝手に納得してくれちゃうの、と時先案内人は悪戯っぽく笑んだ。

 コーディアルは古くから伝わる伝統的な濃縮飲料。
 時代の流れとともに様々に派生し、幾通りもの定義があるが、この街では果実や香草などをシロップに浸けこんだものや、果汁や香草などを砂糖や蜂蜜と煮込んで煮詰めたものを指す。コンテスト出場者の自作コーディアル、それを天然の炭酸水で割ったものを淫魔フルーティアがひとつひとつ味わって、優れたコーディアルを饗した者を表彰するのが甘露祭だが、彼女が味わうのは甘露のみではない。
 出場者が己のコーディアルについて語る、ロマンティックな逸話もともに味わうのだ。
 たとえば林檎と無花果の果汁を蜂蜜とロゼワインで煮込んだ、ほんのり薔薇色をしたコーディアルは、
 ――聖女を誘惑するために悪魔が呑ませた禁断の果実の滴(という設定)。
 たとえば氷砂糖で檸檬とマジョラムの風味を引き出した甘露に、ラベンダーの花の彩を溶かし込んだコーディアルは、
 ――この世では結ばれぬ恋人達が天国で結ばれるために呷った毒杯(という設定)。
 勿論すべて出場者自身の妄想もとい創作である。
「甘露祭直前の街はその話題でもちきりで、優勝候補の大本命って言われている二人がいます。其々がカフェを営んでいて、今回の甘露祭に出すコーディアルを自分のカフェでも出しているって話だから……まずはそれを飲みにいってみるのもいいんじゃないかしら! 多分お客様の反応を参考にレシピを微調整しているんだと思うけれど、もうほぼ完成形のはず!」
 淫魔フルーティアの祝宴に招かれるべく甘露祭入賞をめざすなら、優勝候補のコーディアルは非常に参考になるだろう。
 他の客同士の話に耳を澄ませば、過去の甘露祭やフルーティアの好みなどの情報もきっと耳に届くはず。
「そうして得られた情報は、すべて皆様に共有されます。今この場にいらっしゃらなくて、後発のパラドクストレインで街に向かわれる方にも、全員。巧く情報を活かして、素敵なコーディアルとロマンティックな逸話で、めざせ甘露祭入賞!!」
 一般人には有効な【プラチナチケット】などもクロノヴェーダが相手ではまず効かないと見るべきだ。
 ゆえに甘露祭で入賞することが淫魔フルーティアの祝宴への扉を開く唯一の手段。
 首尾よく入賞すれば祝宴に招待され、入賞者当人だけでなくその親族や友人知人も参加が許される。
 つまり、入賞者以外のディアボロス達も参加可能となるのだ。
 甘露祭を彩った入賞作のコーディアル、領主館お抱えの料理人達が腕を揮った数多の美味、そして歓談を誰もが思い思いに楽しむ華やかなれど決して格式ばったものではない宴の間に、淫魔フルーティアから誘われるのを待つよりは。
「我こそは! って人が自分から『フルーティア様と二人きりになりたい』って彼女に囁いたりするのがおすすめかしら! 淫魔と寝室にってのはちょっと……って人は『フルーティア様と二人きりで夜の庭園を散策したい』みたいな感じでも!」
 他に、一般人の入賞者が先にフルーティアといい雰囲気になってしまわないよう一般人入賞者へ積極的に話しかける者や、思いきり祝宴を楽しんで、フルーティアに「あたくしがそっと抜け出しても、みんな祝宴を楽しんでくれそうね」と思わせる者がいればより確実だろう。仲間と相談しつつ策を練れば、確実性は更に向上するはずだ。
 斯くて舞台が整えば、
「私達ディアボロスには『救援機動力』がありますもの、淫魔と二人きりになった仲間が彼女に戦いを仕掛ければ、すぐさま現場にさくっと到着できちゃいます! 一対一ではなく、皆様で淫魔フルーティアを撃破!!」

 秘密裡に淫魔フルーティアを撃破すれば、それが他のクロノヴェーダに知れるのは恐らく夜が明けてから。
 彼女が撃破されたとなれば他のクロノヴェーダ達はこの街から逃げ出すから、街は遠からず解放されるだろう。
「だから淫魔フルーティアは絶対、確実に倒してくださいね。けれど暗殺されるなんて彼女には全く予想外のことだろうから――ロマンティックな情けをかけてあげるのもいいんじゃないかしら、って」
 たとえば、
『麗しの姫君よ、出来ることならば、貴女とは別の形でお逢いしたかった……!!』
 と、苦悩を滲ませつつ攻撃したり。
『愛らしい仔猫ちゃん、わたくしの手で貴女を殺して、貴女を永遠にわたくしだけのものにしてあげる』
 と、妖艶に微笑みつつ攻撃したり。
 彼女の所業は許されざるものだが、浪漫に酔ったまま死んでいくくらいは許してあげてもいいと思うから。
 もし良ければ、と改めて皆に微笑みかけた時先案内人は、最後にこう話を結んだ。
 ――どうぞどうぞ、よろしくね!!

●ファンタスティックコーディアル
 絢爛豪華な劇場の裏手で、あるいは、昼間も鬱蒼たる影が落ちる木陰の茂みで。
 勤労を忘れ淫靡な享楽に耽る者達さえも、甘い甘い露に唇を濡らして、華やかなりし甘露祭をうっとりと語る。
 優勝候補の大本命と街で語られているうちのひとりは秋薔薇に彩られたカフェの男性店主で、もうひとりは清らかな聖堂を模したカフェの女性店主。この時代では元より庶民が親しむものではなく、貧富の差が広がるばかりのこの街ではなおさら、カフェは裕福な者達のみの聖域にも似た特権だけれど。
 貧しいまま享楽に耽るだけの者達も噂話に夢を見るのだ。
 薔薇のカフェで味わえる、深紅の葡萄酒めいた色合いで、天鵞絨のごとく滑らかなコーディアルを。
 聖堂のカフェで味わえる、淡い金色に仄かな緑をとかしこんだ、木洩れ日のごときコーディアルを。
 ――あのフルーティア様の心さえ酔わせるだろうと噂される、とびきりの甘露を。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
2
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【狐変身】
1
周囲が、ディアボロスが狐に変身できる世界に変わる。変身した狐は通常の狐の「効果LV倍」までの重量のものを運べるが、変身中はパラドクスは使用できない。
【強運の加護】
1
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【罪縛りの鎖】
2
周囲に生き物のように動く「鎖つきの枷」が多数出現する。枷はディアボロスが命じれば指定した通常の生物を捕らえ、「効果LV×2時間」の間、移動と行動を封じる。
【託されし願い】
3
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【勝利の凱歌】
5
周囲に、勇気を奮い起こす歌声が響き渡り、ディアボロスと一般人の心に勇気と希望が湧き上がる。効果LVが高ければ高い程、歌声は多くの人に届く。
【プラチナチケット】
4
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【冷気の支配者】
2
ディアボロスが冷気を自在に操る世界になり、「効果LV×1km半径内」の気温を、最大で「効果LV×10度」低下可能になる(解除すると気温は元に戻る)。ディアボロスが望む場合、クロノヴェーダ種族「アルタン・ウルク」の移動速度を「効果LV×10%」低下させると共に、「アルタン・ウルク」以外の生物に気温の低下による影響を及ぼさない。
【モブオーラ】
1
ディアボロスの行動が周囲の耳目を集めないという世界法則を発生させる。注目されたり話しかけられる確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【断末魔動画】
1
原型の残った死体の周囲に、死ぬ直前の「効果LV×1分」に死者が見た情景が動画として表示される世界になる。この映像はディアボロスだけに見える。
【壁歩き】
3
周囲が、ディアボロスが平らな壁や天井を地上と変わらない速度で歩行できる世界に変わる。手をつないだ「効果LV×1人」までの対象にも効果を及ぼせる。
【植物活性】
1
周囲が、ディアボロスが指定した通常の植物が「効果LV×20倍」の速度で成長し、成長に光や水、栄養を必要としない世界に変わる。
【使い魔使役】
1
周囲が、ディアボロスが「効果LV×1体」の通常の動物を使い魔にして操れる世界に変わる。使い魔が見聞きした内容を知り、指示を出す事もできる。
【口福の伝道者】
1
周囲が、ディアボロスが食事を摂ると、同じ食事が食器と共に最大「効果LV×400人前」まで出現する世界に変わる。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。

効果2

【能力値アップ】LV1 / 【命中アップ】LV4 / 【ダメージアップ】LV8 / 【ガードアップ】LV6 / 【凌駕率アップ】LV1 / 【フィニッシュ】LV1 / 【反撃アップ】LV1 / 【ラストリベンジ】LV2 / 【ドレイン】LV1 / 【アヴォイド】LV1 / 【ロストエナジー】LV4

●マスターより

藍鳶カナン
 こんにちは、藍鳶カナンです。
 皆様によりお楽しみいただけるよう、シナリオ運営スタイルを模索中です。
 今回は下記のとおりに運営させていただきますので、ご確認いただければ幸いです。

●運営予定
 選択肢3→2→1→4の順にリプレイ執筆予定。
 入手情報を可及的速やかにリプレイ公開できるよう、選択肢3は採用人数を限定させていただきます。
 他の選択肢は(全採用ではありませんが)特に人数の限定はしない予定です。継続参加は勿論、途中参加や一点のみのスポット参加も大歓迎。いずれの選択肢も、判定・タイミング次第では採用できない場合がある旨、ご了承いただければ幸いです。

●選択肢3:情報収集
 優勝候補二人のカフェどちらかに客として訪れ、コンテストに出す予定のコーディアルのソーダ割りを楽しみます。
 薔薇と聖堂、皆様それぞれお好みの店へどうぞ(御一人様につき一店限り)。
 過去のコンテストについてやフルーティアの好みなどの情報は他の客同士の会話から自動的に耳に入ってきますので、一般人と会話する等の情報収集は【不要】。
 プレイングは、優勝候補のコーディアルを楽しんだり、色や香り、味わいから材料を推測するといった、コーディアルそのものへ掛けていただくのがおすすめです(推測はOP情報を参考に決め打ちしてみてください。推測が外れていても『苺を使ってるかと思ったけど、今味わった感じだとカシスみたいだな』といった形で情報入手が可能です)。

 採用人数は各店最大3名(合計で最大6名)。
 優れていると判定したプレイングを採用し、クリアに十分な🔵が揃った時点(最速で12日8:30)で執筆開始。判定の結果、一方のカフェへのプレイングのみ採用となった場合でも、🔵が十分であれば片方の情報のみで情報収集は完了します。

●選択肢2:甘露祭
 自作コーディアルで出場します。
 材料を煮詰めて冷やすタイプなら、領主館の厨房(コンテスト参加者に解放されています)で作成可能です。このタイプのみ(加熱の際にアルコールが飛ぶので)ワイン等の酒類を材料に使うことができます。
 材料を一定期間漬け込むタイプは、『以前作った自家製コーディアルを新宿から持って来た』扱いになります。前者のタイプも持ち込みOKです。
 ※いずれの場合も作成シーンはリプレイに描写されません。
 ※リプレイに描写されるのは【コンテストの場面のみ】です。

 甘露祭についてはOP参照。情報収集のリプレイでも参考になる情報が得られるかもしれません。
 基本的に上位入賞(🔵🔵🔵)と判定した方を採用、状況と内容次第では特別賞(🔵🔵🔴)の方も採用させていただきます。

●選択肢1:宴 及び 選択肢4:VSフルーティア
 OPのとおりです。

 それでは、皆様の御参加をお待ちしております。
142

このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


テナリア・アタールカ
私は秋薔薇のカフェとやらに向かうぞ、店の雰囲気は戦士の私には合わないが…花で覆われた店内を見ているとむず痒くなってくる。

さて、コーディアルとやらを飲もうか。
…!甘美、それでいて力強く本能を燃え上がらせてくるな。この昂りは…昔村の儀式で血肉に見立てたザクロに齧り付いた時に似ている、原料の一つか?そしてこの酔いしれるような感触、葡萄酒より濃いブランデーを煮ているのだろうか。

飲んでいると躰が火照り、惚けて物欲しくなってしまいそうだ。淫魔に挑む前にちゃんと切り替えていかないと、な。
だが今はもう少しだけ。全身に満ち渡る【情熱】と陶酔に身を委ねるとしよう。んっ…昂りすぎて同席者に寄り添ってしまうかも、な。


リゼット・ノア
クロノヴェーダ相手に暗殺を忌避することはないですが…淫魔のノリと雰囲気は苦手ですね…きっと寝室には喜んで行く人がいるでしょう(あれこれ想像して赤面している)。

薔薇のカフェにコンテスト作品を味わいに向かいます。
甘露祭に添えられる物語も確認できれば。

葡萄酒めいた色合いなら葡萄が使われているのかな?
赤ワインは血の色と言いますし…ただ、甘酸っぱさを加えるためベリー系の果物も加えられてるような。
テナリアさん(g02261)と相席し、使われている材料の談義と吟味をしましょう。他の方でも同席できそうなら誘いましょう。

ただ、彼女は酔ってる感じなので必要なら介抱しましょう…アルコールは入ってないはずですが…。


●雪薔薇姫
 退廃と享楽に耽溺する、甘露に満ちる街。
 然れどと言うべきか、だからこそと言うべきか、街一番の大通りは美しく華やかに調えられ、壮麗な歴史と格式を窺わせる街並みは賑わいに満ちていた。アンティークなどを好む者なら建物ひとつひとつに瞳を輝かせ、それこそ耽溺するように街を漫ろ歩きたくもなっただろうが、鍛え上げられた戦士ならではの足取りでテナリア・アタールカ(直情の女竜戦士・g02261)が迷わず向かうのは、赤煉瓦造りの壁を彩る蔓薔薇が真朱の花を咲き溢れさせる秋薔薇のカフェ。
 見る者が見ればネオルネッサンス建築の先駆けと感じるだろう荘厳なカフェ、この時代なら恐らくカフェハウスと呼ぶのが相応しい店に足を踏み入れれば、
「雪薔薇姫に、乾杯!!」
 響き渡ったのは美しい深紅に気泡煌くグラスを掲げた先客達の声。
 緩く瞬きひとつ、リゼット・ノア(Cortège funèbre・g02975)はテナリアと眼差し交わし、
「雪薔薇姫ということは……」
「ああ、間違いなさそうだな」
 純真無垢な雪薔薇姫が、初めての恋と官能の悦びを識った夜に味わった杯――ここで饗される甘露に添えられる逸話は事前情報で得られていたもの、すなわち予知の光景で淫魔フルーティアの寝室に招かれていた男性がここの主だと確信する。
 褥の波間、と脳裏をよぎれば普段は生気の薄いリゼットの頬にもほんのり薔薇色が差したけれど。
 ――相手がクロノヴェーダなら、暗殺だって厭わない。
 耽美主義、あるいは少女趣味な空間を思い描いていたテナリアの予想に反し、店内は知識階級や紳士階級の文化人が集うに相応しい落ち着いた粋を感じさせ、いずれにせよ私は場違いだろうかと案じつつリゼットと一緒に案内されたソファ席へ腰を下ろせば、ほどなく硝子杯が運ばれてきた。
「――!!」
「綺麗、ですね……。そして……!」
 濃縮飲料ゆえに、全てのコーディアルが濃厚な甘露。
 ゆえに水やお湯、炭酸水で割って飲むものだが、最初にグラスに踊った深く濃厚な葡萄酒色の艶めきにテナリアが息を呑み、目も眩むほど奥深く官能的な香りが立ち上がる様にリゼットが眼を瞠る。次いでしゅわりと唄う炭酸水が注がれれば濃厚なコーディアルは深紅へと透きとおっていき、気泡の煌きと相俟って宝石めいた美しさを覗かせた。
 凝縮されていた香りも軽やかに花開くよう。
 杯を傾ければ炭酸水で割られてなお蕩けるように滑らかな甘露が舌に躍り、心までも甘く潤される心地で、
「コーディアルとは甘美なものだな……! 柘榴とはまた違った果実の酸味を感じるが――」
「ええ。この甘酸っぱさはベリー系の……ラズベリーでしょうか」
 驚嘆と感嘆が共鳴しあう声音でテナリアが称賛すれば、美味なる甘露をゆっくり味わったリゼットも頷き返す。力強さを感じると彼女が言うとおり、原種に近い品種なのだろう。
 然れど野趣を感じず、艶めかしくも優雅な気品を感じるのは。
 この、まるで芳香そのものを飲むような甘露のベースになっているものゆえだと思うけれど――二人がそう談義する間にも他の客達の会話が耳に入って来るが、中でも特筆すべきは、甘露祭の舞台が領主館ではなく街の劇場であることだろう。
 裕福な人々は甘露祭の都度オペラグラスを新調し、
『劇場の舞台で甘露を味わったフルーティア様がうっとり酔いしれる姿をぜひこの眼で!!』
 と、奪い合うように観覧券を買い求めるのだとか。
 やはり退廃と享楽の街なのですね……と胸の裡で嘆息しつつリゼットが慎重に甘露を味わって、
「この芳香はひとまず置くとして、それとは別に葡萄の風味を感じる気もするのですが……」
「私も同感だ。果実でなく、葡萄酒でもなく――」
 己が推測を語れば、賛同の笑みで応えたテナリアも確かめるように杯を傾けて、ひんやりと良く冷えた炭酸水割りの甘露、なのに微かに喉を灼くような甘味と己の芯に熾火を燈されるような感覚に、脳裏を貫くかのごとき閃きを得た。
 葡萄火酒。
 隠し味程度に、ブランデーが使われている。
 雪薔薇姫、と先客達が語った言葉が再び耳に跳び込んできたのはその瞬間のこと、雪薔薇姫とは昔この街で流行った物語の登場人物であるらしく、薔薇のように美しく雪のごとく白い肌を持つ姫だと察せられたけれど。
 ――官能の悦びを識った姫の白き肌に、甘やかな薔薇色が燈る。
 ふとそんな情景が思い浮かんだがゆえか、甘美な恍惚を齎す甘露がテナリアの裡に秘められた情熱を煽ったがゆえか、昂り蕩ける心地で陶然とソファに背を預ければ、戦士にして騎士たる身がゆるりと傾ぐ。
「テナリアさん……? 酒精は入っていないはずですよね……?」
 柔く添わせるよう凭れかかってきた彼女を気遣いつつ、ブランデーも加熱で酒精が飛ばされているはず、それならと思案気にリゼットが、
「この芳香に酔われたのでしょうか……?」
 深い紅の瞳を揺らした、そのとき。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【勝利の凱歌】LV1が発生!
【冷気の支配者】LV1が発生!
効果2【ラストリベンジ】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!

古城・雪凪
復讐者の創り上げた世界に酔い、壊される悲劇の物語…なんてものを俺の手で創れたら楽しそう
なんにせよ、まずは情報収集を

尋ねるのは秋薔薇咲くカフェへ
まあ純粋に客として炭酸水で割った甘露に舌鼓
色は…葡萄を使っているように見えるけど、ブルーベリーなどのベリー系、林檎とカシスあたりも似た色になるかな
あとは…店構え的に薔薇が入っていると情熱的だよね

これも逸話が創られているのだろう
色的に…官能的な何かを感じるよね
そういえば淫魔は味の好みと逸話の好み、見た目どれに比重を置くのだろう
逸話の好みも、燃える純愛か、淫靡な響きか…
可能な限り噂から分析したい

退店前に感謝の言葉と雑談ができれば
参考にした話や噂などないかな


●聖薬の騎士
 ――眩暈にも似た恍惚を齎す、芳醇な香り。
「薔薇の香りに酔ったってことなら、まさに浪漫だね」
「あ……!」
 偶然リゼット達の隣席に案内されていた古城・雪凪(繰創者・g01119)が凝縮された香りを丁度いま炭酸水で軽やかに、なれど芳醇に花開かせたコーディアルを掲げて微笑みかければ、夢から覚めたような風情で同胞の少女が声をあげた。
 招かれれば店員へ一言告げて彼女達と同じテーブルを囲み、
「秋薔薇のカフェと言うからには薔薇が入っていると情熱的かなって思ってたんだよね。大当たりだ」
「灯台下暗しでした、納得です」
 挨拶代わりに掲げたグラスを口へと運べば、芳醇に溢れる薔薇の香りは雪凪さえも陶然と酔いしれてしまいたい誘惑に駆られるほど。芳香そのもののごとき甘露が滑らかに口中へ躍り、弾ける気泡とともに幾重にも風味を咲かせていく。
 初恋の甘酸っぱさ思わすのは同胞の少女と同様ラズベリーだと雪凪にも思え、甘露の根幹を成す薔薇は香りの鮮やかさから摘みたての花を純度の高いシロップへ浸けこんだかにも思えたが、
 ――戦士の彼女、テナリアの閃きの通り、ブランデーが隠し味なら。
 加熱は必須。ならば香りを凝縮するよう乾燥させた薔薇から芳醇な香りも彩りも煮出したのだろう。物語を編むよう雪凪は思案を巡らせ、甘露に添えられる逸話に口許を綻ばす。
 処女雪めいた姫の肌に薔薇色燈る様を仄めかしているなら、
「色合いに官能的な何かを感じたのも間違いじゃなかったわけだ」
 戯言めかして呟けば重なるように、先客達の間でひときわ賑やかな声が弾けた。
「今回も大流行だろうな、跪いてグラスを差し出すってのが!」
「いつだっけ、男装の麗人がやった時からの定番だよな!」
 ある甘露祭で男装の麗人たる出場者が甘露に添えたのは『敵国に囚われた王女を救い出した女性騎士が、呪いをかけられた王女のために捧げた聖薬』。逸話を語った麗人が不意にフルーティアへ跪き、
『我が王女よ、この聖薬を我が忠誠とともに――』
 騎士を演じて杯を捧げれば、輝く歓喜溢れんばかりの笑みが咲いたのだとか。
 あんな純情可憐っぽいフルーティア様初めて見た! と盛り上がる彼らが、
 ――正統派浪漫『も』お好きだもんな、フルーティア様!
 そう語るのを脳裏に刻み、繰創者たる妖狐はひそりと笑みを深めた。
 胸に燈す愉悦は、復讐者の創り上げた世界に酔い、壊される――『誰か』の悲劇の物語。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【壁歩き】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!

ファシル・ダラール
足取り軽く聖堂へ
御機嫌よう、シスター
なんて云いたくなる雰囲気
私にもとびきりの一杯を頂ける?

繊細な指先から硝子杯に注がれるのは
透き通る朝の光にも似て
泡弾ける液面に唇を寄せれば
爽やかな滴が渇いた喉を潤してくれる
甘い花の蜜と酸味のある果実が蕩けるような
物知らず故に材料は分からないけれど
炭酸と呼ばれる水によく合う品だろう
――身も心も洗われるよう、そんな言葉は在り来りかな
清らかで優しくて…っふふ、とても美味しいとも!

煌き揺れる向う側、横顔に問えるのならば
ねぇ、君はどんな物語をこの一杯に融かしているの?
お披露目の場まで秘密なのは承知の上で
断片だけでも一齧りさせてもらえたら
一層美味しくなるだろうから


シセラ・カドシュ
パリジェンヌとしては
バラに惹かれるものもあるけれど
わたしが愛して止まないのはユリの花でね
今日は、木洩れ日を味わいに行こう
バラを食べた事はあるけれど
木洩れ日は、これが初めて
木洩れ日という言葉すら、わたしには新鮮だよ

木洩れ日と言うからには
森のような香りに、やさしい味がするのかもね
森で日の光を感じながら
うたた寝をするのは心地が良いから

陽射しのような金色に
若葉のような緑色
見た目だけでは見当がつかないね
色だけなら柑橘類のように見える

幼い頃に飲んだエルダーの花のものは
爽やかな香りで似た色をしていたかな
香りに釣られて飲んでみると、薬のようで
子供の頃のわたしは苦手だったけれど

ご馳走様、マダム
好きな味だったよ


●堕落の聖女
 瑞々しい夏の緑が最後の彩りを見せる丘の上に、街をそっと見守るかのごとき聖堂が佇んでいた。
 だが本来の聖堂は淫魔フルーティアの影響力に心蕩かされ、享楽の熱に浮かされた人々に打ち砕かれて、今ここに在るのは嘗てここにあった清らかで厳かな聖堂を模したカフェ。経緯を識れば聖堂に感じる聖性もあえかに倒錯的な香りを帯びて、
 ――成程、やはりこちらも確かに『退廃と享楽の街で人気のカフェ』というわけだ。
 ――店主も聖母のごとき貴婦人……とは行かぬ、一癖も二癖もある女性なのだろうね。
 砂漠から退廃の都へ渡り来たファシル・ダラール(渡鳥・g02150)が星の双眸を細めれば、脳裏に燈った想いの相似ゆえか言の葉を交わすことなくシセラ・カドシュ(Hiraeth・g01516)も微かな苦笑で応え、無意識に胸へ手をやった。己が心に常に咲くのは百合の花、正確にはアイリスとされる――Fleur de lys。
 パリジェンヌとしては薔薇に惹かれもしたけれど、わたしが果たすべき使命はここにある。
 倒錯的な戯れのごとく創られた聖堂のカフェ、なれど『いかにもそれらしい』からこそ人は戯れに耽溺できるものだ。些か期待外れを覚えつつ扉を潜れば、そこに広がるのは清らかな光に満ちた荘厳な祈りの間。ようこそ、姉妹達、と店主らしい女性に迎えられれば、ファシルの双眸は忽ち期待の煌きを取り戻し、
「御機嫌よう、シスター」
 本来の聖堂そのもののごとき清らな世界で、感じた雰囲気そのままに渡り鳥は微笑んだ。
 聖堂の正面奥に咲く薔薇窓を始め、両の壁も壮麗なステンドグラスに彩られ、それらを透かした光が満ちる空間にシセラが青き眼差しを緩めて、思い起こすのは何処で聴いたのだったか、聖堂などにステンドグラスが使われるのは屋内に木洩れ日を再現するためなのだという話。
 薔薇を食べたことはあるけれど、
「木洩れ日を味わうのは、これが初めて。木洩れ日という言葉すら、わたしには新鮮だよ」
「君とは異なるだろうけど、わたしにも新鮮でね。楽しみだ。――ふふ、透きとおる朝の光にも似ていないかい?」
 陰惨に血塗られた生を一度終えて甦った娘が目許を和ませたなら、砂漠を駆ける渡り鳥たる娘が声を弾ませた。何となくの流れでシセラとファシルが同席したのは会衆席を模しつつ趣味好く調えられたテーブル席、彼女達の眼の前で、硝子杯に揺れる透明な炭酸水へ、華やかな金色の甘露が注がれる。
 微細な気泡が昇る透きとおった炭酸水に金色の甘露がとける様は、まさに優しい陽光が世界に満ちるよう。淡い金の彩には光の加減で仄かな緑に透ける煌きが踊り、細やかな気泡と相俟って、成程これがと得心に足る『木洩れ日』を見せてくれる。
 弾ける気泡の唄に誘われるよう唇を寄せれば、感じるのは甘さに爽やかさが先立つ香り。清らかな光に潤される心地で杯を傾ければ花の香りも果実の風味も何もかもが瑞々しくて、
「清らかで優しくて……身も心も洗われるよう、なんて言葉はありきたりかもしれないけれど」
「ありきたりだからこそ正鵠を射ているんじゃないかな、この瑞々しい花の香りは、エルダーフラワーだから」
 とっても美味しい! と少女のごとき笑みがファシルに咲けば、懐かしさを笑みに燈してシセラは確信を言の葉にする。
 万能の薬箱とも呼ばれるその花は、歴史を辿れば嗜好品でなく医薬品たるルーツを持つコーディアルの定番として真っ先に挙げられる花。幼い頃に飲んだそれは薬のように思えて苦手だったけれども、幼子ではなくなった今シセラが口にした甘露はファシルが感じたように果実の風味ととけあって、爽やかでフルーティーな甘さにほんのり薬めいた余韻がアクセントとなる美味だった。
 好きな味、と心から思えるほどに。
 瑞々しい花とはまた異なる何かの蜜も感じたけれど、それが明確な像を結ぶことはないまま、この甘露に添えられる逸話は――とファシルの眼差しは店主を求めたが、問うまでもなくそれは先客達の会話から耳に入ってきた。
 月夜の聖堂で姉妹の契りとともに代々伝えられてきた、秘伝の香草酒。
 この街の人々が姉妹の契りという言葉に何を想うか察した刹那、薬めく余韻が背徳的な香りを纏う。成程これは淫魔も瞳を輝かせるだろうと思えるほど、逸話ひとつでがらりと印象が変わる。
「ああ、お姉様……! 私にも姉妹の契りとともに、この甘露のレシピをお授けください……!」
「ふふ。それなら今夜の閉店後、ここで貴女を待っていてよ」
 熱っぽく望む若き女性客に店主はそう微笑み返したけれど、たとえ享楽を分かち合うのだとしても、店主が甘露のレシピを明かすことはあるまい。何せ『フルーティア様のお気に入り』になるための切り札だ。いかな手練手管で誘惑しても無駄なはず。
 街の皆の心を蕩かすフルーティアの影響力を上回れるのは、より上位に在る、更に強大な淫魔くらいのもの。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!

眩暈咲・クヴァーシィ
聖堂のカフェへ向かいます
こちらの品はどのような味わいなのでしょう

炭酸水で割ったものをお願いします
薄らと緑がかった淡い金色は白葡萄でしょうか?
何かしらの香草の線も捨てがたい
一旦見た目の印象を置いておいて、いざ、香りや味を確かめます

沢山混ぜればいいというものではないにしても、重なり合うことでの奥行き、深みといったものも生まれるのでしょうし……うまく探れるでしょうか……
と少し緊張しながら口にして
その緊張ごと解いてくれるような、この優しい感覚は
……エルダーフラワー?

叶うならこのコーディアルに添えられる逸話も知れたら嬉しいですね
物語、好きなんです
詩曲に落とし込めたら、いつか聴いて下さい
ごちそうさまでした


●東洋の寵姫
 ――月夜の聖堂で姉妹の契りとともに代々伝えられてきた、秘伝の香草酒。
 ここの常連客らしい娘達の声音で眩暈咲・クヴァーシィ(君の分だよ・g00101)の耳朶をも擽った逸話は、あくまでも甘露に浪漫を齎すもの。森に零れる木洩れ日を硝子杯で享けたかのごときこのコーディアルに当然酒精は含まれておらず、喉を潤すたび心が震えるほどの瑞々しさを思えば、加熱しない製法で作られた甘露。
 即ち、酒精を飛ばす必要のある材料も使われていない。
 瑞々しく爽やかに、華やかに花開いていくコーディアルの香りも甘味も風味も心から楽しみながらクヴァーシィはそこまで甘露の秘密を紐解いて、逸話より先に後方の席から耳へ届いた、同胞のものと察せられる声音の主達を振り返る。
 薬用の花。然れど数あるその効能のひとつは、リラックス効果。
 席へ案内され、杯に甘露を注がれた時の緊張を優しくほどいてくれた甘露に香りも効能もとかしこむその花は、
「エルダーフラワー。僕もそう思います。そして……」
 吟遊詩人の少年はファシルやシセラと眼差し交わして頷き合い、彼女達のすぐ前の会衆席へひそりと滑り込んだ。念のため声を潜めて同胞達へ言葉を続ければ、
「白葡萄も使われていると思うのですが、如何でしょう?」
「成程、言われてみれば確かにそんな風味だとも!」
「確かに……エルダーフラワーに合わせるにはもってこいだね」
 合点がいったとばかりにファシルが破顔し、シセラも納得顔で頷いた。エルダーフラワーの香りは『マスカットのよう』と表現されることが多いもの、間違いのない組み合わせだろう。
 蜜の風味も感じないかいとファシルが言い出せば、仲間と謎解きに挑む楽しさがクヴァーシィの胸へと躍る。いかなる花の蜜かまでは辿りつけなかったが、未知の物語を読み進む心地で挑むうち、常連客達が語らう興味深い話が彼の意識の弦を弾いた。
 東洋の皇帝が、若く初々しい寵姫のために作らせた媚薬。
 前回の甘露祭の勝者である中年紳士がそんな逸話を添えた甘露は、完熟桃のシロップをベースに、杏仁霜――杏の種の仁を擂り潰した、東洋では杏仁豆腐に使われるもの――で桃の甘さを杏仁でいっそう甘く濃厚に香らせたものだとか。
 桃は勿論、杏の種も、アマレットの香りづけなどで西洋でも馴染みあるもののはず。なれど添えられた逸話によって一気に東洋的な異国情緒を帯びたのだろう。あたくし、こんな甘美な香りは初めて、とフルーティアの声音が飛びきりの喜色を帯び、
「あの紳士がフルーティア様の肩を抱き寄せて甘露を呑ませる様子ってば本当に!」
「中年の皇帝が若く初々しい寵姫に媚薬を呑ませているところ、って感じだったわよね!!」
 街の娘達が今も瞳を輝かせてそう語らうほど、彼女は甘露とその浪漫に酔いしれたらしい。
 ――異国情緒もだけど、初心な生娘みたいに扱ってもらえるのも、フルーティア様にはきっととっても新鮮なのよ!!
 初心な生娘って言葉は詩曲に落とし込めないかな、と常連客の言葉に胸の裡で呟きつつクヴァーシィが淡く苦笑したのは、吟遊詩人たる者の性ゆえだ。聖堂の甘露の逸話を落とし込むなら、姉妹の契りの意味には目を瞑るべきか。
 幾多の物語を歌い上げる吟遊詩人としては清濁併せ呑むべきなのだろうけど。
 淫魔が齎す濁りなら、在るがままにはしておけない。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【勝利の凱歌】がLV2になった!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!

●ロマンティックコーディアル――開幕
 華麗なる甘露と浪漫の百花繚乱、陶酔と恍惚の甘露祭がもうじき幕を開ける。
 澄んだ青空に映える絢爛豪華な劇場はオペラが上演される夜より盛大な賑わいに満ちていた。観覧券とオペラグラスを手に煌びやかに着飾った富裕層は勿論、劇場から少しでもフルーティア様の嬌声が洩れ聴こえはしないものかと希う貧困層までも詰めかけて、大勢の熱を孕んだ高揚が早くも人々を酔いへと誘う。
 劇場前や街の大通りに色とりどりの花々を舞い降らせるのは、魅惑的な容姿を持つ淫魔達。
『さあさ皆で祝おうよ、我らがフルーティア様をも酔わせる飛びきり甘露と浪漫が勢揃いだ!』
『勝者予想の賭け金受付はもうすぐ締め切りよ、一攫千金の夢をあなたもどうぞ!!』
 小悪魔めいた角や翼と尾を持った少年がいるかと思えば、美少女の上半身と艶めかしい蛇の下半身を併せ持つ少女が通りを練り歩き、猫耳と猫尻尾を揺らす少女が肉球のある手で花々を振りまく様子を見れば、おそらく他にも妙齢の美男美女が数多揃っているだろうフルーティアの取り巻きたる淫魔はそれなりの数が存在するのだと窺い知れた。
 そして、街の支配者たる彼女の配下は淫魔のみにあらず。
 観客を迎える開場とともに現れたのは、一糸乱れぬ挙動で扉の左右へと並ぶ自動人形(オートマタ)の楽隊。
 麗しき金色の管楽器を手にするこの楽隊ばかりでなく、劇場内で甘露祭の裏方を務める自動人形や、領主館で祝宴の準備に勤しむ自動人形も合わせれば相当な数にのぼるはずだ。
 これでは確かに淫魔フルーティアを真っ向から撃破するのは至難の業。なればこそ、ディアボロス達は甘露と浪漫を其々に携えて、甘露祭の舞台へ出場者として上がる。
 甘露に満ちるこの街の主を、ひいては街の人々全てを酔わせる甘露祭、それがこのあと秘密裡に幕を開ける真なる舞台の、淫魔フルーティアが散華する舞台の序章にすぎぬと識るのは――花散らす牙を密やかに研ぐ、復讐者達だけのこと。
 高らかなファンファーレが響き渡る。
 華麗なる甘露と浪漫の百花繚乱、陶酔と恍惚の甘露祭が、今、幕を開けた。
リゼット・ノア
コーディアル
桃シロップ、チョコレートリキュールを煮詰め酒精を飛ばし、生クリームを加えよく混ぜ、強い炭酸の炭酸水で割る。【冷気の支配者】でよく冷やす。ピーチベルベットをイメージ。

物語
1人の平凡で何の取柄もない男が恋をした。
相手は街の美しい女領主。だが平凡な男は彼女に見向きもされず、彼女は他の男たちと一夜の愛を楽しんでいた。
思いの届かぬ苦しみと嫉妬の炎に男は狂い、悪魔に魂を売り、願った。

「彼女を永遠に私のものにしたい」

そうして得たのがその魔薬。それを貴女に。

死の冷たさ、罪の甘さ、そして喉を焼く毒の痛みを、どうか味わいください。

物語のモチーフは淫魔自身。
男の願いは、私の思い、と暗に示し伝えましょう。


シセラ・カドシュ
生々しいだけの愛より
御伽噺のような愛に浪漫を感じるのは
可愛らしく思えるね
一身に愛を受けたいという乙女心も感じる

わたしが語れそうな逸話は、何だろうね
恋を上手く語れる気はしないけれど
献身の愛なら語れるかもしれない

林檎の果汁とオレンジピールを
アニス酒で煮込んで、隠し味に甘いライムエードを加えた
淡いライムグリーンのコーディアルを作ろうか

初めは素朴な果物の甘い風味
遅れてスパイスの熱と
仄かにライムの爽やかさがやって来る

語る逸話は
『革命で処刑が決まった姫君に、側仕えの侍女が薬湯を装って差し入れた毒薬』
飲んだ後は、二人で眠るように息を引き取ったとか

行く先が来世でも煉獄でも
どこであっても、あなたにお仕えします


藺草・風水
「ある意味で僕らしく、行ってみるの」

コーディアルは煮詰めるタイプ。
黒ブドウと赤リンゴそれぞれの果汁、ローズマリーにグラニュー糖を水で漬け込んで作る。
題するなら『可憐な天使を欲した女悪魔が、天使を我が物にするために作った神の血と禁断の果実を掛け合えわせて創った禁忌の媚薬』
神の血(ブドウ)に禁断の果実(リンゴ)合わせた多重の冒涜と共に天使を堕落させ悪魔側へと引きずり込む。
「これでキミは神の物じゃなく、僕のモノだね」
フルーティアを天使として扱い、悪魔のごとく抱き留めてゆるりと飲ませる。


眩暈咲・クヴァーシィ
『姫への身分違いの恋故に一度は追放された騎士が、姫に相応しい者と成るべく万里を経て得た霊薬』
異国の恋の詩にもなったと謂うロサ・カニーナ、そのローズヒップ、
遠い遠い旅路の海風に揺れて愛しい姫君を想った白いハイビスカス、
蜜の甘さという貴腐ワインで酒精が飛ぶまで煮詰め……たい所ですが未成年で難しければ素直に干葡萄で
酸味より甘味が濃く感じられるよう分量調整

旅先で白いハイビスカスの花言葉――新しい恋だとか、艶美だとかを耳にした騎士が
艶美に歳重ねたかもしれぬ姫が新しい恋を見つけてしまわれたかもしれぬと、
居ても立ってもいられなくなったとか

跪き、騎士の如き所作で杯を
永の旅路を経ても変わらぬ恋心を捧げるように


テナリア・アタールカ
ベースは酢橘に氷砂糖を合わせ、爽やかで無垢な味に。そこに乾燥させたトマト、またの名をラブ・アップルを砕いて入れて。透き通った白い甘露を、情熱の赤で彩れば。仕上げに唐辛子も漬け込んで、大人の辛さで引き締めよう。

物語としては、『官能の味を知った雪薔薇姫の女を開花させる、南国の美男子からのアモール』といったところかな。一度目覚めた女は貪欲なもの。初恋の彼と離れ、別の熟れた男に熱烈にアプローチされたら…真の欲を引き出され、芳香撒き散らしてしまう。そんなイメージだ。

献上も情熱的に。腰に腕を回しながら、フラメンコのクライマックスのように顔上向かせ。片手で杯傾けて、強引に口に流し込んでいってみよう。


狗尾・黑猫
『星を強請る姫君の望むまま、星を捕まえて溶かした雫』
その煌めきを掴んだのは、姫君に仕える私…翼ある執事でございます
夜空まで羽ばたき、花のように貴女を彩る、貴女だけの星々を、この甘露に溶かしました
美しい貴女様が美しい星を呑み込むことで、より美しくなられますよう

金木犀のコーディアル
星のような花を甘く煮詰め、桂花陳酒で香り付け
桂花陳酒はかの楊貴妃も愛用していたようですよ
優しい堕天の風味として、梨も漬けております
芳醇な花の香りで宙の夢のように包み込み、地上まで優しくエスコートするような果実の香りを、そして手の中には目も楽しませる美しき星の蜜

どうぞ、お嬢様
この執事、貴女様の為なら星をも掴んでみせますとも


●ロマンティックコーディアル――第一幕
 絢爛たる甘露と浪漫に溺れそうな心地がした。
 深紅の宝石そのものが蕩けたかのごとき柘榴の蜜、彩りも甘酸っぱさも濃厚な甘露はカルダモンを華やかに香らせ、気高き古代エジプト女王の閨の秘密を明かす。焦がし林檎と蜂蜜の蠱惑的な甘さの裡からエキゾチックなシナモンの香りも咲かせた甘露は、己を蜜と変えて愛しい妖精を誘惑し、彼女を己という宝石に閉じ込める魔法の琥珀だと語られて。
 舞台に次から次へと咲き誇る甘美なコーディアルとそれを彩るロマンティックな逸話達、甘露そのものを味わっているのは淫魔フルーティア唯ひとりだというのに、彼女が感じる陶酔も恍惚も、強大な淫魔ならではの影響力をもって観客達の精神へ伝播していくのだろうか。
 劇場全体が甘い酩酊に溺れる錯覚を覚え、藺草・風水(天使喰らいの重ガンナー・g00346)も微かに身を震わせたけれど。
 為すべきことは、忘れない。
「ある意味で僕らしく、行ってみるの」
 零れた声音は舞台袖へ置き去りに、迷わぬ決意は確と心に抱いて、大天使を喰らって覚醒した少女が上がるのは眩い輝きに照らされる舞台の上。煌くグラスに踊らせる甘露は深紅とも深紫ともつかぬ色合いに艶めいて、可憐な天使を欲した女悪魔が天使を我が物とするために作った媚薬――と語れば炭酸水を注がれ明るく透きとおっていくのとは裏腹に、その彩が妖しい艶を増すかのよう。
 逸話に滴らせるのは、ひとしずくの真実。
 大天使を喰らった稀なるデーモンイーターは己の在り方そのものを隠し味に秘め、手にした媚薬の禁忌を明かした。
 神の血たる黒葡萄と禁断の果実たる赤林檎の滴を混ぜ合わせて火にかける冒涜。その背徳感に甘美な吐息を洩らした淫魔が己が身を掻き抱くより先に彼女を抱き寄せ、
「天使フルーティア。これでキミは神の物じゃなく、僕のモノだね」
 可憐な天使を堕落させんとする女悪魔として笑んだ風水が『天使』の唇に触れさせた杯を傾けたなら、最初に花開いたのは聖母の薔薇とも呼ばれる香草、ローズマリーの清涼な香り。
 だが清らな香りはたちまち黒葡萄と赤林檎の濃厚な背徳の香りに冒されるよう呑まれ、淫魔は甘美な背徳を嚥下して。
『ああ! ええ、ええそうよ。堕ちてしまったあたくしはもう、あなたのモノ……!』
 罪に濡れた唇から零れた滴が肌を伝うのもそのままに、堕ちた『天使』は『女悪魔』を熱く抱き返した。
 観客席に更なる高揚が満ちる。
 舞台も客席も諸共に呑み込んでいくかのごときそれが、劇場全体に一体感を醸成していく。
 この一体感が街のすべてに広がっていく様を思い浮かべればリゼット・ノア(Cortège funèbre・g02975)の背筋に奔ったのは冷たい戦慄。見過ごすわけにはいかない。何としても、
 ――淫魔フルーティアの暗殺を、成し遂げなければ。
 氷のごとく凝る殺意を今は胸の奥へ秘め、それと同じほどによく冷えた、蕩けるほどに甘いコーディアルの杯を捧げ持つ。硝子に伝う透明な水滴は、まだ夏の名残を感じるこの時季、誰の目にもとびきり美しく見えた。
 意識していた【冷気の支配者】が操る冷気は空間の気温を下げるもの。
 実際に甘露を冷やすのに役立ったのは、出場者達に厨房を解放する領主館の氷室に貯蔵されていた氷と、劇場への移動時に甘露を入れた錫製デキャンタへその氷片をたっぷり纏わせた、氷雪使いの技能のほうだったが、苦心した甲斐はあったはず。
「……街の美しい女領主に、ある平凡な男が恋をしました」
 然れど幾人もの男達と一夜の愛を楽しむ女領主の瞳にも平凡な彼が映ることなどなく、ただ一夜さえも与えられぬ男の裡に嫉妬の炎は渦巻いていくばかり。
 甘やかな桃シロップにチョコレートリキュールを合わせ、酒精を飛ばすべく加熱する様は彼の狂える情念を煮詰めるのにも似て、生クリームを悪魔の囁きのごとく落として混ぜれば、
 彼女を永遠に私のものにしたい――そう悪魔に願って魂と引き換えに男が得た魔薬が、現実世界に生まれ落ちた。
 甘く蠱惑的に蕩ける彩りと香り、冷えた炭酸水を注げは魔法の靄めいて揺れる甘露を献上し、
「死の冷たさ、罪の甘さ、そして喉を焼く毒の痛みを……どうかご賞味ください」
『ええ、ええ、あなたなら本当に、冷たくも甘美なる死を与えてくれそう……!』
 黒きゴシックドレスで装った白磁人形、そんな印象を纏うリゼットが逸話の男に己の想いを重ねる声音で願えば、甘き死を受け容れるように恍惚の声を洩らした女領主が、ゆっくり杯を傾ける。死の冷たさに官能的な肢体を震わせて。
 深く、深く零れた甘い吐息は、淫魔フルーティアが溺れるように酔いしれた証。

 官能的な浪漫と蠱惑的な甘露に嬌声を溢れさせたかと思えば、
 御伽噺めいた浪漫と宝石めいた甘露に少女のごとき歓声を咲かせ。
 前者の姿に成程淫魔だと頷かされるも、後者の姿には純真無垢な乙女のごとき一面が垣間見える気がして、フルーティアの思わぬ可愛らしさにシセラ・カドシュ(Hiraeth・g01516)の唇が微かな笑みを描く。
「ああ、まるで彼女の魂には――」
 ただ快楽を求めるのみでなく、一身に愛を受けたいと純粋に願う、あどけない乙女心が息づいているかのよう。
 恋を巧く語れずとも献身の愛の逸話なら語れるかもしれないと己が手で創り出したのは清涼な森の息吹にも似た、ほんのり色づく朝靄のごとき甘露。
 林檎果汁とオレンジピールに加えたアニス酒はアニスの特性ゆえに霧のごとき白を生じて、霧の代わりに酒精が晴れるまで煮込んだところへ甘いライムエードを落とせば、朝靄に淡くライムグリーンを燈したコーディアルとなったそれが今、劇場の舞台でグラスに踊った。
 弾ける気泡とともに炭酸水で花開かせた甘露に添える逸話は。
 ――革命で処刑が決まった姫君に、側仕えの侍女が薬湯を装って差し入れた毒薬。
「飲んだ後は、二人で眠るように息を引き取ったとか」
『まあ……!』
 この時代のパリに生まれ一度は死した身であるからこそシセラが語る逸話は真実味を帯びて、フルーティアはまるで夢見る乙女のごとく頬を紅潮させた。その胸にはベルサイユが鮮やかに描き出されているだろう。
 劇も書物も愛する身なれば、肌身に染み渡るほどよく識っている。
 華やかに咲き誇る物語であれ、清らかに咲き零れる物語であれ、その本質を凝縮した唯ひとしずくのエッセンス――極めて短い惹句で語るほうが、より聴き手の想像を掻き立て、その胸をひときわ豊かな浪漫で満たすことを。
『ああ、ああ! あなたもあたくしと一緒に眠って、一緒に旅立ってくれる……?』
「勿論です。行く先が来世でも煉獄でも」
 ――どこであっても、あなたにお仕えします。
 悲劇に酔いしれた淫魔が無垢な姫君のごとく願うのに迷わず微笑み返したなら、心から幸せそうな笑みで彼女は、毒薬たる杯を呷る。素直に美味だと思える果実の甘さが花開けば、次いで感じるのは甘い熱を燈すのにも似たアニスの風味。そして、清涼な余韻で身も心も満たすライムの爽やかさは、
 シセラが贈った、献身の愛の浪漫。
 眩い光にも似た至福のうちに、眠りについたかのよう。
 瞳を閉じたまま浪漫と甘露の余韻に恍惚と浸るフルーティアの姿は誰の瞳にもそう映っただろうか。やがて淫魔が眠りから幸福なままめざめたかのごとき歓喜の吐息をゆっくり溢れさせたなら、わっと歓声を湧きあがらせて観客達も息を吹き返す。
 流石です、シセラさん。
 一礼して舞台下手へ退場する彼女を上手で見送って、眩暈咲・クヴァーシィ(君の分だよ・g00101)も己が甘露と浪漫を携えて舞台へ上がった。グラスに踊らせるのは甘やかな黄金めいた琥珀色の甘露、蜜のごときそれを炭酸水でほんのり紅を帯びた明るい金へ咲かせつつ語るのは、
「これは――身分違いの恋ゆえに一度は追放された騎士が、愛しき姫に相応しい者と成るべく万里を経て得た霊薬」
 そう言われています、と柔らかな声音で紡ぐ浪漫の逸話。
 野薔薇たるロサ・カニーナ、正史では有名なれど断頭革命グランダルメに伝わっているか判らぬ異国の恋の詩を託すようにその薔薇の実を、そして騎士の遠い遠い旅路の光景をとかしこむように純白に咲くハイビスカス・ローゼルを合わせ、蜜色の光を注ぐ心地で貴腐ワインをたっぷりと。それをコーディアルと呼ぶに足るまで煮詰めれば、勿論酒精も夢のように消えたはず。
 鮮やかなルビー色を見せるローズヒップティーは実のところ赤いハイビスカスを合わせたもの、ゆえに白きハイビスカスを薔薇の実に合わせた甘露は貴腐ワインの甘やかな蜜色を際立たせていた。クヴァーシィがあえて白を選んだのは、騎士の旅路の想いを重ねるため。
「白いハイビスカスの花言葉を御存じでしょうか。新しい恋、そして、艶美」
『まあ! あたくしその花言葉を聴いたのは初めてよ、とても素敵ね……!』
 現代において「最初期の花言葉辞典」と評されている書物が出版されるのは、正史ではこの時代より少しばかり先のこと。だが流行の兆しがあるのか花言葉に興味を抱いていたらしいフルーティアが瞳を輝かせれば、旅路で白いハイビスカスに出逢った騎士は心に焦燥を募らせたのです、と言を継ぐ。
 艶美に歳を重ねただろう姫が、新しい恋を見つけてしまわれたやもしれぬ――苦難の果てに霊薬を手にした彼は故国へ馳せ戻り、吟遊詩人たる少年は騎士の逸話を体現すべく跪いた。
「我が姫に、永の旅路を経ても変わらぬ恋心を捧げます」
『ええ、ええ! あなたこそが、今でもあたくしの最も大切な騎士……!』
 恋心とともに捧げられた杯は凝縮された歓喜の甘さに離別の日々の切ない酸味を忍ばせたかのごとき、霊薬の甘露。

 百花繚乱たる甘露と浪漫が妍を競い、劇場全体に満ちる高揚も昇りつめていく。ここまでに最も淫魔フルーティアを恍惚と酔いしれさせ観客席を沸かせたのは、優勝候補の呼び名も高かった秋薔薇のカフェ店主の甘露と浪漫。
 雪薔薇姫の浪漫を添えた彼の後に出場順を配されたことが、果たして己にとって吉と出るか凶と出るか。
 ――だが、自信はある。
 テナリア・アタールカ(直情の女竜戦士・g02261)は金の双眸に強気な煌きと己の矜持を燈して、紛うことなき挑戦者として甘露祭の舞台に臨む。
 官能の味を知った雪薔薇姫の女を開花させる、南国の美男子からのアモール。
「といったところかな、私から献上するこの甘露は」
『ふふ、先程の浪漫との対決みたいね? ああ、そういうのも震えるわ……!』
 逸話を語れば淫魔の瞳に燈るのは好奇の煌き、観客席にも興味津々なざわめきが広がれば、そうだろう? と不敵に笑んだテナリアは不意にフルーティアの腰に腕を回して抱き寄せる。一度目覚めた女は貪欲なものだと続けながら、
「初恋の彼と離れ、別の熟れた男に熱烈にアプローチされたなら……真の欲を引き出され、更に官能的な芳香を溢れさせる」
『ああっ! …………、――――!!』
 遥かなアンダルシア、南国の情熱的な舞踊めいて身を仰け反らせた彼女の唇へ強引に傾けた杯から溢れる甘露は、氷砂糖で酢橘の爽やかで無垢なる風味を引き出したシロップに、愛の林檎たるトマト、それも旨味と彩りを凝縮させたドライトマトを加えたもの。透きとおった無垢を情熱の赤で彩り、炭酸水で花開かせたそれが最後に齎すものは、
『ああ、ああ、生姜のコーディアルはよくあるけれど、あたくし、こんな刺激は初めて……!!』
「それが大人の情熱というものだよ、雪薔薇姫」
 恐らくこれまで彼女への甘露に使われたことがなかったのだろう赤唐辛子。仕上げに浸けこんだ最後の品をテナリアがそう表現してやったなら、辛味に熱を燈されたかのごとく。
『――――!!』
 更に身を仰け反らせたフルーティアが堪えきれずに喘ぎ、彼女が酔いしれる様に観客席が熱狂の渦に包まれる。
 劇場全体を呑み込んで更に昇りつめる高揚の裡で甘美な熱狂の余韻に浸る観客達。だが、その最前列で先の熱狂とは異なるざわめきが細波のごとく広がったのは、
『待って、待って、この香りはなぁに? 甘くて甘くてうっとりしてしまいそうな、初めての香り……!』
「金木犀――遥か東の国で、星のごとく咲き溢れる花の香りでございます。フルーティア様」
 狗尾・黑猫(シルバーナイフ・g00645)が己の甘露を炭酸水で花開かせ、一礼した時のこと。
 舞台と客席の間にはオーケストラボックスが存在するが、それでもなお最前列の観客まで届く芳香の源は、現代の西洋でも一部の愛好家にしか親しまれていないと聴く東洋の秋の花。
 星をねだる姫君の望むまま、星を捕まえて溶かした雫。
「その煌きを掴んだのは、姫君に、お嬢様に仕える私……翼ある執事でございます」
 逸話とともに恭しく語る黑猫の口振りも挙措もまさに執事、気づけばデーモンとして得ていた翼をさりげなく開いて見せた彼の甘露は、星のごとき花を甘く煮詰めながら香りづけの桂花陳酒を落としたもの。
 傾国の美女として名を残す東洋のある貴妃も愛飲したと伝わる品だと告げれば、
『なんて、なんて神秘的なの……!』
 淫魔の瞳にたちまち蕩けるような光が燈った。
 金木犀の花を彼女へ説明するなら、オリーブの花によく似た姿の、オレンジ色の花と語るのが分かりやすいだろう。然れど敢えて全てを語らぬことでより相手の想像が豊かになるのは先程シセラが証明したとおり。淫魔の胸に東洋の神秘に彩られたこの上なく美しい星の花が思い描かれていると察すれば、
「夜空まで羽ばたき、花のように貴女を彩る貴女だけの星々を、この甘露に溶かしました」
『あたくしだけの、星……』
 美しい貴女様が美しい星を呑み込むことで、より美しくなられますよう――甘やかな黄昏も思わせる、橙の花色を溶かした黄金の甘露、星の蜜を『執事』は『お嬢様』へと捧げた。
 弾ける気泡が星のごとく煌く炭酸水でいっそう星の世界の夢を見せるそれは、蠱惑的なまでに甘く芳醇な花の香りが彼女の心を宙の夢に揺蕩う恍惚で包み込み、涼やかな甘さで優しく地上へと引き戻す、果実の風味さえも備えた極上の甘露。
 特級厨師たる男が仕込んだ甘露は純粋な出来栄えも特級で、
『あたくし、これほど酔わされる甘露は初めて……!!』
 洋梨には親しめど和梨は初めてだろう淫魔に、堕天の風味も添えておりますよと言い添えて、
「この執事、貴女様のためなら幾度でも星を掴んで参りますとも」
『ああ、ああ! 大好きよ、あたくしの執事……!!』
 微笑みでそう続けたなら、感極まったフルーティアが黑猫に抱きついた。
 劇場どころか街全体まで満たしそうな観客達の喝采を浴びながら、あなたが最高よ、と贈られた口づけを頬に受けたのか、別の処にに受けたのか。
 あるいは――というのは、彼と彼女のみが識るところ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【冷気の支配者】がLV2になった!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【託されし願い】LV1が発生!
【勝利の凱歌】がLV3になった!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV3になった!
【命中アップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV3になった!
【ラストリベンジ】がLV2になった!

●ロマンティックコーディアル――幕間、そして第二幕へ
 華麗なる甘露と浪漫の百花繚乱、陶酔と恍惚の甘露祭が幕を閉じる。
 優勝候補の大本命と謳われていた二人が双方ともに優勝を逃すという大番狂わせの報が街中を駆けめぐり、劇場では万雷の拍手喝采が客席も舞台も震わせる中で優勝を祝福された黑猫、そして準優勝を勝ち取ったテナリアを始め、入賞者達が淫魔フルーティアによって表彰され、
『ああ、ああ……! あたくし、あなたがたの甘露と浪漫に酔った余韻が引かないの。このままでは終われないわ、領主館の祝宴でもあなたがたと楽しいひとときを分かちあえれば、とても、とても幸せよ』
 蕩けるような笑みで祝宴に招かれていた。
 然れど上位入賞の十名のうち、優勝の黑猫と準優勝のテナリアを含めた六名までもが時空を超えてきた復讐者であることを淫魔フルーティアが知る由もない。今夜の祝宴の間に、秘密裡に幕を開けるだろう――己が散華する真なる舞台のことも。

 甘露祭の高揚も冷めやらぬうちに、街には黄昏が訪れる。
 退廃と享楽の街に相応しい、甘く爛熟した果実のごとき夕陽が彼方へ眠りゆき、官能的な菫色に誘われた夜の帳が艶やかな漆黒で抱きすくめれば、元は大貴族の離宮であったという麗しき領主館から甘い蜜色のあかりが夜闇を蕩かすよう溢れだす。
 さあ、第二幕たる祝宴へ向かおうか。
 祝宴で待つのは領主館お抱えの料理人達が腕を揮う数多の美味と、甘露祭の入賞者達が振舞う浪漫のコーディアル。主たる淫魔フルーティアが堅苦しいのを好まぬのだろう、宴は晩餐会のように格式ばったものではなく、誰もが美味や甘露や歓談を気取らず楽しめるものだという話。
 淫魔フルーティアに話かける必要があるのは、彼女を『お楽しみ』へ誘い出す者のみ。
 他の者は無理に話しかける必要はなく、むしろ、何とか上位入賞を果たした『優勝候補の大本命』など、一般人入賞者達へ積極的に話しかけ、彼らとフルーティアがいい雰囲気になるのを阻止すべく動くのが上策か。その他、思いきり祝宴を満喫し彼女に「あたくしがそっと抜け出しても、みんな祝宴を楽しんでくれそうね」と思わせる者がいればより確実なはず。

 親族や友人知人達も招いてよいと入賞者達がいくつも持たされた、無記名の招待状はパラドクストレインの座席に置かれており、それを手にしたディアボロスなら誰でも祝宴の客となれる。主賓である入賞者達と初対面の者でも問題ない。
 何故なら、淫魔フルーティアを撃破するためという目的を同じくする者なら――間違いなく『戦友』であるのだから。
四葩・ショウ
わたし、髪が短いから
ドレスより燕尾服の方が浮かないかな?動き易いし

懐かしいかおり
行きつけのカフェバーと
秋のいつかを思い出して手にとる
金木犀のコーディアルを堪能しつつ歓談
一般人の入賞者の作品と逸話を確り『情報収集』

フリーな一般人入賞者の元へ
その人のコーディアルも味わってから

すれ違いざま
とん、と
優しくぶつかってみる

ごめんなさい
お怪我は?

精いっぱい『演技』と『誘惑』添え
まずは祝辞と感想を
おいしいって伝える気持ちは、演技じゃない

淫魔の元へ行きそうなら
……もう
行ってしまわれるんですか?
なんて子供みたいに
その手を掴もう

じっと見つめて
ひかれないなら耳元で囁く
ああ、どうか
――ひとりに、しないで

(なんて、ね)


テナリア・アタールカ
準優勝か、私のコーディアルも楽しんで貰えて良かった。

私は秋薔薇の主人の気を引きにいこうか。私の原点となった彼の甘露も再び味わわせてもらおう。またカフェの時の様に酔わされてしまうかもしれないが、それもまた一興。私も躰に灯される情熱に身を委ね、寄り添って【挑発】すればより彼の興味を惹きつけられるだろうか。

上手く盛り上がり、2人きりになれれば。彼がフルーティアの寝室に招かれたときの話でも聞いておこうか、何か有用な情報が得られるかも知れない。熱の灯った私の躰で再演してもらえるか、頼んでみてもいい。雪薔薇姫を燃え上がらせた私のアモールに彼も焦がされてしまうのか、それとも竜を手懐けてみせるのか…楽しみだ。


ファシル・ダラール
淑やかなお嬢様にはなれない私でも
今宵ばかりは星を強請っても良いだろう?
金木犀揺蕩う杯を片手に宴の中へ

未だ酒精は嗜めないけれど
“酔う”とはきっとこんな感覚なのかな
唇を、舌先を、甘い滴が喉を流れて
身体の芯が蕩けてゆくような
高揚する気分に思わず身体が疼いてしまう
談笑に華を添えるべく、ひとつ披露できるなら
とびきりの一杯に添えられた逸話をなぞった舞を
得意のダンスで招待客を魅了しよう

聖堂の女主人が目に留まれば
彼女の元へ飛んで行こうか
恭しく掬う手にそつと口付けを
神の御許ではないから、姉妹の契りは乞えずとも
今だけはこう呼ぶのも赦されるだろう

――ね、御姉様。
木漏れ日の滴をもう一度
此度は君の手から私に授けておくれ


古城・雪凪
上位入賞者で一般人は4人…情報がない2人に絞って、折角なので幾つかの料理人渾身の美味や甘露を味わいつつ情報収集した後話しかけにいこうかな

入賞おめでとうございます
心ごと蕩けるようなコーディアル、見事でした
なんて甘く微笑みながら味の感想も告げて

どうしても、この甘露を生み出したあなたと話がしたくて
あなたならきっと…次こそは領主様の心ごと蕩かすことができるのではないかと
煽て反応を見つつ、気分を良くしてくれるのであればそのまま褒めちぎって釘付けに
そうでなければ入賞者のコーディアルを分析する話題へ

基本は入賞者を立てつつ…時には周りを話題に巻き込んで動きづらい雰囲気を作っていきたいね


シセラ・カドシュ
劇での事だとしても
一度役者として献身の愛を囁いた以上
途中で役者が舞台から降りては
劇が終われないからね

観客に嘲笑われるような演技でも
演技を続けてこそ役者
わたしの知る劇の役者は、皆そうだった
わたしも、そうで在りたい

側仕えのご褒美に
一曲踊っていただけませんか、姫様
侍女らしく、しおらしく
フルーティアに語り掛け

ダンスの練習を一人でした事はあるけれど
社交界に縁は無いものだから
誰かと踊るのは初めて
上手ではないけれど、夜の庭に誘い出して
二人静かに踊れたら、侍女冥利というもの

よそ見をさせないよう踊りながら
姫様が酔えないのは何故ですか、等
踊りを疎かにしない程度に探りの会話も交える

踊り終わったら、劇の幕切れも近い筈


狗尾・黑猫
あ"〜酷い目に合いました…
ともあれ、物語込みとはいえ認められたのは嬉しいものです
まあ?私なので?当ぉ然ですが?
…こほん、胸中は隠さないといけませんね

フルーティア様には、類稀なる名誉を有難うございますと礼くらいは言いたいですが、一般の方の対応を

皆様のコーディアルの、華美な美しさや神秘を感じる艶やかさも素晴らしい
とても勉強になります
ああ、金木犀はジャムや紅茶などの他、香料などにも使われます
薔薇なんかと同じですね
ですがやはり、咲いている花からの香りが一番で…
なんて話で人を集められますかね
何しろ、今宵の主役、そして研究材料でありましょう
レシピの開示も厭いませんとも
美味は多くの方が楽しんでこそですから


眩暈咲・クヴァーシィ
宴を盛り上げる一助になればと
他の方々の歓談を妨げぬ位の声量で
楽の音があればそれに乗せた歌に仕立てて
無ければ語るような調子で
上位入賞十名の甘露の逸話をそれぞれに膨らませて口遊みたいのです
すみません、余りにも詩興が湧いてしまいまして

一般人入賞者の誰かが領主の方へ動くのを見たら
辿り着く前に話しかけます
貴方の素晴らしいコーディアルと、その逸話の事
どうか更にお聞かせ願えませんか
秘め事か悪戯の企みよろしく声潜め
……たとえば、もしも、雪薔薇姫ほどの物語に育ったら
領主様も物語を耳にする度貴方の甘露をまた口にしたくなるだろうと思いませんか?
誘いに乗ってくれたら
ええ、この美味と甘露に誓って、伝承詩の如く仕上げます


織乃・紬
縁てエものは、イイねエ
御馳走まで喰えるたアな
関係者でエすと胸張る様
招待状摘まみ、踏み入り

ははア、流石に恒喰う物と
違ッた様な並びしてンのね
肉料理とか大好きだけども
これぞ、ッて御勧めある?
いンや、いッそ全部盛る?

意気揚々と盛る皿に
緩い笑いが止みもせず
然し美味を頂くからにゃア
多少は働いておかねエとな
杯を手にして、飲み干して
入賞者に近寄り《時間稼ぎ》

感想を聞く時間はお有り?
正直、俺の好みで言えば
アンタのが一等美味でね
味わい深くて拘り感じたし
一人の舌を心を虜にすべく
限りを尽くせるたア感心だよ

御陰で発破掛けられたわア
実は口説きたい子が居てさ
好みを知りたいンだけど
御本人、から助言くれる?
嘯き請うて、指を引き


青島・寿限無
パラドクストレインに置かれていた招待状を用いて宴場へ。
【プラチナチケット】を活かしつつ
場内のフルーティアの動きを観察し
必要に応じて
【パラドクス通信】で、仲間に標的の動向を報告しよう。

主目的は標的と接触する仲間のフォロー。
夜の街のセキュリティとして鍛えた話術で周囲の人払い等の協力を。
誘い出しの人員が少なく
自らも加わった方がよいと察した場合は、標的に声掛けを。

私は職業柄、様々なコーディアルを味わってきたが
ここに集った物はどれも素晴らしい。
だが――貴女のその唇より未知で甘美な滴が、この天の下に存在するのか?

常時ならば俺を蕩けさせるのはネコチャンのみ。
ただ、酔った連中の相手をするのは慣れているだけだ。


●ロマンティックコーディアル――第二幕
 艶やかな秋の夜闇が、華やかな祭の祝宴の幕を開く。
 元は離宮であったという麗しき領主館、この国で愛されるシェーンブルン・イエローに彩られた壮麗なバロック様式の館は溢れる蜜色のあかりで自らも夜闇へ蜜色に輝いて、甘き祭の祝宴へと人々を招き入れていた。
 煌びやかに着飾る招待客が次々到着するエントランスホールからして既に華やぎに満ちていたが、そこで最高の礼をもって迎えられた今回の甘露祭の勝者こと狗尾・黑猫(シルバーナイフ・g00645)が、よもや。
 ――あ"~、酷い目に遭いました……。
 胸中でそうぼやいているなんて、数多の招待客達も招待客達を慇懃に迎える自動人形(オートマタ)達も夢にも思うまい。何しろ彼の真なる『お嬢様』は淫魔フルーティアなどではなく、唯一無二の――。
「ほら、折角だし胸を張っていこうよ。優勝おめでとう!」
「ふふ、今宵は私にも星をねだらせておくれ。栄えある優勝のコーディアルだからね」
「まあ? 私なので? 当ぉ然ですが?」 
 甘露に満ちる街ならぬ人類史最後の砦たる新宿に構えられた彼のカフェバー、そこを行きつけとするがゆえに顔に出ずとも黑猫の胸中を察した四葩・ショウ(Leaden heart・g00878)やファシル・ダラール(渡鳥・g02150)がぽんぽんと背を叩いていけば、戯けるよう胸を張った甘露祭の勝者の双眸にも楽しげな光が燈り、
「さあ、第二幕に臨もうか。途中で役者が舞台から降りては、劇が終われないからね」
「ええ。ここまで来たなら私も演じ切ってみせますとも、甘露祭の勝者という役をね」
 仔細は知らずとも雰囲気を読んだらしいシセラ・カドシュ(Hiraeth・g01516)が悪戯っぽく紡いだ小声に、同じく余人には届かぬ小声で返せば、向かう先はひときわ華やぎと煌きに満ちた広大なサロン。思うところはあれど己のコーディアルが最高の評価を得たのが嬉しいのも確かだから、
「此度は類稀なる名誉を有難うございます、フルーティア様」
『まあ! あなたの甘露と浪漫が類稀なるものだったからこそよ、黑猫。皆もあなたの甘露と浪漫で酔わせてあげて!』
 荘厳なフレスコ画に彩られた天井から煌きを振りまくボヘミアンガラスのシャンデリア、その輝きのもとで女王然と振舞う淫魔フルーティアに述べた礼は真実のもの。少女が宝物を自慢するような彼女の声音に促され、大勢の招待客が話しかけてきたけれど、それこそ黑猫の望むところだ。
「いやはや、縁てエものはほんとイイねエ。今夜の主役に、乾杯!!」
 先程ひらめかせた招待状は懐に仕舞い込み、皆の注目を集める黑猫へと杯を掲げた織乃・紬(翌る紐・g01055)は気泡弾ける甘露を一口呷って、テーブルで美しく輝く銀製の器を彩る数多の美味に瞳を輝かせる。
 伝来に諸説あるヴィーナー・シュニッツェル、仔牛肉のカツレツが香ばしく揚げられ銀器を彩る光景はこの街だけのものか違うのか、けれどそれを考える間も無くじっくりと煮込まれた牛頬肉がトマトとパプリカでビーフシチューのごとき艶を纏うグーラッシュにも目を奪われれば、これぞというお勧めを、いや全部、と紬の心は弾んでいくばかり。
 まあ、がっつり肉を喰いたい気持ちも分かる――。
 偶々目にした同胞の様子にひっそり共感しつつ、青島・寿限無(Gatekeeper・g01828)は己が手首のカフリンクスを意識して銀の髪を掻き上げた。ごく自然に呟く独り言は、カフリンクスに偽装できる形状で現れた【パラドクス通信】の小型通信機に向けてのもの。
「さて、俺もフルーティア様の御尊顔を拝しに行くとするかな」
 ディアボロスは如何なる外見や装備であれ一般人に違和感を持たれにくいという能力を備えているが、クロノヴェーダには高確率で『この改竄世界史では不自然な存在』だと看破されてしまう。
 今のところ、甘露祭と祝宴で大いに気が緩んでいるフルーティアやその取り巻きたる淫魔達、給仕等に勤しむ自動人形達に此方の正体が露見する可能性はなさそうだが、祝宴の中で通信機を手にして伝達事項を語る姿は流石に怪しく見えるだろう。通信そのものは盗聴されないとしても。
 なれど、こうして通信機をカフリンクスなり耳飾りなりに偽装して、自然な独り言や会話に己や周囲の状況を織り交ぜつつ伝えるのであれば、余程でなければ怪しまれることもあるまい。時空の理を覆す力に馴染みつつある己の在りように、男は口の端を擡げて微かに笑んだ。
 ――俺達はこうやって、復讐者としての力の使い方に慣れていくんだろうな。

 了解、と眼差しで寿限無に応えたのは、祝宴に溶け込むべく美味に舌鼓を打っていた古城・雪凪(繰創者・g01119)。
 酒精はなくとも上質なコーディアルの炭酸割りと数多の美味はかなりの好相性、ディルの緑が卵黄と檸檬バターのソースに映えるブラウントラウトのポワレや宝石めいたアプリコットソースに彩られた鴨肉の冷製を心のままに堪能して、
「料理は勿論、やはり入賞作のコーディアルも素晴らしいな。この作り手にお逢いしてみたいところだけど……」
 感嘆の表情を演出してみせつつ雪凪も、甘露祭に出場した同胞が燈してくれた【パラドクス通信】で独り言めかした言葉を密かに流す。招待客からの情報収集も可能だが、一緒に表彰された同胞達なら他の上位入賞者も把握しているはずだ。
 案の定、間髪を容れずに応えが返った。
「黒髪の青年が柘榴の、ストロベリーブロンドの女性が焦がし林檎の甘露の入賞者――で、間違っていなかったかな?」
「ええ。貴女の御記憶の通りですよ、テナリア嬢」
 招待客との会話に紛らせて雪凪に応えたのはテナリア・アタールカ(直情の女竜戦士・g02261)、確認するような彼女の言葉に微笑み返したのは『優勝候補の大本命』であった秋薔薇のカフェの店主だ。準優勝を勝ち得たテナリアと上位入賞者の彼が祝宴で顔を合わせて歓談に興じるのは極めて自然な流れで、互いの甘露を味わうのも当然のこと。
 芳醇に花開く薔薇とラズベリーの香りそのものを呑むがごとき甘露、秘められた葡萄火酒は酒精を失っているはずなのに、
「ああ、今夜も酔わされてしまいそうだ……実を言えば、私の甘露はキミの甘露が原点でな」
「勿論、確と覚えておりますとも。貴女が私の店で、私の甘露に情熱的に酔いしれてくださったことを」
 己の芯に熱を燈される心地でテナリアが挑むよう明かせば、細められた彼の双眸もまた熱を帯びる。秘密を共有すれば心の距離も縮まるもの、熱が咲かせる情熱のまま、
 ――彼の興味を、存分に惹きつけることができたなら。
 大人達の駆け引きが始まる一方、菓子のテーブルでは少年少女の歓声が咲く。
 名高いザッハトルテの誕生は正史ではまだ先の話、なれど艶やかなチョコレートガナッシュとオレンジムースのトルテも、アーモンドやシナモンの風味豊かなリンツァートルテも美味で、ふわふわスフレが山々のごとく見事に聳えたザルツブルガーノッケルンに思わず声をあげれば、互いに同胞だと気づいた眩暈咲・クヴァーシィ(君の分だよ・g00101)とショウは共犯者めいた笑みを交わす。
 淡雪のように口中でふわり蕩けるスフレは、陶然たる香りでいつかの秋の幸福を甦らせてくれる金木犀のコーディアルとも好相性だったけれど、こちらも入賞作ですよとクヴァーシィが焦がし林檎の甘露を手渡してくれたなら、ありがとうと微笑み返したショウと彼は二人で掲げ合った杯を傾けて、
「「…………!!」」
 再び顔を見合わせた。濃厚なカラメルと林檎に蜂蜜、その奥からシナモンが炭酸に咲く風味は。
 ――これって……!!
 現代風に表現するなら、林檎風味で甘さ強めの、クラフトコーラといったところか。
 勿論現代のコーラとは大分異なるものだが、それでも懐かしい日常を強く想起させられればこの作り手と語り合ってみたい気持ちがいっそう高まって、ショウは眼差しを和らげて歩み出す。
 結い上げるには長さが足りぬ髪なればと纏ったテールコートはすらりとした肢体を優雅に彩って、すれ違いざまに柔く肩をぶつけたストロベリーブロンドの女性へ、
「申し訳ありません、フロイライン。お怪我は?」
「あっ……大丈夫です、全然痛くなかったもの!」
 誘惑を乗せて微笑みかける様はまさに貴公子。己を確と印象づけて、
「ああ、このコーディアルで入賞された方ですよね。おめでとうございます、何度でも味わいたくなる美味だ」
「!! 嬉しいです、そう言っていただけて……!!」
 演技に心からの想いを乗せて伝えれば、たちまち彼女の顔が輝いた。
 彼女を確実に淫魔フルーティアから遠ざけるべく、ショウと左右から挟み込むようにしたクヴァーシィも詠うがごとく語りかける。この甘露の逸話は、愛する妖精を己という宝石に閉じ込めた琥珀の物語。
「貴女の素晴らしいコーディアルと、その逸話のこと、どうか更にお聞かせ願えませんか」
「まあ! 貴方は薔薇の実とハイビスカスの……!!」
 相手の瞳に興味が燈れば、入賞作の甘露の逸話を伝承詩のごとく詠ってみたいのです、と秘め事めかして囁いて、
 ――たとえば、もしも貴女の逸話が、雪薔薇姫ほどの物語に育ったら。
 甘やかな夢を、彼女の心にそそぐ。
 焦がし林檎の彼女が絡めとられたなら、こっちは柘榴の兄さんに行ってみッか。
 同胞達の動きを己が眼と小型通信機から聴きとる情報で確かめて、数多の美味に相好を崩していた紬も、俺も多少は働いておかねエとなと笑って程好く熟成された鹿肉のローストを頬張った。その味わいを堪能しつつ柘榴の杯を呷れば、
「うッわ、確かに酒とかいらねエなこりゃ。なんつー旨さだ……!!」
 赤スグリが利いた伝統的なソースを纏った鹿肉の旨味が柘榴の甘酸っぱさとカルダモンの風味で更に花開く様に思わず眼を瞠る。お世辞を捻くり出さなくても済むのがありがてエと上機嫌で向かう相手は甘露の作り手たる黒髪の青年で、
「いやア、俺の好みで言えばアンタの甘露が一等美味でね。拘りの味にゃアほんと感心したよ」
「はは、そうだろうそうだろう! ことに肉料理との相性は抜群でね!」
 存分に時間稼ぎをすべく語りかければ、磊落に笑った相手からも御機嫌に返る声。御領主様ただひとりを虜にすべく限りを尽くす様に感銘を受けたよと続け、
「実は俺にも口説きたい子が居るンだけどさ」
「ふむ、それこそ僕のコーディアルの出番だな。ここだけの話、柘榴もカルダモンも媚薬効果があると言われているのだ」
 秘密めかして紬が嘯いたなら、青年もまた己が甘露の秘密を開陳してくれる。
 偶然聴こえた風情を自然な演技で装って、
「成程、女性の愛情と性愛を深め、男性にも――と古来より言われておりますね。確かに心ごと蕩けるような甘露で」
 逸話との調和も実にお見事でした、と金の双眸に蜜のごとき甘さを燈し、柔く微笑みながら雪凪もするりと紬と青年の話に加わった。媚薬効果を狙ってのレシピと聴けば甘露に添えられた古代エジプト女王の閨の秘密もいっそう艶を増すかのよう。
 相応の実力者であるならこちらも煽てやすいもの、と胸の裡によぎった本音は秘めたまま、
「あなたならきっと……次こそは領主様の心ごと蕩かすことができるのでしょうね」
「むむ。あわよくば今回でも一夜の寵愛を狙えるかと思ったが、万全を期して次の甘露祭に挑むべきかな」
「おう、そんじょそこらの相手じゃねエんだ。全力で挑んでこそアンタの心意気が活きるってモンだろ?」
 次の機会をとさりげなく強調しつつ雪凪が彼の自尊心を擽って、横目でフルーティアを見遣った青年の背中を紬がばしばし叩いて激励してやったなら、確かに今夜は難しそうだと頷いた彼が次こそはと奮起する。
 皆様、次なる彼の甘露にどうぞ御知恵を――誰もの目を惹く東洋的な装束を纏った雪凪が芝居がかった所作で一礼すれば、上位入賞者に興味を抱く招待客達がこぞって集まってきた。
 加えるなら生姜だ蜂蜜だと盛り上がる中、何がどう難しそうなのかと先程の青年の視線を追った紬と雪凪が見たものは。
 隙のない礼服姿なのに何故か堅気に見えない男・寿限無が、淫魔フルーティアと語らう姿。

 ――俺の眼の前にいるのはネコチャンだ。
 ――そう、美しく気紛れで、小悪魔的に俺を翻弄する、可愛いネコチャン……!
 官能的な淫魔を前にすれど微塵も揺るがぬ鋼の心、寿限無のそれを蕩かすのは愛らしきにゃんこのみ。なればこそ、逆巻く時に奪われた愛猫達を思い浮かべれば言の葉もより滑らかになるものだ。
「ここに集った甘露はどれも素晴らしい。だが――貴女のその唇より未知で甘美な滴が、この天の下に存在するのか?」
『ふふ、勿論あたくしこそが極上の甘露。だけれども……あたくしの唇が、あたくし自身を酔わせることはできないの』
 濡れた唇を花開かせ、彼女は厚い彼の胸板に指を這わす。
 なお、淫魔フルーティアから人々を遠ざけるのに役立ったのは歌舞伎町のクラブセキュリティとして鍛えた話術、ではなく鍛えた肉体の迫力と眼つきの鋭さであったのを、寿限無は気づかなかったことにした。
 今のうちだな。
 視界の端で仲間と淫魔の様子を確かめたテナリアは今、広大なサロンの片隅の紗幕の陰で、秋薔薇の店主と互いの鼓動さえ感じ合えそうな距離。彼がフルーティアの寝室に招かれるという予知の光景は、自分達の介入で覆されることになる。
「御存知ですか? このサロンも素晴らしいが、傍にある数人用の談話室は南国の宮廷風の意匠が凝らされているとか」
「それは……さぞや情熱的な部屋なのだろうな」
 熱い吐息を耳許へ落とすよう囁かれ、腕を腰へと回されれば響き合うように彼の言葉の意を感じ取り、竜の戦士は甘やかに応えて囁き返す。夜の波のごとく二人密やかに祝宴を抜け出して。
 ――さあ、私の情熱が彼を焦がすのか、彼が竜を手懐けてみせるのか。
 完璧ですね。
 予知の光景を見事に覆したテナリアが秋薔薇の店主とひそり姿を消す様に胸の裡で称賛を贈りつつ、黑猫は今宵の主賓中の主賓たる役割を澱みなく演じ上げた。最高の栄誉を得た金木犀のコーディアルのレシピが開示されれば感嘆と賛嘆のどよめきが此方は夜の潮騒のごとく広がって、
「金木犀はジャムや紅茶などの他、香料などにも使われますが……やはり、咲いている花からの香りが一番でしょうか」
「それは、夜だと?」
「――勿論、格別に」
 その身に夜を湛えたような黑猫が微笑みで語れば、星をねだる姫君の逸話も相俟って、彼の甘露を味わった招待客達がみな遥か東方の星空のもと馥郁と満ちる星の花の香りの幻想に酔う。
 甘やかな黄昏を思わせる橙色の花、星と謳われた花の彩を蕩かす甘露の芳香を炭酸水が花開かせるなら、軽やかに煌いて弾ける気泡の音はまさしく星の唄。
 ――酒精を嗜むにはまだ歳が足りないけれど、
 酔うとはこんな感覚なのかな、と星の蜜を花唇に含めばファシルは、蠱惑的なまでに甘く芳醇な金木犀の香りに満たされ、黄昏の彼方、秋の星空へ浮かびあがる心地。なれど、涯てなく何処までもと思えたところで和梨の風味で地上へ引き戻され、だからこそ何度でもこの甘露を求めたくなってしまう。
「そうか、こうやって『執事』は『お嬢様』を虜にしてしまうのだね?」
 己の星の眼差しを流せば大勢に囲まれた黑猫の双眸に燈るのは悪戯な煌き、それでこそ面白いというものさと笑って嫋やかに伸べた手を舞の所作で翻せば、サロンの一角に控えていた弦楽器主体の楽団がファシルの求める旋律を奏ではじめてくれた。
 砂漠を渡る鳥がサロンの中央で魅せるのは、星をねだる姫君の逸話をなぞる舞。
「では、僕もここから仕掛けましょうか」
 散華の舞台を調える策のためばかりではなく、吟遊詩人としての魂が高揚するままに微笑んで、聴いていてくださいね、と焦がし林檎の甘露の作り手に願ってクヴァーシィも、渡り鳥が創り出した舞台へ上がる。眼差し交わして即興で歌い上げるのは翼ある執事が夜空へ羽ばたき星々に手を伸ばす様。
 星の雫が滴るように逸話が結びを迎えれば、星空の光景がクヴァーシィの歌声で妖精の森へと変わる。森の緑と煌きが踊る世界に遊ぶ可憐な妖精、そして吟遊詩人たる魂の芯から想像の翼が羽ばたくまま、森の樹の幹に樹液の煌きが伝う様を歌い上げれば、
「えっ!? どうしてわかったの!? 流石です……!」
「もしかして、彼の歌がいいところを突いていた?」
 その逸話を添えた甘露の作り手から響く驚嘆の声。
 傍らのショウが小声で訊ねれば、自分が甘露に使った蜂蜜は花蜜でなく、蜜蜂が樫の樹液を集めた樹蜜だと彼女が明かす。だがクヴァーシィは甘露の味わいからそれを分析したのではなく、逸話の琥珀から膨らませたイメージの裡で、自覚せぬまま真実の糸を掴み獲ったのだろう。
 凄いな、吟遊詩人というのは。
 密かにファシルが感嘆するうちにクヴァーシィの歌は魔法の琥珀が己という宝石に妖精を閉じ込める結びへと至り、辺りを見渡す渡り鳥の眼差しが『優勝候補の大本命』と言われていたもうひとり、聖堂のカフェの店主を見出した。改めて眼差しを交わしたのは一瞬のこと、クヴァーシィが詩歌を月夜の聖堂へと繋ぎ、楽団の演奏も彼に添えば、ファシルは薄紗を翅のごとく踊らせて、聖堂の店主のもとへ舞い降りる。
 恭しく掬った彼女の手にそっとくちづけを落とし、
「――ね、御姉様。木漏れ日の滴をもう一度、君の手から私に授けておくれ」
「こんな素敵な出逢いがあるなんて……! ええ、よろしくてよ。あでやかに舞う、私の――姉妹」
 甘やかに希えば、驚きに瞠られた相手の双眸にすぐさま歓喜が燈る。
 透きとおる炭酸水が躍る硝子杯に華やかな金色の甘露が落とされて、夜の祝宴に、木洩れ日が煌いた。
 ――楽しい……!
 散華の舞台を調える使命は確と心に縫いとめながら、吟遊詩人たる魂が求めるままに数多の甘露に添えられた数多の逸話を歌い上げれば、クヴァーシィの心は世界を旅して渡るよう。流れる旋律と先程までのファシルに触発されたらしい招待客達が手に手を取れば、サロンの中央には即席の舞踏会が生まれ、ふと吟遊詩人の瞳がシセラへ意味深な眼差しを送れば、
 歌い上げられる詩歌が、革命で処刑が決まった姫君に捧げられる献身の愛を描き出す。
 ――ああ、この上なく美しい流れを創ってもらえた……!
 創り出されたこの流れは偶然の賜物などではなく、ファシルと己の策を汲んだクヴァーシィが紡いで織り上げてくれたもの。送り出してくれる彼の微笑みに気づけば、仲間とともに挑める心強さがシセラの胸にも暖かに燈る。
 進み出る彼女へ寿限無がさりげなく場を譲れば、シセラ、と名を呼んだ淫魔の瞳が嬉しげに輝いた。
「側仕えのご褒美に一曲踊っていただけませんか、姫様」
 夜の庭園で二人静かに踊れたら、侍女冥利に尽きるというもの。
 たとえ拙くとも幕が下りるまで演技を続けてこそ役者、と心に誓いを燈しつつ、傍仕えの侍女をしおらしく演じて願えば、
『ええ、ええ、勿論よ。それなら庭園のとっておきの場所へ、あたくしが連れて行ってあげる……!』
 逸話のごとく二人で一緒に眠って旅立つ、その前の最後の一曲。
 淫魔フルーティアは甘露祭で豊かに膨らませ、クヴァーシィの歌で更に奥行きと広がりを得た浪漫へ溺れるように甘く身を震わせて、毒杯たる甘露を呷ったときのまま、ひとつも迷わずシセラの手を取った。
 真実、最期の一曲となる舞台へ招かれていることは識らぬまま。
 秘密の逢瀬へ向かうような風情で淫魔フルーティアがシセラを祝宴の外へ導く様に気づいたのは、その『お楽しみ』をよく心得た配下達と標的の動向を見逃すことなく追っていた復讐者達、そして、幾許かの招待客のみ。
「あ……!」
 領主への挨拶を失念していたらしい女性が慌てて後を追おうとしたけれど、懐かしい日常を想起させてくれた甘露、それを創り出したひとの手をショウが掴む。散華の舞台を調えるという目的が勿論第一だが、
「……もう、行ってしまわれるんですか?」
 彼女の甘露がくれた懐かしさを恋しく想う気持ちも嘘じゃないから。
 ああ、どうか。
 ――ひとりに、しないで。
 ひときわ真に迫る切なる声音で彼女の耳許に囁けば、その耳朶にストロベリーブロンドよりも鮮やかな朱が差した。
 演技が心苦しくなるなんて、ショウ自身にも思いもよらぬことだったけれど。

 艶やかな夜空から甘やかな月光が降りてくる。
 夜の庭園は月明りのみならず常夜灯にも照らされ、柔い光の繭を夜闇に燈すよう。淫魔フルーティアは隠れ家へ誘う少女のごとくシセラの手を引いて、
『ああ、ああ! 監獄からの逃避行のようね! けれどきっと、追っ手から逃れることはできないのでしょうけど』
「たとえ逃れられずとも、捕えられる前に姫様と一曲踊りきることができたなら……」
 秘めやかに咲く秋薔薇に囲まれた、円形劇場のごとき場所へと導いた。
 祝宴で奏でられる楽の音はもう届かぬ処で、秋の夜独特の、豊かな静寂に抱かれて、あたくしがリードするわと『姫君』が伸べた手を『侍女』が取る。この時代のパリに生を受けはしたけれど、シセラが社交界に縁の無いまま一度死を迎えたのは本当のこと。
 誰かと踊るのは初めて。
 初めて踊る相手が淫魔となるなんて、あの頃には想像すらできなかったけれど。
「……姫様が酔えないのは、何故ですか?」
『いいえ、いいえ? 今はあなたの浪漫とあなたに酔わせてもらっているわ、シセラ』
 一曲、という区切りのために歌を口遊んでくれるフルーティアは淫魔の性質ゆえかリードも巧みで、彼女に導かれるままに踊れば意外にも心が浮き立った。街の人々の心を蕩かせど自分で己自身を蕩かすことは叶わぬ淫魔は今、シセラとの逃避行の浪漫に酔って、蕩けるような笑顔を唯ひとりへ向ける。
 祝宴は舞踏会と化し、雪凪や黑猫に誘導されたとは気づかぬまま、多くの招待客がコーディアル談義に花を咲かせている。復讐者達が抜け出しても盛り上がりの熱が冷めることはない。
 姫君と侍女の舞曲が終わりを迎えれば、幕間を挟むことなく真実の舞台が幕を開ける。
 ――淫魔フルーティアが散華するはずの、真実にして最後の舞台が。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【プラチナチケット】がLV3になった!
【託されし願い】がLV2になった!
【壁歩き】がLV2になった!
【狐変身】LV1が発生!
【罪縛りの鎖】がLV2になった!
【口福の伝道者】LV1が発生!
【勝利の凱歌】がLV4になった!
【強運の加護】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!
【凌駕率アップ】LV1が発生!
【命中アップ】がLV3になった!
【ロストエナジー】がLV4になった!
【ガードアップ】がLV4になった!
【アヴォイド】LV1が発生!

シセラ・カドシュ
この劇はどういう劇だろうね
喜劇か、悲劇か
今の今まで踊っていた相手との殺し合い
情が沸いた訳ではないけれど
忘れ難くはあるね

追手が来ましたよ、姫様
短剣を引き抜いて
鋼糸を張り巡らせ
フルーティアの虚を突いてみようか

そう容易くは無いだろうけれど
失敗しても此処にいるのは
わたしだけではないから

酔っている所に冷や水をかけるようだけれど
わたしは、嘘は吐きませんでしたよ、姫様
死が最初から決まっていて
わたしの薬湯で、踊りで
酔ってくれた

わたしは既に死んだも同然の身で
姫君はこれから死ぬ
姫君も侍女も生きていないのなら
辻褄だけはそれなりだ

後はそれこそ眠るように
【歴世宿痾】
痛みの無いよう殺すのも
わたしは上手いと自負しているよ


織乃・紬
優雅な御楽しみ中に悪いねエ
御伽噺の十二時の鐘何ぞよりも
喧しく終を告げにゃならねエの

談議を抜け出し、庭に合流
庇う/妨害が入り用ならば
《挑発》で意識の的を請け

然して、俺にしたッてさア
酒精によるモノと限らずに
微酔う心地から冷める時は
どうにも寂しくッて仕方ねエ
願わくば、最後まで熱い宵を
俺達と共に過ごして頂ける?

――とか、言えども、
“子連れ”じゃア決まらねエか
だよねエ~~ッ、天使ちゃん?

と云うワケで、天使を傍に
素敵な演奏の御様子だが
他の子の害に成らぬよう
隙突き、絡める蔓で拘束し
手足の行動妨害を担いにと
不要なら差す曙光で刺して

終幕には、胡乱な十字切り
好きな花を教えてくれない?
好い女に此聞くの、好きだから


古城・雪凪
ヒトを惑わし、己の欲に溺れたお姫様
ずっと貴女から目が離せなかった
けれど、俺たちは貴女の魅せる夢から目醒めてしまったのです
……なんてね

戦闘に有用な残留効果は全て活用
共に戦う者達との連携を意識しながら
花葬姫を踊らせ連撃を繰り出し
時に飛翔し、抗う敵に微笑みかけて
その足の自由を奪うようにトラップ生成

嗚呼、処刑の時間だ
誰かにその命を散らされ、晒されるくらいなら
どうか、俺だけの、

柔らかな優しい口調を捨て
焦がれる声に愉悦の笑みを乗せながら
マクスウェルをけしかけ【贄を喰らうモノ】を発動

やはり積み上げたものが花開き
そして散らせる瞬間は極上の瞬間
悲劇こそ、俺を酔わせる最高の甘露
君は最高のヒロインだぜ、フルーティア


四葩・ショウ
溺れるくらいのロマンスを
せめて貴女への、餞に


フルーティア『様』!
ち、違う! 何故……身体が、勝手に……

『愛し姫君を護るべき護衛が術に惑い
細剣を振るう度に姫君を傷付け、苦悶する』
(……なんて、どうかな)

踏み込み、Hydrangea
迷わない、揺るがない
これは、とりもどす為の戦い
なのにレイピアを振るう度に胸は
……まだ、苦しい

それでも
傷が深い人・狙われる人をガードする

終りが近付けば
迷いなく跳びこみ
仲間を庇えたタイミングで膝をつく
けれどまるで
彼女を庇い手折れるかのように
微笑み、手をのばす

ああ、フルーティア『様』
やっと、見てくれた

わたし、を…………
……

(倒れ込む)

……
(うん、大丈夫)
(ちゃんと、支援する)


狗尾・黑猫
ああ、お嬢様、お楽しみのところ失礼します
今宵は零れ落ちそうな満天の星
是非とも今度は、共に星を掴まえに行きませんか

星々の咲く宙は…それはそれは、寒く、冷たく
身を寄せ合わないと、とても耐えきれない
けれど、私は血の通わない悪魔ですゆえ
我が身は氷より冷たくて、嗚呼!お嬢様のその身を抱き締めることは叶いません…!

冷気を支配し、吹雪を起こし
酔いを醒ましに冷まし、眠るように美しく凍らせて差し上げましょう
私の『ご主人様』はただひとり
星を求める?そんな待つばかり求めるばかりの姫君ではない
掴みたくなる星そのもの
ですから…、私のナイフも貴女様には勿体無い

星と共にお眠りください
きっと永遠に、星の夢が見れるでしょう


眩暈咲・クヴァーシィ
毒蜜組曲の旋律に
妖精と琥珀の逸話を元にした物語を重ね乗せて歌い、一撃
甘露の蜜を毒蜜として歌うのは、脚色として御許しを

魔法の琥珀が変じた蜜は、愛した妖精すら蝕むのか
毒であっても、閉じ込められたとしても、琥珀と共にと妖精も願っていたのか
そもそも、蕩かされて、溺れて、濁り眩む中で生まれた想いが
真実己の願いだと、言えるのか

――屹度、酔いの只中では、言ってしまうから
貴女がこの街をそうしてきたように
物語の妖精が閉じ込められたように

折角言ってくれた想いが揺らいでしまわぬよう、心変わりしないうちに、醒めない永遠の眠りを

……最期に、この物語、お気に召しました?
お借りした逸話が更に育つよう
領主様の御墨付を頂きたく


テナリア・アタールカ
ふう…秋薔薇の主人と思った以上に盛り上がってしまった。皆の前に出る前にずれた服を正して、躰も綺麗に拭いておかないとな。

舞台ではどうやら淫魔が他のディアボロス達と幾つものロマンスを織りなしているようだ…ふふ、私も混ぜて貰おうか。気を取られているところ、するりと腰を抱き寄せ。

『待たせてしまってすまない、貴女のアモールだぞ。淡い少女の遊戯はここまでだ…振り落とされないよう、しっかり掴まっていろ、な?』と、熱い略奪愛を演じながら、彼女抱いて【飛翔】し。くるりと空中で身を翻して意識揺さぶりながら、急降下しては押し倒して。『まだまだ夜は続くぞ?ついてこられるか?』と地面に叩きつけられた彼女に尋ねようか。


青島・寿限無
交戦開始と同時に、戦場となったエリアへ。

【地形の利用】を念頭に
標的の死角となる箇所から狙撃を。
この時、極力仲間の『浪漫』に纏わる演出の
妨げとならぬよう留意したい。

【トラップ生成】を活かし
可能であれば庭園の石畳に
標的のヒールが挟まるよう細工しておきたい。
一時的にでも動きを制限できれば幸いだ。

…随分な愛でられ様だな。
俺のような暗殺者ですらも狙いが鈍る程に。
リボルバーの一撃で仕留められる筈もないのを逆手にとって
魅了された冷血な刺客を演じよう。

銃を手にしていない
左手の指先で、コーディアルの入ったグラスを弾き
パラドクスを発動させ、仲間の攻撃力向上を支援。
音を制するのは俺も得意でね。
勝負だ、マドモアゼル。


ファシル・ダラール
艶やかで甘美な夢の蜜
私にも味見させておくれ
君の、最期に

ご機嫌ようフルーティア様
君を手にしようと企てる者ならば
星に花に蝶にと、美しい物に喩えるのだろうけれど
そのどれもが違うと思ってしまうんだ
『この君以上に酔わせられるモノなんて無い』んだから

交わる剣、紡がれる唄
数多の音が奏でる旋律に乗って
舞うように羽ばたき渡る旋律の上
どうぞ、私とワルツを

指の隙間を擦り抜ける砂と同じ
決して一つ処に留めて置けないからこその
欲する気持ちも強くなるんだろうね
細い手首を、撓やかな脚を攫うよう
突き、蹴り、払い上げる一撃

崩れ落ちる躰が地につく前に
掬い抱き止めよう
もう一曲、付き合ってくれるだろう?
願わくば、その息の根が絶えるまで


●ロマンティックコーディアル――終幕
 唯、一曲。
 僅か数分の間に艶めかしい夜風が冴えを帯び、庭園に咲く秋薔薇の香りが深みを増したのは気のせいではないのだろう。
 変わりゆくのは世界ではなくシセラ・カドシュ(Hiraeth・g01516)のほう。幕が下りるまで演技を続けてこそ役者と心に燈した誓いのまま、『侍女』として捧げる献身の愛の裡で、本来の己の感覚が研ぎ澄まされてゆく。
 秋薔薇のみを観客に踊る侍女と姫君の舞曲が終われば、淫魔を散華させる真なる舞台の幕が上がる。今の今まで踊っていた相手との殺し合い。決して情が湧いたわけではないけれど、たとえそれが喜劇であれ、悲劇であれ。
 ――きっと、忘れがたい劇になるのだろうね。
 踊り終われば刹那とも永遠とも思えるひととき見つめ合い、最後の瞬間まで大切に扱った『姫君』の手を離せば、
「追手が来ましたよ、姫様」
『ああ、ああ、もう来――』
 夜風に奔らす朱の煌きは瞬時にシセラが張りめぐらす鋼糸、朱を操り流れるような所作で二振りの短剣を抜き放ったなら、淫魔フルーティアに、来てしまったの、と言わせる間もなくその胸の下に刃が埋まった。
 短剣の主自身が思わず眼を瞠るほど鮮やかに決まったのは、既に世界へと燈されていた命中精度を高める祝福と、シセラが生前磨きあげた殺人技巧に裏打ちされた暗殺技能、そして何より、相手が献身の愛と逃避行の浪漫に酔いしれていたがゆえ。
 だが当然、
『シセラ、あなた――! ああ、ああ、『そういうこと』だったの……!!』
 強大な淫魔たるフルーティアが一撃で屠られるはずもないことは承知の上だ。虚空を掴み獲ったと見えた刹那、彼女の手に現れたのは白銀のフルート、唇が歌口に寄せられ指がキーに踊れば途端に甘き毒を孕む旋律が夜風を翔けた、そのとき。
「御無事ですか、フルーティア『様』!!」
 毒の組曲を斬り裂くような一声とともに、冴ゆる煌きが跳び込んできた。
 四葩・ショウ(Leaden heart・g00878)が切迫した演技と声音で紡ぐ言の葉はさながら『愛しき姫君』の危機を察した護衛、なれどその手の硝子のレイピアは『愛しき姫君』たるフルーティアめがけて奔り、
「ち、違う! 何故……身体が、勝手に……!!」
「これはこれは。さて、俺達が何らかの術で惑わされたのか、はたまた貴女の魅せる夢から目醒めてしまったのか」
 ――姫君を護るべき護衛が術に惑い、細剣を振るう度に姫君を傷付け、苦悶する。
 彼女への餞にとショウが贈る浪漫を汲めば、ヒトを惑わし、己の欲に溺れたお姫様、と古城・雪凪(繰創者・g01119)は甘く歌うかのごとく呼びかけて、
「ずっと貴女から目が離せなかった……けれど、いずれにせよ、俺の本性は目醒めてしまったのです。こんな風にね」
 甘さを瞬時に塗り替えたのは双眸に宿る獲物を捉えた獣の輝き、ヒトを惑わす美貌はこちらも同じとばかりに笑んだ妖狐が一気に飛翔すれば傍らに突如現れたのは艶やかな闇、夜色の衣装を翻す姫君の人形が刃の煌きと黒き花弁を踊らせ夜風と舞うよう淫魔へ襲いかかり、石畳の地には彼女の足を捕えんとする荊の罠が奔る。
 雪凪が必殺を狙うパラドクスは彼が最も不得手とする能力で仕掛ける技、それゆえに命中精度を高める加護と優れた技能があれども強大な敵を完璧に捉えきるのは容易くない。なればこそ、妖狐はあらゆる手を尽くして彼女を追う。
『ああ、ああ、どちらも楽しそうね。だって血であれ浪漫であれ、一緒に酔って溺れてくれるのでしょう?』
 反射的に跳び退る所作さえ舞のごとき相手が奏でるのは高揚舞曲、甘やかに滑らかに踊る旋律が音の弾丸に変じ、反撃をも許さぬ勢いでショウや雪凪へ襲いかかったが、
「ご機嫌ようフルーティア様。君を手にしようと企てる者ならば、星に花に蝶にと、美しい物に喩えるのだろうけれど――」
 術の対象となった三者のうちファシル・ダラール(渡鳥・g02150)のみが反撃の機を掴んだのは、高揚舞曲が放たれる直前に跳び込んできたというタイミングゆえか、雪凪の荊の罠が僅かに淫魔の挙動を乱したがゆえか、あるいは、ファシル自身も舞踏の心得を備えているがゆえか。
「――そのどれもが違うと思ってしまうんだ。『この君以上に酔わせられるモノなんて無い』んだから」
『ああ、ああ、それならあなたもあたくしに酔ってくれる? あたくしを酔わせてくれるかしら?』
「勿論だとも」
 月虹を映す翅めいて翻る極彩色の薄絹で音の弾丸の威を殺して、薄絹とも淫魔とも舞うように繰り出す突きと蹴り。事前に時先案内人から齎された情報どおりダンスの技能は相手が一枚上手、なればここは、彼女の胸を借りる心地で。
 渡り鳥と淫魔が夜の庭園に舞う。
 ――あァ、こっちもやっぱり舞台のひとときってエわけだ。
 午前零時の鐘の音とともに魔法が解けるサンドリヨン、世に名高い御伽噺がこの改竄世界史でどのように語られているかは知らねども、織乃・紬(翌る紐・g01055)もいずれは件の鐘の音のごとく終わりが告げられる舞台に臨む。
 酒精であれ浪漫であれ、微酔い心地から醒める時の寂しさは時空を超えたここでも変わらないから、
「願わくば、最後まで熱い宵を俺達と過ごして頂ける? ――とは言え、こっちは『子連れ』なんだけどもねエ!?」
『ああ、ああ、いいわね、そういう背徳感も大好きよ……!』
 陽気に戯けた声音で「なァ天使ちゃん」と続けて呼ばえば舞い降りるは朝顔の花を託したオラトリオ、如何にも淫魔らしい相手の物言いに挑発ならあちらが上かと紬が苦笑した刹那、彼我の力で時空が歪む。
 迸ったのはどちらが攻撃でどちらが反撃であったのか、交錯するのは緩急自在に翔ける甘き毒の旋律と秋の夜に朝顔の花を咲かせる緑の蔓葉、魂を蝕む毒の甘さに紬が口の端を擡げたのと朝顔の花蔓がフルーティアの四肢を縛めたのはほぼ同時、だが次の瞬間、秋の夜が冬の夜に塗り変わった。
 現状で低下させられる気温は二十度、夜の深みにそれだけ冷気を招けば氷点下にも届こうか。
「今宵は零れ落ちそうな満天の星、是非とも今度は、共に星を掴まえに行きませんか」
 仲間の残した力で冷気を支配した狗尾・黑猫(シルバーナイフ・g00645)が見せるのも冷たく冴えた笑み、夜の庭園に満ちた寒さを星々の咲く宙の冷気になぞらえ、身を寄せ合わねば耐えきれないと説くけれど、
「けれど、私は血の通わない悪魔ですゆえ、嗚呼! お嬢様のその身を抱き締めることは叶いません……!!」
『ああ、ああ、意地悪なひとね、黑猫……!!』
 悪魔の翼を広げて解き放つのは凍てつく吹雪。月光と常夜灯のあかりで星々のごとく煌く雪嵐が淫魔を抱擁するが、それも紬の朝顔が彼女を縛めていたがゆえ、雪花を纏いながらも朝顔から逃れれば、余裕の笑みを覗かす唇に寄せられた銀笛からは澱みない反撃の音色が迸る。概して淫魔は戦闘力の低い種族だという話だが、
 ――街ひとつを意のままにできるアヴァタール級ともなれば、やはり別格か。
 瞬時に分析すれば青島・寿限無(Gatekeeper・g01828)の口許に刻まれるのも愉しげな笑み、秋薔薇の陰から楽曲の最高潮を狙ったリボルバーの一撃は淫魔ではなくその足元の石畳を穿ったが、
「美しい音色だな。俺のような暗殺者ですらも狙いが鈍るほどに」
『まあ、まあ! あなたみたいな刺客なら大歓迎よ』
 時空の理を超えぬそれが無効化されることさえ浪漫を彩る演出に変え、冷血な刺客が彼女に魅了される様を演じた寿限無も今夜の舞台に足を踏み入れれば、途端に石畳に奔る幾何学模様は標的の靴の踵を捕えんとする罅の罠。
 罅が奔る音色を伴奏に奏でるのは深紅の煌き揺れるコーディアルの硝子杯、指先で弾けばグラスハープめいた音色が響き、
「音を制するのは俺も得意でね。勝負だ、マドモアゼル」
『ええ、ええ、とても素敵ね、望むところよ……!』
 豊かなバリトンヴォイスを重ねれば瞬時に彼が支配した音の波が淫魔へ礫のごとく襲いかかる。彼のパラドクスもまた己の最も不得手な能力で仕掛ける技なれど、命中精度を高める加護に背を押された硝子の音色が彼女の銀笛の音色と拮抗すれば、皆の攻撃の威を強める加護が更なる高みへ昇り、
 ――甘露の蜜を毒蜜の旋律で歌うのは、脚色として御許しを。
 反撃に響き渡る毒蜜組曲の旋律をレジェンダリースマイトの歌でなぞった眩暈咲・クヴァーシィ(君の分だよ・g00101)が、華麗に一閃したソードハープが淫魔の肌に新たな朱を奔らせた。
 この時代には希少なものとも思える、秋にも花咲くロサ・ダマスケナ。階段状の滝のごとく咲き溢れる秋薔薇達にぐるりと囲まれた円形劇場のごときその地で吟遊詩人が歌い上げたのは、ひときわ豊かに花開かせた妖精と琥珀の物語。
 流麗な剣閃は魔法の琥珀が変じた蜜の波濤めいて浴びせられ、彼女を閉じ込められる妖精の心地にさせただろうか。たとえそれが己を蝕む蜜であっても、琥珀とともにと妖精も願っただろうか。
 ――きっと願ったのだろう。
 ――甘く蕩かされ、酔いに溺れて濁り眩むまま、己の真実の心を歪められて。
「……貴女がこの街を、そうしてきたように」
『ああ、ああ、クヴァーシィ。あなたも『そういうこと』なのね』
 己が身を斬り裂いた刃よりも少年の言の葉が真実を突く鋭さを味わうように笑み、彼の頬を一撫でして間合いを取った淫魔フルーティアは白銀のフルートを閃かせた。
『いいわ。みんなみんな、あたくしが相手をしてあげる――!!』

 この淫魔フルーティアの演奏で最も魅惑的なのは意外にも低音域だった。
 深く豊かな低音の旋律が下肢や腰に直接力を響かせ、甘やかな高音が快感や毒を一気に爆ぜるよう花開かせる。同じ勢いで連射される音の弾丸を掻い潜るようショウが馳せ、石畳には淫魔めがけて荊の罠が奔り罅の罠が咲く。【トラップ生成】で創り出す罠がクロノヴェーダ相手に強力な効果を発揮することはないが、
「好機を掴むきっかけにでもなれば幸い、ってな」
「そんなところだね。過信せず、力のひとつとして使いこなしてみせようか」
 強敵の集中を乱すには十分だ。純粋な銃撃を己がパラドクスに織り交ぜつつ寿限無が幾何学模様の罅が幾重にも咲く一角へ淫魔を追い込み、空中を飛翔する己と夜風に舞う操り人形、そして石畳を奔る荊の罠とで雪凪が三次元的に標的を翻弄すれば、
『……っ!!』
「っしゃ! 一気に絡めとりに行こうぜ、天使ちゃん!!」
 彼女の意識も足取りも乱れた刹那の機を掴んだ紬とオラトリオが奔らす朝顔の蔓葉が、反撃をも封じる勢いで淫魔の四肢を縛める。白い手首に足首に、そして首元に枷のごとく咲く青に紫を飾る朝顔の花、然れど標的を拘束するべく彼が編み出した術もまた仲間に好機を齎すためのもの。皆の支援をと思えど自陣で最も強力な技が己のHydrangeaだと察したなら、迷うことなくショウが石畳を蹴った。
 取り戻すための戦いに身を投じる決意は揺るぎなく、なれど命を奪うために細剣を揮う苦しさは今も胸を刺すから、
「フルーティア『様』……!!」
『ああ、ああ、あなたの苦しみがあたくしを酔わせてくれるわ……!!』
 その苦渋を『愛しき姫君に剣を揮ってしまう護衛』の演技に重ね、一瞬の踏み込みとともに硝子のレイピアで相手の腹部を貫けば、反撃を奏でるはずの吐息が陶然たる言の葉を紡ぎ、硝子の刃を伝う血潮がショウの力の余韻で、朝顔と似た彩に咲く紫陽花の花々に変わる。
 然れど、淫魔フルーティアからいまだ笑みが消えぬのは、彼女が浪漫のみならず戦いをも楽しむ余裕があるからか。
 ――ああ、ストロベリーブロンドの彼女も。
 天鵞絨の波のごとく寄せる音色が甘き毒を咲かせる様を己と仲間で燈した護りの祝福で抑えて、クヴァーシィは毒蜜組曲の旋律を自身の歌声で塗り替えていく。妖精と琥珀の逸話を生み出したあの女性も淫魔に心を蕩かされたままその寵愛を望むのだろうけど、それとて彼女の真実の願いであるはずもないから、
「魔法の琥珀はいずれ再び蕩けていく……と詠いましょうか。妖精と琥珀が本当に愛を育めるようになった、そのときに」
『ええ、ええ、宝石に閉じ込める永遠を得るのも、失うのも浪漫だもの……!』
 物語に花開かせる未来にこの街が解放される様を重ねた反撃を見舞えば、そうとは気づかずお墨付きを与えるように淫魔が微笑み返し、吟遊詩人の剣の軌跡に鮮紅を踊らせた。
 既に復讐者達は世界に祝福され、数多の加護が燈るが、淫魔は渦巻く瘴気に命を削られながら、時にこちらの反撃も次撃も封じる苛烈な強撃を叩き込んでくる。
 戦況は決して悪くはないが、決着はまだ先のようだな――と直感的に見定めて、夜空で竜翼を広げたテナリア・アタールカ(直情の女竜戦士・g02261)は一気に今夜の真なる舞台へ急降下した。
 復讐者ならざる者をも空中散歩にいざなえる【浮遊】とは異なり、【飛翔】では他者を思うがまま空の高みへ連れ去るのは困難だ。まして相手が強大にして戦闘態勢にあるクロノヴェーダであるならなおのこと。
 竜翼翔破ではテナリアが思い描く展開は叶わず、強引に叶えるならば独自のパラドクスを編みだす必要がある。
 然れど、急襲されたフルーティアは、
「待たせてしまってすまない、貴女のアモールだぞ」
『ああっ……!』
 腰を浚われた刹那に、星空へと攫われる浪漫をその胸中に咲かせただろうか。
 押し倒された瞬間に、情熱的に愛される予感を背筋へ翔け昇らせただろうか。
「まだまだ夜は続くぞ、ついてこられるか?」
『ええ、ええ……!』
 強かに石畳へ叩きつけた獲物へ獰猛な笑みでテナリアが問えば、淫魔の瞳が恍惚たる光を蕩かし、
『勿論これで終わらせはしないわ、『さっきまで』よりも熱い、狂えるほどの快感で酔わせてあげる……!』
「――!!」
 ひときわ愉しげに煌いた。
 秋薔薇の店主との情熱的なひととき、その痕跡はすべて拭い衣装の乱れも確と整えてきたテナリアだったが、眼前の相手は百戦錬磨の淫魔。竜の戦士が如何なるひとときを過ごしてきたのか一目で見抜いたらしいフルーティアはすぐさま淫蕩夜曲で反撃に転じ、息つく間もなく攻撃へと繋ぐ。
 如何なるパラドクスであれ、反撃で揮う際の対象は攻撃者ただひとり。
 だが続け様に奏でられた『攻撃』の淫蕩夜曲はテナリアのみならず他の復讐者達をも呑み込み、身の芯から突き上げ脳髄を掻き混ぜるがごとき壮絶な快感で貫いた。
「っと! こいつは若い子にゃあちょ~っと厳しいかもしんねエなァ!!」
「そうみたいですね、ありがとうございます!」
 なれど咄嗟に紬がクヴァーシィの盾となり、強烈な光で理性を明滅させるような快感を、雪凪は破壊の愉悦へすり替える。竜翼翔破が燈した反撃強化の加護を得た妖狐はそれまでの柔らかな物言いを振り捨てて、
「嗚呼、処刑の時間だ。誰かにその命を散らされ、晒されるくらいなら、どうか、俺だけの――!!」
 焦がれるように掠れる声音に更なる愉悦の笑みを重ね、一気に解き放つのは妖しく揺れる焔を裡に秘め、悪魔の翼を広げる魔導機械。涯てなき飢えに苛まれるそれが獲物の白き喉へ貪欲に喰らいつけば、
『ああっ! …………っ!!』
 初めてフルーティアの顔色が変わった。
 浪漫の夜が悲劇の夜に転じる瞬間、積み上げたものが花開き、そして己が手に握り潰され一気に散る極上の瞬間を掴めば、夜空に雪凪の快哉が響き渡る。
「悲劇こそ俺を酔わせる最高の甘露、君は最高のヒロインだぜ、フルーティア!!」
 秋薔薇の香りよりも淫魔の血の匂いが刻一刻と強くなっていく。
 だが、喉を喰い破られ半身を血に染めながらも銀笛で奏でる旋律に燈る力の確かさは流石というべきか。楽曲に秘められた毒の甘さを鈍らせる心地で改めて冷気を支配し、黑猫は密やかな笑みとともに淫魔を吹雪で呑み込んだ。透徹な煌きが無数に乱舞する様は凍てる星空を庭園に招いたかのよう。
 彼の『ご主人様』は唯ひとり。
 誰かに星を贈られるのを待つばかりの姫君ではなく、彼女こそが掴みたくなる星そのものだから。
「私のナイフも貴女様には勿体無い。星と共にお眠りください、きっと永遠に、星の夢が見れるでしょう」
『いいえ、いいえ。美しい夢だけれど、別の誰かを胸に住まわせる男が齎す夢なら浪漫じゃないもの……!』
 美しく凍てる眠りへいざなわんとする黑猫の吹雪を斬り裂く舞とともに淫魔が奏でる攻撃の旋律は高揚舞曲。音色が変じた弾丸も嵐のごとく無数に爆ぜて荒ぶが、己が身に弾丸を受けつつ黑猫と淫魔の間にショウが跳び込み、彼の分まで弾丸を引き受けながら、あたかも吹雪から淫魔を護ったかのごとく膝をつく。
『まあ、まあ、あなた……!』
「ああ、フルーティア『様』……。やっと、『おれ』を、見てくれた…………」
 今にも消え入りそうな微笑みで弱々しく手を伸ばせば相手も思わずショウの手を取るけれど、頽れてみせるまでもなく十分浪漫を贈れたと見れば反撃の機は逃さずに、逆の手で硝子のレイピアを揮った。
『ああ、ああ、そうよね、『そういうこと』だものね……!!』
「君の『そういうこと』がどういうことかは識らないけれど、もう一曲、付き合ってくれるだろう?」
『!!』
 触れ合った手も胸を貫いた硝子の剣も振り払う心地で後方へ跳んだフルーティアを抱きとめるよう捕え、紅き花唇で囁いたファシルは彼女の撓やかな脚を蹴撃で浚う。相手の足が宙に舞った瞬間その背を掬い、薄絹の紗で己も淫魔も包み込むように舞って。それは刹那の円舞曲、願わくば、その息の根が絶えるまで――と思えども、反撃にとどめを阻まれれば次の踊り手に託すよう彼女の手を離した。
 指の合間を擦り抜ける砂と同じ。
 決して一つ処に留めて置けないからこそ、欲する気持ちも強くなる。
 舞踏のひとときを惜しむよう細めたファシルの双眸が映したのは、背後を振り返ったフルーティアと、音も無くその眼前へ迫っていたシセラの姿。
『ああ、ああ、シセラ――……!!』
「……わたしは、嘘は吐きませんでしたよ、姫様。死が最初から決まっていて、わたしの薬湯で、踊りで、酔ってくれた」
 初撃では僅かに逸れていた短剣が、此度は間違いなく心の臓に突き立った。久遠の時のなかで数多の人の血に濡れた短剣も淫魔の血に濡れたのは今夜が初めてだろうけど、痛みを与えはしなかったはずと確信しつつシセラは頽れる彼女の身を抱きとめ、石畳に横たえる。
 己は既に死んだも同然の身で、姫君はこれから死ぬ。
「姫君も侍女も生きていないのなら、辻褄だけはそれなりだ」
『そう、そう。ああそれなら、間違いない終わりなのね……』
 彼女がリターナーたるシセラの在りようをどう捉えたのかは判らなかったが、冷や水を浴びせたかに思えてその実いっそう相手を酔わせたのか、それとも流れる血と尽きる命に意識が朦朧としてきたがゆえか、熱に浮かされるよう言の葉を紡ぐ唇が笑みを燈す。
 彼女が幾度か口走った『そういうこと』とは如何なることだったのだろう。
 過去の歴史に現れたディアボロスの命脈がこの時まで続いていたものと解釈したのか、あるいは――。脳裏をよぎるものはあれど、訊ねても真実が返るとは限らないと思えば、覚束ぬ手つきで十字を切りつつ紬はあえて別の問いを口にする。
「好きな花を教えてくれない? 好い女にこれ訊くの、好きだから」
『ふふ、ふふ。あたくしだけを見てくれない男には教えてあげない。ああ、でも――』
 ――あなたの『天使ちゃん』のその花を、今夜好きになったかもしれないわ。
 掛けられた言葉が予想外のものだったからだろう、淫魔フルーティアは紬とその傍のオラトリオを飾る朝顔の花に無邪気な笑みで告げ、そのまま、事切れた。
 いい? と訊けば『天使ちゃん』が頷いたから、やるよと笑って男は朝顔の花ひとひらを彼女のこめかみへと飾って、その目蓋を閉じてやる。真なる舞台の幕が下りれば態々歩いて庭園から離れることもないと皆が思ったのだろう、世界に燈された祝福のまま飛翔し、彼らディアボロスは夜の闇に消えた。
 秋薔薇の花々と朝顔の花をさらりと撫でる夜風が、紬が最後に落とした言の葉の余韻を浚う。
 ――花に想ふは、左様ならばかり。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【モブオーラ】LV1が発生!
【植物活性】LV1が発生!
【断末魔動画】LV1が発生!
【託されし願い】がLV3になった!
【使い魔使役】LV1が発生!
【勝利の凱歌】がLV5になった!
【飛翔】がLV2になった!
【プラチナチケット】がLV4になった!
【壁歩き】がLV3になった!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV6になった!
【ドレイン】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV8になった!
【能力値アップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【命中アップ】がLV4になった!

最終結果:成功

完成日2021年10月02日

オーストリアの淫魔の街

 芸術を悪用しオーストリアの街を惑わして支配している淫魔が確認されました。
 淫魔は、街の人々を音楽で洗脳し、悪徳と退廃の街にし、エネルギーを吸い上げているようです。
 街を支配する淫魔を撃退し、人々を正気に戻してあげてください。
 街を退廃させた淫魔は、音楽や芸術で人々を争わせ、その上位者を城に招いて、自らの配下に加えようとしています。
 この習性、利用する事が出来れば、街を支配する淫魔を暗殺して街を解放することが出来るでしょう。

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#断頭革命グランダルメ
🔒
#オーストリアの淫魔の街
🔒
#1802年


30




選択肢『クロノヴェーダとの対話』のルール

 事件の首魁であるアヴァタール級クロノヴェーダ(👿)と会話を行います(状況によっては、トループス級(👾)との会話も可能です)。
 戦闘を行わず会話に専念する事になりますが、必要な情報が得られるなど、後の行動が有利になる場合があります。
 問答無用で戦闘を行う場合は、この選択肢を無視しても問題ありません。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『👿または👾で出現する敵との会話に専念する。戦闘行動は行わない。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢『コンテストへの参加』のルール

 街などで開かれる様々なコンテストに、一般人のふりをして参加します。
 コンテストに参加して、目的の順位を取ったり、参加者と接触する事で、敵クロノヴェーダの拠点に招かれたり、或いは、表彰の場で接触する事ができるようになります。
 コンテストの内容や、コンテストに参加する目的については、オープニングやリプレイの内容を確認してください。

 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【🔑】この選択肢の🔵が👑に達しない限り、マスターは👿のリプレイを執筆できない。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢『街に潜入して情報を得る』のルール

 街に潜入して必要な情報を得ます。
 情報は必ずしも必要ではありませんが、情報がある事で、後の行動の成功率が大きく上昇する場合があります。
 潜入する街の情報や、必要とする情報の種類、情報を得る為のヒントなどは、オープニング及びリプレイを参照してください。

 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 なお、この選択肢には、特殊ルールはありません。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👿アヴァタール級との決戦『フルーティア』のルール

 事件の首魁である、アヴァタール級クロノヴェーダ(👿)と戦います。
 👿を撃破する事で、この事件を成功で完結させ、クロノヴェーダの作戦を阻止する事が可能です。
 敵指揮官を撃破した時点で、撃破していないクロノヴェーダは撤退してしまいます。
 また、救出対象などが設定されている場合も、シナリオ成功時までに救出している必要があるので、注意が必要です。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「1体」出現します。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、敵を倒し、シナリオは成功で完結する。ただし、この選択肢の🔴が🔵より先に👑に達すると、シナリオは失敗で完結する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※このボスの宿敵主は「シメオン・グランツ」です。
※クロノヴェーダには、同じ外見を持つ複数の個体が存在しますが、それぞれ別々のクロノヴェーダで、他の個体の記憶などは持っておらず、個体ごとに性格なども異なっています。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。