リプレイ
夕暮れの風に乗って鳥辺野から河原まで降りてきたのか、そこには死臭が漂っていた。
傾いた陽があかあかと西の空を染めていて、逢魔が時が近いことを知らせている。風葬地にほど近い鴨川はこの世の都とあの世の鳥辺野を隔てるゆえに、三途の川に見立てられることも多い。
近しい人との今生の別れを告げ、涙に暮れつつ帰り道をたどっていた葬列をまるごと血祭りにあげたとか。
または、一人息子の亡骸を泣く泣く安置してきた老夫婦を細切れにして、五条の橋のたもとへ戯れに捨て置いたとか。
あるいは、余命いくばくもなく自ら鳥辺野へ死地を求めにきた病人を橋の上で撫で斬ったとか。
元々は神刀であったとか、いくつもの呪いや怨恨を斬った刀であるとか。それにも関わらず今となっては血に酔い人肉を断つのを喜ぶまでに堕落したとか。事の真偽など誰にもわからない。ただひとつ分かっているのは、何の罪咎もないものを見境なく容赦なく、斬って愉しむ妖刀がそこにいるという事実だけ。
ただ許しがたかった。
そんな道理が通ってもよいのかと己に問うた。
刀や薙刀の才がないことはわかりきっていたから、かの陰陽師は唯一の得意と言える学問で人の役に立つという原点へここに至って立ち返る。体格に恵まれておらずたとえ件の妖刀に膂力では及ばぬとしても、陰陽の知識と術で一矢報いるなりすれば、きっと。
誰かにその行為を称賛してもらいたかったわけでも、名を上げるつもりでも毛頭なかった。
ただただ純粋に、決してこんな非道が許されるはずがないと信じた、それだけの事だったのだ。
緋影・夕姫
蛮勇も勇気であることに変わらないわ。いつか、勇猛に変わるかもしれない。そうなれるように助力したい。この戦いに混ぜて貰いましょう。
一刻も早く、あの妖刀を止めたいけれど、護衛の河童が邪魔ね。あの煩い河童の口を閉じてもらいましょう。
戦う前に陰陽師さんに一声だけかけておきたい。
「陰陽師さん、まだ戦えるよね?後ろ任せたわ。だから前は任せて!」
敵を倒すことだけが目的じゃないから、敵の攻撃が陰陽師さんに行かないように、正面から行くわ。敵に肉薄ができたらそのまま斬りかかるわ、
「悪いけれど、黙って……」
青紅葉の狩衣と袴へ血の染みが広がっているのが見える。けたたましい河童の笑い声も聞こえた。
勢いにあかせて若い陰陽師と河童の間へ割り込み、緋影・夕姫(蒼炎妖刀ノ少女・g00571)はそのまま斬りかかる。突然疾風がごとく現れた少女、しかもあおく鈍く輝く刀身を掲げた姿に陰陽師――佐藤・柾也は唖然としていた。
群がり寄っていた河童が、刃先を避けて散らばる。しかし相手が女と見るやけたけたと哄笑が戻ってきた。一分の油断もなく刀を正眼に構え、すべての河童とその後方に位置する縁斬りを視界にいれ対峙したまま、夕姫は鴨川の河原を土手へ後退する。
「き、君は、何者――」
「陰陽師さん、まだ戦えるよね?」
誰何の声は背中で聞き、夕姫はじりじりと河童との距離を取った。敵から全身で庇う立ち位置、かつ一方的で断定的な言い方で、少なくとも彼女が敵ではありえない事を柾也は理解したらしい。
一人という身軽さを活かして夕姫はいったん敵勢から彼を分断し、細かい説得は後続に任せることにする。何も敵を倒すことだけが目的ではない。今はまずクロノヴェーダの攻撃を彼に通さない事のほうが重要と考えた、その結果だった。
「このまま、前は私に任せて。すぐに仲間が加勢に来るわ」
「仲間?」
夢にも思わなかった単語だったのだろう、半信半疑な声が聞こえる。
無理もない。クロノヴェーダに絶望を突きつけられ、すべてを奪われたことがある者なら、多くの場合きっとそう考える。
陰陽師の盾となった身を嘲笑うかのような河童の声に、夕姫は赤い瞳を細めた。
「悪いけれど、……」
そこから最も手近な河童まではただの二歩、されど二歩。
黒百合の呪い火を咲き誇らせて、夕姫は素早く前へ出た。剣士の二歩を侮るものへ手痛い教訓を刻むために。
「黙って」
大成功🔵🔵🔵
効果1【神速反応】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
天破星・巴
【アドリブ・連携歓迎】
【行動】
蜃鬼楼の力で幻術を使い敵からこちらが見えないようにしつつ聞き取り
【心情】
情報がない現状では常に後手に回っている
こちらが先手をとれるようになる情報が欲しい
【質問】
以前に陰陽師の若者に加勢し彼の者の故郷を救うのに助力したのじゃ、人々を救う志ある者に助力するのは当然のことご助力致すのじゃ
有力な陰陽師を探しておるのじゃ
検非違使の蘆屋道満という陰陽寮に正式に属してはいないが有力な者が居ると聞くが彼の者の噂を知らぬかえ?
安倍晴明は噂に事欠かない有力な陰陽師と聞くのじゃが、十二神将などという大層な名が付いた強力な式神を操るというのはほんとかえ?
安倍清明の子も有名なのかえ?
まだまだ正史から分かたれた世界に関しての情報は不足している。得られるものならどんな小さなものでも、できればそれが相手に先手を取れるものならもっと望ましい。天破星・巴(反逆鬼・g01709)はそう考えている。
急ぎ絵巻物のように宙空へ蜃気楼を広げ、河童や縁斬りから陰陽師を隠した。他のディアボロス達の足止めも機能しており、あちこち手傷を負ってはいるがどれも命に関わるほどではない。ゆらゆらと薄絹のように張っている幻影に柾也が忙しく目を瞬かせている。
「以前、別の若い陰陽師に加勢したことがあるのじゃ」
油断なくクロノヴェーダの方向を警戒しつつ、巴は肩越しに柾也を見た。
「かの者の故郷を救うためにな。志ある者に助力するのは当然の事ゆえ」
なかば信じられないものを見る顔をした柾也へやや不器用そうに笑いかけ、巴は本論を切り出す。
「都には幾人か有力な陰陽師がいると聞き及んでおる。そなたも蘆屋道満、ないし安倍晴明と申す者たちの噂を知っておるじゃろう」
「はい。それはもう」
すでに有力な陰陽師の名は複数の筋から挙がっているので、巴はこれまで名の上がっていない陰陽師の可能性のほうへ手をかけた。
「特に安倍晴明は著名らしいの。――やはり、息子も有能なのかえ? 父に薫陶を受けているであろうしな」
「息子……息子ですか?」
柾也は途端に自信なさそうな声音になり、しきりに首を捻っている。
「ご子息についてはよく存じ上げません。たしか元服したばかり……? だったような……?」
史実通りなら天禄二年は晴明が天文博士となり息子達は十七歳と十六歳のはずなので、そこは史実と同様なのかもしれない。残念ながら有力ではなかったという事になるが、それはそれで新しい情報に違いはない。
成功🔵🔵🔴
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!
雫石・紫乃
正義の人を見捨てるわけにはいかないな
それに、この敵はどうにも見過ごせないね
テレジットさんからの情報は受け取れるようにしておく
真面目な人らしいじゃないか
こちらも真面目にしっかり身元を説明しなければ
信じられないかもしれないが、復讐者という者がいること
私たちになら相手を倒せること
けれども、貴方にも助けてほしいことなど
丁寧に伝えるつもりだ
陰陽師には一度物陰に隠れてもらうつもり
彼が攻撃をしても
彼がどこにいるかわからないように
私が囮となって立ち回るつもりだ
貴方の勇気を無謀にしたくはないんだ
協力してはいただけないだろうか
アドリブ、絡み、歓迎です
穂村・夏輝
今回の陰陽師も、妖怪に挑んでくれたからこそ予知に引っかかってくれた……とも考えられれば力がなくても全くの無駄ではないどは思うんだけどね
「俺達も妖怪を倒して回っているんだ。協力して欲しい」
陰陽師の柾也にそう話して協力を頼む
もしこちらに攻撃を仕掛けてくるようなら剣で攻撃を叩き落としながら肉薄して寸止め
「敵の首魁は俺よりも強い。手を組んでくれないか」
協力が取付けられれば、彼の術がどう言ったものか確認する。特に、彼一人が単体て戦う状況になった場合「式神を呼んで闘わせる」「自身の偽物を作って囮にする」等の距離を詰められない為の対策はあるかなどの確認
時間があれば戦闘訓練とかしたかったけど、ぶっつけ本番かな
縁斬りや河童が追撃を仕掛けてくる可能性を念頭に置いたまま、穂村・夏輝(天使喰らいの復讐者・g02109)はやや口早に柾也へ頼み込んだ。
「俺達もこのあたりの妖怪を倒して回っているんだ。協力してほしい」
「まあ、突然の事ですぐには信じられないかもしれないが」
夏輝の後を引き継ぎつつ、雫石・紫乃(咲かせや咲かせ・g03908)は土手の半ばにぽつりと立っていた柳の根元へと柾也を座らせる。石や岩が転がる河原から自力でここまで上がってこられたので、とりあえず脚の筋をやられている心配はないはずだ。
失礼、と言いおいて紫乃はもう役に立っていない狩衣の袖を裂き、傷を負った脚へきつめに巻いていく。
「一人ででも立ち上がった貴方の勇気を無駄にしたくない。どうか私たちと協力していただけないだろうか」
「あの妖刀、敵の首魁もなかなか手強そうだしな」
河童と切り結ぶディアボロスの剣戟の音を背に、夏輝はあらためて柾也と向き直った。
突然現れたうえ初対面の相手の信用を得ようとするなら誠心誠意言葉を尽くすか、逆に徹頭徹尾騙し通すかの二択が定石ではある。そして、このたびディアボロス達が多く選んだのは前者だった。
「ご助力願えるなら願ってもない。見ず知らずにも関わらず危ないところを助けていただき、心から感謝している」
柾也の口調に嘘はない。しかし、己が無力を心底痛感したようで表情は暗かった。
「だが、自分の力量も正しくわきまえず迷惑をかけてしまった。そなた達に助けられなかったら今頃どうなっていたか」
「結果的にはそうだったかもしれないが」
紫乃は傷を縛り上げた布を結びあわせてから柾也の顔を見る。
「貴方は間違いなく正義を通したのだし、それをやり遂げるには勇気がいる。誰にでもできる事ではない」
「まあ、時間があれば戦闘訓練とかできたかも知れないけどな」
やや冗談めかして言いつつ、夏輝は河原から飛んできた小石を片手で払いのけた。柾也の目から見れば、河原でのディアボロスとクロノヴェーダの攻防は驚くばかりのものだろう。
「私たちはディアボロス――『復讐者』と呼ばれている。信じられないかもしれないが私たちの敵はあの妖怪変化のような者たち。貴方にもそれを手伝ってほしいんだ」
「いや、それは……」
この状況では足手まといになるのでは。どう見ても足元にも及ばない無力な自分に、一体これ以上何ができようか。そう言わんばかりの柾也に、夏輝が先回りした。
「どのみち乗りかかった船だし、袖触れ合うも多生の縁って言うじゃないか。あの妖刀が手強い相手な事には変わりないし、戦える奴はいくらいたって困らない。手を組んでくれないか」
夏輝の柔和な笑顔に、しかし確固とした口調にようやく柾也は腹を括ったようだった。
「よし、そうと決まれば話は早い。キミ、何ができる? 式神を召喚して戦わせるとか、自分の偽物を作って囮にするとか」
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【一刀両断】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【ドレイン】LV1が発生!
樫谷・都黒
肉体変異は行わず人の姿のままで陰陽師と会話する
御無事でしょうか?
お一人で妖怪退治に向かわれたと噂を聞きましてご助力に参りました。
相手は妖怪ですし、さらにいうなら人に仇為す存在であれば、正々堂々真正面から退治する必要もないでしょう?
見た所、獣ではなく蛙ですけどね。
自身の武装(刀か聖剣)、またはパラドクスにて呼ばれる武具を陰陽師に貸す
敵を挑発し、陰陽師への意識を逸らす
陰陽師を平穏結界に隠し、不意討ちできるようにする
噂話で気になったのですが、
都の内外で妖怪の恐ろしさは違うそうですが、都内の方は良く知らない物で、違う所があれば教えてもらえませんか?
只の興味本位ですけれど。
土手の高い所から、柳の根元に座り込んでいる柾也のもとへ樫谷・都黒(臥し者は独り路に・g00233)はすべるように駆け下りていく。
「御無事ですか? 妖怪退治に向かわれたと噂を聞き、ご助力に参りました」
すでに何人かのディアボロスを目にしていたこともあり柾也は素直に、ありがたい、と頭を下げる。
「相手は妖怪、さらに言うなら明確に人へ仇為す存在でしょう。ならば、正々堂々真正面から退治する必要もなかったのでは?」
「正々堂々ではないと言うことは、欺いて寝首を搔けという事か? その方法がわかればそうしたやもな……」
自嘲気味にそう言いはするものの、たとえ方法がわかったとしても柾也自身がそれを選ばないだろうな、と都黒は思った。
あらためて観察すれば、鳥辺野やその手前に点在する寺社へ向かうための橋のほかは、人が通りそうな道もない。現代の、あの整然と整備された鴨川の河川敷からは想像もできない、物寂しく暗い、いかにも残忍な妖怪が現れそうな河原だ。状況としても暗殺や奇襲なりするためには、少なくとも餌を用意する必要があるだろう。
そう、件の妖怪に襲わせるための餌が。そんな策を正義感ひとつで飛び出してきた柾也が選ぶとは思えない。
「……まあ、それはそれとして」
ただの興味本位ではありますが、と言い置いてから都黒は柾也に尋ねてみた。
「なにぶん都の噂についてはよく知らないもので……中と外で妖怪の恐ろしさが違うという話を聞きましたが本当ですか? もし違う所があれば教えてもらえませんか」
「違うと言うか、一目瞭然と言うか」
陰陽師が駆けつけて攻撃すれば逃げていくからな、と柾也は事もなげに言ってのける。
「逃げていく?」
「都の中に出現する妖怪については、な。だが、こうしてそなたも見ての通り、都の外の敵に陰陽師では歯が立たぬ。ゆえ、明らかに外の妖怪のほうが強いはずだ。そうだろう?」
何かこう、わかるようなわからないような、そんな説明だったなと都黒は内心首を傾けた。
「ともあれ、今のままでは心許ない。これをどうぞ」
ディアボロスのためのそれを常人が使いこなせるかどうかは別として、都黒は脇差ほどの大きさの妖刀を柾也へ預けた。全く使えぬとしても見る限り丸腰にしか見えない今よりかは、多少ましかもしれない。
成功🔵🔵🔴
効果1【平穏結界】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
緋影・夕姫
①が完了想定でいるわ。
少し河童との戦闘が落ち着いたみたいだし、先ほどの陰陽師さんの様子を気にかけましょう。
先ほどは名乗らなかったので、今度はちゃんと名乗りましょう。
「陰陽師さん具合は大丈夫?先ほどは名乗らなくてごめんなさい。私は夕姫。妖怪退治を生業にしているわ。そして、この子が相棒の紅葉。ところであなたは?」
陰陽師であることを話してもらえたら、「安倍晴明」という陰陽師は聞いたことがあると言いながら、質問をしていきましょう。
私が聞いておきたいことは二つ。
・「安倍晴明」の役職などの現在の立場。
・「安倍晴明」の噂について(過去の偉業や現在の動向)。
一旦後続のディアボロスへ妖怪達の対処をまかせ、緋影・夕姫(蒼炎妖刀ノ少女・g00571)は柾也が休んでいる柳の根元へと退いた。
「陰陽師さん、具合は大丈夫? 先ほどは名乗らなくてごめんなさい」
見覚えのある夕姫の顔に、柾也は頭を下げた。
「それはこちらも同じこと。先刻は本当に、危ないところを助けてもらった」
そう感謝しながら名乗る柾也に、夕姫は相棒を前に出しながら小さく微笑む。
「私は夕姫。妖怪退治を生業にしていて、この子が相棒の紅葉」
クダギツネを見たことがあるのかないのかは不明だが柾也は怖れる様子もなく、良い子だ、と紅葉の尻尾を撫でている。もっとも、歯が立たなかった事実はあるものの妖怪を目の前にしても怖じ気づく様子がなかったことを考えれば、彼にとって紅葉は『よく慣れた動物』のくくりなのかもしれない。
「あなたを見ていて思い出したけど、安倍晴明という著名な陰陽師がいるようね。彼について……たとえば現在の立場や役職、その動向だとか。都については不案内なもので、何か知らない?」
ほかにも彼の過去の噂について尋ねることも考えていたが、質問は一つに絞ったほうがよいことを思い出し夕姫は微妙に言い回しを変える。
「安倍殿は……そうだな……」
柾也は少し考えを巡らせたあと、やや困ったように夕姫を見た。
「噂に聞いている限りでの、あくまで個人的な見解だが……次か、その次の陰陽頭になられる方ではないかと思う」
しかしそれ以上具体的な事は何とも、力になれず申し訳ない、と柾也は頭を下げる。
「……そう。ありがとう」
文字通りに、陰陽頭になるに値する陰陽師だとは思うが本当にそうなるかどうかはわからない、というあたりか。知っている限りのことを話してくれているであろうことも察せられるので、夕姫はそこで質問を切り上げた。
成功🔵🔵🔴
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
緋影・夕姫
安倍晴明さんが「陰陽頭」の有力な候補だということが分かったわね。
そこで気になってくる点が一つ、現在の「陰陽頭」は誰が務めているのか?「陰陽頭」を務めているのだから、有力な陰陽師の一人である可能性が高いと思う。それに、これから陰陽師の皆さんと関わっていくのだから、現在の重役に就いている方が誰か知っておくに越したことはないわ。
質問中に妨害が入らないように、相棒の紅葉に敵の足止めをお願いしておくわ。
質問内容
現在の「陰陽頭」は誰が務めているのか?
質問の回答後
「本当の希望」を芽生えさせるためにも、そして柾也の勇気を「勇猛」にするためにも戦いに誘ってみる。
「柾也さん、私たちと一緒に妖怪を倒してみない?」
件の安倍晴明が有力な陰陽師であるという裏付けのほかにも、次代の陰陽頭候補ではないかと柾也が考える程度には影響力もありそうだということはわかった。
そこでふと緋影・夕姫(蒼炎妖刀ノ少女・g00571)は考えを巡らせる。そう言えば、現在の陰陽頭とは一体誰なのだろう。
複数の筋から、当の晴明のほかにも広く名を知られている陰陽師が何人か存在することはわかっていた。順当に実力で考えるなら賀茂家の誰か、さらに言うなら筆頭という情報のある賀茂保憲だろう。ただし史実とは別の道を辿っている以上、これまで名の知られていない第三者がその座にあるという可能性も否定しきれないはずだ。
陰陽寮に所属していないという蘆屋道満についてはひとまず置いておくとして、可能性としては少なくとも、晴明を加えたこの二名以外の誰か、という事になるだろう。
それに、このディヴィジョンにおける調査を進めていくにあたり、陰陽師と深く関わっていくのは避けられないはずだ。現在の重鎮をはじめ、陰陽寮を代表する人物を今から把握しておくに越したことはない。
「最後にもう一つだけ、いい?」
万が一にもクロノヴェーダの横槍という妨害が入らないよう、相棒の紅葉へ河原を警戒しておくよう指示し、夕姫もまた妖刀の柄へ手をかける。
「安倍晴明が陰陽頭ではないということは、陰陽頭は誰が務めているのかしら」
知らぬのか、と柾也がやや驚いた顔になった。
「賀茂家の保憲様が陰陽頭を務めておいでのはずだが……それが何か?」
推測していた通り、『有力さで言えば賀茂保憲が筆頭である』という情報と合致するな、と夕姫は考える。
「……いいえ、少し気になっただけ。妖怪退治に明け暮れていたせいか世間の事にすっかり疎くなってしまって」
「そうか」
都について不案内だと予防線を張っていたのが功を奏したのか、柾也はそれ以上何も言わなかった。
彼から何らかの情報を引き出せるとしたらここまでだろうか。そろそろ本題の妖怪退治に戻るべき頃合いだろう。すでに柾也から協力の同意は得られているので、あとはうまく誘導するだけだ。
成功🔵🔵🔴
効果1【傀儡】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
葛葉・狐狛
「……やっぱ懐かしいかね」
南の稲荷山を見て仮面を撫でて、①と②を待ってから、気持ちをお仕事モードへ。
【忍び足】【残像】【フェイント】で身を隠し、バレないように数を減らすよ。
仕留めてしまわないように【時間稼ぎ】も欠かさない。
味方が逸るようなら、持ち込んだチョコ菓子、菌類の山でも勧めて落ち着かせるさ。
「この時代にもカッパ巻きあるのかねぇ」
動き始めたら【拘禁遊糸】で、【トラップ生成】。動きを止める罠を起動。
陸地で足がもつれた河童が、川辺の草木に絡まって佐藤さんの前に転げ出るようにでもしよう。
もちろん、自然にそうなったように【不意打ち】するよ。
万が一に備えて、最後まで油断はしないよ。
七社・小瑠璃
意気込みは良いがそれだけでは何も為せぬ、力のない勇気は無謀と変わらぬのじゃ
とはいえ見捨てるわけにもいかぬ、少し手助けしてやろう
「ほれ、獲物はこちらにもおるぞ」
声を上げつつ河童の集団に攻性式神結界を打ち込んで
敵の意識を件の陰陽師からこちらに向けさせる
もっとも獲物になるのはお前たちの方じゃがな
適当に式神でぼっこぼこにして弱らせつつ、頃合いを見て
件の陰陽師の方に一匹だけ通す
手加減とタイミングが重要じゃ、わしがその分多少手傷を追うのは仕方あるまい
「民が求めておるのは言葉よりも行動じゃ
おぬしにその力があるのかそれとも口だけなのか、見せてみよ!」
まあ色々厳しいことを言うたが……頑張る若人は嫌いではないよ
ソラ・フルーリア
※連携アドリブ歓迎です
陰陽師? とかあんまり良く知らないけど、妖怪に立ち向かっていくアナタの勇気は本物よね!
だったらアタシも手を貸すわ!
【光学迷彩】で姿を消しつつ近寄って、【飛翔】しつつ【双翼魔弾】で攻撃するわ!
反撃の【水妖相撲術】は【飛翔】で組み付かれないようにするのが一番だけど、【グラップル】ならアタシも持ってるし、何なら逆に投げ飛ばしてやりたいところね!
わぁ、なんだかヌルヌルしてる! アイドルにお触りはご法度よ!!
パラドクスで弱ってきたら、陰陽師の彼にトドメを刺すよう言ってみるわね。
さ、次はアナタの番!
アナタの人々を守りたい気持ちが本物なら、その力を見せて頂戴!
陰陽師を戦闘から引き離しているうちに、ディアボロス達の戦いは佳境を迎えている。先に到着した七社・小瑠璃(よどみに浮ぶうたかた・g00166)と葛葉・狐狛(狐憑き・g00840)が危なげなく削り、さらにソラ・フルーリア(歌って踊れる銀の星・g00896)が到着する頃には大勢が決しようとしていた。
「ほれ、獲物はこちらにもおるぞ」
言葉通り河童の注意を惹くよう、小瑠璃は狩衣の袖を大きく翻し声をあげる。かつ群れの真ん中へ攻性式神結界を展開し、そこへ狐狛の拘禁遊糸が追い打ちをかけた。薄暮の河原で匂いたつように燃える陽炎の中、河童が甲高い悲鳴をあげてもがいている。
「この時代にもカッパ巻きってあるのかねぇ」
「巻き寿司が、と言いたいのか? 鮒寿司ならともかくとして海苔巻きはとんと覚えがないぞ」
巻物の名で江戸前寿司に登場したのが海苔巻きなので、残念ながら平安時代にはまだカッパ巻きは存在していない。小瑠璃の昔の記憶に存在していないのはある意味当然ではある。
「何だカッパ巻きないのか。験担ぎに食ってやろうかと思っていたのに」
「えーカッパ巻きないの!? お稲荷さんはあるよね!?」
「それもない。あと稲荷寿司については少々洒落にならぬ」
妖狐二人になかなか切実な視線を向けられ、ソラは笑ってごまかした。
「まあともかく、さくさくっと河童を倒してあの黒いモヤモヤもすぱっとご退場してもらわなきゃね!」
淡い青色の翼を広げたソラの身体が宙空へ浮く。そのまま鳥が滑空するように、爆撃機が飛来するように、河童の頭上をフライパスしながら誘導弾を放った。
「さ、次はアナタの番! そう、そこの陰陽師のアナタのことよ!」
突然ソラに名指しされ、行方を見守っていた柾也がはっと肩を震わせる。
「人々を守りたい気持ちが本物ならその力を見せてちょうだい!」
「その通り。民が求めておるのはいくらでも取り繕える言葉よりも、誰の目にも見える行動じゃ。柾也とやら、おぬしにその力と意志があるのか、それとも口だけなのか、今ここで証明してみせよ!」
小瑠璃の言葉が色々と心に刺さったらしくはあるが、正真正銘柾也はつい先ほどまでいつ死んでもおかしくない状況にあった。そのせいもあり文字通り二の足を踏んでいたが、先刻ディアボロスから託された脇差と河童を見比べると、意を決したのかおもむろに鞘を抜く。
その瞬間。
「――お、っとぉ!?」
柾也が狙いをつけた河童が、急に足元をもつれさせて河原に転がる。その様子に狐狛がやや頓狂な声をあげたことに柾也が目もくれなかったのは、末端とは言え流石に陰陽師の集中力か。
「(……うまく行ったか)」
ソラの誘導弾で皆が気を取られているうちに狐狛が素早く拘禁遊糸の罠地帯を設定していたのだが、元々漬物石大のそれが無数に、不規則に転がっている場所である。いくら水辺を得意とする河童が転んだところで誰も怪しむことはない。
余計な力を抜くためか、スゥ、と鋭く息をして何かを断ち切るように柾也が脇差を大きく振り抜く。放たれた斬撃は一直線に白銀の軌跡を描いて、あざやかに河童を袈裟懸けにした。
転倒の瞬間を袈裟懸けにされては、どう足掻こうが躱せるはずもない。そこへタイミングよく上空を一周してきたソラの双翼魔弾が襲いかかり、河童は息絶えた。
確信をこめて術を行使したとは言え本当に一矢報いられるとは思っていなかったらしく、安堵のためか柾也がへたへたと河原に座り込む。
「……」
どこか斬妖閃に似ている気がするその術に、陰陽師でもある狐狛と小瑠璃は思わず互いを見た。いや、今はその事よりも残った目の前の敵を片付けきるほうが大事だろう、とすぐに思い直す。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
【ハウスキーパー】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【ドレイン】がLV2になった!
【能力値アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
河童達が次々と倒れていくのを、妖刀は何をするでもなく眺めていた。
配下が薙ぎ倒されれば多少は慌てるなり警戒なりすると予測するものだが、あやかしの考えることは人智を越えていることもままある。それとも思考そのものを備えていないのか、とそう思いはじめた頃に妖刀が動いた。
「ヒヒ、ヒ」
妙に甲高い、男の声音に似たそれ。
「良イネエ、良イネェ……良イ悲鳴ダネェ」
河童の断末魔のことを指しているのだろうと想像はできた。
黒いモヤにしか見えない頭部のせいで、目鼻はもちろん表情があるのかどうかもわからない。しかしディアボロスならばその平坦な顔面が、歪んだ歓喜に満ち満ちているのを想像できただろう。
葛葉・狐狛
大将首獲りにいくよー。
心境としてはお仕事として、思い入れはせずに至って冷静。
星を挙げた佐藤さんを褒め称えつつも、体力的に限界だろうからと身を護ることに集中するように伝えて、後に下がらせるね。
実力差が見えない程の眼力じゃなさそうだから大丈夫だろうけど。
縁切りは邪仙狐や鬼ほど大きくないし、戦闘は味方への誤射を避けるため前衛組に任せて、相手が体勢崩した時の【捕縛】での追い打ちや、味方が追い込まれた時に【フェイント】や【光使い】で牽制したり、痛打よりも事故防止優先で動くね。
【オーラ操作】【看破】で戦闘中も周囲警戒して、油断はしないようにするさ。
ついでに、何か見つかるかも知れないし。
樫谷・都黒
楽しそうですね。楽しそうな道具をみると嬉しい気持ちになりますね。
武器に人を害するな、とは言えないですけれど。
勝手に暴れるのは良くないですよ。
光学迷彩・平穏結界から不意打ちを仕掛けつつ、神速反応にて状態の変化を察知して対応
重力との縁が切れた場合は飛翔により退避
魔骸義躰製の左腕自体を神蝕呪刃として迎撃
同技能による相殺狙い
どうして、だれに、なんのためにこの様な事をしていたのですか?
あなたは誰に唆されましたか?
駄目元で尋ねる
只の刀であった頃の思い出話を好奇心で尋ねつつ戦う
かつての主はどんな方でした?
アヴァタール級であっても、クロノヴェーダ化以前は只の道具だったのであれば、昔の情報は同じであろうと想定
七社・小瑠璃
まずは柾也殿を下がらせる
あれは強敵ゆえにわしらも余裕がないのでの
おぬしはこの戦いを目に焼き付けて寮の心ある者たちに語るとよい
遠距離から味方を結界術で支援しつつ連携して陰陽符を飛ばして攻撃を仕掛ける
何やら面妖な敵よの、出来れば近寄りたくはない
念波の咆哮は、これは回避は難しいの。結界術で防御を固めてダメージを抑える方向で対処するべきか
……世界への怒りと絶望じゃと?
戯け!貴様は弱い者を斬って楽しんでおるただの外道に過ぎぬ!
民の嘆きが、助けを求める願いが我らを呼んだのだ
貴様などに負けてなるものかよ
……いかんな、心が怒りで燃えようとも頭は冷徹にじゃ。
突出などせず皆と足並みを揃えて着実に追い込もうぞ
緋影・夕姫
さて、その勇気を勇猛に変えていきましょう。あとは親玉を残すだけ、最後まで気を抜かず戦いましょう。
柾也さんが「妖刀:縁斬り」と戦う意思があるならば、その意思を尊重したい。危険ならば遠距離でサポートしてもらうだけでもいい。近距離戦闘ならば、私達が担えばいい。それに「妖刀:縁斬り」と戦った経験は必ず柾也さんの糧になるはず。彼の勇猛が、平安を救うに希望になれるのならば、私達にできることをしたい。
柾也さんに攻撃が向かないように、正面から立ち向かいましょう。妖刀使い同士、誘いに乗ってくれたら嬉しいけれど。
「彼の勇気を、私たちが止めさせはしない。」
河原へへたりこんだままの柾也を助け起こしてから、さあて、と葛葉・狐狛(狐憑き・g00840)は両手の砂を軽く払った。
「ついにやったじゃないか、河童退治。見事なもんだ」
「そう……そうか? そなた達の助けがあったからこそだ」
口惜しいような自嘲するような、柾也は複雑な顔をしている。
「これもお返しする。自分には過ぎた業物だが、心強かった」
次いで狩衣の袖へ乗せた脇差を樫谷・都黒(臥し者は独り路に・g00233)へ丁寧に差し出し、柾也は頭を下げた。狐狛が考えていた通り、彼は己が実力を測れぬわけではないらしい。
「これ以上迷惑をかけるわけにはいかぬ。自分で播いた種を刈り取れぬうえ、おこがましい願いではあるが、どうか」
「おっとそこまで」
静止した狐狛が肩越しに河原を振り返る。ゆらり、黒いモヤを引きずりながら妖刀がこちらへ狙いを定めた所だった。嬌声がひどく耳につく。受け取ったばかりの差料を流れるように腰へおさめ、都黒が前へ出た。
「楽しそうですね」
楽しそうな道具を見ると嬉しくなります、と都黒はうすく口角をつりあげる。
ゆらり、ぶわり、墨色の霞を四肢から広げて縁切りは無言のまま斬りかかって来た。紙一重で斬撃を躱すも、一瞬身体が浮かぶような奇妙な感覚を覚える。しかし都黒はあえてその浮遊感に抗うことはせず、そのまま素早く宙を翔けて間合いを測った。
「武器相手に人を害するなとは言えませんが、勝手に暴れるのは良くありません」
背後に狐狛と緋影・夕姫(蒼炎妖刀ノ少女・g00571)、そして七社・小瑠璃(よどみに浮ぶうたかた・g00166)が柾也との間に立っているのを感じながら、都黒は言葉を重ねる。
「かつての主はどんな方でした? どうして、誰に、何のためにこのような事をしていたのですか」
この妖刀がかつてただの刀であったころ。その主とはどんな人物だったのだろう。
「あなたは誰に唆されましたか」
クロノヴェーダとなる以前。あまた存在しうるアヴァタール級とは言え、元はただの道具だったはず。ならばその記憶は皆は同じであろうと推測しての、好奇心ゆえの質問だった。
「口惜しいが、自分にこれ以上できる事はもうない。ゆえ、どうか、あの妖刀の討伐を頼めるだろうか」
縁切りを一人で引き受けた都黒を気にしながら、柾也はもう一度狐狛と夕姫に頭を下げる。
「むしろその願ってもない、ってやつだな。任せとけ」
「そうさな。あれは強敵ゆえ、正直わしらもおぬしを守って立ち回るほどの余裕はない」
あまりに無謀だった自分を恥じているのか、柾也はただひたすら平身低頭していた。やみくもに頭目を倒すと言い出されずに済んだので、実のところ狐狛はもちろん小瑠璃も内心安堵している。
狐狛は一足先に土手の高い位置で待つよう柾也へ指示し、切り結ぶ都黒のもとへ急いだ。
「おぬしはこの戦いを目に焼き付け、寮の心ある者たちに語るがよい」
小瑠璃に神妙な顔で首肯し、どうぞご無事で、と言い置いて柾也は土手を登っていく。そこから戦いの行方を見守るつもりなのだろう。そんな陰陽師を、夕姫は一度だけ振り返った。
「あなたの勇気がいずれ勇猛として知られる日がきっと来るでしょう」
もし彼が妖刀とも戦うつもりであったなら、それを尊重するつもりでいた。もし手に余るようであれば、クロノヴェーダから十分な距離をとってサポートに回ってもらうという選択肢もある。そもそも刀や武器らしい武器を所持していない陰陽師、妖刀の間合いに入らせる気は毛頭ないし、そこは自分達の出番だと考えていた。
それに、このたび妖怪と矛を交えた経験は必ず彼の今後の糧となるはずだと思う。助けはあったにしろ河童を討ち取れたか、それとも逃げ帰ることすらかなわず落命するか、その経験値の違いは明らかだ。
きっとこの世界を救う希望に育ちうる彼の勇気。そのためにできることをしたいと、そう思っている。
しかし彼はやはり、蛮勇ではなく正しく勇気ある人間だった。力量を認め自ら退くにはとても勇気がいるし、謙虚でなければならない。きっと彼は今後も研鑽を続け都を支える一柱となってくれるはずだと夕姫は思う。
――そしてその勇気から育っていく未来を、摘みとらせやしない。自分達が。
だからこそ縁切りをここで討ち取るのは、きっと自分達ディアボロスの役目だとゆるぎなく確信している。
「さあて。大将首、獲りにいくよ」
狐面の下でくつりと笑い、狐狛は怨念を渦巻かせる縁切りと相対した。青い光を蛇のようにぬるりと巻きつかせている刃は、ひどく禍々しく見える。
「何やら面妖な敵よの……できれば近寄りたくはないものじゃ」
小瑠璃は手早く結界をめぐらせて防御を固め、次いで陰陽符を構えた。念波による咆哮はおそらく回避が難しいだろう。結界術で凌げればよいが、さて、縁切りはどう出てくるか。
「私と黒百合に、斬れないモノは存在しない」
青く尾を引く縁切りの燐光に呼応するように、夕姫の刀から呪火が迸る。何のてらいも小細工もない縁切りの斬り降ろしを、夕姫はぎりぎりで持ち堪えた。しかし足元が不意に揺らいだような錯覚を覚え目を瞠る。
「『牡牛座の羊飼い、疾く来たりて』――」
黒い靄が、ぞわ、と身震いした。
体勢を崩された夕姫の陰から現れる狐面。新手よりも確実に一体と考えたのか、返す刃で縁切りは夕姫を狙う。しかし二の太刀は小瑠璃の結界によって阻まれ袖先に小傷すら残さない。
「――『己が理を示せ。急々如律令』」
鳥辺野から吹き下ろしていた風を押し返すような、濁流じみた烈風が吹き荒れた。河原に散っていた流木の小枝、あるいは木の葉、あるいは石の隙間から伸びていた草が無数にちぎれ飛び、縁切りを一歩、また一歩と後退させる。
風に阻まれる苛立ちか、それとも苛立ち任せの反撃か、突如妖刀が太い咆哮をあげた。厭悪憎悪嫌悪、何かへの怒り、命を刈られる絶望を塗り込めた叫びが耳をつんざく。
「……貴様などに負けてなるものかよ」
それが世界への怒りと絶望を具現化したものだという情報は確かにあった。しかし小瑠璃は端整な目元をゆがめ、声を荒げる。
「貴様は弱い者を斬って楽しむ、ただの外道に過ぎん。絶望と怒りとは片腹痛い」
それこそ怒りと絶望の叫びをあげるには、この妖刀に惨殺された人々のほうがよっぽどふさわしいと思えた。民の嘆きが、助けを求める願いが自分達をこの世界に呼んだのだと考えるくらいには。
「ただ切り刻める相手と思うでないぞ。貴様が積みあげた蛮行は我らが精算させてもらう」
怒りで心が燃えていると感じるのは久方ぶりだったかもしれない。それでも小瑠璃は努めて冷静さを保とうと大きく息をした。ぐらぐらと喉元や目の奥で熱が躍っている感覚がする。
そのすべてを冷徹とも言える表情で呑み込みきり、小瑠璃は符を放った。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【土壌改良】LV1が発生!
【腐食】LV1が発生!
【書物解読】LV1が発生!
【一刀両断】がLV2になった!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV2になった!
【命中アップ】がLV5(最大)になった!
穂村・夏輝
「あとは首領だけかな」
自分のエゴではあるのだろうけど、ふと柾也と過去の自分を重ねてしまう
大天使の力を手に入れる前の、力なく正義感しかなかった自分
少しでも戦闘経験を積ませて、敵との立ち回りが上手くなってもらえればと思う
「その怨念は俺には効かない!」
敵の攻撃は【浄化】を込めた【斬撃】で怨念を払って相殺し、柾也や仲間を守る
「支援を頼む!」
味方の援護や柾也の術で気を引いてもらいつつ、敵の隙を突いて魔骸連刃を叩き込む。もしくはこっちが切り込んだ隙に味方に攻撃をしてもらう感じで
残留効果で多少は柾也の怪我が軽くなってくれると動きやすくなるかな?
奴崎・娑婆蔵
●SPD
・攻防時効果2全て使用
平安を騒がす妖刀でござんすか
ちょいと手合わせ願いたく
手前、姓は奴崎名は娑婆蔵
撫で斬りが身上でござんすか
ではこちらは――八ツ裂きにしてやりまさァ
・誘うように『トンカラ刀』を抜刀、正面より近付き真っ向挑む
・【神速反応】にて斬り結びつつ、無重力――足の置き所が地から離されたなら、伸縮自在の『ダイダロスベルト』を地へ射出、引き寄せる形で地へ舞い戻らん
・舞い戻りざま【トンカラ斬り】一閃
・相手が縁を斬る妖刀ならば、こちらは無理矢理に縛る妖刀である
・敵に及ぼせた傷より呪いの包帯を出でさせ、十全に剣を振るえぬよう、腕と胴を結わえてやるなり足を地へ縛り付けてやるなり【呪詛】を籠める
ソラ・フルーリア
やるじゃない! アナタの力と熱意は見せてもらったわ!
だったら次はアタシ達の番! モヤモヤにも退場してもらうわね!
さっきの戦いに引き続いて【飛翔】しつつ戦うわ!
相手を見失わない程度に飛び回って相手に補足されにくくするの!
斬撃や無重力化を無効化出来るかもしれないし!
その間に【トラップ生成】で敵の周りに落とし穴を用意しておこうかしら!
注目してくれるのは嬉しいけど、空ばかり見ていて足元がお留守みたいよ!
敵が罠に掛かったり隙が生まれれば、【羨望と幻惑の最大光量!】の出番!
さぁ、此処がアナタのラストステージよ!
その黒いモヤモヤ、光で塗り潰してあげる!
「なるほど、平安の世を騒がす妖刀でござんすか」
符に行く手を阻まれ、苛立ったように刀を振り回す縁切りへそんな声をかけた者がいる。
「お互い妖刀が得物とは、ここで会ったも何かの縁。ちょいとばかし手合わせ願いたく」
黒い上着と白の着流し、かろかろと河原の石を鳴らして気安げな声をかけた奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)は、どこぞの任侠ばりに腰を落としてごく短く仁義を切った。
「手前、生国と発しまするは日の本の生まれ、姓は奴崎、名は娑婆蔵。人呼んで『八ツ裂き娑婆蔵』」
形通りに片手の手の平は差し出され上を向いているが、残りはすでに腰のものにかけられている。後続の人員は娑婆蔵が最後とみて、穂村・夏輝(天使喰らいの復讐者・g02109)は縁切りに隙の生まれる瞬間を見計らった。
縁切りが娑婆蔵の口上を受けて刀を下段に落とす。白い布で覆った上からでも、娑婆蔵が笑ったのが見えた。
「そちらさんは撫で斬りが身上でござんすか。ではこちらは」
――八ツ裂きにしてやりまさァ。
そんな剣呑な台詞の最後まで待たずに、高密度の怨念を込めたクロノヴェーダの一閃が放たれる。
「『トンカラトンと言え』!」
ぶわりと着流しの裾が重さを失うのも構わず、娑婆蔵の斬撃は深く一歩を踏み込んでの懐狙い。不規則に折れ曲がった軌道は稲妻のようにも、どこか金釘流にも見えた。
「その怨念は俺には効かない!」
地絶覇空閃による怨念を打ち払うように、夏輝は魔骸連刃を返す。かつて喰らったのだろう、どこかクロノヴェーダの肉体を思わせる刃が縁切りの黒い靄を細切れにした。
彼――柾也と自分の過去を重ねてしまうのは、自分のただのエゴなのかもしれないと夏輝は思う。
何かに抵抗する力もなく、あったとするなら正義感だけ。天秤の片側にしか重さが乗っていないようなアンバランスさは、大天使の力を手に入れてようやく釣り合いが取れた気がする。
今日のこの経験が少しでも後々の彼の糧になってくれればいい。そう思う。薄墨を流したように暮れてきた空を背にして、柾也は食い入るようにディアボロス達の戦いの行方を見守っている。狩衣のそこかしこに大きく血の染みが広がったままだが、見るかぎりではやはり命に別状ないように思えるし、消耗していた顔色も今は問題ない。あの様子なら自分の脚で洛中まで戻れるだろう。
土手の上まではいくら縁切りとて突破するのは難しい距離だ。もはや後顧の憂いはどこにもなく、ソラ・フルーリア(歌って踊れる銀の星・g00896)は青く透ける翼を広げて飛びあがる。
「さあ、次はアタシの番。此処がアナタのラストステージ――というわけで、そろそろ退場してもらうわね!」
袈裟懸けに巻きついているように見える、束縛の呪詛が篭もった包帯の隙間。そこからどろどろと、黒い靄が何か粘質を帯びながら垂れ落ちていた。
薄暮の空を滑るように飛翔しながらソラは指を鳴らす。
「その黒いモヤモヤ、光で塗り潰してあげる!」
平安の世にはありえない――否、存在しているはずもない巨大なステージライトが鴨川の河原に顕現し、一瞬で最大光量に達した。叩きおろすように降ってきた巨大魔力弾をまともに食らい、縁切りが激しく身悶えて声にならない絶叫をあげているのがわかる。
そして、そのまま覚束ない足取りで後退しようとした足元が、突如がくりと黒く抜け落ちた。
「アタシ達から目が離せないのは嬉しいけど、足元がお留守だったみたいよ!」
肩をすくめるように笑い、ソラは地上へ降り立つ。夏輝や娑婆蔵が切り結んでいる最中、縁切りの背後に仕込んでおいたトラップが発動したのだ。こちらからトラップ域に誘導するよりかは、あらかじめ背後に設定した上で前からライトを浴びせれば自然と後退るという理屈である。
「支援を頼む」
「お安い御用でさァ」
絡みついた包帯と、地雷原のように設定された無数のトラップで縁切りはもはや身動きもままらなかった。ガアアア、と言語として意味を成さない、口惜しいような獣のような咆哮が聞こえている。
するりと包帯の端が手元へ戻ってきて、娑婆蔵は躾の悪い犬の手綱を引くように包帯を引いた。首元に巻きついたそれが縁切りを河原へと引き戻し、さながら文字通り飼い主に躾をほどこされる犬じみている。
再度白い光が縁切りの目――おそらくあるであろう目を灼いた。さすがに人のそれと同じ構造ではないはずだが、クロノヴェーダの身を苛む光はきっとことのほか苦しく、痛むに違いない。
いつからか、魔を斬るはずだった刀が人の無念を啜る妖刀となり果ててしまった、そんなクロノヴェーダ。ならばできる限り速やかに引導を渡すべきと考え、夏輝は魔骸連刃を縁切りの胸の中央へと見舞う。
確かな手応えは、あった。靄から手応えがあるというのも不思議なものだが、まあ考えても答えの出ない話だとも思う。
霧消していく縁切りの黒い靄に、柾也は土手の上で歓声を上げていた。
「アナタもやったじゃない! 力と熱意は見せてもらったわ!」
明るいソラの声に、柾也は面映ゆいような、自嘲するような表情で目を細める。
「いいや、まだまだ修行が足らぬと思い知った。ともかく、この件を急いで報告にあがらねば……本来ならば礼を尽くすべき所だが」
そう言いつつもその沓先はすでに洛中の方へ向いている。
「ならば早くお行きなせェ。手前共は勝手に来て、勝手に手出ししただけにござんす。礼には及びませんや」
川風に細く白く、帯のように包帯をたなびかせて娑婆蔵はカハハと笑った。
「左様か。ともかく、これで失礼する……ありがとう」
最後に深々と頭を下げて柾也の背が土手の向こうへ消えていく。彼の報告が内裏なり宮中なりを動かすか、それとも陰陽寮の誰かに届くか、あるいはあずかり知らぬうちに握りつぶされてしまうか、その行方は誰にもわからない。今は、まだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【活性治癒】がLV2になった!
【腐食】がLV2になった!
【友達催眠】LV1が発生!
効果2【ドレイン】がLV3になった!
【ダメージアップ】がLV4になった!