リプレイ
一角・實生
民衆は勿論なんだけど、数ある中からおんぼろの楼船に乗ることになった蟲将にもほんの少しだけ同情してしまうよ
運が悪かったのか何なのか
先日仕立てた水着姿になる、これなら泳ぎやすい
フィンとグローブ、マスク辺りは装着しておこう
目指すはここから南下した位置にあるおんぼろ楼船
方角や凡その位置を偵察能力や記憶術で頭に叩きこんだ後、水中適応を使いいざ川の中へ
船から俺の姿が見えない位の深さを泳いでいくよ
魚や珍しい何かがいたりしないか、ルートを大幅に逸れない程度に観察して行くのもいいな
水中を移動するのが珍しいのもあるけれど
奪われた記憶は未だ完全に戻ってはいないし
こういう刺激で蘇るものもあるかもしれないって思ってさ
ブロス・ブラッドハート
おぉ~っ、船でっけーしカッケー!しかもいっぱいあるー!!
近くでみたらもっと大迫力なんだろうなぁ、にしし、戦いの前にちょっとだけ水の中を楽しんじゃおっと♪
今年の水着ですいすい~
いちおうバレないよーに水中に潜りながら船まで泳いでいくぜ。きらきらの青色なら目立たないだろーし、翼を畳んで尻尾をくねくね泳げばおっきいお魚みたいにも見せられてごまかせるかな
それにしても長江ってすっげーでっかい川なんだな!棲むお家がでっかいなら生き物もでっかいのがいるかな?
いつか本で見た、鯤っていうすっごくでっかいお魚も見つかるかも…!
よーし、いろんなものを見つけてあとでにーちゃんに教えてあげよっと♪
アドリブ歓迎だぜ!
夏候・錬晏
※連携アドリブ歓迎
えらく古い楼船だな…水軍で名をはせた呉軍の船とは思えない
残念ながら造船の専門家ではないから、潜入方法は仲間の案に乗りたいところだが…
船へ近づく際は物音は極力立てず【水中適応】を借りて進む
船の状態を<情報収集>して、まずは破壊しなくても入れそうな場所がないか探そう
あるいは、別の支えを作ってから穴を広げるような<解体>できればいいんだが
手がなければ甲板からになるが…
警戒している南西方面に【トラップ生成】で仕掛けた花火で物音と光を作って蟲将らの注意を惹こう
その隙に北側から素早く乗り込んで船底へ進む
早く民らの元へ。救ってやりたい
逸る気持ちをどうにか抑えて、慎重に行動しよう
「おぉーっ、船でっけーしカッケー! しかもいっぱいあるー! すっげー迫力!」
戦の気配高まる赤壁に無邪気な歓声が上がる。輝く赤い瞳に映るのは長江に所狭しと集った楼船群だ。
興奮したブロス・ブラッドハート(星の欠片を集めて・g03342)は小さな体を目一杯に使って、もっと近くで見たいと表現した。
「確かに壮観だ。だからこそ余計に目立つが、私たちの目指す船はえらく古い。あれは本当に水軍で名を馳せた呉の楼船なのだろうか」
夏候・錬晏(隻腕武人・g05657)が疑惑の視線を例のおんぼろ船に向ける。遠くに浮かぶ目的の船は岸からもそれと分かるほどボロボロだった。
廃船認定を受けてもおかしくないほど老朽化した船が駆り出されたのは謎だが、一目で区別がつくのはディアボロスにとって都合が良かった。進路に迷ったり他の船と間違えたりしなくて済む。
「民衆は勿論だけど、数ある中からおんぼろの船に乗ることになった蟲将にもほんの少しだけ同情してしまうよ」
一角・實生(深潭鷲・g00995)がぽつりとこぼす。船の位置と歪んだ形状を頭に叩き込んだ彼は、既にウェットスーツに着替え終えていた。さらに足にはフィン、手にはパドルグローブ、顔にはマスクゴーグルという本格的な装いだ。
「それが實生にーちゃんの水着か。ダイバーみたいでカッコいいな!」
「ありがとう。そろそろ出発するけどブラッドハートさんは着替えなくていいのかい?」
やっべそうだった、とブロスが忙しなく服を脱いで手早く着替え始めた。青くきらめく銀河のような衣装が河面に照る。彼の水着姿は和装の袖部分だけを腕に括り、切り開かれた袴を帯で締めた特徴的なものだ。
「よっしゃー準備かんりょー! 早く行こうぜ! こんだけでっかい川なら本にのってた『コン』ってすっごくでっかい魚に会えるかもなー!」
言うが早いかブロスが長江に突撃し、すぐ後を實生が【水中適応】を発動させて追いかける。
「コン、まさか『鯤』か。ふ、もしいたらとんでもないことになるな」
数千里、最低でも約四十万メートル以上の体躯を持つと言われる伝説の怪魚。その名に思い至った錬晏は笑みを漏らしつつ水に入っていった。
一行は水中深くを進んでいた。この水深なら万が一、敵が水面を注視しても気付かれることはないだろう。ディアボロスもまた水上の様子を窺えないが問題はない。おんぼろ船の位置を記憶した實生が迷いなく先導している。
西暦220年、長江には生命が溢れていた。河上から投げられる楼船の巨大な影の中を魚が踊る。闖入者であるディアボロスから逃げるものもいれば、動じずにすぐ傍を悠々と通り過ぎるものもいた。河底には甲殻類や貝類の姿も見える。
その光景にブロスはもちろん喜んだ。ドラゴニアンの翼を畳み、尻尾を尾びれのようにくゆらせて、美しい青の衣を纏った彼は、魚にあまり警戒されなかったようだ。間近で繰り広げられる魚群のショーにすっかり夢中だ。
「(見て、見て! すっごくキレーだぜ!)」
ブロスが後ろの錬晏に身振り手振りで感動を伝える。彼の急な動きに驚いて小さな魚の集団が散り散りになった。
「(落ち着け、魚が逃げてしまうぞ。というより今は潜入中だ……ん?)」
錬晏は背後から急速に何かが接近してくるのに気付いて振り返った。その正体は数頭のイルカだ。見慣れぬ珍客に興味を抱いて一行のもとへやって来たのだった。
人懐こいイルカたちはディアボロスの周りでグルグルと円を描き、しばらくして笑いか挨拶のような鳴き声を残して去っていった。
不意の遭遇に足を止めていた實生は感嘆と共にイルカたちを見送った。
「(驚いたな。長江は東シナ海に流れているけれどこの辺りは淡水だ。普通のイルカならここまで来ないだろう。あれがカワイルカというやつかな)」
自らの失われた記憶を刺激するように知識を掘り起こす。
長江、またの名を揚子江にはヨウスコウカワイルカという固有種がいたはずだ。賢く好奇心旺盛な彼らは赤壁の物々しい雰囲気を察して見物しに来ていたのだろう。
實生は希少な体験を記憶に焼き付けて先導を再開した。動物好きの錬晏も一瞬名残惜しそうにイルカを見やり、頭を振って一路船へと進み始めた。後にはイルカの泳ぎを真似てドルフィンキックを試すブロスが続く。
無事目的地にたどり着いた一行が水面に浮上する。
間近で見上げるおんぼろ船が放つ威圧感は他の巨大な楼船が醸し出すものとは一味違った。見ているだけで、崩れかけた塔や弦が外れた楽器と同種の不安定さや破滅を想起させた。
船に取り付いた一行は早速内部に進入するための調査を開始した。
錬晏が破壊せずとも入り込める場所を探って船腹に触れる。すると湿り気のある音を立てて船体の欠片が剥がれ落ちた。
「私は造船の専門家ではないが、水に浮かべるべき状態でないことはわかる。呉は何故こんな船を運用しているのだ?」
その問いは奇しくも作戦総指揮官である周泰の胸中と重なる。
ともかく進入口となりそうな穴はなかった。船底に直通する櫓の差し込み口も人が通れるほどの大きさはない。
早く民を救いたいという想いが錬晏を急かす。だが焦っても良いことはない。逸る気持ちを抑えて次に取りかかる。
続いて別の支えを用意してやれば穴を開けられる部位がないかを探した。幸運にも比較的新しく修繕された箇所が見つかった。ここを丹念に補強してやれば進入口を作る程度なら耐えられるだろう。
一方、ブロスと實生は甲板に乗り上がる場合のルートを確保していた。敵兵の監視は厳しいが、発見されることを考えないならば乗り込むのは簡単だ。ディアボロスの身体能力を持ってすれば舷もよじ登れる。
問題は物音がしやすく発見されやすいことだ。
「うわっ、いま頭の上でミシッて鳴った! こえぇーっ」
「些細なことでも崩れそうだね。よし、一度戻ろう」
ディアボロスは集まり情報交換した。今のところ有効そうな手立ては以下だ。
一、丈夫な場所を補強して穴を開ける。
二、音を立てずによじ登り身を隠しつつ進む。
三、別の方法を考える。
「甲板から行くのなら私が【トラップ生成】で蟲将らの注意を惹こう。南西方面で花火を上げれば隙が生まれるはずだ」
錬晏の提案に實生が捕捉する。
「花火が鳴っていれば多少物音を立てても気付かれないかもしれないね。侵入する時以外にも有効な手だと思うよ」
「でも爆発みたいな音がすると中の人たちはちょっと怖いかもしれないな。落ち着かせる言葉考えとかなきゃな!」
ブロスの言うように潜入方法が民衆の状態に影響する可能性もある。
さて、どうしようか。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【水中適応】LV1が発生!
【修復加速】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
ブロス・ブラッドハート
エフェクトをつかって船腹を補強してみるぜ
でも船の修理ってどうやるんだろ?やっぱ木の板をうちつけたりとかかな…うん、出来る範囲でやってみる!
人が入れるくらいのスペースを残して周りをほきょーしたら…【隔離眼】をつかって残したところを隔離、穴をあけてみるぜ
人が入ったらすぐ解除して戻す、これならちょっとは安全かな
他の人のほきょーで足りそうな時には、音とかでバレないよーに作業の反対側で相手の注意をひけるかやってみる!
水着の袖と裾を鱗に見立てて尻尾は尾ビレ、ゆらゆら~って大っきな魚みたいに泳いでみるぜ
見えそで見えないくらいのところですいすい~っ。にしし、なんかちょっと楽しいかも…♪
アドリブ・連携歓迎だ
夏候・錬晏
※連携アドリブ歓迎
櫓の差込口が船底に直結しているなら
何か民を勇気づけたいが…
届くか分からないが、先ほど剥がれ落ちてきた船体の欠片に
自分の髪を切って髪結の紐ごと結び付け櫓に放り投げる
【士気高揚】の願いも乗せて
先ほど見つけた真新しい修繕箇所に【修復加速】を付与して
脱出までに少しでも補強が進むことを願いながら甲板へ出る準備を
「では、手筈通りに」
南西方面で一番近い対岸から【トラップ生成】で大量の花火を発動
風が吹いて煙がこちらに流れてくれば上々か
花火の音に紛れ素早く甲板から船底を目指す
【光学迷彩】を使っていても振動は伝わるだろうから忍び足で行動
シャムス、ソレイユ、駆けつけてくれてありがとう
ソレイユ・クラーヴィア
連携アドリブ歓迎
錬晏の支援に駆けつけました
救える命、一つも取りこぼさぬ為に尽力致しましょう
船の外観に近い色の外套を人数分用意
光学迷彩を纏って隠れつつ
甲板目指して登ります
トラップ生成で作成した花火を南西方向にセット
己は船北側の登り易い場所に潜伏
仲間とタイミングを合わせ花火を連続で打ち上げ
蟲将の気を引いている間に、音に気をつけて登ります
甲板から近い船倉入口へ飛び込み
船内移動中も音が出ぬよう慎重に
移動中、可能なら修復加速を周囲に施し
脱出時の移動にも耐えられる様に
船底についたら友情催眠を使用
シャムスと協力し
驚かなくて大丈夫だと説明します
出来ればリーダー格の人に話しをつけ、周囲に広めて貰う形で時間短縮を
シャムス・ライラ
仲間と情報共有、連携
錬晏の支援に参上
ソレイユや仲間達の手も借り
密かに甲板から侵入
敵影には常に注意
LEDライト、補強材料、工具持参
適宜使用
地形の利用、情報収集
可能な限り船内の情報を集めつつ
敵に見つからぬよう船底の民衆の所へ赴き
友達催眠を使って友好的に事態の説明を
私と仲間達はあなた方を助けに来た
今からこの船内を修復しつつ、脱出の機会を作ろうと思う
それから、仲間が陽動の為に花火を打ち上げているだけなので
大きな音でも心配はいらない
安心させたら
可能であれば船内に詳しく技術のある者に
修復の手伝いを頼めたら幸い
修復加速を使用
船の要所を適宜補強、すぐに壊れたりせぬよう
一般人の安全確保を優先
アドリブ等歓迎
ラウム・マルファス
水中適応と、使えるなら光学迷彩も使って、川の中から船を修復するヨ。船体を観察して、修復したことで逆に壊れないよう細心の注意を払おウ。視界が悪いけど、壊さない程度に近づいて、船底付近から徐々に上へ修復範囲を広げるヨ。
修復作業はパラドクスで、ボロい船体と水を早業で纏めて普通の船体に変換すル。中は暗いみたいだから、少しずつ変換すれば中の人たちも気付かないはずダ。
変換すら危なそうな場所があったら、薬品の水中パテで補修するヨ。
船内までは対応しきれないから、そっちは中にいるみんなに任せよウ。
水面下の補修が一通り終わったら、改めて強度の高そうなところを空気に変換して進入。入ったらすぐ穴を塞いでおくヨ。
一角・實生
錬晏さんが敵の注意をひきつけている間に、先程見つけたという修繕箇所の補強を行うよ
【修復加速】を使いまずは穴を開ける箇所の補強に集中しよう
補強箇所の内側にいる人になら声は届くかな
壊れない程度に船を何度か叩いてみる
今からここに穴を開けるから少しだけ離れて貰っていいかい
ゆっくり、少しでいいよ
慌てて移動すると船が傾くかもしれないし
パラドクスで白鷲を呼び出し灯り代わりに
俺達の姿が多少でも見えた方が民衆も安心だろう、手元もはっきり見えた方が作業能率も上がる
【照明】を使っても問題なさそうならば使って行くよ
補修中に楼船の全体的な構造と状態を情報収集しておきたい
これからの為に仲間とも得た情報を共有していこう
作戦は船の補強と甲板からの侵入、その両方を取り入れたものとなった。船体の陰に隠れながら打ち合わせを終えた六人のディアボロスが互いに頷き合って実行に移る。
「では、手筈通りに」
要となるのは夏候・錬晏(隻腕武人・g05657)が仕掛ける打上花火だ。南西の岸に生成されたトラップ地帯から大量の花火が上がれば呉軍は混乱に陥る。その隙に船内の民衆と接触するのが作戦の要点だ。
支援に駆けつけたソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)も協力して二人がかりで大規模な花火地帯を作り上げる。
「設置完了しました。仕上げをお願いします、ブロス」
「準備おっけーだ! いくぜー!」
ブロス・ブラッドハート(星の欠片を集めて・g03342)が小さな火球を南西に向けて吐き出した。岸に到達した火球は導火線に着火して花火を次々と打ち出させる。
いくつもの筋が赤壁の空を昇っていく。幾人かの蟲将が「あれは何だろう」と呆けて見送り、そして閃光と音が空に咲いた。
「では始めましょう。船外のことはよろしくお願いします」
甲板へ乗り込むためにシャムス・ライラ(極夜・g04075)が先行した仲間と舷に取り付いた。蟲将たちの死角となるであろう北側からするするとよじ登っていく。
「ボクは下から船を補強するヨ。後でまた会おうネ」
ラウム・マルファス(研究者にして発明家・g00862)が船底外部を目指して河へと潜っていく。彼が担当するのは船体底面の可能な限りの修復だ。
「俺は修繕箇所を直そうかな。早く終われば他にも動けるだろうし」
そして一角・實生(深潭鷲・g00995)はあらかじめ残留させていた【修復加速】を発動させ、先ほど発見された新しい修繕跡の補強に取りかかった。
丹色の外套を羽織ったソレイユは甲板へ乗り込むなりしゃがんで【光学迷彩】を発動させた。赤く配色された呉軍の船に木肌とも相性がいいオレンジ系の色はよく馴染んだ。
船上の蟲将たちを探してみると彼らは一様に南西の空を凝視していた。未だ大量に残った花火が時間を稼いでくれているが、民衆と会話する分を加味するとそう余裕があるわけではない。
「チャンスです。甲板を抜けてしまいましょう」
「少しだけ待ってくれないだろうか」
振り返ると後続の錬晏が、自ら切り落とした髪を木片に髪紐で結び付けていた。彼はそれを額に押し当て、舷から身を乗り出して下に放り投げた。木片はまっすぐ櫓の差込口へと吸い込まれて見えなくなった。
「船の破片を投げたように見えましたが、あれは?」
追いついたシャムスが擬態用の外套を受け取って輪に加わる。問う口調と眼差しには親しい者への気安さがあった。
「民に願いが届けばと思ったんだ。僅かでも勇気づけられるといいのだが」
「それで髪を結わえたのですね。助けに来た者がいると伝えるために」
シャムスとソレイユが顔を見合わせ得心行ったと深く頷く。多くを説明せずとも理解を示してくれた二人に錬晏は改まって感謝を告げた。
「シャムス、ソレイユ、駆けつけてくれてありがとう」
彼が名前を呼び捨てにする相手は限られる。二人は感謝と親愛の証を素直に受け取り微笑んだ。
「約束です。救える命は一つでも取りこぼさないようにしましょう」
「そのためならいくらでも力を貸そう」
三人は笑みを交わすと花火の音に紛れて船内に繋がる扉へと滑り込んだ。
扉をくぐると荒廃した光景が待ち構えていた。剥げ落ちた塗装、突き出る床材。通路に並んだ船室は扉が壊れて開け放たれたままになっているものもある。空気中には木屑が舞い、危うく吸い込みそうになった。
口元に外套を手繰り寄せつつシャムスは蟲将の気配を探った。船の軋みと花火を除いて物音はない。船内に留まった兵はいないのだろう。
開放された一室を覗いてみると中には大量の油壺が積まれていた。中身は満杯だ。
「これに火がついたら大変なことになりますね」
躓く恐れのある床材を手早く直しながらソレイユが言った。
壺を一つ持ち上げてみると結構な重さだ。元に戻す際、床は一瞬みしりと鳴ったが壊れることはない。これにシャムスは確信を得た。
「どうやらこの船は重さや圧力になら意外と耐えられるようです。一方で衝撃には極端に弱い」
「ふむ。戦うときの参考になるかもしれないな」
試しに錬晏が壊しても問題のない場所を小突くとあっけなく壊れた。次に拳を押し当てるとめり込むが、砕けるまではいかない。
おんぼろ船の特徴を一つ掴んだ彼らは、部屋を出て通路の奥へと急いだ。設けられた巨大な落とし戸を引き上げ、真っ暗な階下へと順に降りていった。
水中に潜ったラウムは船の底面を一通り観察し終わっていた。視界が悪い中で根気のいる作業だがそれは省くことのできない過程だった。
「(修復作業が船の負荷になったら本末転倒だからネ。いやア、大変だっタ)」
軽薄な笑みとは裏腹に根が真面目な彼は注意深く仕事をこなした。触れてはいけない傷や修復すべき箇所、順序は網羅している。
後は修復するだけだが、これもまた手間の掛かる作業だ。
記憶した順序に従って脆い箇所を新品に置き換えていく。ラウムの『万物解析』による物質変換は瞬時に行われるため、一つ一つに掛かる時間はとても短い。
ただ今回はとにかく回数をこなさなければならなかった。
「(ある程度まとめて変換すれば楽なんだけど、万が一壊すわけにもいかないしネ。それに閉じ込められた人たちを怖がらせてもいけナイ。気付かれないよう少しずつやらないト)」
古びてボロボロの船体と長江の水、この二つを一瞬で纏め合わせて真新しい船体に生まれ変わらせる。そうして作った頑丈な部分に周囲の脆い木材が押し負けてしまう前にさらに物質変換を行使しなければならない。集中力を削り取られる過酷な作業をラウムは黙々とこなし続けた。
おんぼろ船は水面下でゆっくりと新品同然に生まれ変わっていく。ラウムが修復作業を終えるまではもう少し時間が掛かるだろう。
しかし、最も損傷の酷い底面が修復されつつあることは、船の強度に大きな影響を与えるはずだ。
「船の修理って木の板をうちつけるだけだと思ってたぜ。カーンカーンって」
「脆い場所は充填剤で埋めるのが安全だし手っ取り早いね。間に合わせだけど作戦が終わるくらいまでなら持つはずだ」
船腹では修繕箇所の補強が終わっていた。ある程度丈夫な部分にはブロスが木の板を釘で打ち付け、その衝撃にも耐えられないような部分には實生がコーキングを施した。即席ながら中々の出来栄えだ。
作業が順調に進み余裕のあった二人は陽動と観察役に分かれて楼船の構造も調査していた。この船は平べったい鏡餅に似ていた。船体部分が土台で、甲板上に兵士用の二段船室、最上段に主屋形という形だ。
「もう穴をあけていいかな?」
「その前に一応中の人に警告しておこう。壁にもたれた人がいるかもしれない」
實生は船内の人間とコンタクトを試みた。開通予定の部位に触れ、船を壊さない程度の力で何度か叩く。もしそこに人がいて穴の開通と同時に転げ落ちてしまったら大変だ。
応答を期待したわけではなかったが、驚くことに反応があった。
触れた部位から微かな振動を感じ實生は耳を当てた。誰かがとても弱々しくノックを返しているようだ。もしかしたら声が届くかもしれない。
もう一度叩いてから少し大きな声で話しかけてみた。
「今からここに穴を開けるから少しだけ離れてもらっていいかい。慌てずゆっくりでいいよ」
今度は反応がない。あるいは答えようとしたが思うように声を出せなかったのかもしれない。
小さな音も聞き漏らすまいとぴったり耳をくっつけていたブロスが、俄然張り切って船腹に向き直った。
「弱ってるけどがんばって伝えてきたんだ、生きてるって! 助けに行こうぜ!」
實生が【照明】を灯しつつゴーサインを出す。すかさずブロスは燦爛とした瞳で補強部位を注視した。
【隔離眼】の力で船腹の一部が世界から一時的に消失し、人間が通過するのに十分な大きさの丸い穴が出現した。
光に包まれた二人が船底の暗がりへと飛び込む。その直後、隔離されていた船腹の一部が世界に戻り、元通りに蓋をした。
甲板から乗り込んだ三人が落とし戸を降りると、そこには人が溢れかえっていた。一辺25メートル足らずの空間に約一千人。多めに見積もっても一人当たり半畳にも満たない計算だ。
船が軋む音と遠い花火のくぐもった炸裂音が響く中、民衆の怯えた瞳が三人の方へと向けられた。
「明かりを点けます。眩しいので光を直視しないでください」
シャムスは民衆を脅かさないように断ってからLEDライトを点灯させた。光を弱く拡散するように調節すれば、互いに落ち着いて視認できる。
穏やかな対応でパニックは起きなかったが不安と警戒は晴れないようだ。誰かの固唾を呑む音がやけにはっきりと聞こえる。
「私達はあなた方を助けに来ました。これから脱出の機会を作ります。遠くから響く音も仲間の陽動ですので心配しないでください」
友好的な態度を崩さないシャムスに民衆の幾ばくかは理性を取り戻したようだ。話を聞き逃すまいと耳を傾けている。
好転の兆しを感じ取ったソレイユも説得に参加した。消耗した民衆の中でもまだ元気がありそうな者を見繕い、努めて朗らかに接する。
「驚かなくても大丈夫、もう少しで脱出できますよ。みんなで協力するために、助けが来たと広めてくれませんか」
話を信じた者が気力を振り絞って周りに説明し始めた。救出者の噂がさざ波のように広がっていく。
諦めきって相手にしない者もいたが、ここで説得力を高める出来事が立て続けに起きた。
まず、船底の中央付近の壁に突然円形の穴が開き、そこから温かい光を伴って實生とブロスが飛び込んできた。そして二人は自分たちをまっすぐ見つめる女性に気が付いた。掠れた声で「本当に来てくれた」と呟く彼女に、二人はノックを返してきたのが誰なのかを悟った。
「やはり聞き間違いじゃなかった。あなたの音は届いていたよ」
「怖かったろうによくがんばったな、ねーちゃん!」
次に、照明で照らされ明るくなったことで、錬晏は見覚えのある物を握りしめている少年に気付いた。髪を結わえたあの木片だ。虚ろな瞳の少年は自分の握る物と錬晏の長い黒髪を見比べ、目を見開いて呆然とした。
「届いて良かった」
言葉少なにただ力強く頷くと少年はぼろぼろ涙をこぼした。
最後に、床下から材木の構造を変換しつつラウムが姿を現した。
「約束通りまた会えたネ。下の方は一通り補修しておいたヨ。船の底から駄目になって崩れることはもうないはずダ。……おっと、人を濡らしちゃまずいカナ。すぐ乾かすヨ」
長時間の水中作業で濡れ鼠だったラウムは自分の衣服を変換した。たちどころに水気一つなくなる。
彼の力は目撃した民衆を驚かせ、この人たちなら何でもできるのではないかと思わせた。
これらの出来事により、民衆の多くがディアボロスの話を聞く態勢を整えた。彼らに関しては適切な脱出方法さえあれば上手いこと逃げおおせてくれるだろう。
だが長い監禁生活や年齢が問題で動けない者もいた。その原因は気力や体力など様々だ。人数もディアボロスの手に余る。個別に対処しては埒が明かないかもしれない。
どれだけの民衆が生き延びるかは提示する脱出手段に懸かっていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【隔離眼】LV1が発生!
【士気高揚】LV1が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
【無鍵空間】LV1が発生!
【照明】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV4になった!
【アヴォイド】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
夏候・錬晏
※連携アドリブ歓迎
※残留効果活用
船底に集結した仲間はひたすらに頼もしい
侵入時に見つけた油壺の位置を共有したあと
俺は民の回復と脱出に向けた準備を
民の状態を<情報収取>しながら見て回り
拘束されていれば朱殷闘刀で断ち切る
【口福の伝道者】で新宿島から持ち込んだ鶏粥と肉饅頭
水分補給を兼ねた胡瓜の浅漬けを頬張り民へ配布
鶏粥なら胃腸が弱った者でも食べられるし
体力がある者は饅頭で力を付けてほしいからな
腹に物が入って気持ちが落ち着いたところで説明を
「我々が甲板にいる蟲将らを引き付ける
その間にここから脱出を」
水練が達者な者と不得手なものを均等に分け
船の端材で浮きを繕い配布
先導者がいるから大丈夫だと穏やかに声がけ
シャムス・ライラ
仲間と情報共有、連携
さぁ、人々を逃がす算段をしなければ
皆、だいぶ弱っているようだ
ソレイユと一緒に活性治癒を施して人々に活力を
物を口に出来る程に復調すれば
口福の伝道者で増やした食料も役立つ
胃弱の者用に重湯も用意
食べて体力をつけて、機を待つのだ
岸への案内はブロス殿のカワイルカ達が
出入口はラウム殿に任せておけば安心か
後は浮く道具があれば
船の廃材や空き樽等を活用し、簡易の浮き具を作成
錬晏、ソレイユと一緒に配布
友達催眠で語りかけ避難の説明を
我らが戦い敵を引き付けます
その隙に貴方がたは船を離れ、岸まで泳ぎ逃げて欲しい
道筋はカワイルカ達に従って
一人でも多く助かるよう協力しあってやり遂げて下さい
アドリブ等歓迎
ソレイユ・クラーヴィア
連携アドリブ歓迎
この場の全員を無事脱出させるため、協力して行きましょう
まずは腹を満たして気力を回復させなくては
シャムスと合わせて活性治癒を使用
口福の伝道者も使わせて頂き
錬晏の食料と合わせて
新宿島から持ち込んだ桃とペットボトルの水を増やして配ります
水は言わずもがな
甘くて汁気のある物は、疲れている時も喉を通りやすいでしょう
全員に行き渡る量は十分ありますから、協力しあって配って欲しいと言い添えます
腹が満ちて落ち着いた様子なら
脱出について説明
岸辺の方角や距離等、行動の目安も伝えます
脱出口は一箇所に集中して船が傾かないよう、複数均等に設置し
シャムスと剥がしても問題ない板を利用した浮き作りを手伝います
夏候・錬晏(隻腕武人・g05657)たちは脱出計画を説明する前に民衆の衰えた体力を回復させることが先だと考えた。
新宿島から持ち込んだ食事を【口福の伝道者】で増やすためひたすら食べ続ける。千人分を賄うには何度か同じ食事をとる必要があったが、用意したものはいずれも食べやすくさほど苦ではなかった。強敵がいたとすれば水のペットボトル十本だろう。
民衆の回復を早めるにはソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)とシャムス・ライラ(極夜・g04075)の展開した【活性治癒】が大いに役立った。衰弱しきった者もどうにか重湯や鶏粥を舐める程度にはすぐ回復し、一舐めでも口にすればそれをエネルギー源として更に体力が戻る。その体力でより栄養価の高いものを食べて、と好循環が生まれたのだ。
中には脱水症状を起こした者もいたが、きゅうりの浅漬けなど塩分と水分を摂取できる物も抜かりなく準備してあった。
「全員に行き渡る量は十分にあります。奥にいる方々へ配るのに協力していただけませんか?」
ソレイユが頼むと呉の民は快く請け負ってくれた。彼が手渡した桃は甘くて新鮮で、甘味に飢える人々の気力回復にうってつけだ。桃はあっという間に底を突き、船底の至るところから甘い香りが立ち昇った。
「皆だいぶ弱っていましたが、なんとか元気を取り戻してくれたようですね」
桃を嬉しそうに頬張る姿を見て、シャムスは心から安堵した。最初は虚ろな瞳だった者が今となっては一生懸命に何かを食べている。それは彼らが生きる意欲を失っていない証だ。
振る舞った食事を糧として生き延びてくれたなら、これほど嬉しいことはない。
男衆に囲まれていた錬晏が仲間の元へ戻りながら同意した。
「呉の民は元来打たれ強いのだろう。肉饅頭も品切れになってしまった」
彼が頼もしさ半分、苦笑半分に見やる男衆は力を付けるべく肉饅頭を貪っていた。ほんの少し前まで弱り切っていたとは思えない食いっぷりだ。
民の食事が続く間に、手の空いた三人は泳げない者用の浮き具作りに取りかかった。
主な材料は船の廃材だ。落ちている木片や上階の折れた床材、補強済みで多少なら剥いでも問題にならない板をかき集める。簡素な浮き具であれば百個程度作れそうな材料が集まった。
「万全を期すならもう一声欲しいところだ」
思案する錬晏の横でシャムスがぽんと手を打った。
「ソレイユのペットボトルが材料にならないでしょうか?」
「冴えてますよ、シャムス」
船底には一千本のペットボトル容器がある。泳げる者の分を泳げない者へと回せば浮き具の不足は補えそうだ。
錬晏とシャムスが作業するかたわら、ソレイユは早く食べ終わった者に協力を募った。民衆は製作班、空の容器や材料になりそうな物の回収班に分かれてディアボロスの指示に従う。全員が食事を終える頃には必要十分な量の浮き具が完成していた。
船底全体を見渡してみると、腹を満たした人々が次の動きを待っているようだった。
「ちょうど皆さんも落ち着いた様子です。そろそろ説明を始めましょう」
ソレイユの言葉を受けてシャムスが前へ出た。事を円滑に進めるため友達催眠をかけ、民衆の素直に聞く姿勢を確認してから話し始めた。
「これより我らが蟲将を引きつけます。その隙に貴方がたは船を離れ、岸まで泳いで逃げてほしいのです」
ざわめきが広がる。助けに来てくれたディアボロスを信じているが、本当に脱出できるのか不安が残っているようだ。中にはディアボロスが犠牲になるつもりではないかと心配がる人もいた。
民衆に落ち着くよう伝えてから、ソレイユが後を引き継いだ。
「このあと脱出口が完成する予定です。そこから北へ向かうと岸辺があります。泳ぎ慣れない方は少し大変な距離なので、周りの方で助けてあげてください」
錬晏がいかにも海の男といった風情の男衆を立たせて続ける。彼らは肉饅頭を貪っていた男たちだ。
「この者たちは水練が達者で体力もある。不得手な者は彼らを頼るのだ。浮き具もあるので使うとよいだろう」
民衆は話を理解するとそれぞれの反応を見せた。乗り気な者もいれば怖がる者もいる。だが共通して、座して死ぬつもりは欠片もないようだった。
今まで助けてくれたが最後までは付いてきてくれないのか、という声を上げる者もいた。
シャムスは申し訳なさそうに微笑み、次いで力強く答えた。
「我らは蟲将の注意を逸らすために戦わなければなりません。一人でも多く助かるよう、貴方がたで協力しあいやり遂げてください」
助かるための努力を怠ってはならないと、人々も納得したようだった。
「大丈夫だ。頼りになる先導者もいる」
先導者とは誰のことかと不思議がる人々に、錬晏は穏やかな声音で言った。
「川の住民だ。会えばすぐわかるだろう」
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
【活性治癒】LV2が発生!
効果2【凌駕率アップ】LV1が発生!
【ドレイン】LV2が発生!
一角・實生
【平穏結界】を使い、俺達の行動が外に漏れ出ないようにしようか
念には念を入れておかないとね
そういうのを気にする人もいるだろうから
仲間が説明している時は老人や子供のそばにいよう
不安を口にした時に安心させたい
【友達催眠】で俺のことばを届きやすくし【士気高揚】で「できるんじゃないか」と自信を持たせる
大丈夫、うまく行くよ
今までの俺達を見ていてくれただろう?
それにこの楼船が沈まないのは皆が幸運の加護を得ているからだ
――皆で故郷や家族のもとに帰るんだよ
この浮き具はここを持って、こんな感じで捕まって
その後はマルファスさんやブラッドハートさんと手分けして動き、楼船内の油壺をできるだけ【隔離眼】で異空間へ送ろう
民衆には食事だけでは癒えない心の傷を負った者たちもいた。自力で立ち上がれない彼らを気遣い、支えたのは一角・實生(深潭鷲・g00995)だ。頼る者のない老人や子供を集めた彼が最初にしたことは、彼らの不安を払拭することだった。
甲板にいる蟲将が今すぐにでも現れてみんなを酷い目に遭わせるのではないか。そんな当然の疑問には【平穏結界】の仕組みをかいつまんで教えた。
「俺たちが来てしばらく経つし、会話や食事で音を立ててるけど誰も来ないだろう? これは気付かれにくくする結界を張ったからなんだ。それにもし気付かれても俺が守るから安心していいよ」
温和な語り口の實生に安心したのか、質問した子供は分かった風に頷いた。
他にも泳げない、逃げても戦禍に追われるのではないかと様々な不安が寄せられた。中にはペットボトルの開け方がわからないという微笑ましい問いもあったが、多くは深刻な恐怖を抱えているようだった。
蓋を開けてやりながら實生は怯える彼らを勇気づける言葉を探した。熟考を表すように背の翼がゆるりとそよぐ。
脱出計画の説明が始まると、彼らの不安はいよいよ最高潮になった。縋る視線を向けられた實生は探り当てた言葉を口にした。
「できるんじゃないか、って自信を持つんだ」
疑問符を浮かべる老人や子供たちに實生はまっすぐ向き直った。
「今までの俺たちを見ていてくれただろう? 俺たちは『できるんじゃないか』と自分を信じてるんだ」
上を見るように促す。船は多少マシになったとはいえ相変わらずおんぼろで、軋む音が鳴り続けていた。
「それにこの楼船だって沈んでいない。きっと皆が幸運の加護を得ているからだ。だから大丈夫、うまくいくよ」
本当にそうだろうか、と弱気な瞳が訴えてくる。實生は目を合わせ、ただ真摯に頷いた。
「皆で故郷や家族のもとに帰るんだって信じるんだ。さあ、浮き具の使い方を教えるよ。まずここを持って」
實生に励まされた老人と子供たちはひたむきに助かる術を学ぼうとした。一通りのことを教えると後は互いに助け合っていけそうな様子を見せた。近くで話を聞いていた女性も合流し、引率役を引き受けてくれた。
「自信を持たせられただろうか。俺も皆を信じよう」
みんなが大切な故郷に帰れることを願いながら實生は次の誰かを助けるために歩きはじめた。
大成功🔵🔵🔵
効果1【平穏結界】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!
ラウム・マルファス
乗ってる人たちはみんなに任せて、まず油壺に対応するヨ
壺周辺を観察して着火の罠がないか確認、罠と中の油をパラドクスで空気に変換して消しちゃおウ
ウッカリ見落とすと怖いから、トラップ生成で火や煙に反応する消火装置を設置スル
重量や設置が船の負担にならないよう気を付けるヨ
船内を回って順番に対応しよウ
それと安全に外に出られる出口が要るネ
全知の魔法書で良さそうな仕組みを調べて、船の外装を変換して作ろウ
簡易エアロックみたいなのができるとイイナ
あとは油壺をひっくり返して浮き輪代わりに出来そうなら、パラドクスで空気を壺に変換して増やしておこウ
泳げない人もいるかもダ
魔力が切れそうだから、申し訳ないけど出来る範囲でネ
食事の用意が始まった頃、ラウム・マルファス(研究者にして発明家・g00862)は上階の通路を歩いていた。白衣の袖で口元を覆い、仲間から教えられた開けっ放しの扉へと向かう。目的の部屋を覗くと聞いた通りに大量の壺が置かれていた。
「すごい量ダ。さて、罠はないかナ」
ラウムは熱や煙に反応する探知機と消火剤を噴射するトラップを組み合わせた。完成した装置が船の負担とならないよう注意しながら扉の足元に設置する。
室内に入ると一見して怪しい点はなかった。先ほどと同じ装置をもう一つ部屋の中央に置き、壺の周囲をくまなく調べる。罠の類がないことは確信できたが、念のため装置はそのままにした。
本命の油壺に取りかかると厳重に密封されていることがわかった。壺自体も頑丈かつ重い造りだ。船の揺れ程度でこぼれたりしないようにするためだろう。
「油を撒いてから着火するつもりだったのかナ。まあいいや、危険物は処理しちゃおウ」
片端から蓋を外し壺の中身に万物解析を行使する。空気に変換された油は一滴残らず消失してしまった。数分も経つと全ての壺が空の状態で床に転がった。
手早く仕事を済ませたラウムはこの調子で近くの船室を見て回った。他の部屋に壺は一つもなかった。どうやら敵は一室を油壺の倉庫代わりにしていたようだ。
「もうこっちでできそうなことはないネ。よーし、次は脱出口作りダ」
ラウムが船底に戻ると民衆への説明が始まっていた。早速彼らが船から脱出するための出口作りに取りかかる。
「どんな構造にすればいいかナ」
取り出した書物『全知の魔法書』のページがひとりでにめくられ、見やすい高さに浮かぶ。開かれた紙面には今の状況に適した脱出口の設計図が書かれていた。
設計図と同じ形になるように両舷の外装を作り変えていく。完成したのは二種類の脱出口だった。敵の警戒が薄い北側は滑り台で着水する緊急脱出スライド、反対の南側は魚雷の水中発射管を真似た簡易エアロックという構造だ。
「泳げない人は滑り台を使ってネ。自信がある人は管に入ると速く外に出られるヨ」
尻込みする民衆にラウムは脱出口の安全性を実演してみせることにした。志願した一人のディアボロスをエアロックに連れていく。
「後で感想聞かせてネ。じゃあいってらっしゃイ」
ラウム謹製の脱出口が性能を見事に発揮し、小柄な影を水中に射出した。
大成功🔵🔵🔵
効果1【無鍵空間】がLV2になった!
効果2【能力値アップ】がLV5になった!
ブロス・ブラッドハート
羽ばたきで生み出した風を海に響かせてエコーみたいに言葉を届けるぜ
【動物の友】でさっきのカワイルカさんたちに協力してもらうんだ♪ここに住んでるイルカさんが川の流れとか深いとことか、一番詳しいだろうからな
おーい、イルカさんたち。この人達に川を渡るのに一番簡単で早い道を教えてあげてほしいんだっ
泳ぐのが難しいお爺さんとか、疲れて泳げない人は、イルカさんの体に掴まって引っ張っていってあげてくれないかな?
もっちろん、後でたくさんお魚をプレゼントするぜ!群れのみんなじゃ食べ切れないくらいのな♪
油壺は出来る限り【隔離眼】でしまってみる〜。船が止まってるなら安全になってから戻せばいいしな
アドリブ・連携歓迎だぜ!
エアロックで水中に飛び出したブロス・ブラッドハート(星の欠片を集めて・g03342)は河面へと浮上した。背中の竜翼を思い切り羽ばたかせると、一陣の風がさざ波を立たせて長江を駆け抜けていった。
「頼む、気付いてくれー!」
ブロスの祈りは届いた。
エコーのように広がった風を感じ取ったヨウスコウカワイルカが、興味を持って続々と集まってきた。喜ぶブロスの周囲を鳴きながらぐるぐると回っている。何か言っているようだ。
「なんだ? お話ししようぜ」
【動物の友】で意思疎通を図ると、彼らが遊びに誘っていることがわかった。追いかけっこや魚獲り競争、激流の潮に身を投じる遊びが熱いらしい。
「面白そうだけどごめんな! おれ、この川に詳しいみんなに助けてもらいたくて呼んだんだ」
人に頼み事をされた経験などないイルカが強い興味を示した。言ってみて、と催促している。
ブロスは水着の袖でおんぼろ船を差した。
「あとでこの船から出てくる人達を、一番早く川を渡れる道に案内してあげてほしいんだ!」
あんまり楽しそうじゃないなぁ、と乗り気でない反応が返ってくる。だが続くブロスの言葉にイルカたちは身を乗り出した。
「泳ぐのが難しそうな人がいたらイルカさんの体に掴まらせて、引っ張ってあげてくれないかな?」
それってヒトがボクらに触るってことだよね、とイルカが食い気味に顔を寄せる。別の一頭が、なんなら背中に乗せることもあるんだよねと迫る。
「だ、ダメか?」
おずおずと問うブロスの前でイルカたちが飛び跳ねた。ヒトと手を繋いで遊べるぜ、背負って岸まで競走だ、普段味わえない速さを体験させてやる、などと喜んでいる様子だ。
イルカたちの快諾にブロスは破顔した。
「ありがとう! 後でみんなにお魚をたくさんプレゼントするよう頼んでおくぜ! 群れのみんなじゃ食べ切れないくらいのをお願いしとく!」
ブロスは上機嫌で船へと戻った。交渉の成否を尋ねる仲間に笑顔とガッツポーズで答え、北側の脱出口で別れたばかりのイルカを呼ぶ。
すると滑り台のすぐ先にイルカが列をなして現れた。先導者の正体に驚く民衆へブロスは一つだけお願いをした。
「無事に帰れたらイルカさんたちに山ほどの魚をあげてくれ。イルカさんとの約束なんだ!」
「ああ。必ず果たすよ」
呉の民とブロスは固く指切りを交わした。
大成功🔵🔵🔵
効果1【動物の友】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
ブロス・ブラッドハート
ううーん、船を壊したくないのはおれもあいつらも一緒なんだよなぁ
話し合おうなんて思わねーけど、似たよーなこと考えてるなら相手の動きもわかるかも…!
よっし、もっかい翼で風を起こすぜ!今度は鋭く疾やく、触れたものを切り裂くような風の刃だっ
狙うのは体の上の方とか羽、船にできるだけ当たんないよーなとこだな
相手の攻撃は船の上でたいおうするぜ
へへ~ん、炎なんておこしたら船ごと燃えちゃうぜ?それでもいーなら、当ててみろよ~♪
なーんて挑発しちゃうぜ。ほんとに炎を出してきたら風で上空に炎を逃がすか…風圧で押し返して逆にそのままあててやるー!
アドリブ・連携歓迎だぜ!
甲板の蟲将たちは怪訝そうに首を捻っていた。
「結局、魏の奴らはまだ来てないらしい」
「さっきの騒ぎはなんだったんだ?」
南西の岸で打ち上がった花火にすわ開戦かと身構えた呉軍だったが、警戒は空振りに終わった。何とも言えないしこりを残して配置に戻る。
「一応見回りしてくっかぁ」
呉軍鋭蜂兵がぼやきつつ船内へ続く扉に手を掛ける。次の瞬間、扉が内から開いて彼を弾き飛ばした。
「お前らの相手はおれだー!」
甲板にブロス・ブラッドハート(星の欠片を集めて・g03342)が躍り出る。彼は竜翼を大きく広げ、目の前の敵を風の刃で打ち据えた。
不意を打たれた呉軍鋭蜂兵が倒れる。異変を察したほかの蟲将たちが怒声を上げた。
「このガキどっから湧きやがった!」
「もっかいいくぜ!」
竜翼が再び風を起こす。鋭利な疾風が二段船室の上階から甲板を見下ろす敵に襲いかかった。制御された風の刃は船体を傷付けることなく、標的のみを切り裂いた。
激昂した呉軍鋭蜂兵が翅を振るわせる。反撃の兆候にブロスは意地悪な笑顔で応じた。
「へへーん、炎なんておこしたら船ごと燃えちゃうぜ? それでもいーなら当ててみろよー♪」
「ず、ずるいぞっ」
敵も自分たち同様に船を壊したくないのだ。ブロスはその点を突き、相手が炎のパラドクスで反撃せざるをえない状況を作り出した。
作戦と挑発は見事にきまり、怒れる敵とほかの呉軍鋭蜂兵が言い争いはじめた。
「いま油に引火したら俺たちどころか周りの船もただじゃ済まねえ! 周泰将軍の策も台無しになるぞ」
「大人しくしてりゃガキに殺されるだけだろうが!」
「おまえたち、仲間割れはよくないぞー!」
追加の挑発と竜風刃が放たれる。デッドロックに陥った敵軍はみるみる戦意を失っていった。
「(作戦せいこーだぜ。油はもうないから、本当は火を使われてもひどいことにはならないんだけどなっ)」
含み笑いを漏らすブロスに、敵の一人が我慢の限界を迎えた。破れかぶれに肉薄し、至近距離から高熱の炎を浴びせようとしてくる。
「あちっ。やったな!」
すかさずブロスは炎を吐き続ける敵を強烈な風圧で押し返した。風に煽られて火だるまになった敵は宙へ浮き上がり、右往左往する二階の呉軍鋭蜂兵も巻き込んで、そのまま南西の空へと吹き飛ばされていった。
大成功🔵🔵🔵
効果1【使い魔使役】LV1が発生!
効果2【ドレイン】がLV3になった!
ラウム・マルファス
補強したとはいえボロ船だ、あまり派手にやると危ないよネ
ハチドリ型ドローンに高濃度の殺虫剤を搭載
クチバシが注射針みたいになってて、突き刺して薬品を流し込むヨ
これなら船には影響ないハズ
あとは念のため、蛇型ドローンに消火剤を搭載して甲板に放しておくヨ
火が付いたら自律機構で判断して消火してくれるからネ
なるべくコッソリ準備を終えて、敵に話しかけよウ
「やァ、こんなボロ船で何処まで行くんダイ?呉にはもう、船を直す資材も人手も無いのカナ?」
分かりやすく挑発すれば、かえって警戒するでショ
さっき痛い目に遭ったばかりだしネ
会話で注意を引き付けつつ、死角からハチドリに襲わせるヨ
反撃の炎は蛇が消してくれるといーナ
吹き飛んだ蟲将たちが燃え尽きつつ着水する頃、艦尾の陰ではラウム・マルファス(研究者にして発明家・g00862)が戦闘準備を進めていた。
「二人とも頼んだヨ」
彼の手からハチドリ型ドローンが飛び立つ。10センチにも満たない機械の小鳥は敵の死角となる上空に姿を消した。
次いで甲板を蛇型ドローンが這った。蛇は器用に隙間へ潜み、目を光らせる。
ラウムは身を晒して二段船室を見上げた。于吉へ報告しに行く途中の呉軍鋭蜂兵を見つけ、気さくに話しかける。
「やァ、こんなボロ船で何処まで行くんダイ?」
「敵なのか!? くそっ、次から次へと!」
とうに処理能力の限界を迎えていた蟲将は攻撃するでも無視するでもなく、ただうろたえた。
悠長な反応にラウムから素のため息が漏れた。
「呉にはもう船を直す資材もまともな人手もないみたいだネ」
憐れみの言葉と視線が蟲将の胸を貫く。
「嫌味のつもりか!」
激情に駆られた蟲将が二階の柵に手を掛ける。だが柵の一部が崩れ、慌てて後ずさった。
ラウムは敵の立ち位置を捉えつつ、挑発を重ねた。
「危ないから焦らず、慎重に動かないト。呉にはそんな時間残されてないだろうケド」
敵の意識は階下に釘付けだ。背中の翅も怒りで震える。ブンブンと耳障りな羽音が辺りに響いた。
ラウムは殺意の視線を涼しく受け止めた。そしておもむろに口を開く。
「ハチドリという名前の由来を知ってるカナ」
「あぁ?」
急な話題転換に呉軍鋭蜂兵がますます苛立つ。構わずラウムの解説が続いた。
「羽音が蜂とよく似ているからダ。今、キミが出している音と一緒だヨ」
不吉な気配に呉軍鋭蜂兵は背中の翅を鳴らすのをやめた。しかし背後から鳴るブンブンという羽音は止まらない。
敵のすぐ後ろに忍び寄っていたハチドリ型ドローンが飛びかかった。細く鋭いくちばしを蟲将の首筋に突き刺す。内部に充填された薬液を流し込んだ。
高濃度の薬品を注入された呉軍鋭蜂兵は狂乱し、死に際に炎をまき散らした。ラウムの足元に着火して燃え広がろうとする。
すかさず蛇型ドローンが火に喰らいつき、消火剤を噴出して鎮火した。
「これでヨシ。船もまだまだ持ちこたえてくれそうダ」
呉軍鋭蜂兵との戦いが終わり、残る敵は最上段のアヴァタール級蟲将『于吉』のみとなった。
万全なダメージコントロールと船体を傷つけない戦闘によっておんぼろ船の耐久力にも余裕がある。
ラウムは二階船室内部へと入り、主屋形への階段を上っていった。
大成功🔵🔵🔵
効果1【フライトドローン】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
夏候・錬晏
※連携アドリブ歓迎
崩壊への警戒はお互い様
陸地で彼と戦った際の<戦闘知識>を利用して
船に損害を出しそうなパラドクスを引き出して隙を作る
主屋へ入ると同時に
あいさつ代わりに偃月刀を于吉に投げつける
気を取られた隙に虎爪多節鞭に毒をはらませパラドクス攻撃
反撃には目を細めて忠告してやろう
「いいのか?船が沈むぞ?」
このおんぼろ船と共に沈むつもりなら止めないが
とは言いつつ、船底にはまだ民たちもいる
攻撃を強行しそうなら手を考えないと
『決定的な弱点』を模索し<看破>できれば積極的にそこを突く
【フライトドローン】を足場に活用し立ち回り絶えず攻撃
ラウム殿は弱みがあるかもしれんが知識で克服することができる
友を侮るなよ
楼船の最上階には大きな主屋形があった。豪華な造りだが、老朽化した今では建材が崩れ、塗装も剥げ、かつての威容は見る影もない。あばら屋一歩手前と化したその奥で、この船を預かる蜘蛛の蟲将『于吉』が瞑想にふけっていた。
于吉は周囲の喧騒を一顧だにせずたたずむ。主屋形の前に何者かが立つ気配を拾って初めて顔を上げた。
扉から押し入った夏候・錬晏(隻腕武人・g05657)は敵将の姿を認めるなり腕を振り上げた。手にした偃月刀を投げ、よどみない動作で新たな武器を取り出す。多節鞭と呼ばれる複数の金属管を繋げた鞭だ。
鞭を構えた錬晏が間合いを詰める。猛毒の宿った虎爪多節鞭を巧みに手繰り、先端の鉤爪で蜘蛛の脚を狙う。
偃月刀の一撃を弾いた于吉もパラドクスは防げずに脚の一本を深く切り裂かれた。彼は苦悶の声すら漏らさず、呪文を唱えて反撃に転じようとする。
だが高まる空気圧に室内がひび割れそうな音を上げ、于吉の詠唱が止まった。
「暴風の術を使えばこのおんぼろ船は耐えられまい。共に沈むつもりなら止めはしないが」
瞳と戦意を研ぎ澄ませつつ錬晏が言う。万が一、本当に船を沈められたら脱出中の民にも被害が及ぶ。敵の動向次第では別の手を打つつもりだった。
幸いにも読みは当たっていた。天変地異を起こすパラドクスは于吉が守るべきこの楼船と相性が悪い。彼は本来から極端に弱めた威力での反撃を余儀なくされた。
仮に于吉が作戦の要である生贄の民たちが逃げ出していることや、全ての油壺が処分された情報を得ていればなりふり構わずに戦っただろう。ところが花火の陽動を始めとする陽動によって蟲将陣営は混乱に陥っていた。
十分耐えきれる弱々しい暴風に、錬晏は于吉が何も知らないことを悟った。
「脆い戦場で立ち回るのは難事だった。私たちと違い、そちらは上手く協力できなかったようだな」
相手と比べ自分たちは戦況を把握している。船が丹念に補強されたことも知っている。
錬晏は躊躇なく敵の懐に潜り込み、強烈な二撃目を放った。
一方の于吉は瞬間的な雷雨を目くらましとして使った。距離を取ろうと躍起になっている。
打ちつける風や雨を物ともせず、錬晏は于吉に張り付き続けた。
両者の攻防は室内をじりじりと移動しながら交わされる。それが部屋の中央地点に達したとき、頭上から黒い影が降ってきた。
大成功🔵🔵🔵
効果1【罪縛りの鎖】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
シャムス・ライラ
仲間と情報共有、連携
引き続き船の損傷に注意
せめて民間人が逃げ切るまでは!
地形の利用、情報収集で
仲間が気を弾いてくれている隙にタイミングを見計らい
忍び足を駆使して主屋形へ侵入し不意打ちでアサシネイトキリング
気配を消し、密かに近づいて急所を狙い
シャムシールの一撃を
敵攻撃は一撃離脱、ジャンプ等で可能な限り間合いをとり損害を軽減
…しかし、その技では船が沈むぞ?
敵が広い場所(甲板、空中等)に出れば幸い
戦闘は民間人の避難経路を想定し
そちらに注意が向かぬように逆方向に引き付けて行う
足場が崩れる、もしくは空中戦になればフライトドローンを足場に
ジャンプで移動し攪乱も
有効そうな残留効果は使用
アドリブなど歓迎
主屋形の梁には于吉の隙を突いてシャムス・ライラ(極夜・g04075)が身を潜めていた。不意打ちのタイミングを見計らいつつ、懐のシャムシールに手を伸ばす。
眼下の錬晏は意を酌んでくれたようだった。戦いながら于吉を少しずつ部屋の中央部分へと押し込んでいく。
「流石の戦上手です」
于吉が自らの真下に位置した瞬間、飛び降りて銀の刃を閃かせた。奇襲を予見していなかった敵の肩を背後からざっくりと抉る。
シャムスは軽やかに着地し、深追いせず一度下がった。手応えはあったがそれにしては敵の反応が薄い。于吉の面布に覆われた顔がゆっくりと見返してくるのが不気味だ。
反撃に備えると細く鋭い風が吹いてきた。風の流れを見切り、術への耐性を持つ帯で絡め取って無効化する。一連のやり取りで自分はもちろん、部屋の床や壁すら傷付くことはなかった。
「(せめて民間人が逃げ切るまでは船にダメージを与えたくない。あとほんの少しだけ時間を稼ぎたいですね)」
船底の人数と予測できる脱出ペースからすると、間もなく民全員が船を出る頃だろう。それまでは于吉の注意を船の損傷や自分たちに惹きつけておきたかった。
錬晏と連携しもう一度奇襲を試みる。思うように戦えない于吉は防戦一方だ。
だが敵が大人しくしていたのはここまでだった。于吉の纏う気配が不穏さを増す。現れた変化をシャムスは肌に触れる風から感じ取った。
今まで押し付けるように吹くだけだった風がやや上向きへ吸い込むように流れている。加えて妙に静かだ。強烈な嵐が起きるのだと直感した。
「その技、まさかこの船を沈めるつもりか?」
「座して敗れるは至悪。せんかたなし。諸共に滅びよ」
于吉の言葉は平坦で何らの感情も乗っていない。脅しではなさそうだ。
今、船全体を巻き込む規模の嵐が発生したら最後尾の民衆は逃げられないかもしれない。それでは今までの努力が水の泡だ。
于吉を中心に風の渦が回りだす。加減を失った力強い風圧に主屋形が悲鳴をあげる。
「させません!」
シャムスが突貫した。風の壁が彼を阻んだが、わずかな隙間を縫って前へと進む。
鮮やかな身のこなしで于吉のもとへ到達したシャムスは腕を突き出した。急所の首をシャムシールの刃先がとらえる。于吉がよろけ、風は嵐となる前に霧散した。
大成功🔵🔵🔵
効果1【モブオーラ】LV1が発生!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!
ラウム・マルファス
そういえば于吉って何の蟲なんだロ
足いっぱいあるし蜘蛛なのカナ
「ヤッホー、于吉。手下が全部やられたのに引きこもってるなんて余裕だネ?」
上と横に船室がないなら、船が壊れない範囲で、Rewriterで天井と壁を空気に変換してみよウ
蜘蛛って泳げないらしいから、水が怖かったりしないカナ?
上手く広い空間で戦えるならフライトドローンを大量召喚して足場にしよウ
于吉も足場にしようとするなら、不意に動かして落ちる恐怖を煽ってみるヨ
味方の攻撃と連携し、パラドクスで足の付け根を空気に変換
細いから上手くやれば1本くらい切り落とせるカナ?
反撃はフーン、って喋らせておくヨ
ボクが弱っちーコトは、ボクが一番よく知ってるヨ
肩で息するシャムスに代わりラウム・マルファス(研究者にして発明家・g00862)が前に出た。短時間ながら強風にさらされて崩壊が進行した主屋形を見回す。
次いで于吉を見やると、彼は首への一撃を受けたにもかかわらず、平然と姿勢を正していた。
「ヤッホー、于吉。手下が全部やられたのに引きこもってるなんて余裕だネ? それとも何にも感じていないのかナ?」
ラウムは『Rewriter』で室内の壁と天井を捕捉し、それらを空気へと物質変換した。途端に辺り一面が開けた空間となった。主屋形の名残は床材と二階へ続く階段だけだ。
于吉が二本の手と八本の脚を大きく広げ浮遊した。面布越しの表情はようとして知れない。
空中戦に備えてラウムは大量のフライトドローンを周囲に展開した。仲間たちもドローンを足場に敵と向かい合う。
于吉が長江の水を恐れたり、フライトドローンに関心を示したりする様子はない。無感動なままディアボロスを迎撃する構えを見せていた。
「蜘蛛っぽいけど浮くんだネ。何があっても全然動じないあたり、仙人ぶってるつもりかイ?」
挑発混じりに動揺を誘うが反応はない。
悟られないように北東方面の水面を見ると脱出中の民やイルカたちの姿があった。もうある程度離れている。ディアボロスが遠慮する必要もほとんどなくなった。
仲間たちの攻撃開始に合わせてラウムも意識を戦闘に向けた。広げられた于吉の脚の一本に狙いを絞り、その付け根に万物解析を行使する。
弾け飛んだ蜘蛛の脚がおんぼろ船の甲板に転がり落ちた。于吉の顔がラウムに向けられる。相変わらず泰然としているが、憎悪の色が滲んだように思えた。
于吉が左手の割れた鏡を傾けた。映し出されたラウムの心を探るように凝視して呪いを紡ぐ。
「道化よ、我が声を聴け。無力ゆえ姑息な手に縋るか。鏡を直視せよ。映る汝は、真に汝か」
于吉の訥々とした声が徐々にラウムの声音へと変わっていく。まるで自分自身に語りかけられるようだ。聴き入ると催眠や自己暗示と同じで『そうだ』と思い込まされてしまうのだろう。
しかしラウムは鼻で笑った。責めるだけの言葉では何一つ響いてこない。
「わざわざドーモ。ボクが弱っちーコトは、ボクが一番知ってるヨ。お礼にもう一本もらっておこウ」
ラウムの視線が于吉の左手をつかまえる。手首から先が消え去り、鏡が粉々に砕け散った。
大成功🔵🔵🔵
効果1【無鍵空間】がLV3になった!
効果2【能力値アップ】がLV6になった!
ソレイユ・クラーヴィア
連携アドリブ歓迎
残るは于吉のみ
引き続き足場状況には気をつけて行きます
宙に展開した鍵盤で「鐘」を演奏
不可視の使者を呼び、背後からの一撃を狙います
船を壊さぬよう、攻撃はできるだけピンポイント
相手の動きをよく観察して
ここぞというタイミングで打ち込みましょう
反撃は展開した魔力障壁で軽減
良いのですか?
ここで船を転覆させては、魏軍へ特攻作戦が出来なくなりますよ
と挑発すれば反撃を手加減してくれないでしょうか
どんなに気をつけても、長期戦となれば損傷箇所も増えるというもの
仲間と連携して速攻を心がけます
仲間の苦手属性はディフェンスし畳み掛け
人々の脱出を見届けられないのは心残りですが
あちらも上手くいきますように
鏡が砕け、船が軋み、風が逆巻く。そんな騒々しい戦場に荘厳な鐘の音色が加わった。打ち鳴らされる鐘の正体は一つの楽曲だった。
フライトドローンの上で曲を演奏しているのはソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)だ。彼の眼前にはピアノの鍵盤が浮かんでいる。両手に装着したグローブ型VR楽器が宙に投影したものだ。
いま奏でられている幻想独奏曲「鐘」には固定の楽譜がない。楽譜と呼べるものがあるとしたら、それはソレイユが身を投じている戦場そのものだった。
ソレイユは一歩引いた位置から戦況を見渡した。律動を刻みながら、敵味方に生じる隙を見逃さずに裁きの鐘の旋律を弾く。鐘を鳴らすたびに不可視の使者が雨雲を割って降臨し、于吉にとって最悪のタイミングで攻撃を仕掛けていた。
感情が極端に薄い于吉であったが、幾度も入る邪魔がソレイユによるものであると察すると、彼への反撃が苛烈になっていった。
初めは魔力障壁で受け止めきれていた天変地異が次第に抑えられなくなっていく。おんぼろ船にとうとう大きな亀裂が走るに至り、ソレイユは于吉の限界が近いことを察した。
「良いのですか? これ以上嵐を起こすと船が転覆してしまいます。魏軍への特攻作戦が出来なくなりますよ」
「滅びよ、滅びよ」
呉軍側の事情を踏まえたソレイユの言葉にも于吉は耳を貸さない。壊れたように呪いを吐くだけだ。無感情に見えた于吉の本質が憎悪と破壊の塊であると露見した瞬間だった。
おんぼろ船の空が黒い雷雲に覆われていく。水面も大きく荒れ始めている。強風に煽られフライトドローンを活かした空中戦も難しくなってきた。
「手が付けられなくなる前に速攻で畳みかけましょう」
ソレイユの曲調が嵐に負けじと激しさを増す。仲間たちも呼応して、一斉に連撃を仕掛けた。
猛毒を帯びた鉤爪が于吉の右手を腐らせて落とす。鋭利な刃が残る蜘蛛脚をことごとく断つ。接近を拒む暴風雨がそよ風に変換されて散らされる。
最後に特大の鐘がこだまして黒雲から一条の光が射した。不可視の光は稲妻のような速さで于吉を貫き、その息の根を止めた。
于吉が楼船へとまっすぐに落下する。衝突の衝撃でおんぼろ船は限界を迎え、崩れながら長江へと飲みこまれていった。
天変地異が過ぎ去って周囲には正常な天候が戻る。
脱出した呉の民の幸運を祈りながら、ソレイユたちディアボロスは赤壁を後にした。
大成功🔵🔵🔵
効果1【光学迷彩】がLV2になった!
効果2【アヴォイド】がLV2になった!