リプレイ
平良・明
紅花さんと潜入工作です
船に水が入ってきたらどうするか
まあ、水を掻き出して穴を塞ぐのですが
ふさげないほどの水が入ってきたらどうするんでしょう
まずは水中をこっそり行って、穴を開けるところから
【水中適応】は紅花さんに任せて、長江の水底を静々と進んでいきます
万が一のために、光り物は隠して隠密行動です
船体にとりつけたら、「インスタントトーチカν」を使い
「折り紙」で作るのは鋭い爪持つ虎
侵入する場所は誰も驚かせないように、船底と甲板の間くらい
音もなく船体を【一刀両断】して船内にお邪魔します
やる事がいっぱいなので、ここからが本番
だから「缶コーヒー」一杯飲んで、気を引き締めていきます
杏・紅花
明サンと海のなか、助けに行くよお
【水中適応】をあたしと明サンにかけて、水の中をすいすい泳いでく
水面には出ないように、音を立てないように、なるべく水底、気をつけて進もう
お魚の群れとかウミガメさんがいたらいいな、そしたらその群れに便乗させてもらえるし
色とりどりの鱗やヒラヒラする尾鰭は見ていて楽しいし、群れに紛れて姿も隠せて一石二鳥!
船体にくっついたら、あとは明サンにおまかせ
虎の折り紙、たてる爪
あたしの爪の力もお貸ししましょーか…って思ったけど、がおがお、強そうな虎だから、大丈夫かなっ
黄泉王・唯妃
アドリブ&連携歓迎
ふむ。たまには人助けもいいですか。
もたもたしている時間はなさそうですから手早く片付けましょう。
【水中適応】、そしてパラドクスを使って水中を跳ねるように移動します。
船底に辿り着いてしまえば木製の船ですから力業で側面に穴をあけることくらいは可能でしょう。
「さて、と。後はこの人数を落ち着いて脱出させるだけですか。まあ口八丁手八丁でなんとでもしてみせますが」
草薙・美珠
●目的
人々を捕らえて犠牲にしようなど許すわけにはいきません。
敵将である妖魔を倒してみせます。
●準備
水着で船まで泳いでいきましょう。
泳ぎは得意なので任せてください。
えっと、出発前に用意した水着は……
って、なんですか、この紐みたいな水着はっ!
さては寝ている間に神様が……
こ、こんな水着を着るくらいなら、下着の方がまだましです……
●行動
隠密行動なら、草薙流退魔術の隠形の術(光学迷彩)で姿を隠して、船まで泳いでいきましょう。
これなら、下着だということもバレないですよね?
船に到着したら、船の水面より上部の側面に草薙剣を突き立て穴を開けて潜入口としましょう。
脱出口として使うときのために大きめに開けます。
ベアタ・アンシュッツ
水中に潜って、船に潜入かあ……途中で天然うなぎとか居ないかな?
蒲焼蒲焼……なんて言ってたら、うなぎが服に潜り込んで来たりしたら大変だ
まあ、まずは一般人救出が先決だけど
【水中適応】を得て、ある程度深いところを進んで、敵に見つからないようにしないとね
目的の船を見つけたら、仲間の潜入工作が敵に見つからないように、仲間と違う場所の船腹を、壊さない程度に加減して、杖でバンバン叩いて、敵の注意をこちらに向けておく
敵の気配がしたら、深みに潜って隠れよう
敵が甲板や船中から確認しても何もなければ、『たまたまイルカでも当たったんだろう』という感じで、見落としてくれることに期待
といった計略で、敵を撹乱してみよう
セシリー・アーヴェンディル
【アドリブ/連携歓迎】
無辜の民を犠牲にしようとは許しがたいな。
それで孫権が勝ったとして何が残るというのか。
いや、クロノヴェーダ相手にそんな思考は無意味だったな。
避難は水中適応が使えるだろうが、1万もの一斉移動は骨が折れるな。
いっそのこと船を乗っ取れればいいのだが。
私は自力で泳いでいくしかないな。
上着を脱いで水の抵抗を極力減らそう。
武具が不安だが、戦いがある以上おいていくわけにはいかない。
なので何か浮力を確保できるものが欲しいな。
【平穏結界】を使い、できるだけ静かに移動すればバレにくいだろう。
●行要好伴、住要好邻(旅は一人より、仲間がいると心強い)
楼船『暴炎』。
その巨大な船体は、どこか……おぞましい雰囲気を醸し出していた。
例えるなら、死体を詰めた棺桶のよう。実際、船内には、これから殺害するための『生きた』人間が詰められている。
時間は真夜中。空には月が昇り、月明かりが周囲を照らしている。が、時折かかる雲が、月を隠して暗闇をもたらしていた。
「ううっ……泳ぐことは得意ですが……」
そんな中。下着姿の草薙・美珠(退魔巫女・g03980)が、平泳ぎで『暴炎』へと向かっていく。
「……なあ、脱ぐ必要はあったのか?」
その隣には、瓢……瓢箪を多数つなげ、即席の浮き輪にしたセシリー・アーヴェンディル(ルクスリア・g02681)が、武具を付けたまま、やはり泳いでいた。
泳ぎつつ、セシリーは。頭の中で先刻の会話を思い出していた。
岸辺にて。
目測で距離を測ったところ、近くは無いが泳いで行けられる距離に、『暴炎』は停留していた。
ならば、泳いで接近するのみ。
「私は、杏・紅花(金蚕蠱・g00365)さんに『水中適応』をかけてもらい、水中から向かう予定です」
平良・明(ダイヤのK・g03461)は、そう言った。
「ええ。あたしと明サンは、水の中をすいすい泳いで、船に取り付く予定よぉ」
紅花に続き、
「私も、『水中適応』と、パラドクスで向かうわ」
黄泉王・唯妃(灰色の織り手・g01618)と、
「あ、私もです」
ベアタ・アンシュッツ(天使のハラペコウィザード・g03109)もまた、同じ方法を口にした。
「ですが……敵の監視も緩いとはいえ、見張りを立ててるはず。なので私が、見張り兵の注意を自分へ向けたいと思います」
そう言ってベアタは、自身の作戦を述べた。
「となると、『水中適応』を使わないのは、私と美珠だけか」
「ちょっと、不安になってきましたね」
とはいえ、水中に何かが潜んでいないとも言えない。それに、美珠は己の退魔術から、『隠形の術(光学迷彩)』を用いるため、見つかる可能性は低い。
「ですが、最悪見つかったとしても。私達が囮になれば、皆さんが船に乗り込める可能性は高くなります」
「……確かに、一理ありますね」
「じゃ、決まりねぇ。ちょうど周囲も暗くなって来たしぃ……」
明と紅花の言葉に、皆は頷き合い、
水辺へと、向かった。
(「で、こうなったわけだが……」)
セシリーはその直後に、美珠が物陰に隠れたのを思い起こす。
何かと思い後を付けると、
「きゃっ! セシリーさんですか、驚かさないで下さいよ」
「……服を脱いでるのか? まさか、裸で泳ぐつもりか?」
「って、何言ってるんですか! 水着に着替えるんです! ええと、出発前に用意した水着は……」
「……って、本当に『それ』を着るのか?」
「な、何ですかこの水着! ほとんど紐じゃないですか! さては神様、寝てる間に……」
「ああ、そういう事か。……神に仕える立場の者同士、思うんだが……仕える神、選んだ方が良いんじゃないか? 邪神から宗旨替えしても、罰は当たらないと思うが」
「こ、こんな水着着るくらいなら、下着の方がましです……え? 何か言いましたか?」
「……いや、何でもない。そういえば美珠、ひとつ聞きたいんだが」
「なんですか? ……ううっ、下着で泳ぐしかないですね。傷まなければいいんですが」
「……水着を『最初から服の下に』着て、ここに来るって発想は無かったのか?」
「……あ!」
と、いつも通り、邪神の陰謀ならぬ『淫』謀に、まんまとのせられた美珠。
だが、侵入時には『光学迷彩』を用いるとのこと。その状態になればほぼ透明になるため、下着姿でも、全裸でも、大して変わりはない。
セシリーは、武具は付けたままだが、水の抵抗を減らすため上着は脱いでいた。
しかし念のため、近くの空き家で拝借した数個の瓢箪を、即席の浮袋代わりに使用。移動時に『平穏結界』を用いて静かに移動しているため、見つかる事はまずないだろう。
ともかく今のところは、何もない。このまま『暴炎』へとたどり着ければいいが……、
「……ひゃっ!」
美珠が、いきなり変な声を。
(「何やってるんだ、静かに……ひゃっ!」)
セシリーもまた、声が出そうになった。
自分の太腿やお尻のあたりに、何かが触れたのだ。
(「……なんだ?」)
確かめるすべはないが、おそらくは……、
(「早くどこかに消えてくれ、全く……」)
そう願うセシリーだった。
●忙中出错(焦りは失敗。急ぐ時ほど落ち着け)
「あー、いた。天然うなぎ」
水中を進むベアタは、水上の美珠とセシリーの影に、
細長い、蛇のようにくねる影が絡んでいるのを見た。
「あらあら、あれは美珠さん? なんで彼女の方に無駄に絡んでるのでしょう。でもまあ、蒲焼にしたら美味しそう……」
とか言っていたら、自分の服の中に、入ろうとするうなぎを発見。
「って、だめだめ。入らないで」
それを手で払うと、そのまま『暴炎』へと先行する。
(「じゃ、お先に」)
水中で、後方から付いてくる三人に挨拶すると、
ベアタはそのまま、先へと進んだ。
河川の水底には、様々なものが落ちている。見ると、小型の沈没船……軍船だけでなく、一般人が使う船もあった。まだ新しいものもある。
「…………」
それらを見下ろしつつ、
ベアタは、先へと進んだ。
ベアタの後姿を見届けつつ、紅花は水底近くを泳いでいた。
そのすぐ隣には、明が。
ぎりぎり水底に付かない程度に潜りつつ、二人は進む。
長江の川底が、ディアボロスたちの目前に広く、大きく広がっていた。沈没船が多く沈んでいる様子は、まるで船の墓場。
「お魚の群れとか、カメさんとか、いないかな……」
紅花はそんな事を思ったが、あいにく魚群とは遭遇しなかった。
だが時折、魚の一種が目前を横切っていく。若干地味目ではあったが、滑らかな鱗に、優雅に泳ぐ様は、紅花の目を楽しませていた。
そして、その頭上を。
唯妃が、水中を跳ねるかのように移動する。その動きは、どことなく……水上を滑るように動く、蜘蛛や虫を思わせた。
「……水上のお二人も、今のところ異常は無さそうね。さて……」
次第に近づいてきた、『暴炎』の船底。
取り付くべき目標を目の当たりにした彼女は、
「さて、それじゃお願いしますわよ、べアタさん」
先行している彼女の事を、考えていた。
『暴炎』の船腹。回り込んで、皆とは反対側の船腹に付いたべアタは、
(「それじゃ、始めますか」)
杖で、表面を叩き始めた。
『?』
甲板上に立つ『蕩蛛宮妓』は、
船腹から響く『音』に気付き、水面を覗き込んだ。
『どうした? なにがあった?』
仲間の一人が、近づいてくる。
『いや、音が聞こえた。何かがぶつかる音だわね』
『魚か、流木がぶつかったんじゃないか?』
『だが、その割には……おい、また聞こえてきたわよ!』
蕩蛛宮妓、その一体。赤色の目をしたそいつは、水中へと視線を向ける。
青色の目を持つ相棒も、同じく水面を覗き込んだ。
『私にも聞こえた……降りて調べてみる!』
そう言って、赤目は、
糸のような頭髪を伸ばし、それをロープ代わりにして、船腹から下がっていった。
「!?」
(「下がって来ました!」)
ベアタはすぐに、水中へと潜り込む。
赤目の蕩蛛宮妓が、糸を垂らして甲板から船腹へと下がって来たのは、その直後。
『おい、何かあったか?』
『いや、何もない。だが……なんだか怪しいわ』
じっくりと、蕩蛛宮妓は調べている。
その様子を、ベアタは水中から見上げていた。
(「敵の『注意』を引いたのは、うまく行ったようですが……」)
しかし、ベアタは一抹の不安を感じていた。
そいつは、その場から離れようとしなかったのだ。
こうやって、船腹を叩き、注意を引く。敵が確認しに来る。ここまでは予定通り。
しかし、敵は中々、その場から離れない。このまま『たまたまイルカでも当たったんだろう』と思ってくれるように期待していたが、
そうこうしているうち、ベアタは、
(「え? 二人目に……三人目!?」)
二人目、三人目の蕩蛛宮妓が、糸を出して伝い降りてくるのを、水中から見た。
彼女らも『船腹を叩いた何か』を探しているに違いない。だが……これからどうしたものか。
このまま、こちらに注目させていたら、バレずに済むかもしれないが……、
反対側で、仲間が船腹に穴をあける時に音を立てたら。見つかってしまうかもしれない。
(「どうすべきでしょう、このままにしておくべき? それとも……」)
悩むベアタは、水底へと目を転じた。
そこには、沈没船があった。
●有些路看起来很近走去却很远的、缺少耐心永远走不到头(目標を達成するには、辛抱が必要)
「……? あの、セシリーさん」
「なんだ? うなぎが下着の中に入ったか?」
『暴炎』に、水上から接近しつつあった美珠とセシリーは、
「って、違いますよ! ……船の甲板を見ると……こちら側に、見張りが立ってないみたいです……」
「……確かに。ベアタがうまくやったようだな」
小声で、そんな会話を交わしていた。
反対側の船腹に、注目させる作戦。成功したようだ。
そして水中から二人を見上げる明、紅花、唯妃も、
二人を見つつ、暴炎の船底、船腹へと急いだ。
『暴炎』の船腹、水面に、明は頭を出した。
「ふふっ、お疲れ様ですわぁ、明サン」
彼に続き、紅花も水面に。
「さて、と。それではここに、穴をあければ良いのよね」
唯妃もまた、二人に続き水上へ。
「任せなさい。力技ですぐに……」
唯妃が拳を握り、腕を引いたが、
「ま、待ってください! まずは、この草薙剣で……」
美珠がそれを止め、草薙剣を取り出し、船腹に突き刺した。
「いや、ここは私に任せてください」
と、明は折り紙を取り出す。
「穴をあける場所は……船に浸水したら、やはりまずいでしょうから、あの辺りでいいですかね」
明は、水面からやや離れた高い場所を指差した。
「では……『インスタントトーチカν』」
取り出した折り紙が、たちまち折られていく。折り上がったのは、『虎』。
丁度用いた折り紙は、虹の七色。顕現した虹色の虎たちは、四肢の爪を船腹に突き立て、上り、
指差した丁度の場所に、その爪で切り付けた。
『一刀両断』、折り紙の虎たちが放った、鋭い爪の斬撃は、
分厚い船の船腹に、人ひとりが出入りできるほどの入り口を切り出していた。
「流石は明サン、あたしの爪をお貸しする必要、なかったみたいねー」
がおがお、と、悪戯っぽく微笑む紅花。
「また、必要な時もあるでしょう。その時にお願いしますよ」
明はそんな彼女に、そんな言葉をかける。
「じゃ……まずは私から……」
そして、その開けられた穴へ、
唯妃が、最初に入り込んだ。
反対側の船腹には、
『蕩蛛宮妓』、その一体・赤目が、
水中に、『何か』が、浮かんでいるのを見た。
『見つけたぞ! そこだ!』
赤目は、浮かんでいる『何か』へと、尖った手足を突き刺す。
確かな手ごたえ、それは……、
『なんだこれは、船の竜骨?』
水上に引き上げると、それは船の木材の一部のようだった。どうやら水底の沈没船、その残骸の一部が浮かんできたのだろう。見ると、その周囲に。破損した木材が、次々に浮かんでは、再び沈んでいく様子が認められた。
『そうか、先刻までのぶつかる「音」は、どうやらこれのようね』
『ふん、人騒がせな』
納得してしまえば、問題を追っていた者はそれ以上追及はしない。
他の蕩蛛宮妓たち、蜘蛛の美女たちも、それはおそらく同じ。
甲板上に引き上げる様子を見たベアタは、水中で安堵していた。
(「……沈没船、近くに沈んでいて良かったです」)
沈没船を、『クリームソーダ☆ストリーム』で吹き上げ、残骸を浮かばせ、ぶつける。
とっさの思い付きだったが、うまく行って良かった。
人影が消えた頃合いを見計らって、水の上に顔を出し確かめてみる。どうやら皆、引き上げた様子……、
『一体、何の騒ぎだ!』
だが、重々しい口調が甲板上に響くのを、ベアタは聞いた。
(「……!」)
水面を覗きこまれる直前、間一髪のところで、ベアタは再び水中へと潜り込んだ。
「……あれは……あれが、『曹純』?」
いまはこうやって、水中に居るのに。まるで見透かされているかのような感覚を、ベアタは感じていた。
離れているのに、確かに感じたのだ。殺気めいた、強烈な『存在感』を、凄まじい『気配』を。
いずれ、あれと戦わねばならない。だが、今は……、
船内に入り込む事。まずはそれが重要。
ベアタは再び潜り、反対側の船腹へと向かっていった。
●必须敢于正视、这才可望敢想、敢说、敢做、敢当(物事に正面から取組むからこそ、目標に到達できる)
ベアタはすぐに、仲間たちが開けた『穴』を発見し、そこから内部へと引っ張り上げてもらった。
「これで、全員潜入できましたね! ……ベアタさん?」
美珠が、黙ったままのベアタに問う。
「どうした? 顔色が悪いが」
セシリーからも問われ、
「あ……だ、大丈夫です。それよりも、これからの事を……」
そうだ、『曹純』という怪物に、気圧されている暇はない。
「ええと、まずは……。現在は船底部に、千人以上が無理やり押し込められてる状態。なので、パニックを起こさせず、『説得し、落ち着かせて説明する』……でしたね」
自分自身を落ち着かせるかのように、ベアタは確認する。
「ええ。それから、我々が『曹純』を倒した後。彼ら『一般人たちが、自力で脱出できるように』準備をしておく、ですね」
明がその後に続けた。要は、逃走用のルートを作っておく、という事。
「千人以上もいるんですからねぇ。流石に私達だけじゃあ、ちょっと無理よねぇ」と、紅花。
「で、一つ『一般人たちの説得』、二つ『逃げ道の準備』。他には?」
唯妃の問いには、
「ええと……三つ目は。老人や子供、病人といった、体力が低い人たちは、逃げる時にどうするか。『その対抗策を、可能な限り用意する』……でしたね」
美珠が答えた。呉の民は、一般人であっても基本泳ぎは得意。しかしそれでも、傷病者や老人子供に無理をさせるわけにもいかないだろう。
「それと、四つ目。火をつけて燃やすための、油壷。これも船底から一段上の各部屋に仕掛けているらしいからな。それら『油壷の処理』も忘れてはならないだろう」
最後は、セシリー。
「……すべきことは『四つ』。これら全部、やり切れるでしょうか」
弱気になったベアタだが、
「いやいや。ディアボロスならぁ、これらをやり切れて当然でしょう? ね、明サン?」
その弱気を打ち消すかのように、紅花が明に寄り添う。
「ええ、その通り。不可能を可能にさせる、そうでなければ、勝てませんよ」
明はそう言って、『缶コーヒー』を取り出すと、それをあおる。
「……ここからが、本番。気を引き締めていきましょう」
明の言葉に、ベアタは鼓舞される。
(「そうです。本番はここから……なら、気合を入れて行かないと!」)
ベアタに続き……ディアボロス全員が、戦いに臨む戦士の目つきとなっていった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【一刀両断】LV1が発生!
【水中適応】LV3が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
【平穏結界】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV4が発生!
【ダブル】LV1が発生!
杏・紅花
あたしは油壺の処理をしに上へ駆け上がるっ
なるべく面倒ごとは避けたいから、【光学迷彩】と【平穏結界】も活用して船内の上部へ
各部屋に仕掛けられてるみたいだから、虱潰しに探索してく
何かに利用できそうなら、油壺をいくつか下に持っていってもいいのかも
活用できないぶんは、なるべく音を立てずに、壺にヒビを入れて油を流していこう
人が泳げなくなるかもしれないし、水の中には流さない
万が一敵に見つかったら、増援呼ばれる前にまぼろしの蚕蛾を飛ばして幻惑
敵も静かに処理したい
油壺の処理が無事に済んで、他になにか出来そうなら、ご老人や子どもの退避をお手伝い
船内の壁壊したら、木が浮き輪代わりになるんじゃないかなっ
平良・明
船底でしょぼんとしている方々に、逃げる心の準備をしてもらいます
消すべき炎もあれば、燃え上らせるべき炎もあります
上で破壊活動している紅花さんの【士気高揚】も頼りに
暗闇の中【完全視界】で様子を伺い、まずは逃げる気力のありそうな人に話しかけます
暗中にあるからこそ、僅かな光が勇気の炎を燃やす糧
そして勇気の言葉とは、暗闇の中を静かに伝っていくものです
そんな光の先に、次へと向かう道は確かにあって
纏う着物は、繋いで弱っている人を助ける縄にも出来ます
壺の油を吸い込ませれば一時の浮きにもなるかも
一人が助かるには、全員が周到にならねばなりません
派手に狼煙をあげるその時まで
今この場では、静けさこそが勇気の言葉です
黄泉王・唯妃
アドリブ&連携歓迎
流石に皆さん手慣れていますね。
やるべきことは手が足りているようなので【避難勧告】で危険な場所を避けさせて避難させましょう。
女子供老人には声を掛けつつ、皆がパニックにならないように周囲に気を配りましょう。
「さあ、ゆっくりで大丈夫です。ここには誰一人も足手まといは居りません。皆等しく生き残るべき仲間なのですから、お互い助け合ってここを脱出しましょう(建前)」
草薙・美珠
●目的
囚われている人々の脱出の準備をおこないます。
●手段
ああっ、着替えを岸に置いてきてしまいました!
し、仕方ありません。下着姿のまま先に進みましょう。
船底部までは草薙流退魔術の隠形の術(【光学迷彩】【平穏結界】)で敵に気づかれないように移動します。
囚われている人々のところに着いたら、治癒の術(【退魔の聖光】【活性治癒】)で病人や怪我人を癒やします。
【退魔の聖光】の治癒効果は、直接接触して霊力を流した方が効果が高まります。
衰弱が酷い病人や怪我の酷い人には、肌を露出させた下着姿で寄り添い、霊力を流して治療をおこないましょう。
……まさか神様、これを見越して露出の多い水着を用意したのでしょうか?
ベアタ・アンシュッツ
多分、ひとりだけじゃあ足りないから、【口福の伝道者】でいもようかんやドライソーセージを増やして、捕まってる人達に渡して食べてもらおう
さすがに全員が満腹になるのは難しいから、分け合って貰うようにお願いするね
あとは、逃げてもらうときの算段か……浮きになるものを作るのって、結構手間が掛かるんだよね
時間的に厳しいなら、敵の資材が入ってる樽や戸板、補修用の木材なんかの保管されてる場所を見つけておいて、脱出の際に浮きの代わりに……人々に使ってもらうとか?
どうせ、敵は全部倒すんだろうし、そうすれば見張りも居なくなるから……敵の資材分捕り放題じゃないか
というわけで、【光学迷彩】、【平穏結界】使って資材を探そう
ハナ・フリードル
敵に見つからない様に潜入して船底に向かうっス。【平穏結界】を借りるっス。
用意しておいた水中灯を灯して声をかけます。助けに来たっスよ。安心して欲しいっス。
ナイフで縄を切って回るっス。ほどいた人にも手伝って貰うっス。
新宿から食料と大型ペットボトル入りの飲料水を持ち込む。【口福の伝道者】で増やして分配。
ペットボトルごと増えるなら簡単な浮袋になるっス。
食料を配る段取りが済んだら、脱出口の確保に向かう。
喫水線の近く、海に降りやすい辺りの高さの船壁に斧で穴を開けて回るっス。早く逃げられる様に複数開けといた方がいいっスね。
戻って、頼りになりそうな人に逃走路を伝えてタイミングや手順等の具体的な話を詰めるっス。
●兵来将挡、水来土掩(兵来れば将遠し、水来れば土掩す)
「……ううっ、着替えを岸に置き忘れるなど、不覚でした……」
と、いつも通りにドジこいた草薙・美珠(退魔巫女・g03980)だったが、
「……でも! 草薙流退魔術『隠形の術』で姿を隠せば、見られる事はありません!結果おーらいといったとこです!」
と、自身を無理やり鼓舞しつつ、船底部へと向かう彼女だった。
少し前。
楼船『暴炎』の船腹に穴をあけ、ディアボロスたちは船内への潜入を成功させていた。
平良・明(ダイヤのK・g03461)は、
「ええと、杏・紅花(金蚕蠱・g00365)さん以外は、私を含めて船底部の囚われ人たちの救助に向かう……という事でよろしいですか?」
行動を確認していた。
「ええ。美珠さんと、私……ベアタ・アンシュッツ(天使のハラペコウィザード・g03109)。それに……」
「この私、黄泉王・唯妃(灰色の織り手・g01618)と」
「ハナ・フリードル(人間のサウンドソルジャー・g06921)! 以上で間違いないッスね!」
船底には、千人ほどの人間が詰められている。たったこれだけの人数では、対処しきれないかもしれない。
しかし……それでもやらねばならない。
「じゃ、明サン。あたしは『油壷』の処理をしに、この上の階層へとむかうわねぇ?」
「ええ、頼みます」
かくして、一人は上へ、他の皆は下へと向かい、
すぐに、囚われていた一般人たちが詰め込まれた、その場所を発見した。
「……あ、あんたらは!?」
「しっ、助けに来たッスよ、安心して欲しいッス」
用意していた水中灯をともし、光を。
船底近くに位置するその船室は、広く、大きく……まさに人間を、無理やり詰め込んだといった感が強かった。
多くの人間が、ディアボロスたちの来訪に驚いており、騒ぎに……、
は、ならなかった。騒ぐほどの体力が残されていなかったのだ。
否、脱出する体力を残さないように、ここに詰め込んだと言った方が正しいだろう。まるで満員電車や、養鶏場、家畜を詰め込むだけ詰め込んだ畜舎のよう。いや、畜舎や養鶏場ですら、ここに比べたら快適だろう。
実際、全員がぐったりとしていた。
そして、ハナは。
(「……やっぱり、足首に足かせ付けて、ロープ通してるっスね」)
全員がそうではない……おそらく、手間の問題だろう……が、それでも船が沈む事になったら、確実に数百人は道連れで死ぬようになっている。それに、家族や恋人、大切な人でもつなげておけば……見捨てて逃げでもしない限り、自主的に残ってくれる。
その足かせは、まだ幼い子供にも通されていた。
(「…………吐き気をもよおす……」)
心の中で、邪悪に対する激しいむかつきを覚えたハナだったが、
「……いや、今はその時じゃあないッスね。大丈夫っス。ちょいと助けに来たんで、皆さん落ち着いて下さいッスよ」
怒りは、後にとっておこう。今必要なのは、笑顔と、行動。
ハナはナイフを取り出し、そのロープを切りにかかった。
「……ふう、さて……」
ぐったりした老人たちが、同じく疲れ切った子供たちが、恐れるように視線を向けているのを唯妃は見た。
「さあ、大丈夫です。ここには誰一人、足手まといは居りません。皆等しく生き残るべき仲間なのですから、お互い助け合ってここを脱出しましょう」
彼女としては、多分に建前も含んだ言葉であったが。
だがその言葉に、囚われていた彼らは、絶望でなく希望を見出したかのように、顔を上げた。
「……もし、そこのお方」
「……俺か?」
明は、多少は元気そうな、気力もまだありそうな人間を見つけ、問いかけた。
「名前を、教えてもらえますか? あ、自分は明、平良・明と申します」
「……閃々だ」
「閃々さん。見ての通り私たちは、皆さんを助けに来ました。お話しを聞いてもらえますか?」
「なんで、俺に?」
「……現在、あなたには逃げる気力、それに体力が残っているように見受けられました。皆さんを回復させてから……皆さんを逃がすために、協力してほしいんです」
「……悪いが、そんなに気力は残ってない。それより……海有を、近くにいる爺さんを助けてくれ……」
病気で死にそうなんだと、明は閃々からの言葉を聞いた。
「わかりました、その人はどこに?」
●熟能生巧(技能に習熟するなら、実際に経験し学べ)
海有は、すぐに見つかった。だが、既にぐったりしている。
「おじいさん、待っててください……」
と、下着姿の美珠が、彼に寄り添い、その肌を直接接触させた。
「……『退魔の聖光』。今、回復させます……」
そのまま、抱きつく。こうする事で、対象者への治癒能力を上げる事が可能になるためだが……、
術は効果を発揮し、かの老人は回復。しかしなぜか、あまり回復した様には見えなかった。
「……すまんの、お嬢さん。助かったが……」
老人の、海有の様子からして……長患いとともに、『絶望』というもう一つの病に冒されている事が原因だと、美珠は悟った。
「わしはもういい。できれば、あちらの子供の方を……」
見ると、ぐったりしている幼児や、その母親らしき者が、衰弱しているのが見て取れた。ディアボロスたちが持ち込んだ光源だけでは、中々見渡す事は出来ないが……おそらくはかなりの量の人間たちがこうなっているに違いない。
その多くが、老人に女子供。その数に驚いた美珠だが……同時に、怒りを覚えていた。
単純であり、抜けており、そのせいで何度も痛い目に遭ってきた美珠だが。しかしそれでも、目前の状況を作った存在は、『悪』以外の何物でもないことは理解していた。
その『悪』を討つ前に、まずは目前の者たちを救わねば。
「……通してください、今行きます!」
下着姿だが、今は恥ずかしがっている場合ではない。治癒を行う場合だ。
すぐに近くへと向かい、衰弱や怪我が酷い者、病人たちを優先して、自分の肌に触れさせ、
「……『退魔の聖光』、草薙大神よ、聞し召せと畏み畏み申す!」
美珠の体内の霊力を、彼ら彼女らに流し、治癒させていった。
(「……まさか、神様。こうなる事を見越して、あの水着を?」)
ただエッチな目的で用意したんじゃなかったんですね。……いや、でも神様の事ですし、やっぱりエッチな事が優先で、こうなったのは結果おーらい……。
いやいや、今は治療する事が優先です! 仮にえっち目的だったとしても……、
「……この状況を作った『悪』に比べれば、些細な事です!」
「……食料、2リットルペットボトル……ちょっと待っててッスね」
ハナは、自身がそれらを口にして……それらを『増殖』させた。
「……『口福の伝道者』、便利ッスよねこれ」
それらを運び、民たちへと持って行くハナ。彼等は最初、手間取っていたが、それでもなんとか包装を取って飲み食いができるように。食料はビスケット状のハイカロリーのもので、初見は奇異の目で見ていた。
「私も増やしました。……ああ、皆さん。分け合って、ゆっくりと口にして下さいね。慌てないで」
同じく『口福の伝道者』で、ベアタも食料を増やしていた。彼女が持ち込んだのは、ドライソーセージに羊羹。こちらも最初は抵抗あったようだが、すぐに慣れ、がつがつと食するように。
「皆さん、食料と水は十分にあるので、奥の方へ、まだ行き届いてないほうへ分けて下さいッス!」
「けが人やご病気の方、年配の方や女性や子供にも、行き届かせるようにしてくださいね!」
僅かだが、飢えと渇きはなんとかなりそうだ。二人はそう判断した。
「……うまくいったようね。奥へは私が届けましょう」
唯妃がその場にやって来た。ハナは、
「お願いするっス! あと……自分は外への脱出口を確保するんで、ちょいと席を外すッス。あ、足元をロープで繋がれてたら、そいつも切っておいて欲しいス」
この人数を滞りなく脱出させるためには、脱出用の出口をもっと開けておく必要がある。
「それと、奥に配りに行った際には、皆さんにお伝えくださいッス! ……ペットボトル、その水が入った透明な瓶は、簡単な浮袋代わりになるんで、全員それを肌身離さず持ってるように……って、そんな感じでお願いするッス!」
「わかりましたわ! ……ベアタさんは、どちらへ?」
「私は、念のために浮きになるものがないか、探してみます。上階で紅花さんも動いてますし、機材置き場でもあれば、それで『浮き』が作れないかと」
言いつつ、彼女は室外に。
そして、ハナは。トマホークを取り出した。
海に降りやすそうな位置、喫水線近くの高さの船壁に当たりを付けると、
「……よっ!」
斧の刃を、そこに叩き付けた。
「……『光学迷彩』と、『平穏結界』は張ってはいるけど……」
ちょっと、油壷の数……尋常じゃあないわねぇ。紅花は口に出さず、心の中で呟いていた。
最下層の船室、その一つ上の階は、船室や船倉が多く存在していた。
油壷は、2~3個ほどが人間の手で抱えられるほどの大きさだが、それ以上を一度に持ち運ぶ事はできない。大きく重く、何か運び出す道具でもなければ無理だった。
そして、油壷は複数個が縄で束ねられ、導火線として油を染み込ませたらしい麻縄が伸びていた。
麻縄は、扉の外へと伸びている様子。どこかに繋がっているのだろう。
とりあえず、一部屋から油壷を2~3個ほど持ち出した後。切裂花の爪で導線を切断、更には、壺に爪を打ち込みひびを入れて、中身が漏れるようにしてから退散……を繰り返した。
「……ええと、部屋数多すぎないかしらぁ」
虱潰しに探索し、20部屋ほど回ったあと……それ以上は数えるのを止めた。
見付けた油壷のほとんどには、穴をあけて流れ出るようにしてはおいた。導火線と思しきロープも、切断済み。当初の作戦通り、油壷自体の処理はうまくいってはいる。
が、数が思った以上に多かったのは計算外。さすがに疲れて、一休み……と、廊下の壁にもたれていたら、
「……っ! ……お客様の、お出ましかしらぁ?」
何者かの気配を感じ取った。それもかなり近い。
すぐに紅花は身構えた。
(「増援呼ばれる前に……」)
敵を蚕蛾で幻惑し、速やかに処理。『切裂花』の爪で敵を切り裂かんと、足音が近づくのを待った。
気配の主は、徐々に近づいてくる。
そして、その者が、その姿を紅花の前に現すと……、
「……紅花さん?」
相手もまた、紅花に気づき声をかけてきた。
「……ベアタさん?」
警戒を解いた紅花は、張り詰めていた空気を吹き飛ばすように、安堵の深呼吸をするのだった。
「……つまり、こういう事か? 俺が皆を、脱出するように指揮を取れと」
閃々の言葉に、明は頷いた。
「はい。これから私たちは、甲板上にいる蟲将たちを倒してきます。この船は、あと数刻の間に、確実に沈没します。なので……皆さんは自力で逃げて頂きたいんです」
「…………」
乏しい光源しかなかったが、その中でも閃々が浮かべた表情を、明は見ることが出来た。
「……『できっこない』。閃々さん、そのようにお考えですか?」
先回りするように、明が問いかけた。
「! ……そ、それは……」
「そう思われるのは、もっともです。私もまた、強制はしませんし、できません」
明は静かに、しかし辛抱強く、語り掛けた。
「このような絶望的な状態で、『逃げ道を作るから自分たちで逃げろ』と言われても、戸惑うだけでしょう。無責任に思われるかもしれません。私たちも、できるならば皆さんに寄り添い、逃げるのを手助けしたいのですが……」
それはできないんです。そう付け加えた。
「……なぜだ。なんで最後まで、助けてはくれないんだ」
「……私達の、二番目に優先すべき事は、船上に居る蟲将たちを討ち取る事だからです」
「二番目? じゃあ、一番は?」
「……皆さんを、生きたまま脱出させる事です」
「だったら!」
「助けたいです。ですが、蟲将たちの目を盗み脱出する事も、蟲将を放置して脱出する事も、不可能に近いです。あれらとは戦い、殲滅させる予定ですが、そうなった場合……戦いに専念しなくてはなりません。言い方を変えれば……『皆さんを脱出させつつ、蟲将を討つ。両方やらなくてはならないが、蟲将との戦いは……』」
そんな『片手間』では、倒せない。それだけ敵は強く、油断ならない相手。
「加えて、皆さんは千人以上います。そんな多数の囚われ人を確実に逃がす、というのまた……私達の手には余ります。なので……」
「なので、逃げ道を用意するから、自分で逃げろ、という事か。地獄から抜け出るために、蜘蛛の糸程度の登り綱を下ろしたようなもんだな」
不満を隠さず、閃々は呟く。
「……だが、それでも助ける好機をくれた事には違いない。わかった、あんたらに協力する。俺はなにをすればいい?」
「ありがとうございます。それでは……」
今のこの場では、できるだけ静かにして下さいと、明は閃々へ伝えた。
●言者不必有德 何者 言之易而行之難(何者も言うは易く行なうのは難し)
階上。
「じゃあ、ベアタさんも『導火線』を切ってきたのねぇ?」
「ええ。油壺の数が多すぎなのは、厄介でしたが……」
紅花とベアタは、今まで回った部屋の情報を共有していた。
「で、紅花さんが回った限りでは、資材置き場は此処だけ……のようですね」
そして今、二人は資材置き場と思しき部屋に。補修用の木材やボロ布などはあるにはあったが、ほぼ端材ばかりで、船の修復には役に立ちそうにないものばかり。
「……樽は無いけど、大きな木の桶は5~6個。それにロープが二巻きほど。どちらも、それほど傷みは無さそう……」
となると、なんとかできるかもしれない。十分ではないにしろ、この一抱えもある大きさの木桶をロープで縛れば、即席だが『浮き』になる。
「……紅花さん、運ぶの、手伝ってもらえますか?」
数刻後、大き目の木桶を運ぶ、二人の姿があった。
船底。
ハナは、手斧を振るい続け、
「……脱出する出口、四つ目が開通しましたッス!」
疲労困憊したが、船腹に脱出口を穿っていた。
美珠もまた、治癒の術を施していく。
「……これで、よしと。他に……治療が必要な方は……?」
あらかた見回したが、どうやらほとんどの者が回復したようだ。しかし、落ち込んだ様子は変わらず。
「……どうしたものかしら、このままじゃ、自力で脱出してと言っても……」
不安げに、唯妃が彼らを見回す。
それらを横目に、
「明サン、油壷の処理、あらかた終えましたよぉ。それから……」
まだ油が入ったままの壺と、ベアタと運んできた木桶、ロープとを持ってきた。
数分後。
「で、閃々さん。それに……海有さん、花水さん。それから……」
明が、先導役とした数名を集めた。全員が、食料と水、美珠の術により、体力を回復させている。
「これから、脱出の方法を説明します。私たちはこれから甲板上に出て、皆さんを殺そうとした呉軍の蟲将に戦いを挑みます。なので、見ての通り……船壁の横に、脱出用の穴を開けました」
喫水線にぎりぎりかからない位置に、ハナの斧が切り飛ばした穴が開けられていた。場所は全部で四か所。できるだけ大きく開けたものの、パニックになって押しかけられたら、パンクしかねない。
「皆さんは、まず『冷静』になって下さい。決して慌てないように、動くべき時に、動くように心がけて下さい」
それに加えて、ベアタらが作った即席の『浮き』を、開口部近くに運んでいた。
ベアタと紅花が運んできた木桶に、油を染み込ませたボロ布を蓋ごと包み込み、上から縄で縛って作ったもの。その数は四つ。
更に木桶には、切り出した船腹の板が縛り付けられ(これは紅花のアイデアを取り入れたもの)、空のペットボトルを結び付けた縄が長く伸びている。
「できるだけ自力で泳いでいただきたいですが、子供や年配の方など、それほど体力が無い方もいるでしょう。そういう方は、この『浮き』に捕まって下さい。岸までならば、充分に保つと思います」
それから……と、明は続ける。
「最後に、大事な事を……。一人が助かるには、全員が周到にならねばなりません。もしも今すぐに逃げたとしたら、『蕩蛛宮妓』に見つかり、元の木阿弥になりかねません。今この場では、『落ち着く事』と、『静かにする事』こそが、皆さんの勇気ある行動です。派手に狼煙をあげるその時まで……皆さんは、このまま船底でじっとしていてください」
「逃げる時まで、静かにしておけって事だな。で、俺たちはいつ脱出すればいい?」
閃々が問い、明はうなずいた。
「私たちはこれから甲板に上がって、『蕩蛛宮妓』と対戦し、彼女たちの注意を引きます。私達が出て行ってから、少し経過した後に騒ぎが聞こえてくるはずなので……騒ぎが起こったら、その頃合いを見て脱出して下さい。判断は皆さんにお任せします」
「……わかった、やってみる」
閃々は頷き、海有、花水もそれに続く。
「あと、もう一つ。子供たちは出来るだけ親兄弟、肉親や知り合いと一緒に行動して下さい。決して……離れないように」
花水の娘、小風が母親にしがみつく。
「……皆さん、私たちは全力を尽くします。どうか皆さんも……生き延びる事を諦めず、全力を尽くしてください」
明に続き、
「ええ、明サンやあたしたちが与えた機会、無駄にしないでねぇ?」
紅花がウインク。
ハナに美珠、ベアタ、唯妃も、並んで頷いた。
(「……さて、すべき事はし終えました。後は……」)
後は、自分たちが蟲将を、クロノヴェーダを倒すだけ。ここからが本番、私たちのステージ。
明は、改めて誓った。蟲将たちを倒してみせると。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【士気高揚】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
【避難勧告】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV2が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV6になった!
ハナ・フリードル
アドリブ、連携歓迎っス。
よっしゃあ、後は敵を蹴散らしてみんなが安全に逃げられる様にするっスよ!
仲間とタイミングを合わせて甲板の敵に奇襲を仕掛けます。
派手にやり過ぎて船が壊れたり燃えたりしたらヤバいっスかね。今回は優雅にいくっスよ。
バイオリンを構えて勇壮な円舞曲を奏で【ヒロイックシンフォニー】。剣を構えた騎士達の幻影を呼び出し、攻撃して貰うっス。
同時にサイキックオーラを展開。「オーラ操作」で周囲の大気を遮るバリアにして毒に対抗します。
浸透してくる毒には気合いと根性で耐えるっス。大勢の命を背負ってるんス!絶対負けないっスよ!
杏・紅花
さてっ!
みんなが無事逃げてくれるって信じて、あとは敵を派手に切り裂くだけだぞお
脱出に気づかれないように、派手にいこっ
まずは挑発、注意をこちらへ向ける
やーい、三国一よわい呉軍!あたしたちに勝てやしないんだから、大人しく降伏しろお〜っ
敵の髪の毛?が襲ってきたら、捕まったふり
なあんて、それ、ニセモノでしたあっ!
ホンモノのあたしは敵の死角をついて不意打ちで攻撃
鉤爪でばっさり自慢の御髪を切っちゃえ
あっちこっちで次々身代わり作って鬼ごっこ
管狐の「天」にも駆け回ってもらって、敵を翻弄していくぞっ
平良・明
大軍と言われれば、気も上がります
今まで静かにやってきたぶん、派手にやっていいというのは気が楽です
最初の一撃、大事です
「幾重火」で折り出す形はカニ
蜘蛛より手足の数が多いから、カニです
敵が多いなら、手数で攻めればよいよのです、たぶん
装備のディガーパックを広げて爪で甲板を突き破り不意打ちをかけます
あとはひたすら殴って蹴って投げ飛ばして、です。
乱戦で背後を取られないように、船の形状を活かしつつ立ち回り
ちぎっては投げちぎっては投げしながら数を減らしていきます
囲まれそうになれば【フライトドローン】で船外に足場を作って一時離脱
息を整えて再度殴り倒しに向かいます
草薙・美珠
●目的
捕らわれた人々が脱出する時間を稼ぎます。
●心情
蕩蛛宮妓との戦いを避けることもできますが……
ここはあえて戦って注意を引いて、捕らわれた人々が脱出できるようにします。
●手段
草薙流退魔術の結界(【光学迷彩】【平穏結界】)を用いて、甲板上の敵に気づかれないように物陰を移動します。
隙を見て【神樹の蔦】を発動して敵の身体に蔦を巻き付け動きを封じたり、植物の壁を生み出して下層の人々の脱出に気づかれないようにしましょう。
なるべく目立つように立ち回り、逃げながら敵の注意を引き付け時間を稼ぐように振る舞います。
ですが魅了の妖力を持った毒を受けてしまい、
そのせいで術の制御に失敗して蔦が暴走して……!?
ベアタ・アンシュッツ
うへえ……手足多い蟲だね
そう言えば……蟲って、殺されそうになると卵とかばらまいて、少しでも種を保存しようとするそうだね
お前は……どうかな?
船の上の階層に向かい、途中で蜘蛛に遭ったら、人々が逃げるのと反対側の船腹に穴を空けて、【飛翔】して甲板に向かおう
そうすれば、人々の避難してるのに……敵が気づくのが遅くなるだろうしね
甲板に出たら、空中戦、撹乱、地形の利用を活かし、【飛翔】して楼閣や帆柱を盾にしつつ、リングスラッシャーで敵群を攻撃しながら挑発
ほーら
カサカサ地べた這ってるだけじゃあ……私は捕まらないよ☆
敵の毒の粒子は、天候予測を活かし風上に動いてやり過ごす
そんなんじゃ
蝶々どころか蜉蝣も捕まらないね
●不入虎穴 焉得虎子(虎穴に入らずんば虎子を得ず)
甲板への道は、思った以上に入り組んでいた。
というか、『暴炎』の内部、特に船の底部から上部へは、普通には登れない造りになっていたのだ。
船漕ぎ奴隷が上がって来れないようにするためか、甲板へ出るための階段がその階にはなかった。
「……無いッスね、上へあがる階段」
ハナ・フリードル(人間のサウンドソルジャー・g06921)が、あちこちを探るが。やはり見つからない。
ひょっとしたら、階下からは開けられない仕掛けになっているのかと思ったその時。
廊下の天井に、切れ目があるのが認められた。そして、その周囲をあちこち探ってみると、
「……動いた!」
ベアタ・アンシュッツ(天使のハラペコウィザード・g03109)が、隠されていたレバーを発見。それを握って動かすと、
天井から、上へと向かう階段が降りてきた。
それに足をかけ、上っていくディアボロスたち。そして、
階上に辿り着くと、そこからは。
「…………!」
『空気が変わった』事を、草薙・美珠(退魔巫女・g03980)は感じ取った。
どこか、殺気めいたものが充満する空気を、肌で感じ取り、察したのだ。
「……外から空気が、入ってきます。という事は……」
ベアタの指摘通り、甲板に近い、という事に違いない。が、
それは、自分が獅子身中の虫……敵の内部に自分が居る事に他ならない。
「……どうするッス? ここはひとつ、派手にぶちかますッスか?」
「わ、私も……!」
ハナと美珠の言葉に、二人の仲間がそれを制した。
「ここはひとつ」
「私たちに、まかせてほしいわぁ」
いきなり、甲板の下側から、『それ』が内部よりぶちやぶり、出現した。
甲板上の『蕩蛛宮妓』達は、その轟音に驚き、甲板の一点へと視線を向ける。
内側から、下から現れたそれは、
「こんばんは、蜘蛛のお嬢さんたち」
平良・明(ダイヤのK・g03461)が背負っていた、ディガーパックから伸びた、爪を持つ二本の機械式アーム。
(「うわー、やはり蜘蛛なだけあって、脚がいっぱいですねえ……」)
自分も両手足と、この『両手』を合わせたら、六脚ですが……と、心の中で付け加える。
機械式アームを用い、一気に自身の身体を引き上げ……、
大きく跳躍し、甲板上へと降り立った。
「はぁい、ご機嫌いかが?」
それに続き、杏・紅花(金蚕蠱・g00365)もまたその姿を現す。
「……ねえ、明サン。この蜘蛛たちが……『三国一弱い』コトで有名な、呉軍かしらぁ?」
『弱い』の部分を、ワザと強調し、紅花があからさまな挑発を。
「まあ、見ればわかるわぁ。蜘蛛サンたちは、整った見た目でオトコを陥落させるコトは得意そうだけど……それ以外は、からっきしそうだもんねぇ」
にやにやと嘲り、さらに、
「というか、このお舟に乗せてるのは娼婦かしらぁ? まあ、三国一弱い呉軍ですしぃ、こうでもしないと臆病な兵士は動いちゃくれないでしょうし……きゃっ」
『……何者か知らんが! 我らを愚弄するとは良い度胸ね!』
数体の『蕩蛛宮妓』たちが、己の髪を長くのばし……紅花を絡めとったのだ。
「ぐうっ……がはあっ!」
『蕩蛛宮妓』たちの髪……『黒糸籠慮殺』。が、周囲から紅花を囲み、絡みつき、締め上げていた。
『私たちが弱い? それ以外の戦いにはからっきし? これでもそんな口が利けるか!』
『どうだ! 苦しいか? さあ、今の言葉を取り消せ。そうすれば手足を切り落とすだけで許してやるぞ』
完全に絡み付かれた紅花は、逃れられない。苦し気に動くが、逃れるすべは無かった。
「紅花さん!」
駆け寄ろうとする明の前には、別の蕩蛛宮妓が立ちはだかった。助けに向かう事を許さない。
「……あ……」
やがて、紅花は口を開いた。
「……あたしたちに勝てやしないんだから、大人しく降伏しろお〜っ、やーい、三国最弱の呉軍!」
『……そうか、よほど死にたいらしいな……死ね!』
「ま、待て! 止めて下さいっ!」
明が懇願するが、後の祭り。
紅花の身体は、細く鋭い、『黒糸籠慮殺』が食い込み、
その身体はバラバラに、細かく切断されてしまった。
『はーっはっはっはーっ! 馬鹿め、我らを愚弄したからだ! その罪とともに地獄へ……』
「地獄へ?」
勝ち誇っていた、蕩蛛宮妓が、
『……え? こ、これは……』
紅花の切裂花、鋭き爪の斬撃を背中から受け、その胴体を両断されていた。
『……な、何故……』
「なあんて。それは『綾の綻(ニィエンスー)』……ニセモノでしたあ! 『地獄へ』、その後のセリフはなにかしらぁ?」
『な、なんだっ!?』
『確かに黒糸には、手ごたえが……ぐわあっ!』
「『止めて下さい』……私は頼みましたよ?」
予想外の状況に、ついて行けず戸惑う彼女らへ。
明が、ディガーパックから伸びる機械腕を伸ばし、蜘蛛女どもを殴りつけ、叩き付け、掴み投げ飛ばした。
「頼みを聞いてくれない……という事は、こちらもあなた方の要望を聞く必要はない、と判断します。ああ……今から『違う』というのは受け付けません。ですよね、紅花さん?」
「そういうコト。さてさて、クモさんたち……真っ先に地獄へ行きたいのは、だぁれ?」
明とともに、歪んだ笑みを浮かべつつ、紅花が甲板上へ躍り出た。
『おのれ! この虫けら共が!』
怒りとともに周囲を囲み、襲い掛かる蕩蛛宮妓たちだったが、
「『天』! 遊んであげてっ!」
いきなり現れた、紅花の管狐『天』に動揺。その隙に、数体の首が掻っ切られた。
「さて……警告は終わりました」
「ここからは、お楽しみのお時間よぉ」
明と紅花が、甲板上で駆け出した。
●说曹操曹操就到(噂をすれば影がさす)
「……紅花さん、すごいですね」
「ですね、一瞬で偽の自分を作り、それに敵を襲わせ、隙を見て刺客から攻撃するとは、ね」
美珠とベアタは、感心していた。
『綾の綻(ニィエンスー)』、絹糸を瞬間的に紡ぎ、身代わりを作って敵にそれを襲わせ、自身は死角から攻撃する。黒糸籠慮殺の髪の毛に絡まれたのは、その身代わりだったのだ。
明と紅花が開けた穴から、美珠がまず這い出る。続き、ベアタとハナも出ようとしたが、
『! おい、そこに誰かいるのか!?』
数体の蕩蛛宮妓が接近してきたため、離れざるを得なかった。
「……くっ、結界のために、すぐには見つからないでしょうが……」
下着姿で、甲板上に出た美珠。彼女は草薙流退魔術の、結界を発動させていた。『光学迷彩』と『平穏結界』の作用が、彼女の発見を遅らせてはいる。
だが、今回ばかりは『発見』されねばならない。物陰に隠れ、甲板上を移動している美珠は、
明と紅花が暴れまわっているのとは別の場所に向かった。後部甲板上では、まだ数名の蕩蛛宮妓がその場に立ち、警備している。
『おい、前甲板の方に侵入者だ。手こずっているらしいから、応援を!』
『わかった! ……待て、船底の方から、何かが出ているような……』
気付かれた! 急がないと!
「待ちなさい! あなた達を、ここから通すわけにはいきません!」
結界を解除し、美珠は自らの姿を晒す。
『こちらにも侵入者か? しかも裸だと?』
『ふん、裸で何も持たずに我らに挑む気か。どこの痴女だ?』
「なっ……誰が痴女ですか! それに裸じゃありません! 下着は付けてます!」
などと言いつつ、美珠は、
「……草薙大神よ、聖なる植物により諸々の敵を、罪穢れを、祓い給え清め給え!」
己が手で印を組み、甲板上に神樹の蔦を生やした。
「『草薙流退魔術・神樹の蔦(ヴァイン・バインド)』! 畏み畏み申す!」
神聖なる緑色の蔦は、長く伸びては蜘蛛の女怪どもに絡みつく。たちまちのうちに、蕩蛛宮妓たちを縛り上げ、宙に浮かせた。
(「これで……皆さんへの注目を逸らせる事もできました!」)
美珠の攻撃により、この蜘蛛女たちの動きを止め、そして一般人たちの脱出もごまかすことが出来た。
だが、別の方向からは、新たな蕩蛛宮妓の一隊がせまりくる。
「このっ! ……あ、あれ?」
新たに、『神樹の蔦』を放つものの……、毒々しい、光る粒子が己を包み込む事にも気付いてしまった。
『バギィ!』という音とともに、船の側面の板が、内側から打撃を受け、
そこから、ベアタが飛び出し、空中へと舞った。
『空を飛んで逃げたぞ! 甲板に上がり迎撃しろ!』
彼女を、蕩蛛宮妓達が追う。
そして、別の階段を通り、ハナもまた甲板に上がった。
「そんじゃあ、海賊みたいに派手に……行きたいとこッスが、今回は優雅に、行くっスよ!」
バイオリンを構えた彼女は、演奏を始める。奏でるは、勇壮な円舞曲。
「『ヒロイックシンフォニー』……さあ、騎士さんたち、今ここに出るッス!」
召喚されし、剣を手にした騎士たちは、
甲板上、明と紅花へ向かおうとした蜘蛛女たちへ、蕩蛛宮妓の一隊へ突撃した。
ハナの音楽に合わせ、騎士たちの剣が蜘蛛女たちへと切り込まれ、切り裂き、突き刺し、引導を渡していく。
『な、なんだっ!……ぎゃあああっ!』
「さあ、私の呼んだ『英雄』たち! 存分にその剣、振るうッスよ!」
演奏に熱が入り、バイオリンから旋律が放たれる。
「これは……感謝します、ハナさん」
「ええ、明サンを助けて頂いて、助かりますわぁ」
その援護を受け、二人のディアボロスの仲間たちは感謝の意を。
そして空中からは、
「さあさあ、私を捕まえられるかしら?」
リングスラッシャーを、甲板上の蕩蛛宮妓たちへと放つベアタの姿があった。
空中を『飛翔』しつつ、楼閣や帆柱などの間を飛び回り、蕩蛛宮妓たちを翻弄しつつ……その注目の目を集める。
(「……良かった、船底の一般人のみんなは、無事に脱出できてるようね」)
空中を飛びつつ、その様子を確認し終えると、
「ほーら、かさかさ地べた這ってるだけじゃあ、私は捕まらないよ☆」
敵を嘲り、ひらりひらりと舞って見せる。
しかし、飛び回りつつも……どこか不安も覚えていた。
敵は、確か『毒』も用いるはず。それをどこで……、
そう思った次の瞬間、
「! あれは……!」
美珠が膝を付き、続き、
明と紅花も、困惑するようにふらつく様子が見えた。
そしてハナもまた、そのバイオリンの旋律が『狂い』始めた。勇猛な音楽が、次第に何か……外れた音程のそれになっていったのだ。
●忙中有错(急いては事を仕損じる)
「……!? こ、これは……」
美珠は、『毒』を受けた事を知った。
『迷色落風塵』。粒子状になって散布されたその毒は、魅了の妖力を以て、集中力と判断力の低下、混乱とを美珠にもたらしていく。
当然、術の制御など、そんな状態ではできるはずもなく、
「え……きゃああっ!」
自身の戦いの武器たる神樹の蔦が、制御しきれずに暴走。自らに絡みついてきた。
『……あらあら、これはまた』
『この小娘、自分で自分を捕えてるわよ。とんでもない未熟者か、あるいは……襲われたがりの好き者か』
蜘蛛女たちは美珠のその失敗と、失敗から生じた失態とを、楽しみつつ眺めている。
「ひゃああ! だめ、止まって! ……そ、そんなところに入らないで……あああっ!」
自分の体を、蔦は容赦なく撫でまわし巻きつき、その表面を刺激していく。
「ひゃあっ! あ、あひぃっ!」
そして、身体を覆う僅かな下着の内部に入り込み、蔦は暴れまわった。蔦はもどかしい刺激しか与えてこず、
(「もっと……そこじゃなくて、もっと気持ちいい所を……って、違います!……ああっ!」)
身体に伝わってくるのは、物足りない快感のみ。絶頂には程遠い。
そして、美珠が身体をくねらせる様子を、
『これは傑作ねえ』
『くくくっ、迷色落風塵の毒を受けて、ここまで淫乱さを見せるなんて、大したものだわ』
蕩蛛宮妓たちは楽しみつつ眺めていた。
『騒楽猥舞穿』の毒は、
(「ちょっと、ヤバいかしらぁ」)
紅花も感じていた。だが彼女は先に警戒しており、
毒の粒子を受け、倒れたのも身代わりの一つだった。しかし、
「……くっ」
明までは、そうはいかない。昏倒しかかっている。
「明サン?」
助けようとしたが、
『どうやら、この男がアンタの弱点のようだね!』
蕩蛛宮妓たちは、明に紅花を近づけさせなかった。彼を囲み、紅花の複数作った身代わりを次々に……『騒楽猥舞穿』、煽情的に舞いつつ、尖った手足での刺突攻撃を放つ。
「……痛っ!」
『はっ、本物に当たったようだね。おやおや? 偽物はもう品切れかい?』
『本物の方がブサイクじゃないか、顔を切り刻んで、整形してやるわ!』
嘲笑う蕩蛛宮妓たちが、本物の紅花を手足の爪で負傷させていた。
既に甲板の端に追い詰められ、逃げ道は無い。管狐の天も、負傷して追い詰められていた。
明もまた、焦りを禁じ得ない。ディガーバッグの機械腕が、敵の攻撃を受け止め、弾く。が、
囲まれてしまった。
『おい、男! 「頼みを聞かない」とか言ってくれたな……この状況でも、まだ同じ事が言えるか? ああ?』
明は自分の周囲を、蕩蛛宮妓たちに完全に囲まれた事を見て取った。
『よくも同胞を殺してくれたな。その礼はたっぷりしてやる。ああ……毒のせいで動きが鈍ってるようだね』
『甲板に穴をあけて階下に逃げるか? あいにくだが、既に階下には、迷色落風塵の毒をたっぷり撒いてある……つまり、お前に逃げ道は無いって事だ』
どうやら、そのようだ。空を飛ばない事には、攻撃を受ける事は必至。しかしあいにく、自身に飛行能力は無い。
しかも、蕩蛛宮妓たちは。あの髪の毛攻撃も仕掛けようとしている。
「このままじゃ……やられますね……」
明は呟き、
「明サン!」
引き離された紅花が叫んだ。そして、
『喰らえ!』
周囲から、蜘蛛女たちの髪の毛が、明へと襲い掛かった。
●种瓜得瓜,种豆得豆(瓜の種をまけば瓜が取れ、豆の種をまけば豆が取れる)
このまま無策であったなら、明はこの場で死亡、もしくは、傷を負ったに違いない。
しかし、明は『対策』をしていた。
こうなった時、囲まれた時の『対策』を。
「……!」
明は、跳んだ。
『!? 馬鹿め、川に飛び込み逃れるつもりか!』
『あいにくだが、その行動は予想済みだ!』
蕩蛛宮妓たちは、確かに明の跳んだ先を予測していた。既に船腹から髪をロープとして下がり、明が落ちる位置に、待ち構えていたのだ。
それを見ていた紅花は、
「……じゃ、明サンの『これ』は、予想してたかしらぁ?」
にやり……と、不敵に笑みを浮かべ、呟いた。
明は、既に折った折り紙……折り鶴を飛ばし、
「……『幾重火(イクエビ)』。今こそ……はなひらく」
宙に浮くその折り鶴を足場として、空中に留まり、
再び、跳躍。甲板上へ降り立った。
……蕩蛛宮妓たちの、包囲網の外に。
『!なっ!?』
予想外の行動を取られた彼女たちは、慌てふためいたが、後の祭り。
「遅いですよ、蜘蛛のお嬢さん!」
ディガーパックの機械腕が、蕩蛛宮妓たちを容赦なくつかみ、投げ飛ばした、殴りつけた。
「さすがは明サン! あたしたちもいくよ、天!」
紅花もまた、向かっていく。
『ほざけ! お前も囲まれている事を忘れたか!』
蕩蛛宮妓たちが突きかかったが、
「はい、残念! 空を飛べる仲間は、ここにいるわよ!」
ベアタが手を取り、紅花を引き上げた。
そのまま、空中を舞い上がる。
「助かったわぁ、ベアタサン!」
『逃がすか!』
と、髪を伸ばし捕らえようとするが、
『!? また、この狐か!』
天が邪魔を。その隙に、
「私の事、忘れてもらっちゃ困るッス!」
ハナの操る騎士たちが、蕩蛛宮妓たちの不意を突き、後ろから攻撃。
『ぎゃああっ! お、おのれぇ……』
その整った顔を歪ませつつ、蕩蛛宮妓たちは次々に甲板上へ倒れていく。
「あ! やつらの一部が船内に逃げたッス! 自分が追いますね!」
ハナは甲板から船内に入り、
「ええ……この数なら、あたしと明サンで、片付くわぁ」
「そうですね……行きますよ!」
甲板に降り立った紅花は、明とともに。
甲板上に残った、残り少ない残存の蜘蛛女たちへと向かっていった。
そして、数刻後。
全ての蕩蛛宮妓たちは、彼等の前に倒れ、その屍をさらしていった。
『ひゃはは、どうした、まだイケないのかい?』
『痴女らしく、はやく淫らに呆けてみな!』
後部甲板上では、蕩蛛宮妓たちが囃し立てていた。
(「そんなこと、言われても……ああっ!」)
自分の蔦に囚われていた美珠は、その様子を見られ、神樹を操れず、逃れる事もできなかった。悪しきものを縛るはずの蔦が、前後不覚になり操る事が出来ない。
そして蔦は、美珠を愛撫してはいたが……蜘蛛女たちの言う通り、絶頂に至る前に動きが止まってしまう。中途半端に気持ちよくするだけで、お預け状態のまま。身体が火照るが、拘束されてる状態では、自分の手で……『する事』も出来ない。
何より戦いの最中なのに、下着姿で、こんな状態で、それを見られている事も屈辱。
(「ど、どうすれば……んっ、くうっ!」)
考えあぐねていると、
『ぎゃあっ!』
『て、敵!? ぐああっ!』
空から、ベアタが放ったリングスラッシャーが、蕩蛛宮妓たちを切り裂き、
美珠を拘束していた蔦をも切り裂いた。
「大丈夫ですか? なんだか色々と、大変な状況になってたようですが……」
そのまま、美珠の近くに降り立つベアタ。
「……あ、はい! 大丈夫、です……!」
中途半端な快感にうずく自分を叱り飛ばし、美珠は、
ベアタに頷き、ふらつきながらも立ち上がった。
「……っく! 大勢の命を背負ってるんス!絶対負けないっスよ!」
ハナは、船内に逃げた蕩蛛宮妓たちを追い、ヒロイックシンフォニーで召喚した騎士たちとともに、自身も内部へと入っていった。
船内は毒に溢れていた。が、サイキックオーラを展開し、しのぎつつ……ハナは先へ進む。
やがて、
『どうせ死ぬなら、貴様らも道連れだ!』
最後の蕩蛛宮妓の一群が、廊下を突撃してきた。
「こちらも……負けられないッス!」
と、ハナも演奏を響かせる。雄々しき楽曲に操られる騎士たちと、蜘蛛女たちとがぶつかり合い、
ヒロイックシンフォニーの騎士の前に、最後の一人が倒れ、崩れ落ちた。
「……あれは……」
船腹の外壁は、穴が穿たれており、その穴からは外の様子が見えた。
そこからハナは、船から去っていく一般人たちの姿を……ベアタが作った『浮き』に捕まり、見えないくらいに遠くに逃れた、民たちの姿を認めた。
「……逃げられたようッスね、めでたいッス」
安堵の溜息をついたハナだが、
『……莫迦め、めでたいのは、お前らの頭だ……』
瀕死の状態になった、蕩蛛宮妓の最後の一人が。倒れたまま、嘲るように言葉をかけた。
『私たちは、所詮は雑兵……、虎衛兵に、曹純様は、我らなど比べ物にならないほどの豪傑……お前らなど、すぐに地獄に送られる……』
「…………」
ハナは言い返そうとしたが、そいつの鬼気迫る口調の前に、ためらわれた。
『呉軍、万歳! 曹純様に、栄光あれ! ……我らに続き、お前らが地獄に来る事を、楽しみに……』
それだけ言うと、蕩蛛宮妓は事切れた。
甲板上に戻ったハナは、明たちが全ての蕩蛛宮妓を倒した事を知った。先刻に船腹部に下がっていたものも含め、その全てを地獄へと送り届けた様子。
それとともに、『毒』……迷色落風塵もまた、徐々に薄れていく。しかし……、
不安と殺気は、濃くなっていった。これから敵の本陣、敵の総大将たちと相対する。
「……確かに、浮かれてはいられないッスね」
これから本格的に、敵と戦う事になる。もっと気を引き締めないと。ハナは改めて、気合を入れ直すのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
【光学迷彩】がLV2になった!
【フライトドローン】LV1が発生!
【植物活性】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
【アヴォイド】LV1が発生!
【命中アップ】がLV2になった!
【ガードアップ】がLV8になった!
杏・紅花
集団格闘術を使うたくさんの相手、いっせいに御相手するなら、流れるように舞闘しよ
一礼しまして、どうぞよろしく
相手がバランス崩すように急所狙って、鈴錦の鈴をわざと鳴らして翻弄
力の強そうな一撃は避けながら
腕を主軸にして脚でぐるぐる蹴り飛ばしたり、地面すれすれで敵の足元払ったり
動きをとめずに連撃を繰り出していく
あたしの一撃が決定打にならなくても、混乱を生むには充分でしょっ
カブトムシって強いよね、特にそのツノ
でもあたしがキョーミあるのは、奥にいるもおっと強そうなアンタらの親玉なんだっ
平良・明
おとなしく通してくれそうにないですが、おとなしく通るつもりも無い
曹純のところまで道を均していきます
信あればこその連携なのか、そもそもが虫の習性なのか
とにかく、屋内戦でしっかり連携取られるというのはやっかいなものです
群れを船と置き、その連携に穴を開け沈ませる
「信」を用いて滑らかに接近し、一匹ずつ蹴りつけて
大ぶりでも小ぶりでも「アンカー」の重みを活かし、蹴り飛ばし叩き潰し
どんどん前へと進みます
足音なんてのも要らない無駄なので、床を叩く音はできるだけ少なく
蹴り脚つぎ脚、きれいに繋いでいきましょう
砕けるのは虫の殻だけでいいのです
ハナ・フリードル
アドリブ、連携歓迎っス。
みんな逃げられたみたいっスね。
気を引き締めて戦うっス。
仲間と合流して船内へ。
可能なら【平穏結界】【光学迷彩】で隠密行動。奇襲を仕掛ける。灯りは使わず【完全視界】て対処。
【ダンシングギャロップ】使用。
「ダッシュ」して敵陣に切り込み、「ダンス」「グラップル」で舞う様なサファーデの蹴りから「衝撃波」を放ち攻撃。甲殻の隙間を狙う「貫通撃」。
室内戦で、机や荷物等があるなら「地形の利用」で足場や障壁に利用。
「一撃離脱」の心得で、一つ所に身を寘かず戦場を駆け回り敵を「撹乱」、反撃に備える。重心を揺るがさない滑る様な移動で回避。
【壁歩き】の降下を借りられるなら、壁や天井も足場にする。
草薙・美珠
●目的
残るは大将を守る魏軍虎衛兵ですね。
正面から戦ってくる相手に見えますので、こちらは策を弄していきましょう。
●準備
虎衛堅牢陣対策として、甲板上に草薙流退魔術の【罠結界形成】で罠を張り巡らせます。
捕縛することしかできませんが、動きを止められれば十分です。
そこを草薙剣で攻撃します。
動けない相手であれば、どんなに硬い甲殻をまとっていても、その隙間を剣で貫けます!
●手段
虎衛堅牢陣を使わせるため、わざと突出して草薙剣で攻撃します。
敵の逆襲の一撃を誘って罠結界に誘導します。
が、それより早く攻撃を受けて拘束されてしまって……
そのまま押し倒されてしまい、逞しい角がっ!?
さらに自分で仕掛けた罠まで!?
ベアタ・アンシュッツ
うわぁ……ムキムキマッスルに黒光りがいっぱいだねえ
カブトムシは嫌いじゃないけど、あんなにおっきいのはご勘弁
船内だと戦いづらいし、敵を甲板で待ち受けて、空中戦、撹乱、地形の利用を活かし、【飛翔】し楼閣や帆柱の間を縫うように飛び回って、隙をみてリングスラッシャーで敵を攻撃
敵が船内に逃げようとするなら……計略を活かし、帆柱や舵なんかを狙うように見せて、敵が出てこざるを得ないように仕向けよう
ほーら
帆や舵を壊して、航行不能にしちゃうぞ☆
敵が大地をひっくり返しても、私は飛んでるしひっくり返らないけど……上から大地が降ってきたりしそうなら、船を巻き込まないように水面の上に待避して、攻撃の回避に専念しておこう
●趁热打鐡(鉄は熱いうちに打て)
楼船『暴炎』。
その甲板上から、警備の蜘蛛女『蕩蛛宮妓』、全個体撃破を確認!
後は、この内部に潜むトループス級『魏軍虎衛兵』、そして、アヴァタール級『曹純』と対決、これを撃破。
「……まずは、虎衛兵から、ですね」
平良・明(ダイヤのK・g03461)、戦闘用ブーツ『アンカー』で床を踏み、戦いに備える。
彼の隣りに並び立つは、
「ふふっ、あたしと明サンとなら、どんな相手も敵じゃあないわぁ」
杏・紅花(金蚕蠱・g00365)。彼女もまた、『暴炎』の甲板中央、楼閣の扉前に立っていた。
「閉じ込められてた一般人の皆さんは、みんな逃げられたみたいッスね。……あとは、こん中の敵、それだけッス!」
彼らと合流したハナ・フリードル(人間のサウンドソルジャー・g06921)、それに、
「ううっ、すみません。またも囚われてしまいました……」
「あーっと、あのつる草、扱いムズかしいみたいよねー」
草薙・美珠(退魔巫女・g03980)が、ベアタ・アンシュッツ(天使のハラペコウィザード・g03109)に運ばれてきた。変わらず下着姿ではあったが、身体も、その下着も汚れ、ぼろぼろに。
「大丈夫ですか? なんでしたら後ろに引いて待機されては……」
明が申し出るが、
「いえ、大丈夫です! それより、早く敵を討たないと!」
美珠はそれを辞退し、闘志に燃えていた。
「ま、そうッスね。それより……」
ハナもまた、楼閣を見上げる。事前に少しだけだが話合い、攻略法を決めていた。とはいえ、基本は臨機応変のアドリブ勝負ではあるが。
「……じゃ、確認。明サンとあたし、それにハナサンが船内でぇ……」
「私と美珠さんが、船外に誘き出し、甲板上で戦う……基本はそれでよろしいですね?」
その言葉に、全員が頷いた。
しかし、ハナは少しだけ、ほんの少しだけだが……『不安』を覚えていた。
蕩蛛宮妓の最後の一人が、死に際に残した言葉、
『虎衛兵に、曹純様は、我らなど比べ物にならないほどの豪傑。お前らなど、すぐに地獄に送られる』
小さな不安なれど、小さなとげが刺さったかのように……気になる。
しかし今は、その不安を恐れる時ではない。
まだ、露払いをしたにすぎない。この内部に、真に打つべき敵たちが存在する。
「……じゃ、行くッスよ」
己の不安を己で吹き飛ばし、ハナは、
楼閣の扉へと、向かっていった。
ディアボロスたちは、改めて楼閣を見上げる。その大きさは、小さなビル程度だろうか。窓の類はあまりなく……有っても、金属板で塞がれていた。
ベアタが空中から最上階へ向かっても、金属製の装甲で完全に防備されており、こちらからの攻撃を受け付けない様子だった。
「……外から火を放ったり、破壊しようとしたところで、あまり効果はなさそうですね」
と、ベアタは語る。
「となると……やはり一番確実なのは、扉から中に入って、階上を目指す、といった所っスね」
ハナの言葉に、全員が頷き……、巨大な扉へと手をかけた。
重い扉が開くと、その内部が明らかに。
そこは、あちこちに松明の明かりが掲げられた、広い部屋となっていた。奥の方には椅子が二つ、その隣には、上階へと向かう階段が。
そして、ディアボロスたちの姿を認め、椅子に座っていた者達が立ち上がった。
『魏軍虎衛兵』。
その名の通り、本来は『魏軍』の蟲将。しかし……今は呉軍に属し、呉軍将軍・曹純に忠誠を誓っている。
彼等の外観は、まさに甲虫……カブトムシが直立した、茶褐色の甲殻を持つ逞しい武人。
『……お前達か。先刻からの騒ぎの原因は』
『我ら、曹純様に忠誠を誓いし者。この先に進みたくば、我らを倒してからにするがいい』
彼らは武器を手にしていない。だが、そんなものは必要ない。
己自身が武器。そういった『気迫』『凄味』が、彼等からは伝わってくる。
「……草薙流剣術、参ります!」
草薙剣を手に取り、美珠は身構えた。
『……お前が相手か』
『よかろう、相手になってやる』
二体の虎衛兵が、頭を低く下げ、
『我が名は風雷兄弟、風角! 参る!』
『同じく雷角! いざ行かん!』
美珠へと突進した。
「早い! ……ですが!」
それらの打撃を、剣で受け流し、床を踏み、その甲殻へと切り付ける。
やはり思った通り、甲殻は斬撃を受け付けない。
「みなさん、この場は私が! 皆さんは先へ!」
「了解っス! 美珠さん、ご武運を!」
「頼んだわよぉ!」
「気を付けて!」
ハナ、紅花、明が、美珠の横をすり抜け、
上階へと向かっていった。
「……ここまでは、作戦通り、ですね」
「ええ、作戦通り……けど……」
美珠と、ベアタは、
『ふん、あえて向かわせてやったまでの事』
『上階に控えし同志は、我らよりも強き者。貴様たちでは勝てぬわ』
風角、雷角のそのような言葉に、少しだけ……焦りを感じていた。
●说曹操曹操就到(噂をすれば影がさす)
階段は上りづらかった。それでも階上に辿り着くと、そこには……、
吹抜けの空間が、ハナ、明、紅花を待ち受けていた。
その壁に階段が据え付けられ、更に階上へと向かう事が可能。しかし、
『ほう、これが闖入者どもか』
『我ら三兄弟は、将軍直属の兵士也』
『故に、心してかかって来るがいい』
三体の虎衛兵が、三人のディアボロスたちを待ち受けていた。
「……どうやら、ここで一戦交えないといけないようですね」
「構わないわぁ……どうせ戦わなくちゃあならないからねぇ」
「……自分も同じッス」
しかし、ディアボロスたちも不敵に振る舞う。
『死ぬ覚悟はできているようだな! 我ら甲鎧三兄弟! 我は長兄・天甲!』
『同じく、次兄・地甲!』
『同じく、三兄・人甲!』
三体の虎衛兵は、拳法の構えを取った。
「……行きます」
履いた『アンカー』の重みとともに、明は一歩を踏み込む。
「行くわよォ。『天』も、気合入れて!」
紅花も気合を入れ、
「私も、負けないッス! サファーデの蹴りは、中国拳法のそれに負けず劣らずッスよ!」
ハナもまた、構える。
両者は僅かな時間、にらみ合い、
次の瞬間、同時に駆け出した。
『どうしたどうした! 逃げ回るだけか!』
『歯ごたえが無さすぎるぞ! 殺される前に一撃を与えてみろ!』
楼閣の一階内部にて、ベアタと美珠は風雷兄弟の攻撃を回避していた。
(「くっ、船内だと飛び辛い……」)
ベアタはなんとか、飛行しつつも攻撃を回避し、リングスラッシャーを放つ。
が、甲殻に直撃しても、小さな傷を与えるのみ。
『ふん、手ごたえが無さすぎる。……児戯にも劣るわ!』
言いつつ、風角の拳や蹴り、角の頭突きがベアタを襲う。
「なら、これはどう!?」
室内の柱へと、リングスラッシャーを放ったベアタは……、梁や柱を風雷兄弟へと雪崩させた。
が、
『言ったはずだ、児戯にも劣る、と!……破ッ!』
それをものともせず、風角は拳を突き出した。
それと同時に放たれたのは……巨大な拳気。
『虎衛覇王拳』、容赦ないその一撃は、
「! ぐっ……がはっ……!」
狙い過たず、ベアタに直撃。そのまま室内の壁へと彼女を叩き付けた。
「……か、カブトムシは嫌いじゃないけど……あいつらはご勘弁、だわ……」
血を吐きつつ、叩き付けられた壁から、ベアタは、
そのまま床へと崩れ落ちていった。
「ベアタさん! ……くっ、やはり、だめですか……!」
美珠もまた、草薙剣で切り付けるものの、雷角の甲殻に浅い傷を付けるのみ。ベアタを助けんと近づこうとするが、雷角はそれを許さない。
『軽い! その程度で武人を名乗るとは、片腹痛いわ!』
虎衛兵の嘲りが、美珠に浴びせられる。
(「……外に、甲板上に誘き出せれば……」)
甲板上に、美珠は草薙流退魔術『罠結界形成』を張っていた。そこに誘き出せれば、動きを封じ、こちらからの攻撃が通りやすくなる。
しかし……中々誘き出されない。
「このおっ!」
あえて攻撃がくるように、わざと隙を作りつつ突きを放つが、
『軽いと言っている! 舐められたものだ!』
それを弾き、雷角が、風角とともに突進してきた。
(「! チャンス、です!」)
二体の虎衛兵、風雷兄弟は美珠を追って突撃してきた。それをかわし、甲板上に誘き出させ……結界内へ誘導……、
は、思ったよりもできなかった。
「え? きゃああっ!」
甲板上に誘き出したは良いものの、結界の直前で美珠は、押し倒されてしまった。
そのまま、腕を押さえつけられる。
「は、離して!」
『ふん。弱すぎる。だが……苦しむ顔を見る事は嫌いではないぞ。なあ兄者?』
『全くだな、弟よ。さて、身の程知らずには、仕置きをしてやろう』
と、雷角に押さえつけられたまま、風角の角が美珠の股間を突き上げた。
「きゃああっ! い、痛い……!」
何度も突かれ、屈辱と痛みが、美珠を襲った。幸い、パンツはなんとか破れずに保っているが……それ以上に、美珠の身体に激痛とダメージが蓄積していく。
『どうした、まだ終わってはいないぞ!』
「え? がはっ! ……い、いやああっ!」
離れたと思ったら、そのまま雷角から腹に蹴りを入れられ、風角の角で高く突きあげられた。
空中に放り上げられた美珠は、落下する位置に……二体が待ち受けているのを見た。
『弟よ、俺が奴の股間を貫いてやる! 一発で決めてやるぞ!』
『いいや風角兄者、俺が先に、奴の尻の穴に角を突き入れてやる! そのまま腹の中に深く突き刺し、内臓をかき回してやるぞ!』
「くっ……だ、だめえっ!」
そのまま落下すれば、確実に彼らの角の餌食になる。
そして、美珠が逃れるすべは……なかった。
●捷足先登(先んずれば人を制す)
「……はっ!」
明は滑らかに接近。甲鎧三兄弟へと蹴りを放つ。ブーツ『アンカー』の重みと、その蹴りは、確かに虎衛兵へと決まるが、
(「思った以上に……硬い、です!」)
まるで、鉄板に蹴りを放っているかのよう。
「ほらほらー、鬼さんこちら!」
紅花が『鈴錦』、拘束具の金の鈴を鳴らして翻弄せんと試みているが、
(「思った以上に……効果がないのぉ!」)
若干、焦りを抱いていた。効果は無いわけではなかったが、思った以上に翻弄されてくれない。
それでも、動きを止める事無く、連撃を繰り出していく。
そして、
「せーのっ!」
タイミングを合わせ、ハナが『ダンシングギャロップ』を放つ。床上をスケートで滑るように高速移動し、紅花と明が避けると同時に、
ハナ自身の両足から、強烈な衝撃波の蹴りを連打した。普通ならば、これで大抵の敵は、群れごと薙ぎ払われるが、
『……ふん、その程度か』
『軽いのぉ、兄者、人甲』
『ああ、天甲兄者、地甲兄者。こやつら……外の蜘蛛女どもと我らを、同じ程度の雑魚と思っているのではないか?』
大きなダメージは、負わせられていない。
(「くっ……なんスか、こいつら! 甲殻が固すぎッス!」)
ハナは悟っていた。自分たちが甲鎧三兄弟に勝っているのは、スピードのみ。
しかし、スタミナと防御力は格段に相手が上。このまま相手に防御し続けられたら、ダメージのみならず疲労も蓄積し、明らかにこちらが負ける。
「……はあっ、はあっ、はあっ」
ハナは下がり、
「……ちょっと、キツイわねぇ」
「……ええ」
紅花と明も、一旦距離を取っていた。
「……ですが、軽微ながら、ダメージは入ってます!」
と、明は再び駆け出し、攻撃した。
だが、
『確かにな! しかし……』
『お前程度の痛手、かすり傷にもならぬ!』
『我らが防御も、崩れぬわ!』
甲鎧三兄弟もまた、防御陣営を取り……、
「……なっ!?」
明へ、カウンター攻撃を放ってきた。
『天と見せかけ、地が襲う!』
『地を躱せども、人が突く!』
『天地人・『虎衛堅牢陣』! 我らが三兄弟の攻防一体の技を食らうがいい!』
天甲を回避するも、
「明サン!」
「……なっ……!」
地甲、人甲からの攻撃はかわせず、
「……ぐあっ!」
紅花とハナの目前で、明はしたたかに打撃を貰い、後方へと吹き飛ばされた。
「明サン、しっかり! ……よくも、やってくれたわね!」
「次は、私が行くッスよ!」
二人が駆けつけ、助け起こす。
「……二人とも……待ってください!」
負傷しつつも、明の目はまだ闘志に燃えていた。
そして……彼は呟く。
「……見えてきましたよ、『勝利への道』が!」
落下した美珠は、角に貫かれる寸前、
「……そんな事、させない!」
空中を飛ぶベアタにより、受け止められた。ぎりぎりで美珠を助けに駆け付けたのだ。
「大丈夫ですか、美珠さん!」
「た、助かりました……あの、ベアタさん……」
そのまま、ベアタとともに宙を舞った美珠は、
「さあ、そこの妖魔! 私は無事ですよ!」
挑発しつつ、甲板上に降ろしてもらった。
『ほざけ! もう一発食らわしてやる!』
そんな美珠へ、風角が突進してきた。
「……草薙大神よ、神聖なる結界に踏み入る者に天罰を、畏み畏み申す!」
が、虎衛兵が踏み込んだのは、美珠が甲板上に仕掛けていた『罠結界形成(トラップ・フィールド)』。
頑丈な蔦が伸び、風角の手足へと絡み付いた。
『な、なんだっ!』
『風角兄者! おのれ、妙な真似を!』
拘束された風角へ、
「動きは封じさせていただきました! 覚悟!」
美珠は再び、草薙剣を構え突撃した。
『馬鹿め、我らが甲殻の前には、お前の鈍ら刀など効かぬと……』
風角の言葉は、そこで途切れた。
「……動けない相手であれば、どんなに硬い甲殻をまとっていても……」
美珠は、剣の切っ先を、
「……その甲殻の『隙間』を、剣で貫けます!」
風角の甲殻の小さな隙間へ刺突。刃を柄の部分まで、深く突き刺していたのだ。
うめき声ひとつあげず、倒れた兄を見た雷角は、
『兄者! おのれ小娘、よくも兄者を!』
一斉に、美珠の立っていた地点を中心とした、半径数mの甲板を『持ち上げ、ひっくり返した』。
『「虎衛大地廻」! 潰してやるぞ、この雑魚が!』
「きゃあああっ!」
美珠は甲板ごと、再び空中へと放り出され……、
水面へと落ちていった。
●背水一战(背水の陣)
『さあ、来るがいい! 今度こそ地獄に送ってやるぞ!』
再び、構える甲鎧三兄弟。
それに対し、今度は明とともに、ハナが突進する。
「……行くッスよ!」
ハナが、三兄弟へ攻撃する。
天甲がそれを躱し、影に隠れた地甲と人甲が連撃……、
『『何っ!?』』
できなかった。
クダギツネ『天』が、地・人の甲鎧兄弟を一瞬だけ幻惑。その隙に、
ハナは大きく跳躍し、室内の梁、そして天井へと足をかけたのだ。
「その三連撃、正面からでなく、空中からの攻撃にも有効っスか!?」
そのまま、空中に躍り出たハナは、人甲へ……その甲殻の隙間を狙い……『貫通撃』を放つ。
『ひっ……!』
後頭部部分の甲殻の隙間へ、ピンポイントの蹴りが決まった。破砕音とともに、甲殻が砕け……、
三兄弟の三男、人甲が倒れた。
『人甲!』
『おのれ、よくも弟を!』
それを見た天甲と地甲、長男と次男が、ハナへと迫る。
「……見えてきましたよ、我々の勝利の道筋が!」
「明サン、あたしも見えてきたよ!」
だが、それらに立ちはだかるは明と紅花。
「はっ!」
明はアンカーでの重い蹴りを、再び天甲へと放ち、腹部に直撃させた。
「ほらほーら! あたしを捕まえてみなさいな!」
紅花もまた、鈴を鳴らしつつ、地甲の周囲を舞う。舞いながら、バランスを崩すように急所を狙い、脚で蹴り飛ばしたり、地面スレスレ足元を払ったりと、先刻のような連撃を繰り出していった。
『馬鹿め、そんなもの効かぬと、まだわからぬか……』
『ふん! お前らのか弱い攻撃など、通用せぬわ! 人甲の仇!』
それらを歯牙にもかけず、天甲は明の攻撃をあえて受け止めた。
地甲もまた、紅花の攻撃をあえて受け、反撃を試みる。
が、
「そちらこそ、まだわかりませんか?……『信(アキラ)』」
困難を踏破し、前へ進む明の蹴撃が、
天甲の腹部甲殻を砕き、内臓すらも破壊した。
そして、
「……欢迎──見ててね『眩の躍(シェンミン)』!」
紅花の、ゆるりとした舞が、揺らぐ軌道を残しつつ、強烈な蹴撃の連続を地甲に放っていた。その衝撃は、地甲の堅牢な腕や足、頭部の甲殻にひびを入れ、
次の瞬間、破裂するように破砕された。
『な、なにいッ!』
『何故だ……!』
甲殻とともに、その命も砕けつつある天甲、地甲へ、
「……どんなに強固な装甲でも、同じ個所を正確に攻撃し続ければ、僅かですが傷を付けられます」
「そこを連続で攻撃し続ければ、ダメージは蓄積して、最終的には大きく破壊できるわぁ。単純だけど、確実な方法よぉ!」
勝者の顔を見せる、明と紅花だった。
しかし、甲鎧三兄弟を倒しはしたが、明、紅花、ハナは、
疲れ切り、その場に倒れてしまった。
「……あとは、外の美珠さんと、ベアタさんッスね……」
仲間の無事を祈る、ハナだった。
「くっ!」
即座に剣を船腹に突き刺し、水面へ落ちるのを防いだ美珠は。
後方で甲板そのものが、大きな音ともに落ちて、水しぶきを派手に上げるのを感じ取った。
なんとか甲板に上がるが、雷角が突進してくる。
『お前だけでも殺してやる! 死ねえっ!』
美珠は剣を構え直したが、後方上空からベアタが、
再び、リングスラッシャーを雷角へと放っていた。
『ええい、うっとおしいわ! そんな子供だましなど、俺には効かん……ぐっ!』
効いた。何度も放っていたリングスラッシャーは、雷角の角を切断したのだ。
「……今です! 畏み畏み申す!」
その隙に、『罠結界形成』を再び発動させた美珠は、雷角の手足を拘束する。
しかし、雷角は嘲笑った。
『馬鹿め。あいにくだが、俺の装甲は風角兄者以上に固い! 隙間を狙っても、お前の剣が折れるだけだ!』
「くっ……」
『そして、角を折られはしたが、お前らに俺の甲殻を破壊は出来ない! ならば、俺の勝ちだ!』
勝ち誇った雷角は、罠結界の拘束を力づくで逃れ始めた。
「ならば……」
拘束が解かれる一瞬。美珠は、雷角の角へ、その切断面へ、
草薙剣を突き入れた。
『! ぎゃああああああっ!』
「……鎧そのものを壊さずとも、小さく開けた穴から、内部へと攻撃すればいい事です」
先刻に、美珠の事を『角を突き入れ、内臓をかき回す』と言っていた虎衛兵は、
逆に美珠に、同じ目に遭わされていた。
「……疲れ、ました……」
敵を倒した事を確認した後、疲れ切った美珠は、甲板上に倒れこむ。
「……って、え? きゃあああっ!」
そして、自分で仕掛けた罠結界の一部に足を踏み入れてしまい、
ベアタに助けられるまで、拘束されるのだった。
●鞠躬尽瘁(全力をあげて任務を遂行する)
「……ああ、美珠さんにベアタさん。大丈夫ッスか?」
美珠とベアタは、再び楼閣の中に入り、階段を上り、
ハナ、明、紅花と合流していた。
「なんとか、大丈夫です。ハナさんたちは……」
ベアタの問いかけに、
「うふふっ、ごらんの通りよぉ、ベアタサン、美珠サン」
倒した虎衛兵の死体を見せる紅花。
「苦労しましたが、倒せましたね。ですが……」
明は言葉が続かなかった。
おそらく……否、確実に、曹純は、この虎衛兵よりも強い。単体であっても、苦戦は免れないだろう。
「……少し休んで、息を整えましょう」
美珠は、深呼吸した。他のディアボロスたちも、彼女に続き大きく呼吸する。
「……この階段を登って、あの扉を開けたら……」
落ち着き、いくばくか回復したベアタは、階段を上った先にある扉を見上げた。
しかし……それはおそらく、簡単にはいかないだろう。
「……ま、簡単な事なんて、世の中にないけどね。さて、みんな……」
一休みを終えたら、最後のひと仕事、行きましょう。
ベアタの言葉に、ディアボロスたちは頷くのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【壁歩き】LV1が発生!
【液体錬成】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【飛翔】がLV2になった!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
【反撃アップ】LV2が発生!
【ガードアップ】がLV10(最大)になった!
黄泉王・唯妃
アドリブ&連携歓迎
効果2全使用
人々の救出と雑魚は他の人に任せても大丈夫そうですね。
ならば私が狙うべきは――。
キリ、と糸を鳴らして曹純の前へと姿を現します。
今の強さでアヴァタール級とどこまでやれるか、試金石とさせていただきますよ。
真向から【早業】で搦め取るように糸を繰り、己が最も信頼する者の刃を通す道を形成する。
反撃はあえて避けずに喰らっておきます。
この痛みも、また新たな糧へとなるのですから。
「なるほどなるほど。さすがに個人ではまだまだ瞬殺、とは参りませんか。ですがそれが出来るのも、きっと遠くないでしょうねぇ」
平良・明
そろそろ船底の人たちは脱出初めている頃でしょうか
最後の大きな壁、手強い相手だと困ります
言うことなし、単純に楽しくなってしまいます
攻撃の鋭さも手数もある相手ならこちらは手数
「殉火」の光を四方八方乱れ打ち
曹純の斬撃すら撃ち落とすように角度をつけて包囲射撃です
でも見た目の通り、攻めっ気たっぷりというわけでも無く
鳥かごのように編まれた軌跡は目眩し
不意を打ち、紅花さんの鋭い一撃につなげます
いいの決めたら、帰ってケーキ奢るから
いってらっしゃい、紅花さん
杏・紅花
カブトムシ、強かったあ。これは、大ボスに期待だぞっ
頑張ってるとお腹すくけど…あとちょっと!
敵の甲豹騎は【飛翔】して回避
空中戦で御相手だあ
ひらりひらり、交わして避けて
ケーキっ!!
ほんとのほんとね、約束だからね、明サンっ!
光の鳥籠の隙間を縫って急降下
元気にいってきまぁ〜すっ!
考え無しの突進じゃないよ
こっそり地上に放した管狐の天に、影を縛ってもらう
天っ!縛っちゃいなさい!
一瞬でも動きを止められたらチャンス
両手の鉤爪で、頭上からツノ目掛けてざっくり
ねえねえ、そのツノ、さっきの奴らより硬いかなっ!硬いよねっ!
ちょーだあい。
ベアタ・アンシュッツ
狭い楼閣内で戦うのは不利だし……計略を活かし敵の膂力を逆手にとって、まずは逃げ回って回避に専念しつつ、背後に壁が来るように位置取り、回避した敵の攻撃や味方の攻撃で壁が壊れるように仕向けよう
外に出られる位に壁が壊れたら、外に飛び出して空中戦、地形の利用を活かし、甲板上で【飛翔】し応戦
敵が楼閣から出たがらないなら、楼閣の天井から【水源】で水を流したり、挑発しながら楼閣内の敵をアイスハープーンで攻撃し、嫌でも楼閣から出たくなるように仕向けてやろう
ふーん
そのご立派な角は……飾りなのかな?
見かけは天をつくようにご立派だけど、虚仮脅し?
とか挑発し、敵が怒って突っ込んできたら、仲間と連携し一斉攻撃したいね
ハナ・フリードル
エレキギターを具現化、冷たい金属質の音色を「演奏」し「氷雪使い」。冷気と氷を操る。
普通に攻撃しても効かない。仲間の援護に使う。
攻撃や回避に合わせ、敵の関節部や足元を凍らせ「時間稼ぎ」、動きを鈍らせる。
「撹乱」「光使い」で煌めく氷片の嵐を発生させ目眩まし。
反撃は氷壁を作り防御。「拠点構築」「アート」で作るクラッシャブルシールド。砕け散る事で衝撃を分散させる盾で被害を減らし耐える。
全体の戦況を見極め、セッションを組み立てる様にアドリブで適切な行動を選択。
隙があればギターを斧の様に振りかざしぶん殴り「粉砕」。
人を害する悪鬼がこんなに強いなんて世の中間違ってるっス。理不尽への怒りをギターに込めるっス。
草薙・美珠
●目的
ここまでくれば、あとは敵将だけです。
なんとしても敵将を討ち取ってみせましょう。
●手段
魏軍虎衛兵でも強敵だったというのに、その主がどれだけの強さなのか……
図りきることはできませんが、とにかく全力で挑むのみです!
相手の動きを封じるため【神樹の蔦】で絡め取り、動けなくしましょう。
さらに動けなくなった相手に草薙剣で攻撃です。
いかに硬い甲殻でも、その隙間を突けば貫けるのは、先程証明済みです!
●四天裂光斬対策
いかに速い斬撃でも、私の草薙流剣術で受け流し――
えっ!?
見えないくらいの速度で私の下着が切り裂かれてっ!?
いやっ、見ないでくださいっ!
さらに神樹の蔦が、私に絡みついてきて……!?
●说曹操曹操就到(噂をすれば影がさす)
『暴炎』、楼閣内。
その最上階への扉が、ゆっくりと開きはじめた。
「……!」
そして、ディアボロスたちは。
全員が、疲労困憊の状態だった。
だが、僅かな時間だが息を整え、休息を取り、かろうじて心と体を回復させた。
「……最後の敵。手ごわい相手だと、『困ります』」
平良・明(ダイヤのK・g03461)が、開く扉を見つつ言った。
「……明サン、どうして?」
隣の杏・紅花(金蚕蠱・g00365)が聞き返すが、
「いや、単純に『楽しくなって』しまいますからね。……紅花さん、敵への攻撃……いいのを決めたら、帰ってケーキ奢りますよ」
「え? ケーキ!? ほんとのほんとね、約束だからね、明サンっ!」
その二人を横目で見つつ、ベアタ・アンシュッツ(天使のハラペコウィザード・g03109)は、
「……楼閣内で戦うのは不利……計略を生かして、外に出させたいけど……うまく行くでしょうか」
不安を覚えていた。
「……ま、方法は考えてるッスが……後はやってみなきゃわからんッスよ」
ハナ・フリードル(人間のサウンドソルジャー・g06921)が、エレキギターを具現化し、手にしつつ奏でる。
「ええ、ここまでくれば、後は敵将だけです! 虎衛兵だけでも強敵でしたし、その主がどれほどの強さか……図り知ることはできませんが」
それでも、とにかく全力で挑むのみ! 下着姿のまま、草薙・美珠(退魔巫女・g03980)は意気込んだ。
やがて、扉が完全に開き。
そこから、『気配』が漂ってきた。
足を踏みしめ、そいつが……蟲将『曹純』が、皆の前に姿を現した。
虎衛兵たち同様、その姿は直立した甲虫のそれ。しかし、彼らとは比べ物にならないほど、四肢は太く、逞しく、力に満ち満ちていた。
その体表を覆う甲殻は、虎衛兵たちのそれと異なり、輝かしい瑠璃色のそれ。武将なのに、美麗なる芸術品かと見まごうほどに……美を感じさせた。
その角もまた、虎衛兵以上に太く、立派にそそり立っている。
手に握る得物は、これまた巨大な刃の大剣。その刃の長さは、主たる曹純の身長とほぼ同じ。その刃の幅や厚さも規格外。おそらく普通の人間ならば、剣として使うどころか、一人で持ち上げる事すら不可能。
『……お前達が、闖入者か』
曹純の重々しい口調が、ディアボロスたちに向けられた。
『虎衛兵たちを片付けたとは、恐れ入ったぞ。その力……孫権様のために用いたいところだが……』
「……先に言っとくけど、仲間になんかならないからねぇ! ね、明サン!」
その気配、気迫、そんなものに呑まれてたまるかと、紅花が言い放った。
「左様! ……武人ならば、戦うのみ、違いますか?」
明も、それに同意。
「……ふーん、仰々しく登場したけどさ、そのご立派な角は、飾りなのかな? 見かけは天を突くようにご立派だけど、コケ脅し? そうみたいだね、ゴキブリさん!」
ベアタが、挑発するように言葉を投げつける。
「そ、そうです! わ、私達があなたを……倒します!」
同じく美珠も、挑発するが。しかしその語尾はどこか、震えが入っていた。
「…………」
ハナもそれに便乗したかったが、
(「一歩引いて……全体の状態をまずは、見極めるッス!」)
しかし、曹純はディアボロスらの挑発など、どこ吹く風だった。
『……良かろう、では……参る!』
扉から飛び出した曹純は、
「……え?」
一気に階段から飛び降り、ディアボロスらへと距離を詰めると、
大剣を薙ぎ払った。
全員が、即座に防御し、間合いから下がったが、
刃の衝撃波は、全員を後方へと吹っ飛ばした。そのまま、階下へと落下し、床に叩き付けられる。
なんとか立ち直り、迎え撃たんと立ち上がったディアボロスたち。
「……そ、その程度……はっ、さすがは、三国最弱の、呉の将軍……大した事、ないわね……」
ベアタが煽ってみると、
『……貴様、我を怒らせたいようだな!』
そう答える。このまま、外へと誘き出したいところだが……、
なぜか、不安だった。外へと誘き出し、自身の空中戦能力で飛び回り攻撃するつもりだったが、
ベアタは、なぜか不安を払拭できないでいた。まるで、『更なる罠にはまっていく』かのように思えてしまう。
だが、
「……『殉火(モトムビ)』。 入り乱れろ……!」
大気の塵を燃やすかのような焦臭とともに、屈折する光の軌跡が、曹純の周囲に入り乱れた。
さながらそれは、鳥かごに閉じ込められた虫のよう。
『……! この光はっ……!』
それを回避し、動揺し、光の前にきりきり舞う曹純。
「……紅花さん!」
「はいっ! 元気にいってきまぁ~す!」
紅花が突進した。
それを感知し、回避しようとした曹純だが、
「『管狐影縛法!』 あたしの攻撃から、にがさないよーっ!」
その影に、管狐が突き刺さり、その動きを止めた。
「ねえねえ、そのツノ! さっきの奴らより硬いかなっ!硬いよねっ! ちょーだあい!」
紅花は、その言葉とともに、
両手の鉤爪を、曹純の甲殻、その関節部に振り下ろした。
そして、明の『殉火』も、曹純に直撃する。
「やった……!」
「やったッス!」
「やりました!」
ベアタ、ハナ、美珠は、それを見て確信した。大打撃を敵へ与えられた事を。
紅花もまた、ダメージを与えた『音』を、聞いていた。
●看看别人、照照自己(他者の行動を見て、良き点は真似し、悪しき点は改めよ)
「……?」
『暴炎』の船内を進んでいた黄泉王・唯妃(灰色の織り手・g01618)は、
違和感を覚えていた。
船内を進んでいたら、蕩蛛宮妓の一群と鉢合わせし襲われた。なのでそいつらを一方的に片づけていったが、
そのうちに、逃げる民を見つけて襲おうとする者がいたため、そいつを追ってとどめを刺していた。
そうこうしていたら、思ったより時間がかかってしまった。一応ついでで確認すると、どうやら民たちは全員が脱出できた様子。
と、階上からなにやら戦闘らしき騒音が。
「ちょっと……遅れてしまったかしら?」
唯妃は、甲板上へと足を向け、急いだ。
「……え?」
紅花は、ダメージを与えた時の『打撃音』を、確かに聞いた。
だが実際には、……相手ではなく、『自分が』ダメージを受けていた。
紅花の腹には、曹純の拳が深く、めり込んでいたのだ。
「が……はあっ……!」
激痛を、彼女は感じた。腹部の激痛と激しい嘔吐感のため、口から文字通り……血反吐が吐きだされ、床を赤く染めた。肋骨が折れている気がする。息ができない。
『我が角が欲しければ、奪ってみろ。もっとも……お前の爪程度では、この甲殻に小さなひび程度しか与えられんようだがな』
曹純のいう通り、紅花の会心の一撃は、確かに頭部に、その角に振り下ろされていた。
しかし、直撃したというのに……それは甲殻の表面に、小さなひびを入れたのみ。
「……紅花さん! 直撃したはずなのに!」
明もまた、怖気を覚える。
彼の『殉火』もまた、確実に甲殻の関節部を狙い、命中させていた。
しかしそれも、表面を焦がすだけで終わっていた。与えられたのは、文字通りかすり傷。
『お前が連れ合いか? なら……受け取れ!』
曹純はそのまま、無造作に紅花の身体を掴み、明へと投げつける。
「紅花さん! ……え?」
動けない彼女の身体を受け止める明は、
「危ないッス!」
ハナの警告を聞いた。
『遅い』
曹純が一気に、距離を詰めてきたのだ。
このままでは、二人とも切り伏せられる……!
「ロック・ユー!!!」
ハナは即座に、『鋼の旋律(アックスオンザロック)』を奏でる。具現化したエレキギターが奏でるは、冷気と氷。
それらは、曹純の手足を凍らせ、足元を滑らせ、動きを鈍らせる。
だがそれは、鈍らせただけで、動きを止めるには至らない。
『……ぬるい! 「塊甲斬」!』
強烈な斬撃が、二人を襲った。
かなり、強烈に。
斬撃は、浅かった。ハナの『鋼の旋律』が無かったら、二人は確実に斬撃で両断されていただろう。
しかしそれでも、放った斬撃は二人へダメージを食らわせ……床へ転がす。
『……どうした、それで終わりか?』
明と紅花は、倒れたままで返答はない。あんな攻撃を受けたら、即死でもおかしくはない。斬撃の余波により、そのまま……床が壊れ抜けてしまい、二人は階下へと落ちていった。
ベアタとハナは、恐怖に震えそうになるのを、必死に抑え込む。
が、
『……次は、お前らだ』
大剣を構え直した曹純は。
予想以上に速い動きで間合いを詰め、ベアタとハナに切りかかる。
避けようと二人は身構えたが、
「聖なる神樹よ、畏み畏み申す!」
美珠の『神樹の蔦(ヴァイン・バインド)』が、曹純の手足を拘束し、動きを止めた。
そのまま美珠は、草薙剣ですかさず突進。
(「硬い甲殻でも、隙間を突けば貫けるのは先ほど証明済み!」)
紅花が付けた、首部分の僅かな傷、それも関節部に近い箇所の傷へと、美珠は草薙剣の突きを放つ。
「やったッス!」
「今度こそ……!」
ハナとベアタは、それを見て今度こそと確信したが、
「……え?」
美珠に伝わるのは、戸惑いの感触。
『その程度か』
剣の切っ先は、確かに当たった。しかし……、
「……そんな、刃が……通らない!」
刺さらないのだ。甲殻があまりに硬く、ヒビの大きさも小さすぎて、それ以上傷も広がらない。
そのまま、美珠は後ろに下がる。
『……邪魔だ』
そして曹純は、無造作に蔦を引きちぎり、自身の大剣を構えた。
「くっ、いかに早い斬撃でも、私の草薙流剣術で受け流し……」
下がって、間合いを取る美珠だが、
「えっ!?」
『遅い、遅すぎる! 「四天裂光斬」!』
気が付くと、大剣は振るわれていた。閃光もかくやの、光速で放たれた斬撃は……かろうじて保っていた美珠の下着を切り裂き、伴う衝撃波は美珠自身をうちすえ、床へと転倒させていた。
全裸になってしまった美珠は、剣を取り落とし手で身体を隠す。
「きゃああっ! 見ないで下さいっ! ……え? きゃああっ!」
そして、コントロールを失った『神樹の蔦』は、美珠自身に絡みついた。
(「また、いつものように……え?」)
しかし曹純は、
『この蔦も、邪魔だ』
美珠を無造作につかむと、蔦を引きちぎりつつ、曹純は美珠を床に叩き付けたのだ。
ぐしゃり……という、何かが潰れた音が聞こえた気がした。
『愚かなり。自身が扱えぬ技を用いるとはな。弱き者よ、まだ戦うか?』
聞いていなかった。強烈な力で叩き付けられた美珠は、
「…………」
全裸のまま、動かなかった。その頭部からは、おびただしい血が流れている。
『ふん。止めを刺す価値すらない。この程度で我に勝とうとは、舐められたものだ』
「そ、そんな……」
「……強すぎッス」
瞬く間に、三人の仲間が戦闘不能に。しかも……こちらからの攻撃によるダメージは、ほんの僅か。
(「な、なんとか……外に誘き出せれば、飛翔しつつ……」)
ベアタは、なんとか希望と勇気を奮い立たせるも、
「……え?」
曹純は、『自分から進んで』、
扉から、外へと出ていったのだ。
『……ここでは狭すぎる。外の方が、我が剣も振るいやすいからな。さあ、来るがいい』
まるで、ベアタの考えを見通しているかのよう。
勝てる予想図が、全く見えない。だがそれでも、
「……やるしか、ない!」
改めて自分に気合を入れ、ベアタはハナとともに、外へと躍り出た。
●真人不露相(真に実力・才あらば、あえて他者には見せびらかさない)
「二人とも、大丈夫?」
唯妃の問いに、
「……紅花さん……大丈夫、ですか……?」
「……あはっ、明サン……これじゃケーキ、だめだね……げほっ」
弱々しく返答する二人。
斬撃は、明と紅花の二人にダメージを与えていたが、なんとか致命傷には至らずに済んでいた。そして、
「どうやら、敵はかなり強いようね」
唯妃により介抱され、二人はなんとか回復していた。
「ええ。その通りです……我々はこの通り、大ダメージを食らってしまいましたが。虎衛兵も強かったですが、奴はそれ以上です」
「うんっ……げほっ」
明に続き、紅花も頷く。かなり悔しいという事が、その表情からは見て取れた。
「…………」
唯妃は二人の様子を見て、二つの感情が湧いてくるのを感じていた。
『戦慄』と、『期待』という、二つの感情が。
「……お二人は、ここで回復を。私が仇を……」
と、唯妃は階上へ向かう。
「いいえ、休んではいられませんよ。紅花さんを傷つけた、仕返しをしなければ!」
「……明サン、傷つけた……あいつ、許さない!」
ふらつきながらも、明と紅花も立ち上がり、彼女の後を追った。
「……確かに、『外には出られた』! けど!」
ベアタとハナは、空中を飛行しつつ……攻撃の機会をうかがっていた。
だが、
『来来!『甲豹騎』! さあ、我が騎乗甲虫の威力を知れ!』
二匹の巨大カブトムシを出現させた曹純は、それらを甲板上を縦横無尽に動かし、ベアタとハナを翻弄していた。
「このおっ! ロック・ユー!」
ハナは再度、『鋼の旋律』を用いて氷の防壁を築き、錯乱させ、「光使い」で目くらましさせる。しかし、
甲豹騎に乗った曹純は、単騎よりも手ごわかった。思った以上に素早く動く巨大カブトムシが、甲板上を走り回り、ハナの時間稼ぎを受け付けない。
「……あのカブトムシのおかげで、狙いが……!」
定まらない。外で戦ったのは、判断ミスだったか……。
いや、そうだとしても、チャンスは来る! このまま、真っすぐ突っ込んで来てくれたら……!
やがて、甲豹騎に乗ったまま、
『次は、お前だ!』
曹純は、ベアタへと突進してきた。
「今だ! ……永久凍土に眠る聖霊よ、我が敵に、絶対零度の鉄槌を下し給え!『アイスハープーン』!」
好機とばかりに、巨大な氷塊を発生させ、曹純へとぶつけた。
それは、曹純が乗った甲豹騎にも直撃し、潰す。
ハナはそれを見て、
「やったッス! ……ええっ!?」
希望を覚え、すぐに絶望となった。
『……二匹の甲豹騎、その一匹を倒した事は、褒めてやる』
氷塊は、曹純が大剣で両断していたのだ。
冷気は、曹純に多少のダメージを与えていた。しかし、あくまで多少。やはり、効果的に大きなダメージを与えられていない。
「そ、そんな……」
「なんで、何でッスか! なんで人を害する悪鬼が、こんなに強いんスか!」
あまりに理不尽。
その理不尽への怒りと憤りを、ハナはエレキギターをかきならし、更なる攻撃を放つ。
『次はお前か? 来るがいい!』
今度は、ハナへと突進する。
「……かかったッス!」
が、ハナは図っていた。甲板上に残っていた、虎衛兵の死体を曹純が踏んだ時。
そのタイミングを計って、そいつの足下を『凍らせた』。
『! これは!』
曹純の『足』を凍らせ、動きを止めたのだ。
「もらったッス! 『ロック・ユー』!」
ハナは『鋼の旋律』の強烈な冷気を叩き付ける。曹純は動きを封じられ、振り上げた剣ごと完全に氷に閉じ込められた。
甲豹騎の残った一匹が、助けようと迫るが、
「お前の相手はこっち! 『アイスハープーン』!」
ベアタが氷塊を直撃させ、こちらも潰され、果てた。
「止め! そのまま、氷ごと砕けろッス!」
すかさず、凍った曹純の脳天へ、ハナは渾身の力でギターを叩き付ける。
氷塊は、『粉砕』された。
「やった……え?」
ハナは、勝利を確信した次の瞬間に、
大剣により、甲板上に叩き付けられた自分を知った。
(「な……なんで……マジ、理不尽……」)
『……努力は、認めよう』
曹純の言葉が響く。それはまるで、処刑人の処刑刀のよう。
凍らされた曹純は、冷気によるダメージは負ってはいた。だが、氷塊を粉砕されても、甲殻を破壊されるまでは至らず、ハナは剣の反撃を食らってしまったのだ。
剣の柄がずれて、刀身の腹で打たれただけだったのは、不幸中の幸い。しかし、その打撃は戦槌の一撃にも等しいもの。
ハナは、意識を失っていった。
『……軽微なれど、負傷したのは久方ぶりだ。お前たちを武人として認め、貴様から一撃で葬ってやろう』
曹純は悠々とした歩調で、ベアタへと近づいていく。
「…………」
どうやって戦えばいい。全力で攻撃しても、あの甲殻は頑丈すぎる。
見ると、最初に受けた頭部のひびが、若干大きくなってはいた。が、だからなんだというのか。
認めたくないが……『思い浮かばない』。こいつに勝てるビジョンが、計略が、思い浮かばない。
……いや! だからといって易々と殺されてたまるか! 徹底的に抗ってから死んでやる!
「……はん、私がビビってるとでも思ってる? 蟲将ってのは、そろいもそろって、阿保ぞろいって噂、本当のようね……」
再び、飛翔しようとした、その時。
キリ……と、鳴らした糸の音とともに、蜘蛛糸が曹純へと絡みついた。
そして、その糸の先には、
唯妃が、その姿を現していた。
●一个巴掌拍不响(掌一つでは拍手をすることはできない)
「……唯妃さん!?」
「ベアタさん、遅れてすみません……下の階でちょっと迷いました。状況はおおむね把握しています。ハナさんを連れて下がって!」
楼閣から現れた唯妃に、曹純は振り返る。
『新手か、良いだろう、相手になろう』
手足に絡みついた糸を千切り、再び曹純は突進。
「今の自分の強さで……アヴァタール級とどこまでやれるか。試金石とさせていただきますよ!」
そのまま、唯妃は、
糸を放ち、糸を操った。
彼女の放つ糸を、曹純は大剣で受け、薙ぎ、切り裂き、振り払う。
『どうした、その程度か!』
「いいえ、これからです……さあ、始めましょうか……」
真っ向から、『早業』で操られる糸は、曹純を惑わせる。
『……これは!』
糸は合わさっていき、それは人の姿を形作る。それを目の当たりにした曹純は、思わずたたらを踏んだ。
「……三十六計殺すに如かず。さあ、行ってください。奴崎・娑婆蔵(g01933)さん!」
これぞ、『勝戦計・裏《折踏殺刃》(シャクトウサツジン)』。唯妃の糸により、援護する味方を召喚し、構築した『殺戮経路』を渡り、敵に攻撃を見舞うパラドクス。
そして唯妃が召喚したのは、奴崎・娑婆蔵。着流しを着て、包帯を全身に巻きつけた、不気味な怪人。その手の妖刀『トンカラ刀』の刃が、不気味に鈍く光る。
『妖術まがいの召喚術か……面白い!』
曹純は娑婆蔵へ斬りつけ、娑婆蔵もまたその大剣を刀で受ける。
「……あれは……」
「……なかなか、スゴイ、ね」
明と紅花が、互いに支え合い、曹純と唯妃、そして彼女が召喚した娑婆蔵との戦いを見守る。
「ですが……長くは持たないでしょう。何か、決定打が無ければ」
ベアタがその近くで、美珠を応急処置していた。近くで見つけたボロ布を彼女に纏わせ、その頭には即席の包帯を巻く。
「……行くッス」
そして、目覚めたハナは、
先刻の理不尽を払わんと、立ち上がった。
曹純の剣圧に押し負け、娑婆蔵が切られる……、
と思いきや、軽業のように飛びのき、宙を舞い、
そのまま、死角から曹純へと切り付けた。ありえない場所に足場を形成し、後方から、下方から、足元目掛け、トンカラ刀を切りつけ、突き、刃を叩き付ける。
普通の相手なら、その攻撃で即死したことだろう。しかし、曹純の甲殻は、攻撃をものともしなかった。
互いに、一進一退の戦いが繰り広げられていく。
「……さすがに、手ごわいですね」
若干剣裁きが鈍くはなっていたが、曹純はまだ強かった。
むしろ、逆に追い詰められ、そして、
「『壊甲斬』!」
斬撃が放たれる。娑婆蔵はなんとかかわしたが、かわしたその先には、
唯妃がいた。
「くっ! ……あえてこの攻撃。受けさせていただきます」
子の痛みも、また新たな糧になるのですから。心で呟いた唯妃は、
『……そろそろ、決着を付けようぞ』
曹純の剣の構えが、気迫のこもったそれになったのを感じ取った。
「ええ。……いいでしょう」
娑婆蔵の剣も、殺気が強まる。
「……狙うは、あの場所」
唯妃は、狙っていた。
しかし……曹純もおそらくは、その場所に攻撃する事は予想済みだろう。一瞬だけでも、気を逸らせれば、そこへ攻撃を放てるだろうが……、
一か八か、やるしかない。
『……参る!』
曹純が、突進した。娑婆蔵もまた、突進する。
そのまま、足場を出現させ、娑婆蔵も空中へ跳躍した。首元のヒビへ、トンカラ刀の突きが放たれるが、
『やはり、そこに攻撃するか!』
防御されそうになった、その時、
『……何ぃっ!?』
「『管狐影縛法』!」
紅花のクダギツネが、再び曹純の動きを奪い、
「ロック・ユー!」
ハナの『鋼の旋律』と、
「『アイスハープーン』!」
ベアタの氷塊による攻撃が、打撃を与え、曹純の手足を凍らせ、動きを封じた。
それらの援護は、曹純の注意を引き、
生じた僅かな『隙』に、娑婆蔵のトンカラ刀が、曹純の甲殻のヒビへ、僅かな傷へと……突き立てられた。
『ばかめ、その程度の攻撃では、甲殻の破壊など……』
「それは、どうかしら?」
『!?』
ヒビの幅は、大きくなっていた。
紅花が穿ち、美珠が最初に剣を突き立てた甲殻のヒビ。ベアタとハナの氷による攻撃で、僅かだがヒビは……広がっていたのだ。
そこに、再度。唯妃が召喚した娑婆蔵の刃が突き立てられた。
広げられたのは、小さなヒビであり傷。しかしそれをわずかに押し広げ……そこに、剣の刃が深く突き刺さっていく。
「……やりました、か?」
目覚めた美珠もまた、その様子を見据える。
曹純は、娑婆蔵に貫かれた傷から、体液を流し、
『……見事也。呉軍に、孫権様に……栄光、あれ……』
それでもなお、己の勇猛さを見せつけるかのように、立ったまま、
静かに、往生した。
そして、ディアボロスたちも。
その様子を、静かに……見守っていた。
●活到老、学到老(生きる限り、人は学び続ける)
「なるほどなるほど。さすがに個人ではまだまだ瞬殺、とは参りませんか」
戦いを終え。
唯妃は、疲れを覚えつつも……己の行動を分析するように、頷いていた。
「ですが、手ごたえはつかみました。瞬殺出来るようになるのも、きっと遠くないでしょうねぇ」
彼女の横では、他の皆が傷の応急手当てを。
「……本当に、強敵でした。ううっ、いつも以上に……情けないです」
美珠は若干しょんぼり。最初の剣の攻撃は見事に決まったというのに、ダメージを与えられず、結果的にいつもの体たらく。頭部の傷が痛々しく、実際痛い。ボロ布をまとってはいるが、その下は当然全裸。
「まあ……相手が悪かったッスよ。あの甲殻、マジに硬すぎたッスよね」
ハナもまた、努めて明るく振る舞う事で、沈んだ空気を払拭せんとする。
「……勝てはしましたが、『死ななかっただけ』で、勝ったとは言えない気分です」
ベアタも呟く。
もっと強いアヴァタール級は、間違いなく存在する。そいつと相対した時のために、今回の戦いを教訓として、もっと強くならねば。
「……さて、それでは戻りましょうか。紅花さん、ケーキ食べながら、反省会をするとしましょう」
「うんっ、明サン!……って、痛ったあ……」
明が促した先には、甲板上に吊り下げられた小型の船の姿が。
それを水面に下ろし、ディアボロスたちは、
『暴炎』を後にするのだった。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【無鍵空間】LV1が発生!
【未来予測】LV1が発生!
【傀儡】LV1が発生!
【水源】LV1が発生!
【アイスクラフト】LV1が発生!
【植物活性】がLV2になった!
効果2【ラストリベンジ】LV2が発生!
【ダメージアップ】がLV4になった!
【反撃アップ】がLV3になった!
【ダブル】がLV2になった!