リプレイ
エルマー・クライネルト
民間人すら戦力に加算せねばならんとは
ドイツ軍は随分と落ちぶれたものだ
(私が家族想いの役とは笑えない冗談だ)と独り言ち
オラトリオを召喚、貧民街で拝借したローブを被せて連れ歩く
凡そ親子ぐらいには見えるのではないだろうか
端金で食料を買ってオラトリオに渡すなどして『娘』を優先する
私自身は少しふらつく様に歩く。攫うのも容易かろうと思われる様にな
ごろつき共が接触してきたら「娘に手を出さないでくれ」と哀願しながら連行されよう
オラトリオに違和感を持たれそうになる場合は吹き飛ばさん程度に思い切り暴れてこちらに意識を向けた隙に召喚解除
身を挺して娘を逃がした様に見せ掛ける
その際殴られるようだったら黙って殴らせておく
獅子城・羽鳥
人の心を蹂躙するこんな連中が一番嫌いなんだよ
やたら家族愛に拘るのは何なんだ?
防具を現地の貧しい者に極力似せ
髪も少々汚してボサボサにする
結婚したばかりの男を演じるのでやり過ぎない程度
酒場で安酒飲みながら自慢
俺、ずっと独りで生きて来たけど
凄くいい娘と出会えたんだ
(思い出せないが、実際にそんな幸せを味わった事があるような感覚に襲われる)
しかも優しい両親に可愛い弟妹付きだぜ
皆の為、頑張って働くぞ!
誘拐後は抵抗する振りしながら【早業】でチョークの粉を落として道標を残す
工場到着後は隙をみて【情報収集】やパラドクスでの解錠
【パラドクス通信】も頼る
他の虜囚は隠してる携帯食や救急箱で介抱
説得材料も聞き出したい
●
機械文明の興隆を誇るドイツ都市部でも、貧民街の生活は楽ではない。
それでも懸命に日々を送る人々の上に、人攫いの噂は暗い影を落としている様子だった。
「民間人すら戦力に加算せねばならんとは、ドイツ軍は随分と落ちぶれたものだ」
エルマー・クライネルト(価値の残滓・g00074)は、ボロボロのローブを羽織りながら呟いた。
貧民街で調達したこの服ならば、見た目を街に馴染ませてくれるだろう。勿論、何もせずともディアボロスとそのサーヴァントは外見で疑われることはないのだが、より貧民らしい方がいい筈だ。
両手を上げてバンザイの姿勢をするオラトリオ『フルーフ』にも、小さいサイズのローブを着せてやる。
「凡そ親子あたりには見えるだろう。……行くか」
もぞもぞと袖を通してフードを被ったオラトリオを従え、エルマーは夕暮れの貧民街へ繰り出した。
力無い足取りで、人気の無い道を行く男と娘。
「さあ、頑張ろう。もうすぐ家に帰れる」
男は励ましの声をかけるが、娘はやがて、ぺたりと路地の階段に腰かけてしまった。
「疲れて歩けないのか? ……仕方ない。少し休もうか」
男は自分も腰を下ろし、懐から取り出した一切れのパンを、娘に与える。
「最後のパンだ。ゆっくりお食べ」
自身も何も食べていない様子でふらつく男は、それでもなけなしのパンを齧る娘を満足気に眺めて――。
(「私が家族想いの役とは、笑えない冗談だ」)
誰にも聞こえない声音で独り言ちた。
家族という言葉に、ふと脳裏を過ぎる顔。顔。顔。
その時、息を潜めて近づく気配を感じて、エルマーの意識は現在に引き戻された。
「黙ってついて来て貰おう。大人しくしていれば手荒なことはしない」
数人のならず者が、男と娘――エルマーとオラトリオを取り囲んでいた。
「な、何だ、お前達は?」
エルマーは立ち上がり、オラトリオに手を伸ばすならず者に取りすがる。
「やめろ、娘には手を出さないでくれ……」
「うるさいぞ。黙らせろ」
抵抗するエルマーを、ならず者は何度も殴りつけた。一般法則破壊によって一般人の攻撃を無効化することも出来たが、
「(そのまま殴られた方が怪しまれんだろう)」
エルマーは敢えて殴られるままにしておいた。気絶したふりをし、自分に注意が向いた隙にオラトリオの召喚は解除しておく。
「娘がいなくなりました……!」
「時間をかけ過ぎだ。父親だけ連れて帰るぞ」
ならず者達はぐったりしたエルマーを抱え、彼等のアジトへ向かう。
●
人攫いの話題に、貧民街は暗く沈んでいた。家族を攫われて泣いている者もいるという。
「人の心を蹂躙するこんな連中が、俺は一番嫌いなんだよ」
そんな噂を耳に挟みつつ、獅子城・羽鳥(サイボーグの吟遊詩人×バウンサー・g02965)は準備を整える。
現地調達した衣服に身を包み、貧しい労働者の装いで、羽鳥は安酒場の世間話に紛れ込んだ。
「沈んだ話ばかりじゃ何だろう。俺の話も聞いてくれよ」
「何だい、明るい話題かい?」
「ああ、そうさ。俺、ずっと独りで生きて来たけど、凄くいい娘と出会えたんだ」
グラスを傾け、結婚したばかりの若者という体で、羽鳥は自慢話に興じた。
「(あれ、何だ――?)」
ふと違和感が脳裏を過ぎる。作り話ではなく、自分は実際にそんな幸せを味わったことがあるような――。しかし、それ以上は何も思い出せない。
「なんだいなんだい、羨ましいね」
「そいつは目出度えや」
楽しい話に飢えていたのだろう。客も羽鳥に相槌をうち、羽鳥は演技を続けた。
「そう。それからその子と結婚して、優しい両親に、可愛い弟妹まで、いっぺんに出来ちまったんだぜ。
だから俺、皆の為にいい仕事にありついて、頑張って働くんだ!」
「ああ、それがいい。こつこつ働くのが一番さ」
「折角家族が出来たのに、軍に入って離れ離れになるんじゃ甲斐が無いものねぇ」
ひとしきり盛り上がって注目を集めた後、羽鳥は酒場を後にした。
その帰り道。暗い裏路地で、ならず者は羽鳥を取り囲み、羽鳥もまたあえて抵抗せずに連れ去られたのだった。
●
その夜。闇に紛れて、ならず者はエルマーと羽鳥を荷台に乗せ、街を離れて秘密工場へ向かった。
目隠しと猿轡をされ、縄で縛られていたが、エルマーは呼び出したオラトリオに目隠しをずらさせ、完全視界で道を確認する。
「郊外の山地か。入り口を偽装した地下工場……よくもこんな場所に作ったものだ」
ならず者は工場の兵士に2人を引き渡し、逃げるように立ち去った。
縄を解かれ、放り込まれた牢の中には、同じように誘拐されて来た人達が身を寄せ合っていた。
「大丈夫か、君達……」
誘拐された時に殴られたのかも知れない、痣のある子供達を、羽鳥は手当てしようとしたのだが。
「あ、ありがと。でも、あんまり優しくしない方がいいよ」
「どうしてだ?」
「前にも1人、優しいおじさんがいたんだ。自分にも君達ぐらいの子供がいるから放っておけないって。でも、そのおじさんは僕達の身代わりになって連れて行かれちゃった……」
涙ぐむ少年。身代わりという言葉に反応して、1人の少女も泣き出した。
「お姉ちゃん……」
聞けば少女の姉も、妹の身代わりに連れて行かれたのだという。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【完全視界】LV1が発生!
【無鍵空間】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV2が発生!
一ノ瀬・綾音
隠し金庫の暗号ねー。倍数か。
情報を纏めると「Bは偶数、A+B+Cは3の倍数、CDは4で割れる、E=5、Fは偶数、D+5+Fは3の倍数、Gは3の倍数、ABCDEFGは7の倍数」ってところかな?
ABCDEが5の倍数な以上Eは5で確定。
ABCDEFが6の倍数ということは2の倍数で3の倍数なんだけどA+B+Cが3の倍数だからD+E+Fも3の倍数なはず。かつFは偶数じゃないと2で割れない。
そしてABCDEFGが3の倍数ということはA+B+C、D+E+Fが3の倍数な以上Gは3の倍数、つまり3か6。
これで考えると……(運命変転録をノート代わりにして計算)
綾音ちゃんわかっちゃった。
答えは「1472583」だ!
●
「あったあった。これが隠し金庫かー」
秘密工場の位置が特定された為、ディアボロス達は工場内への侵入が可能になった。一ノ瀬・綾音(綺羅星の如く・g00868)は、機械錠をかけられた金庫に辿り着く。
一応、警備の兵士などもいたのだが、ディアボロスにはどんな攻撃も効かないと解ると慌て始め、少し脅かすと逃げ出してしまった。
この工場が襲撃を受けること自体、想定されていないらしい。兵士は士気も練度も低いようだ。
「みんな一緒に逃げ出しちゃって、まったく仲がいいことだねー。さてと……倍数かー」
綾音は思考を巡らせる。
「備忘録の情報を纏めると、B・D・Fは偶数。CDは4で割り切れる。Eは5だね。
A+B+Cは3の倍数。A+B+C+D+E+Fも3の倍数。そこにGを足しても3の倍数。
1から8の合計は36で、ここから使わない数字ひとつ引いても3の倍数になる。
つまり使わない数字は3か6。Gも3の倍数だから3か6。3と6はもう使えない。
それからD+E+Fも3の倍数。こうして考えていくと、候補は絞られるね」
綾音は運命変転録をノート代わりに、さらさらと問題を解いていく。
「『1472583』、『1472586』、『7412583』、『7412586』。
この中で、7で割り切れるのはー……」
とうとう計算が必要になり、ペンを走らせる速さも上がる。――やがて綾音は手を止め、微笑んだ。無事答えを導き出したのだ。
「綾音ちゃんわかっちゃった。答えは『1472583』だ!」
ダイヤルをその数字に合わせると、ガチャリと音を立てて、あっけなく機械錠は開いた。
金庫を開け、中に収められていた分厚い帳簿を手にする。
「やったー! 裏帳簿回収完了!」
こうして、ひとつの裏帳簿が持ち帰られた。サイボーグ手術における材料確保ルート判明の一助となることだろう。
大成功🔵🔵🔵
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!
獅子城・羽鳥
(身代わりになったり気遣ってくれたり優しい者達だ
こんな時は自分や家族の為、他人を差し出してもおかしくないのに)
仲間と連係
残留効果利用
③の続きで牢内で準備
極力小声で説得材料を集めておく
隙をみてパラドクスで捕縛者の体力回復
鉄格子等の障害物を壊しておき見た目は元通りに見せかける
見張りは牢内の手頃な石等を外の壁にぶつけて音を立てて気を反らす
優しくするのが危険なら独り言で構わない
連れて行かれた人達の家族の思い出を教えてくれ
もし敵の兵士に変えられていても思い出せば、また家族と一緒に生きられるんだ
思い出の品があれば落とした振りして置いてもらえると助かる
合流・牢から脱出後も救出対象の安全最優先で臨機応変に動く
平良・明
子どもが多いようですね、自力で脱出させるのは難しそうです。
なら、出口まで私が引率しましょう。
身代わりに連れていかれた方との思い出話等を聞いて、
それを希望に勇気を出して出口までついてくるように言います。
トループス級にも、出来れば一般人の警備にも出くわしたくないので、
忍び足で出口に向かいつつ、同行者にも同じように、
静かについてくるよう伝えます。
敵を発見したら、ありものを投擲する等して注意をそらし。
その隙に走り抜けて突破します。
無鍵空間、操作会得等を使い障害物を切り抜け、
敵の位置などはパラドクス通信で共有します。
脱出したら木立に隠れさせ、
今から、私達があなたの大事な人を取り戻してくる、と伝えます。
エルマー・クライネルト
情の深い者から優先して施術とは、悪趣味な鉄屑共の好みそうなことだ
【パラドクス通信】で味方と連携
【無鍵空間】で迅速に解除できる扉は開放し、時間がかかるようであれば破壊
一般人の安全を確保した上で脱出を促す
道中に不安がある、連れて行かれた者を気にして脱出を躊躇う者がいれば声をかける
救われた身ならば尚更助からないとな
連れて行かれた者は我々が連れ戻す
何、きっと無事だ
大切な家族なのだろう、君が信じないでどうするね?
と【士気高揚】で鼓舞
それと、知っていれば連れて行かれた者の名と、良ければ君の名を教えてほしい
迎えに行く際に君達が心配していたと伝えてやった方がいいと思うからな
何か伝えたいことがあればそれも聞こう
●
「成程。そちらの状況は解りました」
平良・明(元用務員の巡礼・g03461)はパラドクス通信によって牢内の仲間と連絡する。
「子供が多いとなると、引率して脱出させる方が安全ですか……」
他のディアボロスからの情報や、入り口から様子を見た限り、警備兵のやる気は低い。明単独でなら、見つからずに行動するのは容易に思えたが。
「子供達を連れて逃げる程の隙があるかどうか。まあ、状況を探りながら考えましょうか」
全ての兵士を追い散らすことも可能ではあるが、ゾルダートが出て来ることは避けたい。
明は入り口を見張っていた兵士を静かに気絶させて物陰に引き込むと、工場内の様子を把握しながら牢を目指す。
(「こちらはその間に情報を収集しておこう」)
パラドクス通信で明に返答し、エルマー・クライネルト(価値の残滓・g00074)は牢内を見渡した。
工場は稼働を始めて間もないだけに、囚われた人数は多くはない。ただ怪我をした者や、すっかり意気消沈している者もいる。脱出前に、そこをケアする必要もあるだろう。
「何はともかく、だな」
見ればちょうどよく、牢の前の兵士は居眠りをしている。
エルマーは獅子城・羽鳥(メタリックトルバドゥール・g02965)と共に、囚われた人達を集め、「ここから脱出しよう」と告げた。
「(他人の身代わりになったり、俺を気遣ってくれたり、優しい者達だ。
こんな時は自分や家族の為、他人を差し出してもおかしくないのに)」
苦境に置かれても人としての心を失わない人達。羽鳥は彼等の顔を見回し、
「信じられないなら、俺達の力を見せよう。怪我をしている人は集まってくれ」
羽鳥が活性治癒の効果を発動させると、簡単な怪我はあっという間に治ってしまう。
「すごい……ありがとう」
「何、大したことじゃないさ。これで皆、逃げられるな」
「で、でも、私は恐ろしくて……」
「お姉ちゃんはどうなるの……?」
「連れて行かれた者は、身を挺して君達を救った。そうして救われた身ならば、尚更助からないとな」
二の足を踏む人達に、エルマーは語りかける。
「連れ去られた者は我々が連れ戻す。
何、きっと無事に帰って来るさ。大切な家族なのだろう、君が信じないでどうするね?」
士気高揚の効果を発動させたエルマーの鼓舞は、人々の勇気を奮い起こさせた。
「そ、そうだね。怖がってる場合じゃないよ」
「お姉ちゃんを、きっと助けてね……」
エルマーは少女に目線を合わせ、頷く。
「ああ。約束しよう。
そうだ。お姉さんと、君の名を教えて欲しい。迎えに行く際に、君が心配していたと伝えてやった方がいいと思うからな。何か伝えたいことがあれば、それも聞こう」
「お姉ちゃんはオルガ。私はハンナよ。お姉ちゃんに伝えて。もう我儘は言わないし、困らせたりしないから、帰って来てって」
エルマーは他にも同様に、名前を訊いた。
「連れて行かれたおじさんは、パウルって言うんだ。息子さんと僕の名前が同じルカだったから、放っておけないって……」
「連れ去られた夫はハイン。私は妻のゲルダだよ」
どうやら連れ去られたのはその3人らしい。
「ハインとの思い出話なんかがあれば、教えておいてくれないか?」
羽鳥は子供達には聞こえないように、ゲルダに事情を語った。
「もし……連れ去られた人達が敵の兵士に変えられていたとしても、家族のことを思い出せれば、また戻って来て一緒に生きられるんだ」
ゲルダは恐ろしい想像に一瞬息を飲んだが、すぐに話し出す。
「これ……ハインの誕生日に私が贈った懐中時計なんだ。連れて行かれる時に落としていってさ。これを贈った時、ハインはたいそう喜んでね、それからずっと大切に持ち歩いてくれてたのに」
あんたからハインに渡してくれないか、とゲルダが差し出した懐中時計を、羽鳥は借り受けた。
「任せてくれ。必ずハインの元に返すよ」
●
皆が脱出の決意を固めた頃、明が牢の前に姿を現した。
「準備はいいですか? では行きましょう」
牢の鍵を破壊し、目覚めた兵士を追い払う。
「……眠ったまま基地の崩壊で生き埋めになるのは流石に惨いですからね。
どのみち、この人数で見つからずに脱出するのは無理そうでした」
今からなら多少の騒ぎになっても、ゾルダートが出て来る前に脱出できるだろう、と明は言う。
一同は出口を目指して走り出す。
「この隔壁を操作すれば……」
「俺達はここを引き受ける」
「その間に脱出を!」
道中、明は操作会得で隔壁や照明を操作して兵士を混乱させ、羽鳥とエルマーは出食わした兵士を蹴散らしながら注意を引き、脱出の為の時間を稼ぐ。
「うう……」
「もう少しです、頑張りましょう」
遠くで聞こえる銃声に足が竦むルカ少年を、引率の明は励ました。
「パウルさんは身代わりになってでも、あなたを生かしたかったのでしょう?」
「うん。息子のルカ君も同じくらいの年で、もうすぐ誕生日なんだって……誕生日のプレゼントは何がいいか、考えてるんだって……きっとルカ君の所に帰りたかった筈なのに、それでも……」
「では何としても、あなたは生き延びなくては」
「うん。解ったよ」
ルカは再び走り出し、明は先導を続ける。
やがて、明と囚われの人々は工場の出口へ辿り着いた。
「ありがとう、お兄さん!」
口々に感謝の言葉を述べる人々を、更に安全な場所まで逃げるよう促してから、明は通信機で仲間に連絡する。
「脱出は完了しました。お2人にもお礼を言っていましたよ」
「そうか、ひとまず安心だな。警備兵もほとんど逃げ出して残っていないぜ」
「……後はゾルダートが残るのみ、か」
復讐者たちは工場の奥、手術室を目指す。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【活性治癒】LV1が発生!
【操作会得】LV1が発生!
【士気高揚】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV3になった!
【ダメージアップ】LV1が発生!
●
「騒がしいな。……まだ改造途中の慣らし段階だというのに」
ドクトルはそう言って、寝台に横たわっていた私達を起こし、命令した。
「いいか、お前達は私の命令に忠実に従う兵士だ。侵入者を殺せ。半端とはいえ、既にクロノヴェーダとしての力は持っているのだ。有象無象の人間になど負ける筈がない」
苛立った様子でそれだけ告げると、ドクトルは手術室へ戻っていく。
「現状……認識……」
頭の中に、真っ暗な空洞が広がっているようだ。思い出せることは唯一つ。私達はインファントリー・ゾルダート。
「命令……復唱……」
帝国の命令に従い、任務を遂行する機械の兵士。
「殺せ……侵入者を殺せ……」
逆らい難い、頭の奥からの命令に突き動かされて、私達は歩き出す。
3体のインファントリー・ゾルダート――人だった頃はオルガ、パウル、ハインと呼ばれていた者達――は、命令を復唱しながら手術室前の通路を進み……程なくして復讐者たちと邂逅した。
獅子城・羽鳥
残留効果活用
連係・アドリブ歓迎
自分のパラドクスと敵の攻撃方法の特性を考慮して戦う
他の味方と連携して戦える場合、可能ならば援護
勝利のためある程度のダメージはやむを得ないが
仲間を不利にする行動はしない
《情熱》併用
家族愛を歌い心を揺さぶる
説得成功した敵から一人ずつ
苦しませず命は取らず倒す
防御は《臨機応変》《忍耐力》《ダッシュ》活用
ハイン!
この懐中時計に見覚えがあるだろう!
君の妻のゲルダが誕生日に贈った物だ
君は喜んで大切に持ち歩き
連行される時に落としたのをゲルダが拾った
彼女は無事で、君に渡して助けて欲しいと俺に預けてくれた
姿を変えられてる事を俺達から聞いた上でだ!
俺にも大切な人がいるから他人事じゃない
平良・明
これより、皆さんの兵器たる理由を粉砕させて頂きます、
私の目の皆さんは人間です、どうぞやすらかに。
人の絆を繋ぎ留めるものは、その名と熱量でしょう。
私の大声で魂を震わせ、大切な事を思い出してもらいます。
オルガさん、ハンナさんから伝言があります、
心の底から愛しているから、お家に帰ってきて、と。
……超約な気もしますが、間違ってはないでしょう。
説得した後に戦闘に入りたいですが、
無理なら、近接戦闘しつつ説得します。
どちらにせよ、忍耐力と愛をもって説得にあたります。
敵の機械的な連携を分断するために、トーチカを出現させて戦います。
砲身をへし折り、斧の刃を潰すように、彼らが兵器であることを否定していきます。
エルマー・クライネルト
(分かってはいたが、何故こんな、人の尊厳を貶める所業が為されるのか――嫌なことを思い出す、忌々しい)
激しい戦闘は戦闘思考へと傾けてしまうかもしれん
説得が通るまで防戦し機会を伺う
徹甲弾による突きが来たら多少の負傷は厭わず攻撃を受け止め間近で語り掛け
この距離ならば私の声も届くだろう
説得が成功したらパラドクスで手加減し攻撃
パウル、君は己の身よりも息子と同じ名を持つルカという少年を救った
優しい君には戦いなど向かないな
息子の誕生日の贈り物でも考えている方がよっぽど相応しいと思うがね?
なり果てた者の気持ちは分からんが、残される者の気持ちは分かる
後悔に苛まれる我が子など見たくないだろう、早く帰ってやりたまえ
●
解っていたことではあった。
「侵入者を発見……」
「命令復唱……」
「殺せ……殺せ……」
復讐者に遭遇したゾルダート達は、虚ろな声音で呟くと、直ちに迎撃を開始した。音楽でも奏でる如く規則的な砲音を響かせて。
そこには、伝え聞いていた人間らしい面影はない。ただ背格好と、まだ機械化されきっていない生身の部分から、それぞれが誰なのか推し量れるのみ。
兜の隙間から長い金髪を垂らしているのがオルガ。人のよさそうな丸っこい体型がパウル。長身痩躯がハイン。今や、そんな特徴など何の意味も無いとばかりに、全く同じ挙動で攻撃して来ていたが。
(「こうなっていると、解ってはいたが……)」
エルマー・クライネルト(価値の残滓・g00074)は彼等の姿に眉を顰める。
(「何故こんな、人の尊厳を貶める所業が為されるのか――嫌なことを思い出す、忌々しい」)
どうしても連想されてしまう――変わり果てた存在となった肉親たち。そして、ひとりだけそうならなかった自分。
「だが、まだ間に合う筈だ……彼等は」
エルマーの呟きに、獅子城・羽鳥(メタリックトルバドゥール・g02965)も同意する。
「ああ。俺達で家族の下に帰らせてやろう」
託された懐中時計を手に、羽鳥は砲火の中へ走り出す。エルマーもそれに続いた。
「激しく反撃すれば、彼等の思考を戦闘に寄せてしまうかも知れん。だがこの砲弾の中を……」
「任せて下さい」
エルマーの危惧に、反応したのは平良・明(元用務員の巡礼・g03461)。明はゾルダートに向けて呼ばわった。
「これより、皆さんの兵器たる理由を粉砕させて頂きます。私の目の皆さんは人間です。……どうぞやすらかに」
詠唱と共に、インスタントトーチカα――「R.I.P.」と刻まれた薄い石板のようなトーチカが現れる。
「さあ、行きましょう」
「助かるぜ」
羽鳥とエルマー、そして明は、その影に身を隠しながらゾルダートに接近した。
●
「ハイン! 君はハインだろう!」
最初にゾルダートに接近したのは羽鳥だった。
「見てくれ、この懐中時計に見覚えがあるだろう!
君の妻のゲルダが誕生日に贈った物だ。君は喜んで大切に持ち歩いていた。連行される時に落としたのをゲルダが拾ったんだ」
砲の破片を受けて血を流す腕で、思い出の品を高く掲げる。
「その時計……それは……ゲルダ……?」
時計を目にしたゾルダートの、砲撃が止まった。ゲルダという名を耳にして、何かを思い出すように頭を抱える。
「彼女は無事だ! 君に渡して助けて欲しいとこれを俺に預けてくれた。
姿を変えられてる事を俺達から聞いた上でだ!」
「おお……よかった……。……何がだ?」
攻撃が止んだことで、混乱するゾルダートの間近まで、羽鳥は辿り着いた。
「俺にも恐らく、大切な人がいるんだ。だから他人事じゃない。
ハイン、君は大切な人のことを思い出してくれ。……さあ、これを!」
ゾルダートの手に、羽鳥は懐中時計を握らせる。手にしたそれを確かめたゾルダートは、電流が走ったように震え――全てを思い出した。
「ああ、そうだ……私はゾルダートなんかじゃない。ハインだ! どうして忘れていたんだ、妻の名前まで……」
人間の意識を取り戻したハインの様子に、羽鳥は胸を撫で下ろす。そして告げた。
「ハイン。今から俺の力で、君をその姿から解放する……聴いてくれ」
羽鳥が歌いあげたのは、家族愛を主題とした伝承詩(サーガ)。――レジェンダリースマイトの一撃により、パラドクスの力を受けたハインの装甲は崩れ落ちていく。
●
「侵入者を射殺せよ……」
徹甲弾の鋭い一撃が、エルマーを襲った。咄嗟に身を躱すも、肩口を抉られる。だが傷口を押さえながら怯むことなく、エルマーはゾルダートに更に接近した。――反撃ではなく言葉を届けるために。
「パウル、覚えているか。君は己の身を犠牲にしてでも、息子と同じ名を持つルカという少年を救った」
「ル、カ……ルカ?」
ゾルダートは一瞬、ぴたりと動きを止めた。それから躊躇うようにゆっくりと、こちらに狙いをつけてくる。
「(もう少しの筈だ)」
自分に向けられる砲身を視界に入れながら、エルマーは意を決して説得を続ける。
「そんな優しい君には、戦いなど向かないな。
息子の誕生日の贈り物でも考えている方がよっぽど相応しいと思うがね?」
「誕生日……そうだ……」
いつまで経っても、砲撃は再開されなかった。
「……私にはなり果てた者の気持ちは解らんが、残される者の気持ちは解る。
後悔に苛まれる我が子など見たくないだろう、早く帰ってやりたまえ」
「ああ、そうだよ。こんなことしてる場合じゃないんだ。帰ってプレゼントを用意しなきゃ……ありがとな、思い出させてくれて」
砲を降ろして、人の意識を取り戻したパウルはお礼を述べる。エルマーは人形を操って構えさせた。
「いいさ。その姿では帰り難いだろう。少しじっとしていてくれ」
人形から放たれる呪詛が、パウルを包む。パラドクスの力と、元に戻りたいという意志によって、パウルに施されていた改造は打ち消されていく。
●
「人の絆を繋ぎ留めるものは、その名と熱量でしょう」
そう考える明は、声を限りに呼びかける。砲撃の爆音にも負けない声量は、否応なくゾルダートの耳に届いた。
「オルガさん、ハンナさんから伝言があります。心の底から愛しているから、お家に帰ってきて、と」
「語彙検索……愛……ゾルダートには不要……」
「オルガ、ハンナはこうも言っていた。もう我儘は言わないし、困らせたりしないから、帰って来て、と」
エルマーの並べた単語に、ゾルダートは反応した。
「我儘、言わない、困らせる……用例記録あり……」
はっ、と気づいて、明は畳みかける。
「オルガさん、その頼み方が、ハンナさんの口癖なのでは?
思い出して下さい、身を呈してまで助けたかった妹さんのことを」
「無数の用例……経験、思い出……これは何……?」
ゾルダートはよろめきながら、それでもこちらに向かってくる。
「あなたは何度もその頼みを聞いてきたんでしょう? それこそ愛ですよ、まだそれがあなたの中に残っているんです」
明の呼びかけに、今度こそゾルダートは人の意識を取り戻した。
「ああ、思い出したわ。ハンナはいつもそう言って……ごめんね、お姉ちゃん、心配させて……」
意識を取り戻しても尚、プログラムされた動きに逆らえないらしい。砲を掲げるオルガに、明は銃を向けた。
「あなたはもう、兵器ではありません」
銃撃が砲を破壊し、続いて振り上げられた斧を弾いた。パラドクスの力がハンナの武装を砕け散らせ、以前の姿に近づけていく……。
●
「あなた方には、何とお礼を言えばいいか……」
ディアボロスの活躍により、オルガ、パウル、ハインの3人はクロノヴェーダから一般人に戻ることが出来た。身体の一部に機械化された部分が残るサイボーグの姿ではあるが、規模も小さく、隠して日常を送ることが出来るだろう。
「この程度はどうってことないぜ。今は早く、家族の所へ戻ってあげなよ」
羽鳥に促され、3人は工場を脱出するべく走り出した。復讐者たちはそれを見送る。
……これで残された使命はあとひとつ。手術室にいる工場長、アヴァタール級ゾルダートの撃破のみ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【勝利の凱歌】LV1が発生!
【セルフクラフト】LV1が発生!
【士気高揚】がLV2になった!
効果2【ガードアップ】LV2が発生!
【ダメージアップ】がLV2になった!
●
「……外の喧騒は聞こえていた」
手術室の分厚い扉を開くと、そこにはドクトルが待ち構えていた。
「改造途中とはいえゾルダートである我が作品を……貴様らはパラドクスに目覚めた人間の残党だな。
貴様ら、脆弱な人間に代わって我々ゾルダートが、この国を勝利と繁栄に導いてやっているのだ。邪魔をするな」
ドクトル・マシーネは4本の腕をそれぞれ蠢かせて、復讐者に襲いかかる!
平良・明
そういえば、ドクトルにちょっと聞きたい事があるんですよ。
誰かを庇った人間を優先したのは、その方が面倒が無かったからでしょうか。
機械的に合理的な判断だとしたら、むしろ分かりやすいのですが。
名誉のために、変な趣味は無いですよね?
機械に踊らされているのが人間だとしたら、
機械を使いこなすのも人間。
機械を壊すのも。大体人間です。
忍び足で物陰に隠れて接近し、味方が地形の利用できるように、
セルフクラフトとトーチカで地形を作りながら、攻撃します。
敵と味方の動きをよく観察して、隙ができたらカバーするように、
現在体力が一番低い味方をディフェンスします。
ぞうぞ機械的にやすらかに、行動不能までの時間を数えて下さい。
●
「そういえば、ドクトルにちょっと聞きたい事があるんですよ」
平良・明(元用務員の巡礼・g03461)はドクトルに話しかけた。
「誰かを庇った人間を優先したのは、その方が面倒が無かったからでしょうか。機械的に合理的な判断だとしたら、むしろ分かりやすいのですが。
名誉のために、変な趣味は無いですよね?」
「呑気に喋っている場合か?」
ドクトルは返答するのも煩わしいとばかりに攻撃を繰り出す。
「おっと」
明もまた、インスタントトーチカαを発動した。
構築された石板のようなトーチカが、明と仲間の姿を隠す。仲間たちもこの機に乗じて攻勢に出るだろう。逆説連鎖戦では歪んだ時空の中で各々の主観が交錯するため、正確な時系列は解らないが。
「機械に踊らされているのが人間だとしたら、機械を使いこなすのも人間。機械を壊すのも。大体人間です」
「どこだ……?」
トーチカと、セルフクラフトで生み出した立方体に身を隠しながらの銃撃に対し、ドクトルはレーザーメスを的確に投げ返してくる。
銃弾と光が交錯し、互いの身体を傷つけた。
「ですからどうぞ機械的にやすらかに、行動不能までの時間を数えて下さい」
「……チッ」
アームにめり込んだ銃弾に舌打ちするドクトル。明は頬の傷からの流血を拭うと、更なる攻撃の機会を窺い、続く仲間の攻勢を銃撃で支援した。
成功🔵🔵🔴
効果1【セルフクラフト】がLV2になった!
効果2【ガードアップ】がLV3になった!
一ノ瀬・綾音
家族。それは何よりも大事な友情。
その思いを踏みにじるなんて……!
綾音ちゃんは君とは友達になれそうにない――嫌!なりたくもない!
お前はこの綾音ちゃんが破壊する!
相手の小刃が飛んできたのを見計らい羽ペンで円を描くように呪文を描き『高速詠唱』で【水魔法】発動、自分の目の前に魔法陣を形成し小刃ごと押し流しドクトルに攻撃!
「汝冠するは憤怒。怒れる水流よ、静けさから目覚め彼の者に牙を剥け!」
どうしても当たりそうなものは【セルフクラフト】で目の前にコンクリートの壁を作りガードする。
家族の心なんかを踏みにじる機械なんかに綾音ちゃん達は負けない。
さあ、終焉の時だよ。脆弱な人間に負けたのを悔やみながら散るんだね!
●
「家族の絆。それは何よりも大事な友情」
「何?」
一ノ瀬・綾音(綺羅星の如く・g00868)の言葉に、ドクトルは首を傾げた。
「……友情と家族への情、多少違いはあるかも知れないけれど、親愛の情という意味では近いものなんだよ!」
綾音は真っ直ぐドクトルを見返した。
「大事なその思いを踏みにじるなんて……!
綾音ちゃんは君とは友達になれそうにない――嫌! なりたくもない!
お前はこの綾音ちゃんが破壊する!」
「下らん……」
「汝冠するは憤怒……」
明のトーチカの陰から隙を窺い、攻撃の機会を捉えた綾音は羽ペンで宙に呪文を描く。
「そこだ!」
ドクトルのレーザーメスは、障害物として配置されたコンクリートなど容易に貫通し、やはり的確に綾音を狙って来たが。
「怒れる水流よ、静けさから目覚め、彼の者に牙を剥け!」
同時に綾音が発動した【憤怒なる水流(ヴォルテックス・ラース)】は、渦巻く水流を放って光刃を呑み込んだ。
「馬鹿な!?」
レーザーメスを打ち消した奔流は勢いを損なわず、ドクトルを直撃して吹き飛ばす。
「家族の心を踏みにじる機械なんかに、綾音ちゃん達は負けない。
さあ、これからが君の終焉の時だよ。脆弱な人間に負けたのを悔やみながら散るんだね!」
――荒れ狂う水に巻き込まれ、回転しながら壁へ叩きつけられたドクトルに、綾音は啖呵を切った。
大成功🔵🔵🔵
効果1【水源】LV1が発生!
効果2【ラストリベンジ】LV1が発生!
エルマー・クライネルト
肉体を鉄で覆われようと、彼等は大切なものを守り抜いた
その価値は誰にも奪わせはしないとも
さて、下手な家族ごっこをさせられ、下衆には殴られ、祖国の愚かな所業を見せつけられ
此処に来るまでに随分と不愉快な目に遭わせてくれたものだ
大変気分が悪い、死んで詫びたまえ
【操作会得】で周囲の手術道具を操作して盾代わりにし
【地形の利用】で手近な機械に身を隠し攻撃を凌ぐ
手術室が破壊されるようわざと派手に立ち回る
人形の【フェイント】で気を引かせたところで本命のパラドクスを発動
鉄屑に心があるとは思えないが、存分に奪ってやれ
討伐後は速やかに撤退
先に脱出した彼等の事が気がかりだが
あれだけ強く想い合えるのならきっと大丈夫だろう
獅子城・羽鳥
身体や命だけでは飽き足らず
心、特に愛情を弄んだ罪は何より重い
楽に逝けると思うなよサド野郎
残留効果活用
連係・アドリブ歓迎
自分のパラドクスと敵の攻撃方法の特性を考慮して戦う
他の味方と連携して戦える場合、可能ならば援護
勝利のためある程度のダメージはやむを得ないが
仲間を不利にする行動はしない
早目にライトや手術道具を壊しておきたい
《一撃離脱》を心掛け
《フェイント》《不意打ち》織り交ぜながらバラドクスを叩き込む
ダメージは《地形の利用》させてもらったり《忍耐力》で耐える
《制圧射撃》で足止めしたり《光遣い》の目眩ましや手足狙いで動きを止め【ドレイン】の機会を積極的に作る
脆弱な人間に負ける気分はどうだクズ鉄?
●
「人間の機械化か……」
エルマー・クライネルト(価値の残滓・g00074)は今、助けた人達の顔を思い出す。
「肉体を鉄で覆われようと、彼等は大切なものを守り抜いた。その価値は誰にも奪わせはしないとも」
「ああ、あの人達は立派だった。
そして、彼等の身体や命だけでは飽き足らず……心、特に愛情を弄んだ罪は何より重い。
――楽に逝けると思うなよ、サド野郎」
怒りを露にする獅子城・羽鳥(メタリックトルバドゥール・g02965)に、ドクトルの反応は冷ややかだった。
「人間がゾルダートに勝てるものか」
明のトーチカが仲間の姿を覆い、戦いが始まった。
銃撃と水流がドクトルを打ち据えた隙に、エルマーと羽鳥は行動を開始する。
「こんなガラクタでも盾ぐらいにはなるだろう」
手術台を破壊してバリケードにするエルマーに、ドクトルは声を荒げた。
「貴様、私の手術台を!」
「これでその背中の手術道具も、もう必要ないな。やらせてもらうぜ!」
エルマーに気を取られた敵の背後から、羽鳥のパラドクスが襲う。
空中に現れた戦乙女の幻影から、羽鳥が受け取った光は槍へと変わり――投げ放たれた槍は光熱をもってドクトルの背のライトを溶かし、アームの1本を焼き切った。
「ぬうぅ!」
怒りと苦悶の声をあげ、ドクトルはレーザーメスで反撃するが、無理な体勢からの投擲は羽鳥に難なく回避される。
「脆弱な人間に負ける気分はどうだ、クズ鉄?」
「おのれぇ!」
羽鳥の槍、明の銃弾、綾音の水流に狙われ、それぞれに反撃するも最早当たらず、ドクトルは一方的に傷ついてゆく。
「……さて」
そんな敵の前に、エルマーは進み出た。
「下手な家族ごっこをさせられ、下衆には殴られ、祖国の愚かな所業を見せつけられ。
此処に来るまでに随分と不愉快な目に遭わせてくれたものだ。
大変気分が悪い、死んで詫びたまえ」
「何を!」
ドクトルが放った手術糸は、エルマーに躱されて虚しく手術台を絡め取った。
「鉄屑に心は無いと思っていたが、どうやらそうでもないらしい」
エルマーが目にしたのは、ドクトルの怒りと苦痛の表情。脳を機械化したトループス級と違い、ドクトルには脳があり、感情もあるようだ。
「であれば……存分に奪ってやれ」
エルマーの声に、オラトリオのフルーフがドクトルを指差した。
差されたドクトルの胸に、黒百合が呪いの根を張り、茎が伸び、蕾をもたげ……。
「そんな、馬鹿な……人間などに……!」
生命力を吸い上げられていくゾルダートの表情は、苦しみから絶望へと変わる。
――黒百合が蕾を開いて咲き誇る頃には、養分となったドクトルは床に倒れて絶命していた。
●
アヴァタール級の撃破と同時に、秘密工場は鳴動を始めた。自爆機構が作動したのだろう。
復讐者たちは取り残されている人間がいないことを確認すると、速やかに工場から退避した。
轟音と煙をあげる工場を背にした復讐者たちの視界には、無人の山道が広がるばかり。
先に脱出した囚われの人々は、既に遠くまで逃げている筈だ。
「あれだけ強く想い合える人達だ。これから先もきっと大丈夫だろう」
彼等の行く末を気にかけながら、役目を終えた一同は迎えのパラドクストレインへ乗り込むのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【植物活性】LV1が発生!
【活性治癒】がLV2になった!
効果2【ドレイン】がLV3になった!