リプレイ
平良・明
人生初ロシア、うるさい輩が居ますが、寒くてとてもいいところ
呼ばれなくても今行きます
民を弾圧するのは許すまじ、じゃがいも畑を荒らすのは、論外です
なにも大事に出来ない輩には、熱い拳をくれてやろう
建物の影に隠れて接近し、不意打ちできれば上等です
闘気の「重門」を展開し、なるべく相手の斬撃は避けつつ
甲冑の上からでも、「灼」による全力のフルスイングをお見舞いします
むん、名乗るのも忘れずに
私が通りすがりの観光客です
以後よろしく、そして左様なら
あと、村人さんたちは、こっそり避難してもらいます
巻き込んでしまって、やるせない
ノイン・クリーガー
[人物]
基本的に私語をせず、淡々と作戦を遂行する兵士(連携、絡みなどは歓迎)
隠密行動、偵察などが得意な忍者タイプ。
[心境]
(そんなに怒鳴らなくてもちゃんと聞こえてるさ。
だから死ぬことになる…)
[行動]
すぐには殺さずに生活に必要な資源を潰すのか…
冬季迷彩服を着用して雪に溶け込みつつ、【地形の利用】行い、畑を見渡せる射撃位置を確保する。
位置についたら【光学迷彩】で身を隠し、SSG-21で【不意打ち】を行い、【暗殺】する。
仕留められなかった場合は【一撃離脱】で刀身を伸ばす攻撃を避け、再度攻撃を仕掛ける。
フルルズン・イスルーン
ここもユトランド半島? ふむん。
というか、これラスプーチン的に呼び出しベルなのかな。
なんかディアボロスは自動発生で出てくる現象とか思ってない?
いや、それすらもわかんないから色々やってるんだよね。たぶん。
遙かなる衛士よ、盾を持ちて鉄床となれ! ヴァンガード・ゴーレム!
来るわけないだろー、とか思ってるその舐めた態度。矯正してやるのだ!
ほれほれー、その大口に答えてでっかいゴーレムくんで来てやったぞー。
何も言わないならそのまま轢き潰すよー。
ちなみに答えは聞いてない。大盾の染みになるが良い。
とりあえず、拠点構築でゴーレムくんが削って盛った盛土の簡易壁で生存者を匿ってと。
それからどうしようねぇ。
薬袋・透
クロノヴェーダの時点でスカウトお断りだってのに、関係ない集落の人達まで巻き込むなんて言語道断、だわ
特に子供大好きリューロボロスちゃんにとっては地雷でしょうね
挨拶代わりに不意打ち、冰魔晶刃を薙ぎ払い腕を両断
誰がヘタレチキンの臆病者ですって?
パラドクスで貫通撃
ほら、血が見たかったのでしょう?お望み通り見せてあげるわよ
相手の攻撃は火炎と氷雪同士の全力魔法をぶつけ発生させた蜃気楼のスクリーンを囮にして対処
その隙に風の斬撃を飛ばし首を刈って暗殺するわ
アドリブ絡み歓迎
ラズロル・ロンド
エトヴァ(g05705)と参加
彼だけ呼び捨て
何この寒さ…ヤバイ
絶対ヤバイやつじゃん
新宿島で入手したダウンジャケットの上下、手袋、スノーブーツにカンジキとしっかり雪中対策して参加な寒さ苦手狐
更に自前の尻尾を巻いて
あ、【寒冷適応】エトヴァは神か!と拝むね
でもやっぱりこの雪景色はサムイ
ささっと倒しちゃおうサムイ
砂塵海嘯を呼び出し…雪中戦でも大丈夫だろうか…
雪も交えて雪崩の勢いで押し流し
楔を作り出せば刺し貫く
張付けになってなさい
おお、サムそう
反撃は剣の動きをよく見て
咄嗟に避けて躱そう
砂の海嘯と雪崩でご退場頂いた隙に男の子を抱え上げ安全な所へ離脱
ロマノフでは口を開けばサムイと言ってしまいそうだ…
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
ラズ(g01587)と参加
呼び方はラズ
連携、アドリブ歓迎
……呼んだか?
そしてさようならだ
【寒冷適応】発動し、味方を動きやすく
完全視界で雪中戦対応
ラズ、しっかりして
俺のコートも着ると良い
初動は牽制するか仲間に任せ、周囲の一般人の安全確保し逃がす
は、ノーブルが聞いて呆れるな
戦闘しつつ偵察、観察し戦況把握
敵の動き、攻撃動作や隙、消耗を看破
各個撃破で数を減らす
パラドクスの弾丸で撃ち抜き動きを止め援護
弱った敵は確実に止めを
吹雪に紛れようと、血の匂いは隠せまい
……逃がさない
大気中にEis-Spiegelを配置し相手の攻撃阻害
反撃には魔力障壁を展開、猟犬の動きを観察し回避
……村人達とジャガイモへ謝罪をどうぞ
エヴァ・フルトクヴィスト
なるほど、私達は他の断片の王の尖兵という事ですか。
交渉時、その辺りをどう解消するのかは興味深いですね。
そして、私達が人々が殺されるタイミングでの介入、今はそんなことはと思っているみたいですが。
生かして撤退させるのは、私達が駆け付ける事が出来るという情報を与える事になるのでは……?
……今は村人の人々の命の危機の解消が急務。
妖精さん達を召喚して統率。
敵の手や刃の動きを観察、
残像やエアライドなどフェイントを駆使して回避。
結界術を急所に展開し深手を防ぐなど試みつつ。
妖精さん達の魔術砲弾の弾幕で吹き飛ばしたり、
合間を縫って相手に接近して斬撃で貫く一撃を喰らわせます!
臆病者は弱きを襲う貴方達でしょうに!
リューロボロス・リンドラゴ
腕を切り落とされんとする男の子の救出最優先よ!
ダッシュでかっさらってくれるわ!
我らがなにかも分からず、来るとも思っていない血影猟兵共相手だ、不意もつけるであろう!
……幼子よ、よく戦った。あとは任せよ。
寒冷適応で自身と仲間たちを戦いやすくしつつ、雪中戦よ!
ダッシュと衝撃波による吹き飛ばしで囲まれぬよう立ち回りつつ、我が極寒のブレスで血の斬撃ごと凍てつかせてくれるわ!
我は龍、我こそはドラゴン!
幼子達の守護者なり!
可能ならば幼子の鉄串を突き刺してやりたいものよ!
我が氷を纏わせれば一撃くらいは保たぬかの?
この一撃は幼子達の怒りと知れ!
無論、幼子を連れて離脱するラズロルの後は追わせんよ!
●
昼夜の区別なく暗い寒村では、雪に覆われた畑が灰色に見える。家を燃やす炎の色だけが、畝の頂きを彩っていた。
冬季迷彩服を着用したノイン・クリーガー(ゴースト・g00915)は、身を低くしてやせ細った雑草と雪に覆われた地表を進む。
うぬぼれきった血影猟兵たちがあげる声を冷ややかに聞き流しながら、雪の吹きだまりの陰に身を隠した。
畑の向こうの道に立つ2体の血影猟兵と、その足元に倒れている男の子がよく見える。しかも追い風、ベストな狙撃位置だ。
2体のうち、向かって右に立つ血影猟兵が剣を振り上げた。
「おーい、ディアボロス。お前たちがいつまでたってもやって来ないから、こいつの腕が斬られてなくなっちまうぞ。いいのか? 可哀想だと思うなら、さっさと助けに来いよ臆病者」
弱いものほどよく吼える。
ノインは剣を振り上げる血影猟兵に銃口を向けた。
フロントサイトを敵の体の中心に合わせ、安全装置を外し、トリガーに指を添える。
燃え盛る炎で影になっている建物の間を駆け抜けていく、平良・明(ダイヤのK・g03461)と薬袋・透(無彩の魔女の系譜・g02087)の姿が視界の端に見えた。
あほうな血影猟兵たちは、ディアボロスの接近にまったく気づいていない。
剣を振り上げていない血影猟兵が笑いながら、もう来ねぇよ、さっさとやっちまえ、と言った。
「いまの、聞こえたか? 本当に斬るぞ」
「いいからやれって」
2体は下卑た笑い声をたてた。
(「そんなに怒鳴らなくてもちゃんと聞こえているさ」)
ノインは、明と透がすぐ敵に襲いかかれる位置をキープしたところで、静かにトリガーを絞った。
(「だから死ぬことになる……」)
ごくごく小さな音をたてて放たれた流線型の弾丸が、凍てついた大気を切り裂き、凄まじい疾さで空を走る。
血影猟兵が纏う黒い甲冑を弾丸が貫き、肉体を砕く異音が響いた。
まるで翼を広げるようにして背の後ろに血飛沫が飛び、白い雪を赤く染めた。
仰向けに倒れる血影猟兵の剣から赤黒い血がにじみ出し、刀身にまといついた。刀身が2倍近く伸びる。
だが、その剣先はノインにまったく届かなかった。
胸に小さな穴を穿れた敵はひくひくと体を震わせて、雪の上に血の池を広げていく。
いきなり仲間をやられた血影猟兵は狼狽えた。
誰もいない畑に向かって誰何する。
「だ、誰だ!?」
「通りすがりの観光客御一行です」
「な――」
「以後よろしく、そして左様なら」
明は血影猟兵が振り返った瞬間、目にも止まらぬ豪速のストレートを放った。さばくことも許さずに、顔面を隠すベンテールを捕える。
周囲の空間を歪ませて見えるほどの重い闘気を纏った、鉄球のような拳がベンテールを潰し、そのまま顔にめりこんで、鼻の骨や歯をへし折った。
血影猟兵が、ガボガボと音をたてて血の泡を吹き零しながら剣を振り回す。
「おっ、と」
流れるような円運動で剣をかわすと、後ろへ下がって間を取った。
凍ったジャガイモを踏み潰しそうになって、たたらを踏む。
「あぶない、あぶない。食べ物を粗末にしてはいけません」
しゃがんでジャガイモを拾う明の頭の上を、赤黒い剣が風切りの音を引いて過ぎていった。
――と、思ったら、こんどは前からもう一本の赤黒い剣が足首を薙ごうとする。
胸にヒビの入った甲冑がいつのまにか起き上がっていた。
「おや? まだ息があるんですね、しぶとい」
しゃがんだまま、ぴょんと跳ねて薙がれた剣をやりすごした。
足の代わりに、まだ形を止めていたジャガイモが3個スライスされる。
「民を弾圧すること許すまじ。じゃがいも畑を荒らすのは、論外です。なにも大事に出来ない輩には、熱い拳をくれてやろう」
ジャガイモを空に投げた。
重心を低く落としたまま腰を捻り、残像が見えるような速さで右手の拳をヘルメットの側頭部に打ち込む。
割れ鐘が鳴るような音を大きくたてて、ヘルメットごと血影猟兵の頭が砕けた。
先に顔を潰された血影猟兵が、ジャガイモをキャッチした明に迫る。
「ぢヴぇ! ベダれのヂィあヴォロす」
「もしかしていま、『死ね、ヘタレのディアボロス』っていいました?」
血影猟兵は最上段に構えた剣を、笑みを浮かべる明の脳天をぶち割る勢いで、剣を振りおろした。
その刃がイヤーマフをつけた青い帽子に触れた刹那、銀色に光る何かが尾ひれをすばやく振りながら、時速数十キロという猛スピードで血影猟兵の真横から突進してきた。
血影猟兵がくの字に折れ曲がって横っ飛びしながら、グバァッと泡混じりの血を吐き出す。
ダツのような何かが敵の脇腹に突き刺さったまま、ぐりぐりと体を回転させていた。
「あ、よかった。トレードマークの帽子は無事でした。ナイスアタックです、透さん」
その透が、氷の魔力を宿した古い薙刀を背中に構えながら駆けてくる。
「誰がヘタレチキンの臆病者ですって?」
「ぎ、ギギギギザ……ま……」
ダツのような何かが腹を抜け出て消えた後、血影猟兵は凍った地面に片膝をついた。
最後に気力を振り絞り、赤黒い血で長く伸ばした剣を透に向けて突きだす。
「あまい!!」
透は足を滑らせながら薙刀――冰魔晶刃をスッと前に回し、腰を低く落とした。
伸びてくる赤黒い剣を穂先でさっと打ち払い、さらに一歩、薄い雪の下で凍った地を踏み砕いて、必中の間合いに入る。
「ほら、血が見たかったのでしょう? お望み通り見せてあげるわよ」
穂先がヒョウと地の雪を巻き上げて飛んだ。
ギャ、という悲鳴とともに赤黒い血をしぶきながら血影猟兵の両腕が落ちる。
透は雪を赤く染めながら転げまわる敵を冷やかに見下ろした。
闇に溶け込んだノインが、どこからか発砲してトドメを刺した。
「ヘタレはどっちよ、まったく……っと、その子、大丈夫? ねえ、聞いてる?」
村の中心へ目を向ける明の背が強張っていた。
それを見た透もまた、神経を集中させて、耳を澄ませる。
――金属同士が軽く打ち合い、そして擦れ合いもしている、全身に金属の甲冑を着た何者かが駆けてくるような音。
ふいに、鋭く大きなパシンという音とともに燃える家の窓がはじけ、赤い炎が勢いよく噴き出しできらめいた。
寒風にめくれ上がった炎の下から、黒で統一された甲冑に身を包む血影猟兵たちが迫り来る。
その数5体。
「左の道からも3体、来るわよ!」
敵は村の右端に建つ家畜小屋の角からも、血影猟兵が3体飛び出してきた。
●
『獄炎爵』ストラヴィンスキーは、村の端で始まった小競り合いにすぐ気がついた。
(「あらら、本当に来ちゃった……。ちょっとびっくりだわ」)
だが、すぐには腰をあげない。
ディアボロスなる者たちが、果たしてラスプーチンが思うような者たちなのか確かめる必要がある。
血影猟兵にやられるようでは、交渉のテーブルにつく資格すらない。仲間にするなど論外だ。
(「どのぐらいの時間がかかって、何人のディアボロスがここに来るかしら。ふふ、がっかりさせないで欲しいわ」)
●
正面から向かってくる一団が一足早い。
男の子を守るように立つ2人にあと数メートルのところで、そのうちの1体が怒声をあげた。
「貴様らがディアボロスか? ここにラスプーチンさまの御眼鏡、いやその前にストラヴィンスキーさまの御眼鏡に適う強者がいるなら名乗り出よ! 我らの仲間として受け入れようぞ」
「……俺を呼んだか?」
3方から包囲を狭めてくる敵の足を、氷の破片のように冷たくとがった声がとめた。
青い影が風の中で躍動する。
「お前たちの仲間に? 断る。そしてさようならだ」
どこかで、なにかが、どさりと音をたてて倒れた。
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)が放った冷たく透き通った青い魔法の弾丸が、先陣を切って駆けてきた血影猟兵の頭蓋を貫いたのだ。
敵は音もなく、いや、耳に聞こえぬ死の調べを奏でながら現れた天使に驚愕した。
直後、パラドクスの残留効果が発生する。
ディアボロスたちが肌に感じていた殺人的冷気が減じた。
エトヴァとともに馳せ参じたラズロル・ロンド(デザートフォックス・g01587)の表情がほわっと緩む。
「あ、【寒冷適応】。エトヴァは神か!」
ラズロルはパラドクストレインを降りてからずっと、寒い、この寒さヤバイ、と零していた。
まるで白銀に輝く月のようなふっくらと膨らむ尾を、防寒着の上から体に巻きつけていても、この地の寒さは半端なく、ガタガタと震えていたのだが。
エトヴァに向けて、助かった、と手を合わせる。
「大げさだな。ラズ、しっかりして。これでも寒いなら俺のコートも着ると良い」
「ありがとう、エトヴァ」
ラズロルは遠慮なくエトヴァが脱いだコートに手を伸ばした。
この狐はデザート仕様なのだ。
寒さにはめっぽう弱い。
「はあ、あったかい……でもやっぱりこの雪景色はサムイ。ささっと倒しちゃおうサムイ」
「なにぃ、我らを侮るなよ」
ラズロルの言葉を挑発と受け取った血影猟兵たちは、黒い甲冑に覆われた肩をそびやかし、再びディアボロスたちに迫ってきた。
左の道からくる3体を明と透、そしてノインが押しとどめる。
「ラズ」
「わかっている。これ以上、やつらを進ませたらあの子を巻き込んでしまうってことぐらい」
だから、とラズロルは右手の防寒グローブを外した。
太陽と月の魔障手甲に寒空から落ちてくる僅かな光を集め、腕を振り上げる。
『ゆけ雪と氷の海嘯、我が意のままに。霙の楔、貫き縫い留めその身を晒せ』
正面から迫ってきた血影猟兵たちの目の前で、雪と氷が混じりあいながら起立して垂直な壁となった。
すぐに砕けて、敵の頭上に雪崩れる。
エトヴァが雪崩をかろうじて突破した1体を撃った。
もんどりうって倒れる血影猟兵に、リューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)が飛びかかる。
ひび割れた甲冑に竜の足の爪を食い込ませて抑え込み、雪煙のなかからフラフラと出てきた2体の血影猟兵に向けて、見得を切った。
「我は龍、我こそはドラゴン! 幼子達の守護者、リューロボロス・リンドラゴなり!」
そして敵の眼前で体を捻り、倒れている男の子へ慈愛に満ちた目を向ける。
「……幼子よ、よく戦った。あとは任せよ」
リューロボロスの体がひとまわり膨らんだように見えた。
本能で危険を察知した敵が、剣を構える。
リューロボロスがゆっくりと振り返り――。
ふと、一切の音が消えた。
敵が元々いた場所を眩い光が通りすぎていく。
周囲に音が戻ってきた頃には、氷によって形成された一本の長い道ができていた。何本もの氷で舗装された新しい道の上に冷えて固まった赤い血の塊が幾つも落ちている。
それは恐らく、血影猟兵たちが反撃で飛ばした血の斬撃の痕だろう。
リューロボロスの竜の咆哮が凍てつく大気を震わせた。
正面からきた一団の最後の残りが、ぴくりと体を震わせる。
「ラズ! いまのうちだ。その子を抱いて安全な場所へ。俺が援護する」
ラズロルは道に伏した男の子に駆け寄ると、小さな体を抱きあげた。
(「酷い……」)
少年の顔はジャガイモのごとく腫れあがっており、目はボコボコに膨らんだ肉の中に半ば埋まっている。
体はこの寒さにもかかわらず燃えるように熱い。
「よく頑張ったね。もう少しだけ……やつらを倒すまでの間、耐えてくれ」
ラズロルの声に答えるように折れた鉄串が小さな手から抜け落ちる。
リューロボロスがそれを拾い上げた。
曲がった鉄串をまっすぐに戻し、極寒のブレスを吹きつけて補強した。
「これより、我が武器をこの鉄串とする。この一撃は、幼子達の怒りと知れ! 無論、幼子を連れて離脱するラズロルの後は追わせんよ!」
「急げ、ラズ。あいつはリューロボロスさんがくい止めてくれるが、もたもたしていると家畜小屋のほうから回ってきた連中に追いつかれる」
その時、フルルズン・イスルーン(ザ・ゴーレムクラフター・g00240)の凛とした声が響いた。
「遙かなる衛士よ、盾を持ちて鉄床となれ! ヴァンガード・ゴーレム!」
エトヴァと少年を抱きかかえて走るラズロルの背の後ろに、巨大な盾を持ったアイスロックゴーレムが錬成された。 3人を追いかける2体の血影猟兵の前に、壁のように立ちはだかる。
その前人未踏の氷壁のごとき巨大なゴーレムの肩に、フルルズンはちょこんと腰掛けていた。
呆けたように見上げる血影猟兵たちに、いたずらめいた笑みを落とす。
「ほれほれー、その大口に応えてでっかいゴーレムくんで来てやったぞー。何も言わないならそのまま轢き潰すよー」
「あ、う……」
「ちなみに答えは聞いてない。大盾の染みになるが良い」
フルルズンが、アハハと明るく笑う。
怯んだ血影猟兵たちが、ジリッと下がる。
アイスロックゴーレムが腰を落とし、巨大な盾で地を抉りながら突進する。
血影猟兵たちはとっさに剣を前につきだした。
雪交じりの土を盛り上げながら迫るゴーレムに、剣を突き刺すつもりらしい。
しかし、ゴーレムの突進力は血影猟兵たちの予想をはるかに超えていた。なんと、一瞬すら止めることができなかったのだ。
「なぜだー!」
「ヒー!」
2体を轢いたゴーレムはそのままカーブして、最後に雪崩から抜け出てきた2体に迫った。
ゴーレムの進撃は、鉄のブーツの先で止まった。
「はい、ここまで。エヴァ、あとの始末は頼んだよ」
フルルズンの声かけを待っていたかのように、エヴァ・フルトクヴィスト(星鏡のヴォルヴァ・g01561)による妖精の一斉攻撃が始まった。
妖精がすさまじい羽音を立てて空を飛び、逃げる血影猟兵たちを魔砲で撃つ。
「先ほど、私たちディアボロスを臆病者と罵っていたようですが……、弱き者を襲った貴方達こそ卑怯な臆病者です。自覚してください!」
エヴァ自身も星鏡の魔杖を構えて砲撃魔法を放った。攻撃が放たれるたびに杖を軽く振り、全てを霧散させる。
リューロボロスや明、透、そしてどこかにいるノインも攻撃の手を休めない。
爆発が起こるたび、風でサンゲタルのローブがはためいた。
辺りに息のある敵兵の姿が1体もいなくなると、エヴァは黙々と土を掘って畝を作るゴーレムを見上げた。
「……それで、フルルズンさんは何をされているのですか?」
「ボク? ボクは村から逃げてくる人たちを匿う塹壕を作っている。村を立て直すまで、寒さをしのぐ場所も必要だしね」
フルルズンは愛情込めてゴーレムの頭をポンと叩くと、塹壕づくりを再開した。
●
リューロボロスたち3人は、この村を襲ったクロノヴェーダーを殲滅すべく村の中心地へ転進していた。
時々、戦いの音が冷たい風に運ばれてくる。
エヴァはフルルズンが作った塹壕の中で、エイルのポーチから取り出した救急救命の道具や薬を使い、男の子の傷の手当てをした。
「これでよし。応急処置ですが」
ほんの少しだが、顔の腫れがひいてきている。表情らしきものが、男の子の顔に戻っていた。
塹壕には男の子のほかにもノインが連れもどした村人が何人もいたが、あとの看護をラズロルとエトヴァの2人に託して、エヴァはまだ息のある敵を探すことにした。
なぜ、ラスプーチンがこんなことを部下に命じたのか。知りたいと思ったのだ。
虫の息の血影猟兵を見つけて尋問した。
「なるほど、私達は他の『断片の王の尖兵』という事になっているのですか」
新宿島には、ディアボロスを統べる断片の王などいないのだが。他の○○○○○からみれば、そう思われても仕方がないことなのかもしれない。
(「交渉時、その辺りをどう解消するのかは興味深いですね」)
こと切れた血影猟兵の体に霜が張る。黒い鎧があっという間に白くなっていった。
リューロボロスが駆け戻ってきた。
「教会の前で敵の指揮官を見つけた。我らと話がしたいといっている」
「話し合い……するのですか?」
「それは各個人の自由だ。話がしたいと思う者の邪魔はしないわ」
そういえばパラドクストレインに乗り込むときに時先案内人が、指揮官を生かして帰せば、ラスプーチンに伝言を頼めるかもしれないと言っていた。
ただ――。
(「生かして撤退させるのは、私達が駆け付ける事が出来るという情報を与える事になるのでは……?」)
一抹の不安を覚えながら、エヴァは伝言を持って塹壕に戻った。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】LV1が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
【セルフクラフト】LV1が発生!
【完全視界】LV2が発生!
【寒冷適応】LV2が発生!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV2が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
ノイン・クリーガー
[対話]
クロノヴェーダが我々に何の話があると言うんだ?
どうせロクでもない話なんだろうが聞くだけ聞いておいてやるか。
向こう側からの質問には一切答えない。
・「話というのはラスプーチンが我々と会談を行いたいという類のものか?」
暗にそちらの動きは知ってるぞというプレッシャーを与える。
・「具体的な交渉内容と場所について話せ」
それがわからんとどうにもならんからな。
本当に交渉する気があるのかも。
薬袋・透
(会話中こっそり魔女の囁きを発動させておく、判断力を低下させ情報を引き出すのが目的)
「配下に、ねえ。僕達の実力が認められた、ってこと?そこは素直に喜んでおくわ、でも呼び出し方がよろしくないわね」
相手の問いかけへは嘘はつかないが真実も言わない&明言は避ける
必殺「持ち帰って検討します」
「僕らが出せる情報はここまでよ。十秒以内に帰るなら見逃したげる、ホントはこの場で絞めてもいいけど…折角ご指名が掛かったんだもの、ちゃあんとお話聞いてあげた僕って、超優しくない?そうそう、配下にしようと考えるのはいいけど…ディアボロスって相当なイロモノ集団だから一筋縄じゃいかないと思うわよ?」
アドリブ絡み歓迎
エヴァ・フルトクヴィスト
……駆け付けは壊滅させてもラスプーチンには分かる事ですか。
私達の言動からさらに情報を与えるリスクはありますが、
機会を逃すというのも。
個人的言伝もありますから対面を。
パラドクス通信で、状況を伝えつつ変化が無いか確認。
仲間達の言動への反応は精神集中し些細な変化も見逃さない様観察。
益があると思うから矛を収めますが。
私達には逃げも隠れもしません。
我らが断片の王より、
どのようなより良い好条件を出していただけるか心待ちにしています、
そうお伝えください。
最後に、個人的なお話を。
貴方の本体に接触する機会があれば。
私はまだここに在る!決して赦しも見逃しもしない、
そしてすべてを取り戻して見せる!
そうお伝え下さい。
白石・明日香
どうも初めまして、ディアボロスで~す!
で、早速だけど要件って何かな?ワタシ達これでも忙しいからね。この集落も救わないといけないし。ヴィルヘルム2世を倒してからこっち手に入れたドイツも安定させないといけないしでね?(どう解釈するかは相手に任せる)そう言えばさ、北欧を管理している顔役はいるの?いるのならそいつが使者やったほうがいいよ?
あ、帰るのならラスプーチンに伝えなさい。なんか交渉とやらをしたいみたいだけど貴方か貴方と同格の奴が出向いてこないとお話にならないとね?
ワタシからはこれでおしまい。後は頑張って生きて帰りなさい。ワタシは追いかけないけど他の人達がそうとは限らないしね!
●
爪から顔をあげた『獄炎爵』ストラヴィンスキーの視界に入ったのは、村のあちらこちらを染める紅蓮の炎に黒々とあがる煙、ただ者ならぬ気配と怒りを静かに滲ませる白石・明日香(体亡き者・g02194)たちの姿だった。
「どうもどうも初めまして、ディアボロスで~す!」
口調こそ軽いが、明日香の目は笑っていない。
目の前にいる女は、自分たちをただ呼び出すために罪もない人々を苦しめた。ラスプーチンの企みを明らかにするという目的がなければ、地の果までぶっ飛ばしてやりたい。
明日香の思いを知ってか知らずか、ストラヴィンスキーの口調もまた軽かった。
「あら、思っていたより早かったわね。やるじゃない」
風に煽られて踊った炎が、口角をあげたストラヴィンスキーの横顔を赤く照らす。
「ラスプーチンさまが、配下に加えたいと望まれただけのことはあるわ」
薬袋・透(無彩の魔女の系譜・g02087)が、見る者の目を引きつける優雅な足取りで明日香の隣に並び立った。
「配下に、ねえ。僕達の実力が認められた、ってこと? そこは素直に喜んでおくわ、でも呼び出し方がよろしくないわね」
「それはラスプーチンさまに言ってくれないかしら。私が考えた作戦じゃないもの。正直にいうと、こんなことであなたたちが来るとは思っていなかったわ」
明日香と透の後ろに控えていたエヴァ・フルトクヴィスト(星鏡のヴォルヴァ・g01561)が、思わずといった感じで2人の間から前に飛び出す。
「思っていなかった? それなのに……なんの罪もない人を傷つけたというのですか!」
「だって、そういう命令だったんですもの。あなたたちだって、上から命じられたら同じことをやるでしょ?」
誰がやるものか。
クロノヴェーダと同じ思想、行動をとると思われているなんて屈辱だ。
怒りの声をあげようとしたエヴァの腕を透がつかんだ。
思いはみんな一緒だよ。ここは我慢、と小声でささやかれ、明日香との間に優しく引き戻された。
再び明日香が口を開く。
「で、早速だけど要件って何かな? ワタシ達、これでも忙しいから。この集落も救わないといけないし。ヴィルヘルム2世を倒してからこっち、手に入れたドイツも安定させないといけないしでね?」
ストラヴィンスキーは例にあげられたもののうち、前者よりも後者に反応し、むっとした。ドイツは自分たちが手にするはずだったのに、とでも思ったか。
梁が焼け落ちる音だろうか、近くでメリメリとすさまじい音がたった。
ディアボロスたちとストラヴィンスキーの間を黒い煙が駆け抜けていく。
両者が煙によって分断されたのはほんの一瞬のことだったが、ストラヴィンスキーはその間に己の役目を思い出したようだ。
煙が過ぎる前と寸分の違いもない場所に、笑顔を浮かべて立っていた。
「話をする前に確認するけど、私と話をしに来たのはあなたたち3人だけ? 他のディアボロスたちは何をしているのかしら」
透が、敵の耳に心地よく聞こえる声で答える。
「こういう場に大勢で押しかけても、ね。だから人数を絞ったの。それにさっき明日香ちゃんも言っていたけど、早急に村を建て直さないといけないから、他のみんなはそっちを頑張っている」
「ふうん……物好きね。こんな小さな村一つ、潰れたところで大した影響があるわけじゃなし。ほっとけばいいのに」
エヴァは三角帽子の庇を指でつまみ、引き降ろした。
顔を隠さなければにらんでいることがばれてしまう。交渉をぶち壊すつもりはさらさらないが、どうしても言い返したい。
「捨て置けないと思ったからこそ、私たちはここにきた……まさに、あなたのラスプーチンさまが考えていたとおりにです」
ストラヴィンスキーは小さく肩をすくめると、「ついてきて」と言った。
「中で話しましょう。貧相な教会だけど、風ぐらいはしのげるわよ」
ストラヴィンスキーが背を向けて、教会の階段をのぼる。
エヴァはパラトクス通信でこっそりと、いまから交渉の為教会に入る、と仲間たちに伝えた。
●
「さあ、どうぞ」
我が物顔で教会の扉を押し開いたストラヴィンスキーだったが、聖所に入るなり身を強ばらせて足を止めた。
10人も入ればいっぱいになってしまう小さな聖所のなかはとても暗く、見晴らしがきかない。奥の壁に何かが描かれていることが辛うじてわかるぐらいだ。
外光を極限にまで抑えた薄暗い聖所は、思わず声をひそめ、背筋を正さずにいられない神聖な気配に満ちてはいるのだが……。
入口に立ち止まったまま一向に動こうとしないストラヴィンスキーを不審に思い、エヴァが後ろから声をかける。
「どうしました?」
明日香と透も、早く入ってよ、とせかす。
ストラヴィンスキーは後ろの3人には構わず、「誰?」と前方に向かって誰何した。
至聖三者のフレスコ画(イコン)が描かれた壁の前に、聖所の闇よりもひときわ黒い影が立っていた。
その影が、ゆっくり動く。
入口から差し込んだ薄光が、ノイン・クリーガー(ゴースト・g00915)の姿を浮き彫りにした。
「これまでの話はここで聞いていた。お前さんがいう話というのは、ラスプーチンが我々と会談を行いたいという類のものか?」
「……そうよ。耳がいいのね。あなた、ディアボロス?」
外でかわされた会話はパラドクス通信で知ることができたのだが、そんなことをわざわざ教えてやる必要はない。
「まあな。俺たちの他に、他のディヴィジョンから来たクロノヴェーダがいるとでも?」
「いる可能性、排除できないでしょ?」
明日香が会話に割って入る。
「そう言えばさ、北欧を管理している顔役はいるの? いるのならそいつが使者やったほうがいいよ?」
「ラスプーチンさまが私に命じられたの! いい、直々に命じられたのよ」
北欧を管理する顔役について、ストラヴィンスキーはいるともいないとも言わなかった。
「それで、そこの黒ずくめ。いつからそこに?」
「俺か? 俺ならそこの3人がお前さんの気を引いているうち。裏から」
ストラヴィンスキーはふっと鼻から息を抜くと、軽い足取りで聖所の中央へ進んだ。
明日香たちもあとに続いて入る。
罠が仕掛けられていないか、そんなものがあったらとっくにノインが気づいてどうにかしているだろうが、聖所の中をきょろきょろと見まわした。
「椅子がない?」
ストラヴィンスキーがつまらなそうに説明する。
正教会ではお祈りの際も主の復活を象徴して立ったまま行う。なので、聖所には椅子が置かれていないことが多い、と。
「ちなみに女は聖所に入っちゃいけないのよ。そんなの、私の知ったことじゃないけどね。ラスプーチンさまも別にこだわりないみたいだし」
暗がりに目を慣らしながら、透が呟く。
「へえ……。じゃあ神父さまもずっと立ったままなんだ」
「そういうことだから立ったまま用件を伝えるわね」
誰が言い出したわけではないがなんとなく、聖所の中央で、4人と1体で円陣を組む。
話し合いの口火を切ったのはノインだった。
「いいぞ。具体的な交渉内容と場所について話せ」
「せっかちね」
「それがわからんとどうにもならんからな」
「具体的な交渉内容……あなたたちが聞きたいのは、私たちの仲間になったときのメリットよね。そんなの、聞かなくてもわかるでしょ」
「共に手をとり支配地域を広げていけば、いずれは……か?」
「ま、細かいことはラスプーチンさまにお会いしたときに。直接、聞いてちょうだい」
「いいだろう。で、場所は。いつ?」
「それは後日。こちらから連絡するわ。どうやって連絡をとるのか、私は聞かされていないけど」
「とどのつまり、お前さんはガキの使いか」
ノインの捨て台詞にエヴァも同調する。
「同感です。私たちも手ぶらで帰るわけにはいきません。交渉する気があるのなら、手土産を持たせてください」
ストラヴィンスキーは何か考えるように、自分の指先を下唇にあてた。
「うーん、そうね……。いいわ、私の知っている範囲でなら。そのかわりお互いさまでいきましょう。そっちのことも話してよね」
透はさっと目配せをした。
何を聞かれても本当の事は話さないようにね、と目で伝える。
「じゃあ私から。ラスプーチンさまは、『ディアボロスの戦力は侮れない』と考えておられるわ。
先の戦いから、あなたたちディアボロスが上位のクロノヴェーダでも支配する事ができないことが解っている。単独で他のディヴィジョンに潜入させるのであれば、ディアボロスが最も適切であるってね」
明日香が先を促す。
この程度のことなら情報にならない。
「肝心なことは、あなたたちが『主である断片の王の支配もうけない』ということよ。つまり、独立した存在だということ。だったら交渉の余地がある、ということでお誘いすることにしたわけ」
「軽く言ってくれるな。確かに俺たちは個々が個々の意思をもって動いているが――」
「次はあなたたちの番。教えて、どうやって他のディヴィジョンに移動しているの。ラスプーチンさまは、ディアボロスの主である断片の王の力だ、っておっしゃっているけど」
答えたのは透だ。
「そのとおり、主のお力よ。どういう原理か、それは僕たちにも分らない」
ここはディアボロスたちのディヴィジョンにも断片の王がいて、不思議で強大な能力を持っていると思わせておくほうがいいだろう。
実際のところ、パラドクストレインが時と場所を越える仕組みは謎だが。
「僕たちが出せる情報はここまでよ。10秒以内に帰るなら見逃してあげる、ホントはこの場で絞めてもいいけど……折角ご指名が掛かったんだもの、ちゃあんとお話聞いてあげた僕たちって、超優しくない?」
それじゃあ、と開かれたままの扉に向かって歩きだしたストラヴィンスキーに、エヴァは声をかけた。
「私達には逃げも隠れもしません。我らが断片の王より、どのようなより良い好条件を出していただけるか心待ちにしています、そうお伝えください」
「わかったわ。また会いましょう」
「待ってください。最後に、個人的なお話を」
なにかしら、とストラヴィンスキーが肩頬で受ける。
「貴方の本体に接触する機会があれば。私はまだここに在る! 決して赦しも見逃しもしない、そしてすべてを取り戻してみせる! そうお伝え下さい」
微かな微笑みを残して、ストラヴィンスキーは教会を出ていった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【未来予測】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
【先行率アップ】LV2が発生!
【ダブル】LV1が発生!
●
畑は踏みにじられ、村の建物はほとんど焼け落ちてしまっている。
いまだに燻り、煙をあげる場所が残っているぐらいだ。このままここに住み続けるのは無理だろう。
幸いなことに死者は出ていないが、やらなくてはならないことが沢山ある。
あるディアボロスが、村にどのぐらい食料が残されているのか調べた。
見つかったのは、踏み潰され粉々になったジャガイモ、ビーツ。黒焦げになった干し肉や干し魚。他にしょうがやはちみつ、クルミが少々。森の入口にあった貯蔵庫に、難を逃れたキャベツが10玉とコケモモの実が木の樽いっぱいにあった。
「とりあえず、みなさんを元気づけるためにこれらをつかって何か料理をつくりましよう」
原型をとどめているジャガイモも、村の方々でいくつか見つかっている。もちろん、粉々になった野菜もできる限り拾い集めなければ。
問題はディアボロスが去った後の生活だ。
村人たちが料理を食べて体を温めている間に、瓦礫の撤去して更地を作り、家を建て直さなくてはならないだろう。
木を切って暖炉にくべる薪を作り、狩りを行うための弓や釣り竿を作る。
実際にディアボロスも狩りをして、毛皮と肉も残していった方がいいかもしれない。
「さあ、みなさん。村のために、手分けをしてやりましよう!」
フルルズン・イスルーン
さて、ボクの出番だね。
出せる手段は多くても、なお足りないのが復興というものだ。
では、その復興の基礎をバリバリ作ろうね。
刷新の時間だ。シャッタード・ゴーレム。
まずは【建造物分解】で修復の利かないものを資材化。新しく建てる用に拠点構築で整地を行おう。
タダでさえ壊されたものが多いのだ。少しでも使えるようにリサイクル志向!
影のゴーレムくんたちよ頼んだよー!
で、あり物や【アイテムポケット】で素材を持ち込んだりで、釣り竿や木こり斧、弓に鍬や鎌その他諸々。
手近で必要な道具を、発明と早業で臨機応変に作成!
ボクの手は二つしか無いし、ゴーレムくん達はできることしか出来ない。
それでも誰かに任せられるのが人の良ささ。
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
ラズ(g01587)と一緒に
仲間と連携、アドリブ歓迎
寒冷適応使用
友達催眠で緊張を解こう
フルートを奏で
音色に【活性治癒】のせて、人々の傷や疲労を癒やそう
傷病人の居場所を聞いて訪ね、メディックポーチも併用し手当や薬を渡す
勇敢な男の子の治療も
よく頑張ったと
皆へ声をかけ励ましていこう
……あ、良い香り
ラズ、料理の具合はどう?
口福の伝道者を借りて
お手製のボルシチを頂く
うん、深い味わいだ……美味しいな
きっと皆、元気になるよ
笑み零して
食事や酒の増量を手伝う
村人の食事の間
必要な獣の種類を情報収集し、外へ狩りに行く
飛翔し、双眼鏡と完全視界で偵察、観察
光学迷彩で移動
クロスボウで獣を仕留めて貯蔵用の食糧と毛皮を増やす
ラズロル・ロンド
エトヴァ(g05705)とそれぞれ活動
~~~♪
鼻歌交じりにPDを発動し
貯蔵庫へ行こう
残った食材をそのまま増やす事は出来ないかな?
試しにギャベツをかじってみる…
増えて残るなら他の食材も一かじり
残らないなら食材を少量使ってボルシチを作ろう
スマホでレシピを見て
現地の人のレシピを聞きながら
足りない材料は新宿島から持参した物を使い
レシピ通りなら料理出来る狐
小鍋に作ってクツクツ煮て
出来たらお皿に盛って
エトヴァ食べて~!
口福の伝道者で増やしたら
お待たせ~、出来たよ、皆も食べてと村中に配ろう
寒い時は温かい料理!この冬新宿島で切実に実感したよ…
ふかし芋や蒸しキャベツお酒も増やして配り
一先ず今の活力を得ないとね
ノイン・クリーガー
行ったか。
それにしてもキナ臭い話だ。
……そんなことより畑だ。
俺は忙しいんだ。畑仕事が。
[行動]
このままで全滅は免れん。
【土壌改良】を発動させ、荒された畑の再建に着手する。
土を耕し、元に戻し、作物を植える。
ジャガイモにしようかね。ドイツにいた頃には世話になった。
それが終わったら冬季迷彩服を着用し、SSG-87を持って狩りに向かう。
いつか全てが終わったら、こんな暮らしをするのもいいかもしれないな。
リューロボロス・リンドラゴ
【寒冷適応】使用。
我ら以上に住居のない村人達に必要であろうよ。
家もすぐに用意するがの。
とん、っと大地を踏みしめ【建物復元】よ。
ドラゴンだからの。これくらいはできようぞ。
制限もある故、全部が全部とはいかぬであろうが、家財……特に服を直せるのも大きいであろうよ。
衣食住は全ての基本だからの。
狩りには我も同行しよう。
《捕縛》の真似事くらいはできる。
肉もだが、毛や皮は衣服の足しにもなるからの。
後はうむ。去り際に此処から先の《天候も予測》し伝えようぞ。
長期の予測はできぬであろうが、数日の天気が分かるだけでも予定を組んで生活しやすくなるだろうしの。
ではな幼子達よ。
約束する。
ぬしらを悪夢に怯えさせはせぬと。
薬袋・透
あら行っちゃった。絞めるのはまた今度ね。それにしても随分と荒らしてくれたこと。賠償金くらいは踏んだくっても良かったかも
狩りに行くわ
【寒冷適応】使用、吹雪いても【完全視界】があるから平気よ
雪に紛れ(地形の利用)「ホヤウカムイ」で不意打ち、脳しんとうを起こさせ気絶攻撃
衝撃波なら毒矢や刃物、銃弾と違って余計な傷を付けずに仕留められるから安全かつ安心なお肉が食べられるわね
気絶させたら急所を一撃で両断し仕留めるわ
ごめんね、せめて骨も皮も肉も余すことなく使い切るから……!
アドリブ絡み歓迎
●
『獄炎爵』ストラヴィンスキーは早々に立ち去った。その足どりは会見の間に迫ってきた夕闇の中を歩くというより、むしろ谷底めがけて舞い降りていくように見えた。
彼女の姿が見えなくなったところで、ノイン・クリーガー(ゴースト・g00915)はマスク越しにため息つき、手放しきっていなかった緊張を完全に解いた。
「行ったか。それにしてもキナ臭い話だ」
そうだね、と言って、明日香が固まった筋肉をほぐすように高い天井へ向けて肩腕を伸ばす。
ストラヴィンスキーが消えた出口を睨み付けながら、薬袋・透(無彩の魔女の系譜・g02087)が憤然として言う。どこかあきらめが感じられる声だ。
「絞めるのはまた今度ね。それにしても随分と荒らしてくれたこと」
腰に拳を当てて、荒々しく息を吐きだした。
出入口の向こうを横切っていく煙には白と黒が入り混じっている。どちらかというと白が優勢……黒い煙は炭素の微粒子で白い煙は水の微粒子、つまり仲間たちの働きで火がほぼ消し止められているという証拠だ。
「賠償金くらいは踏んだくっても良かったかも。ね、エヴァちゃんもそう思わない?」
エヴァは意外にも顔に笑みを浮かべていた。
あえて自分に笑顔を強いることで、怒りがもたらした緊張を解くためだ。
「ラスプーチンがどう出てくるか……。ええ、そうですね。たっぷり利子をつけていただきましょう」
壁のイコンを見上げながら、明日香が独り言のように呟く。
「それで、次はいつになると思う? ワタシ、待たされるのは好きじゃないし」
「さあな。それこそ相手の出方しだいだ」
ノインは手を打ち鳴らした。
「そんなことより畑だ。他にもこの村の明日のためにやらなくてはならないことが山ほどあるぞ」
「僕は狩りに行くわ」、と透。
「俺も畑の再生が終わったら狩りに出るか」
エヴァが先だって教会を出た。
「まずは他のみなさんに会見の結果を伝えに行きましょう」
●
白樺の林にぼんやりとした斜光が差し込んでいる。
傾いた太陽の光を受けて丘の頂だけがキラキラと輝いていたが、森や林や窪地は随分前に灰青色に沈んで静まり返っていた。
寒々とした森と野の果てしない空間を、透の姿だけが動いていた。
(「気配は感じられるのにねぇ」)
村を出て1時間はたっているだろうか。なのに、いまだ生き物の姿を目にしていない。狐の足跡はそこここに見てとれるというのに。
「これはもう待ち伏せに切り替えた方がいいかも……」
待ち伏せのポイントはすぐに見つかった。
かなり鮮明な鹿の大きな足跡が、左手の丘から下ってきて、窪地を横切り、右手の丘へ登っている。窪地には雪のふとんを蹄で剥いだあとも見つかった。草を探していたのだろう。
またこの窪地に戻ってくる。透は確信を持った。この近くに日当たりのよい窪地は他にないからだ。
透は左手の丘で雪に紛れ、鹿が戻ってくるまで待つことにした。
時々、雪交じりの寒風が吹いて周囲を真っ白に塗りつぶすが、【寒冷適応】と【完全視界】の2つがあるから平気だ。
(「――来た」)
予想通り、立派な角を生やしたヘラジカが戻ってきた。窪地に降りるまで、じっと息を潜めて待つ。
(「ごめんね、せめて骨も皮も肉も余すことなく使い切るから……!」)
心の中でヘラジカに手を合わせて立ち上がった。
驚いて振り返ったヘラジカと目が合った瞬間、透は蛇神の牙を放った。
ノインの眼前に、無残に踏み荒らされた畑が広がっていた。
血影猟兵たちによって踏み荒らされ、そこで育っていたものが何であれ、ひとつ残らず引き抜かれたり掘り返されたりしていた。
後に残っているのは、大きな足あとだけである。
(「調子に乗ってやってくれたな」)
ノインは【土壌改良】を発動させた。
ここへ来る途中、透が瓦礫の中から見つけだしたスキとクワを使って、黙々と畑を耕す。
「ノインさん」
突然、背後から声をかけられた。
畑を耕す手を止め振り向いた先に、割れたジャガイモを腕いっぱいに抱えた明が立っていた。
「手伝いますよ。あ、これを炊事班に渡してきてからでもいいですか。すぐ戻ってきますから」
「……助かる。ところで、その腕の中のものはジャガイモか?」
「ええ。連中に踏み潰されたものをできる限り拾い集めてきました」
丁度よい。
ドイツにいた頃に世話になったジャガイモを、真っ先に植えようと思っていたところだ。
明から分けてもらった80〜120グラムほどの大きさの割れイモを、種芋がわりにすることにした。
畝を作り、中央に掘った溝にひとつひとつ丁寧に植えていく。
北国の夕陽が割れた雲の隙間から顔をのぞかせた。クワを振るうノインを黄金に染めて、畑に長い影を伸ばす。
ザク、ザク、とクワが土に振り下される規則正しい音をベースにして、腕に大きな網かごを下げたラズロル・ロンド(デザートフォックス・g01587)は、楽しげに鼻歌を口ずさみながら村の貯蔵庫に向かって歩いていた。
「~~~♪」
村を隅々まで調べ歩いていた仲間から貯蔵庫の存在を聞いたラズロルは、狩りに出るエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)と一時行動を別にして、ボルシチを作ることにしたのだ。
(「村の人たちに元気になってもらいたいのはもちろん、エトヴァが戻ってきたときに温かいものを飲ませてあげたいしね」)
戸外の貯蔵庫は、雪に埋もれると天然の冷蔵庫になる。クロノヴェーダーたちに見つかっていなければ、保存状態のよい食物が手に入るはずだ。
目当てはボルシチに入れるキャベツ。コケモモの実はそのまま貯蔵庫に置いておくつもりだ。デザートまで手が回れば、また取りに来ればいい。
丘の雪で埋もれたような斜面に木の扉を見つけ、ラズロルは駆け寄った。扉を開く。
目を暗がりにならしてから、体を屈めて中に入った。
棚にキャベツの玉がいくつも置かれている。その下にはコケモモの実が詰まった樽があった。
「お? ラッキー」
キャベツ玉の陰にニンニクとニンジンを一つずつ見つけた。
オリーブオイルや塩、ローリエなどの調味料や香辛料は瓶詰のものを新宿島から持ち込んできていたが、ニンニクを用意するのを忘れていた。これはありがたい。
「けど少ない。残留効果で、残っている食材をそのまま増やす事は出来ないかな?」
試しにキャベツの葉を1枚剥がしてかじってみたが、キャベツは元に戻らなかった。
「うーん駄目か。食事……増えるときは食器も一緒に増えていたから、料理されたものに限られる??」
ここで考えても仕方がない。
ラズロルは網カゴにキャベツとニンジンとニンニクを入れて、急ごしらえのキッチンに戻った。
●
夕暮れの切なさに身を浸している場合ではない。
間もなく夜がくる。
フルルズン・イスルーン(ザ・ゴーレムクラフター・g00240)はゴーレムコアをぎゅっと握りしめた。
火はすべて消し止めた。次のステップに進む頃合いだ。
「刷新の時間だ。シャッタード・ゴーレム」
ゴーレムコアを暮れなずみ始めた空へ投げる。
コアが弾いた光が寒風に煽られるようにして広がり、1枚の広大なシーツに変化した。ストンと落ちて凍った大地に突き刺さり、巨大な塀のように焼けた家を半分囲む。
それはシーツではなく、フルルズンが作りだしたシャッタード・ゴーレムだった。
夕陽が広大なゴーレムの背を赤く照らし、焼けた家を青い影で覆う。
「影のゴーレムくんたちよ。頼んだよー!」
シャッタード・ゴーレムの背の向こうから、なにかが解体される音が聞こえてきた。
1枚、いや1体に見えたゴーレムは、影の中に工具を手にした複数の小さなゴーレムたちを包括していたのだ。
ゴーレムたちはフルルズンの命を受けて、資源を回収すべく焼けた家の解体を始めていた。
「タダでさえ壊されたものが多いのだ。少しでも使えるようにリサイクル志向!」
解体して作られた資材を、明日香が村人とともに用途別に分けていく。分けられた資材の中から明が適当に木材を選び出し、フルルズンの出した工具を使って弓や矢を作る。
どうにも使いようがない端材は、エヴァがかまどにくべる薪にするために持っていった。
「うむうむ。ボクの手は二つしか無いし、ゴーレムくん達はできることしか出来ない。だけどこうして手の回らないことを任せられる……これが人の、仲間の良ささ」
この調子でどんどん焼けた家を解体したら、次は整地だ。この仕事はヴァンガード・ゴーレムに任せよう。
「さて、ボクは新しい家の設計図を急いで引かないとね。その前にどんな資材がどれだけできるか見積もりを――」
背後に気配を感じて顔をあげると、村の子供たちを引き連れたリューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)が立っていた。
「地ならしは我に任せよ。ほとんど焼けていない家は、ゴーレムが解体するに及ばず。我が復元しようぞ」
フルルズンはニッコリとほほ笑んだ。
「任せたのだ」
重傷者や衰弱の激しい年寄りは唯一無傷で残った教会に入れだが、そのほかの村人はヴァンガード・ゴーレムが作った塹壕で身を寄せ合い、震えている。
彼らが震えているのは、寒さからではなく不安と恐怖からだ。
リューロボロスの【寒冷適応】で低気温の問題はカバーできるが、家財一式を失しなったことによる心細さはまでは癒せない。だから、陽が沈み切ってしまう前に村人全員が安心して眠れる家を作らなくてはなくては。
それには1人より2人で取りかかるほうが絶対にいいに決まっている。
ちなみに、エトヴァが戦いに使ったパラドクスも【寒冷適応】の残留効果を生んでいるが、彼はいま狩りに出かけていて村にはいない。
「では、さっそくやるとしようか。幼子たちよ下がってみておれ」
リューロボロスが竜の翼を広げると、子供たちが歓声をあげた。
とん、っと、竜の足で力強く雪の大地を踏みしめる。
衝撃波が雪を巻き上げながら広がり、建物や家具を壊した『時』の痕跡を吹き飛ばした。
「すごい! 家がなおった」
リューロボロスは興奮してはしゃぐ幼子たちに、まんざらでもなさそうな顔で「ドラゴンだからの。これくらいはできようぞ」と言った。
それからいくつか建物をなおし、いよいよ太陽が地平線に触れようかというときになって、リューロボロスは残りをフルルズンに任せ、狩りに出ることにした。
そろそろ透やエトヴァが獲物を携えて帰ってくる頃だが、極寒を過ごす村人にはたんぱく質が必要だ。今夜の分だけでなく、少なくとも数週間分のストックを作っておく必要がある。
一緒に行くといってきかない子供たちを腰回りから引き剥がしていると、畑を耕し終えたノインがやってきて同行を申し出てくれた。
「俺も一緒に狩りに行こう。それと、フルルズンと明日香。ラズロルとエヴァが温かい料理を作ってくれている。子供たちを連れて行くといい」
マツやシラカバが多いが、網の目のように細く流れる川沿いには、ヤナギも生えていた。夕暮れに先端が川面に触れるほど枝を垂らしたその姿が、村の惨状を目にして立ち尽くしていた人たちの姿と重なる。
(「早く戻らないとな。ラズも待っているし」)
エトヴァはウサギの足を縛ると、腰に下げた。これで二羽目。途中で置き罠から凍りついたイタチを回収して背負っているが……。
ラズロルが作るボルシチに捌いて入れれば、パラドクス効果で増えるだろう。だが、今後のことも考えれば、もっと大きな獲物を仕留めて村に戻りたい。
熊か、せめて鹿でも――。
頭上で甲高い鳴き声が響いた。
気配を殺したまま顔をあげると、一羽のワシが大きな翼を広げて上空を通過していくところだった。
ワシの声と影に怯えたキツネが一匹、岩から岩へと飛び移りながら素早くエトヴァの視界を横切って姿を消した。
すかさず雪の上に残された足跡を追う。
足跡は白樺から白樺へ、白銀の丘から丘へ、ジグザクな点線で延びていた。慎重にたどる。
横手で白樺の枝から陽に照らされた霧水が落ちて、バラバラと音をたてた。と、 同時に低い唸り声――。
狼の群れだ。
腰や背中の獲物が流した血の匂いを嗅いで、エトヴァにたどり着いたらしい。
エトヴァは振り向きざまにクロスボウを撃ち、飛びかかってきた一匹を仕留めた。
間髪入れず、左右から挟み込む形で、牙を剥いた狼が飛びかかってくる。
2匹の狼は互いに空中でぶつかり合った。
「すまないが、お前たちの餌になるわけにはいかない」
エトヴァは上空から狼に向けてクロスボウを撃った。
●
フルルズンがゴーレムに命じて建てさせた村の新しい集会場に、エトヴァが吹くフルートの音色が温かくも優しく満ちている。
ディアボロスたちの活躍で、まだまだぎこちなさは感じるが、村人たちの顔に笑顔が戻っていた。
壁には透が仕留めたヘラジカの角の下と一緒に、この世界で作った釣り竿や木こり斧、弓に鍬や鎌その他諸々がかけられている。
明が作った特製の椅子はヘラジカの角の下に置かれていた。その特等席に、たった1人でクロノヴェーダーと戦った勇敢な男の子が座っている。
エヴァの手当てがよかったようで、男の子は顔にまだ腫れを残しているものの、明日香が運んできたピロシキに齧りつくほど元気になっていた。
村の長老たちが座っている熊の毛皮は、リューロボロスとノインが仕留めたものだ。
「我々に生きる場所を与えてくださったことに感謝しています。本当に、何とお礼を言っていいのやら」
ラズロルは鍋からお玉でボルシチをすくい、スープ皿に移した。
「お礼だなんて……上手く説明できないけど、僕たちは当然のことをしたまでだよ。この村で起きたことは、僕たちの身に降りかかったことと同じだから……」
複雑な顔で、ワインレッド色の目を憂いに翳らせる。
そこへ演奏を終えたエトヴァがやって来た。
「ラズ、料理の具合はどう?」
「あ、ちょうどよかった。エトヴァ食べて~! 味見、味見♪」
にっこり笑ってお手製のボルシチを頂く。
「うん、深い味わいだ……美味しいな。きっと皆、元気になるよ」
「ほんと? じゃあ……お待たせ~、出来たよ。皆も食べて」
給仕を手伝おうとしたリューロボロスを、子供たちが「ねえねえ、クマと戦ったときのお話を聞かせて」と言って引き止める。
「しょうがないの。では、食べながら話すとしよう。ノイン、一緒に……あれ、いない?」
ノインは星明かりを受ける畑に立ち、空を見上げていた。
もうここにはクロノヴェーダーに蹂躙された村はない。厳しい自然の中で助け合いながら、平和に生きる人々の村があるだけだ。
「いつか全てが終わったら、こんな暮らしをするのもいいかもしれないな」
空から星の欠片のような雪がゆっくり舞い降りてきた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【建造物分解】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
【建物復元】LV1が発生!
【エアライド】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
【ドレイン】LV1が発生!
【凌駕率アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV2になった!
【ガードアップ】がLV3になった!