電脳世界の中心で愛を叫んだモノ~美少女編~(作者 月夜野サクラ
10


#TOKYOエゼキエル戦争  #電脳世界破壊作戦  #台東区  #電脳大天使カシエル 

 111010001001000010001100……。
 きらきら輝くゼロと一が無限に渦を巻く電脳空間の片隅で、異形の天使が一人、PCのキーを叩いていた。その画面には、大きな瞳が特徴的な美少女ゲーム風のキャラクターが表示されている。ッターン! とエンターキーを叩いてありもしない前髪を掻き上げ、アヴァタール級天使『マキナエンゼル』は言った。
「攻・略・完・了――フッ、ボクの手に掛かればヒロイン十三股なんてどうってことないね。しかし、もう少し手応えのある美少女ゲームはないものかな?」
 時は2013年。オタク文化が徐々に市民権を得始めた頃であるが、その分近頃は粗悪品も増えた。受けそうな要素を詰め込んだだけの属性過積載ヒロインが跋扈する乱造恋愛SLGにはうんざりだ――誰が聞いているわけでもないのにべらべらと、天使は早口にまくし立てる。
 すると突然、その傍らに紺色のセーラー服を身にまとった少女のホログラム映像が映し出された。
「おわっ、カシエル様!?」
「やっほーマキナちゃん! 元気にしてる?」
 金髪に白い天使の両翼を広げた美少女天使セーラー……もとい電脳大天使カシエルは、あざと可愛くしなを作ってマキナエンゼルを覗き込む。
「あのね、実は相談があって……アタシ達の秋葉原を海に変えたディアボロスが、この電脳世界まで襲って来ようとしてるんだ」
「なん……だと……?」
「でも、ここはアタシとマキナちゃんとみんなの最期の希望でしょ? あんな人達に踏み荒らされるのは……アタシ……」
「勿論です! それで、ボクは何をすれば宜しいのですか?」
「さっすがマキナちゃん、話が早いね★ そういうわけだからこの電脳秋葉原を守るために、ちょいっとディアボロスを捻っちゃってくれないかな?」
 大丈夫、アタシの加護さえあればマキナちゃんは無敵だからね――そう言って、カシエルはくふふと愛らしく笑ってみせた。

●CAUTION
 汗ばむほどの陽射しが降り注ぐ五月の新宿島。グランドターミナルの一角で、時先案内人が一人――ハルトヴィヒ・レーヴェンブルク(殲滅のカノーネ・g03211)は集まった復讐者達に呼び掛ける。
「トーキョーのアキハバラに動きがあった。エゼキエル戦争のことはお前らの方が詳しいかもしれないが――」
「ドイツ以外の事件も案内するんだな……?」
「? 帝国が滅びたってクロノヴェーダが滅びたわけじゃねえんだ。当たり前だろ」
 意外そうに首を傾げる復讐者達へ訝るように首を傾げ返し、少年は言った。そして手元のメモ書きを確認し、もともと不機嫌そうな顔をさらに難しくする。
「ややこしいから、よく聞いてくれ」
 電脳大天使カシエル――一連の事件を追っていた復讐者ならばその名は既に知っているだろう。『聖地』秋葉原を復讐者達が海に変えたことを受け、彼女は自らの信者を千代田区から台東区の電脳世界に呼び寄せようと目論んだが、その野望もまた阻止された。復讐者達を恐れたカシエルは信者達と共に、現在、自らが生み出した電脳世界の秋葉原に引きこもっているようだ。

 そこで、と氷晶の瞳を復讐者達へ戻して、ハルトヴィヒは言った。
「お前らにはその、電脳アキハバラ……? に入り込んで、カシエル信者のアヴァタール級をぶっ潰して欲しい」
「でも、入り込むってどうやって?」
 一人の復讐者がすかさず口を挟んだ。カシエルと信者達の『引きこもり力』は非常に高く、通常の方法で電脳世界に入り込むことは難しい。しかし秋葉原探索時に発見した『電脳世界の綻び』を用いることで、引きこもったカシエル信者に直接アクセスし、内部に入るきっかけを作ることはできるはずだ。
「電脳アキハバラは電子の『壁』で完全に外部から遮断されてる。まずはその『壁』に力を与えてるカシエル信者どもに接触して、連中の『引きこもりたい』って意思を揺らがすんだ」
 何言ってんのか分からなくなってきた――と珍しく困惑を滲ませて、ハルトヴィヒは眉を寄せた。カシエル信者達は電脳秋葉原に引きこもることを望んでいるが、そうなった理由を踏まえて説得すれば、外の世界に興味を持たせることができるはずだ。
「ただ……単に電脳世界に入ればそれでいいのかっていうと、そういうわけじゃないらしい」
 『電脳世界の綻び』は、電脳秋葉原においてはバグとして認識される。ひとたび内部に侵入すれば、その排斥力はゲームを模した内容で侵入者達に勝負を仕掛けてくるだろう。これを突破して、カシエルの強力な加護を得たアヴァタール級を撃破する――それが今回のミッションだ。
 ちなみにこのアヴァタール級には、カシエルの『絶対無敵の加護』が付与されており、普通に戦って撃破することは不可能である。ホログラム映像のカシエルによる作戦妨害も予想されるが、まずはアヴァタール級の信仰心を揺るがし、その加護を失わせることが重要になるだろう。

 読み終えたメモをくしゃりと潰して、ハルトヴィヒは言った。
「カシエルの電脳世界を破壊すれば、タイトー区への進出が可能になる。そこにいた一般人も、チヨダ区の奴らと同じようにここへ流れ着くはずだ」
「それはいいんだけど……」
 排斥力との『勝負』とは、いったい?
 首を傾げる復讐者達を前に潰したメモをもう一度広げて、少年は言った。
「『ぎゃるげーしょうぶ』らしい」
「Wie bitte???」
 多分、分からない。彼の口から説明するには、それはあまりにサブカル的で、あまりに日本的過ぎる。俺にはよく分からないが、と案の定前置きして、ハルトヴィヒは言った。
「ただ戦えばいいってわけじゃないのは面倒だが、お前らならなんとかするだろ?」
 こんなところで信頼されても、嬉しくない――少年のある種純粋な眼差しを背に複雑な思いを抱えながら、復讐者達は光差す駅のホームへと向かうのだった。

●INTRODUCTION
 電脳秋葉原内某所――。
「いやあしかし、この電脳世界は天国ですなあ~」
 真っ黒い、しかし暗いわけではない不思議な空間で、四人のカシエル信者(一般男性s)がテーブルを囲んでいた。各自一台ずつのノートパソコンにはやはり、美少女ゲームの画面が煌々と映し出されている。
「現実なんて戻ったって何もいいことありませんからなあ」
「まったくですぞ……バイトは首になるし彼女にもフラれるし、散々でござったよ」
「え、お前彼女いたの? 聞いてないんだけど(真顔)」
「まあまあそうケンカしないで。我々は皆、カシエル様を崇める同志なのですからな!」
 一見するとふざけているようにしか見えないが、排斥力を担う彼らはこの電脳秋葉原になくてはならない存在であった。彼らが『電脳秋葉原の中って、幸せ★』、『現実世界になんて絶対帰らない!』という気持ちを高めてさえいれば、この空間の排斥力は自然と強まるのである――。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
2
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【狐変身】
1
周囲が、ディアボロスが狐に変身できる世界に変わる。変身した狐は通常の狐の「効果LV倍」までの重量のものを運べるが、変身中はパラドクスは使用できない。
【怪力無双】
2
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わる。全力で力仕事をするならば「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げる事が可能になる。
【託されし願い】
3
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【勝利の凱歌】
1
周囲に、勇気を奮い起こす歌声が響き渡り、ディアボロスと一般人の心に勇気と希望が湧き上がる。効果LVが高ければ高い程、歌声は多くの人に届く。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【プラチナチケット】
2
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【隔離眼】
3
ディアボロスが、目視した「効果LV×100kg」までの物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)を安全な異空間に隔離可能になる。解除すると、物品は元の場所に戻る。
【エアライド】
2
周囲が、ディアボロスが、空中で効果LV回までジャンプできる世界に変わる。地形に関わらず最適な移動経路を見出す事ができる。
【モブオーラ】
1
ディアボロスの行動が周囲の耳目を集めないという世界法則を発生させる。注目されたり話しかけられる確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【断末魔動画】
2
原型の残った死体の周囲に、死ぬ直前の「効果LV×1分」に死者が見た情景が動画として表示される世界になる。この映像はディアボロスだけに見える。
【パラドクス通信】
2
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。

効果2

【能力値アップ】LV2 / 【命中アップ】LV5(最大) / 【ダメージアップ】LV7 / 【ガードアップ】LV2 / 【凌駕率アップ】LV2 / 【フィニッシュ】LV1 / 【ラストリベンジ】LV1 / 【ドレイン】LV2

●マスターより

月夜野サクラ
お世話になります、月夜野です。
以下シナリオの補足となります。
==================
●選択肢について
 ①→②→③→④の順番で執筆予定です。
 全編を通して普段よりだいぶ頭ゆるめのコメディを想定していますので、予めご了承ください。

●②について
 ギャルゲーの世界で、ヒロイン達を全力で口説き落としてください。持てるボキャブラリーを駆使してヒロイン達をときめかせ、恋に落とすことができればクリアです。どんなヒロインを攻略するかはお好きに決めて頂いて構いません(例:俺は清純派幼馴染を落とすぞ! など)
 なおこのゲームにおける攻略対象はすべて女性ですが、女性が女性を落とそうとすることにも特に制限はありません。

●③について
 二次元美少女萌えのアヴァタール級のために、カシエルがギャルゲーヒロインに扮して『応援』しています。この応援による加護を打ち破らない限り、アヴァタール級にダメージを与えることはできません。カシエルに負けないような美少女ヒロインを演じたり、性癖を覆すようなインパクトを与えるなどして敵のカシエル信仰が揺らげば、ダメージが通るようになります。

●①、④について
 特に補足はございません。

==================
●時間帯と場所
 電脳空間内なので割と変幻自在です。
 ②のゲーム中は、お好きに演出して頂いて構いません。

==================
●諸注意
・各選択肢とも、必要成功数を大幅に上回る場合にはプレイングの内容に問題がなくても採用できない場合がございます。何卒ご容赦ください。
・プレイングの採用は先着順ではありませんが、受付・締切の状況については選択肢ごとに都度ご案内いたしますので、MSページも合わせてご確認ください。
・②は基本個別採用ですが(組み合わせた方が面白そうな時はその限りではありません)、それ以外はまとめて採用・まとめてリプレイとする可能性があります。特定の同行者の方以外との絡みがNGの場合は、その旨プレイングにてお知らせください。
・公序良俗に反するプレイングはいかなる内容であってもお受けできません。

==================

それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております!
151

このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


アーサラ・オーエン
「恋人系アイドル! ウノちゃんでーす!」
 明るく元気にいっくよー!
 現実世界の良さをアピールするために頑張るよー
「現実に帰って私の恋人(ファン)になって!
現実には私のライブを見たり、握手会で私と握手したり、私のこの写真集を見ることも出来るよ!
だからぁ、友達(追っかけ)でも良いからぁ私を愛して?
そうしてくれたら私もプラトニックな愛で満たしてあげる」


ジュジュ・テネブラルム
(えっ、どうしよう
引きこもりたい気持ち全然わからない
どうやって説得したら…
あっ、そうだ!)

ねえ、お外は嫌い?
今の時期の薔薇はとっても綺麗だよ
風も気持ち良いよ
今度ね、薔薇咲くお庭でお茶会するの
よかったら貴方達も一緒にどうかな?
美味しいお菓子も用意するよ
それにね、私の兄様、とっても美しいの
薔薇よりも綺麗で、一目見たら生きてて良かったって神に感謝するレベルだよ
新たな扉を開いちゃうかも
…ってそれはダメー!
扉が開きそうになったら閉めて!

…コホン。と、とにかく!
ここにいるよりずっと素敵なものが外の世界には溢れているよ
まだ見たことないもの、未経験のこと、いっぱいあるでしょう?
現実を捨てるにはまだ早すぎるよ


ウルリク・ノルドクヴィスト
虹介(g00128)と
彼のことは少年と呼ぶ

現実の喧騒に惑わされることと
カシエルに従った末、こうして復讐者と対峙すること
何方も散々、には変わりないのでは
ならば
より長く生きて君達の嗜好を楽しむ為には
天使の眷属なんて危険な道を歩むより
現の世に帰る方が賢明ではないか

美少女…ギャルゲー……?
正直意味が理解できない、が
…多分、俺は余計な口を挟まない方が良いな
突然同意を求められれば
ぎこちなくも微笑んで
そうだなと返す

彼らもクロノヴェーダの予備軍
現実世界に野放し、とするのも危険とはいえ
外への関心を呼び覚ますのが先決か
信者たちが語る気になったなら
…内部へ侵入できるようになるまでは
話は大人しく聞いておこう


葵・虹介
ウルリクさん(g00605)と

傷つかなくていいばしょに
隠れて引きこもって、守られること
すごく安心する、よね
ぼく、わかる、よ
ぼくもそうしてたいって
…今でもすこし思う

でも
ぼくらが持つ、電子の綻びがあるかぎり
ここに隠れていたって、ぼくらはこうして、来るよ

それに!
あなたたちの好きな、びしょうじょゲーム…?だって
そんなに良いものなら
ここから外に出て
他にも好きになってくれそうな人に、おすすめしていく方が
ぜったい、たのしい、とおもうから

だ、だから、その予行演習ってことで
ぼくらに語ってみてよ
ギャルゲーの良いところ
ね!ウルリクさん!
聞いて、あげよう……!

…こうしてれば隙が生まれて
排斥の壁も抜けられ…ない、かな?


朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と

秋葉原かぁ…
あまり来た覚えがないんだよね
電脳世界ともなると想像もつかないな
レオはそういうの詳しい?
…物騒なこと言うなぁ

しかし美少女ゲームに囚われてる人へ声掛けかぁ
少なくとも女性に興味はあるみたいだし
彼女も欲しいみたいだね

世間話の体でお声がけを
最近美少女ゲームが好きな女性増えてるそうですね
え?ご存じないですか?
あぁ、引きこもり過ぎると情報が古くなって
折角巡り合えたはずのチャンスを逃してしまうかもですね

草食系男子とやらも流行ってるそうですから
趣味の合う方と出会えるかもと思いましたが
実に惜しいですね
レオの様に可愛い女の子に出会えるチャンスかもしれないのに…


朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と

私もアキバはあんり詳しくないかも
私自身ハッカーの力は使えても電脳世界にはあまり明るくないかな
どちらかというと現実にいながら侵入して壊すというか

そうだね
この世界に囚われている人は女の子に興味があるんだよね

友達催眠を活用しつつリオちゃんに加勢する感じで声かけてみよう
そ、そうだよ!とか、それそれっ!って感じにね
流石リオちゃん、それらしいワードがたくさん
男の子だからやっぱり共感できるの?
確かに一緒にゲームできる人が嬉しいっていうのは分かるよ

でもこんな所にいたら新しい情報を逃しちゃうかも
それに外には女の子だけじゃなくて
リオちゃんみたいに性別を超越した美人がいるのにね


 電脳秋葉原・壁外。
「秋葉原かぁ……あまり来た覚えがないんだよね」
 透明で底のない宇宙のような覚束ない空間を歩きながら、朔・璃央(昊鏡・g00493)は呟くように言った。電脳世界に入り込む、なんてまるで漫画かアニメの中の物語のように思えていたけれど、今は事実、一面の黒とネオンカラーのグリッドでできた世界が復讐者達を取り囲んでいる。
「レオはそういうの詳しい?」
「うーん私もあんまり詳しくないかも」
 口許に細い指を一本添えて、朔・麗央(瑞鏡・g01286)は自信なさげに応じた。一応、こう見えてワールドハッカーの端くれではあるのだが――。
「ハッカーの力は使えても、電脳世界に明るいわけじゃないんだよね。どっちかっていうと、現実にいながら何かに侵入して壊す(物理)ことの方が多いし」
「……物騒なこと言うなぁ」
 でも頼もしい、と、最後には結局肯定に返って双子の兄は頷いた。一昔前のパソコンのスクリーンセーバーのような奇妙な空間を、兄妹はグリッドに沿って黙々と歩いていく。するとややあって、前方にやけに現実感のある長机とそれを囲んだ四人の男性、そして彼らと同じ、招かれざる先客達の姿が見えた。
「現実の喧騒に惑わされることと、カシエルに従った末にこうして復讐者と対峙すること。何方も散々であることに、変わりはないと思うのだが……」
 ウルリク・ノルドクヴィスト(永訣・g00605)は務めて冷静に、グループの半分にあたる二人の一般人男性を諭していた。呆れたような素振りも、小馬鹿にしたような気配もないその表情は、あくまでも真面目そのものである。
「ならば、より長く生きて君達の嗜好を楽しむためには、天使の眷属なんて危険な道を歩むより、現の世に帰る方が賢明ではないか?」
「む、難しい言葉を使ってなんとなく雰囲気に飲ませようって作戦ならそうはいかないぞ!」
「そうだ! リアルイケメンの言うことなんて信じられるか!」
 キッ! と眼鏡の奥の目をこういう(>皿<)形にして、オタク達は敵愾心をむき出しにする。ただの僻みなうえ根拠もない物言いに頭を痛めつつ、葵・虹介(光芒・g00128)は根気強く言葉を重ねていく。
「あなたたちの気持ちは、分かるよ。傷つかなくていいばしょに、隠れて引きこもって……守られているって、すごく安心する、よね」
 そう言って、少年は少しだけ遠い日を手繰り寄せるように視線を泳がせた。それは別に、彼らに合わせたわけではなく――そうしていられたらどんなにいいか、と、今でも少し、思うのだ。
 でも、とためらいがちに少年は続けた。
「だけど、いくら隠れたって……電子の綻びがあるかぎり、ぼくらはこうして、ここへ来るよ」
「えっ、来てくれるの?」
「ショタっ子は我々の側でも一定の需要がありますからなあ、ドゥフフ」
「えっ」
 半分ほど何を言っているのか理解できないが、なぜだか背筋が粟立つような感覚があった。そそっとウルリクの背中に引っ込んで、虹介は動揺を抑えつつ続ける。
「そ――それに! あなたたちの好きな、びしょうじょゲーム……? だって。そんなに良いものなら、ここから外に出て……他にも好きになってくれそうな人に、おすすめしていく方が、ぜったい、たのしい、とおもわない?」
「それはそうかもしれませぬが……」
「騙されるな! これまで誰が我々の言うことに耳を傾けてくれたと言うんだ! 我々にはただ、画面の中のヒロイン達がいればそれでいいんだ!!」
「ギャルゲー万歳!」
「二次元美少女万歳!!」
 どうしよう、もはやサバト感ある。怨霊のような形相でねじれ狂う男達を前に、ウルリクは真剣な表情で首を捻った。
(「美少女……? ギャルゲー……?」)
 意味が理解できないのも無理はない。竜域からの漂着者である彼には、新宿島――というか現代日本の文化は少々異質過ぎた。とはいえこの熱量がただことではないのは彼にも分かる――恐らく宗教のようなものなのだろうと推し量って、青年は唇を引き結んだ。経験上、こういうセンシティブな話題に下手に口を挟むと余計に拗れるものだ。
「外の世界にだって、あなたたちの話を聞いてくれる人は、いるはずだよ!」
 ぜったいに、と語気を強めて虹介は言った。
「だからその……とりあえず予行演習ってことで、ぼくらに語ってみてよ。ギャルゲー? のいいところ……ね、ウルリクさん!」
「は? あ――ああ」
 まさか振られるとは思わず一瞬声を上ずらせて、しかしウルリクはぎこちなくも微笑した。聞いてあげよう、というように――どちらかというと、一緒に聞いてという訴えのような気もするが――見つめる少年の瞳を前に、敢えて首を横に振るわけにもいかない。
(「彼らもクロノヴェーダの予備軍、なのだったな」)
 現実世界に野放しにするのも色んな意味で危険な気がする人々だが、今は彼らの外世界への関心を呼び覚ますのが先決だ。気持ちよく話をさせておけば隙が生まれて、排斥力の緩みにつながる――かもしれない。きっと。多分。
 一方、机を挟んで反対側では、ジュジュ・テネブラルム(影纏う白薔薇・g05884)が地べた(?)に蹲ってグジグジと言っているもう半分のオタク達を前にたじろいでいた。
「こんな清楚な美少女がわれわれなんかに用のあるはずがない」
「騙されるな山田氏。これは幻覚! 外敵が我々を陥れるために見せている甘い夢なんだ!」
「ええっと……幻覚じゃないんだけど……」
 どこからどう突っ込めばいいのか分からない――と、いうよりも、引きこもりたい気持ち自体、ちっとも分からない。なんでこんな仕事引き受けちゃったんだろう、と一瞬過る気持ちを胸の底に押し込めて、ジュジュはこめかみを揉み思案する。こんな猜疑心の塊のような者達をどうやって説得したらいいのか――兄様ならばどうするかしら? きっと誰もが思いもよらないようなスマートで鮮やかな解決方法を思いつくに違いないわ――あ、しまった、脱線した。
 ああでもないこうでもないとしばし考えて、そしてはっと何かを思いついたように娘は掌を打ち合わせた。
「ねえ、お外は嫌い?」
「外?」
「今の時期の薔薇はとっても綺麗だよ。風も気持ち良くて……今度ね、薔薇咲くお庭でお茶会するの」
 素敵でしょう、と夢見るようにジュジュは紡ぐ。すると――なんということでしょう。返って来たのは、わざとらしい舌打ちだった。
「チッ……絵に描いたようなリア充の休日だな」
「我々には一生縁のないハイソサイエティな空間なんでしょうなあ」
(「しまった、逆効果だ!」)
 2010年代のオタクの卑屈さは、なかなかどうして筋金入りである。このままではいけないと慌てて、ジュジュはどうにか言い繕う。
「そ、そんなことないよ! よかったら貴方達も一緒にどうかな? 美味しいお菓子も用意するよ!」
「ええ~本当でござるかあ?」
 後でお金取ったりしない?
 キモオタが押しかけて来たって通報したりしない? と、チラチラと上目遣いで尋ねてくるのが非常にうっとうしい――が今は耐えるしかない。なお、本シナリオでは極めてステレオタイプ的なオタクのキャラクターを描写しているだけであって現実のオタクがすべてこういう人々ではないということは理解しておりますと申し添えておきます。
「わあ、やってるやってる」
「大変そうだねえ……」
 夜明けに見る悪夢のような光景を少し離れたところで見つめながら、璃央と麗央は生暖かく瞳を細めた。殴って解決するのって手っ取り早くて楽なんだな、と、今日ばかりは思わざるを得ないが、ウォールアキハバラは力ずくではこじ開けられないというから仕方ない。どうにか彼らの心を開かなければと、璃央は顎に手を当てて考え込む。
「あの様子だと女性に興味はあるんだよね、きっと。彼女も欲しいみたいだし……」
 ちょっと行ってみよう、とジュジュと二人組の傍らへ歩み寄って、世間話に加わるような自然体で璃央は言った。
「最近美少女ゲームが好きな女性も増えてるそうですね」
「へ?」
「え? ご存じないですか? あぁ――皆さんここに引きこもってらっしゃるから……」
 ちらりと『だからだぞ』というニュアンスを込めて少年は語尾を濁す。情報は常にアップデートしないと、折角巡り合えたはずのチャンスも逃してしまうものだ。なお、それが事実かどうかは調べたわけではないが、ここはナントカも方便である。
「草食系男子とやらも流行ってるそうですから、趣味の合う方と出会えるかもと思いましたが……実に惜しいですね。レオのように可愛い女の子に出会えるチャンスかもしれないのに……」
「えっ? あっ、そ――そうそう! 私の周りでも結構そういう娘多いと思うな!」
 ちらりと流された視線を受けて、麗央はあたふたと加勢する。しかしオタク文化などまるで縁がないように見えて、意外とゲームの話に詳しいのか――兄の意外な一面を見たような思いで、麗央は隣に立つ横顔を見やる。そしてぽつりと、続けた。
「それに外には女の子だけじゃなくて、リオちゃんみたいに性別を超越した美人もいるのにね」
「えっ男?」
「双子美少女だと思ってたのに! 返したまえ僕の純情を!」
「いや待てそれもアリなのでは?」
 口々に勝手なことをのたまうオタク達の話は、聞いていると耳が痛くなってくる。しかしそういうことならと瞳を耀かせ、ジュジュは改めて口を開いた。
「そういうことなら聞いて! 私の兄様もとっても美しいの!」
 薔薇よりも綺麗で、一目見たら生きてて良かったって神に感謝するレベル――と、主観しかない(実際はさておき)の意見をうっとりと、しかし早口に並べ立てて、ジュジュはほうっと息をついた。あれ、これどちらかというと彼ら側の素養があるのでは?
「……っていうわけなの。どう? そんな兄様に会ったら、新たな扉が開けちゃうかも――」
「新たな扉……(ハァハァ)」
「あ、やっぱりダメ! その扉閉めて!!」
 荒い息遣いにぞわりと全身が毛羽立つような恐怖を感じて、ジュジュは慌てて前言撤回した。そしてわざとらしく咳払いをすると、慌てて言い直す。
「とにかく! ここにいるよりずっと素敵なものが、外の世界には溢れているよ。まだ見たことないもの、未経験のこと、いっぱいあるでしょう?」
 現実を捨てるには、まだ早過ぎる。どうか考え直してとその後も言葉を尽くしていると――。
「やっほー! みんな元気ー?」
「!?」
 何もないはずの空間に突然、どこからか若い女性の声が降り注いだ。これまたどこから射しているのか分からないスポットライトを浴びながら現われたのは――。
「じゃーん! 街で噂の恋人系アイドル! ウノちゃんでーす!」
 『ウノ』と名乗って現われたのは、アーサラ・オーエン(恋人系アイドル・g07212)その人であった。スタンドマイクを抱えて立つ少女を何か神々しいものでも見るように仰いで、四人のオタク達は眩しそうに身体を仰け反らせる。そんな彼らに、アイドルを名乗る少女は思いっきり明るく元気に呼び掛けた。
「今日はみんなにお願いがあってきたんだあ。実はー……現実に帰って、私の恋人になってほしいの!」
「おお!」
 なお、恋人と書いてファンと読むことを忘れてはいけない。
「現実に帰ればー、私のライブも見られるし、握手会で私と握手もできるし、この写真集を見ることもできるよ!」
「おお!?」
 ちょっとドキがムネムネしそうな表紙の写真集を胸に抱えて見せて、アーサラはにっこりと、計算し尽くされた完璧な角度で小首を傾げた。
「だからぁ、友達でも良いからぁ……私を愛して?」
 なお、友達と書いて追っかけと読むことも忘れてはいけない。おとなのせかいってまあまあきたない。
「そうしてくれたら私もプラトニックな愛で満たしてあ・げ・る♪」
 ぱちん★ と片目を瞑ってみせたその効果は、絶大であった。おおおと獣のような咆哮を上げ、オタク達は立ち上がる。
「そうか……そうだったんだな」
「この人達の言うとおりだ。現実には、我々の帰りを待ってくれている美少女がいたんだな!」
「かくなる上は帰還するより他にあるまい! 同志諸兄よ、まだ見ぬアイドル達に会いに行こうではないかあ――!」
 拳を突き上げ呼応するオタク達の様子を、営業スマイルのアーサラを除いた全員がなんとも言えない表情で見つめていた。いや、物欲が効いたのは前段の説得があったからこそなのだが――『このオタクどもが』みたいな気持ちになるのは致し方ない。寧ろ天が許す。
 はあー、と魂が出ていきそうな長い溜息をついて、虹介は言った。
「なんだか……すごく、つかれたね……」
「だが、まだ始まってもいないのだろう……?」
 オタク特有のマシンガントーク(※ギャルゲー語り)からようやく解放されて、ウルリクもまた心なしかやつれた様子で電子の壁に目を向ける。すると――本当にこんなことで開くなんて、と思わざるを得ないけれど――空気の抜けるような音とともに、電脳世界の境界線がぱっくりと口を開いたではないか。
 この先に続くのは、千変万化の電脳秋葉原。そこでどんな『ゲーム』と出会うのかは、復讐者達自身に委ねられている。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
【勝利の凱歌】LV1が発生!
【託されし願い】LV1が発生!
【隔離眼】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
【ラストリベンジ】LV1が発生!
【凌駕率アップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!

飛鳥・遊里
攻略対象:大企業の社長の箱入り娘
自分の設定:バイク乗りのにーちゃん

(休日、人通りの少ない道をバイクで気ままに走っていると、あたりをせわしなく見回しながら、おろおろしている少女を見つける)

…どうしたんだ?こんな辺鄙な場所で?……冒険?自分一人でどこまで遠くに行けるか挑戦してみたら迷子になったわけか?

やれやれ。君さえよければ家の近くまででも送ろうか?後ろ、乗りなよ。気にすんな、特に目的もなかったしな。信じるかどうかは君次第だ

…しっかり捕まってなよ?普段見れないようなものをいっぱい見たかったんだろう?バイクで風になる感覚、クセになるぞ?

(安全運転で、それでいて心地よいライディングで女の子を楽しませる


 絶えず揺らぎ、ちらつき続ける世界は、ゲームが始まるとともに鮮やかにその姿を変えていく。飛鳥・遊里(リサイクラー・g00512)の目の前に広がる世界は、現実の日本と遜色のないものだった。見たことはない、けれどもどこかにありそうな街路樹の並木を、青年はバイクを駆り進んでいく。
 今日は休日――よく晴れた日にはこうやって、人通りの少ない田舎道を気ままに走るのが習慣になっていた。機械好きが高じて営むバイク店を一時閉め、風に身を任せていると、薄汚れた世間の垢のようなものが洗われていくような気分になる。
「……ん?」
 不意に違和感を覚えて前方に目を凝らすと、歩道らしい歩道もない山道に一人、若い女の姿があった。きょろきょろと忙しなく辺りを見回す姿は戸惑っているように見えて、遊里はどうしたんだと呼びかけると減速し、愛車を路肩に停止させる。
「こんな辺鄙な場所で何してるんだ? ……冒険?」
 聞けばとある大企業の箱入り娘らしい――大体一つのゲームに一人はいるお嬢様ポジションというやつだろうか――彼女は、自分一人でどこまで遠くに行けるか挑戦して、道に迷ったのだという。なるほど世間知らずな深窓の令嬢がちょっとズレたことをするパターンか。いや、パターンとか言うな。
 やれやれ、と大仰に肩を竦めて遊里は言った。
「仕方ないな――こんなとこに置いてくわけにもいかないし、君さえよければ家の近くまででも送ろうか? ……後ろ、乗りなよ」
 ところで、ゲームの世界に入り込むのにこれまで一切の躊躇がないの凄いなこの人。
 見ず知らずの人にそこまでしていただいては、と萎縮する少女へやたらと爽やかに笑って見せて、青年は続けた。
「気にすんな、特に目的もなかったしな。信じるかどうかは君次第だ」
 まあ、ギャルゲーのヒロイン達って基本的に鈍感力が高くて無防備ですからね。
 紳士的に付け加えれば、昔懐かしい『好感度の上がる音』がした。少女がおずおずと後部座席に座ったのを確かめて、遊里は笑う。
「しっかり捕まってなよ――普段見れないようなものをいっぱい見たかったんだろう? ……バイクで風になる感覚、クセになるぞ」
 それじゃ行こうかと軽く地面を蹴ってエンジンを蒸せば、風が生まれた。耳に心地よい排気音とともに、二人の姿は瞬く間に新緑眩しい山間の道へ消えていく。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!

ジュジュ・テネブラルム
ふっふっふっ、兄様に四六時中ときめいている私には乙女をときめかせるなんて簡単!
兄様という最高にときめく存在がお手本なんだもの!
あっ、でも私に兄様の真似は無理!あの格好良さは再現できない!
……うん、私らしく頑張ろ


攻略相手は純粋な田舎娘
貴族が多く通う由緒ある学園が舞台

あら、迷子?
この学園広いもんね
私が案内してあげる

娘に絡む貴族令嬢に
あら、そんな意地悪を仰る貴女の方がこの学園に相応しくないのではなくて?

娘に
あんなの気にしちゃダメ
誰が何と言おうと貴女はこの学園の生徒だよ
顔を上げて、胸を張って
そう、そのほうが素敵
不安なら私が傍にいるから
負けないで
貴女には笑顔のほうが似合うよ

ゲームのはずが本気で励ましてる


「ふっふっふっ……ついにこの時が来たのね」
 片手で半ば顔を覆ってやや中二病感のあるポーズを決め、ジュジュ・テネブラルム(影纏う白薔薇・g05884)はくつくつと喉を鳴らした。とりあえず、年頃の乙女がするポーズと顔でないことは間違いない。カッとエナメル靴の爪先を踏み鳴らして、ジュジュは続けた。
「兄様に四六時中ときめいている私には乙女をときめかせるなんて簡単よ! なぜなら! 兄様という最高にときめく存在がお手本なんだもの!」
 うっとりと胸の前で両手を組み合わせ、ジュジュは大きく溜息をついた。ときめくって三回言った。目的と手段と論法がしっちゃかめっちゃかになっている気がするが、まあ、それをここで突っ込むのは野暮というものである。
「あっ、でも兄様の真似は無理! あの格好良さは再現できない! ……うん、私らしく頑張ろ」
 そして意外と早くトランス状態から帰って来た。というところで、早速、スタートボタンを押してみよう。ぽちっとな。
「……!」
 サァッと風が吹くように、電脳世界が色を、形を変えていく。わずか数秒にも満たない内に、ジュジュは西洋風の瀟洒な庭の中にいた。さながら王侯貴族の令嬢達が通う女学校といったところだろうか――広い庭をとぼとぼと歩く一人の少女が目に留まり、ジュジュはその傍らへ歩み寄る。
「あら、迷子?」
 いかにも田舎から出てきたばかりと見える朴訥な印象の少女は、煌びやかな学院の景色から少し浮いて見えた。聞けば上級生の貴族の令嬢に、出自を理由に酷い仕打ちを受けたのだと言う。まあ、と息を詰めて少女の手にそっと触れ、ジュジュは言った。
「そんなの気にしちゃダメ! 誰がなんと言おうと、貴女はこの学園の生徒だよ。顔を上げて、胸を張って……そう、そのほうがずっと素敵!」
 ゲームのはずがつい、親身になって励ましてしまうのは、自分では選ぶことも、変えることもできない身の上を理由に不当な扱いを受ける彼女が、どこか自分に重なるところがあるからだろうか。握った手に力を込めて、まるで自らに言い聞かせるようにジュジュは続けた。
「貴女には、笑顔のほうが似合うよ!」
 不安ならいくらでも傍にいるから――負けないで。
 心からの励ましと裏表のない笑顔は、心細さに震える一人の少女にとってこれ以上ない救いとなる。見事親友エンドを達成して、恋する乙女は凛然と次のステージへ進んでいくのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【プラチナチケット】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!

朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と

女の子を口説くかぁ
口説いたり口説かれたりって経験ないからなぁ
でも格好いい振る舞いをするのは得意だからね
折角だしレオには負けないように頑張るよ

双子の兄弟で一人の娘を奪い合う感じだね
レオはなんか情熱的なようだし
じゃあ俺はクールな感じが良いかな

レオの告白を聞き終えたら颯爽と彼女の前へ

私は可愛い双子の弟のレオの為になら
全てを投げだしても構わないと思っていました
私の生の全ては弟の為にあるのだと…
しかし貴女に出会って
初めて譲れないものがあるのだと
弟にも渡したくないものがあるのだと
心の底から思えたのです

レオと視線で火花を交し
さぁこの手をと、彼女へ差し出して


朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と

女の子を口説くかぁ
難しいなぁ……って一瞬思ったけど兄をいつも見ているからこそ
リオちゃんに私自身を寄せたらイケるでは?

狙うのは自分を卑下気味のおとなしいタイプの子

そう、私は双子兄弟の弟で女装男子(という設定)
口調や立ち振る舞いは普段のリオちゃんを参考にするね

彼女の前で
私は幼い頃から周りに可愛いと言われ続け男の自分より可愛い女の子なんていないと思っていました
だけど、私は……いや、僕は!今日、女神に出会ったんです
貴女だ
僕がもう女装をする必要が無くなった
明日からは貴女の為、男に戻ります

そこに現れる双子の兄
一人の乙女を取り合って争う双子兄弟
うん、完璧だよね、多分!


『女の子を口説くかぁ……』
 ぼそりと口を開いたのは、本当に二人同時だった。あまりにもタイミングが合い過ぎて、朔・璃央(昊鏡・g00493)と朔・麗央(瑞鏡・g01286)は自然に顔を見合わせる。絶妙に生温かいお互いの表情に思わず吹き出しそうになりながら、璃央は困ったように笑った。
「口説いたり口説かれたりって、経験ないからなぁ……」
 それは経験がないというよりも、麗央以外の人間が男女問わず大体ジャガイモに見えているだけなんじゃないかな、くらいに思っている天の声である。のは秘密である(言ってる)。私なんてもっとないよ、と、こちらも苦い笑顔で麗央は応じた。
「でも、経験はなくてもやるしかないよね」
 それにこう言ってはなんだが――正直、ちょっと楽しくなってきている自分達もいる。この手のゲームは初めてだがそこは(準)現代っ子、小さい頃は色々なゲームにも触れたものだ。
「せっかくのゲームだしね。レオには負けないように頑張るよ」
「私も負けないよ! いつもリオちゃんを見てるんだからねっ」
 視線をぶつけて頷き合えば、準備は万端。輝く電子の粒は瞬く間に渦を巻き、兄妹をゲームの世界に連れていく。ザザ――と微かなノイズのようなものが聴こえたかと思うと、二人はもう、先程までの空間とは全く違う世界の中にいた。
「ここは……」
「もう、ゲームの中みたいだね」
 降り立ったのは、どこかの学校の体育館裏らしき場所だった。決して見たことはないはずなのにどこかで訪れたことのあるような、普遍的な日本の学校だ。え? なぜ体育館裏かって? いや、決闘と告白は体育館裏と相場が決まっていよう――異論は認める。
 あの、という遠慮がちな声に気づいて振り返ると、大きな木の下で制服姿の少女が一人、落ち着かない様子で二人を見つめていた。自分を卑下しがちな大人しい女の子――といった雰囲気だろうか? どうやら彼女が、今回のルートのヒロインであるらしい。
「お話ってなんですか?」
 どことなく不安そうに見つめる少女を前に、麗央はすべての状況を察した。これはあれだ。一人のヒロインを巡って、見目麗しい双子の兄弟(注:麗央は女装男子という設定になりました)が奪い合う、というやつだ。……PvP形式のギャルゲーって新しいな。いや、どちらかというとプレイヤーの二人の方が攻略対象っぽいのだが、どうなるんだこれ?
 すう、と息を吸い込んで、麗央はいたって真剣な表情で切り出した。
「私は幼い頃から周りに可愛い、可愛いと言われ続け……男の自分より可愛い女の子なんていないと思っていました」
 いや、凄いことを平然と言うなこのプレイヤー。
「だけど、私は……いや、僕は! 今日、女神に出会ったんです! それは他の誰でもない……貴女だ」
 普段の兄の所作を真似つつ、麗央は切実な声を作って訴えかける。って、出逢ったの今日なんだ!?
「僕が女装をする必要はもうなくなった……明日からは貴女のため、僕は男に戻ります!」
 ある! 男の娘や男装の麗人が攻略後のエンディングムービーでだけ本来の姿に戻るパターンある! ってやっぱりそれだと麗央ちゃんが攻略される側じゃない!?
「二人だけで話を進めないで欲しいですね」
 麗央の情熱的な告白を、璃央はしばし無言で聞いていた。が、それ以上黙ってはいられなくなったのか、一歩前へ進み出るや口を開く。
「私は可愛い双子の弟のレオのためになら、すべてを投げだしても構わないと思っていました。私の生のすべては、弟のためにあるのだと……」
 あ、これただの本音だ。
 しかし、と続けてここからは少し大仰に、璃央は続けた。
「そんな私でも、貴女に出会って初めて、譲れないものがあるのだと……弟にも渡したくないものがあるのだと、心の底から思えたのです」
「リオは黙っててよ!」
「うん、わかっ……黙るのは君だ。口出しはしないでもらいたい(キリッ)」
 普通に『わかった』と言いかけたのを素知らぬふりで誤魔化して、璃央は何事もなかったかのように麗央を睨みつけるふりをする。火花を散らす二対の瞳に挟まれて困り果てた様子の少女に向けて、双子の天使と悪魔はよく似た手を差し伸べた。
「さぁこの手を」
「もちろん、選ぶのは僕ですよね?」
 一人の乙女を取り合って争う双子兄弟――オーソドックスだがポピュラーなシチュエーションだ。これで落ちない女がいるだろうか? いやいない多分。どちらかというとやはり二人が攻略される側のような気がするが、萌えれば正義なこの電脳空間においてそれは極めて些細な問題に過ぎなかった。まあ、ジャンル変わってるんだけど(些細)。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【怪力無双】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV4になった!

葵・虹介
ウルリクさん(g00605)と

ギャルゲーの女の子と仲良くなるには
イベントを起こすのが大切って
信者の人たちが言ってた

ぼくらが話しかけたヒロインの子は
えっと…つん、でれ?
気が強いけど、かわいいものが好きなんだって
動物園にかわいい動物を
観に行こうって誘ってみる
これ、デート…っていうんだよね

効果…ほら
ぼくもあなたを誘って
お出かけ、お仕事、行ってるし
それでぼくら
前より仲良くなったと…おもわない?

『別に嬉しくなんてないんだから!』
って言われちゃった
けどお誘いは受けてもらえたみたい
デート、がんばろう

…ウルリクさん、今何か言った?
ごめん、台詞に被って聞こえなくて

動物園
一緒に楽しんであげたら
喜んでもらえる、かな


ウルリク・ノルドクヴィスト
虹介(g00128)と
彼のことは少年、と呼ぶ

気が強い、此方に強く当たってくる、が
内心は主人公に想いを秘めていて
可愛い物が好きな少女
…ギャップ萌え?だったか
先ほど熱心に語られたから覚えているさ

攻略法なんて自分では思いつかないから
少年の策には従うが
出掛けの誘い…に
そう大きな効果はあるものか

仲、良く…
いや俺はその
元々自分が興味を持っていた場所に
偶々君が、行こうと誘ってきたから…
都合が良いと思って乗っているだけで

た、確かに
君と仲良くしたくない訳では無い、が

…別に
何も言ってない

デート…そうだな
服装や髪型も褒めてやるといいんじゃないか
君が言うくらい、率直に
可愛いと告げてやれるなら
天邪鬼にも効くかもしれない


「何してるのよ二人とも。さっさと行くわよ!」
「え? あ、ああ」
「うん……」
 ぽつねんと立ち尽くす凸凹した二人の前で、気の強そうなポニーテールの少女が一人、踵を返した。ここはどこかの国のどこかの動物園――家族連れや恋人達で賑わうその入り口に、ウルリク・ノルドクヴィスト(永訣・g00605)と葵・虹介(光芒・g00128)は立っていた。
 ふう、と、もしかしたら人生一なんでついたのか判然としない溜息をついて、虹介はいつの間にか額に滲んでいた汗を拭う。
「とりあえず、第一段階は成功……かな……?」
 ギャルゲーの女の子と仲良くなるには、とにかくイベントを起こすのが大切だ――って、カシエル信者のマッツン(仮)がが言ってた。相手の属性を見極めて、どんな受け答えが好印象を与えるのか、相手の感情を常に先回りして予測しながら選択肢を選ぶのだ――とも言ってた。こうやって改めて文字にしてみると、ギャルゲーって意外と高度なコミュニケーション能力を求められるゲームのような気がする。
「ええと……ここまでの情報だと……あの子はつん、でれ? で、気が強いけど、かわいいものが好き……なんだよね」
「ああ。こちらに強く当たってくる……が、それは主人公に対する想いの裏返し……だったな」
 ウルリクの脳裏には、先程さんざん熱心に語られ覚えてしまった、『ギャップ萌え』という(恐らく彼らの人生において別に覚えなくても支障がなかったであろう)言葉がぐるぐると回り続けていた。『別に嬉しくなんてないんだから!』と様式美に溢れた台詞も二人にとっては新鮮で、無事約束を取り付けられた時にはほっと胸を撫でおろしたものだ。
 慣れないなりに真剣にゲームに取り組んでいる姿がひしひしと伝わってきて、実に微笑ましい二人組であるが――いやでも、協力プレイ型のギャルゲーもこれまた新しいな?
「これ、デート……っていうんだよね」
「そう……なのだろうか。しかし、単なる出掛けの誘いにそう大きな効果はあるものだろうか?」
 攻略法、などと言われても自分ではまったく思いつかないが、果たしてこれで良いのかどうか見当もつかないとウルリクは唸る。どうだろう、とこちらも自信なさげに応じつつ、虹介は首を傾げた。
「効果……って言えるかどうかは、わからないけど……ぼくも、あなたを誘ってお出かけとか、お仕事、行ってるし……」
 頭二つ分はゆうに背の高い男を円く大きな瞳でぐるりと仰ぎ、少年は続けた。
「それでぼくら、前より仲良くなったと……おもわない?」
「仲、よく……?」
 言われてみれば、どうだろう。いつか遥かな美術館を歩いた時に比べると、二人の会話はずっとスムーズにつながっていくし、歩く距離は自然な形に縮まったような気もする。あの時はまだお互いに、距離間を測りかねていたところもあったかもしれないけれど――それが今では、収まるところに収まりつつあるということだろうか。
 なんともむず痒い気持ちになって、ウルリクはすいと目を逸らした。
「いや、俺はその……元々自分が興味を持っていた場所に
たまたま君が、行こうと誘ってきたから――都合が良いと思って乗っているだけで、……別に君と仲良くしたくない、というわけではない、が」
 なんだこの伝統と格式を重んじたツンデレ。え? と耳をそばだてて、虹介は聞き返した。
「ウルリクさん、今何か言った? 台詞に被って聞こえなくて……」
「……いや、別に」
 何も言ってない、とぎこちなく、ウルリクは合った視線をもう一度逸らした。あるある。大事な台詞の時に突然難聴になる主人公あるある。あれ、これプレイヤー同士のイベントが進行してる感あるぞ?
 そんな外野の感想は露知らず、虹介は気を取り直したように数歩先を行くヒロインの後姿へ目を向けた。
「動物園、あの子に喜んでもらえると、いいね」
「……そうだな」
 ゲームの登場人物に対してさえもあくまで誠実で真摯な姿勢は、この少年の本質なのだろう。知り合ってまだ一年にも満たぬ同居人には未だすべてを明かすことも、明かされることもないけれど――二人の間のこの距離は、嫌いではないとウルリクは思う。
「服装や髪型も褒めてやるといいんじゃないか」
「そうだね。あとで、そのことも話してみよう」
 あどけない少年のように飾らない言葉で率直に『可愛い』と告げてやったなら、天邪鬼な彼女の心にも少しは響くかもしれない。置いていくわよ、とツンケンする声に弾かれたように背筋を伸ばして、二人は大勢の人で賑わう園内へ駆け出していくのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【隔離眼】がLV2になった!
【託されし願い】がLV2になった!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
【凌駕率アップ】がLV2になった!

●次回予告
「あ、ああ~まずいまずい! まずいよぉ! このままじゃ、アタシの秋葉原がめちゃくちゃになっちゃう!」
 手にしたスマホの画面越しに電脳秋葉原内の様子を伺いながら、電脳大天使カシエルは俄かに焦り始めていた。『ゲーム』を突破したディアボロス達を放っておけば、彼らは遠からず配下のアヴァタール級の元へ辿り着くだろう。彼女を崇めている限りアヴァタール級達は無敵だが、万一、その信仰を揺るがすような事態が起きれば鉄壁の加護も効果はなくなる。
 こうしちゃいられないと立ち上がって、少女の姿をした天使は言った。
「こうなったら、全力で応援しちゃうよ!」
 二次元美少女至上主義のアヴァタール級・マキナエンゼル。
 それを強力にサポートする、セーラー美少女大天使・カシエル(ホログラム出演)。立ち向かう復讐者達は、果たして二人の連携を崩すことができるのか!? 次回、『二次元に興味のない男子なんていません!』、お楽しみに!
ジュジュ・テネブラルム
今ここに美の化身たる兄様がいればあっと言う間に性癖を塗り替えることができたのに!
きっと一瞬だよ、むしろ秒!
でも兄様には遠く及ばないけど私も相当美しいし頑張ればいける!
私は…女優!(自己暗示

マキナ君は金髪が好き?
でもさ、黒髪も素敵なんだよ
さらりと揺れる艶やかな黒髪ってどう思う?
ちょっと想像してみて
品の良いブレザーを着た清楚な黒髪美少女幼馴染を
そう、私が貴方の幼馴染

少し溜めてから首を傾げて微笑み台詞を言う
「マ〜キナッ」
これはあれ、お花よりお団子的なドラマのアレ
なんかちょっと色々間違ってる気もするけど誤差の範囲だよね

黒髪プレゼンで信仰を揺らがせる一助になれば
オタクの本能的には黒髪が大好きなはず(偏見


飛鳥・遊里
マキナエンゼルとやら。どうやらカシエルに絶対の忠誠を誓ってるとか

ところで、カシエルのどんなところがいいんだ?いやな、参考までに聞かせて欲しいわけだ。そこまでカシエルの為に身命を賭して尽くすというなら、生半可な想いを抱いてるわけはないよな?ああ、思う存分語ってくれ

…なるほどな。わかった…あんたが頑張ってるってことはな
でもさ、そこまで一生懸命やってるのに、カシエルは姿さえ見せないのな?
いや、映像じゃなくてさ。実物のカシエルが、あんたの為に出向いてなんかしてくれたこととかあるか?

あんたが今語ったカシエル像も、全部映像越しのものだろう?あんたが抱いてる忠誠は本当にリアルのカシエルに向けたものなのか?


朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と

美少女に応援されている間は無敵の大天使
こんな奴でも信仰集められるんだね
世界ってひろいなぁ
…そうだね
殴るよりは触りたくないって気持ちが強いかな

…ん?俺に向けさせるの?
そりゃあ可愛いレオに似た容姿を持っているわけだし
セーラーなんとかとは比較にもならないとは思うけれど

しかしレオが褒めちぎってくれる言葉のひとつひとつを
噛み締めるように聞き逃さぬように
至福の時間に思わず頬も緩み笑みが零れるってものです
そこの天使も聞き逃さないようにと流し目を向けて

双子萌え?
私の魅力はレオあってのものですしね
ありよりのありでしょう

しかし大天使に秋波を送られるのは
判ってはいたけどきっつぃね


朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と

女の子の攻略ができたんだから
きっと大天使だってぶっころ……じゃなくて攻略できる
多分!わからんけど
頑張ろうね、リオちゃん
まだ殴っちゃダメだよ

性癖を歪める?
最初の男の子たちにも言ったけれど
性別を超越した美人のリオちゃんっていう要素でいける気がする
私がマキナエンゼルなら落ちるもん

だから私がマキナエンゼルに対して
懇切丁寧にリオちゃんの魅力を語るね

この素晴らしい兄は美人でしょ
女の子にも負けないよ
そしてこんなに美人で儚げなのに殴…んんッ
体を動かせばもうそれはしなやかで麗しいんだよ

え?双子萌え?そんなジャンルもアリ、なのかな
どしたのリオちゃん苦虫を噛み潰したみたいな顔して


 その空間について一言で表現するとしたら、それはまさに混沌(カオス)であった。
『マキナちゃんの~ちょっといいとこ見てみたい! イェイ!』
「ハハハお任せくださいカシエル様! 侵入者などこのボクがみじん切りに処してお見せしましょう! ハハハハ!」
「うわあ……」
 チアガールのようなポンポンを手に『応援』に勤しむカシエル(ホログラム)とやたら爽やかなマキナエンゼルを前に、渾身のドン引きを禁じ得ない復讐者達である。なあ、と込み上げる呆れを隠す気もない声色で、飛鳥・遊里(リサイクラー・g00512)が言った。
「マキナエンゼルとやら。どうやらあんたはカシエルに絶対の忠誠を誓ってるみたいだが……」
「何を今更あたりまえのことを。カシエル様こそは我らの、この聖地秋葉原の守護天使なるぞ! 図が高い! 控えおろう!」
「いや、そういうのいいから。それより、カシエルの何がそんなにいいんだ? 参考までに聞かせてほしいんだが……」
 カシエルのため、身命を賭して尽くすというのが本心であるならば、その胸に秘めたる想いは生半可なものではあるまい。するとその言葉に興味を引かれたのか、機械仕掛けの天使はほほうと唸った。
「キミはなかなか見込みのある男だな。つまり、カシエル様のよさを知りたいと」
「いや、うん、まあ……(そういうことにしとくから)思う存分語ってくれ」
「そういうことなら聞かせてやろう! カシエル様は可愛い! そして我々のすべてをお見通しでいらっしゃる! 変幻自在の魅力で幅広い需要をカバーする能力はまさに聖地秋葉原に君臨するのにふさわベラベラベラ」
「…………」
 生温いを通り越して氷のような視線で、朔・璃央(昊鏡・g00493)はまくし立てる天使を見つめていた。
「世界ってひろいなぁ」
 美少女に応援されている間は無敵の大天使。何を言っているのか分からねーと思うが大丈夫きっとみんな分からない。そんな輩ですら信仰を集められるのだとしたら、もうこのディヴィジョン救いがないのでは? と、出身地ながら一抹の不安を覚えてしまう。
 どうしようこれ、と途方に暮れて呟くと、朔・麗央(瑞鏡・g01286)は『大丈夫』と力強く意気込んだ。
「女の子の攻略ができたんだから、平気だよ! きっと大天使だってぶっころ……じゃなくて攻略できるって。多分! わからんけど!」
 この娘今ぶっ殺すって言いかけたよ???
 お兄ちゃん的にどうなんですかコレは。審議案件ですか。
「麗央がそんな口汚いことを言うはずないでしょう。言いがかりはやめてくれませんかね」
 あっハイ、スミマセン。
 何事もなかったかのようににこやかな笑顔で、麗央は言った。
「とにかく、頑張ろうねリオちゃん。まだ殴っちゃダメだよ」
「うん……そうだね」
 答える璃央の声は、いつになく歯切れが悪かった。積極的に殴りたいかと言われると、どちらかというと触りたくないという気持ちの方が強い。そうは言っても、やらないわけにはいかないのだろうが――ディアボロスって大変だなあ、と、改めて実感する次第である。
 息継ぎなしノンストップでカシエルの魅力を語り続けるマキナエンゼルを前に、なぜか『こいつ……できる!』みたいな顔をして、ジュジュ・テネブラルム(影纏う白薔薇・g05884)は天使に勝るとも劣らない早口で言った。
「クッ……この信仰心、なかなか手強い相手のようね。今ここに美の化身たる兄様さえいれば、あっと言う間に性癖を塗り替えることができたのに! きっと一瞬で! むしろ秒で!」
 なお、個人の感想であり効果を保証するものではありません。敵の話も味方の話も八割受け流すことを心に決めつつ、璃央は眉をひそめた。
「でも、あれの性癖を歪めるって言っても……」
 いったい、何をどうすればいいと言うのか。しかし困惑の深そうな兄の隣で、麗央はいたって真剣な表情で応じた。
「さっきの人達にも言ったけど、性別を超越した美人のリオちゃんっていう要素でいける気がする。私がマキナエンゼルなら落ちるもん」
「えっ?」
 急にそんなご褒美みたいなこと言う? さらりと口にした言葉に璃央(と書いてシスコンと読む)がトスッと胸を射抜かれていることは気にも留めず、麗央は大天使へ呼び掛ける。
「マキナエンゼル、あなたがカシエル信者なのはよく分かったよ。でも、それで周りが見えないのは勿体ないと思わない? たとえばこの子――」
「ふん、それがどうしたと言うんだ。確かに綺麗だけどそのレベルの女子なら二次元には」
「うちの兄です!」
「なっ……男!!?」
 ピシャァンと雷に打たれたような背景を負い、劇画調になってマキナエンゼルは声を裏返した。
「そんな男が実在するというのか!? いや、二次元的には珍しくもないけども――」
「それが実在するんです! ね、すごい美人でしょ? 女の子にも負けないよ。そして私は双子の妹!」
「双子萌え!!」
「そういうのもあるのか……?」
 首を傾げた遊里の極めて一般的な反応に対して、璃央は妹の演説に粛々と耳を傾けながら、少しだけ照れ臭そうに咳払いした。
「それは、まあ……ありよりのありでしょうね。だって、可愛いレオに似た容姿を持っているわけですから? セーラーなんとかとは比較にもならないと思いますけど……」
 妹を経由して自分の顔をベタ褒めできるの、自己肯定力に死角がなさすぎてパネェ。ちょっと前のめりになっているマキナエンゼルへ、麗央はここぞとばかりに畳みかけていく。
「リオちゃんはね、凄いんだよ! こんなに美人で儚げなのに、いざというときは殴……んんッ、体を動かせばもうそれはしなやかで麗しいんだよ!」
 物は言いようだな。というかそれは、もはや双子萌え関係ないでは?
「どしたのリオちゃん、そんな苦虫を噛み潰したみたいな顔して」
「んん……別に、なんでもない」
 ごちそうさまです、みたいな顔がこれ以上緩まないよう必死で堪えているが、さてはこのシスコン妹からの褒め言葉を噛み締めているな? 都合のよくないところは聴こえていないな?
 どうだ聞いたかと言わんばかりのドヤ顔で見やると、天使は弾かれたように姿勢を正した。
「だ――だからどうだって言うんだ。いくらキミが美しくても、ボクのカシエル様への忠誠は揺るがないぞ!」
「は? レオがこんなにも言葉を尽くしているのに?」
 いや、怒るとこおかしい。
 大天使に秋波を送られるのはそれはそれできついが、妹の言葉をむげにされるのは捨て置けない――ぱきぽきと拳を鳴らす少年の表情は氷の彫像の如く、マキナエンゼルがヒッと声を上げて後退りする。そういうとこやぞ兄くん(褒めてる)。
 あー、と言いづらそうに口を挟んで、遊里が言った。
「まあ、あんたがカシエル一筋で頑張ってるってことはよく分かったよ。でもさ……そこまで一生懸命やってるのに、カシエルは姿さえ見せないのな?」
「何を言ってるんだキミは! カシエル様なら今もそこに
――」
「いや、映像じゃなくて。実物のカシエルが、あんたのために出向いてなんかしてくれたことあるか?」
「えっ……」
「あんたがさっき語ったカシエル像も、全部映像越しのものだろう? あんたが抱いてる忠誠は本当にリアルのカシエルに向けたものなのか?」
「えっ…………」
 ああ、真理を突いてしまった。急に自信なさげに俯いてしまったマキナエンゼルを見て、ホログラムのカシエルが俄かに慌て始める。
『マキナちゃん、どうしたの? こんなヤツの言うことなんて真に受けないでよ! ねえ――』
「ねえ。マキナ君は金髪が好きなの?」
 呼び掛ける声を遮ったのは、ジュジュだった。スッと一歩前に進み出て、見目麗しい娘は――大丈夫、彼女もとんだブラコンだということは自白しない限り分からないから――言った。
「でもさ、……黒髪だって悪くないと思わない?」
 少しだけ拗ねたように唇を尖らせて、ジュジュは肩にかかるさらりとした黒髪をひと房、指に絡めてみせた。そして気取られぬようにあくまでもちらりと、マキナエンゼルの様子を窺ってみる。
(「兄様には遠く及ばないけど、私も相当美しいし――頑張ればいける。私は――女優!」)
 璃央にしろジュジュにしろ、大切な人の隣を歩くに相応しい自分でいようと思う気持ちはどこまでも純粋でひたむきだ。二人ともとってもキラキラしてると思うな! ちょっとぶっ飛んでるけど。
 自己暗示を掛けるように心の中で言い聞かせ、ジュジュは続けた。大丈夫、うまくいく。オタクは本能的に黒髪が大好きな生き物なのだ(偏見)。
「想像してみて。品の良いブレザーを着た清楚な黒髪美少女幼馴染を。その娘は毎朝学校に行く前にあなたの家に寄って、ねぼすけのあなたを部屋まで起こしに来るの。こうやって――」
 ずい、と天使のもとへ一歩踏み込んで、ジュジュはじっとその顔を覗き込み、少し溜めを作ってから、首を傾げて微笑んだ。
「マ~キナッ」
 それはあれ、お花より和菓子的なアレの――だとしたら逆じゃない? というかディヴィジョン出身なのに現代文化への造詣が深いな。今、令和ぞ。
「なんかちょっと色々間違ってる気もするけど、これくらい誤差の範囲だよね!?」
 そんな風に天を仰がれても、答えに窮します。
 硬直する天使に追い打ちをかけるように、遊里がすかさず口を挟んだ。
「どう思う? ……これでもまだ、ホログラムのカシエルの方がいいか?」
『騙されないでマキナちゃん! マキナちゃ――あっ』
 その瞬間、ホログラムの少女の姿はふつりと闇に掻き消えた。しまった、と思った時にはもう遅い――混じりけのない信仰に滲んだ微かな染みはただそれだけで、鉄壁の加護を打ち消すには十分であったのだ。
「カシエル様! カシエル様――お、おのれディアボロス、騙したな!」
 勝手に揺らいだだけなのに、そういうの逆恨みって言うんだぞ!
 逆上したマキナエンゼルは両手に二振りの刃を振りかざし、いきり立って復讐者達に襲い掛かってくる。しかしカシエルの加護が失われた今、復讐の刃を阻むものはどこにもない。ここまで実によく耐え、よく付き合った――今こそ言いたいことを言って、この不毛な戦いに決着をつける時である。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【モブオーラ】LV1が発生!
【パラドクス通信】がLV2になった!
【エアライド】がLV2になった!
【飛翔】がLV2になった!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!
【命中アップ】がLV4になった!
【ガードアップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV5になった!

飛鳥・遊里
まああれだ、まだまだツッコミたいことは山ほどあるんだが…そろそろこのゲームもエンディングの時間が迫ってる。ラスボスを倒して大団円と行こうか

【ギガントマキア・オーバーパワー】起動

鋼鉄の巨人がお相手だ。そっちも思う存分暴れたいって気分だろうしな、付き合ってやるよ。圧倒的なパワーで、圧倒的な敗北をお前に刻み付けてやる

姿を消す技か…光学ステルスの類か?…けど残念ながら無意味だ
何故なら、何を喰らおうと俺は全部耐えるからだ!黒鉄の城舐めんな。最大出力の拳でお前が泣くまで殴るのをやめない!泣いてもやめないけどな!
最後は、【タイタンバスター】でぶった切ってジ・エンドだ!

《名付けて、アスカ・ダイナミック!》


ジュジュ・テネブラルム
やっとまともに戦える…!
ここまで来るの大変だったよ
主に精神的に
これはもう兄様に甘やかしてもらわないと回復できない!
兄様によしよししてもらうためにも早く倒して帰らなくちゃ!

鴉の形のTu solusで身を護りつつ戦う
兄様はここにはいないけど兄様からもらった影(サイキックオーラ)はいつも私と共にある
そう、つまり兄様と一緒と言ってもほぼ過言ではない!
あれ?なんかずっと兄様のことばかり考えてる気がする

少し怖いけど地上からパラドクスが届かない場合は飛翔

光の刃は影の羽根の刃で相殺を試みる
私の影で貴方の光を打ち消してあげる
…ってなんだか悪役みたいな台詞だね
でも可愛いは正義っていうし私の方が可愛いから私が正義!


朔・璃央
双子の妹のレオ(g01286)と

俺は(ご褒美を貰って)結構元気だけれど…
そういうレオこそ大丈夫?
いらない心労を貰ったみたいだし
さっさと片づけて帰るとしようか
じゃあ、内も外もぼこぼこにしてあげないとね

そもそもの話がですよ
幾ら魅力的なものを差し出されたとして
信じると定めたものから揺らいでしまった時点で
雑魚と言って差し支えないのかなと思いますね

その意思の弱さを叩き直して差し上げましょう
多少打ち所が悪くなるかもしれませんが
些細な事でしょうし

姿が消えるのであれば
レオと死角を補う様に背を合わせ
現れたときに手を引き庇い合いましょう

反撃は息を合わせてせーので
固めた拳で横っ面ぶっ飛ばして差し上げましょう


朔・麗央
双子の兄リオちゃん(g00493)と

機械の天使さん、本当は最初から
クラッキングしたくてうずうずしてた!
カシエルの加護が無くなった今
アナタは袋の鼠だよマキナエンゼル
文字通り茶番は終わりだよ
はぁ、きつかった
リオちゃん、平気?

リオちゃんの言葉を聞いて同意する
そうだよ、大切なものが揺らいじゃうだなんて
揺らがない様にプログラム、抜き取っちゃうよ
尤も、そうしたら壊れちゃうんだけどね
スイートクラッカーで攻撃
せめて夢を見ながら散ってよね

リオちゃんと背中をお互いに背中を庇い合って
死角をカバーすることで
敵が消えた時にも対処できる様にするよ
敵が姿を現したら気づいた方が手を引き寄せるね
そしてせーので反撃するよ!


ウルリク・ノルドクヴィスト
虹介(g00128)と
彼のことは少年、と呼ぶ

RPG…あるある…?
俺には其れも理解出来ないのだが
まあ、いい
今はあれを倒すのが先決だ

攻撃主軸に
最果てまで追う如くの『貫通撃』を
マキナエンゼルへと穿つこと目指す
此方への攻撃は、叶うなら
回避あるいは受け流しを試みる

視線を受け取れば息一つ吐いて
もし少年に攻撃が向けられれば
此の身が盾になろう
…共征く者を援けることもまた
騎士の宿命とあらば
だから礼も謝罪も、必要ない

現代文化も多様だな
俺もまだ学ぶ必要がありそうだ、が
ああいうゲームを遊ぶかどうかは…
…見ているだけで充分、な気がした

注がれる期待や興味
厚意のようなものが
いつも眩しい、擽ったい
…その、まあ
また気が、向けば


葵・虹介
ウルリクさん(g00605)と

ギャルゲーは詳しくなかったけど
バリア破らなきゃ攻撃が通らない敵、は、わかる!
RPGあるあるだからと頷いて
…でもその無敵状態も、おわりだね

ぼくはパラドクスで敵の動きを妨害
マキナエンゼルの視界をうばえたらいい

周囲を『ハッキング』で
ぼくの電脳空間にかえられたら
「光の翼」も見破れるかな
無理だったら…えっと…

そろりとウルリクさんの方に視線を送る
…た、頼っちゃってごめん、ありがとう

こんな経験をするなんて、びっくりだけど
攻略…ちょっとたのしかった
シミュレーションゲームも面白いね
…ひとと仲良くなるコツも、つかめる気がするし

ぼくらまたお出かけ、したい、な
だから今度も、誘ってもいい?


「これでやっとまともに戦えるのね……」
 ぜえはあと肩で息を切りながら、ジュジュ・テネブラルム(影纏う白薔薇・g05884)は恨めしげに、けれどどこかほっとしたようにマキナエンゼルを見やった。刃物を持っていきりたつ輩を前にして安心するなんて、いよいよどうかしている――けれどこの長くて険しい(主に精神的に)激闘の後では、それすらも仕方がないと思える。
 溜息とともに全身の力と魂が抜けそうになるのをどうにか堪えて、朔・麗央(瑞鏡・g01286)は言った。
「ほんと、きつかったねえ。リオちゃん、平気?」
「えっ?」
 そんなに? みたいな顔をした兄――朔・璃央(昊鏡・g00493)は、思いの外元気そうだった。こういう空騒ぎというか馬鹿騒ぎは得意な方ではないと思っていたけれど、案外そうでもなかったのかな、と麗央は小さく首を捻った。もっとも、この状況で兄の不思議な元気の理由が自分の言動にあるとは思うまいけれど。
「俺は(ご褒美を貰って)結構元気だけれど……レオこそ大丈夫? いらない心労を貰ったみたいだし」
「もうへとへとだよ……」
 暴力がすべてを解決するとは思いたくないが、暴力って簡単なんだな、とは、皮肉にも思い知らされる始末である。辟易した様子の妹をねぎらいつつ、璃央は冷ややかに敵を睨んだ。
「じゃあ、内も外もぼこぼこにしてあげないとね。さっさと片づけて、帰るとしよう」
 本当に、真面目な顔をしていると完全無欠な美少年なんだけどなあ。
「ギャルゲーは詳しくなかったけど、バリア破らなきゃ攻撃が通らない敵、は、わかる! RPGあるあるだよね」
「あーるぴーじー……あるある……?」
 ゲームジャンルが身近になったせいか、珍しく高揚した様子の葵・虹介(光芒・g00128)を横目に見て、ウルリク・ノルドクヴィスト(永訣・g00605)は怪訝な顔をした。
「俺には其れも理解できないのだが……」
「うーん……条件を満たすとフラグが立つ、みたいな……」
「ふらぐ……?」
 やはり、現代文化はまだまだよく分からない。いっそう首を捻るウルリクはこれ以上何か言ってもかえって混乱してしまいそうなので、虹介は事実だけに言い換えた。
「ええと、つまり……無敵状態は、おわりってこと」
「……なるほど。ならば今はあれを倒すのが先決、ということだな」
 少しだけ得心した様子で、ウルリクは頷いた。カシエルの加護下にありさえすれば、(あんな天使でも)マキナエンゼルは無敵だった。しかしあらゆる刃も銃弾も弾き返しただろうその身体も今は昔だ。とはいえ腐ってもアヴァタール級、もう一苦労は避けられないだろうが。
 はーっと深過ぎる息を吐いて、ジュジュはじろりと天使を睨んだ。
「これはもう兄様に甘やかしてもらわないと回復できない。兄様によしよししてもらうためにも早く倒して帰らなくちゃ!」
「うん――まああれだ、(敵にも味方にも)ツッコみたいことは山ほどあるんだが……」
 そこはもう、カオスを深掘りしても不毛なだけだと割り切るが吉。苦笑いを噛み殺して、飛鳥・遊里(リサイクラー・g00512)は言った。
「そろそろ、ラスボスを倒して大団円と行こうか」
 どんなゲームにも、終わりは必ず訪れる。どこから吹いてきているのか分からない風に黒髪を揺らして、青年は不敵な笑みと共に咆哮した。
「コード・ギガントマキア、アクティブ!」
 カッ、と眩い光に包まれた身体が、電脳空間の暗がりから次々と浮かび上がる金属質のパーツと合身し、人型のパワードスーツに姿を変える。これはスーパーロボッ……こっちもジャンル変わったな???
「鋼鉄の巨人がお相手だ。思う存分付き合ってやるよ!」
 そして刻みつける――圧倒的なパワーで、圧倒的な敗北を。
 自身を超越する上背の機人を見上げて、マキナエンゼルはむきーっと手足をばたつかせた。
「でかけりゃいいってもんじゃないんだぞ! 合体ロボはロマンだけど!」
 ああ、そういうのもやっぱりロマンなんだ。
 喚く天使を毅然と見据えて、麗央が言った。
「カシエルの加護がなくなった今、アナタは袋の鼠だよマキナエンゼル」
「なくなった!? ボクとカシエル様の仲を裂いたのはキミ達だろう!? よくもいけしゃあしゃあと――」
「いえ、そもそもの話がですよ? いくら魅力的なものを差し出されたとして、それくらいで揺らぐ信念なわけですよね。そういうのを雑魚って言うんじゃないですか? 雑魚。ざぁこ(真顔)」
 恐らく語尾にハートをつけて言うべき類の台詞を、これ以上ない冷たい顔と声で璃央は言った。押しても引いてもびくともしない(妹)信仰の持ち主である彼からすれば、赤の他人の一挙一動に惑わされるような想いを信念と呼ばれることすら腹立たしいのかもしれない。
 そんな兄の深淵を知ってか知らずか、麗央はうんうんと大きく頷いて同意する。
「そうだよ、この程度で大切なものが揺らいじゃうだなんて。もう二度と揺らがないように、あなたのプログラム、抜き取っちゃうよ!」
「ええいうるさいうるさい!! こうなったらお前ら全員、ボクの怒りで黒焦げにしてやる! それでボクは、カシエル様のところに帰るんだ!!」
 顔の前に掲げた光の剣越しに、機械仕掛けの天使は復讐者達を睨めつけた。垂直に立てた刀身をバチバチと取り巻く電撃は、裁きの雷と化して電脳の虚空を刺し貫く。
(「ふざけた敵だが……」)
 肩口を鋭く焦がした雷の威力は侮れるものではなさそうだ。騎士槍を水平に構えてその先端の一点を見据え、ウルリクは呼吸を整えた。
「――逃げられると思うな」
 血の滲むような努力の果てに研ぎ澄ました矛先は、一度走り出せば止まることなく、そして的を違えない。猛然と迫る騎士の気迫にたじろいで、マキナエンゼルは素早く左右に目を配った。回避するなら、復讐者達の手の薄い方へと思ったのだろうが――そうは問屋が卸さない。
「うわっ!? なんだ!?」
 突然、素っ頓狂な声を上げた天使の身に何が起きたのか、把握できた者はなかっただろう。伸ばした左手の先、蛍光色に輝くキーボードに指を添えて、虹介は慌てふためく天使の様子を見つめていた。ここは電脳空間――現実世界以上に、彼のハッキング能力は効果を発揮する。それこそ、敵の神経をジャックして視界を奪う程度は造作もないことだ。
 成す術もなく騎士槍の痛撃をその身に受け、天使はぐえっと潰れたカエルのような声を漏らした。
「くそっ! こんなのチートだろ!」
「チート呼ばわりは心外だなあ……っ!」
 そんなことしないよ、と続くはずだった言葉は、動揺に遮られた。視線の先で不意に、マキナエンゼルが姿を消したのだ。標的を見失ったハッキングコードは弾かれて、少年は素早く前後左右を確かめる――しかし。
「うわっ!?」
 気づいた時には、光の刃は目前にまで迫っていた。視界を奪うものと、視界に映らないものとの駆け引きだった。どん、という衝撃に身体が傾いだかと思うと、右腕に焼けつくような痛みが走る。
「すまん」
 間に合わなかったとウルリクは詫びたが、どうやら彼が体当たりをしてくれたおかげで直撃を免れたらしい。裂かれた袖口を押さえながら、虹介はそろりと青年を見上げた。
「頼っちゃって……ごめん」
 ありがとう、と続けた言葉は消え入るように細いけれど、それでも騎士の耳には届いたのだろう。視線は敵を見据えたまま、短く吐息してウルリクは応じた。
「礼も謝罪も、必要ない」
 共に征く者を援けることもまた、騎士の宿命なればこそ。落ち着き払ったその姿が癇に障るのか、再び姿を現したマキナエンゼルは機械の脚でガチャガチャと地団駄を踏んだ。
「なんで避けるんだよ! あとちょっとだったのに!」
「子どもか……?」
 いや、子どもの我儘というにはタチが悪い。喚く天使に冷めた視線を送って、遊里はパワードスーツの中で首を捻った。
(「姿を消す技か……光学ステルスの類か? 確かに厄介だが」)
 だが、それは生身で闘り合うならばの話だ。もう一度、と姿を眩ました天使に呼びかけて、青年は言った。
「俺にはその手は通用しないぞ!」
「そんなの、やってみなけりゃ分からないだろ!」
「いや分かる! 何故なら――何を喰らおうと俺は全部耐えるからだ! 黒鉄の城舐めんな!」
 腹を目掛けて突っ込んできた天使を逆に押さえ込み、遊里は淀みなく啖呵を切ってチェーンソーを振り上げる。
「お前が泣くまで殴るのをやめない! 泣いてもやめないけどな!」
 どこかの貴族の一人息子かと思ったら一転どこかの雑貨屋のガキ大将みたいなこと言い出したよこの人。
「行くぜ! 必殺、アスカ・ダイナミック!」
 斬るというより叩きつけるような刃に弾かれて、天使はころころと電脳空間を転がっていく。それをすかさず追い翔けるのは、璃央と麗央の兄妹だ。
(「機械の天使さん――本当はずっと、クラッキングしたくてうずうずしてた!」)
 憎むべき天使と悪魔を討ち亡ぼすためならば、たとえ火の中、電脳空間の中。二色の翼を重ねるように兄と二人背を合わせ、麗央は指先にクラッキングコードをまとわせる。
「せめて夢を見ながら散ってよね!」
「くっ……君達の思い通りになんてさせるものか!」
 苦し紛れの言葉を吐いて、天使は再びふつりと姿を消した。しかしその戦法も、そう来ると分かってさえいればそれほど目新しいものでもない。それにこうして背に背を合わせていれば、息の合った兄妹に死角はないのだ。
 きらりと輝いた光の一筋を見逃がすことなく、璃央は妹の手を引いた。
「その意思の弱さを、叩き直して差し上げましょう」
 どうせやり直せるのは来世かそれ以降だ。多少打ちどころが悪くても問題ない。璃央が白く固めた拳を振り上げるのに合わせて、麗央もまた指先のコードを輝かせる。
「せーのっ!」
 呼吸を合わせて打ち込む両者渾身の一撃が、天使の頭部にクリーンヒットした。凹んだ頭に流れ込む甘い夢は、彼の愛するカシエルか、それとも二次元美少女か――マキナエンゼルは額を押さえると、翔び上がってその場を離脱する。しかし逃がしはしないと、ジュジュは黒鴉のオーラを身にまとい、その後を追って飛んだ。
(「ちょっと怖いけど、……大丈夫」)
 影の翼は一族の業と穢れの確かな残滓に相異ないが、一族ということは、彼女が愛してやまない兄もそこにしっかり含まれるわけで。
(「兄様はここにはいないけど、兄様からもらった影はいつも私と共にある。つまり――兄様と一緒と言ってもほぼ過言ではない!」)
 なんというか凄く生きやすそうな思考回路で羨ましい。
 なんかずっと兄様のことばかり考えてる気がする、と超絶今更なことを考えつつ、ジュジュはさらに加速する。そして天使の前に回り込むと、きりりと表情を引き締めて告げる。
「私の影で、貴方の光を打ち消してあげる――って、なんだか悪役みたいな台詞だけど」
 曲がりなりにも天使の一柱を撃ち墜とすには、似合いの台詞だろう。それに、たとえどんなに歪に見えたとて、正義は彼女達の側にある。なぜなら。
「だって可愛いは正義っていうし! 私の方が可愛いから、私が正義!!」
「……え、そういう正義?」
 ぼそりと聞き返した遊里の一言は、聴こえなかったことにする。そして哀しいかな、漆黒の刃と化した羽根に射抜かれて、断末魔の叫びと共にマキナエンゼルは電脳空間に霧散し、二度と形を成すことはなかった。
「はあ~疲れた……早く帰りたい、兄様にあいたい……」
「ほんとにどっと疲れちゃったね……」
 長い溜息一つ、オーラを解いたジュジュの隣で、麗央もまたがっくりと肩を落とす。大丈夫? と労る璃央が一人だけ元気そうなのは、この不毛な戦いを唯一役得であったと言える人間だからなのかもしれない。
「こんな経験をするなんて、びっくりだけど……」
 やいやいと言い合っている仲間達を一歩離れた所で見つめて、虹介は言った。
「攻略……ちょっとたのしかった。シミュレーションゲームも面白いね」
 人と仲良くなるコツも掴めるみたいで、少年は円くあどけない瞳で隣に立つ男を見やる。ううんと難しい顔で眉を寄せ、ウルリクは唸った。
「現代文化も多様だな。俺もまだ学ぶ必要がありそうだが、……ああいうゲームは見ているだけで充分、な気がする」
 うん、染まらないで欲しいと天の声も思う。
 生真面目に苦悩する騎士の姿は珍しくもどこか微笑ましくて、虹介は表情を和らげた。
「ぼくらまたお出かけ、したい、な。……だから今度も、誘ってもいい?」
「…………」
 好奇心に裏打ちされた期待と興味。そこにある確かな厚意は、決して不快ではなく、けれども少しこそばゆい。
 まあ、と視線を逸らしつつ、ウルリクは応じた。
「また気が、向けば」
「……うん」
 それでいいよと柔らかく笑んで、少年は何もない天を仰いだ。電脳空間の空騒ぎは、これにておしまい――にわかに差し込んだ光の向こうでは、あるべき現実が復讐者達を待っていることだろう。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【断末魔動画】LV2が発生!
【狐変身】LV1が発生!
【怪力無双】がLV2になった!
【託されし願い】がLV3になった!
【隔離眼】がLV3になった!
効果2【ドレイン】LV2が発生!
【ダメージアップ】がLV7になった!
【能力値アップ】がLV2になった!
【命中アップ】がLV5(最大)になった!

最終結果:成功

完成日2022年06月06日

電脳世界破壊作戦

 ディアボロスの活躍により、千代田区から自分の信者を台東区の電脳世界に呼び寄せるという、電脳大天使カシエルの野望は潰えました。
 しかし、電脳秋葉原には、既に多くのカシエル信者が集い、電脳世界での生活を満喫し、カシエルへの信仰を日々、高めているようです。
 作戦の失敗を受け、カシエルは、電脳世界の出入り口を封鎖し、引きこもろうとしています。
 このまま引き籠られてしまうと、秋葉原だけでなく、台東区への侵攻も難しくなってしまうかもしれません。

 幸い、秋葉原を探索したディアボロス達が『電脳世界の綻び』というキーアイテムを確保しており、これを利用する事で、秋葉原の電脳世界へ無理矢理潜入する事が可能です。
 ディアボロスを電脳世界の外に追い出そうとする排斥力に打ち勝ち、電脳世界の中核をなしている、カシエル信者のアヴァタール級クロノヴェーダを撃破し、電脳世界を打ち破ってしまいましょう。


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#TOKYOエゼキエル戦争
🔒
#電脳世界破壊作戦
🔒
#台東区
🔒
#電脳大天使カシエル


30




選択肢『電脳世界の綻び』のルール

 電脳大天使カシエルは、自らの信者と共に電脳世界に引き籠って、外部からの侵入を完全に排斥・遮断しようとしているようです。
 この排斥力を担当しているのは『この電脳世界で永遠に暮らしたいと願う、カシエル信者の願い』です。
 電脳世界の綻びを使用することで、このカシエル信者に訴えかけ、電脳世界の排斥力を弱めてください。

 信者達は、クロノヴェーダに至っていませんが、現実よりも電脳世界での暮らしを望む、カシエル配下のクロノヴェーダ予備軍です。

 彼らに対して『現実世界の良い所』を訴えかけ、『電脳世界に引きこもるのは良くないのではないか』という疑いを抱かせる事ができれば、排斥力が一時的に低下して、内部に潜入することができるようになります。

 信者達は『現実世界よりも電脳世界が良い』という価値観をもっていますが、電脳世界の綻びによって、その価値観に揺らぎを作る事ができるので、そこをうまくついて説得しましょう。

 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【🔑】この選択肢の🔵が👑に達しない限り、マスターは他の選択肢のリプレイを執筆できない。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢『電脳世界でゲーム攻略』のルール

 電脳秋葉原の防壁を抜けて中に入っても、電脳世界の綻びはバグ扱いなので、そのバグを排除する排斥力が働いてしまいます。
 この排斥力は『シューティングゲーム』や『スポーツゲーム』や『アクションゲーム』『パズルゲーム』などのゲーム的な方法で、襲い掛かってきます。

 ゲームのルールから逸脱すると排斥されてしまうので、ゲームのルールの範囲内で戦い、ゲームをクリアしてください。
 ゲームをクリアすると、電脳秋葉原の中に入り込むことができます。


 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 なお、この選択肢には、特殊ルールはありません。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢『電脳大天使カシエルの応援』のルール

 アヴァタール決戦のアヴァタールは、電脳大天使カシエルの強力な加護を持つ為、ダメージを与える事ができず、絶対に撃破する事が出来ません。
 この加護は『電脳大天使カシエルを至高であり唯一の推し』として崇拝していなければ失われてしまう為、カシエルは、アヴァタール級の性癖ど真ん中な応援を行って、その信仰を高め続けているようです。

 この加護は、効果が非常に高い分、その維持が非常に難しい為、ディアボロスが、アヴァタール級が持つ大天使カシエルに対する侵攻を少しでも失わせる事が出来れば、効果を失わせる事が可能です。


 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『👿または👾で出現する敵との会話に専念する。戦闘行動は行わない。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👿アヴァタール級との決戦『マキナエンゼル』のルール

 事件の首魁である、アヴァタール級クロノヴェーダ(👿)と戦います。
 👿を撃破する事で、この事件を成功で完結させ、クロノヴェーダの作戦を阻止する事が可能です。
 敵指揮官を撃破した時点で、撃破していないクロノヴェーダは撤退してしまいます。
 また、救出対象などが設定されている場合も、シナリオ成功時までに救出している必要があるので、注意が必要です。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「1体」出現します。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、敵を倒し、シナリオは成功で完結する。ただし、この選択肢の🔴が🔵より先に👑に達すると、シナリオは失敗で完結する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※このボスの宿敵主は「シメオン・グランツ」です。
※クロノヴェーダには、同じ外見を持つ複数の個体が存在しますが、それぞれ別々のクロノヴェーダで、他の個体の記憶などは持っておらず、個体ごとに性格なども異なっています。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。