【機械化ドイツ帝国奪還戦】ファルケンハイン
このシナリオは【機械化ドイツ帝国奪還戦】に関連する特別シナリオです。
機械化ドイツ帝国のジェネラル級ゾルダート、及び、断片の王撃破により排斥力の低下した機械化ドイツ帝国のディヴィジョンを強奪しようとする、吸血ロマノフ王朝、幻想竜域キングアーサー、断頭革命グランダルメの軍勢に、戦闘を仕掛けます。
この戦闘によって、敵の戦力を削ることが出来ます。
勝利したシナリオ数に応じて、対応する戦場の敵の数が減少し、戦いを有利に進めることが出来るようになります。
このシナリオの攻撃対象は、ルール地方を支配する軍団長、エーリッヒ・フォン・ファルケンハインの軍勢です。
『鉄屑兵』と戦闘を行うことで、「成功したシナリオ数×5%」だけ、「⑬エーリッヒ・フォン・ファルケンハイン」の敵残存率を低下させます。
【機械化ドイツ帝国奪還戦】愚鈍なる鉄壁(作者 藤野キワミ)
#機械化ドイツ帝国
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#機械化ドイツ帝国奪還戦
#ファーストアタック
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#ビスマルク落下コース情報
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●ファルケンハインの憤激
「この俺が、このエーリッヒ・フォン・ファルケンハインが送った増援はどうなったのだ? 何故、ベルリン王宮が陥落する!?」
彼の激昂を無反応に聞いている(あるいは聞いていない)鉄屑兵は、無反応が故に彼の怒りを煽り立てた。
「陛下も陛下だ。なにが……『国を貪らんとする者どもに、領土を渡すことなかれ』だ。壊すぐらいなら、俺に王位を渡せばよかったのだ」
先行する怒りに任せて悪態をつけども、その激しい怒りは収まらない。彼を宥める者はここにはいないのだ。
いるのは、ぼんやりと突っ立っている鉄屑兵どもだけ。ものを言わぬ風体に、手近な一体を殴り倒した。
「この鉄屑が!」
がなれども、炭鉱内にわんと反響するだけで、鉄屑兵にはその脅しは効かない。
ルールに残存する戦力が少なすぎるが故に、このような廃棄品すら使わねばならん――苦々しく罵って、舌を打つ。
「とにかく、ビスマルクの落下に備えねばならん」
この鉄屑どもで守りを固めねばならないことに、ますます苛立つ。
「糞っ、どうしてこうなったのだ!」
●
「機械化ドイツ帝国の断片の王――『ヴィルヘルム2世』を討ち果たしたことは、すでにご存じの通りでございます。
その結果、ドイツを中心としたヨーロッパ地域を最終人類史に奪還する『機械化ドイツ帝国奪還戦』を開始することができます。
申し遅れました。こたびの案内を務めます。私は不破・天晴――よろしくお願いいたします」
伏せた橙の双眼を銀灰の前髪の奥で光らせた彼は、淀みなく続ける。
「この奪還戦に勝利することとなりますと、ドイツを中心とした欧州の広い範囲を取り戻すこととなりましょう。ただ、この戦には、機械化ドイツ帝国のジェネラル級ゾルダートのみならず、『吸血ロマノフ王朝』、『幻想竜域キングアーサー』、『断頭革命グランダルメ』の軍勢も動きます。
ドイツの強奪を企てる軍勢に対し、開戦直前に攻撃を仕掛け戦力を削ることが出来れば、戦の機先を制することとなりましょう」
言って、少年は一呼吸。再び口を開いた。
「みなさんに向かっていただきますのは、ルール炭鉱でございます。
ルール地方を支配する軍団長、エーリッヒ・フォン・ファルケンハインの軍勢を削っていただきたく存じます」
ただ、この炭鉱の戦力の大部分を先の作戦で削っていることも周知のこと。
もはや鉄屑兵に守りを固めさせるのが手一杯の状況だ。
そして、かのジェネラル級ゾルダートは己が生き延びることのみに注力し守りを固めるのみで、積極的に戦争に参加する気はなさそうだ。慢心がそうさせるのか、憤激が思考を止まらせるのか――判然としないものの、これを引き摺り出すことはできるだろう。
それでもまずは軍勢だ。多数は脅威。大戦力であることは間違いない。引き際を見誤れば、惨事は必至。
「まず、洞窟内に展開する鉄屑兵の多くを討ち、充分な打撃を与えたらすぐに撤退することが重要になりますゆえ、お気をつけください」
これは、『機械化ドイツ帝国奪還戦』の前哨戦だ。
「こたびの戦争の最終目標は、空中要塞ビスマルクの撃破でございますが、それを達して勝利とは言えぬ状況でございます」
クロノヴェーダに大地を強奪されることを防ぎ、可能な限り多くのジェネラル級クロノヴェーダにとどめを刺したい――不破・天晴(橙の陰陽師・g03391)は、列車に乗り込んでいくディアボロスたちを見つめ、目礼。
「機械化ドイツ帝国奪還に向け、貴方の力が必要でございます。武運長久を祈ります」
リプレイ
イロハ・アプリルシェルツ
【アドリブ&連携歓迎】
さて地の利は当然だけど敵側
覆すには意識の隙を突く速攻作戦が必要かな
正直哀れな鉄屑兵だけど
考えなしに挑めば滅多切りにされて
を晒すだけだよね
ならば鉄爪の間合い内に敢えて飛び込むのが良策
相手は互いに連携を取れるか怪しいし
同士討ちを恐れる可能性もあるしね
死と隣り合わせの【勇気】無き者には立てない鉄火場がイロハの戦場だよ
身体は半身にして身を低くし、斬撃を受ける面積を少しでも減らそうか
聖句を唱えて、生半可な鉄板さえも貫き通す
【ペトロの殉教】を発動させ敵を斃すよ
死と隣り合わせの巡礼はまだまだ始まったばかりだからね
哀れな人形のキミ達にお祈りの時間は必要かな?
ライラ・ロスクヴァ
命あっての物種、ですものね
出来うる限り数を減らし、無事に帰りましょう
わたくしには、帰る家がありますので
とても心苦しい敵ではありますが、わたくしたちは共存できません
申し訳ありませんが散って頂きます
葬月の名を冠するソードを手に、敵陣へ突っ込んで参ります
先駆けはお任せください
敵をある程度散らしたら、他の方々の邪魔にならぬよう立ち回ります
撃ち漏らしが無いように、各個撃破に勤めましょう
哀れなあなた方
せめて苦しまず逝けるよう願いを込めて、一閃を
葬送のダンスを舞うように、ソードを振るいましょう
御須統・昴
アドリブ・連携歓迎
……悲し気な事はさっさと終わらせましょうか。
此処は通過点に過ぎないですから。
そう、ドイツを戻す為の前哨戦に過ぎない!
<誘導弾>で敵に近づくまで牽制の様に≪鏢蓮華≫を<投擲>しつつ、近づいていきます。
近づいたら敵を多く巻き込めるタイミングで【パラドクス】発動。
――此処に全てを投影す。さあ、避けれるか試してみましょうか!
パラドクスの攻撃として≪鏢蓮華≫を使い、多数の鏢を投影、打ち込みますよ!
道中の攻撃や敵の反撃は【飛翔】による回避を試み、もしくは<グラップル>≪星手甲≫による障壁で耐えます。
味方と連携して敵を倒していきましょう。
シルヴィア・シュヴァインフルト
ルール炭鉱の守りを固めるファルケンハイン……
その目的がただの保身か、或いはそれ以上の何かがあるのか。
判然としないが、その戦力が不十分ならば、我々には好都合というもの。
しかしまあ、失敗作となったゾルダートを“鉄屑”呼ばわりするのは、どうも癪だね。
彼らだって、なりたくてそうなった訳ではなかろうに。
彼らの姿は、見ているだけでも痛ましいが……なればこそ、楽にさせてやるのが私の勤め。
脳天を一発、或いは心臓をひと突き。
そういうのは、得意だから。
本当ならば、今すぐにでもファルケンハインを倒してしまいたいが……
焦って命を落としちゃ、元も子もない。
程々で引き上げるとしよう。
――鉄屑兵、お前達の弔いは、今度必ず。
竜城・陸
打って出ずに守りを固める、か
この場所を重要視しているのは、或いは――
いや、思惑を考えるのは後だな
開けた外よりは必然、狭い空間だ
可能な限り共に突入した味方と連携を取り
互いに位置関係を調整しながら、突出・孤立を避け
包囲されぬよう立ち回ろう
[光使い]の本領、光で象るは[浄化]の権能帯びた槍
標的は味方と合わせ確実に数を減らすことを重視
反撃で嵩むダメージは【ドレイン】で補填しながら
可能な限り多くの脅威を掃えるよう努めよう
――痛い、だろうね
苦しいだろう
救っては、やれない
だからせめて、これ以上苦しみを長引かせないことを手向けとしよう
撤退の判断は味方の状況、敵布陣を逐次確認しながら
機を逃すことのないように
飛鳥・遊里
【アドリブ連携OK】
よお、アンタ達。大変だな?こんな負け戦に駆り出されてさ?
…ああ、本当に気の毒だと思うよ。アンタ達の誰一人としてこんなこと
きっと望んでなかっただろうにな
だから…俺が終わらせに来た。悪夢は今日で終わりだ
【ビットコンダクター】起動。呼び出せる最大数の【キャノンビット・デバイス】を呼び出す
【マルチウェポンデバイス】をガトリング砲に変形させ、キャノンビットと共に広域をまとめて乱れ撃つ
トドメは入念に行う。下手に討ち漏らしたら後で厄介なことになる。連中の機能を完全に停止させたことを確認してから次の戦域に向かい、同じように殲滅させて周る
ああ、一体たりとも残さず、解放してやらないとな…
●先駆け
ルール炭鉱――数々の作戦の末、戦力らしい戦力はないに等しい。
しかし、ここで油断し足元をすくわれるわけにはいかない。
これは前哨戦であるのだから。
ライラ・ロスクヴァ(セレーネ・g00843)は、双つの虹の彩をゆうらりと静かに熾烈に燃え上がらせる。
(「命あっての物種、ですものね」)
だからこそ、ここで消耗しきってしまうわけにはいかないのだ。
「出来うる限り数を減らして、無事に帰りましょう」
「ええ。でも、地の利は当然向こうにあるから、速攻で――かな」
ライラの言葉に頷くのは、イロハ・アプリルシェルツ(神聖ならざる銀・g05555)。彼女の金瞳もまた、さざめくように坑内に響く鉄屑兵どもの呻きを視る。
どこに潜んでいるかを見定めるために感覚を研ぎ澄ます。
呼吸をひとつ。
がしゃりと聞こえた音は紛れもなく鉄屑兵の朽ちる音。殷々と響く苦痛に歪む呻き声は、鉄屑兵の叫び。
《葬月》の名を冠するソードは、ライラの意志を映す。
「先駆けはお任せください」
彼女の背を見送って僅か、数瞬――イロハも駆ける。
「その姿……同情するに値するけど」
めちゃくちゃに継がれた四肢は、無惨そのもの。哀れではあるが、見逃す道理はない。
命令の善悪を判断できない人形は、律儀に愚鈍に「守れ」の一言に従い続ける。
考えなしに挑めば、ともすれば滅多切りにされて屈辱を喫することになるのはイロハたちの方である。
とても心苦しい敵なのだ。
同情を誘う敵だ――されど、共存することは叶わない。
「申し訳ありませんが、散っていただきます」
ライラの眼前には、嘆く鉄屑兵。茫漠として絶望と悲嘆に暮れる彩を失した双眼は、仄蒼く昇る三日月を眩しげに見る。
鋭い踏み込み、十分に加速した剣閃は止まることを忘れる。狂おしく悲痛にひしゃげた声ごと斬り伏せるように――冴え冴えと月光が閃いた。
「ひとつ、断ち」
振るうは《葬月》、踏むは葬送。壮烈な願いを込める一閃が、鉄屑兵を屠った。
「わたくしには、帰る家がありますので」
あなたの悲嘆に染まり共にすることはできません――こそりと告げられた一言は、それが崩れる耳障りな音に掻き消された。
哀れなる姿に、ライラの瞳は昏く揺れる。
(「せめて、もう苦しむことないよう……」)
弔いに舞うライラの剣閃に乗じて、イロハは鉄屑兵の鉄爪の間合いに飛び込む。
洗練された技巧の欠片もない、でたらめで荒々しくも素早い爪撃を、イロハは体を低くすることで躱そうとする――斬撃を受けたとて、斬られる面積が減るのならば――その唇からは、奮起を讃える聖句が流れ出る。
「聖なるかな……」
ただただ守れと言われた鉄屑兵の無謀で愚鈍な斬撃は、イロハに届くことはない。
揺るがぬ信仰の鎧を纏うその身――固められた拳が、継ぎ接がれることで野暮ったく護られた鉄屑兵の躰を貫き斃す。
この集団敵が連携の取れた軍勢だったのなら、また違った結末だっただろう。鉄屑どもが同士討ちをも警戒するほど慎重な軍勢だったなら、或いは。
しかし、そのどちらとも違う。
「死と隣り合わせの勇気無き者には立てない鉄火場が、イロハの戦場だよ」
生半可な者には、到底たどり着けない場所だ。
鍛え上げられた《使徒の手》が、拒絶の連撃を捻じ伏せた。
●憐憫
「……悲し気な事はさっさと終わらせましょうか」
駆けた二人が孤立してしまわぬように、御須統・昴(十星連・陸昴『六連星の守り人』・g06997)は、己が身のそこここに隠した《鏢蓮華》を素早く構えた。
(「此処は通過点に過ぎないですから……そう、ドイツを戻す為の前哨戦に過ぎない!」)
昴の双眼に力が宿る。
機先を制することができるならば、この哀しい戦いも意味をなす。否、彼らの苦しみを止めるには、充分な戦いか。されど、ドイツを奪還できるか否か、他勢力に喰われるか否かだ。今は――今だけは。
隠した暗器は、こちらに注意を向ける合図となる。これだけで鉄屑兵の動きを止めることは出来ずとも、より多くの兵を昴へと引きつけることが出来るのなら。
それが、ライラとイロハへと向かうはずだった攻撃の手を逸らすことが出来るのなら。
「――此処に全てを投影す」
多くの鉄屑兵を巻き込めるようにタイミングを見計らい、【投影蓮華】による見えざる鏢が、鉄屑兵に打ち込まれる。
「さあ、避けれるか試してみましょうか!」
深々と鏢が刺さった鉄屑兵は、昴の接近もさらなる追撃も拒絶して、喚いた。
「いや、だ、こないで……! やめて、やめてくれ!」
問答無用の強力なものであったのだろう――鏢の傷さえなければ。
爪の連撃のすべての軌道がスローモーションのようで、昴は身を反らし、ふわりと体を浮き上がらせ攻撃を躱し、それでもなお迫りくる爪撃を《星手甲》で弾き受け流す。
織り上げた魔力の障壁と爪撃がぶち当たって激しい音を響かせる――が、昴がそれに打ち負けることはなかった。
「こないで……やめて……もう、こないで」
弱音にも似たひしゃげた苦痛から、昴はいったん距離をとった。
しかし、復讐者の攻め手が弱まることはない。
「よお、アンタ達。大変だな? こんな負け戦に駆り出されてさ?」
飛鳥・遊里(リサイクラー・g00512)だ。
彼のブラウンの双眸は、無理やりに改造された鉄屑兵の姿を映す。
憐憫を覚えないわけではない。
尊厳の一切を無碍にされて、使い捨てられる兵だ。それを嘆き苦しむように、鉄屑兵の呻きは止まない。
「う――……いたい、いたい……もう、いやだ、こわい……」
「……ああ、本当に気の毒だと思うよ」
ぽつり呟く言葉と共に、【ビットコンダクター】を起動させる。召喚可能最大数の《キャノンビット・デバイス》を喚び寄せる。
「アンタ達の誰一人としてこんなこと……きっと望んでなかっただろうにな」
遊里の挙動に、鉄屑兵は、助けを懇願しながらも鋼鉄の爪を持ち上げる。
「だから……俺が終わらせに来た。悪夢は今日で終わりだ」
刹那。
《マルチウェポンデバイス》を組み替える。手癖のようにガトリング砲に変形させ、キャノンビットが一斉に起動――陰鬱を焼き尽くす火力で乱れ撃った。
ふらふらと所在なげに揺れて、それでも進軍してきた鉄屑兵は、遊里の放つ火雨に撃たれ、悲哀の叫びを響かせる。
昴が傷を負わせた者を優先的に狙い、確実に、斃す。
下手に討ち漏らせば、後に厄介事が起こってしまうのは、火を見るより明らかだ。
それは、最たる理由だ。
それでも。
「いやだ……もう、い、や……」
「……ああ、そうだな、いやだな」
遊里は肯く。
「もう、終わろうな」
痛ましい姿に成り果てた『彼ら』に、最期の瞬間を。
(「一体たりとも残さず、解放してやらないとな……」)
ガトリング砲が火を噴き、闇路を俄かに照らした。
●掃討
シルヴィア・シュヴァインフルト(Nachladen・g01146)の構えた《消音拳銃》が、低く抑えられた声を漏らす。
牽制になるだろうと撃ち込んだものだ。体勢を低く、鉄屑兵の視界の隅へと潜んだ彼女は、タンッ、タンッ――と銃を駆動させる。
(「……しかしまあ、失敗作だろうと“鉄屑”呼ばわりするのは、どうも癪だね」)
憐憫を誘うような、泣いているような呻き声を聞きながら、唇の端を舐めた。
(「彼らだって、なりたくてそうなった訳ではなかろうに」)
先行した仲間が仕留めきれなかったゾルダートを優先的に狙い撃つ。
脳天を一発、或いは心臓を一突き――そういうのは得意だからと嘯く彼女は、それでも青瞳を曇らせる。
戦いたくて戦っているわけではない。
そこに崇高な目的はないのだ。
命を賭す理由も、忠義も、思想もない。あるのは、人形として動かぬことを禁じられた命令だけだ。
汚れきった包帯で躰を覆い、唸り、すすり泣き、それでも武器を構えて向かってくる姿は、見ているだけでも痛ましい。だからこそ――シルヴィアはグリップを強く握る。
「今、楽にしてやる」
それが勤めだと言わんばかりの、決意の吐息は、彼女の気配を希薄にさせる。
かの者の目的が、ただの保身か、或いはそれ以上の何かがあるのかは判然としないが、あれの持つ戦力が万全でなく不十分である以上、この状況はまさに好機。
遊里の火雨が一層シルヴィアの存在を知覚させにくくさせれば、彼女は混沌の中を駆け――手の中にある《消音拳銃》の照準はぴたりと鉄屑兵へと合わせられ、ショット。
どさりと斃れた兵は、喉からひゅうと息が漏れる。
「いたい……いた、く、もう、いたく、な……」
言ったまま、活動を停止させる。
「ファルケンハイン……」
どこにいるかもわからぬ軍団長の名が口をついた。
ぽつり呟く彼女に頷きを返す男の、青く長い髪が揺れた。
「打って出ずに守りを固める、か」
竜城・陸(蒼海番長・g01002)は、眼鏡の位置を調整して、紫雲の瞳で闇の先を見つめる。
開けた外よりも、当然のことながら狭い空間が広がっている。炭鉱の中で、僅かに残った戦力として駆り出されているのが、鉄屑兵というわけか。
そこまでして、この場所を守る。ここを重要視しているのは、或いは――ふむ、と考えこむ前に陸は、己を律した。
あらゆることを考えるのは、この軍勢を削いでからだ。
先んじて鉄屑兵へと踊りかかったライラとイロハは確実に敵の数を減らす。彼女らとは別角度から軍勢に風穴を開ける遊里、前面から剥ぎ落していく昴――先行した四人が討ち漏らした兵へと銃弾を浴びせるシルヴィアの正確無比なショット。
包囲されぬように軍行をコントロールすれば、優位を保ったままに戦力を減らすことができそうだ。
驀地に駆け生き急ぐものはいない。されど念には念を入れ、誰も彼もが孤立しないように気を配る。
闇を裂くのは、陸を陸たらしめる煌然と輝く光。無形の光は、浄化の権能を帯び、光槍へと収斂し顕現する。
「俺も相手になろう」
翼膜は淀んだ坑内の空気を掻き混ぜ、鉄屑兵の呻く苦悶をも掻き混ぜ霧散させる。
「いやだ……やめて……いたい、いたい、いたい、いたい」
呪詛のように吐き出される声に力の載ってしまう前に、その喉笛へと一閃。
「――痛い、だろうね」
その隣で嗚咽する兵を斬り伏せ、
「苦しいだろう」
閃く光は闇に軌跡を描き、鉄屑兵を照らす。
「救っては、やれない」
静かに囁かれる陸の言葉にぴくりと反応した鉄屑兵だったが、迫る彼の鋒鋩を前に、躰は崩れて落ちた。
ひゅっと風切り音――未だ明けない夜を映した双眸は昏く鉄屑兵を見据える。
「だからせめて、これ以上苦しみを長引かせないことを、俺からの手向けとしよう」
鮮烈に奔る【Lug】の鋒鋩は、坑内を照らし続ける。
「我々にはお前達を救ってやる術はない。確かにそうだ」
がしゃりと一歩を踏み出す音すら騒々しい。否――望まぬ生を強要される苦しみを表す音だ。
シルヴィアの眉間に寄った皺は、抱く哀しみを覆い隠す。
(「それでも、やっぱり――解放してやりたいんだ」)
遊里の胸の裡を代弁するように、銃弾が『彼ら』へ爆音を轟かせ降り注いだ。
理不尽に続けさせられた生に別れを。
●作戦終了
「哀れな人形のキミ達にお祈りの時間は必要かな?」
放たれた拳打と共にかけられた言葉は、鉄屑兵の猶予の一切を認めない――ともすれば冷酷な言葉かもしれないが、祈る心が『彼ら』に残っていたのなら――の話だ。
イロハはそれを確認してやる義理はない。そもゾルダートの言葉を信じてやる道理もない。死と隣り合わせの巡礼の最中には、余計な雑念であることに変わりないのだ。
「無事に帰りましょう」
祈る時間は今ではない。戦争が間近に迫っているこの時に、感傷に浸っていることはできない。
ライラは金髪を煌かせ、《葬月》と共に華麗に舞う。容赦ない斬撃で、確実に息の根を止める。
彼女へと近づこうとした一体へ、《鏢蓮華》が擲たれ、凄惨な悲鳴が上がる。
「いたい、いたい……やだ、くるの、いや、だ……!」
「なら近づいてこなければいいでしょう」
昴の言に耳を傾けることもなく、爪による反撃をからくも凌いだ。理不尽な命令に従わないという選択肢を与えられていないのだから、鉄屑兵は愚直に昴たちへと苦悶の呪詛を吐き、鋭い爪を振り下ろす。
その瞬間、ライラに頸を刎ねられた。いたずらに傷を負わせて苦しみを続けさせるよりも、いっそ。
「安らかに」
数多の鏢に貫かれた兵どももまた、がしゃりと崩れていく。
「そろそろ潮時かな」
兵を屠り、崩れる肢体を見届けて、呻き声が消えていくのを確認した。
敵の戦力は削った。これ以上留まっていては、こちらが先に力尽きる。状況を把握した上で、陸は撤退を唱えた。
脆弱な守り手であるとはいえ、相手は軍勢だ。侮っているつもりはなかったが、それでもディアボロスたちに傷をつけ、体力を奪っていく。
確かに数だけは立派にいるのだ。
「本当ならば、今すぐにでもファルケンハインを斃してしまいたいが……焦って命を落としちゃ、元も子もないか」
鉄屑兵を使い捨てにし、己は引っ込んだまま出てこない――あの胸糞の悪いファルケンハインに銃弾の一発でもぶち込んでやりたいが、深追いをすれば、のちに響く。
機を逃すことはしない。
ディアボロスたちは、撤退を開始する。
昴は暗器を擲ち、シルヴィアも弾幕を張り、遊里のウェポンも烈火を噴く。
今はこれ以上、『彼ら』を解放してやることはできそうにないが――この手でたくさんの苦しみを終わらせてやることができたのもまた、事実。
遊里はぎゅっと拳を握って、唇を引き結んだ。
「――鉄屑兵、お前達の弔いは、今度必ず」
殿のシルヴィアの《突撃銃》による弾幕に道を塞がれ、『彼ら』は追ってこない。
この戦いによって得た戦果は、じわりと効いてくるだろう。
奪還を賭けた戦いの、その時は近い。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【託されし願い】LV1が発生!
【書物解読】LV1が発生!
【操作会得】LV2が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
【植物活性】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!