リプレイ
ノイン・クリーガー
[心情とか]
俺が新宿に漂着する以前の最後の任務は、街を攻撃する帝国を食い止めて市民が避難する時間を稼ぐことだった。
だが俺も戦友も死に、恐らくは市民にも大勢の犠牲者が出た。
……この任務は必ず遂行してみせる。
[行動とか]
敵は西側から侵攻してくるので、旧市庁舎より西側のできるだけ大きく構造が複雑な建造物の中に潜み、【光学迷彩】を使用して身を隠し周辺を警戒しながら【大声】で助けを呼んで逃げ遅れた一般人を装い、敵を誘う。『誰か来てくれー!』
そして釣られた敵が姿を現したら【地形の利用】を行いながら【忍び足】で【追跡】してP218かカランビットで【不意打ち】して【暗殺】する。『バカだねぇ、お前さん』
破壊をばら撒きながら無機質に進軍する機械の兵士たち。
蹂躙された町並み。鳴り止まぬ銃声と悲鳴。逃げ惑う人々。
何もかもが似ていた。己が最期に見た景色と、何もかもが。
「…………」
ガスマスクの下で一つ、深く長く息を吐く。
戦場に来て早々、嘗てが思考に過るとは。
「俺もまだまだ青いな」
自嘲気味に吐き捨てた台詞で揺るがぬ決意を包む。
己が目の前で惨劇を繰り返させてはならない。今度こそ、必ずや任務を遂行せねばならない。
「……そう、必ずだ」
過ぎ去りし時を弔うように呟いて、ノイン・クリーガー(ゴースト・g00915)はサイレンサー付きの拳銃を手に立ち上がる。
身を潜めていたのは、町の西側に在る半壊した建物の上階。
辛うじて残る煉瓦の壁に張り付いて【光学迷彩】で偽装を施し、大通りの様子を窺えば、あの日と同じように暴虐を振るう機兵たちの姿がよく見えた。
流れ作業のように破壊を行っていく彼らは、此方側に敵が居ると思うまい。
居るとすれば、それは――。
「誰か! 誰か来てくれー!」
逃げ遅れた非力な住民を装い、努めて悲痛で愚かな大声を発する。
敵軍の目的は破壊だけではない。新たなサイボーグを生産するため、負傷した人々を攫っていくのも彼らの務めだ。
ならば、切迫した叫びに釣られない理由はないだろう。
果たしてノインの狙い通り、数名のサイボーグ兵を引き連れたトループス級インファントリー・ゾルダートが1機、部隊を離れて此方に通ずる路地へと入ってきた。
「――バカだねぇ、お前さん」
すぐに居所を変えて程なく。
背を晒して進む間抜け共を密やかに追って撃ち倒したノインは、そのまま小隊長たるゾルダートの首筋に三日月状の刃を突きつける。
「き、貴様
……!?」
「何だ、人のような反応をして」
よもや本当に人ではあるまい。
躊躇いなく手を動かせば、裂けたゾルダートの首からは濁った油が吹き出して、ノインの黒いコートを汚した。
墓標へ捧ぐには到底足りないが、この町を平穏に戻す為の重要な戦果ではある。
「まずは1機」
脱力して寄りかかるようになった機兵を突き飛ばして、暗殺者は淡々と呟いた。
成功🔵🔵🔴
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
終夜・香宵
あらあら~、人のいる町を演習会場にするとはずいぶん贅沢ですね~。
自分達で丁度いい場所を用意できないなら軍拡なんて考えなければいいのによくわかりませんね。
最も、わかる必要もないですし、その暴挙、ここで食い止めます。
戦闘での狙いは奇襲です。
【殺気】をできるだけ消して目立たぬように動き、瓦礫や建造物等の陰に身を潜めて機会を伺い、ここぞというところで爪たい夜風での奇襲ができると理想的です。
敵の砲撃も瓦礫等を利用してかわせるといいですね。【地形の利用】をどんどんしていきます。
それにしても、左手に斧、右手に火器とは私とかぶりますね。
ワーズ・ディアハルト
…今すぐ旧市庁舎へと救護に向かいたいものだが。俺には安全に残骸を除去する方法もなければ、治療手段もない。安全に事を成せる案も手段も何一つ思いつかない
なら答えは一つだ。敵が怪我人を連れていく前に【インファントリー・ゾルダート】を殴り倒すのみ。
…情けなくなるほど脳筋の極みな結論だが、必要事項として割り切るとしかない。
――それじゃ、始めますかね!
瓦礫の山から敵の意識を逸らせる距離より、自パラドクスを発動!
広範囲に光輪を敵方へ散らし派手に
目標としては
他の復讐者に残留効果を残す事。
怪我人を【飛翔】で運べたら便利では?とか思ったり…
後は、敵を怪我人ではなくこちらに引きつける事
さあ、お前さん等の敵はここだ!
一世・丈二
やれやれ。全く最高だな。
かの帝国は、相変わらず力と物量での力押しを生業としている様子。
さて。俺は遊撃に回ろう。
まず狙うはトループス級。策を弄するのは苦手でな。進行を続ける奴らを正面から迎撃する。
機械化された右腕より、「罪業罰下ー逆式ー」を放つ。
殲滅に至らずとも構わん。
狙いはその一撃による地表破壊と衝撃波で【泥濘の地】を展開し、
奴らの足を鈍らせるのが狙いだ。民衆を逃がす為の、多少の時間稼ぎにはなろう。
策を弄するのは苦手だが、小細工程度は多少の覚えはある故に。
主戦場へと向かう最中、終夜・香宵(人間のバウンサー・g00869)が「あらあら~」と間延びした声を漏らす。
女性らしい体つきと柔和な表情に、何処か怪しげな修道服らしい装い。外見だけなら戦場とは不釣り合いな雰囲気を醸しているような気がしたが、しかし香宵も復讐者のひとりには違いなく。
方々で立ち昇る黒煙や鳴り止まない悲鳴を見聞きして、思わず口を衝いた言葉の後には、自身の確固たる意志が表れる。
「ここで食い止めないといけませんね~」
「ああ、もちろんだ!」
囁きを拾い上げて、吼えたのはワーズ・ディアハルト(守護者・g02389)。
医学の心得も災害救助の経験もない己が、瓦礫の山と化した旧市庁舎へと赴いたところでどれほど役に立つものかと訝しんだ末、此方へと向かう決断をしたワーズだが……その表情は使命を成し遂げんと燃える正義感に、果たしてどれほどの人々を救えるだろうかという不安が入り混じって、複雑な色合いを成している。
(「……正直な男だな」)
肩を並べて駆ける一世・丈二(朧ろ火の・g00412)は、青年の面構えからそう断じた。
無論、咎めている訳ではない。ただ青年の在り方が、己の左目には些か眩いというだけで。
「ところでおっさん!」
視線が惹きつけたのか、ワーズが不意に声掛けてきた。
パラドクストレインの中で雑談に興じた訳でもなし、戦場での興奮もあろうから呼び方は一先ず棚上げするとして。
「なんだ」
「本当にいいんだな!」
「ああ」
淡々と返す丈二。
ワーズが言わんとしていたのは、要するに「このまま突撃するぞ」と、そういう事だ。
「策を弄するのは苦手でな」
「奇遇だな、俺もだ!」
どれほど思考を巡らせても、ワーズの頭に名案奇策は浮かびそうもない。
けれど時間は有限で、手をこまねいていれば罪なき人々の生命が脅かされる。
ならば――。
「脳筋の極みで情けないが、真正面から殴り倒すだけだ!」
未だ無事なレンガ造りの町並みを抜けて大通りへと飛び出した瞬間、ワーズは茶色の大きな羽根で羽撃く。
途端に現れた無数の光輪で、狙うは町の西側から来たる害悪。数多のサイボーグ兵を連れて進軍するトループス級クロノヴェーダ、インファントリー・ゾルダートたち。
「さあ、お前さん等の敵はここだ!」
挑発するように叫ぶと、ワーズの意志を受けた光輪は派手に輝きながら飛んで4機のゾルダートを斬り裂く。
半ば以上に不意打ちであった事も奏功したのだろう。怒りに満ちた一撃を受けた機兵たちは、斧を振るうことも右手の火砲を唸らせる事も出来ないまま、糸の切れた操り人形の如く崩れ落ちた。
「レジスタンスか!?」
「何だろうと帝国に仇なす者には違いない! 撃て!」
生き残りが声を張り上げれば、ゾルダートのみならずサイボーグ兵たちも一斉に銃を構える。
(「……やれやれ」)
未知の抵抗勢力と相対しても尚、力と物量に頼った蹂躙を続けようとする柔軟性のなさ。
元より浴びせかけてやる言葉などないが、呆れて物も言えない。
(「全く、最高だな――」)
内心で蔑んで、丈二は右腕を振り上げる。
それは皮肉にも、倒すべき相手と同じ機械仕掛け。
帝国に奪われた利腕と剣才に釣り合うものではないだろう。
けれど、今の己が戦場で頼る力は、悪夢の始まりとすら呼ぶべき特殊合金製の一品以外になく。
「恨むのであれば、この腕を寄越した同胞を恨む事だ」
吐き捨てて石畳を叩けば、音速の衝撃が波打つようにしてゾルダートたちの足元を浚う。
如何に機械の身体でも、それを支えるものが壊れたならば意味がない。
また4機ほどが大きく体勢を崩して――倒れてから、彼らは気付いた。
「……な、なんだこれは!」
捲れ上がった石畳が【泥濘の地】と化している。
たかだか泥濘程度、とは跳ね除けられない。悪路での戦いなど想定していない敵は立ち上がろうとしても踏ん張りが効かず、反撃として放った火砲は住民の逃走経路ですらない明後日の方向へと飛んでいく始末。
これこそが丈二の狙いだ。一撃で殲滅など出来なくとも、まともな戦闘機動が出来なければ逃げる民衆の追討も叶うまい。
「策を弄するのは苦手、とか言ってなかったか?」
「ああ、苦手だとも。だが小細工程度なら多少の覚えはある」
平然と言ってのける丈二にワーズも舌を巻く。
一方で、まだ朽ちていないゾルダートたちは声を荒らげて。
「く、くそ……いや、怯むな! 泥の外にさえ出てしまえば!」
「……それまで黙って見過ごされると思います~?」
忽然と響いたのは、敵軍を挟んで丈二たちの対極から。
いつの間に回り込んだのかは誰にも解らない。ただ道中でワーズたちと共に居たはずの香宵は確かに向こう側に居て、泥濘に苦戦する敵へと片腕を振っていた。
「ふふ……左手に斧、右手に火器。私とかぶりますね」
「何を言って――」
「機械の身体でも感じ取る事は出来ましたか? 夜風の心地よさ、あるいは恐怖……それとも……」
遮るように問いかけたのも束の間、未だ無傷であった者と藻掻いていた者、両者から血飛沫のように油が噴出する。
触れた者を切り裂く、爪のように鋭く冷たい黒風――それが香宵のパラドクスであったと、泥濘に沈むゾルダートは果てる最中、知り得たかどうか。
問おうにも敵はあらかた息絶えて、もはやゾルダートは1機のみ。
「瓦礫を盾にする必要すらなさそうですね~」
泥濘の縁に立って、変わらず柔和な表情で宣う香宵。
「……ええい! 撃て! 撃て! 殺してしまって構わん! あの女を撃ち殺せ!」
ただ1機残されたインファントリー・ゾルダートがサイボーグ兵たちへと叫ぶ。
しかし、事此処に至って『殺しても構わん』とは傲慢が過ぎる。
「やっぱり、あなた達の考える事はよく分かりませんね」
元より理解するつもりもないが。
微塵も動じる気配を見せずにぽつりと零せば、香宵には火砲と数多の銃口が向けられる。
――が、しかし。
そのどれも砲火の交響曲を奏でるには至らず、最後のゾルダートは無残に散った。
それを両断したのは、空から来たる刃。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
効果1【使い魔使役】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
【泥濘の地】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV2が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
桜木・満
心情:
機械の奴らに好き勝手させるか、か。サイボーグの身としちゃ、物悲しいものもあるが……。ま、行動で示すとするかね。
行動:
フライトデバイスで飛行し、前線へ。避難支援の為、サイボーグ兵へ空中戦を仕掛け、シモン青年たちへ避難を呼びかけます
【飛翔】があれば利用
「足止めは任せな、警戒しながら避難を進めろ!」
「確かにオレは機械だがな、この刀と誇りにかけて、こんな無道は見過ごせねぇっ!」
「てめぇら、サイボーグ兵だってそうだ。体を鋼にされたからって、心を捨てる事はねぇ!」
ゾルダートからの攻撃は、敵の号令を合図に飛行軌跡を変えることで回避。砲撃の煙に紛れるように突撃、屠竜撃を叩き込み、攻撃と同時に避難勧告だ
――機械の奴らに好き勝手させるか!!
彼方から聞こえた青年の叫びが木霊する。
(「……機械の奴ら、か」)
正しくそのものである桜木・満(桜花剣風・g00771)には物悲しい言葉だ。
しかし現実として、この町を脅かしているのは機兵たちであって。
彼らとの違いを示すならば、ただ一つ、行動を以て明らかとする他にない。
(「いけるか
……?」)
背中に装着する大型フライトデバイスの調子を確かめれば、すぐさま浮き上がった身体は瞬く間に加速する。
戦闘機動に足る速さだ。先んじたディアボロスの残留効果も上手く働いているのだろう。
「よし……!」
このまま攻撃を仕掛ける――と、その前に。
「足止めは任せな、警戒しながら避難を進めろ!」
主戦場に向かう最中、僅かに迂回する航路を採った満は眼下に叫ぶ。
其処にはトレインに同乗していたディアボロスと話し込む若者たちの姿が窺えた。
シモン青年を含む町の義勇軍に違いない。
(「後は任せたぜ
……!」)
敵を食い止めても、混乱が収まらなければ無用の被害が生じるかもしれない。
避難誘導が上首尾に終わるよう願いつつ、満はさらに速度を上げる。
程なく見えたそれは、既に三人のディアボロスとの戦闘状態にあった。
敵ゾルダートの殆どは倒れて、捲れ上がった石畳は泥濘と化している。
「行くも帰るも一苦労、って感じだな」
まさか悪路での戦いなど想定しているはずもなし。
空からであれば只の的だ。もっとも、己を優位に立たせている力が誰に与えられたものであるかを思えば、素直には喜べないが――四の五の言ってはいられない。
一気に高度を下げて、刃の一振りで敵を裂く。
すぐさま軌道を変えて備えたが、反撃はなかった。
……否。
サイボーグ兵が此方に銃を向けている。脅威にならないが、しかし心地よいものではない。
「オレも機械だがな、この刀と誇りにかけて、こんな無道は見過ごせねぇっ!」
気付けば、手を振り乱しながら叫んでいた。
「てめぇらサイボーグ兵だってそうだ。体を鋼にされたからって、心を捨てる事はねぇ!」
クロノヴェーダではないのなら、まだ――。
そんな願いも虚しく、サイボーグ兵が叫ぶ。
「逆賊を撃て! 我らが帝国の為に!」
半狂乱のそれは伝播して、すぐさま銃声に変わった。
「……馬鹿野郎がっ!」
罵った先は機兵か、帝国か、それとも戦争そのものか。
迸る刃の閃きは、とても虚しいものに思えた。
成功🔵🔵🔴
効果1【避難勧告】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
結城・こころ
「避難は任せてください!こっちです!」
住民の避難誘導と義勇軍に応援を要請します
義勇軍に安全な場所を聞いてから安全な場所を確認し、避難の時明確な指示を出せるようにします。
避難誘導は戦闘に立ち、大きな声で呼びかけます。
それだけでは目立たないと思うので翼を広げつつ「レイスラッシュファンネル」を飛ばし、工事の誘導の際に使う棒のように動かして速やかに動けるようにします。
また、「フライトドローン」で偵察をして敵の攻撃に備えます。
敵が来た場合は同じくドローンで義勇軍に対処をお願いしつつ僕も前に出てて戦闘します。
住民が近くにいる場合は敵に対してファンネルによる妨害を主とし、いなくなったらパラドクスで殲滅します
エメリヒ・ラインヴェーヴァー
みんなの日常、取り戻さないとね!
住民の保護と避難を、義勇軍に相談しよう
義勇軍のまとめ役に避難協力の話をしにいく
街の若い人らに尋ねて居場所を聞くよ【情報収集】
年寄りや子供、怪我人、ひとりじゃ逃げることも難しい人たちが避難できるように手伝ってほしいこと
侵略者たちは恐らく西から来るから、反対側の東に逃げるように
そんなことを伝える
そうだ街の地図とかあるかな
街の道路と避難先の位置、どこに要介護者がいるか
効率良く逃走できるよう避難経路の確認を一緒にしよう
手伝ってくれる人たちに情報共有だ
時間内で可能なら街の西側に防塁というか【泥濘の地】でクロノヴェーダの侵攻を邪魔する細工をするよ【時間稼ぎ】【地形の利用】
月下部・小雪
悪魔召喚アプリを使って魔犬型のアークデーモンを呼び出します。うぅぅ、こ、こわい見た目、です。
(自分で呼び出したくせに、モーラットのコダマをぎゅーっと抱きしめて震えてます)
そんな怖いデーモンを引き連れながらも怪我をした人や足の悪いお爺さんやお婆さんを中心にデーモンに運んでもらいます。
み、見た目で驚かれるかもしれないけど、【友達催眠】で、む、昔からの友達のフリをして説得、です。
途中で義勇軍の人と合流できたら、デーモンに代わりに殿をさせるからと説得してお爺さんやお婆さんを連れて行ってくれるように頼んで、みます。
※アドリブや連携も大歓迎
コロン・ルヴィン
※アドリブ歓迎
義勇軍の皆さんに要請を行うよ。
ここももうすぐ戦場になるわ。
ここに来るまでに戦闘音、かな。
まだ遠いけれど聞こえたもの。
怒りを覚えるのは分かるけどちょっとだけ冷静に、ね。
まずあなた達ができる事は?
復習する事は勿論だけどまずは人命第一じゃないかな?
ここには助けたいって思っている人が沢山いるわ。
貴方達以外にもね。
まず救出は出来ればご老人、子供を優先して欲しいことを伝える。
一人でも生き残る事が大事なのよ。
危険なのは間違い無いけど義勇軍以外でも救出手伝ってくれる人がいれば嬉しいな、、
もちろん義勇軍もそうでない人も私が助けてみせる。
目に入った人は決して見捨てたりしないわ。
戦火広がる町中に響く新たな悲鳴。
それは銃撃や建物の崩落によるものではなく。
この世ならざる世界から来たとしか思えない、恐ろしき怪物を目の当たりにしての叫び。
「ひぃ……バ、バケモノ……殺される……」
「あ、あの、あの……大丈夫、です、こわくないです……」
化物、或いは怪物――つまりは魔犬の形をしたアークデーモンの召喚主、月下部・小雪(デーモンのデジタルサマナー・g00930)は、へたり込んで怯えるばかりの住民をどうにか宥めようと声掛ける。
しかし、何よりも当の小雪自身が、モーラット・コミュの『コダマ』を抱きしめたままで震えているのだ。
説得力に欠けているところは否めない。たとえ【友達催眠】の効果が働いていても、友人が連れているものだからと、それだけで安心できるはずもなく。
「もうすぐここも戦場になるわ。ほら、立って」
コロン・ルヴィン(砂風鈴・g04379)が引っ張り上げるようにして起こすと、北東の彼方を指差して言葉を継ぐ。
「戦闘音から遠ざかる方、あっちに向かって逃げなさい。走れるわね?」
どことなく気品と落ち着きを感じさせる物言い。
それがようやく耳に入ってきたか、まだ青ざめた顔の住民は何度も激しく頷くと一目散に逃げ出していった。
「ちょっと! 聞きたい事があるんだけど!」
慌てて呼び掛けたエメリヒ・ラインヴェーヴァー(黒雲・g00180)の声も虚しく、瞬く間に小さくなった背中は路地の陰へと消えていく。
「あ、あの、ごめんなさい……」
「あなたが謝ることじゃないわ」
何しろ戦場の真っ只中。人々が狂騒状態に陥り、判断力を失っているのは、鳴り止まぬ銃砲の音と悲鳴のせい。
要するに闘いが、そして、それを引き起こした機械化ドイツ帝国軍が何もかも皆悪いのだ。軍事演習などと身勝手なお題目を掲げて、町を蹂躙する彼らによって人々の安寧は奪われた。
「みんなの日常、オレたちで取り戻さないとね!」
持ち前の明るさ(或いは喧しさ)を存分に発揮して言ったエメリヒに、か細い声で答える小雪。
その様子を見やって、結城・こころ(天使の魔創機士・g01175)も口を開く。
「急ぎましょう。まずは義勇軍の人に会わないと」
今しがた逃したのは、町に住まうたったひとりに過ぎない。
未だ砲声に逃げ惑う多くの人々が、ディアボロスたちの助けを必要としている。
それをどのようにして効率よく逃すのか。避難誘導に当たる四人の見解は、概ね一致していた。
所詮は余所者のディアボロスだけで事に臨むのでなく、他でもない町の住人で構成された義勇軍に協力を仰ぐのだ。
「このまま真っ直ぐ進んだ方に居るはずだってよ!」
エメリヒが小銃片手に走る若者から情報を聞き出し、四人は町の中心を貫く大通りに向かって駆ける。
探し求めていた人物を見つけ出すのはそう難しくなかった。
脇道に身を隠しながら、自らも銃を手にして矢継ぎ早に指示を出す青年。それこそが義勇軍を指揮する人物だろう。
「ちょっとアンタ! アンタがまとめ役かい?」
友好的な、ともすれば馴れ馴れしい態度で声掛けてきたエメリヒに視線を向けた青年は一瞬ばかり目を瞠り、銃砲の音に負けない声で答える。
「だったらなんだってんだ! どっから来たのか知らないが、こんなところ彷徨いてないでさっさと逃げろ!!」
「僕達も避難誘導を手伝いに来たんです。皆さんを逃がすのに安全な場所があれば――」
教えて欲しい、と続けるはずだったこころを遮り、青年はさらに大きな声で叫んだ。
「安全な場所だって!? そんなところがあるんだったらオレに教えてくれよ!! とにかく奴らから離れないといけないと思って指示を出しちゃいるが、ここいらで安全な場所なんてもう何処にも――」
「はいはいはい。分かった。分かったから、まず落ち着いて」
堪らずコロンが仲裁に入り、伸ばした腕で青年の胸あたりをぐいぐいと押しやりながら続ける。
「この状況に怒りを覚えるのはもっともだけど、ちょっとだけ冷静に、ね。まとめ役のあなたがそんなに取り乱してたら、他の人たちだって不安になってしまうわ」
「っ……」
正論を突きつけられてまで言い返す程、不出来な人間ではないらしい。
まがりなりにも義勇軍を率いるのであれば当然か。ともかくコロンは青年が周囲を見回して一息ついたのを見計らい、まるで教師が生徒を宥めるかのように滔々と話す。
「あなた達が今するべき事は? やり返したいって思うのは当然だけど、まずは人命が第一じゃないかな? ……わたし達の仲間が帝国軍を食い止めているから、今のうちに態勢を立て直して、一人でも多く生き残れるように行動するのよ。ね?」
「仲間……?」
一体何処の、と青年が疑問を呈する間もなく、一行の上空を一人のディアボロスが翔んでいく。
「足止めは任せな、警戒しながら避難を進めろ!」
颯爽と過ぎたそれは殆ど言い捨てるような格好だったが、少なくともコロンたちの言動をある程度保証するものにはなっただろう。青年は暫しの沈黙を挟んだ後、バツの悪そうな顔で「悪かった」と告げてから、こころに視線を向けて。
「嬢ちゃんもすまなかったな、いきなり怒鳴りつけたりして」
「い、いえ。気にしないでください」
むしろ気にすべきは“嬢ちゃん”ではないという部分だろうが、そこは戦地に在って瑣末事。
「それよりも避難を進めましょう。僕達の仲間なら大丈夫だとは思いますけど……戦場からは少しでも遠ざかっておくべきでしょう。大砲の流れ弾とかが来ないとは限りませんから」
「そうだ、地図あるかな。漠然と逃げるよりは、避難経路を決めておいた方がいいんじゃないかい?」
こころの後にエメリヒが続ければ、青年は同じくらいの歳の男をひとり呼び寄せる。
家財道具一式を担ぎ出したのではないかと思うほどやたらと荷物の多い彼が持ち物を漁れば、しわくちゃになった紙切れが一枚出てきた。
「だらしがねぇんだか物持ちが良いんだか……まぁいい、とりあえず此処が現在地だ」
ボヤいた青年が地図の真ん中から少し右側を示すと、エメリヒがこれ見よがしに頷いて。
「うんうん、なるほどねぇ。……こっちにあるのは民家?」
「いや、その辺りは殆ど空き家だな。全く居ないってわけじゃないが、この状況ならとっくに逃げ出してるだろうよ」
「了解了解。じゃあ避難経路はこっちだねぇ」
エメリヒの指が北東方向をなぞる。
「先に言われたけど、大通りは流れ弾とか飛んでくるかもしれないし、北側はオレたちが来たほうだから南より安全なはず。道は少し狭くなりそうだけど、一人二人で詰まるような感じでもなさそうだしね。まだ無事な建物が隠れ蓑にもなってくれそうじゃないかい?」
「それなら、僕が道案内をします。これで――」
言うが早いか、こころは光の刃を幾つも作り出して見せる。
「行く先々でこれを動かしておけば、細い道でも迷わずに動けるでしょう?」
「……ああ、解った。それで頼む」
別段、問題があるようには思えない以上、議論する時間も惜しい。
「おいオマエら、話は大体聞いてたな! 撤退だ! 避難ルートは北東方面、教会の脇を通って町の外に抜けろ! 子供と老人、怪我人にも手を貸すのを忘れるなよ!」
青年が声を張れば、義勇軍の面々がきびきびと動き出す。
(「子供やお年寄りを優先して、とまでは――」)
(「言う必要もなかったみたいだねぇ」)
冷静さを取り戻したのであろう青年の様子に、コロンとエメリヒは囁きあう。
「それじゃあ僕も行きます。もし敵が来たら……」
「その時は、ボクがなんとかする……します!」
誘導に赴くこころの憂いを断つように、精一杯訴えかけたのは小雪。
「殿は任せてください!」
「任せてって、嬢ちゃん、さすがにそれは……うおっ!?」
そこで漸く青年も気がついた。
小雪の傍らに鎮座する魔犬。秘めたる力を解き放つ瞬間に備えているそれは、然しもの青年でも驚く存在。
「あの、敵じゃないです。怖くない、です……」
「……ああいや、大丈夫だ」
青年は努めて落ち着き払った声で、笑いながら続けた。
「帝国の連中なんかよりもよっぽど強そうだな。もしもの事があったらそいつで頼むぜ、嬢ちゃん」
「は、はい……!」
「僕からもお願いしますね。一応、これを置いていきますから」
励ますように念押しすると、こころは喚び出した【フライトドローン】の一つを残して避難誘導に向かう。
「皆さん、こっちです!」
頼りがいのある響きは、その姿と共にすぐ遠ざかっていった。
「さて、オレたちもきびきび働かないとねぇ」
独り言じみた台詞を零すやいなや、エメリヒは通りの西側を泥濘に沈めた。
「気休めかもしれないけど、少しは時間稼ぎになりそうじゃない?」
「ああ、そうだな。……色々と助かった。アンタたちも早く逃げてくれ」
「……逃げてくれ? あなたはどうするのよ?」
言動に違和感を覚えたコロンが問えば、青年は程近い町の中心部を指し示す。
「知り合いがあの辺りで逃げ遅れているかもしれないんだ。杞憂ならそれでいいんだが……」
「それなら大丈夫です。その辺りにも、ボクたちの仲間が向かってるはずです」
頼られた事で気後れも少しは失せた小雪が答えれば、青年は目を丸くして。
「そうなのか? ……じゃあ、南側を見ないと。空き家ばかりと言ったが、やっぱり――」
「気になると言うなら、それも此方でやっておくから」
今度はコロンが青年を制す。
「あなたも一緒に避難しなさい。……逃げろ、というのではなくて。先に逃げ延びた人たちをまとめるなら、私たちよりもあなたが適任よね?」
「……解った。何から何まで、本当にすまない」
青年は深く頭を下げると、最後に一つ言い残す。
「だが約束してくれ。アンタたちも無茶はせず、必ず無事で合流すると」
とても出会ったばかりとは思えない、友の身を案じるようなその言葉に、ディアボロスたちは確りと頷きを返した。
そして程なく。
一定の理性と統制を取り戻した住民たちは、速やかに街を脱していく。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【フライトドローン】LV1が発生!
【泥濘の地】がLV2になった!
【友達催眠】LV1が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV3になった!
【ダメージアップ】がLV2になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!
瀧川・大和
生き埋めになっている人らを助けに旧市庁舎へ行こう
悪鬼粉砕撃で【隔離眼】を発動すれば
邪魔になっている障害物となった瓦礫や
新しく崩れそうな部分の除去ができる筈だ
そうすれば救助が円滑に進むだろうし新しい被害が発生する可能性も抑えられるはず
万が一瓦礫が崩れてしまったり戦場での流れ弾等が当たりそうになったら
自分が盾となって人を庇うことも考えておくか
少なくとも自分は普通の人よりは身体の作りは頑丈だしな
自分も怪我はするかもしれないが、普通の人では助からない可能性だって高い
ならば身体を張ってでも助けよう
折角助かった命ならずっと大事にしたい筈だ
無堂・理央
戦力増強の為の蹂躙、必ず止める。
けど、その前に戦えない人達を助けないと!
ボクは【活性治癒】で怪我人を癒して回る。
傷口を綺麗にして包帯を巻いたり、折れた腕や足に近くから添え木を持ってきて添えたりと簡単な事なら出来るけど、本格治療は無理。
残留効果だけで治すより、処置してから残留効果で治す方が治りが早いだろうけど、こういう時は医療知識が無いのが悔しいな。
逆に一般人含めて、医療知識がある人が適切な処置をしてくれるなら、ボクは【活性治癒】を優先して役割分担できる。
移動が必要なら無双馬『クロフサ』に乗って全速力!
一応、クロフサと一緒に瓦礫を引いて取り除いたりも出来るけど、今回は癒す方を優先する。
アリスティア・セラフィール
飛翔の力で瓦礫の山となってしまった旧市庁舎に急ぎますわ。
旧市庁舎を上から観察して瓦礫の撤去を行う方が効率的に撤去できるようにサポートさせて頂きます。
救助者の姿が見えない時は時折作業を止めて要救助者の声などが聞こえないか確認する時間「サイレント・タイム」をもうけると良いそうです。他の方と協力して要救助者の声を聞き逃さないように確認しましょう。
瓦礫から救出され治療が済んだ方は、抱きかかえて結界術で保護したら全力で飛翔して東の町外れまでお運びしましょう。
水戸・宗一郎
本来ならばこう言った事は肉体労働担当の仕事だろうが……
時間が無い
手早く片付けるとしよう
力を発動するためには一時的に土地を私の所有地にしなければならないからな
今回はサービスだ
『人民の救助』を対価として
一時的に対象地を買い上げる事で契約としようではないか
瓦礫を対象に【イグジストハッキング】を仕掛け瓦礫のみを消滅させよう
私の土地にゴミなど不要だからな
『初めからそんなものは存在して居なかった』
さて、救護や搬送は専門の者に任せ
私は瓦礫を見つけて救助にでも行きそうな
手頃な市民に声をかけよう
貴様、救助作業に行くのだろう?
私が何とかしてやる
案内しろ
何、成功報酬はそのうちで良い
今は支払い所ではないだろうからな
羽先の黒い翼を翻して、旧市庁舎へと急いだアリスティア・セラフィール(シンフォニックウィザード・g02995)は、暫し言葉を失う。
少し開けた空間には、正しく山のように堆く積もった大量の瓦礫。
「この中に人が……っ!」
愕然として漂っていれば、何処からか飛んできた砲弾が翼を掠めた。
旧市庁舎を粉砕した敵のものだろう。そして件の建物が殆ど崩れ去った今、隠れようもない上空で羽撃いていれば、人の身程度であっても狙われるのは不思議でない。
「あまり高く飛んでいてはダメね」
上空からの捜索補助を半ば諦めて高度を下げれば、無双馬『クロフサ』に乗って駆けつけた無堂・理央(人間のカースブレイド・g00846)が、焦燥を滲ませながら言う。
「ねえ、あそこにいるの、人だよね!?」
理央が指し示した方に目を向ければ、其処には瓦礫の下から僅かに這い出るような形で伸びる腕が在った。
「間違いありません。すぐに助けましょう!」
言うが早いか、瀧川・大和(丁寧な物腰デーモン・g01693)は腕のそばに駆け寄っていく。
そのまま掘り起こしにかかるのかと思いきや――大和が見据える先で、瓦礫は忽然と消失し始めた。
目視した物品を一定量、異空間に隔離する【隔離眼】の力だ。
取り除いた事で新たな崩落が起こらないように気を払う必要はあるが、それでも両手や道具を用いて瓦礫を除去するよりは遥かに楽で、早いはず。
「……見えた!」
「このまま引っ張ろう、セラフィールさん!」
「ええ。いち、にの……」
さん、で息を合わせて袖を掴み、一気に引き上げる。
残骸の隙間からするりと抜け出てきたそれは、アリスティアと同じ年頃くらいに見える女性。
「大丈夫!? ボクたちの事わかる? どこか痛いところはない?」
矢継ぎ早に理央が質問を浴びせれば、女性は一度だけ小さく首を縦に振った。
朦朧としてはいるが意識はあるらしい。一方で、ざっと見た限り明らかな骨折や大量の出血などはなく、酷い怪我を負っているようには思えない。
「だったら……!」
理央が【活性治癒】を用いる事で、回復も早まるはずだ。
その狙いは奏功して、虚ろだった女性の目に光が戻る。彼女の負傷は24時間以内に完治する程度のものだったのだろう。瓦礫の下に埋もれていたのだと考えれば奇跡のようだが、それもすぐに助け出せるほどの浅い縁に居たからか。
「ボクたちの事、わかる?」
もう一度、今度はゆっくりと問いかければ、女性も理央を見て確りと頷いた。
「あなた達は……」
「それは後で説明します。他に巻き込まれた人がいないかどうか、分かりますか?」
大和の問いには暫しの間を置いて。
「……ああ、そう言えばラトーさんとお孫さんを見かけたわ……」
「そのラトー某は男か、女か?」
ひょいと割り込むようにして質問を重ねたのは、水戸・宗一郎(金の亡者・g00253)だ。
「令孫もだ。男か、女か。歳は」
「お爺さんよ。お孫さんも男の子で……ええと、ミハウ。そう、ミハウ君だわ……ああ、そんな、もしかして」
「大丈夫。後の事はボクたちに任せて」
質問を打ち切り、理央は女性の身柄をアリスティアへと預ける。
肉体が回復したとしても、良からぬ想像は精神を疲弊させるだろう。彼女を安心させてやる為にも、老爺と子供を早く見つけなければとは思うが……。
「……どうしよう。この中からどうやって見つけ出せばいいのかな?」
「姿が見えない時は、サイレント・タイムを設けると良いそうです」
「サイレント・タイム?」
首を傾げた理央に、女性を連れて離れようとしていたアリスティアが端的かつ丁寧に述べる。
「要救助者の声を聴くために、捜索の手を止めて静かな状態を作るのです。……もっとも、この戦場で完全なる静寂を作るのは困難でしょうけれど」
「そればかりは仕方ない。ともかく、やってみよう」
「なにしろ時間がないからな。こういった仕事は私の担当外だが、そうも言ってられんな」
大和に賛同を示した宗一郎も捜索に加わり、一行はそれぞれの間に距離を取りながら残骸を囲む。
「……!」
程なく聞こえたのは子供のすすり泣く声。
「こっちか……!」
またも大和が駆けて【隔離眼】での除去を試みる――が、しかし。
発掘作業はすぐに止まってしまった。
異空間に隔離できるのは基本として100kg。それ以上は効果を強めれば可能だが……今の大和の力では、基本値以上の物品を除ける事は出来そうにない。
それでも100kgもあるのなら、とは思いがちだが、建築物の残骸は想像以上に重い。石や煉瓦が中心であれば尚更だ。
「致し方あるまい。今回はサービスだ」
歯噛みする大和を退けて、今度は宗一郎が瓦礫に立ち向かう。
と言っても、彼も肉体労働の力技ではない。
まずは陰陽道に関わる力を用いて、人民の救助を対価に土地と購入契約を結ぶ。
不可思議な術だが、しかし彼自身に聞けばそのまま説明されるだろう。
故に、他者はただそういうものだと理解しておけばよいはずだ。況してや今のように、一刻を争う事態であるのならば。
「さて、私の土地となったのならば……其処にゴミなど不要だからな」
呟いた宗一郎はさらに力の行使を進め、パラドクス『イグジストハッキング』にて瓦礫の存在情報そのものを書き換える。
さすがに一括で全てを消しされる程、パラドクスは万能の術でもない。それでも【隔離眼】と同様に早くて楽なのは間違いないが。
「……! 居たぞ!」
掘り進める事暫く、器用に穿たれた穴の奥で見つかったのは身体を丸めているような少年。
手を伸ばしてやっと届くようなところだが、子供の重さなら引き上げられるだろう。
「今助けるからな」
努めて穏やかに、しかし頼れる相手であるようにと声掛けて、大和が伸ばした手に小さくも力強い感触が返る。
それを引っ張り上げてやれば――目を真っ赤に腫らした少年の救助は、一先ず無事に終わった。
「怖かったよね。もう大丈夫だからね」
理央が声掛けて治癒を施せば、やはり擦過傷などはすぐに消えていく。
子供の小さな体が幸いしたのか、少年にも一目で分かるほどの重大な怪我は見受けられない。
「さて、次だ」
助け出した後は他の者の仕事だと、宗一郎は耳を澄ます。
あと一人、老爺さえ見つければゴミ山ともおさらばになるのだが……。
「ええい、何処に居る」
瓦礫を渡り歩いては立ち止まり、聴覚に意識を集中させるが一向にそれらしい反応がない。
着実に過ぎていく時間と砲声がディアボロスたちを焦らせて――。
ふと、気付く。
戦闘の音が随分と小さくなっているではないか。
「ゾルダート撃退が上手くいったようですね」
自身も其方に向かおうとしていたアリスティアが呟く。
図らずも一斉に動いた事が良い方向に作用したのだろう。そして町を蹂躙する敵が打ち破られたのならば、救助活動の最中に襲撃を受けるかもしれないという不安も抱かずに済む。
「落ち着いて、どんな違和感でも逃さないように、もう一度やってみよう」
大和の呼び掛けを受けて、一行は今日一番の集中力を瓦礫の山へと注ぐ。
そこで蜘蛛の糸の如き、か細い奇跡を手繰り寄せる事が出来たのは偶然か。
ともすれば、音に囲まれて育ったであろう彼女の耳が肥えていたからか。
「……今、この辺りから何か……」
女性と子供から暫し離れて、アリスティアが瓦礫を登る。
そうして再度、耳をそばだてれば……聞こえてきたのは正しく虫の息と呼ぶべき、弱々しい息遣い。
「ここか! おい!」
「わかってます!」
呼びつけられた大和が再度【隔離眼】を用いて瓦礫の一部を取り払い、開いたところに宗一郎がひたすらパラドクスを打ち込んでいく。
「まったく、とんだ出血大サービスになってしまったではないか!」
語気こそ荒いが、しかし宗一郎の能力の大安売りがなければ事態はより困難を極めただろう。
かくして瓦礫を穿った一行は、足に酷い傷を負った老爺を助け出す。
「これじゃあ、ボクには治せないよ」
諦念ではなく、あくまでも現実的な判断を理央が下す。
添え木をして折れた足を固定するくらいなら出来たが、全治何ヶ月かという重傷に【活性治癒】を施した所で、今すぐに事態は解決しない。
いざ直面してみれば考えていた以上に悔しさが込み上げるが……思い悩むのは全てが終わってから。
理央は愛馬クロフサに老爺を乗せ、住人の避難先であろう東を目指す。
それを少年抱えたアリスティアが追って、大和はすっかり回復した女性を連れて後に続く。
避難民と合流さえ出来れば、其処には医術の心得がある者もいるだろう。助け出した三人も、見知った顔のところにまで届けられたなら、少しは気が楽になるはずだ。
「……さて」
仲間たちの背を見送り、一人残った宗一郎はしきりに辺りを見回しながら東へと進む。
救護や搬送には――言葉は悪いが興味などない。
それよりも為すべきは。
「……おい、貴様! 救助作業に行くのか?」
目の前を横切っていこうとした人影を呼び止め、宗一郎はやや尊大な態度で宣う。
「私が何とかしてやる、案内しろ。……何、報酬はそのうちで良い」
さすがに戦場の真っ只中で取り立てるほど鬼ではないのか。
ともあれ、宗一郎は己の信条に従って新たな要救助者の捜索へと向かった――が、人影が町の人でも義勇軍でもなく、南東方面の確認に向かうディアボロスだったのは、誤算であったかもしれない。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【隔離眼】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【飛翔】がLV2になった!
【無鍵空間】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【ドレイン】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV4になった!
鎌夜・神月
将を射んと欲すれば、だっけか?
相手してやる義理はねぇが、連中を一匹でも生かしとく意味はもっとねぇよな?
『念動力』で身体動作を補正、強化して突貫突撃、最速で一直線に戦場を駆ける
流れ弾だの炸裂弾だのは全部無視だ
土手っ腹に風穴開こうが爆破されて肉が弾け飛ぼうが関係ねぇ
殺す為の腕と駆ける為の足、敵を見る為の頭が残りゃそれで充分
護衛連中に接敵したら【怨技・惨月】で手近な奴からバラバラに『破壊』してやる
炸裂弾で反撃されようが攻撃の手は緩めねぇ
爆発や飛び散る破片ごと引き裂いて引導を渡してやる
それで体が動かなくなるってんなら『念動力』で無理くり自分の体動かしてでも殺し合うさ
一匹ずつ丁寧に、丹精込めて殺してやる
それは避難誘導や救助活動、ゾルダートの殲滅が未だ進行中の出来事。
黒い弾丸のようなものが戦地を駆け抜けて、あろうことか敵の本陣へと突っ込んだ。
指揮官『トルナード・ヘクセ』の護衛についている人間戦車型ゾルダート、トループス級『シュプールフート・クリーガー』の1機へと猛進したそれは、自らの両腕で以て機兵を捻り、折り、潰し、毟り、千切り、砕いて、瞬く間に鉄屑に変えてしまうと、興味が失せたかのように脇道へと放り捨てる。
途端に爆発が起こって黒々とした煙が棚引き、その者の姿を覆い隠す。
「なんだ……?」
あまりに唐突な事態に、トルナード・ヘクセも間抜けな声を漏らしてしまった。
あり得ないのだ。蹂躙する帝国軍から逃げ惑うならともかく、その流れに逆らって本陣まで辿り着き、あろうことか護衛の1機を屠るなど。
決して起こるはずがない。可能性がゼロならば計算の内に入れるはずもない。
故にトルナード・ヘクセは状況の迅速な把握も出来ず、黒煙の中から呪詛の如く響いた言葉を黙って聴くしかない。
「将を射んと欲すれば、だっけか?」
「……何……?」
辛うじて反応はしてみせるものの、それに対する答えはやって来ない。
ただ煙の晴れた其処には、漆黒に染まった狂気が一つ。
「相手してやる義理はねぇが、一匹でも生かしとく意味はもっとねぇよな?」
言うが早いか、鎌夜・神月(慇懃無礼千万・g01128)は再び護衛機兵へと牙を剥いた。
人の身からは想像もつかない剛力がシュプールフート・クリーガーを引き裂き、毟り潰す。
「……な、何を黙って眺めている!!」
叱り飛ばしてようやく護衛たちも己の任務を思い出したか、残る5機は指揮官を守る陣形を整えながら、次々に背砲より炸裂弾を撃ち放つ。
至近距離からの連射だ。如何に神月が人外極まりない力を見せていたとはいえ、戦車の砲撃を浴びてはひとたまりもないだろう。
「愚か者めが……よし、襲撃者の首を落とせ! その無様な面を晒して――」
「誰の首を落とすってんだよ、おい」
爆炎爆風の合間から再び漏れ聞こえる声。
然しものトルナード・ヘクセも言葉を失えば、焼け焦げた体から夥しい量の血を流すそれは、何か理外の力で無理やり立たされているような姿になりながら、歪な笑みを浮かべた。
「来いよ。一匹ずつ丁寧に、丹精込めて殺してやる」
「……もうよい、聞くな! 殺せ!」
苛立つトルナード・ヘクセの命を受けて、護衛機兵の背砲が再び爆音轟かせる――。
成功🔵🔵🔴
効果1【建造物分解】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
無堂・理央
避難先に届けたお爺さんの状況は気になるけど、今のボク達は敵を倒す事を優先すべきだよね。
無双馬『クロフサ』に乗って全力疾走で戦場に到着!
そのままの勢いで馬上槍によるランスチャージを敵の内、一体に叩き込む!
一撃見舞ったら、そのまま駆け抜けて【一撃離脱】。
敵との距離が取れたら突入方向を変えて再びランスチャージ&駆け抜け【一撃離脱】を繰り返してくよ。
無限軌道でボク達を轢こうなんて無理無理、クロフサの脚はすっごいんだから。
更に【泥濘の地】の力も借りて、敵の機動力を落とすよ。
自慢の足回りもこの地面の状態だと全力を発揮できないでしょ。
護衛部隊を相手する他の人とは可能な範囲で連携するよ。
桜木・満
心情:
あのサイボーグたちも、助けられりゃよかったんだがな。
このゾルダート達も犠牲者なのかもしれねぇが、見逃せば禍根を残すだけ。悪いがここで切る!
行動:
【飛翔】のエフェクトを利用し、引き続き空中戦
最初はトルナード・ヘクセへ攻撃するそぶりを見せて敵の注意を引き付けよう。これで地上のディアボロスが動きやすくなるといいんだが
敵の地上戦力を攻撃範囲にとらえたところで、軌跡を変えてインファントリー・ゾルダートへと急降下。ダイブアンドズームで、頭上から切りつける。
「終わらせてやる、戦火を忘れて眠るがいい!」
トルナード・へクセが割り込んでこないようにフライトドローンをけしかけて行動を妨害しておこう
戦火の爪痕生々しい街路を駆け抜ける二人。
片や、無双馬に跨って地を征く、無堂・理央(現代の騎兵?娘・g00846)。
片や、機械の翼翻して空を飛ぶ、桜木・満(桜花剣風・g00771)。
「――それで、そのご老人は大丈夫なのか?」
「ひとまず命に別状はなさそうだけど、でも……」
満の問いに答えて、理央は俄に振り返る。
ゾルダートとサイボーグ兵の一団による蹂躙が食い止められた今、怪我人を預けた避難民の集団にまで危険が及ぶ可能性は極めて低いだろう。
しかし、重傷を負った老体には医師の適切な治療と休息が不可欠。
そしてそれを与えるには、ゾルダートたちを町から一掃せねばなるまい。
「ボク達は少しでも早く敵をやっつけて、皆を安心させないとね」
「ああ」
頷いて、満もちらりと後ろを見やった。
斬り捨てたサイボーグ兵たちは既に遥か彼方だが、狂騒は未だ脳裏に焼き付いて離れない。
機械化ドイツ帝国を賛称しながら銃を向けてきた彼らの声と、正気を失った瞳。
(「……あいつらも助けられりゃよかったんだけどな……」)
「どうかした?」
「いや、何でもない」
満は払い除けるように頭を振って、前だけを見据える。
彼らを想うのであればこそ、今は弔いでなく戦いと向き合わねばならないのだ。
災いの源を断ち、犠牲の連鎖を食い止める。それが復讐者たちの――。
「……この音は
……!?」
一時の思慮を圧し潰す爆音。
僅かに遅れてきた熱風は、鉄と油と血の匂いをたっぷりと含んでいた。
「急いで、クロフサ!」
呼び掛けに応じた無双馬がさらに速度を上げる。
満もフライトデバイスを一杯に噴かせて、街路を翔け抜ける。
程なく見えたそれは襲撃者を払い除ける為か、無限軌道を唸らせながら方々に炸裂弾を撃ち込んでいた。
人間戦車型ゾルダート『シュプールフート・クリーガー』だ。数は七機と聞いていたが……。
「少し減ってる……? 誰かがやっつけたのかな」
「ならば遅れを取るわけにはいかない。オレたちも仕掛けるぜ!」
勇んだ満は刀を手に、敵群へと向かって……そのまま頭上を飛び越える。
護衛集団の人間戦車たちは揃って空を仰いだ。突破を許せば、指揮官『トルナード・ヘクセ』が襲われるかもしれないのだ。反応としては至極当然のものであった――が、しかし。
正しく機械のような応対をしてしまった事で、彼らは自らを狙う脅威に気付くのが遅れた。
「クロフサ! このまま突っ込めー!!」
槍構えて吼える理央を乗せて、無双馬クロフサが敵群へと突撃を掛ける。
馬と戦車、一見して勝敗は明らかであるようにも思えるが、それは常識という尺で測った場合。
理外の力にて闘うディアボロスのサーヴァントであれば、前脚の捌き一つでシュプールフート・クリーガーを蹴飛ばすのも容易い事だ。其処に理央の槍まで加われば――。
「人馬一体、一騎当千とは正にこの事だな!」
反転した満の感嘆と称賛を空から浴びつつ、理央とクロフサはランスチャージの一撃を食らわせた勢いのままに駆け抜けていく。
その姿を追うべく、戦車部隊も無限軌道を動かすが……つい今しがたまで石畳であったはずの其処が忽然と泥濘に変われば、敵意ばかりが空回りして。
「ボク達を轢こうなんて無理無理!」
嘲笑と等しい台詞を吐いた理央が、豪雨の下でも千里を走ろうかというクロフサの健脚で以て再突撃を仕掛けていく。
その様子は上空から眺めているだけでも実に痛快。
囮として敵の注意を惹けば地上で動きやすくなるだろうかと、そんな想像を軽々と上回って敵を蹂躙する理央とクロフサの戦いっぷりには称賛も尽きないだろう。
とはいえ、満も観戦武官ではなく戦いの当事者。先刻、自ら発した通り、遅れを取るわけにはいかない。
「一刀で終わらせてやる、戦火を忘れて眠るがいい!」
過る想いに叫べば、その昂りすらも焚べられたフライトデバイスが満を一気に敵の頭上へと運ぶ。
猛襲を察知したシュプールフート・クリーガーの無限軌道が藻掻くように唸った――が、時既に遅し。
大上段からの一太刀は鋼を物ともせずに叩き切り、両断された人間戦車は西瓜のように割れて、程なく大爆発を引き起こした。
炎と煙が戦場を一時覆って、其処から逃れるべく宙へと舞い戻った満は鼻を衝く異臭に眉を顰める。
街路を翔けている最中に嗅いだものと同じ――否、これは鉄と油だけの臭いだ。血の通っていない、冷酷な機械の臭い。
(「そんな身体に作り変えられてしまったお前たちも犠牲者なのかもしれねぇ。……だが」)
満は翼を一瞥して刀を握り直し、自らへと言い聞かせるように吼えた。
「見逃せば禍根を残すだけだ。悪いが……1つ残らず、ここで斬る!」
そして急降下を仕掛ければ、図ったように突撃して来た理央との狭間で軋んだシュプールフート・クリーガーの鋼身から、悲鳴の如き音が響いた。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【スーパーGPS】LV1が発生!
【飛翔】がLV3になった!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【アヴォイド】がLV2になった!
ノイン・クリーガー
[行動とか]
敵を【撹乱】すべく、トルナード・ヘクセに対し奇襲を仕掛ける。
仲間がシュプールフート・クリーガーとの戦闘を開始したら【光学迷彩】で偽装して【地形の利用】を行いながら【忍び足で】トルナード・ヘクセの下へ忍び寄る。
十分に接近したらパラドクス妨害を発動。【通信障害】を発生させて指揮系統を麻痺させることにより、護衛戦力と戦っている味方を支援する。
[心情とか]
これを成功させれば味方は有利になるはず。
相応の危険は伴うが、やるだけの価値はある。
エメリヒ・ラインヴェーヴァー
脚部の飛行装置起動、【飛翔】で敵サン周囲を旋回
残留効果2を全部使い、対象の殲滅を目標にするよ
オレは祖国を取り戻さなきゃならないんだ
アンタには消えて貰うよ!
アッチも空飛べるの?
ふーん、負けるもんか!【空中戦】
急襲、すれ違い様に右腕の雷爪で攻撃を加え【一撃離脱】【電撃使い】
相手のレーザーに捕まらないようにしなきゃだね
とにかくアッチの照準が合わないよう、攻撃が当たらないよう、飛び回る
あはは、そのやたらにあるケーブルを千切ってあげるねえ【機械知識】【両断】
相手はデカブツなんだ、ちょっとやそっとの衝撃じゃ効かないか
距離を取っている間は左腕部の電磁砲で削っていくよ【連射】【貫通撃】
轟く砲音、噴き上がる爆炎。
支配者の傲慢を具現化したようなそれは、しかし復讐者たちを怯え竦ませる凶器にはならない。
「……ッ!?」
センサー類が感知した異変に、トルナード・ヘクセが急上昇しながら赤い閃光を放つ。
石畳が紙のように容易く切り裂かれて。その脇に照らし出されたのは、薄汚れた黒。
「ほう、流石に雑魚共とは違うか」
インファントリー・ゾルダートを欺いた【光学迷彩】と隠密行動を駆使しても尚、奇襲を看破する実力。
アヴァタール級は伊達ではないらしい。
ノイン・クリーガー(ゴースト・g00915)は冷静に分析しつつ、間合いをとって仕切り直す。
本来なら、決して与えられるはずのない猶予と余裕だ。
それを得られたのは――先んじて護衛集団へと仕掛けた者たちのお陰か。
「ならば、俺はその小さな傷口から染み込む毒となろう」
「何をッ
……!!」
反応は出来ても理解は及ばない。
唯一つ確かなのは、黒ずくめの刺客の思うようにさせてはならないという事。
トルナード・ヘクセが再び閃光を放つ。まとわりつく羽虫を振り払おうとするかのような一撃は、僅かにノインの肩を焼いた。
けれども、ガスマスクの下、表情すら窺えぬ男はさらに一歩、二歩と幽鬼の如く踏み込んで。
「――パラドクス妨害開始」
刹那、機兵の指揮官がよろめいたのを、エメリヒ・ラインヴェーヴァー(黒雲・g00180)は見逃さない。
展開済みの脚部格納型飛行装置を出力全開として、護衛を飛び越え一気にトルナード・ヘクセへと肉薄する。
「オレは祖国を取り戻さなきゃならないんだ。アンタには消えて貰うよ!」
「チィッ、次から次へと
……!!」
苛立ちを隠そうともしない敵から三度、眩い赤光を戦場に迸った。
冷酷、冷徹、冷静であるべき機兵の長には似つかわしくない焦燥を孕んだ一撃。
故に翻って意味を成したか、閃光は急襲する復讐者の勢いを削いで。
有効打の軌道から俄に逸れてしまったエメリヒは一転、必殺を期した右腕でなく左掌から牽制の弾丸を撃ち放つ。
「そう簡単にはやらせてくれないか……!」
「ほざくなよ小僧ッ!」
或いはそれが本性か。荒ぶるトルナード・ヘクセの両眼が輝く度、空を赤い閃光が薙ぎ払う。
その照準に捉えられぬようにと回避運動を続ければ――旋回の最中、反攻の機会もおいそれとは見出せず、空中戦は双方の機動力に反して停滞の様相を呈す。
だが、機兵の敵はエメリヒだけではない。
またもや地上から炸裂する強力な妨害電波。続けて撃ち掛けられた数発の銃弾は脅威から程遠いが、鉛の礫の跳ねる音がトルナード・ヘクセにとって煩わしいものには違いなく。
「ええい、鬱陶しいッ――!」
空に向けられていた注意が、一瞬ばかり地表へと傾いた。
その瞬間、エメリヒは垂直に上昇して敵の視界から抜け出すと、狙い定めてトルナード・ヘクセに突っ込む。
右腕の雷爪『Blitzklinge』で繰り出すは正しく稲妻の如し。破壊告げる轟音鳴り響いたのは、眩い閃きが過ぎ去った後。
「ぐ、う……ッ!」
「何のケーブルか知らないけど千切れちゃったねぇ」
再び急上昇して相手を見下ろし、エメリヒは嘲るように笑って尋ねた。
「マ、やたらと生えてるし、構わないよね?」
「貴様……ッ!!」
歯ぎしりにも似た音に続いて赤光が迸る。
しかし、ひらりと身を翻した金瞳の青年には掠りもせず。尚も追ってくる光線から逃れようと石畳擦れ擦れまで高度を下げたエメリヒは、燕のように低く飛ぶ最中に振り返ってぼやく。
「さすがに仕留めきれなかったか」
「だが、犯した危険に見合うだけの成果があるはずだ」
すれ違いざま呟いたノインの影が、亡霊の如く揺らめいて失せる。
彼を捉える事もまた、激昂する今のトルナード・ヘクセには困難であろう。
そしてノインの言葉通り、指揮官の焦燥は、戦いそのものへと少なからず影響を及ぼしていく。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【通信障害】LV1が発生!
【飛翔】がLV4になった!
効果2【反撃アップ】がLV3になった!
瀧川・大和
大ボスの前の前座を倒して後顧の憂いを断つか
せっかくのネメシスモードだ。全力で相手しよう
サーヴァントのルビーにお願いして「ミニドラブレス」を使って貰おう
複数の敵に攻撃できるこういう状況でうってつけだ
更に、残ってる効果の【泥濘の地】を使えば相手の移動速度を落とす事が出来るだろう
そうなればただの当てやすい的だな。味方の攻撃も当て易くなるだろうし
襲われる確率も低く出来る
まだ大ボスがいるとはいえ、こっちを放って良いというものじゃないし
人々の平和な暮らしを奪った、という罪の分くらいは痛い目を見てもらわないとな。覚悟してもらおうか。
月下部・小雪
ま、周りの敵からやっつけていきます。放っておいて避難した人達のところに行ったら大変、です。
まずはなるべくトルナード・ヘクセから引き剥がして、邪魔されないようにします。
【泥濘の地】が使われるみたいだから、ボクも【飛翔】してお空から攻撃、です。
よ、呼び出した魔犬型デーモンが空を駆けて魔弾を発射、です。
横から魔弾を当ててキャタピラ兵を転がしちゃいます。
体当たり以外の攻撃はえいっと両手を前に突き出して魔力障壁を張って頑張って防ぎます。
※アドリブや連携も大歓迎
果たして指揮官を強襲した者の狙い通り、戦場の一端には予期せぬ混迷が訪れた。
トルナード・ヘクセの護衛を担う人間戦車型ゾルダート『シュプールフート・クリーガー』の残存機は、守るべき対象との間に大きな空白を作ってしまったのだ。
ディアボロスたちの急襲を許したばかりか、盾にすらなれないとは全く以て無能の極み――と、シュプールフート・クリーガーだけを詰る事は出来ないだろう。
元より地を這う彼らと、空を自由に駆け回る力を持った指揮官。相性の悪さが明白なところ、撹乱を狙って仕掛けてきたディアボロスにまんまと釣り出されて視野狭窄となり、自ら護衛集団から離れてしまったトルナード・ヘクセにも責はある。
ともあれ、今や護衛が護衛としての役割を完全に喪失してしまった事は確かだ。飛翔するディアボロスとの空中機動戦が繰り広げられる最中では、シュプールフート・クリーガーの大砲による援護もままならない。
「――だからこそ、今のうちに後顧の憂いを断つとするか」
精彩を欠く敵集団を見据えて、瀧川・大和(丁寧な物腰デーモン・g01693)は呟く。
「ほ、放っておいて避難した人達のところに行ったら大変、です」
彼方を案じながら、月下部・小雪(デーモンのデジタルサマナー・g00930)も小さな身体で果敢に立ちはだかる。
そんな二人を退けずして、指揮官の下へと駆けつけるなど夢のまた夢。
故に戦況打開への極めて現実的な策として、戦車部隊は二人に砲口を向けた――が、しかし。
「ルビー!」
大和が名を叫ぶや否や、現れたミニドラゴンが苛烈な竜の息吹を浴びせかける。
柴犬の成犬ほどの大きさだからと侮るなかれ。戦場を広く支配するように放たれたそれは集団戦にうってつけ。
人間戦車たちは瞬く間に包み込まれて重厚な装甲を失っていく。
とはいえ、即座に爆散したわけでもない。寡黙に耐えて反攻に転じられるのが機械の身体持つ兵士たちの強みだ。
背砲から飛び出した炸裂弾がルビーのブレスを切り裂くようにして迫る。直撃こそ免れても、爆ぜた砲弾の破片や石畳の欠片、それらを運ぶ猛烈な熱風の全てがパラドクスによって引き起こされたものであれば、ディアボロスといえど避けきれない。
大和は両腕で顔を庇いながら耐えて――脅威が完全に過ぎ去るのを待つまでもなく、さらなる策を密やかに打つ。
「自慢の無限軌道も無用の長物だな」
不敵に宣う大和に対して、シュプールフート・クリーガーは轢殺でも図るつもりか内燃機関を唸らせた。
不整地を軽々と走破する履帯が軋むような音と共に動き出して……しかし騒々しさとは裏腹に、人間戦車たちは敵との間合いを詰められない。
彼らの足元を侵していた泥濘は、一層深いものと化していたのだ。
「ど、どろどろ、ですね……」
息吹と砲弾の応酬から【飛翔】で逃れていた小雪は、宙空にて独り言つ。
戦場を蝕んだのは【泥濘の地】なる残留効果だ。ゾルダートやサイボーグ兵の蹂躙を鈍らせる仕掛けとして彼方の街路に放たれていたそれは、場を移してシュプールフート・クリーガーに対する攻撃の策となった。
これぞ逆説連鎖戦と呼ぶべき光景の一つだろう。そして空に在る限り、小雪には泥濘の影響などない。
「こ、ここから一気に、攻めちゃいます」
おずおずと囁いた小雪は傍らの魔犬型デーモンに命を下す。
その時を今か今かと待ち望んでいたのだろうか。解き放たれたそれは牙を剥き出して討つべき相手まで一息で迫ると、真横から魔弾を撃ちかけた。
無論、泥濘の上では満足な回避行動も取れない。次々に着弾する魔力に機兵の重く堅牢な身体は浮き上がり、あろうことか横転寸前という醜態を晒す。
それは小雪の狙い通りであって――しかし、其処から先は流石に予想だにしなかった光景か。
泥濘を尽く吹き飛ばさんばかりの勢いで片側の履帯を回した人型戦車の巨体が宙へと浮き上がる。
「え、え……ええっ」
地に降りて突進を受けるならともかく、宙空で轢殺の危機に瀕するなど。
だが、通常の概念での解釈が極めて困難なのが逆説連鎖戦。時空間も世界法則も書き換えて行われる常軌を逸した戦いの最中では、戦車が空へと昇るように走り出すのもままあるという他にない。
ただ敵軍が惜しむべきは、渾身の反撃も小雪を僅かに竦ませるだけだったという事か。
深い泥濘による加速不足と被弾での消耗が足を引っ張り、シュプールフート・クリーガーの鋼身は半端な高さで限界に至って地上へと墜ちていく。
「あ、危なかった、です……」
咄嗟に展げた魔力障壁の出番が訪れなかった事に、小雪はえいっと突き出していた腕と一緒に胸を撫で下ろす。
他方、大和は泥濘に突っ込んで無様な姿となった敵を冷ややかに見据えて。
「人々の平和な暮らしを奪った、という罪の分くらいは痛い目を見てもらわないとな。……覚悟してもらおうか」
鋼板一枚、螺子一本に至るまで焼き払わんと、ミニドラゴンのルビーに再び攻撃命令を下した。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【浮遊】LV1が発生!
【友達催眠】がLV2になった!
効果2【能力値アップ】がLV5になった!
【ダメージアップ】がLV4になった!
コロン・ルヴィン
レイング
※アドリブ歓迎
まとめ役、とだけあってしっかりしてたね、あの子。
さて救出もきっと大丈夫だろうしそろそろ元凶の方へだね。
まずはお供さんからかな。
ここで逃しちゃうと次の被害が出てしまうからね。
絶対に逃がさないわ。
一体ずつ確実に。
スズと挟み討ちにしてサンドストームで相手を捕まえて確実に倒す。
終わったら逃げようとしている敵を優先的に見つけて確実に倒していく。
もし苦戦しているような子がいれば応援にも向かうわ。
水戸・宗一郎
おかしい
一般人捜索の筈が
段々と戦場へと近づいているではないか
おい貴様!
一体私をどこまで歩かせるつもりだ!
もう敵が目の前ではないか!
ん?
ラーメン屋の所で見かけた若造がおるではないか
ええい
仕方が無い!
この貸しは高くつくぞ!
追撃されそうな仲間を庇い立てよう
まだ敵が残っているのだ
この状態で新宿の岸辺へ帰られてはたまらんからな
そして
貴様の攻撃でスーツが汚れたではないか!
良いだろう
追加購入だ
貴様等の排除を対価としてこの地を買い上げる
人の土地に変な壁を立てるな!
【イグジストハッキング】で敵の作った壁を利用して敵を押し潰そう
質量もおまけだ
重くしておいてやろう
全く
こうなっては一度責任者を殴らねば気が済まんぞ!
「それでまとめ役の子が結構しっかりしてて――」
「おい! おかしいではないか!」
水戸・宗一郎(金の亡者・g00253)の訴えに、コロン・ルヴィン(砂風鈴・g04379)は目を丸くする。
いきなり声を荒らげる理由など在っただろうか。
思い当たる節もなく、かといって話の続きを紡ぐにも至らず。
そのまま目を瞬かせるばかりのコロンに、宗一郎はすぐそばを指差しながら言った。
「一体どこまで歩かせるつもりなのかと思えば、段々と戦場に近づいて……いや、近づいているというか、もう目の前ではないか!」
「え、うん。そりゃそうよ。避難は終わって、逃げ遅れた人も居なかったんだから」
後は元凶をどうにかするだけだとは、言わずとも知れたこと。
どっこい、少しばかり思案に耽っていた宗一郎には言わねば伝わらなかったのだ。
或いは言っても右から左だったかもしれないが、さておき。
「まずはお供さんからだね。逃げられちゃったら何もかも台無しになりかねないし」
「待て待て! このまま進むなら――」
別料金だぞ、と続くはずだった声は爆炎と熱風に飲み込まれてしまった。
もはや後戻りは出来ない。二人が立っているところでさえ戦場であって、先んじたディアボロスとの応酬を辛くも乗り越えたシュプールフート・クリーガーの生き残りが、背負う大砲を此方にも向けようとしている。
「ええい、仕方がない! この貸しは高くつくぞ!」
さも渋々と、嫌々ながら事に臨むのだと全身で訴える宗一郎。
対するコロンは――何も答えなかった。今や彼女の意識は小煩いおじさんでなく、討つべき敵にのみ注がれている。
「スズ、行くわよ」
呼びかけて踏み出せば、眉毛の可愛らしい黒柴が追い越して先を行く。
戦場が泥濘と化していても構いやしない。犬型サーヴァントは背中に砲を備えているが、無限軌道で動く鈍重な戦車とは違って機敏な動き。
「泥なんて遊び場みたいなものよね」
軽快に進む相棒へと笑みを向けて、コロン自身は泥濘に踏み込むギリギリのラインから敵を狙う。
繰り出すは鋼も削り取る砂嵐。その力を溜める最中、猟犬は戦車たちの合間を縫うように越えていく。
いつ牙を剥くのか、その砲を撃ち放つのかと警戒をしないわけにもいかず、ただでさえ泥濘に沈んで動きの鈍い人間戦車たちは視線ばかりを振って。
碌な回避行動も行えないのなら、それは屠ってくれと言っているようなもの。
「スズ!」
合図として名を呼べば、相棒はすぐさま戦車たちから距離を取った。
これで巻き込む事はない。全力を遺憾なく発揮できる。
「何処へも逃さないわよ!」
強固な意志を言葉にすれば、それは瞬く間に砂嵐の形を成して人間戦車を巻き込んだ。
それそのものが立てる音の中から、金属を削ぐ耳障りな音が聞こえて――。
「伏せろ!」
一喝するや否や、宗一郎がコロンの前へと躍り出た。
程なく砂嵐の向こうから砲弾が迫り、間近で炸裂したそれに聴覚が一時奪われて。
「何よ、結構しぶといのね……っ」
コロンは晴れた視界へと吐き捨てる。
仕留めたかと思った敵は、急造したトーチカのような遮蔽物を盾として生き残ったらしい。
それでも残骸と見紛う程に傷ついて、勝敗は誰に目にも明らかであったが……。
「……やってくれたな、貴様!」
コロン以上に怒り心頭なのは、彼女を庇って爆風やら破片やらを浴びた宗一郎である。
「スーツが汚れたではないか! 一体どうしてくれるんだ! 貴様をスクラップとして売り払ってもクリーニング代にすらならんぞ!」
先程までの「戦いも已む無し」という雰囲気は砂嵐に浚われたか。
恫喝じみた罵声を浴びせる男に、コロンも何と呼びかけるべきか。思案の最中に駆けてきたスズは微かに首を振ったように見えたが、それも背後での出来事ならば宗一郎の預かり知らぬところ。
「……ふん。この私を相手にだんまり決め込んだくらいでどうにかなると思っているのか、屑鉄め」
打てど響かずの人間戦車を罵って、宗一郎は煤けたスーツを気休め程度に払うとまた吼える。
「良いだろう、追加購入だ!」
対象は戦場たるこの地。対価は愚かなゾルダートの排除。
即座に陰陽術での契約を済ませてしまう辺りに只者でない感も滲むが――しかし。
「人 の 土 地 に 変 な 壁 を 立 て る な !」
渾身の叫びは偏屈な地主のようで。
けれども、宗一郎の怒りは確実な戦果となって現れた。砂嵐にも抗った遮蔽物が、忽然と崩れ去って人間戦車を飲み込んでいく。
旧市庁舎と比べれば大した崩落ではないが、何よりも重い金の恨みが上乗せされていれば、瓦礫とは思えないほどの荷重に潰された戦車は真の屑鉄に。
それでも、気を晴らすには至らないのか。
「一度責任者を殴らねば気が済まんぞ!」
鼻息荒い宗一郎は瓦礫を乗り越えて――その先に見覚えのある姿を見つけた。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【土壌改良】がLV2になった!
【無鍵空間】がLV2になった!
効果2【ロストエナジー】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV6になった!
鎌夜・神月
あぁ?
アンタどっかであった事、……あるな(g00253)
んじゃ、そっちは頼んだ
俺はお高くとまったお嬢さんを落としに行くんでな
『念動力』を使って敵を『グラップル』で掴み叩き落とす
護衛連中との戦いでちと傷が深いが、この痛みが生み出す敵を殺してぇって衝動が『念動力』を強化してくれる
逃がさねぇよ
落としたら敵の顔をさらに『念動力』を使って『グラップル』で掴む
視線一つで焼き切れるっつっても土台の顔を固定されちまえばその攻撃範囲は狭まっちまうだろ
それである程度の攻撃は予測可能なハズ
なら護衛の時と同じだ
体は『念動力』で動かして反撃されようが【怨技・惨月】で殺し合うぜ
殺す為の腕、敵を見る為の頭が残りゃそれで充分
水戸・宗一郎
はぁ、はぁ……
待て貴様(g01128)
人を置いてさっさと行くんじゃあない!
私とてここの責任者には一つ挨拶でもしてやらんと気が済まんのだぞ!
大体私は職人や作家に恩を売って
工芸品や美術品を仕入れる為の交渉をしに来たんだ
それを遠くまで連れまわされた上にだ
挙句戦闘に巻き込まれて
お気に入りのスーツも汚されたと来た
部下の失態は上司が責任を取れ!
私がここに至るまで何もしてないと思っているのか?
ここまでの土地は私が買い占めてある
すなわち
ここまでの地脈が全て使えるという事だ
私の怒りを思い知るがいい!
ついでにサービスだ!
『念動力』とやらに地脈の力も上乗せしてやろう
今日はもう疲れた
さっさと帰って飯でも食いに行くぞ
「待て、貴様!」
「あぁ?」
気怠げに答えた鎌夜・神月(慇懃無礼千万・g01128)へと、水戸・宗一郎(金の亡者・g00253)は無遠慮な視線を浴びせてから続ける。
「やはりラーメン屋の所で見かけた若造ではないか。酷い有様だな」
「んだよアンタ、どっかであった事……あるか」
「だからラーメン屋だ。見てくれだけでなく本当に死にかけか?」
「うるせぇ」
それ以上交わす言葉などないと言わんばかりに、神月は血だらけの腕を振る。
護衛との戦いで深手は負ったが、それでも“お高くとまったお嬢さん”を落とさずには引き下がれない。
一方で、宗一郎にも「ではさようなら」といかない理由がある。
「さてはアレと話をつけにいくつもりだな? だったら人を置いて行こうとするんじゃない。私とて挨拶の一つでもかましてやらんと気が済まんのだ!」
「知るか。……ああ、いや」
とかく騒がしい宗一郎に対して何処までもつれない神月ではあったが、言葉以上のものを用いて退ける必要はなく。
僅かな思案の末、彼は俄に足を止めると短く告げた。
「んじゃ、頼んだ」
「は? お、おい!」
何を、と問う暇もなく消えた神月に、宗一郎の心奥で渦巻いていたものが再び噴き出す。
「……そもそも私はな! 職人や作家に恩を売って、工芸品や美術品を仕入れる為の交渉をしに来たんだぞ! それを遠くまで連れまわされた挙句、戦闘に巻き込まれてお気に入りのスーツもこのザマだ! 一体、誰が責任を取ってくれるんだ!」
うるせぇ、とは返ってこない。そのぞんざいな応対すらない事が、宗一郎の憤りに拍車をかけて。
見据えるのは此度の元凶、宙空で応酬繰り広げるトルナード・ヘクセ。
「部下の失態は! 上司が責任を取れ!」
猛然と駆ける最中にも叫べば、然しもの機兵もその姿に気付く。
「次から次へと湧いて出る、虫のような連中が……ッ!」
「――その虫みてぇな奴らに護衛も潰されたんだろ。もう忘れたのか?」
忽然と響いた声は真後ろから。
宗一郎の咆哮を囮にして迫った神月が機兵にしがみつき、鋼鉄の巨躯を地表に落とさんと力を込める。
手負いと思えない膂力の源は、全身を襲う痛みと、真新しい傷から滴る血。
「これがある限り途切れねぇのさ、殺してぇって衝動がな……!」
「戯言をッ!」
苛立ちを露わにして、トルナード・ヘクセは自ら落下速度を速めた。
このままでは諸共、地表に衝突して大惨事――と、僅かに思案した神月を見やる赤い瞳。
ぐるりと梟のように回転したトルナード・ヘクセの頭が此方を向いている。
「ッ――!?」
思うより早く肉体が動く。何か見えざる力で押されるように神月は首を傾けて。
それでも組み付きを解かなかった以上は避けきれず。
鎖骨の辺りから背中に向かって迸った赤光は、肉も血も骨も尽く焼いて突き抜ける。
常人ならば、間違いなくその痛みで死に至るほどの一撃だが……。
「……逃がさねぇよ」
もはや感覚など無い四肢を念動力で無理やり縛り付けて、神月は『殺す』という衝動を重りに地表へと墜ちる。
そこまで強硬だとは思わなかっただろう。まともに叩きつけられたトルナード・ヘクセは、神月に幾つかの部品を毟られながら弾んで、また唐突に静止する。
「今度は……頭も動かせねぇだろ……?」
台詞とは裏腹に息も絶え絶えの男を、何故か引き剥がす事が出来ない。
まるで理解の及ばないそれは、機械科学で解明しきれない超常の力、念動力。
「ええい、何なのだ貴様――」
「……うるせぇな……」
衝動から来る思念一つで口も封じたところで、神月も二の句は継げずに押し黙る。
そうして生まれたほんの僅かな静寂を引き裂いたのは、怒る金の亡者。
「貴様の念動力とやらを補強した私の地脈の力は、サービスという事にしといてやろう!」
ともすれば、それは彼なりの「よくやった」という賛辞かもしれない。
尊大に言い放った宗一郎は機兵へと近づいていく。無論、固定された頭の正面には立たないようにして。
「……ん? なんだその面は。まさか私が何の考えもなしにやってきたとでも思ったのか?」
自らが優位である事を殊更強調するかのように宣えば、抗議とばかりにドリルが唸る。
しかし神月が押さえている限り、それが起こした突風すらも脅しにはならない。
「冥土の土産に教えてやろう。私はここに至るまでの土地を全て買い占めてきた。……それは即ち、ここに至るまでの全ての地脈を使えるという事だ!」
言いながら宗一郎が手にしたのは、札束。
新宿島では殆ど無価値と等しいそれも、彼の手にかかれば戦場で額面以上の価値を持つ。
「私の怒りを思い知るがいい!!」
渾身の叫びと共に片腕を振り抜く。
正に言葉の通り、横っ面を“札束で引っ叩かれた”機兵の長は、自身の力で飛ぶよりも遥かに高く、そして速く、錐揉みするように宙を舞った。
札束で叩くとはそういう事ではない――と、そんな無粋を神月が述べるはずはない。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【建造物分解】がLV2になった!
【書物解読】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV5になった!
【命中アップ】がLV3になった!
終夜・香宵
あれが今回のボスですか。いかにも悪そうな外見ですねー。怖いですー。(怖くない)
そんな怖い人?はささっとこの世からご退場願いましょうねー。
銃も持っていますが、メインは近接攻撃ですので敵が飛行している間は牽制程度に発砲しつつ【殺気】を消したり必要以上に放ったりながら【残像】が出るほどの速さで動いたり止まったりして少しでも敵の気を散らせます。
攻撃を受けるのはまずそうですので顔の向きには特に気を付けて動きたいですね。
敵が下りてきたら一気に接近して死刑失光です。町、人、生活を破壊された人々の怒り、この一撃に籠めましょう。
コロン・ルヴィン
※アドリブ&他の方との連携歓迎
無事に合流して欲しいってお願いされちゃったからね。
絶対に生き延びてもう一度彼らに顔を見せなきゃね。
二度とこんなことが出来ないように絶対に逃さないんだから。
スズと一緒に退路を防ぐように陣取って戦いに挑むわ。
もし退路を他の方が先に絶っていたのであればこれ以上いろいろな物とか壊されないようにちょっと意識する。
復興とか大変でしょうしね。ちょっとでも負担を減らしてあげたいな。
絶対にここから進ませないんだから。
私はサンドストームで相手を細かくスズにはハウンドキャノンで的確に撃ち抜いてもらう。
桜木・満
心情
残りは指揮官只一人。素っ首とって、この騒ぎはお仕舞いだ。
……本当の歴史なら、テメェももっとマシな生き方ができたのかもな。
行動
フライトデバイスで空を飛び空中戦を仕掛ける。
敵の攻撃の起点は目。敵の顔の向きに注視しながら、【飛翔】と【浮遊】で速度に緩急をつけて【突撃】と【一撃離脱】で【斬撃】、照準をつけさせないようにしよう。
隙を見つけたら、突撃して居合抜刀・雷光で一刀両断といこう。
「本当に仕留めなきゃいけねぇのはこいつじゃねぇ。こんな術と歴史を作りやがった連中だ」
「この大戦で流された血も涙も。そのあとの平和な時代も、何もかも踏みにじりやがって。必ず取り戻してやる」
誰も傷つけあうことのない歴史を。
「あれが今回のボスですか」
「ええ、そのはずだけど……」
言葉を交わす終夜・香宵(人間のバウンサー・g00869)とコロン・ルヴィン(砂風鈴・g04379)の前を、此度の元凶たる機兵の長が錐揉みするように飛んでいく。
戦いも大詰めとなれば、切った張ったの殺伐とした光景が繰り広げるばかりかと思いきや、今しがた見た通りの有様。流石にそのまま瓦礫へと突っ込んだりはしなかったが、宙空で態勢を立て直した敵からは想像していた程の脅威を感じられない。
「いかにも悪そうな外見で怖いですねー」
「……いや、あのね」
香宵の言に真が含まれていないのは容易く読み解けたが、それを指摘する意味もなく。
コロンは吐息一つ零して気持ちを入れ直す。
(「無事に合流してほしいって、そうお願いされちゃったからね」)
必ず生き延びて彼らに――あの青年にもう一度顔を見せるのだと思えば、機兵の長トルナード・ヘクセがどれほどの醜態を晒していようとも軽んじてはならない。
「絶対に逃さないんだから」
「ああ」
桜木・満(桜花剣風・g00771)も強く頷く。
「残りは指揮官只一人。素っ首とって、この騒ぎはお仕舞いだ」
「そうですねー。怖い人……人? ……ともかく、ささっとこの世からご退場願いましょうねー」
どうにも締まりのないように感じられる香宵の雰囲気は、しかし迸る殺気で一気に塗り替えられた。
同じディアボロスでさえもぞくりとするそれが不意に消えたかと思えば、今度は気配そのものが消え失せて。
けれども、視界に捉えた香宵の姿は――時に幾つもの影を残しながら地を滑り、また恐ろしい気を放つ。
「クソッ、検知器がイカれたか
……!?」
明滅するような殺気と変幻自在の残像から、トルナード・ヘクセが自らの損傷を疑うのは無理もない。
もっとも、気を払うべき相手は香宵ばかりでないのだが――悪戯のように撃ち掛けられる銃撃が、ただでさえ冷静さを欠いている機兵の思考をさらに掻き乱す。
「つくづく鬱陶しい奴め……貴様の玩具など通用せん!」
「あらあらー、それじゃあどうしましょうー」
ふふ、と笑って間合いを取る妖しげな女を追いかけるように、トルナード・ヘクセが赤光を奔らせる。
当たればひとたまりもないだろう。それを重々承知しているからこそ、傍目には戦場の緊張感と縁遠く見える香宵も神経を研ぎ澄まして敵を観察し、閃光から逃れ続ける。
陽動じみた振る舞いだとは落ち着いて考えれば解りそうなものだが……追い詰められた時に思考が鈍るのは、生身の人も機械の兵士も同じという事か。
(「だったら遠慮なく、その隙を突くわ」)
護衛集団の時と同じようにスズを走らせて、コロンは風塵の魔術を行使すべく集中する。
砂嵐で削り取るのは機兵の長だけだ。周辺一帯には破壊された建物ばかりだが、それでも町の人々を思えば、戦いで無用な被害を生み出す訳にはいかない。
「ここで必ず仕留めるんだから……!」
編むように折り重ねて纏めた力を一点に向けて、呟いた刹那に相棒が砲口を唸らせた。
「ええい、今度は何だッ!」
いつ終わるとも知れぬ香宵との追いかけっこに勤しんでいた敵が、一瞬ばかり宙空で止まる。
その瞬間に魔力を解き放てば――荒ぶる砂嵐は柱の如く聳えて留まり、トルナード・ヘクセの嘆きすらも巻き込んで弄ぶ。
(「……凄まじいの一言に尽きるな」)
制御された自然災害と呼ぶべき渦に感嘆を捧げた満は、刃を収めたままで暫し時を待つ。
赤光の射程や発射間隔は既に把握した。どのようにして敵に挑むのかも当然決まっている。
一太刀。一刀の下に斬り捨てるのだ。望まぬ形で与えられた翼を用いて空を駆け、あり得ざる歴史に生まれた邪な翼を断つ。それこそが己に課せられた使命であれば。
(「……本当の歴史なら、テメェももっとマシな生き方ができたのかもな」)
思考の縁に、ふと滲み出る想い。
ともすれば刃を鈍らせるものにもなりかねないそれを、翼に焚べて戦意と変えるのは今日何度目か。
「本当に仕留めなきゃいけねぇのはテメェじゃねぇ。こんな術と歴史を作りやがった連中だ」
なればこそ。
「オレはテメェを斬る! 斬って、その先で歴史を弄んだ奴らを残らず斬り捨てる!」
気合と共に突撃を掛ければ、図ったように嵐が止んだ。
宙空で力なく佇む敵と視線が交わる。けれど赤く輝いたと感じる前に急制動を掛けた身体が沈み、閃光は何もない空だけを照らしながら過ぎ去って。
「貰ったぞ!」
再び加速しながら刃に手をかけて、すれ違いざまに抜き打つ斬撃は正しく紫電一閃、雷光の如く。
致命的な損傷に飛行する力も失ったか、トルナード・ヘクセは地表へと墜ちていく。
それを待ちわびていたのは、地上を駆け回っていた彼女以外に在るまい。
「言い残すことは……無いですね」
懺悔も許さぬとばかりに断じた香宵は、左手に携えていた斧を両手で構え直す。
刃には苦しむ間すら与えないという慈悲めいた想いと、町を蹂躙された人々の怒りが入り混じって。
それが程なく作り上げた闇、光の一欠片すらも残さぬとばかりに深く暗い色を纏いながら、振り下ろされた断罪の一撃は――機兵の長が幾度となく赤光撃ち放った頭部を、粉微塵に砕いた。
……かくして、ポーランド西部の町一つを舞台にした戦いは終幕を迎える。
敵軍による襲撃が始まった後からの介入を強いられる状況ではあったが、ディアボロスたちの奮闘によって起こり得る最悪は回避され、事態は最善へと導かれた。逃げ果せた人々はささやかな平穏を取り戻すはずだ。
もっとも、それが一時のものでしかない事は明らかだ。
機械化ドイツ帝国が在る限り、事態の根本的な解決には至らない。
「この大戦で流された血も涙も。そのあとの平和な時代も、何もかも踏みにじりやがって。必ず取り戻してやる」
そして、誰も傷つけあうことのない歴史を。
固く誓った満のように、帝国への怒りを抱く多くのディアボロスが決意を新たにしただろう。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【建造物分解】がLV3になった!
【土壌改良】がLV3になった!
【飛翔】がLV5になった!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!
【ロストエナジー】がLV3になった!
【反撃アップ】がLV4になった!