必中の刃(作者 都築京
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#平安鬼妖地獄変  #地獄変第四幕『将門公の大怨霊』  #地獄変 

 白紙の巻物と、それを手にして震える男の顔色の悪さはたいへん良い勝負であるように思えた。
 じりじりと灯明の火が揺れる音すら彼の焦燥のように聞こえる。お許しください、となかば涙に曇った声は侮蔑の視線で一度遮られた。
「どうか、どうかお許しを。決して、麿のせいでは……これは麿のせいではないのでごじゃる」
「別に謝る必要はありませんよ」
 必死に許しを請う貴族の男へ、ねえ伊尹さん、と嘲笑もあらわに女は首をかたむけた。
「あなたたちはただ責任をとってくれればそれで良い。古来よりあなたたちのような人間はそのために存在するのでしょう?」
 為政者の立場を揶揄する物言いに、伊尹――もとい藤原伊尹はもはや白を通り越して青い顔色のまま何も言えないでいる。
 彼女の言う『責任をとる』とはそれそのまま、己が命でもってあがなうことを言うのだから。
「良いことを思いつきました。地獄変の第四幕はこうしましょう」
 ひどく不吉な物言いに、藤原伊尹は女の足元へ一縷の望みをかけて縋る。地獄変とはこの世にあらわれる地獄そのもの。人を人とも思わぬ鬼畜の所業の具現だ。
「お慈悲を。どうかお慈悲をごじゃる! これは、決して麿のせいでは……!!」
「『あなたたち貴族を無残に呪殺する』。新しい贄を捧げるための良い案でしょう?」

●必中の刃
 これまでの攻略旅団の方針にも助けられ、一連の『地獄変』に関わる事件は第三幕まで無事に解決できている。このディヴィジョンにおけるクロノヴェーダの計画を大きく狂わせられている事は想像にかたくない。
 しかしここに至り、一連の事件の黒幕と思しきジェネラル級クロノヴェーダがこれまでの失点を一気に挽回するためなのだろう、日本三大怨霊とも称される平将門の存在を持ち出してきた。
「それが『平将門の怨霊により貴族が惨殺される』って事件なんだけど」
 ううん、と濃緑色のボールペン、そして手帳を手に岩崎・礼音(Diagrammar・g03225)は考えこむ。
「一応平和なはずの都で身分ある貴族が惨殺、しかも犯人は人間じゃなく妖怪……ってちょっとまずいよね」
 目的が単なる殺害ではなく、むしろ京の都の住人の恐怖を煽るのが狙いだということは、すぐに想像がつくはずだ。ついてはクロノヴェーダから逃げ惑う貴族を救出し、撃退してほしいと礼音は声に力をこめる。
「クロノヴェーダは都の人々に貴族の姿を見せつけるのが目的みたいで、直接どうこうしようとする事はないみたい」
 しかし彼等を保護しようとしたなら話は別。その時は遠慮なく呪殺しにかかるため、その心づもりが必要だ。

 まずは襲われている貴族を救出して安全を確保、そののちクロノヴェーダを撃退できれば事件は解決する。しかし戦闘中に貴族を呪殺しようとする呪い――心臓を貫かんと転移してくる刀、という邪魔が入るはずだ。
 そしてこの呪詛の刃が一番厄介なのは、文字通りにディアボロスが盾になって身代わりになるしか方法がない、という点に尽きる。
「しかもぴったり密着しなきゃ防げないって距離で転移してくるから、遠巻きに囲って……とかそういう方法じゃ守れない。面倒だね」
 ところがこのたびの標的は、藤原氏をはじめとした名門の出の当主であることが多い。
 見るからに怖ろしげなクロノヴェーダからの救出と保護、呪詛の刃から身を挺してかばうといった行動により彼等からの信頼を得られれば、貴族しか知り得ない情報を手に入れられる可能性はある。
 ちなみに保護された貴族は、攻略旅団の提案で再建された廃村に一時的に匿われることになるだろう。都の中ではいつ殺されるかわかったものではない。村までの移動も有志が事件解決後に行ってくれるはずだ。

「これまで自分達がさんざん利用してきた貴族を生贄にするとか……クロノヴェーダが卑劣だって事はわかってるけど、逆に考えれば貴族を切り捨てなきゃいけなくなるほど追い詰められている、とも考えられるよね」
 なによりも、一切が不明とされてきた断片の王。
 それが誰なのかという謎に迫る機会が、今や開かれつつあるのかもしれない。

 まだ陽も昇ったばかりの早朝。宮中への出仕の途上であった貴族の牛車へ立ちはだかるものがあった。
 それが見るからに怖ろしげな怪物ならまだしも、倒せばよいと奮起した従者はいたかもしれない。あるいは助けを求めれば、という者もいただろう。
 しかしそれが奇怪な『自然現象』、ひいては凶兆としか思えないものであったなら話は別だ。
 突然悲鳴をあげてどこかへ走り去ってしまった牛飼い童の気配を探し、牛車の御簾を上げる。
 貴族が見たものは、ぽかりと道の真ん中に空いた暗い穴。しかも道に空いているのではなく、宙空を切り取るように浮かんでいる。たっぷり三呼吸分の間があり、貴族はどっと冷たい汗が噴き出すのを自覚した。
 ――『太陽が喰われる』。日食という現象は平安の世では動乱や飢饉の予兆あるいは凶兆そのものと信じられてきた。実際に空に掛かる太陽が喰われているわけではないが、それを端的に表した現象に貴族が慄かないわけがない。
 漆黒の闇の中、ゆうらりと尾をそよがせたやはり漆黒の狼の気配がする。
 陽を喰らい、そのつぎは、と想像した貴族は悲鳴をあげて牛車を飛び出した。悲鳴に気付いた道々の門が開かれるものの、半狂乱になって逃げる貴族の背後、虚ろにあぎとを開けた闇を見てすぐに閉じられてしまう。
「誰か! 誰か、……誰か麿を救うでおじゃる!!」
 悲痛な絶叫もまるごと呑み込むように、昏い闇は徐々に距離を詰めていた。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【傀儡】
1
周囲に、ディアボロスのみが操作できる傀儡の糸を出現させる。この糸を操作する事で「効果LV×1体」の通常の生物の体を操ることが出来る。
【飛翔】
1
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【未来予測】
2
周囲が、ディアボロスが通常の視界に加えて「効果LV×1秒」先までの未来を同時に見ることのできる世界に変わる。
【神速反応】
1
周囲が、ディアボロスの反応速度が上昇する世界に変わる。他の行動を行わず集中している間、反応に必要な時間が「効果LVごとに半減」する。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【光学迷彩】
1
隠れたディアボロスは発見困難という世界法則を発生させる。隠れたディアボロスが環境に合った迷彩模様で覆われ、発見される確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【壁歩き】
1
周囲が、ディアボロスが平らな壁や天井を地上と変わらない速度で歩行できる世界に変わる。手をつないだ「効果LV×1人」までの対象にも効果を及ぼせる。
【活性治癒】
2
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【液体錬成】
1
周囲の通常の液体が、ディアボロスが望めば、8時間冷暗所で安置すると「効果LV×10倍」の量に増殖するようになる。
【建造物分解】
1
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。

効果2

【命中アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV3 / 【反撃アップ】LV3 / 【ドレイン】LV3 / 【ダブル】LV1

●マスターより

都築京
こんにちは、都築京です。よろしくお願いいたします。

●作戦の流れについて
OPに記載の通り、逃げ惑う貴族を救出・保護ののち、貴族を襲っていたクロノヴェーダを撃退という流れです。
①をクリアの後、②~③の執筆をそれぞれ個別に進めてまいります。
呪詛の刃については、「②の成功数を達成するとそれ以降現れなくなる」という扱いです。ちなみにディアボロスに突き刺さったあと、呪詛の刃は戦闘終了後に消滅しますのでご安心下さい。

それでは皆様のプレイング、お待ちしております。
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このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


葛葉・狐狛
出立前に神田明神にお参り。
御霊が穏やかであることを願ってから、トレインに乗車。

移動中に【歴史知識】も使いつつ、面々と連携の手筈を整えるよ。

現着したら【追跡】【看破】【偵察】【オーラ操作】あたりで騒動の起きてる場所を特定。必要なら町人にも聞きつつ、速やかに向かうさ。

対象を見つけたら速やかに近付いて、安心させるよ。

「ここであんたに死なれると、ゆっくり眠れない御方が居るもんでね」

護ってやるから、大人しくしてておくれ。とお面だけは笑みを浮かべたまま言って、他の一般人が居ない場所に誘導。
【結界術】【高速詠唱】で身を護る準備を始めるよ。

後でケガするのは分かってるから【活性治癒】も発現しておくね。


大和・恭弥
今までの所業を思えば因果応報……。
ただ、本来の運命を思うと、ここで殺されるのを見過ごすのは寝覚めが悪いな。

怖がられぬよう、必要なら服装は相応のものに
【未来予測】と晴彦の五感を頼りに速やかに貴族のいる場所へ
発見次第、闇―迫る敵と貴族の間へ立ちはだかる
同時に「藍雪花染」を抜刀し、封じている力を解放。
妖刀の呪詛による結界を展開しておき、哀露草染の技で足止めの援護を
仲間が貴族を落ち着かせる時間を作る手助けをする
試しに動かせそうなら牛車を使って「闇」との距離を離してみる

俺たちが来た理由は貴方を殺そうとしている奴だ。
貴方を災いから退けるまでは、俺たちは逃げやしない。
だから、指示に従ってくれ。

アドリブ連携可


 平安京における貴族達のこれまでの所業を思えば因果応報、とも大和・恭弥(追憶のカースブレイド・g04509)は思わないでもない。
 しかし彼等はそもそもクロノヴェーダの正史への介入さえなければ、こうして妖怪と隣り合わせの都に暮らすこともなければ寿命を全うできるはずだったのだ。正史からかけ離れた死をよしとする道理はないし、第一殺害されることがわかっていて看過するのは寝覚めが悪すぎる。
 それにいい加減、ディアボロスとしては一連の地獄変に終止符を打ちたいところだ。
「改竄歴史とは言えこんな風に引っ張り出されるなんて公も本意じゃないだろうし、御霊が穏やかであるといいけれど」
「さて、どうでしょうね。むしろクロノヴェーダに祟りの矛先が向けば八方丸くおさまるのでは?」
「それも悪くはないけど、せっかく現代で手厚く祀られているんだ。公が目覚める時が来るなら怨霊ではなく、東京の守護神としてであってほしいよ」
 寝た子を叩き起こすようなものだと葛葉・狐狛(狐憑き・g00840)は思っている。それに平穏無事に祀られたままなのが、最良であるのは間違いない。
 まだ春浅く空気も冷えた早朝。曙色の空を裂くような悲鳴が築地塀の向こうから響く。
 悲鳴を聞きつけ何事かと門から顔を出す舎人や、これから出仕する主人の牛車を整えていたのであろう牛飼童の顔がいくつも見えた。人のよさそうな顔立ちのものを選び、狐狛は近付く。
「おお、怖ろしい。いずこの御方が襲われているのやら」
「突然で失礼。あの悲鳴、どの方角から聞こえてきたのかな」
「向こうから、だんだんこちらに近付いてきていると思いますよ」
 ずいぶん薹の立った牛飼童が北東の方角を指さし、まさしくその先からもう一度悲鳴が響いた。牛飼童の証言通り、さきほどより近い。
 こういう時に碁盤の目に整備された平安京は迷いにくくてありがたい、と狐狛は思う。恭弥と共に悲鳴の聞こえる方角へ走っていくと、ちょうど広小路に出たところでまろびつつ逃げてくる貴族風の男に出くわした。やや先行していた晴彦が何かに向かって耳を後ろに伏せ、甲高い声をあげる。
 晴彦、と名を呼びかけた恭弥の目に、ぽかりと宙空を切り取った闇が見えた。輪郭がじわりと滲み、膨張するように大きくなる。
「あああぁ、そこな若人、助けてたもれ、助けてたもれ!!」
 いや大きくなったのではなく、急速に近付いているのだ――そう気付いて恭弥は藍雪花染を抜いた。
「護ってやるから、大人しくしてておくれ。ここであんたに死なれちゃゆっくり眠れない御方がいるもんでね」
「褒美はいくらでも取らせる! 麿は死にたくないでおじゃる、死にたくないでおじゃる!!」
 わかったから少し黙っててくれると嬉しいかな、と腹の中で呟いて、狐狛は泥まみれの貴族を助け起こしクロノヴェーダから距離を取る。急ぎ九曜紋を掲げて貴族を含めた護りを固めつつ、肩越しに恭弥を振り返った。
「俺たちが来たのは、貴方を殺そうとしている奴を止めるためだ」
 全身で警戒し甲高い声で鳴き続ける晴彦をいったん下がらせ、恭弥はクロノヴェーダを足止めするために対峙したまま背後の貴族へ言い募る。
「貴方を災いから退けるまで、俺たちは逃げやしない。だから、ひとまず彼の指示に従ってくれ」
「そういう事。ひとまず安全な場所まで行くからついて来て」
 妖刀を構え、一定の間合いを保ったまま恭弥は後退した。ゆらゆらと浮遊しながら虚ろに口を開けている闇の中からは、どこか餓狼の気配がしている。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【活性治癒】LV1が発生!
【未来予測】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!

大和・恭弥
獣の気配だな。飢えているのか……
喰わせれば治まるってものじゃなさそうだ。
確かに、このままじゃ怨霊を目覚めさせるだけかもな…
ともかく、この人を護るのが今の俺たちの役割だ。

続けて、闇から貴族が十分距離を取ったのを確認して声かけ

俺たちに褒美は必要ありません。
ただ、この災いは自らが招いたものでもあると自省してほしい
そして、助けた暁には俺たちに協力して頂きたい、それだけです。

どこから来るかわからない呪詛の刃だけど、
心構えくらいはしておきたい。【未来予測】を重ね残しておこう
慎重に状況を見つつ、貴族と距離を詰められたら最善だな

アドリブ歓迎


「確かに、このままじゃ怨霊を目覚めさせるだけかもな……」
 あの虚無の中に潜む獣は存外飢えているらしい。さりとてこの貴族を喰わせても治まらないだろう、と大和・恭弥(追憶のカースブレイド・g04509)は目元を険しくした。なにしろ太陽を喰らうのだ、多少肉付きの良い男ひとりで満ちる胃袋なら、今の時分はねぐらでたっぷり朝寝を貪っているはず。
「俺たちに金銭やら何やらは必要ありませんよ」
 ひとまず大妖怪ヒノミからある程度の距離を稼ぐことを優先させ、声をかけられる状況になってから、恭弥は怯える貴族へ向き直った。
「ただ、この災いは貴方がたがみずから招いた結果でもあると自省してほしい」
「な、何じゃと」
 やっと目の前の脅威から逃れられたと思ったところで、この発言。
「そして、助けた暁には俺たちに協力して頂きたい。貴方に望む褒美はそれだけです」
 数瞬ほど貴族の男は顔を赤くさせながら言葉に詰まり、何度も何かを怒鳴りかけ、そして最後に呑み込んだ。窮境を救ってもらったという事実は一応恩義に感じているらしい。
「わ、わかった、わかった、それでよい! とにかく今は朕を守るでおじゃる!!」
 すでに半泣きの貴族がその場へへたりこむ。
 小路の曲がり角、その向こうからじりじりと真っ暗な真円が近付いていた。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【未来予測】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!

葛葉・狐狛
外れぬ刃とはまた、面倒な呪術だよねぇ。

保護したお貴族様に身を寄せ、体を張って呪詛の刃を防ぐとするよ。
集中して【双鬼招来】の【神速反応】でより確実なガード。
自分の負傷は【活性治癒】で都度回復。
痛みは【肉体改造】も合わせて歯を食いしばる。

ご同道の面々がいれば、一人の負担が軽くなるように交代していくよ。
人数が少なけりゃ、もう一度新宿の海に打ち上げられるのも覚悟の上でムリをする。
お貴族様は気に入らないが、連中の思うようにさせるのはもっと気に入らない。

「あんたのコトはむしろキライだけど、あんたの命で繋がれる未来のために生きろ」

吐血しようが、面の隙間から血を流してでも踏ん張ってやる。


大和・恭弥
必ず呪殺しにかかる呪いの刀……か。
皮肉を言うわけじゃないけれど、こんなことに巻き込まれなければ刀で貫かれる恐怖とは無縁だった、よな。
身代わりに呪いを受けるのは容易いよ。
元々、この身は呪いに侵されているようなものだから。

どこから来るかわからずとも、来ることはわかってる。
その刹那を【未来予測】で読み、仲間と連携して隙間なく庇おう。
あまりに貴族が慄いて身体がずれないよう【傀儡】で引き寄せておく
痛みは呼吸と結界で耐えて、仲間の残留効果も借りる
晴彦に手伝ってもらい、可能な限り軌道を逸らしてもみよう

…っ、大丈夫。そのまま貴方は護られていればいいんです。
先ほど約束したこと、忘れないでください。

アドリブ連携可


ヒュー・ハルウェル
なるほど…呪詛を防ぐには頭数が必要、ということですな。
…なに、元々老い先短い命でございます。大して変わりはございますまい。

スフィンクスの『お嬢様』には、しばし隠れておいていただきましょう。
不満そうですが…あちらの方に密着することになりますぞ?
ふふふ、ご理解いただけて何よりでございます。

【未来予測】と…自分ならどの方向から襲撃するかを想定して、刃が当たる寸前、翼で藤原様を包み込んで庇います。念の為、【活性治癒】も使わせていただきましょう。

尊いお方のために我が身を盾にするなど当然です。私は執事ですゆえ。
…しかし、私が心からお仕えするのは、お嬢様ただ一人にございます。あしからず。

(アドリブ連携歓迎)


クラマ・レインコート
「実力者なれど人格者ならず」だな。
所業を思えば自らの手で縊り殺しているところだ。
いっそこのまま見捨て…って、わけにはいかねぇか。
改心の可能性があるならな。

自らの傷を厭わずに、尊き命を守る、自己犠牲と正義の心を宿した男。…の演技。

庇うため密着し、天衣無縫の『八艘飛び』にて抱えながら跳ぶ。
必中は分かり切っているため「庇うため貴族と共に跳び回っているが、回避しきれずクラマだけボロボロになっていく様」を、貴族自らのせいだと分からせるよう見せつける
なお[未来予測]と[活性治癒]を使いつつ防御、ひたすら身体の死にづらい場所で刃を受ける

命の価値は分かったかよ。
自分の命の価値も、他者の命の価値も。

アドリブ歓迎


 それにしても『実力者なれど人格者ならず』とはよく言ったものだと、クラマ・レインコート(雨合羽の運び屋・g04916)は思う。これまでの所業を思えばいっそ縊り殺してしまいたい所であるし、いっそこのまま見せしめに見捨てるのも良いかもしれない、とすら考える。
「助けると約束したのは俺じゃないが改心の可能性があるなら、な」
 腰が抜けたらしい貴族の男へ手を差し出したクラマは、視界の端に実体を伴わない銀色の軌跡を見た。
 反射的にそのまま貴族の男を抱きこんで地面を蹴る。どう考えてもまともな速度ではない銀色の終端が自身の背へ到達することを知り、クラマは息を詰めた。
 視界が明滅するほどの激痛。同時に肺腑から鉄の匂いがする熱い塊が喉元へせりあがった。
「ひいいっ」
 左背へ深々と白刃を突き立てたまま、クラマは貴族の男をなんとか庇いきって着地する。鮮血を吐いて膝をついたクラマから離れようと、泣き叫びながら膝でいざって行く貴族の男。
 それでいい、と妙に冷静なままクラマは口元を覆う。自らの傷もいとわず尊き命を守る、自己犠牲と正義の心を宿した男の姿がその目に焼き付けばそれでいい。その証拠に、目の前まで差し迫った明確な命の危険から、――地面に突っ伏しかけつつ血に噎せるクラマから、貴族の男は真っ青になったまま食い入るように目を逸らせないでいるのだから。
 どこか泰然とその様子を見やり、モノクル姿のドラゴニアンが灰青色の毛並みのスフィンクスを大切に大切に撫でた。
「ついに始まったようですな。お嬢様には、しばしあちらに隠れていただきましょうか」
 老いたドラゴニアン、ヒュー・ハルウェル(猫狂いの老執事・g04975)は何か不満げに抗議する長毛種のスフィンクスを、そのままやや離れた所へ運び丁重に降ろす。必ず対象を貫く呪いの刃に大事な雇用主――と彼が信じるスフィンクス『お嬢様』――を晒すわけにはいかない、という事のようだ。
「何やら不満そうですが、なにぶんあちらの方に密着することになりますゆえ」
 どうかご理解頂ければ何よりと恭しく一礼したヒューに、『お嬢様』はついと顎をそらして板塀の小さな隙間から向こう側へ潜りこんでいってしまった。勝手にしろ、という事なのかもしれない。
「この場合不法侵入という事には……まあ後ほどお迎えがてらご挨拶すれば良いでしょう、緊急事態ですので」
 そう言いのけるわりには全く急ぐ様子のない老ドラゴニアンが、怯えきって地面へうずくまる貴族の男を囲む輪へ加わった。
「まったく、外れぬ刃とはまた、面倒な呪術だよねぇ」
「……別に皮肉のつもりはないけど、こんな事件さえ起こらなければ、刀で貫かれる恐怖なんてものとは無縁だった、よな」
 正直なところ葛葉・狐狛(狐憑き・g00840)はあまりお貴族様のことは気に入らないし、大和・恭弥(追憶のカースブレイド・g04509)にとっても心証のよい相手ではない。まして護りきるためには命の危険はないものの文字通り身を呈さねばならないとくれば、何故自分達が、と言いたくなるのも無理はなかった。
「じ、呪術とはなんじゃ、まだ何か起こるのか!」
 妙な所でばかり耳が冴えているのはお約束なのか、聞き捨てならぬという風情で貴族が喚き散らす。いくら平安時代の出仕時刻は早朝なのが決まりだったとは言え、野放図に騒ぎたててよい理由にはならない。
 ……と、恭弥が見下ろす自分の手の平へ赤い飛沫が散った。しかしたなごころに濡れた感触は何もなく、何か、胸下あたりから突き出している白く光る、細い――。
 晴彦、と咄嗟に呼びかけたはずの声はまともな声にはならず、激痛に遮られ篭もった呻きにしかならない。確かに未来予測は二秒先の未来を見せてくれたが、存外できる事はないのだなと恭弥は痛感した。もっとも、だからと言って無益だったとは決してならないが。貫かれることを知っているのと貫かれる瞬間を知っているのでは、似ているが大きな違いがある。
「なぜ麿だけがこんな目に遭う! 麿は何もしておらぬ!!」
 続けて恭弥が凶刃の標的となったことを知り貴族の男が喚き立てた。……考えてみれば、近くに晴彦を寄せられなかったのは、結果的に正解だったかもしれない。もし晴彦で逸らせられたものなら、ディアボロスが逸らせられないはずがない。逸らすことができない、とはそういう事なのだ。
「あー……まあ何もしなかった事そのものが罪ってのは時々あるよねぇ……」
 誰の事とは言わないけど、と狐狛が仮面の下で呟いた台詞だけは聞こえなかったらしく、貴族の男は首を傾げている。そういうところですよ、と恭弥は痛みを堪えつつ思ったとか思わなかったとか。
「なに、ご心配なさらずとも元々老い先短い命でございます。たとえここで貴き身分の御方のため身を差し出したとて、たいして変わりはございますまい」
「よ、よう申したそこな者! 今の言葉しかと覚え置くぞ、必ず麿を守るのじゃぞ!!」
「しかしまあ、私が心からお仕えするのはお嬢様ただお一人にございますが」
 麿が猫に負けるとでも言うつもりでおじゃるか、とヒュー個人に限定せずとも答えは明白なことを言いだした貴族に、誰もがもはや溜息しか出ない。狐面の存在を狐狛はこんな時いつも感謝する。
「あんたのコトは好きどころかむしろキライの部類だけど、あんたの命で繋がれる未来があるんだ」
「あんたが命の価値を理解するならなお良いがな。……自分のばかりじゃない、他者の命の価値もだ」
 活性治癒のおかげで痛みや出血が和らいできたのか、口元を拭ったクラマが警戒の輪に加わった。
 さて自分ならばどこから襲撃するだろうかと考え、ヒューは自らの翼を広げてみた。自分の予測とこの事件の黒幕の行動が一致しているはずだという確信はないが、翼のおかげで他より広い範囲を守れるという事は間違いなく利点のはず。無事な、残る二名で前後を塞ぎ、翼でさらに隙を埋めるように広げた所でたてつづけに白刃が飛来した。
「もう嫌じゃ、麿はもう帰る! 屋敷へ帰るのじゃ、麿を帰すのじゃあああ」
「……うるせえ黙れ! お前を庇って傷ついたんだぞ、よく見やがれ!」
 クラマの一喝で涙も引っ込んだのか、貴族の男はしゃくりあげつつも無言になった。
 やはり一人の負担が軽くなるようそれぞれが庇う判断は正解だった、と狐狛は自らの腹部に突き立った抜き身の刀――のように見える呪詛の刃、を見下ろしながら考える。見た通り軽傷ではないが、さりとてこの後に待つ大妖怪と対峙できなくなるほどの深手でもない。とは言えこれは間違いなく一回が限度だろう。
 呪詛の刃が何回襲来するのかは誰にもわからない。しかし、さらに追い込むつもりならば五回目が来ていなければおかしいと思える頃合いになっても五本目は現れなかった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【神速反応】LV1が発生!
【傀儡】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
【壁歩き】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV2が発生!
【反撃アップ】LV2が発生!

葛葉・狐狛
狐と狼。相性はこちらが不利かも知れないが、負けるつもりはさらさらないんでね。

はてさて新年度で忙しいのか、こちらの増援はどうにも少なそうだ。
だからと言って、それっぽっちで諦めるならこんな生き方はしてないんでね。

相手の【太陽は堕ちて】に【光使い】で九曜の中心に太白を置いた【九曜紋来寇】で真っ向勝負。

毎日、陽は沈むさ。だけど、太陽は何度でも蘇る。
オレ達の奪われた歴史も、蘇ってでも取り戻さないとならないんでね。
こんな所で立ち止まっては居られない。

お貴族様を背中に庇いつつ、傷は【活性治癒】で無理矢理治して、一歩も退かずに戦うよ。
増援がいりゃ連携するし、居なけりゃ居ないで戦い続けるさ。


ヒュー・ハルウェル
痛たた…いくら【活性治癒】があるとは言え、あれは些か堪えましたな。
皆様ご無事でしょうか?

ふむ、太陽を呑む獣ですか。
どこかの神話のように鍋を叩いてどうにかなれば良いのですが、そうも行かないのでしょう。

ならば……撃鉄を叩くしかありませんな。
『Sesam öffne dich!』

(古めかしい革製のトランクから、大量の銃器が展開されます。)

さぁ大妖怪殿。どうぞ、お好きなだけお召し上がりくださいませ。

(他の方が攻撃しやすいよう、撹乱や妨害、貴族を攻撃させないことに重点を置いて行動します。)

おや?余所見とは少々無粋ですな。目の前の相手に集中なさいませ。


(アドリブ・連携歓迎です)


大和・恭弥
……過ぎ去りましたか。
(仲間からの声掛けがあれば)
俺は【活性治癒】をお借りして、なんとか。ですが、休むわけにはいかなさそうです。
……獣の気配が近づいてる。

貴族は再び出来る限りの距離に遠ざけておく。
藍雪花染を抜刀すると同時に呪詛の力を解放させて、結界術を張りながらも、地を蹴って獣に急接近する。

勢いをつけて真正面から肉薄――するように見せ、重力に逆らい、飛翔を利用して背面へ。
その他残留効果や光学迷彩も使い、パラドクスを発動して攻撃する。
数舜あれば、斬ることはできる……!
獣の肉体だけじゃなく、太陽をも呑み込んだ闇ごと、真一文字に刀を振り抜く。

これは京の人々のためだ。脅かす妖怪は、ここで抹消してやる。


クラマ・レインコート
舌打ち一つして、貴族を突き飛ばすように逃がす。
隠れてろ。今度はてめぇを守ってる余裕なんざねぇ。

闇の中という地の利を利用したいが、日食の元には効果は薄いだろう。
キョウヤたちの援護ができれば十分と中・遠距離から撃ちまくる。

よォ…お前さん腹減ってんだってな。
腹いっぱいにしてやるよ!食わせるのは弾丸のフルコースだがな!
隙を見せれば[暗殺]の要領で気配を消しつつ近づき、零距離での口の中の太陽目掛けて弾丸を叩き込む。
火を吐き出そうものなら、[早業]で顎を蹴り上げて口を無理矢理閉じさせる。

今日みたいにてめぇの人生の中で都合良くホトケ様が現れるとは思うなよ。
…ここが分水嶺だ。今日この日を、ゆめゆめ忘れるなよ。


ベアトリス・リュウフワ
仮にも”貴族”を名乗るのならば、喚き立てるのをお止めなさい。
貴方の身を護ってくださったディアボロスの方々にお礼の言葉すら紡がぬのなら、せめて、堂々としていなさいな。
わたくしのように。

さて、某が太陽を喰らうのならば、わたくしは戦場に”月”を抱きましょう。
つめたき世界では長期戦は不利。
ならば繊月の【弾幕】を仕掛けることによって、息すらつかせぬ猛攻を仕掛けますわ。
研ぎ澄まされた【斬撃】の刃弾を敵の移動先に置くようにして繰り出し、回避の択を絞らせます。

如何程の機動力かは存じ上げませんが、しっかり【観察】し視界に収めます。
僅かにでも怯んだ瞬間に、【号令】と共に一層の力を込めた一撃を放ちましょう。


 ……獣の気配がする、と大和・恭弥(追憶のカースブレイド・g04509)は我に返る。
「過ぎ去りましたか」
「あ痛たた……いくら頑丈なディアボロスとは言え、これは些か堪えますな。皆様ご無事でしょうか」
 ディアボロスなうえ治癒能力が増幅されている状態なので、見た目はなかなかの惨状だが特に問題はないはずだ。無事を確かめるヒュー・ハルウェル(猫狂いの老執事・g04975)の声に無言のまま短く目礼を返し、葛葉・狐狛(狐憑き・g00840)とクラマ・レインコート(雨合羽の運び屋・g04916)はあらためて不気味に宙を漂う暗がりへ向き直る。
「俺は、なんとか。ですが、――」
 じり、と恭弥の踵が鳴った。
 ゆっくりと、しかし確実にディアボロス達を追い詰めようと日食の具現が近付いてくる。
「ふむ、太陽を呑む獣ですか。……どこかの神話のように鍋でも叩いてどうにかなれば良いのですが、クロノヴェーダともなればそうも行かんのでしょうな」
 古今東西、太陽を呑んだり噛んだりする天の獣の神話は数多いものだ。思わず鍋底を叩いてクロノヴェーダを追い立てる図を想像してしまい、恭弥は苦笑する。
「それで済んだら鍋様々でお役御免ですよ。昔の人々の想像力にはあらためて恐れ入る」
「実に、然り。ならば撃鉄を叩くしかありませんな」
 いよいよ大妖怪との勝負という気配を悟ってか、見捨てないでくれ、と言わんばかりに貴族の男がクラマのコートの裾を掴んだ。
「いいから今は隠れてろ」
 ややうるさげに言い捨てたクラマの様子を察しているのか察したくないのか、貴族の男が喚きちらす。
「頼む、後生じゃ! どうか見捨てるのだけは、この通り、どうか」
 みっともなく濡れた顔は、もう鼻水のせいか涙のせいなのかもわからない。とりあえず静かに大人しくしていてくれればよいものを、事あるごといちいち騒ぎ立ててすがりついて来るので面倒で仕方なかった。
「てめぇを守ってる余裕なんざねぇんだ」
「仮にも貴族を名乗るのならば、事ここに及んで喚きたてるのはおやめなさい」
 見かねたベアトリス・リュウフワ(強欲と傲慢のミルフィーユ・g04591)が鋭く一喝する。年端も行かぬ少女相手に、いかにも仕立ての良い着物に身を包んだ大の大人がびくびくと身を縮こまらせるのは何とも情けない限りだった。
「礼の言葉すら紡がぬのならば、せめて堂々としているのが民の上に立つ身としての務めでしょう。わたくしのように」
 毅然と言い放ち大妖怪ヒノミへ向き合った背中を、貴族の男はただ見ているしかできない。
 いっそ傲然として顎を上げ、ベアトリスは唇の両端をつりあげた。
「――さて? そちらが太陽を喰らうのなら、わたくしは月でも抱くとしましょう。この戦場に」
 その機動力がいかほどかは不明だが、すでに負傷者を抱えている以上は長期戦に持ち込まれると不利だ。ここはただひとり十全な自分が速攻を仕掛けることで相手の隙を誘い、狙い撃ってもらうのが上策だろう。
「この剣から逃げられるとでも?」
 黒檀の直剣を掲げ、ベアトリスは笑みを強めた。
 剣を振ることで衝撃波を放つ『繊月の剣』、それを続けざまに放つことで弾幕とする。手数が増せば反撃も同じだけ食らうことになるがとうに織り込み済みだった。
 ベアトリスが衝撃波による弾幕を張ったのを見て取り、ヒューはおもむろに使い込まれた革製のトランクを取り出す。ダイヤル錠を揃え、そのまま大妖怪の正面へと据えた。さしずめディナーのメインディッシュをサーブするかのように。
「そういやお前さん、大層な空きっ腹らしいじゃねえか」
 息を殺していたクラマが立て膝へ腕を乗せ、さらにその上へ銃身を置きクロノヴェーダへ照準を合わせた。
「それは良きこと。空腹は最高のスパイスと申しますゆえ。さあ、大妖怪殿――」
 軽く一礼したヒューの単眼鏡がきらりと輝く。
「どうぞお好きなだけお召し上がり下さいませ」
 Sesam öffne dich(開けゴマ)!、の一声でトランクの蓋が跳ね上がり膨大な数の銃火器がヒューの周囲へ展開した。
「ここで腹一杯にしてやるよ、弾丸のフルコースでな!」
 ベアトリスの弾幕をゆうに越える、いや数倍、数十倍もの弾丸がクロノヴェーダへ襲いかかる。獣の咆哮が轟き、ぎりぎりまで研ぎ澄まされた殺意が闇の中から噴出した。どこかまだらで歪な、血糊にも見紛うほどの赤い文様を豊かな毛皮へ飾った巨大な黒狼が躍り出る。
 しかし、パラドクスの特性を充分に引き出したクラマの銃撃と、無数とも思えるヒューの銃器から吐き出される弾丸は圧倒的だった。咆哮すらねじ伏せるかと思われるほどの発砲音。
 狼と狐、相性だけで言えば圧倒的不利かもしれない。それでも狐狛は負けるつもりなどさらさらないし、まして相性の悪さに何かを諦めるつもりも毛頭無かった。大体そんなに物分かりがよい性根ならばこんな生き方などしていない。
「毎日、陽は沈むだろうさ」
 それこそ、毎日西へ没して世界は闇に閉ざされる。
 しかし太陽は何度でも東から蘇るし、朝が必ず巡ってくる。諦めずにいられれば、奪われた歴史もいつか取り戻せる日が来るだろう。否、どこかのいつかの話などではない、必ずこの手で手繰り寄せ、確実に巡ってくる未来として信じている。
「オレ達から奪われた歴史も、朝日になって蘇ってくる」
 こんな所で立ち止まってはいられない。豪雨にも似た弾丸の嵐を、餓狼が背負う虚無の真円が弾除けが如くぶわりと急速に膨張し飲み下した。物理的な肉体ではないのか、怒りに震えて吼え猛る餓狼に弾痕は確認できない。
「だからこんな、つまらない理由で立ち止まっちゃいられないのさ」
 狐面の下でうすく笑った狐狛が掲げる指先、そこへぽつりと白く丸く、円が浮き上がる。白い円は次々と増え、中心へ太白を置いた九曜紋となった。『九曜紋来寇』、5名のうち最も高いダメージを叩き出すパラドクスを展開し真っ向勝負を挑む構えを見せた狐狛に向かって、絶対零度にも近い冷気が吹き荒れる。氷、雪、霜。触れた肌にはもはや冷たさではなく痛みにしかならない。
 背後に貴族を庇い続けながらも、一歩も退かない狐狛。さらに一段強さを増した暴風に、なぜかその一瞬、狐狛は喉の奥で笑った。そこまでが彼の誘い。
 真円の虚無の中心から吹きつける風、さらにその中央を、激流をすりぬけるように。
 これ以上はない狙い済ました瞬間に、最後の一手である恭弥は藍雪花染を抜き放ち大きく歩を踏み込んだ。血濡れた狼の牙を飛翔で躱し、その背後に降り立つ。 
 獣の肉体だけではない、太陽を呑み込んだ闇ごと、うつくしく真一文字に切り裂いた軌跡。
 決してディアボロス一人だけでは成しえない、鮮やかとしか表現しようのない一太刀だった。剃刀で軽く撫でたような細い細い太刀筋をこじあけるように衝撃波が、無数弾丸が降り注ぎ、ダメ押しとばかりに九曜紋が輝きを増す。
 ぷつり、物理的な肉体を持たない餓狼の毛皮に小指の先ほどの明るい点が浮かんだ。
 光点のように見えるそれは沸騰するように爆発的な勢いで数を増し、そこでようやく恭弥はその点が『弾痕』であることに気付く。弾痕は狼のみならず、獣が背後に背負った虚無の真円にも広がり、そして最後には闇をすべて光へ塗り替えるに至った。
 九曜紋を支える狐狛の腕が、噴出し続けていた暴風を押し返すように前へ伸ばされる。濡れた牙をならべる狼のあぎとがこれ以上はないほど大きく開き、光がはじけた。黒い円から吹きつけていた風が一転し、吐き出した雪や氷を吸い込みながらみるみる縮小する。
 先ほどまで狼と円のかたちをした光の塊はあっという間に拳大になり、米粒大になり、跡形もなく消滅した。
 さすがに恭弥も数瞬ほど動けない。消えた、と誰からともなく呟きがこぼれ、ようやく勝利を実感する。ふと狐狛が見下ろせば、そこにあったはずの呪詛の刃も跡形もなく消滅していた。
「ところで、……今日みたいに都合よくホトケ様が現れると思うなよ」
 恐らくここが彼等にとっての分水嶺だ、とクラマは考えている。
 ゆめゆめ忘れるな、今日という日に起こったすべてのことを。
「神は祟るがホトケは慈悲しか与えねぇ。――が、念仏すら忘れた奴まで地獄からすくいあげるほど、ホトケの腕は長くはないしでかくもねぇんだ」
 それを忘れるな、と言わんばかりに言い捨てたクラマの足元、貴族の男は命を拾った安堵のあまりむせび泣きつつ座り込んでいる。いつのまにやら烏帽子はへしゃげて汚れ、沓はどこかで落としてきたようで襪(しとうず)すら片方なくなっていた。
 牛車は近くを探せばまだあるかもしれないが、それを引く従者はとうに逃げてしまっているので、どうしたものかと狐狛は天を仰ぐ。
「誰かのお守りはしばらく勘弁、かね……」
 廃墟の村まで連れて行ってくれる有志が早く現れてほしい、と願うしかなかった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【活性治癒】がLV2になった!
【建造物分解】LV1が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【液体錬成】LV1が発生!
効果2【ドレイン】がLV3になった!
【ダメージアップ】がLV3になった!
【ダブル】LV1が発生!
【反撃アップ】がLV3になった!

最終結果:成功

完成日2022年04月12日

地獄変第四幕『将門公の大怨霊』

 地獄変の事件を起こしていたジェネラル級クロノヴェーダ『青行燈』が、地獄変の第四幕として『将門公の大怨霊』によるものと称した『貴族の惨殺』を執行し、京の都を恐怖に染め上げようとしています。
 藤原氏のような上位の貴族が『青行燈』が放ったトループス級によって追い立てられ殺されようとしているので、救援に向かってください。
 この貴族を救出する事で、様々な情報が得られるかもしれません。

※情報の取り扱いについて
 このシナリオで、得られた情報は、リプレイでの描写では無く、毎月2日頃に公開される『攻略旅団』の『断片の王および、敵幹部、重要施設に関する情報』で随時公開されます。


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#平安鬼妖地獄変
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#地獄変第四幕『将門公の大怨霊』
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選択肢『逃げ惑う貴族の保護』のルール

 藤原氏などの貴族が、クロノヴェーダに追われて、京の都の中を逃げ惑っています。
 地位も名声もある貴族が、街中を逃げ惑う姿は、都の人々の恐怖を掻き立てる事でしょう。
 逃げ惑う貴族を見つけ出し、襲い来るクロノヴェーダから保護して安全を確保してあげてください。
 詳しい情報は、オープニングやリプレイを確認してください。

 なお、貴族は身の安全を守る為、攻略旅団の方針で再建した『廃墟の村』の一つに身を寄せてもらう予定です。

※特殊ルール
 貴族救出後、再建した『廃墟の村』に護送した貴族から得られた情報は、リプレイでは描写されません。
 得られた情報は、毎月2日頃に公開される『攻略旅団』の『断片の王および、敵幹部、重要施設に関する情報』で随時公開されますので、そちらをご確認ください。


 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【🔑】この選択肢の🔵が👑に達しない限り、マスターは他の選択肢のリプレイを執筆できない。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢『呪詛の刃』のルール

 貴族を保護し、追ってくるクロノヴェーダを撃破しても、それだけで貴族の命を守る事は出来ません。
 ディアボロスとクロノヴェーダとの戦闘の隙を突くように、非常に強力な呪いである『呪詛の刃』が、貴族の心臓を貫こうと襲い掛かってくるからです。
 これは、『凄まじい瘴気が流し込まれた刃物』を何本も転移させ『気がつけば貫かれていたという因果』を発生させる、恐るべき呪詛です。
『呪詛の刃』は既に発動しており、転移して来るのは阻げませんが、狙われた貴族と体を密着させる等して『身を挺してかばう』ことで、ディアボロスが代わりに自分を刃に貫かせ、貴族が死ぬのを阻止できます。
(通常、ディフェンスの成功率は30%ですが、呪詛の刃が確実に飛来することが分かっているため、高確率で防げます)。
 刃は複数回飛来しますので、その全てから貴族を護る必要があります。

 呪詛の刃によるダメージは大きいものの、ディアボロスであれば、一撃で戦闘不能に追い込まれる事はありません。
 身を挺して守る事で、貴族の信頼も得られます。攻撃を受けながら、信頼感を増すようなアピールを行うのも良いかもしれません。

 詳しい情報は、オープニングやリプレイを確認してください。

 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『👿をクリアするまでに、この選択肢の🔵が👑に達すると、捕らえられた対象の救出は成功する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👿アヴァタール級との決戦『大妖怪ヒノミ』のルール

 事件の首魁である、アヴァタール級クロノヴェーダ(👿)と戦います。
 👿を撃破する事で、この事件を成功で完結させ、クロノヴェーダの作戦を阻止する事が可能です。
 敵指揮官を撃破した時点で、撃破していないクロノヴェーダは撤退してしまいます。
 また、救出対象などが設定されている場合も、シナリオ成功時までに救出している必要があるので、注意が必要です。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「1体」出現します。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、敵を倒し、シナリオは成功で完結する。ただし、この選択肢の🔴が🔵より先に👑に達すると、シナリオは失敗で完結する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※このボスの宿敵主は「松中・誠」です。
※クロノヴェーダには、同じ外見を持つ複数の個体が存在しますが、それぞれ別々のクロノヴェーダで、他の個体の記憶などは持っておらず、個体ごとに性格なども異なっています。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。