湖水地方と竜の花嫁

 氷のベディヴィア卿を撃破したディアボロスは、グレートブリテン島の湖水地方に上陸する事に成功しました。
 風光明媚な湖水地方は、富裕層の保養地として有名であり、ジェネラル級ドラゴン『氷将竜サグラモール』によって守護されているようです。

 湖水地方には、竜の花嫁の湖と呼ばれる湖が多く存在しており、イギリス各地から集められた『竜の花嫁』達が、最後の時を穏やかに迎える為に滞在する別荘地になっています。

 ドラゴンの生贄である『竜の花嫁』は、命を捧げることで竜鱗兵の『卵』を出現させるのです。
『竜の花嫁』となることは、幻想竜域キングアーサーでは非常に名誉とされており、花嫁の親族はそうして生まれた竜鱗兵を大切に扱うようです。

 別荘地では『竜の花嫁』を楽しませる為に、芸人や料理人などが常に募集されています。
 この芸人や料理人に紛れて『竜の花嫁』と接触して、情報を集めていきましょう。

花嫁は希求する(作者 都築京
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 ――『竜の花嫁』は、竜鱗兵の『卵』を出現させることができる。
 それはとても名誉なことで、幸福なこと。生まれたときからずっとそう言われ続けてきた。
「ねえ、フィン、急にそんなこと言い出して……大丈夫? 疲れてるの?」
 心から心配している、という妹の表情と声音でフィンは我に返る。
「竜の花嫁に選ばれるなんてこれ以上、名誉なことなんてないでしょう? 考え直せなんて、どうしてそんな事言うの?」
「キエラ……」
 妹の反応はもっともだ。名誉であることには間違いない。しかし竜の花嫁に選ばれるということは、それ即ち贄として命を捧げること。文字通り永遠の別れになる。なのに妹はこれまで手を取り合って生きてきた両親や兄である自分、まして婚約者との別離すらどうとも思わないようだ。
「まあ、ケネスとの結婚は反故になっちゃったけど。でもケネスだってものすごく喜んでくれたし、私はそれが何より嬉しい。彼のことは今でも心から愛しているし、彼の幸せは私の幸せだもの」
「……」
「だから私は今とっても幸せ。これ以上の幸せなんて他にあるの? あるんだったら言ってみせてよ」
 いきなり変なこと言い出して本当にしょうがないんだから、と苦笑する妹の表情に嘘はない。
 そう、キエラにとっては偽りも嘘もどこにもないからこそ、フィンは押し黙るしかなかった。

●花嫁は希求する
 『アイリッシュ海の戦い』において氷のベディヴィア卿を撃破し、遂にディアボロス達はドラゴンの本拠地であるグレートブリテン島への上陸という目的を達成した。
「というわけで、皆おめでとう!! ついに本拠地のブリテン島へ行けるようになったね!」
 諸手をあげて喜んだ岩崎・礼音(Diagrammar・g03225)は、さっそくグレートブリテン島の簡易的な地図を広げる。
 このたび上陸した場所は、現代で言うところの湖水地方にあたる。その呼び名の通り大小さまざまな湖と、いくつも連なる山々の景観が美しいブリテン島を代表する景勝地だ。あの青いベストを着た兎が主人公の絵本の舞台でもある、と言えば想像しやすいだろうか。
「湖水地方を支配下に置いているのは円卓の騎士のうちの一体、『氷将竜サグラモール』だって。言うまでもない気はするけどジェネラル級ドラゴン、だそうだよ」
 この地方には『竜の花嫁の湖』と呼ばれる湖がそこかしこに存在しており、竜の花嫁が命を捧げる前に過ごすための別荘が建てられているようだ。そこには竜の花嫁を楽しませる大道芸人や、卓越した料理の腕を持つ者なども、近隣の町や村から集められている。
「最後の日々や時間を穏やかに満足して暮らせるように、って配慮みたいだけど……何か、あんまりいい話じゃないね、こういうの」
 やや唸るような言い方で礼音は腕を組む。
 別荘地では料理自慢や芸自慢のコンテストが開かれており、これに勝ち抜き優勝すれば花嫁が暮らす邸宅に招かれる。そこで竜の花嫁と接触することができれば、幻想竜域キングアーサーの謎に迫ることができるかもしれない。

 このたび潜入する街は、比較的小さな『竜の花嫁の湖』のほとりにある。川が1本注いでおり、そこに掛かる橋の飾り付けが素朴で愛らしいとのことで有名だ。花嫁の別荘は街から橋を渡ったほどなく先、なだらかな丘の中腹にある。
「開催されているコンテストは橋の飾り作り、だね。枝や木の実を集めてリースにして、橋の手摺りや色んなところから吊り下げるんだって」
 何より竜の花嫁を楽しませる、そのためだけに存在している街である。事前に花嫁に関する情報を集めて好みをリサーチすることができれば、コンテストで有利になれるはずだ。
 別荘には竜の花嫁だけではなく、その家族や親しい知人が祝福のために集まっている。竜の花嫁に選ばれることはこの上ない名誉であると信じられているものの、中には命を捧げて死んでしまうことに疑問を抱く者もいる。
「もし疑問を抱いている人とうまく会話できれば、色々な話を聞けるかもしれないね」
 さらに竜の花嫁当人に気に入られれば、直接会話できるチャンスもあるだろう。しかし竜の花嫁はなんらかの洗脳でもされているようで、自分が命を捧げることに全く疑問を抱かない。
「でも何かのきっかけがあれば、生贄になる事に疑問を抱かせることができるかもしれない。……多分すごく難しいと思うけど」

 しかし、うまく事を運ぶことができれば、竜の花嫁として命を捧げる女性たちを救えるだろう。それに『竜の花嫁』という制度はこのディヴィジョンにおいて、重要なものと位置付けられている。
 成功すればドラゴンの力を削ぐことも夢ではない、はずだ。

 湖こそこぢんまりとしてはいるが、飾り付けられた橋や小高い丘の邸宅という景観もあって街はよく賑わっている。
 美味い食べ物があり歌があり、音楽と踊りがある。露店の軒先で焼かれる鳥の芳ばしい香り、喝采を受ける大道芸人のはじけるような笑顔、人間とドラゴニアンの間に垣根もなく皆幸せそうだ。
 珍しい音曲や芸、そして料理があれば富める者は必ず目をつける。そしてそれが洗練され美しいものであれば、富める者は金を積む、そういうものだ。
 そうして竜の花嫁の湖に隣接する町々は繁栄を享受し、治安を保ちつつ賑わってきたのだろう。
 ――果たしていつのころからか、どのころからか。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【士気高揚】
1
ディアボロスの強い熱意が周囲に伝播しやすくなる。ディアボロスから「効果LV×10m半径内」の一般人が、勇気のある行動を取るようになる。
【託されし願い】
1
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【友達催眠】
3
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【プラチナチケット】
2
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【完全視界】
2
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【ハウスキーパー】
2
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建物に守護霊を宿らせる。守護霊が宿った建物では、「効果LV日」の間、外部条件に関わらず快適に生活できる。

効果2

【能力値アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV3 / 【アクティベイト】LV3(最大) / 【ダブル】LV1 / 【ロストエナジー】LV2

●マスターより

都築京
こんにちは、都築京です。よろしくお願いいたします。

●依頼の流れについて
OPに記載の通り、町で行われているコンテストに出場し竜の花嫁が暮らす別荘へ潜入のうえ花嫁を説得して下さい。
そのため、③でまず情報収集を行い②のコンテストに出場、④でさらに情報収集し①にて説得、という流れになるかと思われます。
別荘地では人間や一般人のドラゴニアンが普通に暮らしていますが、クロノヴェーダはいませんので戦闘に備えるプレイングは不要です。しかし街の外では多くのドラゴンが上空から地上を観察しているため、派手な動きは慎むべきでしょう。
逆に言えば、それで見つからない程度なら自由に動けるという意味でもあります。

●花嫁の関係者
現時点で竜の花嫁・キエラ、その兄のフィン、キエラの元婚約者ケネスの3人が判明しています。
この3名は全員別荘内にいますが、他の場所にも家族や友人がいるかもしれません。


それでは皆様のプレイング、お待ちしております。
19

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


 穏やかな風に乗って、屋台で売られているのだろう料理の香り、複数の音楽や歌声、それに多くの人でにぎわう心地良い喧噪が聞こえてくる。初めて訪れる土地でもあるのでディアボロス達は道草はせず慎重に、しかし警戒を露わにすることはせず街への門をくぐった。
 湖のほとり、整備されたメインストリートぞいにずらりと露店や商店、家々がたちならぶ。通りの一番奥にゆるく弧を描く橋が見え、そこが件のリースに関わる橋なのだろうと想像できた。
 さらに橋のむこう、湖を見下ろすゆるやかな丘の中腹に、厨の煙をたちのぼらせているひときわ瀟洒な邸宅が見える。周囲にほかの住居のたぐいはなく明らかに別格の扱いを受けているのが見て取れるので、そこが竜の花嫁の座所のはずだ。
 まずは街の中での情報収集に取りかかるべく、ディアボロス達は思い思いの方向へ歩を進めていく。
ルウェリン・グウィンリウ
漸うブリタニアに帰って来た! この馨しい空気、やはり格別だ!
……とはいえ、南部生まれの僕がヘン・オグレッドの地を踏むのは初めてだけどね。

土地勘もないし、慎重にいこう。


まず街を歩いて様子を伺う。
――この辺はリージット王国の支配下だった筈だけど、もう跡形も無さそうだ。

出店で串焼きでも見かけたら買い求めつつ、その際に色々と聞いてみよう。

旅の途中で立ち寄ったけど、竜の花嫁が来ているらしいね。
ドラゴン……様に選ばれるなんてさぞ美人なんだろうけど、どんな人か知ってる?
故郷への土産話にあわよくば会ってみたいと思っていてね。

あと『竜の花嫁の湖』って、何か由来でもあるのかな? 別荘が多いのも何か関係が?


 ――帰ってきた、とまず最初に思った。
 実のところ出身はもっと南の方ではあるのだが、それでもブリタニアに戻ってきた事には間違いない。水気を含んで流れている空気すら今は芳しく、ルウェリン・グウィンリウ(灯火の騎士・g02040)は格別の思いで空を仰いだ。
 ルウェインの記憶ではかつてリージットという名の国の版図であった場所だが、今はクロノヴェーダに簒奪されている以上その面影はどこにもない。
 そこそこ繁盛していそうな串焼きの屋台を見繕い、銅貨を支払う。
「旅の途中で立ち寄ったけど、竜の花嫁? が来ているらしいね」
「おや、そうなのかい。ゆっくり楽しんでいっておくれね」
 ちょうど客の途切れたタイミングだったので、気のよさそうな女性店主が相手をしてくれる。
「こちらの地方に来るのは初めてでね。『竜の花嫁の湖』って、何か名前の由来でもあるのかな。別荘が多いのも何か関係が?」
「そりゃあ竜の花嫁さんが過ごす別荘がある湖だからだよ。それで街は繁盛しているし眺めもいいとくれば、金払いのいい人達が集まってくる。ワタシらとしちゃいい商売ができて良いことしかないから、有り難いかぎりさね」
 次に焼く串の仕込みをしながらほくほくと笑う店主の表情に嘘は見えない。少なくとも彼女が心からそう思っている、以外の気配は窺えなかった。
「……それは何よりだ」
 からころ、からころ、向かいの雑貨店の玩具を鳴らしている子供の笑い声。最後の肉を頬張って、ルウェインは串焼きの竈の中へ串を放りこんだ。
「花嫁に選ばれるなんてさぞ美人なのだろうね。どんな人?」
「どんな人って……何故そんな事を?」
「もしお目にかかれるならいい土産話になると思ってね」
 冗談めかして笑った言い方に、なんだそういうことかい、と女店主もまたあっはっはと声をあげて笑う。
「ワタシらもほんの噂でしか知らないんだけどね。イチゴの花がたいそうお好きで、よく刺繍になさっていたとか」
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【士気高揚】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!

鳩目・サンダー
画材や素材を買う体で街に潜入。
リースかぁ……。立体物はあまり経験が無いが、デザインぐらいならできる、と思う。誰か手伝ってくれたら嬉しいな……。
光れ、【アート】の技能!

・コンテストで名を上げるために来たんだけど実は竜の花嫁って噂で知ってるだけで詳しくない、いつごろどんな風に行われるものなの?
・コンテストで作るリースにはどんな制限がある?大きさや素材など
・実際にそのドラゴン様にはお目にかかれるのか?
勿論情報をくれたらちょっとチップを載せて買い物しちゃうぜ。

おお、大人になった気分。

アドリブ・連携歓迎します。


 人々が行き交う雑踏を前にして、つい溜息が出る。
「リースかぁ……」
 鳩目・サンダー(ハッカーインターナショナル同人絵描き・g05441)は内心頭を抱えていた。
 平面ならまだしも、立体物の製作はあまり経験がない。それに今時同人誌作家でアナログ作業をするものは圧倒的少数派だし、そもそもこの時代で画材って何だ。水性マーカーなんかあるわけないし、油絵? あれは宮廷画家のものだしチョーク画とかパステル画っていつだ。むしろフレスコ画とかか。でもあれ画材って言うよりむしろ漆喰塗り重ねる左官技術であるって言われたほうが正しくないか。
「姉ちゃん」
「誰か手伝ってくんないかなー……デザインくらいならできる気はするんだけどなー……」
「ちょっとそこの姉ちゃんってば!!」
「うぉあっっ」
 ぐるぐると自分の世界で思考が迷宮入りしていたサンダーの背後、腰に小ぶりな篭をさげた少年が立っている。森で拾ってきたものか、篭の中には松ぼっくりや木の実、柔らかそうな枝が入っていた。
「何ひとりごと言ってんの? 何か困りごと?」
「まあ困りごとって言っちゃ困りごとかな……あのさ少年、コンテストで作るリースにどんな制限があるのか知ってる? 大きさとか、使う材料とかさ」
 とりあえずコンテストの内容を知らないことにはどうにもならない。サンダーの質問に、少年はなあんだそんなことか、と明るい声を上げた。
「別に決まり事とかはないよ。こーんなでっかいの作ってもいいし、冠とか腕輪にできそうなのでも」
 こういうものは多少なりとも縛りと言うか、規定なり指定なりあったほうが内容が洗練されやすいのだが、そこまで血道を上げる性質のものではないようだ。それはそれでいいような悪いような。
「へえ……ところで、噂で聞いて来ただけで竜の花嫁って実はよく知らないんだ。どんな風に選ばれるものなの?」
「なんだったかな、花嫁に選ばれるとドラゴン様からお使いが来るってばーちゃんが言ってた」
「お使い……ってことは、花嫁を選んだドラゴン様が直接会いに来たりするわけじゃない?」
 ドラゴンと会う事はできるのかと尋ねるつもりだったが、予測していた返答がやや違う方向性だったのでサンダーは言い回しを変えてみる。
「そうなんじゃないかな。おれはお迎えがくるとこ見たことないけど、時々晴れた日にドラゴン様が空を飛んでいることはあるよ」
「そ、そうなのか……」
 あまりの風光明媚さにやたら牧歌的な光景を想像してしまい、サンダーは慌てて頭を振った。とりあえず、花嫁を選んだドラゴンと会うことは難しそうだと考えるべきだろう。
 少年におこずかいと称して銅貨を握らせ、サンダーはその場を立ち去った。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【ハウスキーパー】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!

冰室・冷桜
ま、こーゆーのが悪いとは言わないけどさ
アタシらの歴史にだって、そーゆーのはあったわけですし
是非はどうあれ、これを邪魔するのがアタシのお仕事ってだけですわ

大会やコンテストで大事なのは事前のリサーチが大事ってね
元から花嫁さんを喜ばせるための場所みたいですし、素直に聞けば好みとか花嫁さん自身のことも【情報収集】できるでしょ

竜の花嫁に選ばれた人が居るって聞いてお祝いにきたぜーみたいな感じの設定で話を聞いてきますかね
食堂とかお店とかそこらで話を聞きましょうか
今回の花嫁さんってどんな人なんすかねー、ほらやっぱり人柄とか知ってた方がイイ作品ができそうっていうか? そんな感じっすわー


 生贄なり人柱なり、最期を迎える前に楽しく過ごしてもらうという発想は今更、珍しくもなんともない。冰室・冷桜(ヒートビート・g00730)自身、それが悪いものだと言うつもりもない。是非はどうあれそれを邪魔するのがディアボロスの仕事というだけ。
 ――だってアタシらの歴史にだって、そーゆー事例はこれまでもあったわけですし。
 ぷらぷらと歩く道すがらに並ぶ店を眺めながら、人が集まりすぎていない所を選び隅のほうに陣取る。提供されるまでそれなりに時間がかかるだろうメニューを選び、テーブルの上を片付けている下働きらしき女性に声をかけた。
「ねえ、ちょっといい?」
「はい。何でしょう?」
「竜の花嫁に選ばれた人がいるって聞いてお祝いにきたんだけど、これだけ街が賑わっているってことは、そういう事でいい?」
「ええ、もちろん! ようこそいらっしゃいました」
 別荘に花嫁が滞在していることが誇らしいのか、20代ほどとおぼしき女性は明るい笑顔で応える。
 コンテストで上位を狙うには事前のリサーチが物を言う。元々竜の花嫁を喜ばせるためにある街なのだから、素直に尋ねれば訝しがられることもないだろうと冷桜は考えていた。
「それなら良かった、……今回の花嫁さんってどんな人? 人柄とか知っておいたほうがイイ作品ができそうだと思って」
「コンテストに参加するんですか?」
 作品という単語に女性の笑みが深まる。
「だったら、小さな人形とイチゴの花をあしらったものが喜ばれると思います。子供好きな方だと聞いてますし、イチゴの花を刺繍したものを色々な方に贈られていたとか」
 イチゴの花か、と冷桜は考えを巡らせる。街までの風景を思い出してみるに、早めの種類なら陽当たりの良い土手を探せば自生している可能性は高そうだ。
「そう。好みの大きさとか材料とかは、特に?」
「そうですね……実直な方みたいですよ。知り合いが別荘に刺繍用の布や糸を納めに行きましたけど、いかにも豪華だったり華やかな飾り付けはあんまりなかったようです。素朴なものがお好みなのかもしれませんね」
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【完全視界】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!

鳩目・サンダー
橋に飾るリースでありさえすればいい、か。
集めるのは蔦に葉に草に花に木の実。
リース全体を体を丸める龍に、果実を花嫁に見立てて、龍と寄り添う花嫁を作ってみようか。
デザイン画を描いて後はその通りに組み上げだ。
鱗キラキラで強い瞳のドラゴンと、みずみずしい果実。サイズは時間次第だな。さてさてうまく行くかどうか……。

優勝がベストだがそう甘くはない。優勝者を祝福しつつ「感服した、是非その技を知りたい」と大いに敬服しつつアート談義。
自分は他所の者だから、ここらの芸術を見たい、花嫁の邸宅の調度品を拝みたいんだけど、何とか一緒に入らせてもらえないかなあ?と交渉。
お金も出すよ?


アドリブ・連携歓迎します。


 コンテストは飛び入りも歓迎されているのか、広場には作業机や工具などが用意され誰でも使えるようだった。子供が蔓を曲げているのを微笑ましく見守る二親の姿や、孫の子守りをしながら見栄えよくリボンを結ぶお年寄りの姿などもある。
 大きさや材質等々、特に規定は何もなしという、ゆるいと言うべきか雑と言うべきなのかなコンテスト用の材料を前に、鳩目・サンダー(ハッカーインターナショナル同人絵描き・g05441)は唸った。
 街の周辺からサンダーが集めてきたのは、蔦や木の葉や木の実等々、森にある素材が中心だった。しかし3月中旬という季節柄、果実についてはどうにか日陰に残っていたセイヨウヒイラギが精一杯。さいわい鮮やかな赤という色ではあるのでそこを活かすことにした。
 まずはリース全体を竜、果実は竜の花嫁に見立てた叩き台をいくつか描きおこし、これはと思うものを清書して細部を煮詰めていく。
 輝く鱗と強い瞳をした竜。
 つややかな赤い実で暗示された花嫁。
 比較的柔らかめの蔦をあれこれ試しに曲げてみながら、サンダーはリースの円を体を丸める竜として表現することにした。サイズは完成までの時間次第な所があるが恐らく納得いくものに仕上げられるだろう。もっとも、上位に食い込めるかどうかは箱を開けてみないとわからないが。
苦戦🔵​🔴​🔴​

冰室・冷桜
んじゃ、ネタも仕入れたとこですし、いっちょ気合い入れてきますかぁ

イチゴの花に人形、と……人形は流石に作っている時間はないから街でそれっぽいのを買うとしてー、あんま豪奢な感じじゃないほうがいいのよね
花嫁さんのためにーっていかにもお高そうな人形とかも売ってそうだけど、そういうのはパスして、子供向けの手頃なヤツを選んどきましょうか
ドレス姿の女の子っぽいヤツ

で、蔓に花にーっと、どうせならイイ感じの見つけたいですし、【完全視界】を発動させつつ、だいふくと手分けした材料探し、と
材料が集まったら、蔓を輪にして葉っぱや花で飾りつけ、イチゴをアクセントにと
お人形には花の髪飾を掛けて、ちょこんと乗ってもらいましょ


 たった今買い求めた小さな布人形を手に、冰室・冷桜(ヒートビート・g00730)は気合を入れ直す。さすがに人形を一から縫うわけにはいかず、それらしいものを探し回っていたのだ。
 竜の花嫁が滞在中という時節柄なのかいかにも手の込んだ人形は比較的簡単に見つかったものの、目指すリースにはそぐわない。冷桜自身、そういった人形が多そうだと危惧していたのが的中した形になる。
 ようやく見つけたのは、いとけない乳児が最初の手遊びに使うような手の平大の人形。実際子供のためのもののようだ。これに相棒のだいふくと探してきたイチゴの花を組み合わせれば、仕入れたネタ通りのリースが仕上がるに違いないと確信する。
 自分の集めた材料がどう変化するのか気になるのだろう、だいふくがせわしなく冷桜の手元を覗きにきた。ゆっくり蔓を曲げながら輪を作り、何カ所か仮止めをして馴染ませる間に人形用の髪飾りを編んでいく。子供用の人形なのでドレス姿とはいかなかったが、小綺麗なワンピースではあるのでそれなりに見えるはずだ。
 何重かの輪にした蔓へ春を感じさせる若葉やイチゴの花を見栄え良く差し込み、最後に花の髪飾りをつけた人形を乗せる。落ちないように表から見えない箇所を糸で蔓と結わえれば完成だ。
「んじゃ、いっちょ提出してきますかぁ」
 可憐なイチゴの花が飾られた小ぶりのリース。我ながらなかなかの出来映えだと冷桜は頷いた。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【完全視界】がLV2になった!
効果2【ロストエナジー】がLV2になった!

ルウェリン・グウィンリウ
なるほど、花嫁さんは苺の花と素朴なデザインがお気に入り、と。

リース作りは経験ないけど、何とかやってみよう。
まずは出場しないとその先にも進めないからね。


まずは素材集め。
街で買うか、無ければ近くの森とかで採取。
余裕があれば他に参加する仲間も使えるよう多めに調達。

良い感じに揃ったら作成し始めるよ。

まずは蔦を冠サイズほどの輪に編んで、ハシバミの葉と実で飾り立てる。
そして中央にはナナカマドの枝を組み合わせて組紐紋様にして、随所に苺の花を目立つよう配そう。

僕たちブリトン人――ケルト人とも呼ばれた民が崇めていたシンボルだ。

花嫁の好みに合致するよう、自然の素朴さと神秘的な美しさが感じられるよう仕立てたいな。


 ほう、と審査員達が感嘆の声を漏らすのを、ルウェリン・グウィンリウ(灯火の騎士・g02040)は緊張と期待混じりの気分で聞いていた。
 ちょうど冠ほどの大きさのリースは、可能なかぎり竜の花嫁――キエラの好みに合致するよう手を尽くしたつもりでいる。
 この地に住まい生きてきた民がこよなく愛してきた自然の美しさとその神秘、そして自然のままの素朴さを感じられるよう。なおかつルウェリン自身がそうであるように、ブリトン人またはケルト人と呼ばれた人々にとって身近な素材とモチーフも織り込んだ。ローワンとも呼ばれる魔除けの樹木セイヨウナナカマドと、花嫁の幸運を祈るハシバミ、つまりヘーゼル。
 蔦や枝はさておき、3月という時期柄ヘーゼルの実を探すのは骨が折れるものと思われたが、保存のきく堅果は古代より保存食の定番である。よもやと思い食料品店へ向かえば、拍子抜けするほど当たり前にヘーゼルナッツが並んでいた。
「ヘーゼルの葉と実。ローワンの枝の組紐模様……これは、何とも」
 ルウェリンにリース作りの経験はない。しかしこの地で何が人々の心の拠り所であったかは知っている。
「イチゴの花を使われた方は他にもおられましたが、ここまで拘られたのは貴方だけです。誰も優勝に文句は言わないでしょう」
 とても良い祝いの品を見せていただきました、と満面の笑顔で審査員達はルウェリンのリースを丁寧に箱へおさめた。他にもリースがおさめられた箱はあるが、大多数は長テーブルにそのまま立てかけられている。
「ご存じかもしれませんが、上位入賞者は花嫁の別荘へ招かれる事になっています。今晩の宴にご招待いたしますので、日暮れ後に花嫁の別荘へお越し下さい」
 リースは彼等が先に別荘へと運び入れてくれるようだ。内心ほっと胸を撫で下ろしながら、ルウェリンは審査員達に軽く頭を下げる。
 どうやら長い夜になりそうだと思った。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【友達催眠】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】LV1が発生!

 竜の花嫁キエラが愛する、イチゴの花。それをリースへ織り込むことができたディアボロス達は、約束の刻限通りに丘の中腹に建つ花嫁の別荘へと向かった。
 そこには花嫁であるキエラ当人、そして兄のフィンと元婚約者のケネスがいるはずだが、今のところ花嫁の処遇に疑問を抱いていることが判明しているのは兄のみ。キエラが命を散らす運命にあることを、ケネスが本心から祝福しているかどうかは彼に直接尋ねてみなければわからないだろう。または、別荘内にいるであろう別の縁者を探し出して声をかけ、キエラへの説得の糸口を掴むのか。
 遠くない未来に迫る自らの死を疑問に思わぬどころか、名誉とすら考えている花嫁。
 そんな彼女を救えるかどうかは、まだ誰にもわからない。
ルウェリン・グウィンリウ
第一関門突破だね。
けど本番はここから。気を引き締めて行こう。


元婚約者のケネスさんを探そう。
なるべく周囲に人のいないタイミングで接触。
【友達催眠】を仕掛けて話に付き合って貰う。

まず雑談がてらキエラさんとの思い出や、彼女の具体的な人柄、意見の対立した時にはどうしていたかなど説得に役立ちそうな情報を聞き出す。

折を見てこう切り出そう。
実は他にも竜の花嫁に選ばれた方と縁があってね。
その人の恋人は栄誉と知りつつ、それを嘆いていたけれど。

そう鎌かけて反応を観察。
苦渋の色が伺えれば、本心ではキエラさんを引き止めたいのではと水を向けてみよう。

もしそうなら、それを言葉にしてくれ。
彼女を助けられるかも知れない。


 さて、花嫁の元婚約者という若者はどこにいるだろうか。隅に置かれた椅子からキエラをぼんやりと眺める20代ほどの男性が、ルウェリン・グウィンリウ(灯火の騎士・g02040)の目に入る。
「隣、よいだろうか」
「どうぞ。……失礼ですが存じ上げない方ですね。もしかしてコンテストで入賞された、という?」
 何か寂しげな視線だと感じたので、兄のフィンかと思い声をかけてみたところ、どうやらこの男性が件の元婚約者、ケネスらしい。さっそくルウェリンは雑談がてら友達催を仕掛け、花嫁との思い出、その人柄などを中心に聞きだしていく。
「よい宴だ。飲めや歌えの大騒ぎはよくあるが、このように穏やかにゆっくり会話を楽しむのも心地良い」
「キエラのたっての希望だよ。酔っ払いはいらない、と」
「酔っ払いか。しかし宴に葡萄酒やエールはつきものなのでは」
 苦笑するような、切ないような、なんとも言えない表情でケネスは上座で客からの挨拶を受けているキエラを眺めやった。
 落とすようなその溜息は、苦い。
「親族は皆そう言って反対したよ。料理をふるまうお金がないように思われたらみっともない、とも。でも小さい頃から彼女はそう決めていたし――同じ村で育った幼馴染みだから、よく知っているんだ。僕も飲み食いしてそれで終わり、という結婚式にはしたくなくて」
 どうやら彼も兄と同じく、花嫁となり死んでいくことをよしと思ってはいないようだ。幼少の頃から知る幼馴染みという間柄のようなので、花嫁に選ばれた時に喜んだという話を考慮するかぎり、意見が対立してもケネスのほうがうまく折りあいをつけてきたのかもしれない。
「……実は他に、竜の花嫁に選ばれた方と縁があってね」
 反応を慎重に伺いつつ、ルウェリンはカマをかける。
「その人の恋人は栄誉と知りつつ、嘆いていたけど」
「わかるよ。……一緒に遠くへ逃げてしまえたら良かったのに」
 まわりはそれぞれの会話に夢中で、こんな片隅での小声でのやりとりなど聞いてはいない。ルウェリンはやや声に力を篭めた。
「なら、どうして」
「そんなの無理に決まっているじゃないか。相手はドラゴンだ、刃向かってどうにかなるとは思えない。逃げたとしてもその先は同じだろう」
 ふと、ルウェリンは彼が手元の小さな手巾を見つめていることに気付く。イチゴの花と思しき刺繍がされていた。
「助けられるかどうかは、やってみなければわからないのでは?」
「……そうかもしれない。でも、僕にはもうその資格はないんだ。キエラは僕に家族を作ってやりたいと言ってくれたけど、僕は……考え直すよう説得するのではなく、名誉なことだと喜んでみせてしまったんだから」
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【友達催眠】がLV2になった!
効果2【アクティベイト】がLV2になった!

冰室・冷桜
おっし、首尾は上々
本番のお仕事の時間ですってーわけだ

味方は少しでも多い方がいいですし、アタシはご両親に話を伺いに行きますかねー
田舎から出てきたばかりで直に竜の花嫁を見たり、会ったりするのは初めてなんですぅってぇ世間知らず的なカバーでいきますかね
綺麗ですねーとか名誉ですねーとか当たり障りない褒め言葉を混ぜながら世間話をしたり、自分の作品について話したりしながら反応をみましょ
本心から祝福してんなら、世間知らずちゃんへの語りも熱が込められてくんじゃないかしらね、ついでに普段漏れないようなことが漏れたりも
終始フルスロットルなら見込み薄
でも、少しでも陰りがあるなら……見逃さぬようしっかり【観察】しましょ


 ここまでの個人的な首尾は上々。いよいよ本番のお仕事の時間とばかりに、冰室・冷桜(ヒートビート・g00730)は広間を見回してみる。
 今のところ兄以外に竜の花嫁となることを良く思わない者の情報はないが、他のディアボロスが接触している相手がそうであるかも知れない。花嫁の両親を味方につけられないものかと考え、冷桜はリースがおさまった箱を手に、キエラの様子を微笑んで見守る40代ほどの夫婦へ近付いた。
「花嫁のさんのご両親ですか? 田舎から出てきたばっかりで、竜の花嫁を直に見たりするの初めてで……こんなに名誉な事のお祝いができるなんて光栄です」
「ああ、このリースを作ってくださった方ね」
 ほくほく幸せそうに笑いながら、キエラの母と思しき女性は頬に手を当てる。
「この人形、すばらしかったわ。キエラだと言う人も多かったけど、私にはキエラが産む孫に思えて仕方なくて。孫が産まれるのはもちろん嬉しい事だけど、竜鱗兵の祖母となれるのはもっと良い事だもの」
「我々が立派に育てて、ドラゴン様のお役に立たなければな」
 夢見心地の顔で呟くキエラの母に、深く同意するキエラの父。すっと頭の奥が冷えていくような錯覚を覚えつつ、冷桜はにこやかな表情を崩さず問いを重ねた。……これは、見込み薄か。
「お二人にとっても、心から名誉な事なんですね」
「ええそうよ。そうだ、ケネスにも手伝ってもらいましょう。天涯孤独の身なのだし、竜鱗兵とは言えキエラの子はケネスにとって自分の子も同然でしょう?」
「それは良い考えだ! 後でさっそく尋ねてみよう」
 もしケネスがこの事態を良しとしていない場合、結構な地雷案件だなと冷桜は考える。そもそももう『元』婚約者、婚約破棄済みなのに厚かましすぎやしないか。なによりキエラの両親の脳内お花畑っぷりが心底思いやられた。
「ケネスさんとの中はご両親公認だったんですね」
「同じ村で育った幼馴染みだし、家族ぐるみの付き合いだったのさ。ケネスが10歳の時に、暴れ馬との事故で皆亡くなってしまったが……」
「思い出すわねえ、こんな、まだ冬が明けた雪解けのころで。キエラがケネスにイチゴの花を摘んで慰めに行ったのよね」
 思いがけない単語が出てきて冷桜は我に返る。イチゴの花?
「その時からだったな、自分がケネスの家族になる、家族を作ってやると何かにつけてキエラが言い出したのは。子供の言う事だと思っていたら何年かあとにお互い本気ときたものだ。まあ、否やを言う理由はどこにもなかったがね」
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【ハウスキーパー】がLV2になった!
効果2【ダブル】LV1が発生!

冰室・冷桜
婚約者のケネスさんも内心はあまり歓迎していない、でも周囲の手前って感じ
んで、花嫁のキエラさんは少なからずケネスさんの喜ぶ様子が後押しになっている、と

幼馴染……みたいだし、昔を思い出したら、本音が漏れたり、気持ちが揺らいだりしないかしら
【友達催眠】に【ハウスキーパー】を重ねて、少しでも話しやすい感じを出して、お祝いの体でキアラさんと話しましょう

ご両親から聞いたんですぅーみたいな感じで、ケネスさんとの思い出話を振りつつ……お祝いの花束ってーことでイチゴの花で簡単に作った花飾りを
これがお好きってーのをコンテストの作品を作っている時にも聞いたもんで
ケネスさんからも受け取られたことがあるって聞きましたよ


 周囲の手前、花嫁になることを喜んでみせたというケネス。
 そしてその喜ぶ様子が花嫁となる喜びを後押ししたのであろうキエラ。
「……ケネスさんとは幼馴染みなんだそうですね。ご両親から聞きましたよ」
 主催者からコンテスト上位者の名前が呼ばれ花嫁との親しい会話の場が設けられたのだが、冰室・冷桜(ヒートビート・g00730)は二人だけで話をしたいと申し出る。友達催眠があれば拒否されるはずもなく大きな出窓のそばへ移動できた。
「あら、また変なこと言ってなかったかしら? 雪遊びに夢中になりすぎて次の日二人一緒に熱を出したとか、色々と」
 過去にも昔の話を知らぬうちに暴露された経験があるのか、キエラは笑っている。
「この花がお好きってーのを、コンテストの作品を作っている時にも聞いたもんで。どうぞ、お祝いです」
「まあ」
 リースに使った材料と花の残りとでなんとか見られようにした小さな花束。素直に嬉しそうに受け取る表情に、不安や悲しみは微塵も感じられない。
「本当にありがとう。竜の花嫁になるだけじゃなく、こんなに祝ってもらえて嬉しい」
「ケネスさんからも受け取られたことがあるって聞きましたよ」
「え? 何を?」
 不思議そうに首をかたむけられ、冷桜は一瞬言いよどんだ。当然ケネスが彼女へイチゴの花を贈る事はあっただろうと想像したのだが、違ったらしい。
「……それとも何かの話が誤って伝わりでもしたのかしら。ケネスは一度もイチゴの花をくれたことはないし、くれる事もありえないもの。別の花ならまだしも、イチゴは絶対にないわ」
 だからきっとどこかで話がすりかわっちゃったのね、とキエラは笑って立ち上がる。
 少し離れた場所から宴の主催者が声をかけていることに気付き、失礼、と言い置いてキエラは会話を切り上げた。事も無げに笑っていたことから地雷を踏んだわけではなさそうだが、まだこちらが知り得ない決定的な何かがあるのかもしれない。
苦戦🔵​🔴​🔴​

ルウェリン・グウィンリウ
剣を抜く事はないけれど、これは戦だ。
ドラゴンの支配を揺るがす為の戦。

故に負けられない。


優勝者としてキエラさんへ挨拶を。

この作品は我らが祖先の鍾愛したシンボルより着想を得ました。
ケルトの民は自由を愛し誇り高く……一方、信仰する神々は荒々しく残忍で、時に生贄を求めたとか。

そう、まるでドラゴン達のように。

――ケネスさんは、本当は貴女を竜の花嫁になんてしたくないと言ってたよ。

でも本音を偽って祝福してしまったから、もう一緒になる資格はないとか。
このままでは、生涯を後悔と共に過ごすだろう。

情けない男だと思うけど、それでも貴女がいなくなれば本当に独りぼっちだ。
考えてくれ。栄誉か、愛する人との幸せか。


 これは戦だ、とルウェリン・グウィンリウ(灯火の騎士・g02040)は考えている。
 剣を抜いて盾を掲げるような戦ではないが、ドラゴンの支配を揺るがすための戦だと思っているし、その認識は決して間違っていないはず。
「あの作品は我等が祖先の鍾愛したシンボルより着想を得ました」
 宴の主催者が何事かを軽く確認していたキエラに挨拶を兼ねて近付き、ルウェリンは上座に飾られてあるリースを指し示す。
「自由を愛し誇り高くある一方、信仰した神は荒々しく残忍で、時に……生贄を求めたとか」
「まあ」
 おそろしいこと、と笑うキエラが意に介した様子はない。科学的根拠のない迷信や伝説が当たり前のように信じられてきた時代において、生贄を求める神は珍しいものではなかった。
「そう、まるでドラゴン達のように」
 不意にキエラの表情が硬くなる。何か言いかけて口を閉じ、そしてやはりもう一度心底気遣わしげにルウェリンを見た。
「言葉はよく選んだほうが良いのでは。それではまるでドラゴン様が悪鬼か何かのように聞こえてしまいます」
 ぎりぎりまで声を潜めている所を見る限り、彼女はルウェリンを純粋に心配しているらしい。直球では心に響かないのを見て取り、ルウェリンは少し言い方を変えた。
「――ケネスさんは、本当は花嫁になどしたくなかったと言っていた」
「……ケネスまでフィンと同じ事を言うなんて」
 二人ともどうしてしまったのか、と言わんばかりの反応に、ルウェリンはさらに言葉を重ねる。
「でも本音を偽って祝福した以上、もう一緒になる資格はない、とも。このままでは、この先の生涯をずっと後悔したまま過ごすだろう。考えてくれ、栄誉か、愛する人との幸せか。貴女がいなくなれば彼は本当に独りぼっちだ。情けない男だと思うけど、――」
「『情けない』?」
 キエラの目元が険しくなり、ルウェリンは息を飲んだ。
 幼馴染みという彼女と彼。これまでの人生の大半を共に歩んできたはずの二人を、この数時間で理解しきったとは言えない。
「撤回して。家族を一度に亡くして、独りぼっちでも立派に生きてきた彼のどこが情けないの? 彼はイチゴの花を受け取るに相応しい、そういう人よ」
 ケネスへの侮辱は誰であろうと許さない、そう言われた気がした。
苦戦🔵​🔴​🔴​

相原・相真
【プラチナチケット】を使い別荘に入りキエラさんに接触
ケネスさんについての発言を詫びたうえで話をしたいと思います

ケネスさんについて俺の仲間が過ぎた言い方をしてしまったようで、
本当に失礼しました

ただそのうえで、俺からも少しだけ話を聞いていただきたいんです

ケネスさんやフィンさんがなぜ貴女が花嫁になってほしくないか
それは貴女と一緒にいたいからです
たとえ竜の花嫁となることがどれ程誇らしいことでも、
それでも一緒にいたい、そう願うほど貴女が大切なんだと思います

貴女も、以前はそう思っていたのではないですか?
ケネスさんにイチゴの花を送った時の話を聞きました
その時の気持ちを、もう一度思い出してみてはもらえませんか


ソレイユ・クラーヴィア
プラチナチケットで入賞者の関係者であると伝え別荘へ

友情催眠を使用
キエラに軽く自己紹介し
この度はおめでとうございます
良ければどうぞ
とイチゴの花を添えたブーケも差し出し

他の方の話を漏れ聞いた感触ですが
イチゴの花は幸せになって欲しいと願う人へ送られた様に感じました

私も貴方の幸せを願い贈らせて欲しいのです

今幸せだと返されたなら
本当ですか?と、そっと尋ね

貴方はどこか
自分の幸せを差し置いて
他人の幸せを願う優しい方の様に見えました

…もし貴方が幸せになって欲しいと願う方の幸せが
貴方と一緒に遠くに逃げてしまう事だとしたら
どうしますか?

良ければ、考えてみてください
貴方の幸せの為に、私も出来る限り力になりたいのです


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
プラチナチケットで宴の関係者を装い、キエラに接触
友達催眠を使用
花を胸に挿し、イチゴの花の使い、だと

リースは良いな
家族皆が、無事に帰ることを願って……飾るもの

話を聞いた
ケネスさんを、心から愛しておられるのだな
……彼の幸せが何か、知っているか?

俺の身近では、イチゴの花には『幸福な家庭』の意味がある。『愛情と尊敬』とも
貴女はどんな願いを込めたろう

彼が、貴女が贈った手巾を大事に握っているのが見えるか
彼は「一緒に遠くへ逃げたい」と

ケネスさんに幸せを、子供を作って、幸福な家庭を……
与えられるのは貴女だけだ

彼、漸く気づいたんじゃないか
貴女という存在の貴さに

さあ、確かめるといい
本当に大切なものを手放すな
決して


ルウェリン・グウィンリウ
撤回しろ?
彼が本当にその通りの人ならすぐ撤回しよう。

戻って来た主催者に【友達催眠】でケネスさんを呼んで貰おう。
彼が来たら声を潜めつつ、伝えるべき事を。

聞いてくれ。
僕が子供の頃、両親が殺され僕自身も奴隷に落とされかけた。

けどそれを救ってくれた戦士たちがいた。
彼らは僕が立ち直るまで辛抱強く支えてくれたよ。

その彼らも全員殺された。

過去に戻れるなら、彼らも両親も命を賭して救い出すのに。

……ケネスさん、貴方の資格はまだ失ってない。
キエラさんは貴方がイチゴの花を受け取るに相応しい人だと信じているんだから。

ドラゴンが怖いならヒベルニアに逃げなよ。
ここだけの話、あいつらあそこの征服に失敗して逃げ帰ったんだぜ?


 離れた場所から事態を見守っていた相原・相真(人間のガジェッティア・g01549)とソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)は、ひとりで広間の出口近くへ足早に歩いていったキエラの様子が落ち着くのを待った。壁に向かって目を閉じたまま深呼吸をくりかえし、そして最後に、険しい表情と入れ替わるように深い後悔が滲んだ溜息が漏れる。
「このたびはおめでとうございます」
 ソレイユの声に、キエラははじかれたように顔を上げた。何か思い極めていたのだろう、ソレイユや相真の気配に全く気がついていなかったらしい。もっともプラチナチケットを使えばコンテスト上位者しか招かれない場でも救援機動力でもって駆けつけられるので、誰に見咎められる心配もなかった。
「よければどうぞ」
「……あ」
 ありがとうございます、とキエラは消え入りそうな声で呟き、ソレイユから差し出されたブーケを受け取る。視線の動きでイチゴの花に気付いたのがわかった。
「どうやら仲間が何か、過ぎた物言いをしてしまったようですね。本当に失礼しました」
 せっかく落ち着いたばかりなのにのに盗み聞きされていたと判断されるのは危険だと相真は判断し、あくまで様子を見ていたという体にとどめておく。
「……いいえ、今のご覧になっていたんですね、お恥ずかしい。私のほうこそ取り乱して、彼にひどい事を言ってしまいました。謝らなければ……」
「待って下さい。その前に俺からも少しだけ話を聞いていただきたいんです」
 すぐに身を翻そうとするキエラを制し、相真はできる限り落ち着いた声音で続けた。
「今回の件、なぜ反対されるのか、考えたことはありますか。竜の花嫁となることはとても誇らしい事なのに、どうして花嫁にはなってほしくないのか」
「……いいえ。なぜ喜んでくれないのかとばかり」
「貴女と一緒にいたいからです」
 すぐには相真の言わんとしている事が理解できなかったのか、キエラは何度か瞬きを繰り返す。
「死んでしまったらもう一緒にはいられない。それが許せない。どれほど名誉なことであっても、それでも一緒にいたい、そう願うほど貴女が大切なんだと思います」
「……でも、しかし――」
 ドラゴンに対する不敬であり反逆である、とキエラは言いかけたのかもしれない。ドラゴンが絶対の存在であり支配層でもあるこの地では、それはごく当然の、かつ自然な反応であると言えた。しかし反射的に言い返そうとしたと表現するには、あまりにも躊躇いが多いことを相真は見逃さない。
「貴女も以前はそう思っていたのではないですか? 何があっても一緒にいたいと」
 雷にでも撃たれたかのようにキエラが目を瞠る。
「――それは」
「もう一度思い出してみてはもらえませんか、その時の気持ちを。ケネスさんにイチゴの花を贈った時のような」
「他の方の話を漏れ聞いた感触ですが、イチゴの花は幸せになって欲しいと願う人へ贈られるもののように感じました。何よりそのブーケも、貴女の幸せを願いお渡ししたものです」
 両手の中にある花束を何か怖ろしいものを見るように見下ろし、竜の花嫁は立ち尽くす。
「貴女はどこか、自分の幸せを差し置いても他人の幸せを願うような優しい方のように思えました。……そして、もし貴女が幸せになってほしいと願う方の本心からの願いは、貴方と一緒に幸せになる事。そして貴女が花嫁に選ばれてしまった今、ここから遠くに逃げてしまう事なのだとしたら、どうしますか?」
 ソレイユの言葉に思い当たる節でもあったのか、ブーケに落とされていた視線が大きく揺れる。
 ……ここまで経緯でそこかしこに見え隠れしてきた、彼女が愛するというイチゴの花。
 その花が彼女とケネスとの関係において鍵を握っているはずだという仮説と想像は、あながち間違いではなかったらしい。
「でも、そんな」
 そんな事はありえない、と言わんばかりにキエラは首を振る。
「ありえないと、そんなはずはないと、そう思いますか? ――今貴女は、本当に幸せですか?」」
 本当に? と静かに重ねたソレイユを見上げ、何か言い募ろうとして、結局何も言えずに目を逸らした。その視線の先にはまっすぐに歩み寄ってくるエトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)が、そして遠い壁際でケネスと何やら話し込んでいるルウェリン・グウィンリウ(灯火の騎士・g02040)の姿がある。

「聞いてくれ」
 すでにケネスは先ほどからルウェリンの友達催眠の影響下にあり、伝えるべき事を伝えたなら、あとは成り行きを天に任せるだけだった。彼等ディアボロスが立てた推測と仮説が正鵠を射ている可能性も高い。
「僕が子供の頃、両親が殺され僕自身も奴隷に落とされかけた。けれどそれを救ってくれた戦士達がいた」
 彼等はルウェリンが立ち直るまで辛抱強く支えてくれたこと、しかし結局彼等も殺されたこと。
「もし過去に戻ることができたなら、皆を救い出すのに」
「……」
「戦士達も、両親も、皆だ。絶対に救ってみせるのに」
 そんな後悔をずっと抱えている。きっと一生、これから先も。
 先ほどは、なぜ一緒に逃げないのかと発破をかけた。逃げられるかどうかなど、やってみなければわからないことだ、と。
 しかし彼はもうそんな資格などないと自嘲してみせたのだった。
「ケネスさん、貴方の資格はまだ失われていない」
 ――なぜなら彼女はイチゴの花を受け取るに相応しい人だと、今も昔も揺るぎなく信じているのだから。

「イチゴの花には『幸福な家庭』の意味がある。『愛情と尊敬』とも」
 次々と枝をのばし豊かに実をつけることから、古くからそう言い習わされてきた。
「……リースは良いな。家族皆が無事に帰ることを願って飾るもの」
 ただし皮肉なのは、この街ではこれから家族を持つこともなく命を散らす花嫁を喜ばせ言祝ぐために使われるということだ。クロノヴェーダの支配下に置かれる前からの何らかの風習なのか、それとも後のものかなど知る方法はないが、もし仮に後者だとしたならもはや悪意しか感じない組み合わせだとエトヴァは思う。
 果たして彼女はイチゴの花にどんな願いを込めただろう。
「ケネスさんに幸せを……子供をつくって、幸福な家庭を。それを与えられるのは貴女だけだ」
 幼くして家族を一度に亡くし、一人きりでもケネスは立派に生きてきたという。
 この宴の間だけではとうてい推し量ることのできない、彼女たちしか知らない絆も時間も思い出も多くあるだろう。その源流は彼が家族を失ったとき、その悲しみを慰めるために摘まれた、ひどく幼く、それでいてなにより純粋な愛のかたち。
「彼は私に、もう『家族』を与えることはできないから、と」
 天涯孤独のケネスはキエラに新しい親や兄弟を与えることはできない。そういう意味で、ケネスはキエラから家族を『奪う』立場でもあった。
「これ以上、君に似合う花はないねと、言って」
 両手の中のブーケへ顔を埋めるように、キエラは嗚咽を噛み殺している。
「わたしはずっと、ちいさい、ころから、――ひとりぼっちじゃないと、ひとりになんかしないと、ずっと、そうおもって、きたのに」

「絶対に一人にすることはしないと、そう言ってくれた彼女に、僕は」
 ルウェリンはただ黙って、キエラへ向かって歩を踏み出したケネスの背中を見送った。
 竜が怖いならヒベルニア、つまりアイルランドに逃げれば良いと言い放ち、それは何のことだと心底不思議そうに首を傾げられたのは後で笑い話にすればよいだろう。考えてみれば五世紀の時分の一般人が周辺諸国の地理など学ぶ機会があるはずもなかった。
「一人で死んでいくことを喜んでみせてしまった。本当にそれでも、間に合うんだろうか」
「失敗して逃げ帰ってくるかもって?」
 あえて鼻で笑ってみせて、ルウェリンはケネスの背から目をそらす。本当にもう見ていられない。これ以上は邪魔せず退散しておくのが吉だろう。
「そんな情けない男の味方はできないよ。わかったらさっさと、自分の花嫁の涙を拭いに行ってあげるんだね」
 何と言ってもその手にはおあつらえむきに、キエラが丹精こめて縫い上げた手斤があるのだから。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【託されし願い】LV1が発生!
【プラチナチケット】LV2が発生!
【友達催眠】がLV3になった!
効果2【ダメージアップ】LV3が発生!
【アクティベイト】がLV3(最大)になった!

最終結果:成功

完成日2022年04月24日