リプレイ
●希望の光、いまだ差さず
その広場には、あらゆる人々がいた。
不平を零した老人、復讐者を支援した青年、自動人形から娘を庇った父親、どさくさ紛れに連れて来られた少女……。
西暦1802年、断頭革命グランダルメ。罪なき市民が集められたフランス市内のとある街で、処刑と言う名の虐殺が始まろうとしていた。
『よく見なさい、彼らの処刑を。あなたが死ぬのはそれからよ――シスター・エレノア』
広場の断頭台で、少女の姿をした自動人形が告げる。
クロノス級『罰当たりっ子』マルグリットの言葉に、エレノアと呼ばれた女性は沈黙をもって答えとした。
どのような光景が起ころうとも決して目は閉ざすまい。悲鳴も絶叫もすべて、己が魂へと刻み込んでやる――。
異変が起きたのは、そう誓った直後のこと。
『……何か来る?』
マルグリットが視線を向けた先、広場の外れに出現したのは一台のパラドクストレイン。
そこから飛び出してきた者達が、まっすぐに断頭台へと駆けて来るのだ。
この世界に存在してはならない異物――見知らぬ侵入者達をマルグリットはそう定義づけ、広場に整列する解体少女達へ指示を送る。
『奴らを殺しなさい。市民の処刑は後回しよ』
正義は、執行されねばならない。異物は、排除されなばならない。
時間軸の主たるクロノス級、『罰当たりっ子』マルグリットが認識すると同時――。
世界は、復讐者に牙を剥いた。
響風・涼花
【奴崎組】※アドリブ歓迎
――ケリを、つける。今度こそ奴との戦いを終わらせる。
私にはその為の力がある。仲間がいる。
まずは、邪魔だ手前ら。その先の頭に用がある。退きやがれ三下――!
情報収集でその辺に何があるかを把握。前もって【強運の加護】を使って鉄パイプか鉄の素材を手に入れておく。
敵が大上段から振り下ろしてくるのなら、手に入れた物で鋸を受け止める。そのままいなしてストリートストライクで反撃。
数が多い場合は、敵を一撃離脱で潰していき数を減らしていく。
シスターエレノア。きっと彼女は私にディアボロスの力をくれた人。
本能的にそれを感じる。だとすれば、私は絶対に彼女を助け出して見せる。
奴崎・娑婆蔵
【奴崎組】
●POW
おう涼花の、あれがお前さんの喧嘩相手でござんすか
本丸のクロノスを前に全霊出し尽くしちまうのもうまくねえ
助太刀致しやすぜ
連中……得物は白兵、移動は徒歩か
よござんす
だってんなら、あっしの地獄に招待してやりやしょう
八ツ裂きにしてやりまさァ――殺人領域、早贄山麓刀輪処
慄け
これが地獄の処刑法でさァ
・【泥濘の地】の力を込めた高低自在の地形を繰り出し、敵群を坂下へ追い遣り移動力を削ぐ
・追い打ちを掛けるように、足元より剣の山と刀の林を出でさせると共、刃の葉もばら撒き攻勢
・味方へ突出して迫る敵個体や徒党あらば「坂上に追い遣る」「低所へ落とすと共に泥濘に浸ける」等、その周辺を特に強力に地形操作
●邂逅
出生地は日本。誕生日は2月23日。
偶然遊びに来た新宿で、刻逆に巻き込まれ復讐者となった少女。
響風・涼花(世界に拳を叩きつけろ・g05301)にとって、パラドクストレインを降りた先に広がる景色は、まさしく異邦のそれであった。
「ここが、クロノス級の創り出した時間軸……!」
極限まで研ぎ澄まされた涼花の五感が、歪な世界を捉えた。
広場には、処刑の為に連れて来られた人々がいる。巨大な鋸剣を手に、群れを為して迫りくる解体少女達がいる。
その奥に設けられた断頭台には、捕縛されたシスター・エレノアの姿。互いに視線が交錯した刹那の間をもって、涼花はすべてを理解する。
「――ケリを、つける」
口から言葉が毀れた時には、涼花の手はひとりでに得物を握りしめていた。
太く、頑丈な火かき棒。視線は断頭台へと向けたまま、いま涼花は一直線に走り出す。
シスターの首筋に刃を当てるクロノス級クロノヴェーダ――『罰当たりっ子』マルグリットを真っすぐ睨みつけて。
「今度こそ奴との戦いを終わらせる。私にはその為の力がある。仲間がいる……!」
「おう涼花の、あれがお前さんの喧嘩相手でござんすか」
涼花と同じ相手を睨み据えながら、奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)が呟いた。
そして感じる。姿形こそ少女のそれだが、あの敵は手強い。いま娑婆蔵達の眼前に迫って来る解体少女の群れなど、及びもつかぬ程に。
「本丸を前に全霊出し尽くしちまうのもうまくねえ。助太刀致しやすぜ」
盃を交わした二人の間に、余計な言葉は必要ない。
涼花は得物を振り被り、駆ける速度をさらに上げて、無謀にも解体少女の群れへと飛び込んでいく。
「どけ、邪魔だ手前ら!」
『……――』『……――』
返答の代わりに大上段から振り下ろされる、鋸剣の一撃。
それを涼花はストリートストライクの閃きに身を任せ、真正面から打ち砕く。
パラドクスを帯びた火かき棒は、まるで命を持つように鋸剣を打ち払い、一撃で解体少女の細首を叩き折った。
「その先の頭に用がある。退きやがれ三下――!」
「連中、何が何でもあっしらを止めるつもりのようで……よござんす」
なおも迫る解体少女を娑婆蔵は狙い定めると、パラドクスで殺人領域を発動。泥濘の地を広げながら、広場の地形を造り替えていく。
今ここに集った奴崎組の者達は、自分を含めてただ一人の例外もなく、涼花の願いを果たさせる為に居るのだから。
「八ツ裂きにしてやりまさァ――殺人領域、早贄山麓刀輪処」
娑婆蔵のパラドクスが発動すると同時、広場は一瞬で彼の殺界へと変貌した。
平らな地面は坂道へ変わり、泥濘へ変わり、すべてが明白な殺意をもって解体少女の一団を捉える。
「慄け。これが地獄の処刑法でさァ」
踏み越えようとする者は刀林でなます切りにされた。
跳び越えようとする者は泥濘に足を取られて剣山で串刺しにされた。
涼花と娑婆蔵の疾駆を、解体少女の群れはまるで阻むことができない。
『……――』『……――』
尚も残った二体の解体少女は最も不幸だったかもしれない。
何故なら――娑婆蔵の足元から伸びる武器化した影によって、文字通り跡形も無く切断粉砕されたからだ。
そうして物言わぬ自動人形の残骸が転がる中、娑婆蔵は言葉を送る。断頭台に囚われた女性の元へ、まっすぐに駆け続ける涼花の背中へと。
「涼花の。ここはあっしらに任せなせえ」
娑婆蔵の言葉に、涼花は駆ける速度を上げることで答えとした。
今は返事のひとつも惜しい。持てる力の全てを、エレノアの為に使わねばならない。
同時、同胞の死にも頓着せずに襲い来る解体少女の群れ。そこへ道を切り開かんと、新たな仲間達が躍り出た――!
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【強運の加護】LV1が発生!
【泥濘の地】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
リューロボロス・リンドラゴ
【奴崎組】
涼花よ。ぬしの願いは我らの願い。共に往こうぞ。
異物と見做して排除しに来るというのなら都合が良い。
盛大に目立ってくれようぞ!
我こそは龍、我こそはドラゴン!
幼子達の命を奪い、あまつさえその幻影に石を投げさせし者共よ。
報いを、受けよ!
無論、そのような歴史には二度とさせぬがの。
啖呵を切りつつ無限翼で派手に吹き飛ばしてくれるわ!
民達が逃げる邪魔にならぬよう、向きは考えるがの。
時間もかけたくないからな。
竜の追い風(先行率アップ)よ、同胞達にあれ!
民達よ。我らが来た。
ぬしらの、そしてシスターの怒りが我らを呼んだ。
後は我らに任せよ。
ぬしらの怒りは我らと共に。
シスターの怒りは涼花と共にあるのだから。
黄泉王・唯妃
※アドリブ歓迎
【奴崎組】で参加。
さて、涼花(g05301)が組長(g01933)と盃固めて初の依頼ですね。
晴れの舞台への花道の露払いくらいは引き受けませんとね。
さて相手はお人形ですか。
向こうはバラす気満々のようですが、こちらはバラしたところでお人形では、ね。
【早業】で斬糸を展開。手足、首、胴体を細切れにしていきましょうか。
向こうも負けずに斬り裂きに来るようですが【残像】と本体、それがどちらか捕えられますか?
解体して転がった頭を踏み潰して先に進みましょう。
「一先ずはこれで良し、と。あまり目立っても仕方ありませんし今回は引き立て役に徹しますよ」
椋井・矢一
【奴崎組】
■アドリブ・連携歓迎
縁ある相手の因縁勝負だ。
その一助となるべく、加勢させてもらうよ。
さぁ、クソッタレの悲劇を覆そうか?
行動は味方の援護・一般人救助の有利となるように意識、立ち回りは〈臨機応変〉に。
〈殺気〉をばら撒きつつ〈ダッシュ〉で駆け回り、『復讐者の赫怒〈念動力〉』での打撃を叩き込んで敵陣を〈撹乱〉する。
【泥濘の地】による敵の機動力制限も併せて、戦場の主導権をコチラ側で掌握してやる。
「地に伏せろ、泥に溺れて無惨を晒せ――」
行使するパラドクスは【怨讐の腕】。
引き倒し。掻き毟り。握り潰し。
地面より無数に這い出る亡者の腕をもってして、人形どもを這いつくばらせてやる。
「――応報の時間だ」
霧原・瑶蓮
【奴崎組】
※アドリブ・連携歓迎
俺も加勢するぞ、涼花。組の仲間は持ちつ持たれつってな。
「我流喧嘩殺法、霧原瑶蓮だ。お前たちの企みを残らず潰しに来た」
お前たちの数がどれだけ多かろうが、その力は畢竟個の力を束ねたものに過ぎない。
名乗りを上げればお前たちは迎撃に寄って来ざるをえないだろう。
集まってくれば仲間の【泥濘の地】の恰好の的だ。
なおも攻撃してくる敵あらば、その鋸剣の大振りを【フェイント】と【地形の利用】で躱してからカウンターで蹴撃の影。
1体ずつ確実に数を減らしていく。
【臨機応変】に敵の動きを見極め、仲間を攻撃しようとする敵がいれば優先して撃破に行こう。
注意が向いていれば奇襲も容易いというものだ。
●その名は奴崎組
優れた戦闘集団は、時として、集団自体がひとつの意志を持って戦場を動き回る。
それは時に獲物を呑み込む網となり、時に攻勢を受け止める盾となり、臨機応変にその姿を変えるのだ。
以上を踏まえて語るならば、いま処刑広場を突き進む【奴崎組】の面々は、さながら一本の槍であった。
先頭の涼花を穂先に、続く組員が暴れ回り、解体少女の隊列を突き破り、こじ開けていく。余計な問答も、逡巡も、そこには一切存在しない――!
「さて、花道の露払いくらいは引き受けませんとね」
黄泉王・唯妃(灰色の織り手・g01618)が青空の下で手を躍らせれば、鋭い斬糸が宙を舞う。
背中の絲翅から飛び出た『細蟹』の糸。触れたモノを残らず切断する死の結界が、結界少女を次々と捉え込んだ。
仕事は果たすが、目立つ気はない。今回の戦い、唯妃は引き立て役に徹すると決めていた。
「さあ、黄泉へと還りなさい……これが貴方に与えられた最後の慈悲よ」
『……――!』
糸に触れた解体少女の腕が、切断されて玩具のように宙を飛んだ。
同時、痛覚なき少女達が構える剣から放たれるのは、悲鳴にも似たおぞましき波動。もげた腕をそのままに、斬撃の嵐が唯妃めがけて殺到する。波動によって鈍った足運びにも、唯妃はまるで動じることはない。切り傷など幾らでも望むところだ――そう、挑発するように笑う。
誘われたように、負傷した解体少女が二体、唯妃の首めがけ処刑者の剣を叩きつけようとして、
「見えるかな。見えないかな。見えない方に賭ける」
名乗りと共に放たれた蹴りが、少女達の頭を立て続けに粉砕する。霧原・瑶蓮(無銘の拳士・g04575)が放つ柔軟にして鋭利なる一撃、『蹴撃の影』である。
絶命し、崩れ落ちる敵には目もくれず、瑶蓮は新たな解体少女達へ高々と名乗りを上げた。
「我流喧嘩殺法、霧原瑶蓮だ。お前たちの企みを残らず潰しに来た」
瑶蓮にとって、この戦場で自分達がすべきことはどこまでもシンプルだ。
すなわち――敵の意識を引きつけ、涼花の道を切り開くこと。同時、彼の名乗りに誘われたように、解体少女の群れが更に殺到して来る。だが彼女達は気づかない。まさに踏み込もうとしている場所が、組の仲間達によって泥濘の地へと変えられていることに。
「さぁ、クソッタレの悲劇を覆そうか?」
その一人、椋井・矢一(マグマ・g04848)は戦場を縦横無尽に駆けながら、解体少女の一団へ打撃をばら撒いた。
パラドクスを介さぬ攻撃は傷を与えることこそ叶わぬが、それでいい。狙いはもとより撹乱と挑発にあるのだから。
瑶蓮の名乗りと挑発で、頭数の膨れ上がった解体少女の群れが、泥濘の地へと嵌り込む。同時、そこめがけて殺到するのは矢一の発動したパラドクス――『怨讐の腕』だった。
「地に伏せろ、泥に溺れて無惨を晒せ――応酬の時間だ」
沼地よりはい出た無数の腕が、解体少女達を次々に引きずり込んだ。
矢一の怨讐を込めた感情を具現化した腕は、一切の容赦を知らない。引き倒し、掻き毟り、握り潰し、自動人形達を瞬く間にスクラップへと変えていく。
『……――』『……――』
何体かの解体少女は辛くも難を逃れるが、矢一らによる泥濘の地は浅くなく、未だ自由に戦場を駆けることを許さない。
戦場において、動きが鈍い者はそれだけで的になる。当然、解体少女達も例外ではなく、見る間にパラドクスの嵐に晒されようとしていた。
リューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)の翼がもたらす、『竜巻無限翼』の風である。
「我こそは龍、我こそはドラゴン! 無辜なる子等の命を奪いし者共よ。報いを、受けよ!」
肉体こそ幼子だが、宿す魂はどんな竜にも負けはしない。
広場の市民達へ告げるように、リューロボロスは背中の翼を堂々と広げ、いま不届きな自動人形達を狙い定めた。
「幼子よ、目を輝かせよ。涙吹き飛ばすは竜である!」
鋼と歯車を肉体に持つ解体少女が、紙細工のように吹き飛んで行く。
市民のどんな剣も、どんな銃も、傷ひとつ付けられなかった自動人形。そんな彼女達が次々に倒されていく光景を信じられない表情で見守る人々へ、リューロボロスは胸を張って堂々と告げる。
「民達よ。我らが来た。ぬしらの、そして彼女の怒りが我らを呼んだ」
リューロボロスが指さすのは、断頭台に縛り付けられたシスター・エレノア。そして、そこ目指して一直線に駆けていく涼花の雄姿である。
「後は我らに任せよ。ぬしらの怒りは我らと共に。シスターの怒りは涼花と共にあるのだから!」
グランダルメの冬、ギロチンの鎮座する広場。
悲劇と絶望の君臨する時間軸に、いま希望の光が差し込もうとしていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【クリーニング】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
【泥濘の地】がLV2になった!
【強運の加護】がLV2になった!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV2になった!
【アヴォイド】がLV2になった!
奉利・聖
ほう、クロノスが来ているのですか
それは重畳──ゴミ掃除が捗って素晴らしいことです
とはいえ油断は禁物 少しでも間違えれば被害は大きくなり、我々が負ける
慎重に、躊躇なく…撃滅をしてやりましょう
到着次第行動開始 敵に思考時間を与えない
<ダッシュ>で距離を詰め、振り下される鋸剣をインターセプト
──『鉄禍ノ乱』
肉体の硬化により、身体で受けても問題ありません
装備している龍骨とFARBLOSで、近接戦闘を仕掛けましょう
防御力に任せた強烈な<強打>と、ショットガンモードによる<破壊>で御大立ち回りしてやります
死角の攻撃も見えております…気の網は不意打ちを捉えますので
さぁ、お逃げなさい
我らが殺し返してる間にね
●掃除人、駆ける
復讐者と解体少女の戦闘開始から数分後。
自動人形の残骸が散らばる広場、奴崎組の一団から少し離れた場所で、一人の男が静かに戦いを続けていた。
名を奉利・聖(クリーナー/スイーパー・g00243)という。
「ほう、あれがクロノス級ですか。じつに重畳──ゴミ掃除が捗って素晴らしいことです」
戦場到着と同時、聖は断頭台のマルグリットを一瞥。それから彼が開始したのは解体少女の撃滅行動だ。
迅速を第一とする速攻で主導権を握り、戦いのペースを掌握したまま撃破する――そんな聖の攻撃の前に、解体少女の群れは一度も戦況を押し返すことのないまま、劣勢を強いられ続けていた。
「市民の被害を出す訳にはいきません。慎重に、躊躇なく……撃滅をしてやりましょう」
『……――』
怯える少年を狙っていた解体少女達の頭部が、ふいにグルリと回転。接近する聖めがけ鋸剣を大上段に振りかぶる。
自動人形の膂力で標的を切断する『死を招く剣』――市民の首から聖の首へと標的を変えたその凶刃が、立て続けにブンと振るわれて、
「平気です、この程度」
『――!』
受け止められた。
聖が軽々とかざした両腕には、糸筋ほどのかすり傷が生じたのみ。
それは錬結気功『鉄禍ノ乱』による防御力上昇効果で、鋸剣を受け止めた結果である。たとえ敵が二体だろうと三体だろうと、気の網を展開した彼に一切の死角は存在しない。
「驚きましたか? ではもう一つお見せしましょう、冥途の土産と言う奴です」
言い終えたその瞬間には、もう聖はショットガン『FARBLOS』の銃口で解体少女の眉間を捉えていた。
鋸剣は振り下ろした直後。ガードは間に合わない。
「見えておりますよ」
鳴り響く発砲。同時、頭部を吹き飛ばされた解体少女が三体、その場に物言わず崩れ落ちる。
震えながらも立ち上がった少年へ、聖はちらと目を向けた。少年の体に怪我はなく、一人で走って逃げられそうだ。
「さぁ、お逃げなさい。我らが殺し返してる間にね」
「……あ、ありがとう……!」
お礼を残して逃げていく少年を背に、聖はふたたび動き出す。
慈悲はない。道端のゴミに同情する掃除人などいないように、少年の復讐者は新たな標的を求めて戦い続けた。
大成功🔵🔵🔵
効果1【照明】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!
湯上・雪華
絡み、アドリブ等完全受け入れ
重傷描写大歓迎
【奴崎組】
涼花さんの因縁を終わらせるためにも
えぇ、全力でお手伝いさせていただきます
殺戮なんてさせるわけないですよ、面白くない
では、渇望抱く伽藍、参ります
虚ろを抱き、渇望の呪いを宿す妖刀にて切り結びましょう
戦場を駆けまわることは得意ですから
同じく駆け回る方もいますからね
暗器もデリンジャーも使って不意を突くように
皆さんの手助けをメインとしましょう
輝ける一条をもって守りを示せ
活性治癒で逃げる人達の傷を癒せれば逃げやすくなるはずだよね?
逃げる皆さんを庇うように立ち回りましょう
誰も殺させること無く終わらせるためにもここは通しません
ア・ンデレ
【奴崎組】
ともだちのために、アンデレちゃんがきた。
やつざきぐみの、アンデレちゃんがきた。
ヒーローである、アンデレちゃんがきた。
アンデレちゃんはイマジナリキャノンをつかって、ほうげきによるだんまくをはるよ。
これでよわいにんぎょうどもをいちもうだじんにしてやる。
りょうかちゃんのじゃまをするものは、アンデレちゃんがすべてうちはらう。
アヌシュカ・ヴァルシュミーデ
【奴崎組】
アドリブ歓迎
「さて、先駆けようか。…囮の必要ないかもだけど。」
「やぁ、みんな可愛いね。良ければ『俺』と1曲どうだろう。」
おれに出来るのは囮と足止め。戦闘は武闘派な皆にお任せ。派手めな【演技】をしながら常に視線を集めるように動き回りたいね。
仲間に力添えを頼まれたんだ、お兄さんだって少しは役に立ちたいわけよ。
上手く【撹乱】して、敵の攻撃に対しては【高速詠唱】を使った【連続魔法】でパラドクスを発動させつつ逃げ回りたいかな。
先に敵を鈍らせれば多少は避ける余裕も出るだろうし。お客さん、もとい助けるべき人達に視線が向かないようにを最優先に動こう。
「戯曲ってのはこう奏でるものだよ、お嬢さんたち。」
キャラメル・マムフィールド
【奴崎組】
なんの罪もない人々に刃を向ける行い、見逃すわけにはまいりません
皆様、必ずわたくし達がお守りします!
一般人に近いところにいる敵を優先して攻撃
勇気を出して狙いを定めて、大きな竜骸剣で【ブレイブスマイト】を叩き込みます
わたくしの技量では1体を相手取るのが精一杯ですので、一点集中で確実な各個撃破を目指します
攻撃回避の仕方や防御のやり方はよくわかりません
できる限り、刃先が当たらないようにがんばって避けます
恐らく避けきれずにダメージを受けてしまうでしょう。それでも【勇気】を振り絞って【突撃】します
「きっとわたくしは、皆様をお守りするために生き延びたのですから……!」
●覆りゆく運命
パラドクストレインが広場に到着してから数分。
復讐者の攻勢はまさに嵐の如く、自動人形の群れを制圧しつつあった。
強襲し、撹乱し、誘き出して撃破する。流れるような動きに一切の無駄はなく、解体少女に為す術はまるでない。
「やぁ、みんな可愛いね。良ければ『俺』と1曲どうだろう」
アヌシュカ・ヴァルシュミーデ(水葬に揺蕩うモノ・g00153)の奏でる戯曲に、解体少女の視線が殺到する。
戦場と化した広場を舞台に見立て、白金の指揮棒『prière』を振るい。それに対する鋼の少女達は一様に唇を閉じたまま、処刑者の剣を手に殺到する。キリキリと回る歯車と怨嗟にまみれた剣の波動を、歌声代わりに奏でながら。
『……――』『……――』
「やれやれ。戯曲ってのはこう奏でるものだよ、お嬢さんたち」
鉄面皮の少女達が繰り出す斬撃に、しかしアヌシュカは動じる様子もない。
挑発するように指揮棒を振るいながら、広場の中を踊るように動き続ける。彼の足取りは奔放なようでいて、敵の注意を逃げ遅れた市民から逸らす為のもの。万が一にも、彼らが戦闘に巻き込まれないように――そうして解体少女が一つ所に誘い出されると、
「街の方々には、指一本触れさせません……!」
「全力でお手伝いいたしましょう。渇望抱く伽藍、参ります」
キャラメル・マムフィールド(黄花郷の仔羊・g06010)と、湯上・雪華(悪食も美食への道・g02423)が、その左右から挟み込むように解体少女達へと斬りかかった。
左手から迫るのはキャラメルだ。新宿島で初めて食べた菓子の名をそのまま名乗る、元・名無しの少女。そんな彼女は初陣とあってか、フェアリーソードで振るうブレイブスマイトには未だ多少のぎこちなさが残る。
『……――』
「なんの罪もない人々に刃を向ける行い、見逃すわけにはまいりません……!」
高速振動する鋸剣が、容赦なくキャラメルの身を切り裂いた。
練習や訓練とはまるで違う『死』を意識する痛みが体を襲う。だが、彼女は逃げない。逃げる訳にはいかない。いま彼女の後ろで怯える、逃げ遅れた市民達を守る為にも。
「皆様、必ずわたくし達がお守りします!」
技は尽くした。後は勇気を込めて踏み込むのみ。同時、渾身のブレイブスマイトが勢いよく振り下ろされ、解体少女の心臓を貫く。初めてもぎとった戦果に、雪華とアヌシュカは惜しみなき賛辞をキャラメルへ送り、
「やるね、キャラメル。おれも負けてられないな」
「お見事です。後で涼花さんと組長にも話しましょう、きっと喜んでくれますよ」
キャラメルの初手柄を労う雪華だったが、その間も自分達の仕事を疎かにしてはいない。負傷した市民を活性治癒で癒し、広場から避難するための時間を稼ぎ、
『……――』
「あ、邪魔です」
キャラメルを奇襲せんとする解体少女は、『一条の煌めき』で雪華がきっちり仕留めることも忘れなかった。
そうこうするうち、アヌシュカは解体少女の群れを広場の中央へと誘い出しつつあった。頭数は多くない。一斉攻撃で問題なく片付くレベルだ。
「これで全部だな。さあアンデレ、頃合いだぞ」
「どかーん! どかーん! あんでれちゃんがゆくー!」
晴れ渡る青空の下、ア・ンデレ(すごいぞアンデレちゃん・g01601)の手が高々と掲げられる。
それがスッと振り下ろされたと同時、砲兵の幻影が隊伍を組んでイマジナリキャノンの砲撃を浴びせかけた。
少女の群れを呑み込むように砲弾の嵐が降り注ぐ中、弾幕を掻い潜った少女達が鋸剣を大上段から振り下ろすが――無論、その程度ではア・ンデレはびくともしない。
「じゃまするやつは、けちらすのだー! すすめー!」
「ふむ。砲撃音の伴奏も、たまにはいいかもね」
砲撃の降り注ぐ中、アヌシュカが『愛の運び手』を奏で始める。
観客たるクロノヴェーダに死をもたらす、呪われた戯曲の開演だ。
「これより語るは、愛多き男の物語――」
「どかーん! ずどーん! うおおー! ぶっとべー!」
戯曲の流れる広場の中央に、降り注ぐ砲弾の嵐。一体二体と絶命して崩れ落ちる解体少女。
そうしてアヌシュカの歌が終わった時、広場には解体少女の残骸だけが残された。
「市民の避難は完了です。……涼花は!?」
キャラメルの問いに、雪華は無言で広場の奥を指さす。シスター・エレノアが縛られた断頭台、その上に悠然と立つ『罰当たりっ子』マルグリット。涼花は今、まさにその運命の場所へと辿り着こうとしていた。
「よーし、もうひといき! がんばろー!」
「ああ。……急ごう」
拳を突き上げるア・ンデレ。服の埃をさっと払うアヌシュカ。
こうして解体少女を殲滅した復讐者達は次なる戦場を目指して走り出す。
シスター・エレノアが囚われた断頭台、そこで待つ『罰当たりっ子』マルグリットのもとを目指して。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【活性治癒】LV1が発生!
【隔離眼】LV1が発生!
【現の夢】LV1が発生!
【託されし願い】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【先行率アップ】がLV2になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
解体少女達の残骸が散らばる静寂の広場。
その一角に鎮座する断頭台めざして駆けて来る復讐者達を、マルグリットは静かに見下ろしながら告げた。
『なかなかの腕前ね。私の解体少女を全滅させるなんて、大したものだわ。けれど……』
復讐者の戦いぶりに賛辞の色さえ浮かべるマルグリットに、しかし焦燥の色はない。陶器のように冷たく無機質な声、そこに滲むのは微かな嫌悪の色だ。
この時間軸における神に等しいマルグリットにとって、目の前の復讐者達は処刑を邪魔した異物。そして『神』である彼女が、異物たる存在に対して取る行動はただ一つしかない。
『処刑を妨害した代価は払ってもらうわ。貴方達の血を、一滴残らずギロチンに捧げなさい』
言い終えると同時、マルグリットの右手から先に備えられた深紅の大鎌が、その切先を復讐者の一団へと向けた。
それが威嚇などではないことを、処刑台に括りつけられたシスター・エレノアは知っている。この自動人形が振るう処刑の刃は、如何なる存在も平等に殺すのだ。王も貴族も平民も、すべて分け隔てなく殺し続けたギロチンのように。
「来ては……駄目。この人形は、恐ろしい力を……持って……」
死の淵にあって尚、復讐者の身を案じるエレノア。
その忠告を振り切って、復讐者達はいまマルグリットの前へ辿り着く。断頭台の露と消えようとしているエレノアを、死の運命から助け出すために――!
湯上・雪華
絡み、アドリブ等完全受け入れ
重傷描写大歓迎
【奴崎組】
今度は救出ですね
敵の動きを止める人と救出と分かれた方が安全でしょう
やるべきことを確実に、犠牲は出させません
そばによる際は静かに素早く、けれど空気を読んで
確実性を担保したいですからね
処刑台に拘束されているのなら、彼女の拘束が解除された時点でギロチンを隔離
重量制限に阻まれるなら刃だけでも隔離させましょう
直接命を奪う部分を奪えれば充分
それでも彼女に攻撃が行くようならこの身を盾に庇う
気高き女性を護る事も誉ですからね
これくらい耐えられなくてどうします?
もし隔離できないようなら拘束を解除されてから壊しましょう
こっちは流れに合わせて、ってやつです
響風・涼花
絡み、アドリブ等受け入れ
ついに見つけたわ。マルグリット。
そしてシスターエレノア……細かいことは後に話すとして、今は貴方を助ける!
リベレーションブロウでマルグリットに消された人達の怨念が籠った武器を作り、マルグリットを飛び越えつつ攻撃。こちら側に視線を移させて、その間にギロチンを隔離してもらう。
隔離不可ならばリベレーションブロウで牽制しつつ、ギロチンを銃撃で叩き壊して解除を狙う。
マルグリットは【泥濘の地】で移動速度の低下を図る。
シスターエレノア。貴方は私にディアボロスの力と敵を視る力を託してくれた。
今度は、それを私が役立てる番。
貴方にはたくさんのお礼を言いたいけど、今は安全な所へ。
キャラメル・マムフィールド
【奴崎組】
正しき心で人々を守ろうとした方が、こんなところで命を落とすだなんて
そんな悲しいこと、わたくしは絶対に認めません
生贄ひとり捧げたところで世界は変わらないのだと、わたくしは村を出て知ったのですから
仲間が敵を引きつけている間に、エレノアさまの拘束を解きます
いざという時に盾になれるよう、可能ならば敵の攻撃を遮る位置に立ちます
ちいさな妖精をおひとり【召喚】して、二人がかりでお助けします
「どうか安全な場所へ。後はわたくし達にお任せください!」
救出途中、エレノアさまが攻撃されそうになったら【フェアリーコンボ】で迎撃します
リューロボロス・リンドラゴ
【奴崎組】仮
エレノア救出担当よ。
なに、足止めには涼花達がいるのだ。
心配なかろうよ。
――神剣、抜刀。
我が神剣で【一刀両断】すべきは何であろうな。
拘束が解けぬのなら拘束を断ち切ろう。
拘束解除に使用不能なら、断頭台の斬れそうな部分を断ち切り、隔離眼の重量制限クリアの一助となろうぞ。
あとは、うむ。
氷雪&光使いでの吹雪と光の乱反射でマルグリットからの視認を阻害しようかの。
少しでも足しになれば良しよ。
我が神剣は一太刀しか振れぬであろう。
であらばこちらで真っ先に盾となるべきなのは我であろうな。
エレノアよ。ぬしは理不尽から目を逸らさずに怒り続けた。
なればこそ、とくと見よ。
涼花の勇姿を。
ぬしと我らの逆襲を。
奴崎・娑婆蔵
【奴崎組】
・響風がマルグリッドを惹き付ける逆側に布陣
・【殺人領域「闇火暗天闇冥処」】発動、ギロチンの対処に動く仲間達への射線を遮るように黒い炎を噴き上げる地形を敷き【時間稼ぎ】を試みる
・ギロチン側の対処完了前に敵がそちらに迫りそうな際は、妖刀『トンカラ刀』を抜刀、自ら立ちはだかる
・敵の得物と競り合い【泥濘の地】を踏ませる、泥濘にハメると同時『ダイダロスベルト』で胴を絡め『影業』で足を絡めに掛かりと、動きを阻害する心算
そういやァまだ名乗っておりやせんで
手前、姓は奴崎名は娑婆蔵――人呼んで『八ツ裂き娑婆蔵』
ウチのモンがお前さんに用があるってェのは、マア御覧の通り
場の方、ちょいと塩梅させて頂きやすぜ
アヌシュカ・ヴァルシュミーデ
【奴崎組】
アドリブ歓迎
おれがやるべきはサポート一択。活躍すべきは主役だからね。
【飛翔】で宙に浮いて上から状況を把握しつつ、ギロチン側に行かせないように【アイスエイジブリザード】を【高速詠唱】を使った【氷雪使い】で威力増しの吹雪を広げて視界と足元を遮ろう。上から見てるから適切な場所に撃てるだろうし。
「まだ名前のない戯曲でごめんね?君を葬送る鎮魂歌は、おれが奏でるべきじゃないからさ。」
ついでに拘束に行ってる子達のサポートもしたい。可能であればd'oro、黄金の操り糸を使って【捕縛】。敵の少しでも動きに支障が出れば味方の動きやすさも変わるよね。
「さぁ、前座を楽しもう。おれらと1曲踊っておくれ。」
黄泉王・唯妃
※アドリブ・連携歓迎。
【奴崎組】
足止め、時間稼ぎ上等です。
むしろ多人数での立ち回りでしたらそれこそ渡し向きの作業ですね。
奴崎・娑婆蔵(g01933)を前に立たせ、その背後から鋼糸で手足を狙っての【早業】【捕縛】。特にギロチン側を自由に出来ないように丁寧にその動きを阻害します。
他の方が泥濘の地を使うようなので此方は【トラップ生成】で落とし穴を設置。
拘束が完全に出来ないとしてもそちらに追い込んで落とすように立ち回ります。
「皆の意思がでひとつを成す……。私には不向きな役かもしれませんが組の皆には手を出させるわけには参りませんもの。ねぇ、組長?」
●熱狂の断頭台
必ず助けると誓った相手がいた。絶対に許さないと復讐を誓った相手がいた。
静寂の広場に設けられた台の上、高々とそびえる巨大なギロチン。そこに映るふたつの人影――自分が探し続けた者達の姿を、響風・涼花(世界に拳を叩きつけろ・g05301)の瞳ははっきりと捉える。
「ついに見つけたわ、マルグリット」
涼花は怒りを帯びた声で、処刑台の上に立つ自動人形を睨みつけた。
魂の奥底からこみ上げるのは、燃えるような破壊の衝動。戦いに逸る気持ちを、しかし涼花はぐっと抑えつける。
いま最優先すべきは戦闘ではない。涼花に復讐を託した、一人の女性の救出なのだから。
「やっと会えたわね、シスターエレノア」
「……っ」
言葉では到底言い尽くせない想いを秘めた視線を、刹那の間でエレノアと交わす涼花。
そうして彼女は今一度、己が心を復讐者のそれへ切り替えると、忌まわしい処刑装置の姿を仰ぎ見た。
階段付きの台は、高さが3mほど。設置されたギロチンの真下に、エレノアはうつ伏せの姿勢で拘束されている。拘束具は首を固定する木枷と、そして恐らくは手足も拘束されていることだろう。
救出チームのメンバーが総がかりで行けば、十分に対応可能な範囲だ。その為にも、今すべきことはただ一つ。
「細かいことは後に話すとして……今は貴方を助ける!」
『そう……邪魔をする気なのね』
決意を胸にリベレーションブロウを発動。それを合図に、奴崎組の仲間達が一斉に動き出す。
対するマルグリットもまた復讐者の排除にかかる。この時間軸を支配する彼女にとって、『異物』の排除は何より優先されることなのだ。
『さあ、革命の時間よ。――Vive la révolution!』
ひらり。自動人形が断頭台の上から飛び降りると同時、熱狂を帯びた声が広場に響き始めた。
次いで、涼花達を取り囲むように現れたのは、革命に酔う市民達の幻影である。
――革命万歳! 革命万歳!
――革命万歳! 革命万歳!
男も女も老人も子供も、幻影達の視線が残らず復讐者へと注がれる。お前達を革命の供物に捧げるのだと、各々が棒切れを石ころを武器に携えながら。そんな幻の群衆を引き連れ、颯爽と歩むマルグリット。一歩一歩と間合いが詰まり、視線が涼花のそれとかち合うと同時、
『好きなだけ足掻くといいわ。貴方達の血も、残らずギロチンに捧げてあげる』
「させるか……! あんたに殺された皆の恨み、思い知らせてやる!!」
飛翔で上空へと舞った涼花の手から、怨念渦巻く投げナイフが次々と降り注いだ。
マルグリットに処刑された者達の怨念がこもった刃は、しかし大ダメージを与えることではなく、足止めを狙って放たれたもの。反撃とばかり、群衆が投げてくる石礫をナイフで弾きながら、涼花はちらと地上に視線を向ける。
そこでは、エレノア救出に向かう別働メンバーの仲間達が、今まさに断頭台へと辿り着こうとしていた。
「エレノアさま、今お助けします!」
「もう大丈夫ですよ、シスター。マルグリットは私達が討ちます」
台の階段を駆け上り、ギロチンに囚われたエレノアのもとへ駆け寄ったのは、キャラメル・マムフィールド(黄花郷の仔羊・g06010)と湯上・雪華(悪食も美食への道・g02423)。
二人は励ましの言葉でエレノアを労りながら、すぐさま拘束を解きにかかる。
体の自由を奪っているのは革帯と首枷のふたつ。加えて問題は、二本の柱に支えられたギロチンの巨大な刃である。涼花はマルグリットの意識を引きつけるように頭上を飛翔しながら、柱の片方に小型拳銃の照準を合わせる。
「今のうちに、あれを壊す!」
そうして発射された銃弾は、しかし無情にも柱に弾かれて、僅かな傷をつけるに留まった。
同時に涼花は悟る。あのギロチンは、ただのギロチンではない――!
「マルグリット、まさか……!」
『勘が良いわね、その通りよ。……といっても妙な仕掛けはないわ、ほんの少し頑丈なように細工してあるだけ』
(「クロノオブジェクトか。となると、隔離眼での隔離は無理ね……!」)
涼花は唇を噛みながら、瞬時に思考を巡らせた。
マルグリットの言葉に嘘はないだろう。彼女にとって、処刑はあくまで自動人形の手で行われるべきもの。それを台無しにする仕掛けを、断頭台に施しているとは思えない。
手の内を平然と暴露してみせたのは、己が勝利を微塵も疑わない自負ゆえか――そんな涼花の思考を打ち切るように、紅色の鎌をマルグリットが振り被る。硝子球を思わせる双眸で、エレノア救出に集中する雪華の首を狙い定めて。
『たまに処刑を邪魔する人間がいるから、そのための処置よ。そして、そういう者は一人残らず……刈るわ』
「雪華さま、危ない!」
キャラメルの警告が飛ぶのとほぼ同時。マルグリットが断頭台へ跳躍しようとして、刹那、その足が止まった。
雪華達を守るように、断頭台の前に立つ人影がふたつ――その先頭に立つ男が、一振りの妖刀を抜きながら口を開く。
「場の方、ちょいと塩梅させて頂きやすぜ」
「そういうことよ。少し、私達と遊んで貰うわ」
有無を言わさぬ殺気を放つ男の背後で、黄泉王・唯妃(灰色の織り手・g01618)がフッと笑みを漏らした。
笑顔というには余りに毒々しい、毒蜘蛛めいた貌をマルグリットへ向けて、唯妃は男へ次なる言葉を促す。
「組の皆には、手を出させるわけには参りませんもの。ねぇ、組長?」
「ああ、そういやァまだ名乗っておりやせんで」
はたと気づいたように、男――奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)はマルグリットに名乗りを上げた。
「手前、姓は奴崎名は娑婆蔵――人呼んで『八ツ裂き娑婆蔵』。ウチのモンがお前さんに用があるってェのは、マア御覧の通り」
抜刀した妖刀『トンカラ刀』の切先が、マルグリットへ突きつけられる。
これ以上、お前の好きになどさせない。仲間を守り、エレノアを救い、自動人形は残らず滅ぼしてみせる。
そう無言で告げる娑婆蔵と唯妃の視線に、マルグリットもまた真正面から視線をかち合わせることで応えた。
『邪魔をする異物はすべて排除する。……もちろん、貴方達もよ』
同時、娑婆蔵と唯妃もまた、攻撃の口火を切った。
会話の通じる相手出ないことは百も承知、ここは力ずくで押し通る以外にない。そしてそれは、娑婆蔵ら奴崎組の者達にとっても、まさに望むところなのだ。
「問答無用ってやつですかい。なら仕方ねェ――地獄道〝火途〟」
先手を取った娑婆蔵の全身から、黒い焔が噴出する。
覆い尽くした者の心身を焼き尽くす殺人技芸、殺人領域「闇火暗天闇冥処」のパラドクスだ。
炎と熱風が吹き荒れる暗闇でマルグリットを包み、胴を絡めての妨害にかかろうと娑婆蔵が『ダイダロスベルト』を構えたその刹那、
『正義の柱は血に飢えている。さあ、ギロチンに血を注ぎなさい』
暗闇を切り裂くように飛来した断頭の刃が、次々と襲い掛かる。
娑婆蔵はトンカラ刀でギロチンの軌道を逸らしながら、いまだ衰えを見せないマルグリットの足に舌を巻いた。泥濘の地で多少速度が落ちてはいるが、足止めと呼ぶにはあまりに心もとない。
直後、唯妃は『絲妃』の粘糸で追撃を放つ。その周囲に、トラップ生成で非殺傷性の罠を敷き詰めながら。
「さぁ、貴方の生命も運命も絡めとってあげましょう」
粘性を有し、もがく程に身体の自由を奪う糸が、マルグリットに絡みついた。エレノア救出完了までの時間を1秒でも稼ぐため、ここで動きを止める――そんな決意と共に放つ一撃は、確かにマルグリットの身動きを僅かに鈍らせるも、止めるまでには至らない。地面のトラップも、効果があった様子はまるでない。
『――民衆達。あの女を血祭りに上げなさい』
次の瞬間、民衆の幻影の矛先が、一斉に唯妃へと向けられた。
唯妃は民衆が振り下ろす棒きれを鋼糸で払いのけながら、その意識は一秒たりともマルグリットから離さない。
多少の時間こそ稼げているが、いまだエレノアは断頭台に囚われたままだ。少しでも気を抜けば、自動人形の攻撃は即座にキャラメルや雪華――救出に集中している仲間達へと向くだろう。下手をすれば、エレノアが巻き込まれる可能性とてゼロではない。それだけは絶対に避けねばならないことだった。
「まァ、もう暫く。手前共にお付き合いいただきやす」
『この程度で、私の足を止められると思わないことね』
娑婆蔵のトンカラ刀と切り結び、火花を散らすマルグリット。その身に傷を与えた唯妃の粘糸は、すでに鎌の刃によって残らず断たれていた。そうして自動人形の攻勢が、二人の包囲を突き破ろうとした――その刹那である。
「おやおや勇ましいね。ここはひとつ、おれも混ぜてくれるかな?」
上空から響いた青年の声を合図に、マルグリットの視界を一面の吹雪が塗り潰した。
声の主はアヌシュカ・ヴァルシュミーデ(水葬に揺蕩うモノ・g00153)。飛翔して放つアイスエイジブリザードが、純白の帳となって自動人形の四方を白一色で染め尽くす。高速詠唱と氷雪使いを駆使するアヌシュカのパラドクスは、一寸先の景色さえ視認することを許さない。
「さぁ、前座を楽しもう。おれらと一曲踊っておくれ」
黄金の操り糸をフェイントに用いながら、マルグリットを翻弄にかかるアヌシュカ。
だが、次の瞬間であった。吹雪の中から放たれた黄昏の光が、一面の白色を塗り潰したのは。
『随分と邪魔をしてくれるわね』
「……っ!」
反撃とばかり発射される光が、アヌシュカの網膜を焼いた。
同時、背後に走った殺気を感じ、反射的に黄金色の操糸を構えるアヌシュカ。急所を狙って横薙ぎに振り抜かれた鎌の一閃が糸に軌跡を逸らされて、アヌシュカの首筋に浅い一筋の傷を刻む。振り返った先に彼が捉えたのは、パラドクスの力で背後からの攻撃を終えて、地上へと着地するマルグリットの姿だった。
『やるわね。……けど、空を飛ぼうと地に潜ろうと、私の刃は逃さない』
「やれやれ、恐ろしいお嬢さんだ。でもね――退く訳にはいかないんだ、おれ達も」
アヌシュカは不敵な笑みを浮かべると、挑発するように宙を滑りながらマルグリットの周りを旋回する。
「君を葬送る鎮魂歌の歌い手は、すぐやって来る。それまでは、おれの戯曲にお付き合い願おうかな」
ここを通す訳にはいかない。今この瞬間、エレノアの救出に動いている仲間達の為にも。
一歩も退かず、自動人形の歩みを止めつづける復讐者達。広場を舞台とする戦いが、一層激しさを増していく。
●少女の名前
一方その頃。
断頭台に囚われたエレノアの元では、救出チームの復讐者達が総出で拘束を解きにかかっていた。
「雪華さま、そちらの首尾は?」
「……もう少し時間を。必ず外してみせます」
フェアリーソードの刃で拘束用の革帯を引き切っていくキャラメル。一方、そんな彼女に返事をする雪華の声には、微かな焦りがあった。彼が今格闘している、エレノアの首を固定する木枷――その強度が想定よりも頑丈なのだ。破壊しようにも、刃物の一つや二つではびくともしそうにない。
「枷を挟んでいる柱を二つとも斬り倒せれば、そこから何とか外せそうですが……」
「承知。では、柱は我が切断する」
リューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)は二本の支柱に目をやり、即座に決断を下した。
こうしている間にも、時間は無情に流れている。今の一分一秒は、娑婆蔵が、唯妃が、アヌシュカが、血を流して稼いでいる時間なのだ。彼らの戦いを無駄にしない為にも、ここで迷っている暇はない。
「強度を持たせたクロノオブジェクトか……問題はない、断ち切って見せよう」
武器単体の攻撃による効果が薄いのは、すでに涼花が証明済み。となれば、ここはパラドクスを介した攻撃で叩き切る以外にない。リューロボロスは『神剣抜刀、奴重垣剣』を発動しながら、ちらと上空に視線を送る。
「涼花よ。マルグリットはどうだ?」
「……抵抗がしぶとい。こっちに攻撃が来るのも時間の問題ね」
そうして涼花がリューロボロス達に送る視線は、しかし確かな信頼に満ちたものだった。
リューロボロスもまた、その視線に頷きをもって返す。
このくらいの窮地、今まで幾つも潜って来た。それらを成功へと導いたのは、仲間同士の揺るがぬ信頼。それを知っているからこそ、奴崎組の復讐者達はけして退かず諦めず、胸を張って戦うのだ。
「任せよ涼花、我も信じておる。――神剣、抜刀」
尾より召喚された巨大な剣の一振りが、ギロチンを支える柱の根元を寸分違わず捉えた。
二本の支柱を薙ぎ払う一閃。同時、神剣を浴びたクロノオブジェクトの断頭台が支えを失い、悲鳴にも似た軋みを上げて傾いていく。数え切れぬ人々の血を吸い続けたギロチンを、その天井に備え付けたままの姿で。
「やった……! エレノアさま、もう少しの辛抱です!」
「そうですとも。今、お助けしますからね……!」
「……感謝します……本当に……」
自分の為に命を擲つ者達にかける言葉を、エレノアは未だ見いだせない。
胸の中に込み上げる熱い感情――魂をも焦がすような怒りとはまるで違う、尊いもの。その気持ちを咀嚼しようと思った時には、もう首枷は雪華の両腕が退けて、拘束する帯はキャラメルが残らず切断を終えていた。
同時、ギロチンの刃が支柱もろとも地面に激突、無残にへし折れる。雪華は断頭台の処刑機能が完全に失われたことを確かめると、ふらつく体で立ち上がるエレノアを支える。一刻も早く、彼女を安全な場所へ――。
だが、次の瞬間。
『やってくれたわね、貴方達』
エレノアを救出したばかりの四人を、凍えるような殺意を帯びた声が襲った。
娑婆蔵と唯妃、アヌシュカの足止めを突破し、刺すような視線を向けるマルグリット。そして、彼女の周りに侍るように居並ぶ群衆たちの幻影が。
同時――熱狂する市民の手にする棒切れが、石ころが、一斉に断頭台の復讐者へ狙い定められる。
『まだ終わってはいないわ。……正義の革命は終わらない、永遠に!』
「エレノア様、どうか安全な場所へ。後はわたくし達にお任せください」
キャラメルの声が飛ぶと同時、市民の攻撃が断頭台へと殺到する。
革命を賛美する声と共に飛来する容赦なき石礫は、しかしエレノアの体を打つことはない。
幻影の前に立ちはだかる復讐者達が、壁となって敵の狙いを引きつけているからだ。
「正しき心で人々を守ろうとした方が、こんなところで命を落とすだなんて。そんな悲しいこと、わたくしは絶対に認めません……!」
石に打たれながら、キャラメルは一歩も譲らない。
生贄を捧げたところで世界が変わることはない。村を出て得た真実を胸に、彼女はマルグリットに立ち向かう。
そして――己が危険を顧みずエレノアを守る為に戦うのは、リューロボロスもまた同じ。
「エレノアよ。ぬしは理不尽から目を逸らさずに怒り続けた」
反撃の神剣を振るいながら、一歩も引かずに戦い続けるリューロボロス。エレノアを見つめるその瞳は、弱者へ向ける労りではない。同じ復讐者として、ともに道を歩む仲間へと向けるそれである。
「なればこそ、とくと見よ。涼花の勇姿を。ぬしと我らの逆襲を」
「……!」
リューロボロスの言葉に、エレノアが顔を上げる。
その視線が捉える先には、仲間達とともに戦う一人の少女の姿がある。
先陣を切って敵群を抜け、マルグリットを相手に戦い、そして今、空を舞いながらエレノアを守り続ける少女。
誰に言われるともなく、気づけばエレノアは口にしていた。リューロボロスが告げた、一人の復讐者の名前を。
「……涼花……」
「シスターエレノア。貴方は私にディアボロスの力と敵を視る力を託してくれた」
自分の名を呼ばれ、涼花がサムズアップを返す。
「今度は、それを私が役立てる番。貴方にはたくさんのお礼を言いたいけど、今は安全な所へ」
「雪華さん。ここは私達に任せて、彼女をお願いします」
敵の追撃を食い止めるように、怨念のナイフを反撃でマルグリットめがけ投擲する涼花。
その隣で、唯妃もまた反撃の粘糸を繰り出しながら、雪華にエレノアを任せたと告げる。
つもる話は後で良い。未来を語るのもまだ早い。今はまず、この自動人形を撃破しなければならない。その意志を改めて確認し合うと、雪華は仲間達へ頷きをひとつ、エレノアを護りながら処刑台の外へと歩き出す。
「気高き女性を護ることも誉ですからね。さあ、行きましょう」
そうして攻撃に耐え抜いた復讐者達は、ついに市民もエレノアも犠牲にすることなく、全員の救出を完了する。
次第に鎮まりゆく熱狂の歓声。その只中で刃を振るうマルグリットを相手に、最後の戦いが始まろうとしていた。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【隔離眼】がLV2になった!
【操作会得】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
【温熱適応】LV1が発生!
【使い魔使役】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV4が発生!
【能力値アップ】がLV4になった!
【ドレイン】がLV2になった!
響風・涼花
終わりよ。マルグリット。
もうシスターエレノアは救出され、ご自慢のギロチンも叩き割った。
アンタに残されてる道はもうない。今度はそっちが首を差し出しなさいな。
……とは言っても、そう簡単にするわけない。ディアボロスとクロノヴェーダ。交じり合う事は無い。
此処からは本当に無駄な話。ねえマルグリット。アンタ、なんか好きな菓子とかある?アルメ・リッターとか、ガトーショコラとか。
アンタに人並みの幸せが存在するのなら、少しは聞いてみたかった。
そんなクロノヴェーダが一人いたのを、よく覚えてるから。
でも、アンタの回答を聞いてよく分かった。アンタはただの人形だ。
だからこそ、遠慮なくその首を狩れる。
ケリ、つけるわよ。
●相容れぬもの
「終わりよ、マルグリット。エレノアは救出され、ご自慢のギロチンも叩き割った」
幻影の熱狂が静まった処刑広場。
破壊された断頭台の上から、響風・涼花(世界に拳を叩きつけろ・g05301)は敵を見下ろした。
「アンタに残されてる道はもうない。今度はそっちが首を差し出しなさいな」
『私の首を、ね。……それは何故?』
涼花の言葉に、マルグリットは首を傾げて言葉を返す。
『逃げた者は捕えればいい。壊れた物は造りなおせばいい。あなた達を処刑すれば、私の世界は元通りよ』
自動人形の口から語られる淡々とした返答にも、涼花は驚かない。
マルグリットが自死を選ぶ訳がないことは百も承知。間を置かず、この広場で最後の戦いが始まるだろう。
だがその前に、ひとつだけ。涼花には確かめたいことがあった。
「ねえマルグリット。本当に無駄な話だけどさ……アンタ、なんか好きな菓子とかある?」
たとえ敵でも、どこかで分かり合えないか――かつて刃を交えた敵との経験から来る、それは願いにも似た問いだ。
『ないわ。でもお菓子のことは好きよ』
返されるのは、肯定とも取れる言葉。だがその理由は、どこまでも自動人形らしいものだった。
『金持ちや貴族を処刑する時、私は民衆にこう告げる。この罪人は美味しいお菓子を食べていた、あなた達が飢えに苦しんでいるときに……って』
「……!!」
『すると民衆は目をぎらぎら輝かせて喜ぶの。殺せ、殺せ、とね。――そうして得られた力は、私、とても好きよ』
一切の悪意なく告げられるマルグリットの言葉に、涼花は悟る。
美味しいものも、素敵なものも、このクロノヴェーダにとっては殺人の名目を作る道具でしかないのだ。処刑という行為でいかに効率よく力を得るか――それがマルグリットという自動人形にとってのすべてなのだと。
対するマルグリットも、話は終わりとばかり鎌を構えて、最後に小さく溜息を漏らす。
『その点、この街は駄目ね。民衆もエレノアも互いを庇い、憎しみひとつ真面に煽れない。あなた流に言うなら、ただでさえ不味いお菓子を台無しにされて、最悪の気分と言ったところかしら』
「……そう。よく分かった」
分かり合うには余りに深い断絶を感じながら、涼花は静かにかぶりを振る。
「アンタはただの人形だ。これで、遠慮なくその首を狩れる――ケリ、つけるわよ」
この敵とは、どう足掻いても相容れない。
問答を経て辿り着いた、それが涼花の結論だった。
大成功🔵🔵🔵
効果1【託されし願い】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
ア・ンデレ
【奴崎組】
「やつざきぐみのいちばんやり、アンデレちゃんがいくよ!」
アンデレは大声で名乗ってから走り出す。
鬼神変により、元々巨大な腕がさらに巨大になっている。
涼花ちゃんは、奴崎組の大事な、友達だ。
友達の敵はアンデレちゃんの敵。
アンデレちゃんの友達パワーでぶっ飛ばしてやる。
「いっぱつ、なぐらせろ!」
アンデレちゃんおもい一撃をマルグリットに叩き込む。
「おまえのなまくらギロチンじゃ、アンデレちゃんたちのきずなはきりおとせない。」
椋井・矢一
【奴崎組】
■アドリブ・連携歓迎
さぁ、そろそろケジメをつける頃合いだな。
思うがままにやってやればいいさ、響風さん。
その為にも――力の限り、道行を整えようか。
味方の援護となるように立ち回りには配慮。
連携の種として、マルグリットの注意を引く為に〈殺気〉を叩きつけつつ、馬鹿みたいに真っ向から〈ダッシュ〉で負傷を顧みぬ〈突撃〉を実行。
繰り出すは渾身の〈捨て身の一撃〉、行使するパラドクスは【ブラッドマン・ブレイズ】。
「お前らにとっての正義――俺が望むのはその反対だ」
愚かなまでな正面特攻。
故に刻まれる傷、それこそが布石。
斯くして流れ出る血、これこそが武器。
盛大に、焼いてやる。
「省みろ――此処に悲劇は覆る」
アヌシュカ・ヴァルシュミーデ
【アドリブ歓迎】
そろそろ敵役にはご退場願わなきゃね。主役が映えない舞台はつまらないものだし。
撹乱する子達のサポートとして黄金の操り糸で【捕縛】を試みる。捕まえられなくても良し。それで上手いこと涼花が死角に潜り込みやすいように敵役を誘導する。【演技】をして此方に注目してもらおう。
触れれば爛れ溶けゆく皇妃様の愛のお味は如何かな。人形の君にも痛いくらい伝わるといいんだけど。
幻影の攻撃は操り糸で弾こう。味方に当たりそうなやつは優先で庇っていく。
この舞台で、君という人形を踏み台に主役が花開くんだ。開花の邪魔はさせないさ。
●神を弑すれば
『ララ……ラララ……♪』
石畳の敷かれた広場に、陶器めいて冷たい歌声が響く。
声の主は、少女の姿をした自動人形だ。『罰当たりっ子』マルグリット――紅色の鎌を得物とするクロノヴェーダ。配下の悉くを失い、いまや孤立無援となった彼女へ、椋井・矢一(マグマ・g04848)は緩い笑みをもって告げた。
「さぁ。ケジメをつける頃合いだ、自動人形」
敵へ向ける矢一の言葉は、どこまでも淡々としたもの。しかし、笑顔の奥に潜ませた怒りは、烈火のごとく激しい。
罪のない人々を捕らえて処刑する、そんな真似を繰り返すクロノヴェーダにかける情けなど元より存在しなかった。
「アンタは殺しすぎた。だがそれも、今日で終わる」
『ララ……貴方達の強さは認めざるを得ないわね。けれど、私の勝利は動かないわ』
「そうかい。まあ、数分後には全てが終わるさ。――アンタの死でな」
愛用する『暗殺者のダガー』を構えながら、淡々とした口調で矢一は言う。
手下の解体少女を討ち、囚われた民衆を解放し、エレノアを断頭台から救い出した。最後の仕上げとなるこの戦いにおいて彼が果たす仕事はただひとつ――すなわち、一番槍による特攻である。
戦いの流れを生み出すこの役割に、けして失敗は許されない。矢一は他の仲間ともども攻撃の準備を終えると、彼の背後に控えるサキュバスの青年に視線を向けた。
「アヌシュカさん。撹乱は頼んだ」
「任せて。そろそろ、敵役にはご退場願わないとね」
頷きを返すアヌシュカ・ヴァルシュミーデ(水葬に揺蕩うモノ・g00153)の背後には、解放された民衆の姿があった。
いまだ不安を浮かべる彼らが戦場に紛れないよう気を配りながら、アヌシュカは民衆の足を広場の端へ留める。彼らには、まだ果たしてもらう役割が残っているのだ。これより始まる舞台の観客として、そして『仕上げ』の一助として。
(「敵が最優先で狙うのは、復讐者であるおれ達だ。民衆が巻き込まれる恐れはないだろうけど……」)
万が一に備え、全員を庇える位置を確保しながら、アヌシュカは一番槍の仲間達へ視線を向ける。
それを受けた矢一もまた、頷きをもって応じた。あとはただ、あの敵を討ち、この狂った世界に終止符を打つのみだ。
「行こう。応報の時間だ」
「おー! やつざきぐみのいちばんやり、アンデレちゃんがいくよ!」
名乗りを上げたア・ンデレ(すごいぞアンデレちゃん・g01601)が、矢一とともに駆け出した。
一番槍の復讐者が二人、遮る物のない広場を疾駆して一直線に迫る。今なお処刑の歌を紡ぎ続ける自動人形めがけて。
対するマルグリットは微動だにせず。その歌声を一層高らかに、澄んだ青空へ捧げ続けていた。
『――血、血、血が欲しい』
呪われた旋律が奏でられ、広場の空気がどろりと濁る。
そして歌声がリフレインを始めると、ア・ンデレと矢一の周囲を黒い影が包んだ。
頭上に、太陽の光を遮る物があるのだ。マルグリットの歌に召喚された、それは断頭の刃が二振り。
『――ギロチンに注ごう飲み物を ギロチンの渇きを癒すため』
「随分と器用なことをする。だが……」
対する復讐者も、駆ける足を止めることはない。
矢一は疾駆の速度を一層上げて、並走する鬼人の少女へ合図を飛ばす。
「このまま突っ込む。先手は任せた」
「よーし! アンデレちゃん、ひきうけた!」
マルグリットとの距離を詰めながら、ア・ンデレは己が両腕を高々と掲げた。
赤く、無骨で、頑丈な両腕。鬼人だけが持ちうる肉体を鬼神変のパラドクスで変貌させながら、ア・ンデレは思う。
自分にとって涼花は大事な友達だ。あの自動人形が友達の敵なら、それは己の敵ということだ。ならば今、自分がすべきはひとつしかない。
「アンデレちゃんのともだちパワーで、ぶっとばしてやる!」
さながら重機のハンマーと化した巨大な腕が、ブンと音を立ててマルグリットへ振り下ろされた。
刹那、断頭の刃が上空より降り注ぐ。青光りする切先を、疾駆する二人の首筋へ狙い定めて――!
『――欲しいのは血、血、血!』
「いっぱつ、なぐらせろ!!」
振動。衝撃。拳を介して伝わる硬い手応えは、まるで金剛石のようだ。
いまだ致命傷には程遠い手応えを感じ取ると同時、ギロチンの刃が振り下ろされる。
首筋めがけて迫るそれを捌きながら瞬く間に血で濡れていく鬼人の両腕。その真横では、もう片方の刃を浴びた矢一もまた防戦に追い込まれていた。
(「なるほど、この力……解体少女を従えるだけのことはある」)
初撃を回避したと思ったのも束の間、パラドクスを介した刃は空中で軌跡を変えて、なおも執拗に矢一を襲い続ける。
彼の体は斬撃を浴びて、早くも血で真っ赤。並の人間なら失血で感覚を失いかねない傷にも、しかし彼は動じない。それも当然だ。何故なら彼にとって、この出血は意図して行ったもの――すなわち己の攻撃を浴びせる布石なのだから。
「血が欲しい、か。なら存分にくれてやる」
穏やかだった矢一の笑みは、いまや凄絶な色を帯びてマルグリットを見据えていた。
真正面からの特攻、叩きつけた殺気、そうして帯びた派手な傷。すべてはこの瞬間のため。
飛沫を上げる血をマルグリットへ浴びせかけ、彼は発動する。彼の切り札たる『ブラッドマン・ブレイズ』を。
「省みろ――此処に悲劇は覆る」
『……っ!?』
矢一の発動するパラドクスが、寸分違わずマルグリットを捉えた。
紅い血液は一滴残らず炎へと姿を変え、自動人形の全身を包み込む。金属の焦げる不快なにおいを撒き散らしながら、火をかき消すマルグリット。
だがその刹那、態勢を立て直す隙さえ与えずに、飛来する黄金の繰り糸が彼女を絡めとる。
「見目麗しき公妃は彼の人を愛した。けれど彼の人には愛しい人がいた――」
声の主はアヌシュカであった。
繰り糸『d'oro』で敵の四肢を余すことなく捉えた彼は、舞台の前口上さながらに戦いを見守る民衆へと語り掛けた。
「そう。これは、一人の女の愛の物語」
『…… ……く』
糸に含まれた毒に身体を冒され、マルグリットが苦悶の呻きを漏らす。
力に任せて切断しようとした金糸は、予想以上にしぶとく持ち堪える。
託されし願いの力を借り、一瞬の機を捉えて放った一撃だ。たとえクロノス級といえど、そう簡単には千切れない。
「爛れ溶けゆく、愛のお味は如何かな。もう少し、そのままでいてくれると嬉しいよ。なにせ……」
この舞台、君はただの踏み台に過ぎないのだから――。
そう告げるアヌシュカに、時間軸の神たるマルグリットはほんの僅か眉をしかめ、
『目障りよ――Vive la révolution!』
その声に誘われるように、民衆の幻影がアヌシュカを取り囲んだ。
対するアヌシュカは、敵の肉体に傷を刻んだ手応えを得つつ、拘束を解いた金糸をそのまま優雅に振るい続ける。
飛来する石礫の嵐。それが民衆に向かわぬよう、戦場の広場を軽快なステップで踊りながら。
(「さて。ここまでの流れは上々といったところかな」)
マルグリットの肉体へ着実に蓄積されているダメージを見て取りながら、アヌシュカはそう結論付けた。
この舞台はまだ終わってなどいない。フィナーレは、次なる役者達が華々しく飾ってくれることだろう。
そう。真打の登場は、いつだって最後と相場が決まっているのだ――。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【怪力無双】LV1が発生!
【照明】がLV2になった!
【壁歩き】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV5になった!
【ガードアップ】がLV3になった!
【命中アップ】がLV5(最大)になった!
響風・涼花
決着をつける……!
この歪んだ世界を、狂った人形を、此処で終わらせてやる!
奴崎組が響風・涼花。いざ、参る!
ドスを逆手に構えて突撃。
民衆の中にモブオーラで紛れつつ、忍び足と攪乱でその中を進んでいく。
マルグリットに見つからないように進み、そのまま後ろか死角につく。
そして暗殺を生かしてその首を狙う。
あなたの死――視えた。
私からあなたにあげる最後の剣。
Le roi se coupe la tête ici(王は此処に首を絶たれて)――!
……ねえ。エレノア。
貴方とは此処でお別れかな。もし、出来るならパラドクストレインに乗れば、私たちと共に戦えないかな。
もし、出来るなら、だけど……
奴崎・娑婆蔵
【奴崎組】
●SPD
いよいよ本丸攻めの時か
おう、かまして来なせえ響風の
こっちもこっちで、ぼちぼち温まって来やしたぜェ?
ネメシス解禁――『トンカラトンと言え』
(平素より呪装帯に溜め込んでいた【呪詛】の力を妖刀へと余さず注ぎ込みざま、自転車型風火輪『火車』に搭乗)
とくと見なせえ
これがあっしのギロチンでさァ
・響風が接近を果たす【時間稼ぎ】の為、己もアンデレ同様に【突撃】
・【斬影刃】発動
・妖刀の影絵を『影業』で巨大化させ、民衆の幻影相手に突撃の勢いを利しつつの横薙ぎ一斬――まとめて【両断】せん
・民衆の幻影を薙ぎ、またはその間隙を【臨機応変】に掻い潜りつつ『火車』が起こす炎の轍で「道端の拾えるもの」も潰す
黄泉王・唯妃
【奴崎組】
※アドリブ、連携、出血描写歓迎。
※効果2全使用
さて大詰めですね。どこまで行っても私達は脇役なのですから。
花道をしっかり飾りなさい涼花。
ネメシス解放――『世界の終焉の果てまでに』
(下半身が巨大な蜘蛛へと変じる)
竜の子の力を借りるのも癪ですが、まあいいでしょう。
竜の頭に蜘蛛の足、【精神集中】によって多方から同時に【グラップル】【捕縛】、そして大地へと【強打】。
現れた幻影も何もかも圧倒的暴力によって捻じ伏せます。
「クハハハ――! と、いけないいけない。今日の主役は別にいるですからやり過ぎないようにしませんと」
リューロボロス・リンドラゴ
【奴崎組】
真体顕現――ネ メ シ ス !
せっかくなのでな。組長や蜘蛛達と並んで変身よ。
巨竜へと転じるが、敵味方とサイズを合わせるのなら3mくらいが戦いやすいかの?
変身も含めて、せいぜい涼花から意識がそれるよう、派手に行くとしようぞ!
ほう。やるのか、蜘蛛よ。良いぞ、合体だ!
くはははははは!
ああ、確かに、確かにぬしと力を合わせるのは癪ではあるが!
我らが合一すれば無敵であろうさ!
まあ竜は単体でも最強だがの!
というわけでな。蜘頭竜として【蹂躙】し【薙ぎ払って】くれるわ!
ギロチン?
ハッ、噛み砕いてくれるわ!
裁きを下すは貴様ではない。竜である!
――否。
竜ですらないか。
なあ、涼花よ。
見事。流石我らが若頭よ。
●幕間
懐中のドスは、いつもより重く感じられた。
重圧か緊張か、或いは全く別の理由か。持主の響風・涼花(世界に拳を叩きつけろ・g05301)にもそれは分からない。
ただひとつ確かなのは、この戦いが、自分という復讐者の運命に大きく関わるということ――そんな確信にも似た予感を、涼花は静かに覚えていた。
(「心臓の鼓動が、こんなに激しく聞こえるなんてね。……でも」)
緊張する心を揺るがぬ決意で塗り潰し、逆手に握った短刀を構える。
モブオーラを発動して紛れ込んだ人垣、その向こうには、今も広場で戦う仲間達の姿があった。そして、彼らを相手に刃を振るうマルグリットの姿も。
(「この歪んだ世界を、狂った人形を、此処で終わらせてやる。そして――」)
涼花の眼が、一瞬だけ後方へと向いた。
広場の外に停車するパラドクストレイン。その傍で、涼花達の戦いを見守るシスター・エレノアへ。
(「……行って来るね、エレノア。もう少しだけ待ってて」)
決意を秘めた視線を送りながら、涼花は考えた。
マルグリットを撃破すれば、彼女が生んだ時間軸は消滅する。その時には、世界のすべてはマルグリットと運命を共にするのだ。広場も、民衆達も、そして、ひょっとすれば――エレノアも。
その瞬間がエレノアとの永久の別れとなるか否か、今はまだ誰にも分からなかった。
(「さあ。――決着をつけよう」)
仲間が血を流しながら築いてくれた『その時』に、仕損じることは許されない。
涼花は瞑目し、深呼吸をひとつ。そうして再び広場の光景を視界に収めながら、己が牙を静かに磨き続ける――。
●王は此処に首を絶たれて
広場を舞台とする戦いは、いま佳境を迎えようとしていた。
配下を失い、完全に孤立したマルグリット。そんな自動人形の前を復讐者が三名、塞ぐように立っている。
滞りなく時間を稼ぎ、戦いは本番。その嚆矢となる彼らは今、全員が完全戦闘モードに入った状態である。
「ネメシス解禁――『トンカラトンと言え』」
先頭に立つのは奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)だ。
奴崎組の長を務める彼は、呪装帯に溜め込んでいた呪詛を余すことなく妖刀へと注ぎ込み、
「とくと見なせえ。これがあっしのギロチンでさァ」
そうして現れた自転車型風火輪『火車』に搭乗。
断頭台の刃にも劣らず禍々しい光を放つ刃が、ギラリと輝いてマルグリットの首筋を捉える。
「さて大詰めですね。私も出し惜しみはしませんよ」
黄泉王・唯妃(灰色の織り手・g01618)が響くと同時、娑婆蔵の背後から彼女の上半身が俄かにせり上がった。
ネメシス形態の発動に伴う変貌が、女の腰から下を巨大蜘蛛のそれへと変えていく。一切の慈悲なく獲物を葬る――唯妃が本気を出した時にのみ見せる、人とも蟲ともつかぬ禍々しい姿である。
「どこまで行っても私達は脇役なのですから。花道をしっかり飾って貰いましょう……ねえ?」
「ほう。やるのか、蜘蛛よ。良いぞ、合体だ! 真体顕現――ネ メ シ ス !」
唯妃が目を向けた先では、リューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)もまた常ならざる姿へと変身を遂げる。幼女である彼女の身長を優に倍は超える、巨大な一頭の竜へと。
悠然と空へと舞い上がるリューロボロス。その姿を仰ぐ唯妃の周囲に、いま再び幻影の声が満ち始めた。
革命万歳、革命万歳――18世紀の末にフランスの地を席巻した革命の狂騒。そのうねりは一つの生物にも似て、復讐者を呑み込まんと牙を剥く。
『――血、血、血が欲しい』
幻影を呼びだしたマルグリットの歌が、幻影の狂騒に加わった。
地には群衆の幻影、空にはギロチンの刃。時間軸の主たるマルグリットの意志が天から地から、異物たる復讐者を排除するべく切先を向ける。
『――ギロチンに注ごう飲み物を ギロチンの渇きを癒すため』
「殺人技芸『斬影刃』。――八ツ裂きにしてやりまさァ」
同時、地に映した娑婆蔵の影が、妖刀の形へと変じた。
八ツ裂き娑婆蔵の真骨頂がひとつ、先手を取った『斬影刃』の刃が音もなく振るわれ、マルグリットを薙ぐ。
鈍い手応えと共に、自動人形の体に生じる亀裂。反撃とばかり幻影の手から一斉に殺到する石礫を、娑婆蔵は影刃の一閃で幻影諸共薙ぎ払う。
――革命万歳! 革命万歳!
――革命万歳! 革命万歳!
切り払われて消滅した幻影は、しかし後から後から湧き続け、いまだ攻撃は衰えない。
跨る火車で火の轍を刻みながら致命打を躱し続ける娑婆蔵。彼が視線を向けた先では、今まさにリューロボロスと唯妃が、蹂躙の猛攻をマルグリットに浴びせかけていた。
「天と地からの攻撃……それが出来るのは、私達とて同じですよ」
「いかにも! さあマルグリット、地獄に堕ちよ。裁きを下すは竜である!」
龍に相応しい鋭利な牙を剥きだしに、飛翔するリューロボロスが発動する『守護竜の顎門』がマルグリットを捉える。
ネメシス形態によって強化された一撃は、真面なガードさえ標的に許さない。肩口に嚙みつく顎は万力めいた力で自動人形の肉体を砕き、傷を刻む。
対するマルグリットもまた、しかし怯むことなく反撃に転じた。
『――欲しいのは血、血、血!』
「ギロチン? ハッ、噛み砕いてくれるわ!」
振り下ろされるギロチンの刃。全身を切り裂きながら首めがけて迫る一閃を、リューロボロスは竜の口で受け止める。
彼女の力は真のドラゴンさながらに、もはや僅かな抵抗もギロチンに認めることなく、その刃をバキバキと音を立てながら砕いていく。一切の容赦なくマルグリットを追い詰める、三名の復讐者達によるネメシス形態の連携攻撃。その最後を務める唯妃が紡ぐのは、『蜘頭竜』の詠唱だ。
「地中有蟲、赤頭黄尾……」
「一大蛇九頭一尾!」
八本の蜘蛛足が八岐大蛇のごとき蛇へと変貌する。
そこへ加わるリューロボロスの詠唱。そうして息を合わせ放つ一撃は、洪水めいたパラドクスの奔流となって迫る。
「竜の子の力を借りるのも癪ですが、まあいいでしょう」
「くはははははは! ああ、確かに、確かにぬしと力を合わせるのは癪ではあるが! 我らが合一すれば無敵であろうさ! まあ竜は単体でも最強だがの!」
フンと鼻を鳴らす唯妃に、リューロボロスは哄笑をもって応じる。
ともすれば大風呂敷にも聞こえかねないその台詞は、しかし紛うことなき現実となってマルグリットへ襲い掛かった。
「「其は虫にして蛇、蜘蛛にして龍。急急如律令!!」」
詠唱完了と同時、二人の連携攻撃が前後から左右から迫る。
それをマルグリットは紅色の鎌を振るって応戦するが、ネメシス形態となった復讐者達の猛攻は、そう易々と捌けるものではない。たちまち全身に傷を増やし、自動人形が劣勢に追い込まれる。なおも勢いを増す猛攻の中、唯妃とリューロボロスの哄笑が重なり合って響き合う。
「クハハハ――! と、いけないいけない。やり過ぎないようにしませんと」
「そうとも。裁きを下すは貴様ではない、竜である!」
たちまち全身に傷を増やすマルグリットを見下ろしながら、リューロボロスは傲慢に告げた。
事実この戦いは、この瞬間に決したと言って良いだろう。娑婆増と唯妃、リューロボロス。三人の猛攻がもたらしたのは、マルグリットに刻んだ致命傷だけではない。この戦いを締めるに欠かせないもの――すなわち、最後の瞬間へと至る時間を、完璧に近い形で稼ぐことが出来たのだから。
「――否。竜ですらないか。なあ、涼花よ」
『……!?』
リューロボロスの呟きと、向けた視線。その意図に漸く気付いたマルグリットの顔に、驚愕の色が浮かぶ。
硝子玉のような双眸、その視界一杯に捉えるのは、民衆の中から弾かれたように飛び出してくる一人の復讐者――涼花の姿だった。
「あなたの死――視えた」
『く……!』
唯妃の攻撃でひび割れた口が、群衆の幻影を呼びださんと動く。
だが、革命を讃える言葉が迸るよりも一手早く、涼花のドスは自動人形の喉元を『視ノ剣』で薙いだ。
たばしる一閃が刻んだ刃傷は、黒い真珠の首飾りにも似て、マルグリットの首に一文字を描く。
「Le roi se coupe la tête ici(王は此処に首を絶たれて)――!」
『…… …………』
微かな空気が漏れる音。
そうして短刀の刃が鞘に収まると同時――自動人形の首は、自分が切断されたことにやっと気づいたように、ゴロリと地面に転がり落ちた。
それが、クロノス級クロノヴェーダ『罰当たりっ子』マルグリットの最期。
決着の瞬間を見届けたリューロボロスは、奴崎組の仲間達が抱くすべての想いを代弁するように、
「見事。流石我らが若頭よ」
紛れもない称賛の言葉をもって、戦いの最後を締めくくった。
●示された道
崩壊は、なんの前触れもなく始まった。
広場の民衆が、煉瓦造りの建物が、自動人形とギロチンの残骸が、虚空へ溶けるように消えていく。
主を失ったことにより、ひとつの時間軸が滅びようとしているのだ。
「こいつはいけねぇ。急いで此処を離れやすぜ!」
娑婆蔵が放つ鶴の一声で、復讐者達はパラドクストレインへ撤退を開始した。
残された時間は多くない。開かれたドアを目指し、涼花もまた駆けていく――その手に、エレノアの手を握りながら。
「ねえ。エレノア。貴方とは此処でお別れかな」
断頭台から救い出した女性をまっすぐに見つめ、涼花は続けた。
このまま此処に留まればエレノアは消滅するだろう。だが、ディアボロスである彼女には、もう一つの道がある。
すなわち涼花達の新たな仲間として、新宿島へ帰還するという道が。
「私達と共に戦えないかな。無理強いは出来ないし、貴方が望むなら、だけど……」
「……」
思いもしなかった未来を涼花に示されて、エレノアの瞳が微かな困惑に揺れた。
そして――ほんの刹那の後。
決意を湛えたエレノアの返事に、涼花は力強い頷きで応じる。
死の運命はもう過去のもの。復讐者が赴いたひとつの戦いは、こうして幕を下ろすのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【モブオーラ】LV1が発生!
【託されし願い】がLV3になった!
【水面歩行】LV1が発生!
【温熱適応】がLV2になった!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV3になった!
【ダブル】LV1が発生!
最終結果:成功 |
完成日 | 2022年03月28日 |
宿敵 |
『『罰当たりっ子』マルグリット』を撃破!
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