リプレイ

●陽動作戦開始
　パラドクストレインでサハラ砂漠にたどり着いたディアボロスたちは、巨大砂上船スフィンクスから敵が迫りつつあるのを目撃した。
　彼らこそ『鋭槍の守護者』。槍と盾を装備したマミーの一群が密集した陣形を組んで進んでくる。
　砂漠の中でも彼らの足取りは一切乱れない。
　それどころか、地形に合わせて適切に陣形を組み、連携能力の高さを窺わせる。

　桐生・八重（超中学級のホワイトハッカー兼電脳に聳える隠者・g03785）は進んでくる彼らを観察してつぶやいた。
「その場に合わせて臨機応変な陣形を組む連携型パラドクス……ですか。ならば、これは如何でしょう？」
　八重はそう言って、自らのパラドクスを発動させる。
『拡張せよ、無限の可能性秘めたる現実を……』
　現実世界を「拡張」し、空間そのものを弾丸へと変換する。
　彼女の周囲に大量の銃弾が出現し、マミーたちに向かって一斉掃射を開始した。
「止まるな！　前進あるのみ！」
　鋭槍の守護者たちは盾を構えて銃弾を防ぎながら、じりじりと進み続ける。
「近寄らせません……！」
　八重は拡張した空間を操作し、空間転移でさらに銃弾を広域に掃射していく。

　メルキディア・セデクリエル（閃機術士のエンジェリアン・g03132）は進んでくる鋭槍の守護者を前にして、『砲閃機キャノンオブシェキナー』を構える。
「多数の敵と相対するならば、此方も数で対抗するしかないわね！」
　キャノンオブシェキナーが変形し、クロスボウ形態になると同時に彼女の背後に多数の弓を構えたモンスの天使達の幻影が現れる。
「陣形には陣形を。一斉攻撃よ！」
　空中に浮かんだ天使たちが、鋭槍の守護者たちを攻撃するのに最適な陣形を組み、一斉に光の矢を放つ。メルキディアも同時にクロスボウで彼らに矢を放った。
　鋭槍の守護者たちの守りは固いが、空中と正面からの攻撃を同時に防ぐとなると限界はある。
　攻撃をまともに受けた鋭槍の守護者が一人、また一人と倒れていく。
「これ以上の進軍は無謀です！」
　部下の一人が鋭槍の守護者の隊長に訴えるが、しかし退きすぎることも出来ない。
　彼らはファラオの命令で、スフィンクスへのディアボロスの侵入を許すことは出来ないのだ。
　その間も、メルキディアや八重の攻撃の手は止まらない。
　結果、これ以上進むことも下がることも出来ず、鋭槍の守護者たちは砂漠の中でディアボロスたちの激しい攻撃を耐え続けるしかなくなっていた。




●砂漠の中の戦い
「守護者が出てきたぞ！　割れっ！」
　他のディアボロスと鋭槍の守護者たちの戦いが始まったのを見て、河津・或人（エンジェルナンバー・g00444）は天城・美結（ワン・ガール・アーミー・g00169）に呼びかける。
　鋭槍の守護者たちは退けないために苦戦しているようだ。美結は、この機に一気に攻撃を仕掛けることにした。
「さーて、いっちょ派手にやりますかね！」
　早速、パラドクスで自らの復讐の意思を手榴弾として出現させる。
「これでも喰らえーっ！」
　美結は出現させた手榴弾を次々に投げつけていく。かつてはお嬢様学校に通っていた彼女であるが、戦闘スタイルは「何でもあり」。
　手榴弾の爆撃により、動けなくなっていた鋭槍の守護者たちはさらに陣形を崩し始める。

「ええい、このままでは埒が明かない！」
　吹っ切れた数人の鋭槍の守護者が美結に向かって走りながら槍を振るう。
　槍の先から衝撃波が発生し、美結に襲いかかる。
　しかし、美結は軽々と衝撃波を避けていく。むしろ飛びかかってきた守護者たちを投げ飛ばすなど彼女の勢いは止まらない。
「遠くからの攻撃もいいけど、直接戦闘も負けないんだからね！」
　美結の手榴弾と格闘により、守護者は次第に数を減らしていく。

　或人は迫りつつあるクロノヴェーダの集団を見て、感心するように声を上げた。
「見事な戦いだ……やはりお前たちはファラオ直属の精鋭か。ならば相手にとって不足なし！」
　鬨の声を上げて突撃してくる守護者に対して、全力をぶつけるよう装いパラドクスを開放する。
　砂漠の中に突如、ビデオゲームのような風景が広がる。
「なんだ、奇妙な魔術を使いおって」
　こんなものは幻覚に過ぎない、と守護者たちは構わず進もうとするが、或人の周りには煉瓦でできた壁が構築され、彼らの攻撃が届かない。
「ふん、登って上から槍で攻撃してやる！」
　守護者たちは壁を登り始めるが、しばらくすると突如壁が消滅してしまう。
　いつの間にか、地面は燃え盛る溶岩に変化していた。
「うわあああ！！」
　守護者たちは溶岩に落ちたと思い込み気絶していく。
　気がつくとゲームのような風景は元に戻るが、溶岩に落ちたと思いこんでいる守護者たちは気づかず気絶したままだ。
「増援を！　なんとしてもディアボロスの侵入を防ぐのだ！」
　残った守護者の呼びかけで、その他の場所にいたクロノヴェーダたちも集結しはじめた。
（「よし、上手く敵をおびき寄せることができたな……」）
　或人の計算通り、派手に戦うことで敵の注意を引きつけることができたようだ。




●作戦終了
　九重・古安（失くしたものと手にしたものと・g02347）は集まりつつある残りの鋭槍の守護者たちを見て不敵な笑みを浮かべる。
「あとひと息というところか。派手に暴れてやろう」
　そこへたどり着いた遠咲・奏（彷徨う女子高生・g06523）は、自分の置かれた状況について考えていた。
（「……ここに、お兄ちゃんはいるのでしょうか？」）
　何人もの復讐者とクロノヴェーダがぶつかり合う戦場。そこに、彼女は探している兄の姿がないか探していた。

「どうしたマミーども。このままでは俺たちがスフィンクスを破壊してしまうぞ」
　古安はわざと煽るような話しぶりで、鉄槌を掲げて守護者たちの注目を集める。
　集まっていた守護者たちは怒りの声を上げながら一気に彼に突撃を仕掛けてきた。
「おおお！」
　最前線にいた守護者の一人が槍で古安を貫こうとしたが、その時、彼の体が光り始めた。
「一時的なものだが……これならどうだ！」
　パラドクス『時廻の断撃』を発動させた古安の姿は最盛期のものとなり、力もそれに応じて上がっている。
　彼の振り上げた鉄槌が守護者を両断する勢いで命中し、相手は地面に突っ伏した。
　見の丈よりも大きな槌を振り回す古安を前に、守護者たちの勢いが落ちてきた。

「このままでは……よし、一気にあちらへ攻め込め！」
　残りの守護者たちが、一見ぼんやり立っているように見えた奏へ向かってきた。
　一人でもディアボロスを撃破することで、彼女らの連携を崩そうという目論見だ。
「……！」
　しかし、敵が近づいてきたことに気づいた奏は、無言のまま素早くウィザードロッドを掲げる。
　高速詠唱により素早くパラドクスを周囲に展開。砂漠の中に突如吹雪が吹き荒れる。
「まずい！　離れろ！！」
　守護者たちは密集した陣形を即座に散開させ、攻撃を少しでも回避しようとするが間に合わない。
　バラバラになった守護者たちは一人、また一人と凍りついていった。
「……ここに、お兄ちゃんはいなかったようですね」
　しばらくして奏は吹雪を止める。鋭槍の守護者たちは全滅し、残っていたのはディアボロスたちだけだった。

「うむ、なかなか激しい戦いだったな」
　古安がパラドクスを解き、元に姿に戻る。
　今回の陽動作戦により、多くのクロノヴェーダを巨大砂上船スフィンクスから引き離すことに成功した。
　その分、潜入作戦が成功する可能性が高まったはずだ。
　寵愛の少年ファラオとの決着を託して、ディアボロスたちは帰還することにした。

最終結果:成功
完成日	2022年02月14日