リプレイ
菅原・小梅
『次なる被害者は玄真』
◆暗号解読
はぁ、懐かしの平安の都に帰ることが出来たと思えば
妖怪『蟹坊主』が暗躍したことによる数え唄ですか
しかし四季を元にしているならば答えを導くのは可能かと
かつて私が読んだ書物によれば陰陽道による四季とは
青春→朱夏→白秋→玄冬の順に巡るとのこと
最初の被害者であるやよいは春の彼岸の頃
次なる被害者のあやめは夏の菖蒲の花
あき乃は短絡的ですが秋の野と見立てているのかと
ならば冬を意味する色の玄(くろ)をお持ちの玄真さんが次なる標的の筈
同じ冬の季語であるお冴さんも気がかりですが
きっと鼠は片付いておらず虎視眈々と機会を狙っているのでしょう
これなる推理が当たっていれば良いのですが・・・
宮生・寧琥
えぇ~…ねーこさー、ねーこさー、暗号とか、めっちゃ苦手なんだけどぉ…
でもぉ、事件が解決しないと、人死んじゃうし、みんなチョー心細いよねぇ…
んぅ!ねーこに任せとけぇー!
木枯らしが向かい風ってことはぁ…あっち(北)! の畑で事件は起こる…のかなぁ。
でぇ、四季でしょぉ。(スマホぽちぽち)
やよいって三月、春、で、あやめが夏のお花。
あき乃は文字通り秋で、次は冬!?
冬の名前の人はぁ…うぇ!? 玄冬も「冴え」も、冬のことぉ…!?
うー…ねーこ、そういうの困るんだけどぉ……なんか頭あっちくなってきたぁ…!
えーとえーと
ひとつぶ残さずだから、二人とも狙われてる!とか! どぉ!?
あう、違うかなぁ……
不破・雷童
親から子へ、そして子のそのまた子へ。
数え歌はそうやって年月を重ねて紡いでいくひとつの歴史みたいなもんだ。
だからその歴史を手放させるため、奴らは数え歌を人々が忌み嫌うものへと変えようとしているのかもしれないな。
っと、今推理するのは次の被害者だったな。
四辻の交わり、吹いた風は肌寒く。
老いて枯れた親のもと、忍ぶ鼠に子もろとも食べられる。
夜更け過ぎの長屋街、とかの方がわかりやすいか?
もしそうであるならお冴さんが危ないな。
そんで玄米に例えるだけあるなら、風貌はまだ若くて未婚のお姉さんな感じかもな。これも一応頭に入れておくか。
そんじゃ、そんな感じに当たりをつけて【ストリート】を調査してみるぜ!
●四季詠み
帰郷に寄せる思いは一日千秋。
その地に不穏が渦巻いているとあって胸中は複雑である。解っていた事ではあったが。
そっと息を吐きつつ菅原・小梅(紅姫・g00596)は己の知識を手繰る。齢十にして数多の書や文献を読み耽り、蓄えたものを今一度紐解きながら、今はただ、数え唄の謎と向き合うことに集中するばかり。
――四季を詠む唄。
彼女はその中に在る『色』に着目した。
陰陽の道において五行思想に基づき配される、季節と色のかかわり。
「1番から順に青春、朱夏、白秋、玄冬……」
巡る季節の順番通り。これまでの犠牲者の名もそれを示すかの様に、見立てられている。
であるならば、やはり『色』の名を持つ『玄真』が次の標的と……思いはすれど引っかかるものもある。
『お冴』もまた、冬の季語を名に持つ者だからだ。
「うぇえ?!」
素っ頓狂な声を上げたのは、同じ結論に至った宮生・寧琥(> とつぜんの ひとりだち! <・g02105)。文明の利器をポチポチ操作して、おぼつかない知識を補うイマドキの若者は、『冬』の該当者が二人居る事に気付くや天を仰ぐ。
「ねーこ、そういうの困るんだけどぉ……」
熱を持つ頭を掌で扇ぎ、うーんうーんと唸りつつ。
頭脳戦はすこぶる苦手と見えるが、事件の結果がもたらす悲劇を彼女なりに憂い、関係者に心細い思いをさせまいと決起して謎解きに挑んでいる心優しき少女である。
「『木枯しが向かい風』ってことはぁ、『北』の畑で事件は起こる……のかなぁ」
その直感的な推理は中々の切れ味。
彼女らの推理によって、三人いた候補者も二人まで絞り込まれた。
着々と前進している。
幾度となく目を通した歌詞を、ここでもう一度読み返してみる一同。
――四辻をくだる木枯らし向かい風、枯野の畑にゃ米食いねずみ。玄米ひとつぶ残るまい。
「ひとつぶ残さずだから、『二人とも狙われてる』! とか! ……どぉ!?」
違うかなぁ、と自信なさげにしゅんとする寧琥であったが、その線もあるかもしれないと仲間達は思い始めていた。
●四辻の北路の長屋街
――忍ぶ鼠に諸共に喰われる。
それは不破・雷童(白雷童子・g02981)も可能性として考えた。
枯野の畑が老親を、玄米が子を表すならば、あくまで狙われるのは『お冴』で、夜更けの長屋街で親子諸共殺されるのではないか、と。そう推理して、彼は見回りがてら大路の調査に乗り出していた。
子々孫々へと代々うたい継がれる数え唄は、長い年月を重ねて紡いでいく一つの歴史の様なもの。
それが、此度、クロノヴェーダに利用され忌唄に成り果てようとしている。
(「あいつら、そうやって歴史を手放させようとしてるのか?」)
考えても詮無い事が脳裏を過ぎる。
時は夜。往来に人は無く、人家の灯りも消えて、薄い月明かりが物の影をささやかになぞるばかりの寂しい路に、聴こえ来るのは遠い獣の声と、夜風が鳴らす軒や隙戸の微かな物音。
こんな夜更けに、年若い女性が表を歩くなど、それだけでも危険を孕んでいるものだ。
それでも。彼女には、どんなに遅くなろうとも親元に帰る事情があるのだろう。
やがて、心許ない提灯一つを携えた人影が、西折の屋敷の方から足早にやって来る。
徒に彼女を驚かせぬ様に、離れた所で息を殺して見守る雷童。
(「若い未婚のお姉さんかなとは思ってたけど、なんだか綺麗な人だな」)
淡い灯りに照らされたその横顔は線の細さを際立たせ、薄幸そうな雰囲気と相俟って、実年齢は見た目の印象よりも幼いのではないかと思わせた。どこか普段と異なる空気を感じているのか、道急ぐお冴の不安げな表情に焦りの色が混じる。
一瞬、自分の所為かと身を縮める雷童だったが……そうではない事に気付いて総毛立った。
四辻に差し掛かったお冴の後ろを、尾ける者が居る。
彼女自身は未だ気付いていないかもしれない距離だ。
ただの通行人ではない、異形の人影。
灯も無しに、迷いなく近づいて来る。ゆったりとした足取りであるにもかかわらず、着実に距離を詰めて来る。
僧の格好をしていても隠しきれないその妖気。
砂利を踏む音に合わせて杖を衝く音がする。否、それは蟹の爪だった。
往く手を遮る様に、すい、と静かに立ちはだかった雷童は、真っ向から対峙する異形を目の当たりにして思わず乾いた笑みを浮かべる。
「あんた、隠す気もないんだな」
「その必要がない故に」
蟹坊主は応えて返し、肩を竦めた。上下する袖から剥き出しの武骨な赤い鋏が弥が上にも目に入る。
動じず退かずの雷童に、蟹坊主は口元を歪めて「かか」と嗤った。
「謎かけを解いたか。お見事。いやはやお見事」
「………」
「……安心せい。あの娘は気付かぬままに行ってしもうたわい」
かかか、とまた嗤う。
取り逃がした標的への執着は元より無いのか、或いは、別の興味が湧いたのか。
蟹坊主の何処を見ているかわからない目が、真っ直ぐに雷童を見つめている気がしてならない。
「どうかの。お主、儂に訊きたい事はないか? 儂はのう、謎を解いた者らと語らいたくて仕方ないわえ」
嬉々とした声で誘う。
こんな所で立ち話という無粋もなかろう。語らうならば場を移そう、と蟹坊主は言った。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
効果1【書物解読】LV1が発生!
【無鍵空間】LV1が発生!
【強運の加護】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
蟹坊主が誘うは、朱灯篭の古寺。――即ち、二番目の見立ての舞台となった場所である。
そこで、茶でも飲みながら見立ての一部始終を語らおうと、この妖怪は飄々と宣うのである。
応じず、この場で一戦交える事もできる。
応じるふりで移動してから……という事も可能ではある。
――さて、どうする?
不破・雷童
ここで戦えば都人を巻き込むかもな。
人気のない所と言うなら是非もないぜ。
「罠とは思わないのかって?
歌に見立てる粋な計らいをする奴が、
そんな無粋な真似をするつまらないやつの訳がないだろ?」
ってな風に煽てて気分良く話して貰うか。
もっとも俺はその粋を理解しない無粋な奴だ。
「念のための人払いだ」とか言いながら結界を広げ、古寺に【光学迷彩】を残させて貰うぜ。
あとはそうだな。
玄米…精米として白く整えて他所様に出す前のわりには充分に綺麗なお姉さんだったとか、
半身を連れに例えてるけど、半身と呼べる連れを本当に連れ去ったんじゃないかとか、綻びを指摘して話に花を咲かせるぜ。
なんか面白い話が出てくれば幸いだな。
●是非もなし
話し相手を得た蟹坊主の気分はすこぶる良さそうであった。
これなら自らあれこれ話してくれるに違いない、と不破・雷童(白雷童子・g02981)は確信する。
古寺へと踵を返した蟹坊主の後について一路南へ、『くだる』――『ふりゆく』。大路で事を構えれば少なからず都に被害が出るやもしれず。住民を巻き込まずに済むのであれば、と彼は誘いに乗ったのだ。
そして、さほどかからず、苔生す古木の匂いがする場所へと至る。
じっとりと湿った空気が満ちた境内。軋む床を踏み、通された空間には埃とカビと得体の知れない何かの匂い。
出された茶は真っ当な代物に見えたが、雷童はそれに手を付ける事なく口を開いた。
彼奴の見立てにも粗があると見て、それらしき綻びをつついてみる算段だ。
「四番の、あんたが玄米に見立てたお姉さんな。白く整えて他所様に出す前のわりには充分に綺麗だったぜ?」
「ほう。白米を白無垢に見立てたか? うまいな。しかし、庶民の娘の、磨く前であるには違いあるまい。米を炊くにも関わっておるしのう。しかして玄(くろ)は冬であり、『ねずみ』は刻と方位を示しておる。……ほれ、他の番にも居るであろ?」
言われて歌詞を思い返せば、確かに全ての季節に動物が居る。
「もしそれを使わずに『北』を導いたなら、見事、難しい方を解いたという事じゃて」
得意げで嬉しそうな蟹坊主の話はまだ続きそうだったが、雷童は軽く手を挙げ割り込んだ。
「……、もう一つ。三番の話だ。『半身』と呼べる『連れ』を本当に連れ去ったんじゃないのか?」
「――否」
それまで雄弁に語っていた蟹坊主が、言葉少なに否定した。
刹那、空気が冷えた気がした。……が。次の瞬間には再び「かか」と嗤って蟹坊主は言うのだ。
「『連れ』が何であれ、丸ごと消してしまっては見立てが残せぬ。片割れも死人になってしもうては何も証せぬ。わざわざそうする理由がないわえ」
「………」
沈黙が場に落ちる。ややあって、
「他には?」
と、蟹坊主。
「他にはもう訊かぬで良いのか? まだ見つかっておらぬものの行方は気にならぬのか?」
――もっとも、此度の見立てと関係のない話をする気はないがの。
愉しげにそう言って、くつくつと嗤う坊主を、雷童は静かに睨み据えるのだった。
大成功🔵🔵🔵
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】がLV2になった!
宮生・寧琥
ひぇん…敵とお話なんて、二人とも勇気あるぅ…。
ねーこは怖いのだめなんだぁ…うぅ。
でもでも、みんながお話してる間、ねーこはいっぱいいる敵を倒しておくんだもんっ。
怖いけど、……けどっ! がんばる!!
いたっ、痛い痛いっ。
何か、あの人たちさー、すぐ逃げるんだけどぉっ。
ねーこはそういうの、ずるいと思う!
ねーこだって、何か知んないけど羽あるから飛べるとこ見せちゃる!
空を飛びながら、双翼魔弾で敵を倒すよぉ。
仲間が攻撃した敵で、一撃で倒せなかったのがいたら、それを優先的に。
飛翔して上から敵の動き方を見つつ、他の仲間に、敵の接近とか不意打ち、飛び去った方向を知らせる!
「あ! みーっけ! いけないんだからぁっ」
●灯もなく
真っ暗な夜の境内。
朽ちかけたお堂が闇に聳え立ち、伸び放題の庭木や草藪は不気味な影と死角を創り出している。
生温い風に吹かれて、宮生・寧琥(> とつぜんの ひとりだち! <・g02105)は身震いした。
敵と話をする勇気は彼女にはなかったが、かと言ってその間、外で待つのもそれはそれで恐ろしい。
静寂の中、緊張で寧琥の口の中はカラカラだ。
不意に、がさ、と藪が揺れる音がして心臓が跳ねた。
「……、なにぃ? 誰ぇ……?」
味方の誰かであって欲しい、と。祈る様に、気丈に呼びかける声は若干震えている。
生唾を呑み、音がした方向に目を凝らす。暗がりの中から何かが飛び出して来そうで……。
(「怖いけど。……けどっ! がんばる!!」)
この場所には確かに『居る』筈なのだ。坊主に従う天狗達が。
湿気て温んだ空気。夜陰に揺らいだ気配を見逃さず、微かな羽音も聞き逃さない。
「!」
咄嗟、彼女は本能的に地を蹴っていた。
悪魔の翼を広げて『追いかける』。彼女には『それ』が逃げようとしている様に思えたのだ。
「ねーこはそういうの、ずるいと思う!」
(「ねーこだって、飛べちゃうんだからっ!」)
黒々とした木々のシルエットを飛び越え、視界に捉えた黒衣黒翼――黒虚天狗。それは倒すべき者達だと寧琥も認識している。仲間が蟹坊主と話をしている間に少しでも数を減らしておきたい、その一念でここにいるのである。
逃すまいと放った魔力の弾丸は二手に分かれ、敵の軌道を追尾して闇間に消えた。
次の瞬間、錫杖の音と共に衝撃が立て続けに寧琥を襲う。
「いたっ、痛い痛いっ……!」
視認が追い付かない『二方向』からの襲撃。
飛び交う二つの影を辛うじて捉えつつ、彼女は敵の向く先を報せるべき仲間の姿を探して素早く視線を走らせた。
成功🔵🔵🔴
効果1【飛翔】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
シエロ・シーカー
…僕はそんなにお喋り好きではないから、それは他の人に任せるよ。
その代わり……配下と『遊んで』いようか。
1体ずつ相手にし、残留効果を有効活用しながら行動する。
敵に鎖を鞭のようにしならせて叩きつけるのを繰り返す。
途中で鎖が敵の身体のどこかに巻き付いたらそのまま片手で引っ張りながら反対の手でバールのようなものや投擲用ナイフを投げつける。
●音もなく
双方向に別れた影の一体を捉える鎖。
鞭の様にしなって黒虚天狗に絡みつく、その片端を握っているのは寧琥の声を聞きつけたシエロ・シーカー(夜歩く灰・g02141)である。
「……確保」
目深にかぶったフードの下で静かに光を帯びる銀の瞳。
黒虚天狗が己の射線上に降りて来たのは好機そのもの、相手にとっては不運に違いないが同情などするべくもない。
仮にそのまま隠れ遂せた所で、シエロは必ず見つけ出し、同じ展開になっていた事だろう。あまり得意でないお喋りは他に任せる事にして、己のやり方で道を繋ぐべく。少し遊んでやる、という気安さで、決して軽くはない一撃を見舞うのだ。
手繰る様に鎖を持つ手に力を込める一方で、ポケットに突っ込んでいた手が持ち上がる。流れる様に鮮やかな投擲――彼女が投じたナイフをその身に受けながら黒虚天狗は、隙間を通す様に錫杖を繰り出して来た。
「……っ」
上体を逸らすも、躱しきれない。
肩口を衝かれた僅かな痛みに眉を顰める一瞬に、鎖を振り解いた黒虚天狗が飛び上がって距離を取る。
追う様に仰ぐ視界に過る数体の影は、正に闇夜の鴉といった様相だ。
成功🔵🔵🔴
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
蓮水・イチカ
皆様のために、私は露払いをいたしましょう。そこの天狗、そうです、あなたがたです。私が、いいえ私たちがこたびの狼藉を許しません。あるべき場所へ還りなさい。
WIZの天狗は飛翔能力を持つ様子。私もパラドクス『薄ら氷の音色』で飛翔能力を得て立体機動にて戦いを挑みましょう。天狗に上空をとられないよう気を付けつつ【ガードアップ】で守りも固めます。
一度に四体を相手取るのは苦しいかもしれませんが、数の脅威におびえていては何もできません。何よりここには仲間の皆様がいらっしゃる。こんなに心強いことはありません。
「私は道をひらき道を繋ぐもの、ディアボロス。その道にあなたがたはいません」
※絡みアドリブ歓迎
御門・風花
人形のような物静かな少女。
戦闘時は、感情の残滓が昂り言葉遣いや瞳に強い意志が宿る。
戦いの気配を感じ、エアライドで空中と屋根瓦を足場に駆け抜けて古寺へと軽やかに着地する。
「見つけた」
彼らの容姿と妖怪伝承書の記述を頭の中で照らし合わせ
「蟹坊主。そして、護衛の黒虚天狗」
戦闘では
「その技は知っている」
伝承書を思い出し、静かに呼吸法で精神を研ぎ澄ませて目を閉じ天狗たちのオーラを感じ取る。
「理解した」
破軍衝でオーラを両腕に纏いガードアップ。グラップルを使用し、目を開くと同時に左手で錫杖を掴み、カウンターに右手の掌底で衝撃波を打ち込む。
「破軍衝」
「次は、誰が相手?」
味方とは積極的に協力。
「私も一緒に戦う」
●暗夜に黒い羽が舞う
「見つけた」
戦いの気配を辿る事は容易く、交戦中の影も見て取れた。夜色の空に蠢く不穏――その姿が。
軽やかに空を蹴って古寺の屋根へと降り立った少女は、真っ直ぐにそれを見据え、脳内で伝承と照らし合わせる。
「護衛の黒虚天狗」
事件の首魁たる蟹坊主の姿はない。が、こうしている間も誰かと話し込んでいるのだと思えばこそ、今はただ目の前の事に集中する。淡々と敵影を見遣る御門・風花(静謐の凶鳥・g01985)の感情を失くした瞳に、仄かに意志の炎が灯る。
ほぼ同時に駆け付けた蓮水・イチカ(あえかな激情・g03802)もまた怒りに燃える眼を、古寺の闇間に見え隠れする天狗達へと向けていた。
「そこの天狗。そうです、あなたがたです。此度の狼藉、『私たち』が許しません」
――『私たち』。
そう、私達。即ち『ディアボロス』が。
イチカの言葉を反芻しながら風花は、種火を大事に育てる様に目を伏せた。
気息を調え、精神を研ぎ澄ます。周囲に淀んだ黒い気配の揺らぎは、彼女の心が澄み渡るほど鮮明に視えて来る。
唄声が聞こえる。イチカの声だ。
「――『ふゆのあしおとざんざんざんざん、ふゆのいぶきがざんざんざんざん』」
惨劇の舞台の一つとなった場所に響く旋律、件の数え唄とは全く異なる節回し。
やさしさの中に物悲しさとどこか不気味さを湛えた『薄ら氷の音色』が闇夜に溶ける。黒虚天狗達が怯む気配。
「――『ゆきのふりつむやまおくで、かおかくしてるのだぁれだ』」
顔を隠した黒虚天狗へと、彼女が口ずさむパラドクス。
ここまで仲間が刻んで来たものを足がかりに、自らもそこへ積み重ねて行く様に。
仲間と共に戦う心強さを噛み締めながらイチカは、空駆け迫り来る四つの黒い影を見る。風起こす羽ばたき、呪詛と化した複数の黒い羽が鋭くイチカの肌を傷付ける。避けても無駄だと思わせる軌道に彼女は端から覚悟を決めていた。
身構えていた所為か、案外どうという事はない。これならまだまだ戦える。
きっ、と顔を上げ、イチカは天狗達を睨みつけた。
「私は道をひらき道を繋ぐもの、ディアボロス。その道にあなたがたはいません」
風が逆巻き、空気が動いた。
風花は開眼と同時、爆発的に生じたオーラを両腕に纏い、力強く踏み込む動作で黒虚天狗に掴みかかって行く。
無造作に錫杖を押さえ込む左。転瞬、右手で衝き込む掌底、凄まじい衝撃波がもう一体を巻き込んで諸共に吹っ飛ばす。
まるで人形に血肉が通ったかの様に『静』から『動』へ。鋭く呼気を吐いて、再び『静』へ。
――さあ。
「次は、誰が相手?」
確然と強い意志が覗える声と眼差し。順調に二体を下した風花は周囲をぐるりと見渡した。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【飛翔】がLV2になった!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV2が発生!
不破・雷童
わざわざそうする理由がない、その必要がない故に。
だとすると、これはあんたらからの宣戦布告なんじゃないか?
春に夏に一つに二つに、そうやって今から数えるたびに一人ずつ殺してやるぞ、と。
そうでなければわざわざ数え歌に見立てる理由も、自ら噂を広める必要もないからな。
宣戦布告のわりに誰の仕業と明らかにされていない?
それもそうだろ、恐ろしい妖怪は正体がわからないから恐ろしいんだ。
それもどこかのいる大妖怪なら尚更に……まぁ、そんな奴が居るかは知らないが。
そんじゃ、そろそろ手合わせと行こうぜ。
なにせ宣戦布告はすでに受け取ったんだからよ?
●子(ね)の刻限
――みしり、と天井が軋る。
旧り行く(ふりゆく)建物は、事実いつ崩れ落ちてもおかしくない様な状態ではあるが……。
「はて、表の方で何やら音がしたか?」
蟹坊主は嘯いて周囲を見回す仕草の後、息を吐いた。楽し気に。
その間、不破・雷童(白雷童子・g02981)は蟹坊主から視線を逸らさず、己の考えを巡らせていた。
「惨たらしい事件が起きて、誰の仕業とも知れない。そりゃあ、京の都の人々は恐怖だろうな」
思考が口から零れ出る。
うむうむ、と蟹坊主は満足そうに頷いた。
「そんなのが、春に夏に、一つ二つと増えて行くなら、なおさらだ」
「然り。西折の家伝の『四季詠み』数え唄は、干支も絡んで都合三巡」
「……!! なら、余計に『なおさら』だな――」
ある程度予想はしていても、さらりと聞かされ雷童の胸中は穏やかではなかった。
「だが、四番でお主らが謎を解いたゆえ、この唄にまつわる見立て殺人はこれで終いよ」
見透かされた様に口を挟まれ、いよいよ盛大に溜息を吐く。
相手はクロノヴェーダだ。得てして相容れぬもの。わざわざ人目につく様に犯行を重ねて行く理由にしても、『ただの暇潰しだ』と言い出しかねない雰囲気すら、眼前の蟹坊主は持ち合わせている。しかし――。
殺人を隠す理由もその必要もない事を、わざわざ明かすもまた謎めいている。
「現場を唄になぞらえて痕跡を残して行くその所業、俺達への『宣戦布告』と受け取ったぜ」
「ほう」
蟹の目が、細められた。
蟹坊主はまだまだ語り足りない様子だが、いつまでも茶飲み話に付き合っては居られない。
宣戦布告も受け取った事だし、と、雷童は、朗らかな浮かべて見せた。
「そろそろ手合わせと行こうぜ」
「そうさな、子の刻にも限りがあるでのう」
何ら厭わず蟹坊主も、かか、と嗤う。
そして、茶碗を下げさせる態で何者かを呼び寄せようとして――。
既にその気配が一つ残らず絶えている事を悟るや、手を打ち大笑。
「これはまんまとしてやられたようだの。儂が気分良く話しておる間に。しからば一層の礼を尽くさねばならぬな」
手向けに、ディアボロスの誰ぞを『四番』に見立ててやろう、と蟹坊主は言った。
終いとは言ったが、最上級の礼を思い付いたと臆面もなく。
「表の皮を残して後身を全て喰らってやろうぞ。これにて『うらがなし(裏が無し)』――とな!」
成功🔵🔵🔴
効果1【光学迷彩】がLV2になった!
効果2【アヴォイド】がLV3になった!
蓮水・イチカ
蟹坊主様、無情という言葉をご存知ですか。あるいは万物は流転するという言葉を。ここはあなたがたクロノヴェーダの世界かもしれません。今は。ですが、いつか必ず私達が取り戻してみせます。その最初の礎となりなさい。
(お兄ちゃん…必ず見つけるから…待っててね)
使用パラドクスは春の霞色。【ガードアップ】で皆様のまもりを固めます。奇怪問答は【伝承知識】と【記憶術】を用いて、内容の意味不明さに心乱れぬようにし、蟹坊主様の一撃が来たら【エアライド】と【飛翔】をありがたく利用させていただいて後方へ飛び退きます。
「負けるものですか。私だけでは倒せずとも次の一手があなたの首を刈ります。そのために私達は集ったのですから」
御門・風花
静かな声がハッキリと響く
「みつけた」
罪なき民を殺め、死体すら弄ぶ外道へ向かって、歩みを進める。
「見つけた」
背中に刻まれた悪魔の紋章が風花の感情に合わせて呼応する。
「あなたが持ち去った犠牲者たちの半身はどこにある?」
「っ!!」
風花の激情がネメシス形態を呼び覚ます。悪魔の紋章から漆黒の羽が展開し、溢れた魔力は全身を包む魔力障壁となり風花の闘気と混ざり合う。
「終わるのは『あなた』だ!」
破軍衝を使用。ガードアップで腕にオーラを集中させ、敵の衝撃波を裏拳や掌底から放たれる衝撃波で相殺して突き進む。
「殺された人たちの無念、ここで晴らす!」
味方のディフェンスは積極的に行う
「あなたの思い通りには、させない!」
●つきのありか
「みつけた」
伽藍の入口に響く静かな呟き。
幾つか集う視線も意に介さず、底知れぬ怒りを湛えた眼差しを中央に立つ異形へと据えたまま、
「見つけた」
踏み込みながら同じ一語を繰り返す御門・風花(静謐の凶鳥・g01985)を制する様に、蓮水・イチカ(あえかな激情・g03802)が前に出た。
「蟹坊主様、『無常』という言葉をご存じですか」
「是生滅法」
それがどうしたと言わんばかりに鼻で嗤う坊主に、イチカは言い募る。
「万物は流転するものです。――いつか必ず、私達が取り戻してみせます」
クロノヴェーダに奪われた世界を、歴史を必ずや。
これはその為の第一歩であり、礎の一つとすべく、宣言に乗せる決意とその覚悟。
まずは一つ。と、イチカの唇が紡ぎ始める『春』の霞色。
「『はるけきとおくはおおわれて、このみのまわりもつつまれて、はるのあわいにとけきえる』――」
穏やかな旋律だが、それもまたクロノヴェーダに向けた復讐の刃とならんパラドクス。
蟹坊主は不快そうに顔を顰めつつ、泰然とした足取りで向かって来る。
仲間を護るべく突出した風花が、感情のままに、沸き起こる怒りに衝き動かされる歩みもそのままに、叩き付ける問い。
「あなたが持ち去った犠牲者達の半身はどこにある?」
「無論、儂の腹の中よ」
「――っ!!」
激情が呼び覚ますもの、それは――復讐者の力をより高次元へと昇華させ、更なる力を発揮する為の姿へと変異せしめる魂の発現。風花の背に浮かび上がった紋章から漆黒の翼が生まれ、溢れる魔力が全身を包むと同時、彼女自身の闘気と一体となって噴き上がる。
「終わるのは『あなた』だ!」
息巻く彼女を歯牙にもかけず、蟹坊主は「かか」と嗤うのみ。
「血濡れの庭で天仰ぐ馬の首灯篭。さて、今宵の月はどちらを向いておるか?」
(「――月?」)
『問答』に一瞬気を取られかけるも、イチカの心は落ち着いていた。
今宵、細い灯りを地上に届けていた月は少し前、流れる雲に隠れて今は無明。
問いかけの意味は不明ながらそれに惑わされる事なくイチカは相手の挙動に素早く反応――蟹坊主の片袖が振れ、後ろに飛び退った彼女の眼前を蟹鋏が凄まじい勢いで通過した。風を切り、不気味な音を鳴らして虚空を掴んだそれをすかさず捉えた風花を見遣り、小さく舌を打つ蟹坊主を睨み返してイチカが言う。
「負けるものですか。私だけでは倒せずとも次の一手があなたの首を刈ります。そのために私達は集ったのですから」
「殺された人たちの無念、ここで晴らす!」
蟹坊主の鋏を捉えた腕に闘気を集める風花に、もう一方の鋏が迫る。風圧ごと撥ね退ける様に繰り出す掌底。さながら炎天、熱波を発する朱炎の如く――気合を込めて鋭く発する呼気と共に、衝撃波が至近でぶつかり合い、霧散する。
「あなたの思い通りには、させない!」
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【平穏結界】LV1が発生!
【エアライド】がLV2になった!
効果2【ガードアップ】がLV4になった!
応龍寺・龍華
数え歌になぞらえて殺戮を行うクロノヴェータ、日本の過去に飛んで見たら奇妙な性質の奴も居たものね。
初陣に不足なし、今の私の力を……試す!
「応龍寺流……気功剣舞!」
応龍気を満たし、スピードを活かした剣舞で蟹の関節部を魔剣で斬りつける。
壁を歩き側面から斬りつけ、天井まで登って落下の力を得ながら敢えて甲殻部分に切先を突き入れるなど華麗に果敢に攻めたてるわ。
「念仏は、お前の死の踊りで代用しなさい」
不破・雷童
それはこっちの台詞だ、生臭坊主。
その味噌と身を一つ残らずほじくり返してやるぜ。
っと、啖呵は切ったものの素直に戦うには手強い相手だ。
パラドクスを展開して四方からの【不意打ち】を仕掛けるか。
ひとつ、その掛け声で卯の方角から。
ふたつ、その掛け声で午の方角から。
みっつ、その掛け声で酉の方角から。
そしてよっつ、意趣返しと判断して子の方角に先読みした蟹坊主の攻撃を丑寅、つまり鬼門の方角からカウンターで合わせるぜ。
言っただろ? これは『鬼ごっこ』だって。
あとは余力なんてあるかわかんないけど、あれば蟹坊主の鋏をぶっ叩いてひん曲げるぜ。
まぁ、なんというかあれだ。蟹坊主と噛み合う気は無い、そんな意思表示だな。
●四季重の意趣返し
ひとつ、ふたつと季節を重ねる様に、仲間達が描いた軌跡を不破・雷童(白雷童子・g02981)も数えてなぞる――なぞらえる。
不意打ちが通用するとすれば恐らく一打目のみであり、既に相対していた状態ではどうあっても読まれてしまうであろう所から、いかにその目を掻い潜り、己が目論みを果たすかという点において、共に仕掛ける仲間の存在は不可欠だ。
何ら示し合わせた訳ではない、が、そこに同じ目的があるからこそ起こり得る。偶然、否、必然であろう。
ひとつめは『卯』の方から。
ふたつめは『午』の方から。
そして、みっつめは。
――だん!
強く壁を蹴る音が響き、天井めがけて人影が舞った。
電光石火の側面攻撃、からの跳躍。落下の加速を得た鋭い切先を甲殻へと突き立てる鮮やかな剣捌きは、舞の如く。
「応龍寺流……気功剣舞!」
黒髪を靡かせ、しなやかに着地した応龍寺・龍華(応龍の華・g00190)は眼前に迫る巨大な槌の如き蟹鋏を、身を反らして往なす。直後、全身に叩き付けられる爆発的な妖気に目を細めた。己を試す様なその眼差し。初陣の彼女に油断はない。
軋る床を踏み締め、腰溜めに身構えて衝撃に耐える。古板を踏み抜きながらも彼女は耐え抜いた。
ややあって、蟹の鋏が一つ落ちる。
気を満たした彼女の刃は確実に、その関節を断ち落としていたのだ。
首尾は中々にして上々。ふ、と笑む様な吐息を零しながらも龍華は如才なく、敵方の一挙手一投足を凝視している。
「ぬう……」
よもやという気色を滲ませた蟹坊主が、ふと視線を振った。
(「何処を見ている……?」)
龍華が怪訝に思った次の瞬間。
「どこ見てんだ生臭坊主! これが、『よっつめ』だ!」
雷童が重ねて打ちかかった。
不意打ちまがいの一撃は見事に決まり、蟹坊主がよろめいて後ずさる方角は裏鬼門。
彼があえて鬼門から仕掛けたこの『よっつめ』こそが蟹坊主の『うらをかく』本命打。
「……次は『子』の方角と思ったか?」
みっつめに『酉』方の鋏――半身が落ちた瞬間に、よっつめを気にしたあの素振り。少なくとも彼にはそう見えた。
蟹坊主が呻く。その声はしわがれ、なお笑みを含んでいた。
「なるほど、既にお主の術中であったか」
京の都に見立てた碁盤目状のナワバリを張り巡らせた縮図の中で、雷童が描いて見せた四季数え。
「何だよ、『鬼ごっこの始まりだな』って俺の言葉、聞いてなかったのか?」
鬼を討つ鬼となりて、ひと、ふた、みっつと重ねた手数も、蟹坊主の意識には一切残らなかった様だ。
それだけ雷童の神出鬼没が堂に入っていたという事だろう。恐らく。
「本来無東西」
「……何?」
「いずこにか南北あらん。五体に見立てる方が余程、容易かろうに」
東も西もないなどと……この期に及んでどの口がそれを言うのか、と雷童は呆れ半分。後半分は聞くだけ無駄だ。
「まあ、いいさ。これから、その味噌と身を一つ残らずほじくり返してやるぜ」
『うらがなし(裏が無し)』から転じて『裏をかく(欠く)』、掛詞を好む手合いには似合いのやり口。
だがしかし、クロノヴェーダのやり方に合わせてやる義理もありはしない。
「念仏は、お前の死の踊りで代用しなさい」
情け容赦の欠片もなく、龍華が切先と共に突き付ける言葉。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【壁歩き】LV1が発生!
【光学迷彩】がLV3になった!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【アヴォイド】がLV4になった!
宮生・寧琥
うー……はさみとか、とげとげの足とか、カニって大きいと超怖いんだけどぉ…
でも、みんなも戦ってる!
ねーこも、やる!ぞ! ……おー(小さい声)
跳躍しての攻撃に、わー!わー!わー!と悲鳴上げつつ、
でも、ジャンプより空飛ぶ方が自由に動けるんだもんっと、【飛翔】を駆使してがんばってよける!よけたい!
「んもーっ! おかえしだからぁ!」
と、【双翼魔弾】で反撃
サヨナラの前に、ねーこ、言いたいことあるんだけどぉ……
「あのさ、あのさ……なぞかけ好きなのはいいけどぉ、遊ぶために人を殺したら、いけないんだよ」
そんなの、ねーこだって知ってるのに
死んじゃったら、もう、帰ってこないのに
ちゃんとそれ、覚えてね
ばいばい
●つきつきて『うらがなし』
刺々しい巨岩の様な影が己の真上に迫り来る。
「ぴゃー!」
宮生・寧琥(> とつぜんの ひとりだち! <・g02105)の警笛の様な悲鳴が迸った。
ただでさええげつない外見だというのに、それが跳躍するなど反則極まりない。
わーわーと賑やかに逃げ回りながら、それでも、と仲間の戦う姿を見て奮起した彼女だったがいきなりピンチである。
もっとも、それは相手も同じ事。
元より薄汚れていた黒い僧衣は更に擦れ、残った鋏も千切れかけている今、追い詰められ手負いが故の暴れ様。
全力で以て全てを圧し潰そうと――重量のありそうな体躯はそれだけに降下速度もかなりのもので。
「あっぶな……!」
寸での所で必死に飛び上がり、空中でギリギリすれ違う。その先、眼下で砕ける床板。
「んもーっ! おかえしだからぁ!」
もうもうと粉塵立ち込める中、ゆらりと立ち上がる敵影、その『頭上』から――図らずも五体の頂点すなわち『北』目掛け――思いの丈を込めた魔力の弾丸をぶっ放した。散々怖がらされた仕返しも込めて、全力で。
逃れようのない魔弾に撃たれ、再び床下へと叩きつけられた蟹坊主は、それっきり……起き上がっては来なかった。
「………」
深呼吸。
きっと、みんなが頑張ったからだ、と寧琥は思った。
もちろん彼女もその一員であり、トドメを刺したのは彼女自身に他ならない。すぐには実感が湧かない程、それ程にあっけなかった。本当にやっつけたのか、疑いながらそろりと降り立ち、蟹坊主が呑まれた大穴を恐る恐る覗き込む。
最後に、言いたい事もあったから。
そこには確かに僧衣を纏った蟹の頭と、少し離れた所に転がる鋏が見えた。
「あのさ、あのさ……なぞかけ好きなのはいいけどぉ、遊ぶために人を殺したら、いけないんだよ」
失われた命はもう戻っては来ない。それくらい自分でも知っている事だと。
返事はない。
それでも彼女は、含める様に言い聞かせた。
「ちゃんとそれ、覚えてね」
雲が動き、夜天に再び月が顔を出す。
ふと見上げる天井。戦闘の余波でとうとう崩れてしまったか、ぽっかりと空いた穴から降り注ぐ冷たくも穏やかな月明かりは細やかながら、静かな夜が戻ってきた事をディアボロス達に伝えているかの様だった。
今宵の『ツキ』はどうやらこちらに味方したらしい。
「……ばいばい」
呟いて、寧琥は仲間達を振り返る。
「それじゃ、かえろー」
と。人見知りの14歳、ちょっぴりはにかむ笑顔がそこに在った。
大成功🔵🔵🔵
効果1【飛翔】がLV3になった!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!