オアシスを捨てて

 マミーやリターナーの軍勢によってオアシスに追い詰められて滅ぼされようとしている砂漠の民がいます。
 ディアボロスが戦う事で、侵攻を遅らせる事は可能ですが、長期間このオアシスをディアボロスが守り続ける事はできません。
 マミーやリターナーの軍勢が来る前に、オアシスを捨てて逃げ出すように説得をしましょう。
 彼らが逃げ出す事を受け入れてくれた後は、彼らが逃げ出す時間を稼ぐためにクロノヴェーダを撃破してください。
 先行部隊の指揮官(👿)を撃破する事ができれば、砂漠の民が逃げる為の時間を稼ぐ事が可能です。

遥か砂塵の彼方より(作者 長谷部兼光
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#獣神王朝エジプト  #オアシスを捨てて 


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●青天の赤
 そして。何もかもが絶え果てた。
 翳り無き蒼穹。灼けつく陽光に曝されて、狂い咲くのは血の色の、真っ赤な真っ赤な大輪花。
 水面が揺れる。祈りも怒りも諦念も悉く、塵を孕んだ風が浚い、最早全ては過去の話。
 たった今。無数の屍人が、小さなオアシスを、そこにあった尊厳(いのち)を、完膚なきまでに蹂躙し尽くしたのだ。
 屍人達は無造作放った『それ』に呪詛塊をぶつけ、散らした。
 枝葉から果実を採るように、屍人達は見ず知らずの『それ』を縦に横にもいでゆく。
 屍人達は解体した『それ』に然したる興味も抱かず、澄んだオアシスに投げ入れた。

 全て、総て、諾々と。
 水面が赤に淀む。
 何故、どんな理屈で集落を壊滅させる必要があったのか。
 ……そんな事、手を下した屍人達とて知りはしない。
『偉大なる神々にそうせよと命じられたから』
 彼らが集落を壊滅させた理由など、ただのそれだけ。
 屍人たちにとって、それ以上の道理は必要無かった。

●オアシスは救えない
「獣神王朝エジプト……その支配領域は、アフリカ大陸のおよそ北半分に及びます」
 それだけ広大なら、エジプト神を信仰しない人々が各地に点在していたとしても特段不思議ではないでしょう、と時先案内人・ファナン・トゥレイス(人間の風塵魔術師・g01406)は説明を続ける。
「けれど、このディヴィジョンのクロノヴェーダ達……自らへの『信仰』をエネルギーとするエンネアドにとって、彼らの存在は面白いものではありません」
『信仰』という概念は、このディヴィジョンを語る上で欠かせない。人々が神を騙るクロノヴェータを信仰すればするほど、それに比例して宿敵達の力も増してゆく。より強い信仰を得る為ならば、心にもなく優しい顔をして、死者を蘇らせる程度の奇跡は起こしてみせる。
 しかしそれも『信仰』を通して恙なく人々から力を汲み上げる……と言う図式(システム)あっての話。エジプト神=クロノヴェーダを信仰しない人間の価値など彼らにとって枯れ井戸に等しく、目障りで、使えない。故に神罰や試練などと適当な理由を見繕い、リターナーやマミーを従え滅ぼして回るのだ。
 今回惨劇が予知された集落(オアシス)も、彼らにとっては撤去すべき枯れ井戸の一つに過ぎない。
「勿論、そんな暴挙は赦せません。それに抗う為にこそ、パラドクストレインは現れました。ですが……」
 オアシスを救う事は決してできません。悲壮の表情で、ファナンはそう断言する。
「彼我の戦力の、規模が違い過ぎるんです。此方がどれだけ頑張っても、時間稼ぎが精々で、どうしようもない程に……」
 大軍に打ち勝てず、オアシスも守れず。それでも、惨劇の起こる直前に割入って、ディアボロスが唯一為すべきは。
「クロノヴェーダの手が及ばぬ程に遥か遠く、砂漠の奥地へと。集落の人々を、敵の軍勢から逃すこと……です」
 つまり、集落の人々を救うためには、彼らに故郷(オアシス)を捨てる決断をさせなければならない。

●取るべき指針
 そうさせる為に、何名かは集落に潜入する必要があるだろう。軽く隊商(キャラバン)などを装えば、そう難度の高い話ではない。
 潜入後は集落の有力者……集落に於いて発言力の強い人物を探し出し、オアシスを捨てて脱出する事を説けばいい。
 ただし、部外者にいきなり促されたところで、全員が全員故郷を捨てて逃げるという決断を出来るものでは無い筈だ。
 集落の全員の退避を促す為には、前準備として、この集落に関するある程度の情報収集が要になってくるかもしれない。
 どうあれ敵は待ってくれない。説得に時間がかかれば、『先遣隊』がオアシスに襲撃を仕掛けてくる可能性がある。が、
「危険を伴いますが、敢えてこの襲撃を人々の間近で見せれば、説得の強力な助けになるかもしれません」
 何れにせよ、クロノヴェーダで構成されたこの『先遣隊』は倒さなくてはならない。これを打倒することこそ、住民たちが安全に逃げる為に必要不可欠な、『時間稼ぎ』になるのだから。

「たとえ、今はまだ、敵の大軍を倒せないとしても。オアシスの人々を逃す事が出来れば私たちの『勝ち』です。人類史を好きなように奪われたままでは終われません。だから……行きましょう……!」

●決められない
 パラドクストレインがディヴィジョンに到着した時間軸。オアシスに屍人達が殺到するよりほんの少々前の話。
 変わり映えしない筈の、しかしいつもと何かが違う砂塵の景色から、異邦の神々――クロノヴェーダの侵攻を察知した少年がいた。
 これは大変だ、少年が血相を変えて集落の皆に報告すると、どよめく住人を鎮めた長老はそうか、と息を吐くようにただ一言。
「……それだけ? すぐにここを離れる準備をしなければ、きっとみんな殺されてしまう!」
「ならば、『今の集落で一番駱駝の扱いが上手く、旅慣れている』お前が、頭となって皆を逃すのだ」
 しかし、未だ『彼ら』を待つ者はそうもいくまい。儂も集落の長として、いの一番に逃げ出すわけには行かぬ。
 長老は観念するようにその場へ座り込み、『彼ら』を待つ住人達もそれに同調する。
 ……『待ち人』がおらず心情的にも技術的にも身軽なのは、少年を含め住人の七割。
 だから、少年と七割の住人はやろうと思えば今すぐにでも逃げる事が出来るし、真実、長老と、『彼ら』を待つ残りの三割の住人達が、逃げる者たちの事を悪く言ったりはしないだろう。
 けれど。今までずっとオアシスで暮らしてきた家族ともいえる仲間を見捨てて、本当に自分たちだけ逃げてしまっていいのだろうか。
 何はともあれ命あっての物種か。しかしそれでは一生、『彼ら』に顔向けできなくなるだろう。
(「ああ、全員で逃げられれば、何の苦労も無いのに……!」)
 逡巡は懊悩に変わり、懊悩が判断をひどく鈍らせる。

 徒に、時間だけが過ぎてゆく。
 惨劇の到来まで、あと――。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
1
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。【怪力無双】3LVまで併用可能。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【狐変身】
1
周囲が、ディアボロスが狐に変身できる世界に変わる。変身した狐は通常の狐の「効果LV倍」までの重量のものを運べるが、変身中はパラドクスは使用できない。
【怪力無双】
2
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わり、「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げて運搬可能になる(ただし移動を伴う残留効果は特記なき限り併用できない)。
【強運の加護】
1
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【照明】
1
ディアボロスの周囲「効果LV×20m」の空間が昼と同じ明るさに変化する。壁などで隔てられた場所にも効果が発揮される。
【腐食】
1
周囲が腐食の霧に包まれる。霧はディアボロスが指定した「効果LV×10kg」の物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)だけを急激に腐食させていく。
【罪縛りの鎖】
1
周囲に生き物のように動く「鎖つきの枷」が多数出現する。枷はディアボロスが命じれば指定した通常の生物を捕らえ、「効果LV×2時間」の間、移動と行動を封じる。
【避難勧告】
1
周囲の危険な地域に、赤い光が明滅しサイレンが鳴り響く。範囲内の一般人は、その地域から脱出を始める。効果LVが高い程、避難が素早く完了する。
【エアライド】
2
周囲が、ディアボロスが、空中で効果LV回までジャンプできる世界に変わる。地形に関わらず最適な移動経路を見出す事ができる。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【活性治癒】
1
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【建造物分解】
1
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。
【書物解読】
1
周囲の書物に、執筆者の残留思念が宿り、読むディアボロスに書物の知識を伝えてくれるようになる。効果LVが高くなる程、書物に書かれていない関連知識も得られる。
【建物復元】
1
周囲が破壊を拒む世界となり、ディアボロスから「効果LV×10m半径内」の建造物が破壊されにくくなり、「効果LV日」以内に破壊された建物は家財なども含め破壊される前の状態に戻る。

効果2

【能力値アップ】LV2 / 【命中アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV4 / 【ガードアップ】LV4 / 【反撃アップ】LV1 / 【ドレイン】LV1 / 【アヴォイド】LV1 / 【ロストエナジー】LV1

●マスターより

長谷部兼光
 初めまして。
 長谷部兼光と申します。

●目的
 オアシスから逃げるよう住民たちを説得し、
 先遣隊を撃破して時間を稼ぐ。

『先遣隊』
 オアシスの民を殺すのでは無く、監視、及び抵抗力を削ぎつつ、逃亡を赦さない役割を持つ。

 少年と七割の住人
(冒頭予知補足)住人同士の絆が深いが故に、仲間を見捨てて自分たちだけ逃げるべきか否か、答えが出ないまま悩み続けてタイムリミット。諸共虐殺されてしまう。

『彼ら』を待つ残りの住人
 逃げる事には消極的。(冒頭予知補足)遂に『彼ら』に会うことなく虐殺される。

 長老
 ディアボロスが、『彼ら』を待つ住人達へ、オアシスから撤退するに足る充分な説得が成し得た場合、同調して援護してくれる。
(長老自身は住人の全員がオアシス脱出を決意した時点で生存が確定します)

●備考
 プレイング採用人数は、各選択肢とも、最大でクリアに必要な人数+数名程度になります。
27

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


ジェレミー・ルーベル
まずは情報が必要だな…人が集まる…水場か食堂か?

俺がいきなり話かけるよりも
かわいいミーティアに先にコンタクトをとってもらうか
スフィンクスダンスで話しかけるきっかけにしよう

おっと、うちのお嬢様が失礼、人懐こい性格でね
たまたま立ち寄ったんだがここはどんな街なんだ?
なにか名産品とか…うまいものとかあるのか?

緊張がほぐれてきたら少し込み入ったことも聞いてみるか

やっぱいろんな話聞くのは楽しいな、あんた話上手だな

そうだもっと詳しい人っているのか?
街の歴史とか由来とかそういう話も色々聞きたいんだよね

へぇその人ってどんなものが好きとかわかるか?
手土産でももっていってくるよ
楽しい時間をありがとうな、じゃあまたな


 雲一つない青天の、最も高いところまで登った陽光が、容赦なく集落へ降り注ぐ。
 時刻は昼。老若男女の区別なく、活気に満ちた食堂に、ぱたぱたと翼の生えた猫がやって来た。
 こいつは珍しい客が来たもんだ。料理片手、食堂の主人がそう言うと、その場にいた住人達も空飛ぶ猫に釘付けだ。猫は小さな椅子へ器用に着陸すると、背を延ばしたり丸めたり、入念な準備運動を熟した後に、満を持してと世にも愛らしいダンスを披露する。
 歓声や、拍手の上がる食堂内。特に子供達からの反響は大きく、おひねり代わりに、と猫のすぐ近くのテーブルにはナッツやら肉やら果物やらが積まれ、ちょっとしたお祭り状態だった。
「おっと、うちのお嬢様が失礼」
 そんな頃合いを見計らい、ジェレミー・ルーベル(リターナーの王墓守護者・g01064)は衣服についた砂を払うと食堂へ入る。住人達にとってジェレミーは馴染みの無い異邦人だが、猫――ミーティアのお陰か、場の雰囲気はそう悪くない。
「見ての通り人懐こい性格でね。騒がせてしまったのなら悪かった」
 そんな事無いよ、と首を振る子供たち。
「ねえ、この子の名前はなんていうの?」
「ミーティアだ。かわいいだろう?」
「かわいい!」
 ジェレミーはそんな、屈託の無い子供たちに微笑むと、ミーティアに子供たちの遊び相手を任せ、自身は適当な注文を頼みがてら、恰幅の良い店の主人へこの集落の情報(こと)を尋ねた。
「たまたま立ち寄ったんだが……ここはどんな街なんだ?」
「何てことのない、水の精霊(ジン)を信仰する普通の集落(まち)さ。ま、といっても他より少々裕福かもしれんがね」
「裕福? なにか名産品が……希少品とかうまいものとかあるのか?」
「ああ。うちの名産品と言えば……これだ」
 にやりと笑って、店主がジェレミーの前に持ってきたのは、小皿に乗った白い石。
 宝石か、いや、食堂で出てくる鉱石と言えば……。
「塩……岩塩か」
 石のかけらを齧ったジェレミーがそう呟くと店主は大きく頷き、
「この集落(まち)のすぐ近くには良質の塩鉱があってな。しょっぱいだけの鉱石と侮るなよ? これを他所に『持って行けば』、金や希少品に化けるのさ」
 水と塩。生きていくために不可欠なその二つが採れるからこそ、この集落(まち)は小さいながらも裕福なのだと店主は語る。
「長老曰く、ここら一帯は気の遠くなるほど大昔、海だったなんて言うが、だったら猶の事、水の精霊への感謝は欠かせないね」
 何せ、豊富な水と塩のお陰で生きるに困らないから、生まれてこのかた砂漠に出たことが無い奴だって居るくらいだ、と。
「……水の信仰に岩塩か。やっぱいろんな話聞くのは楽しいな、あんた、話上手だな」
 おだてたって代金まからんぞ、大笑しながら店主はそう言った。
「そうだ……もっと詳しい人っているのか? 街の歴史とか、由来とか、そういう話も色々聞きたいんだよね」
「市場の連中なら、俺より口も頭も回るだろう。商売っ気が強いから、無料(タダ)では教えてくれないだろうけどな」
「へぇ……じゃあ何か、手土産でも持っていくべきか。商人の好物と言えば……」
 何がいいかとジェレミーが思案していると、
「ここらへんじゃ見れないような、珍しい物なら一発だろう」
「成程」
 店主との会話の終わり、ちょうど料理を食べ終えたジェレミーは席を立ち、子供たちと遊んでいたミーティアを呼び戻す。行き先は、再び炎天下。
「楽しい時間をありがとうな、じゃあまたな」
「またねー!」
「ねー!」

 店主や子供たちに見送られ、ジェレミーは駆ける。何の罪もない、オアシスの朗らかな住人達。彼らを死なせるわけには行かない。得た情報を早く仲間と共有しなければ。
 ……どれだけ思い返してみても、以前守っていたものは思い出せないけれど。
 今は。この集落(まち)を守るために。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【避難勧告】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!

テクトラム・ギベリオ
果物売りのキャラバンに変装し調査を行う。
(新宿から持ってきたため)新鮮さをアピールしながら切った果物を味見させる事で人を集め、
街の状況と『彼ら』『待ち人』について探りを入れる。

「お近づきの印だ。一口どうだろうか?」
「暫くこの街で商いを続けたいのだが、街の状況を聞かせてくれないか?」
「そういえばここに来る途中、怪しい団体のようなものを見かけた。貴方達も気をつけてくれ。」
「何か特別に離れられない理由でもあるのか?」

心情
住み慣れた場所を離れさせるのは骨が折れるだろう。
嘘をつくのは忍びないが、注意喚起の体で多少脅してみて街に留まりたい気持ちを揺るがしつつ、
根本的な理由について探りを入れてみようか。


 真昼の市場のあちこちを、毛玉のようにまん丸い猫を引き連れた不気味な男――テクトラム・ギベリオ(出所不明の男・g01318)が彷徨する。
 誰と話をするべきか、手持ちの荷物と相談し、目星をつけたのは果物屋台。
「お近づきの印だ。一口どうだろうか?」
 テクトラムは毛玉に抱えさせていた果物――パイナップルを手に取ると、その場で切って分けてみせた。
 見慣れない男と見慣れない果物に、果物商は最初訝っていた様子だったが、新鮮だぞ、とテクトラムが勧めれば、物は試しと手を伸ばし、
「本当だ! こりゃ美味いや!」
 と感嘆した。
 現代ならば気軽に手に入るが、この時代、この地域ではパイナップルは絶対に手に入らない『珍しいモノ』。
 効果の程はてきめんで、テクトラムは興味を持った人々にパインを振舞うと、代価と言っては何だが少々話がしたい、と切り出した。
「暫くこの街で商いを続けたいのだが、街の状況を聞かせてくれないか?」
「別に普通だよ……と言いたいところだが、さっきから如何にも騒がしい。その上『あいつら』も帰ってこないし……」
 心底心配しているように、果物商は大きなため息を吐いた。
「……『あいつら?』」
 騒がしいのは市場からすぐ向こうで少年と長老が揉めているのが原因だろう。それより気になるのは『あいつら』と言う単語。
「塩を売りに行ったキャラバンの連中さ。いつもならもう余裕で戻ってきてる頃合いなんだが……おかげで岩塩も山積みで、塩鉱は休業状態だ」
 キャラバン。おそらくそれが『彼ら』、『待ち人』の正体なのだろう。
「あんた、外からやって来たんだろう。それっぽいやつ見たりしなかったか?」
「いいや――」
 パラドクストレインがこのディヴィジョンに到着した時間から逆算して、集落の外にいる――キャラバンの生死を確認するだけの余裕は最初から無かった。『待ち人』『彼ら』の正体がわかっただけでも収穫か。
「……そういえばここに来る途中、キャラバンとは別に怪しい団体を見かけた。逃げるとか、留まるとか、向こうが騒がしいのもきっとそれが理由だろう。貴方達も気をつけてくれ」
 その警告は、嘘でもあるし本当でもあった。少なくとも本物の怪しい団体……クロノヴェーダの先遣隊が来るまではもう少しの時間が有るだろう。嘘が本当になる前に、何とかしたいところだが……。
「そうか。間の悪い時期に来たな。だが、俺たちが逃げるとしたら、繰り上りで『一番駱駝の扱いが上手く、旅慣れている』少年(あいつ)が号令出した時だろう」
 誰かが纏め上げなきゃなんねぇ。ばらばらに逃げたって、干乾びちまうだけろうしな、と、果物商は難しい顔をする。
「それで、『彼ら』を待ってる人々と言うのは……」
「キャラバンの奴らの妻子だよ。寝ても覚めても夫や父親の帰りを待ってる。健気なもんさ」
 確かに。予定を過ぎても帰ってこない家族を待つのは気が気ではないだろう。しかし、それを集落から逃げない理由とするのは少々弱い気がした。
「『彼ら』――キャラバンの妻子たちは、何か特別に離れられない理由でもあるのか?」
「砂漠渡りに精通した父・夫が居ない以上、自分たちだけじゃ足手まといになりかねないから……だろうな。砂漠を旅したことが無くても、隊商から聞かされる冒険譚って形で砂漠の怖さ・過酷さは誰しも知ってる」
『家族を待つ』。察するに、その心情はまことだが、それは集落に居残る……『切り捨ててもらう』ための方便でもあったのだろう。
 集落の外に出るという事は、あての見えない逃亡劇に劇に身を委ねるということ。砂漠の旅を知らない『足手まとい』が減れば、その分集団が身軽になるのも事実ではある。
 だが、少年たちは、最後まで見捨てる事が出来なかったが故に……。 

 ――豊富な水と塩のお陰で生きるに困らないから、生まれてこのかた砂漠に出たことが無い奴だって居る――。
 ジェレミーからの又聞きだが、食堂の主人はそう語っていたという。
(「確かにこれは……骨が折れるだろうな」)
 どうなるものやら、テクトラムは天を仰ぐ。
 喜ぶべきか悲しむべきか、此方の機微などお構いなしで、じりじりと思考を焦がしてくる太陽を鬱陶しいと思う感情は奪われていないらしかった。

 ……めぼしい情報は収集した。
 後は住人をどう説得するかだろう。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【照明】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!

露草・小夜
【行動】
災いを知った旅人として町へ入り町人への説得
特に、少年と七割の町人を中心とした説得

【心情】
はじめにあるのは共感。
ここはわたしのいたところと同じ。でも違う。
わたしがいた信仰集落と違って事前に襲われることがわかっている。
獣頭神の僕に襲われていない。信仰をまだ奪われていない。殺されて蘇生されて憎き敵に使われそうになることもまだ、まだ防げる。

「わたしの里と同じ目には合わせない」
「信じ愛する≪神≫を目の前で奪われる恐怖と絶望を広げたくない」
「町の人たちだけじゃ厳しいならわたしも手伝う」
「してほしいこと、提示してほしい」

出来ることは手伝う。
どうか信仰を繋げて欲しい。
他ディアボロスと連携も思慮。


三鈴山・白雪
◆行動
長老の説得

わたくしが同じ立場であったなら拒絶いたしました。
故郷もろとも滅びようとしたに相違ございません。
それは三鈴山への並みならぬ思いゆえ。
長老様に於かれましてもわけがありましょう。

住み慣れた懐かしき土地。そしてかの方々の存在ではありませんか。
されど帰還したみなさまを出迎えるのは、決して屍であってはなりません。

落ち合う場所を伝えるため、文を認めましょう。
生きてさえいれば再び会うことが叶います。
お役目などもやり直せるはずです。

◆台詞
「ハクは故郷より逃げ落ちた身にございます」
「みなは…戦火の中で行方知れずとなりました」
「けれどハクだけは確かに生きております。故郷を取り戻すために戦えまする」


 答えが出ないまま、ただ唸るだけ。唸り始めてからどれだけ時間がたっただろう。
 他者の生死にかかわる重大な決断を下すには、少年はまだ若すぎたのだ。しかし、長老は少年に手を伸ばさない。苦悩とを抱えたまま渡れるほど、砂漠は優しいものではないからだ。
 住人達の絆が深いが為に、誰も彼もが答えを出せず、
 故に、
「大丈夫。わたしの里と同じ目には合わせない」
 今必要なのは、他者(そと)からの声だった。

 はじめに―――今回のあらましを聞いた時より、露草・小夜(蘇生者と≪—≫・g00693)の心にあったのは共感。
 そこで暮らす人や息づく信仰は違うけれど、けれども何処か、故郷を思い出す。
 だからこそ……故郷と同じ末路を辿らせたくはない。
 敵が攻めてくるまでそう時間は無いのかもしれないが、それでも、小夜のいた信仰集落と違って事前に襲われることがわかっている。なら、まだ、幾らでも、手の打ちようはあるはずだ。
 今の、この集落にはまだ全てが残っている。小夜は少年と、身動きの取れる住人達へそう諭す。
「獣頭神の僕に襲われていない。信仰をまだ奪われていない。殺されて、蘇生されて、憎き敵に使われそうになることも、まだ、まだ防げる」
 ――リターナー。クロノヴェーダによって死から蘇った存在(モノ)。小夜の仕えていた≪神≫ならぬ異神の奇跡。その押し付け。気付けば小夜は『そう』なってしまっていた。
「確かに。だが……君は旅人、他人(ぶがいしゃ)だ。危険を顧みずこの集落(むら)にやってきてまで、どうして僕らの事を気に掛ける?」
 少年は小夜にそう問うた。
「……信じ愛する≪神≫を、目の前で奪われる恐怖と絶望を広げたくない」
 どうか信仰を繋げて欲しい。それが、理不尽に平和を奪われてしまった小夜の、彼らに託す願いだった。
「神……俺たちにとっての水の精霊か。人は水に生かされている。仮に水が無くても人が動くなら、其処は精霊の加護すら届かない、砂漠よりも干乾びた地獄だろうな……」
 彼らにとって、それは死よりもつらい結末。
 ならば……と、少年と七割の住人達の気持ちは、オアシスよりの脱出に傾き……。

「……わたくしが同じ立場であったなら、矢張り拒絶いたしました。故郷もろとも滅びようとしたに相違ございません」
 小夜の説得により、沸き立つ住民たちの傍ら、三鈴山・白雪(童子・g02924)は、長老との対話を試みる。
 殺戮に至る未来は変わろうとしている。少年たちのその様を見遣る長老は、歓迎するように目を細め――やはり、生きているなら、生きられるならそれに越したことはないと考えているのだろう。
「それは三鈴山への並みならぬ思いゆえ。長老様に於かれましても訳がありましょう」
 長老は答えない。しかし、白雪の言を無視しているわけでは無いようだ。
「住み慣れた懐かしき土地。そして『かの方々』の存在ではありませんか」
 僅か、長老は反応する。『かの方々』――テクトラムの調べによれば、未だ集落に戻ってこない、キャラバン隊の事だ。
「されど帰還したみなさまを出迎えるのは、決して屍であってはなりません」
 ディアボロスが掴んだのは凡そその存在のみ。消息を確かめる余裕もなく、安易に生存を前提として語るのは欺瞞なのかもしれない。しかし。誰より『彼ら』を待つ住人達がいなくなってしまっては、それこそ欺瞞も真実も無いのだ。
「ハクは故郷より逃げ落ちた身にございます。みなは……戦火の中で行方知れずとなりました」
 風に揺られ、鈴が鳴る。奪われたが故に、忘れがたき記憶。白雪もまた、『その時』は理不尽に、酷く呆気なくやってくるものだという事を知っている。
「けれど、ハクだけは確かに生きております。故郷を取り戻すために戦えまする」
 紫水晶の両腕。小さい掌に、それでも人々へ降り注ぐ災いを退ける力と怒りがあるのなら、来たるべき悲劇を傍観してはいられない。
「生きてさえいれば再び会うことが叶います。落ち合う場所を伝えるため、文を認めましょう。お役目などもやり直せるはずです」
 白雪の説得が、『彼ら』を待つ住人達の心を揺らす。けれども住人達は幽か首を振って立ちすくみ、後『もう一歩』届かない。
「そなたの考えは正しい」
 長老が詠うように言葉を紡ぐ。生きてさえいれば、たとえそれがどれだけか細いものだとしても、『彼ら』と巡り会う線は繋がるだろう。文は石に刻んで湖に沈めればいい。まつろわぬ人間の粛清が目的なら、湖底までは浚うまい。人がその身に『水』を宿す限り、精霊を祀る場所はいずこでも。
「しかし、動けぬ。そなたの言葉は皆の心に覚悟の火を燈した。それは水や塩と同様に、生き抜くためには不可欠なモノ。だが、覚悟だけでは砂漠は渡れぬ」
 ……住人たちの説得に、おそらく複数人のディアボロスが要るだろうと想定された意味。
『覚悟』の他にもう一つ、全く別の視点から、必要なものがあったのだ。

「生き延びるために町の人たちだけじゃ厳しいなら、わたしも手伝う。してほしいこと、提示してほしい」
 赤紫の虚ろ目が映すのは、これから住民を率いて砂漠を渡る少年の姿。
 きっと、ひどい姿が映っていたのだろう。小夜の瞳を覗いた少年は、即座自身の両頬を叩き、懊悩を振り切った。
「集落の、全員分の物資を。間に合わないかもしれないけど、とにかく集められるだけ、ぎりぎりまで集めるんだ」
 少年の言うように、出来る限り多くの物資を持ち出せたなら、必然、後の旅路も楽になるだろう。ディアボロスなら、大きく、多くのものを一般人より素早く収集することも可能なはずだ。
 荷運びに限らず――最後に必要なのは、『足手まとい』を抱えても、優に砂漠を渡り切れるだけの、集団としての頑丈さ。謂わばどれだけ過酷な旅路を易化できるか、と言う事。

 簡単な話だ。やるべきことは何も変わらない。予知を回避するために、己の意志で、己の選択で、いびつな時空間やくだらない世界法則など容易く書き換えてしまえばいい。
 ディアボロスには、それが出来るのだから。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
【強運の加護】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!

 集落の喧騒に混じって、不意に、人ならざる者の気配がした。
『先遣隊』がすぐ近くまで迫っているのだろう。
 ――ならば。
 人類の仇敵たる彼らに対し……やるべきことは、ただ一つ。
白竹・研火
【藤竹】

縁なき世界であるが、
さりとて目の前で鏖殺されんとする人々を見て、
素知らぬ振りができるほど僕も鬼ではない
それに逃走を渋るもの達も僕たちの戦う姿を見せれば、
何か心動かされるやもしれぬ

とは言え間近で見せるのは危険と言う事だったな
初手は剣劇を効かせるだけでも良いか
まず先行して僕が前に出る
『神蝕呪刃』で敵集団に切り込んでいこう
敵が僕に雪崩れ込もうとすれば、
藤世が後ろから援護してくれるはずだ
負傷はやむなしだが、デザートポイズンの毒はあまり受けたくないものだ
出来る限り敵の武器は弾きたい
深手の敵から順次撃破し数を減らそう

なかなか悪くない武器ではないか
僕だってそういうの作れたはずなのに……!【呪詛】


雨谷・藤世
【藤竹】
(敵には常に冷ややかな顔)
さっさと消え失せてちょうだい
アンタたちのようなヤツにかける言葉はないわ

先行は任せたわよ、白竹さん
彼に引きつけられて集まってきたヤツらは、アタシが『紫電一閃』で一気にスッパリやっていく
向こうから彼に近づいてくれるお陰で、アタシは好きに動けるわ
ありがたいわねー

向こうの弾は、パラドクスや【飛翔】を利用して回避したいところね
どうせ避けるなら同士討ちを狙っていきたいわ
わざと射線に入ってアタシ自身は回避、後ろの敵に攻撃を当てさせる、とか
ま、もしこっちに当たっても動ける限りぶった斬ってくだけだけど

別に思う存分呪ってもらって構わないけど、きちんと周りには気をつけておいてよね?


 集落の東端。此処より先は、ただ茫漠たる砂の領域。
 そんな緑と砂漠の境目に、陣取る人の影二つ。
 風が砂粒たちを巻き上げる。異界の空、異国の大地、そして異なる時代に生きる人々。
「然して縁なき世界であるが――」
 皮肉にも、奪われることが無ければ決して出会う事の無かった景色の中に、白竹・研火(無刃・g01259)は立っている。
「さりとて目の前で鏖殺されんとする人々を見て、素知らぬ振りができるほど僕も鬼ではない」
 例え有るべきものを失った後だとしても。執念一つを携えて、研火は砂漠を見据えた。
「『悪魔』だものねアタシ達。お偉い神様が人を虐めるなら、悪魔はその逆を行くだけよね」
 奪われっぱなしもそろそろ飽きたわ。朗らか笑いながらそう言って、雨谷・藤世(不折藤・g00220)は、無邪気に遊ぶ少女の妖精『ロア』から、自身の眼鏡を取り戻す。
「さて、と。もう既に『居る』わよね? 気配はすれども姿は見えず、なんて、残念だけど、今更隠れんぼに付き合うつもりは無いの」
 ロアを下がらせ眼鏡越し、紫の瞳はやはり砂漠を睨む。
「屍が隠れ潜む場所なんて一つきりだ。つまり……」
 律動する狐耳、視線は大地を射貫き、砂と音を掻き分けて、
「ここだ!」
 屍人の存在を看破した研火は、己が『妖刀(しゅうねん)』を砂漠へと打ち付ける。
 噴き上がる砂塵。暴かれる木乃伊。勢いのまま、妖刀はまず二体の屍人を屠り去り、
「それじゃ先行は任せたわよ、白竹さん!」
 藤世は砂塵と共に、蒼天へと飛翔する。
 任せろと、と短く返す間すら無く研火に殺到する屍人の群れ。
 研火が妖刀に呪いを籠めれば屍人たちは剣に毒を塗り、互いが激突し渦となって火花を散らす。
 時間が交錯し、捻じ曲がる。悪魔と屍人の果て無き剣戟戦。凌ぎ、躱し、打ち倒した。しかしその眼前は開けることなく、無数の刃の出迎えが。
 屍人の包囲が収束し、最早逃げ場は何処にも無く。だが、
「――だったら抉じ開ければいいんじゃない?」
 刹那。紫電が迸り、残光が屍人の首を狩る。
「待たせたかしら?」
 研火の背中のすぐ後ろ、光の軌跡の終わりには、いつの間にやら藤世の姿。
 紫電一閃。砂舞う乱戦の外縁から、一足、一瞬、毒と呪いの渦中へと。神速の斬撃を浴びた屍人たちがそれと気づいたのは、おそらく斬られた数瞬後の事だろう。
「いいや。丁度のタイミングだ」
 研火は頬から流れる血を拭う。傷口が熱い。毒だ。あまり受けたくはないが、此方の戦いぶりを通じて、逃走を渋る者たちの心を動かそうと思うのなら、無様な姿は曝せない。
 生と死の境界を踏みしめ、多少の傷を覚悟して、執念一つ、研火は押し寄せる屍人達を切り捨てた。
 後れを取ってはいられない。敵の視線が研火へ集まっているその隙に、紫色の光が一回、二回と瞬いて、きらり。死角から研火に襲い掛からんとする敵意を藤世が払う。
「向こうから彼に近づいてくれるお陰で、アタシは好きに動けるわ。ありがたいわねー」
 しかし、いかに腐り果てようと、屍人達とて愚かではない。幾度紫電にあしらわれ続けた包帯塗れの掌が、闘争満ちる渦の中を縦横無尽に駆け巡る藤世の姿をとらえ、即座撃ち出されるのは闇の如きどす黒の呪怨弾。
 自身を射貫かんとするその殺意を気取った藤世は、しかし接触するほんの数舜前までそれを引き付け、最早命中するしかない、という死線の際で地を蹴り大空へと飛翔する。
 藤世に当たり損ねた呪怨弾は、蠢く屍人の群れを掠めるような勢いで砂丘へ墜ち、爆ぜた。
「残念。あわよくばなんて、ちょっぴり思っていたのだけど……」
 そんな落胆の色濃い声音に反応し、屍人達が天を見上げた時にはもう遅く。
「けどまぁ、どっちにしろよね」
 紫電は既に空を下り、閃く間に屍人を真の骸へ変えた。
「さっさと消え失せてちょうだい。アンタたちのようなヤツにかける言葉はないわ」
 ただ鋭く、冷ややかに。殺意の大雨を掻い潜り、藤世の振るう刀(ソヤギミ)が虚空に軌跡を描く度、屍人たちは再び土へと還っていく。

「藤世。その刀、なかなか悪くないではないか」
「あら嬉しい。お褒めに預かり光栄よ」
 二振りの刃が踊る。深手の敵から確実に、屍人達を斬り倒し、研火は藤世のソヤギミの造りに目を細めると、馳せる様に自身の妖刀を見る。
 今、敵の刃を弾いたこの刀――白竹は、自らの作になる筈だった刀への執念が妖刀へと鍛え上げられたもの。
 らしい形をしているが、火や鋼を用いず出来たこれは、鍛冶師として到底刀と容認できず、故に妖刀、故に無刃。故に……。
「僕だってそういうの作れたはずなのに……!」
 刃から放たれるのは、敵の呪いすら呑み込む程の、ありったけの呪詛(いかり)だった。
「別に思う存分呪ってもらって構わないけど、きちんと周りには気をつけておいてよね?」
 咎めるように言いながら、それが此方に来ないことは知っている。呪詛の最中で輝く光は次々と、屍人達を斬穫した。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【腐食】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
【ガードアップ】がLV2になった!

三鈴山・白雪
物資の調達、水源の確保、など。
…ハクにはお手伝いできそうもありませぬ。
口惜しゅうございますが、先遣隊を減らしに参りまする。

長にお会いするにあたりこの集落と周りを歩き回りました。
[地形の利用]、万全を期してございます。
露草の【トラップ生成】もありがたく利用いたしましょう。

…これなる者ども、ハクはとくべつ許せませぬ。
ひとびとから信仰を奪い、自由を奪い、故郷までをも侵すという。

砂漠の…蟻地獄と申しましたか?
あのすり鉢のようなものを作ります。
果たしてエジプトに地獄はありましょうか。
しかし相応の末期ではありませぬか。この死鬼め。
息絶えぬならばハクが上から頭蓋を踏んづけて差し上げます。えいや。


 皆で生きる為に奔走する少年たち。生かせるものを生かすために敢えて留まろうとする長老たち。
 そんな、騒然とした様子のオアシスを背に、三鈴山・白雪(童子・g02924)は走る。
「物資の調達、水源の確保、など……ハクにはお手伝いできそうもありませぬ」
 人知れず、歯噛みする。今、住人達が最も必要としているものは、白雪にとって得意な分野(モノ)では無かった。
 けれど、立ち止まってはいられない。頭にかかる靄を振り切って、白雪は前を見る。今為すべきことは、集落に残る仲間を信じ、先遣隊を討つことだ。
 オアシスを駆け抜けて、やがて耳に届くのは、刃がぶつかり合う音と人ならざる者共の唸り声。パラドクストレインを降りてから長達に接触するまでの間に、この集落と周辺の地形については調べ上げてある。
 建造物の影、戦場の死角より、息を整え、機を窺い、そして意を決し。
「加護を、お山の加護を!」
 文字通り、横合いから殴り込む。三鈴山の血の励起によって、無双の膂力を得た白雪は、大重量のとげバットを苦も無く片手で振り回し、屍人達を強襲する。
 鬼の大金棒を圧縮して作ったソレ。一つバッドを振るえば屍人はひしゃげ、二つバッドを振るえば守りすら関係なく屍人を粉々に砕いた。吹き荒ぶ菫の色の暴風が、あらゆる全てをなぎ倒す。
「……これなる者ども、ハクはとくべつ許せませぬ」
 全ての膂力を籠めた一撃。それを直に受けた屍人は、蒼天彼方に四散した。
 人々から信仰を奪い、自由を奪い、故郷までをも侵すモノ。存在して良い道理が無い。
 だが、互いに相容れぬのは屍人達とて同じこと。鈍く光る葬礼剣が、白雪に襲い掛かる。
 しかし白雪は一切臆せず左腕で剣を受け止めるとそのまま砕き、目にも止まらぬ速さの右腕で屍人の首根を掴んだ。
「露草……ありがたく使わせてもらいましょう」
 言って、屍人を放る。弧を描き、行きつく先は生成されたばかりの蟻地獄。白雪は些少の傷など構わずに次から次へ屍人達を投棄する。
「――果たしてエジプトに地獄はありましょうか? しかし相応の末期ではありませぬか。この死鬼め」
 藻掻けば藻掻く程に体が沈む。白雪が与えた傷は既に致命傷。あとはもう、屍人が死人に戻るだけ。
 それでも一縷の望みにすがってか、息ある屍人が手を伸ばす。
 しかし、壊れた消耗品に、偽神はきっと見向きもすまい。
「えいやっ」
 故に。白雪は容赦なく屍人の頭蓋を踏み砕く。
 それはある種の慈悲でもあったろう。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【怪力無双】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!

テクトラム・ギベリオ
説得は他の者に任せ、精神面ではなく物質的な問題を解決する。
塩・水を中心に物資調達を迅速に行う。
また調達の際、街の侵入されそうな場所に【トラップ生成】。
『足手まといだ』と渋り動かない者には、最悪敵侵入と同時に【避難勧告】を行う。

「水と塩、まずはそれがあれば良いのだな?」
「おそらく時間はもう無いだろう。手の空いている者は速やかに物資と足の確保を」

心情
敵が近い。物資を集める時間も惜しいが、人を動かす為には仕方がない。
ここは中心となっている少年の言う通りにしよう。

敵と住民が遭遇する事は1番避けたい。
トラップは巨大な落とし穴を複数生成。各所に穴が有ると分かれば、敵の進行速度も少しは遅くなるだろうか。


 テクトラム・ギベリオ(出所不明の男・g01318)が長老たちの元へ移動したころには、すでに集落全体が大騒ぎだった。
 仲間達からの話を聞くに、住人達への説得は凡そうまくいったらしい。
 覚悟は出来た。残り必要なのは、時間と物資。
 集落の東端に目をやれば、大きな戦塵。敵は近い。既に戦闘は始まっている。
「さて、どこまでできるか……」
 空間に干渉し、東側付近にトラップ――複数の大きな落とし穴を敷設すると、集落の皆に呼びかけた。
「少しでも敵の信仰を遅らせる事が出来ればいいが……おそらく時間はそう無いだろう。手の空いている者は速やかに物資と足の確保を!」
 トラップのお陰で大分猶予が出来ただろうが、急ぐに越したことはない。実際、物資を集める時間も惜しい位だが、それこそが全員を脱出させるために必要だというのなら、全力で当たるのみだ。
「水と塩、まずはそれがあれば良いのだな?」
「そう! それが第一! 後は食料と布と医薬品とええと……」
 少年は頭も口先も総動員し、忙しなく周囲に指示を出す。猫の手も借りたいとは、よく言ったものだ。
「つまり、毛玉も立派な戦力だ。行くぞ。必要なものは片端から全部集めて回る」
 毛玉は頷くように一鳴きすると、近くにあった薬壺を抱えた。
 鉱夫が、商人が、食堂の主が、行こうとする者が、留まろうとする者が、皆が一致団結し、砂漠を渡るために秘湯な物資をひとところに集積する。
 ならば皆、助かるべきなのだ。やるだけやって駄目ならと、そんなくだらない話は要らない。
 テクトラムは水が並々入った皮革製の水筒を担ぐ。単体でかなりの大きさだが、不思議と十や二十といくら背負おうと重さを感じない。白雪の残した『怪力無双』のお陰だろう。
「手伝えない、なんて謙遜だな」
 テクトラムは苦笑して、次の大荷物に取り掛り、皆の団結の甲斐もあって、瞬く間に物資が集まっていく。
「これだけあれば……いいだろう?」
 そして最後の荷を肩から降ろし、テクトラムは長老に問う。二人の眼前にあるのは、全員が生き延びる事が出来るだけの物資。
 長老はテクトラムに深々礼をすると、遂にすべての住人へオアシスを脱出するよう号令を出す。説得は、成ったのだ。

 何処からともなく鳴り響くサイレンが、住人達の背を押した。『足手まとい』と渋るものはもういない。
 この警報は、ここが死地に変わるという合図。
 落とし穴を乗り越えて、無人の集落へ侵入してくる屍人たち。
 そして――。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【罪縛りの鎖】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!

「何故生きている」
 その声は、蒼天の遥か高くから。
 空の頂点、眩い太陽(ひかり)の中から地上へと、狼頭の獣神が姿を現す。
「男も女も、老いも若きも。一切の容赦なく殺した筈だ。あらゆる時間軸から滅ぼし尽くした筈だ」
 獣神はディアボロスたちを見下し、睨む。圧倒的な殺意。彼が欲しているのは『謎』の答えではなく……ディアボロスの『命』そのものだろう。
「我が名はウェプワウェト。エジプト神が一柱にして『道を開く者』」
 それは、先陣を切る者に加護を授けるエジプトの戦神の名。
「消えよ。悪魔は神に討たれるが宿命と知るが良い」
 ――だがディアボロスは、その名が騙りであると知っている。
 
 偽神を倒し、オアシスの人々の撤退を盤石のものにしよう。
 そのためにこそ――遥か砂塵の彼方より、この地へやって来たのだから。
ロスト・カークヴァイ
この身体になって初の戦闘だ
気を引き締めて行くとしよう

接近戦も得意だが、この数へ突っ込んでいくのは無謀だ
人の居ない建物を最小限の【腐食】で破壊し、敵の動きを分散させるとしよう
住民の避難の時間稼ぎにもなるし、壊した物は後程戦いの後にでも届けに行けるはずだ
ついでに【トラップ生成】により敵の進路上にトラバサミを置けそうならいくつか設置を

その後、おれは分散した敵の内、住民達に近いルートを選んだ連中を叩く
照準を定め、敵に対して『掃射【肆】』を発動
近付かれる前に数を減らす

接近されたなら仕方がない
一番弱っている敵から順に剣で応戦
攻撃はなるべく避けるつもりだが、食らいそうなら腕で防ぐ
機械の腕なら耐えられるはずだ


 風に吹かれてオアシスが揺らぐ。今や無人の街角に、ロスト・カークヴァイ(罅・g03925)は静か佇む。
 獣神が号令を飛ばす姿が見えた。生気のない足音が反響する。けれども先ずは落ち着いて、軽い準備を熟す様に、『機械の四肢(からだ)』を少し動かした。
 この身体になって初めて行う戦闘。四肢の何処にも異常は無い。否、己の四肢でも無いくせに、まるきり自在に動くのは、矢張り異常なのかもしれない。後付けで押し付けのモノを、果たしてどこまで信じられよう。
 ……だがそれでも。ロストは気を引き締める。改竄された肉体だろうが、奪われた『己』を取り戻すその時まで、御し切って見せるまでだ。
「さて……」
 屍人達の足音はまだ遠く、『仕込み』に掛ける時間はまだ十分にある。
 空になった民家の壁面に触れた。こと建造物に関しては、腐食より建造物分解の方が有効だろう。そちらの方が資源も多く残る。
 ロストは屍人たちの進路を塞ぐように家屋を崩し即席のバリケードを築く。時間稼ぎのためにも相手の速度は遅いに越したことはないし、無論最初から、一人として通すつもりもない。
 敵の気配が近い。接近戦は悪手と見た。仕込みを終えると、ロストは複数のマスケット銃を召喚し、
「さぁ、総攻撃を仕掛けよう」
 自身の戦場に侵入して来た屍人達へ、容赦なく一斉掃射を浴びせた。
 一発限りの弾丸も、数を揃えれば雨となる。向こうが数で攻めてくるなら、此方も数で応じるまでだ。
 前衛が撃ち抜かれた事を代償に、ロストの存在に気付く屍人達。神に仇なす敵を屠らんと、葬礼剣を振りかざす。しかし意気軒昂と駆け抜けようとした刹那、瓦礫の狩場に潜んでいた仕込み(トラバサミ)に嚙みつかれ、姿勢を崩したその全身は即座弾雨に曝される。
 それでも『道を開く者』の眼前で、立ち止まる事は許されない。同胞の骸を盾に、屍人達は遮二無二接近戦の間合いへと辿り着く。
「……仕方がない」
 ロストはこの場での接近戦を悪手と見た。だが、
「不得意、ではない」
 赤い宝珠を嵌めた細身の剣――Bloodicaを閃かせ、すんでのところで捌き切り、それでもしつこく迫る曲剣を、機械の腕で受け止める。
 軋む機械腕。零れる火花を意に介さず、ロストそのまま曲剣を振り払い、諸共殴り抜く。無数の銃口が吹き飛ばされた屍人達を睨めつけた。
 
 ――果たして引鉄は引かれ、全ての屍は砕け散る。
 ロストの碧眼が蒼穹を見据えた。
 後に残るは、狼頭の偽神のみ。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【建造物分解】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!

セレグラ・ウィッシュスター
オアシスを逃げねばならぬとは不遇じゃな・・・しかし止められぬときたか
せめてその脅威、少しでも取り払わねばなるまいのう
そうして世界が戻っていくのを願うばかり・・・
否、願うのではなく戦うべきじゃの
お前たちが奪った世界とやらを俺たちが奪い返してやるさ
さぁ、先客に続こうぞ

【飛翔】で炎や攻撃の回避を試みるよ
そして【怪力無双】の効果で鞭で締め付けて引き寄せて奪魂尾獣穿で攻撃じゃな
距離感は大事

ふむ、神か・・・墓守としてそれなりに特に死神などの類は興味があるのじゃが、無闇矢鱈に命を狩るのは好まない。
守るべき墓が多すぎても仕事が増えるばかりじゃ


 風が巡るオアシスに、弦の音が響き渡る。
 つい先ほどまで確かにあった集落の活気を回想するように、ゆるり奏でられるその音色。心地よくもどこか寂寥感を帯びているのは、弦を弾くセレグラ・ウィッシュスター(墓場の唄歌い・g00218)の心の裡を反映しているが故だろう。
「オアシスを逃げねばならぬとは不遇じゃな……しかし、止められぬときたか」
 がらんどうの集落(まち)。出来上がったばかりの廃墟。息絶える屍人。此方を見下ろす獣神。
 廃墟の片隅でのんびり音楽を奏でるのが好きな性分とはいえ、この光景は些か頂けない。
「せめてその脅威、少しでも取り払わねばなるまいのう。そうして世界が戻っていくのを願うばかり……否」
 セレグラは弦を止めた。
 神も天使もドラゴンも果ては機械すら、今となっては人の敵。
 いずこへ願いを捧げても差し伸べられるのが悪意なら、自ら戦火に飛び込んで、勝ち取るより他に道は無いのだ。
「そう。お前達が奪った世界とやらを俺達が奪い返してやるさ」
「一度敗れた貴様らが? 笑止」
 嘲る獣神の周囲に青の炎が滾る。爆裂する炎は毒蛇の群れの如く、千々に散って一斉に、天地よりセレグラへ迫る。
 時空が歪む。攻防の順序すら真っ当ではありえない。果たして蛇(それ)は攻撃か反撃か。セレグラは先の仲間が残してくれた力で地を蹴って宙へ退き、青の炎を躱す。
 それでも神の罰は決して消えず、集合と拡散を繰り返しセレグラを追い立てた。
「ふむ、神か……墓守としてそれなりに特に死神などの類は興味があるのじゃが」
「墓守が生者を助けようなどと。物言わぬ墓石の相手をするのが似合いだろうに」
 そうもいかぬとも。セレグラは蒼天を飛翔し炎の群れを掻い潜る。
 じりりと、羽衣が焦げる音を耳に、乱舞する神罰の隙間と隙間を縫うように守護者の鞭を疾らせて、獣神を絡め取った。
 あるいは逆に絡め取られたか。鞭を伝って、炎もまた伸びてくる。
 故にセレグラは炎が気付くよりも早く、ありったけの膂力で獣神を締め付け、鞭を手繰り一瞬で零の距離まで引き寄せ、

 刹那。セレグラの妖気が膨れ、駆けた。
「無闇矢鱈に命を狩るのは好まぬよ。守るべき墓が多すぎても仕事が増えるばかりじゃ」
 狐の尾が深々と獣神を抉る。
 空を飛翔したのは回避の為ばかりでは無く。それは、『舞』でもあったのだ。
 尾が震え、払う。
 鞭に絡め取ったまま、呆気にとられた炎ごと、セレグラは天高くから地目掛け、獣神を思い切り叩き落とした。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【狐変身】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!

白竹・研火
[藤竹]
しかしあれは偽神と言う
偽神切ではいまいち箔が付かないのでは
いずれ彼奴より斬りがいのある敵ともまみえよう
……然様か
気に入っているなら良い事だ

【飛翔】で飛べるのか
うわ……怖……
とも言ってられん
白竹で僕も斬りかかろう
しかし此度は僕が補佐役を務める故、主たる攻撃は藤世に任せる
僕が為すべきは『伝承戦術』
この地の伝承こそ疎い僕だが、一歩引いた視点からの観察で敵の隙を看破してみせよう
藤世、今だ!

敵の攻撃は炎か
炎かぁ……
鍛冶師的に思う所がいっぱいあるが今は置いておく
飛び回って回避したい
流石に炎は切れん
もし捕まったら【怪力無双】で抵抗を試みよう
それに今の役目なら、足止めされても全うできる


雨谷・藤世
[藤竹]
そういえばさぁ、刀って斬ったものが名前につくこともあるのよね?
この刀でアイツを斬ったら「神切」になるのかしら
ま、今の名前が気に入ってるし、要らないけど

それじゃ今度はアタシが先に出る番ね。行くわよ、ロア
アタシが斬り、アタシに敵の意識向いてる時はロアが別方向から攻撃
ロアに向いた時はアタシが別方向から、って感じで絶えず攻めていくわ
向こうになるべく反撃の隙を与えないため、っていうのもあるけど、
一番は、彼の「目」を待ってる

白竹さんの合図で、渾身の"斬撃"をお見舞いしてやるわ
「神様」。アンタの名前はいらないけど、命はアタシたち復讐者が貰っていく
向こうの攻撃は【飛翔・エアライド】で飛び退けるかしらね


 セレグラの攻撃によって、天に在った獣神は流星の如き勢いで地へと落とされ、その衝撃で相当量の砂塵が噴き上がると、一時、周辺を薄く覆った。
「そういえばさぁ、刀って斬ったものが名前につくこともあるのよね? 蜘蛛切とか雷切とか。この刀でアイツを斬ったら『神切』になるのかしら?」
 言いながら、雨谷・藤世(不折藤・g00220)は妖精刀・ソヤギミを鞘よりすらりと引き抜いた。その刀身に刃こぼれなく、薄曇りの戦場に在って尚、陰ることなく幽かな光を宿しているようにも見える。
「しかしあれは偽神と言う。ならば切ったところで『偽神切』だが、それではいまいち箔が付かないのでは?」
 白竹・研火(無刃・g01259)も、同じく抜き身の白竹(やいば)を携えて、その刀身を観る。これは失ってしまった鍛冶技術への執念が刃の形を為したモノ。この刀ならぬ妖刀で敵を斬り、斬る為に鍛え上げ続ければ、果たして執念は何処にたどり着くのだろう。
「何、いずれ彼奴より斬りがいのある敵ともまみえよう」
「……ま、今の名前が気に入ってるし、要らないけど」
 藤世の言に、周囲を揺蕩う妖精・ロアも大きく頷いた。『偽神切』は妖精的にも嫌だったらしい。
「……然様か。気に入っているなら良い事だ」
 砂煙が晴れる。白竹の刀身に、狼頭の獣神が写り込んだ。
「それじゃ今度はアタシが先に出る番ね。行くわよ、ロア」
 藤世はこれ以上待たせるのも悪いしね、と不敵に笑い、ロアと共にギラリとこちらを睨む偽神の眼差しの、その真正面へ突っ込む様に駆けていく。
 一合目の剣戟でぶつかり、二合目で鍔迫り、三合目、弾き合った攻撃の余波で双方ともに空へ押し出される。
 そこから先は眼にもとまらぬ空中戦。相手の首を断ち切るに、平面(ちじょう)程度では狭いのだ。
 自分もこうしちゃいられない。藤世を援護するために、研火も蒼天へと飛翔するが、
「うわ……怖……」
 思わず本音が漏れてしまった。
 いやいや。そんな事を言ってる場合じゃないだろうと研火は頭を振ると、妖刀を握る掌に力を籠め、偽神目掛けて斬りかかる。
 此方は三。向こうは一。にもかかわらず狼頭の偽神は右腕のアンクで藤世をいなし、左腕の長杖で研火を躱す。両腕を塞いだ状態で仕掛けるロアの攻撃をも寸前避けて見せるのだから、まさに神業か。
「流石偽物でも神様、と言ったところかしら?」
「矢張り、目障りだな。我らの正体を知るものを生かしてはおけぬ」
 音を裂く長杖を、空中でさらに『跳躍』してやり過ごし、藤世は臆することなく剣を振るう。ソヤギミが受け止められればロアが突撃し、偽神の注意が僅かロアへと逸れれば即座ソヤギミの一刀。絶えずの乱撃。死角を突くに躊躇無く、急所を断つに容赦無く。少しでも怯んだ先に待っているのは敗北だ。
 前へ、前へ。しかし。時空間すら巻き込んで滅多に斬った剣戟の果て、千日手を嫌った偽神の咆哮が、強引にロアと藤世を吹き飛ばす。
「藤世!」
 それ以上の追撃は許さぬと、研火は己が身を盾にするように偽神の間合いの飛び込んで、斬る。けれども幾度撃ち込めど、あと僅か、届かない。
 この期に及んで、気迫も技量も足りてないとは言わせない。足りてないのは、あと僅か――。
「お前には、こうだ」
 偽神の従える青い炎が爆ぜる。一旦距離を取ろうとも、炎は熔かすが如く大気を焦がしながら、執拗に研火を追い立てて、おそらく足止めなのだろう。
(「炎かぁ……」)
 鍛冶師として、燃え盛るそれに対し、思う所は沢山ある。敵の操るものとはいえ、見知った揺らめき、懐かしき熱さ。流石に炎は切れない。故に空を飛びまわってでも避けるしかないだろう。
(「……鍛冶師が? 炎を?」)
 ――不意に。そう考えた刹那。僅か足りてなかった観察(もの)が埋まった。
 炎が迫る。避けきれない。否。避けなくていい。
『足止めの炎』。つまり藤世との連携を、向こうも厄介だと考えているのなら、律儀に付き合うのは敵の術中だ。
 研火は自らを拘束する炎を腕力のままに引き千切り、空を駆け、藤世に注力する偽神の死角を取る。
「藤世、今だ!」
「なっ――!?」
 焼けつく両の掌で妖刀・白竹を握りしめ、繰り出したのは渾身の一撃。
「その『目』、待ってたわよ」
 乾いた砂漠の大空に、ひらり、紫色の花弁が舞う。
 偽神が不意を突かれ目を離したその一瞬で、戦場の悉くが紫色の花吹雪に染まったのだ。
 それが妖精の仕業だと認識できない偽神が、全てを吹き飛ばそうと再び顎を開いたその瞬間、吹雪の内より回避不可能なほど眼前に、白く閃くソヤギミの刀身が現れた。

「『神様』。アンタの名前はいらないけど、命はアタシたち復讐者が貰っていく」
 渾身の『斬撃』。
 噴き上がる血の飛沫が、青天に緋の色を散らす。
 悪魔達の猛攻は苛烈に、偽神を死の淵へと追い詰める。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【書物解読】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV2が発生!

シル・ウィンディア
アンゼリカさん(g02672)と同行希望

ん?生きてちゃダメ?なんで??
別に悪魔でもいいよ。偽神様?
悪魔だから、神殺しをしてもいいってことだよねっ!

それじゃ、行くよっ!!

左手に精霊剣を抜いて、飛翔で空を飛び空中戦っ!低空飛行と上空への離脱を繰り返しつつ、剣で斬り抜けを行って、攪乱していくよ

アンゼリカさんとは、連携をとって、クロスしたり、時間差攻撃を行ったりと、連携を意識して動くね

敵が焦れてきたら、一気に勝負をかけるっ!
高速詠唱で隙を減らして、全力魔法のフルパワーでの精霊収束砲っ!!

この光は、神様も撃ち抜くからね。
…さぁ、わたしの全部だ、遠慮せずにもってけーーっ!!

残ってたら、あとはお任せだね。


アンゼリカ・レンブラント
同い年の戦友シル(g01415)と同行希望

滅ぼし尽くした筈?
それでも生きているのさ、ここになっ。
偽神が語る宿命とやらも知ったことじゃない。

大剣を手に、何より【勇気】を武器に突撃!
空中戦を仕掛けるシルとは時間差で打ち込む、
あるいは左と右から、上と下からの連携、と
見切られにくいように打ち込み続けるッ

相手の反撃も気合いで以て堪えて見せるさ
このくらい、失われた歴史に生きた人の痛みに比べれば、さ
腹筋を引き締め、再度の攻撃!

一気に仕掛けよう。パラドクス発動を知ると合わせ
拳士としての拳で――想いと気合を乗せ、
【破軍衝】の衝撃波をめいっぱい叩き込む!

こうされることも分かっていたかい?神様
私達は、我が道を往く。


「おのれ、忌まわしき悪魔ども。何を醜く抗うか。幾ら時空を搔き乱そうと、貴様達が無惨に敗れた過去は変わらぬ」
 決着は既についている、大人しく死に続けていれば良い物を。そう吐き出した獣神の顔が憎悪に、苦痛に歪む。仲間達の与えた傷が、そうさせているのだろう。
「ん? 生きてちゃダメ? なんで??」
 その言に純粋な興味を覚えたシル・ウィンディア(虹色の精霊術士・g01415)は、ふわりと日常の雰囲気を纏ったまま、朗らか獣神に問う。
「人間の生死は、我らが司るものが故」
 碌な答えでありはしない。聞き入れる道理も無いな、と、アンゼリカ・レンブラント(黄金誓姫・g02672)は創世の剣の切っ先を、獣神に突き付けた。
「そっちがどれだけ滅ぼし尽くしたと叫ぼうが、それでも私達は生きてここにいる」
 射貫くように、天光色の瞳が獣神を見据える。悪魔は神に討たれるべきなどと言う典型的な『宿命』とやらも知ったことじゃない。所詮、偽りの神の騙りごとだ。
「出会い頭に開口一番悪魔だなんて。けど……別に悪魔でもいいよ。偽神様?」
 シルは左手で、精霊剣『エレメンティア』、その淡い青の刀身を解き放つ。言葉はもういい。それは、死闘への合図でもあった。
「悪魔だから、神殺しをしてもいいってことだよねっ!」
 敵が眼前に居るのなら、冷酷に、容赦はしない。平穏を乱すものを認める理由がどこにあろう。シルは外套をたなびかせ、一足、妖精の空靴が地を蹴り宙を跳ねる。
「それじゃ、行くよっ!!」
 そのまま空を翔け抜けて、獣神目掛け、距離を詰める。
「シル一人には行かせないさ!」
 アンゼリカもまた地を疾る。シルと獣神の刃が交錯し、その残影が虚空へ焼き付く最中、黄翼の闘魂に勇気を漲らせ、出し惜しみの無い全力で大剣を振るい、自身も烈風の剣戟へ。
 天より青、地より金の剣閃が、黒き獣神に食らいつく。シルが低空から上空へと一撃離脱の斬り抜けを敢行したその刹那、アンゼリカは地を這うように身を低く、地形すらをも巻き込んで、獣神を両断せんと大剣で薙ぎ払う。巻き上がる砂塵。荒ぶ風がそれらすべてを吹き飛ばし、露わになるのは大剣を完全に振り切った直後のアンゼリカ。
 致命的な隙を晒したか。否、これは同い年の戦友を信じているからこその、全身全霊のスイングだ。
「やらせないよっ!」
 果たして、獣神の魔手がアンゼリカに到達しようとする直前、遥か上空からの急降下斬撃がそれを遮った。
 アンゼリカの隙をシルが、シルの隙をアンゼリカが埋め、左右上下・天地前後・時間差、同時と間断なく流麗に、息を揃えて刃を繋ぎ、獣神を翻弄した。
 さりとて獣神も退かない。獣の杖がアンゼリカの大剣を弾き飛ばし、死闘は更に過酷な局面へ突入する。
 剣は掌中から失せ、ならばここから先は拳士として。アンゼリカは拳を握り、直に獣神を殴り抜く。拳打と共に巻き起こるのは強大な衝撃波(パラドクス)。
 ぐらりと体を軋ませながら、獣神もまた至近の距離から叩くように咆哮を返す。
「……何の。このくらい、失われた歴史に生きた人の痛みに比べれば、さ」
 脳を揺さぶる衝撃波。効いてない、とは言わない。だが、消し飛びそうになる意識を、歯を食いしばり、足を踏ん張り、腹筋を引き締め無理くり繋ぐとアンゼリカは拳を叩き当て、獣神もまた咆哮で応えた。
 衝撃波と衝撃波の応酬に大地が揺れる。だが互角では終わらない。此処まで仲間達が積み重ねた残留効果(エフェクト)が、アンゼリカの力となって、獣神の咆哮を凌駕する。
「こうなることも分かっていたかい? 神様。私達は、我が道を往く!」
 血が滲むほど握りしめた拳に万感の想いと気合を乗せ――アンゼリカは獣神を天高く打ち上げた。

 衝撃波が何もかもを吹き飛ばした。今、空にあるのは太陽と、獣神と、そしてシル自身。
 たったのそれだけしかないのなら、例え方向音痴だとしても、描くべき射線(ライン)は確りと分かる。
 勝負の時だ。シルは白銀の長杖の杖頭・藍鉱石の蕾を空舞う獣神に差し向けた。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ……」
 詠唱を高速で口遊む。獣神の意識は途切れていない。その証拠に、神罰の炎が幾何学的な軌跡を描いてシルに迫る。
「混じりて力となり、全てを撃ち抜きし光となれっ!!」
 収束する全ての属性。展開する青白の魔力翼。
 神罰の炎は気に留めない。これでまだ『残る』なら、あとは後続に託す。
「この光は、神様も撃ち抜くからね……!」
 焼け焦げようと、アンゼリカが開いたこの射線は譲れない。
 故に全力魔法のありったけ(フルパワー)だ。
「……さぁ、わたしの全部だ、遠慮せずにもってけーーっ!!」
 割れんばかりの大声でシルが叫ぶ。同時に、極限まで収束した全てが解放され、圧倒的な魔力の奔流が天の全てを真白く染め上げる。光は獣神をその姿形ごと飲み込んで貫き――爆ぜた。
 
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【活性治癒】LV1が発生!
【エアライド】がLV2になった!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV3になった!

テクトラム・ギベリオ
「神か。神を見るのは恐らく初めてだが、あまり気分の良いものでは無いな」

連携攻撃を行う者が居るのだな。了解した。
さぁ毛玉、見せ場だ。
私はスフィンクスの毛玉に命じ『リドルウェーブ』で「時間稼ぎ」をしながら連携攻撃をする者の足掛かり、または囮役・目眩しとして行動する。

自身に標的が向いていない場合は「忍び足」で敵の背後に近づき『鞭声粛粛』と攻撃を行い、続いて『スコルピオンスティング』で「捨て身の一撃」でもお見舞いしてやろうか。
敵対象が増えた場合は『砂塵縛楼』で広範囲攻撃を行い、直ちに制圧する。数で押されては不利だ。

ウェプワウェト…この状況で『道を切り開く者』とは皮肉だ。
ならば、そうさせてもらおう。


三鈴山・白雪
不遜にも戦神を名乗り、安息の地へ血腥い風を齎す。
返す返すも許せる行いではありませぬ。
しかし――怒るにふさわしいのはこの地に生まれ育ったひとびと。
クロノヴェーダの手で祈るべき神と土地を穢された方々でしょう。

ハクはまやかしを惹きつけまする。
《菫鬼》の血を燃やし、[地形の利用]にて狼や炎を躱します。
…心苦しゅうございますが、集落の跡をお借りすることになるやも。

狼についてはさらに[グラップル]でねじ伏せる。
[肉体改造]を終えた両腕、そして我が手の棘より逃れられるか。
試してみることです。

みなさまに雑兵を相手取る時間などないのですよ。
神を騙る獣が一匹ごとき、叩き伏せてくれましょう。


 光が爆ぜる。
 天空は陽の輝きよりなお白く、戦場を錯綜するすべてのもの――生と死の狭間でぶつかる神と悪魔を余さず照らし、最終幕へと引き上げた。
「神か。神を見るのは恐らく初めてだが……あまり気分の良いものでは無いな」
 それが人に仇なす偽神ならば猶の事。テクトラム・ギベリオ(出所不明・g01318)は嘆息し、まんまるなスフィンクス『毛玉』の頭に手を置いた。
「このまま観ているだけでは終われない。さぁ行こう毛玉、私たちの見せ場だ」
 まず足掛かりに為すべきは、各連携へのフォローだろう。毛玉は同意するように短く鳴くと、翼を広げ、偽神目掛けて催眠光を照射する。怪しい光を受けた偽神は、戦闘中に在って思わず立ち眩み、藤世と研火がその隙を逃さず斬撃を叩き込む。
 猫の手の介入で、ぎりぎりのところで拮抗していた攻防が一気に崩れた。好機を直感したテクトラムは音も無く偽神の背後に回り込み、『鞭声粛粛』、セレグラと共に守護者の鞭を振るい、悲鳴を上げる間すら与えず、豪雨よりも激しく打ち据えた。
 まだだ。まだ終わらせない。アンゼリカの大薙ぎからさらに押し込むように、猛毒を宿した曲刀を振り被り、大上段から捨て身の一撃を見舞う。
 連撃に次ぐ連撃。テクトラムの猛攻に、偽神は血液を所構わず撒き散らし、堪え切れず二歩、三歩と後退る。
 ――しかし。
「生き切れず、死に切れずの半端者(リターナー)め」
 ぎょろりと。文字通りの血眼が、テクトラムを睨めつける。
「疾く砂に還るがいい」
 ……パラドクスにはパラドクスを。複数種のパラドクスを同時に操ったのなら、敵もまた反撃に複数種のパラドクスを返すのは道理。
「――!!」
 青の炎が噴き乱れ、獣神の顎が開く。二重倍の咆哮と神罰の炎が一斉に、テクトラムへ襲い掛かり――。

「テク!!」
 鼓膜を叩く轟音と、空高く上がる火柱。三鈴山・白雪(童子・g02924)の叫びに耳を立て、悠々反応してみせるのは、テクトラム……では無く偽神だった。
「……不遜にも戦神を名乗り、安息の地へ血腥い風を齎す。返す返すも許せる行いではありませぬ」
 怒気に満ちた赤の眼差しを、偽神は嘲笑一つ、受け流す。
「しかし――怒るにふさわしいのはこの地に生まれ育ったひとびと。クロノヴェーダの手で祈るべき神と土地を穢された方々でしょう」
 そして、彼らにオアシスを捨てさせる決断しか促すことの出来なかったディアボロスの無念など、偽神達は知る由も無いのだろう。
「戯言よ。まさか、まつろわぬ愚民どもに頭を垂れ、許しを乞えとは言うまいな」
 偽神の嘲弄に、白雪は言葉を返さない。眼前の偽神(これ)は、ただ、排除すべき障害物だ。
 深く静かに『菫鬼』の血を燃やし、両腕に力を籠めた。まずは一発顔面に見舞ってやろうと駆け抜ける。
 狙い通り偽神の鼻っ柱をへし折って、ふと周囲を見渡せば、いつの間にやら天空よりの黒狼群(まやかし)。
「心苦しゅうございますが……」
 形振りを構う暇はない。白雪は殺到する牙を紙一重で躱し、そのまま一足距離を開けると、無人となった集落に紛れ込む。
 地形は頭に入っている。だから『そこ』に到達するのは容易い……一人集落を走り、白雪は、ロストが築いたバリケードに陣取った。
 後はそこに仁王立ち。三鈴山の魔性の血を狙った代償は安くない。多少の牙など物ともせず、雪崩れ込んでくる狼たちを次から次へと組み伏せ、罠にかかった間抜けな狼をねじ伏せ、じっくりと身体を改造(あたた)める。
「騙りの戦神。未だ道を開く意思があるのなら、我が手の棘より逃れられるか。試してみることです」
 超重量の大棘丸に浸透させた力は今までの比ではなく、それを察した偽神は十字を掲げ、さらなる増援を呼び込もうとした刹那――。
 ――大質量の砂塵、否、砂漠そのものが、雁字搦めに偽神を拘束した。

「ウェプワウェト……どうやらお互い、進退窮まったようだな」
「!! 貴様、まだ動けたか!」
 息も絶え絶え、呟きほどの小さな音。しかしその声の主は、紛うことなきテクトラム。
 残留効果のお陰で辛うじて意識を失わずに済んだが、『次』はそうはいかないだろう。
 しかし、意識を手放す前に、やっておかねばならぬことがある。
「この状況で『道を切り開く者』とは皮肉だが……『そう』させてもらおう」
 狼が迫る。間に合うか。テクトラムは力を振り絞る。
「砂に、還れ」
 ……あらゆるものを閉じ込め縛る楼閣の完成と、黒狼の襲撃は全くの同時だった。
 小さく鳴いて、毛玉が消える。それはテクトラムの意識が途切れたことを意味していた。
 白雪はテクトラムを観る。幸い、大きな怪我は無いようだ。
 ならば後は、と白雪は楼閣に向き直る。最終幕の最終盤だ。
「みなさまに雑兵を相手取る時間などないのですよ。神を騙る獣が一匹ごとき、叩き伏せてくれましょう」
 最大級の膂力の思うがまま振り回された大棘丸が、楼閣もろとも偽神を散り散りに砕く。
 
 ――そうして。全てが終(はじま)った。

●遥か砂塵の彼方へと
「……何を喜ぶ」
 半顔だけの獣神が嘲る。
「我らは小さな小さな先遣隊。倒したところで神々の行進は止まらぬ。何も変わらず。そして変えられぬ」
 お前たちの行いは徒労にすぎぬ。そう吐き捨てて、半顔は塵と化す。
 ……確かに、これまではそうだったろう。だが今回、例えどれだけ小さくとも、クロノヴェーダの暴虐に一点、穴を空けることが出来たのだ。
 ならば。此処から先は、きっと。
 
 ――そして、少年が率いる住民たちはオアシスを捨て、遥か砂塵の彼方へと。
 新宿島へ、帰還しよう。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【建物復元】LV1が発生!
【怪力無双】がLV2になった!
効果2【ガードアップ】がLV4になった!
【能力値アップ】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2021年09月07日