リプレイ
月城・木綿紀
「街で探しモノをする時は、その街の住民に聞き込みをする!」
前に師匠(身体の中の天使)から教わった事を復唱して調査を開始する。
まずは複数の服屋で何着か服を買って、後はエイティーンと組み合わせてこまめに容姿を変えながら色々聞き回る。こうすることで色んな人から話が聞ける他、敵に気づかれてもこちらの規模や状況を色々誤魔化せる。
聞き込みで得た情報を地図アプリで埋めていって……他に比べて情報量が変なところを探す。情報量が変な場所には緘口令とか嘘の流布とか人為的な何かが働いていそうだし。
セーミス・エセーニン
「戦争とは、競争みたいなもの」ねぇ
確かに足の引っ張り裏のかき合いはしましたが、
果してあれが競争という程奇麗な言葉で表して良いものやら
さて、「ナーベルブルグ」……臍の街?妙な地名ですね(合ってるかは不明ですが)
まぁ地名なんてそんなものですか
市井に紛れるのは他の方にお任せして
忍び足や偵察、【飛翔】で高い建物の上にでも登り、街の人々の様子を俯瞰して情報収集します
岡持ちを載せた自転車と少年。見つかると良いのですが……
上手く見つかれば他の方と合流、少年を尾行し研究員の家を特定いたしましょう
見つからなければ……腹ごなしがてら食堂で情報収集でもしますか
お化け屋敷という俗称があるなら誰か知っていることでしょう
新堂・亜唯
新型開発、ってワードには男子としてソソられるとこあんだけど
相手がクロノヴェーダじゃ見過ごせねーよなぁ
きっちり邪魔しに行くとすっか
まずはナーベルブルグに潜入して情報集めるのが良いかな
敵を倒すだけならいつも通りだけど、資料の場所を突き止めなきゃだしね
ダキアさんが言うには、研究員の暮らしている家があるんだっけ?
アドバイス通り、出前をとってる食堂を当たって聞き込みに行くのが良いかな
ほんのり【友達催眠】とか駆使して……
研究員たちがどの方向に通勤しているか、何か気になる話を聞いたり、妙な動きを見たりしていないか、可能な限り聞いて行こう
望月・百代
ほぉん、なるほど
研究員の住所はすでに先発の者たちが確認済み、と…加えて、研究所が別の場所にあるのであれば、日中の侵入もどうにかなるか?
研究員たちが研究所に出勤するのを待ち、パラドクスの【光学迷彩】で姿を隠しながら侵入
家のサイズによるが共同スペースはそこまで重視せずともいいか
となると、各自の個室が狙いじゃの
研究資料の一端や研究所の何某かにつながる物があると良いのだが…
…これは、カードキー?
それも磁気記録型のえらくシンプルな
磁気特性を記録、保存…後から適当なブランクカードに書き出してやればコピーできるな
よし、磁気情報保存、と
ついでに、データを抜き出したカードの情報は破壊しておくとしよう
●市内にて
「新型開発ってワードには、男子としてソソられるところあんだけど」
新堂・亜唯(ドロップダスト・g00208)が、腕を組んでうんうんと頷く。
「相手がクロノヴェーダじゃ見過ごせねーよなぁ」
「戦争とは、競争みたいなもの……と、時先案内人の方は仰ってましたが」
セーミス・エセーニン(собака・g05311)の表情は渋い。
「競争という綺麗な言葉で表してよいものやら」
「で、研究施設はどうやって調べる?」
月城・木綿紀(月城家三女のメイドトラッパー・g00281)の問いに、亜唯は頬をかいた。
「とりあえず聞き込みからかなぁ。研究員が暮らしている家があるんだっけ? それをまず探さないと」
「なら、私は聞き込みを」
「聞き込みは亜唯殿と、木綿紀殿にお任せします。わたくしは空から調べてみましょう」
「研究員のヤサは分かってるのじゃろ? 突き留めてしまえば、あとはなんとかなるじゃろうな」
望月・百代(月輪七曜・g02747)はニヤリと笑った。
●お化け屋敷
「街で探しモノをする時は、その街の住民に聞き込みをする!」
一人口の中で復唱した木綿紀は、街を歩く女の子のファッションをそれとなくまねた衣装を作り上げ、それを着用すると、聞き込みを始めた。
「お化け屋敷? ああ、アレのことか」
街角の屋台の親父は、木綿紀に微笑んだ。
「住宅街の一番外れに、誰も住んでないお屋敷があんだよ。金持ちが住んでたっつー話だが、事業に失敗して屋敷の人間が一家全員自殺したとか、ホントかどうか知らんけどな。お化けが出るっていうんでよ、それ以来空き家で誰も住んでなかったのさ。それが今年になって」
「なって?」
「お化け屋敷を軍が買い上げたんだと。そういや軍の人が住んでるとかなんとか。関わると警察に逮捕されるかもしれないっていうんで、みんな近づかないけどな。ほい、お待たせ。オマケしといたぞ」
屋台の親父から、商品を買った木綿紀は、礼を言って屋台を離れた。
「まずはお屋敷の位置の確認から」
そういうと、スマートフォンにメモを書き込んだ。
「なんていうか」
亜唯は、街の中を歩きながら呟いた。
「灰色って感じ?」
ナーベルブルグは静かな街らしく、行きかう人々の表情は暗くはないが活気というものが今一つ感じられなかった。
「亜唯さん」
呼ばれて振り返ると、木綿紀が立っていた。
「木綿紀、そっちは何かわかった?」
「お化け屋敷の場所が分かった。今から向かうところ。亜唯さんの方は?」
「俺もお化け屋敷って言われてる建物はすぐに教えてもらえた。お化け屋敷に軍の人が住んでいるというのは、結構有名で、白衣着た変なおっさんが三人で住んでるとか、出前は同じものしか頼まないとか」
亜唯は指折り数えて教えてもらった情報を語った。それをスマートフォンに入力する木綿紀。
「出前を頼むというお店は?」
木綿紀の問いに、亜唯は答えた。
「それも教えてもらった。『メルのキッチン』ていう食堂じゃないかっていう話。テイクアウトと出前やってる食堂はそこだけだから、聞き込みに行こうと思う」
●臍の街
「ナーベルブルグ……臍の街とは、変わった地名ですね」
セーミスは、ナーベルブルグ市内で一番高いとおぼしき尖塔のてっぺんに立っていた。眼下に広がる街は、静かにたたずんでいる。
「街そのものに、特段不思議なものは見つけられませんが……」
セーミスは、それとなく聞き込んだ情報で、街の西側にお化け屋敷と呼ばれた建物があることを聞いた。街の西側は住宅街が広がっており、研究施設のような感じの建物は見当たらなかった。
「そっち、行ってみましょうか」
セーミスは、ふわりと空に舞い上がると、街の西の方角へと体を向けた。
「む?」
セーミスは、空中で思わず立ち止まった。白衣姿の男が三人、住宅街の方へと歩いていく。顔面が改造された男達を見て、おそらく彼らが探している研究員ではないかと彼は考えると、気が付かれないように上空から追跡を始めた。
「みんなやはりここに揃うたか」
お化け屋敷の前に張り込んでいた百代の前に、亜唯と木綿紀が現れた。
「連中のヤサはここらしいのぅ」
百代は古びた屋敷を見上げた。二階建てのそれなりに大きな洋館だが、庭はほとんど手入れされておらず、壁はツタで覆われていた。
「こういうのを見ると、手入れしたくなる」
木綿紀の言葉に、フフッと笑う百代。
「皆さんもここでしたか」
息を切らせて空から降りてきたのはセーミス。
「研究員がこっちに来ます。皆さん隠れてください」
全員が慌てて隠れると、声高に話しながら白衣姿の男達がやってきて、屋敷の中へと消えた。
「トループス級の『帝国一般研究員』じゃな」
百代の目が細められる。
「捕まえて締め上げる?」
両手のグローブを握りしめて出ようとした亜唯を止める百代。
「待て待て。急いては事を仕損じるぞ。ヤサは分かったんじゃから慌てんでもええじゃろ」
しばらく屋敷を見ていた一同の前に、自転車が止まり、エプロン姿の少年が岡持ちを手に、屋敷の呼び鈴を鳴らした。中から白衣姿の研究員が出てきて、やりとりの後、岡持ちを手に自転車で走り去る。岡持ちには『メルのキッチン』の文字。
「少年の跡を付けてきます」
セーミスは、そういうと自転車を追うべく出て行った。
「私たちはこのまま張り込む?」
木綿紀の問いに首を振る百代。
「その必要はなかろう。ああいう連中は朝まで出てこんわい。さて、どうするかのぅ」
呟いた百代の前に、セーミスが戻ってきた。
「出前先の店を見つけました。ここから徒歩ですぐですね」
誰かの腹の虫が鳴る音がした。えへへ、と照れる亜唯にくすりと笑う木綿紀。
「とりあえずメシじゃ。研究員どもの舌がまともかどうか、確かめようかのぅ」
●潜入
翌朝。
日の出前から屋敷の前に張り込んでいた四人の前で、屋敷のドアが開くと、研究員たちが話しながら出て行った。
「護衛とか……つかないんですね」
あきれたようにいうセーミスに、百代が笑う。
「その方が都合がええ」
「では、打合せ通りに」
「まっかせて! でも、百代ひとりで大丈夫か?」
心配そうに尋ねた亜唯に、百代は口の端を吊り上げた。
「案ずるでない。妾はこっちが本業じゃでの」
セーミスが空に舞い上がり、亜唯と木綿紀が研究員達を尾行するべく出て行った。
「さて」
百代は舌ずなめりすると、屋敷を見た。
「仕事をするか」
潜入はあっさり成功した。
「セキュリティもない。鍵も普通の鍵。どうなってるんだ帝国は」
百代は、顔をしかめていた。生活感あふれる部屋の中は、散らかり放題で片づけられた気配もない。用心して光学迷彩を使用したが、人気はなかった。屋敷の中を慎重に進んだが、研究員達が寝泊りしている部屋以外は空き部屋で使われた様子もない。
「?!」
気配がして、小型拳銃を構える百代。が、窓の外を猫が通り過ぎただけだった。溜息をつく百代は、研究員の部屋の中を見回す。書類が山積みになった机の引き出しをそっと開く。
「ほぉん、なるほど」
百代は、引き出しに乱雑に突っ込まれた書類の間に、感じるものがあってそっと書類を漁る。
「カードキー?」
カードに張られたメモには「マスターキー。コピー済」とあった。百代はニヤリとすると、カードキーをポケットに入れた。おそらくコピーしたキーの方を持ち歩いているのだろう。
「あとは、亜唯たちに頑張ってもらわないとね」
百代は、引き出しを丁寧に戻すと、鍵を掛け直して屋敷を後にした。
「え?」
亜唯の足が止まった。街の中心部から少し離れた歓楽街の外れに、大きな建物があり、そこに研究員たちは入っていった。亜唯が見上げた看板には、色あせていたが、胸をあらわにした女の子のイラストが描かれた看板が掲げられており、『マリアのストリップ劇場』と書かれていた。
「ストリップ……劇場?」
みるみる顔が赤くなる亜唯の肩を叩く木綿紀。
「亜唯さん?」
「う、うわぁ! お、俺は興味ないからな!」
「何慌ててるの? 今、聞き込みしてきたけど、この劇場、営業してないって。空き家のはずだけど、ここに入っていったよね?」
木綿紀は、スマートフォンに情報を書き込んでいく。空から、セーミスが降りてきた。
「ここに入っていきましたね。周囲を上から確認しましたが、特に変わったところはないです。ここがもしかして研究施設ですか?」
「そうみたい。入る?」
「え?」
木綿紀に言われてどぎまぎする亜唯に、セーミスは真顔で頷いた。
「行きましょう」
三人が劇場内に踏み込むと、人気は全くなかった。円形のステージの周囲に並ぶ客席。三人を出迎えたのは、ステージの上に立つ、裸体の女性像だった。豊かな胸を押し上げるように腕で体を抱いている。
「何これ?」
木綿紀が、ゆっくりと像に近づく。
「ストリップ劇場だからですか? なんというか、分かりやすいですね」
驚くような、あきれるような口調で、セーミスは像を調べ始める。
「亜唯さん、ちょっと像の胸を押して」
「お、俺?」
「早くして」
像を調べるのに忙しい木綿紀にせかされるように、亜唯は両手で像の胸を押した。劇場内が暗かったので、亜唯が顔を真っ赤にしていたことには気づかれなかった。鈍い音がして、木綿紀とセーミスが像の背中を見た。
「ここにカードを差し込むとどこかに入り口が開くみたいですね」
「おそらくはそう。けど、カードはここにはない」
「ここまでだと思います。一旦撤退しましょう」
三人は、ストリップ劇場を後にした。
その後、百代と合流した三人は、百代から見せられたカードキーを見て納得した。
「持ち出して大丈夫ですか?」
心配するセーミスに、百代はふふんと言った。
「連中は、しまったことすら忘れてるじゃろうな。だが、気づかれる前に突入した方がええじゃろう」
一同は、頷いた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【エイティーン】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
アナスタシア・コルヒドレ
※アドリブ歓迎
兵器の進歩はすごいもんね
機関銃最初に作ったのもドイツだったっけ?
皆が情報を得てくれているなら、私は破壊工作。
資料のある場所まで【突撃】。
障害となりそうな壁は建物分解で抜いて最短一直線だよ。
資料を見つけたら右腕搭載型バーナー砲でひとつ残らず焼き払うよ。
戦火を広げる新しい兵器なんて、作らせはしないよ!
望月・百代
さぁて、元産業スパイの腕の見せ所…おや、焼却できる装備を持った復讐者が居ると?
これは僥倖、であれば物理的な記録はそちらで、電子的な記録はこちらで受け持たせてもらおうか
カードキーはぶんどってきたが、なるほど、建造物分解…派手にやるならそういう手もありか
とはいえ少々待ちたまえ、巡視の目がある所はカードキーで抜けて、人気のないところはその方法で抜けようぞ?
その方が破壊工作の時間が稼げるでな
資料庫に実験室…クロノヴェーダが居るところは後回し、順繰りにやっていくか
電子情報をハッキングしつつ…環境改竄、よく燃えるには乾燥した空気があれば十分かね?
それにしても、ストリップ劇場の地下とは
…随分な秘密基地よなぁ
月城・木綿紀
「どこにあるのかな?」
パラドクスで扉とか物理的な壁を突破しながら研究所内を探索する。重要そうな電子ロックのところには即席にはなるけど開けたら爆弾が爆発する罠を仕掛けておく。
それで問題の研究資料を見つけたら、とりあえずスマホで写メ撮って、インカ文明のキープのように糸に結び目をひたすら作って作った暗号に変換したのを作る。
キープが出来たら、オリジナルの資料にはインクをぶちまけて読めないようにする。
「燃やしたらボヤとかなるし、燃え残りから復元されるかもしれないから、これで良いんだよね?」
高吉・政斗
よっし!どうやら先発組が研究所施設への道のりを見つけたようだ…
多分…入り口は……ステージっぽいな。
まぁ罠かもしれないので落下や中空に浮いてしまったら飛んじゃえばいっか
な?(飛翔)
研究施設内部に侵入後はコソコソっと移動(光学迷彩)しながら各部屋を片っ端から調べて研究資料(恐らく素材やパーツ類も含まれてるだろうな)を……あぁ武器庫もあったりしたらソイツモどうにかしようかな。
資料関連の破壊(武器庫があるであろう中身の武装備系)なら拳銃型ガジェット(凍結弾精製装置付き)で尖端を尖らせるように調整した冷凍徹甲弾仕様で撃ち壊そう。
(調整もそんなに難しく無い)
紙媒体は…まぁ燃やすかな?ライター位持っていこ。
●突入
月が静まり返った街を見下ろす深夜。
ナーベルブルグ市内にある、今は営業していないストリップ劇場に人影が滑り込むように消えた。
「入れるよ」
月城・木綿紀(月城家三女のメイドトラッパー・g00281)が、劇場のステージの真ん中に置かれた、女の裸体像の背中に開いたカードスリットにカードを差し込んだ。
静まり返った劇場内に響き渡る何かの金属音に、高吉・政斗(人間のデジタルサマナーガジェッター・g00900)がびくりと体を震わせる。アナスタシア・コルヒドレ(蒼炎の閃光(ひかり)・g00340)が周囲を注意深く確認すると、望月・百代(月輪七曜・g02747)が、劇場のステージの床がわずかに盛り上がったのを見つけた。百代が頷くと、アナスタシアが持ち上がった床に手を掛ける。音もなく、床板がハッチのように持ち上がり、そこには階段が続いていた。
「行くぞ」
百代はそういうと、階段を降りて行った。政斗と木綿紀がそれに続き、しんがりにアナスタシア。全員は、研究施設へと踏み込むことに成功した。
●セキュリティ
階段を降りた先は、廊下が続いていた。
「ストリップ劇場の地下に、こんな立派な施設があるなんて」
木綿紀は、コンクリート作りの廊下を見て素直に驚いていた。
「研究施設はこの先じゃな。親切なつくりだのぅ」
百代は、廊下に貼られた「研究施設、50メートル先」というプレートを見てから、全員に進むように促した。廊下はほどなく突き当り、左右に分かれていた。
「左が研究ラボAB、右が管理棟及び保安室か」
百代が廊下のプレートに目を走らせる。
「どこにあるのかな?」
「おそらく左か?」
木綿紀の問いに答える政斗。
ガシャン、ガシャン。
廊下の向こうから聞こえてくる規則的な金属音のような足元に、全員が顔を見合わせた。素早く廊下に目を走らせる百代。
「こっちだ」
音を立てないように足元のする反対側の左側の廊下を走ると、さらに左右に分かれていた。どちらも行き止まりでドアがある。
「アナスタシア、どっちがいいかえ?」
満面の笑みを浮かべる百代に、アナスタシアは困惑した。
「わ、私が決めるの?」
「早くせい」
「ひ、左?」
「ラボAだね」
ドアまで走る木綿紀と政斗。
「ドアにカードスリットがある」
「任せて」
木綿紀がカードキーを差し込むと、ガチャンという音がして、ドアについていた赤ランプが緑色に切り替わり、全員がドアの向こうに滑り込む、百代がドアを閉めると、施錠された音がした。金属音の足元は、規則正しい音を響かせながら、ドアの方へと近づいてくる。息をのむ一同。右腕のバーナー砲を構えるアナスタシア。ドアの前で、足元が止まった。一瞬の静寂。
「ドアロック施錠ヨーシ! 人影ナーシ! 定期巡回異常ナーシ!」
ドアの向こうで響く警備兵の機械じみた声。ドアノブを一回ガシャンと確認して開かないことを確認すると、足音は遠ざかり、反対側の方でも「定期巡回異常ナーシ!」と叫ぶと、管理棟へと戻っていったのか、足音は小さくなって聞こえなくなった。
「マジかよ」
へたり込む政斗。
「心配しなくても大丈夫じゃ」
百代は、ニヤリとした。
「鍵が掛かっている限りは、おそらく連中は踏み込んでこん」
「警備……随分ザルだね」
緊張から解放されたアナスタシアに、肩をすくめる百代。
「こんなところまで敵が来るとは思っとらんのじゃろ。多分な」
振り返った百代は、固まったまま動かない木綿紀を見た。
「どうした?」
「これ……」
木綿紀が指さした先を見て、全員が目を見張った。
●破壊工作
「すごい……ね」
アナスタシアは目を丸くした。天井は驚くほど高く、これが地下でないと知らなければ、普通の格納庫か倉庫を思わせるようなだだっ広い空間が広がっていた。
「帝国はやることが違うのぅ」
百代は率直に感心した。木綿紀の視線の先には、赤く塗られたトループス級『シュプールフート・クリーガー』が二体、鎮座していた。どちらも、車体と胴体が切り離されている。
「トループス級!」
身構える政斗。
「すげー。赤い機体だ! こいつ、三倍速で動くのか?」
「帝国の新型なのに白じゃないのね」
政斗と木綿紀の言葉に首を傾げるアナスタシア。
「さぁて。元産業スパイの腕の見せ所だな」
百代は舌ずなめりした。
黙々と紐を編む木綿紀。シュプールフート・クリーガーの傍らにまとめてあった資料を写メに撮り、それを見ながら黙々と二本撚りの紐に結び目を組む。彼女曰く「暗号化してる」というのだが、それを横で見ていた政斗にはさっぱり理解ができなかった。
「よし」
木綿紀は、編みあがった結縄を満足そうに見ると、机の上の資料にインクをぶちまけてそれを丁寧に広げた。みるみる黒い墨で消されたようになる資料。それを繰り返す木綿紀。墨入れされた資料の山が、木綿紀の足元に築かれていく。
アナスタシアは、シュプールフート・クリーガーが置かれたラボの奥にある部屋を見つけた。入り口が違うだけで、実はラボのABは繋がっており、単にパーテーションで仕切られただけだった。パーテーションを突撃してぶち抜き、隣のラボに侵入したアナスタシアは、試作されたとおぼしき兵器のモックアップ等を見つけた。
「戦火を広げる新しい兵器なんて、作らせはしないよ!」
右腕のバーナー砲を構える。紅蓮の炎と共に、モックアップと資料が瞬く間に炎上した。
「武器庫発見!」
ラボの小部屋をひとつひとつしらみつぶしに入っていった政斗は、武器庫のような部屋を見つけた。武器のテストと試作をしているのか、資料と武器らしきものがテーブルの上に置いてある。
「よっし。破壊するぞ」
拳銃型ガジェットを構えた政斗は、冷凍徹甲弾を次々と撃ち込む。凍り付きながら試作武器がバラバラに粉砕されていった。
「ストリップ劇場の地下とは、随分な秘密基地よなぁ」
百代は、パーテーションで仕切られた小さな資料室の中にいた。
「ん?」
ガラスの戸棚の中に、鈍色の大きな筒のようなものが二つあった。戸棚の中からそれを取りだした百代は、顔をしかめた。『ヤクト・クリーガーv1用実験疑似人格(試作品)』とラベリングしてある。ずしりと重いそれは液体が入っているようだった。
「ちっ」
小さくした舌打ちした百代は、それを床に叩きつけた。叩きつけられてひしゃげた筒から出てきた何かを見た百代は、そのまま部屋を見回し後ずさると、パラドクスで乾燥させた部屋に、無言で火をかけた。
「クソが」
●警報
「あとはこいつを爆破するだけだ」
百代は、厳しい顔で研究ラボの中央にある二体のシュプールフート・クリーガーを見た。木綿紀が、ラボに置かれていた機械油のような液体を掛けていく。政斗が拳銃型ガジェットを、アナスタシアが右腕のバーナー砲を構えた。
「行くぞ」
「いくよ」
二人の得物が火を噴いた。政斗の放った冷凍徹甲弾が機体をズタズタに破壊し、最後にアナスタシアのバーナー砲の炎が機体を舐めると、一気に引火した。小さな爆発が立て続けに起き、ラボ全体が大きく揺れる。
研究ラボの中にけたたましいベル音が響き渡った。
カサイハッセイ! カサイハッセイ!
スピーカーから機械音声のような声がすると、ラボの中の赤いパトランプが一斉に点灯する。
「そりゃま、これだけ暴れれば、そうなるのぅ」
百代はニヤリと笑うと、拳銃を引き抜いた。
「火災警報装置、ちゃんと付いてるんだ」
冷静な木綿紀。
「でも、スプリンクラーがない。やり直し」
「ちょ、聞いてねぇぞこんなの」
動揺を隠せないのは政斗。
「百代さん」
「何じゃ?」
アナスタシアは尋ねた。
「これ、強行突破する流れ?」
「正解」
全員の耳に、ガチャガチャと廊下の向こうから走ってくる足音が聞こえてきた。鍵のかかったドアを開けようとする音。
「ナゼ火災ガ発生スルノダ?」
「侵入者ダ!」
「警報! 警報! 侵入者ヲ発見次第射殺セヨ!」
●寝起き
深夜。
けたたましい電話のベルで、機械化ドイツ帝国一般研究員Aは叩き起こされた。研究書類のレポートとにらめっこして、今さっきベッドにもぐりこんだばかりだったのである。
「もしもし。なんだこんな時間に」
「私だ」
受話器の向こうの冷たい声に、ベッドから飛び起きる研究員A。
「ツェツィーリエ様?!」
「ラボにネズミが侵入した。警備兵が排除に向かっている。すぐに出頭しろ」
「は、ただちに! しかしなぜ賊がラボに?」
受話器は切れた。研究員BとCが起きてきたので状況を説明したAは、ハッとなって机の引き出しをひっくり返して顔面蒼白となった。
「マスターキーがない! クソ! やられた」
研究員たちは、屋敷を飛び出した。
(マスターより)
③と④は同時進行が可能です。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【建造物分解】LV1が発生!
【泥濘の地】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【冷気の支配者】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV2になった!
【ドレイン】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
望月・百代
さて、予想以上にゲスいな、こ奴ら
ゼロから作ったか、あるいは既にあるモノを誰ぞからちょろまかして流用したかまでは判らんが…研究のために倫理観を投げ捨てるとどうなるのかは身を以て知るべきじゃろうな
ひとまずくるみ割り人形の対処は仲間に任せ、光学迷彩などの残留効果を活用して研究員の対処に向かう
隠れ潜んだ状態で、慌ててここに駆け込んでくるであろう3バカを待ち伏せて霊魂侵入による情報簒奪+精神破壊で処す
研究者としての知識、自我…誇りはあるか分らんが、それらを消せば狂い死ぬやもな?
研究成果は燃やした、であれば後は貴様らの脳髄に残る閃きとアイデアを葬ることこそ、この非道な研究の犠牲となった者への手向けだろうよ
●見えざる敵
白衣姿の男達が三人、息も絶え絶えに閉鎖中のストリップ劇場の扉を押し開けた。
「ディアボロスのネズミ共が! 姑息な真似をしおって!」
「キーを複製したお前が悪いんだろうが」
「電子錠にしていれば、カードキーなんぞ盗まれずに済んだんだ!」
機械化ドイツ帝国一般研究員達が言い合いをしながら、劇場の真ん中にある裸体像の前にやってきた。
「なんだ? 爆発音?」
地下からかすかに聞こえてくる音に、動揺する三人。明かりがない劇場の中で、地下にある研究施設への入り口を開けるのに手間取る三人。研究員Aの手からカードキーが滑り落ち、研究員Bがそれを拾い上げた時だった。研究員Bの眉間を銃声が貫き、声にならない悲鳴をあげた。
「ぐぁ……ご、がぁぁ」
のたうち回りながら頭を押さえて絶叫した研究員Bは、裸体像にしがみつくようにして崩れ落ちた。
「だ、誰だッ?!」
身を低くする研究員AとC。
「どこだッ? どこにいる?」
「明かりを付けろッ!」
研究員Cがステージ袖まで走り、慌てて配電盤に取りついてスイッチを引き上げると、劇場内に明かりが灯る。
二発目の銃声が響いた。
「ぎゃぁぁぁ」
研究員Cが配電盤を鮮血に染め上げると、悲鳴と共に壁に爪を立てながら倒れた。
「どこにいるッ? 姿を見せろ!」
研究員Aの前で、迷彩マントを羽織った女が銃を構えていた。
「お、女だとぉ?」
「『アレ』はお主らの所業か?」
劇場内に響く女の声。
「はぁ?」
三発目の銃声は、研究員Aの左足を吹き飛ばした。
「こ、小娘ごときがぁッ」
研究員Aの手から、冷凍ガスのようなものが噴出されると、女目掛けて襲いかかる。だが、女はそれをひらりとかわすと、引き金を引いた。右足を吹き飛ばされた研究員Aは、やっとのことでカードキーを押し込み、這ったまま地下室へのドアのハッチを引っ張り上げた。
「行けると思うたか? この外道が」
地下室への階段へ逃げ込もうと必死の研究員Aの脳天の後ろで、銃口がピタリと止まった。
「お主らの所業、冥府で償え」
銃声と共に、声にならない絶叫をあげた機械化ドイツ帝国一般研究員Aは、階段をその血で染めた。
「貴様らの脳髄に残る閃きとアイデアを葬ることこそ、非道な研究の犠牲となった者への手向けだろうよ」
望月・百代(月輪七曜・g02747)は、返り血を浴びたまま一人呟いた。
大成功🔵🔵🔵
効果1【書物解読】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
新堂・亜唯
……警報……研究資料の破棄に行った人たちは、派手にやったてことかな。
さーて、いよいよドンパチやる時が来たかな。
こういうのの方が俺向きの仕事、ってね。
俺はひとまず、警備の連中を相手すっか。
こいつらを片付けて行けば、他の皆が進軍しやすくなる。
元凶の下へたどり着きやすくなるってもんさ。
警報が鳴ってる以上、連中は警戒態勢だろうが、俺の小さな体はこういった屋内戦闘で隠密行動をするのは得意だしね。
機械人形たちが異常の起きた場所を目指して行動するなら、むしろそこを狙って、物陰やダクトを使って死角から叩いていこう。
……後の大物との戦いの前に、体力は温存しながら戦いたいしね。
龍統・光明
『その業喰わせて貰う。さぁ、貴様の業を数えろ……』
ドラゴニアンのガジェッティア × レジェンドウィザード
性別:男
口調:俺、呼び捨て、だ、だな、だろう、なのか?
特徴:基本冷静沈着。但しノリは良い。
普段二刀流と蹴術を織り交ぜる戦闘スタイルだが、
AS展開時は一転二丁銃と羽形ブラスターを操り戦う。
基本回避優先で防御の際は左腕を盾代わりに使う
常にクールである事に努めており、他に迷惑をかけない様に心掛けている
例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!(NG:ギャグ・コミカル)
月城・木綿紀
「早く逃げないと!」
小物の手榴弾を通気口やら部屋と通路の境目に投げつつ、トラップ生成で戦場に粘着床とワイヤーを張り巡らせて敵の動きを拘束して逃げに専念する。
戦場が火事になっている以上この場にずっといるわけにはいかないし、逆にこれを利用し敵を閉じ込めてバックドラフトが起きるようにする。
高吉・政斗
過ぎた事は仕様が無い!
吃驚したけど仕様が無い!!
この警備ロボ連中(くるみ人形)相手は骨が折れる…が殲滅出来ない訳でもない。…むしろこの状況…生かせるぜ!
炎上破砕中のラボ内に連中を誘き出す…これが一番かな?
扉を破壊して数秒後に入ってきた人形中心にた人形共に、雁字搦めになる斬れ難いワイヤーを発生さ
(トラップ生成)
自分は入室してくる人形共の死角取りながら動きを阻害しつつフルオート射撃して行こう…基本設定のままで(9mm拳銃弾型の徹甲弾仕様)かな
…っと数が多いからそれなりに回避行動しながら攻撃。
(光学迷彩+泥濘の地+飛翔)
数で押される時は最大火力(設定10)で撃ちこむかな…
さてバーまで戻って脱出っだ!
アナスタシア・コルヒドレ
さて、王手をかけるためにもお掃除しなきゃね!
火炎放射器良し、MGよし。
仲間が【泥濘の地】【トラップ生成】で罠を張ってくれるみたいだし、それに合わせてアナイアレイション!
右手で内蔵火炎放射、左手でMG42を【戦闘知識】に基づき乱射して掃討するよ!
凍ったところに高熱を浴びれば、世の中に存在している物質である以上崩壊する!
逆もしかり、私の高温と仲間の低温で原子【破壊】させてあげる!
●ドアの向こうで
「ドアヲ開ケロ!」
「開カネバ軍法会議ダゾ!」
ドアが閉まると自動的に鍵がかかる仕組みのラボのドアは、セキュリティ上では有利ではあったが、緊急事態発生時でもいちいち鍵でドアを開かなければならなかった。ラボのドアの向こうでは怒号が飛び交っているが、肝心のドアが開かないのか、ドアを蹴とばす音が響く。
月城・木綿紀(月城家三女のメイドトラッパー・g00281)は、ラボを見回した。背後で二体のシュプールフート・クリーガーが炎上している。天井が高いのと、どこかに排煙口があるのか、煙はそれほど広がっていないが、時間との競争を強いられるのは間違いなかった。
「け破られるのも時間の問題だね。歓迎準備しないと」
アナスタシア・コルヒドレ(蒼炎の閃光(ひかり)・g00340)はMG42のコッキングレバーを引いた。
「火炎放射器よし……安全装置解除よし」
「アナスタシア、そろそろ来る。準備はいいか?」
「はい! いつでも」
龍統・光明(千変万化の九頭龍神・g01001)が落ち着いた声で、アナスタシアを見る。木綿紀が二人に言った。
「すみませんが、少しだけ時間を稼いで」
「なぜ?」
「ここから脱出する算段を組むから。政斗さんはトラップいける?」
「もちろんだ。任せろ」
高吉・政斗(人間のデジタルサマナーガジェッター・g00900)が頷く。
「俺は遊撃でいいんだよな?」
新堂・亜唯(ドロップダスト・g00208)の問いに頷く光明。
「頼む。敵が突入してきたら俺とアナスタシアで食い止める。亜唯は、隣のラボから来た敵の迎撃を頼む」
「任せて。派手にやるから」
●戦闘
アナスタシアがMG42の銃口をドアに向けた。刀の鯉口を切る光明。亜唯はそのまま姿を消した。
「よし! 間に合った」
政斗が呟いたとき、ドアが唐突に開いた。ドアの向こうから、サーベルを振りかざしながら、機械式くるみ割り人形が憤怒の表情で飛び込んできた。
「ナ、ナンダコレハ!」
機械式くるみ割り人形の一体が、政斗のトラップに盛大に引っかかった。ワイヤーに足を取られ、転ぶと同時にワイヤーが雁字搦めに絡みついたせいで、じたばたと床で暴れた。やってきた後続の人形達がドアの入り口でつっかえた。
「ざまぁ!」
政斗が叫ぶと同時に、甲高い射撃音が響き渡る。
「チェックメイトだね」
アナスタシアの左手のMG42が火を噴いた。ほぼ同時に、右腕搭載型バーナーの紅蓮の炎が、人形達を舐めるように襲いかかる。ワイヤーのトラップに引っかかったくるみ割り機械人形は、まともに火炎を浴びて反撃の暇も与えられないまま、全身火だるまとなった。ドアの入り口でつっかえながらもラボに飛び込んできた二体のくるみ割り機械人形は、MG42の銃弾の雨を浴びて、一体は壁に縫いつけられた。が、もう一体はサーベルを振りかざして突進してきた。射撃しながら素早く後退するアナスタシア。
「行かせないぜ!」
政斗の射撃が、突進してくる、くるみ割り機械人形に命中した。銃弾が命中すると、冷気に包まれたくるみ割り機械人形が、サーベルを振り上げたまま前のめりに倒れた。が、味方の死体を蹴散らすように、新たなくるみ割り機械人形が現れた。
「政斗、下がれ!」
光明の言葉に、射撃をしながら後退する政斗。政斗のワイヤーに、別のくるみ割り機械人形が引っかかり、突進してきた別のくるみ割り機械人形が衝突した。
「馬鹿モノ! 止マルナ!」
「トラップダ! 全員回避セヨ!」
もたもたするくるみ割り機械人形の間合いに、光明が飛び込んだ。
「その業喰わせて貰う」
刃が閃いた。
「さぁ、貴様の業を数えろ」
業欲の翼が、くるみ割り機械人形に襲いかかる。
「侵入者メ、オトナシク降伏セヨ!」
ワイヤーに雁字搦めになった人形の叫びは、光明に全身をズタズタにされたところで終わった。衝突したくるみ割り機械人形も、モタモタしている間に光翼が襲いかかり、回避しようとしたが攻撃が命中すると、ガチャガチャとサーベルを振り回しながら崩れ落ちた。
「やったか?」
「そういうのをフラグっていうんだって」
政斗の言葉に真顔で答えるアナスタシア。
●脱出のために
光明達がラボAの入り口で殺到するくるみ割り機械人形と戦う中、木綿紀は別の入り口から来ると予想される敵を足止めするために、トラップの生成を急いでいた。
「敵ハ、ラボAダ! 進メ! ネズミヲ見ツケ次第射殺セヨ!」
ガシャガシャと機械的な足音を立てて、くるみ割り機械人形が殺到してきた。
「来たか」
木綿紀の目の前で、サーベルを振り上げたくるみ割り機械人形が、粘着した床に足を取られて切っ先があさっての方向へ向いた。前に進めなくなって足を剥がそうとするくるみ割り機械人形に、木綿紀のパラドクスが発動する。
「世界は布、私は糸、魔の針に従い私で彩る」
ワイヤーに体を取られたくるみ割り機械人形が、四肢を切断されて壊れた人形のように崩れ落ちる。が、すぐに別のくるみ割り機械人形が現れる。木綿紀のワイヤートラップに引っかかって次々と粘着した床に転倒するくるみ割り機械人形。だが、その背中を踏み越えて、木綿紀にサーベルを振り上げて突進してくる
「侵入者ダゾ」
「突撃! トツゲキ!」
パーテーションの影から飛び出した影が、くるみ割り機械人形をふっ飛ばした。それは後続のくるみ割り機械人形を巻き込んでパーテーションごと床に叩きつけられた。
「悪いな。ここから先は通行止めだぜ」
亜唯の一撃で、くるみ割り機械人形の一体の首があらぬ方向に向き、「トツゲキ! トツ……ゲ……」と割れた声をあげたまま動かなくなった。
「早クオキロ馬鹿モノ!」
「敵ハ向コウダゾ!」
絡み合ったままドタバタと粘着した床の上で右往左往するくるみ割り機械人形たち。トラップを逃れたくるみ割り機械人形の一体に、亜唯のサバイバルナイフが背後から襲いかかり、その首に突き立てられた。くるみ割り機械人形はそのまま動かなくなった。
「亜唯さん! 行くよ!」
亜唯と木綿紀はその場から逃げ出した。
●炎上
「木綿紀嬢、無事か?」
駆け込んできた木綿紀と亜唯に、政斗が声をかけた。無言で頷く木綿紀。
「こちらは大体片付いた。次はどうする?」
光明の耳に、くるみ割り機械人形の怒号が向こうから聞こえてきた。
「ここから逃げる」
木綿紀の言葉に、アナスタシアが尋ねた。
「まだ敵は残っているみたいだけどいいの?」
「大丈夫。細工はした」
「なら、長居は無用だな」
「待って。亜唯さんと政斗さんにやってもらうことがある」
「俺?」
政斗が自分を指さすと、木綿紀は頷いた。
ラボを飛び出したディアボロス達が、廊下を走る。亜唯が入ってきた入り口とは反対のラボBのドアへと走り、緊急開錠で開いたままのドアを閉めた。
「ドアは閉めたぜ!」
「よし。こっちも出来た」
政斗は全員がラボを出たのを見届けると、ドアを閉めた。ドア回りにワイヤーのトラップを仕掛け、木綿紀がダメ押しとばかりに粘着床のトラップを仕込んだ。政斗と木綿紀は頷くと、その場から駆け出した。
「あのまま残りの人形を殲滅しなくて良かったのか?」
光明の問いに、木綿紀は答えた。
「あのまま戦っていたら、煙に巻かれる危険性があった。人形達は大丈夫かもしれないが、私達にはリスクが高すぎる」
なるほどと頷くアナスタシア。木綿紀はわずかに口の端をあげた。
「どのみち、彼らは助からないけど」
粘着した床のトラップから脱出に成功した数体のくるみ割り機械人形達は、自分たちの任務を遂行すべく、パーテーションをけ破りながら、炎上するラボの中を捜索する。
「敵ハ逃ゲタゾ!」
だが、ドアを開けてラボの外へ出ようとしたが、今度はドアが開かない。サーベルを叩きつけて、ドアを開いたくるみ割り機械人形達を待っていたのは、政斗と木綿紀が仕掛けたトラップだった。ドアから外に出ようと殺到する彼らの背後で、いきなり火勢が強くなった。
「?!」
小さな爆発が立て続けに発生し、くるみ割り機械人形達が最後に見たのは、ラボ全体に広がった黒煙に引火し、ラボに置いてあった引火性物質が入ったドラム缶の上に木綿紀が仕掛けた手榴弾が次々と爆発して、ラボ全体を包み込んだ紅蓮の炎だった。
●ボス臨場
アナスタシアが、最後に劇場のステージに上がった時、床下で地響きのような音がした。
「引火……したかも」
ぼそっと呟いた木綿紀に、アナスタシアが木綿紀の顔を見た。
「もしかしてこれを見越して?」
「うん」
「あの爆発だと、多分誰も助からないだろうな」
政斗は、劇場に降りる地下室へ続く階段の入り口に転がったままの、両足を失って絶命した白衣姿の男の死体を見た。
「研究員もこうなると、同情したくなるかも」
「己のミスで招いた失態だ。同情などいらぬ」
政斗はどこからともなく聞こえた女性の声に、背筋がぞわりする感覚を覚えた。
「下がって!」
亜唯が怒鳴ると、全員がステージの上から飛びずさるように離れた。轟音と共に、劇場のステージの上に鎮座していた裸体像が、木端微塵に吹き飛びんだ。
「ほう。これをかわすか」
ステージの上に立っていたのは、巨大な鉄球のついたメイスを持ち上げた、白髪の女性だった。
「私が馬鹿どもの尻ぬぐいをさせられるとはな」
「ツェツィーリエ!!」
誰かが叫んだ。
「ふむ。私の名前を知っているとは幸運だな」
女性は、冷たい視線をディアボロス達に向けた。
「お前達は私の名前を胸に刻んだまま死ぬのだからな」
光明はちらりと劇場の外へ通じるドアを見た。
「案ずるな。外へ出ろ。お前達に引導を渡してやる。それともステージの上で無様に死ぬ方がお望みか?」
ツェツィーリエは自信たっぷりにメイスでドアを差し示した。
「光明さん」
身構える木綿紀に、光明は冷静に答えた。
「大丈夫だ。奴もここでは自由に動きにくいからだろう。俺がしんがりを務める。木綿紀はみんなを外へ」
鯉口を切って身構える光明に、木綿紀は無言で頷いた。アナスタシアがMG42の銃口を向けたまま後退し、政斗と亜唯がツェツィーリエを睨みつつ後ずさりしながら劇場の外へと出ていき、最後に光明とツェツィーリエが残される。
「ふん。貴様のような者が私の部下に欲しかったな。名は?」
自然と背筋が伸びた光明は答えた。
「龍統光明だ」
「覚えておこう。最初に殺してやる」
光明は、劇場を出た。
静まり返った深夜の劇場前の広場に、対峙するディアボロス達とツェツィーリエがいた。
「さあ、来るがよい。私はあの馬鹿どもとは違うぞ?」
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
【飛翔】がLV2になった!
【トラップ生成】がLV2になった!
【冷気の支配者】がLV2になった!
【建造物分解】がLV2になった!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【ドレイン】がLV2になった!
【ロストエナジー】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV3になった!
龍統・光明
『その業喰わせて貰う。さぁ、貴様の業を数えろ……』
ドラゴニアンのガジェッティア × レジェンドウィザード
性別:男
口調:俺、呼び捨て、だ、だな、だろう、なのか?
特徴:基本冷静沈着。但しノリは良い。
普段二刀流と蹴術を織り交ぜる戦闘スタイルだが、
AS展開時は一転二丁銃と羽形ブラスターを操り戦う。
基本回避優先で防御の際は左腕を盾代わりに使う
常にクールである事に努めており、他に迷惑をかけない様に心掛けている
例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!(NG:ギャグ・コミカル)
ハーナ・ルーデル
ここで会ったが百年目、我が故郷に蔓延るクロノヴェーダに鉄槌を喰らわせてあげるわ。
【飛翔】を生かした【急降下爆撃】で跡形もなく吹き飛ばす!
凪沙・悠璃
……どうやら、残りは彼女だけのようだな。
光学迷彩を纏い、建物の屋上等から広場を俯瞰。
敵の一挙手一投足を観察し、動きの癖や呼吸を見ながら攻撃の機を窺う。
先ず携える武装は洋弓。
気配を消して息を潜める。
"天視の瞳"を行使し、捉えた隙を見逃さずに一射。
そうすれば、敵は必ず此方へ攻撃を仕掛ける。
パラドクスによって仲間と共に、得意な近距離戦を。
残念だが、それは読めている。
遠距離で戦う武装しかないとは、誰も言っていないが。
俺は、この刀の方が慣れていてな。
一撃の威力は君に劣るが、技巧と速さでは負けていない。
攻めるべき一手、回避すべき間隙、防ぐべき最適解。
瞳に、耳に、刀を握る手に、交わされる応酬の全てを映す。
セーミス・エセーニン
地上で念のため人払い(件の研究員3人は除く)をしていたら遅れてしまいました
案の定地下で派手にやったようですし……
さて、見眼麗しい……割には口汚い首魁のご登場ですか
無能の下には無能しか残らない事が理解できているのですかね
道具の性能を言い訳にするのは見苦しい
反革命分子らしく粛清されていただけると助かるが
正面切っての戦闘は不得手故、他の方々に任せ
多少の傷は厭わないので、味方の攻撃のチャンス、サポートとなるよう動きましょう
敵の近接格闘に対応しつつ、【泥濘の地】【トラップ生成】を用いて敵への不意打ちや
気づかれぬよう【光学迷彩】忍び足、暗殺を以て
味方の攻撃の合間を縫いつつ呪詛を伴ったナイフで攻撃を試みます
望月・百代
ツィツィーリエ、あれがここの所長格というやつか
研究者どもの始末をつけた後、念のためにと隠れたが…視認されなかったのは幸運というべきかね?
【光学迷彩】で隠密継続
敢えて建物の中からは出ず、窓や扉越しに戦況を把握
タイミングを見計らい、狙うは致命の一射
前兆は【泥濘の地】と【トラップ生成】
この組み合わせでまずは足を止める
攻撃のために振りかぶった瞬間でも狙えば…自分から力強く踏み込んでくれるだろうよ
罠で動きが止まった瞬間に神出鬼没の光学幻影を射出
劇場入口から刺客が飛び出したと見せかけ…本命は【建造物分解】で射線を通す銃眼を作っての狙撃
トドメか、あるいはそれに繋がれば十分
さて、意識外からの一撃はいかがかね?
エンデ・トロイメライ
アレが親玉かぁ。随分と偉そうだねぇ。
まあ態度はどうでもいいや。それじゃ、さっさと潰そうか。
FLUGEL起動、出力最大。
高速で飛び回りながらすれ違い様に手足や首の関節部分をナイフで切り裂き削り取っていく。でもこれは下準備。
敵が速度に慣れて反撃を狙ってきた瞬間、更に速度を上げてその隙を突く。
ナノマシンから作り出した武器をサーベルに再構成。
速度を乗せた一閃で背後から切り裂くよ。
首を狙いつつ致命傷になればそれでもいいや。
別にキミに恨みはないんだけどさぁ。まっ、色々と今後のために邪魔だし?
そういうわけで、死んでよ。
新堂・亜唯
……こいつが、ツェツィーリエってやつか。
見た目は奇麗なのに……伝わってくるプレッシャーは半端じゃない。
間違いなく、アヴァタール級なんだな。
広場に出してもらえたのは幸運だったか……それとも、奴自信も戦いやすい場に誘導されちゃったのか……
こう正面から対峙しちゃった以上、考えても仕方ない。
仲間を信じて、力を振り絞るだけだ!
あのメイスは、格闘が苦手な仲間が食らうとヤバそうだな……。
これでも頑丈さには自信がある。俺が前衛に出て殴り合うよ。
一度メイスの間合いのさらに内側へ踏み込めれば、そこは拳が活きる距離。
俺の用いる一番強い拳打、【螺月流・鋼鉄拳】で……撃ち抜いてやる!
アナスタシア・コルヒドレ
確かにきれいな人、それでいて強いんだろうね。記憶がなくて怖いと思っても、体は倒せと疼いてる。
記憶に少し浮かぶ赤い国旗が、あなたをねじ伏せろって!
は、ハーナさん!
一緒の戦場になるなんて……とっても心強いよ!
ハーナさんが爆撃を繰り出すなら、私はそれを支援するよ!
【トラップ生成】で油罠を仕掛けて、さらにそこに【泥濘の地】を重ねる。
仕掛けた場所へ誘導すべく、MGや煙幕で攻撃仕掛けつつ【大声】で注意をひくよ。
罠にかかって油と泥に拘束されたなら、ハーナさんの爆撃に合わせて私もСиняя вспышкаを放つよ!
空と地上、両方からの爆撃を喰らえ!!
高吉・政斗
凄く危なかった!
背筋が凍るLV位に危なかった!
総力戦…ってやつか?
(地面を触って)
よし!この地面なら充分だ。
拳銃型から擲弾筒付き自動小銃型に変形っと。
擲弾で8、小銃弾は6かな?(…カチカチっと目盛りを弄る)
さて皆は結構搦め手してくれるから、俺は純粋なドックファイトでもしよう。【トラップ生成】を仲間が繰り出すから上手く邪魔しない様に立ち回ろう…取りあえず基本戦法は…
・中距離を保つ集中射撃。(直接・間接)
・相手の懐に飛び込み近距離擲弾発射後上空【飛翔】離脱。
・距離を保ちながらもツェツィーが迫ってきたらギリギリまで誘き寄せて【飛翔】ステップ。
これ等を繰り返そう
はは、俺は弱いからね?皆で戦うぜ?。
●ラスボス
「すごいな……これがボスか」
悠然と現れたアヴァタール級クロノヴェーダ『ヴィクター・ブラウト『ツェツィーリエ』』の姿に、高吉・政斗(人間のデジタルサマナーガジェッター・g00900)は目を奪われた。
「こいつが……ツェツィーリエか。見た目は綺麗なのに」
新堂・亜唯(ライトニングハート・g00208)は、銀髪の女性が放つプレッシャーに拳を握りしめる。
「地下から出てきたというボスが……貴女ですか」
劇場周りの人払いを終えて駆けつけた、セーミス・エセーニン(собака・g05311)が見たのは、劇場から悠然と出てくるツェツィーリエの姿だった。ディアボロス達に囲まれて、絶対的な不利のはずなのに、全く動じる気配がない様に、セーミスは、身が引き締まる気がした。
「見目麗しい……と言いたいところですが」
彼は端正な顔に渋い表情を浮かべる。
「言い訳が見苦しい。素直に粛清されていただきますと助かるが」
「確かに綺麗な人。それでいて強いんだろうね」
アナスタシア・コルヒドレ(蒼炎の閃光(ひかり)・g00340)は、ツェツィーリエが現れた時から、体の震えを止めることができなかった。
「記憶がなくて怖いと思っても……体が倒せと疼いてる……記憶に少し浮かぶ赤い国旗が、貴女をねじ伏せろって!」
アナスタシアは、無言でBlaue Flammeに手を掛けた。
「来たか。ヴィクター・プラウド『ツェツィーリエ』!」
龍統・光明(千変万化の九頭龍神・g01001)は、静かにツェツィーリエをにらみつけた。
「貴様に引導を渡す」
「ふん……言葉だけは勇ましいな、龍統光明」
ツェツィーリエは鼻を鳴らすと、ディアボロス達を見た。口の端を吊り上げると、言った。
「来い。ネズミ共」
「あれがここの所長格というやつか」
一同から少し離れたところで、一人息を殺す人影があった。
「さて、どう出るかな」
望月・百代(月輪七曜・g02747)は、ライフルの薬室に初弾を送り込んだ。一発で決める。彼女はスコープを覗き込んだ。
時を同じくして、息を殺す人影がもう一つ。
「残りは彼女だけのようだな」
凪沙・悠璃(水底の薄明・g00522)は、百代とは別の場所に隠れていた。既に互いの位置は把握済みだ。
「あとは……待つのみ」
「まもなく目標上空だよ!」
エンデ・トロイメライ(エピローグ・g00705)の言葉に、無言で頷くのは、ハーナ・ルーデル(空の魔王・g00608)。
「見えた!」
エンデの眼下に、なぜか不思議と明るい劇場前の広場に、ひときわ大きな女性の人影と、それを取り囲むディアボロス達が見えた。
「ここで会ったが百年目。鉄槌を食らわせてあげるわ」
ハーナが身を翻すと、エンデがそれに続いた。
●苦戦
「くっ! 強い」
唸りを上げて飛んでくるツェツィーリエのメイス。亜唯は、それを巧みにかわす。彼の攻撃のダメージは確かに通っているが、ツェツィーリエはそれをものともせずに巨大な円球のメイスを振り回す。恐ろしいほど正確に、確実に殺しに来ているツェツィーリエの幾度目かの攻撃を紙一重でかわす。はたから見ると、悠々とかわしているように見えたが、亜唯本人からみるとギリギリだった。敵の攻撃が当たらないのが唯一の救いだが、当たるとひとたまりもないということは亜唯が一番理解していた。
「少年、筋はいいが、まだまだだな」
ツェツィーリエは、余裕の笑みを浮かべる。
「せめて間合いに飛び込めれば」
ツェツィーリエをにらみつける亜唯。
「総力戦って奴かコレ?」
政斗は呟きながらガジェットコアをいじるのに忙しい。亜唯達がツェツィーリエと対峙しているが、決定打を決めかねていた。
「擲弾で8、小銃弾は6かな?」
手元の目盛りをいじりながら、準備を終えた政斗は言った。
「はは。俺は弱いからね? 皆で戦うぜ? いつまでも余裕ぶっこけると思うなよ、ツェツィー」
「ッ……!」
光明とツェツィーリエの影が交錯する。
ダメージは通ったが、光明の鼻先をかすめるようにして蹴り上げられたツェツィーリエのヒールが、光明の髪の毛を削り取った。
「強い」
「ハハハ、早く引導を渡してくれ。でないと、貴様死ぬぞ?」
「お前が死ねよ!」
政斗は、ツェツィーリエの間合いに飛び込んだ。自分が求めた間合いに足りなかったが、躊躇する暇はなかった。自動小銃の擲弾筒が火を噴き、擲弾はツェツィーリエに命中するとみるみる冷気を帯びた。
「それで攻撃のつもりかッ!」
ツェツィーリエのフロイライン・アーツが、政斗に襲いかかる。風のように飛んできたツェツィーリエの足攻撃を、慌ててかわして飛翔で逃げる政斗。小銃弾を浴びせることも忘れない。
「女で格闘技使えるとかどこの格ゲーだよ!」
「逃げ足だけは早いな。む?」
ツェツィーリエの顔から笑みが消え、不意に頭上を見上げた。
●航空支援
膠着するかと思われた戦場をひっくり返したのは、二人の航空突撃兵だった。
「アレが親玉かぁ。随分とえらそうだねぇ」
エンデの目がすっと細くなる。
「まぁ態度はどうでもいいや。さっさと潰そうか……FLUGEL起動」
蹴とばされるように、加速するエンデ。突っ込んでくる黒い機体に、ツェツィーリエは身構えた。交錯する黒と銀。火花が散り、エンデのナイフがツェツィーリエを切り裂こうと試みる。
「出力最大、ついてこれるかな?」
その呟きは敵に対してか、それとも自分に対してか。暴力的なまでに加速したエンデのサーベルの一撃が、ツェツィーリエが振り上げた足の装甲板を吹き飛ばした。
「くっ」
「かわすんだこれ」
エンデは明るく笑った。
「首を狙ったのにざーんねん」
「捉えた!」
劇場の広場へと、急降下で突っ込むハンナ。その機影を見て目を丸くしたのはアナスタシア。
「は、ハーナさん?!」
アナスタシアは緊張が一気に解ける気がした。
「一緒の戦場になるなんて、とっても心強いよ!」
ツェツィーリエがハーナに気が付いて、巨大円球のメイスを身構え迎え撃とうとする。
「ハーナさん、支援するよ!」
アナスタシアが駆け出す。左腕のMG42が火を噴き、身構えたツェツィーリエに浴びせられる銃弾。
「来い、ツェツィーリエ! 私が相手だ!」
叫んだアナスタシアに、ツェツィーリエが驚くほどの早さで間合いを詰めてきた。
「愚か者がッ! 貴様から死ねッ」
だが、アナスタシアの目の前で突然足を取られるツェツィーリエ。
「トラップだとッ?」
強引に泥濘のトラップから足を引き抜いたツェツィーリエの眼前に、ハーナが突っ込んできた。
「最悪の日にしてあげる!」
ハーナの37ミリ機関砲が火を噴いた。ツェツィーリエに吸い込まれるように命中する砲弾。
「小癪なッ!」
轟音と共にツェツィーリエが振り下ろしたメイスを、するりとかわすハーナ。その瞬間をアナスタシアは見逃さなかった。
「駆け抜けろ、蒼の閃光ォ!」、
Blaue Flammeの刃が閃き、放たれた蒼炎の三日月がツェツィーリエに命中した。
「な、何ぃぃ?」
驚くほどの跳躍力を見せて後ろに飛びずさるも、ツェツィーリエの灰色のドレスは大きく切り裂かれていた。
「ハーナさん!」
アナスタシアに、ハーナはウインクをしながら二本指で敬礼をしつつ急上昇した。
●怒りの拳
ハーナとエンデ、そしてアナスタシアの攻撃で大きなダメージを受けたツェツィーリエを、一同は見逃さなかった。飛び出したのは亜唯。
「間合いに飛び込めれば!」
「まだ学んでないようだな、少年? ッ!」
ツェツィーリエが、足元の異常に気が付いたときには、その懐に亜唯が飛び込んでいた。彼女の背後に、口の端に笑みを浮かべたドラゴニアンがいたことにツェツィーリエは気が付いていなかった。泥濘に足を取られたツェツィーリエの眼前に迫るあどけない少年の瞳が、敵を捉えた。
「俺の拳、受けてみろっ!!」
亜唯の拳がツェツィーリエに叩き込まれると、華奢な胴体がくの字に曲がり、彼女のたわわな胸が大きく揺れたが、亜唯はそれに惑わされることなく、素早く飛びずさった。
「がはっ」
ツェツィーリエの端正な顔が大きくゆがんだ。
「小僧ぉ風情がぁぁっ!」
憎悪に満ちた表情でメイスを振り下ろす。かわした亜唯の足元に叩きつけられたメイスが、地面に巨大なクレーターを穿った。よろめきつつも態勢を立て直すツェツィーリエ。ほんの一瞬、棒立ちになった隙を見逃さなかったのは悠璃だった。限界まで引き絞った弓の一撃が、ツェツィーリエの肩を貫いた。悲鳴を無理やり飲み込んだツェツィーリエが、どこから矢を射かけられたのかと視線を走らせる。劇場脇の建物の屋上から、ふわりと飛び降りる悠璃の姿があった。
「理解できていますか?」
ツェツィーリエの背後から、セーミスがナイフを振り上げた。
「無能の下には、無能しか残らないのですよ? 貴女もその一人」
振り返ったツェツィーリエがセーミスに気が付いたときには、ナイフの一撃が、ツェツィーリエの背中に突き立てられていた。亜唯が間合いに飛び込めるようお膳立てしたのはセーミス。ツェツィーリエの踊るようなフロイライン・アーツを、巧みにかわすとセーミスはスーツの胸に手を当てて言った。
「そろそろおしまいにしましょう」
●銃声は響いた
ツィツィーリエの懐に、飛び込む悠璃。
「貴様ッ!」
「遠距離だけで戦うとは一言も言ってないが?」
ツィツィーリエは守勢に立たされていた。悠璃の一撃がツェツィーリエの体を切り裂く。
「俺は、この刀の方が慣れていてな」
幾多の犠牲者の返り血を浴びたドレスのような衣装に増えた血の色は、ツェツィーリエのものか。
「一撃の威力は君に劣るが、技巧と速さでは負けていない」
悠璃の攻撃で、倒れてもおかしくないはずなのに、なおもその動きに迷いがないツェツィーリエの前で、光明は刀の鯉口を切った。
「ツェツィーリエ……ここまでだ」
「ふん。貴様に倒せるか、この私が」
ツェツィーリエの鬼気迫る目と、光明の赤い瞳がぶつかる。
「その業、食わせてもらおう。参る!」
「来いッ!」
「さあ、貴様の業を数えろ」
光明の涅槃寂浄の一撃は、ツェツィーリエを袈裟掛けに斬った。
「まだ私は死なぬ!」
叫んだツェツィーリエの言葉が終わるのと同時に、一発の銃声が響いた。
百代は、これ以上のないタイミングで引き金を引いた。ライフルの薬室からはじき出された薬莢が煙を上げて宙を舞い、乾いた金属音と共に地面に落ちた時、銃弾はツェツィーリエの眉間を貫いていた。
「な、なん……だと?」
思いもよらない方角から飛んできた一撃に、ツェツィーリエの顔に驚愕が浮かぶ。次弾が装填されたライフルを構えたまま百代は呟いた。
「意識外からの一撃、いかがかね?」
彼女は、スコープの向こうで崩れ落ちるツェツィーリエを確認すると、ライフルに安全装置を掛けた。
●瞑目
「別にキミに恨みはなかったんだけどさぁ。まっ、色々と今後のために邪魔だったし?」
目を開いたまま動かなくなったツェツィーリエに呟くエンデ。彼女の口調の明るさに、かすかに別の感情がにじんでいるようだと悠璃は感じた。
「このボス、背筋が凍るレベルくらいには危なかった!」
安堵の溜息をつく政斗。
「ひとまずはこれで一件落着かのぅ」
百代が言い、光明は膝まづいてツェツィーリエの見開かれた瞳をそっと手で閉じた。胸に手を当てて敵に瞑目するセーミス。
「これで終わりじゃないんですよね?」
「そうね」
アナスタシアの言葉に頷くハーナ。
「帰ろう!」
亜唯の明るい言葉に、全員が頷いた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【一刀両断】LV1が発生!
【熱波の支配者】LV1が発生!
【未来予測】LV1が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
【光学迷彩】がLV2になった!
【神速反応】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
【飛翔】がLV3になった!
【冷気の支配者】がLV3になった!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
【ロストエナジー】がLV4になった!
【ダメージアップ】がLV4になった!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【アヴォイド】がLV3になった!
【能力値アップ】がLV3になった!