リプレイ

●爆撃は静かに襲いかかる
　高層ビルの並ぶオフィス街。そのビルに囲まれた路地裏にディアボロスたちが集結していた。
「おお、集まってるねぇ」
　双眼鏡を取り出して覗いているのは一里塚・燐寧（粉骨砕身リビングデッド・g04979）。そこには、ビルの開けた場所に集まっている天使、『静謐のクリアホワイト』たちの姿が映し出されていた。
「ふん、逃げ隠れるなどドラゴンの戦い方ではないが……まあ良い」
　リューロボロス・リンドラゴ（ただ一匹の竜・g00654）がつぶやく。
　竜とは洞窟に潜むものである。何より、虎ノ門という地名を彼女は気に入っていた。
　竜と並び立つ存在である虎の名を冠した地の力を借りて行う戦い、心躍らないはずがない。
「浄化とか怖いからネ。ギリギリまで気付かれないように気をつけよウ」
　ラウム・マルファス（研究者にして発明家・g00862）も敵を確認しつつ、フライトドローンを呼び出した。その一つにラウムが乗り、その他のドローンには爆薬を積み込む。

　広場にはビルで少しだけ死角になっている箇所がある。
　ディアボロスたちは静かにそこまで近づくことにした。
　ラウムはドローンに乗って、リューロボロスは飛んで、燐寧はビルの地形を利用して影から影へ素早く、三者三様に移動する。
　三人が様子じっと息を殺して待っていると、天使たちの一部が死角の方に近づいてきた。何か話し合いをしているらしいが、声が小さくて聞こえない。
（「こちらには気づいていないようですネ。今がチャンスですヨ！」）
　ラウムがスマホでドローンに指示を出すと、ドローンたちが一斉に天使たちに向かって大量の悪魔爆弾を放った。

　広場の一角に爆発が起き、天使たちの中に動揺が走る。
　しかし訓練された彼女たちは不測の事態でも即座に対応し、爆破の箇所に向かって聖なる歌声を上げた。
「おお、我らの神よ、愚かな者に慈悲を……」
　爆音によっていくらか軽減されているが、その浄化の力はディアボロスたちの耳にまで届く。
「離れていてよかったネ。近くにいたらすぐ攻撃をやめていたヨ」
　ラウムは自分の心が浄化で洗われていくのを感じながらも、なんとか耐えてドローンに指示を出して爆撃を続けていた。

　爆撃の混乱もあり、天使たちは敵の正確な位置をつかめていないようだ。
「仲良く歌ってるとこ悪いけど、ここらで黙って貰うよぉ」
　燐寧は今が好機と死角から飛翔怨斬を繰り出す。彼女の振るった巨大鎖鋸剣から発生した紫色の剣閃が、天使たちのいる地点に瞬時に現れて斬りつけていく。
「この攻撃はどこから……！？」
　瞬時に、天使たちの周囲に現れた聖なる光の剣が剣閃を防ごうとするが、全てを受け止めることはできない。何人もの天使がその場に倒れていく。

「敵は完全に身を隠しています。このままでは……」
「祈るのです。聖なる刃が、必ず敵を切り裂くでしょう」
　天使たちのリーダーが冷静に指示を出す。
　天使たちの祈りで空中に浮かぶ剣が次々に増えていく。この剣は近づく敵を自動的に攻撃する。剣が増え続ければいずれディアボロスたちにも命中する可能性がある。
「囲まれる前に、もう一撃だ！」
　最後の大技を、とリューロボロスが全身に力を込め、広域殲滅ブレスを天地たちに浴びせる。
　天使たちが炎で焼かれるのみでなく、熱風と衝撃波により広場の一部が破壊され、視界が塞がれる。

「よし、これくらいで一旦退こうカ」
　ラウムが呼びかける。今なら爆風で巻き起こった粉塵で敵に見つかることはない。
「おっけー」
「うむ、一撃離脱戦法、というわけだな」
　燐寧とリューロボロスも同意して即座にその場を後にした。
　広場にいた天使たちが敵を探せるようになった頃には、彼らの姿は跡形もなかった。






●それぞれの思いを込めた戦い
　虎ノ門の一角に天使『静謐のクリアホワイト』たちが集まり、侵攻の準備を進めていた。
　その様子を、ビルの間からディアボロスたちが見据えている。
「あれが天使たちか。後のことを考えるとここでできるだけ殺しておきたい」
　八雲・祥華（邪霊使い・g04716）は敵を確認しながらつぶやく。
　ここ以外にも天使たちは大勢いる。できるだけ数を減らしておこうと彼女は考えていた。
　また、ここでディアボロスの力を示すことでクロノヴェーダたちに敵の脅威を認識させておくことも大事だ。
「そうですね。あとは私達ディアボロスの広報活動も忘れないようにしましょうね」
　マイア・プレアデス（黄泉の華・g03450）が付け加える。
　ディアボロスたちの活動を新宿島の住民に広く知らしめることは、これからの戦いにおいてきっと役に立つはずだ。
「では行きましょうかぁ、天使狩りですぅ～」
　すでに戦闘態勢に入っていた悠々・優（紺碧の大翼・g05177）がさっそく、建物の影の間に隠れながら敵の集団へと近づいていく。本人も天使なのだがそこはいいのだろうか。

　集団から少し離れていた一群に優は近づき、不意打ちのデストロイスマッシュを放つ。
　渾身のハンマーの一撃が、一人の天使を打ち飛ばした。
「どこの部隊の者だ！？　いや、敵襲だ！」
　天使たちは彼女を最初仲間だと思って油断したが、すぐに敵と判断し、攻撃してきた。
　優は飛んでくる光の剣を避けながら、即座にその場を後にする。
「天使も、戦争も、争いなんて嫌いです」
　それでも一番に切り込んでいく優。その動きをパラドクス通信で捕らえていたマイアは、混乱が生じた隙に次の攻撃を仕掛けることにした。
「ミコさん、今よ！」
「もきゅ！」
　モーラット・コミュのミコが建物に立っていたアンテナに近づき、そこから火花を散らす強力な電撃を放つ。
　アンテナの周囲にいた天使たちに電撃が命中する。
「神よ、私達をお守りください……」
　電撃に耐えて残った天使たちが祈りの声を上げる。彼女たちの翼が光り輝き、光弾がミコに向かって放たれた。ミコは急いでアンテナから離れ、マイアの元に戻ってきた。
「もう大丈夫ですよ、ミコさん。大勢の天使と戦う姿、きっと新宿島の人たちも勇気づけられるはず」
　マイアがミコをなでて安心させる。暫くして落ち着いたらまた別の箇所から攻撃を仕掛けることにした。

　天使たちが混乱している間に祥華は別の一群へと近づいていた。
「さあ、情火で身も心も燃え上がれ」
　浅葱色の炎でビルの合間にあるオブジェクトを燃え上がらせると、天使たちのざわめきが広がる。
「敵は複数います、気をつけなさい」
　天使たちが警戒して周囲を飛び回る。飛びながら祈る彼女たちの周囲に光の剣が出現しはじめた。
　祥華は隠れて剣に狙われないようにしながら、炎を天使たちに当てて撃ち落としていく。
　炎、電撃、槌と多様な攻撃で天使たちを撃破していくディアボロスたち。
　彼女たちの奮闘はきっと新宿島の人々にも伝わるだろう。

　戦いに身を投じていた優は、飛んできた光の剣が僅かにかすってしまう。
「このくらい……多少は耐えられますぅ」
　天使である彼女は浄化されてもいくらか耐えていた。しかし剣の数はこのままだと増えるばかりだ。
「これ以上は危険です。撤退しましょう」
　マイアが祥華と優に提案する。
「では、後は私に任せて」
　祥華が殿で追撃を仕掛けてくる天使に炎を浴びせて応戦しながら、二人を先に撤退させる。
　最後に祥華もパラドクストレインに乗り、全員無事に帰還を果たした。
　彼女たちの連携により、天使たちの部隊は大きく数を減らしたのであった。

最終結果:成功
完成日	2021年12月14日