リプレイ
平良・明
高排斥力、いわば終電越えの列車ですが、よく楽しんでいきましょう
それに、強くあらねばいけない理由も出来ました。
ただ単に観光とも言っていられません
暗い方の道を行きます
そして、暗いからといって、明るく照らすのは趣味ではない、ので
今日も完全視界を使って臨みましょう
目に見えるものだけは鮮明です
音をたてないように忍び足で
この先にいるのが墓守なら
私は何を語りかければいいのでしょう
答えの出ない思考は捨てて
観ずる所に道がある
ぐるぐる回る思考は行き止まりです
それが何でもよく観察できれば
何か開けもするかもしれません
リターナーを見つけたら
気が付かれない程度に接近して様子を伺います。
それにしても疑問を持つことは大事です
●堂々巡り
エジプトといえば、ピラミッド――ピラミッドといえば、お墓。
そういった有名な場所ではないが、ネクロポリスやカタコンベの一種として、実に趣深い場所であると、パラドクスレインを降りた平良・明(時折の旅行者・g03461)は思うのであった。
「高排斥力、いわば終電越えの列車ですが、よく楽しんでいきましょう」
(「――それに、強くあらねばいけない理由も出来ました」)
特別列車が走っている間にしか出来ぬ旅だ。
ぽっかりと深淵を覗かせている人工洞窟に目を向け、微笑む。
「ただ単に観光とも言っていられませんからね」
さて、と呟く彼が身を置くのは、真っ暗闇の道。
暗いと聞いて挑むのだから、灯りの一つも携えるのが賢い選択だろう――と、自覚しつつも、明は手ぶらであった。
(「暗いからといって、明るく照らすのは趣味ではないので」)
現状、彼の目に、闇は影響していない。
壁の染みまで見える、というのは流石に嘘だが、意図的に光を取り込まぬよう設計された石積みの通路には黒い塗料が塗られている。
時折ひっそり描かれたホルスの目を発見し、異国情緒を感じ――いやいや、今日は観光気分ではなかった、と静かに首を振る。
音を立てぬよう歩きながら、明はつと思案する。
「この先にいるのが墓守なら……私は何を語りかければいいのでしょう」
――考えても、答えなどない。
この思案こそ、出口のない迷宮のようなものである――不毛だと、頭を振って中断する。
「観ずる所に道がある」
意識を変えるべく、零した通り。
明は目を凝らし、一見、なんの変化のない通路を見つめる。
すると、不意に。壁に描かれたホルスの目が増えている事に気付く。
ただの絵に違いはないが――彼は足を止めて観察する。本来視認できぬ色を見いだせる状態だからこその、発見だった。
隙間がないはずの壁に耳を当てれば、風が漏れる音を聞き取り、明は面白そうに目を瞬かせた。
「なるほど、防衛を考えるならば、背後をついて襲いかかる道も必要ですよね?」
見つけた解に相好を崩す。きっと、近道になるに違いない。
それにしても、と明は誰にでもなく呟く。
「――疑問を持つことは大事です」
彼らは、疑問を持ってくれるだろうか。
――今のところ、すべて闇の中、だ。
大成功🔵🔵🔵
効果1【完全視界】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
平良・明
見るもの見ましたし、急いで奥に向かいましょう
そうしないと色々とまずい気がしてきました
完全視界でつまづきやしないですから
ダッシュで走ってとりあえず奥の方へ
そして、襲撃用の通路があるという事は
こちらの通路にも墓守側の方々が出張ってくるということ
そもそも私は盗賊などではありませんし
基本的に旅行者風情、忍び足等する必要無いのです
挨拶もまだですし、ここは一つ盛大に洞窟を震わせましょう
こんにちは!
と、大声で奥に向かって叫び
足りないなら装備の鍋を叩き、おびき寄せを試みて
ええ、相手が戦士なら、正々堂々と
真正面から当たろうではありませんか
御守・樹
ゲームじゃないってのは重々承知してるがどうしたって重ねてしまう。
松明片手に散々歩き回ったもんな。
ありがたく【完全視界】を利用して視界確保。無かったら灯りを持参する必要があったな。
【忍び足】で足音を抑えながら探索を進める。
迷宮内部に痕跡って残しても大丈夫なんかな。わかりやすい目印とかは避けたいから、なるべく記憶するようにしておくか。
幸い方向音痴でもないし、歩数と曲がった方向・角度を考えればそこまで酷い事にはならんだろ。
問題は何と言ってリターナー達に話しかけるかだが、本音を言うと好奇心で来てるのもあって後ろ暗さはあるんだよな。
でも彼らを競わせて覚醒させようってのは蟲毒みたいで気分は悪い。
●迷宮の果て
「ゲームじゃないってのは重々承知してるが……」
周囲を見渡し、御守・樹(目指すは无二打・g05753)は囁く。
静かな石造りの通路。異国の香り――資格は闇を知らぬように冴えているが、ゆえに壁面がありありと見え、現代と異なる時代を感じる。
そしてそれらが樹に連想させるのは、ゲームの世界。
「松明片手に散々歩き回ったもんな」
懐かしさに、笑みがこぼれる――その経験がいかせるといいが。
もっとも今は松明を持たずとも、視界は確保されている。
(「……無かったら灯りを持参する必要があったな」)
パラドクスの力に感謝しつつ、足音を立てぬよう静かに歩く。
(「迷宮内部に痕跡って残しても大丈夫なんかな……いや、排斥力で、なかったことになるんかな」)
息も顰めて、極力音を立てぬよう、真っ直ぐの道を只管進む。
その最中に、何かの変化があったとして、それを見逃さぬように。その辺りのコツはゲームで学んだので、お手の物――現実でもそうであればという前提はあるが。
実際、こういうマップをじっくり探った経験からすれば、拍子抜けするほど何もない。勿論、暗闇をただ歩かされる通路なのだとは聞かされているとはいえ、樹は怪訝そうに表情を動かした。
セオリーで行けば、こっそり敵が忍び寄ったりするものではないか。
(「リターナー達は既に、手一杯なのかも」)
墓守と、探索者が接触していたなら、そういうこともあり得よう。
或いは未だ配置についていないのかもしれぬ。
その時、前方に人影を見る。
「見るもの見ましたし、急いで奥に向かいましょう」
先行していた平良・明(時折の旅行者・g03461)が、そう呟いたところに、居合わせた。
顔をあげた作業着の青年は、はっと息を呑み――樹の姿を認めて、安堵の息を吐いた。
「これはこれは、お仲間とは心強い」
そう告げるも、急いで先に進まねば、といった様子の明に、樹は首を傾ぐ。
何故かと問われた明は、「ご存じかもしれませんが」と前置きしつつ、発見した隠し通路の存在を示唆する。
明に促され、その地点から歩き始めながら、樹は彼の意見を聞く。
「襲撃用の通路があるという事は、こちらの通路にも墓守側の方々が出張ってくる可能性があるかと」
「そうか? 派手に短縮通路を駆け抜けているリターナー達の方が目立つと思うんだが……道があるなら、襲撃もあり得るか」
彼の主張を、明確に考えすぎだと否定はできぬ。認め、樹は肯く。
「まあ、取り敢えず。闇だけがこの道のトラップならば、走り抜けてしまって良いと思うのですよ」
それもそうか、と思う。樹としては、それでも物音を立てぬ方が、平穏に近づけそうな気はするのだが、駆け抜けることの利点を否定できぬ。
「そもそも私は盗賊などではありませんし、基本的に旅行者風情、忍び足等する必要無いのです」
「……」
それはどうなんだろう。侵入者は、侵入者では。
などと思ったが、樹は童顔でも大人なので黙っておいた。しかし、今此所で大声で挨拶し、呼び寄せるというのはもう少し先にしたら良いのではと提案し、二人で駆け出す。
冷気が、風を切る二人を包む。砂漠の国だというのに、洞窟は冷えている――そんな事にも、好奇心を働かせながら、樹はその先のことを考える。
先、即ち、リターナー達に遭遇したときの事。
(「問題は何と言ってリターナー達に話しかけるかだな……」)
樹が此所にやってきたのは、本音を言えば好奇心からだ。
後ろ暗さがないといえば嘘になる。
(「でも彼らを競わせて覚醒させようってのは蟲毒みたいで気分は悪い」)
止めねば。もし目の前の相手を説得できなくても、かつて救われた誰かを、救うために。
二人にとってはただ平坦な、暗き試練の道を駆け抜け。
やがて先へと進む洞を認めるや、明は笑いを零した。
ああ、どうぞ、存分に――樹は定まり切らぬ心を持ちながら、突然鍋を手にした明に首肯した。
息を大きく吸い込んだ彼は、躊躇いなく、声を張った。
「こんにちは!」
空気を震わせる大音声は兎角、更にがんがんと鍋を叩き始めたのに、樹も驚いた――その声に、すわ侵入者かと通路に転がり込んで来たのは。
競い合う、二種の異形。
ふわふわと浮遊する愛らしい生き物と。白き鰐。
どちらも、我こそがこの岩窟墳墓の真の守護者であると言わんばかりの様子で、ディアボロス達を睨んでいた。
しかし果たして、きちんと捉え切れているのであろうか。
まんまとディアボロス優位である暗闇のフィールドに彼らを誘き寄せた明は。
「ええ、相手が戦士なら、正々堂々と――真正面から当たろうではありませんか」
そう、朗らかに笑った。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【傀儡】LV1が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
ディアボロスに対峙するリターナー達は――半覚醒状態とはいえ、姿はクロノヴェーダに成り果て、そして明らかに理性的ではなかった。
「神の敵、殺す!」
「王の敵、殺す!」
侵入者に死を。
居合わせる仲間以外は全て敵だと認識している。
――本来、彼らの心に呼びかければ、元のリターナーに戻せるが。
ディアボロス達の言葉が持つ力は、弱い。
彼らの殺気を見るに、苦戦を覚悟し挑めば、漸く可能性が掴めるかといった様子であった――。
リゲル・ルッタ
許さない。
リターナーさんたちは、クロノヴェーダの素体なんかじゃ、ない
絶対に、助ける
切り拓いてくれた長く暗い道を駆け抜けて
墓守さん達の許へ
こんにちは
僕はリゲル、墓守で──今は夜盗かも、ね
あなたたちの尊厳を取り戻しに来た、から
神に仕え死後の世界への道行きを守り尊厳を奪わせないもの
それが墓守、僕も知ってる
でも、そのためにあなたたち自身が化物になってしまうのを、
あなたたちは一度でも望んだ?
あなたたちの尊厳は、守られている?
その格好で……その魂で、救われる?
そんな力に頼らなくとも、きっとあなたたちは立派な墓守だ
だからどうか、その力を拒絶して
僕も手伝う、から
不意打ちは神速反応で避けられるようがんばる
●願い
道中の無事を知るがゆえ、全速力で駆け抜けてきたリゲル・ルッタ(墓守・g03709)は――ひとたび、すっと息を吐く。
それは荒れた呼気を整えるためではなく、心を落ち着かせるためであった。
(「――許さない」)
リゲルの心に浮かんだのは、その一念。
(「リターナーさんたちは、クロノヴェーダの素体なんかじゃ、ない――」)
クロノヴェーダに仕えるリターナーが、その領域に到達することは、彼らにとっての本懐なのかもしれぬ。
だが、偽り、仲間同士を殺し合わせるようなやり方で覚醒することが、許されるのか。
「絶対に、助ける」
小さく。されど強く、リゲルは決意を言葉にした。
白鰐神は相対するモフィンクスとディアボロス、どちらにも獰猛な牙を剥き、進路を遮るように、睨みを利かせていた。視界も定かではないから、気を張り詰めているようだ。
この状況ならば、奇襲するのは簡単だ――だが、それはリゲルの望みではない。
澄んだ青い瞳で、闇に浮かぶような白鰐の体躯を見つめ、彼は声を掛ける。
「こんにちは」
穏やかな挨拶に、鰐たちは鼻白む。
四つん這いの姿勢からの警戒姿勢だ。臆さず、リゲルは続ける。
「僕はリゲル、墓守で──今は夜盗かも、ね。あなたたちの尊厳を取り戻しに来た、から」
静かに告げたが、彼らの警戒はますます高まったらしい。鱗に包まれた筋肉が隆起し、攻撃態勢に入ったと、解る。
だがリゲルは諦めぬ。
「神に仕え死後の世界への道行きを守り尊厳を奪わせないもの。それが墓守、僕も知ってる」
彼が常に纏う茫洋とした空気は消え、声音は凜乎と響く。
死者の住まい。この空気を、リゲルは知っている――此所が彼の故郷でなかったとしても。そんな空間だからこそ、伝えたいことを、堂々と告げられる気がした。
「でも、そのためにあなたたち自身が化物になってしまうのを、あなたたちは一度でも望んだ? あなたたちの尊厳は、守られている? その格好で……その魂で、救われる?」
「黙れ!」
問いかけるや、拒否するように鰐が躍りかかってきた。
短肢で空を掻き泳ぎ、回転しながら食いちぎる動き。
「……っ」
咄嗟に回避する。相手の視界が悪い事も手伝って、掠めただけに留めたが、白い膚に朱が滲んだ。
「盗人風情が、墓守の何を語るか!」
「これぞ、神にいただいた力だ!」
鰐達が吠えた。彼らの心はクロノヴェーダに強く寄っている。
焦らず、リゲルは頭を振った。
「そんな力に頼らなくとも、きっとあなたたちは立派な墓守だ――だからどうか、その力を拒絶して。僕も手伝う、から」
ロッドを手に砂嵐を起こし、ネア、と名を呼ぶや、尾を立てて相棒は次なる鰐の突進を、爪で遮る。
「うん、それは、神から与えられた力、だったね。でも、神が偉大でも……そんなに簡単に……神の姿に、近づけるもの?」
斃れぬように鰐たちの猛攻を躱しながら。リゲルは問い掛け続けた――。
成功🔵🔵🔴
効果1【神速反応】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
平良・明
こんにちは、と言えたのなら次は、何と言葉を重ねましょう
でもそのままだと聞こえ無さそうなので、そこからです
ほら、コロスコロスとか言うと
言葉は帰ってきます、殴ったら拳が痛いみたいに
位相の違う相手に言葉を届けるにはまず寄るところから
時空に干渉して近づく、そのためのパラドクスです
そして同時に震わす、魂、喉、空気、拳、ありったけの熱
さあ、大声で「お邪魔します!」
拳から伝わる波、言葉と同じく波、内側に響かせる
少々手荒いですが今度こそ、挨拶伝わりましたか
私は敵と言うよりも、むしろ通りすがりの旅行者ですが
誠に勝手ながら一つ言わせてもらえば
うるうるふわふわする前に
地に足つけて自分の姿を観ずればよいと存じます
●語るは言葉のみならず
さて、無事挨拶はすみましたが、と打ち鳴らした鍋をしまって、平良・明(時折の旅行者・g03461)は、次の言葉を考える。
ふわふわと浮かぶ愛らしい謎生物は、ぎらぎらと殺気に満ちた様子である。
墳墓を穢す侵入者を殺す、という使命に燃えており――その、憎き敵に挟まれていれば尚更である。
「でもそのままだと聞こえ無さそうなので、そこからですね」
のんびりと明は言い、モフィンクスと向き合う。
「侵入者め!」
「コロス!」
やはり、物騒なことを言う。
解りやすい溜息ひとつ、明はゆっくりと頭を振った。
「ほら、コロスコロスとか言うと、言葉は帰ってきます、殴ったら拳が痛いみたいに」
言葉を届けるためには――、まずは近づかねば。
まったく戦闘など心得ていない、という雰囲気を出す平凡な男は、敵の数、配置を改めて確認すると、大きく息を吸う。
(「時空に干渉して近づく、そのためのパラドクスです」)
その力を。言葉を叩き込むために、明は突如と地を蹴った。
先行し、彼から生じた風が、モフィンクスの体毛をそよがせた刹那。加速を載せた強力な右ストレートが、小さな身体を撃つ。
「お邪魔します!」
同時、明の大声が――モフィンクスの身体を大きく揺さぶる。拳から伝わる、衝撃。熱――連動させることで、自分の言葉を響かせんとした、一撃。
拳を打ち込まれたモフィンクスは、衝撃の儘、壁際まで吹っ飛んでいった。そして、目を回したのか、暫くふらふらとおぼつかない状態で浮遊している。
「少々手荒いですが今度こそ、挨拶、伝わりましたか? 私は敵と言うよりも、むしろ通りすがりの旅行者ですが」
それへ、明は拳を構えたまま、問いかける。
「黙れ、侵入者め!」
きっ、と正気を取り戻したらしいモフィンクスは、そういって明を睨むと――その目に涙を湛えた。うるうると滲んだ瞳から、空を裂く光線が放たれた。
「やれやれ、まだ足りないようですね」
光線を紙一重で躱しながら、明は再び踏み込んだ。
言葉を響かせるべく、堅く拳を固めて、振り抜く。
「誠に勝手ながら一つ言わせてもらえば――うるうるふわふわする前に、地に足つけて自分の姿を観ずればよいと存じます」
伝わるまでやめませんよ、と。囁く言葉は真剣なものであった――。
成功🔵🔵🔴
効果1【クリーニング】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
平良・明
少しは近寄れたでしょうか
人の心に触れる事は、踏みにじる事と似ていて
意識しなくとも、見るだけでそれはできてしまう
全てを見通すホルスの目のように
見るとは、観光とは、気安く、おそろしいものです
私はそれをわかって足を前に進める
みはるかす大地を蹴って、轍に溜まった涙を弾けさせ
ただ信じた道を行くために、道を描くために
これでも目はそこそこいい方です
今はまだ、戦いの途中
戦士なら戦っている最中に泣かないで下さい
どうせなら、光と熱を持って打ち合いましょう
青く流れる涙を消し飛ばす魂の火を
お互い巻き込みながら消し合わず大きな火へ
今から、全力で踏みにじり、蹴り飛ばします
この熱を私の標とするために
●そして、踏み出す
「少しは近寄れたでしょうか」
平良・明(時折の旅行者・g03461)は向き合うモフィンクスへ、問いかける。
「うるさい、うるさい!」
「侵入者め!」
「排除する!」
彼らは代わる代わるにそう叫んでいる。攻撃された事で、更にヒートアップしている。
正直、手応えは無い。否、戦いの手応えはある。悲しいほどに。
愛らしい姿とは裏腹に、元は勇猛なリターナーの戦士達であった彼らに、現実を見せ、目覚めさせるには、ただの観光客には荷が重い。
不意に、明は自嘲した。
「人の心に触れる事は、踏みにじる事と似ていて、意識しなくとも、見るだけでそれはできてしまう――」
明は、このクロノヴェーダが半覚醒であることを知っている。
出会い、言葉を交わす機も、こうして得ている。試みた。
「全てを見通すホルスの目のように……見るとは、観光とは、気安く、おそろしいものです」
だからこそ、溜息が出る。
知らぬ相手に誠意を尽くし――解り合えぬと、諦めてしまうこと。
これを悔いる日がいつかくるやもしれぬ。袖振り合うも多生の縁というが。
だからと、足を止めるわけにはいかぬ。
明が一歩踏み込むと、モフィンクス達の間に緊張が走る。
緊張感とは程遠い造作の生き物だというのにと、帽子の鍔の影で彼は苦笑し、強く地を蹴る。
(「ただ信じた道を行くために、道を描くために」)
困難を踏破するように、大きな一歩を。儘、モフィンクスの小さな身体を蹴り付ける。
触れる事で、世界を繋ぐ。道が出来る――悲しみが、其処に横たわろうとも、明はそれを乗り越えようと信を貫く。
迎え撃とうと構えたモフィンクスの瞳を見やり、明は頭を振った。
「今はまだ、戦いの途中――戦士なら戦っている最中に泣かないで下さい」
どうせなら、光と熱を持って打ち合いましょう、と。
彼の言葉に応える様に。
敵のつぶらな瞳が潤んで、光線が入り乱れる。
これが戦士の矜持という、相手のいらえならば、受け容れよう。明は臆さず、光線を潜るよう踏み込む。
「今から、全力で踏みにじり、蹴り飛ばします――この熱を私の標とするために」
蹴撃に籠めるは、涙を消し飛ばす程の魂の火。
小さな火を巻き込みながら。いずれ大きな火へ成長することを願いながら。
彼は、立ち塞がるモフィンクス達を、一蹴していく。
(「墳墓を守る戦士たる、その気持ちを……この先へ」)
果敢と挑んでくる戦士達を蹴り、踏みしめ――その命を糧に、道を作るのだ。
大成功🔵🔵🔵
効果1【液体錬成】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】がLV2になった!
リゲル・ルッタ
難しいって、分かってる
でも諦めたくない、から
先に蒔いた『高速詠唱』で少しでも敵の水に反応できたらいい、けど
僕が盾になって、ネアにリドルウェーブを使ってもらおう
惑わせる光で、少しでも揺らいでくれた、なら
そう……神に力を授かったんだよ、ね
でも、今の貴方たちはまるで──神、そのものみたいだ、ね
神に仕える墓守、が。
神になりたいと、願ったの、かな
違ったんじゃない、かな
そんなこと、求めてなかったのじゃない、かな
求めてないものを、押し付けられたのじゃない、かな
僕は傷付いてもいい
でも、貴方たちの尊厳だけは、奪わせたくない、から
我儘で、ごめん、ね
もう、喪いたくない、から
大好きな僕の世界を、壊されたくない、から
ラズロル・ロンド
排斥力で友達催眠の威力が弱くてもやる事は何も変わらないさ
心を尽くし理解を求めよう
共感・同調しながらも疑問を持たせよう
本当にそれが望む事なのかと
君達の周りは本当に全て敵なのかい?
少なくとも探索者達は同じリターナーじゃないか
同じ神を信奉する同志だった
それが何故戦うのか?
このまま意識を手放せば同士討ちではすまなくなる
蘇りを喜んだ家族も手を掛けかねないよ?
神なんて関係無いどうか思い止まって
モフィを倒したように見えても
リターナーに戻る姿があれば説得の材料に
偽神の信仰に準ずるならそれは敵だ…
選ぶといい自分の意志で
攻撃は極力いなし
話合いの結末が見えたら口を噤んで貰おう
目を瞑りシーと人差し指を口に添えて攻撃を
●不撓
猛攻を躱しながら、己の言葉が伝わっているかとリゲル・ルッタ(墓守・g03709)は彼らを見つめる。
白鰐神は、彼の言葉に「これは神の加護なのだ」と繰り返す。
(「難しいって、分かってる。でも諦めたくない、から――」)
「ネア」
相棒の名を、リゲルが呼ぶ。彼がロッドを手に前に立ち盾となり、視線の高さまで浮遊したスフィンクス『ネア』が純白の翼を広げた。
精神を惑わす光が、真っ暗闇を眩く照らす。
「そう……神に力を授かったんだよ、ね。でも、今の貴方たちはまるで──神、そのものみたいだ、ね」
その中心で影となった、リゲルは静かに言葉を紡ぐ。
返事を待たず、問いかける。
「神に仕える墓守、が。神になりたいと、願ったの、かな」
「……!」
白鰐達は、びくりと大きく身体を戦慄かせた。
そんな不遜なことは考えたつもりはない――だが、塗りつぶされた精神は、それを遠く鈍化させている。
動きを止めた事に、ゆっくりと頷いて見せ、リゲルは真摯に言葉を重ねる。
「違ったんじゃない、かな――そんなこと、求めてなかったのじゃない、かな……求めてないものを、押し付けられたのじゃない、かな」
ネアの光が、輝きを失う。再び深い闇の中に取り残された白鰐たちは、違和感に悶えながらも、ぎっと爬虫類の目で彼を睨んだ。
「この姿は……神にずっと近づけたのは! わ、我らの祈りが通じたのだ……!」
代表するように誰かが吼えると、その鼻先に水の塊が生み出される。
パンッ、と弾けるような水弾がリゲルに襲いかかる。泥濘む足元ながら、飄々と逃れつつ、彼の貌は悲しげに曇る。
「侵入者を排せ! すべてコロスのだ!」
「それは……本当にそれが、君達の望む事なのか」
鰐神が新たな号令を歌うのに割り込むように。涼やかな声が、新たに問いかけた。
この状況下にありながら、穏やかさを失わぬラズロル・ロンド(デザートフォックス・g01587)が続ける。
「君達の周りは本当に全て敵なのかい?」
彼の言葉は、妙に甘く、心乱すように響いた。
白鰐たちの反応を見、次の句を探りながら、ラズロルは周囲を探る――探索者側の、リターナー達。モフィンクスと化した彼らは、既にその姿の儘、息絶えている……。
その姿が暗闇で隠されていることを幸いと、軽く目を伏せた。
「同じ神を信奉する同志で、何故戦うのか?」
誰が、とはいわぬ。
それはラズロルかもしれぬし、リゲルかもしれない。そう告げ、明言はしない。
「黙れ!」
吠え立てるように、水弾が飛来する。
ラズロルは身を傾いで避けると、壁を強か撃ったようで、空間が大きく震えた。
次々と放たれるそれを潜り抜けながら、言葉を叩きつける。それが、彼の戦い方だ。
「このまま意識を手放せば同士討ちではすまなくなる――蘇りを喜んだ家族も手を掛けかねないよ?」
家族、という言葉に、鈍化していたらしい鰐たちの様子に、手応えを覚えて、尾を揺らす。
大事なのは揺さぶりだ。無視できぬ言葉の雨を。
気合いに合わせるように、耳が尖る。
「神の御意志なんていうけれど、それは概ね、代弁者の言葉に過ぎない。君達は誰に忠誠を誓っているんだい?」
怒り狂うような一撃が、肩を撃つ。しかし、ラズロルは怯まずに、説得を続ける。
「神なんて関係無い――どうか思い止まって」
「だ、黙れ!」
鰐たちが、一斉に水を生成する。散々に躱して、囲まれる格好に追い詰められてしまった――あらら、と焦った様子もなく、ラズロルが次の手を考える。
(「黙れ黙れというだけになっているし、結構追い込めていると思うんだけど――」)
パラドクスの力を借りても、やはり手応えが甘い。常なら落としきっている自信があるが、排斥力の厄介さに、ラズロルはひとたび口を閉ざした。
偽神の信仰に準ずるなら――、過る考えを遮ったのは、リゲルの声。
「黙らない、よ」
告げ、リゲルは堂々と一歩進む。声音は凜と張り、意思の力に満ちている。
再度、彼の求めに応じて、ネアが翼から光を放つ。濡れそぼった昏き洞窟で、それはより強く眩い光であった。
「僕は傷付いてもいい――でも、貴方たちの尊厳だけは、奪わせたくない、から」
目を醒まして、と祈るように身を晒す。
それは決死の覚悟であった。
「我儘で、ごめん、ね。もう、喪いたくない、から――大好きな僕の世界を、壊されたくない、から」
――その世界には、君達も含まれている。
激しい水流に打ち据えられても、リゲルは引かず――しなやかな動きで彼を案じるように舞い戻ったネアに「大丈夫」と優しく囁く。
「うあぁああ……俺は、いったい……」
「違う、神は神は」
「これは神より与えられたっ……」
鰐たちの様子に、変化が生じ始めていた。ラズロルは冷静に判断を下す。
――これは混乱のあまり、デタラメに暴れ始める前兆である、と。
苦戦🔵🔵🔴🔴🔴🔴
ラズロル・ロンド
リゲル君が間に入った事で僕の腹は決まった
諦めていいはずが無い
僕等は排斥力を上回り続けて進むのだ
少しずつでも丁寧に同調、共感し心を尽くそう
パンッと手を打ち言葉を紡ぐ
君達の話はちゃんと聞いているよ
誉れ高き力なんだよね
だからそれを否定されるのは我慢ならない
解るよ、悔しいよな
そうだ…僕はラズロル
君、名前は?
自己紹介をし名を聞こう
名前は偽神には無い彼等自身の証だ
仲良くなれたらいいのに
…そんな状況じゃない?
でも彼等も揺れている
それは希望だ
もう一歩近づこう
手を取れるように
家族の話を聞こう
会いたい?なら会いに行こうよ
今度こそ手の平から零れないように
全ては救えない…でも
願いパラドクスを放とう
彼等に祝福の風となれ
●彼らのみが持つ証
白鰐神の姿をしたリターナー達は、瘧に掛かったように震え、恐慌に陥ったような様子で、ラズロル・ロンド(デザートフォックス・g01587)に躍りかかる。
パラドクスを伴わない暴力など、それ以上の意味を成さない。
とはいえ、背後に見える水弾、ぬかるんだ足元と合わせると、ぼんやり突っ立っているわけにはゆかぬ。
ラズロルは、すっと息を吐く――。
(「リゲル君が間に入った事で僕の腹は決まった」)
偽神に下り、偽神に成り果てるならば、その命を絶つことも辞さぬ覚悟はあった。
だが、仲間が、諦めないと言った。
「そう。諦めていいはずが無い。僕等は排斥力を上回り続けて進むのだ――」
これがディアボロスの戦いなのかもしれない。そんなことを思いながら、人の心を曝き、結ぶを得意とする男は、手を叩く。
パン、と乾いた音を強く響かせ、鰐たちの注意を引きつける。
「君達の話はちゃんと聞いているよ」
紫色の瞳で、ゆっくり、彼らを一瞥する。何一つ、見逃さぬように。
「誉れ高き力なんだよね。だからそれを否定されるのは我慢ならない……解るよ、悔しいよな」
突如と共感を示された彼らは、驚き目を瞠る。手応えを感じながら、ラズロルは続ける。
「そうだ……僕はラズロル。君、名前は?」
――名前。その個が持つもの。個の証。
その問いは、彼らを強く揺さぶった。
「……わ、わたしの名前は……」
忘れるはずがないものを、忘れていることに、彼らは怯え、必死に考える――敵を排除せよという命令を忘れる程に。
彼らの解を、ラズロルは静かに待つ。何一つ聞き漏らさぬよう、白き狐耳を欹てながら。
彼らの逡巡、停滞は、希望そのもの――。
(「仲良くなれたらいいのに」)
心から、そう思う。この世界に生きる彼らと手を取り協力できたなら。その願いが届いたか、ある鰐神が不明瞭な声音で呻いた。
「ジェ、ジェデ……思い出した、オレの、名前」
「そうか。ジェデ。……君の家族は?」
その言葉にラズロルは優しく微笑み、尋ねながらそちらへと踏み出す。
「年老いた、母が……」
鰐は、苦悩するように頭を振る。
そうか、母親一人残して、心配だね――ラズロルは告げ、手を差し伸べる。
「会いたい? なら会いに行こうよ」
その一言が、引鉄となったか。鰐たちは次々と、自分の名を思い出す。
――の子、……。
□□村の、○○。
口々に告げられる名は、解放を訴えるかのようだ。
そう思いながら、触れる冷たい鰐の肢を握った儘。ラズロルは祈るように目を伏せた。
「全ては救えない……でも」
――彼等に祝福の風となれ。
ラズロルの思いを受けた月と太陽を形どったオーブは、優しい風を吹かせた。
昏き迷宮を、心地良い涼風が駆け抜けていく。砂漠を彷徨い、やっと辿り着いたオアシスで吹くような爽風。
それが白鰐神の姿をした墓守たちを撫でていくや、彼らは次々と昏倒する――その意味を、ラズロルは理解し、安堵の息を吐く。
「……目が覚めたら、此所からすぐ逃げるんだよ」
それだけを言い残し。
白き尾を揺らしながら、先の空間へと進んでいった。
――この忌まわしき儀式と、ひとつの決着をつけるために。
成功🔵🔵🔴
効果1【クリーニング】がLV2になった!
効果2【先行率アップ】がLV2になった!
プターハ・カデューシアス
アレンジ・連携 歓迎
敵までの道は開けていますね?
ならば、
マジャードへの攻撃を開始します
扉などは吹き飛ばして派手に乗り込みましょう
信仰心につけ込み、目的を偽り、同士討ちで覚醒を促す?
いい加減、こんな茶番。
反吐が出るんですよ!
今まで散々見てきたリターナー達の悲劇を
生き返ったという希望も、魂さえも奪い、別のモノに変えてしまう…。
もう、これ以上。見たくはありません!
【完全視界】で敵を確認後
青龍乱舞にて水の龍をたたきつけます
ラズロル様へのPOW技にはディフェンスを
高排斥力があるので、かなり不利な筈
持てる全ての技能、有効な残存効果も利用し
味方が駆けつけるまでの間、少しでも長く
全力で敵を引きつけましょう
御守・樹
正直な説得とか得意じゃねぇ。だってそうなったのはしょうがないって思うのもあるから。
だけど。だからこそ逆に利用するってやつらは気に入らない。許す許さないとか偉そうな事は言わないけど、それでも頑張りが認められたっていいだろう?
頑張りをかすめ取るような利用とか、大嫌いだ。
ネメシスモード(外見変更なし)に。
【完全視界】で視野を確保しつつ【モブオーラ】【忍び足】で近づき、隙を狙って破軍衝で攻撃する。どこまで通用するかわかんねぇけど、この一撃に目一杯ぶちかます。
攻撃重視だから多少の被弾は承知。致命傷だけは避けるように気を付ける。
何となく近い戦い方する相手のようだから、自分だと思えばそこそこ読めると思う。
ラズロル・ロンド
最奥へ向かおう
腰袋にあるだけ詰め込んで来たアデュラリアを魔力で強く光らせ
扉を破る
待望んだリターナーじゃなくて残念だったな
マジャード…お前も恨みの対象だよ
この復讐心、特と味わえ
早々にネメシス化
食い縛った口から青白い炎が漏れ出すと頭腕足が狐半獣人化
青白い炎を纏う姿に
天井の数カ所にアデュラリアを投げ埋め込み大まかに影を消す
肉弾戦は腕の動きに注意
獣地味た動きで避け流れる動きで爪に乗せたサンドストームで細く削ぐ
影に隠れたら影から距離を置き
危うそうな影はアデュラリアを置いて消す
出てくる影が限られた状態でどうする?
全ての影を消してみるか?
青白い炎で影を消そう
プターハ君と明君とは息の合った連携とディフェンスを
平良・明
この場所が今日の最終到達地点
今日、私が進んできた闇とは何か
闇は光を吸い込む重力、時を捕える枷、質量
闇と重みは世界に必要なものですが
ありとあらゆる道を塞ぐあなたは邪魔だ
私の手の闇に包み込む形は小型拳銃の弾丸
貫き進む形にはこれがぴったりと合う
旅から旅へ、光を浴びて、闇から闇へ
重さを振り切って、貫け鉛玉
時に折り込む、闇を貫く光となれ
地下の重圧に左様なら、いい観光でした
ラズロルさん
大切な砂漠の案内人、友人です
よく連携して戦います
モリオン・スモーキー
アドリブ・連携歓迎
……いざ、参ります。
人が人の支配を行う。半ば無理やりに。
そんなの、許していいはずがありませんから。
皆さんの支援を行いましょう。敵は影に潜む様子。
それでしたら、その影をなくします。
<光使い>で潜む影をなくせば隠れられないでしょう。
WIZパラ使ってでも影は全て消して見せましょう。
隠れる場所を探せばそれが隙になる。
また、万が一影が出来ていれば、残念ですがそこは我々の場所でもあります。
ケアン(クダギツネの名前)と共に<不意打ち・捕縛>でとらえます。
皆様の想いと共に戦うのです。ですから、ひきませんよ。絶対に。
リゲル・ルッタ
ラズロルさんがリターナーさん……ううん。ジェデさん達を救ってくれて、良かった
どうか此岸での善き生が、まだ彼らに与わりますよう、に
マジャード、あなたは許さない
ネメシス形態(現状のそれは見目なにも変わらない)を取って全力で──味方を支援する、よ
連携しつつ、作成したトラップを鞭で適切なタイミングで作動させる
それで他の人の攻撃が通ればいい、な
王に捧ぐ? 墓場荒らしが、よくもそんなこと、を
奪われる物、なんだろう
取り返せそうな範囲なら、取り返して仲間に渡すとか、意識しておこう、かな
他の方の攻撃の狭間狙って、オーラ纏った鞭で敵を打つ
なるべく敵への攻撃が途絶えないようにできたなら重畳だ、な
●闇より出でて、闇へと還る
墓守達の守っていた通路を抜け、突き当たりの部屋。扉を突き破るように、ディアボロス達が雪崩れ込んだ。
灯火揺れる一室は、ぼんやりと暗く、かなり広い――その中央で、護影のマジャードは、強い敵意を発して、ディアボロス達を睨んでいた。
「よくも儀式の邪魔をしてくれたな――許さぬぞ」
吼えるようにマジャードが一声を放つも、対するディアボロス達は臆すどころか、歯牙にも掛けなかった。
「儀式?」
怪訝と眉を上げ、プターハ・カデューシアス(エジプトの龍人・g03560)がマジャードを睨み据えた。
「信仰心につけ込み、目的を偽り、同士討ちで覚醒を促す? ――いい加減、こんな茶番、反吐が出るんですよ!」
感情の吐露に合わせ、カン、と杖の石突きで床を叩く。
「今まで散々見てきたリターナー達の悲劇を――生き返ったという希望も、魂さえも奪い、別のモノに変えてしまう……。もう、これ以上。見たくはありません!」
プターハの言葉に肯いたのは、静かな気配。
「人が人の支配を行う。半ば無理やりに――そんなの、許していいはずがありませんから」
モリオン・スモーキー(存在奪われし魔術発明家・g05961)が言い切る。
人、といわれ、マジャードが不快そうに顔を向けたが、モリオンは気にしない。
「皆様の想いと共に戦うのです。ですから、ひきませんよ。絶対に」
構えた二人に合わせ、青い言葉だ、と嘲弄するように笑い、マジャードも拳を強く握り込んだ。
「どいつもこいつも――神聖なるファラオの兵となれる名誉と引き換えに、他に何を望むというのだ」
「さあな、他人の望みなんて、俺にはわからない」
御守・樹(目指すは无二打・g05753)が、影から奇襲を仕掛けた。拳が風を裂いて唸る。強か繰り出された打撃を、マジャードは拳で受け止めて――両者が衝撃で弾けた。
予想以上の打撃の重さに、マジャードの気配が変わる。それが、闇に沈む前に、樹は再度距離をとる。
(「……だってそうなったのはしょうがないって思うのもあるから」)
リターナー達は、エンネアドに忠誠を誓っていた。ディアボロスが間違っていると主張しようが、クロノヴェーダへの覚醒を果たしたリターナーは――仮に、騙されていたとして、それはひとつの成就と喜んだやもしれぬ。
――そう、そこに、彼らの喜びがあったのならば。
それも仕方ない、と樹は割り切れただろう。
「だけど。だからこそ逆に利用するってやつらは気に入らない」
許す、許さないという断罪を、樹はするつもりはない。
ただ彼らは必死に墓守として、墳墓を守ろうと務めた――彼らの想い。見返りとして、正しいのか。
ハッ、と鼻で笑いながら、マジャードが消えた。何処からでるか。仲間達の配置を一瞥し、樹は一瞬で判断を下す。自分の影を伝って背後。
「――頑張りをかすめ取るような利用とか、大嫌いだ」
冷たく言い放ち、身を屈めた。拳が髪の先に触れるような感覚だけを頼りに、反撃を仕掛ける。そして、攻撃の瞬間、マジャードは影に隠れた優位を失う。
そこへすかさず、プターハが続く。
「青龍よ、全てを飲み込め」
青龍を象った聖なる清流が、牙を剥き、男に食らいつく。
半身を水に呑まれ、小さな呻きを上げたマジャードは、水流に逆らわず、壁際まで押し流される。
プターハの鋭い眼差しが、敵を追った時。
その姿は闇に塗りつぶされていた。そう認識した刹那、こめかみに風を感じる。
異形とも呼べる大きな拳が、彼の角付近を薙いでいく――彼は杖を盾に、跳び退きながら、完全視界をもってしても、自然に落ちる影を無視することは難しいと実感する。
ふむ、と冷静にその動きを観察したモリオンが、軽やかに床を蹴る。
「……いざ、参ります」
手にするのは、ホワイトラブラドライト。虹色のシラーは、この薄闇でははっきりとしないが。
「光の宝石。解放。魔力の塊を喰らいなさい」
モリオンが裡に秘めたる魔力を解放することで、眩く輝き出す――。
「ぐっ」
魔弾そのものを堪えるよう、マジャードが両腕で顔を庇う。その身体は技の以降に入っており、影を纏っていたが――モリオンの照射によって、くっきりと影は炙り出されている。
なれど、それは守りを捨てて、敵は迫り来る。大仰に振るわれた拳は、奇襲を伴わなくとも、充分に鋭利で、速い。
「我が忠義はこの程度で、終わらん!」
マジャードが吼えた。
護拳付き刀を構えて受けるも、叩き込まれた拳の衝撃に、全身が痺れるようだ――しかし、彼は涼やかに微笑む。
「皆様の想いと共に戦うのです。ですから、ひきませんよ。絶対に」
風唸るような音が双方の間で弾け、マジャードが大きく飛び退いた。
「出てくる影が限られた状態でどうする? 全ての影を消してみるか?」
そこへ、冷ややかな声音が問う。
刹那、口から青き炎を溢す獣人が、炎を纏う獣の腕で空間を裂いた。
獣が如く、低い姿勢で飛び込んで来たラズロル・ロンド(デザートフォックス・g01587)は発火した四肢を輝かせ、闇に躍る。
「風よ 砂塵よ 削ぎ落とせ」
蒼炎とともに唇から呪を吐き出せば、砂塵がラズロルの身を守るように渦巻く。
相手の体勢が整うのを待たず、彼は尾を逆立て、爪撃を振るう――獰猛と伸びた爪が砂塵を伴い、マジャードの身体を容易に刮げ取る。
「――ッ!」
「待望んだリターナーじゃなくて残念だったな――マジャード……お前も恨みの対象だよ。この復讐心、特と味わえ」
赤い飛沫が舞う――血霞の中で、滑るようにディアボロス達と距離を取った男は。
周囲の灯火を消して闇を作り。その身体に影を纏う。
反撃に、足を撓めた瞬間。ぴし、と鞭のような乾いた音が響いた。
突如と、部屋の中央がぱっと明るく灯される――ラズロルがばらまいた魔法の石と。同じくモリオンが放った石が同時に輝いたのだ。
なんてこともない、光を灯すだけの罠。相手を殺傷する術も無い……真の意味で、相手の力を無力化できるわけでも、ない。
「マジャード、あなたは許さない――」
鞭を握ったリゲル・ルッタ(墓守・g03709)の、湖面が如き青き瞳は怒りを湛え、マジャードをひたと見つめていた。
(「ラズロルさんがリターナーさん……ううん。ジェデさん達を救ってくれて、良かった――どうか此岸での善き生が、まだ彼らに与わりますよう、に」)
「けれど、あなたを倒さない、と」
リターナー達は解放されない。力を与えてくれる小型のピラミッドを傍らに、リゲルはマジャードと正面から対峙し、鞭を構えた。
敵は怒りを隠さず、何事か吼えながら跳躍すると、彼の頭上へ真っ直ぐに巨大な拳を叩き下ろす。迎撃するは、鞭の強打。その鞭に腕を斬り裂かれながらも、むんずと掴んだマジャードが一喝した。
「全ては王に捧ぐため――どの命も!」
「王に捧ぐ? 墓場荒らしが、よくもそんなこと、を」
挑発か、侮蔑か。リゲルの言葉に、マジャードは乱暴に拳を振り払った。
鞭を奪われ、部屋の片隅に放り出された――それでもリゲルは、敵から目を逸らさなかった。
それを庇うように横から殴りかかったのは、樹――果たして、光の中で、殴打の応酬が閃くを前に。
ふっと、誰にも聞こえぬような小さな吐息が、あった。
辿り着いた――平良・明(時折の旅行者・g03461)は、
(「この場所が今日の最終到達地点」)
戦闘の衝撃で、灯火が消えたのだろう。マジャードすら把握せぬ闇で満ちた一角で、暫しじっと佇んでいた。
(「観光といっても、ずっと暗闇の中だったような気がしますね」)
ぼんやりと道程を思い出しながら、明はゆっくりと腕を伸ばす。
闇の中で、己と対峙し、敵と対峙し――命を踏みしめ、それを無為にせぬための、旅だったような気もする。
「今日、私が進んできた闇とは何か――闇は光を吸い込む重力、時を捕える枷、質量。闇と重みは世界に必要なものですが……ありとあらゆる道を塞ぐあなたは邪魔だ」
明の視界に、マジャードが無防備な背を晒す。男も、愈々、彼の気配に気付いていたはずだ。だが、ディアボロス達との応酬の合間、注意を向ける余裕はなかった。
明の狙いを確実にするため、プターハが、ラズロルが。同時に攻撃を仕掛ける。
砂塵による強烈な刳り、隙を与えぬ水撃が、マジャードの体勢を確実に崩す。
「ありがとうございます――」
そっと仲間達に囁いて、明は指に力を掛けた。
掌に収まるような小型拳銃の、撃鉄を起こす動作は、慣れた物。
「旅から旅へ、光を浴びて、闇から闇へ――重さを振り切って、貫け鉛玉」
時に折り込む、闇を貫く光となれ。
祈るや、時に干渉し、明は引き鉄を引く。放たれた闇は、音も無く撃ち出され、マジャードの頭部を貫いた。
噴水のように、鮮血が噴き出し――マジャードは上半身から、水音を立て、崩れ落ちた。
冷ややかな眼差しで一瞥したラズロルが「終わったね」と静かに呟けば、そっと目を伏せた明が、肯く。
「……地下の重圧に左様なら、いい観光でした」
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【水源】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
【照明】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【ラストリベンジ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV2が発生!
【ロストエナジー】がLV2になった!
【反撃アップ】がLV3になった!
【ドレイン】LV1が発生!