ルール炭鉱破壊作戦

 ゾルダート秘密工場から手に入れた裏帳簿や鉄道網の調査から、機械化ドイツ帝国を支える資源が採掘されている鉱山の位置が判明しました。
 それがルール炭鉱です。
 ルール炭鉱から採掘された資源は、ルール工業地帯でサイボーグ機械に組み立てられ、鉄道網を利用して機械化ドイツ帝国各地に運ばれているようです。

 ルール炭鉱では、多くの一般人が劣悪な環境で働かされています。
 彼らは、近隣地域から非合法な方法で集められた一般人達で、毎日のノルマを果たさない限り喋る事さえ出来ないという労働者の首輪を嵌められ、酷使されているようです。

 このルール炭鉱を支配するクロノヴェーダを撃破し、資源の採掘を止める事が出来れば、ドイツ機械化帝国の戦略を大きく狂わせることが出来るでしょう。

ルール炭鉱運営日誌(作者 ツヅキ
7


#機械化ドイツ帝国  #ルール炭鉱破壊作戦 


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#機械化ドイツ帝国
🔒
#ルール炭鉱破壊作戦


0



 〇月×日、3人死んだ。
 〇月△日、5人死んだ。
 〇月…………。
「ふぅ」
 今日の分の日誌を書き終えたツェツィーリエは、恍惚の表情でページを閉じた。
「役目は順調です。このまま、ここルール炭鉱にてコツコツと人間どもを使い潰してゆきましょう」
「ははっ」
 数人の機械人形が仰々しくお辞儀をするなり、媚びた声色で囁く。
「本日のノルマはいかがいたしましょう?」
「そうですね……」
 ツェツィーリェは小首を傾げ、あどけない微笑みで新たなノルマを告げるのであった。
「あそこを掘らせましょう。特別に硬い岩盤の、南東地区。あそこから隣の東地区までトンネルを掘ることができるまで、寝ることも食べることも、喋ることすら許してはなりません」

「『ルール炭鉱』……それが、機械化ドイツ帝国が資源採掘している重要拠点」
 中山・ネフ(NN・g03318)は地図を前に、今回の依頼の説明を始めた。
「このルール炭鉱を支配するゾルダートの撃破が、炭鉱を閉鎖に追い込むための条件よ。そうすれば炭鉱は崩落する。機械化ドイツ帝国の戦略を狂わせるための一手になるはず」

「ここには無理やり連れてこられて、重労働をさせられている一般人がたくさんいるの。だからまずは彼らに接触して、ノルマを達成するための手助けをしてあげて」
 労働者たちに嵌められた首輪がある限り、ノルマ達成できるまで彼らは言葉すら話すことを許されていない。他の情報やボスの居場所を聞き出すにも、まずはその首輪を外すことが先決だ。
「ノルマを達成できれば制限が解除され、話すことができるようになる。ただし、首輪を無理に外そうとしたり、そのまま脱走すると……」
 爆発、とネフは身振りで示した。
「首輪の効力は鉱山を支配するゾルダートを倒すまで切れない。彼らを逃がすためにも、アヴァタール級の撃破は必要なの。この鉱山を任されているのは命令に忠実なるツェツィーリエと、その配下の機械人形たち。いつもは機械人形を引き連れて鉱山の見回りをしているみたい。労働させられている一般人が話せるようになったら、彼女たちが見回りに来る時間もわかるはず。遭遇のタイミングが分かれば戦いを仕掛けやすいし、攻略旅団から提案があった第一次世界大戦についても話を聞くことができるかもしれないね」

 おそらくだが、ゾルダートが必要としてるのはただの資源ではなく、人々に過酷な労働を課すことで苦しみながら採掘された資源を必要としているのだろう。
「ほんと、ゾルダートって酷いことをする存在……できるだけ早く、助けてあげたいね」

「はぁ、はぁ……」
 何度も繰り返し、採掘道具を地面に振り下ろしていた男がついに諦めて膝をついた。どれだけ力を込めても、ほんの少し壁の土を削り取るばかりだ。
「うぐ――ッ」
 絶望が押し寄せる。
 掘れた壁の穴は僅かにへこむ程度。南東地区のここから東地区まで穴を通すには数十メートルは掘る必要があった。そんなこと、いったい誰にできる?
 彼らは虚ろなに顔を見合わせ、誰からともなく首を振った。
 そんな人間はどこにもいない……いったい、今日は誰が死ぬのだろうか。薄暗い地下の鉱山に諦めきったため息が漏れる。今日は俺が死ぬのだろうか?


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【士気高揚】
1
ディアボロスの強い熱意が周囲に伝播しやすくなる。ディアボロスから「効果LV×10m半径内」の一般人が、勇気のある行動を取るようになる。
【怪力無双】
4
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わり、「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げて運搬可能になる(ただし移動を伴う残留効果は特記なき限り併用できない)。
【未来予測】
1
周囲が、ディアボロスが通常の視界に加えて「効果LV×1秒」先までの未来を同時に見ることのできる世界に変わる。
【強運の加護】
2
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【神速反応】
1
周囲が、ディアボロスの反応速度が上昇する世界に変わる。他の行動を行わず集中している間、反応に必要な時間が「効果LVごとに半減」する。
【腐食】
2
周囲が腐食の霧に包まれる。霧はディアボロスが指定した「効果LV×10kg」の物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)だけを急激に腐食させていく。
【罪縛りの鎖】
1
周囲に生き物のように動く「鎖つきの枷」が多数出現する。枷はディアボロスが命じれば指定した通常の生物を捕らえ、「効果LV×2時間」の間、移動と行動を封じる。
【勝利の凱歌】
1
周囲に、勇気を奮い起こす歌声が響き渡り、ディアボロスと一般人の心に勇気と希望が湧き上がる。効果LVが高ければ高い程、歌声は多くの人に届く。
【避難勧告】
1
周囲の危険な地域に、赤い光が明滅しサイレンが鳴り響く。範囲内の一般人は、その地域から脱出を始める。効果LVが高い程、避難が素早く完了する。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【プラチナチケット】
3
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【光学迷彩】
1
隠れたディアボロスは発見困難という世界法則を発生させる。隠れたディアボロスが環境に合った迷彩模様で覆われ、発見される確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【モブオーラ】
1
ディアボロスの行動が周囲の耳目を集めないという世界法則を発生させる。注目されたり話しかけられる確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【壁歩き】
1
周囲が、ディアボロスが平らな壁や天井を地上と変わらない速度で歩行できる世界に変わる。手をつないだ「効果LV×1人」までの対象にも効果を及ぼせる。
【平穏結界】
1
ディアボロスから「効果LV×30m半径内」の空間が、外から把握されにくい空間に変化する。空間外から中の異常に気付く確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【完全視界】
1
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【活性治癒】
1
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【植物活性】
1
周囲が、ディアボロスが指定した通常の植物が「効果LV×20倍」の速度で成長し、成長に光や水、栄養を必要としない世界に変わる。
【操作会得】
1
周囲の物品に、製作者の残留思念が宿り、ディアボロスの操作をサポートしてくれるようになる。効果LVが高い程、サポート効果が向上する。
【書物解読】
1
周囲の書物に、執筆者の残留思念が宿り、読むディアボロスに書物の知識を伝えてくれるようになる。効果LVが高くなる程、書物に書かれていない関連知識も得られる。

効果2

【能力値アップ】LV4 / 【命中アップ】LV3 / 【ダメージアップ】LV10(最大) / 【ガードアップ】LV2 / 【フィニッシュ】LV1 / 【ドレイン】LV2 / 【アヴォイド】LV3 / 【ロストエナジー】LV1

●マスターより

ツヅキ
 ルール炭鉱への潜入&破壊依頼です。
 劣悪な環境で働かされている一般人を開放し、炭鉱での資源採掘を阻止することでドイツ機械化帝国の戦略を狂わせることが狙いとなります。

 囮作戦が成功していれば、他の参加者の方々も連れてこられた一般人として振舞っていただいて問題ありません。鉱山重労働をクリアしないと攻略旅団選択肢の調査が行えない等の制限がありますので、詳しくはオープニングをご確認ください。
100

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


御門・風花
感情を失った人形のような少女。
大人びた管狐の琥珀を連れている。

囮となって炭鉱へ潜入します。
仕事場に連れてこられたら、労働者たちに接触し身振り手振りから作業内容を理解し、協力します。
「……(コクリと頷き)」
呼吸を整え、オーラで強化した掌底や蹴りを衝撃波と共に叩き込み、岩盤を貫き掘る。
ディアボロスの力が目立たないように【モブオーラ】を使用したり、呼び出した琥珀を見張りにして、見回りから見つからないよう警戒する。

ノルマをクリアした後は、話せるようになった労働者たちに機械人形たちが見回りに来る時間やその他有益な情報がないか調べます。
「これでようやく話せますね」
「すみません。尋ねたいことがあるのですが」


エルマー・クライネルト
非効率、非人道的、相も変わらず悪趣味なことだ
奴らの好きにはさせんとも


労働者達に紛れて炭鉱へ
坑道内の岩盤を調査して地質の【情報収集】を行う
比較的脆い岩盤や崩落の危険がある箇所を割り出して他の者に判るよう印を付けておく

脆い岩盤は労働者達に任せ、自分は硬い岩盤を担当
崩落に気をつけながらツルハシを振りかぶり岩盤を【粉砕】

力仕事など嫌いだが、鉄屑共の良いようにされているのも気に食わん
奴らの難題に真っ向から勝負してやろうではないか
労働者達にも、砕けぬ壁はないと行動で示し【士気高揚】を行う

ノルマ達成後は労働者達から敵の
巡回経路と人数を聞き出し
奴らの息の根を止めて来る故速やかに此処から脱出するように、と伝える


白水・蛍
連携、アドリブ歓迎。
先祖の事業故、少し懐かしさを覚えてます。これは酷すぎますね……

あまり向かないでしょうが……やれることをやりましょう。

衣装など現地の人々に近い服を着こみ。囮となって炭鉱へ潜入。

その後はせっせと掘り進めましょう。
ノルマ達成まではまじめにやりますわよ。一応。

その後は労働者の方々にお話を聞きます。【プラチナチケット】を残留させ、ツェツィーリエ達が見回りに来る時間や来る人数などを聞き出します。
その後は彼らにツェツィーリエ達を倒す旨を伝えます。
信じてもらえなくてもいい。この環境を変えるために私たちは来たのです。
そして、速やかに脱出するように伝えましょう。


三苫・麻緒
仕事中はたしかに私語は慎みましょうっていうけど、これはそのレベルを越えちゃってるでしょ
しかも首輪…これを悪趣味って言わずになんて言うんだろう?

服装は他の労働者さんに合わせて炭鉱に紛れ込んじゃおう
顔を見合わせるくらいならできるっぽいし、ひとまず身振り手振りで労働者さんたちには下がってもらって、≪氷結使い≫で崩れたら困る場所を補強
あとはひたすら≪連続魔法≫で≪爆破≫しまくっちゃえ!

ノルマが終わったら、もう話せることの証明ついでにここは私たちに任せて逃げるよう声をかけようかな
もし動くのがしんどそうな人がいたら、【活性治癒】を使うことも考えておくね


遠遠・忽
アドリブ・絡み歓迎や!
風間・響(g00059)と参加
風間さんって呼びます

こっそり侵入してバンバンいこかー
百鬼斉唱で手数を増やして働くで~!
……出来るだけ人型、人間サイズのでな
一杯出すなら、ん~泥田坊?鴉天狗?
まあそんな感じで!

基本、労働は妖怪(と風間さん)に任せてうちは情報収集~
巡回とかのタイミングを色んな人に聞いて労働スケジュールを立てるで
それを風間さんに限らず仲間に共有して、一気に解決や!
眼鏡をくいっとして、スケジュールを見る秘書や風味や!どないや、風間さーん?
……って、ガリ勉やとー?知的ゆーて欲しいなぁ!?


風間・響
遠遠・忽(g00329)と参加。呼称は忽。

ちっ、人に首輪たぁいい趣味してるじゃねぇか。
その上しゃべれねぇって?ったく、クロノヴェーダの忠実な操り人形になれってか。ったく、胸糞わりぃ。ぜってぇ、ぶち壊してやる。

とりあえずさっさとノルマをこなすに限るな。
硬い岩盤つっても、こちとら復讐者やってんだ。大した壁じゃねぇ。
≪鬼神変≫
俺のこの拳、岩盤ぐれぇで砕けると思うなよ?つーか、こっちが砕いてやらぁ。

こまけぇことは忽の奴に任せりゃうまく動かしてくれんだろ。
眼鏡くいっつっても、秘書っていうより背伸びしてるガリ勉のガキにしかみえねぇけどな。……おっと、口が滑ったぜ。


辻・彩花
労働者に紛れたのはいいけど、この首輪なんとかならないのかね。
アタシの趣味じゃないよ。色んな意味でね。

やっぱノルマの達成は簡単な事じゃないんだね。みんな過労で今にも死にそうって感じ。
アタシたちが代わるからみんなは休んでて。ってジェスチャーで伝わるかな?

【念動力】で採掘道具を複数同時に操って掘り進むよ。
【操作会得】のサポートがあれば多少大雑把に動かしても平気かな?
岩盤ぶち抜くつもりで思いっきりいくよ!

ノルマ達成したらまずはキャンディを一口……うーん、労働後の甘い物は格別だね。
あ、もちろん聞き込みもするよ。敵が巡回しに来る時間なんかだね。

あと少しの辛抱だよ。敵を倒してその首輪から解放してあげる。


ココ・ジスカールアンベル
■外見
笑顔(糸目)のシスター

■性質
肉食昆虫の化身のようなインセクティア。
敵と敵以外、肉と肉以外というような識別しかしていません。
言動は幻覚が見えてる系の狂信者。

■行動
「少し早く来てしまいましたね…」
戦いが始まる前に来てしまい、斬るべき相手がいない中、渋々鉱山労働に励んでいます。
時折、我が主…とか、肉…とか呟きながら。
【腐食】の効果で岩や地面を溶かしながら穴掘りをしています。
「とこしえの…王なる我が主に…弱き身は…より頼む…。贖い主…守り手のあわれみ…とわに変わらず…」
戦いが始まる時を待ち望み、身を震わせながら。

■その他
アドリブや連携歓迎です。


石心・リーリャ
・仲間との連携、アドリブ
大歓迎!

・心情
予想以上に酷い環境じゃん、ここ。
早く首謀者のゾルダートをぶちのめして、ここの鉱山労働者の人たちを解放したげたいけど、今は我慢かー。
まずはノルマをさくっとやっつけちゃおう。

・行動
パラドクス【揺月】の残留効果【怪力無双】もフル活用して、ノルマをどんどんこなしていくし。
とりま、今日の分のノルマを爆速で終わらせて、その後の調査がやりやすいようにするよ。
一般人の鉱山労働者には隠れて休んでもらっとこ。
「今のうちに、てきとーにやったふりしたりしてコッソリ休んどき」
ノルマを終わらせながら、さりげなくゾルダートの見回りのタイミングとかを一般人の鉱山労働者から聞き出しとくし。


 炭鉱には驚きの空気が広がりつつある。周囲にいた労働者たちは次々に作業する手を止め、“新入り”たちの仕事ぶりに目を見開いた。
「……」
 御門・風花(静謐の凶鳥/ミセリコルデ・g01985)は身振りで壁を指差す労働者に、こくりと頷いて理解したことを伝える。三苫・麻緒(ミント☆ソウル・g01206)が『下がってください』という意味を込めて両手を広げると、彼らはいぶかしみながらもその場から距離を置いた。
 ――大丈夫なんだろうか。
 なにしろ、潜入したディアボロスたちは怪しまれないように現地人のそれに近い衣装を選び、一般人を装っているのだ。屈強な男たちですら根を上げる作業を、果たしてこの子たちにやらせていいのだろうか。
(「無問題やで!」)
 任せなさいとばかりに遠遠・忽(抜きっぱなしの伝家の宝刀・g00329)はスケジュール帳を取り出し、地質調査中のエルマー・クライネルト(価値の残滓・g00074)と頷き合った。坑道内の岩盤は場所によってかなり性質が異なるようだ。エルマーが印をつけた場所を忽が書き取り、仕事を割り振る。
 風間・響(一から万屋・g00059)は、いらいらと頭を掻きむしりながら炭鉱の様子を眺め渡した。
(「マジで皆、首輪着けて黙りこくってやがるぜ……ったく、クロノヴェーダってやつはどこまでいい趣味してやがんだ? 胸糞わりぃ」)
 エルマーは印を指差し、ここは近寄るなと労働者たちに示した。両手を動かして崩落の危険があるのだと伝える。労働者たちは半信半疑で頷き、比較的脆いと伝えられた印のある場所に採掘道具を振り下ろした。
「!?」
 刃が通った。
 彼らは夢中で掘り始める。その中にはココ・ジスカールアンベル(甜血の蟲籠・g04970)の姿も混ざっていた。
「…………」
 ココは軽く岩盤を触って硬いところを探し出すと、例の腐食を発動してあっという間に柔らかく溶かしてしまう。
(「少し早く来てしまいましたね……」)
 肉の気配を求めてやってきたココを待っていたのは、敵ではなく穴掘りであった。なんという皮肉であろうか。あれほど肉を欲し、敵を嬲るのが生き甲斐のココが仕方なしにスコップを壁に突き刺し、黙々と土の山を積み上げているのである。
(「我が主……肉……」)
 待ち遠しさに胸焦がれ、戦いの時を今かと待ち侘びる。
 ちなみにエルマーがもう一つ、別に印をつけたのは崩落の危険が高い箇所だ。こちらは麻緒がフォローに回ることになった。
(「よぉし!」)
 腕をまくり、呼び出した凍気で急速冷凍。カチコチに凍らせてしまえば、崩れてくる心配なんて必要ない。
 辻・彩花(Stray Girl・g03047)は指先を自分の首輪に引っ掛け、軽く身じろいだ。慣れない。というか、色々な意味で趣味じゃない。
 労働者たちは想像以上に疲労しており、いまにも倒れそうな顔色の者が多かった。彩花は特に具合の悪そうな者に近寄り、指で自分を示してから皆は休むような身振りを繰り返した。最初は戸惑っていた労働者たちも、実際に楽々と作業をこなすディアボロスたちを見て考えを改めたようだ。
 白水・蛍(鼓舞する詩歌・g01398)など、労働者と同じ道具を使っているはずなのに余りにもやすやすと岩盤を砕いてゆくではないか。
「(細かい場所は私がツルハシでやりましょうか)」
「(りょ!)」
 石心・リーリャ(アンチェインド・サイレンス・g04371)は敬礼するみたいに笑って、暴れても問題なさそうな場所へ回り込む。風花とタイミングを合わせて放つ打撃技が激しい衝撃波を伴って、一挙に大穴をくり抜いた。
 リーリャは親指を立て、この調子でいこうというジェスチャー。風花も再び頷き、琥珀を地面に下ろして見張りを頼むことにした。
(「できるだけ、目立たない一般人を装っておかなきゃね……」)
 深く息を吸い、今度は繰り出す蹴りで道を塞ぐ巨大な岩石を割り砕いた。労働者たちは言葉にならない歓声を上げ、自ら土砂を運び出すのを手伝い始める。
(「もー、いまのうちにてきとーにやったふりしてコッソリ休んどきって言ってるのに……」)
 リーリャは腰に手を当て、仕方なさそうに笑った。絶望が希望に変わる瞬間ほど、力が湧いてくるときはないということなのだろう。
(「そうだ、砕けぬ壁などない」)
 エルマーは休むことなくツルハシを振るい、トンネルを掘り進めた。いつしか周りに集まった労働者たちの顔色が明るくなっている。彼らはエルマーたちに希望を見たのだ。もしかしたら、掘れるかもしれない。もしかしたら――。
「ふふ……」
 エルマーの唇からも、自然と笑みが零れ落ちた。嫌いな力仕事に精を出した甲斐があったというものだ。少し懐かしい気分を覚え、蛍は流れる汗の雫を拭った。危険な場所で働く彼らの姿に先祖の事業が重なったという事情もある。
(「それにしても、これは酷すぎる……」)
 忽は眼鏡を押し上げつつ、まとめたスケジュールのチェックに入った。
「(この調子なら、あと1時間もあれば掘り終えるで! どないや、風見さーん? こうしとると秘書っぽい風味やろ?)」
「――――」
 じっと忽を見てから、響は首を真横に振った。
「(どっからどう見ても、背伸びしてるガリ勉のガキ)」
「(ガ、カリ勉やとー? それを言うなら知的ゆーて欲しいなぁ!?)」
 忽はぷんすか頬を膨らませ、八つ当たりぎみに呼び出した妖怪たちをあれこれとこき使う。泥田坊には重い岩を運んでもらって、鴉天狗には高い場所を掘りに行かせる。人間サイズに調整しているので、労働者たちと混ざり合って作業を進めているのがなんだか微笑ましい。
 響はさて、と拳を鳴らして掘り進めたトンネルの奥に立つ。ぽんぽんと叩くと硬い感触が返ってくる、が――舐めるなよと解き放つ鬼神の力。
(「俺のこの拳、岩盤ぐれぇで砕けると思うなよ?」)
 むしろこっちが砕いてやる、という気合の乗った一撃が大きく壁を抉って大穴をぶち開けた。どんなもんだ、と軽く腕をを突き上げる。
「(風間さん、さすがやなー)」
「(ああ、とりあえずさっさとノルマをこなしちまおうぜ)」
 最後の方は麻緒が内緒で魔法を使い、バンバンと連続で爆破させまくった。彩花は「ほっ」と幾つもの採掘道具をお手玉のように操り、狙いを定める。
(「うん。大切に使われてきたんだね、アンタの使い方……ちゃんとアタシに伝わったよ」)
 勢いをつけてから、残りの壁へと一気にぶつける。ひと際派手な音がして、さまざまな大きさに砕かれた石ころが転がっていった。行く手の壁が薄くなるほどココの鼓動は高まり、その身は肉の期待に打ち震える。
「(とこしえの……王なる我が主に……弱き身は……より頼む……。贖い主……守り手のあわれみ……とわに変わらず……)」
 そして、遂に崩れ落ちた土の向こうに東地区が見えた。ココは歓喜の笑みを唇に刷き、待ちきれないといった様子でその穴を大きく広げてゆくのだった。

「ノルマ達成、だね?」
 開通したトンネルを背に両手を広げた麻緒がにっこりと笑って声をかけると、つられたように労働者たちが喜びの声を上げた。
「ほ、ほんとうだ……喋れるようになってる……!」
「うんうん。仕事中の私語は慎みなさいっていっても、あれはレベルを越えちゃってたよね。しかも首輪なんて、実に悪趣味」
 彼らは互いに抱き合い、ディアボロスの手を握って感謝を告げる。
「ありがとう、ありがとう。あんたらは神様だ。俺たちを救ってくれた」
「それだけじゃないよ、あなたたちはここから逃げられるの。後はわたしたちに任せておけば大丈夫」
「なんだって? でもこの首輪は……」
「信じてくれなくても構いません。しかし、私たちはこの環境を変えるために来たのです。そのために必要なことを教えてくれますか?」
 蛍を身近に感じた労働者たちは、二つ返事で頷いた。
「何が知りたいんだ。俺たちはあんたらに何をお返しできる?」
「まずは、敵の……君たちを無理やりに働かせていたクロノヴェーダの巡回経路と人数が知りたい」
 エルマーの質問は皆が知りたいと思っていたことだ。
「ツェツィーリエさまの?」
「彼女たちを倒せば、その首輪は効力を失います」
 風花が告げると、まさか、という反応。
「倒す? そんなことができるのか」
「ええ。こうやってお話しできるようになってよかった……。私たちはツェツィーリエたちを倒すために、彼女たちが見回りに来る時間などを尋ねたかったのです」
 ざわめきが広がった。
 彩花は舌の上に転がしたキャンディの甘味を「ん~」と堪能してから、仲間の説明に口添える。
「だからあと少しの辛抱だよ。その首輪から、ちゃんと解放してあげる」
「そーゆーこと! だってさ、予想以上にここってば酷い環境じゃん? もー、絶対助けたげなきゃって思ってたワケ」
 で、とリーリャが話を戻した。
「いつも、あいつらいつ頃やってくるの? まだ来る気配はないみたいだけど……」
「ああ、まだ少し早いな。いつもは朝、昼、夕方の3回だ。いまは昼前だから、あと数十分もすれば機械人形を手下よろしく引き連れてやってくるはずだ」
「なるほどな」
 エルマーは頷き、忽はちゃんとスケジュール帳に書き留めている。きりっとペンを片手に格好つけるのを響が呆れたように見ているのが面白い。
「わかった。私たちが必ずや奴らの息の根を止めて来る故、速やかに此処から脱出するように」
「ああ。人に首輪なんざ嵌めて忠実な操り人形にしようなんつう奴らだ。心置きなくぶっとばして、この炭鉱ごとぶち壊してやる」
 響が言い、麻緒が頷いた。
「それに、傷や痛みも随分と引いたでしょ?」
「そういえば……」
 活性治癒の効能だ。
 麻緒は小さく手を振った。
「元気でね。逃げ遅れる人がいないよう、皆に声をかけて」
「ああ……すまない……」
 さて、と忽はこれからのスケジュールを皆に伝える。
「ツェツィーリエはんらが見回りに来るまで、あと約45分くらいや。いまのうちに準備済ませて、時間になったらどーんと勝負をかけたろな!」
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【モブオーラ】LV1が発生!
【士気高揚】LV1が発生!
【プラチナチケット】LV2が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【怪力無双】LV2が発生!
【操作会得】LV1が発生!
【腐食】LV1が発生!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV5が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
【能力値アップ】LV2が発生!

御門・風花
敵が来るまでの間、労働者の方たちに『第一次世界大戦』について尋ねます。
ドイツの状況、大戦の結果、戦争で活躍した英雄や印象深い出来事、他国の情報など、質問してみます。
「わたし達は第一次世界大戦についての話が知りたいのですが、あなた方の知っていることを教えてくださいませんか?」
興味深いことがあれば、さらに詳しい内容を聞き出します。
「……今の情報、もう少し聞いてもよろしいですか?」
友達催眠は必要ないとは思いますが、もし不信感などで何か隠し事されている感じなら説得したり態度を弱らげるために使用します。
「なるほど、情報提供感謝いたします」
「後のことは、わたし達に任せて下さい。必ず、みなさんを解放します」


エリザベータ・シゲトヴァール
●心情
私の母国はドイツ帝国に併合されてしまったけど、その経緯くらいは知っておきたい。
いつか、いつの日か……再び立ち上がる日の為に。

それから私の父や兄、散って行った英霊たちがどう戦ったのかも知っておくべきだもの。

●行動
残留効果【プラチナチケット】を使用。
可能なら従軍経験のある人を探す。

開戦の経緯や戦況の転換点、終戦の形と講和条約等について尋ねる。

『フランツ・フェルディナント大公夫妻』『サラエボ事件』『タンネンベルクの戦い』『プルシーロフ攻勢』『アメリカ・イタリアの参戦』
というワードを投げ掛けて反応を見る。

可能なら……私の母国、オーストリア=ハンガリー二重帝国がどう戦ったかもね。


「さて……まだ時間には余裕がありますね」
 御門・風花(静謐の凶鳥/ミセリコルデ・g01985)は眼鏡に指先を触れ、じっと労働者たちを見つめる。果たして、彼らの認識はどうなっているのか――あの『第一次世界大戦』について。
「わたし達は第一次世界大戦についての話が知りたいのですが、あなた方の知っていることを教えてくださいませんか?」
「第一次世界大戦?」
 労働者たちはきょとんと首を傾げた。
「そんなの、子どもだって知ってるさ。俺たちドイツ機械帝国が勝った戦争だな」
「ええ、そうですね。その時、ドイツはどのような状況でした? 活躍した英雄の逸話など、印象深い出来事があったのでしょうか」
「どうって……勝ったんだから、優勢だったんじゃないか。英雄とか、詳しい内容は知らないが……なあ?」
「うん。それくらい、圧倒的な勝利だったんじゃないかなあ」
 彼らの話はどうも要領を得ないが、決してわざと誤魔化しているわけではないと風花は思った。エリザベータ・シゲトヴァール(聖イシュトヴァンの剣・g00490)もプラチナチケットの残留効果を利用し、親しみを込めてたずねる。
「従軍経験のある方はいるかしら」
 だが、誰も名乗り出ない。見るからに屈強な、いかにも軍人らしき見た目のものですら「戦争には行っていない」と答えるのだ。
「では、誰なら行ったの? 知り合いに従軍経験者がいる人はいないの?」
 エリザベータの質問にも困ったように首を振るばかり。なによりもおかしいのは、彼らがそれを不思議に思わないことだった。
「では、フランツ・フェルディアント大公夫妻がどうなったのかも知らないわけね。サラエボ事件も、タンネンベルクの戦いも。それにプルシーロフ攻勢、アメリカヤイタリアの参戦。そして――」
 我がオーストリア=ハンガリー二重帝国がどう戦ったのかも。母国がどのように併合されたのか、その経緯を知りたいという必死の想いはずぶずぶと先の見えない闇の中へ呑まれてゆくようであった。
(「ああ、父よ兄よ……散っていった英霊たちよ……!」)
 がっくりと膝を突き、拳を握りしめるエリザベータの代わりに風花が尋ねる。
「では、他国についても詳しいことはわからないのですね?」
「そりゃ、自分の国のことで精いっぱいだからな。あんたらこそ、どうしてそんなに戦争や他の国のことを知りたがるんだ?」
 労働者の声色が変わるが、風花は慌てることなく友達催眠を使うことで相手の態度を和らげようと試みる。
「すみません、お疲れのところ少し聞き過ぎましたね。お話してくださってありがとうございます」
「ん……ああ、いや。こちらこそ声を荒げて悪かったね」
「後のことは、わたし達に任せて下さい。必ず、みなさんを解放します」
 風花は目礼し、彼らとの会話を切り上げた。
「隠し事をしているような様子はありませんでしたね」
「ええ……あれが一般人の通常の反応だとすると、改竄された歴史に関する認識はとてもじゃないけど整合性が取れていない」
 唇を噛み、エリザベータは低く唸った。
「戦争があったのに、誰も戦地へ行っていないなんてあるわけがない。それを不思議に思わないくらい、彼らは改竄された歴史に支配されてしまっているのだわ……!」
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【友達催眠】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!
【能力値アップ】がLV3になった!

白水・蛍
アドリブ連携歓迎

敵が来ましたね。では、まず、周囲の敵を排除いたしましょう。
取り巻きどもは軍人?なのかしら。
軍人なのであれば……誇りをなくした者に容赦は不要かしらね?

パラドクスは敵が見えたら即使用します。
音の魔法を多数の敵にぶつけます。

その後は、音の魔力を敵にぶつけつつ、術式を施した≪刀琴弦≫で敵を切り裂きながら攻撃いたします。

多少の傷は厭わず攻撃。味方と協力して確実に一体ずつ取り巻きを倒していきましょう。


エルマー・クライネルト
アドリブ◎

労働者達から離れた場所へ待機し、鉄屑共を迎え撃つ

労働は果たしてやったのだ。対価を貰わなければな?
なに、大したものは求めん。貴様等の命で払ってくれれば構わない

くるみ割り人形の割には物騒なことだ
くるみと言うのも何かの比喩かも知れんがな。まぁどうでもいい
割られるのは果たして何方なのだろうな


進軍して来る敵を人形で迎え撃ちながら後退し
パラドクスで張り巡らせた鋼糸に絡ませていく
味方の攻撃対象を狙って絡ませた鋼糸で【捕縛】し、攻撃確実に命中するよう誘導

…さて、くるみ割り人形の名の通り見事な踊りを見せてくれたが、もう十分だ
張り巡らせた鋼糸を全て巻き取り、残った敵を全て【粉砕】して後片付けだ


ココ・ジスカールアンベル
■外見
笑顔(糸目)のシスター

■性質
人間味が薄く、肉食昆虫の化身のような戦闘狂
敵と敵以外、肉と肉以外というような識別しかできない狂信者

■行動
戦いの始まりと共に、幽鬼の如く影から現れます。
「…待ち望んでおりました…我が主…」
「狩りによりてのみ…我が主の救いに与かる…」
パラドクス【腐肉に集るもの】を岩陰という岩陰から湧き上がらせ、敵に群がらせます。倒した敵に止めを差しながら、歌うように、祈るように呟きながら。糸目の笑顔のまま、戦い続けます。
「我が主こそ命の与えし君なれや…赦しも潔めも…凡て御手にあり…凡て御手にあり」
敵を倒した後、次の敵を探し求め、彷徨い消えます。

■その他
アドリブや連携歓迎です


石心・リーリャ
・仲間との連携、アドリブ
大歓迎!

・心情
ボスキャラをやっつける前に、まずはこいつらね!
ここで囚われている人たちを早く解放してあげたいし。

・行動
やってくる見回りの取り巻きをまず速攻でやっつけるよ!
パラドクス【薄明螺旋剣(ミラージュエッジ)】で、さくっと刻んでく。
「おいでなすったじゃん?来て早々悪いけど、秒で蹴散らすし!」
あと、可能な限り、戦場になる場所から鉱山労働者の人たちを避難させとく。


遠遠・忽
アドリブ、絡み歓迎や!
引き続き風間さんと参加

「なーにがくるみ割り機械人形や、こっちがどたまかち割ったるで!」
虐げられた人らの恨みも込めてドカンドカンいくで

集団と戦うコツは、こまめに移動すること!
陣形的にも相手に数の有利を使わさへんよーに
追い掛けられても、それも計算済み!
……みたいな顔して
「風間さん、よろしゅう!」
ふぅと一息
……よっしゃ、ここから共闘やな
闘技で組んどる分、上手くやれそーや!
こういうときのデンショウセンジュツは……ずばり、背中合わせ!
「……割と難しいな、これ。二人とも動き回るタイプやし」
とか言いつつちゃんとタイミングは合わせていくで

同一タイプの集団にも負けへんチームワーク見せたろ!


風間・響
引き続き忽と参加だな

くるみ割り人形ってあんな血みどろな感じだったっけか!?
へっ、だが遠慮はしねぇからな。ばらばらになってゼンマイぶちまけても、文句言うんじゃねーぞ!

よく斬れそうな刃物をお持ちのこって。
こりゃ生身の部分で受けたらなます切りにされちまうな。
しっかりと硬化した両腕で受け止めてっと。

って、忽のやつめっちゃ追われてんじゃねぇかよ!?
ったくしゃーねぇな。貸し一つだぜ!
戦ってる人形の頭を踏み越えて、忽を襲ってるやつに飛び蹴りかましてやらぁ!
さ、こっからは共闘といこうじゃねぇか!忽の動きなら散々見てきてるしな。安心して背中を任せられるってもんよ!


辻・彩花
あ、敵もう来たんだ。じゃあ休憩終わりっと……労働者のみんなは下がっててね。

近づかれる前に【キネシスランチャー】で攻撃するよ。弾になる石がたんまりあるからね。
アンタたちの為に掘ったんだから感謝してよね。でもタダ働きは勘弁。
アンタたちの命で払うってのはどう?

こっちの妨害を受けても統率を維持できるっていうなら大したものだね。
悪いけどバンバン投石して邪魔させてもらうから。
それに統率を取る為には指示を出すリーダー格がいるんじゃない?
そいつを狙い撃ちしたら面白い事になるかもね。


 そろそろか、とエルマー・クライネルト(価値の残滓・g00074)は労働者たちにここから離れるよう告げた。
「分かっているな? 私たちが奴らを倒せば、首輪は効力を失い炭鉱の外へ出ても問題はなくなる……」
「ああ。そうしたら、すぐに逃げ出せばいいんだな」
 労働者たちが頷くのを確かめ、エルマーもまた顎を引いて真剣な顔つきになる。辻・彩花(Stray Girl・g03047)の耳に複数の足音が聞こえた。
「休憩終わり、っと。それじゃいってくるよ。ちゃんと、みんなは下がっててね……よし」
 彼らがトンネルを通って東地区にまで避難するのを見送って、彩花は立ち上がった服の裾を叩いた。
「戦いが終わるまで、ちゃーんと隠れとき!」
 石心・リーリャ(アンチェインド・サイレンス・g04371)に念を押された労働者たちは、トンネルの向こうから両腕を頭の上に掲げて大きなマルを作る。了解という意味だろう。
「むむ? ツェツィーリエさま、お待ちください。新入りでしょうか? 身に覚えのないやつらがおりますが――」
 先頭をゆく機械人形が怪訝な声を上げた。日誌を脇に抱えたツェツィーリエは不思議そうに首を傾げる。
「労働者たちがいませんね。それに、あの大穴はまさか……」
 ツェツィーリエが言いかけた時だ。白水・蛍(鼓舞する詩歌・g01398)の奏でるハープの音色が不意打ちとなって彼らを襲った。
「こ、この音色は!? ぎゃッ」
 まるで音の塊のような見えないそれが、機械人形を殴り倒すように猛威を振るう。挨拶が済んだところで、エルマーが名乗り出た。
「お前たちの課したノルマなら達成したぞ。これからその対価を頂こうと思っていたところだ」
「達成!?」
 慌ててトンネルを覗き込み、向こう側まで開通していることを確認すると素っ頓狂な声で叫んだ。
「ツェツィーリエさま、ほんとうです! 東地区までトンネルが掘れていますぞ!!」
「感謝してよね、アンタたちの為に掘ったんだからさ」
 彩花はすっと彼らに手のひらを向ける。周囲にあった石礫や岩の破片が一斉に浮かび上がり、瞬く間に武器となって降り注いだ。
「タダ働きは性に合わないの。アンタたちの命で払ってもらうわ!」
「ふっ、安いものだろう? お前たちの奪った命の重さに比べればな……!」
 機械人形は頭を庇いながら逃げ惑う。エルマーの操る偶像めいた人形が飛びかかり、先頭にいた機械人形と組み合った。そうやって人形に相手をさせている間に、戦場の至る所へと鋼糸を張り巡らせておく。これは後の布石である。
「おいでなすったじゃん? 来て早々悪いけど、秒で蹴散らすし!」
 リーリャが元気よく鎖鋸を振り回しながら、敵群のただ中へと突っ込んでいった。こういう戦場で無双するのが薄明螺旋剣の見せ所である。
「いくよ!」
 ぐるんッ、と炎の軌跡を描いて敵を圧殺する怒涛の必殺技――!! 機械人形は軽々と吹き飛び、表面をガラス化しながら砕け散る。
「……待ち望んでおりました……我が主……」
 ココ・ジスカールアンベル(甜血の蟲籠・g04970)はうっとりと天を仰ぎ、願いが聞き届けられたことを感謝するように祈りを捧げた。けれど、彼女が纏うのは光ではなく影……おっとりと微笑む姿は使徒の姿をしていながらもその雰囲気はまるで幽鬼に近い。
「こ、これは――ッ?」
 途端に黒い霧が彼らを取り囲んだ。岩陰の裏や壁の隙間から無限に湧き出るその毒の名を、腐肉に集るものと呼ぶ。
「狩りによりてのみ……我が主の救いに与かる……」
 毒に侵されて身悶える敵に弾丸を撃ち込み、苦しみから解放してやりながらココは歌を紡ぐように呟くのだった。両目は閉ざしたまま、薄っすらと笑みさえ浮かべて。
「うろたえるな! それ、号令ッ!!」
 隊列を組んで突撃する機械人形を引き連れるような格好で、遠遠・忽(抜きっぱなしの伝家の宝刀・g00329)は「こっちや、こっち!」と戦場中を駆け回る。
「なーにがくるみ割り機械人形や、こっちがどたまかち割ったるで! ――てなわけで、風間さんよろしゅう!」
「いやいや、どっからどう見たって敵を攪乱してるというよりは追われてるって感じだろ!? ったくしゃーねぇな。貸し一つだぜ!」
 風間・響(一から万屋・g00059)は敵の動きに注目した。ちょこまかと動き回る忽によってだいぶかき回されたらしく、戦列が崩れてばらばらになっている。
「頭、借りるぜ!」
「ぷぎゅ!」
 人形の頭を踏み台にして跳躍、忽を追い回していた先頭の奴に跳び蹴りをかまして吹っ飛ばした。空中で弾けたゼンマイが地面で跳ね、他の残骸と一緒に積み重なった。
「ふぅー。つか、くるみ割り人形ってこんな血みどろな感じだったっけか!?」
「なんか、本当は残酷ななんとかみたいな話やんなあ」
 忽の振り回す巨大鈍器が炸裂して敵を破壊、宣言通りに頭を打ち砕かれた残りの体が痙攣してからぱたりと動かなくなる。
「よくも!」
「――おっと」
 鋭いサーベルを繰り出す敵の一撃を、響は硬質化した両腕を交差して受け止めた。うっかり生身で受けたらなます切りルート間違いなしだ。
「へっ、よく斬れそうな刃物をお持ちのこって。だがな、こいつは流石に斬れやしねぇだろ?」
「うぐぐ……!」
 歯を食いしばってサーベルを押し付けるが、鬼化した腕はびくともしない。
「そこや!」
 ぐるんと勢いをつけた忽が間に割って入るのに合わせて響が下がる。目まぐるしく互いの位置が変わるから、背中を預けて戦うのも楽ではない。
「……割と難しいな、これ。二人とも動き回るタイプやし」
「ははッ! でも、それ以上に安心感があるぜ」
 戦乱の中、共闘するふたりの背中が離れそうになってはまた近づく。息の合ったコンビネーションだった。互いの姿が見えていなくとも、気配で居場所が分かるといったような。
「どないや、同一タイプの集団にも負けへんチームワークやろ! 闘技で培った仲間パワーを舐めたらあかんで!」
「うぬぬ……! なにをやっている、早く陣形を立て直せー!」
「できるの?」
 彩花は人差し指を立て、首を傾げる。
「これでも維持できるっていうなら大したものだけど――」
 それはもう、手加減なしで叩きつける投石の嵐である。混乱する敵の中から、彩花はリーダー格らしき個体に目を付けた。
「号令! 号令!」
「あれかな」
 えい、と人差し指を向けてリーダーだけを狙い撃つ。
「わ、わ!」
 体勢を崩して倒れ込んだところが、エルマーの張り巡らせた鋼糸のただ中であった。即座に四肢を絡め取り、蛍の前へと差し出す。しなやかに振るわれた刀琴弦がそこを真っ二つに切り裂いた。
「軍人たるもの、最低限の誇りは胸に戴いておくべきではないかしらね? まあ……今更言っても聞こえないでしょうけれど」
 蛍は切っ先を残る機械人形たちに差し向けた。
「残るはあなた方だけですよ」
「うぐッ……」
 エルマーの指先が鋼糸を繰るように動いた。
「もう十分だ、お前たちは見事に踊ってくれた」
 鼓膜を震わせる微かな音を鳴らして巻き取られた糸が、機械人形たちをひとまとめにして粉砕。歯車やバネが爆ぜてツェツィーリエの元まで転がっていった。
「我が主こそ命の与えし君なれや……赦しも潔めも……凡て御手にあり……凡て御手にあり」
 いつの間にか、ココの姿が見えなくなっている。登場も前触れがなければ、去る時にも跡を濁さない。神出鬼没と言うのに相応しい振る舞いであった。

「さあ、いよいよボスキャラの出番じゃん! かかってき!」
「……まあ」
 リーリャが威勢よく見得を切ると、ツェツィーリエは驚いたように目を瞬いて手元の日誌を開いた。ペンを走らせる。
「〇月◎日、機械人形全滅」
 それから、ディアボロスたちを見つめて呟いた。
「私の考えたノルマを達成し、機械人形たちを全滅させるほどの力……あなた方を倒せば、私はきっと褒められるに違いありません。この運営日誌の次のページには、あなた方の死体の数が書き込まれるのです」
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【プラチナチケット】がLV3になった!
【壁歩き】LV1が発生!
【腐食】がLV2になった!
【避難勧告】LV1が発生!
【書物解読】LV1が発生!
【怪力無双】がLV3になった!
【強運の加護】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV9になった!
【命中アップ】LV2が発生!
【能力値アップ】がLV4になった!
【アヴォイド】LV1が発生!

エリザベータ・シゲトヴァール
●心情
(やり切れない思いが胸の内に渦巻いているが、小さくかぶりを振って)

……大丈夫よ、御門さん。私は復讐者であり、何より聖イシュトヴァンの剣。母国の為に戦うと誓ったもの。
任務を全う出来ずして、何が護国の剣か。

●行動
狭い坑道内だけど、地下施設でも飛んだ経験はある。問題は無いわ。

坑道の暗がりを【完全視界】で見渡し、逆に【光学迷彩】を活かして死角に滑り込む。
迷彩の内容は周囲の岩肌の色を参考に。
【戦闘知識】と【地形の利用】の応用で削られた岩肌の凹凸や掘り出された土砂等を遮蔽物に活用し、
音を立てない様【忍び足】で接敵し【不意打ち】
マシンピストルの【制圧射撃】で敵の足を止め、御門さんの攻撃の起点を作るわ。


御門・風花
エリザベータと一緒に戦います。

悩んでいる彼女を見て、風花なりに言葉を考えながら声をかけます。
「エリザベータ。奪われた人たちの記憶も記録も取り戻しましょう」
「クロノヴェーダを倒していくことで、必ず道は切り開けます」

敵へと歩きながら右手でナイフを引き抜き逆手に構えて、目を瞑り静かに呼吸を整え精神を集中させる。
「……」
周囲の気の流れを感じ取ることで、敵の動きをスローモーションの如く捉え神速反応で回避、ナイフで一閃する。
「『ミセリコルデ』戦闘を開始します」
オーラを解放し、踊るような動きに合わせ、こちらも舞の如くオーラを纏わせた両腕で攻撃を捌きながら掌底や蹴撃、ナイフで反撃します。
「近接戦なら負けない」


三苫・麻緒
運営日誌を書く必要なんてもうないよ
だって無報酬で危険な仕事をさせる超ブラックなこの現場はなくなるんだから

ひとまずは動きを止めることを目標に置こうかな
固く伸ばした翼で手足から狙っていって、痛みやしびれで満足に動けない状態に追いやっていくよ
隙を見て一撃を見舞ってくれそうな人がいるし、それなら≪殺気≫を振りまいてツェツィーリエの意識をこちらに引っ張って、より確実で致命的な一撃になるように手伝いたいな

相手の増援に対しては炭坑内が崩落しない程度に≪爆破≫させて、≪撹乱≫したところを確実に倒していきたいところ
可能なら足を凍らせて動けないようにしたいね


白水・蛍
アドリブ、連携歓迎

さあ、後は貴女だけですわ。参ります!

戦闘始まってすぐ【パラドクス】使用。この身に英雄を降ろしその鋭い一撃を与えます!

その後は≪ブレイドハープ―詠唱―≫を用いて接近戦攻撃を行います。
「両断」や「吹き飛ばし」で体勢を崩す事を試みつつ、片手で「演奏」、音を紡いで「歌唱」を行い、音の魔力をぶつけます。
更に、音の術式を施した≪刀琴弦≫も「演奏」や「歌唱」とあわせ、「不意打ち」や「捕縛」で攻撃。

味方と連携を重ねて、攻撃を確実に当てて、最後に倒せればそれでいい。
故に傷を負う事を恐れませんわ。


辻・彩花
いや、一人書き忘れてるよ。これから倒されるアンタの事も予め書いておいた方がいいんじゃない?

残るはアヴァタール級だけと思ったけどまだ仲間がいたんだね。
いくらでも呼べばいいよ。無駄だろうけどね。

【オーバーライト】でツェツィーリエが呼び出した仲間の精神に干渉。
攻撃対象をアタシからツェツィーリエに書き換えて同士討ちさせるよ。
アンタの指示には従えないってさ。まあアタシがそう仕向けたんだけど。

アタシも【念動力】で石を【投擲】して加勢しちゃおうかな。
【未来予測】で動きを先読みして、的確に当てるよ。
うーん、我ながら嫌らしい戦法だね。でも因果応報じゃない?


石心・リーリャ
・仲間との連携、アドリブ
大歓迎!

・心情
とぼけたこと言ってるけど、その日誌の続きはもう書けなくなるし?
遺書でも書いておくべきだったんじゃん?
鉱山労働者の人たちを早く解放してあげたいから、さくさくやらせてもらうよ!

・行動
一気に距離を詰めて斬りかかる!
パラドクス【朧星(バイナリーコスモス)】で洞窟の壁面から壁ダッシュしながら、鎖鋸でぶっこむよ!
「ちょっと判断ミスじゃん?うちを甘く見て貰ったら困るし!」
戦いが終わったら、鉱山労働者の人たちを解放するよ。
「みんな無事?もー大丈夫だから。家にお帰り。」


エルマー・クライネルト
アドリブ◎

勤勉なことだ、感心はしないがね

【完全視界】で戦場の全体地形を【情報収集】
鋼糸を地形に張り巡らせて移動を制限、足場の悪い地形へと誘い込む
敵の格闘術を足場の悪い【地形を利用】して鈍らせ、大振りの動きのタイミングを測り足元を【腐食】させて体勢を崩すのを狙う

防御が疎かになった所へオラトリオへ命じ、パラドクス発動
貴様の日誌を見るまでもない、随分な数を奪って来たのだろう?
ならば『諸君』、あれから存分に奪い返したまえ
坑道で力尽きた者達の【呪詛】に呼びかけて咲かせた花に集約し、奴の心臓を穿つ

戦闘後は労働者達を連れて脱出
仕事上がりに浴びる日差しは気分が良いな
偶には肉体労働も悪くなかったかもな、偶には。


遠遠・忽
アドリブ・絡み歓迎や
風間さんと参加

さぁ、あとはアンタだけやで覚悟しいや!

っと言っても相手はアヴァタール級、舐めて掛ってええ相手やないからな
そんな緊張は微塵も見せずに、挑発して囮をやるで
「ツェツィびびってる!へいへいへーい!」
口先だけやのうてパラドクスも使っていくで
こまめに攻撃して、こいつ放置しとけへんと思わせんとな

相手が弱ってきたら、わざと単調な攻撃を繰り返して……
ズラして攻撃して、隙を作るで~
「今やっ!!」


風間・響
忽と参加だな

さぁて、残すとこは敵の大将だけか!
でっけぇ得物だな。あんなんで頭カチ割られたらたまったもんじゃねぇ。きーつけねぇと。

いや、忽お前なぁ。んなピッチャービビってるみたいな……。
「ぷー、くすくす。小学生相手に本気になっちゃってかっこわるーい!」
まぁ、当然俺も煽るけどな!あ、小学生ってのは忽のことな。

周りに散らばってる機械人形たちの部品片手に戦ってみますか。
せっかく忽が作ってくれた隙、活用しないのも勿体ねぇしな?
「ほいきた!!」
これが阿吽の呼吸ってやつなのかね?


「いや、一人書き忘れてるよ」
 辻・彩花(Stray Girl・g03047)はちょっと呆れたように言って帽子のつばを指先で掴み、顎を上げてツェツィーリエを見据えた。
「まあ、いったいどなたの事でしょうか?」
「言わなきゃ分からない? これから倒されるアンタの事だよ」
「倒す? 私を?」
 ぴんと来ていない様子のツェツィーリエに石心・リーリャ(アンチェインド・サイレンス・g04371)が鎖鋸の先を突き付ける。
「とぼけたこと言っても無駄なワケ。その日誌の続きはもう書けなくなるし?」
「うん。書く必要なんて、もうないよ」
 三苫・麻緒(ミント☆ソウル・g01206)が頷いた。
「だって、無報酬で危険な仕事をさせるような現場はなくなるから。超ブラックにも程があるってこと、その身をもって思い知ってもらうんだから」
「そーゆーこと! むしろ遺書でも書いておくべきだったんじゃん?」
「さあ、後は貴女だけですわ。参ります!」 
 リーリャが駆け出すのと同時、白水・蛍(鼓舞する詩歌・g01398)の唇から紡がれる歌声が英雄の魂をこの身に呼び覚ます。まるで、伝承詩に謳われる伝説が再現されたかのような一幕が蛍の剣閃によって封切られたのであった。
「……つまり、あなた方はこう仰りたいのですね? 私に勝つ――と。よろしいでしょう。では、全力でお相手いたします」
 ――ゴゥン、とツェツィーリエの掴んだ鉄球が唸るような音を上げて振り回される。「おっと、やべェ」とばかりに風間・響(一から万屋・g00059)は身構えた。
「あんなんで頭カチ割られたらたまったもんじゃねぇぜ。きーつけねぇと……」
 そしてふと、隣の遠遠・忽(抜きっぱなしの伝家の宝刀・g00329)を見る。
「さぁ、あとはアンタだけやで!」
 勇ましく巨大鈍器を「てやー」と振り回す忽を見ていると何かが似ているような……いや、気のせいか?
「どしたん、じっとうちのこと見て?」
「でかい……鈍器……いや、何でもない! さぁ、敵の大将をとっとと倒すとしましょうか」
「せやな、てなわけで覚悟しいや!」
 御門・風花(静謐の凶鳥/ミセリコルデ・g01985)はエリザベータ・シゲトヴァール(聖イシュトヴァンの剣・g00490)の隣に並び立ち、そっと囁くように声をかけた。
「エリザベータ。奪われた人たちの記憶も記録も取り戻しましょう」
 感情を喪ったかのように見えた少女の、思いもかけぬ言葉にエリザベータははっと顔を上げた。それから何かを振り払うように、小さくかぶりを振る。
「……大丈夫よ、御門さん。私は復讐者であり、何より聖イシュトヴァンの剣。母国の為に戦うと誓ったのだから」
 エリザベータが銃を抜き、前を見据えるのに合わせて風花も引き抜いたナイフを逆手に構えた。瞑目し、深呼吸を繰り返す――。
「倒しましょう、クロノヴェーダを。その先に必ず道は切り開けます」
「ええ、護国の剣たる証をここに打ち立ててみせるわ!」
 坑道内の狭さを微塵も感じさせぬ動きで、エリザベータは宙へと飛び立った。完全視界によって見通す炭鉱の岩肌へと、その姿があっという間に溶け込んでしまった。エルマー・クライネルト(価値の残滓・g00074)の闇を透かす瞳には、複雑に入り組んだ岩々に張り巡らせた自らの鋼糸がよく見渡せる。
「さあ、踊りたまえ」
「――!?」
 ツェツィーリエの意識が足元に引っかかる鋼糸に逸れた瞬間、麻緒の翼がまるで意思を持つ槍のようにツェツィーリエの手足目掛けて迸った。
「もらったよ!」
「つ……ッ」
 畳みかける様に、蛍の刃が敵を両断する勢いで迫る。迸った血潮が土壁を赤く染め、ツェツィーリエの体を大岩へと叩きつけた。
 ――よもや、その大岩の真裏に己の持ち得るあらゆる知識を用い、気配を殺して近づいていたエリザベータが攻撃の準備を完全に整えていたとも知らずに。
「くッ」
 苦悶に呻くツェツィーリエはきっとディアボロスを睨み、巨大鉄球を操るとは思えない素早さで躍りかからんとする。
「いくわよ、御門さん!」
 まさしく、その時を待っていたエリザベータのマシンピストルが火を噴いた。敵を足止める壮絶な銃声が炭坑内に響き渡る中を風花が馳せる。何もかもがゆっくりと動いているかのように見えた。かろうじて動いた右手で叩きつける鉄球の軌道を見極め、合間をすり抜ける――まるで舞うかのように。
「『ミセリコルデ』戦闘を開始します」
 発散されるオーラが極彩色に揺らめき、一閃するナイフの刃に反射した。
「あッ」
 胸元を深く抉られ、ツェツィーリエがよろめく。忽は緊張で汗ばむ両手を握り締め、自分にできる全開の笑顔で叫ぶのだった。
「ツェツィびびってる! へいへいへーい!」
「ツェッ……」
 いきなり略称で呼び捨てにされたツェツィーリエの頬が朱に染まる。
「な、なれなれしいッ……その呼び方、やめてくださらない!?」
「おっ、照れるなんて可愛らしいとこあるやん? ほらほらツェツィ、うちはこっちやで!」
「ま、待ちなさいったら!」
 忽はぶんぶんと鉄球を振り回すツェツィーリエから付かず離れずの距離を保ちつつ、隙を見ては鈍器での反撃を織り交ぜて挑発。
「俺、ああいう煽り方見たことあるわ……主にプロ野球の観戦で……」
 響の脳内でヤジを食らうピッチャーの図が思い起こされる。真っ赤になって怒るツェツィーリエに追い打ちをかけるため、響も忽に倣ってはやし立てることにした。
「ぷー、くすくす。小学生相手に本気になっちゃってかっこわるーい!」
「ぐッ……」
「そっちばっかり気にしてていいの? 私のことも構ってほしいな」
 麻緒までもが、わざと殺気を振りまく様にしてツェツィーリエの注意を引き付ける。こうなれば皆で『鬼さんこちら』の要領だ。
「も、もう!」
 四方から挑発され、ツェツィーリエはどこから手をつけたら分からないとばかりの癇癪を起こした。ダンダン、と鉄球の柄を地面に叩きつけて配下を呼び寄せる。
「出てらっしゃい! こいつらを炭坑から叩き出しておやりなさいな!」
 どこからか湧いて出るのは、さっきの機械人形を小さくしたような小人たちだ。麻緒は軽く手を叩いてにっこりと微笑む。
「残念でした、それは対策済みだよ」
 いつの間にか、麻緒の足元から氷の筋が伸びている。それらは小人たちの足を凍らせ、周囲の爆破から逃れられないように手回しされた後だった。
「ちゃんと手加減して、と――」
 ぼんッ、と周囲に爆音が轟いて小人が弾け飛ぶ。蛍は恐れることなく、混乱する敵陣を突っ切った。供にするのは英雄たちを称えし勇壮なる旋律、まるで五線譜のように舞った弦が敵の両腕を絡め取り自由を奪った。
「く……!」
「彼の英雄たちが紡いだ伝説に比べれば、あなたの成した事など日誌に書き留める程度のささいな戯れでしかありませんわ」
 すぐさま、小人たちがツェツィーリエを助けに向かった。
「無駄だよ!」
 だが、彩花の両目が脈打つように光った途端に小人たちは目の色を変え、よりにもよってツェツィーリエに襲い掛かったのである。
「アンタの指示には従えないってさ。まあ、アタシがそう仕向けたんだけど」
 彩花の背後に浮かび上がった石ころが更にツェツィーリエを追い詰める。しかも、未来予測による先読みのおまけ付きでは堪らない。
「自分の味方に足引っ張られながら動きまで読まれたら、さすがに避けられないよねー」
「な、なんて卑怯な子たちでしょう……!」
 歯ぎしりするツェツィーリエにも、彩花はあっさりと言った。
「因果応報じゃない?」
「その通りだ。君の行いは確かに勤勉ではあるが、感心はできないな――フルーフ」
 既に情報は出揃った。これまで情報の収集と分析に集中していたエルマーがようやく顔を上げ、敵と相対する。
「気づかないか? いつしか己が、足場の悪い場所へと追い込まれていたことに」
「――あ?」
 まさか、とツェツィーリエは周囲を見回した。その拍子に抱えていた日誌が地面に落ちてページが捲れる。そこに書かれているだろう犠牲者の数を想い、エルマーは一度だけ目を閉じた。
「……ならば『諸君』、あれから奪い返したまえ。存分に、ありったけを」
「させるものですか――!!」
 進み出るオラトリオの指先から逃れるように、ツェツィーリエは鉄球を高々と振りかざす。だが、それが振り下ろされるよりも壁を蹴ったリーリャがオーバーロードした鎖鋸を宙に躍らせながら突っ込む方が――早い。
「ちょっと判断ミスじゃん? うちを甘く見て貰ったら困るし!」
 射出したグラップルチェーンを駆使し、空中で体をひねりながら与える一撃が敵を赤黒く塗り潰す様子はまさしく朧星の如く。
「後、頼んだ!」
「はい」
 短く答え、風花が滑り込む。
「接近戦なら負けない」
「う、くッ」
 オーラを纏わせた腕がツェツィーリエの懐をナイフで突き、叩き込む掌底が急所を穿つ。すかさず蹴りを入れ、突き飛ばすように忽のいる方へ押しやった。
「へいへーい!」
 人差し指をくいくいして手招く忽にツェツィーリエが叫ぶ。
「いい加減、あなたの動きなら見切りましたよ!」
「せやなー。でもそれな、わざとなんよ」
「え?」
 それまで単調に殴るのを繰り返していた忽が、突然フェイントを交えて急角度からツェツィーリエに迫った。
「今やっ!!」
「ほいきた!!」
 その時だ。響が拾い集めた機械人形のネジを礫のように擲ち、とっさに顔を庇ったツェツィーリエの視界が一瞬塞がれる。
「あ……」
 再び目を開いた時、瞳に映ったのは己を指さすオラトリオの指先とそこに咲く闇のようなクロユリ……心臓を穿たれたツェツィーリエがかくんと糸の切れた人形のように頽れた。
 
「炭鉱が崩れるわ!」
 エリザベータが注意を促し、リーリャが大声を張り上げる。
「みんな無事? ちゃんと逃げれた!?」
 遠くから労働者たちの返事が返ってきた。「大丈夫だ」とか「ありがとう」とか、微かに聞こえた気がする。
「よかった。あとはちゃんと家にお帰り」
 エルマーは襟元を寛げ、久々に浴びた日差しを快く受け止める。
「偶には肉体労働も悪くなかったかもな、偶には」
 振り返ると、見事に潰れた炭坑跡が広がっていた。
「全部なくなっちゃったね」
 麻緒が後ろ手に手を組み、「んー!」と軽く伸びをする。
「やっぱりブラック企業はいけないよね。みんな、お疲れさまでした!」
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
【平穏結界】LV1が発生!
【勝利の凱歌】LV1が発生!
【未来予測】LV1が発生!
【怪力無双】がLV4になった!
【植物活性】LV1が発生!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
【強運の加護】がLV2になった!
効果2【アヴォイド】がLV3になった!
【命中アップ】がLV3になった!
【ガードアップ】LV2が発生!
【ダメージアップ】がLV10(最大)になった!
【ドレイン】がLV2になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!

最終結果:成功

完成日2021年12月07日