🚊宿縁を断ち切る戦い
クロノス級クロノヴェーダは「自分の存在を保ったまま、その時代に転移してくる」事が多いですが、稀に「その時代の生物や概念などに寄生して転生する」事もあるようです。
後者の場合、一定期間、転生した生物として成長し、充分に成長した所で覚醒する事で、対象の能力などを奪い、より強い力を得るようです。
この事件では、上記の方法でクロノス級に覚醒したクロノス級クロノヴェーダと戦い、決着をつける事になります。
そのため、宿敵であるクロノス級クロノヴェーダは、自分、或いは、自分に意志を託してくれた過去の時代のディアボロスの血縁者や恋人など、親しい相手の姿をしています。
クロノス級クロノヴェーダは、覚醒時に『悲劇的な事件を引き起こす』事で、より強い力を得られるため、様々な悲劇を引き起こします。
ですが、覚醒する前の人格に訴えかける事で、行動を制限したり、クロノヴェーダ撃破後に寄生された対象を救出したりできるかもしれません。
0
其の悲劇の源は、報われぬ恋か(作者 北瀬沙希)
#宿縁邂逅
#🚊宿縁を断ち切る戦い
⊕
タグの編集
現在は作者のみ編集可能です。
🔒公式タグは編集できません。
|
●???――とある貴族の屋敷
京の都に点在する貴族の屋敷の一部屋にて、検非違使や武官、陰陽師たちが宴会を開いている。
陰陽師が和歌を詠み、検非違使が酒や食事を嗜み、武官が管弦を奏でていると――笛を奏でていたひとりの武官がその手を止めた。
「長雅……?」
陰陽師の文月・雪人が、手を止めた武官に声をかける。
声をかけられた武官『源・長雅』は、有明月の名を持つ笛を床に置きながら、大きくため息をついた。
「今日はいまひとつ上手く奏でられないな」
「『焔』のことが気になるのか?」
雪人の問いに、長雅は無言で首肯する。
――昨今、京の都にて貧しい者に施しを与えているという、義賊の女頭領『焔』。
雪人は、長雅が彼女に恋心を抱いていることを知っていた。
――そんな『焔』が、つい数日前、都から姿を消した。
以後、雪人と長雅は焔を追い続けているのだが、全くと言っていいほど手掛かりがつかめずにいる。
「これだけ見られないのは、確かに珍しいけど」
「一体どこにいるのやら……ん?」
長雅がため息をつくと、突然屋敷内に乱雑な足音が響き渡る。
「何事?」
武官たちが柄に手を添えたその時、長雅の胴に細い蜘蛛の糸のようなものが絡みついた。
「……っ!!」
咄嗟に長雅が抜刀し、糸の出所を求めて視線を巡らす。
その視線の先にいたのは――探し求めていた義賊の女頭領『焔』だった。
「焔……!?」
「ああ、アンタに恋焦がれるあまり、こんな姿になっちまったよ」
焔の全身から妖気が溢れ出し、下半身が蜘蛛の身体に変化する。
突如妖怪と化した『焔』を見て、検非違使たちも宴を中断し、一斉に得物を構えて焔を取り囲んだ。
「さあ、アタシと一緒に行こう? こんな奴らなんて放っておいてさ」
妖と化した焔が、長雅に微笑みながら糸に妖力を籠める。
直後、長雅の瞳から警戒心が消え、全身の筋肉がミシミシと音を立てながら急激に膨張し始めた。
「う、あ、あ……」
「源殿!?」
「な、長雅!?」
驚く雪人たちの目の前で、長雅の髪が白く変色し、頭から角が生え、皮膚が赤銅色に変化する。
膨張する筋肉に耐え兼ねたか、長雅の装束が引き裂かれるようにはじけ飛ぶ。
同時に、長雅は手にした刀を無造作に、雪人目がけて振り下ろした。
――ザシュッ!!!!!
雪人の視界が真っ赤に染まり、血飛沫が床や襖に飛び散る。
「え……?」
――ヒトならざる者に変化した親友から、突然胴を斬られた。
その事実を理解するより早く、雪人は斬られた胸を押さえながら膝をつき、血だまりに伏した。
「な、なが、ま、さ……」
血だまりに沈みながらも、雪人は懸命に顔を上げながら長雅に腕を伸ばす。
だが、鬼と化した長雅の瞳には、武官としての理性も、人間としての優しさも――みられない。
「さあ、その調子で、陰陽師も武官も検非違使も皆殺しにしてやろうぞ!」
「ウガアアアアア……!!」
焔が長雅に命じると、長雅は刀を振り上げ、次々と検非違使や武官、陰陽師たちに襲いかかる。
そこかしこから悲鳴と怒号、そして絶叫が響き渡る中、雪人は意識を手放し、血だまりに顔を埋めた。
意識を手放す直前、雪人が見たのは、蜘蛛の糸で武官たちの心身を絡め取る焔と、かつての同僚を斬り殺す長雅の姿。
――そして、流れ出た己の血に染まる、有明月だった。
●新宿駅グランドターミナル
「身分が異なるゆえに引き起こされた……悲劇なのかな」
停車中のパラドクストレインを見上げながら、時先案内人藤森・智樹(人間の魔導忍者・g08569)は戸惑い気味の声を零す。
その声を聞きつけ、あるいは何らかの縁を感じ集まって来たディアボロスたちに、智樹は軽く一礼してから説明を始めた。
「見ての通り、特別なパラドクストレインが現れたよ。行き先は――『平安鬼妖地獄変』だ」
その行き先を耳にしたディアボロスのひとり、文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)が口を開く。
「まさか……俺の、宿敵との縁から現れた?」
「そう。このパラドクストレインに乗れば、雪人さんと縁のあるクロノス級妖怪『絡新婦『焔』』が、平安鬼妖地獄変で引き起こした最初の事件に介入できるようだ」
「俺の親友が焔に鬼に変えられて、俺を斬った……事件か」
表情を固くする雪人を前に、智樹は「そうだね」と肯定する。
「そこで、皆にはこのパラドクストレインで平安鬼妖地獄変に向かい、雪人さんの宿敵と対峙して惨劇を阻止してほしい」
頼めるかな、と告げる智樹に、ディアボロス達は其々の想いを胸に頷いた。
「状況を簡単に説明するよ。過去の雪人さんと親友の『源・長雅』さんが追いかけている、義賊の女頭領の焔さんが、クロノヴェーダ『絡新婦『焔』』として覚醒し、宴会途中の貴族の屋敷を襲撃した」
この時、長雅は焔の手で鬼に変えられ、屋敷内の一般人は、長雅のすぐ傍にいた過去の雪人を含めて全員斬殺されている。
ゆえに、ディアボロス達の役割は――一般人の殺戮の阻止、及び『絡新婦『焔』』の撃破となろう。
「パラドクストレインが到着してから『焔』の襲撃までには、少し時間がある。そこで皆にはまず宴会に潜入し、楽しんでもらいたいんだ」
ちなみに、雪人がこの歴史に介入した場合、その瞬間に過去の雪人は消え、過去の雪人がいた場所に今の雪人が出現する。
入れ替わりの際に一瞬、違和感を抱かれるかもしれないが、一般人のフリをして宴会を楽しめば、すぐに溶け込めるはずだ。
和歌や管弦、舞を披露し、宴会を全力で楽しんでいれば、やがて『焔』が屋敷を襲撃する。
妖怪としての姿を露わにした『焔』は、己が妖力で長雅を鬼に変え――ディアボロスもろとも屋敷内の一般人全てを斬殺しようとするだろう。
「おそらく、長雅さんの鬼化そのものは阻止できない。だが、鬼化してすぐ、他の一般人を殺める前なら、覚醒する前の人格に訴えかけながら撃破すれば救出できるかもしれない」
そして、絡新婦と化した『焔』も、元の人格に訴えかけることができれば、弱体化し救出が叶うはずだ。
「一応の注意だけど、クロノス級を撃破すると、クロノス級が支配する歴史は崩壊する。だから『焔』を倒したらすぐにパラドクストレインで脱出してほしい」
もし、焔と長雅が救出されたなら、言葉を交わす余地はあるかもしれないが、あるかどうかはその時にならないとわからないだろう。
「そしてもうひとつ。ディヴィジョン攻略が完了した今、ディヴィジョン行きのパラドクストレインはその数を大きく減らしている。間違いなくこの機会が……宿敵と邂逅する最後のチャンスになる」
頷くディアボロス達に、智樹はさらに言の葉を贈る。
「焔さんと長雅さん、ふたりにどんな未来が待っているのかは、僕にはわからない」
――でも、こうして縁が繋がり、パラドクストレインが現れたということは。
「ふたりにより良き未来への道筋を示すのが、雪人さんたちディアボロスだということなんだろうね」
――だからどうか、悔いのない選択をしてきて。
その願いを口にしながら手を振る智樹に見送られながら。
ディアボロス達はパラドクストレインに乗り、平安鬼妖地獄変の貴族の屋敷に向かった。
リプレイ
ルチルーク・フレンツェン
●心情
人の弱みに付け込むとは、クロノス級許すまじです。
人の恋路を邪魔するよりも酷い悪行だから余計に許すまじです。
まずは説得や避難をしやすくする為も兼ねて宴会を盛り上げていきましょうとも。
●行動
平安時代の侍女らしい恰好をして【プラチナチケット】も駆使して
一般人の侍女様方と協力して宴会へと出す料理や飲み物を振舞っていきましょう。
潜入している立場ですから仕事をしていても余裕がありますが、
楽しそうに宴会されている人々もディアボロスの仲間も見ながら
侍女として奉仕するのも私は楽しいです♪
(「クロノヴェーダに時代を支配されていても、素敵な笑顔は私こそ励みになります。」)
時と機会があえば舞を踊らせて頂きましょう。
前半は普通に平安時代として古来の日本らしい舞をし……。
後半はあえてアレンジして、恋ですれ違う男女が仲間に助けられて
見事に両者の恋が成就する……。
そんな印象となるような、熱い気持ちを込めて舞っていきます。
(「人の心がまだあるはずの焔様はまだいませんが
せめて長雅様に事前に作用が起きてほしいです。」)
野本・裕樹
雪人さんが悔いのない選択が出来るお力添えが出来る様に、私も頑張りたいと思います。
もちろん宴もしっかり盛り上げていきましょう。
後に大事が控えているとはいえ平安で過ごせる時間、素敵で楽しい物にしたいですね。
歌詠みも演奏も出来る方がいらっしゃいますから何か別の事を、扇子を使って余興をしてみたいと思います。
雅楽ではなく散楽の類になるでしょうか。
舞を披露しつつ、持っている扇子を入れ替えてその変化を楽しんでもらいましょう。
扇子の色を変えたり、扇子の数を増やしたり……
実は全部【アイテムポケット】から出し入れしています。
和服の袖を使って上手く見えない様にしていきましょう。
種も仕掛けもありませんが【アイテムポケット】はあります、なんて。
手妻と呼ぶには拙い物でしょうが僅かなりとも楽しんでいただければ幸いです。
最後は巨大な扇子をバサッ、と開いてお仕舞いです。
※アドリブ歓迎です
狭間・ならく
(そういや、平安鬼妖を訪れるのもこれが最後になるンかね。などと考えている。平安京はもうどこにも無いのだからまるきり当然だが)
……過去を変えるも未来を変えるも、所詮は──っと、いけね。仕事しよ。
え、和歌? ナラクさんはもう嫌だぞ(まがお)。逃げとかでなくてよ、こう……適材適所というか……な? 信頼しているというか?
マ、どうせその辺はユキヒトなりコウメが上手くやるだろうからと、こちらは【プラチナチケット】頼りに女房姿で潜入といこう。四十路の女が宴会の席にいても面白くとなんともねェだろからな。『ユキヒト坊っちゃまを昔から傍で見てた古株の女房です』みてーなツラで、大人しく酒やら膳を上げ下げしたりしながら様子を見ておこう。
あとでカナメにもツマミを差し入れてやるかね……。モコモコに運ばせるか。おい、見つかったら唐渡の珍しい猫で押し通せよ。反撃は絶対にナシだ。
楽がさびしいから手を貸せと言われりゃ貸すけどよ。あくまで端っこで、ささやかに、な。
そら、かあいい女子らが愛らしく舞いよる。伴奏冥利に尽きるねェ。
菅原・小梅
※アドリブ&連携歓迎
平安鬼妖地獄変の奪還においては大変お世話になった雪人様の宿縁ですからね。
微力ではありますが私もご助力致しましょう。
平安の宴らしく歌会も催されてますが、此度は私自ら詠まずとも済みそうなので(とても重要)
龍笛の演者として紛れ込み参加致しましょう(少しうきうきと【プラチナチケット】を使用する)
長雅様の近くにごく自然に侍っていれば、この後に備えることも適いますしね。
決して逃げた訳では御座いませんよ?(同じく歌会を避けた知り合いの方々に目配せしながら)
服装はこの時期でしたら重ねの色目は表は紫、裏は白の萩の襲装束で男装致しましょう。
纏う香りは上質の白檀を焚き込めて置けば万事恙なく。
こう見えて実は歌を詠むのみならず、演奏(200Lv🏆です)にも覚えが御座いますので
長雅様達に目配せをして様々な曲目を演奏するのも良いかもしれませんね。
祝いの席に相応しい「新年(あらたしきとし)」が宜しいかと。
この一件を首尾良く解決すれば雪人様の新たな門出にもなるでしょうし。
文月・雪人
※アドリブ大歓迎
平安鬼妖地獄変、奪還してから随分と月日が過ぎたね。
その間に多くの出会いがあって、戦いがあって、
クロノヴェーダに対する俺の考え方も大きく変化していった。
あの頃の憎しみとは違う、今だからこそ選べる未来もあるのかもしれない。
ああ、懐かしい声がする。
宴を楽しむ長雅や当時の仲間の姿に思わず涙ぐみ、
酒のせいだと誤魔化しながら水を飲む。
他愛なく交わされる会話が嬉しくて、楽しくて。
懐かしき長雅の笛の音に、琵琶の音を合わせて演奏しよう。
音に聞く笛の名手の長雅ほどではなくたって、
俺も少しは腕を上げてきたからさ、是非とも聴いて欲しいよ。
更に仲間の演奏や舞も合わされば、最高に盛り上がる事間違いなしだ。
この地の陰陽師や検非違使の仲間、駆けつけてくれたディアボロスの仲間、
皆で過ごす平安の地の最後の宴を、心の底から楽しもう。
めぐり逢いて 友と遊びし 笛の音に くも吹き晴れて 宵の月かな
(夜半の月を詠んだ紫式部の時代より前だけど、それはそれで)
宴の終わりに覚悟を決める
誰も誰にも殺させない、その為の戦いを
十野・樞
アドリブ連携◎
文月の物語に落ちる影を払えるよう、ささやかながら助力を
さて、宴
宴ってのに禁酒…
確かに戦闘前だが…だが…っ
おのれクロノヴェーダ!
伏見殿、後で呑みなおそうぜ
…そして宴といえば和歌
ただいま副業陰陽師の俺としちゃ、歌詠みに巻き込まれてはかなわねえ
昔の事件で歌では任せきりにしていた文月は旧交を温めてえだろうし、頼みの綱の菅原嬢は…え?演奏にまわる?
…よし、逃ぼ…もとい撤退だ
【プラチナチケット】でさも検非違使関係者という顔をして、宴の警護にまわろう
宴の場のすぐ傍の築地塀の影で、仲間の演奏に耳を傾け舞を見よう
皆の舞も演奏も、宴を支える働きも、文月とその友の無事と幸を想う願いは、きっと『何か』には届くさ
しかしせめて料理くらいは嗜みてえが、戻って絡まれたらアレだ
【パラドクス通信】でナラクの脳内に(腹減った…)と救援を求めるか
もちろん、周囲を警戒しその様子も皆に連絡だ
ああ、もし何やら絡まれたら
風林繊月落、衣露浄琴張
暗水流花径、春星帯草堂
…とでも口遊んでごまかすか
え、季違い?そうだが何か?
伏見・萬
(連係アドリブ歓迎)(仲間は苗字呼び)
(宿敵主の望む通りに事を運ぶ、を最優先目標とする)
世話になってる奴の一大事ってンだ、まァ首は突っ込むよなァ
宴ってこたァ酒あンだろ、酒。
…え、禁酒?なンだと…おのれクロノヴェーダ…
十野、おめェならそう言ってくれると信じてたぜ(飲みの約束をしっかりと)
和歌って何、喰えンの?
…十野が逃げようとするぐれェだ。どうやら酒のツマミじゃねェし、なンかやべェ奴なのはわかった
(酒と戦闘以外には興味が薄く、優雅さや教養とは縁が無い
何事かあった時にすぐ対応できるようにと現場に潜入はするが
【パラドクス通信】を借りて仲間と連絡を取りつつ、目立ち過ぎないように注意して行動
【プラチナチケット】も借り、十野と一緒に宴の警護役を装う)
あっちは演奏に舞かァ、よくわかんねェが見事なモンだなァ
(…なンか一芸やれって言われたらどうすっかなァ…羊(※)でも出して誤魔化すかァ…?)
(※呪詛で動く、抱える程のサイズの羊のぬいぐるみ。勝手に鞄から飛び出して光ったり増えたりする(【七色の夢の使者】))
●
――平安鬼妖地獄変、京の都にある、とある貴族の屋敷。
「……?」
文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)は、ふと違和感を覚え、琵琶を奏でる手を止めた。
(「パラドクストレインが到着したと思ったら、いつの間にここに……?」)
脳裏を過る違和感に誘われるように、雪人が周囲を見回してみると、目前ではかつての仲間だった陰陽師たちや武官、検非違使たちが集まり、宴を開いている。
そして、雪人の隣では、友人の源・長雅が陰陽師たちと酒を酌み交わしていた。
(「これは、おそらく……長雅に斬られる前か」)
――つまり、雪人は。
(「パラドクストレイン到着と同時に、過去の自分と入れ替わったんだね」)
その事実をようやく認識した雪人の口から、感嘆の声が漏れる。
「……ああ、懐かしい声がする」
「……雪人?」
その声に長雅が反応し、軽く首を傾げるが、雪人は誤魔化すように水の入った杯を手にした。
「ごめん、酒のせいかな」
そのまま水をあおる雪人に、長雅は微苦笑で返した。
――とはいえ、雪人の記憶にある宴の光景とは、聊か異なるところもある。
たとえば、雪人のすぐ傍には、長雅の他に、扇子を手にした野本・裕樹(刀を識ろうとする者・g06226)と、重ねの色目は表は紫、裏は白の萩の襲装束で男装し、龍笛を手にした菅原・小梅(紅姫・g00596)が座っている。
(「平安鬼妖地獄変の奪還においては、大変お世話になった雪人様の宿縁ですからね」)
奏者として紛れつつ助力を誓う小梅の目前では、狭間・ならく(【嘘】・g03437)が女房のフリをして検非違使たちに給仕し、ルチルーク・フレンツェン(均衡を破った、歴史を歩むサイボーグ少女・g02461)も侍女としてそのお手伝いをしていた。
さらに宴の場のすぐ傍、築地塀の影には、十野・樞(有謬・g03155)と伏見・萬(錆びた鉄格子・g07071)が、さも検非違使関係者と言う顔をしながら隠れている。
各々が違和感なく溶け込めているのは、おそらく各々が宴に潜入するために演じている役割と装束、そして【プラチナチケット】の恩恵のおかげだろう。
手を貸してくれたディアボロス達に感謝しながら、雪人はそっと、心の中で誓う。
(「もうすぐ、焔が此処に来るはず」)
――ならばせめて、それまでの間だけでも。
(「この地の陰陽師や検非違使、武官の仲間や、一緒に駆けつけてくれたディアボロスの仲間と共に、皆で過ごす平安の地の最後の宴を、心の底から楽しもうか」)
そう、心に誓う雪人の顔を、長雅がのぞき込んで来る。
「……雪人? 今日はどうしたんだ??」
その仕草に、懐かしさを覚えながら、雪人は笑みで答えた。
「ああごめん、長雅。今日は語り合おうか」
「そうだな」
その言の葉を合図に、雪人は長雅と共に、此の地の仲間たちと語らい始める。
同時に、宴に潜入したディアボロス達もそれぞれの想いを胸に――動き始めた。
●
雪人がかつての同僚や長雅たちと他愛ない会話に興じ、陰陽師たちが和歌を詠み、武官と検非違使たちは酒と肴で交流を深めている。
一般人達が思い思いのかたちで宴に興じている間、ならくとルチルークは、女房や侍女として台盤所と寝殿を往復し、給仕に励んでいた。
『え、和歌? ナラクさんはもう嫌だぞ』
パラドクストレインの中で雪人達に真顔でそう告げたならくは、下車するなり早々に女房姿での潜入に成功している。
(「マ、どうせその辺はユキヒトなりコウメが上手くやるだろう」)
適材適所ってやつだよな、と割り切りながら、ならくは指示された通りに強飯や干物、酒や水入りの瓶子が乗った懸盤や高坏を運び、一般人達に供していた。
(「それでも、四十路の女が宴会の席にいても面白くとなんともねェだろけどよ」)
こそりと本音を胸の裡に隠しながら、ならくは大人しく酒やら膳を上げ下げし、時が来るのを待つ。
――ふと、築地塀の向こう側に建つ、別の寝殿造の屋敷が目に入った。
(「そういや、平安鬼妖を訪れるのもこれが最後になるンかね」)
――平安京はもう、どこにも無い。
全世界が奪還された今、ディヴィジョンと行き来するパラドクストレインに乗車する機会も、これが最後。
「……過去を変えるも未来を変えるも、所詮は――」
「そこなおなごよ、何を呟いておるのか?」
ぶつぶつ呟くならくに、目前の武官が声をかけてくる。
「──っと、いけね。仕事しよ」
今は郷愁を振り切り、愛想笑いを浮かべつつ、ならくは武官の杯に瓶子から酒を注ぐ。
そんなならくに興味を持ったか、目前の武官がならくに話しかけて来た。
「時におなごよ、文月殿とは如何なる関係か?」
(「マ、そう来るわな」)
「ユキヒト坊っちゃまを昔から傍で見てた古株の女房ですよ」
予想通りの質問に、ならくは流れるように嘘を吐き、にこりと偽りの笑みを浮かべながら追及をかわす。
幸い、違和感を与えぬディアボロスの特性も作用したか、それ以上は聞かれずにすんだ。
一方、ならくたちが他愛ない(?)会話を交わすその横では、ルチルークが雪人達の杯に水を注いでいた。
(「人の弱みに付け込むとは、クロノス級許すまじです」)
しかも今回は、人の恋路を邪魔するよりも酷い悪行ゆえに、余計に許すまじとの想いが強い。
(「説得や避難をしやすくする為も兼ねて、今は宴会を盛り上げていきましょう」)
瓶子を下げ、代わりに懸盤を運びながら、ルチルークはせっせと給仕に励む。
妖対策の最中、楽しそうに宴会している人々の姿を見ていると、ルチルークも思わず笑みを零していた。
(「クロノヴェーダに時代を支配されていても、素敵な笑顔は私こそ励みになりますから」)
――それに、侍女として奉仕するのも私は楽しいです♪
そう、心の底から感じ取れるようになった自分自身に、どこか嬉しさを覚えながら。
ルチルークはディアボロス達が酒を飲まぬよう配慮しながら、平安の空気を満喫していた。
●
宴が盛り上がり始めたのを見て、小梅が龍笛を手に進言する。
「長雅様、そろそろひとつ、いかがでしょうか」
「俺もつきあうよ」
「お、そうか」
雪人も琵琶を手に長雅を促すと、長雅が有明月を口に当て、静かに奏で始める。
美しい音色に合わせるように、小梅が龍笛の音を合わせ、雪人も静かに琵琶を鳴らし始めた。
ふと、小梅が屋敷の外に目をやると、築地塀の近くから樞と萬が優雅に流れる笛と琵琶の音に耳を向けているのに気づく。
(「私も決して、歌会から逃げた訳では御座いませんよ?」)
――此度は私自ら詠まずとも済みそうなので。
とっても重要なことを心に浮かべつつ、小梅は龍笛を奏でながらそっとふたりに目配せする。
わかっているぜ、とふたりが頷いたように見えたのは……気のせいかもしれない。
静かな音色が宴に彩りを添える中、裕樹が立ち上がる。
(「歌詠みも演奏もできる方がいらっしゃいますから、私は何か別のことをしましょう」)
「それでは、私もひとつ、余興を」
3人の演奏に合わせ、裕樹は一般人たちに一礼した後、扇子を手に舞い始めた。
(「雪人さんが悔いのない選択が出来るお力添えが出来る様に、私も頑張ります」)
――後に大事が控えているとはいえ、平安で過ごせる時間を、素敵で楽しいものにしたい。
だからこそ裕樹は、演奏に合わせ舞いながら、持っている扇子を袖にしまい、ぱっと新たな扇子を広げた。
新たに現れた扇子は――しまわれた扇子と色も柄も異なっている。
その変化に気づいた一般人達が、おお、と感嘆の声をあげた。
(「実は全部【アイテムポケット】から出し入れしているのですけどね」)
こそりと種明かしをしながら、裕樹は扇子を袖に出し入れし、七変化を披露する。
扇子の色や柄が袖にしまわれるたびに代わり、さらに扇子の数が増えていく様子は、いつしか陰陽師たちの興味を惹いていた。
「はて、それは如何なる術か?」
「ふふふ、種も仕掛けもありませんよ」
陰陽師たちの質問を、裕樹は軽く微笑んで流す。
さすがに【アイテムポケット】を使っているとは言えないゆえ、誤魔化すしかなかったが、それなりに楽しんでもらえているのは間違いないだろう。
(「手妻と言うには拙いかもしれませんが、それなりに楽しんでもらえて何よりです」)
手ごたえを得た裕樹は、さらにペースを上げながら扇子を交換し、色と柄を変えてゆく。
裕樹の散楽は、宴に幻想的な彩を添えながら、しっかりと一般人達の心を掴んでいた。
●
――さて、一方。
築地塀の側――すなわち宴の場から少し離れた場所で、樞と萬は検非違使のフリをしながら宴を眺めていた。
「菅原嬢、腕に覚えがあったから演奏に回ったのか……」
小梅の見事な龍笛の演奏を目にしながら、樞はどこか得心行ったように頷く。
「そのようだなァ」
萬もまた、それに納得しながら、ひたすら周囲に警戒を巡らせていた。
ところで何故、ふたりが宴会場ではなく外にいるかと言うと。
時は、パラドクストレインに乗り込む直前にまでさかのぼる。
「宴ってこたァ酒あンだろ、酒」
「ああ、宴……そうだな」
酒が飲めると期待して新宿駅にやって来たふたりだったが、時先案内人からの通達は――『この後戦闘を控えているから酒は控えてね』。
「え、禁酒……?」
「……禁酒? なンだと……?」
申し訳なさそうに通達する時先案内人の前で、茫然とする樞と萬。
おそらく、宿縁との邂逅でなければ酒も飲めたかもしれないが、宴で酒が無いのは……正直、厳しい。
「確かに戦闘前だが……だが……っ!
「「おのれクロノヴェーダ……!!」」
思わず声をハモらせた樞と萬は、お互いの声に気づき、思わず顔を見合わせる。
「なら伏見殿、後で呑みなおそうぜ」
「十野、おめェならそう言ってくれると信じてたぜ」
同士よ! とふたりはガッと握手し、しかしすぐに手を離す。
「……で、俺達もう一つの難関があるんだが」
「……何?」
「宴といえば和歌。ただいま副業陰陽師の俺としちゃ、歌詠みに巻き込まれてはかなわねえ」
「……そもそも和歌って何、喰えンの?」
真顔でそう聞く萬に、樞も大きくため息をつきながら首を大きく横に振る。
「それに、昔の事件で歌では任せきりにしていた文月は旧交を温めてえだろうし、頼みの綱の菅原嬢も演奏に回ると言うし」
「……十野が逃げようとするぐれェだ。どうやら酒のツマミじゃねェし、なンかやべェ奴なのはわかった」
もとより戦闘と酒以外に興味はない故、決して関わらんぞ、と心に決めた萬に、樞は「俺もそうする」と同意を示した。
というわけで、樞と萬はパラドクストレインから降りるなり、【プラチナチケット】で検非違使関係者として紛れ込み、速攻で室外に逃ぼ……もとい撤退してきたのである。
「ま、俺も和歌はわかンねェから逃げてきたし、十野の気持ちはわかるなァ」
(「世話になってる奴の一大事ってンだ、まァ首は突っ込むけどなァ」)
それでも、見張りのフリをしていれば、焔が屋敷を襲う前兆めいたものは掴めるだろう。
そう考えた萬は、屋敷の警護を装いながら、絶えず周囲の気に注意を向け続けていた。
とはいえ、ずっと築地塀沿いに見張りを続けていれば、自然とお腹も空いてくるもので。
たまらず樞は【パラドクス通信】越しに愚痴をこぼしていた。
『……ならく、腹減った』
ボヤキ交じりの愚痴に、やがてならくから反応がある。
『しゃあないな。後でカナメとヨロズにもツマミを差し入れてやるよ』
『ありがてェ』
ならくからの返答に、ふたりは食いっぱぐれることはなくなったとほっと胸をなで下ろす。
一方、ならくは給仕の隙を見て、樞と萬の食事を用意していた。
「ほれ、モコモコ。あっちのふたりに持っていけ。見つかったら唐渡の珍しい猫で押し通せよ」
ならくは懸盤に水と強飯、上等そうな干物を載せ、サーヴァントのモーラット『モコモコ野郎』に渡す。
モコモコ野郎はならくに頷くと、懸盤を器用に持ちながら、ふわふわと樞と萬のもとに向かった。
もし、モーラットが懸盤を運ぶ光景を一般人が目撃していたら、どう考えても突っ込まれそうではあったが、幸い一般人の興味は管弦と舞いに向いていたようで、モコモコ野郎の姿は全く見とがめられることなく樞と萬のもとに辿り着いていた。
「お、ならくのモコモコか。ありがとよ」
待っていたぜ、と言わんばかりに、樞と萬は懸盤から水入りの瓶子と上等な干物を手に取り、口に入れる。
「うめェぜ、あンがとよ……っておい、羊」
萬の懐からぴょん、と羊のぬいぐるみが飛び出し、モコモコ野郎にすりよる。
モコモコ野郎も軽く驚きながら、羊の相手をして遊び始める。
そんなほほえましい光景を見ながら、樞は軽く笑みを浮かべていた。
(「この様子なら、漢詩で口遊んでごまかさなくても、何とかなりそうか?」)
他の検非違使が来そうな気配がないことに、樞は内心胸をなで下ろす。
だが、一方で――萬の感は、何か良からぬ者が近づいてきていることを察知していた。
「ん……?」
●
数曲ほど奏で終えた後、長雅が大きく息をつきながら、有明月を床に置く。
「長雅……?」
「長雅様?」
小梅と雪人が演奏の手を止め、長雅に声をかけた。
「すまない。今日はいまひとつ上手く奏でられなくて」
「『焔』のことが気になるのか?」
雪人の問いに、長雅は表情を曇らせながら、無言で首肯する。
周囲の検非違使や武官たちは、突然出た焔の名に眉を顰めているが、雪人は気にせず話し続けた。
「そうだな。最近とんと噂も聞かない」
「珍しいね。一体どこに行ったんだろう……?」
雪人が話し続けている間、小梅や裕樹、ルチルークやならくは、さりげなくふたりの話に耳を傾けている。
その様子を目撃した樞と萬も、さっと食事を終えてふたりの会話に注意を向けていた。
そうしてディアボロス全員に注目されていることを察しつつ、雪人は長雅に持ち掛ける。
「気を紛らわせるためにさ、もう一曲、奏でてみようか」
「雪人?」
「俺も少しは腕を上げてきたからさ、長雅たちにも是非とも聞いてほしいよ」
雪人が琵琶を持ち上げながら、長雅を促す。
長雅もそれに触発されたか、首肯しつつ有明月を構えた。
「そうだな、それなら……演目は何にしようか」
待ってましたと言わんばかりに、小梅が長雅に進言する。
「それでしたら、祝いの席に相応しい『新年(あらたしきとし)』が宜しいかと」
(「この一件を首尾良く解決すれば、雪人様の新たな門出にもなるでしょうし」)
その提案に、長雅もどこか納得したかのように頷く。
「……成程、そうだな」
「では、それで――参ります」
小梅が龍笛に口を当てるのに合わせ、雪人が琵琶を、長雅が有明月を構え、再び奏で始めた。
その演奏に合わせるように、裕樹とルチルークが舞い始める。
ルチルークの舞は、前半は古来の日本らしい舞だが、後半はあえてアレンジを加えてあった。
――それは、恋ですれ違う男女が仲間に助けられ、見事に両者の恋が成就する話。
一般人達にそんな印象を抱かせるよう、心を籠めて舞うルチルークに、長雅が時々ちらり、と視線を向けていた。
(「人の心がまだあるはずの焔様はまだいませんが、せめて長雅様に事前に作用が起きてほしいです」)
裕樹もルチルークの舞に合わせ、袖から鮮やかな柄の扇子を出し入れしながら、ならくに手招きする。
「さあ、ならくさんも一緒に」
「な、ナラクさんも!?」
(「そりゃ、手を貸せと言われりゃ貸すつもりだったけど」)
給仕の合間に突然誘われ、思わず素に戻るならくだったが、同時に雪人達の近くで備える機会だと察する。
「……あくまで端っこで、ささやかに、な」
「ええ、それでお願いします」
ならくは隅に座ると三鼓を手に取り、静かに叩き始める。
そのリズムに乗るように、ルチルークはさらに静かに、だが躍動的に舞い始めた。
「そら、かあいい女子らが愛らしく舞いよる。伴奏冥利に尽きるねェ」
「おお……」
一般人達からの感嘆の声が漏れる中、管弦の演奏も終わりにさしかかる。
それを察した裕樹は、締めに合わせて巨大な扇子をパッと取り出し、バサッと開いた。
【アイテムポケット】から何処からともなく現れたように見える巨大な扇子には、男女の恋模様が描かれている。
「おおおお……」
一般人達は、見事な絵柄に魅入られていた。
●
演奏を終えた長雅が、再び有明月を床に置く。
長雅の表情からは、若干だが曇りが取れていた。
「ありがとう、気が紛れたよ」
「それならよかった」
「素晴らしい舞も見せてもらえたからな」
「そうだね」
長雅と言の葉をかわしながら、雪人は屋敷の外に浮かぶ月に目を向ける。
(「――平安鬼妖地獄変、奪還してから随分と月日が過ぎたね」)
奪還後も、他ディヴィジョンを奪還するための過程で、多くの出会いがあって、戦いがあった。
その最中、雪人自身のクロノヴェーダに対する考え方は――大きく変化していった。
(「平安の奪還を目指していた頃は、憎しみが強かった気もする」)
だが、今はあの時と異なり――希望もある。
(「天魔武者と手を取り合った今だからこそ、選べる未来もあるのかもしれない」)
――そして、長雅や焔が、クロノヴェーダではなく人として迎える未来も。
そんなことを考えていると、【パラドクス通信】越しに樞と萬の声が届く。
『文月、皆。屋敷にただならぬ妖気が近づいているぞ』
『なァんか、嫌な気だぜ。用心しとけ』
『ありがとう』
ふたりからの警告を受けた雪人のもとに、陰陽師たちが寄って来る。
「文月殿、素晴らしき演奏でござった。いつの間にそんなに腕を上げたのじゃ?」
「まあ、練習はしていたからね」
「そういえば、文月殿は何も詠んでおらぬではないか。ささ、何かひとつお読」
「そうだな……では」
陰陽師たちに促され、雪人は少し思案しながら、思い浮かぶままに歌を詠む。
――めぐり逢いて 友と遊びし 笛の音に くも吹き晴れて 宵の月かな
「おお……」
その歌の意味を察し、見事だと声を漏らす陰陽師たち。
(「まあ、この時代は夜半の月を詠んだ紫式部の時代よりは前なんだけど、それはそれということで」)
細かいことは気にしない、と自らに言い聞かせる雪人の視界に、そっと室内に戻ろうとする樞と萬の姿が目に入った。
(「宴はここまでか――楽しかったよ」)
皆で過ごす平安の地の最後の宴は、心の底から十分楽しめた。
ならば、ここから先は……友の未来を紡ぐための戦いだ。
「誰も、誰にも殺させない」
そう、雪人が静かに口に出し、改めて覚悟を決めた、その時。
――屋敷の奥から、バタバタと足音が響き始めた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【プラチナチケット】LV3が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【現の夢】LV1が発生!
効果2【リザレクション】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV2が発生!
【グロリアス】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
●平安鬼妖地獄変:京の都――とある貴族の屋敷
宴の最中、突然屋敷の奥から乱雑な足音が響き出す。
それはまるで遠慮など知らぬかのように、急速に宴の間に近づいていた。
「む?」
「何事か?」
無遠慮に踏み入る足音に、武官たちが刀の柄に手を添え、警戒を始める。
だが、宴の間に飛び込んできたのは、足音の主ではなく――細い蜘蛛の糸だった。
――シュッ……。
室外から伸びた蜘蛛の糸は、長雅の胴に絡みつく。
「……っ!」
長雅も有明月を床に置いたまま刀を抜刀し、糸の出所を求め視線を巡らせ始めた。
やがて、蜘蛛の糸を手繰り寄せるかのように、ひとりの女義賊が現れる。
その糸の先端は――女義賊の指から伸びていた。
「焔……!?」
「ああ、アンタに恋焦がれるあまり、こんな姿になっちまったよ」
突然の想い人の登場に驚く長雅に、焔は妖艶な声音で呼びかけながら下半身を蜘蛛の身体に変化させる。
人ならざる妖怪と化した『焔』を見て、検非違使たちも宴を中断し、一斉に得物を構えて焔を取り囲んだ。
「こ奴、妖と化したか!!」
「賊め! 神妙になれ!!」
検非違使たちに得物を突き付けられるが、『焔』は動じない。
むしろ、妖艶な笑みを浮かべたまま、長雅に呼びかけた。
「さあ、アタシと一緒に行こう? こんな奴らなんて放っておいてさ」
長雅を誘うように微笑みながら、焔は長雅を捕えている糸に妖力を籠める。
直後、長雅の瞳から警戒心が消え、得物を手にした腕をだらりと下げた。
「あ、ほむ、ら……??」
魅了の妖力に囚われ、無防備となった長雅は、焔をじっと見つめている。
そんな想い人の姿を目にしながら、焔は蜘蛛の糸に妖力を籠め続けた。
蜘蛛の糸が脈動するかのように震えるたびに、長雅の全身の筋肉もまた脈動し、膨張してゆく。
「源殿!?」
「な、長雅!?」
目前で変異してゆく友を見て、雪人も思わず声を上げる。
その声に、長雅は一瞬ピクリと耳を震わすが、白く変化した髪がすぐに耳を覆い隠した。
「あ、ああ……ほむ、ら……」
「これでアンタはアタシと一緒になれるんだ――鬼としてね」
想い人に呼びかける長雅の耳元で、『焔』が囁く。
その言の葉に、長雅は雪人を、そして他のディアボロス達に視線を向けるが――肉体と精神の変異は止まらない。
――ビリビリッ!!
やがて膨張する筋肉に耐え兼ね、長雅の装束と蜘蛛の糸が一気にはじけ飛ぶ。
その場に残ったのは、笛の名手の気さくな武官ではなく――1体の赤銅色の鬼だった。
「長雅……!?」
鬼と化した友を見て、雪人も咄嗟に身構える。
そんな雪人に向け、鬼と化した長雅は、手にした刀を豪快に振り上げ――一気に振り下ろした。
――さあ、ここが運命の分岐点。
過去の雪人は、防御や回避を試みる間もなく、鬼と化した友の刀に斬られ、床に伏した。
だが、ディアボロスの雪人なら――逆説連鎖戦で対応可能だ。
先ほど、長雅は、助けを求めるかのように雪人達に視線を向けていた。
つまり、この一撃を凌げば、長雅の人格に呼びかけつつ、ヒトに戻せる可能性は十分あるだろう。
隙あらば一般人達を蜘蛛の糸で絡め取ろうとする焔――否、クロノス級妖怪『絡新婦『焔』』。
そして、焔の妖力でトループス級鬼『金棒鬼』に変化した長雅。
ふたりのクロノヴェーダを前に、ディアボロス達が取る行動は――。
※マスターより補足
トループス級鬼『金棒鬼』と化した長雅の最初の斬撃は、パラドクスを使用した攻撃となります。
最初の一撃を凌げば、覚醒前の人格に呼びかけることで、撃破した後に救出できるかもしれません。
宴の場に残っている一般人(武官、陰陽師、検非違使)たちは、それぞれの得物をもとに立ち向かおうとします。
しかし、クロノヴェーダには太刀打ちできないため、やがて絡新婦『焔』の蜘蛛の糸に囚われ魅了されるか、長雅に斬り殺されるかのどちらかになるでしょう。
一般人を生存させるためには、ディアボロス達が護るか、別の部屋に避難させる必要がありますので、必要と感じた場合は行って下さい。
なお、マスターが選択肢の設定を忘れましたので、一般人の避難活動を行う場合は選択肢③④で行って下さい。(こちら、本シナリオのみの特例措置となります)
執筆スケジュール等は、マスターページをご確認ください。
――それでは、最善の未来を目指して。