リプレイ
八栄・薙鳥
調べるべきは天文学の範囲でしょうか、やはり
2021年8月──この月にはプラネット・ナインの存在確率に関する論文が発表されたそうです
プラネット・ナインとは、天王星・海王星周辺の星々の軌道から存在が推測される第九の惑星です、ええ
このプラネット・ナインは天文学的視点とは別にオカルト方面からも注目を受けていました、はい
それはこの仮想惑星が地球生物の大量絶滅に関わっているという説からです
そして、プラネット・ナインにはいくつかの名前がありますが、その1つは『ネメシス』です、なんと
"絶滅"、"ネメシス"──イデアロゴスと関わりがあっても不思議でないこの奇妙な符号、調べてみる価値はあるでしょう、きっと
ただ、件の論文が発表されたカリフォルニア工科大学は現在はコーサノストラの領地なのですよね、残念ながら
当時連携していた他大学や研究施設から関係する記録を取り寄せられれば良いのですが、なんとか
チリのセロ・トロロ汎米天文台や国立天文台ハワイ観測所でも観測が試みられていたそうなので、こちらもあたりたいですね、ええ
ソレイユ・クラーヴィア
地球外生命体であるイデアロゴスと如何な縁を得たのか
中々に考え甲斐のある議題ですね
2021年8月といえば、ペルセウス座流星群が活発な時期であったというデータがありました
絶滅人類史が数多の隕石攻撃に晒されて滅びたという話もありましたし、この情報を深堀りしてみましょうか
ペルセウス座流星群は毎年8月頃に見られる天体ショーです
活発度には年差があるようですが、定期的に観察されている為、「いつもの」で流されている情報もあるかもしれません
ペルセウス座の観測は北半球が主で、南極圏からの観測は難しいとのこと
もしペルセウス座流星群が地球へ降ってくるとしたら、南極が一番安全かもしれませんが…
イデアロゴスの目的が一般人の絶滅なら、一般人の存在しない南極を標的にする必要はありませんし、あまり関係はないかもしれませんね
ペルセウス座流星群の観測データを探すべく、未帰還地域の大きめな天文台に向かいましょう
ペルセウス流星群自体は天体ファンの間でも有名な天体ショーですし、様々な観測地点でデータを取っている筈です
イシュア・アルミゴス
宇宙人かぁ。真の敵が宇宙関係じゃないかってずっと言われていたけど、
本当に来られるとこう、不謹慎だけどワクワクしちゃうよね。
まずは地道に調べていこうか…こう見ると2021年って絞っても
宇宙関係だけで色々起こっているんだねぇ。
気になるのは観測記録そのものより、それを見た人間側の話かな。
縁を結んだタイミングって、向こうから来たんじゃなくて、
人類が先に見てしまった瞬間なんじゃないかな。観測するということは、
存在を認めるということだし。だとすれば専門家の論文より、
当時の目撃証言や素人の反応——アマチュア天文家のメモや同人誌、
掲示板の書き込みみたいなものの方が面白い情報が出てくるかもしれない。
2021年8月で目立つものといえば…へびつかい座の新星爆発だ。
望遠鏡がなくても肉眼で確認できたらしい。
普段は見えない星が突然現れて、天文に詳しくない人間でも気づけた夜があったわけだ。
そういう夜に素人がどう動いたか、そっちを掘り下げてみるよ。
仲間が持ち寄った情報とも突き合わせながら進めていこうか。
クィト・メリトモナカアイス
ん-む、縁。縁とは。
21年の8月にあったことといえば……モナカアイスが美味しかったこと。
んむ、我らは刻逆が起きた後に新宿島に流れ着いたわけで。
その出来事があったのが最終人類史の2021年8月にあってたとしても、我らは体験してないできごとなんよな。15日よりもたぶん前のやつ。
資料が残ってるのもそれだろうし、15日より前の宇宙関連調べるかー。
というわけで見つけてきた。
その時期はオリンピックというものが日本でも行われていたらしい。
蹂躙戦記イスカンダルじゃなくてもあってるのか、オリンピック……
で、これの閉会式が8月にあっているのだけど。
その時に宇宙で楽器の演奏とか国旗の受け渡しをしているっぽい。
日本だけじゃなくフランスの資料もあるといいかな?
演奏があった宇宙ステーションの資料に……そういえば東京オリンピックは衛星生中継なるものもやっていたっぽい?
イデアロゴスが宇宙にいるならば。何かしら宇宙と縁がある出来事だと思うのだけども……
最終人類史、新宿駅グランドターミナル。発車準備を終えた時空間移動列車に、四人の復讐者たちが乗り込んでいく。
彼らの向かう先は様々だ。日本国の内外、未帰還地域・帰還済地域――各々の選んだ場所で、『あること』に関する情報を探ることが、復讐者たちの目的だった。
イシュア・アルミゴス(守護星蟲・g00954)は座席に着席し、暫し虚空を仰ぐ。彼と仲間たちの間に漂う空気は静かだが、そこには微かな緊張の気配があった。
無理もないと思う。これから自分たちが携わる作戦は、刻逆、最終人類史、そして遠からず戦うであろう真の敵――それらを結ぶ縁の糸を探し出そうと言う、まさに雲を掴むようなものなのだから。
「宇宙人かぁ。真の敵が宇宙関係じゃないかってずっと言われていたけど……本当に来られるとこう、不謹慎だけどワクワクしちゃうよね」
「ええ、挑み甲斐があります。もちろん、彼らとの縁を探るこの作戦も」
イシュアと対面の座席で、ソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)が微笑で応える。
絶滅人類史の復讐者たちとの接触で明かされた、数々の謎。その中で未だ判明していない情報を解き明かすと思えば、否応なく好奇心が刺激されるというものだ。
地球に滅亡を齎したという、外宇宙の知的生命体『永遠存在(イデアロゴス)』。
果たして、最終人類史が始まった2021年8月に、彼らと縁が繋がる『何かしらの出来事』は存在したのだろうか――。
程なくすると、四人を乗せた列車は新宿駅を発車した。
ここから先は、各々が現地で情報を収集し、新宿島へ再び集合。入手した情報を基に話し合いを行うこととなる。
今回の作戦はある意味、世界の根幹にも関わるものだ。そんな中、クィト・メリトモナカアイス(モナカアイスに愛されし守護者・g00885)は緊張とは無縁の様子で、2021年8月の縁についてあれこれと考えていた。
「ん-む、縁。縁とは。あの月にあったことといえば……モナカアイスが美味しかったこと」
冗談とも本気ともつかない言葉に、場の空気が和む。周囲の和らいだ雰囲気を感じつつ、クィトは到着までの時間を更なる
思考に費やすことにした。
クィトを含め、復讐者の中には刻逆の発生後に漂着した者も少なくない。永遠存在との縁を紡ぐ『何か』の内容次第では、漂着組の面々がそれを直に体験していない可能性もあるのだ。
「んむ、我は大地が奪われる日……8月15日より前の宇宙関連を調べるかー」
「天文学の範囲はわたくしも気になるところです。色々調べましょう、ええ」
クィトの言葉に、八栄・薙鳥(世界拡張どこまでも・g09872)が頷く。
世界には北米含む未奪還地域が今も複数存在しており、完全な形での調査は難しい。とは言え、ある程度の水準であれば、宇宙関連の情報が入手できる見込みは高いだろう。
彼女の行先は、海を越えた太平洋の彼方にある。そこに目当てのものがあることを、今は願うばかりだった。
そうこうするうち、列車は最初の目的地に到着しようとしていた。
いよいよ調査の始まりだ。四人は互いに視線を交わし、暫しの別れの言葉を送る。
「じゃ、行って来るよ」
「後でまた。どうか吉報あらんことを」
「何かあれば、いつでも連絡すべし」
「スマホが使えるのは有難いですね、ええ。頑張りましょう」
信頼を宿した言葉と共に、復讐者たちは己がフィールドに降り立っていく。
地球と永遠存在の縁を紡いだ『何か』、その手掛かりを探る為に。
調査は、大きなトラブルも無く順調に進んだ。
戦闘の類は元より無く、残留効果も十全に使えるとあって調査活動に支障が生じることはない。
当時の状況を記録した、書類、映像、写真、などなど。それらを復讐者たちは自身の調査内容と突き合わせ、丹念に情報を拾い上げていく。
今回四人が目を向けたのは、いずれも『宇宙』に関する情報だった。
2021年8月当時、世界で発生していた事件は数多い。大小含め無数とも言えるものの中から、復讐者たちは宇宙のイベントに的を絞る形で調査を進めた。
永遠存在との縁となった出来事は、果たして存在するのか。仮に存在したならば、その出来事とは一体何なのか。
それらを探し出す決意を胸に、復讐者たちは地道な作業を黙々と続けていった。
調査を終えて四人が集合したのは、それから暫く経った後だった。
場所は、新宿駅に程近いビルの貸会議室だ。必要な資料と機材類のチェックが完了し、報告発表の時が近づく中、クィトは仲間たちにぴっとサムズアップを送る。
「んむ、収穫は上々。皆の報告も、とても楽しみ」
「お疲れ様です。お茶を淹れてありますから、皆さんもどうぞ。不要な緊張は大敵ですから」
「モナカアイスもあるから、自由に取ってね。東京ドームで買ってきたやつだよ」
「おお……! 感激。ありがたやー」
「ではお言葉に甘えて頂きましょう。ええ」
仲間と共に緊張を解しつつ、薙鳥は会議室の様子を見渡した。
それなりの広さを持つ一室には、彼女ら四人に加え、有志の復讐者たちの姿も見て取れる。永遠存在や最終人類史に関する報告を、聞きに集まったのだろう。
「今回の情報が、『何か』解明の一助となることを願うばかりですね、ええ」
「本当にね。……さて、そろそろ始めよう」
イシュアの言葉を合図に、会場が一瞬で静寂に包まれる。
厳粛な空気の中、ソレイユは最初に報告の席に立つと、自身の報告を語り始めた。
「私が調査を行ったのは、夜空の流星群に関するものです」
ソレイユの報告は、そんな一言と共に始まった。
全ての発端となった2021年8月。当時特に活発な時期を迎えていた、とある流星群に着目したのだという。
プロジェクターによって映し出されたのは、白い輝きで夜空を照らす幾多の流星たち。その名前を、ソレイユは復讐者たちへ示す。
「ペルセウス座流星群。毎年8月頃に見られる天体ショーです」
今回ソレイユが特に注目したのは、過去に絶滅人類史の復讐者が開示した情報にあった。即ち、『未来の地球は隕石攻撃に晒されて滅びた』というものだ。
永遠存在が宇宙の知的生命体である以上、彼らとの間に縁を結ぶ切欠となる『何か』もまた、宇宙に関わる事柄の可能性が高い。流星群に紛れた永遠存在を、人類は知らぬうちに観測していたのでは――そうした可能性に基づいて調査を実施したとソレイユは言う。
「調査は、未帰還地域の天文台で行いました。流星群の写真、文書記録、等々……詳細は配布資料に記載した通りです」
彼が集めたデータには、一見して分かる異変は見て取れない。そこに永遠存在の痕跡があるのか否か、現時点では不明だ。それから数点の補足説明を行い、質疑応答を終えると、ソレイユは改めて隕石という要素に思考を巡らせる。
(「ペルセウス座の観測は南極圏からは困難とのこと。地球へ降ってくるとしたら南極が安全という見方も、出来なくはないですが……」)
思いつつ、ソレイユは自身の考えを打ち消した。永遠存在の目的が一般人の絶滅であるのなら、わざわざ南極を標的にする理由が無いからだ。
残る三人の報告は、果たしていかなるものか。尽きぬ興味を胸に、ソレイユは次の仲間に発表を譲った。
「んむ。次は我の番」
二番目の報告者はクィトだった。
ソレイユに続き、彼女の操作するプロジェクターが会場に映像を流し始める。そこに示されたのは、最終人類史の一般人であれば誰もが知るものだった。
金銀銅のメダル。赤々と燃える聖火。世界中から人々が集い開かれるスポーツの祭典、すなわち――。
「……オリンピックですか。ええ」
「んむんむ。2021年8月に行われたというこの催しを、我は調査した」
獣神王朝出身のクィトにとって、名称を含めて関心を引いたオリンピック。中でも着目したのが、閉会式の一幕だと彼女は薙鳥に言う。
「というのも。実はこの時に、宇宙で楽器演奏とか国旗の受け渡しをしているっぽい」
「成程ね。そっちの切り口で『宇宙』に着目した訳か」
「んむんむんむ。次は、これを見て欲しみ」
イシュアの言葉に頷いて、クィトは更に機材を操作する。
そこに映し出されたのは、宇宙ステーションと思しき空間の映像だった。
実際に行われた演奏シーンを衛星生中継した記録だという。宇宙で行われた人類の営み――それを永遠存在が認識し、縁に繋がった可能性に、クィトは最後に言及する。
「イデアロゴスが宇宙にいるならば、何かしら宇宙と関係する出来事だと思うのだけども。……現状で掴めた情報は、これが全て」
「宇宙と関係する出来事か……本当、謎だらけだね」
発表を終えたクィトと入れ替わるように席を立つと、イシュアは絡んだ思考を解すように眉を寄せた。
少しずつだが、情報のピースが集まってきた手応えを感じる。
この後に控える仮説検証に向けて、今は報告に注力しよう――そんな決意を胸に、イシュアはマイクを手に取った。
「さて。まずは、配布した冊子を見てくれるかな」
イシュアの報告は、そんな一言から始まった。
復讐者たちの手元にあるのは、コピーされた一冊の本だった。中を読めば一見して手作りと判るそれは、アマチュア天文家の同人誌だ。方々を回り、借りた物の写しだとイシュアは言う。
「僕が着目したのは、観測記録そのものではなくてね。それを見た方、つまり人間側の話だ」
そうしてイシュアは、自身の考えを語る。
縁が結ばれた切欠は永遠存在の方から『来た』のではない。人類の方が先に、『見てしまった』瞬間なのではないかと。
肉眼での視認、或いはレーダーでの探知、などなど――そうした諸々の『観測』という行為は、即ち相手の存在を認識するということだ。今回の調査では、そこに着目したとイシュアは言う。
「当時の目撃証言や素人の反応を探れば、面白い情報が出て来るかもしれないからね。そんな中で特に目立つものと言えば、へびつかい座の新星爆発だ」
地球から4000光年以上離れた宇宙で、遠く瞬く星。
その爆発に関わる記録が、冊子には2021年8月の日付と共に記されていた。
小さな星々の浮かぶ夜空に、一際輝く赤白い光。突如として現れ、多くの人々が肉眼で存在を認識できた夜――それこそが永遠存在との縁を結ぶ『何か』だったのではないかとイシュアは話を纏めた。
発表が終了し、幾つかの質疑応答が行われる。
そうして生じた束の間の静寂に、一人の復讐者がぽつりと呟く。声の主は、薙鳥だった。
「……“人間の側から永遠存在を認識する出来事があって、それが両者を結ぶ縁となった”。イシュアさんの見立ては、要するにそういうことですね」
「その通り。正直、勘と言われればそこまでだけど」
「いえ、非常に鋭い洞察だと感じました。……わたくしが行う発表も、実はそれに近いものです、ええ」
やや早口の、熱意が籠った口調で頷くと、薙鳥はイシュアからマイクを受け取った。
いよいよ、最後の報告が始まろうとしている。
ソレイユ、クィト、イシュア、そして有志の仲間たち――水を打ったように鎮まる会場の中、集まった面々に薙鳥は静かに向かい合った。
最初の十数秒ほど、薙鳥は口を閉ざしたままだった。
自分の調査内容と、仲間たちの報告内容。それらを纏め、慎重に思索を重ねている様子がそこからは伺えた。
彼女は一体、何を話すのだろう――そんな期待と興味に満ちた視線が、無言で薙鳥に集中する。
そうして、更に数秒の間を置いた後。薙鳥は、会場の全員に一つの問いを投げた。
「……皆さんは、“九番目の惑星”についてご存知ですか?」
思いがけぬ質問に、復讐者たちは首を傾げる。
多くの者が連想するのは、太陽系に存在する八つの惑星。即ち水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星だ。
最終人類史を生きる者ならば大抵は知っている、それは天体に関する基礎と言っても良い知識。だが――薙鳥はそこに一つの情報を加える。
「実は、天文学には九番目の惑星に関する学説が存在するのです。その第九惑星のことを、ここでは『プラネット・ナイン』と呼称しましょう」
耳を傾ける復讐者たちへ、薙鳥は更に説明を続けていく。
「このプラネット・ナインとは、天王星・海王星周辺の星々の軌道から存在が推測される第九の惑星です、ええ。その存在は以前から推測・提唱されていましたが、そこから進展は長らくありませんでした」
「『恐らく存在するが、詳しいことまでは分からない』という感じですか……しかし、“長らく”と言うと?」
ソレイユの指摘に、薙鳥は得たりと頷く。そう、話の本題はここからなのだ。
「そんな折、2021年8月に一本の論文が発表されたそうです。内容は、プラネット・ナインの存在確率に関するものとか」
「ふんむー。存在確率ということは……『どこにいるか分からないから、大体の居場所を探ってみよう』。大雑把に言えば、そういうこと?」
「概ねその理解で宜しいかと、はい」
クィトに首肯を返しつつ、薙鳥は情報を付け加える。
この論文が本来発表された場所はカリフォルニア工科大学、即ちコーサノストラの領地。そこで、当時連携していた海外の研究施設に赴き、関連文書や記録を取り寄せることが出来たのだと。
「このプラネット・ナインですが、実はオカルト方面からも注目を受けていました。具体的には、この仮想惑星が『地球生物の大量絶滅に関わっている』という説からです、はい」
「“絶滅”か……何とも嫌な符合だね」
相槌を打ちながら、イシュアは薙鳥の様子に妙な胸騒ぎを覚えていた。
先程から早口で語る彼女のペースは、落ちるどころか速さを増している。それは即ち、この後に更なる大きな情報が控えている可能性を示唆していた。
そして――そんな予想の的中を告げるように。薙鳥の口から、その言葉は告げられた。
「プラネット・ナインにはいくつかの名前があります。その一つが……『ネメシス』です、なんと」
『絶滅』と『ネメシス』――永遠存在と関わりがあっても不思議ではないこの奇妙な符合、調べてみる価値はきっとある。そう告げた薙鳥は最後にふっと息を吐き、一つの情報を付け加えた。
「それと、この第九惑星とは別物ですが。似た存在として『矮星ネメシス』仮説というものもあったようですね、ええ」
もしかすると、そちらも参考になるかもしれない。そう告げて、薙鳥は今度こそ説明を終える。
何はともあれ、これで出来事の候補は絞られた。ここからは仮説と検証の時間だ。
夏の夜空を照らした、ペルセウス座流星群。
宇宙ステーションで楽器演奏が行われた、オリンピック閉会式。
彼方の星空で生じ、多くの人々に目撃された、へびつかい座の新星爆発。
地球の大量絶滅に関わる説が囁かれる『ネメシス』こと、第九惑星『プラネット・ナイン』に関わる論文。
全ての始まりとも言うべき、2021年8月。
かの時に永遠存在との縁を繋いだものを、果たして復讐者たちは導き出せるか。
かくして作戦は、次の段階に向けて動き出す――。
超成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】LV1が発生!
【隔離眼】LV1が発生!
【書物解読】LV1が発生!
【託されし願い】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
ラウム・マルファス
『人類が観測した先にイデアロゴスが居た』って視点で、もう少し掘り下げてみよウ
内容は、2021年8月である必要性、正確には、2021年7月までは観測されなかったと思われる理由の推測ダ
天文事象は繰り返していることが多いみたいだからネ
流星群や超新星爆発は、いくらか期間を開けて観測できていル
もちろんその年ならではの出来事もあるし、観測技術の向上もあるだろうけど、前年まで観測できなかったイデアロゴスがその年は見えた、って理由には弱そうダ
個人的に気になるのはプラネット・ナインだネ
公転周期が約10,000年とからしいから、観測のチャンスは少ないだろウ
暗い星だから見難いらしいしネ
論文が発表されたなら、観測しようとする人も増えるハズ
すばる望遠鏡でも観測を試みてるって話だから、論文のコピーが天文関連施設とかにあるかも、未帰還地域も含め、調べてみタイ
イデアロゴスは隕石を、絶滅人類史のために善意で降らせたって話ダ
過酷な惑星環境でイデアロゴスが強くなったなら、同じように強くしてあげよう、って思ってるのカモ
マリリン・モンロー
ここは一つ、イデアロゴスの目的から推論してみよう。
まずおかしい点が一つ。
絶滅人類史のディアボロスのために善意で人類を滅ぼした、という話だけど、ディアボロスは歴史改竄に呼応して出現した。
おかしいよね、ならディアボロスがまだ存在しない地球に飛来した理由はなんだという話だ。
次に歴史改竄について。
歴史改竄はその過程や結果の犠牲をある意味なかったことにできる。
つまり、隕石が落ちようが物理的現象なら被害は簡単にやり直せる。
これらを踏まえ、彼らの目的は絶滅した人類のためにディアボロスが歴史改竄を行うことだったのでは?
もっと言えば、自分たちと同じ『歴史への干渉力』を有する存在にディアボロスを至らせること……刻逆の完遂が彼らの最終目標なのでは?
つまり、彼らの言う善意とは所謂啓蒙活動。
その上で縁は何かと考えると、一定以上の文明や理性……同種の生物が絶滅した時に歴史改竄することも厭わない精神性を観測された時ではなかろうか。
オリンピックという世界規模で人類が一つの事象を観測する催しはその指標に成り得ないかな。
音羽・華楠
……実は、嫌な想像があります。
ここまでのお話で、『イデアロゴスと縁が繋がったのは、地球人類が宇宙のイデアロゴスを観測したから』という推理が出てました。
ただ……イデアロゴスは『ディアボロス』です。
即ち――『一般人に違和感を与えにくい』はずなんです。
2021年8月の地球にはまだディアボロスもクロノヴェーダも居なかったはずですから、仮に誰かがイデアロゴスを観測してたとしても、違和感も何も覚えず、ただの天体や天体現象と誤認してたはずなんです。
――『それ』。
地球人類がイデアロゴスを観測したのに、それをイデアロゴスと認識出来なかった――
それが縁……というか、イデアロゴスが地球を襲った理由じゃないでしょうか?
つまり――
イデアロゴスを認識出来る者……ディアボロスが存在しない地球を憐れに思い、自分たちがクロノヴェーダとして地球を襲うことで、素養ある者のディアボロスへの覚醒を促した――
……そして、それでも覚醒しなかった見込みの無い者たちを全員、隕石落下で間引いた――
……それが真相なら、嫌だなと……。
一里塚・燐寧
個々の事象を並べると、それぞれは前例があったり定期的なものだったりするんだよねぇ
ISSでの音楽の演奏はもっと前からやってるし、新星爆発がなくてもへびつかい座は世界中で見えるし、ペルセウス座流星群も毎年来るでしょ
そしてプラネット・ナインは存在するかわからない、と……
ここは一つ「プラネット・ナインは実在してて、イデアロゴスの母星ないしは植民星である」と仮定してみよう
で、想定される軌道だと、プラネット・ナインの近日点(公転軌道上で太陽の重力中心に一番近い位置)はへびつかい座付近の方向にあるんだってさ
ここで新星爆発が絡むと思うんだよねぇ
実は2021年8月にプラネット・ナインは近日点か、その付近にあったのかも
太陽に近いってことは地球にも比較的近いよぉ
で、人類の新星爆発への注目を自分達の星への注目と誤認して、イデアロゴスは地球に関心を持ったんじゃないかなって
ペルセウス座流星群は……星空を見る人を増やす効果はあったかも
ISSで演奏した曲も、タイミングの都合でメッセージと解釈された恐れは否めないかなぁ?
話し合いが再開されたのは、それから数時間ほど後のことだった。
薙鳥らの報告から仮説を立てるにあたり、調べたい情報が幾つかある――そんな意見が参加者の間から出た為だ。申し出が受理され、そうして再び全員が揃ったことを確認すると、一里塚・燐寧(粉骨砕身リビングデッド・g04979)は会議室に集合した面々を見回して言う。
「じゃ、進行役はあたしがやるねぇ。それにしても……んふふ、キョーミ深い情報が色々出て来たねぇ」
「ええ。やはり気になるのは、『プラネット・ナイン』――でしょうか」
燐寧の隣で、記録役の音羽・華楠(赫雷の荼枳尼天女・g02883)が同意を示した。
兼ねてより、その存在が議論されて来たという謎の天体『プラネット・ナイン』。人類と永遠存在の縁を繋いだ『何か』を考察する上で、復讐者たちの関心は少なからずそこに集まっていた。
「2021年8月に発表された論文、気になるよねぇ。ラウムくん、関連情報は集まった?」
「上々ダ。さっそく説明していくヨ」
ラウム・マルファス(研究者にして発明家・g00862)はそう言って、説明用の資料を仲間たちに配っていく。
彼は薙鳥が示したプラネット・ナインの情報に興味を示した一人だった。調査と共に仕上げたという書類は、質も量も充実しており、短時間で書き上げたとは思えない程だ。
会議室に集う復讐者たちの間に、心地よい緊張の空気が漂う。
やがて資料が行き渡ると、ラウムは用意したホワイトボードを背に、自身の調査した情報を語り始めた。
最初にラウムが語ったのは、プラネット・ナインの基本情報だった。
公転周期は約一万年。
星の明るさを表す等級は、推定でおよそ22等級。
太陽系の星々と共にホワイトボードへ板書した仮想天体を指し示し、ラウムは話を進めていく。
「初めて聞く人の為に説明すると、等級の数字が小さい程、その天体は暗くなるヨ。身近な例なら、満月がマイナス13程度。暗い天体だったら冥王星が14程度だネ」
「つまり、すごく暗いってことだね。プラネット・ナインは」
マリリン・モンロー(偽物は人類の夢を見るか?・g11765)が示す疑問に、ラウムは「正解」と首肯する。
「最新技術を使った望遠鏡でも、観測のチャンスは少ない筈ダ。けれど、学者や研究者っていう人種にとって、そうした困難は探求心を燃やす最高の燃料になル。件の論文が発表された後なら、プラネット・ナインの観測を試みる人が増えるのは自然な成り行きだったろうネ」
そう語るラウムの声には、確信めいた響きがあった。彼自身が研究者ということもあって、そうした人々の想いを肌間隔で実感したのかもしれない。
やがて基本的な情報の説明が終わると、彼の話は2021年8月の話に及んだ。
彼が調査した資料には、プラネット・ナインに関する当時の状況が事細かに記されていた。その中でも代表的なものを幾つか挙げつつ、ラウムは本題に切り込んでいく。
「プラネット・ナインを観測しようという動きは、論文の発表前から見られたようダ。特に天文学者を始めとする界隈では、大きなムーブメントになっていたようだネ」
そう言ってラウムが示す資料には、彼の言葉を裏付ける情報が幾つも記されていた。
そこには有名無名問わず、天文学に携わる者たちのコメントが多く載っている。併記されている仮説も、相当な数だ。
マリリンはそれらの幾つかを興味深そうに眺めると、ラウムが用意した原典のコピーをおもむろに漁り始めた。詳細に調査することで、何か新しい情報が手に入るかもしれないと考えたのだろう。
「あ、マリちゃんのことは気にしないで。ちゃんとついてくから、進めてて」
「オッケー。それじゃ、まずはプラネット・ナインの正体について目星をつけたいねぇ」
頷きを返した燐寧が、改めて全員を見回して言う。
ここまでの情報を総合すると、かの仮想惑星が永遠存在と深い関連性を持つ可能性は高い。となれば、その正体についての考察は必須だった。
「うーん……プラネット・ナインは、イデアロゴスの母星か植民星なんじゃないかなぁ?」
ラウムの資料に記された当時の論文などを吟味しながら、燐寧が一つの仮説を挙げる。
もしそうなら、貴重な情報だ。
真偽を探るべく、ラウムと華楠の手で早速検証は行われ――程なく、答えは導かれた。
「結果は、『生命の居住可能な惑星である可能性は、極めて低い』と出たネ。華楠、そっちはどうかナ?」
「同じです。条件を『同条件の惑星を持つ恒星』に変えても結果は変わりません」
「むぅ……絶滅人類史のディアボロスたちの情報によれば、イデアロゴスが知的生命体なのは確実っぽいんだけどねぇ」
導き出された検証結果に、燐寧が首を捻る。
プラネット・ナインが永遠存在の住む星である可能性は、否定されたとみて良さそうだ。
だとすると両者の関連性は一体――そう考えた矢先、手を挙げた者がいた。マリリンだった。
「……皆いい? ちょっと見て欲しいものがあるんだけど」
そう言ってマリリンが示したのは、一本の短い論文だった。
彼女の指先は、論文の冒頭に書かれたタイトルに向けられている。そこに記された文章を、華楠は読み上げた。
「『プラネット・ナイン仮説:惑星とは異なる未知なる存在の可能性』。これはつまり……かの天体が、惑星ではない可能性があると?」
「うん。更に言うと、論文の元になってるデータは『へびつかい座の新星爆発』。イシュアの報告にもあった情報だよ」
偶然とは思えない符合に、復讐者たちは顔を見合わせた。
プラネット・ナインが、生命の居住可能な惑星ではないこと。永遠存在が、外宇宙の知的生命体であること。更には、絶滅人類史の復讐者たちが語った、未来の地球が辿ったという歴史。
それらの要素を踏まえ、燐寧は改めて仮説を組み直していく。そうして導かれたのは、次のようなものだった。即ち、
――プラネット・ナインは、天体とは別の存在なのではないか?
――具体的には、何らかの理由で宇宙を移動している、イデアロゴスの痕跡なのではないか?
ホワイトボードに仮説が板書され、復讐者たちの視線が注がれる。
その光景を前に、燐寧は無言で頷いた。
無論、現時点で断言することまでは難しい。だが、判明している数々の情報を踏まえて導かれた結論の中では、これが最も確度が高い――そんな確信にも似た手応えを、彼女には確かに感じ取っていた。
作戦開始の当初はほぼ絶無だった、真相に迫る手掛かり。
雲を掴むように思えたそれが、こうして今、復讐者たちの手で形になりつつある。調査が空振りに終わる結果も十分あり得ただけに、その喜びもまた一入だった。
「んふふ。……じゃ、本題に入ろっかぁ」
仲間たちから、異論の声は上がらない。
永遠存在と人類の間に紡がれた『何か』――その仮説が核心に向けて動き出す気配を、復讐者たちは感じ取っていた。
プラネット・ナインの正体に関する有力な仮説が得られたことで、議論は更に加速していった。
かの仮想惑星は天体ではなく、永遠存在に関連する存在である――。
その前提を踏まえ、2021年8月に縁が結ばれるに至るまでの流れを、華楠は大筋で纏めていく。
「薙鳥さんが挙げた論文の発表時期と前後して、地球の人々がプラネット・ナインに興味を示した。その結果、イデアロゴスが地球人の存在に気付いた。それが即ち、2021年8月に結ばれた縁の正体……ううん……」
情報の断片を組み合わせつつ、華楠は眉を寄せる。
この説明ならば一つ一つの情報は正しく、一応の筋も通る。それは事実だった。
そんな彼女の表情を曇らせるのは、小さな違和感だった。仮説を組み立てる上で、重要なピースがまだ欠けている――そう思えてならないのだ。
「ラウムさん。プラネット・ナインに関する研究で、他に目ぼしい情報はありませんか?」
「学術的な知見という意味なら、これ以上の重要情報はすぐには見つからないだろうネ。ただ……個人的に、ちょっと引っかかった話ならあるヨ。ゴシップめいた話だから、さっきの話題には上げなかったけどネ」
「具体的には?」
「ええとね……あった、これダ。『渦巻く陰謀と復讐! 研究者の間に起こった傷害事件、果たして顛末は!?』」
「うわ、タイトルからしてゴシップ臭が。それにしても傷害事件とは穏やかじゃないね、どんな内容なの?」
興味を示すマリリンに、ラウムはスクラップブックに貼られた記事の内容を読みあげていく。
「要は、研究者同士の傷害事件だネ。『自分の研究を馬鹿にされた』と主張するオカルト系研究者が相手に暴力を振るって、裁判沙汰になって負けた……そんな事件サ」
「こっわ。馬鹿にされたからって、普通そこまでするかなぁ?」
「研究者にとって、研究は自分の心血を注いで行うものだからネ。中には、過度にのめり込んで周囲が見えなくなってしまう人だっているサ。事件を起こした研究者も同様だったみたいで、裁判に負けた後も凄い剣幕だったようだヨ」
そう言ってラウムが示した記事には、件の研究者が残した言葉が幾つか羅列されていた。
曰く、「プラネット・ナインは天体とは異なる高次生命体だ」。
曰く、「私の研究を笑う者は許さない」。
曰く、「私の研究の正しさを証明し、必ず復讐してやる」――。
「『許さない』『復讐してやる』……? ……!!」
呪詛にも似た数々の言葉を読みあげ、ふいに華楠は雷に打たれたような衝撃を受けた。
もし、仮に。
2021年8月の論文を読んだ者の中に、『復讐者の素養を持つ者がいた』としたら。
この研究者、或いはその関係者などが『復讐心に駆られた状態で』、プラネット・ナインの研究を試みたとしたら。
それが一人か大勢かまでは調べようが無い。だが、いずれにしても――。
「『プラネット・ナインはそれ自体が高次生命体だ』という『真実』に、人類は近づいてしまった。実際にはイデアロゴスの痕跡であろうそれに、『復讐心』という感情をもって……!」
その瞬間、パズルのピースが嵌まる音が、華楠には聞こえた気がした。
2021年8月、人類と永遠存在の縁を繋いだ出来事の正体。その仮説が、組み上げられた瞬間だった。
導き出された諸々の仮説に、会議室は騒然となった。
第九惑星『プラネット・ナイン』の正体。
2021年8月に発生した、人類と永遠存在を繋ぐ出来事。
それらは何れも現段階では証明の術が無い、あくまで仮説の域に留まるものでしかない。だが同時に、大筋は外れていないであろうことも、復讐者たちは確かに感じ取っていた。何よりも、この作戦がワイルド・カードの提案で行われている以上、出鱈目な情報と言うことは有り得ない。
「復讐者の素養を持った者が、復讐心をもってプラネット・ナインに近づいタ。それを切欠に、恐らくイデアロゴスも地球人の存在に気がついタ。そして両者の縁が繋がったという見方が、現状では最も有力という訳だネ……」
仮説の内容を呟きつつ、ラウムはふと自分の手を見下ろす。
気づけば、掌は冷や汗で濡れていた。周りを見渡せば、仲間たちの顔色も心なしか青ざめて見える。
縁に関する仮説が出たことで、彼らの心には新たな疑念が浮かびつつあった。即ち、永遠存在が絶滅人類史の復讐者たちに語ったと言う『善意』の真意についてだ。
「人類を強くしてあげようとした……というのは、まあ無理があるよネ」
「ええ……恐らくは、『復讐者への覚醒を人類に促す為』。同様に、隕石を地球に落としたのは『復讐者の素養が無い者を、篩にかけて間引く為』。仮説や情報を総合するに、イデアロゴスの『善意』はそうした意図に基づくものだった可能性が高いのではと……」
絞り出すような声と共に、華楠は自身が導いた仮説に軽い眩暈を覚えていた。
永遠存在が『善意』で地球に絶滅を齎したのは、恐らくは事実なのだろう。彼らの言葉を直に聞かされた時、絶滅人類史の復讐者が感じた驚きと困惑、そして絶望はいかばかりだったか。
(「ただ、あの時点で絶滅人類史のディアボロスたちは覚醒が完了していた筈。それを踏まえると、人類を滅亡させた理由は他にも存在するのかもしれませんね」)
果たして、永遠存在が人類を絶滅に追いやった真意は何処にあるのか。
新たに生じた謎に、復讐者たちの間には再び沈黙が流れ始めた。
「ひとつ、いいかな」
会議が終盤を迎える中、マリリンが静かに手を挙げた。
彼女が語ったのは、永遠存在の『善意』に関する話題だった。華楠が導いた仮説を更に進め、考察を深めようと言うのだ。人類と永遠存在の縁に関する仮説が導かれた今、反対の声が上がることは無く――仲間の視線が集中する中、彼女は『善意』の真意をこう語った。
「マリちゃんは、所謂『啓蒙活動』のセンを疑ってるんだよね」
「と言うト?」
「ん。つまり『人類を篩にかけるのは通過点に過ぎないんじゃないか』ってこと。最終的には、自分たちイデアロゴスと同じ次元――『歴史への干渉力』を有する存在に、地球のディアボロスを引き上げてあげることが、彼らの最終的な目的なんじゃないかなって」
マリリンの唱える仮説は、同時に一つの可能性を示唆するものでもあった。
絶滅人類史の復讐者による歴史改竄、即ち『刻逆の完遂』が、元より永遠存在の目的だったのではないかということだ。
覚悟、決意、犠牲。絶滅人類史の復讐者たちが賭して行った戦いは、最初から全て永遠存在の筋書き通りだった――そんな可能性に想いを巡らせ、マリリンは唇を噛み締めた。
実際のところ、この仮説でも説明できない点は残る。
一般人の絶滅で一時的に復讐心が強まっても、感情エネルギーは有限でありいずれ弱体化する。復讐心を高め続けるなら、『絶滅』という手段は明らかに非効率だ。
無論、そんな状態で刻逆を行わせることが目的である可能性もゼロとは断言できないが――今までのイレギュラーの動きや刻逆の短縮に向けて動いていることを考えれば、恐らくは違うのだろう。
正直、穴のある推論だという自覚はあった。だが同時に、それが完全な見当外れではないという手応えもまた、マリリンは感じ取ってしまっていた。
――思えないし、思いたくない。
――彼ら絶滅人類史のディアボロスが、『完全にイデアロゴスの掌の上で踊ってただけ』だなんて。
永遠存在が語ったと言う『善意』には、果たして如何なる真意があったのか。
その答えは、未だ謎に包まれたままだ。
遠からず訪れるであろう、刻逆の完遂。その先で、自分たちを待つものは何なのだろう――。
「……もうすぐ、だね」
「うん。絶対に勝つよぉ」
マリリンの言葉に、燐寧が頷く。
絶対に勝つ――それは彼女だけでなく、復讐者全員の相違に違いなかった。
かくして、作戦は大成功のうちに幕を下ろす。
かつて最終人類史と永遠存在の間で結ばれた縁の正体。そして、永遠存在が語ったという『善意』。
復讐者たちの仮説は、果たしてどこまで真相に迫っているのか。その答えは、遠からず明らかとなるだろう。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【無鍵空間】LV1が発生!
【乗物改造】LV1が発生!
【宇宙適応】LV1が発生!
【飛翔】がLV2になった!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【反撃アップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV2になった!