リプレイ
魔術師然とした少女が小高い丘に立ち、行く先にそびえる要塞を臨んでいた。
青き髪がセーヌのように風にたなびく。
「さすがに拠点に繋がる要塞。一筋縄ではいかないようですね……」
遠目にも堅固な作りをしているのがわかる。
高低差や遮蔽。迎撃用の武器の備え。
そも砦攻めには防衛側の3倍の戦力が必要と言われる。
これは戦史において必ずしも正しくないが、攻撃を想定して備えをしておくことがそれだけ有利になるということを表していることだろう。
クロノヴェーダは人に比して数倍の力を持ち、特にアヴァタール級はそれが顕著だ。
単純に人数で計算することはできないが、多くの人員が必要なのは間違いない。
「とはいえ、指揮官はともかく、配下の統制ができていないのは隙ではありますね」
要塞が優秀に機能するのも、それを扱う者次第なところはある。
質的脆弱さをうまく突ければ攻略は容易になると、エヴァは試算していた。
要塞攻略にあたっての作戦会議が開かれている。
「なんかあったら代表者にパラドクス通信ですぐ連絡だよな?」
「姫、陽動できる、よ」
「侵入組と他で組み分けして……ルートどうする?」
着々と作戦の内容を詰めていく。
そこへ、一つのニュースがもたらされた。
そのチームは偵察を行っていたはずだが、そこには見慣れぬ幼い少女の姿があった。
玄辰に抱えられたその少女はとても美しかった。
翡翠のように煌めく瞳。いかにも妖精然とした外見で、ショートの髪型が活発な印象を受けるが、衰弱した今はそれもなりを潜めている。
「そのこは、もしかして……」
「エルフや! 逃げてきたエルフを見つけたで!」
ロビン・フッド
応援を呼ぶ為、一人逃げ延びて来た
「ふ、ふふ…ふふふふ…っ!よくも散々好き勝手してくれたわね…エルフの妖精弓士にして森の英雄【ロビン・フッド】を敵に回した事、死ぬ程後悔させてあげるわ!」
ネイチャークロスで森に紛れ
モブオーラ・光学迷彩で姿を隠し
完全視界・過去視の道案内で補給基地を目指す
潜入工作なら私に任せて!
ここを解放すればヤシの実砲を利用出来そうね!
弓矢は敵の所に置いたままだから、敵は忍び足・前述の装備&効果・短剣型フェアリーソードで背後からアサシネイトキリング!
人質を解放しつつ愛弓を探して回るわ!
同族から褒め称えられ
そう!私こそが森の大英雄ロビン・フッドよ!!
同い年位の可愛い女の子に懐かれる?
時間は少し戻る。
敵陣、要塞内。
2体のマイコニドが物資置き場の前を通りがかり、山からこぼれたヤシの実に目をつけた。
「キノコノコー! マイタケテンプラオイシー!」
「オイシーオイシー!」
そのマイコニド達はなにを思ったか、ヤシの実をお互いに向けて蹴飛ばし始めた。
なんという緊張感のなさか。これは脳味噌も菌に違いない。つまり脳菌である。
ヤシの実は、人ひとりが入れるほどに巨大だが……というか、実際に人ひとり入っているわけだが……クロノヴェーダの遊び道具としてはそのサイズは問題にならない。
キャッキャとはしゃいでいると、当然そこを厳格な指揮官に見とがめられた。
「こら、そこ、なにをしている! 持ち場に戻れ!」
「キーノコー!?」
驚いて蹴り損ね、あらぬ方向へと飛んだヤシの実は激しく壁にぶつかり転がっていった。
マイコニド達は叱られた焦りでその行方を気にもとめない。
誰もいなくなった室内。
コトリ……。
ヤシの実が揺れた。
コト、コト……コトコトコト……!
風の仕業ではない。ヤシの実はそれからも何度も断続的に揺れを繰り返し、やがて、ゆっくりと内側から開かれていく。
ぶつかったときにでも、微細な裂け目ができていたのだろう。その割れ目を広げ、内側をむしり、表皮を砕いて、ひな鳥が卵から生まれ出るように、ヤシの実の中から溶液にまみれた手が飛び出てきた。
それからも穴を広げ、這い出てきたのはショートカットの美しい少女だった。
少女は木の床を這って進み、力の入らぬ身を壁に預けた。その体が小刻みに揺れる。
「ふ、ふふ……」
痙攣か、嗚咽か……いや、どちらも違う。
それは哄笑だった。
「ふ、ふふ……ふふふふ……っ! よくも散々好き勝手してくれたわね……エルフの妖精弓士にして森の英雄『ロビン・フッド』を敵に回したこと、死ぬ程後悔させてあげるわ!」
英雄の名を持つ少女、ロビン・フッド(エルフの妖精弓士・g05898)は活力を取り戻した声を上げると、ハッと我に返って自分の口をふさぐ。
幸い近くに敵はいないようだ。ヤシの実から抜け出る無防備な間に誰も来なかったのも幸運だった。
彼女に脱出しろと運命が告げているに他ならない。
自分が閉じ込められていたヤシの実の山が目に入る。今は武器も取り上げられ、長い封印のため体に力が入らない。
仲間を救うためには人手が必要だ。
ここは敵陣真っただ中。見つかればよくて再封印。最悪、その場で処分される。
「待ってて、この私が必ず助けてあげるから……!」
ロビンは後ろ髪をひかれつつ、仲間を救うため、単身で危険な脱出行の決意を固める。その成否はギャンブルに近い。
そして、彼女はその賭けに勝ち、エヴァ達ディアボロスに保護されることになるのであった。
成功🔵🔵🔴
効果1【モブオーラ】LV1が発生!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!
エヴァ・フルトクヴィスト
流石に拠点に繋がる要塞。
地の利を活かした作りですが……、
指揮官はともかく、配下の統制が出来ていないのは隙ではありますね。
上手く突いて突破させて貰いましょう!
光学迷彩を使って移動。
とはいえ植物ですから恐らくはあまり視界に依存はしていないのでしょう。気休め程度ですね。
相手の動きを観察しつつ、
出来うる限り仲間との距離が離れた瞬間を狙って補給基地の警備を潰しますよ。
ドローイングナイフで自分がいる方向とは逆に放って、
小規模にパラドクスを発動させて攪乱。
確認しに来た所を本命の一撃を叩き込みますよ!
相手の反撃には結界術や雷撃使いとして雷撃を纏って胞子を遮断や焼き払って対処します。
さあ、拠点攻略の開始ですよ!
しげみが揺れる。
動物だろうか、そう思って視線を向けても当然いるべき物音の主の姿は見当たらない。
警備のマイコニドは風かなにかかと勝手に決めつけて深く考えることはなかった。
しかし、エヴァ・フルトクヴィスト(星鏡のヴォルヴァ・g01561)はそこにいた。
光学迷彩。今のエヴァは風景に溶け込むように迷彩で覆われていたのだった。
「うまく機能しているようですね。とはいえ植物ですから気休め程度ですが」
あの植物人間たちが、同様の視覚を有しているとは限らない。
キノコ人間なマイコニドなどどこに目があるかわからないし。
とにもかくにも、エヴァは単騎、要塞近くへ接近することに成功していた。
仲間達は現在、別途作戦行動中である。
エヴァの狙いは攪乱。そして……。
「……!」
エヴァは要塞外を出歩く一体のマイコニドを発見した。
警邏中だろうか、それにしては不用心すぎる。まさか散歩、だろうか。
「こちら侵入組。準備OKやで」
「こちら乾、配置についた。いつでもどうぞ」
仲間達から次々と通信が入っている。いい頃合いだろう。
エヴァはドローイングナイフを投げてパラドクスを発動させた。
「空間を隔て裂く、虚無の力よ。深き淵より顕現し、存在を切り裂け!」
空間が裂けて、向こうの世界の力がこちらへと噴出した。
キノコ人は驚くも、なぜか仲間への連絡もせず、不用意にそれに近づいていく。あの様子では、エヴァの現在位置も彼女がわざと命中させなかった、ということにも気づいていそうもない。
それならそれで構わない。
エヴァの呼び寄せた力は、巨大な手となって裂け目から現れ、間抜けなキノコをつかみ上げた。
「キーノコー!?」
彼はおそらくサボリ中なのだろう。そのツケにしては少々、払い過ぎな代償ではあるが、彼にはこの作戦のベルを鳴らしてもらおう。
巨大な手がキノコを握り潰した。
断末魔の叫びが響き渡り、要塞内がにわかに騒然となる。
ここまでは緩みに緩んでいた連中も、さすがに緊迫するだろうか。
元よりこちらは覚悟の上だ。この作戦、必ず成功させてみせるとエヴァは魔杖を握り締める。
「さあ、拠点攻略の開始ですよ!」
大成功🔵🔵🔵
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!
遠遠・忽
アドリブ・絡み歓迎や
これを見たPCさんも絡んでくれてええで!!
生贄砲て
発想もネーミングセンスも最悪やな!
エルフの皆さんを助けに行くで~
ビーストの居場所やら巡回やらのルートを調べて、地図作製
これは共有出来たらええな
んでもっておびき出すのにええ場所を割り出して
そこに花の蜜を……こう、カブトムシ捕まえるときみたいに塗っておびき寄せや
その間に潜入してもらえるようにタイミングを合わせておきたいな
ところでキノコ語って解読でけへんやろか?
乾・玄辰
連中、エルフを何だと思っているのやら。
いや、野の花を摘む如く何とも思っていないのだろうね。
それだけに許し難い。
基地へ侵入する仲間とは情報共有と作業を手分けする。
基地周囲を遠巻きに【偵察】して侵入に適した箇所を探そうか。
偵察中に花の蜜を採取できれば小瓶に詰めておくよ。
エルフ達を捕らえた実を見つけたら
腰の【北落師門】を抜き炎剣の【斬撃】で割って救出。
脱出する前に先ずは【活性治癒】で疲労困憊した彼らの身を癒そう。
歩ける者には歩いて貰い、亡骸があれば背負って安全圏まで連れ出し埋葬したい。
接近した見張りの獣には蜜を詰めた瓶を明後日の方角に投じ気を逸らす。
駄目なら【試製・蒼の魔弾】で撃ち抜き黙らせるさ。
ベアタ・アンシュッツ
補給基地ねえ……最近運ばれたエルフが居るかもしれないし、【過去視の道案内】使って、痕跡を追えないか探ってみる
難しいなら……敵が多い守りが固いところに向かうとしますか
大事なものは守りが固いところに保管するのが……相場だしねえ
邪魔な敵はリピートベインで牽制し、先を急ごう
エルフ……細くて理知的なイメージだよね
本とかよく読んでそう
私が苦手な頭脳労働向けの、金髪で細身のお嬢さんとか居ないかな
髪がふわふわで一見……人間?
と思ったら、髪に隠れてても耳は長かったりして
うまく捕まえて……私が楽するためこきつかっt……げふんげふん
早く助けて、お友だちになりたいな☆
敵がまさに撃とうとする砲弾は、真っ先に救出しないと
備傘・鍬助
人命優先は医者の務めってな
治療が必要なエルフ達を助けなければ…
てなわけで、侵入するわけだが、見つからないようにしなきゃダメなわけだ、が…
死にそうなエルフを発見した時は、その限りではない
その時は、まず、危険を排除、M.B.C緊急展開、カノポッ君に治療を手伝わせて、命の危険を脱したら、武整体で動けるようにするぞ
ショートカットの少年っぽい…うん、少年?少女?ま、患者の性別なんて関係ないわい
とりあえず、動けるのなら、細心の注意を払って安全圏まで行けと指示、動かせないと判断したら、とりあえず、安全そうな所を探して、安置するぞ
にしても、エルフ達、思いっきり虐げられてるんだなぁ…
アドリブ、好きにしてくれ
先旗・水景
さぁ、エルフたちを助けに行きましょう
敵の基地を制圧して、可愛いとんがり耳の方々を救出する!
やりがいのある仕事ね
しくじらないように気合い入れていきましょう
忽さんも一緒なのね。心強いわ
巡回ルートとかの共有をしてもらいつつ、彼女の作戦に乗りましょう
タイミングを合わせて、素早く潜入
罠や見張りに警戒しつつ進み、敵に遭遇したら速攻で撃破を! ……狙いたいわね
敵の撃破よりは救出を優先しましょう
エルフを安全なところへ誘導護衛、怪我したり動けないものは担いででも連れていくわ
手遅れのものはどうしようもないのが悔しいけれど、まずは助けられる人たちからよね
瀧夜盛・五月姫
さあさあ、相馬さん、出番、だよ?
――怪怨召喚『古内裏妖』
とってもわかりやすい、でも無理、し難い、陽動として、姫たちや基地とは、離れた場所に、【召喚】。
相馬さんの、身長、28m。とっても、目立つ、よ。
思いっきり、【挑発】して、注目、されて、ね?
隙を見て、姫は、みんなと協力して、侵入。
必要とあらば、敵は、【薙ぎ払い】、助けに、行く、よ。
エルフ、長身の美形、多いって、聞いた。
……きっと酷女の、姫よりも、きっと、とても、きれい。
大群で、逃げられそう、なら、もひとつ、パラドクス。
――怪怨召喚『丑刻荒御霊』
エルフたち、抱えられるだけ、抱えて、みんな(骸骨たち)と、逃げる、よ。
ブロス・ブラッドハート
まえの救出任務にはさんかしてたけど、まだこんなにぼうえーようさいがあるなんてな…
よっしゃ、気合い入れ直していくぜ!
まず【パラドクス通信】でみんなといつでも話せるように。忽の地図での情報はこっちも使わせてもらいてーんだぜ
おれはマイコニドの奴らを誘導できないかな?ってことで、要塞の外の落ち葉のお布団とか切り株の椅子とかに霧吹きでシュッシュ…と
にしし、湿気たっぷりの寝床だぜ〜
そしたらよーさいにとって返すぜ
うわぁ、エルフってみんな美形なんだなぁ…。同い年のやつがいたら後で遊びてーけど、まずはこっから出ないとな
敵とばったり会ったり突破が必要な時は『捕縛』、身動き取れなくしてやるっ
アドリブ・連携大歓迎だ!
リズ・オブザレイク
東京23区や中国のディヴィジョンで大きな流れがあるようだけれど、
いち早く人命を救助しなければならない此処を僕は優先しました。
【戦騎疾駆】で駆け付けた先で助けたエルフは、けれど――。
・・・
20代前半に見える彼は、彼の妹だったらしい方の傍に蹲っていました。
防衛要塞群にあの忌まわしきスタペリアケージの砲弾として連れてこられるも、粗雑な扱いを受けて撃たれる前にここで命を落としたようでした。
助けが来た事に感謝する気持ち、だけどもっと早く来てほしかったというやりきれない気持ちが出た複雑な表情。
僕は妹さんは新宿に流れ着いているかもと、気休めの言葉しかかける事ができませんでした。
「さあさあ、相馬さん、出番、だよ?」
――怪怨召喚『古内裏妖』。
瀧夜盛・五月姫(無自覚な復讐鬼・g00544)の呼びかけに応じ、おぞましい声を上げながら、地の底より巨大な骸骨が這い上ってきた。
その巨体はゆうに20メートルを超え、遠くからもよく目に入るだろう。
「思いっきり、挑発して、注目、されて、ね?」
骸骨から見れば小さな小さな、小人のような主に、相馬と呼ばれた巨大骸骨は恭しく頷き、ゆっくりと動き始めた。
陽動作戦、その一つ。巨大骸骨相馬さん。
五月姫はその雄姿を見届けると、仲間達と行動を開始する。
「一体なんだ!? 状況を報告しろ!」
「キノコノコノコ、キノコノコ?」
「なに? わからん? バカモン! だから至急確認してこいと言っているんだ!」
「キノコー! シイタケニクヅメアゲモノー!」
「空間の裂け目から巨大な手が現れてサボっていたキノコを殺傷!? 東からは巨大な骸骨が接近中だと!? この距離になるまでなぜ接近に気付かなかったんだ!? なに、見張りがちょうどいい感じに湿った切り株を見つけて寝ちゃってた!? 超いい感じに気持ちよかった? 寝床の感想なんて聞いてない! 報告ってそういうんじゃない! お前らバカにしてるのか!?」
リーフナイトは血管が破れて脳溢血を起こしそうな勢いでぶち切れている。
まんまと策が成功したことを知れば、ブロス・ブラッドハート(角欠けた竜の子・g03342)などはにしし、と笑うことだろう。
「くそ、この状況、トカゲ共ではあるまい。ということはディアボロスの連中か。ここは戦略的価値は低いはずだが……やつらめ、なにが狙いだ……?」
「キノコノコー? シメジシメジ?」
「は? 巨大骸骨がタイマンふっかけてくるけどどうしたらいいかだと? 知るか自分で考えろ! ……というかサイズ!」
大きすぎ。
遠くからマイコニドの悲鳴がかすかに聞こえた。
絹を裂くような悲鳴、ならぬキノコを裂くような悲鳴。鍋が食べたくなる。
「近頃めっきり冷え込んできたからね。鍋の美味しい時期よね」
「いいねぇ、鍋。キノコ、もつ、海鮮、すき焼き……日本の鍋料理はおいしいよねぇ」
ベアタ・アンシュッツ(天使のハラペコウィザード・g03109)は鍋の味を思い出して頬を緩ませる。
「君ら、なんの鍋が好きだ? 私はおでん」
「ポトフ」
「ポトフて……」
「え、ダメですか?」
「この戦いが終わったら、エルフ達にも鍋をふるまってあげましょう」
米や野菜をしっかり煮込めば消化にもいい。
先旗・水景(静寂の景・g01758)達はなんでもないような話題で、強張りすぎる意識を和らげる。
「前方の敵は動いた。進んで大丈夫だ」
先行する乾・玄辰(最後の魔法使い・g01261)が違う角度から目視して、ルート上の敵がいなくなったことを連絡してくれる。
遠遠・忽(抜きっぱなしの伝家の宝刀・g00329)達偵察組が事前に把握できた地形情報に加え、ロビンの脱出時の状況、ベアタの過去視の道案内で出現した影の情報等を統合して侵入ルートを選定した。
「くっ……」
「大丈夫か? ロビン」
ブロスは辛い様子のロビンを心配して声をかけた。
ロビンは自力で脱出してきた。長い封印によるまだ本調子ではない。
「お前は封印から覚めたばかりなんだ。残っててよかったんだぜ」
「私を誰だと思っているの。森の大英雄ロビン・フッドよ。これくらいなんでもないわ」
ロビンが虚勢をはっているのは明らかだった。
だが……。
「エルフの仲間達が私の救助を待っているの! のんきに留守番なんてできっこないわ!」
奪われた過去を持つディアボロス達にとって、彼女の気持ちは痛いほどわかる。
幸い、彼女の疲弊は軽度だ。サポートして可能な限り彼女に行動させてやれたらというのが多数の意見だった。
「人命優先は医者の務めってな。私が無理と判断したら縛ってでも帰ってもらうぞ」
備傘・鍬助(戦闘医・g01748)には医術の心得がある。どこから仕入れた知識か自分でもわからないが、医者としての自覚がある以上は仲間の無理は見逃すことができない。ドクターストップというやつだ。
「それで構わない」
「……ったく」
口ではそう言っても、いざとなれば絶対についてこようとするのだろう。
患者の強情には慣れっこだ。鍬助はあきれてため息をついた。
「連中、エルフを何だと思っているのやら」
ヤシの実に保管されていたエルフの実態を聞いて、玄辰は憤りを覚える。
「いや、野の花を摘む如く何とも思っていないのだろうね。それだけに許し難い」
そのとき、玄辰の視界にマイコニドが入ってきた。
「前方! 右の角から敵がくる! 備えろ!」
先行する玄辰から急遽連絡が入る。
水景はすぐさま動いた。
曲がり角から顔を出したキノコ人間に分厚い本の角をゴン!
超痛そう。
「あの、君、それって……」
「叡智の一撃よ」
戸惑う鍬助の問いに、水景はピシャリと言い切った。
一撃を喰らったマイコニドは昏倒したようで、その間に無力化する。
「……ふぅ。なんとかなった、かな。他には気づかれてないかしら?」
「……ん、大丈夫なようです」
リズ・オブザレイク(人間の妖精騎士・g00035)は耳をすませて、安全を確認した。少なくとも、すぐ近くに敵がいて、潜入を気付かれたわけではない。
偵察の結果、この先にはヴァインビーストの見張りがいる。
ロビンのように単独で脱出するならともかく、大勢で保管庫に行くためには避けては通れない箇所である。
「この辺りに仕掛けとこか」
「ほら」
玄辰から受け取った瓶には付近で採取した花の蜜が入っている。
「これをこう、カブトムシ捕まえるときみたいに塗ってやな……」
おまけに水あめや熟したバナナなんて混ぜたりして。
てってれー! 完成。フローラリアおびき寄せトラップ。
「といっても、一晩は待てないわよ?」
「大丈夫。いい匂いがするから、これは引っかかるよ」
ベアタが太鼓判を押してくれる。
果たして、ヴァインビーストは驚くほどあっさり引っかかった。
試製・蒼の魔弾!
リピートベイン!
砂塵の暴君!
集中攻撃して始末した。
「出番、なかった、よ」
「次いくでー!」
忽達はどんどん進む。
「この先にええ感じの広さの場所があるはずや」
事前に作成した簡易地図を見ながら言う。
果たして忽の言う通りの場所があった。
同じようにトラップをしかける。
引っかかった。
武整体!
戦騎疾駆!
アサシネイトキリング!
ボッコボコ。
「また、出番、なかった、よ」
「こんな順調で、なんか悪い気がしてくるわぁ。もうちょびっとなら苦労してもええんやで?」
水景がビーストを本の角で執拗にぶっ叩いているのを見ながら、忽が言う。
リーフナイトが聞いたら憤懣もののセリフだ。
彼女のパラドクスと直感がここの連中にならこの作戦はイケると告げていた。
むしろもっと高度な罠には引っかからないかも知れない。
それからも忽達は慎重にされど迅速に進み。
「もうそろそろ保管庫が見えてくるはずやけど」
「あ。あれではないですか?」
ついに一人の脱落者もなく目的地へとたどり着いたのであった。
玄辰が腰の北落師門を抜き、一撃でヤシの実の表面を割り砕いた。
砕いた中から、封印されたエルフがのぞく。
「ようやく医者の出番ってわけだな」
鍬助は腕まくりしてエルフに近寄る。
戦場で白衣に袖を通す覚悟を示さねばなるまい。
「呼吸と脈を診る。負傷しているところがないか。確認も」
「手伝います!」
「助かる。手が空いてる人はヤシの実をどんどん開けてくれ。開けたら一旦私に見せてくれ」
鍬助は率先してエルフ達の容態を確認し、トリアージを行っていく。
ディアボロスに不死性があるとはいえそれは完全ではない。個人としての死を迎え転生してしまうこともあれば、真の死を迎えることもあるのだ。
敵陣のただ中でできることは限られる。
だが、応急手当をして助かる命があるのなら。
「ああ、無理して動かすな。私の方から行く」
症状と脱出。二重の意味で、時間との勝負だ。
「あかん! ちょっとこっち来てや!」
鍬助が急行すると、そのエルフは急変して危機的な状況にあった。
振り分けは済んでいる。すぐさま手術を行う。
M.B.C緊急展開。カノポッ君とリズ達には清潔なタオルを大量に用意してもらう。
破損した表皮が突き刺さっているようだった。
「ショートカットの少年っぽい……うん、少年? 少女? ま、患者の性別なんて関係ないわい」
緊急事態のため、服を切り裂いて傷口を露出させる。
その後、懸命の治療の甲斐あってそのエルフはなんとか危機を脱出した。
「よし、次だ」
「お礼が、言いたい、みたい」
「礼なら後で聞く。元気になったらな」
鍬助は次の患者に向かった。
「この人は大丈夫。若干の衰弱、それと軽い貧血だ。タオル渡して休ませてやってくれ」
「はい!」
リズは鍬助の指示に従って動き回っていた。
目まぐるしい。が、それが本懐である。
というのも、他のデヴィジョンでも戦局は大きく動いている。
けれど、多くの人命がかかっていると聞いてリズは参加せざるを得なかったのだ。
「タオルです。使ってください」
リズはあるエルフに渡そうとする。
だが、その彼は放心状態のようだったのが急にハッと我に返ったように騒ぎ始めた。
「妹は? 妹はどこにいる!?」
「えっと……」
強い力で腕をつかまれた。その強さが彼の焦燥を表していた。
リズには質問に対する返事を持たない。
彼の妹が誰かもわからなければ、ここに運び込まれているかもわからなかった。
リズが答えられないでいると、彼は狂ったように妹を探し始めた。
止められなかった。
彼の鬼気迫る表情から、彼にとってその人がどれだけ大切な存在かわかってしまったから。
「すまん。こっち手伝ってくれ」
「あ、はい! 今行きます」
その人のことは気にかかりながらも、リズは手伝いに戻っていった。
「うわぁ、エルフってみんな美形なんだなぁ……」
開ける実、開ける実、美形が出てくるので、ブロスは驚いた。
たまたまなのだろうか。だとしたらこのクジは当たりしか入っていない。
同い年くらいの子も見つけたが、顔が中性的で男か女かわからない。
直感で仲良くなれそうな気がした。
けれど、遊ぶのは作戦が終わってからだ。
助けられたなら遊ぶ機会なんていくらでもある。
今はひとまず、ブロスはせっせとヤシの実を開いて回った。
五月姫はヤシの実を開いた。
硬い表皮の下に隠されていたのは、長身のエルフ。
「……きれい」
思わず、声が出た。
瞳を閉じたそのエルフは、それほどまでに完成された造形をしていた。
すらりと伸びた長い手足。衰弱してなお、極上の陶器のような肌。
見れば見るほど。
一つ一つが理想的で。
欠点を見つけようにも見つけられない。
(「酷女の、姫よりも、とても」)
少し、嫉妬してしまうくらいに。
そのエルフは美しかった。
「ん……」
息がある。五月姫から見ても、助かるだろうと思う。
果たして、そのエルフがどんな生き方をするのか。
この短い時間に、なぜだかとても興味を惹かれた。
「……人間?」
と思ったが、違った。
ふわふわの髪に隠れて、長くとがった耳が目に入らなかったせいで一見するとわからなかっただけであった。
ベアタが顔をのぞくとそのエルフはすぐに目を覚ました。
だが、衰弱してしゃべることができないようだった。
「ああ、大丈夫だよ。食べたりしないよ」
軽く言って、彼女の状態を見る。
どこもケガはしておらず、衰弱している他は命に別状はなさそうだ。
鍬助もそう言った。
リズから受け取ったタオルで汚れをぬぐってあげる。
おかげで間近でじっくり観察できた。
ベアタが抱く、細くて理知的なエルフのイメージ。
それにぴったりなお嬢さんである。
読書が好きそうな、金髪で細身で、ベアタが苦手な頭脳労働がいかにも得意そうな印象。
「仲良くなったら私が楽できるかも……」
「え、なんて?」
「……げふんげふん。いや、私達仲良くなれるかも、なんて☆」
「あ、はぁ……」
困惑気味の女性に対して、ベアタは虎視眈々と彼女を見定めるのであった。
「よし。これで全員診終わった、か」
「さすがにみんな、とはいかなかったわね……」
水景が視線を落とす。
ここには大量の砲弾が集められていたが、フローラリアも逼迫した状況だったためか、粗雑な扱いを受けた砲弾も多々見られた。
ロビンのように、封印が弱まり覚醒を促されるだけならよかったのだが……。
中には意識もなく眠るように亡くなったものもいた。
せめて、苦しんだ様子がないのが幸いか。
「そうだ。あの人は……」
リズの脳裏に浮かんだのは妹を探していたあのエルフのことだ。
妹には無事会えたのだろうか。彼自身は健康そうだったが、貧血を起こしているかも知れない。
気になって見て回った。
「あ、いた……! ……ぁ」
彼はいた。
年齢は20代前半くらいだろうか。
だけど、この短い間にひどくやつれてしまっていた。
彼は、彼の妹らしい、女性の横で蹲っていた。
その女性は眠っているようにしか見えないけれど、彼の反応を見ればその生死は明らかであった。
「あの……」
「ああ、君か……」
彼はリズに助けてくれた感謝を述べた。
だけどもっと早く来て欲しかった。妹を助けて欲しかった。
そう言いたいのだろうとは、リズにもわかった。
「妹さんは新宿に流れ着いているかも知れません。今すぐじゃないかも知れないけど」
それが気休めにしかならないことはわかっていた。
けれど、他にかける言葉が見つからなかった。
助けられた命もあれば、そうでなかった命もある。
そんな当然のことで、リズは無力感に打ちひしがれた。
「さぁ、みんな! 脱出するわよ! この私についてきなさい!」
エルフ達の呼びかけは、同じエルフであるロビンが行った。
親身にされたことでディアボロス達に不信を抱くような者はいなかったが、ロビンのおかげでよりスムーズになったと言えよう。
「そう! 私こそが森の大英雄ロビン・フッドよ!!」
「きゃー。ロビン・フッド様ー! 森の大英雄様ー!」
「森のカリスマー! 生ける伝説ー! 一生ついていきますー!」
なぜだかロビンは同い年くらいの女の子達に大人気の様子だった。
小学生のアイドルかな?
水景はそんなイメージを抱いた。
「……ところで、忽さん。その後ろの人は?」
忽の背後には、さっきからずっとエルフで美形なのにマッチョな兄貴が張り付いている。
忽を気に入ったのか、ずっと笑顔。
きれいな白い歯が腹立たしい。
だが、出会ったばかりの幼女にまとわりつくマッチョってどうなん?
イケメンでも許されへんことはあるで?
「通報案件でしょうか」
「ん、今はギリ……セーフ? 戻ったら考えよ」
忽が水景に目を向けると、彼女にもなにかついている。
「そっちも、なんかショタっ子が憑いてるけど」
「気のせいです」
水景のメガネは曇っていた。
玄辰は亡骸を背負った。
戦地においてそれは荷物になる。
だが、彼らも同じ境遇、ディアボロスの仲間だ。せめて静かな場所に埋葬し、安らかに眠らせてあげたい。
亡骸は、自分より少し年上くらいの青年か。
少し歯車が狂えば、あるいは、自分がこうなっていたかも知れない。
服の裾を引かれた。
見れば、10歳くらいの少年。いや、少女だろうか。中性的な顔立ちでよくわからない。
思い当って尋ねる。
「この人、君のお兄さんかい?」
コクリ、と頷く。
憔悴して、声も出ないのだろうか。
うつむいたまま、玄辰にさえ警戒しているように見える。
けれど、それでもこの兄と一緒にいたいのだろう。
玄辰のそばを離れようとはしなかった。
「わかった。一緒にいこう」
玄辰とそのエルフはまるで歩幅は合わないが、ゆっくりと歩き始めた。
エルフ達の確保に成功した。
動ける者は歩いてもらい、そうでない者はディアボロスが助けるか、五月姫が召喚した骸骨達のようなパラドクスを利用する。
骸骨達に抱えられるエルフ達。
「これ、本当に大丈夫?」
「みんな、いい子だ、よ?」
しかし、敵の警戒レベルは上昇し、さすがに戦闘は不可避だろう。
他の間抜け達はともかく、指揮官のリーフナイトは黙って見逃してはくれないだろう。
ここからは大別して二手に分かれるべきだろうか。
助け出したエルフ達を護衛し逃がすことを優先する組。
そして、積極的に敵を殲滅する組だ。
ディアボロス達が保管庫を去ってからしばらくした頃。
リーフナイトのもとに報告が入る。
「キノコノコノコキノコノコー! カオリマツタケアジシメジー!」
「なに? 保管していた砲弾がなくなっていた? もぬけの殻だっただと!? ディアボロスめ、生贄砲を使えなくする狙いか? いや、ここにあれは配置されていない。トカゲ共とは対立しているはずだしな。意図は定かではないが……あれだけのものを持っていれば迅速に逃げ出せはしまい。追撃命令を指示せよ。私も出る。絶対に逃がすな!」
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【完全視界】LV1が発生!
【活性治癒】LV2が発生!
【過去視の道案内】LV1が発生!
【怪力無双】LV2が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【スーパーGPS】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
【ドレイン】LV2が発生!
【ダメージアップ】LV3が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
遠遠・忽
絡み・アドリブ歓迎やー
これ見た人もご自由にどーぞっ!
「きーのーこーのこのこー見ているうちーにー」
「きのこすーぷがーのみたくてー」
っと、まあこいつらは流石に食べへんけども。
歌はオリジナルやから大丈夫や!大丈夫!
対複数戦は、これ!ヒャッキセイショウ!!
この前どこぞのディヴィジョンでみたんが気になるから、ちょっと物騒やけど
召喚・集団トンカラトン!
日本刀持って自転車乗ったミイラ男や
「こいつらは『トンカラトンと言え』って言ってくるんやけど集団の中に一体だけ『言うな』って言ってるヤツがおって、どっちにしても斬られるっちゅー酷いハメ技なんや」
「さぁ!百鬼夜行でぶった切ったれ!!」
先旗・水景
さぁ、次はキノコ狩りね
あんな美味しくなさそうなキノコは遠慮したいけれど、邪魔になるなら綺麗にしないといけないわね
数が多いなら本はしまって、悪魔の出番ね
腕を変異させて、弾丸を生成、発射で吹き飛ばしてあげましょう
忽さんと協力して打ち漏らしのないように、一気に攻めていくわ
近づいてくる相手からガンガン攻撃しまくって、なるべく接近させないように
あとは、もう少しで倒せそうな敵を狙いつつぶち込めばいいわね
平和のためには、多少の暴力も必要ということね
ところで、あの「きーのーこーのこのこー見ているうちーにー」って歌は何かしら
妙に耳に残るわね……
リズ・オブザレイク
統率の取れた追撃……さっきとはマイコニドの動きが違う、アヴァタール級にこちらの位置がバレたんだ!
烏合とはいえ今は戦えないエルフ達を避難させながら戦うのは難しいです。
(さきほど自分が助けたエルフの男性と視線を交わし)
ここは僕が打って出ますので、まだ自力で動ける方はそうではない方を守ってください。
このままアヴァタール級を倒すにせよ、途中で隙を見てパラドクストレインに退避して貰うにせよ、あの敵は倒さねばなりません。
【フェアリーソード】を一旦鞘に収めて【妖精の剣】として引き抜きなおしたなら、エルフ達を背にマイコニドに立ち向かいます。
胞子を出させやしない、剣から熱線を出してその身体ごと焼き払ってやる!
ブロス・ブラッドハート
んぁ、なんか騒がしくなってきたな…
ま、さすがにバレる頃だよな~。でもエルフのみんなは無事に逃がすこと出来たしっ、こっからはほんりょーはっき!ガンガンバトるぜ!!
ついげき?へへーん、お前らが来るのを待ってたんだ。飛んで火にいるブナシメジだぜっ!
こんかいは相棒(大剣)を鞘に入れたままぶっ叩ーく!ぶん回して『薙ぎ払い』して『衝撃波』で胞子ごとブっ飛ばせるか試してみるな
「のこのこきのーこ!まっしゅるーむアッヒージョ!!」
相手の注意がそれないかてきとーにキノコ語もしゃべってみるんだぜ
あ、そーいえば…この前にくったマイタケのテンプラ、美味かったなぁ……(じゅるり)
アドリブ・連携大歓迎だ!
ロビン・フッド
愛弓を見つけ
やっと取り戻せたわ…ここからが英雄『ロビン・フッド』の本領発揮よ!
第1のパラドクスを発動
自分の背に妖精の羽を生やして優美に飛び回り、他のディアボロスやエルフ達と一緒に幸運のダンスを踊って楽しい気持ちにさせるの
いつまでも落ち込んでいられないもの
少しでも明るい気持ちにさせて、今はともかく生き残ることが先決よ!
それに、これでエルフ達に攻撃が向いても運良く避けられるかもしれないわ
敵と遭遇し、攻撃して来たら、第2のパラドクスを発動
空中でステップを踏み、妖精達と幻想的なダンスを踊りながら攻撃を回避して華麗なカウンターを打ち込んであげるわ!
あ!飛翔中、スカートの中は覗いちゃダメなんだからねっ!?
脱出の途中で、資材置き場のようなところを発見した。
一部のエルフのたっての希望で、短時間だけ探索を行う。
乱雑に重ねられた道具置き場の中から自分の武具を見つけて、ロビン・フッド(エルフの妖精弓士・g05898)は喜びの声を上げた。
その手にはイチイで作られた弓が握られている。
「やっと取り戻せたわ……ここからが英雄『ロビン・フッド』の本領発揮よ!」
所持品を取り戻せた彼女は強運と言える。
他のエルフは衣服以外の持ち物を失っていて、あるエルフの一人は血の気の失せた顔で探し続けている。
「ない……ない、私の本がない……!」
エストというその少女のあまりの狼狽ぶりにリズ・オブザレイク(人間の妖精騎士・g00035)が手を貸そうか声をかけると、彼女はもごもごと口ごもってしまい、小声で「あの、やっぱり大丈夫です」と口にした。
(「警戒している、のかな。こんな状況で、すぐには打ち解けられないよね」)
リズはまさかエストが生粋のコミュ障とは思うまい。
「うぇー、助けてやー」
遠遠・忽(抜きっぱなしの伝家の宝刀・g00329)が助けを求めて先旗・水景(静寂の景・g01758)の背後に隠れた。とても怯えているように見える。
敵に見つかったのかというと、どうも違うようだ。
「どうしたの、忽さん」
水景はあやすように優しく尋ねた。
「前にも言うたかも知れんけど、うち、実は……」
忽は重大な事実を告白する。
「マッチョがきもくて、どうしても好きになれんのや……」
「……ん? うん。ああ、さっきの人ね」
イケメンのマッチョなエルフが忽を気に入ったのか、ずっと付きまとっていた。
「まさか、あいつになにかされたの?」
水景が最悪の想像をしてにわかに気色ばむが、忽の返事は気が抜けるものだった。
「めちゃくちゃ筋肉アピールしてくんねん……筋肉が汗ばみ始めたところからサブイボが止まらへんねん……」
「あ、うん。そうなの……」
「あいつ、とってもタイプなんや……悪い意味で」
「悪い意味で」
こうもはっきり拒絶されるとは、マッチョ兄貴には可哀そうだが諦めてもらう他ない。
怯える幼女をあやしながら、水景はさっきから仲間になりたそうにこちらを見つめてくるマッチョエルフをしっしと追い払った。
「さあ、英雄が踊るわよ。無事に生きて戻るために、祝福を!」
ロビンは妖精の羽を生やして、仲間達を幸運のダンスに誘う。
幸運のフェアリーダンス。
「少しでも明るい気持ちになるの。今はともかく生き残ることが先決よ!」
心を弾ませるリズム。幻想的で、楽しげなステップ。
妖精に招かれて、ブロス・ブラッドハート(角欠けた竜の子・g03342)達もよくわからないままに踊りの輪に混ざる。戸惑いが大きいが、重苦しい雰囲気が取り払われていくのがわかった。
互いの幸運と無事を祈り、再会を願って、二手に別れた。
「きーのーこーのこのこー見ているうちーにー♪」
愉快な歌が戦場に響く。
「きのこすーぷがーのみたくてー♪」
(「あの歌はなにかしら。妙に耳に残るわね……」)
マッチョと別れてから元気になった忽は上機嫌でマイコニドを倒す。
これだけ騒ぎになっていてものんきにサボっていたキノコ人間は倒すのも容易だった。
とりあえず忽が元気になってよかった、と水景は思う。
「気分はキノコ狩りね。こんな美味しくなさそうなキノコは遠慮したいけれど」
「キノコ自体は美味いんだけどな。あ、そーいえば、この前にくったマイタケのテンプラ、美味かったなぁ……」
激しい音が耳に届き、ブロスの意識が現実に戻される。
「んぁ、なんか騒がしくなってきたな……」
マイコニド達が忙しなく動き回っている。頻度が高く、先程までとは違って油断した個体を各個撃破というわけにはいかなそうだ。
「ま、さすがにバレる頃だよな~。でもエルフのみんなは保護したし、こっからはほんりょーはっき! ガンガンバトるぜ!!」
ブロスは戦意旺盛、意気軒昂。
曲がり角から飛び出すと、群れでやってきたマイコニド達へと先陣をきる。
戦覇横掃!
相棒である紅角刀を鞘に入れたまま振り回し、豪快にキノコ達を薙ぎ払った。
「のこのこきのーこ! まっしゅるーむアッヒージョ!!」
「キノコノコノコ! タカオノナメタケエノキタケ」
「ついげき? へへーん、お前らが来るのを待ってたんだ。飛んで火にいるブナシメジだぜっ!」
さも会話が通じているかのようなブロスとマイコニドだが、無論通じてなどいない。
とりあえずブナシメジを焼いたら香ばしそうだ。
ブロスはなんだか喚いている一体の頭部をぶっ叩いた。
「対複数戦は、これ! ヒャッキセイショウ!!」
記憶にある妖怪変化を作り出し戦わせるパラドクスだ。
「この前どこぞのディヴィジョンでみたんが気になるから、ちょっと物騒やけど、召喚・集団トンカラトン!」
忽が召喚したのは、自転車にまたがって帯刀したミイラ男。
「こいつらは『トンカラトンと言え』って言ってくるんやけど集団の中に一体だけ『言うな』って言ってるヤツがおって、どっちにしても斬られるっちゅー酷いハメ技なんや」
なんて理不尽だ。
どうあがいても斬りつけられるということか。
「さぁ! 百鬼夜行でぶった切ったれ!!」
忽の命令に従い、自転車で特攻するトンカラトン。
「トンカラトンと言え」「言うな」
逃げ場のない問答を突き付けられ、しかし、マイコニドは一縷の活路を見出し大量のキノコと共に迎え撃つ。
果たして、彼は何と答えるのか。
トンカラトンと言うのか。
言わないのか。
彼の選んだ答えは……!
「キノコ!」
ザシュ、とぶった切られた。
「キノコノコー!?」
斬られた仲間を呼んだやつも斬られる。
完璧な連鎖のロジックに、フ、と笑みを浮かべる忽。
「さすが忽さんね」
水景は感心しながら、右手をマイコニドに向けた。
悪意の砲弾。
変異した腕から、体内に取り込んだ悪魔の肉体から生成した弾丸を射出する。
その弾丸はマイコニドを近づけさせないばかりか、やつらの用意した爆裂キノコすら投擲前に撃ち抜く。
「キノコ! ノコ、ノコー! ムカシハミナカッタエリンギー!」
「あんなに必死に、なんて言っているのかしら」
「侵入者をたおせ、エルフをとりかえせーって、言ってる気がするぜっ!」
「せやね」
水景のつぶやきを聞きつけたブロスと忽が口々に言う。
キノコ語が理解できないのは自分だけなのだろうか。否、反語。
「じゃあ、こう伝えてちょうだい。エルフは誰の物でもない。だから、取り返すは間違っている。言葉は正確に、私にもわかるように言えキノコ野郎ってね!」
水景はより一層容赦なく悪意の砲弾をキノコの体へと撃ち込んでいく。
言葉だけでは解決できないことも多い。
平和のためには、多少の暴力が必要だ。
そして、それは今この瞬間に他ならない。
悪魔の弾丸がキノコの体をぼろぼろに食い破る。
一方その頃。
「統率の取れた追撃……さっきとはマイコニドの動きが違う、アヴァタール級にこちらの位置がバレたんだ!」
エルフを護衛するリズ達の行方を、マイコニド達が阻む。
まだこちらには気づいていない。
だが、連携を取り合い、隙のない構えを見せている。
見つかるのは時間の問題だ。
振り返り、あの男性と視線を交わす。傍らには骸骨に抱かれた妹さんの亡骸があった。
衰弱して戦えないエルフも大勢いる。彼らを危険が及ばないようにしなければ。
「ここは僕が打って出ますので、まだ自力で動ける方はそうではない方を守ってください」
パラドクストレインとの合流ポイントまで到達するためにあの敵は倒さなければならない。
そう判断して、リズは囮になる決意を固めた。
「危険な役目を……すまない……」
「頭を上げてください。騎士として当然の務めですよ」
神妙な表情で頭を下げられて、リズは慌てた。
リズとロビンは脱出路をふさぐマイコニド達の前に躍り出た。
キノコ達は騒ぎ出してリズ達を囲もうとする。
その隙にエルフ達は脱出路へ向かう。
それを横目に確認し、ロビン達は戦いを始めた。
トループス級といえど、クロノヴェーダの端くれ。油断できる相手ではないが、エルフが避難できるようキノコ人間によるキノコ攻撃に真っ向から挑む。
「種族の隆盛のためには、英雄の存在が不可欠! つまり、それが私だ! 英雄『ロビン・フッド』は全エルフのために活躍し続ける!」
ロビンは空中でステップを踏み、踊るように毒の胞子を回避。
すかさず放った矢は、キノコ人間の頭部を貫いた。
エルフの仲間達から黄色い声が上がる。
「あ! スカートの中は覗いちゃダメなんだからねっ!?」
ふと自分の服装に気付いて裾を押さえたロビンであった。
「キノコ、」
リズはフェアリーソードを一旦鞘に納めて、再び抜き放つ。
引き抜かれた刀身は聖剣のごとき力を秘めた神秘の剣。
「無価値なものとしてぞんざいに扱っておいて、いまさら取り返そうとするんですか」
命を扱っているというのに、ヤシの実砲弾の管理はあまりにも杜撰であった。
脳裏によぎる、あの光景。
妹の亡骸の隣で力なく蹲るあの人。
その表情が頭から離れない。
だが、今は目の前の戦いに集中する。
「あなた方のせいで失った命があります! そんな横暴を、許すわけにはいかないんです!」
一閃。
リズの剣がマイコニドを切り裂いた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
【建造物分解】LV1が発生!
【託されし願い】LV1が発生!
【士気高揚】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!
【能力値アップ】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
備傘・鍬助
植物が獣してるのか、獣が植物と共存してるのか…
ちょっと気になるな
って事で、其処の獣、ちょっと解剖させてくれ!
とはいっても、やっぱり、痛いのは嫌だよなって事で、まずは麻酔だ!
第一麻酔を施術した後、第二麻酔でちゃんと…ってこいつら、普通の麻酔効くか解らないし、何度か第一麻酔を施しておこう
そして、第一麻酔が完全に効いて、動かなくなってから、第二麻酔を施して、解剖だ!
そういや、ちゃんと仕留めておいた方がいいのかなぁって思うが、まぁ、解剖した時点で、だわな
核っぽい物やら、なにやら、少し拝借していこう
もしかしたら、新薬開発に役立つかもしれないな
こんなのが、沢山いるんだろうかな
アドリブ、絡み、好きにしてくれ
ベアタ・アンシュッツ
脱出中のエルフのみなさんを護衛しつつ、敵と応戦
【過去視の道案内】で来たときの道を確認しつつ、エルフさん達を安全な場所まで連れていって安全確保
追ってくる敵にはサプライズ☆ギフトかまして潰して、活路を拓いていこうっと
攻撃時は、高速詠唱、連続魔法で手数を増やし、連携して敵を追い込むように
敵が蔓で絡め取ろうとするなら、【怪力無双】で蔓を掴み投げ飛ばす
おなかが空いたら、いもようかん取り出して片手でモグモグ
【口福の伝道者】で増やして、エルフさん達と仲間達にもおすそわけ
余った分は私がおいしくいただきました☆
そう言えば……フレイメルたんの胸部のふたつの興りは中華まんサイズですな
……おいしそう(食欲的な意味で)
瀧夜盛・五月姫
アドリブ、連携、歓迎、だよ。
前章に続き、エルフたち、逃がすため、【怪怨召喚『丑刻荒御霊』】、維持。
【スーパーGPS】【パラドクス通信】、駆使、して、皆が開いてくれる、道を進む、よ。
姫は、地獄の炎、【召喚】。
追いかけてくる、クロノヴェーダ、振り払うために、炎を壁に【攪乱】するよ。
手の空いてる、みんな(骸骨たち)も、クロノヴェーダ、近寄らせない、で。
それでもすり抜ける、クロノヴェーダは、姫、応戦。
炎を纏い、上昇気流で、ガスを散らせて、クロノヴェーダに【一撃離脱】の【斬撃】。
深追いは、しない、よ。
ぐ……、羊羹、おいしそう……
ああ、でも……でも……
エヴァ・フルトクヴィスト
救出したエルフの方々を逃がす護衛の方々の負担を減らす為。
私は引き続き、敵を殲滅して圧力をかけていきましょう!
パラドクス通信で皆さんとやり取りしながら、光学迷彩で姿を隠して。
完全視界で視界を広げつつ敵の動きを観察。
敵が追撃に夢中になって周囲への警戒が疎かになった時や合図が打ち鳴った直ぐ後を狙って、
妖精さんを召喚、統率しながら側面から割り込んで攪乱。
連携してダメージが大きいものから各個撃破で討ち取りますよ!
相手の反撃はエアライドで変則で避けたり。
斬撃で斬り飛ばしたり、結界術で急所を護ったり、
妖精さんの魔力を纏った突撃で吹き飛ばしたり防御しますよ。
わざわざ要塞という地の利を捨てる愚を後悔させますよ!
エスト・リンフィールド
……さっきは、助けてくれてありがとう
ちょっと……調子戻ってきた(今回、補給基地で救助されたエルフ設定です)
連中の襲撃を受けたときは……不覚を取ったけど、同じ轍は踏まない
まだ動けない仲間も多いし、私も援護する
あれ……?
ない……ない…………ない!!
私の本がない!
さてはお前ら……山羊さんみたいに食べたな
お前らなんか……氷付けにしてやる!(アイスエイジブリザード)
お怒りのためか、歌唱、高速詠唱で歌うように滑らかな滑舌になるかも
って、油断した!?
蔓に絡めとられ拘束されるかも
やたら蔓のみなさんががんばって、一部分が強調されるような趣味の入った縛りになってるかも
ボリュームが足りないとか思った奴は一歩前に出ろ
「脱出路のマイコニドは撃破できましたか。了解しました。みなさんはそのまま先行してください」
エヴァ・フルトクヴィスト(星鏡のヴォルヴァ・g01561)は光学迷彩で姿を隠し、引き続き潜伏中であった。
指揮官の命令で、フローラリア達の動きは多少機敏になったようだ。
だが、エヴァからしてみれば、まだまだ浮足だっていて立て直しができているとはいいがたい。
警備していた迂闊なマイコニド達がほぼ壊滅。
要塞敷地内を脱出したエルフ達に追撃隊を出すようだが……。
そこに生じる隙につけ入ろうと、エヴァは移動を開始する。
姿を隠したまま尾行。
ヴァインビースト達は隊列をなして要塞から出撃した。
獣達はエルフのことしか眼中にないらしい。
苦笑しかない。
「わざわざ要塞という地の利を捨てる愚を後悔させますよ!」
野戦ならば、防衛云々の有利は消える。
強行軍の内に隊列が乱れ、離れた群れを狙い、エヴァは側面から奇襲をしかけた。
「グァァクゥ!?」
獣はたちまち混乱し、分断された。
備傘・鍬助(戦闘医・g01748)はヴァインビーストを前に思案していた。
あれは、植物が獣してるのか、獣が植物と共存してるのか。
昂る好奇心は止められない。
「……って事で、其処の獣、ちょっと解剖させてくれ!」
おびき寄せる罠は忽から学んでいる。
鍬助は誘い込まれたヴァインビーストが蜜に夢中になっているところへ襲い掛かった。
第一麻酔。
右を打ち下ろし、獣の急所を狙う。
「よし。決まった……!」
鍬助は確かな手応えを感じた、が……。
「ガァァァァッ!」
獣は怯むことなく鍬助へと蔦の触手を伸ばす。
脳裏で警鐘が鳴る。緊急回避。ジェットブーツが空気を噴出し、蔦を払いながら後方へ跳躍するも。
追いすがる獣は鍬助の脇腹に喰らいついた。
「くっ……!」
牙が肉に食い込み、白衣が鍬助自身の血で染まる。
獣の頭部へと第一麻酔を何度も打ち込み、獣の顎が緩んだ瞬間に引きはがして蹴り、後方へと跳んだ。
(「左腹部に咬創……唾液はない。雑菌の感染はなさそうだな」)
自らの負傷具合を判断し、油断なく構える。
少々油断した。だが、わかったこともある。
どうやら、やつは蔓が獣の形を構成している。動きは獣だが、組織は植物に近い。それを上手く利用できれば……。
ヴァインビーストはうなり声をあげて、今にも飛びかかってきそうだ。
「手こずらせるな。だが、絶対に解剖してやるぞ」
みなぎる探求心。
彼はマッドサイエンティストではない。
ドクターだ。
ヴァインビーストを解剖したがるのも医療の発展のため。
フローラリアの肉体を新薬開発に役立てるためだ。
鍬助は再び獣に挑んだ。
「了解、した、よ」
「連絡なんだって?」
「キノコ、倒した、合流する、て」
「そっかーそうですかー」
ベアタ・アンシュッツ(天使のハラペコウィザード・g03109)はいもようかんを取り出して片手でモグモグ食べ始めた。
腹が減っては戦はできぬ。食べ過ぎない程度の栄養補給は有用だ。
口福の伝道者で増やし、エルフ達にも配る。
「ぐ……、羊羹、おいしそう……」
瀧夜盛・五月姫(無自覚な復讐鬼・g00544)の視線に気づき、ベアタはいもようかんを差し出す。
「食べる?」
さつまいものしっとりとした甘みを閉じ込めた和菓子。
かじると口の中で唾液と混ざり、少々の塩で際立った甘味がホロロと広がって……。
「ああ、でも……でも……」
食べるか食べまいか、五月姫が悩んでいると、ベアタはどこを見たか唐突に話題を変えて。
「そう言えば……フレイメルたんの胸部のふたつの興りは中華まんサイズですな」
時先案内人を務めたエルフの姿を思い出して、ベアタは分泌された唾液をこらえた。
「……おいしそう」
食欲的な意味で。
「……え?」
百合的な意味で?
そうしていると、エヴァから通信が入った。
ヴァインビーストの追撃隊がそちらに向かったというものだ。
だが、鍬助とエヴァの活躍により数を減らしている。
対応は十分可能に思えた。
エルフ達の最後尾に移動して戦闘準備を整えるベアタ達に声をかける者がいる。
「あ、あの……私も……」
「あ、さっきの」
迎撃に参加すると申し出たのはエスト・リンフィールド(挙動不審エルフ吟遊詩人系・g05947)という、先程ベアタが世話したエルフであった。
「……さっきは、助けてくれてありがとう。ちょっと……調子戻ってきた」
「無理しなくていいんだよ。お礼は後でたっぷりと……ん、げふんげふん」
「敵は、多い。戦う、なら、守れない、かも?」
エストは視線を泳がせながらも、決意を感じさせる必死さがあった。
「連中の襲撃を受けたときは……不覚を取ったけど、同じ轍は踏まない。まだ動けない仲間も多いし、私も援護する」
ベアタは余ったいもようかんを食べ終えると、要塞内で回収しておいた誰かの杖をエストに渡した。
「じゃ。よろしく」
力まない気楽さで受け入れられたのが意外だったが、エストはしっかりとその杖を握りしめる。
道の向こうから獣達が追いかけてくるのが見え始めた。
敵を表す緑がみるみる大きくなっていく。
「地獄のような、怨火に、焦がされて」
ドロリとまとわりつくような炎を地の底より招き寄せ、ヴァインビーストの進路を炎で染める。
怪怨召喚『中劫大焦熱』。
血が煮え立つような焦熱。
自らそこへ足を踏み入れる者がいるとすれば、それは獄卒か気狂いか。
「手の空いてる、みんなも、クロノヴェーダ、近寄らせない、で」
骸骨亡者が徘徊する、さながらここは現世に出現した地獄。
獣共は炎の勢いに怯えひるむ。
しかし、後方より追い立てるような木槌の連打が響き、獣達は一斉に突撃をしかけてきた。
獣達が炎の領域に足を踏み入れるその瞬間。
エヴァと妖精が側面から飛び出し獣共を吹っ飛ばした。
動揺しつつ獣達が伸ばしてきた触手をエヴァは空中で身をひねって次々とかわし、獣の一匹の頭部に短剣を突き刺す。
「さぁ、順番に打ち取っていきましょう!」
エヴァの攪乱によって流れを得た。
ベアタは獣達の頭上目がけてとあるものを召喚する。
それは巨大なバケツ。
ズドン!
と、落っこちてヴァインビーストを3体押し潰し、ポンとバケツが取れた後に残ったのは……。
「おー、すごい、大きい、プリン」
超巨大バケツプリン。
「戦い終わったらデザートだー」
(「みなさん、すごい……私も」)
エストは自分も参戦しようと前に出る。
だが、そこへ獣の蔓が忍び寄っていたことに気付かなかった。
蔓が肌を這うように絡みついて、体の線が浮き上がるように縛り上げる。
「ぐっ、油断した!?」
絞り上げるように体が固められ身動きができない。
肺が押し潰されて呼吸が止まる。
ぎちぎちに固められることで胸のふくらみが強調され……。
スカッ……スカッ……。
触手が空をつかむ。
古来より無い袖は振れない、という。
無い胸もつかめない。
「こら、ボリュームが足りないとか思った奴は一歩前に出ろ!」
獣達は一斉に顔を背けた。
「よっと。今、助けるよーっと」
ベアタが怪力で絡みつく蔓を引きはがし、エストを助けた。
自由を得たエストは怒りと共に詠唱を始める。
同胞を傷つけられ。
命の次に大切な本を失い。
胸の貧しさを遠回しにこけにされた。
普段は小声でボソボソと話す彼女からは、信じられないような美しく高らかな詠唱が辺りに響き。
氷の魔術に結ばれる。
「私の本、さてはお前らが食べたんだろ、山羊さんみたいに! お前らなんか……氷付けにしてやる!」
アイスエイジブリザード!
吹雪が獣達を白銀の下に覆い尽くした。
「おっと、もっとサンプル採集させてくれ」
鍬助が追いつき、医療技を繰り出す。
「姫、だって、今度こそ、働く、よ」
五月姫に向かって、獣達が猛毒のガスを吹きかけた。
呪詛にまみれた業火は彼女を守るように渦を巻き、火のすだれが晴れると五月姫はなにごともなかったかのようにヴァインビーストに近づいていく。
高温によって生まれた上昇気流がガスをすっかり散らしてしまったのだろう。
五月姫はやがて駆け出し、蔓の触手をことごとく薙刀で退けると、獣のコアを一閃。
斬り払った部位は、豪と燃え上がり地に落ちるまでに灰燼に帰す。
「エルフたち、手出し、させない」
そうして。
ディアボロス達は追撃隊を打ち破り、返り討ちにした。
「これで、ほぼ、全部?」
「我が軍は圧倒的ではないかねー! よーし、スイーツタイムだー」
そう落ち着けたのもつかの間だった。
「まったく、役立たずどもめ」
深いため息とともに、そいつは現れた。
アヴァタール級リーフナイト。
要塞の指揮官であるそのクロノヴェーダは、胃薬の丸薬を水で飲んでいる間も、隙はない。
間の抜けたトループスとは格が違う、と空気で理解した。
「何一つ言うことを聞かずむざむざと敗北しおって……だが、もういい。部下は滅んだ。エルフも処分。ディアボロスも処分。全部清算して一から再編成だ。そうしよう」
リーフナイトは霊樹の槍を構える。
「そうは、いかない、よ」
エルフ救助の最後の障害。
大一番が始まろうとしていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【平穏結界】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
【熱波の支配者】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
【使い魔使役】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV2が発生!
【ロストエナジー】がLV2になった!
【命中アップ】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV2になった!
スヴェトラーナ・アスィルムラトヴァ
……ここは、どこ……?
全く状況が読めません。
いえ、骸骨たちに抱かれて運ばれている、ということは理解できますが……。
何も、何も思い出せない……。
周りで戦っている人たちに私は護られていて……、ならばあそこに見える植物を纏った、いやそのものの騎士が敵……?
よくわからない、わからないですが生き延びる為、今の私にはこれくらいしかできませんので……っ。
植物たちよ、“彼の敵を拘束なさいっ!”
もしも、逃げ切ること叶えば、皆様にお礼を。そして、ここはどこなのか、伺わなくてはなりません、ね……。
エスト・リンフィールド
こいつだ……この、葉っぱ人間にみんなやられたんだ
でも、今度は負けない……お前なんか、刻んでドレッシングだくだくの野菜サラダにしてやる
無理して前に立つと、さっきみたいに触手にやられそうだし、助けてくれたみんなの後ろから……ナレッジサーチで敵を攻撃しよう
葉っぱ……この時期なら、焚き火
じゃあ、ナレッジサーチでどっからかマッチとかの火種出して……敵に投げつけて焚き火焼き芋ファイヤーだ
お前らに苦しめられた、私からの最高のプレゼント
今、どんな気持ち?
敵が反撃の葉っぱを飛ばしてくるなら、天候予測を活かし、風上に逃げてみる
葉っぱが逆風で、敵の方に戻ったりしないかな?
戻らないなら……急いで、木の陰とかに隠れよう
エヴァ・フルトクヴィスト
配下を失ったのはご自身の考えなしの采配でしょうに。
要塞からまんまと釣り出された挙句に、
追撃でただ突撃とか指揮官失格ですよ。
伏兵に備えて動いた私が奇襲になっているとか普通逆ですよね!?
そして、お強いのでしょうが。
要塞の守りなくただ真正面から多人数を打ち破ると思い上がりは今、正しましょう!
パラドクス通信で味方と連携を取りつつ、光使いでさらに光学迷彩を強化。
ドローイングナイフをバラ撒いて、
そこから声を中継して相手を挑発するように攪乱。
奇しくも同じ系統の技、勝負です!
飛翔で一気に接近、
勇気を以って観察し、ギリギリでエアライドと結果術の足場で軌道を強引に変えて託された願いの貫通の一撃を!
攻略完了ですね!
瀧夜盛・五月姫
アドリブ、連携、歓迎、だよ。
前章に続き、エルフたち、逃がすため、【怪怨召喚『丑刻荒御霊』】、維持。
護るように囲んで、待機(戦闘には参加させない)、だよ。
?!
エルフさん……?(スヴェトラーナ・アスィルムラトヴァ(g05907))
眼、覚めたの?
そんな、急に動いちゃ……。
や、ありがと。これは、チャンス、だね。
エルフさんの拘束や、みんな、の攻撃で、体勢、崩れれば【ダッシュ】で切り込む、よ。
この【斬撃】は、一条戻リの愛し姫(はしひめ)の、“縁”切りの力。
あなたと、エルフたちの、悪“縁”、ここで、断たせてもらう、よ?
ブロス・ブラッドハート
へへ、おまえ強そーだな…でもこっちもそう簡単に倒されてやらねーぜ?
先のことばっか考えて油断してると痛い目みるぜ『ちゅーかんかんりしょく』のおじさん
ドラゴニアンのバトり方を見せてやるっ
要塞から出てきてくれたなら、こっちもちょっとは自由に【飛翔】を…っていっても、こいつらドラゴンと戦ってきてんだもんな。ただ飛ぶんじゃなくって、樹の幹とかちょっとした足場があればおれの得意な跳ぶに切り替えて動きを読ませねーようにする。エルフのみんなが逃げる『時間稼ぎ』もしねーとなっ
攻撃の予兆があれば【エアライド】でさらにトリッキーに翻弄だっ
仲間の動きに合わせて波状攻撃を叩きこむぜ~!
アドリブ・連携大歓迎だ!
アデレード・バーンスタイン
未だ捕らえられている同胞の方々がいる…。そしてディアボロスの皆さんにも未だ恩返しもできていません。…微力ですが平和と秩序を守る一族として…わたくしも助太刀させていただきますわ。
僭越ながら先陣を切らせて頂きましょう。
一時の感情や衝動に身を任せるのははしたないですが…わたくし達の力の原動力は「怒り」。
我らが同胞を故郷を踏み躙られた怒りをもってあなたをぶん殴らせて頂きますわ。
わたくしが他の前衛の方々と先陣を切って相手に接近戦を仕掛けます。
相手の技は閃光の如き疾さの斬撃。
成程、わたくしでは見切るのは難しいですが…あえて正面からぶつかることで力でもって疾さを制すと共に後続の方のための囮となりましょう。
リズ・オブザレイク
最後の関門になりましたね。
油断してはいけないけれど、体が強張ってもいけない。
けれど、エルフ達の【託されし願い】を背負っている事を忘れずに。
クロノヴェーダではありますが、リーフナイトはその名と身なりから騎士と見受けました。
敵の槍の間合いに入るのは難しいです……が、距離と用途によって形を変える【騎士の武器】で【臨機応変】に立ち回り、味方と共にその隙を付けば或いは。
閃光の如き槍筋を超える為に、手数の多い武器を持って踏み込みます!
//
僕も、父さんと母さんがまだ見つかっていません。
それでも信じてる……信じたいんです、歴史を取り戻せばいつか――。
ええ。パラドクストレインの行きつく先を確かめにいきませんか。
先旗・水景
いよいよ、ここのボスの登場というわけね
しっかりと倒して、要塞を落としてしまいましょう
デーモンの力を呼び起こして肉体変異、今回は肉弾戦で仕掛けていくわ
葉先を殴っても効果は薄そうだから、リーフナイトのボディ目掛けて拳を叩き込むわ。基本的はヒット&アウェイで深入りせずにダメージの蓄積狙いね
みんなと連携して一気に攻めていきましょう
相手の攻撃は速いみたいだからしっかりと見極めて早めの回避行動を心がけ、間に合わなそうなら無理矢理受け止めるのも選択肢ね
そして、敵の隙を逃さず防御も捨てて、渾身の一撃をぶちかますわ
アドリブとか絡みとか歓迎よ
遠遠・忽
アドリブ・絡み歓迎や
決戦やな!
「部下に恵まれて無いトコはちょっと同情するけど……」
と悲しい目で見つめてまうわ
挑発とかやのうて、本心から
まあ、切り替えて戦うけどな!
やっとったことは絶対許さへんから!
こういう攻撃(リーフスラッシャー)には……
あえて!突っ込む!!
一枚一枚の威力は高くないしこっちに向かってくる攻撃やから
交差してまえば、被害は少なくなるっちゅー寸法や
【エアライド】でルートを見極めて【飛翔】も併用したらさらに有効な戦術のハズ!
近づけたら
「覚悟は、ええか?」
鈍器を振り上げて……やったことの分、どつき回すで
ベアタ・アンシュッツ
もしや……その丸いのは
コーヒー豆をチョコで包んだおいちい奴では!?
まさか、奴も私と同じ孤高のスイーツファイター?
違う?……そうか
【飛翔】し周囲の木々や要塞の構造物を盾にして、地形の利用を活かし敵の攻撃回避しつつ、クロノヴェーダ☆マッシャーを敵に叩き込む
攻撃時は、高速詠唱、連続魔法で手数を増やし、連携して敵を追い込むように
お前の手下もろとも、【土壌改良】で森の肥やしにしてやんよ
って、いっぱい食べてぽんぽんがパンパンなのに
今、葉っぱで服破れたら……内部から弾けて全年齢の危機になる
死んでも当たれないぞ私
エルフ達を散々苦しめた人生……草生?
最期に一花咲かせなよ(肥料的な意味で
これがホントの……草生える
ロビン・フッド
あまり人目にこの姿を晒したくないんだけど、そうも言っていられなそう……ああ、もう!仕方無いわね!
ドレスアップ・プリンセスでネメシス形態、背に妖精の羽を生やしたスタイル抜群な18歳姿に変身して、ハートや舞い散る花びらとともに飛翔しながら弓からセイクリッド・アローを放つ
敵のパラドクスは、空中ステップで回避かフェアリーソードでの受け流し切り払いを狙うわ
終了後はそのままの姿でエルフと触れ合い
「もしや……その丸いのは……!」
リーフナイトが服用する丸薬を見て、ベアタ・アンシュッツ(天使のハラペコウィザード・g03109)がおののく。
「……?」
ただの胃薬なのだが、と首を傾げるナイトをよそに。
「コーヒー豆をチョコで包んだおいちい奴では!?」
「違うわ!」
「まさか、奴も私と同じ孤高のスイーツファイター? この世のありとあらゆる甘味を征服せんとする、孤独を抱えた戦士……」
「だから違う! ……て、なんだその設定は。どこに孤独がある」
「みんな、甘いものばかりそんなに食べられないって言う」
「あー……」
ただの甘いものに目がない食いしん坊だった。
ベアタ達がそんなしょうもない会話を繰り広げている間。
「こいつだ……この、葉っぱ人間にみんなやられたんだ」
エスト・リンフィールド(挙動不審エルフ吟遊詩人系・g05947)の顔が青ざめていた。
無理やり封印されたときの記憶がにわかに蘇ったのだろう。
フローラリア達は催眠の法を使うが、それにかからなかった場合、覚醒者は強引な封印術で捕らえ、そうでないものは二度と抵抗できないようにした。
あのときのみんなは今どこにいるのだろうか。
杖を握る手が小刻みに震えている。
封印されたときの状況はそれぞれ違う。だが、エストはリーフナイトに恐怖を刻み込まれた。
そんな彼女にその元凶と立ち向かえというのは酷だろうか。
「どうした。かかってこないのか? こそこそと逃げ回ることしかできないか」
悠然とした態度を気取るリーフナイト。
「わたくしがお相手いたしましょう」
声の主を探して、視線を向ける。
そこには、たった今駆けつけたエルフの女性がいた。
とても長く美しい緑の髪は川に宝石が溶け込んだかのようで。
「おお、あれは守り手の族長の娘」
彼女を知るエルフの表情が明るくなる。
アデレード・バーンスタイン(エルフのデストロイヤー・g05838)はエルフ達に希望と安心を与える存在だ。
彼女自身、ディアボロスに救出されたが、未だ多くの同胞が囚われていると知り、この地に駆けつけた。
(「ディアボロスの皆さんには、未だ恩返しもできていません」)
だが、自分のみならずこうして他のエルフ達も救おうとしてくれている。
守護の役割を担う者の一人としては感謝してもし足りない。
「微力ですが平和と秩序を守る一族として……わたくしも助太刀させていただきますわ」
アデレードは正面から正々堂々と戦いを挑み、リーフナイトと相対。
刹那。
閃光のごとき一撃がアデレートのレイピアを弾き跳ばした。
武具をつけてなお痺れる手。
アヴァタール級の中でも戦闘に長けた個体か。
「お恥ずかしい」
「恥ずかしい? その稚拙な剣の腕がか?」
正面から迫るリーフナイトの斬撃をアデレートは半身ずらしてかわし、踏み込んだ足を軸に一回転、その勢いのまま拳をリーフナイトの脇腹に打ち込んだ。
厚い葉で覆われた体が衝撃でひしゃげる。
「わたくし、実は一番格闘術が得意ですの」
「バ、バカな、エルフの拳ごときで……?」
「ええ、格闘が一番だなんて、と母からもよく言われたものですが」
こうして種族の敵に対抗できるのならばそれは誇り。
「一時の感情や衝動に身を任せるのははしたないですが……わたくし達の力の原動力は『怒り』」
ノックノック。妖精に呼びかける。
火は拳に、風はブーツに。妖精の力を借りて、更なる強さを。
「我らが同胞を、故郷を踏み躙られた怒りをもって、あなたをぶん殴らせて頂きますわ」
魂に湧き起こる衝動を拳に乗せて、叩きつけた。
アデレードが正面から挑むことで生まれた隙に、ベアタは草葉を移動して死角から接近していた。
「お前の手下もろとも、森の肥やしにしてやんよ」
でっかい寸胴鍋を振りかぶり、ナイトの後頭部へ、ドガン!
人間相手だったら、首が折れかねない致命の一撃であったが。
「……驚いた」
「へ?」
「驚いたと言っている。サプライズは十分だ。消えろ」
リーフナイトが振り返り、その鋭い視線でベアタを睨んだ。
ベアタは悟った。
たった今までなにもなかったところに、樹木が密生していることを。
逃げるどころか、ねずみ一匹通れないことを。
次の瞬間、繁茂した葉っぱ一つ一つが鋭い刃となってベアタに襲いかかる。
数えるのも馬鹿らしい数の刃に全身を切り刻まれた。
「ふん」
リーフナイトは鼻を鳴らして次なる目標を見定めようとしたが。
「まだだよ」
密集した樹木の中から声がして、驚愕する。
こじ開けた木々の隙間から、ベアタの顔が確かに見えた。
ベアタは次なる一手のための詠唱を既に終えていた。
「エルフ達を散々苦しめた人生……草生? 最期に一花咲かせなよ」
「なに……!?」
巨大なマッシャーがリーフナイトの体を押し潰した。
「やった……!」
エストが小さな喝采を上げる。
あの恐ろしい敵を相手に、ディアボロス達は引いたりしない。
真っ向から立ち向かうのだ。
「たすけてー……」
「え?」
ベアタが情けない声を出している。樹木の間で挟まって出てこられないのだろうか。
「服が破けて出られない……」
「ああ、さっきの攻撃で切り裂かれて……」
「ううん。内側から破けた。お腹が」
「内側ってことは」
多分、食べ過ぎてサイズが合わなくなったのだろう。
「はいはい。今助けるよ」
戦っている間はかっこいいと言えなくもなかったが、なんだか締まらない人だなとエストが思ったその矢先。
「その必要はないな」
冷たい声がエストの肝を冷やす。
マッシャーに潰されながらも、リーフナイトは生きていた。
無論、まったくの無事というわけではないが、些細な傷を負った程度という具合だ。
エストは瞬時にベアタ救出を諦め「え、あれ?」敵に対して身構える。
確かに一度、エストは敗れた。
その恐怖はまだ新しい傷となって心に残っている。
だが、ディアボロスやエルフの英雄達が戦う姿が勇気をくれる。
「今度は負けない……お前なんか、刻んでドレッシングだくだくの野菜サラダにしてやる」
アデレードや他のディアボロス達がリーフナイトに立ち向かう中、エストは閉じ込められたベアタの陰に隠れて、そう心に誓った。
ナレッジサーチ。
貯蓄した知識の中から相手の習性を検索、弱点を推測。
大切な本は失くしてしまったけれど、その知識は今も自分の中に生きている。
葉っぱの騎士……この時期なら、焚き火。
「じゃあ、マッチとかの火種出して……敵に投げつけて焚き火焼き芋ファイヤーだ」
エストの攻撃は惜しくも敵に破られ、哀れベアタの横に閉じ込められてしまうのだが、彼女に後悔はなかった。
恐ろしい敵に立ち向かう勇気を得た。
その事実は自信となって、彼女の中の1ページに記されたのだ。
「フ、なるほど。甘く見ていたのは認めよう。だが、この程度か」
リーフナイトの、エスト達の攻撃を退ける様にはまだ余裕が見られた。
「あいつらさえしっかりしていれば、私が煩わされることもなかったろうに」
その態度に嚆矢を打ち込む者がいる。
「なんでも部下のせいにするんですね。その配下を失ったのはご自身の考えなしの采配でしょうに」
「なんだと……?」
エヴァ・フルトクヴィスト(星鏡のヴォルヴァ・g01561)であった。
「私のどこに非があるという。聞かせてもらおうか」
「要塞からまんまと釣り出された挙句に、追撃でただ突撃とか指揮官失格ですよ。伏兵に備えて動いた私が奇襲になっているとか普通逆ですよね!?」
要塞からまんまと……然り。
追撃でただ突撃……然り。
反論しようにも、思い返せばエヴァの言う通り。
リーフナイトは自身の失策を知り頭を抱えた。
「なるほど。部下の無能を嘆いてばかりいたが、私も同様か」
「ご理解いただけましたか」
意外なことに、自分の非を認めるようだ。そこだけは評価してもよい。
だが……。
「貴様は、どうやら知見があるようだ。どうだ。私のそばで働いてみないか、特別な待遇を約束しよう」
「御免こうむります」
考えるまでもなく拒否した。
「加えて、もう一つ」
「聞こう」
「あなたはさぞお強いのでしょうが」
部下を失っても、自分さえいれば立ち直せるという自信。
それは紛れもない驕りではあるが、事実なのだろう。
だが、それも相手がディアボロスでさえなければ、の話だ。
「要塞の守りもなく、あなた一人でただ真正面から多人数を打ち破れるという思い上がりは、今、正しましょう!」
星鏡の魔杖と霊樹槍が激突し、交差の形となる。
タイミングは同時。地力の分だけリーフナイトが優勢か。
エヴァはドローイングナイフをバラ撒きながら後方へと跳躍。その姿は景色に溶け込むように消えていく。
姿隠しは超常の戦いにおいては決定的な要素とはなりえない。
が、エヴァはそれを踏まえてた上で、数の有利を生かし、徹底的に叩くつもりだ。
放たれた霊樹槍の追撃をことごとく宙で軌道を変えて避けきる。
「うまい。だが、当てられぬほどではない」
リーフナイトが必中の一撃を放とうと構えたそのとき。
「あー! いたいた! おいついたー!」
「ほんまやー。間に合ったなー!」
ブロス・ブラッドハート(角欠けた竜の子・g03342)達の声が響いた。
「ちぃ」
ナイトは舌打ちして、新手に向き直る。
一人一人、確実に仕留めていけば、彼に負けはないだろう。
だが、わかっていてそれをさせるつもりはないのだ。
エヴァのからかう様な声がいたるところから聞こえてくる。
リーフナイトはエヴァの残したナイフの一つを腹立ちまぎれに踏みつけた。
「へへ、おまえ強そーだな……でもこっちもそう簡単に倒されてやらねーぜ? ドラゴニアンのバトり方を見せてやるっ!」
ブロスは紅角刀を構え、葉の騎士と相対するも、ふとなにかに気づく。
「あれ? おまえ一人? 他の連中はどした?」
悪びれなく言った。
遠遠・忽(抜きっぱなしの伝家の宝刀・g00329)達があちゃーという顔をする。
「お前は本気で言っているのか……?」
怒りを押し殺すように言うリーフナイト。
ブロスはそこでようやくフローラリアの手下達がその辺で倒れているのに気づいた。
「あ、そっかー! 他のは全部おれらが倒しちゃったのかー!」
ピキリ。
血管が一本いった音が聞こえた。
ブロスには悪気はないのだが、その無邪気さがむしろ挑発に拍車をかける。
「この竜のなりそこないのガキが! 戦場をうろつくな、目障りだ!」
騎士の怒りを示すように、槍が太陽のごとく輝く。
目にも止まらぬ閃光の斬撃。
ブロスはその攻撃を受けて草の茂みへとつっこんだが、すぐにピョンと元気に飛び出てきた。
「すげーいってぇー! へへっ、でもなんだかワクワクしてきたっ」
そう言って、口の端に滲んだ血をぬぐった。
「部下に恵まれて無いトコはちょっと同情するけど……」
忽は悲しげにつぶやきを漏らす。
聞かないやつを任されるとほんと大変。生返事ばかりで態度悪いし、何度言っても同じ間違いするし「なんでそうしたの?」という他ない事態を引き起こすし。
「気持ちわかるで。大変やったねぇ」
幼女に慰められるリーフナイト。
妙な光景を見せられて、先旗・水景(静寂の景・g01758)はちょっと笑った。
まぁ、それはそれとして、置いといて。
「やっとったことは絶対許さへんから!」
合流した忽達が加勢に入り、戦いは更に激化する。
ブロスは飛び跳ねるような動きで葉っぱ騎士の攻撃を避け続ける。
「ええい、ちょこまかと」
「へっへー、鬼さんこちら、手のなる方へー。なーんてなっ」
業を煮やし、リーフナイトはひとまず、水景へと狙いを変えた。
すると不思議なことに、徐々にだが場の流れが変わっていったのだ。
ディアボロス側にしてみればよくない方へと。
「く、これはなかなか……」
「そら、そら! 来ないのか、ディアボロス」
ヒットアンドアウェイを繰り返してきた水景だが、リーフナイトの動きが変わり、機を見いだせずにいた。
リーフスラッシャーで忽達を牽制しつつ、水景が間合いに入るのを待っている。
エヴァ達の攪乱から立ち直り、リーフナイトはペースを取り戻しつつあった。
「うかつに飛び込むわけにはいかないわね……」
水景は歯噛みする、が……。
「こういう攻撃は……あえて! 突っ込む!!」
「ちょっと、忽さん!」
仲間の制止も聞かずに、忽は刃の嵐へと飛び込んだ。
痛い。怖い。熱い。
そこはとんでもないところだった。
皮膚が切り裂かれ、熱さとして知覚する。元より部位を正確に狙うような攻撃ではない。
当たる角度が悪いと葉っぱのくせにもっと質量のあるものがぶつかったような気さえした。
だが、耐えられない程ではない。
(「一枚一枚の威力は高くないし、こっちに向かってくる攻撃やから交差してまえば、被害は少なくなるっちゅー寸法や」)
失明しないよう目を守りながら、視界の悪い中、ルートを策定。
遂に刃の嵐を突き抜け、ナイトの姿を捉える。
「もろたで!」
忽は鈍器を振り上げて襲いかかるが。
「甘い!」
リーフナイトと忽との間に樹木が壁のように召喚される。
リーフスラッシャー第二陣。攻撃を阻害するとともに忽を更に責め立てる。
「それ以上はやらせないわ!」
水景の怒りに応えるように、肉体が変貌していく。
それはかつて喰らった悪魔の面影残る異形。
魔力を乗せた拳の連打を、しかし、リーフナイトは手甲と槍でさばく。
対人戦闘経験はあるのだろう。
水景から見てもそうわかるほど、目の前の騎士の技は冴えている。
対多数の戦いにも慣れ始めている。
(「この辺りで一つ、流れを取り戻さないと……」)
なにかないか。なにか。
さまよう水景の視界に、樹木の壁の間から這い出てくる忽の姿が映った。
「甘いんはどっちやろなぁ……?」
すぐ背後からの声にゾッとしてリーフナイトが振り返ると、忽が鈍器を振り上げているところだった。
無傷ではない。
むしろ全身を自らの血で汚していて、それが迫力を増す結果となっていた。
その手に握られるは、伝承に謳われる竜殺しの鈍器。
本来ならフローラリア相手ではなくそのライバルに向けるための武器ではあるが……。
「覚悟は、ええか?」
その鈍器の表面は、たった今ドラゴンを殴りつけてきたといわんばかりに乾き知らずのドラゴンの血でビッタビタに濡れていたのだった。
「ぐ。や、やめろ! 竜臭い! すごい竜臭い!」
忽は嫌がるナイトの抵抗を意に介さず、反撃を受けるのも構わずに、どつき続けた。
「もう十分、もう十分だから!」
そうして水景によって回収されるまで忽は思う存分騎士を殴打したのだった。
「な、なんだ。あいつは……調子が狂う。しかしトリックスターも、もう無理はできまい」
「そうやって油断してると痛い目みるぜ『ちゅーかんかんりしょく』のおじさん」
ブロスが竜の翼をたたみ、空中から強襲する。
竜翼翔破。
しかし、リーフナイトは空に舞うブロスの気配を察知していた。
「甘い。我らがどれだけ竜と争ってきたか、知っているのか!」
リーフナイトは槍を体に寄せて固定し、迎撃の構えをする。
だが、ブロスは軌道横にあった樹の幹を蹴りつけて直前で突撃角度を変えた。
「なにっ!?」
紅角刀は槍の穂先をかわし、リーフナイトの肩に吸い込まれる。
実は年少組の方が一撃が重い。
リーフナイトは軽んじた報いを実感する羽目になった。
「く、先に潰すべきはガキどもであった……か?」
いつのまにか接近していた水景の拳がナイトの胸部を貫いていた。
油断していた?
リーフナイトは認めねばならない。
個としては負けるはずはない。圧倒的だ。
だが、戦略を放棄して対多数で蹂躙できるほど、侮っていい相手ではないということを。
エヴァの言葉が蘇る。思い上がりが過ぎたか。
とっさに振るった槍の穂先は水景の胸部を深々と抉っている。
だが……。
「……まぁ、悪くない収穫かしら?」
倒れる間際に口にした水景の言葉を笑えるほど軽視していいダメージではなかった。
リズ・オブザレイク(人間の妖精騎士・g00035)は瀧夜盛・五月姫(無自覚な復讐鬼・g00544)達と合流し、エルフ達の無事を確認した。
敵にエルフを狙うそぶりはない。
リズは名前のみならずその立ち居振る舞いからもリーフナイトを騎士と見受けた。
窮地に陥っても人質をとるような行為はしないように思う。
だが、万が一があってからでは後悔してもしきれないのだ。
「もう既に血は流れました。これ以上は必要ありません」
リズは大きく息を吸って深呼吸。
高まりすぎた熱を払い、強張る体をほぐし、エルフ達の希望を、想いを背に立ち上がる。
最後の関門。
ここさえ乗り切れば、エルフ達を救える。
「なるほど。私に指揮官の才はない。引き際さえ見失っているようだ」
幾多のディアボロスを相手にして、緑葉の騎士は今や真紅に染まっている。
相当な深手、しかし、ディアボロス側の被害も深刻である。
「だが、ならばこそ、最後まで戦士としてこの槍を振るおう。死に花を咲かせようではないか」
死を覚悟した戦士は強い。
躊躇いがなく、傷を負うことを恐れないからだ。
五月姫も目立った傷こそないものの、連戦のために疲労が蓄積してきた。
パラドクスを維持して、骸骨達をエルフの護衛につけているけれど。
(「最後の猛攻、もし、来たら、防ぎきれる、か」)
ロビン・フッド(エルフの妖精弓士・g05898)は覚醒したての無理がたたり、体を休めていた。
鉛のように体が重い。ちょっとしたことで息が切れ、動悸がする。
まだ戦う手立てはあるが、しかし……。
(「あまり人目にこの姿を晒したくないんだけど、そうも言っていられなそう……」)
「ロビン・フッド様……」
ロビンファンの女の子達が不安そうに見上げてくる。
自分達のためにディアボロス達が一人一人と傷つき倒れていくことに心痛めている。
それは理解できる、が……。
「……ああ、もう! 仕方無いわね! この大英雄ロビンが今すぐ彼らと敵を打ち取ってきてやるわ。安心しなさい!」
ファンの前で大見えを切って、覚悟を決める。
ロビンが最後の手段を躊躇うのには理由があった。
その理由はすぐに周知にさらされることとなる。
「プリンセスハート・ドレスアーップ!」
ロビンは高らかに叫んだ。
魔力が高まるにつれてその姿がキラキラとした光に包まれる。
心のドキドキに合わせて鼓動する謎のハートが飛び交い、花びらが舞い散る中。
まばゆい光の中から現れたのは豪華絢爛なドレス姿にプリンセス変身したロビンであった。
ネメシス形態になったことで背に妖精の羽を生やしたスタイル抜群な18歳の姿に急成長。
五月姫はその変身を目の当たりにしてつぶやかずにはいられなかった。
「ニチ、アサ……?」
「それがどういう意味かわからないけど、違うわよ!」
ともかく、その姿となったことで、ファン達は多大な勇気をもらったようだ。
鳴りやまぬロビンコール。
小さい女の子も大きいお友達も彼女を応援している。
声援に後押しされ、応援を力に変えて、ロビンは飛翔し、弓を構えた。
「届いて、妖精王女の聖なる祈り! セイクリッド……アロー!!」
放たれたレーザーがリーフナイトを襲う。それらは引きつけられるようにナイトに向かっていくため、彼はそれらを逐一弾くか打ち消さねばならない。
リズはナイトを追いながら、パラドクス騎士の武器を発動。
フェアリーソードはハルバードの形状となり、リズはそれ用いてナイトと切り結んだ。
ハルバードは斬撃、刺突、殴打等と用途は多岐に分かれる。柄が長くなるほど使用に習熟が求められるが、リズは武器に振り回されないよう必死に食らいついていった。
五月姫とロビン達他のディアボロスの援護もある。
だが、技量としては向こうの方が上だ。一瞬の気も緩められない。
その小さな背にはみんなから願いを託されている。
それが無為になることはあってはならない。決して。
「絶対に守る。それが騎士としての僕の使命です!」
接近しても扱いやすいよう、ハルバードにしては柄が短い。
その分威力が下がるが、取り回しやすく、自然手数が増える。
武器の重さの差は、気持ちの重さでカバーした。
仲間の援護もあって、次第にリーフナイトを追い詰めていく。
だが……。
「小癪な! そのなりで騎士を騙ろうなど百年早い!」
形勢を覆す程に一撃の重さが違う。
まばゆい輝きを放つ閃光の斬撃はリズの鎧を砕き、肉を穿った。
「……危険!」
五月姫はとっさに間に割って入り、大薙刀を構える。
「遅い!」
リーフナイトの武技はここにきて更なる境地に至り、五月姫の応戦むなしく彼女を乙女の血で染めていく。
着物に吸いきれなかった分は地面に垂れ、まるで自らの行く先を彩らせるかのように、リーフナイトは血を流させる。
エヴァやブロスが横合いから駆けつけるも、樹壁を召喚して時間稼ぎされ。
「さぁ、我らのために血花を咲かせよ!」
死にゆく騎士は凶槍を振りあげた。
スヴェトラーナ・アスィルムラトヴァ(世界が忘却せし魔性・g05907)は喧騒のただ中で目を覚ました。
(「……ここは、どこ……?」)
見覚えはない。
ぼんやりしながらも少しずつ周囲を観察して、そもそも記憶をたどることができないことに気付いた。
(「何も、何も思い出せない……」)
誰かに運ばれているのはわかる。
それが骸骨であることがわかって少なからず驚いたが、不思議と恐怖は感じなかった。
この骸骨は敵ではないと、なんとなくそう思えた。
見知らぬ人たちが激しく戦っている。
骸骨とは逆にあの植物そのもののような騎士には、強い嫌悪が感じられた。
思い出せない。わからない。
とても酷いことをされたような気もするが……思い出すのを拒否するように激しい頭痛がさいなむ。
白い、異国風の少女と、少女のような騎士が襲われようとしていた。
助けよう、と思ったわけではない。
けれど、自然と手が向いていた。
なにもわからない、けれど。
なにかしなくてはいけない、そう思う。
(「今の私にはこれくらいしかできませんが……」)
スヴェトラーナはうまく力が入らず、震える指先を植物の騎士へと向け、残る力を絞り切るように叫んだ。
「植物たちよ『彼の敵を拘束なさいっ!』」
呼び声に応え、蔓が騎士に絡んだのを見届けつつ、彼女は意識が遠のいていくのを感じた。
(「もしも、ここより逃げ切ること叶えば、皆様にお礼を。そして、ここはどこなのか、伺わなくてはなりません、ね……」)
そうして、スヴェトラーナは再び深い眠りに落ちていった。
突如としてリーフナイトの足元より蔓が生え、彼に一時の束縛を強いた。
「?!」
一瞬、誰もがなにが起きたのかわからなかった。
だが、五月姫は不思議と確信めいた思いが芽生え、彼女へと向けた。
あの絶世のエルフへと。
(「エルフさん……? 眼、覚めたの?」)
遠目にも気力を振り絞り、再び倒れこむのが見えた。
心配だが、今は戦のまっただなか。
「これは、チャンス、だね」
五月姫は大薙刀を握り直し、駆け出した。
「これで私を捕らえたつもりか。こんなもの私にかかれば児戯に等しい」
「でも、その児戯が、命取り」
リーフナイトが束縛を断ち切るころには、五月姫が間合いに入っていた。
とっさに槍を構えるも。
「させないよ!」
ロビンの放ったレーザーに妨害されてしまう。
時すでに遅し。
五月姫は技を放っていた。
我流薙刀術・奥義『愛姫水薙』。
一薙ぎがリーフナイトを両断する。
斬撃には、一条戻りの愛し姫の、縁切りの力が籠められている。
「あなたと、エルフたちの、悪縁、ここで、断たせてもらう、よ?」
エルフとフローラリア。
その忌まわしき関係をここで断つ。
「ぐ、あ、あ……」
「……!」
致命の一撃を受けて尚、リーフナイトはしぶとく生き延びていた。
だが、もはやその動きに精彩はなく。
エストはトドメを刺すべく、その葉っぱ人間にマッチで火をつけた。
「お前らに苦しめられた、私からの最高のプレゼント。今、どんな気持ち?」
「……あ、ああ……」
「ねぇ、どんな気持ち? どんな気持ち?」
「ああ……ダーナ、様、お赦しを……」
「……」
「敵とはいえ、いたずらに苦しませることはないでしょう」
リズは再び形を変えたフェアリーソードで騎士の首をはねた。
ディアボロス達はエルフ達の歓喜の声に迎えられた。
今度こそ、本当に脱出できた。
脅威は退けられた。
彼らは助かったのだ。
五月姫がエルフ達のもとへ行くと。
あの絶世のエルフは気を失い、再び眠り姫となっていた。
あの一瞬には確かに目が合ったように思うのだが、まるで初めからそう彫られた彫刻のように眠り続けていて、それすら確かめられない。
(「やっぱり、とても、きれい」)
その美貌はいつまでも眺めていられそうだが、そうするわけにもいかず。
「この人、知って、る?」
素性を聞いて回ったが、誰もが首を振り、名前すらわからない。
少なくとも、この中に彼女と同郷の者はいないようだ。
「間違い、ない?」
「間違いないわ。こんなにきれいな人、一度見たら忘れるはずがないもの」
エルフ達から見ても、彼女は美しいのか。
そんな賞賛を受けているとも知らず、彼女は滾々と眠り続けている。
果たして、彼女は何者なのか。
「まだ、お礼、言えて、ない、のに」
エルフの子供たちとブロスは駆けっこをしてはしゃいでいる。
そこに浮かぶのは脅威から逃れることのできた笑顔だ。
子供たちが安心してこの笑顔を浮かべ続けられるようになればいいと思う。
その光景を見守るエストとアデレードのもとにベアタがやってきた。
ベアタは二人の顔を見比べると、なにを思ったか一人頷いて、エストの肩に手を置いた。
「じゃ、これからよろしく」
「……え? なにが?」
水景と忽が休息しているところへ訪れる者がいる。
「あ。マッチョ兄貴……」
「ひゃああ」
「すまない。怖がらせるつもりはないのだ。ただその少女があまりにもかわいらしすぎたのでな」
半裸のエルフはそう言って頭を下げた。
「まず上を着ろよ、と言いたいところですが、誠意は認めましょう。それで?」
エルフマッチョ兄貴は身の上話をしにきたらしい。それでわかったのだが。
奇縁とはあるもので。
このマッチョエルフは、忽がかつて助けた妖精騎士ウルグムンの弟にあたる。
忽はそうとは知らずエルフの兄弟をそれぞれ別の機会に助けたのであった。
「なんと兄上も世話になっていたか。このご恩は一生かけても返しきれまい。これからはより一層、忽殿を想って鍛え続けることを誓おう!」
「だからそれが嫌なんやってー!」
「まぁ、そう言わず。忽殿もマッスルマッスル」
「きーもーいのー! やーめーろーやー!」
「それ以上近づかないで。忽さんが死んじゃいます。死因にマッチョって書くことになりますよ!」
「それはおかしい。マッチョは健康にいいはずなのに」
「ふーざーけんなーよー」
忽の本気の叫びが辺りに響いた。
リーフナイトの最後の言葉を思い出す。
『ダーナ、様、お赦しを……』
彼の所業は決して許されるものではない、が……。
彼には彼なりに守りたいものがあったのだろうか。
リズが想いをはせていると、あの人がやってきた。
何も言わない彼に、リズから切り出す。
「僕も、父さんと母さんがまだ見つかっていません」
隣から息をのむ気配がした。リズは続ける。
「それでも信じてる……信じたいんです、歴史を取り戻せばいつか――」
また、みんなとあの頃のように暮らせるんじゃないか。
それは夢物語なのかも知れない。
どれだけの困難が待ち受けているのかもわからない。
けれど……。
それでも希望を持ち続けられるのなら。
「パラドクストレインの行きつく先を確かめにいきませんか」
リズはその手を差し出した。
小高い丘の上、風が吹く。
戦の火照りを癒し、血の匂いを洗い流す風が。
エヴァは仲間達を振り返ると、様々な光景が見えた。
ロビンが胴上げをされている。
アデレートが感謝をされている。
エストが抱き込まれている。
新しい同胞達と手を取り合い歩き出す仲間達の姿。
ほんの一瞬、予知の閃きが脳裏をかすめた。
それはすぐに泡のように消えてしまって、なんであったのか最早わからない。
けれど肯定的なものであると信じて疑わなかった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【土壌改良】LV2が発生!
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