リプレイ
菅原・小梅
◆行動
蟹坊主(おとこ)達は此だから……
私は未だ十歳ですし、男装し易いので構わないのですけどね!
此度は冬に差し掛かる歌会、相応しき身なりを
表は鳥の子色、裏は白、氷重の襲の色目とした水干装束
自身で調合した香をしかと焚き詰め、貴族『子息』として受付へと
このままでも大丈夫そうですが会心の歌を一つ
『足乳根の、母が抱えし、真桑瓜(まくわうり)、甘き滴に、満ちたりし午後』
真桑瓜が季節外れですが……メロンカップを表現するにはこれしかありません(断言)
他にも母の年齢は?甘き滴とは?と色々と想像なさい
皆様方の度肝を抜いた後は事情通な方を探しましょう
芦屋道満様の消息を調べるには陰陽寮に顔が利く方が良さそうですが
狭間・ならく
なンて?(なンて?)
(案内人の頭の螺子飛んだのかな??)
まー……その歌のせいで身体が腐り落ちて死ぬのはそれはそれで見てみてェが……いや悪ィ。冗談だって。
歌会にはこっそり忍び込むとするかね。【プラチナチケット】で、まァ、臨時雇いの女房ですみてーな面して、もてなす側として様子を探っとくよ。柿麻呂殿と話せそうなら話しかけてみるサ。
“なにかお悩みのようで”(パラドクスによる声音)……。
内方・はじめ
……ちょっと、頭痛が痛いから帰っていい?
だめ?
……ふう
関係者……は誰の関係者か聞かれたら困るし
とりあえず、受付の近くで花や景色を眺めながら、一句捻ってみましょ
「夕陽差す 庭に実りし 柿の実に 遥か故郷を 懐かしむ吾」
夕陽が差す庭に成った柿の実をみて、遠い故郷を懐かしむ自分を歌った内容ね
「大輪も 小さきもよき 目移りす 赤白黄色 菊花の宴」
大輪も小菊もよく、目移りしてしまう
赤、白、黄色の菊花が咲く様が華やかな宴のようだ
という内容ね
決して、大きいのも小さいのもオールカマー!
って意味じゃないわよ
捻った歌に受付の人が反応して、飛び入り参加させてくれればいいけど
ダメなら【モブオーラ】忍び足で潜入してみる
「ちょっと、頭痛が痛いから帰っていい?」
駄目です。
重ね言葉を使ってまで今の心境を表現した内方・はじめ(望郷の反逆者・g00276)の独白は、地の文によって掻き消される。いや、メタい話はやめよう。
「なンて?」
(「なンて?」)
はじめの感嘆――それも悪い意味でのもの――を表すそれが重ね言葉ならば、狭間・ならく(【嘘】・g03437)の行ったそれは、二重発言だった。思考が漏れるとかそんなレベルではない。例えるなら、それは二度見と言う奴だった。ここに時先案内人がいれば、その行為に衝撃を受け、寝込むことは間違いなかった。
「案内人の頭の螺子飛んだのかな??」
続いて零れた呟きはとても酷かった。
なお、時先案内人とは『パラドクストレインの行く先のディヴィジョンで起こる事件の情報』を感知出来るディアボロスの総称である。つまり、悪いのは案内人たる彼女では無く、こんな事件を起こしたクロノヴェーダなのだ。時先案内人の人柄はともあれ、事件そのものに責はない。その事を時々は思い出して欲しい。
「蟹坊主達は此だから……」
蟹坊主と書いて『おとこ』と読む。菅原・小梅(紅姫・g00596)の言葉は怒りに震えていた。当然だ。こんなセクハラめいたクロノヴェーダなど、女の敵も同然。彼女が怒りを燃やす理由としては正統なものだった。
「私は未だ十歳ですし、男装し易いので構わないのですけどね!」
え? そっち?!
菅原・小梅。今は未成熟なローティーンである。そっち方面はこれからに期待しよう。
ともあれ、パラドクストレインに誘われ、平安鬼妖地獄変に降り立った復讐者達は行動を開始する。
まずは、事件の舞台となる歌会へと潜入だ。敵を倒すためにも、被害者である袋井・柿麻呂氏を救うためにも、それが必要であった。
「夕陽差す 庭に実りし 柿の実に 遥か故郷を 懐かしむ吾」
受付でさらりと謡ったはじめの和歌に、しかし、受付の者達の反応は良くなかった。
「むむむ。風光明媚。雅さを感じるのですけどねぇ」
「柿かー。庭に生っていたのを良く捥いで食べましたねー」
いや、歌そのものに対する反応は悪くない。むしろ上々だ。
だが。
「それでは歌会に参加させて頂くのは……」
期待を込めたはじめの問いに、しかし、受付の男女は首を振る。
「こちら、名のある蟹坊主様主催の歌会でして」
「一見の方は困るんですよね」
(「名のあるって」)
撃沈したはじめに、こっそりとならくは問う。
「プラチナチケット、持って来てはいるンだけど」
「私もモブオーラを使おうかなーって」
関係者を装うのも、こっそり忍び込むのも、手段としては悪くない。だが、歌会の中、自由に動き回るためにはそれなりの受け入れをされた方が良いだろう。
故に、二人はパラドクスの使い処に想い倦ねていた。ええい、ままよと強行しようとしたその時。
「足乳根の、母が抱えし、真桑瓜、甘き滴に、満ちたりし午後」
小梅が短歌を詠む。
「いえ、ですから、いくら歌を披露されても……」
受付の女性が困り顔を浮かべた、その瞬間だった。
「おおおおおおおっ!!!!」
それは感涙の慟哭であった。砂漠で遭難し、ようやくオアシスに辿り着いた際、人はそんな声を出すのではないか。そんな叫びであった。
「今、素晴らしい歌が聞こえたでおじゃる! この少年――否、淑女であるか?!」
貴族子息感バリバリの小梅の正体を一見で看過したのは、流石クロノヴェーダと言った処か。歌会会場となった庭園の奥から怒濤の勢いで走り出してきたのは、人と巨大な蟹の合いの子の様な異形――蟹坊主であった。
「あら。蟹坊主様。いかがなされました?」
だが、受付はその風体に違和感を抱いていないらしい。普通ににこりと笑い、歌会の主に出現の理由を問うている。
「なン……だとッ」
「いや、ツッコミが追いつかないわッ」
そこにはぽろりと驚愕を零すならくと、動揺を隠しきれないはじめの姿が在った。
そう、これが世界史改竄。これこそがクロノヴェーダによる侵略。侵略された人の常識は侵蝕され、この非日常的な光景を当然と受け止めてしまう。
頭では理解していたが、人に変化もしていない、ありのままの異形がそのまま日常に溶け込んでいる風景を目の当たりにすると、やはり驚愕してしまう。それは彼女達が通常の感性を有している以上、当然の事であった。
「今の歌! ああ。母よ母よ。母を二度重ねる事により、大切な物が二つある、その想いが溢れんばかりに噴き出しているでおじゃる! そして真桑瓜。あの美しく優しい膨らみをそう喩えたでおじゃるか! 童が母の胸に眠り、それを幸せに見つめる様を捉えた歌に、しかし、ここまで心打たれるのは、な・ぜ、でおじゃる!」
物凄い早口でまくし立てる。すげー気持ち悪かった。
だが、これは好機だ。敵が体勢を崩せば追撃・連撃で畳み掛ける。それが戦いの定石ならば、その意気で、今、この坊主を突き崩すべきだ。
「こほん。それでは……『大輪も 小さきもよき 目移りす 赤白黄色 菊花の宴』」
「おお。おお。おお。大きいも良き。小さきも良き。目移りする様が目に浮かぶようでおじゃる。ああ野菊よ。ああ竜胆よ。何故神は区分けをし、それらを戯れさせるのか!」
「お、おおウ」
はじめの歌が終わるやいなや、物凄く語られてしまった。おそらくはじめの意図すらも超越した何かに、ならくも思わず、引き攣った笑顔を浮かべてしまう。
「この才女達に祝福を! さぁ。歌会に来るでおじゃるよ! 嫌だと言っても逃がさないでおじゃる!!」
「ああ、蟹坊主様?! ……わ、判りました。よ、よしなに」
なんか良く判らないが、凄く感銘を与えたらしい。
引きずられていく二人に諦めたような受付の声が重なり、「サーセン。関係者でーす」とならくが後を追う。
そう言う事になった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【プラチナチケット】LV2が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
新堂・亜唯
おじゃるおじゃる……。
歌会への参加にむけて、新宿島で仕立ての良い布を手に入れこのディヴィジョンの良い身分っぽい服を着てきたでおじゃるよ。
これでどこぞの貴族の息子として潜り込むでおじゃる。
まあパラドクスの力があるので、多少言葉遣いがアレでもなんとかなるでおじゃろう。
ここならこの世界の政界財界に顔の効く方も多いでおじゃろう。
蘆屋道満の名前をそれとなく出して、知っている者を探してみるでおじゃる。
怪しまれんように一応一句くらいは読んでおいた方がよいでおじゃろうかな。
一句出来もうした。
「道満の 往く先どこぞ 霧隠れ それにつけても 乳の恋しさ」
……よし。
連歌に挑む準備もばっちりだ。
新堂・亜唯(ドロップダスト・g00208)は不満に唇を尖らせ、歌会の中を歩いていた。なんだったら頬を膨らませても良いとさえ思っていた。
それぐらい彼は苛立っていたのだ。
「はっはっは。ご子息。こう言う歌会では怒ったら負けですぞ」
「おっさ……いえ、貴方様は?」
呼び止められ、コホンと空咳。今の亜唯は良い感じの服を纏った貴族の子息と言う設定だ。その準備もしてきた。それを全て台無しにする程の愚者のつもりは無かった。
「蟹坊主先生も石頭――いえ、意固地な面がありましてなぁ。しかし、あれでいて面倒見の良い方なのですが」
「そう、でおじゃるか」
ぎこちない返答は、おじゃるの語尾になれないが故だろう。
それを緊張と取ったのか、男はふむ、と相好を崩す。
「遅くなりました。私、袋井・柿麻呂と申す者。しがない歌い手ですよ」
「そ、そうか。貴方が、で、おじゃるか」
此度の事件の被害者である。呪いの連歌を受け取り、悩み、憔悴している筈の彼だが、それをおくびに出さない。貴族としての体面は保っているようであった。
「しかし……『道満の 往く先どこぞ 霧隠れ それにつけても 乳の恋しさ』、ですか」
「むっ。蟹坊主先生に『違うでおじゃるよ! 短歌とは全ての音で伝えたいことを主張する文でおじゃるよ! それにつけても、で申し訳程度にご神体――違った、あの素晴らしい曲線を謳っても、そこに愛も悦びも微塵に感じないでおじゃるよ! おろろろん』と評された物でおじゃります」
今まで好々爺然として指導していた癖に、乳が関わると豹変する歌人は如何な物か。しかし、怒られれば気分が悪い。亜唯が不満に思うのも、ある意味、致し方なかった。
「蘆屋・道満か。陰陽寮の友人――そのまた友人の友人でしたかな? が噂していましたが、あまり碌な陰陽師では無さそうですね」
柿麻呂は言葉を続ける。
曰く、若い陰陽師を悪の道に誘い、京の都の守りを破壊しようと画策したらしい。
曰く、それ故か、陰陽師が蘆屋道満の行方を捜しているらしい。
曰く、蘆屋道満は既に京の都から脱しており、今はこの都内にいないらしい。
「素行の宜しくない陰陽師の様子。ご子息に目通り叶う人物とは思えませぬが」
「そうなのか……でおじゃる」
陰陽寮と仲が悪い話はあった気がしたが、それよりも踏み込んだ話であった。
もしかして、調査を続ければ更に情報が更新されるのだろうか?
考え込む亜唯に、柿麻呂は「はっはっはっ」と軽快な笑いを向けていた。
大成功🔵🔵🔵
効果1【友達催眠】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
菅原・小梅
◆行動
色々と疲れましたが柿麻呂様に接触しましょう。
そう、今柿麻呂様が真になすべき事は乳に悩むのではなく
歌は私達に預け父となるべく奥方候補を探す事
『稚児泣きて、振りかえ見れば、真白にぞ、奥の高嶺に、共に埋もれん』
解釈?
子供が泣いた空耳がしたので振り返ったが
年老いた我が身の周りは寒々しく侘しい…のではなく
我が子の泣く声に振り返れば
奥方がお乳をあげていた
夫の私もあの白く美しい山に顔を埋めたいな…そんな歌ですよ
弟か妹が直ぐに出来そうですね、はい
この歌を聞き魂が揺さぶられはしませんか?
なお稚児泣きは、遅誤(ちご)無く
返り見ればは、我が身を省みれば白紙(ましろ)となる
そんな呪い返しっぽい意味もあるとか……
新堂・亜唯
ちくしょう、蟹坊主めー!
手痛いカウンターを喰らったというとこだぜ……
しかし、奴の言うとおりだ……俺は、俺の歌はおっぱいに対しての純粋さに欠けていたんだ……!
飢えなくては駄目だ!
奴よりも気高くおっぱいに飢えなくては、呪われた連歌は返せない!
込めるんだ、柿麻呂さんから歌を受け取り、その返歌に、俺のおっぱいへの思いを――!
『もちもちと、しっとりたゆん、どたぷんと、埋まってみたらば、あっあっあっ、できれば最期はそのまま死にたい』
複雑な解釈なんかねえ……歌の形だって知らねえ……!!
俺自身の、おっぱいに込めた純粋な思いをそのままぶつけるにはこれしか……!!
他の復讐者に聞かれたらたぶん泣きますけど……
狭間・ならく
今はまだ 小春まちたる 庭の花も
こいしきひとにぞ 香り届けん
(花は大小問わずどこにも誰にもあるだろうがよ(お前にもな)の意味で)
(それでも恋しいなら自分の雄っぱい育てて我慢してくれ、他人の庭の花は他人のものだろ)
ちなみにナラクさん自身は割と本当に春を待つ蕾並のモンだが自分の庭は自分の庭でそれなりに気に入ってるから余計なフォローすんじゃねーぞ。
内方・はじめ
ここまで来たら……やったもん勝ちよね
いいわよ
呪詛が言の葉に乗ったらどうなるか……魅せてあげる
「ちちちちと ちちちちちちと うっせえわ
そんなによけりゃ てめえのめでろ」
ごめんなさい
つい本音が出ちゃったわ
てへぺろ☆(げんこで頭軽くコツン)
……そんな、見ちゃいけないものでも見たような顔はやめてよ
自分でも、アイタタタと思ったのに、周りから追撃受けたら恥ずか死しちゃうわ
まあ、蟹さんは自分の愛でても、ゴチゴチ甲羅のキチン質だし……面白くないかもしんないけど
手下の天狗さんは、鳩胸に羽毛で揉み甲斐あるんじゃない?
ほら、手下のみなさん
お役に立てるわよ?
みんな登場した瞬間に、一列に並んで首横に振って胸隠したりして
「ともあれ、色々と疲れましたが、柿麻呂様に接触しましょう」
歌会終結後、菅原・小梅(紅姫・g00596)の提案により、袋井宅へと向かう復讐者一行であった。
「……やっぱり歌会ではあったンだよな?」
「『デカい』とか『ヤバい』とかその後に蟹坊主が例の如くまくし立ていたから、おそらくと言うか確定と思うわ」
道中、狭間・ならく(【嘘】・g03437)と内方・はじめ(望郷の反逆者・g00276)が囁いていたが、致し方ないと結論づける。時先案内人の弁で歌会の最中、柿麻呂氏が蟹坊主に歌の相談を持ちかける事は知っていた。だが、止めなくても大事に至りそうに無かったので止めなかった。ただそれだけだ。
「俺は……悔しいぜ」
新堂・亜唯(ドロップダスト・g00208)はぽつりと本音を零す。蟹坊主に辱められたのがそんなにも悔しかったのだろうか。
「気持ちは分かるが、あまり思い詰めるナよ?」
ならくの慰めの言葉は、思い悩む少年に届いたのだろうか。
(「悩みなさい。少年。その悔悟の思いが、貴方を強くするわ」)
意味ありげに頷くはじめの姿は、少年を導くミステリアスな美女そのものであった。
亜唯が柿麻呂氏と面識があった為か、接触は容易であった。
適度な広さを持つ庭に通されるや否や、小梅は、その中に立つ主へと、呪いの連歌を問う。
「ふむ。確かに私は今、巷を騒がす呪いの連歌とやらに悩んでおりますが」
話が早かったのは【友達催眠】の効果の為か。
「随分とあっさり、話すンだな」
「他言したら腐ると言う条件はありませんでしたからな。とは言え、評判に関わる問題故、あまりおおっぴらに出来る物でもありませぬが」
ならくの言葉に軽く応えた柿麻呂は、しかし……と溜め息を吐く。
「流石に腐り落ちて死ぬことは避けたく思います。歌の解釈が出来た今、後は誰に返歌を送るか、ですが」
「その返歌、私たちが受け取っても構わないかしら?」
この提案ははじめからだ。真意が読めなかったのか、柿麻呂は目を白黒とする。
「私たちは犯人に返歌を突き返すつもりよ。詳しくは言えないけど、貴方から返歌を受け取りさえすれば、それが出来るわ」
「そう。今、柿麻呂様が真になすべき事は乳に悩むのではなく、歌は私達に預け父となるべく奥方候補を探すこと」
追撃の説得は小梅からだ。
「なンて?」
「……いやはや。流石に三十路を越えての独り身を指摘されると面映いものがありますな」
ツッコミと苦笑を受けつつ、小梅は微笑と共に胸を張る。
「されば……『いとしきと ちをめでとうと あきのひに わがよろこびは ちちになりけり』で、如何ですかな? ご子息?」
「お見事。乳を愛で尊いと歌う暇があれば父になりたいと願う柿麻呂様の心境を模した歌かと」
小梅の頷きに、ほっと胸をなで下ろす柿麻呂である。
「ちなみにご子息はどのような歌を返すつもりで?」
「何れお話しする日もあるかも知れませんが……今、返歌を柿麻呂様に言ってしまうと、『一度送られた相手に返歌を送った』と、私たちが腐り落ちてしまう可能性もあります故に」
それが呪いのルールだ。禁を犯した場合、復讐者達へどの様に牙を剥くかは判らないが、最小限、ルールはルールと守った方が良いだろうと判断した。
「そうであった。これは失礼。……ところで、先のご子息は何処に?」
「え?」
柿麻呂の言葉に、はじめがこの場の人数を数え始める。ひい、ふう、みい。……一人、足りない。
「亜唯様?!」
庭にいたのは柿麻呂、小梅、ならく、そして数えていたはじめ自身だ。確かに一人足りなかった。
「馬鹿なっ。一人で乗り込むとか、敗北フラグ必至な行為ダぜ?!」
余計なフラグが立った気がしたが、それはおそらく気のせいだろう。
復讐者達は踵を返し、袋井邸を飛び出す。
目指すは都の外れにある廃寺。彼もそこに向かったはずだ!
「頼もう!!」
そして廃寺。
真正面から乗り込む少年拳士の姿があった。当然、亜唯である。
彼は復讐に燃えていた。いや、復讐者であるが故、それは当然だ。だが、それ以上のリベンジマッチに彼は燃えていた。
それは――。
(「俺は、奴に勝てなかった! いや、勝つんだ。ここで。この場所で!」)
そう。飢えた獣の如き気魄で、再度、門を叩く。先に受けた屈辱を雪ぐ為に。
(「奴よりも気高くおっぱいに飢えなくては、呪われた連歌は返せないッ!!」)
うん。そうだ。少年。飢えて燃えて勝者と返り咲け! 神話になれ!
「ふむ。弟子志願、と言うわけではなさそうでおじゃるな! 見たところ同族とも思えぬお主は――某の命を奪いに来た陰陽師と言った処でおじゃるか?」
亜唯の声に律儀に答えながら出現する蟹坊主。とても悪役らしかった。
だが、次の瞬間、蟹坊主はぎょっと目を見開く事になる。
「呪いの連歌に対する返歌を叩き付けに来たぜ!」
「き、貴様っ! 何故某が呪いの連歌を柿麻呂に送ったことを知っているでおじゃるか?!」
語るに落ちるとはこのことだった。
だが、白熱した亜唯はそのまま言葉を続ける。それは、彼が紡げる最大級の攻撃――彼の想いを形にした熱い返歌だった。
「もちもちと しっとりたゆん どたぷんと 埋まってみたらば あっあっあっ できれば最期はそのまま死にたい」
熱い想いだった。
一人の男の想いが物凄く詰まった歌だった。
「ぐはぁ!!」
そして物凄くダメージを受ける蟹坊主。そんなんでいいのかい。
「くっ。コイツ。そこまでストレートな歌を、欲望丸出しの歌を、良くも某に――かはぁ」
吐血していた。舌でも噛み切ったのでは無いかと心配になるくらいの出血量だったが、そこはクロノヴェーダ、変わらず喋り続けている。
「だが、某の心情はYESおっぱい! NOタッチ! 視線で愛で、脳で甘露を貪り尽くす。故に某が死ぬのであれば、それは窒息死ではないでおじゃる! それは――悟りの上での昇天でおじゃるよ!」
そして、蟹坊主は満足げな笑みを浮かべる。
「だが、某が広めようとした想い――此処に伝わった事は嬉しく思うでおじゃるよ」
「え? 褒められているの? 俺?」
昨日の敵は今日の友と言わんばかりの蟹坊主の態度に、むしろ亜唯は困惑してしまう。伸ばされた蟹の手を取って良いのだろうか。一瞬躊躇した彼は、しかし、恐る恐ると片手を持ち上げ、そして。
「ちょっと待ちなさい!!」
「そこまでです。蟹坊主! 亜唯様!!」
漢達の熱い握手は、乱入者によって、遮られてしまう。それは当然、彼を追ってきたはじめと小梅の声だった。そして。
「え? あ? え、えーっと……何処から聞いていた?」
「お、おう。『嬉しく思うでおじゃるよ』、辺りだなァ」
亜唯が投げ掛けたかなり真摯な問いに対するならくの返答は、結構お茶を濁した物だった。
どう受け取るべきか一瞬躊躇したが、それ以上は考えないことにした。世の中、知らない方が良いことも沢山ある。
「返歌なら私のも受け取りなさい! 呪詛が言の葉に乗ったらどうなるか……魅せてあげる」
ぐだり掛けた空気を一蹴すべく、はじめがびしりと指先を突き立てる。
「ちちちちと ちちちちちちと うっせえわ そんなによけりゃ てめえのめでろ」
沈黙。
あのはじめが切れた! 復讐者達は騒然とし、返歌を突きつけられた蟹坊主は「なんとっ!」と目を見張っている。
「いや、そんな、見ちゃいけないものでも見たような顔はやめてよ」
恥ずか死しちゃいそう、と呟くが、コホンと空咳。更に言葉を叩き付ける。
「まあ、蟹さんは自分の愛でても、ゴチゴチ甲羅のキチン質だし……面白くないかもしんないけど、手下の天狗さんは、鳩胸に羽毛で揉み甲斐あるんじゃない?」
後ろに控えている護衛を看破しつつ紡がれた言葉に、反応したのは仲間でも蟹坊主でも無く。
「いや、姉さん、辞めて下さいよ」
「俺らトループス級ッスよ。アヴァタール級に逆らえない定めなのに……」
ぞろぞろと出てきた黒虚天狗達がぼやきながらはじめに抗議するのであった。
「某は視線で愛でて喜ぶタイプと説明してるでおじゃるよ!」
これは部下を安心させる方便とかでは無く、蟹坊主から発せられた魂の叫びであった。
ちなみに、それを聞いた黒虚天狗達は「あーやだやだ。この上司」とうんざりした顔をしている気がしたが、残念ながらその顔は見えなかった。
「あー。いいかい? ちなみにアタシは『今はまだ 小春まちたる 庭の花も こいしきひとにぞ 香り届けん』って言っとくぜ。……ああ、それとナラクさん自身は自分の庭でそれなりに気に入ってるからな!」
「人の好みはそれぞれでおじゃるよ。某と我が後継者は大きい山岳庭園を望み、貴殿は貴殿の望む庭がある……それだけでおじゃる」
生暖かい視線だった。唇の端から色々と零れている事以外は、真っ当な台詞のように思えた。
「……後継者って俺のことか?」
なお、亜唯のその呟きは、全員によって黙殺された。彼女達が何処から聞いていたのか、如実に示す反応でもあった。
「こほん。では最後に。……『稚児泣きて、振りかえ見れば、真白にぞ、奥の高嶺に、共に埋もれん』。稚児泣き、即ち、遅誤無く、我が身を振り返り見れば、白紙となる。……ここに、呪い返しは成就します!」
「ぐはぁ! 子供が埋もれるおっぱいを見て、『俺も一緒に埋もれたいなー』と言う歌かと思えば、『穴があったら入りたい』、即ち人を呪わば穴二つと言う――おのれっ! 某の、某の呪いがっ?!」
何故か派手に吹き飛んだ蟹坊主は、部下達によって支えられつつ、その場に倒れる事を拒否する。
そうだ。認める訳にいかないのだ。ここで敗北すると言う事は、自身の愛に勝るそれを叩き付けられたと言うこと。この改竄世界史において、クロノヴェーダを凌駕する存在など認める訳にいかないのだ。
「皆の物、やってしまうでおじゃるよ! 我が愛を超える物は何もないと、示すでおじゃる!!」
(「ええっ。やだなぁ」)
黒虚天狗達は一斉に表情を歪め、しかし、世界律によって定められた己が役割を全うすべく、得物を構える復讐者達へと向かっていくのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【プラチナチケット】がLV4になった!
【友達催眠】がLV2になった!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!
【命中アップ】LV1が発生!
新堂・亜唯
――俺は復讐者だ。この世界を刻逆の混乱から取り戻す。そのためなら血を啜り泥を食んでも戦ってやる。
たとえ時には汚れ仕事となっても、この世界に平和を取り戻すため、時には仲間に軽蔑されようと、構うものか。
構わないんだってば!!
畜生!! ゆるせねえクロノヴェーダ!!
俺に人前で赤裸々におっぱいのことを語らせやがって!!
同行者が女の子ばっかなんて……パラドクストレインで聞いてたと思うけど聞いてねえぞ!!
いいやそもそもこんな呪いの歌作った奴が悪い!!
うおお、食らえ! 【螺月流・電刃】!
この拳に纏った電撃が平和を祈る俺の怒りの稲妻だ!
死角には十分気を付け広範囲へ放つ電撃で接近する敵の不意打ちを撃ち落とします!
狭間・ならく
あー、泣くな泣くな。軽蔑はしてねェよ。ナラクさんだって来てみたらマジでガキしかいねェとか泣きたくなったンでな。仕事してえらいぞー。
(はい、切り替えて)
さァて、そんじゃマ、やりますか。
ナラクさんはこっちが好みサ。動きやすいンでね。
(灼刀、鞘のまま構え)
何にしろその馬鹿は放っておいたら(色々と)問題ありそうだしな。
そらよ、かかってきな雑魚ども。……見えるモンならな。
【虚像閃】(刹那、相手の背後に回り込み、後ろ回し蹴りを繰り出して)(またもう一体を端末でぶん殴る)
抜くまでもねェ。テメェらにゃこれで十分だ。
内方・はじめ
とりあえず……呪い返しは成功みたいね
これで世界の平和は守られた
やったー帰ろう
……だめ?
ちぇ
とりあえず、同情したくなる部下のみなさんを、物理的に支配から解放しましょ
こちらも【飛翔】で飛行し対抗
敵の攻撃を掻い潜り、双翼魔弾を敵群へ叩き込む
攻撃時は砲撃、弾幕、誘導弾等を活かし確実に敵に当てるように
廃寺の木々や鐘打ち堂、建物や塀の合間等を飛翔し、空中戦、一撃離脱、撹乱を活かし、仲間と連携し敵を撹乱
敵の動きは看破、情報収集で把握し、敵からの集中砲火を浴びないようにしつつ、必要なら最寄りの仲間にも【パラドクス通信】で伝達
ところで、さっきからコートの懐中に矢鱈と視線感じるのは気のせいかしら
「あと少し!」とか
「――俺は復讐者だ」
黒虚天狗達を前に、新堂・亜唯(ドロップダスト・g00208)は拳を構える。そして――語り出した。
「――俺は復讐者だ。この世界を刻逆の混乱から取り戻す。その為なら血を啜り、泥を食んでも戦ってやる。たとえ、時には汚れ仕事となっても……」
それは少年の覚悟。そして少年の決意だった。
2021年8月。世界は突如、滅んだ。それを成したのは禁忌の外法、人類史改竄術式『刻逆』。それを行使した者達こそ、今、彼の目の前に立つ黒虚天狗、そして蟹坊主と言ったクロノヴェーダ達だ。
君はそれを赦せるか。自身に投げ掛けられた問いに亜唯は否と答えた。赦せるわけが無い。
だからこその復讐。その為に復讐者へと覚醒した。
「この世界に平和を取り戻すため、時には仲間に軽蔑されようと、構うものか」
そう。如何なる悲哀や愁嘆が自身を襲おうとも、この復讐は遂げて――。
「畜生!! ゆるせねえクロノヴェーダ!! 俺に人前で赤裸々におっぱいのことを語らせやがって!!」
……。
遂げてみせる! それが亜唯の熱い想いだった。
だが、その一方で、彼の境遇に同情の余地があるのも事実だ。敵はおっぱいを熱く語る蟹坊主。そして仲間は全て女性。そんな中、自身の性癖を暴露させられたのだ。それも思いっきり、自らの口から。ならば落涙は致し方ない。男のだもの。
「……あー、泣くな泣くな」
狭間・ならく(【嘘】・g03437)はそんな彼を宥めようと、苦笑交じりの声を掛ける。
(「ナラクさんだって来てみたらマジでガキしかいねェとか泣きたくなったンでな」)
だが、復讐者に年齢は関係ない。誰も彼もが真摯に己の仕事に向き合って、今がある。彼、そして彼女らは良い仕事をしてくれた。それもならくの評価だ。
「とりあえず……呪い返しは成功みたいね。これで世界の平和は守られた」
一方で、内方・はじめ(望郷の反逆者・g00276)は良い汗を掻いたと額を拭っていた。こうして世界は守られた。袋井・柿麻呂氏に掛けられた呪いは反転され、復讐者達の役割は潰えたのだ。
「って、終わってないよ?!? 我らと我らが主、蟹坊主殿がまだいるよ?!」
「えー。終わらせてよー。これ以上関わりたくないー」
思わず零した本音に、黒虚天狗達は「いやー。判るけども」と強く頷く。
だが、彼女の気持ちがどうであれ、事件そのものは終局を迎えていない。帰りのパラドクストレインが現れる様子は全く無い訳だしね!
「ちぇっ」
ミステリアスな淑女らしからぬ舌打ちは、とりあえず見なかったことにしよう。
「致し方ないわ。とりあえず、同情したくなる部下のみなさんを、物理的に支配から解放しましょ」
「くっくっく。我が主の出るまでも無い。ここで返り討ちにしてくれる!」
意訳:ここだけでも真面目にしたい。
黒虚天狗達の悲壮な決意を、はじめは是と受け取り、アームキャノンを身構える。グダっていた空気はこの周囲のみ、真面目な物に戻った気がした。
「クロノヴェーダは倒すっ! 慈悲など欠片も存在しないっ!!」
この世のありとあらゆるクロノヴェーダを滅すと、万感の思いで亜唯は叫ぶ。それが鬨の声となった。
「うおお、食らえ! 螺月流・電刃ッ! 弾けてしびれろ!!」
過大な電流と化した闘気が、黒虚天狗達を切り裂き、或いは黒く灼いていく。
これが亜唯の怒り。これが亜唯の嘆き。これが亜唯の平和への祈りだった。
即ちそれは――。
「八つ当たりだ……」
「うわーん。言うなーっ!」
余計な口を叩いた黒虚天狗の一体が、無惨にも黒焦げの焼死体へと化してしまう。ああ、無惨。
「そらよ、かかってきな雑魚ども」
一方で、ならくは黒虚天狗達の群れを前に、灼刀を抜刀――しなかった。
「――見えるモンならな」
言葉だけを残し、ならくは黒虚天狗達の視界から消えるも、それも刹那。神速の域で黒虚天狗の背後に回り込んだ彼女はそのまま後ろ回し蹴りを敢行。派手な殴打音が響き、黒虚天狗の一体が吹き飛んでいく。
「抜くまでもねぇ。これで充分だ」
蹴り脚をそのまま大きく踏み出せば、その勢いで手にした鈍器を黒虚天狗に叩き付ける。
それは、納刀したままの灼刀ですらない。いわゆる携帯端末であった。
「ぐはぁ」
「……いやはや、痛そうね」
視界の端に二人とクロノヴェーダ達の奮闘を収めたはじめが、ふふりと短い笑みを零す。静かに、しかし、温かな笑みは、敵であっても動悸が抑えられない物だった。
「それじゃあ、貴方達も解放して上げるわ。物理的に!」
告げたそれは、終局への誘い。
背の羽根にて飛び上がった彼女は、そのまま魔弾を生成。浮き足立つ黒虚天狗達へと叩き付ける。
対する黒虚天狗達も、錫杖を振るい反撃にと吶喊する物の――。
「遅いっ」
舞うように飛行するはじめを捕らえる事は出来ない。逆に魔弾の餌食となり、地へと叩き落とされていく。
「……それにしても、なんか視線を感じるんだけど?」
「某でおじゃるか?」
部下が倒されていく様を観察の如く見入っていた蟹坊主が、ニタリと笑う。
「くっ。蟹坊主様。我らが主ながら冷静沈着。部下の命を省みず、敵の弱点を探すなど、恐ろしいお方だ――」
床に叩き付けられ、命僅かと震える黒虚天狗に、しかし、傍に降り立ったはじめは首を振る。
「『あと少し!』みたいな感じだけど」
「当然でおじゃるよ! もはやこの戦いに希望は一つしかおじゃらん。某はっ。某はっ。その可能性に賭けるでおじゃるよ! たとえ特徴に記載されずとも、その外観は、なんとでもなるでおじゃるっ。ああっ」
要するにはじめの胸部をガン見していただけだった。
「まだ確定に至っておらず、可能性は無限大。これぞ、シュレディンガーのおっぱい……」
「物理学者が草葉の陰で泣いてるわ!」
「蟹坊主様。恐ろしいお方――」
はじめのツッコミと、黒虚天狗の末期の言葉が重なる。
「マ、ともかく、だ」
地面に倒れる黒虚天狗達へ最後の慈悲――トドメを刺しながら、ならくは鞘に収めたままの灼刀を蟹坊主へと突きつける。それが、最後通知だった。
「これで終わりダわ」
「ぐぬぬ」
蟹坊主から短い呻き声が吹き上がった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【腐食】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV8になった!
【命中アップ】がLV2になった!
新堂・亜唯
うおぉおおおお!!!
さあ蟹坊主、残るはお前だけだぞおおおおう!!
……しかし……ある意味敵ながらそのスタンス、あっぱれだった……。
認めるわけにはいかないが……一人の男として……歌人として……
その情熱までは否定できない気持ちもある……。
だが、お前はおっぱいへの情熱を他者を害することに利用した!
おっぱいとはあらゆる人を包み込み癒すもののはず……それは、お前が誰より理解していたんじゃないのか!?
あの歌で人を呪った時点で、道を踏み外していた!
食らえ、俺のパラドクス最強の威力を持つ【螺月流・鋼鉄拳】!
蟹坊主の甲羅にも負けはしない、鋼鉄の拳!
そして生まれ変わったらいつの日か……また、おっぱいの話をしよう!!
狭間・ならく
あ゙ー、もう面倒くせェなこン蟹野郎!
あやかしごときが語るな、クソ。
(灼刀、)(今度こそ抜く)
仕置きしてやる義理も本当はねェが、ここまで付き合っちまったからなは最後までやってやるよ。
いいか、今度こそここで終いだゼ。
(振るう、【斬妖閃】)(読んで字の如くあやかしを斬り払う)
ったく、生意気に袈裟着やがって……大鉢頭摩処にでも落ちやがれ。
九条・泰河
僕も復讐者だよ
だからこそ悲しい
この素晴らしき依頼にもっと早く参加したかった…!
だけどまだ想いを伝える時間はあるんだよ!!
なんと素晴らしいお坊さんだろうか
正直クロノヴェーダでさえなければ同志だったろうに!
取り合えずまずは雄叫びから
おっぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいい!!!(闘気を溢れさせての咆哮
ええとこの戦いでも和歌を詠まねばならないんだっけ?
おむねこそ うまれたときの やすらぎよ ゆたかなたにま うずまりねむれ
(滅茶苦茶どやってる
そう!おっぱいこそ原初の安らぎ!人はおっぱいを求め眠る事を望むんだよ!
さぁ!悲しき同胞よ!生まれ変わっておっぱい蟹になるんだよ!
天覇流星脚炸裂!
【グラップル】で威力増強
ロロス・ペタルロベル
歌を歌うのとは違って詠む事はそこまで得意ではないので後から駆け付けました。
状況はよく分かっていませんが加勢させていただきます。
まずは『振刀炎揺構』による炎の揺らぎで相手の隙を誘いましょうか。
(刀が動くたびに炎の揺らぎ、私自身が動くたびに胸が揺らぎます)
……あら?どうやら別の揺らぎに惑わされているようですね。
触られるのは全力でご遠慮しますが、勝手に眺めている分には全然構いませんよ。
ただ……そんなに熱く凝視されていると周りへの警戒が疎かになるのではないですか?
よく分からない敵でしたがここで早めに倒せて良かったですね。
このまま野放しにしていたら、影響された者が増えたり後継の者が現れてしまう所でした。
内方・はじめ
ならば、あなたのその情熱
残された希望
永遠に輝く浪漫を……粉砕してあげる
あなたがガン見しようとしてたのは、かつては日本人女性の平均と言われてたAカップよ!
あなたの心を揺さぶっていたものが、実は揺れないものだったとは……皮肉なものね?
(しかし自身のハートにもクリティカル)
「ひどいよ!あんまりだよ!!」
とか言われても困る
【飛翔】で飛行しつつ敵の攻撃を掻い潜り、空中戦、一撃離脱、撹乱を活かし、仲間と連携し敵を撹乱しつつ、報復の魔弾を敵へ叩き込む
攻撃時は砲撃、弾幕、誘導弾等を活かし確実に敵に当てるように
さあ、惨劇の犠牲者(主に自爆した自分の)達の無念、恐怖、怨嗟をその身で味わいなさい
……帰りの列車まだ?
そして戦いは終幕へと移っていく。
呪いの歌を市井に流した張本人、蟹坊主と、それを許せないと集まった復讐者達の攻防は、今、まさに最終局面と為っていた。
「くふふ。黒虚天狗達も倒されたか、でおじゃる」
部下を蹴散らされ、しかし、蟹坊主は不貞不貞しい態度を崩しはしない。そう。彼こそアヴァタール級クロノヴェーダ。人々の畏れを喰らい、忌み嫌われるエネルギーを得た彼に、たかだか数人の復讐者など、恐れるに足りない存在なのだ。
「しかし、彼奴らは所詮トループス級クロノヴェーダ。おっぱいに掛ける情熱を持ち合わせていない雑魚であったからな!」
「いや、その言い分はどうなのよ?」
蟹坊主の黒幕然としているのかしていないのか良く判らない物言いに、内方・はじめ(望郷の反逆者・g00276)は呆れの嘆息を零す。なんなら肩すら竦めそうだった。
「あ゙ー、もう面倒くせェなこン蟹野郎! あやかしごときが語るな、クソ」
狭間・ならく(【嘘】・g03437)の叫びは、おそらく本心からだ。
いわゆる『キレた』と言う奴だった。
「くふふ。もはや言葉は語り尽くした、でおじゃるよ。おっぱいよ、ディアボロス共が、夢の跡、ただ某は、哀愁に忍ぶ。でおじゃる!」
「俳人に怒られなさい!!」
はじめの言葉に、しかし蟹坊主はけろりとした表情で言葉を紡ぐ。
「その未来は某らクロノヴェーダが改竄したでおじゃるよ!」
改竄世界史。それがクロノヴェーダの侵した歴史侵略そのもの。故に蟹坊主の台詞はただの説明文でしかない。それは復讐者達も判っている。
「……仕置きしてやる義理も本当はねェが、ここまで付き合っちまったからなは最後までやってやるよ。いいか、今度こそここで終いだゼ」
抜刀したならくに呼応し、蟹坊主をもまた、双腕の鋏、そして背に無数の蝕腕を広げ威嚇の声を上げる。
最終局面の戦いの幕が今、切って落とされたのだ。
「うおぉおおおお!!! さあ蟹坊主、残るはお前だけだぞおおおおう!!」
その勢いは電光石火の如く。新堂・亜唯(ドロップダスト・g00208)の拳は蟹坊主の顔面を捕らえ、そのまま撃ち抜かんと振り下ろされる。重く響く音は、金属同士がぶつかったような殴打のそれであった。
「悲しい拳でおじゃるよ。後継者!」
「後継者言うな!」
だが、グローブに包まれた拳は、蟹鋏によって阻まれている。多少のヒビ割れは、彼の勢いを受け止めた証左だった。
「悲しい拳でおじゃるよ。後継者。貴様の手は、某を殴るためにあるでおじゃるか? 違うでおじゃる! その手は、優しく受け止める為にあるでおじゃるよ!」
「Noタッチじゃなかったの?」
はじめのツッコミはとりあえず無視だ。蟹坊主の手の話では無いしね。
「そこまで情熱がありながら――」
拳を引き、そして亜唯は目を伏せる。長い睫毛を伝い、零れた落涙の正体は悔悟ではない。それは憐憫だった。
「そこまでの情熱がありながら、何故、お前はおっぱいを穢した! 何故おっぱいへの情熱を、他者への害に利用したッ!」
「――ッ?! 乗るノか!」
ならくのツッコミも致し方ないが無視する。これは男同士――否、漢同士の語らいだ。女子供には入れない漢達の歌がそこに在った。
「……あれ? 語り尽くしたのでは?」
ロロス・ペタルロベル(妖艶な焔刃納刀術使い・g02535)も小首を傾げるが、答えは無い。
「仕方ないよ。男には語っても語り尽くせない事があるんだ」
代わりに、訳知り顔の少年、九条・泰河(人間の陰陽師・g02779)が重々しく頷いた。男という生き物は、トモであれば一晩でも二晩でも語り合う事が出来る。男に生まれた以上、彼もまた、それを知っているのだ。……そうか?
ともあれ、周囲の言葉を全て雑音と遮断した蟹坊主は、改めて亜唯へと向き合う。
「情熱で、おじゃるか」
何か思うことがあるのだろうか。ふるふると震える彼に、しかし亜唯は何処までも戦士だった。彼を畳み込む為、更なる言葉を叩き付けていく。
「おっぱいとはあらゆる人を包み込み癒やすもののはず……それは、お前が誰より理解していたんじゃないのか!? あの歌で人を呪った時点で、道を踏み外していた! お前はその瞬間、おっぱいと向き合う資格を失ったっ!!」
少年の叫びに、しかし、蟹坊主滂沱の涙の反応は、ふふりとした薄い笑いだけだった。そこに抱く虚無は、彼が知る如何なる物よりも深い物であった。
「そう。故に某はその癒やしに触れ、包まれることを失ったでおじゃる。故に某はYESおっぱい! NOタッチを貫く……貫かねばならぬのでおじゃる。だがッ! だが、それでも、それでもでおじゃる!」
蟹坊主もまた、落涙する。亜唯と蟹坊主。漢達の涙は同じで、だが、何処か決定的に違っていた。
「ならば逆に問うでおじゃるよ、後継者! 貴様の情熱はその程度でおじゃるか!!」
「なッ!」
「ありとあらゆる全てを利用し、おっぱいの素晴らしさをこの世界に広めたい! それが如何なる方法を用いても構わないッ! そんな情熱を貴様は持ち合わせていないと言うでおじゃるか!」
「――っ?!」
ほら。忘れているかも知れないけれど『おっぱい』と言う単語は平安鬼妖地獄変に存在していないしね。
「なお、巨乳もなんとか乳と言う言い方も全て、存在していないでおじゃるよ!」
そう、人類がそこに追いつくには、あと1000年の刻が必要なのである。
もとい。
「なんと素晴らしいお坊さんだろうか!」
涙を流すのは彼らだけでは無かった。泰河もまたその一人であった。滂沱の涙は魂の慟哭であった。
「正直、クロノヴェーダでさえなければ同志だったろうに!」
だが、志を同じくしても、交わらない道はある。クロノヴェーダと復讐者。そこに和解などあり得ず、両者ともそれを望んでいないのだ。
「おっぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいい!!!」
掛け声――否、咆哮と共に繰り出された跳び蹴りは、蟹坊主の額を捕らえ、かち割らんと振り下ろされる。咄嗟に身体を捻り、肩口で受け止めた物の、ぐしゃりと零れた響きは、甲羅ごと蝕腕が数本、破壊された音であった。
「おむねこそ うまれたときの やすらぎよ ゆたかなたにま うずまりねむれ。さぁ! 悲しき同胞よ! 生まれ変わっておっぱい蟹になるんだよ!」
要約すれば『永眠に着け』と言う事か。殊更なドヤ顔は、もはや自身らの勝利を疑っていない表情であった。
「状況はよく分かっていませんが……ともあれ、この炎の揺らぎは捉えられますか?」
立ち竦む蟹坊主へ、見舞われたのはロロスによる炎刀の一撃だった。
彼女が振り下ろした刃は蟹坊主の砕かれた肩口へと食い込み、袈裟掛けに斬り裂いていく。キチン質が焼ける芳香が、辺りに漂った。
「ぐぬぬ。むふぅ」
「……あら? どうやら別の揺らぎに惑わされているようですね」
それでも視線を一点に集中――ガン見しているのは流石と言うべきか。
露出度の高い装束に包まれた膨らみを惜しげも無く晒す彼女に応対した蟹坊主の動きが拘束されてしまうのは、今までの経緯から当然であった。
「そんなに熱く凝視されていると周りへの警戒が疎かになるのではないですか?」
「なに! 心配ないでおじゃるよ! 某の甲羅も、蝕腕も、それ程柔では無いでおじゃ……うごっ!」
触らなければ見られても構わないと朗らかな笑みに、ぐっと動刃部位を持ち上げた蟹坊主。次の瞬間、零れたのは悲痛な叫びだった。
「生意気に袈裟着やがって……大鉢頭摩処にでも落ちやがれ」
腹部を斬り裂いたのは、ならくによる灼刀の一撃――魔を祓い妖怪変化を斬り捨てる妖殺しの一撃だった。蟹の甲羅に包まれた腹部と言えど、妖術・妖力の類には相違ない。退魔の力に甲羅はガリガリと梳られ、腹部に到達した刃は致命的な一撃を蟹坊主へと与えていた。
ちなみに大鉢頭摩処とは十六小地獄、衆合地獄の一つ、偽僧が落ちる地獄である。蟹坊主が本当に出家僧かどうかはさておき、胸部に執着した彼に相応しい末期の場所であった。
「と・こ・ろ・で」
呻き、身体を折って崩れる彼に、声が掛かる。
はじめだった。
「ならば、あなたのその情熱。残された希望、永遠に輝く浪漫を……粉砕してあげる」
静かな声だった。冷たい声だった。そして……悲しげな声だった。
「あなたがガン見しようとしてたのは、かつては日本人女性の平均と言われてたAカップよ! あなたの心を揺さぶっていたものが、実は揺れないものだったとは……皮肉なものね?」
「な、なんと! 酷い! あんまりでおじゃる!!」
主にはじめ自身へとダメージを与える告白に、予想通りの悲鳴を上げる蟹坊主。だが。
「泣く必要はないでおじゃる! おっぱいに貴賤はないでおじゃる。大きくも小さくもそこにある事が大事なのでおじゃる。でかい。ヤバい。夢イッパイ。おっぱいとは夢を与えるものでおじゃろう!」
「……本音は?」
「某は大きいのが好きでおじゃる!」
台詞も半ばに、無数の魔弾が突き刺さった。何に対してとは言わないが、無数の怨念が魔弾の形となり、蟹坊主を穿ったのだ。甲羅を抉り、血肉をまき散らし、そして、その傷口すら、呪いで侵蝕していく。
これが、はじめのパラドクス。報復の魔弾の力だ。全て、主に自尊心を奪った敵を喰らい、滅ぼすまで魔弾の侵蝕は止まることは無い。
「さあ、惨劇の犠牲者達の無念、恐怖、怨嗟をその身で味わいなさい」
「ひぐぅ」
そして、終焉が刻まれる。
それは少年が抱く信念。それが蟹坊主に叩き付けられた鉄槌――亜唯の拳だった。
「食らえっ。螺月流・鋼鉄拳!!」
裂帛の叫びと共に繰り出された拳は、蟹坊主の甲羅を打ち砕き、肉体をも破壊していく。ぐしゃりと潰れたそれは、蟹坊主の生命そのものだった。
「……おおっ。某の敗北で、おじゃる、か」
末期の言葉は、噛みしめるように紡がれた。
途切れ途切れの言葉は、蟹坊主もまた、最後を悟っているが故だろう。
「ふ。我が情熱は既に潰えていた……でおじゃるな」
崩れゆく身体を見下ろし、蟹坊主は笑う。その終わりに掛ける言葉を亜唯は一つしか知らなかった。
だから告げる。この戦いに相応しい終わりを彩るように。
「生まれ変わったらいつの日か……また、おっぱいの話をしよう!!」
「是、でおじゃる」
「ああ。いつの日か、必ず!」
そして、漢達は夕焼けにむせび泣くのであった。いつの日か、必ず、その時が来ることを祈り、そしてその時に肩を抱き、笑い合うことを誓って。
「……帰りの列車まだ?」
「もう少し、待とウぜ」
「……良く判らないですけど、クロノヴェーダを倒せて良かった良かった、でいいんですよね?」
仲間すら置き去りにしていたが、とりあえず呪いの歌は祓われ、平和を取り戻す事が出来たのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【怪力無双】LV1が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
【落下耐性】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
【飛翔】がLV2になった!
効果2【能力値アップ】LV2が発生!
【命中アップ】がLV3になった!
【凌駕率アップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!