🚊宿縁を断ち切る戦い

 クロノス級クロノヴェーダは「自分の存在を保ったまま、その時代に転移してくる」事が多いですが、稀に「その時代の生物や概念などに寄生して転生する」事もあるようです。
 後者の場合、一定期間、転生した生物として成長し、充分に成長した所で覚醒する事で、対象の能力などを奪い、より強い力を得るようです。

 この事件では、上記の方法でクロノス級に覚醒したクロノス級クロノヴェーダと戦い、決着をつける事になります。
 そのため、宿敵であるクロノス級クロノヴェーダは、自分、或いは、自分に意志を託してくれた過去の時代のディアボロスの血縁者や恋人など、親しい相手の姿をしています。

 クロノス級クロノヴェーダは、覚醒時に『悲劇的な事件を引き起こす』事で、より強い力を得られるため、様々な悲劇を引き起こします。
 ですが、覚醒する前の人格に訴えかける事で、行動を制限したり、クロノヴェーダ撃破後に寄生された対象を救出したりできるかもしれません。

奪皮(作者 絵琥れあ
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#宿縁邂逅  #🚊宿縁を断ち切る戦い 


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#🚊宿縁を断ち切る戦い


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 ……夢を、見た。

 わかってる。わかっていたんだ。
 こうするしかなかった。妻の望みでもあった。
 それでも、死なせてしまった妻の怨嗟の声と、彼女が遺してくれたはずの命が、この手の中で弾けて潰れて真っ赤になるその幻が、消えて、くれない。
 後悔はない。悔いてしまえば妻の意志を、彼女が命を懸けて産み落としてくれた息子の生命を、踏みにじることになる。
 それでも、考えてしまう。考えてしまうんだ。
 ぼくが決断しなければ、妻は死ななかったのではないか。
 妻も、息子も生きる未来があったんじゃないか。
 ぼくが、もっと上手くやれていたら。
 ぼくが、上手くやれなかったから。

「……なかったことに、してあげようか?」

 最近じゃあ幻聴もひどい。
 ぼくに似た声が、夢の中で囁くんだ。
 妻の死を、ぼくの決断を、白紙に戻してやろうと。
 出来るわけがない。……出来たとして、そんなことが、あってはならない。
 心を強く持たなければと、自分にも周囲にも、大丈夫だと言い聞かせてきた。
 だけど、限界が近いことも、ぼくは自覚してしまっていた。だからこそ、振り切るようにぼくは逃げた。
 現実を、あの日の選択とその結果を突きつける、妻の墓から。何より、年月を重ねてなお鮮明に広がる悪夢の光景から。
 息子を連れて、ぼくは逃げた。行くあてはない。それでも、故郷を出て、どこか遠くへと。
 ああ、でも、あの声が、あの夢が、どこまでも、どこまでも、追いかけてくる。

「……大丈夫ですか?」

 ………………女の声が聞こえる。
 ここはどこだろう、どれだけ歩いただろうか。どこか集落のようだが。
 いや、なんだっていい。僕には関係のないことだ。
 今はただ、この女が死の淵に浮かべる表情が、疑問か恐怖か絶望か……その答えを、見てみたい。


「……優しい人ほど、自分を責めてしまいがちです」
 嶋瀬・翠市(描くは未来を・g09696)が、何かに必死で耐えるような、苦しさを噛み殺したような顔をしている。
 それでも、ややあってから彼は顔を上げ、ひとつ深呼吸して、言葉を続けた。
「獣神王朝エジプト行きの、パラドクストレインが現れました。……ええ、過去の、クロノス級クロノヴェーダのいる時代に向かう、特別な……」
 翠市が、紡ぐ言葉とともに、おもむろにそのまなざしを向けたのは、ジズ・ユルドゥルム(砂上の轍・g02140)。
 行き先が『死の蛇サ・タ』の元であると知らされても、ジズは驚愕の表情を浮かべることも、声を荒げることもなく、ただ、静かに、その唇を固く閉じ、一文字に引き結んだまま、一声も発することなく、話の続きを待っていた。
「……何があったのか、僕の口から詳しく話すのは差し控えさせていただきます。ただ……『ある決断』をして以来、彼は……ニトさんは、悪夢を見るようになっていった」
 自らの行動の結果を責めるかのような、凄惨に脚色された悪夢。
 そうして年月をかけて疲弊し、心身ともにすり減った彼……ニトは、故郷の村を出て辿り着いた先の集落で、ついにサ・タに体を乗っ取られてしまったと言う。
 加虐嗜好、特に女性に対し強く発露するそれを持つサ・タが、肉体を手に入れ何を試みるのかは……想像に難くない。
「ですが、ニトさんにはまだ希望があります。ニトさんが、クロノヴェーダとして覚醒してしまうことそのものは阻止出来ませんが、彼の魂に、彼に訴えかける言葉が届けば、サ・タの凶行に歯止めをかけることが出来るかも知れないんです」
 とはいえ御多分に漏れず、覚醒したてでもクロノス級。その力は侮れない。

 では、具体的にどう動くのが望ましいのか。
「介入出来るのは、集落の女性がニトさん……いえ、その時点では既にもう……サ・タに声をかけた、まさにその瞬間ですね。サ・タは手始めに、その女性を手にかけようとするので、彼女をサ・タから引き剥がしつつ、声をかけるという形に持っていくのが理想ではないでしょうか」
 他にも周囲には、集落の人々がサ・タ、もといニトの身を案じて出てきているようだ。集落そのものが、親切な人々の集まりなのだろう。
 彼らにも声をかけ、避難してもらうのがいいだろう。危険だとわかれば従ってくれるはずなので、誘導するのは難しくはないはずだ。
「あとは……出来れば息子さんも、避難させた方がいいと思います。サ・タはどういうわけか、彼に危害を加える様子はなさそうですが……」
 ニトの魂が、抑えつけられてなお抵抗しているのだと思いたいが、と翠市は零しつつ。
 いずれにしても、到着した時には父の背に負われていたが、サ・タとして覚醒した彼が上体を起こして立ち上がろうとした際に、はずみで転げ落ちてしまうようだ。
 幸いにして怪我はないようだが、その際に目を覚まし、父の異変を目の当たりにして動けなくなってしまうのだと。しかし利発な少年であるため、手助けしてやればその場を離れることは出来るはずだ。
「ともあれ、避難誘導とニトさんへの説得を成功させれば、あとはサ・タを倒すだけです。サ・タを倒して、ニトさんの悪夢を終わらせるんです」

 それが叶わなければ、この強い芯と、底抜けに優しい心を持ち合わせていたはずのこの青年は、己の自責に永遠に囚われたまま。
 すなわち、死の蛇サ・タとして、彼はこれからも望まぬ悪夢の再演を、繰り返し続けることとなる。
 しかし、もしもその支配を打ち破り、言葉によってニトを目覚めさせることが出来れば。
「そうすれば、サ・タのみを滅ぼし、ニトさんを救うことも出来るかも知れません」
 とはいえ、繰り返しになるが敵はクロノス級、間違いなく強敵である。
 そんな相手に、息子や集落の住民たちの避難誘導、元の体の持ち主への説得に、決着後崩壊する歴史からの脱出……など、考えることは山ほどあるが。
「……どうか、力を貸して欲しい」
 ジズは希い、そして告げる。
 悪夢を終わらせるのだ、と。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【士気高揚】
1
ディアボロスの強い熱意が周囲に伝播しやすくなる。ディアボロスから「効果LV×10m半径内」の一般人が、勇気のある行動を取るようになる。
【怪力無双】
2
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わり、「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げて運搬可能になる(ただし移動を伴う残留効果は特記なき限り併用できない)。
【未来予測】
2
周囲が、ディアボロスが通常の視界に加えて「効果LV×1秒」先までの未来を同時に見ることのできる世界に変わる。
【一刀両断】
1
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【フライトドローン】
2
最高時速「効果LV×20km」で、人間大の生物1体を乗せて飛べるドローンが多数出現する。ディアボロスは、ドローンの1つに簡単な命令を出せる。
【神速反応】
1
周囲が、ディアボロスの反応速度が上昇する世界に変わる。他の行動を行わず集中している間、反応に必要な時間が「効果LVごとに半減」する。
【託されし願い】
1
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【友達催眠】
3
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【プラチナチケット】
2
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【隔離眼】
1
ディアボロスが、目視した「効果LV×100kg」までの物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)を安全な異空間に隔離可能になる。解除すると、物品は元の場所に戻る。
【完全視界】
2
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【植物活性】
1
周囲が、ディアボロスが指定した通常の植物が「効果LV×20倍」の速度で成長し、成長に光や水、栄養を必要としない世界に変わる。
【液体錬成】
1
周囲の通常の液体が、ディアボロスが望めば、8時間冷暗所で安置すると「効果LV×10倍」の量に増殖するようになる。
【パラドクス通信】
4
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【防衛ライン】
1
戦場が、ディアボロスが地面や床に幅10cm、長さ「効果LV×10m」の白い直線を出現させられる世界に変わる。敵はこの直線を突破できず、上空を飛び越える場合、最低「効果LV」分を要する。直線は戦場で最初に出現した1本のみ有効。

効果2

【能力値アップ】LV3 / 【命中アップ】LV3 / 【ダメージアップ】LV6 / 【フィニッシュ】LV2 / 【反撃アップ】LV4 / 【先行率アップ】LV3 / 【ダブル】LV1 / 【ロストエナジー】LV1 / 【グロリアス】LV2

●マスターより

絵琥れあ
 お世話になっております、絵琥れあです。
 其は日毎に死して、日々生まれ変わるもの。

 こちらのシナリオはジズ・ユルドゥルム(砂上の轍・g02140)様の宿縁邂逅シナリオとなります。
 ご縁をいただきありがとうございます。後悔のない物語を紡ぐため、全力でお手伝いさせていただきます。

 ※大変申し訳ございませんが、今回はゆっくり進行になることが予想されます。
 詳細な受付期間などのスケジュールはマスターページで告知予定ですので、お手数ですが都度確認いただければ幸いです。

 流れとしましては①②→③の予定です。
 (あくまで予定ですので、プレイングによっては変動もあり得ます)
 また、以下は補足情報となります。

●避難誘導選択肢について
 集落の住民たちはもちろんのこと、後述のハワルくんについての救助・避難誘導もこちらで行っていただきます。
 ハワルくんの救助については、説得完了後、もしくは同時進行だとやりやすいかも知れません。
 (もちろん、参加者様の作戦次第ではその限りではありません)

●ニトについて
 サ・タが奪った肉体の本来の持ち主であり、ジズさんの夫、ハワルくんの父でもあります。
 オープニングにもある通り、優しさと芯の強さを兼ね備えた人物ですが、それゆえに過去のとある決断に対する自責の念に駆られ、それをサ・タに付け込まれたようです。

●ハワルについて
 ニトさんとジズさんの息子さんです。
 この時点ではまだ六歳ですが、利発でとても聞き分けのよい子です。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
 死の蛇によって支配された、獣神王朝エジプトの地で。
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このシナリオは完結しました。

💌相談所は、3月11日(水)朝8:30まで使えます。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


次の17件を見る

システムメッセージ  2月14日10時
マスターが、海・ほろぶ(g04272)のプレイングの採用を宣言しました。

システムメッセージ  2月14日14時
風見・茜(g10800)が、①住民の避難誘導に参加しました。

システムメッセージ  2月14日19時
ルーシド・アスィーム(g01854)が、①住民の避難誘導に参加しました。

システムメッセージ  2月14日23時
ゼキ・レヴニ(g04279)が、①住民の避難誘導に参加しました。

システムメッセージ  2月15日08時
クーガ・ゾハル(g05079)、風見・茜(g10800)、ルーシド・アスィーム(g01854)、ゼキ・レヴニ(g04279)のプレイングが確定しました。

システムメッセージ  2月15日08時
サアシャ・マルガリタ(g05223)が、①住民の避難誘導に参加しました。

システムメッセージ  2月16日07時
ジズ・ユルドゥルム(g02140)が、③👿クロノス級決戦『死の蛇サ・タ』に参加しました。

システムメッセージ  2月16日08時
サアシャ・マルガリタ(g05223)、ジズ・ユルドゥルム(g02140)のプレイングが確定しました。

システムメッセージ  2月16日08時
エイレーネ・エピケフィシア(g08936)が、①住民の避難誘導に参加しました。

システムメッセージ  2月16日12時
マスターが、クーガ・ゾハル(g05079)のプレイングの採用を宣言しました。

システムメッセージ  2月16日12時
マスターが、風見・茜(g10800)のプレイングの採用を宣言しました。

システムメッセージ  2月16日12時
マスターが、ルーシド・アスィーム(g01854)のプレイングの採用を宣言しました。

システムメッセージ  2月16日12時
マスターが、ゼキ・レヴニ(g04279)のプレイングの採用を宣言しました。

システムメッセージ  2月16日12時
マスターが、サアシャ・マルガリタ(g05223)のプレイングの採用を宣言しました。

システムメッセージ  2月17日08時
エイレーネ・エピケフィシア(g08936)のプレイングが確定しました。

システムメッセージ  2月21日01時
瀬良・朔也(g11284)、ハーリス・アルアビド(g04026)、ディアナ・レーヴェ(g05579)、佐野・埜之子(g00298)、クーガ・ゾハル(g05079)、サアシャ・マルガリタ(g05223)が登場する、①住民の避難誘導のリプレイが公開されました。
①住民の避難誘導をクリアしました。

システムメッセージ  2月21日03時
ジズ・ユルドゥルム(g02140)、ゼキ・レヴニ(g04279)が登場する、②覚醒前の人格に呼びかけるのリプレイが公開されました。
②覚醒前の人格に呼びかけるをクリアしました。

システムメッセージ  2月22日04時
海・ほろぶ(g04272)、風見・茜(g10800)、ルーシド・アスィーム(g01854)、ゼキ・レヴニ(g04279)が登場する、①住民の避難誘導のリプレイが公開されました。

システムメッセージ  2月22日11時
ジズ・ユルドゥルム(g02140)が、③👿クロノス級決戦『死の蛇サ・タ』に参加しました。

システムメッセージ  2月23日08時
ジズ・ユルドゥルム(g02140)のプレイングが確定しました。

ジズ・ユルドゥルム  2月24日21時
やぁ、翠市。トレインを出してくれてありがとう。
サ・タとの戦いだが、まずは私一人で奴と戦いたいと思い選択肢③に向かわせてもらった。
状況によっては難しいと思うが、確認してもらえると助かるよ。

システムメッセージ  2月25日12時
ジズ・ユルドゥルム(g02140)が登場する、③👿クロノス級決戦『死の蛇サ・タ』のリプレイが公開されました。

システムメッセージ  2月25日21時
海・ほろぶ(g04272)が、③👿クロノス級決戦『死の蛇サ・タ』に参加しました。

システムメッセージ  2月26日08時
海・ほろぶ(g04272)のプレイングが確定しました。

システムメッセージ  2月26日08時
ジズ・ユルドゥルム(g02140)が、③👿クロノス級決戦『死の蛇サ・タ』に参加しました。

システムメッセージ  2月26日09時
エイレーネ・エピケフィシア(g08936)が、③👿クロノス級決戦『死の蛇サ・タ』に参加しました。

システムメッセージ  2月26日18時
ゼキ・レヴニ(g04279)が、③👿クロノス級決戦『死の蛇サ・タ』に参加しました。

システムメッセージ  2月26日18時
クーガ・ゾハル(g05079)が、③👿クロノス級決戦『死の蛇サ・タ』に参加しました。

システムメッセージ  2月26日21時
佐野・埜之子(g00298)が、③👿クロノス級決戦『死の蛇サ・タ』に参加しました。

システムメッセージ  2月26日22時
ルーシド・アスィーム(g01854)が、③👿クロノス級決戦『死の蛇サ・タ』に参加しました。

システムメッセージ  2月27日00時
瀬良・朔也(g11284)が、③👿クロノス級決戦『死の蛇サ・タ』に参加しました。

システムメッセージ  2月27日01時
風見・茜(g10800)が、③👿クロノス級決戦『死の蛇サ・タ』に参加しました。

システムメッセージ  2月27日05時
ディアナ・レーヴェ(g05579)が、③👿クロノス級決戦『死の蛇サ・タ』に参加しました。

システムメッセージ  2月27日08時
ハーリス・アルアビド(g04026)が、③👿クロノス級決戦『死の蛇サ・タ』に参加しました。

システムメッセージ  2月27日08時
サアシャ・マルガリタ(g05223)が、③👿クロノス級決戦『死の蛇サ・タ』に参加しました。

システムメッセージ  2月27日08時
ジズ・ユルドゥルム(g02140)、エイレーネ・エピケフィシア(g08936)、ゼキ・レヴニ(g04279)、クーガ・ゾハル(g05079)、佐野・埜之子(g00298)、ルーシド・アスィーム(g01854)、瀬良・朔也(g11284)、風見・茜(g10800)、ディアナ・レーヴェ(g05579)、ハーリス・アルアビド(g04026)、サアシャ・マルガリタ(g05223)のプレイングが確定しました。

システムメッセージ  2月28日11時
マスターが、海・ほろぶ(g04272)のプレイングの採用を宣言しました。

システムメッセージ  2月28日11時
マスターが、ジズ・ユルドゥルム(g02140)のプレイングの採用を宣言しました。

システムメッセージ  2月28日11時
マスターが、エイレーネ・エピケフィシア(g08936)のプレイングの採用を宣言しました。

システムメッセージ  2月28日11時
マスターが、ゼキ・レヴニ(g04279)のプレイングの採用を宣言しました。

システムメッセージ  2月28日11時
マスターが、クーガ・ゾハル(g05079)のプレイングの採用を宣言しました。

システムメッセージ  2月28日11時
マスターが、佐野・埜之子(g00298)のプレイングの採用を宣言しました。

システムメッセージ  2月28日11時
マスターが、ルーシド・アスィーム(g01854)のプレイングの採用を宣言しました。

システムメッセージ  2月28日11時
マスターが、瀬良・朔也(g11284)のプレイングの採用を宣言しました。

システムメッセージ  2月28日11時
マスターが、風見・茜(g10800)のプレイングの採用を宣言しました。

システムメッセージ  2月28日11時
マスターが、ディアナ・レーヴェ(g05579)のプレイングの採用を宣言しました。

システムメッセージ  2月28日11時
マスターが、ハーリス・アルアビド(g04026)のプレイングの採用を宣言しました。

システムメッセージ  2月28日11時
マスターが、サアシャ・マルガリタ(g05223)のプレイングの採用を宣言しました。

システムメッセージ  3月8日07時
海・ほろぶ(g04272)、ジズ・ユルドゥルム(g02140)、エイレーネ・エピケフィシア(g08936)、ゼキ・レヴニ(g04279)、クーガ・ゾハル(g05079)、佐野・埜之子(g00298)、ルーシド・アスィーム(g01854)、瀬良・朔也(g11284)、風見・茜(g10800)、ディアナ・レーヴェ(g05579)、ハーリス・アルアビド(g04026)、サアシャ・マルガリタ(g05223)が登場する、③👿クロノス級決戦『死の蛇サ・タ』のリプレイが公開されました。
③👿クロノス級決戦『死の蛇サ・タ』をクリアしました。

システムメッセージ  3月8日07時
シナリオは成功しました! この相談所は3月11日08時30分まで発言可能です。


リプレイ



「……大丈夫ですか?」
 女が、子を背負って膝をついた男へと、気遣わしげに声をかける。
 集落の、小さく数少ない簡素な家々からも、人々が顔を出す。純粋な善意が、この集落全体からは確かに感じられた。
「大丈夫」
 男はひとつ、そう答えて立ち上がる。
 背負った子供が、その背中から滑り落ちようとしているのにも、気づかずに。あるいは、気にも留めずに。
 そうして男は、口元に笑みを浮かべた。柔らかな、しかしどこか、ぞっとするような寒気を感じさせる、細い月にも似て。
「だけどひとつ、お願いがあるんだ」
「……な、なんでしょう」
 女は思わず、一歩後ずさりながらも問いかけた。
 男の答えは。

「あなたの『中身』を、見せてくれる?」

 男の手が、女の腹へと伸ばされる。
 パラドクストレインの扉が開いたのは、まさにその瞬間だった。
瀬良・朔也
〇アドリブ連携歓迎
いつぞやの依頼で会った蛇を操る奴
正しくは複製やけど
ジズさんの様子がおかしかったけども、まさか旦那さんやったとは!

力を貸してほしいなんて、貸すに決まってるやん、当たり前
身体を乗っ取ってるやつぶっ飛ばして、旦那さん取り戻そ!

トレインの中でバルカン=バルクに跨りエンジン始動
扉が開ききる前にフルスロットルに
爆音と共に飛び出し、サ・タの元へ
背中にはジズさん。サイドカーにゼキさんも積む

古代エジプト人にはエンジン音を聞くのは初めてやろうし、ちょっとは気が逸れるやろ
2人が飛び降りるのを横目に、そのままの勢いで息子君をキャッチ!
旦那さんを刺激したないし、ジズさんの手前やし、丁重に扱うで

子供慣れしてるディアナちゃんに感心しつつ、自分も笑顔で声かけ

俺は朔也。自分の名前言えるか?
そう、ちょーっと激しい大人の喧嘩や。モノが飛んでくるとも限らんから、村の人らと待っててくれんか
ええ子や、この犬についていき~(シオンも人懐っこい)

…あの人お母さんやでっていうのは折を見て
お揃いのを見て察したら頭撫でとこ


ハーリス・アルアビド
ジズさんの大切な方々が危険に晒されるとあれば見逃すことはできません。ハワルさんや集落の人々は私たちにお任せを。

【残像】を生む速度でニトさんとハワルさんのもとへ。より確実な移動手段がある瀬良さん、子供に深い情があるディアナさんにハワルさんをお委せし、私はサ・タからの盾になれる位置に陣取り避難の呼び掛けを行います。
【友達催眠】を用いて突然の乱入に驚いていらっしゃるであろう人々の警戒心を和らげましょう。

突然このような話をしては戸惑われると思いますが、どうかお聞きください。私たちはあなた方に災いが起きることを知り駆けつけました。災いの影響は最初にニトさんに狙いをつけたようですが、留まっていれば集落にまで広まって行くことは確実です。
ニトさんは私たちが必ずやお救いし、災いも二度と起きぬよう払って見せましょう。今はこの場から離れていてください。

私自身に子はいませんが、何者にも代えられぬ主の御子とその母君たる奥方様を思えば、今のジズさんのお心はいかばかりか…。


ディアナ・レーヴェ
まずはお父さんの背中から転げ落ちようとするハワルを、仲間と協力しつつ、優しくキャッチしましょう!
そのままハワルが動けないうちに、多少強引にでも急ぎサ・タから距離を取る。(説得と同時進行想定)
当然暴れると思うから、背中トントンしてから耳元で囁きましょう。

「ハワル」
「お父さんのこと、大好き?」

……そう。そうよね。

「お父さんね、いま少しだけ病気になっちゃってるの」
「でもね、大丈夫! ……見える? 世界で一番綺麗な人が、病気を治しに来てくれたわ!」

「今からお父さんは、大切な夢を見る」
「ずっとあるべきだったのに、ずっとずっとありえなかった、奇跡みたいな夢の時間。その夢が病気の心を、深く、あったかく、必ず治してくれるから――」
「ハワル。短い夢が終わるまで、安全な所に隠れて少しだけ良い子で待っていてくれない?」

目を見て笑って理解するまでしっかり待って、安全な所へ。

※心情:我が子を愛しく思いつつも既に別れる覚悟をしているジズに、境遇上、強い共感を覚えています。気を抜くと私が泣きそうです。泣かないけど!


佐野・埜之子
さて。
先ずハウルの確保と避難に走る人らに合わせて、ウチはサの人との間に挟まり込むん。
サの人、何かするかもやろ?
その時、ウチの身体が壁になる様に。
ハウルを抱いとるやろうディアナをディフェンスするえ。

まあでもサの人の方は向いとかん。
出来る限りハワルの様子をジッと眺めとく。【完全視界】で万全に確保した視界でキッチリと。

中身、中身は確かに大事やよ。そこは同意するわ。
でも開かんと中身が分からん言うんは意見が合わへんね。
ディアナの言葉に、朔也の笑顔に、シオンに、どう思うてどう反応するか。
何て返すか。どうしようとするか。
そう言うんがこの子の中身。ちゃんと見て。覚えとかんと。ジズに頼まれた似顔絵何てちゃんと描けやせえへんの。
やって、ジズがお願いやなんて滅多に言わへんのよ。あの人、自分で出来る事は全部自分でしようとしてまう方の人やし。
そのジズが頼んで来たんやし。
ちゃんとやらんと。

ああ、でもハワルな。
アンタも出来るだけジズの事見といた方が良え思うえ?
やってジズの中身はきっと。多分、アンタの事ばっかりやろし。


クーガ・ゾハル
アドリブ・連携〇

ジズは今、はんぶんと向き合ってる
ゼキもいっしょにいてくれる
強いよな、でもだからこそ
あいつの手からこぼれるものは、おれたちが

声かけにあわせて
ジズたちの所から離れるほうへ誘導
だいじょうぶだ、みんな、協力してくれ

ジズの子に、声をかけよう
おまえ、ハワルっていうのか
おれはクーガだ
新宿島で探して、ポケットに詰めてきた飴玉
火に照らした琥珀みたいなやつ
あまいオヤツ、やるよ
いい子にして、おとーさん待っててくれな

この飴の色、きれいだよな
これとそっくりな目してるやつがいてさ
キレイで、やさしくて、まっすぐ飛ぶ鳥みたいに
強くあろうとできる、かっこいいやつだ
そいつが、ハワルのおとーさんを守るよ

あのな、だいじょうぶだぞ
おまえの……家族は、おまえの血の中――ええと
きっと、ずっと、おまえの中にもいるから
おまえのいる未来に、みんないっしょにいるってことだ
だから、安心して行くんだぞ

そうだ
引いたときの手の小ささ
並んだときの背の高さ
あしあとの大きさ
このくらいだったって、あとでジズに伝えよう


サアシャ・マルガリタ
トレインを降りたら、攻撃されそうになっている女性の元へ直行するです!
動揺している女性を宥めて、安全なところへ逃がしましょう
びっくりさせちゃってゴメンナサイですよう、おねーさん
でもでも、ここはまだ危ないので安全なところに避難しましょーです!
【未来予測】で攻撃が来ない方向を確認しながら、周囲の村人さんたちにも声をかけて安全地帯へご案内ーですよう!
サーヴァントの銀シャリに先頭を任せてサアシャは殿につき、敵を警戒しながら移動するです
他のメンバーと協力できそうなことは、惜しみなく手を貸したり借りたりする所存です!

ジズはみんなのお母さん、みたいな気持ちでいましたけど、
その前にご自分の家族がいるんですもんねぇ……
ジズの旦那さんの体で、敵に誰かを傷つけられちゃ困っちゃうですよ
ジズが悔いなく旦那さんとお話しできるようにするためにも、
避難誘導はサアシャたちで頑張るですよう、えいえいお!
このおねーさんも村の人たちも、サアシャたちがお守りするです!



「いた! ……まずいじゃない!」
 扉が開くなり、視界に飛び込んできたのは今にもサ・タが女性の腹を解き破ろうとしている光景。
 ディアナ・レーヴェ(銀弾全弾雨霰・g05579)の表情には、言葉とは裏腹に焦燥の色はない。むしろ、鋭くサ・タと、その背後から落ちる小さな影を射抜いていて。
(「いつぞやの依頼で会った蛇を操る奴……正しくは複製やけど」)
 瀬良・朔也(オオサカ製自動車整備士・g11284)には、サ・タの姿に見覚えがあった。いや、正確にはその名前を聞いた瞬間に思い出していた。
 黄金海賊船の支配する航路、そのマチュ・ピチュへの道行。
 阻んだのは今、凶行に及ぼうとしているその姿と、寸分違わず。
「ジズさんの様子がおかしかったけども、まさか旦那さんやったとは!」
 あの時は聞かなかった。だが、時先案内人の、そしてジズの話を聞いて、全て合点がいった。
 死の蛇サ・タが奪った肉体、その正当なる持ち主こそが、かつてジズが死に別れた伴侶だったのだと。
 その『彼女』を背に、そしてサイドカーに彼女の『今世の相棒』を乗せて、バルカン=バルクのエンジンを鳴らす。
 既にフルスロットル。扉が完全に開くと同時、爆音とともに飛び出した!
「ええ、ですがジズさんの大切な方々が危険に晒されるとあれば、見逃すことはできません。ハワルさんや集落の人々は、私たちにお任せを」
 残像を生まんばかりの瞬発力と速度で、並走するように飛び出したハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)が、二人に声をかける。
 頷くのを受けて、ハーリスは再び前を向いた。目指すのは、悲劇の開始地点。その幕開けを止めるために、視線は逸らさず縫い留めるように。
「せやで! 力を貸してほしいなんて、貸すに決まってるやん、当たり前。身体を乗っ取ってるやつぶっ飛ばして、旦那さん取り戻そ!」
 朔也も、ハーリスもディアナも、心はひとつ。
 大切な仲間のために、理不尽に奪われようとしている、その家族のために、力を尽くすのだと。
(「ジズは今、はんぶんと向き合ってる。ゼキもいっしょにいてくれる」)
 クーガ・ゾハル(墓守・g05079)も二人との付き合いは長い。
 ゆえに、その個としての力も、その二人としての絆も、よく知っているつもりだ。
(「強いよな、でもだからこそ」)
 二人には、後悔してほしくない。
 どうにも出来ないことがあった時、自責の念に駆られてほしくない。
 ディアボロスと言えど万能ではない。だが、仲間がいる。
 クーガはもちろん、たくさんの味方がここにはいてくれる。
(「あいつの手からこぼれるものは、おれたちが」)
 そのためにいるのだ。ここに集った者たちは。
「……? なに……」
「今や!」
「行っちゃえ!」
「後のことは、どうか気兼ねなく」
 サ・タが駆動音に、第三者の接近を悟る。
 そしてこちらを見た、その一瞬に付け入る隙が出来た。
 仲間たちの声に後押しされて、ふたつの影が跳んだ。
 見届ける。そして、ここにいる者たちの役目はここからだ。
「ハワルさんに手出しはさせません。今のうちに」
「よっしゃ任しとき!」
 勢いに乗ってサ・タの背後に回る朔也の壁になるように、ハーリスがサ・タとの間に陣取る。
 そして転がり落ちそうになっているハワルの腕をとって、朔也が抱え込む!
「んう……えっ、だ、だれ、ですか……!?」
「ごめんな、説明はあと! ここ危ないからな、先に抜けるで!」
「えっえっ、わあっ」
 話は安全地帯に抜けてからだ。
 朔也は壁になってくれているハーリスの背を横切って、来た道を引き返す。
「こっち!」
 ディアナが呼ぶ声がする。その隣……正確には、少し前に出た位置に、佐野・埜之子(地獄未満のエチュード・g00298)もいた。
 ディアナと朔也の距離、その間を埋めるように、そしてサ・タとの間に挟まり込むように。
「案内人はああ言うとったけど。サの人、何かするかもやろ?」
 この戦いに、この戦いを『完全勝利』で終えるために、万が一のことがあってはならない。
 何より、埜之子には約束があった。その約束が、守れなくなるようなことがあってはならないのだ。
 ……ジズが『覚悟』を決めていることを、知っているから。
「運転しながらやと危ないからな、堪忍な!」
「優しくね!」
「わわわわわっ」
 埜之子の背中を横切らせるように、朔也はハワルをディアナの腕に託すように放った。
 それをディアナが、優しく受け止める。反射的に暴れる彼の背中を、安心させるようにトントンと叩く。
 どこまでも柔らかく、慈しみをたたえた眼差しと、微笑みで。
「ハワル」
「え……」
「お父さんのこと、大好き?」
 状況が呑み込めていないらしいハワルは、答えるのに時間を要したが。
 それでも、こくんと確かにひとつ、頷いたのをディアナは認めた。
「……そう。そうよね」
 ディアナは微笑んだ。
 どこか、自分のことのように嬉しそうに。
 どこか、深いところが痛むのを、こらえるように。
 隣に立つ埜之子は、その間にも油断なく、サ・タに注意を払っていた。
(「手、出してくる様子は……ないな。少なくとも今は」)
 本当に、ニトが意志の力で踏み留まらせているのか、それとも守りの厚さだったり突然の出来事に対応出来なかったりの要因か、埜之子には判断がつかなかったが。
 それでも幸い、サ・タが妨害してくる様子はなかった。埜之子はディアナを庇う姿勢は崩さぬまま、ハワルを抱えた彼女と共に後退する。
 呆気に取られている様子のサ・タ。しかしはたと我に返り、最初に標的にしていた女性の方を見る。
 だが、これだけの仲間たちが集まっているのだ。彼女のフォローが疎かになっているはずもなく。
「びっくりさせちゃってゴメンナサイですよう、おねーさん」
「あっ、ああ……っ」
 突然の出来事に、理解が追いついていない様子の女性に、にこ! と朗らかな笑みを向ける者がいる。
 サアシャ・マルガリタ(えいえいお!・g05223)……パラドクストレインを降りると同時、女性の元へと直行していたのだ。
「でもでも、ここはまだ危ないので安全なところに避難しましょーです!」
 ゆっくりと女性を支えながら、立ち上がらせる。もちろん、サ・タへの警戒は怠らぬように。
(「でも、大丈夫そーですね?」)
(「ジズとゼキが、向き合ってる」)
 サ・タの……いや、ニトへの説得に向かった二人に、サ・タの意識は向いている。
 今のうちに、ハワルや女性の、そして集落の人々の避難誘導を済ませてしまおう。
「い、いったい何が」
 集落の人々の間には、動揺が広がっている。
 突然、大勢が一挙に駆けつけてきたのだ、それはそうだろう。
 加えて、サ・タの不穏な動きを目の当たりにしていたのもまた事実。
 しかし、混乱が広がるのは想定内。ハーリスが集落の人々に向き合えば、集落の人々は一瞬きょとんとした様子だったが。
「突然このような話をしては戸惑われると思いますが、どうかお聞きください。私たちはあなた方に災いが起きることを知り駆けつけました」
「な、なんだって? どういうことだ?」
 疑問を口にしながらも、人々のディアボロスに対する警戒心は和らいだように見えた。
「災いの影響は最初に彼……ニトさんに狙いをつけたようですが、留まっていれば集落にまで広まって行くことは確実です」
「確かにあの男、ワルダに声をかけられてから、様子がおかしくなったように見えた」
「わ、我々もおかしくなってしまうのか?」
 にわかにざわめく人々。不安が広がっているようだ。
 だからこそ、言葉を続ける。
「だいじょうぶだ、みんな、協力してくれ」
「ニトさんは私たちが必ずやお救いし、災いも二度と起きぬよう払って見せましょう。今はこの場から離れていてください」
 クーガが比較的動揺の少ない若者に声をかけ、サアシャと女性に合流させる。
 それから、ハーリスが全体へと再度呼びかけ、避難を促した。
 少しずつ、人々は戸惑いながらも動いていく。
「あっちなら安全そうです! みなさん一緒に安全地帯へご案内ーですよう!」
 まるで未来でも見えているかのようなサアシャはダンジョンペンギンの銀シャリを先行させ、安全と判断した方向へとてちてち先導させる。
 彼女自身は殿を引き受け、サ・タの動向を警戒しながら移動。ハーリスも共に最後尾から人々の護衛として動く。
(「私自身に子はいませんが、何者にも代えられぬ主の御子とその母君たる奥方様を思えば、今のジズさんのお心はいかばかりか……」)
 ハーリスの、今なお敬愛する主には妻があり、そして子があり。
 もしも彼らが、同じ状況に立たされたら。想像するだけでも胸が痛む。
 そして、同じ妻であり、母であったジズの胸中が、その想像を介して伝わってくる気がした。
 サアシャは今一度、背後を顧みる。
 ジズの背を臨み、人々には見せぬよう、しょもと眉尻を下げた。
(「ジズはみんなのお母さん、みたいな気持ちでいましたけど、その前にご自分の家族がいるんですもんねぇ……」)
 強く、優しく、面倒見がよく、そして砂漠のように、広くて深い。
 そんな彼女のルーツは、きっとここなのだ。そして今、それが文字通り『侵略』されているのだと、サアシャは感じずにいられなかった。
(「ジズの旦那さんの体で、敵に誰かを傷つけられちゃ困っちゃうですよ」)
 心優しい青年は、どうにも出来ない己の体と、それが大地に大きく深い傷を生むことに、苦しみながら埋もれていくのだろう。
 その妻だった女性は、自責に悶え苦しむかつての夫の姿を、まざまざと見せつけられることになるのだろう。
 ……それを赦せるかと、己に問うた。
 答えるまでもない。
「ジズが悔いなく旦那さんとお話しできるようにするためにも、避難誘導はサアシャたちで頑張るですよう、えいえいお!」
 再び前を向く、サアシャは既に平素の明朗さを取り戻している。
「このおねーさんも村の人たちも、サアシャたちがお守りするです!」
「ええ、勿論です。力を尽くしましょう」
 後続の仲間たちとも合流し、人々はサ・タから離れていく。


(「中身、中身は確かに大事やよ。そこは同意するわ」)
 埜之子の視界は砂塵にすらも阻まれぬ視界で明瞭だ。
 しかし、その双眸が今、映しているのはサ・タではない。
(「でも開かんと中身が分からん言うんは意見が合わへんね」)
 だから、今はそっちは見なくていい。
 それよりももっと、大切なことがある。
 ハワルのことだ。万全に確保した視界は、それを映す瞳は、そのためにある。
「ここまで来れば大丈夫ね」
 ディアナがハワルを、優しく地面に下ろした。
 その眼差しはやはり、見ている方が悲しくなるほどに、優しかった。
 ハワルはやはり戸惑いつつも、泣いたりわめいたり、パニックになる様子はなかった。ハワル自身の聡明さもあるのだろうが、ディアナが彼の不安を少しでも和らげるよう、心を砕いていたのが大きいだろう。
 子供慣れしている様子にも感心しつつ、朔也もバイクを降りて、笑顔でハワルの元へ歩み寄る。その少し後ろに、クーガの姿もあった。
「俺は朔也。自分の名前言えるか?」
 落ち着かせるために、改めて彼の名前を問う。
 しゃがんで、目線を合わせて。するとハワルはおずおずと、その小さな口を開いた。
「……ハワル……です。えと、あの……」
 しきりに、父親の様子を気にしているハワル。
 突然引き離されたこともそうだが、その父親の様子もどこかおかしいことを、感じ取っているようだ。
(「……わかるのよね、きっと」)
 ディアナは確信する。
 普段のニトなら、真っ先に自分を心配して、駆けつけてきてくれる。そう信じている。
 だからこそ、そうならない現実にちゃんと、違和感を覚えているのだと。
「おまえ、ハワルっていうのか。おれはクーガだ」
 クーガもまた、身を屈めてハワルと視線の高さを揃えた。
 そして、ディアナも。
「あのね、ハワル。お父さんね、いま少しだけ病気になっちゃってるの」
「えっ、びょ、びょうき……?」
 ハワルの瞳に、不安が色濃く滲む。
 無理もない、とディアナは思う。
「でもね、大丈夫! ……見える? 世界で一番綺麗な人が、病気を治しに来てくれたわ!」
 努めて明るい声と表情で、ディアナは遠くに見えるハワルの父と、母を示した。
 ……その女性が、死に別れた母だとは、口にはしなかったけれど。
「今からお父さんは、大切な夢を見る」
「ゆ、め……?」
「そう。ずっとあるべきだったのに、ずっとずっとありえなかった、奇跡みたいな夢の時間。その夢が病気の心を、深く、あったかく、必ず治してくれるから――」
 ディアナ自身も、温かな太陽のように微笑んだ。
 滲みそうになる視界には、気づかないフリをして。
「ハワル。短い夢が終わるまで、安全な所に隠れて少しだけ良い子で待っていてくれない?」
「………………」
 ハワルは、ディアナの言葉をまっすぐに受け止めていた。
 しかしまだ、受け止めるのに時間をかけているようだ。
「そうだ、これ」
「?」
 と、おもむろにクーガが取り出したのは、ポケットに詰めてきた飴玉。
 新宿島で探して、とっておきを選んだのだ。
(「火に照らした琥珀みたいなやつ」)
 濃く深い黄金の輝きは、太陽を想起させ。
 古代エジプトの人々が、神聖な太陽神の象徴として大切にしてきた、その石に似た彩と煌めき。
「きれい……」
 ハワルの瞳も、キラキラと星を宿したように輝いた。
「あまいオヤツ、やるよ」
「い、いいの……? ……です、か……?」
 一瞬、おやつと聞いて素が出かけて、けれど慌てて取ってつけたように、年上のおにいさんおねえさんたちへの礼儀を尽くした、たどたどしい敬語を加えたハワル。
 その姿が微笑ましくて、ディアナと朔也が少し、笑みを深めた。
「ん。だからいい子にして、おとーさん待っててくれな」
「そう、ちょーっと激しい大人の喧嘩や。モノが飛んでくるとも限らんから、村の人らと待っててくれんか」
 クーガに続いて、朔也も言葉をかける。
 ディアナはハワルの目を見て逸らさず、彼が理解して飲み込むまでしっかり待つと決めた。笑顔は決して絶やさずに。
 子供は純粋だ。まだ世界の何にも染まり切っていない、清さゆえに人の心を聡く悟ることもある。
 そしてハワルは、やはり利発で聞き分けのよい少年だったようだ。
「……わ、かり、ました。おとうさんを、おねがいします……」
 少し落ち着いたのか、言葉のつかえが少し取れて。
 礼儀正しく、ハワルはぺこりと頭を下げた。
「ええ子や、この犬についていき~」
 笑顔で朔也が示したのは、パンツァーハウンドのシオン。ハスキーそっくりな姿はハワルにとっては大きなものだっただろうが、シオンもまた視線を合わせるように屈んで、ハッハとまるで笑顔を向けるようにして、人懐こくすり寄る。
「じゃ、行こう。こっちだ」
 クーガがハワルの手を取る。飴玉を握るのと、反対の手。
「よかった。……ありがとね」
 ディアナも並んで、優しくハワルの背を押した。
 受け入れてくれて、本当によかった。心からそう思う。
 ディアナは知っている。ジズは、もう覚悟を決めている。
 ……もしかしたら、ニトは救えたのなら、『こちら』に来ることもあるのかも知れない。
 だが、ハワルは違う。彼を連れていくことは出来ない。だからこそ、ジズは覚悟を決めていた。
 ニトとハワル。かつて、一日だけでも、三人揃って生きたいと願った、家族との別れを。
 その決意に至る心が、ディアナには痛いほどわかる。
 ディアナにも母として、愛してやまない存在がいるから。
 それでもなお、別れを避けられない存在がいるから。
 だからその心が、覚悟が、報われないなんてことがあってはならない。
(「ディアナの言葉に、朔也の笑顔に、シオンに、どう思うてどう反応するか。何て返すか。どうしようとするか。そう言うんがこの子の中身」)
 だから、埜之子は黙して、しかし確かに、ハワルと皆のやりとりを、見守っていた。
 ひとつも見逃さないように。ひとつだって、取りこぼすことのないように。
(「ちゃんと見て。覚えとかんと」)
 今も、それは続いている。
 ディアナたちが、ハワルと向き合い続ける限り、終わらせてはいけないと、埜之子は考えている。
(「ジズに頼まれた似顔絵何てちゃんと描けやせえへんの」)
 それが約束。
 今も昔も、絵を描いていた。ディアボロスになって、絵が奇跡を起こすようになっても、何を変えることなく続けていた。
 ジズは、それを見てくれていた。そして、そのジズが腕を見込んでと、頼んでくれたのだ。
(「やって、ジズがお願いやなんて滅多に言わへんのよ」)
 付き合いは長い。埜之子が描き続けてきたことを、ジズが知っているように、埜之子もまた、ジズの人となりはこの目で見てきて、知っているつもりだ。
(「あの人、自分で出来る事は全部自分でしようとしてまう方の人やし。そのジズが頼んで来たんやし」)
 それがとても稀有なことだと知っている。
 彼女は、しっかりと地に自分の足をつけて立っている、そんな人間だ。
 そんな人が、託してくれる願いの、どれほど重くて尊いことか。
(「ちゃんとやらんと」)
 埜之子の決意もまた、固い。
 焼きつけるように。帰った時に、このハワルという少年の、ジズという女性の息子の、ありのままを描けるように。
 中身を『引きずり出』さなくたって、交わした言葉から、覗かせる表情や仕草から、その心根は伝わる。
 そうして人は人を理解し、表現することだって出来る。それを証明するのだ。
 サ・タを認めないために。何より、託してくれたジズのために。
 知るための言葉は、まだ続く。
「この飴の色、きれいだよな」
「はいっ。きらきら……」
「これとそっくりな目してるやつがいてさ」
 飴玉に目を落とすハワルから、クーガは視線を移した。
 そこでは今、ジズたちがサ・タと対峙しているはずだ。
 ニトへと言葉をかけているはずだ。
「キレイで、やさしくて、まっすぐ飛ぶ鳥みたいに強くあろうとできる、かっこいいやつだ」
 ハワルが、クーガを見上げているのに気がつく。
 だからクーガも、視線を戻して。その目を、まっすぐに見て告げる。
「そいつが、ハワルのおとーさんを守るよ」
 ハワルはまだ、彼女が母とは知らないけれど。
 もしかしたら、知らず別れることになるのかも知れないけれど。
「ああ、でもハワルな」
 それでも。
 これくらいはいいだろうと、埜之子は思った。
 ジズは、自分の意志で息子の元に行かないと決めた。ハワルの未来を思えばこそ。
 けれど、母と知らぬままだとしても、父だけでなくもう一人、彼を大切に想っている人がいるのだと。
 ハワルがそれを、知っていてもいいだろう。
「アンタも出来るだけジズの事見といた方が良え思うえ?」
「……じ、ず」
「やってジズの中身はきっと。多分、アンタの事ばっかりやろし」
 思わずこぼれたような、言葉、ふたつ。
 ハワルが、クーガの見ていた方を見る。
「あのな、だいじょうぶだぞ」
 小さな瞳が、ジズの背中を映す。
「おまえの……家族は、おまえの血の中――ええと、きっと、ずっと、おまえの中にもいるから」
 クーガの言葉が、物語のように染み入る。
 かつて、本当にあった物語。
 そして今、紡がれる物語。
「おまえのいる未来に、みんないっしょにいるってことだ」
 途切れることのない、物語。
 ハワルが覚えて、生きていく限りずっと。
 彼がまた、命を繋いでいく限りずっと。
「だから、安心して行くんだぞ」
 清らかな新芽が、やがて大樹となるように。
 希望の陽光を、たくさん浴びて枝葉を伸ばし、根を張り強く生きるように。
 父という大地を取り戻すために、戦う母という太陽に、きみは愛されているよ。
「……あ……ぁ」
 きらりと。
 太陽の彩した、番の蛇が、その片割れが陽を受けて光る。父と揃いの、それは。
 悪夢に蝕まれる父が、時折うわごとのように、悶え苦しみながらも、愛おしむように紡いだその名前、は。

「     」

 その声は掠れて、風にさらわれ、誰の耳にも届かなかったけれど。
 誰からともなく、物言わずとも確かに微笑んだ。
(「……あの人、お母さんやで」)
 それを、折を見て伝えられればと、朔也は秘かに考えていたけれど。
 どうやら必要はないようだ。それを悟った。
 だから代わりに、震えるハワルのその頭を、優しく撫でた。
 シオンも、思いやるように擦り寄った。
 ディアナの視界がまた滲む。
 こらえるその肩を、埜之子がぽんと軽く叩く。
(「そうだ」)
 引いたときの手の小ささ。
 並んだときの背の高さ。
 あしあとの大きさ。
(「このくらいだったって、あとでジズに伝えよう」)
 風は凪いでいる。
 クーガは歩いてきた道を、一瞬だけ振り返って。
 そしてすぐにまた、ただ黙って前を見た。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
【友達催眠】LV3が発生!
【完全視界】LV1が発生!
【未来予測】LV1が発生!
効果2【グロリアス】LV1が発生!
【先行率アップ】LV2が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!

ジズ・ユルドゥルム
ニト…

腹に力を入れ、背筋を伸ばす
声が震えないように

ニト!!!

朔也のバイクから跳んでニトの前に立ち
彼を抱き締め、頬を両手で包む
少し、痩せたな…

ニト、私を見ろ。ジズだ。一人でよく頑張ったな。助けに来たよ、おまえがくれた番の蛇を辿って

よく聞いてくれ、ニト
おまえのせいじゃないよ。絶対におまえのせいじゃない。
私も、ニトも、ハワルも、精一杯やった
ニトが決断してくれたから、一番いい結果を手繰り寄せられたんだ

私はおまえと一緒になって幸せだった。幸せのなり方を、自分の心を大事する方法を、おまえが教えてくれたから
おまえと家族になれたことも
私の望みを叶えてくれたことも
ぜんぶ一生の宝物だ

…私は、死者の国で楽しくやってる
友達もできたよ。二人がいなくて寂しい時もあるけど…もう大丈夫
おまえも、幸せになってくれ。ハワルと一緒に。私抜きで。
どんな形でもいい。いい人ができたら、その人と番になるのもいい
幸せになってくれ。幸せに…
私は遠くからずっと、ずーっとふたりのことを想ってるから。

ニト。私と家族になってくれて、ありがとう。


ゼキ・レヴニ
朔弥のバイクでジズと共に駆けつけ
女性とサ・タの間に【防衛ライン】を引き割り込む

ジズの呼びかけを静かに見守り
落ち着いたところで、ニト、と呼びかける

面識の無いおれの言葉が届くのかは分からん
それでも…ジズと共に立つ相棒として、確かな絆を結んだもう一人として
ニトと響き合うものが、伝えられる事があると、そう信じる

おれは死者の国の友人ってヤツだ
お前さんやハワルの事を、ジズが話してくれたよ
ハワルが産まれたとき何があったのかも

自分を責め悪夢に追われ…身に覚えがある話だ
お前さんは…長い間自分自身と戦ってきたんだな
失った者の傷を肯定し続け、それでも広がる痛みに耐えて
…本当に強いな、お前さんは
ジズがどこに惚れたのか、分かる気がするぜ

お前さんは…ジズを愛してるからこそ、決断したんだろ
決断したからこそ、ジズもハワルも今ここに居る
昔と形は変わるかも知れんが、もう失う事はないんだ
二人の幸せを願うなら、自分を責めるのは終いにして
自分が幸せになる為に前を向くんだ、ニト
強く優しい心を持つお前さんが
蛇なんかに負けるんじゃねえ



「ニト!!!」
 腹の底から発された、伸ばされた背筋から広がった、空間を震撼させた、その名前。
 やっと呼べる。やっと、届けられる。ひらり、広がる砂の上へと降り立つ。狙いすまして。
 声が震えないようにと、ジズ・ユルドゥルム(砂上の轍・g02140)はそのたった一瞬に、全てを乗せた。
 そのつもりだ。それでも、まだ足りないとジズ自身が実感していた。
 対峙する。サ・タは半ば呆然と立ち尽くしていた。
 それでも、今のジズはサ・タを見ていない。
 見ているのは最初から、ニトだけだ。
「な、なに」
 サ・タの問いかけは、もうジズの耳に入っていない。
 ただ、そこにいるニトを信じて、その身体を抱き締めた。
「!?」
 サ・タは暴れる。それでもジズは、放さない。
 夢ではない、悪夢で責める存在ではない、確かな自分がここにいると、伝わると信じて。
「少し、痩せたな……」
「ちょっと、放し……」
「ニト」
 サ・タには構わず、ニトの頬を両手で包む。
 相変わらずその目は見えない。折角の男前が隠れて見えない、と生前彼に言ったものだが、結局そのままにしている。
「私を見ろ。ジズだ」
「……ッ」
 サ・タが沈黙する。
 気圧されたか、ニトが反応しているのか、それはわからない。
 けれど、言葉を届けるためには何にしたって好都合。
「一人でよく頑張ったな。助けに来たよ、おまえがくれた番の蛇を辿って」
 琥珀色が、太陽の彩したそれが、陽の光を受けてちかりと煌めく。
 番の蛇を持つ者は、葦の原野で再び番えると伝えられていた。
 死後の楽園ではないが、またこうして巡り逢えた。
「よく聞いてくれ、ニト」
 時間はあまりに短い。それでも、今しかない。
 今、絶対に伝えなければいけないことがある。
「おまえのせいじゃないよ。絶対におまえのせいじゃない」
 悪夢に苛まれていると知った。
 あれは自分が望んだことだ。それが最善だと、頭でも心でも、理解してしまっていたからだ。
 優しいニトが、思い悩むことを考えないではなかった。それでも、その時はそうするしかないと知っていた。恐らくは、ニトだって。
 ジズが息子を抱くことは、夫と生き続けていくことは、叶わなくなってしまったけれど。
 それでも、夫婦として愛し合い、共に生きた時間が確かにあって。
 通じ合った心は証の代わりに、種となって芽を吹いた。
 寂しくなかったと言えば、嘘になる。
 それでも、十分だとも思えた。
 嘘偽りなく、心から。
「私も、ニトも、ハワルも、精一杯やった。ニトが決断してくれたから、一番いい結果を手繰り寄せられたんだ」
 夢の中のジズがニトを責めるのは、ハワル自身が己を責め続けていたからだ。
 自分がうまくやれなかったから、妻が死んだのではないか。自分がうまくやれていれば、妻は今でも生きていたのではないか。
 けれど、仕方のないことだと誰もが、ニト自身もが正しく理解してしまっていた。だからこそ、彼は責められなかった。
 その事実が余計に、彼の自責を加速させたのだ。悪夢の中の妻と子供に、己の疑念を代弁させてしまうほどに。
 でも、それ以外に誰もニトを責めなかったのは、当然のことなのだ。
 だってニトは、何も悪くないのだから。
「ジ、ズ」
 あとは彼自身が、それを受け入れるだけなのだ。
 それを己に、赦してやるだけなのだ。
「私はおまえと一緒になって幸せだった。幸せのなり方を、自分の心を大事にする方法を、おまえが教えてくれたから」
 本当は、彼への想いを全て伝えきるには、時間が足りないかも知れない。
 けれど、だからこそ、この短い時間に、大切なことを詰め込めるだけ詰め込もう。
 そして、時の許す限り伝えよう。ジズはそう決めていた。
「おまえと家族になれたことも、私の望みを叶えてくれたことも、ぜんぶ一生の宝物だ」
 これがジズの本心だ。
 悪夢に、ニトの自責に塗り潰されていない、本物の、ジズの心だ。
「あ……ぁ……」
 サ・タの声が、震えている。
 いや、もしかしたら、これは。
「ニト」
 少なくとも、サ・タとしての抵抗がなくなった今。
 ジズがニトと向き合うのを、静かに見守っていたゼキ・レヴニ(Re-Lighter・g04279)が、ジズの背中越しに、ニトに向けて呼びかけた。
 彼は既に、サ・タと彼の狙った女性との間に、防衛ラインを引いている。その向こうでは、仲間たちが避難誘導を行ってくれている。これで気兼ねなく、話すことが出来る。
(「面識の無いおれの言葉が届くのかは分からん。それでも……」)
 通じるものがあるのではないかと、思った。
 ニトが己を取り戻し、サ・タに抗う勇気を奮い立たせ、決意を固めるための力には、この言葉はなれないのかも知れない。
 けれど、『ニトという一人の人間』に、確かにその存在を認識している、尊重している存在がここにもいるのだと、伝えることは出来ると思う。
(「ジズと共に立つ相棒として、確かな絆を結んだもう一人として。ニトと響き合うものが、伝えられる事があると、そう信じる」)
 何よりも、ゼキ自身が伝えたいと思ったのだ。ここに来る理由は、ここにジズと並び立つ理由は、それだけで十分だった。
「おれは死者の国の友人ってヤツだ」
 ニトの目は見えない。
 その眼差しが、どこを向いているのかはわからない。
 けれど彼は少し、顔を上げたようだった。ゼキの言葉を、聞く意思はあるようだ。
「お前さんやハワルの事を、ジズが話してくれたよ。……ハワルが産まれたとき何があったのかも」
「ッ」
 ニトの身体が強張る。
 やはり、彼が己を赦すには、もう一押しがいる。
「自分を責め悪夢に追われ……身に覚えがある話だ。お前さんは……長い間自分自身と戦ってきたんだな」
 その境遇は、ゼキにとっても決して他人事ではなかった。
「失った者の傷を肯定し続け、それでも広がる痛みに耐えて……本当に強いな、お前さんは」
 ジズがどこに惚れたのか、分かる気がするぜ――と。
 ひとつ呟いたのは、ゼキにとってはある種の敬意であった。
「お前さんは……ジズを愛してるからこそ、決断したんだろ。決断したからこそ、ジズもハワルも今ここに居る。昔と形は変わるかも知れんが、もう失う事はないんだ」
 自分を責める理由は、もうどこにもないはずだ。
 他でもないジズが、番の蛇を連れてきた本物のジズが、ニトを赦しているのだから。
 ……いや、違う。最初からジズは、ニトを責めも、恨みもしていなかったのだから。
 ならばニトが、その事実を受け入れてやらねば、ジズだって報われないではないか!
「二人の幸せを願うなら、自分を責めるのは終いにして、自分が幸せになる為に前を向くんだ、ニト」
 ジズを想えばこそ、ニトは苦しんでいる。
 ならば、ジズのためを、家族のためを想うのならば、二人を安心させてやらなければ。
「強く優しい心を持つお前さんが、蛇なんかに負けるんじゃねえ」
 そのためならば、死の蛇になど屈してはいられないだろう。
 ニトが俯く。
 その顔を上げるように、ジズは彼の額に、自身のそれを重ねた。
「……私は、死者の国で楽しくやってる。見ての通り、友達もできたよ。二人がいなくて寂しい時もあるけど……もう大丈夫」
 だから、ニトももう、自分に縛られなくていいのだと。
 自分のせいでジズがと、己を責めることもなければ、ジズの影を追い続けて、生きていく必要ももうない。
 ニトが幸せになれるのなら、今や別の時代を、世界を生きる自分が、その足枷になるつもりはないから。
 そんなことを、ニトが思っていないことはわかるけれど、それでも、ジズにとってはそうなのだ。
「おまえも、幸せになってくれ。ハワルと一緒に。私抜きで。どんな形でもいい。いい人ができたら、その人と番になるのもいい」
「ジズ、」
「幸せになってくれ。幸せに……」
 長い前髪を、額から少し避ける。
 どこまでも澄んだ瞳が、ジズを映した。
 この瞳が好きだった。二度と曇らせてほしくはない。
「私は遠くからずっと、ずーっとふたりのことを想ってるから」
 これで最後になるとしても、これだけは、伝えたい。

「ニト。私と家族になってくれて、ありがとう」

 崩れ落ちるニト。ジズも共に膝を着いた。
 ゼキは二人に背を向けた。決別ではない、大丈夫だと思えたから。
「う、あ……」
 陽に照らされた瞳から、ひとつ涙が落ちる。
「あ、ああああぁぁぁぁ、ああ」
 心優しく、ひとつ芯が通っていて。
 だからこそ、折れることをよしとしなかった、彼が。
 今だけは、崩れてもいいと思えたのだろう。自分を赦すために、今だけは。
 生と死を司り、優しく大地を照らす太陽の彩の花を咲かせる木のように。
 その花に込められた『感謝』は、確かにここに届いたのだ。
 ……だが。
「うるさいよ」
「!」
 それも一瞬。
 澄んだ瞳が、どろりと濁る。
 ジズの身体が、無理やり引きはがされる。前髪が再び、瞳を隠す。
「……そう、そんなに、僕のことを想ってくれるの? なら、もう一度見せてよ」
 ニトを押しのけて、戻ってきたのだ。死の蛇サ・タが。
 ジズは身構える。サ・タが咆えた。

「きみの『中身』を!!」

 取り戻すための戦いが、始まる。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【パラドクス通信】がLV2になった!
【防衛ライン】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
【命中アップ】LV1が発生!

海・ほろぶ
アドリブ・連携可

ひとの自責の念や優しさに付け込んで
胸糞悪いったら
そんな奴に大事な人を傷つけられたら、利用されたら……って事でしょ、全くもう!
ジズさんへの恩返しもあるし
悪趣味な目論見を妨げるって意味でも
まずは、村の人達の安全確保

【プラチナチケット】で
声をかけて避難手伝える位の村関係者に思って貰えたら御の字

様子がおかしい、離れて、とまず声で促し
自分で素早く動けていない人のサポートへ入る
村の人達誰かしらとニトさんの間、斜線を遮る位置を心掛け
サ・タは特に女性へ加虐嗜好があるって話だし、もし同じくらい危険なとこに男女それぞれいたら女性を庇える位置優先
すぐには狙われないくらいまで逃げられたら、後は村の人達同士で避難してもらおう
送り出す時に、他にまだ逃げられてなさそうな人はいるか訊いて、次はそっちを確認しに行く、ってサイクルで
全員脱出できるまで繰り返す

手を引いたり支えたり
ひとに触るのは、余計な思考が浮かんで苦手だけど
考える暇が無い位動いてれば何とか凌げる
それこそ、今みたいに急いで大勢助けたい時とか、ね


風見・茜
みんなジズの為に何かしたいと思ってここに集まったんだな。
うむ、もちろん私もだ。ベストを尽くそうじゃないか!

他に避難誘導してる人たちに合わせて動くよ!
問題の中心のことや、ハワル君への声かけは他の人に任せる。
代わりに近くに自力で移動が難しい人が居ないか、サーヴァントの福丸と一緒に周辺を確認しておこう。
必要なら怖がらせないように一声かけて【フライトドローン】に乗せたり、肩を貸して移動を手伝ってもいい。
緊急避難が必要な人以外も安全な範囲から出ないように気を付けておこうかな。
状況に合わせて他の人が持ち込んでくれた効果も使わせてもらうね。

犬が苦手じゃなさそうなら、福丸と一緒に声をかけて不安を取り除いてあげたいね。
大丈夫、悪い奴は福丸の背中の大砲でドカンだ!

指さし確認よーし!逃げ遅れなーし!
今回もパパッと解決しちゃってさ、また新宿島で他愛もない話を明るい顔で交わせるように。
帰ったらジズに胸を張って「全員無事だったぞ!」って報告するんだ!


ルーシド・アスィーム
アドリブ連携歓迎

僕にはジズさんの気持ちを想像する事は出来ても、きっと理解する事は難しいのでしょう
それほど比翼を定める事、子を為す事は尊く、重い決断ですから
……それでも力になりたいのです、同郷の友人として

ハワルくんには仲間達が駆けつけてくれるでしょう
ならば僕は被害を出さない事に注力を
狙われた女性や村人達の元に駆け付け、【プラチナチケット】【友達催眠】の力を借り受けながら庇います

急に失礼致ししますね、僕達はあの男性の奥様の友人です
少しばかり込み入った事情がありまして男性の方は狂乱されています!離れて下さいませ!

事情を簡潔に説明しつつ、女性や村人を死の蛇より引き離します
【パラドクス通信】も活用し、仲間達とは緊密に連携を図って参りましょう
攻撃が飛んでこないか注意しつつ、必要なら盾での受け流しや体を張って射線を阻みます

僕からハワルくんにお伝えすることは唯一つ
貴方のお母様は貴方とお父様を──今も愛しておられます

会えなくても、生きる世界が違っても
貴方が愛された子である事は、決して変わらない真実なのです


ゼキ・レヴニ
ニトの説得の前後、合流する時間があれば避難誘導へ
ハワルを守り、どんな子なのか確かめてきてほしいと
ジズから頼まれてる
言葉で言い表せん位息子に会いたかったろうに
…その意思、絶対無駄にしねえ

仲間と協力し残留効果を活用して住民を戦場外へ誘導
家が近ければ中に籠もるよう呼びかけ
動けん者がいれば、【怪力無双】で担ぎ安全な所まで運ぶ

避難誘導中、ハワルに目線を合わせ話しかける
…目の色は。母譲りか、それとも父譲りだろうか
「お前さんを守ってくれる人の事。おやじさんから、聞いた事あるかい」
利発な子だ。皆の言葉から何となく察してるかも知れん

ジズはハワルに必要なのは死んだ筈の母じゃないと言った
だがおれは…ハワルが望むなら、知ってもらいたい
「あいつは強くて優しくて…あったけえ奴だ。そしてお前さんの事を、心から愛してる」

“祈望”からジズのジンの小羽を1枚抜き、小さな掌に握らせ
「これはその人から貰ったお守りだ」
排斥力ですぐに消えてしまう物でも…
「この温もりを覚えておけば、いつまでも、お前さんと父さんを守ってくれる」



 ……時は少し遡る。
 サ・タ……もとい、ニトへの説得が行われるのと同時、集落の人々の避難は、少しずつでも確実に進んでいた。
 ジズのために集った仲間たちが、たくさんいることも大きかった。海・ほろぶ(オルタナティブ・g04272)もその一人だ。
(「ひとの自責の念や優しさに付け込んで、胸糞悪いったら。そんな奴に大事な人を傷つけられたら、利用されたら……って事でしょ、全くもう!」)
 彼女がサ・タと、その行いに抱いた不快感は、至極まっとうなものだ。
 それが苦しめようとしているのが、恩人と、その大切な存在であるというなら、なおのこと。
「ジズさんへの恩返しもあるし、悪趣味な目論見を妨げるって意味でもまずは、村の人達の安全確保」
「……ジズさん」
 ルーシド・アスィーム(轍つ祈星・g01854)は一度、サ・タと……その中にいるニトと向き合う、ジズの背中へと視線を向けた。
 彼女はサ・タが暴れるのもいとわず、その身体を優しく抱き締めているようだった。
 サ・タをではない。未だ悪夢から目覚められぬ、ニトのことを、きっと。
(「僕にはジズさんの気持ちを想像する事は出来ても、きっと理解する事は難しいのでしょう。それほど比翼を定める事、子を為す事は尊く、重い決断ですから」)
 軽々しく気持ちはわかる、だなんて言えない。
 わかってしまってはいけないものだ、という心地すらした。
 きっとそこは、ジズにとっての聖域で、今はそれを土足で踏みにじられているようなものなのだ。そこには、ジズにしかわからない、わかってはいけない万感の思いがある。
 ルーシドだって、そんなことは痛いほど理解していて、それでも。
「……それでも力になりたいのです、同郷の友人として」
 今のジズの心を、考えを、想いを、その全てをわかることはきっと出来ない。
 それでも、『助けたい』と願う理由は、それだけで十分なのだ。
「うむ、もちろん私もだ。ベストを尽くそうじゃないか!」
 頷いたのは風見・茜(廃品回収承ります・g10800)だった。
 そして彼女は周囲を見渡す。どこに視線を向けても、志を同じくする仲間たちの姿がある。
(「みんなジズの為に何かしたいと思ってここに集まったんだな」)
 ジズの力になりたい。ジズを助けたい。集った皆が、そう思ってこの砂で覆われた大地に立っている。
 それを、改めて実感した。そして、茜自身も、その言葉に嘘偽りなく、曇りなく。
 さて、なんにしてもまずは目の前の人々だ。
(「ハワルくんの元に駆けつけた仲間達は……うまくやれているようですね」)
 ルーシドが確認した時には、ハワルは無事に確保され、彼の救助班に連れられ後退しているところだった。
 あちらは任せて大丈夫だろう。ならばこちらは、先行した皆に続いて人々を護らねば。
「みんな、様子がおかしい、離れて」
「あ、えっ……」
 ほろぶが集落の人々に声をかける。
 突然の避難勧告にも動揺や疑問がさほど多く出なかったのは、先に働きかけてくれていた仲間たちの働きや残留効果もあるだろうが。
 ほろぶ自身が纏う空気が、不思議とこの集落に馴染んでいたというのもあるだろう。
「急に失礼致ししますね、僕達はあの男性の奥様の友人です」
 その恩恵にルーシドもあやかる。
「少しばかり込み入った事情がありまして男性の方は狂乱されています! 離れて下さいませ!」
 先程声をかけてきた女性に、あの青年は危害を加えようとしたと。だから危険だと。
 しかし、それも事情あってのこと。解決は自分たちがする、だから、と。
 二人の切実さが伝わったのか、人々は指示に従ってくれるようだ。
「説得は任せちゃったからね、避難の手伝いは任せろー!」
 パンツァーハウンドの福丸と共に、ひょいと顔を出した茜。
 足腰の弱い老人や、目や手足が不自由な者、体力の少ない子供など、自力での移動が難しい人々に、怖がらせないよう一声かけて説明をした上で、必要な者をフライトドローンに乗せて運ぶ。
 もちろん、福丸と共に周囲の警戒も怠らず、ドローンに乗せた者以外の人々にも、集団から逸れないよう気を配る。
「……わたしたち、これからどうなるの……?」
 ハワルよりは少しだけ年が上のように見える、幼い少女が恐る恐る茜に問えば。
「大丈夫、悪い奴は福丸の背中の大砲でドカンだ!」
「わんちゃん……」
 安心させるように、ニッと笑ってそう答えた。
 茜のその堂々とした態度と、福丸の愛くるしさで少女は少し落ち着いてくれたようだ。
「他にまだ、逃げられてなさそうな人はいる?」
「あ……ガザーラのばあさんがいないぞ? 家畜たちのところかも……」
「わかった。ちょっと見てくる」
 こちらに攻撃が飛んでこないかは常に警戒しつつ、ほろぶは教えてもらった放牧地に向かった。
 果たしてそこには老婆が家畜の世話をしていて、事情を話して家畜もろとも移動してもらうことにする。
 そんな調子で、ほろぶは人々を段階的に送り出し、都度逃げ遅れている人々がいないか確認し連れてくる、ということを繰り返していた。
「そろそろ全員脱出できたかな……」
『僕達ももう、出ても大丈夫でしょうかね?』
 パラドクス通信用の小型通信機から、ルーシドの声がする。
 彼は先んじて避難誘導をしていた仲間たちと共に、人々の集団の最後尾についていた。
 ほろぶと茜からゴーサインが出れば、すぐにでも出発する心づもりだ。
 通信に、ほろぶが応えようとしたその時。
「……あれ、もういいの?」
「ハワルを守り、どんな子なのか確かめてきてほしいとジズから頼まれてるからな」
 気配を感じ、ほろぶが顔を上げるとそこにはゼキ・レヴニ(Re-Lighter・g04279)がいた。
 先程までジズと共に、ニトの説得に向かっていたはずだが、途中で抜けてきたらしい。
(「言葉で言い表せん位息子に会いたかったろうに」)
 会いたくない、はずがない。
 だが、その想いを振り切って、ニトのために、ハワルのためにと背を向けたジズの、願いだ。
「……その意思、絶対無駄にしねえ」
 託された。
 必ず、果たす。
「よし、動けん者はいるか? 運んで行ってやる。家が近けりゃほとぼりが冷めるまで、中に籠ってるんだ。いいか?」
 最終確認と言わんばかりに、ゼキがてきぱきと動く。
 ほろぶに茜、ルーシドたちもサ・タの動向に気を配りつつ、問題がないことを確認し。
「指さし確認よーし! 逃げ遅れなーし!」
「じゃ、残った人達を連れて行こう」
『了解です。先導お願いしますね』
 先導役のゼキと、ダンジョンペンギン――銀シャリが歩き出すのに人々がついていく。
 ほろぶと茜は左右をそれぞれ固めて不測の事態に備え、ルーシドはハーリス、サアシャと共に背後を警戒しながら進む。
(「順調順調。今回もパパッと解決しちゃってさ、また新宿島で他愛もない話を明るい顔で交わせるように」)
 ジズにも、そしてニトにも、その心に悔いを残さないために。
「帰ったらジズに胸を張って『全員無事だったぞ!』って報告するんだ!」
 そのためにも、集落の人々も、全員を守り切る。
 茜も福丸も、全力を尽くす心づもりだ。
「ごめんなさいねえ、年を取ると歩くのが遅くって」
「……ん、大丈夫」
 ほろぶは、先程の老婆の手を引き、背中を支えて歩いていた。
 大丈夫、とは言ったものの、正直なところ人に触れるのは未だに苦手なのだ。
 老婆が問題なのではない。ほとんど誰に対してもそうなのだ、
 余計な思考が、寄せては返す波のように浮かんでは消えるから。
 生命の温もりが、否が応でもこの身の死を、その深海のような冷たさを、突きつけてくるようで。
 けれども、そんなことを言っている場合ではないのは百も承知。だからこそ、大丈夫だと言えるのだ。
 考える暇もないくらい、今はそれより動かなければと言い聞かせて、思考を遮断出来るから。
(「今みたいに急いで大勢助けたい時とか、ね」)
 むしろちょうどいいのだ。無心になれる。
 それで誰かを救えるのなら、それでいい。
 避難は無事に終えられそうだった。


 全ての人々の避難が完了し、彼らも、ディアボロスたちも合流を果たす。
 ……その中に、ハワルもいた。
(「……ハワル」)
 ゼキの瞳に映った彼は、父に似ているとも、母に似ているとも、どちらも言われてみれば、どちらもそうだと言える気がした。
 ……目の色は。母譲りか、それとも父譲りだろうか――そんなことをずっと考えていたが、いざ目の当たりにしてみれば、太陽にも似た眩い色だと思った。
 握りしめた琥珀色の飴玉、楽園での再会を誓う蛇の指輪。ジズが瞳に宿す彩。
(「……ああ、そうか」)
 彩はジズ。形は違う。きっとニトのそれなのだろう。
 筆舌に尽くし難い想いが、ゼキの中に去来する。それでも、伝えたいことがある。
 ハワル、とその名前を呼べば、彼は顔を上げて、まっすぐにゼキの瞳を見た。
 宝石のように煌めいて、ひどく澄んだ瞳であった。
 ゼキはその目線に合わせるように、彼の前に屈む。
「お前さんを守ってくれる人の事。おやじさんから、聞いた事あるかい」
 ハワルは頭を横に振る。けれどすぐに、ぽつぽつと零す。
「……おとうさん、ねてるとき、苦しそうにしてることがあって」
 その時に、知らない女性の名を呼んだのだと言った。
 起きている時に尋ねても、苦く笑うだけでニトは明言を避けていたようだったが。
(「利発な子だ。皆の言葉から……そしてニトの態度から、何となく察してるかも知れん」)
 確証はない。けれど予感があった……そんなところか。
 そして今、その予感は確信に変わっている。ゼキもまた、それを確信していた。
(「ジズはハワルに必要なのは死んだ筈の母じゃないと言った。だが、おれは……」)
 知ってもらいたい。せめてジズが、どれだけハワルを想っているかだけでも。
 そして、ハワルもまたそれを望むのならば、応えるべきではないかとも。
 ……いや、ゼキが、応えたいのだ。
「あいつは強くて優しくて……あったけえ奴だ。そしてお前さんの事を、心から愛してる」
「………………」
 ハワルは、何も言わない。けれど目は逸らさない。
 聞かなければならない、知らなければならない。そんな表情だった。
「これはその人から貰ったお守りだ」
 小羽を結い込んだ、革紐の腕飾り。
 優しく温かな色合いと、ほのかな、しかし確かな熱と光は、小さな太陽のよう。
 その小羽を一枚、ゼキは抜き取りハワルの掌へと握らせた。しっかりと、握り締めるのを認める。
 これもまた、排斥力にかき消されて、風にさらわれる砂のように、いずれ消えてしまうのかも知れない。
 それでも、その全てが消えてなかったことになるわけじゃない。
「この温もりを覚えておけば、いつまでも、お前さんと父さんを守ってくれる」
「あ……」
 呆けたような声を上げた、ハワルの傍にルーシドもまた歩み寄って。
「僕からも。……僕から、ハワルくんにお伝えすることは唯一つ」
 もしかしたら、聡明なハワルは既に感じているかも知れないけれど。
 確かな証の言葉が、きっとまだこの幼い少年には、必要だろうから。
「貴方のお母様は貴方とお父様を──今も愛しておられます」
「……!」
 ハワルの瞳が、見開かれる。
 ふたつの丸く小さな太陽が、その全てを明らかにする。
「会えなくても、生きる世界が違っても。貴方が愛された子である事は、決して変わらない真実なのです」
 これが本当に、夫と妻の、母と息子の……家族の、永遠の別れになるのだとしても。
 もう会えない、手の届かない存在になるのだとしても。
 ジズが遺した想いは確かに、ここにあった。
 家族を愛する心が確かに、ここにあった。
 だからこうして、会いに来れた。
 導きの蛇が連れてきてくれた。
「っふ、う……」
 太陽が揺らぐ。水面に映るように。
 それでもハワルは、その雫を熱砂に落とし、消すことをよしとせず。
 ただ、噛み締めるように、掌の中の太陽を、小羽を、そして、かけられた言葉を、与えられた想いを。
 忘れないように、その小さな心に、熱心に、懸命に、刻みつけているようだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
【フライトドローン】LV1が発生!
【パラドクス通信】がLV3になった!
【怪力無双】LV1が発生!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【命中アップ】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV2になった!

ジズ・ユルドゥルム
ハワルの気配が、声が、離れていくのを感じる。
……凄いな。あの小さくて、柔らかくて、フギャフギャ泣いていた赤ちゃんが、立って歩いて、喋ってた。
ニト。おまえはどれほど懸命にあの子を育ててくれたんだろう。いくら感謝しても足りないよ。

ハワルの方は、振り返らない。振り返ったら私はきっと、全部放り捨てて駆け寄ってしまう。

今必要なのは私の感傷じゃない。
ハワルを無事に逃がし、ニトにも人を殺めさせない。それを成し遂げるための覚悟だ。
皆が遠くへ逃げるまで、私が蛇を引き付ける。

「守護者の戦斧」を構え、戦面を着ける
ハワルへの未練も、ニトの身体を斬りつける僅かな躊躇も、全て面の下に押し込む。

サ・タ!!!この……くそったれの蛇が!!
ニトの声で、ニトの身体で、汚らわしい言葉を吐くな!!
『中身』だと?ニトの中から覗き見て、女の腹から出てきたものに焦がれでもしたか?
くだらんな。貴様がやろうとしていることは、ただの猿真似だ!!

亡骸は斧で容赦なく斬り飛ばし、拘束の軽減を試みながら、蛇を挑発し注意を引く
罵詈雑言は、本心だがな!



 ひとつ風が吹く。
(「ハワルの気配が、声が、離れていくのを感じる」)
 ジズ・ユルドゥルム(砂上の轍・g02140)の心に、焼きついた小さな影の記憶。
 かつてはもっと小さかった、追憶は今、鮮明に更新される。
(「……凄いな。あの小さくて、柔らかくて、フギャフギャ泣いていた赤ちゃんが、立って歩いて、喋ってた」)
 その姿を、近くで見守り、また自身も、共に教え導く側に立てなかったことに、引け目はあれど。
 もっと、それよりも強く湧き上がる感情がある。
「ニト。おまえはどれほど懸命にあの子を育ててくれたんだろう。いくら感謝しても足りないよ」
 目の前の男に告げる。その口元は、柔らかく微笑んでいる。
 男……サ・タは、苛立ちを嚙み殺すように、口を引き結んでいる。だが、元よりジズの心が向かうのは、その存在が埋めて隠した『ニト』のみでしかない。
 ジズの口元から、笑みも、柔らかさすらも消え失せた。
 ニトは今、ここにいない。それを正しく理解した。
 ハワルを顧みることもない。振り返れば『母』でしかなくなってしまうと、知っていた。
 今は『戦士』であることが必要だ。家族を、そしてこの時代を生きる『父と子』を、奪り戻すために。
 そのためならば、この感傷は一時捨て去ろう。鬼にもなろう、修羅にもなろう。
 必要なのは、成し遂げるための『覚悟』だ。
 ハワルに手は出させない。
 ニトにも誰も殺させない。
 そのためにも。
(「ここで、留める」)
 サ・タを引きつけ、一歩たりともジズの横を抜けさせはしない。
 鳥骨の戦面から、その奥に秘めた太陽の眼を煌めかせ。
 今、ここにジズは守護者となる。
 無関係な人々のため。
 大切な存在のため。
「サ・タ!!!」
「!」
 咆哮。
 構えた守護者の戦斧に、あしらわれた狼の如く。
 ハワルへの未練も、ニトの身体を斬りつける僅かな躊躇も、今は全て戦面の奥に押し込んで。
「この……くそったれの蛇が!!」
 尽きぬ憤怒は漲る生命の炎と成りて、身を灼きながら、それでも跳んだ。
 赦せぬのは、己の最期の願いを叶えた、どこまでも優しい男ではない。
 それを踏み躙り、その意味を塗り替える、侵略の蛇だ!
「ニトの声で、ニトの身体で、汚らわしい言葉を吐くな!!」
 熱風を纏い、黒刃を閃かせ、悪しき魂を両断せんと描く半月。
 黒の軌跡は瞬時に身構えた、しかしその護りすらも打ち砕く。
「ぐ……ッ!」
「『中身』だと? ニトの中から覗き見て、女の腹から出てきたものに焦がれでもしたか?」
 女の腹を裂き、臓物を引きずり出す行為。
 そして、それを愛でるという行為が意味するものは。
「なん、」
「くだらんな。貴様がやろうとしていることは、ただの猿真似だ!!」
 かつてニトが、己の腹からすくい上げた、新しい生命。
 その脈動、その体温、その感触、その全てを、人の血肉と内臓で見立てて――、
「き、みに……お前に、何がわかるッ!! 僕はただ、『あれ』が好きなんだ!! たった今まで生きていた体温から、抉り出したそれが脈打つのが、」
「は、自覚がないのか? それとも見て見ぬ振りか、いずれにしても、いっそ憐れなまでに滑稽だな!! だからと言って赦しはしないがな!!」
「う……るさい、うるさい、煩い!!」
 血が噴き出すのも構わず、サ・タは無理やり己の肉に食い込んだ、重く厚い黒を押しのけて。
「全部、全部引きずり出してやる……!!」
 かつて『引きずり出した』女の骸が、今度はその身を、熱砂の大地から『引きずり出される』。
 女たちはその『生』が恨めしいと言わんばかりに、ジズへと手を伸ばした。
(「生命を、奪われる道理などなかっただろうに」)
 母であった女は、その腕に子を抱いてよかった。
 母でなかった女も、望むまま自由に生きてよかった。
 だが、ジズはもう決めた。感傷はなしだ。
 せめて来世というものがあるなら、次は脅かされないよう、それだけは祈りつつ。
 骸に残された未練ごと、断ち切るように容赦なく、斬り飛ばした。
「この……!」
 黒曜の刃がぎらりと光る。
 再びジズの腹を裂かんと迫る。
 今、サ・タはジズだけを見ている。
 これでいい。これで奴は、誰からも何も奪い去れない。
(「口にしたことは、全て本心だがな!」)
 刃が振り下ろされる。
 だが、それは、ジズの腹には届かなかった。
超成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【士気高揚】LV1が発生!
効果2【グロリアス】がLV2になった!

海・ほろぶ
アドリブ・連携可

濃い霧を、その奥にいるだろう敵を、差し伸ばされる手を
睨みつける
お生憎様、願い下げだよ
……『私』は、生きて生まれて来たかったんだから
売り込む相手を間違えたんじゃない?
他の何と抱き合わせにされたって、永遠の眠りは無価値に過ぎる

しっかしまあ、
ほんっとに趣味もやり方も最悪
女の人に嫌われるよ いや男の人にもかな
本音そのままの悪態と、ついでに悪口も足して
ジズさんや他の狙われるかもしれない人から注意を逸らせたら万々歳

パラドクスを使用
小さな硝子玉からの光じゃ、霧を払うには足りないかもしれないけど
もしも
少しでも視界があるなら、手指のひとつでも、影だけでも、敵の位置を掴む手がかりを探して、報せて
それで、もしも
【託されし願い】が届くなら、
あの時私が背を押されたように ディアボロスに願いを託してくれた人達の中に、
ジズさんの大切な人が、映りますように


ジズ・ユルドゥルム
ニト、聞こえるか?もう少しだけ頑張ってくれ
おまえに取り憑いた悪い蛇を一緒にやっつけよう

地面に種を植え、祈る
「私達の子が、無事に産まれて、元気に育ちますように」
大丈夫だよ、ニト。私達の願いは叶う。これ以上ないほどに…

何回でも言うぞ。貴様は憐れな奴だ、サ・タ
あの光景にすっかり灼かれてしまったのに、自分が何に灼かれたのかも分かっていない
貴様には永遠に理解できんだろう

以前の私なら、貴様の誘いを魅力的だと──これでやっと家に帰れると思っただろうな
たが今は違う
私の帰るところは、死者の国にはない

大樹に育った祈りの樹の、生い茂る葉と揺れる花の下に、サ・タを閉じ込める。

貴様はニトから何一つ奪えんよ。
消え去れ、蛇。

脱出前に、ニトの指から、番の蛇の指輪の片割れを外す。
おまえに「取り憑いた蛇」はこれで一匹もいなくなった。

差し出された手を取って、歩き出す
さよなら、ニト。
…さよなら、ハワル。
生まれてきてくれて、ありがとう。

帰ろう、ゼキ。皆と一緒に。


──もし、
もしも、叶うなら
最後に、一度だけでも、あの子のことを……


エイレーネ・エピケフィシア
ジズ様、遅参をお詫び致します
リグ・ヴェーダにて、数多の人々の命が懸かった作戦が相次いだゆえ……どうかお許し下さい

緒戦に加わる機こそ逸しましたが、あなたの宿縁との対峙もまた、わたしにとっては何としても果たさねばならぬ戦です
今は戦線を進めるためではなく……
ただ、蹂躙戦記イスカンダルで幾度も並び立った戦友と、そのご家族のためだけに槍を振るいましょう

《神護の長槍》と《神護の輝盾》を手にサ・タと対峙します
ジズ様ほどの名誉ある戦士が愛した人は、その魂までもが輝くばかりに美しかったのでしょう
下劣なる詐称者よ、簒奪せし座より去りなさい
あなたの魂には彼の身体は相応しくありません!

槍の穂先から放つ黄金の聖光こそ『勝利齎す女神の威光』
光の奔流に敵を飲み込み、サ・タとしての外殻と内に宿す邪悪な魂を焼き払います
亡骸が襲いかかってきたなら槍で薙ぎ払って葬り、ナイフを盾で防御
ただ一人の愛する者に捧げるための我が身を、渡すものですか!

ジズ様……いえ、正しい選択かと存じます
あなたの愛は、いつまでもお二人と共に在るでしょう


ゼキ・レヴニ
待たせた、ジズ
お前さんの息子は無事だ。きれいな目をした、素直な良い子だったよ
ハワルの事をもっと伝えたい所だが、後に取っておこう
ジズの隣に立つ。ケレイを一時借り受け
炎の籠手を構え、サ・タの前に立ち塞がる
一緒に相棒を守ろうぜ、ケレイ

ジズが祈る間【ディフェンス】
盾となり、亡骸もサ・タの手も、強い意思で払い除け燃やす
ハワルの樹が繁るまで…ニトがそれを目にするまで
サ・タに邪魔はさせねえ

好機が巡れば
ケレイと息を合わせ生命の炎を燃え上がらせ、渾身の一撃を叩き込む
ジズやハワルの目と同じ、太陽色の炎で蛇を灼き尽くそう
目ぇ覚ませニト、お前さんの太陽がここに居んだからよ…!
最後はジズに任せる
悪夢を終わらせてやれるのは、お前さんだけだ

…ニト。ジズの事は、心配せんでくれ
お前さん程上手くは出来ねえかも知れんが、おれが必ず支えてみせる
大切なものの記憶は枷じゃなく、糧だ
時間はかかるかも知れんが…いつか必ず、前に進めるようになるさ
そう、誰にでもなく

全て終わったら、手を差し出そう
帰ろうぜ、ジズ
…最後に小さな奇跡を願いながら


クーガ・ゾハル
ニトは、自分のはんぶんとひきかえに
えらんで、生かした
おまえがやってるのは、うばうだけだ
……ばかだな、おまえ
そんなもの、あっという間じゃないか
生きていたら、ずっとあったかいんだぞ

どんなに欲しくても
さわっちゃいけないものがあるって知らないのか
だれかのだいじなもの、っていうのは
そういうものだ
ここで教えてやるから
短いあいだでもいい、おぼえておけ

ちょっとだけ、手にのこる熱
あ、そうだ――ハワルの手だ
この熱もいっしょにのせて
短剣も、亡者たちも全部つらぬいて、もやして
ジズの道をあけながら
こんどはサ・タの腹に風穴、あけてやる
きられたって、止まったりはしない
ジズにあやまれもしないなら
せめてたくさん、後悔しろ

とけるくらい、空気がゆれるくらい、赫々もやして
シンキロウってやつは、とおくが近くになるんだろう

カミサマって、ほんとにいるんだっけ
ジズたち家族、みんな、ずっとたえてたんだ
これがさいごのキカイなら
もし、あいつらが、ほんの一瞬だけでもって
――おれが望んでるだけだけじゃ、だめかな


佐野・埜之子
えい。
(伸ばされた手にペンティングナイフを刺す)
良う分からんけど、地獄には自分で行くし、自分で行かんと意味が無いよってに。案内は要らへんえ。

後な、順番間違うとるん。
子供が欲しいんやったら、先ず結婚相手探さんと。
何や皮に篭る位に人見知り見たいやし、大変やろけど……頑張り?
ジズとニトはな、ちゃんと頑張ったからハワルこさえれたん。アンタも無精したらあかんよ?
(幼児に諭す見たいな物言い。別に煽っている訳ではなく100%素)

『内の腑より現れるならば色は赤、笑い声もまた赤いが道理などと夢心におもいぬ』
(血を絵具にペンティングナイフで描画)

『一筆嘲笑、血濡れ倩兮女』
(パラドクス発動。真っ赤な女がケラケラと笑う。対象にしか聞こえない指向性の大音量かつ耳障りな大笑。音波攻撃としてはダメージに欠け、代わりに心と集中を乱す不快とストレスを与える事に只管特化した描画妖怪)



……
(ニトの指輪を外したジズの言葉に眉根を寄せるけど、何も言わない。ジズの選択はジズのもの。ゼキの心もゼキのもの)
(言える事等、何も無いのだ)


ルーシド・アスィーム
アドリブ、連携歓迎
……うん、ハワルくんはきっと大丈夫。彼は優しくて、強い子ですね
それはジズさんのお子さんであり──旦那様に愛され育ったから


舞い紡ぐは【ネフェルトゥムの曙光】
悪しき者にのみ罰を下す神聖なる焔、その力にて蛇のみを焼き尽くす
異教での蛇は邪悪の象徴であるのだとか。サ・タ、まるでお前そのものの様ですね

併せて旦那様へのお声掛けを
……少しだけ、ニトさんのお気持ちが分かる気がします
僕はかつて、神官として愛する者達の再生を願い──遺骸の腹を割きました

あの感覚は、自身をおぞましい怪物だと責める気持ちは忘れる事はない
ニトさん、貴方もきっとそうなのでしょう
ああした事は正しかったか、救う手はなかったのか問い続けてしまう

それは生涯付き纏う影
愛し合った日々が輝くからこそ、暗さを胸に落とす
でも、それでも。確かに思い合った日々は消えない。やがて貴方の胸でとこしえに咲き続ける花となるでしょう

……指輪という形がなくても、それは変わらない

せめて親子の為に祈りましょう
夫に光差す日が来る事を
母と子が、一目会える事を


瀬良・朔也
ジズさんの旦那さんを取り戻しに行くで!
と、離れる前にハワルに内緒話

俺がええって言うまで、ええ子に出来るか?

バルカン=バルクに茜チャンを乗せてジズさんの元へ
サイドカーは戦いの場の手前に置いて布を被せ、傍にシオンを待機させる
しっかり守るんやで

バルクで縦横無尽に走り回りサイドポケットを解放してドローンを放出
サ・タの顔周りに殺到させて、気を逸らせ、ニトさんからサ・タを引き離す隙を作るんや

反撃の幻聴は何のその
生憎、これからの人生の方が楽しみなんでな。よお行かんわ!
恋人からのネックレスをぎゅっと握って耐える

これはジズさんの戦いで、俺らは助っ人
サ・タに引導を渡すんはジズさんやし、ニトさんを最初に抱きしめるんはジズさん
当然あの子も!

連れて来たんは俺やから、狙われれば全力で守る
心配はなさそうやけど、念には念を

全部終わって頃合いを見て「ええよ!」と大声で呼ぶ
サイドカーから出てきてシオンと共に駆けてくるハワル

ハワルも頑張ったんや、抱きしめたって!
それに、この温かさがきっと、これからの糧になる

3人にとっての、な


風見・茜
ジズの旦那さんごと殴っちゃうことになるのか?これ。
まあ強いジズが選んだ人なら耐えられる……よね?信じてるぞ。

なになに朔也、サイドカーに必殺兵器でも――おっ。
察するかもしれないし察しないかもしれない。とにかく私は戦闘準備に集中!
よし、暴力の時間だ~ッ!

朔也の運転するバルクの後ろに乗せてもらって突撃!
フライトドローンが放たれたのを合図に、大声でサ・タを威圧しながら飛び出すぞ。
君!コミュニケーションの取り方ミスっちゃった感じ?
私みたいなのが言うのもアレだけどさ!
派手な動きで気を引き、鉈を高くから振り下ろし肩なり腕の一本なり狙っていこう!

いでで!私なんか解剖したってほぼ鉄と配線しか出ないぞ!
痛いもんは痛いが一発ブチ込めたら十分!
ふん!今の君に臓物を愛でる余裕なんてあるかい?

成り行きを静かに見守り、私は彼女の選択を尊重する。
……ジズは死して尚、その後の始末まできっちりつけたんだ。
もう人生二回分のデカい働きはしただろう。
同じディアボロスとして、友達として。私がジズを誇らしく思う気持ちは変わらないよ!


ディアナ・レーヴェ
…良い子ね。お利口さんだわ。……ああ、本当にジズに似てる。

これまで蛇が殺してきた女達が地中から湧き上がる。
拘束しようとする両手首を、私は強引に掴み取って引っ張り上げた。無惨な亡骸を反対に抱きしめ返す。

…可哀想に。臓物がどうとか、くだらない理由で命を終わらせられて――。
でも。
頑張ったわね。大丈夫。あなたは綺麗よ。えらいわ!
人生を戦い抜いた事実を同じ女として称賛してから、優しく押しのけ拘束を抜けましょう。
私の中身?見せないわよ変態っ!

ジズの死に美しさを感じたの?
だとしたら――
そこには、愛しい子のため自分の命を犠牲にする覚悟があった。
守り抜いた生命から溢れる可能性の力があった。
そんな価値ある彼女の未来を喪失する、その力の大きさがあった。

え?そういうの見ないで「臓物」だけ?
目が曇ってるってもんじゃないでしょう!


さようなら。
いつかニトとハワルが、悲しみよりも誇りでもってジズの死を語れる未来を手にする為に。


(指輪を外す様に少し目を見開き、でも静かに見ている。大丈夫。道が別れても、家族は繋がっている)


ハーリス・アルアビド
ハワルさんは優しく聡明なお子でしたね。ニトさんが大切にお育てになられたのでしょう。
私にはできなかったことです。私ではそう在れなかった…こうしてジズさんの大切な方々を守れるならば、多少は慰めになるでしょうか。

豊穣の神にして軍神たるセベクよ、お力添えを。この先を生きる人々を守るため、恐るべき牙をお授け下さい。

より強く鋭く地を駆けるために両足を獣の足へと【肉体改造】し【残像】を生み出す速度に【忍び足】を組み込むことでこちらの動きと間合いを読ませぬよう立ち回りながら仲間が攻撃しやすいように注意を引き付けます。
繰り出される亡者の動きを【未来予測】で先読みしながら致命の一撃と足が止まるような攻撃のみを避けるのであれば、一秒は充分な時間です。

ジズさんの攻撃準備が終わる頃に【残像】に敵を誘導し【神速反応】を用いて敵の死角に回り込み【セベクへの嘆願】を叩き込みます。

ニトさんとハワルさんの今があるのはジズさんの想いがあったからこそ。どうかこの先もそうでありますように。


サアシャ・マルガリタ
ジズがここに残れない以上、
両親ともいなくなっちゃったらさみしいですからね
ジズのお子様のためにも、
お父さんは返していただきますですよう!

パラドクスで敵を足止めして、皆が攻撃できるよう隙を作るです
「行かないでください」って言葉に
ハワルの分まで気持ちを込めましょう……なんて、おこがましいですかね?
お父さん、取り残される悲しさはご存じでしょう?
ハワルの悲しみが増えないよう
どうぞ一緒にいてあげてくださいです

おや、粋な計らい……って言って良いんでしょーか
ジズの姿を自分の母に重ねながら
ハワルがちゃんと……お母さんにお別れを言えますようにーです



「よっしゃ、ジズさんの旦那さんを取り戻しに行くで!」
 遠くに聞こえる音と怒号が、開戦の合図を仲間たちに知らせる。
 瀬良・朔也(オオサカ製自動車整備士・g11284)は高らかに声を上げ、バイクに跨る……その前に。
 再びハワルの前に屈んで、諭すように声をかけた。
「俺がええって言うまで、ええ子に出来るか?」
 ハワルの瞳には、未だ戸惑いの――その理由は、当初とはかなり違っているようだが――色が浮かんでいたが、それでも、こくりと頷いた。
 自分に対して、とことんまで心を砕いてくれた人たちの言うことで、望みだ。聡い少年は、幼いながらにそれを心で理解していた。
「……良い子ね。お利口さんだわ」
 声が震えそうになるのを抑えて、ディアナ・レーヴェ(銀弾全弾雨霰・g05579)は微笑んだ。
 揺らいでいても、琥珀の瞳は深い黄金で、太陽のようにキラキラと輝いている。
(「……ああ、本当にジズに似てる」)
 それを改めて実感する。
 面影が重なる。纏う空気に安らぎすら憶える。
 愛しいあの子のことを想った。ジズだってきっと同じだ、ならば二度と奪わせない。
「ハワルさんは優しく聡明なお子でしたね。ニトさんが大切にお育てになられたのでしょう」
「……うん、ハワルくんはきっと大丈夫。彼は優しくて、強い子ですね」
 少し離れたところから見守っていた、ハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)とルーシド・アスィーム(轍つ祈星・g01854)が、共に頷く。
(「そう、それはジズさんのお子さんであり──旦那様に愛され育ったから」)
 ルーシドは思う。ハワルは確かに、ニトとジズのふたりから、その心を受け継いでいるのだろうと。
 そして、ふたりの惜しみない愛情を受けて、ここまで育ってきたのだろう。
 たとえその片割れが、遠い世界に行ってしまっても。
 それでも、その愛はきっと伝わっていたと信じたい。
 一方で、ハーリスの微笑みは少し苦かった。
(「私にはできなかったことです。私ではそう在れなかった……」)
 先程まではハワルの救助と人々の避難で慌ただしかったが、少し落ち着いてみれば、ハーリス自身も己の過去を一層深く思い返すこととなった。
 苦い記憶だ。敬愛ゆえに心は張り裂けんばかりに痛み、狂おしいほどに悶えそうになる。
 だが、その痛みは今は押し留めるしかない。
(「こうしてジズさんの大切な方々を守れるならば、多少は慰めになるでしょうか」)
 過去は……少なくとも今は、変えられないけれど。
 繰り返さないことなら、きっと出来るはずだと。
「しっかり守るんやで、シオン。さ、茜チャン行こか!」
「なになに朔也、サイドカーに必殺兵器でも――おっ」
 布を被せたサイドカーと、シオンを戦いの場の手前に配置した朔也。
 彼が呼ぶのに、風見・茜(廃品回収承ります・g10800)はそのサイドカーに視線を向け、何か察したような雰囲気。
 とにもかくにもこれから最終決戦だ。茜は準備に集中する。
(「……ところでもしかして、ジズの旦那さんごと殴っちゃうことになるのか? これ」)
 なんて一瞬、疑問が浮かんだりもしたが。
(「まあ、強いジズが選んだ人なら耐えられる……よね? 信じてるぞ」)
 ニトを信じよう、と決めた。
 最後には、サ・タの侵略を跳ねのけて、家族の元に彼自身が返ってくるのだと。
 エンジンが唸る。バイクが走り出す。
 そして全てが動き出した。


「待たせた、ジズ」
 一度は振り上げられた黒曜の鈍い光が、力なく落ちた刹那の後。
 ゼキ・レヴニ(Re-Lighter・g04279)がいち早く、戦場へと舞い戻ってきた。
「お前さんの息子は無事だ。きれいな目をした、素直な良い子だったよ」
 そう伝えれば、ジズ・ユルドゥルム(砂上の轍・g02140)は一瞬だけ背後を、そこにいるゼキを顧みた。
 刹那、彼女は安堵したような表情を見せたが、すぐに面持ちを引き締め、視線を戻すと再びサ・タを睨めつけた。
(「ハワルの事をもっと伝えたい所だが……」)
 それは後に取っておこう、とゼキは決めた。
 積もる話になりそうだし、今、ジズの精神は研ぎ澄まされている。
 サ・タを倒し、肩の力を抜いてからでも遅くはないはずだ。
 そして、遅くはない……それは、もうひとつ。
「ジズ様、遅参をお詫び致します」
 新たに停車したパラドクス・トレイン。
 降りてきたのはエイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)だった。
 ……尤も、出来ることなら最初から参戦したかったというのが本音だが。
 恭しく会釈と共に胸に手を当て、彼女は礼儀正しく深謝の意を示す。
「リグ・ヴェーダにて、数多の人々の命が懸かった作戦が相次いだゆえ……どうかお許し下さい」
「いや、謝らないでくれ。来てくれて嬉しいよ」
 ジズがそう告げれば、エイレーネは少し微笑んだ。
 だが、やはり彼女もまた、きりと表情を引き締めて。
「緒戦に加わる機こそ逸しましたが、あなたの宿縁との対峙もまた、わたしにとっては何としても果たさねばならぬ戦です」
 携え、そして構えるは神護の長槍、神護の輝盾。
 曇りなき神威の輝きで、友の道を照らすために。
「今は戦線を進めるためではなく……ただ、蹂躙戦記イスカンダルで幾度も並び立った戦友と、そのご家族のためだけに槍を振るいましょう」
「サアシャたちも! きましたよう! えいえいお!」
「!」
 朗らかに上げられた声は、紛れもなくサアシャ・マルガリタ(えいえいお!・g05223)のもの。
 ジズにはいつもの笑顔を見せて、けれどその向こうに見えるサ・タにはむ、と彼女なりに精いっぱいの睨みをきかせ。
(「ジズがここに残れない以上、両親ともいなくなっちゃったらさみしいですからね」)
 ハワルの胸中は如何ばかりか、それでもサアシャには少しはわかる気がするから。
 だからこの戦いは、ジズのため、でもあるし、そして。
「ジズのお子様のためにも、お父さんは返していただきますですよう!」
 他の仲間たちも、それぞれに急ぎ集ってくる。
 よき仲間に恵まれた、自分はなんと果報者なのだとジズは噛み締めながら。
「ニト、聞こえるか?」
 サ・タに言うべきことは言った。
 だから、今語るのはニトにだけにのみ。
「もう少しだけ頑張ってくれ。おまえに取り憑いた悪い蛇を一緒にやっつけよう」
 彼の妻であった自分の、最後の役目だ。
 それでも……いや、最後だからこそ、全力で。
「させると……思っているの」
 まだやれる、と言わんばかりにふらり、立ち上がるサ・タ。
 事実、サ・タはジズの渾身の一撃を、痛烈な皮肉と共にモロに喰らった形となったが、未だ瀕死というわけではないようだ。
 だが、問題はない。ジズも、仲間たちも、サ・タが倒れるまで……いや。
 ニトを取り戻すまで、戦い抜く覚悟は既に完了している!
「一緒に相棒を守ろうぜ、ケレイ」
 ジズの前に、サ・タから遮るように立ち塞がったのは、炎の籠手を構えたゼキと、太陽とも見紛う輝きを放つ、翼持つジン。
 先程までは、相棒と共に在ったもの。ゼキは相棒を、ケレイは主を守るべく、並び立つ。
 その背後。ジズは地に膝を着き、深く、深く祈った。
 種は芽吹く。少しずつ、着実に天へと伸びていく。
「私達の子が、無事に産まれて、元気に育ちますように」
 生きたいと願っていた。その己を否定はしない。
 けれど、根っこにあったのはその、ただ母として、純なる願い。
「サ・タに邪魔はさせねえ。来るなら来い」
 祈りを妨げる真似を、許しはしない。
 盾となり、蛇の毒牙も、亡者の束縛も、強固なるその意思を燃やして、全て灼き尽くすほどに拒む。
(「ハワルの樹が繁るまで……ニトがそれを目にするまで」)
 サ・タがひとつ舌打ちする。
 ニトならば、絶対にしないであろう振る舞いだ。ジズだけでなく、ここに集った全員が、彼の深くを知らずとも、そうとわかる。
「男よりも、女の人の中身の方が好きなんだけど。この際、贅沢は言ってられないね。全員纏めて……」
「ニト」
 ジズは穏やかに語りかける。
 往生際悪い死の蛇など今は目もくれず。
「大丈夫だよ、ニト。私達の願いは叶う。これ以上ないほどに……」
 ジズは、それを確信している。


「豊穣の神にして軍神たるセベクよ、お力添えを。この先を生きる人々を守るため、恐るべき牙をお授け下さい」
 ハーリスもまた、切に祈った。かつての己を乗り越え、仲間の望みを叶えるための力をと。
 もっと速度を。その脚力は獣の如く、影も音も置き去りにするほどに。
「敵の動きを見極めるのに、一秒は十分な時間です」
 全てはジズと、彼女を助けるために集った仲間たちのために。
「……なに、それ。そんなんで僕を惑わせようと、……ッ!」
 ハーリスの動きに、サ・タが気を取られた瞬間を、ルーシドは逃さなかった。
「原初より分かたれし天なる華よ、今綻びて焔と咲け。悪しき者にのみ罰を下す神聖なる焔、その力にて蛇のみを焼き尽くす」
「ぐ……ッ!」
 劫火は睡蓮の花開く如く、広がり、舞い上がり、太陽の光と熱で燃え上がる。
 邪悪のみを焼き払い、清らかなる存在を、これ以上は傷つけぬまま、すくい上げるために。
「異教での蛇は邪悪の象徴であるのだとか。サ・タ、まるでお前そのものの様ですね」
「きみたちもうるさいよ……!」
「そうそう、騒音でご迷惑おかけしとりますけども!」
「!?」
 バイクの駆動音。
 朔也のバルカン=バルクは砂地をものともせずに駆け、縦横無尽に走り回る。
 そして騒音ばかりか、それぞれに色鮮やかな光を纏った群蜂のドローンが、サ・タ目掛けて殺到する!
「『ニトさんの』安全第一でやっとりますんで、死の蛇さんにはご協力お願いしますよって!」
「く、この……!」
「今や茜チャン!」
「よし、暴力の時間だ~ッ!」
 サ・タの顔周りに殺到したドローンが注意を引く間、そのまま朔也はサ・タの正面、やや距離を保ったまま急ブレーキをかけた。
 その勢いに乗じて、茜は威圧感を与えるほどの大声を張り上げて、バイクから跳び上がって突撃!
「は……!?」
「君! コミュニケーションの取り方ミスっちゃった感じ? 私みたいなのが言うのもアレだけどさ!」
 サ・タに反論する隙も与えず、敢えて派手に大きく身を捻って注意を引く。
 そして、高所から落下の勢いつけて振り下ろす鉈の一撃で、その肩を両断する勢いで裂く!
(「ジズの旦那さんが心配にならんでもないけど、腕の一本なり狙う気持ちでやらないとね!」)
 そうでなければ、そもそもニトは取り戻せない。
 だから、ここで変に遠慮はせずに全力で行く!
 だがもちろん、サ・タも黙ってやられてはいなかった。
「うるさい、うるさいよ、揃いも揃って!!」
「!!」
 邪悪を具現化するかの如く、深く昏く濃い霧が立ち込める。
 霧に乗じて、亡者が蠢く。毒蛇が、その存在を主張する噴気音を上げる。
 手、手、手。
 無数の夥しい手が、殺到する。
 だが海・ほろぶ(オルタナティブ・g04272)は、目もくれなかった。どこまでも濃い霧の、しかし確かにその奥にいるのであろう、サ・タの気配だけをじっと睨みつけていた。
「お生憎様、願い下げだよ」
 連れていってあげる、と蛇は甘く囁くのを、ほろぶは容易く突っぱねた。
 迷いなどなかった。そんなものは、彼女にとって誘惑でも、なんでもなかった。
「……『私』は、生きて生まれて来たかったんだから」
 この身はなぜ、死んでいる?
 なぜ、死ななければならなかった、死したまま生きねばならなかったのか。
 ずっと己に、呪詛のように問い続けてきたその胸中を踏み躙られた気がした。
 そんな手を、取れるわけがなかった。
「売り込む相手を間違えたんじゃない?」
 自分は、その誘いには絶対に屈しない。
 強がりではない。事実、ほろぶが求めているものは、死の名を冠するサ・タには決して与えられないのだから。
「他の何と抱き合わせにされたって、永遠の眠りは無価値に過ぎる」
「せやで、俺かて同じや」
 朔也もまた、蛇の甘言を聞いた。
 意志を強く持ってなお、心を揺さぶりかねない誘いだった。だが、それでも彼が耐えられているのは、置いて逝けないと想う存在がいるから。
 彼が握っていたのは、清い雪に似て透き通る水晶のペンダント。愛する者が、己の耳を飾るそれと揃いでと贈ってくれたもの。
 幸運を、と込められた願いが、無事で帰れるよう、護ってくれている気がした。
「生憎、これからの人生の方が楽しみなんでな。よお行かんわ!」
 その存在を強く感じる。それを脳裏に繋ぎ止めて、耐える!
「いでで! 私なんか解剖したってほぼ鉄と配線しか出ないぞ!」
 一方で、物理的に亡者の手に絡め取られた茜は身を引きちぎられんばかりに四肢を引っ張られていた。
 だが、迫る黒曜の刃は急所を外すようにして、護りの固い部分で受けた。
 咄嗟の判断もそうだが、サ・タの方が憔悴しているのも感じ取れる。
「ふん! 今の君に臓物を愛でる余裕なんてあるかい?」
 茜の言う通り、サ・タにもう余裕はなさそうだった。
「ジズ様ほどの名誉ある戦士が愛した人は、その魂までもが輝くばかりに美しかったのでしょう」
 だが、今は違う。
 その輝きは、邪悪に覆われ隠されているとエイレーネも確信する。
 ならばこちらも、闇を払うほどの光で以て、隠された光を取り戻すのだ。
 神槍を掲げ、神盾を構え、エイレーネは高らかに声を上げる!
「下劣なる詐称者よ、簒奪せし座より去りなさい。あなたの魂には彼の身体は相応しくありません!」
 高潔なる輝きは、亡者を退けるばかりか霧すら晴らしていくかのようだった。
 霧にその姿を呑まれていた仲間たちにも、勇気と力が湧いてくる。
「えい」
「ッ!?」
 淡々と、しかし正確無比にペンティングナイフを伸ばされた手に突き刺す者がいた。
 佐野・埜之子(地獄未満のエチュード・g00298)だ。少なくとも彼女は、誘いの言葉に微塵も魅力を感じていないようだった。
「良う分からんけど、地獄には自分で行くし、自分で行かんと意味が無いよってに。案内は要らへんえ」
 話は終わり、と言わんばかりにナイフを引き抜き、それだけ告げる埜之子。
 こういうのは少しでも揺らいだ素振りを見せると、脈があると相手がつけ上がるのだ。希望は一切持たせないに限る。
 サ・タはともかく……本来、この理不尽に奪われ、そして今、眠りをも妨げられている亡者……女性たちに、罪はない。
 ディアナを拘束しようと、地中から湧き出る女の手。その両手首を、強引に掴み取って引っ張り上げた。
 あまりに無惨な亡骸だった。元がどんな女性だったのか、その惨たらしい姿からは想像もつかない。
 それでもディアナは、その女性を反対に抱き締め返した。
「……可哀想に。臓物がどうとか、くだらない理由で命を終わらせられて――でも」
 ディアナは笑った。
 冷たい肌に、優しい熱を与える陽だまりのように。
「頑張ったわね。大丈夫。あなたは綺麗よ。えらいわ!」
 人生を戦い抜いた事実へと、同じ女として心からの称賛を。
 亡骸は何も語らない。それでも、自然と拘束は緩んだ。それをゆっくり、横たえるように押しのけて。
「私の中身? 見せないわよ変態っ!」
 晴れつつある霧の先にいるサ・タへと拒絶を突き付けて。
「何回でも言うぞ。貴様は憐れな奴だ、サ・タ」
 最早誰も、サ・タの誘いに乗ることもなく、その中身を奴にさらすこともない。
 蛇の魔の手は、ジズに届かなかった。ゼキが、ケレイが守護してくれているのだと知っていた。
 それでも声は聞こえていた。一緒に行こうと、ニトとジズとして。
 だが、それは最初から無理な相談なのだ。
「あの光景にすっかり灼かれてしまったのに、自分が何に灼かれたのかも分かっていない。貴様には永遠に理解できんだろう」
「くどいよ……!」
 サ・タは知らぬ存ぜぬをその素振りで繰り返すが、声の震えがジズの確信を深めるには十分だった。
 だが、ジズがサ・タの手を取る気にすらなれなかった、一番の理由は。
「以前の私なら、貴様の誘いを魅力的だと──これでやっと家に帰れると思っただろうな。だが今は違う」 
 最初から、ただひとつなのだ。
「私の帰るところは、死者の国にはない」
 確固たる拒絶。
 サ・タが明確にたじろいだ。
「なん……なんだよ、本当に、なんなんだよ……! 愛してるなら少しくらい揺らいだって、」
「ニトは、」
 それまで静かに、攻撃に耐え、状況を見守っていた、クーガ・ゾハル(墓守・g05079)が。
 おもむろに、口を開いた。
「自分のはんぶんとひきかえに、えらんで、生かした」
「は、なに……」
「おまえがやってるのは、うばうだけだ」
 ああ、やはり、ジズの言った通り。
 サ・タはどうやら、自分が求めているものも、その真に尊い理由も、根本から理解が出来ていないらしい。
「……ばかだな、おまえ。そんなもの、あっという間じゃないか」
 生命は、容易く失われる。
 その鼓動も、その温もりも、刹那の内に消えていく。
「生きていたら、ずっとあったかいんだぞ」
 心臓が動く。血液が巡る。体温が残る。
 人の温もりを、生命の誕生を愛おしむならば、奪うだけでは叶わないのだ。
「どんなに欲しくても、さわっちゃいけないものがあるって知らないのか」
「ッ、」
 サ・タは、もう何も言葉を発さなかった。
 そんなものではない、と思うのに、反論の言葉が、風にさらわれる砂のように、どこかへ消えて出てこない。そんな様子だった。
「だれかのだいじなもの、っていうのは、そういうものだ」
「後な、順番間違うとるん」
 同じく、先程までほとんど言葉を発していなかった埜之子も、畳みかけるように――本人としては、思ったことを口にしているだけだが――続けた。
「子供が欲しいんやったら、先ず結婚相手探さんと。何や皮に篭る位に人見知り見たいやし、大変やろけど……頑張り?」
「!?」
 まずはそっからよ、と言わんばかりの埜之子に、恐らく今度は頭を殴られたかのような衝撃で、言葉を失うサ・タ。
「ジズとニトはな、ちゃんと頑張ったからハワルこさえれたん。アンタも無精したらあかんよ?」
 幼児に諭すような物言いになっているが、煽っているわけではないのだ。割と本気で素で言っている。彼女はそういう人間だ。
 ただ、サ・タは彼女のそういった人となりを知らないゆえに、そう聞こえてしまうだけで。
「どこまでもコケにしてくれるね、きみたちは……!」
「しっかしまあ、ついでに言うならほんっとに趣味もやり方も最悪」
 怒りと動揺で震えるサ・タに、更に燃料投下していくほろぶ。
 クーガの言葉はまさにその通りだったし、埜之子の悪意なき追撃は痛快ではあった。
 だが、ジズとその家族を苦しめた報いと、ほろぶ自身が先程受けた侮辱と湧き上がる憤怒は、それだけでは溜飲を下げさせてはくれないわけで。
「埜之子さんは頑張れって言うけど、それ女の人に嫌われるよ。いや男の人にもかな」
 本音そのままの悪態と、ついでに悪口も足してサ・タの怒りを分散させる。
 ぶつけた言葉は紛れもない本心ではあったが、怒りの対象を増やして注意を散漫にさせる狙いもほろぶにはあった。
 そして、言いたいことはディアナにもあった。
「ジズの死に美しさを感じたの?」
「な……」
「だとしたら――そこには、愛しい子のため自分の命を犠牲にする覚悟があった」
 母の覚悟とは、だからこそ気高く、美しいのだ。
 ジズはそれを体現して魅せたのだ。ディアナはそう思う。
「守り抜いた生命から溢れる可能性の力があった。そんな価値ある彼女の未来を喪失する、その力の大きさがあった。だから……」
「知った風な口を利かないでよ! 僕には『中身』があればいいんだ、『外側』なんてどうだっていい!」
「そういうの見ないで『臓物』だけ? 目が曇ってるってもんじゃないでしょう!」
 本気で言っているのなら、本当に何もわかっていない。
 わかっていないのだ、この蛇は!
 ならばこの話はおしまい。
「ここで教えてやるから、短いあいだでもいい、おぼえておけ」
 いずれにしても、手出しすべきではない領分にサ・タは手を出した。
 その代償は、払ってもらわなければならない。クーガがいち早く、臨戦態勢を取り直した。
 サ・タは反応が遅れた。構わずクーガは熱砂を蹴った。
「そこ、まっすぐ。いる」
 ほろぶの声が導く。霧の残滓を晴らしながら。
 そのもたらす光は、硝子玉の中瞬く星が頼りで。
 道を照らすには余りに小さいと、彼女は思う。
 それでも、少しでも視界があるなら。
 手指のひとつでも、影だけでも。
 敵の位置を掴む手がかりを探して、報せることは出来ると思うのだ。
 導きの星を、その先にいるサ・タを、正しくクーガは目指している。
(「あ、そうだ――ハワルの手だ」)
 手に残る、ほのかな、しかし確かな熱。
 ハワルの代わりに連れていこう。そう決めた。
(「短剣も、亡者たちも全部つらぬいて、もやして」)
 阻むものを全て蹴散らして。
 その熱の意味を、思い知らせてやるために。
 何よりも、ジズの道をこの熱く渇いた砂の上に拓くために。
「ジズにあやまれもしないなら、せめてたくさん、後悔しろ」
「な、」
 サ・タは動けない。
(「とけるくらい、空気がゆれるくらい、赫々もやして」)
 陽炎を生め、『CODE――角化、穿孔』。
 その腕を熾色の槍へと変えて、熱と共に散々、裂いて奪った者の、腹へと。
 貫き穿ち、風を通す。
 それが、合図だった。
「シンキロウってやつは、とおくが近くになるんだろう」
 己も。
 そして、仲間たちも。
「ただ一人の愛する者に捧げるための我が身を、渡すものですか!」
 纏わりつく亡骸を、全て払いのけたエイレーネが、今一度声を張り上げた。
 唯一の、代わりのいない存在以外に、自分自身を明け渡すことなど出来はしない。
 ジズだってそうだろう。大切な家族を、今まさに奪おうとする存在に、彼女は絶対に屈しない!
「この黄金の聖光こそ、サ・タとしての外殻と内に宿す邪悪な魂を焼き払う威光」
 勝利齎す女神の威光――光の奔流に呑みこんで、悪しき存在は跡形もなく押し流し、消し去ろう。
「こ……の、僕を、どこまでも……!」
 最後の抵抗をと、サ・タが踏みとどまろうとしたその時。
「行かないで下さい!!」
「!?」
 それは、かつて言えなかった言葉。
 サアシャの口から放たれた、その魔法はサ・タを揺らがせるには十分だった。
 ……いや、その足を止めさせたのは、もしかすると。
(「この言葉に、ハワルの分まで気持ちを込めましょう……なんて、おこがましいですかね?」)
 でも、もし、本当にニトが聞いてくれていたのだとしたら。
「お父さん、取り残される悲しさはご存じでしょう?」
 問いかける。
 自分は正しいことをした、それが妻の望みでもあったと、自分に言い聞かせ続けても、罪悪感は消えなかった。
 それは本当に、ジズを愛していたからこそで、ゆえに、後悔も、絶望も、拭い去れずにここまで来たのだ。
 苦しみを、終わりにしなければならない。ただ取り戻すだけでなく。
「ハワルの悲しみが増えないよう、どうぞ一緒にいてあげてくださいです」
 それがジズのためであり、何よりもハワルのためだ。
 サアシャもかつてはそうであったし、それでも叶わなかったから。ハワルには、同じ思いをしてほしくない。
「『内の腑より現れるならば色は赤、笑い声もまた赤いが道理などと夢心におもいぬ』」
 目には目を、歯には歯を。
 言の葉には、言の刃を。
「『一筆嘲笑、血濡れ倩兮女』」
 血が滴る。己のそれをも絵具として、ぎらり埜之子のペインティングナイフが鈍く光る。
 絵は実体を持ち、赤い女はケラケラ、ケラケラと嗤う。
 それは大音量かつ耳障りで、不快極まりない大笑へと、程なくして変わった。
 けれど、耳を塞いで苦しむのはサ・タばかり。他の誰にも聞こえない。ただ、女はサ・タを嗤うのだ。
 ただひたすら、心と集中を乱す不快と精神的苦痛をを与えることに特化した、これこそが描画妖怪なれば。
 そして、そうこうしている間にディアナはサ・タの眼前へと迫っていて。
「さようなら」
 二度と会うこともないだろう。自分も、ジズも。
 そうでなければならない。
(「いつかニトとハワルが、悲しみよりも誇りでもってジズの死を語れる未来を手にする為に」)
 優しく強い、その世界に、悪意の蛇は要らない。
 朔也は一度、背後を見た。
 少し離れたところには、ハワルがいるはずだ。
(「最期の悪あがきで、向こうに向かう……なんて様子は、ないな」)
 念のためにと、敵の動きに変化がないかを朔也は見極めていた。
(「これはジズさんの戦いで、俺らは助っ人。サ・タに引導を渡すんはジズさんやし、ニトさんを最初に抱きしめるんはジズさん。当然あの子も!」)
 だから、最後の最後まで、脅かされることがあってはならない。
 気を抜かず、何かあっても全力で守る。
 そして、もう一人、戦況を見極めながら戦っていたハーリスが。
「今です」
 サ・タの死角へと回り込み、鰐がその顎で獲物を捕らえるが如く、増幅した腕力で捕らえ押さえ込む。
 牙の力を以て、サ・タへと一撃を突き立て、より確固たる楔とする。
「離せ……!」
 サ・タは暴れるが、ハーリスは応えない。
 最後の瞬間に、繋げるために。
「行こう」
 応えて、翼は羽ばたく。
 ゼキの声だった。
「目ぇ覚ませニト、お前さんの太陽がここに居んだからよ……!」
 両腕の黄金が、強く、神々しく燃え上がる。
 太陽は琥珀の色をしている。ジズと、ハワルの瞳が宿す彩と同じで。
「うぐう……ッ」
 ハーリスの押さえもあり、腹部へと黄金は強く熱を以て突き刺さる。
 それでもサ・タは崩れ落ちない。だが、ゼキにとってはそれでよかった。
「悪夢を終わらせてやれるのは、お前さんだけだ」
 彼女しかいない。そう――、
「ジズさん」
 呼びかけ、行って、と伝えたほろぶの、光が映し出すものが。
 どうかジズの背中を押す力になるようにと、願って。
(「あの時私が背を押されたように ディアボロスに願いを託してくれた人達の中に、ジズさんの大切な人が」)
 ハワルが……いる。
 ああ、その存在が、確かにここにいる。
 時間が、世界が分かたれても、消えない想いが確かにある。
「貴様はニトから何一つ奪えんよ」
 祈りの種から芽吹いたアカシアは、仲間たちの優しさという水と、ジズの願いという陽光を、一身に受けて。
 今や、その枝葉を広げて、正しき心の持ち主を、護る。
「!? これ、は……」
 大樹に育った祈りの樹の、生い茂る葉と揺れる花の下。
 今日この時、そこが蛇の墓標となる。
「消え去れ、蛇」
 ニトの姿をした、邪悪の化身が手を伸ばす。
 何かを叫んでいる。その声は、風にかき消され、木の中へと埋もれゆく。
 その全てを糧にして、正しい歴史の大地の上で、大樹はこれからも、高く高く伸びていくのだろう。


「!」
 ずるり、と。
 木の根の隙間から、男が蛇のように這い出てくる。
 だが、それもほんの僅かな間のこと。その纏う空気に最早、悪意はなく。
 柔らかく、穏やかな空気を纏った青年として、彼は……ニトは、そこにいた。
「ジズ」
 その唇が紡いだ名前は、先程までよりずっと、何よりも優しい。
 ジズの表情も、敵を熾烈に照らす灼熱の太陽でなく、柔らかな木漏れ日のそれに変わる。
 けれど、彼女は何も言わず、彼の前に膝を着き。
 そっと、その指から、番の蛇の指輪を外した。
 片割れであったものを、静かに。
「え……?」
「おまえに『取り憑いた蛇』はこれで一匹もいなくなった」
 自由だ。
 もう、自由なんだ。
 言葉よりも眼差しで、ジズは語った。
 ニトは、何か言いかけたようだったが。その眼差しに、察するところがあったのだろう。
「……わかった。……ジズ、今までありがとう。ぼくも、きみもこれで自由だ」
 頷くジズ。
 でも、とニトは続ける。
「ぼくは、きみのことを忘れない」
 それくらいは許してほしい、とニトは零した。
 やはり前髪で目は見えないが、真剣な面差しだった。ジズもそれを拒みはしなかった。
「………………」
 埜之子は何も言わなかったが、ジズの言葉には眉根を寄せた。
 思うところはある。だが、ジズの選択はジズのもの。ゼキの心もゼキのもの。
 言えることなど、何もない。何も、ないのだ。
 ディアナも、指輪を外す様に少し目を見開いたが。
 やはり何も言わず、静かに見ていた。
(「大丈夫。道が別れても、家族は繋がっている」)
 ディアナはそう信じている。恐らくはジズも、そうであろうとも。
「ジズ様……いえ、正しい選択かと存じます」
 エイレーネは、その選択を否定しない。
 ジズが考えて、決めたことだ。そして、ニトもそれを受け入れた。
 あとはふたりの選択と決断が、少しでもよい方へと向かうことを祈り、願い、信じるだけ。
「あなたの愛は、いつまでもお二人と共に在るでしょう」
 ただ、それだけは確かな事実だ。
 なりゆきを静かに見守っていた茜も、エイレーネに頷いた。
「うん、私も彼女の選択を尊重する」
 そして、まっすぐにジズに向き直る。
(「……ジズは死して尚、その後の始末まできっちりつけたんだ。もう人生二回分のデカい働きはしただろう」)
 この先、異なる道を歩き出すニトが、どうなるのかは茜にも、ジズにもわからない。
 けれど、茜はジズが信じたニトという青年を、信じると決めた。
 そう、茜はジズを信頼しているのだ。
「同じディアボロスとして、友達として。私がジズを誇らしく思う気持ちは変わらないよ!」
 そして、ジズではなく、ニトの側に進み出る者もいた。
「……よろしいでしょうか?」
「きみは……ジズの友達?」
 問われて、ルーシドはひとつ頷いた。
「……少しだけ、ニトさんのお気持ちが分かる気がします。僕はかつて、神官として愛する者達の再生を願い──遺骸の腹を割きました」
「!」
 経緯は違えど、その手で愛する者の腹を開き、そして、絶望した。
 好き好んで覚えているわけでもないのに、今でも鮮明に思い出せる。
「あの感覚は、自身をおぞましい怪物だと責める気持ちは忘れる事はない。ニトさん、貴方もきっとそうなのでしょう」
「………………」
「ああした事は正しかったか、救う手はなかったのか問い続けてしまう。それは生涯付き纏う影。愛し合った日々が輝くからこそ、暗さを胸に落とす」
「……そう、だね」
 そうだった。
 ニトも、ルーシドも。
「でも、」
 希望が、全てなくなったわけじゃない。
 それをルーシドは知っている。恐らくは、今のニトも。
「それでも。確かに思い合った日々は消えない。やがて貴方の胸でとこしえに咲き続ける花となるでしょう。……指輪という形がなくても、それは変わらない」
 ニトはただ、静かに頷いた。
 一抹の寂しさのようなものこそ感じ取れたが、やはり彼は、ジズの意志を尊重するつもりのようだ。
 やはり、彼は強い男なのだろう。その心が、どこまでも。
(「せめて親子の為に祈りましょう。夫に光差す日が来る事を、そして母と子が、一目会える事を」)
 ルーシドはそう、願わずにはいられなかった。
 そんな彼に続いてゼキも、少し躊躇いがちに、しかしすぐに意を決して声をかけた。
「……ニト。ジズの事は、心配せんでくれ」
 ニトは、ただゼキを見上げている。
 見えているのかわからないが、彼はその前髪の下の瞳で、ゼキを見つめているのだろうか。
「お前さん程上手くは出来ねえかも知れんが、おれが必ず支えてみせる」
 約束する、と告げて、それから。
「大切なものの記憶は枷じゃなく、糧だ。時間はかかるかも知れんが……いつか必ず、前に進めるようになるさ」
 いつになるかはわからない。
 すぐかも知れないし、何年何十年とかかるかも知れない。
 だが、かつてジズが選んだ男だ。たとえ時間がかかっても、大丈夫だろうとゼキには信じられた。
(「そう、誰にでもなく」)
 ニトは少し黙っていたが、やがて少し微笑んで。
「……ジズのこと、よろしくお願いします。蛇はいなくなっても、大切な家族なんです」
「ああ、もちろんだ」
 その言葉が、ニトの口から出てくるのなら、やはり大丈夫だろう。
 あとは自分が、約束を守るだけだ。
「ニトさんとハワルさんの今があるのは、ジズさんの想いがあったからこそ」
 確かな事実として、その結果がここにある。
 だからハーリスも、ジズの選択を信じ、そして家族のために祈るのだ。
(「どうかこの先も、そうでありますように」)
 その少し離れたところでは、サアシャがその大きな目を瞬かせていた。
「おや、粋な計らい……って言って良いんでしょーか」
 今のジズは、この時代との縁を断ち切ってなお、母であることに変わりはなかった。
 その姿が、サアシャの記憶の中の母と重なる。
 だからこそ、希わずにいられない。
(「ハワルがちゃんと……お母さんにお別れを言えますようにーです」)
 そして、それを願うのは、ひとりだけではなかった。
(「カミサマって、ほんとにいるんだっけ」)
 もし、存在するのなら。
 そしてその存在が、正しいものであるのなら。
(「ジズたち家族、みんな、ずっとたえてたんだ」)
 願ってもいいだろう。
 赦されてもいいだろう。
(「これがさいごのキカイなら、もし、あいつらが、ほんの一瞬だけでもって――おれが望んでるだけだけじゃ、だめかな」)
 ジズが、それを望んでいないのだとしても。
 ……いや、望まないようにと、努めているのだとしても。
 けれど、今、全てが終わった。
 長居は出来ない。
「帰ろうぜ、ジズ」
 ゼキが、ジズに手を差し出す。
 その手を、取った。
「さよなら、ニト。……さよなら、ハワル」
 別れは短く。長くても寂しくなるから、互いのためにも、潔く。
 ああでも、これだけは伝えなければと、ジズは最後に一度振り返り。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
 それだけ、確かに告げれば、ニトは頷いた。
「さよなら、ジズ。どうか元気で……幸せに」
 ジズも、頷き返す。
 そして、今度こそ歩き出す。
「帰ろう、ゼキ。皆と一緒に」
 未練を振り払うように。
 大切に、心の奥に包んでいた願いを、今度こそ飲み込んで。
(「──もし、もしも、叶うなら」)
 飲み込もうと、して。
 それでも、零れかけた、その時。
(「最後に、一度だけでも、あの子のことを……」)

「ええよ!」

 明るい声が響いた。
「朔也さん?」
 ほろぶが視線を向けた先に、朔也と、もうひとつ。
 小さな、影。
「!」
 バイクのサイドカーから、シオンと駆けてくるハワル。
「……あの!」
 その瞳は涙ぐんでいて。
 けれど、ぐっとこらえて、まっすぐに、ジズを見ていた。

「おかあさん、です、か……!」

 奇跡、だろうか。
 願いは、祈りは、聞き届けられたのだろうか。
「い、いや……私は……」
「ハワルも頑張ったんや、抱きしめたって!」
 一瞬の逡巡が生まれたジズの、背中を押すように。
「それに、この温かさがきっと、これからの糧になる」
 ハワルだけではない。
 ジズにも、ニトにも、家族三人にとって。
 全員が、前に進むために。
 だからジズは、その両手を、控えめに広げた。
(「……ああ、」)
 温かい。
 守りたかったものは、確かにここにあった。

 太陽の温もりを知って、約束の木はこの時代を生きていく。
 父という大地に根を張り、母という太陽の温かさを浴びて。
 そして、かつてそこにあった愛は、途切れずにきっと、世代を超えて、続いていく。
 枝葉を茂らせ、花実をつけて、天を目指して伸びながら、変わらずにきっと、そこにある。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【託されし願い】LV1が発生!
【パラドクス通信】がLV4になった!
【隔離眼】LV1が発生!
【完全視界】がLV2になった!
【怪力無双】がLV2になった!
【液体錬成】LV1が発生!
【植物活性】LV1が発生!
【フライトドローン】がLV2になった!
【一刀両断】LV1が発生!
【プラチナチケット】がLV2になった!
【神速反応】LV1が発生!
【未来予測】がLV2になった!
効果2【反撃アップ】がLV4になった!
【ダメージアップ】がLV6になった!
【命中アップ】がLV3になった!
【ダブル】LV1が発生!
【先行率アップ】がLV3になった!
【フィニッシュ】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV3になった!

最終結果:成功

完成日2026年03月08日
宿敵 『死の蛇サ・タ』を撃破!