【天正大戦国奪還戦】織田の姓を持つ者（作者 北瀬沙希）

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リプレイ

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「いよいよ天正大戦国奪還戦です、これに勝利すれば北海道以外の日本国土の帰還が叶います。ならばこそ負けられません」
　この前哨戦にも全力を尽くしましょう！　と意気込む船越・伊予（人間の海戦装姫・g11047）に、エリザベータ・シゲトヴァール（聖イシュトヴァンの剣・g00490）が首肯する。
「私の時代でも列強の一角を担い、最終人類史でもG7の一つに数えられる東亜の強国。それも西側諸国である日本の過半を取り戻す好機を逃す訳にはいかないわ」
　そう口にしながら富士山を見上げるエリザベータと共に、鈍・長巻（ある雨の日の復讐者・g03749）は、富士山の宝永噴火口を目指す天魔武者の大群に視線を向ける。
「日光東照宮が盾で富士山が刀と表現するとは、士気の高さが窺える。だが宝永大噴火砲を撃たせる訳にはいかない」
「そうです。大噴火砲なんて日本の象徴が一つである富士山を穢しての新宿島への攻撃など許せるものではありませんっ！」
　全く、何処かの誰かがいらぬ技術を提供してくれたものだと内心嘆息する長巻に、伊予もイージス艦級海戦装『いよ』を纏いながら同意する。
　一方、文月・雪人（着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850）は、この戦場の何処かにいるであろうジェネラル級天魔武者『織田信忠』を探し、視線を巡らせていた。
「織田信忠といえば、松姫の最期を思い出すが……実際どんな人物であるのだろう」
　雪人の視線の先では、トループス級天魔武者『赤母衣衆・対地攻撃装備』たちが規律正しく動いている。
（「そう言えば以前、伊勢と尾張の国境で遭遇した配下たちも規律正しく行動していたよね」）
　如何なる人物か想像をめぐらしてはみるが、結局のところ、実際に目にしなければ人物像はわからないだろう。
　そう、結論付けた雪人は、軽くかぶりを振りながら為すべきことを口にする。
「だけど先ずは噴火砲を撃たせないために、敵戦力を削る事が重要だ」
「それなら先に行くわね。友軍地上部隊を空爆などさせるものか」
　その雪人の言の葉を聞いたエリザベータもまた、為すべきことをなすために、【飛翔】で空へと飛び上がった。

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　エリザベータは霊峰の稜線や山肌の雲を遮蔽物代わりに敵の視界に入らぬよう飛翔しながら接近し、パラドクスを発動する機を伺う。
　その一方で、長巻はエリザベータに倣って飛翔するかどうか、迷っていた。
　敵自身が飛んでいることに加え、攻撃手段が対地仕様なため、一見すると此方も飛翔するほうが攻撃を避けられるようには見えるが……。
（「それでも、クロノヴェーダの大群を前に飛翔するのはリスクにしかならない……」）
　――【飛翔】中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
　ゆえに、エリザベータのように工夫し接近していても、ひとたび発見されれば集中砲火は免れないだろう。
「任せて下さい！　対空戦闘こそイージス護衛艦の本領です！」
　そんなエリザベータを援護しようと考えたか、あるいは得意分野で先手を取ろうと考えたか、伊予が主砲の62口径127mm単装速射砲一門、機関砲のバルカン・ファランクス2基、そしてメインウェポンのミサイル・セルのMk.41垂直発射システムを起動し、空中の赤母衣衆に狙いをつける。
「今です！『目標補足、オール・ウェポンズ・フリー！　撃てぇぇ！』」
　伊予の射撃命令を合図に、戦装の単層速射砲と２基のバルカン・ファランクスが次々と砲弾と弾丸を吐き出し、Mk.41垂直発射システムから立て続けにミサイルが発射された。
　対地攻撃装備に特化した赤母衣衆も、連携し多方面から地上を走査し伊予の居所を突き止め位置を共有し爆弾を降らせようとするが、イージスシステムで統括された砲弾と弾丸、そしてミサイルは、伊予を狙う赤母衣衆４体を瞬時に識別し迎撃する。
「な……！！」
　効果的に、かつ効率的に急所を攻撃された赤母衣衆は、伊予の居場所をデータリンクで共有しながら墜落した。
「大戦中の戦艦と違い、そう簡単にイージス艦級海戦装を航空攻撃で沈められると思わないでください！」
「伊予、ありがとう。これでエリザベータも少しは飛びやすくなるかな」
　雪人もパラドクスで無数の小型悪魔の群れを式神として召喚し、伊予に突撃しようとする赤母衣衆の集団を襲撃させる。
　空中で式神に群がられた赤母衣衆は、視界を塞がれた挙句、胴や腕にしがみつかれ殴られ、満足に動けない。
「ええい、今度は式神か！」
「召喚主を探せ！」
　赤母衣衆も式神を振り払いつつ、光学、電子、赤外線、音波等、あらゆる手段で地上目標を探査・追跡する複合センサで雪人を探し出し、標的を自動追尾する槍型誘導弾を放つが、雪人も【ガードアップ】の恩恵で結界を張り、弾いた。
　そんな赤母衣衆を見て、長巻は雷雨の機関銃の銃口を向ける。
「富士山頂噴火砲やら宝永大噴火砲やら、あんな代物を実際に撃たせてたまるかよ」
　何としても砲撃から人々を守るとの意志をエネルギーに変えながら、長巻は赤母衣衆に向け弾幕を張るよう一斉射し、更にダメージを重ねる。
　そうして地上の伊予と雪人、そして長巻に赤母衣衆の眼が向いた隙に、エリザベータはシャンデル機動で一気に高度を上げ、赤母衣衆の上後方を取った。
　エリザベータの目に、上下反転した赤母衣衆の姿が飛び込む。
「さあ、そんな重い兵装でドッグファイトの相手が勤まるかしら？」
　エリザベータは偏差射撃の要領で、赤母衣衆の進路上と思しき位置に空対空ダガーを置くように投擲する。
「あそこにもいるぞ！」
　赤母衣衆もエリザベータを狙い、燃料気化弾頭を備えた航空爆弾を投下し、高温・高圧力の衝撃波で吹き飛ばそうとするが、エリザベータは起爆の瞬間に推力ベクトルをずらすよう飛翔しつつ衝撃波に乗って高度を上げた。
　エリザベータが高度を上げるのと同時に、赤母衣衆の進路上に置かれた空対空ダガーが頭を破壊し、機能を停止させる。
「空にいる奴は最優先で撃ち落せ！！」
　僚機を落とされた赤母衣衆の視線が、一斉に飛翔するエリザベータに注がれた。

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　エネルギーの弾幕が空中の赤を揺るがし、悪魔のような式神が槍型誘導弾を逸らしながら赤に群がり落とす。
　そして、イージスシステムで統括された火線が確実に赤を撃ち抜き、赤の進路上に投擲された空対空ダガーが赤き翼を斬り裂き浮力を奪い、墜とす。
　ディアボロス達は地上と空中の両面からパラドクスを間断なく叩き込み、赤母衣衆を１体、また１体と富士の裾野に墜として行くも、残った赤母衣衆たちもデータリンク共有やセンサー走査でディアボロス達の居所を把握し、航空爆弾を投擲し反撃を重ねてゆく。
　そんな赤母衣衆たちの注目を最も集めているのは――飛翔し続けているエリザベータ。
　エリザベータも空対空ナイフを投擲し、赤母衣衆の頭部や翼を破壊し撃墜してゆくも、反撃として降り注ぐ航空爆弾の数は撃墜数を大きく上回っていた。
「エリザベータさん！！」
　伊予がイージスシステムで統括した速射砲と機関砲、ミサイルを確実に叩き込み、雪人が式神に命じ弱っている赤母衣衆にとどめを刺させ、少しでもエリザベータを追う赤母衣衆の数を減らそうとするが、攻撃を重ねても減っているようには見えない。
　――このままでは、エリザベータが集中砲火を浴び、墜落する。
　そう判断した長巻は、機関銃の一斉射で弾幕を張りつつ赤母衣衆を退けると、雪人達に向けて大声を上げた。
「ここが潮時だ。撤退するぞ！！」
「はい！」
「わかったわ」
　伊予もミサイルを空中に発射し、エリザベータを追う赤母衣衆の一部を撃墜しながら後退する。
　エリザベータも十字砲火を警戒し、特に真後ろに注意を払いながら一気に高度を下げ、パラドクストレインに飛び込んだ。
　そして雪人も――ちらりと後方に目をやりながら、パラドクストレインに急ぐ。
（「せめて松姫の純粋な想いを届けるべく、彼女の最期の言葉は伝えたかったけど……信忠は前線に出てこないか」）
　――たとえ復讐相手として恨まれていようとも、想いだけは伝えたい。
　いずれ、その機会が訪れることを願いながら、雪人達ディアボロスはパラドクストレインに乗り、新宿島へ帰還した。

最終結果:成功
完成日	2025年12月13日