地獄変第二幕『呪われた連歌』
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ディアボロスの活躍により、京の都を騒がせていた『数え歌殺人事件』は無事に解決する事が出来ました。
しかし地獄変の事件はまだ終わりではありません。
京の都では『この歌を送られた相手は、3日以内に返歌を作って、別人に送らなければ呪われて死ぬ』という、『呪われた連歌』事件が耳目を集め始めています。
3日以内に返歌を送らなかった場合、或いは、既に、この呪いの歌を送った事がある相手に歌を送ってしまうと、体が腐り落ちて死んでしまうというのです。
歌会などを通じて、呪いの歌を受け取ってしまった被害者に接触し、ディアボロス宛に返歌を送ってもらっいましょう。
ディアボロスが歌の返歌を『事件を起こしているクロノヴェーダ』に送り付けて撃破する事が出来れば、『呪われた連歌』の呪いを打ち破ることが出来るでしょう。
誰にも言えない(作者 魚通河)
#平安鬼妖地獄変
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●
冬が近づいて来ている。
降り出した雨は、街角で遊ぶ子供達を家に帰すには十分な冷たさであった。
「きゃあ、冷たい!」
「今日はもう、帰ろう、帰ろう」
「またね!」
「火起こしのお祭り、皆で行こうね!」
口々に言いあって、家路を急ぐ子供達。
信夫(しのぶ)もまた、皆と別れて小走りに家へ向かう。――お祭りという単語に心弾ませながら。
もうすぐ近所の小さな神社で行われる、火起こしの祭。
冬の初め、これから使う機会の増える火に浄めの儀式を行い、火の事故が起こらないよう願うという儀式らしい。
篝火を囲んで祈った後、近所の者は火災除けのありがたい御札を貰って帰るのだが、もののついでで子供達にはお餅が配られたりもするし、人出を目当てに芸や物売りをする者もいる。
それらももちろん楽しみだが、信夫はあの、冬の澄んだ空に火が立ち上る光景が好きなのだった。
「あっ……」
お祭りのことに夢中で前を見ていなかった。信夫は人にぶつかり、尻餅をつく。
「ああ、大丈夫かい?」
「はい……ごめんなさい」
ぶつかったのは若い男だった。信夫を助け起こした男は、穏やかな声音で言う。
「いいさ。でも、前を見ていないと危ないよ。――何か気がかりでもあるのかな?」
「あの、もうすぐお祭りがあるんです」
問われるままに、信夫は話した。楽しみにしているお祭の話を。
「そうか。それは待ち遠しいね……ところでさ。君にひとつ、歌を送りたいんだ」
「え?」
「もっと世の中が楽しくなる歌だよ」
「ええ……?」
何か不審なものを感じたが、だからと言って急に耳を塞いで走り去るなんてことは、信夫には出来ない。
「かき曇る 時雨に行方 惑ひたり 来し方もまた 遠く霞みぬ」
男の歌を聞いた時、信夫には直感的に事態が理解された。
これは呪いの歌であること。他人に呪いを移していかなければ3日で死ぬこと。
その呪いの連鎖の一番下に、自分が押し込められたこと。
もう、お祭を素直に楽しむことは叶うまいということ。
信夫が立ち竦んでいる間に、男はすたすたと立ち去ってしまっていた。
雨足はなお強く、空はますます暗い。
●
「平安の京で、再び呪いの連歌事件が起こっています」
グランドターミナル構内。宵星・影晃(アストロマグス・アンティーク・g03235)はパラドクストレインからの情報を皆に伝える。
「呪いの歌を受け取った者は、3日以内にまだ呪われたことのない人に呪いの返歌を送らなければ、体が腐って死んでしまいます。
本来、返歌は歌を送ってくれた人に返すものですが、この呪いの歌は別人に送らせることで、呪いを広めていくのです」
「今、呪いを受けている被害者は信夫という少年です。
心優しい子なのでしょう。他人に呪いを移すことも出来ず、誰にも話せず、静かに死を待つばかりです。
彼はもうすぐ始まるお祭の会場で、所在なくしている筈です。そこで上手く説得し、呪いの返歌を受け取って下さい。
ディアボロスが呪いを引き受け、歌を広めた発端である妖怪に返歌を叩きつけることで、呪いの連鎖を断つことが出来ます」
「火起こしの祭は、何ということもない普通のお祭です。催される神社ともども、本来の歴史には存在しないと思われます。
普通に参加してもいいですし、信夫くんと一緒に楽しんだり、芸人として芸を披露したりして楽しみ方を思い出させてあげてもいいでしょう。別に必須の行動ではありませんが……。
信夫くんの説得に関しては、何か信頼できるような要素を見せてあげると安心して呪いを渡してくれると思います。
死や悪意というものにどう向き合うか、自分なりの考え方を話してあげるのもいいのではないでしょうか。
信夫くんは歌を作ったことは無いようですから、作る手伝いをすることでも役立てるでしょう。
返歌については、和歌である必要はありません。
一定の韻律に従って心の中の感興を述べ伝えれば、それで歌とみなされます。一定の韻律というのも、7音や5音を使ってもいいですし、違っても構いません」
「呪いを受け取ったら、後は妖怪に返歌して倒すだけです。
呪いを始めた妖怪、大髑髏は一般人に違和感を与えない能力を使い、歌の師匠として市中の屋敷に住んでいます。
屋敷から移動することはありませんので、夜にでも踏み込んで戦いを挑めば問題ないでしょう。
なお、呪いを受け取らずとも妖怪を倒すことは可能ですが、そうすると呪われた人はそのまま死んでしまいます。
これは最後の手段として下さるようお願い致します」
「私から説明できることは以上です。
――この連歌事件、排斥力を上回るにはまだかかりそうですが、少しずつ解決して参りましょう。
では皆様、どうか御無事で……。」
影晃は一礼して、ディアボロス達の出立を見送るのだった。
●
(「僕はもうじき死ぬんだ」)
そう考えると、全ては色褪せたようだった。どうやってお祭を楽しんでいたのか、もう思い出せない。
(「誰かを呪った方がいいのかな……」)
このまま死んで父母を悲しませるくらいなら、そうすべきなのではないか。だがどうしても、そんなことをする気になれないのだった。
父母なら自分の身代わりになるとさえ言い出しかねない。だから打ち明けるのも躊躇われる。
結局、家族とも友達とも離れ、1人とぼとぼと、信夫は神社の境内を歩いていた。
篝火の準備は進んでいるようだ。もうすぐお祭が始まってしまう。
リプレイ
菅原・小梅
◆行動
我が身が大切なのは一概に悪いことではありませんが
子供に呪いを押し付けると言うのは人として如何なものかと
彼にとっても折角の祭をこの様な悪意で台無しにするのも可哀想ですし
私が連れ回す体で気晴らしをさせ、信も得ましょう
そうですね……お付きの者とはぐれた(撒いた?)
お忍びの若様と言う設定で声を掛けますよ
この様な祭は初めてなのだ
付きの者は一人でふらふらしてはならぬと言ったが
そなたが伴をすれば一人では無いと気づいたのだ
行くぞ、あそこで何やら芸が始まるのだ(ちょっと強引に手を引き)
あちらでは何やら売っているらしいぞ?
・
・
・
少しは気が晴れたか?
私に付き合ってくれた褒美だ
悩み事があるなら隠さずに話してみよ
紀・雪名
全く、呪いの歌だなんて物騒な。
兎も角…まずはお祭ですね。
食べ物も豊富みたいなので、其方のお餅をお汁粉にして貰って堪能し。
現地の方々と言葉を交わしていきます。
密やかに周囲を伺い、呪われた歌の情報を耳にできればいいですが…
祭りであるのでしたら芸、演舞もあると注目を集めやすいですよね。
【演技】により昔見た篝火演舞の見よう見まねを踊る余興をお見せします。
舞の奉納を…と、ひと声かけて了承を頂ければ篝火より
松明を一本引き抜いて舞い始めましょう。火炎使いですので遠慮なく。
静かに雅に、踊り終えて松明をもどして一礼しておきましょう。
少年に顔でも把握して頂ければ、上々。
アドリブや連携など、お任せ致します。
●
(「全く、呪いの歌だなんて物騒な。……兎も角、まずはお祭ですね」)
寒空の下に大きな篝火は焚かれ、暖を求める人々が引き寄せられるようにその周りに集まっていた。
「さあさあ、お祝いのお餅をどうぞ!」
神社の巫女達は声を上げて忙しなく、人々にお餅を配って回る。きゃあきゃあと群がる子供達の後ろに、ぽつぽつと並ぶ大人達。
その中に紀・雪名(鬼をも狩り尽くす鬼・g04376)の姿もあった。
「どうぞ、お兄さん。ちょうど最後のお餅ですよ!」
「それは僥倖。ありがたく頂きましょう」
温かなお餅を手に、雪名はそっと辺りを窺った。同じくお餅を手にした大人達と、役目を終えた巫女は、一息ついて世間話を始めたようだ。
何か情報を得られないかと、雪名はその中へ混じっていく。
「お祭りは盛況のようですね。結構な人出で」
「ええ、本当に。ここらの者はこれくらいしか楽しみが無くてね」
「最近は物騒な噂も多いですから、皆さんが集まって下さってよかったです!」
「物騒な噂、というと?」
雪名が訊ねると、人々は口々に平安京で起こる事件の噂を語ってくれた。それらはディアボロスにとっては目新しい話ではなかったが。
(「呪いの連歌については、まだあまり広まっていないらしいな……」)
雪名は心中で分析する。恐らく、実際に体が腐り落ちた死者が出れば急速に連歌の噂も広まってしまうだろう。今の所、呪いの歌について新しい情報は得られそうにない。
「となれば、後は……」
雪名は世間話をほどほどに切り上げ、芸を行う者達の下へ向かった。
仲間が発動してるプラチナチケットの効果により、あっさりと関係者として迎えられた雪名は、神社の承諾を得て演舞の準備を進める。
(「昔見た、奉納舞の見様見真似ですが……」)
炎使いの業があれば、やれないことはないだろう。炎の舞を。
●
一方、菅原・小梅(紅姫・g00596)は信夫を探しあてていた。
(「我が身が大切なのは一概に悪いこととは言えませんが……子供に呪いを押し付けると言うのは人として如何なものかと」)
呪いを移した男を咎めたくもなるというもの……呪われて塞ぎ込んでいる少年の様子を目の当たりにすれば。
折角の祭を悪意で台無しにされる信夫を哀れみ、何とか連れ回して気晴らしをさせてやろうと、小梅は彼に近づいた。
「これ、そこな者」
「え? 僕?」
小梅はお忍びの若様という設定の演技で話しかける。
「うむ。そなた、私の伴をするがいい。私はこのような祭は初めてなのだ」
「きみ、お父さんやお母さんは?」
「父上や母上はこのような場所にお出でになる筈もない。ここへは付きの者と来たのだ。だが、あまりに口煩いものだから置いてきてしまった」
不満げな表情を作って見せる小梅を、少年はまじまじと見る。これで設定は飲み込めただろう。
「付きの者は1人でふらふらしてはならぬと言ったが、そなたが伴をすれば1人ではないと気づいたのだ。どうだ、よい考えであろう?」
「あの、でも僕は……」
小梅は煮え切らない様子の信夫の手を取り、やや強引に引いていく。
「さあ、行くぞ。もう祭が始まってしまう」
「う、うん……」
小梅は信夫を連れて、祭を巡った。
「あちらではいろいろ売っているようだ、どれを買うのがよい?」
「いつも栗を買うんだ」
「ではそうしよう……うむ、ほくほくして美味しいな?」
「ふふ。そうだね」
なけなしの小銭で買い食いし。
「大きな篝火だな。空まで届きそうだ」
「うん。綺麗でしょ」
「ああ、勇壮で美しい」
小さな子供の背丈ではなおさら大きく感じる篝火を見上げ。
「何やら舞が始まるようだ」
「わあ。どんなのだろう?」
奉納の舞――雪名の火の演舞を見た。
松明を手にした白皙の青年は、静々と厳かに足を運び、雅やかに袖を振って舞う。
手にした炎は不思議な軌跡を描き、この世ならざる気配に、観衆の視線は引き寄せられる。
祭の喧騒もこの間は息を潜め、しんと静まり返った境内に楽の音が響く中、青年は悠然と舞い終えた。
「す、すごい……」
「うむ。このような舞が見れるとは、祭に来た甲斐があったというものだ」
(「少しは、気晴らしになったようですね」)
舞い手への賞賛の声が上がる中、ほう、と溜息をつく信夫はしばし呪いの憂鬱を忘れたようだった。
小梅はその横顔を窺い、そっと頷いた。
●
祭も終わりが近づく頃。人々も帰り始めた境内で、小梅は問うた。
「どうだ、少しは気が晴れたか?」
「え?」
「何か悩み事があって塞ぎ込んでいたのであろう?
私に付き合ってくれた褒美だ。隠さずに話してみよ」
小梅の問いで、信夫は呪いのことを思い出したようだった。
「うん……実は……」
ぽつぽつと、少年は小梅に事情を語る。
勿論、既に知っている話ではあったが、こうして打ち明けてくれるということはある程度の信用は得られたということだろう。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
【ハウスキーパー】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
火撫・穂垂
ねぇ、そこのキミ。
火が陰ってるのが見える。
ボク?ボクは、穂垂。他所の里の、火の祭司、だよ。
そう、火は命。みんなが持ってるもの。魂を種に、血肉を薪に。そして周りから風を受けて燃えるもの。
キミの火は、悪い風に煽られて、消えかかってるように見えるな。
小さな火は、簡単に消えちゃう。
けれど、小さな火でも、寄り集まれば、消えかけたときに薪を分けたり、火を継いだり、いろいろできる。
そう、風当たりの強い場所を、変わってあげることだって。
大丈夫、ボクの火は、消えない。
火を熾し、風を巻き上げ、悪意を還そう。
雨が降っても、風が吹いても。
晒され、灰となったとしても。
その奥底に燻る残り火は、またいずれ火を熾す。
●
「ねぇ、そこのキミ」
「僕ですか?」
「そう。キミの火が陰ってるのが見える」
「僕の火? あの、あなたは……」
「ボク?ボクは、穂垂。他所の里の、火の祭司、だよ」
信夫に話しかけた火撫・穂垂(奉火・g00006)は、何処か掴み所のない雰囲気で続けた。
「火は命。みんなが持ってるもの。魂を種に、血肉を薪に。そして周りから風を受けて燃えるもの。
キミの火は、悪い風に煽られて、消えかかってるように見えるな」
「あっ」
穂垂の語る意味を察したようだ。信夫ははっとする。
「僕の火なんか小さいし、もう……」
「大丈夫」
しょげる少年と目を合わせ、穂垂は滔々と告げる。祭司の託宣を。
「小さな火は、簡単に消えちゃう。けれど、小さな火でも、寄り集まれば、消えかけたときに薪を分けたり、火を継いだり、いろいろできる。
そう、風当たりの強い場所を、変わってあげることだって」
「それって、呪いを……?」
穂垂はこくんと頷いた。
「大丈夫、ボクの火は、消えない。
火を熾し、風を巻き上げ、悪意を還そう。
――ボク以外でもいい。誰かの火を頼ることは、悪いことじゃない」
「そうなのかな……」
信夫は呪いを誰かに引き受けて貰うという選択肢を、検討し始めたようだ。
「キミは火が好きかな?」
「はい。綺麗で、力強いから……」
信夫の視線は祭の大きな篝火に注がれている。穂垂もそちらを見やって続けた。
「あの火が毎年蘇るみたいに、キミの火もまた明るく燃える時が来る。
雨が降っても、風が吹いても。
晒され、灰となったとしても。
その奥底に燻る残り火は、またいずれ火を熾すから」
「は、はい……!」
穂垂への少年の返事は、彼女と話す前よりもいくらか力強かった。
大成功🔵🔵🔵
効果1【託されし願い】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
陳・桂菓
信夫君、君は強いな。
自分の命を天秤に乗せられて、なお他人の命を思いやるなどというのは、誰にでもできるような真似ではない。
優しく、勇敢だ。
だが、今は君が命を散らす必要はないんだ。頼れる者に頼るのは、別に悪いことじゃない。頼れる者……つまり、この私だ。
私に返歌をして、呪いを預けるがいい。
心配はいらない。こう見えて、私もなかなか強いのだ。君の呪いを引き受けたからといって死んでしまうほど、柔ではないよ。
君はまだ幼い。
けれど、今の強い心を忘れずに心身を鍛えていけば、先には多くの人々を守り助けることのできる、素晴らしい大丈夫へと成長できるはずだ。
その時を楽しみにしているよ。
菅原・小梅
◆行動
さて心も解きほぐせたでしょうから
肝心の返歌作りの手伝いを致しましょうか
心配するでない、名うての陰陽師や武芸者がその方のことを気に掛けているのだ
大船に乗ったつもりで預けてみせよ
歌を作ったことが無いならば私も手伝おう
それでも決心が付かぬなら
秘密を打ち明けたそなたにも私の秘密も教えるとしよう
……私は姫ですよ(髪紐を解き小声で耳打ちし微笑む)
基本的な形式は五・七・五・七・七の三一音で韻を踏めればなお良し
季節の言葉を入れ……例えば先程見た火起こしの祭に纏わるものでも良いな
他には返すや戻すを入れれば呪い返しの歌にもなろう
何より大切なのはそなたが明日を生きたいと言う思いを込めること
不恰好でも良いのだ
●
「話は聞かせて貰った。私からもいいかな?」
続いて信夫の前に現れたのは、陳・桂菓(如蚩尤・g02534)。
「信夫君、君は強いな」
「えっ? でも僕は、何もしていないのに……」
真っ直ぐに見つめる桂菓の紫の瞳に、少年は戸惑いながら返事する。
「ああ。君は呪いを自分に留め、誰かに移そうとはしなかった。
自分の命を天秤に乗せられて、なお他人の命を思いやるなどというのは、誰にでも出来るような真似ではない。
それが出来る君は優しく、勇敢だ」
「そ、そうでしょうか……!」
パラドクスの残留効果、士気高揚の作用もあるだろう。
だが何より、面と向かって君は勇敢なのだと伝えられたことで、少年の瞳の中に本当に勇気が湧いてきているのを、桂菓は見て取った。
「だがな、今は君が命を散らす必要はないんだ。頼れる者に頼るのは、別に悪いことじゃない」
「頼れる人?」
「そう……つまり、この私だ」
桂菓は堂々と胸を張り、自身を指差した。
ディアボロスの能力によって、一般人がクマバチの翅や触覚、服装などを疑問に思うことはない。だがそれはそれとして、信夫の目にも桂菓が勇壮な戦士であることは解る。
強さへの憧れを表情に滲ませる少年に向けて、桂菓は続けた。
「私に返歌をして、呪いを預けるがいい。
心配はいらない。こう見えて、私もなかなか強いのだ。君の呪いを引き受けたからといって死んでしまうほど、柔ではないよ」
強さの中に優しさを感じさせる桂菓の言葉。
「うむ。名うての巫女や武芸者がその方のことを気に掛けているのだ。
大船に乗ったつもりで預けてみせよ」
ずっと信夫の隣で話を聞いていた菅原・小梅(紅姫・g00596)も後押しすると、信夫は意を決して頷いた。
「解りました。僕の呪いをお渡しします。……あ、でも」
「どうした?」
「どうしよう。僕、歌なんて作れないんだった……」
「心配するでない、私が手伝おう。作り方が解らないのなら教えてやる」
歌作りを伝授しようという小梅の申し出に対して、信夫は浮かない顔。
「でも、僕には歌なんて無理だよ。君みたいな貴公子だったら教養もあるだろうし、優雅に歌を詠むのも似合うけど……」
「そうか……。ところで、そなたは私に秘密を打ち明けたのだから、そなたにも私の秘密を教えよう」
小梅は髪紐を解くと、信夫にそっと耳打ちをする。
「……私は姫ですよ」
「え、ええっ!?」
驚く少年に、白絹の髪を靡かせ、紅玉の瞳の姫は微笑んだ。
「歌は万人に開かれたもの。身分も性別も関係なく、知識も絶対に必要という訳ではありません。
それに、あなたが始めから上手に歌を作れなくとも、私は少しもおかしいとは思いませんよ」
「う、うん。解った、やってみるよ」
小梅の深紅の瞳に見つめられ、少年の頬にも赤みが差す。これまでにも随分勇気づけられてきた信夫だったが、この一押しで更に歌を作る気にもなったようだ。
「では、教えよう。
基本的な形式は五・七・五・七・七の三一音で、韻を踏めればなお良し。
季節の言葉を入れ……例えば先程見た火起こしの祭に纏わるものでも良いな。
他には返すや戻すを入れれば呪い返しの歌にもなろう」
口調を戻した小梅の講釈を、信夫はうんうんと相槌を打って傾聴する。
「――それから、何より大切なのはそなたが明日を生きたいという思いを込めること。
不恰好でも良いのだ」
そういう小梅の教えに基づいて、信夫がどうにか詠み上げた歌。
「毎年の 冬の祭の 灯し火は また喜びを 身に戻すなり」
「……よし。確かに受け取った」
返歌を受けた桂菓には、呪いのルールが頭の中に流れる感覚と共に、自分の身に呪いが移ったことが感じられた。
「よくできたな」
「ありがとう。君のおかげだよ」
一仕事を終えた小梅は微笑み、信夫は彼女にお礼を述べる。
「信夫君、君はまだ幼い。
けれど、今の強い心を忘れずに心身を鍛えていけば、先には多くの人々を守り助けることのできる、素晴らしい大丈夫へと成長できるはずだ。
その時を楽しみにしているよ」
「は、はい。頑張ります!」
桂菓の言葉を、少年は背筋を伸ばして受け取った。
「皆さん、ありがとうございました。どうかお気をつけて!」
こうして目的を果たしたディアボロス達は境内を後にし、信夫はその後ろ姿に手を振り続けて見送るのだった。
●
「さて――行くとしよう」
夜は更けた。月と星の明かりの中、桂菓は妖怪の住まう屋敷の前に立っていた。
挨拶もなく門を蹴り開け、案内もなく無人の廊下を駆ける。
そうして屋敷の中心、寝殿に辿り着いた桂菓は、それと対面した。
宙に浮かぶ巨大な頭骸骨の妖怪。アヴァタール級クロノヴェーダ・大髑髏に、桂菓は呪いの返歌を叩きつける。
呪いを返された髑髏はケタケタと悪びれもせず笑った。
「無駄なことをするぜ。お前等を殺してまた市中に呪いを撒けばいいだけのこと」
「果たしてそう上手くいくかな?」
桂菓は敵を睨み、武器を構えた。――戦いが始まる。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【士気高揚】LV1が発生!
【プラチナチケット】がLV2になった!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV3になった!
●
妖怪は目を赤くぎらつかせ、ぶんぶんと頭上を飛び回りながら、大声で嘲笑う。
「ヒヒヒ! お前等どうなりたい? 呪詛で惑いながら死ぬか、弾丸で穴だらけになるか、瘴気に身の内から蝕まれるか。
好きな死に方を選ばせてやるよ!」
奴崎・娑婆蔵
●WIZ
なんだァお前さん?
輪入道か、はたまた『がしゃどくろ』の頭蓋か
(こっちもこっちで妖怪みたいな見た目した包帯グルグル巻きの怪人、出陣)
あっし?
あっしは――通りすがりのトンカラトンでさァ
トンカラトン……
トンカラトンと言え……
トン、トン、トンカラトン……(うたう)
・『トンカラ刀』を抜刀、敵の真正面より臨む
・敵の技は近付くだに危ういと踏む
・ならば遠間より斬って落としてくれよう
・青い瘴気の制空権に捉われぬよう距離を保ちながら、振るう剣より【闇刃放出】を伸ばし放ち斬り付ける
・周囲を青い瘴気に囲われたなら、辺り一帯を大きく弧状に薙ぎ、瘴気の流れそれ自体を【両断】――自身や友軍の退避先を即座に切り拓かん
陳・桂菓
「有漏路より 無漏路へ帰る 一休み 雨降らば降れ 風吹かば吹け……だ」
一休宗純は平安から下って室町の人だし、この世界線で生まれ得るのか知れないが。
「まあ、私の心は禅を体現できる境地には程遠いが……それでも、お前ごときが繰り出す弾雨なんぞ恐れるに足りん」
まず【蚩尤超限暴】によって上がった速度をもって青弾丸を回避。
さらに空中にある敵を叩くため【エアライド】を使った連続ジャンプで素速く高さを稼ぎ、渾身の力で朴刀『驪竜』で斬りかかる。
その際、構造上比較的弱いはずの、顎の付け根あたりを狙う。また残留効果【託されし願い】で、信夫の願いの力で斬撃の命中精度を上げる。
「お前ノ企み、呪イ……コこで断チ斬る!」
●
「なんだァお前さん? 輪入道か、はたまた『がしゃどくろ』の頭蓋か……」
大髑髏の外見に、首を傾げるのは全身に包帯を巻いた怪人、奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)。正体を推測された大髑髏は、少し面白そうに返事する。
「なかなか勘がいいじゃねぇか。そういうお前は……」
「あっし?
あっしは――通りすがりのトンカラトンでさァ」
「何?」
聞いたことも無い響き――遠い未来に語られる筈の名前に、大髑髏は問い返した。
良い反応に、娑婆蔵の包帯の下の口が笑っていたかは定かではない。
「トンカラトン。知らざァ歌い聞かせやしょう。
トンカラトンと言え……。トン、トン、トンカラトン……」
そうして、くぐもった歌声を響かせ続ける娑婆蔵に、大髑髏は困惑混じりの怒気を放つ。
「言え、だと? 言えと言われて言う馬鹿がいるかよ! 食らえ!」
青い瘴気を展開。娑婆蔵を押し包もうとするが、瘴気が届く前に娑婆蔵は跳び退って避けている。手には抜き放ったトンカラ刀。
「そうかい。言わねェかい……だったら」
どす黒い殺気が刃筋に宿り、尚も追いすがる瘴気の靄に向けて振るわれる。
「八ツ裂きになって頂きやしょう」
殺人技芸・闇刃放出。伸びる太刀筋は瘴気を両断して娑婆蔵から逸らし――そして靄の向こうにいた大髑髏を過たず斬り裂いた。
「オオオ! 貴様ぁっ!」
驚きと苦痛に叫ぶ大髑髏だが、瘴気による攻勢は止まず、空中にわだかまって襲い来る。
「近寄るのは危ねェな。だが……」
問題は無い。こちらは瘴気を切り払い、更に遠間から敵を斬ることが出来るのだから。
娑婆蔵はトンカラ刀を振るい、自分と味方の為に安全地帯を切り拓き、敵を斬り苛み続けた。
●
時間は交錯する。仲間の戦いと同時に、陳・桂菓(如蚩尤・g02534)の戦いもまた進行していた。
「攻撃を選ばせるとは余裕だな。ならば弾の雨を所望する」
「いいぜ。お前の見た目に合わせて、蜂の巣みてえにしてやるよ」
「有漏路より 無漏路へ帰る 一休み 雨降らば降れ 風吹かば吹け……だ」
桂菓が引用するのは、後の時代に詠まれる筈の一休宗純の歌。妖怪は怪訝な顔をした。
「何だ? その達磨歌は。死ぬ覚悟でも決めたか」
「いいや。私の心は禅を体現できる境地には程遠いが……それでも、お前ごときが繰り出す弾雨なんぞ恐れるに足りんということだ」
「抜かせ!」
怒号と共に、青い弾丸が放たれる。――しかしその時には、桂菓は既にパラドクスを発動していた。
「オオ……オォオォオォ!」
蚩尤超限暴によって呼び覚まされた戦神の力は、桂菓の肉体に限界を超えさせる。
桂菓が高速で駆け抜けた後の空間に、弾丸は虚しく降り注ぎ続けた。
「ちぃ、速過ぎて狙いがつけられん。……が、地べたを這いずる限り怖くねぇ!」
「な、ラ、ば……翔ぶゥ!」
強烈な踏切からの、跳躍。更にエアライドによる空中での連続ジャンプ。大髑髏はせせら笑う。
「馬鹿が! 空中ならば避けられねぇ……何!?」
「アあアッ!」
飛来する桂菓を狙った弾丸は、彼女が突き出した朴刀『驪竜』によって切り裂かれ、防がれる。
更に、この時には大髑髏の周囲は展開した瘴気に閉ざされていたのだが、
「そらよ。行きなァ!」
「おのれ!」
娑婆蔵が遠間から放った一閃が桂菓の前の瘴気を払い、道を作った。
「妖怪……お前ノ企み、呪イ……コこで断チ斬る!」
託されし願いによって浮かび上がるのは、夜も眠らずディアボロスの無事を祈る信夫少年の姿。
その映像を背に、桂菓が放った薙ぎの一撃は、大髑髏の構造上弱い部分、顎の付け根を打ち据えた。
急所への一撃に苦しむ大髑髏は、声にならない叫びと共に尚も弾雨を乱射したが――朴刀に弾かれ、遂に桂菓の身を裂くことはなかった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【狐変身】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
【命中アップ】LV1が発生!
塞河・みやび
なんとも陰険な話なのじゃ~!
対岸に火をつけて火事を楽しむようなヤツなのじゃ。
まあそれもここまでなのじゃー。
なんせ目前まで火の手が迫ってきてしまったのじゃ!
さあ、みやびちゃんファイアをくらうのじゃ!
これは狐火による【火炎使い】アタックなのじゃ~。
幻の炎だけど【オーラ操作】して【浄化】のきらきらオーラを合わせれば、瘴気を祓う力が発揮されるのじゃ!
祭の風景や【託されし願い】とかから【情報収集】した灯火のイメージを投影したりしてみてもカッコよさそうなのじゃ~。
幻の炎だから自分とかを包んでも平気なのじゃ、これで守ったりすることもできるというわけなのじゃ!
でも敵にはツラ~い【精神攻撃】になると思うのじゃ!
●
「まったく、なんとも陰険な話なのじゃ~!
対岸に火をつけて火事を楽しむようなヤツなのじゃ」
やれやれ、というジェスチャーで大髑髏を見上げるのは塞河・みやび(さいかわみやびちゃん・g04329)。
無邪気な彼女の小さな姿を、大きな妖怪は睨みつける。
「ふん。人間どもは俺達の家畜として生かしてやっているんだ。どう恐怖させようと俺達の勝手よ!」
「人のものを勝手に奪い取っておきながら、盗人猛々しいのじゃ~。
しかしまあ、そんな態度もここまでなのじゃ。
……なんせもう、目前まで火の手が迫ってきてしまったのじゃ!」
そう言って、みやびが扇をうち振るえば、忽ち巻き熾るオーラの狐火。
「さあ、みやびちゃんファイアをくらうのじゃ!」
宣言と共に、みやびは幻影の火を巧みに操り、四方から大髑髏を襲わせた。
「そんなものが効くかよ!」
大髑髏も口から大量の瘴気を吐き出し、対抗する。
浄化の力を纏って輝く炎と、青い瘴気は互いに打ち消しあい、勝負はつかぬかに見えたが、両者の間には違いがひとつ。援護してくれる味方の存在だ。
「ウオオ……!」
「これは助かるのじゃ~」
他のディアボロスが放つ剣閃や跳躍攻撃が大髑髏の攻勢を弱め、その隙を狙ってみやびは狐火を妖怪に叩き込む。
「邪魔しやがって!」
「おっと、そうはさせぬのじゃ! 皆を守るあたたか~いイメージよ!」
大髑髏は瘴気を撒き散らして他のディアボロスを沈黙させようとするが、みやびもまた火起こし祭の篝火を模した狐火で味方を包み、守り抜いた。
「ふふ、じわじわと焼かれるのはツラ~いのじゃ?」
「畜生、小賢しい狐がぁ……!」
戦いは終始ディアボロス達の優勢で進み、大髑髏の硬い骨格もみやびの浄化の力で徐々に崩れ落ちていった。
大成功🔵🔵🔵
効果1【照明】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
紀・雪名
(声を聞いた瞬間、顔を歪ませ心底嫌な記憶を呼び起こしていて)
いつまで遊んでいるつもりですか。嗚呼、仲間にではありませんよ
煩い…お前にだよ、大髑髏。瘴気共々さっさと潰れてしまえ。
【結界術】【浄化】にて攻撃を削ぎ
【高速詠唱】【氷雪使い】【誘導弾】にて動きを鈍らせ援護
アイテム、形代【水符】、形代【土符】
パラドクス【魑魅魍魎】により青馬頭、赤牛頭(馬と牛の頭を持つ鬼)の式鬼神出現
赤目の部分を狙うように指示
【不意打ち】狙いで先制取って【ダブル】が入れば同じ場所を追撃
頭が高い、早く潰れてしまえ…
いつかの様に地面に転がる頭が見られたら跡形も残らず潰してやる。
●
「ヒャハハハハ! まだやられるかよぉ!」
ディアボロスの攻勢を受けながらも、大髑髏は苦し紛れか、けたたましく笑う。そこへ。
「……いつまで遊んでいるつもりですか」
氷のように冷たい一言が、笑い声を停止させた。声の主、紀・雪名(鬼をも狩り尽くす鬼・g04376)に注目が集まる。
「嗚呼、皆さんに言ったのではありません。
煩い……お前にだよ、大髑髏」
「何……何だぁ、お前は?」
アヴァタール級は元となったクロノス級のコピーだが別個体であり、この大髑髏は雪名を知らない。だが雪名の声に笑いを止めたのは、何か感じるものがあったのか。
「嗚呼、そうでした。お前は僕の知る大髑髏ではないのでしたね。
ですがその笑い声……心底嫌な記憶を思い出させる。
だから――瘴気共々、さっさと潰れてしまえ」
言うが早いか、雪名の手にした水符・土符が異形の鬼の姿となり、妖怪めがけて飛びかかる。
「訳の解らんことを!」
大髑髏は弾雨の乱射で迎撃。しかし他のディアボロス達の攻撃もまだ続いており、狙いは定まらない。
青弾丸は雪名と式鬼神たちを掠めたが、攻撃を止めさせるには至らなかった。
「あの紅く光る眼を狙いなさい」
弾雨を掻い潜った鬼たちは雪名の指示通り、大髑髏の目に各々の攻撃を叩き込む。
――苦悶の声をあげ、とうとう大髑髏は墜落した。
寝殿から庭へ転がり落ちた大髑髏を、雪名は見下ろした。
「や、やめろぉ……」
「いつか見た光景だ。だがまだ頭が高い……早く潰れてしまえ」
不機嫌に顔を歪めた雪名の冷酷な命令が飛ぶ。鬼たちは容赦なく妖怪を叩き伏せ、地面にめり込ませ――やがて耐えきれなくなった大髑髏は潰れて砕け散ったのだった。
成功🔵🔵🔴
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!