🚊クロノス級の事件に挑め

 クロノス級クロノヴェーダが行っている悪辣な事件を阻止する為、特別なパラドクストレインで過去に遡り、クロノス級と決着をつけます。
 宿敵が引き起こしている事件の一つに介入し、事件を引き起こしているクロノス級クロノヴェーダを撃破して、因縁に決着をつけます。

 クロノス級は、宿敵の性質に沿った事件を引き起こします。
 この事件を完遂させる事で、クロノス級クロノヴェーダは、新たな『アヴァタール級』を生み出し、戦力として基準時間軸に送り届けているようです。

※既に滅びたディヴィジョンのクロノス級について
 ディアボロスウォーなどで、滅びたディヴィジョンのクロノス級は、その事実を知る事が出来ていないようです。
 彼らが送り出した、新たな『アヴァタール級』は、本来の別のディヴィジョンに漂着し、漂着したディヴィジョンの戦力として使われます。

嫉視という怨毒(作者 一条もえる
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#宿縁邂逅  #🚊クロノス級の事件に挑め 


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#🚊クロノス級の事件に挑め


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●『幻想竜域キングアーサー』、とある騎士の城館
「よくやった。お前は私の誇りだ」
 記憶の中にある父の言葉は、アルトゥル・ペンドラゴ(篝火の騎士・g10746)にとって鈍い胸の痛みを思い起こさせるものであった。
「稀代の英雄となる者がいるとすれば、それはお前か」
 そう言って父が肩に手を置くが、アルトゥルの目は父ではなく、扉の陰からこちらに暗い視線を向けてくる兄たちを見ていた。
「兄上」
 アルトゥルが苦しげに声を上げようとしたとき、ふたりの姿はすでに扉の向こうから消えていた。
 事件が起こったのは、それからまもなくのことである。
 アルトゥルの父が開いた宴。近隣の騎士や婦人たちが招かれた宴でのことである。父に仰せつかって賓客をもてなしていたのはアルトゥルであり、ふたりの兄……モルガナとライエンスは、脇に追いやられていた。父自身がはっきりと口にしたわけではないが、誰が見ても後嗣とされている者は明らかであった。
「さぁ、アルトゥル。皆様に酒をお注ぎせよ」
 気が重い。
「アルトゥルさま。お久しゅうございます」
 テーブルを回っていくアルトゥルがその席に近づいたとき、女は顔を上げた。父親に伴われたその女は、父同士の所領が近く年も近いため、何度か顔を合わせたことがあった。まだ少女だと思っていたが……もう社交の場に出て酒を飲んでもよい年になっていたか。
 相手はどう思っているか知らないが、アルトゥル自身は別に彼女に恋焦がれているわけではない。しかし見知った笑顔が心を落ち着けてくれたことは確かで、アルトゥルは、
「さぁ、杯をどうぞ。お注ぎしよう」
 と、女の手にした杯に酒を注いだ。
「あ、ありがとうございます!」
 緊張した女は、葡萄酒で満たされた杯をひと息で乾してしまった。
「これ……!」
 隣で父親がたしなめる。
「はは」
 思わずアルトゥルは笑ってしまった。

 応接に疲れたアルトゥルが屋外に出ていると、先程の女が姿を認めてやってきた。彼女も、宴を中座したらしい。
 しばし話し込んだふたりであったが……。
「う」
 女の顔色が急変した。桃色に染まっていた頬は一気に青白くなり、いやそれすら超えて紫がかったものとなる。視線は定まらず全身の力は抜け、口の端からは泡を吹き始めた。
 アルトゥルは血相を変え、彼女を抱きかかえて駆けていく。
 しかし、宴もまた阿鼻叫喚の場となっていた。女と同じく、アルトゥルから酒を注がれた賓客たちが一様にもがき苦しんでいるのである。
「が……ッ!」
 アルトゥルの腕の中で、ついに女は血を吐いた。それを最後に、ピクリとも動かなくなる。
「ああ……ああああッ!」
「父上! これはアルトゥルめの仕業に違いありません!」
「おのれアルトゥル! 血迷ったか!」
 慟哭するアルトゥルをよそに、モルガナとライエンスが声を張り上げて父に進言している。父もわなわなと震えながら、
「捕らえよ! アルトゥルを捕らえよ!」
 と、喚き散らした。
 冤罪である。
 いくら訴えたところで、聞く耳は持たれなかった。拷問はいつ果てることなく続いたが、女の死に顔が脳裏をよぎり、アルトゥルは耐えた。
 しかし。
「アルトゥル。あれほどの者を殺しておいて口を割らぬとは、つくづく憎らしい奴です」
 モルガナが地下牢に姿を見せた。ライエンスも傍らにいる。
「しかし兄として、これ以上あなたが苦しむのも耐えられません。さぁ、これを飲んで楽になりなさい」
 そのときアルトゥルは悟った。
 この兄だ。この兄が、人々を殺める毒を作り自分に罪を着せたのだと。自分は、これほどまでに兄たちに疎まれていたのだろうか……?
「いや……違う」
 この者たちは、人間ではない。
「ふふ」
 薄笑いを浮かべたモルガナが顎をしゃくると、ライエンスは力任せにアルトゥルの顎をこじ開けた。
「さぁ、味わえ。兄上の渾身の作だ」
 毒が口中に流し込まれ……アルトゥルは絶命した。

 それからどれほど時間が経ったものか。気がついたとき、彼は新宿島にいた。

●『最終人類史』、新宿島
「新宿駅グランドターミナルに現れたパラドクストレインは、特別なもののようですな」
 許・伯隼(人間の無双武人・g03617)が告げたパラドクストレインは、クロノス級が暗躍していた過去の時代に向かうものであった。
「クロノス級の名は、静雪と嵐雪『モルガナ・ライエンス』。騎士の兄弟がクロノヴェーダとなったもののようですな。
 アルトゥル殿、貴殿ならばよくご存知のはず」
 と、伯隼は労るような目を向けた。
「かの者どもは、宴に集まっていた賓客たちに毒酒を盛り、その罪をアルトゥル殿に着せ申した。
 ……いささか記憶と齟齬がござろうか? 左様、多くの者を毒殺することこそモルガナめの目論見。この惨劇をもってディヴィジョンを支配しようとしたのが、かのクロノス級の悪行にござる。殺害されたディアボロスがより強い憎しみを抱けば抱くほどに、新たなアヴァタール級を生み出す力も強まりますからな。
 皆様、なんとしてもこの悪行を食い止め、新たなアヴァタール級が現れることを防がねばなりませぬ」

「アルトゥル殿の父君が開いた宴には、近隣から多くの客が招かれております。
 ……あるいは、後嗣を披露するためのものであったやもしれませぬな」
 ともあれ、町にはぞくぞくと賓客が集まっている。彼らと接触し、親交を深めておくのがよいと、伯隼は言う。
「モルガナどもとの戦いはどうしても、宴のさなかとなりましょう。その際には父君や賓客たちを逃さねばならず、ある程度の信頼を勝ち得ていたほうが容易になるでしょうからな」
 肝心の毒酒であるが。
「酒そのものは、普通のものと何ら変わりはありませぬ。故に、モルガナめはこれに毒を混ぜたのでしょうな。
 酒の置いてある厨房にて自ら混ぜたのか、あるいは料理人に命じて混ぜさせたのでありましょう。
 ……いや、ここでモルガナめを討つのは得策とは言えませぬ。ここで事が破れれば、次に敵がどのような手を打ってくるかわかりませぬゆえ。
 うまく潜り込むなりして、すり替えてしまいましょう。さすれば、モルガナどもに肩透かしを食らわせることができます。
 策を好む者こそ、それが破れたときに隙を見せるもの。その時こそ、この卑劣なるクロノヴェーダを討つときですぞ!」

「ディヴィジョンを取り戻したとはいえ、我々ディアボロスの少なからぬ者が未だ過去に囚われていると言ってもよろしゅうござる。
 アルトゥル殿。なにとぞ、この過去を覆してくだされ」
 そう言って伯隼は、深々と拝した。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【神速反応】
1
周囲が、ディアボロスの反応速度が上昇する世界に変わる。他の行動を行わず集中している間、反応に必要な時間が「効果LVごとに半減」する。
【託されし願い】
1
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【避難勧告】
1
周囲の危険な地域に、赤い光が明滅しサイレンが鳴り響く。範囲内の一般人は、その地域から脱出を始める。効果LVが高い程、避難が素早く完了する。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【プラチナチケット】
2
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【光学迷彩】
1
隠れたディアボロスは発見困難という世界法則を発生させる。隠れたディアボロスが環境に合った迷彩模様で覆われ、発見される確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【モブオーラ】
2
ディアボロスの行動が周囲の耳目を集めないという世界法則を発生させる。注目されたり話しかけられる確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【断末魔動画】
1
原型の残った死体の周囲に、死ぬ直前の「効果LV×1分」に死者が見た情景が動画として表示される世界になる。この映像はディアボロスだけに見える。
【口福の伝道者】
1
周囲が、ディアボロスが食事を摂ると、同じ食事が食器と共に最大「効果LV×400人前」まで出現する世界に変わる。
【パラドクス通信】
2
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【アイテムポケット】
1
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。

効果2

【命中アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV3 / 【ガードアップ】LV2 / 【フィニッシュ】LV3(最大) / 【反撃アップ】LV1 / 【ラストリベンジ】LV1 / 【先行率アップ】LV1 / 【ロストエナジー】LV1

●マスターより

一条もえる
 こんにちは、一条です。
 アルトゥル・ペンドラゴ(篝火の騎士・g10746)さんより、宿縁邂逅のリクエストを頂きました。ありがとうございます!
 さて、問題の敵はアルトゥルさんのふたりの兄から生まれたクロノヴェーダ・静雪と嵐雪『モルガナ・ライエンス』です。もともとアルトゥルさんとは確執があった様子。この敵も、クロノヴェーダ元来の性質に加え、感情を引き継ぐようにアルトゥルさんを嫌悪しているようです。
 このままでは、アルトゥルさんは濡れ衣を着せられた上に殺されてしまいます。急ぎ現地に向かい、事件を解決しましょう。
 必要な選択肢ではありませんが、まず選択肢②において集まってくる賓客たちと接触し、彼らと親交を深めておくのもよいでしょう。事件解決につながるほどの重要な情報は得られませんが、お互いを知っていればあとあと信頼関係が役に立つかもしれません。たとえばアルトゥルさんと顔なじみであるという女性、お名前はなんというのでしょう?
 この行動は「城館へと続く街道」から「城下」までが舞台となります。
 次に選択肢①において、城館に何らかの方法で入り込んで毒酒を入れ替えてしまいましょう。このとき、モルガナとライエンスに気づかれぬ注意が必要です。変装していればパッと見られただけで正体を見破られることはないでしょうが、クロノス級はパラドクストレインの侵入を察知してします。特にアルトゥルさんはご注意を。本来の歴史におけるアルトゥルさんは、うまく現場から離してあげましょう。
 この行動は「城館内部(厨房、大広間など)」となります。
 選択肢③。いよいよ大広間にて宴が始まります。クロノヴェーダどもは事の成り行きを楽しげに見つめているでしょうが、そうはいきません。目論見が破られたと気付いた心の隙を突き、この敵を討ち果たしましょう。

 では、今回も燃えるプレイングをお待ちしています。
 いつも感想、ありがとうございます。一言でも長文でもとても励みになりますので、よろしければぜひ。
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このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


アルトゥル・ペンドラゴ
【奴崎組】(連携・アドリブ歓迎) ※呼び方は『名前+殿』、伏見逸さん(g00248)は『伏見殿』

……元々、あの事件は起こらなければいいと思っていたが……あの時よりも凄惨な状況に追い込まれると聞いては、黙ってはいられない
何が何でも、阻止させてもらう……皆、協力してくれ

とはいえ……そうか、今は髪も切ったしあのころと比べたら印象が異なるかもしれないが、確かに私がそのまま街中にいたら混乱の元か……
では私は路地裏など人目のつかない場所に潜んで、【パラドクス通信】で皆と連絡を取り、得られた情報の整理に徹するとしよう

(路地の隙間から人の通りを眺め)
――ネウィア嬢……
やはりあの時と同様、ランスロー卿と共に宴の席へ参加されるか
……流石にこれは止めようのない事例、介入しては兄上達も違和感を感じることだろう。放置するしか出来ないのがもどかしいが……毒入りの酒をすり替えれば解決することだ

(通りから見える人々の様子を改めて眺め)
――必ず、あの惨劇は止めてみせる。そのためにやらねばならないことを進めておこう


伏見・逸
【奴崎組】で参加(連係アドリブ歓迎)(仲間は苗字呼び)
(兄貴に疎まれていた…ってのは、個人的に引っかかるものがある
その上濡れ衣着せられたなんざ、胸糞悪い以外の何物でもねえ
…あいつの、褒められる事に慣れていなさそうな感じは、そういう事か)

【友達催眠】を持ち込む。言動等不自然にならないように注意
【パラドクス通信】を借り、仲間の位置の把握と情報共有を行う

お貴族様や騎士様ってえ柄じゃねえし、アスティレーゼの従者って事で(服装もそれっぽい物を着用)
言葉遣いはできるだけ丁寧に。呼び方は「コリーンお嬢様」でいいか?
滲み出る柄の悪さは「腕っぷしを見込まれて地方の領主に護衛として雇われた元傭兵」という事にして誤魔化す
「護衛対象とはぐれた」というフリで、人の流れ、賓客の数や顔ぶれを確認
同時に、後で動く時に不審に思われないように、客や護衛の者に自分の顔を憶えておいて貰う
護衛や使用人に声をかけ、宴の規模(人数等)を聞き出し、仲間と共有

コリーンお嬢様、ここに居たんですかい。ご無事でよかった
(合流して城館へ向かう)


コリーン・アスティレーゼ
【奴崎組】

【パラドクス通信】でアルトゥル様と連絡を取り
ランスロ―卿とネウィア様が現れたら接触。
自分は彼等が知らなさそうな地方の領主の娘と言う設定です。

「不躾に申し訳ございません。私、○○領アスティレーゼ家の息女、
コリーンと申します」
(丁寧にカーテシー)
「ペンドラゴ卿にお招きいただいたのですが、従者と逸れてしまいました。
よろしければ城までご同道させていただけないでしょうか」
事情を問われたら顔を赤らめ。
「街の物珍しさに余所見しておりました。難儀していたところ
歳の近そうなご令嬢をお見かけしたもので、ついお声を……」

田舎者を装いランスロ―卿にこの界隈のことを聞きます。
ネウィア様のこの時代のアルトゥル様や後継ぎの話題への反応に注意。
ネウィア様が脈ありなら応援の申し出を。
自分はどうなのかと聞かれたら、想う相手はいるが
家の体面のためこの宴に出席したように匂わせます。

城に近づいたら従者(逸)を見つけたフリで丁寧に礼を述べて別れます。
この方は当時のアルトゥル様が心を許された数少ない方。
毒殺などさせません。


白水・蛍
パラドクス通信のパラドクス持ち込みますね。
【奴崎組】
アドリブその他諸々歓迎
呼び方:今回は畏まった場なので苗字+様に統一
衣装:https://tw7.t-walker.jp/gallery/?id=181616 のものを使用。武器等はしっかり隠した状態。

パラドクス通信でアルトゥル様と連絡がいつでも取れるようにしつつ。こちらは周囲の方とお話して情報収集と交流を。笑みを絶やさず上流階級の女性であるよう振舞います。どこぞの領主の娘がご挨拶に……なんてよくあった話でしょうから。
こういうのは慣れてますわよ。よくやったものですと懐かしむ。
情報収集・交流に関してプラチナチケットもしくは友達催眠で友好を取りやすくしておきます。
モルガナ様、ライエンス様が登場してもさらっと話して交流を。
色々な方とお話出来ればよいですね。ええ、そうして情報をこの手に集めて皆で分析しましょう。


 夏の日差しは強いが、草木が茂る平原には爽やかな風が吹き抜け、新宿島のそれとは違って明るさがむしろ心地よいくらいである。
 懐かしい光景だ。アルトゥル・ペンドラゴ(篝火の騎士・g10746)にとっては。
「……あの事件は、起こらなければいいと思っていたが」
 あの凄惨な事件により、この地におけるクロノヴェーダによる支配は強まっていったはずだ。この穏やかな景色も、失われたはずである。
「そう聞いては、黙ってはいられない。何がなんでも、阻止させせてもらう……皆、協力してくれ」
 そう請われて、頷かぬ者が『奴崎組』にいるであろうか?
「任せてください、アルトゥルさん……いえ、今回はペンドラコ様とお呼びした方がよろしいかしら?」
 大きくスリットの入った装束。無双馬『フローレライト』に横座りに乗って、白水・蛍(鼓舞する詩歌・g01398)は微笑む。いつもなら無双馬を駆る姿は凛々しく頼もしいが、今日の振る舞いは貴族の女性のようである。
「そう呼ばれると面映ゆいな。一応、本名のはずなのだが」
 アルトゥルは苦笑する。これも蛍の気遣いか。アルトゥルも肩の力を抜いて応じた。
 傍らにはコリーン・アスティレーゼ(カーテシー・g02715)もいるが、彼女もどこからか調達した馬に横座りしている。貴婦人ともあろうものが、歩いて来るわけにもいくまい。
「さすが、様になっていますね蛍様は」
 目を細めた蛍は、
「こういうのは、慣れてますわよ。よくやったものです」
 そう言って、少し感傷的に空を見上げた。とはいえそれも一時のことで、
「コリーンさんこそ、お似合いです」
 と、その姿を頭から足先まで眺めていく。
「地方領主の娘という設定です」
 微笑み返したコリーンは実際、ドイツの地方貴族だったという。時代が違うとはいえ、所作に通じるものがあるのは当然であろうか。
「ペンドラゴ。集まってきたようだぞ」
 伏見・逸(禍竜の生き先・g00248)が顎をしゃくって見せた。今日の逸は翼と尻尾も出せる白のスーツではなく、いかにも従者という格好である。
 彼が示した先、城館へと向かう街道に数頭の馬と、従者たちが見えた。よくよく目を凝らせば、その後にも集まってくる者たちがある。
「四方から集まっているらしいな。なかなかに賑やかな宴になりそうだ」
 逸はニヤリと笑ったが、
「……ネウィア嬢」
 アルトゥルは表情を固くして呟いた。
「あの方ですね?」
 蛍が問いかける。コリーンも、その姿を確認しようと鞍の上で伸び上がり、目を細めた。
 頷くアルトゥル。列になった先頭を、馬に乗って父親と並んでやってくる女性こそ、彼が「手をかけた」被害者である。
「やはりあのときと同様、ランスロー卿とともに宴の席へ参加されるか」
 苦渋の表情を浮かべるアルトゥル。できることならば、いますぐ馬前まで行って彼らを止めたい。しかし、それはできない。もしそれをすれば、兄たちは、兄であった者たちは不審に思うであろう。
「ペンドラゴ」
 アルトゥルの硬い表情を横目に見たまま、逸が促した。
「あぁ」
 身を翻すアルトゥル。今は髪も切って、あのころと印象はずいぶんと違うはずだ。それでも人目につくことは、避けたい。
「ここは頼む、伏見殿。意思と意思の繋ぎ目に……絶望を介入させるつもりはない」
 見送るしかできないのがもどかしいが……毒入りの酒をすり替えれば、解決することだ。
「あぁ、そうだな」
 逸は城下へと去っていく後ろ姿を見送りながら、顔をしかめる。
「兄貴に疎まれていた……か」
 逸もまた、親とも言え兄とも言える年長の者を敬慕しながら、裏切られた男である。気がかりなのも当然かもしれない。
「しかも、あいつは。濡れ衣まで着せられたなんざ……胸糞悪い以外の、何物でもねぇ」
 実際に逸は、ペッと唾を吐いた。
「あいつの、褒められることに慣れていなさそうな感じは、そういうことか……?」

「ランスロー卿でいらっしゃいますか?」
 コリーンはそう言いながら、ネウィアたちに馬を寄せた。
「不躾に申し訳ございません。私、……領アスティレーゼ家の息女、コリーンと申します」
「む……どこの、ご領地とおっしゃいましたかな?」
 ランスロー卿は問うが、
「ご存知ないのも当然かもしれません。なにしろ、辺境ですので」
 コリーンは微笑みながら受け流し、
「ペンドラゴ卿にお招きいただいたのですが、恥ずかしながら景色に見とれているうちに従者とはぐれてしまいました。よろしければ、城までご同道させていただけないでしょうか」
 と、一礼した。
 コリーンの美しい立ち居振る舞いと凛とした表情は、彼女を宴に招かれたどこかの令嬢と信じ込ませるには十分であり、
「えぇ、よいですとも。こちらは娘のネウィアです。年も近いようだ。話し相手にでもなっていただければ」
 と、快くランスロー卿は同行を認めた。
「よろしくお願いします……えぇと、コリーン様」
「こちらこそ、ネウィア様」
 この方は、この時代のアルトゥル様が心を許された数少ない方だと、コリーンはその顔をジッと見つめた。毒殺など絶対にさせるわけにはいかない。
 ふたりは馬を並べ、話に花を咲かせた。たいていは娘の他愛ない話題だが、
「殿方とその奥様だけでなく、お嬢様も一緒の方がいますね。もしかしたら……ペンドラゴ卿には、御子息がおられたでしょうか?」
「おられますわ。長兄のモルガナ様、次兄のライエンス様、それと……末弟のアルトゥル様」
 最後の名前が出たとき、ネウィアははにかんで顔を赤らめた。さて、これは脈があるのか、あるいは婚礼の話題そのものに照れているのか?
「いずれも、優れた器量をお持ちのようですな」
 ランスロー卿が口を挟む。
「私は息子を病で失ってから、ネウィアしか子がありませぬ。アルトゥル殿を婿として迎えられればこの上ない喜びですが……ペンドラゴ卿は、彼をもっとも嘱目しておられるご様子ですから、難しいかもしれませんな。
 それともネウィア、お前が嫁に行っても大丈夫なよう、我が家は養子を迎えようか?」
「もう、お父様!」

 門を通って城下へと入るコリーンたち。
「コリーンお嬢様、ここにいたんですかい? ご無事でよかった」
 そう言いながら近づいたのは、逸である。
「その方が、従者の……?」
 いかに服装を取り繕おうと、隠しきれない無頼の雰囲気。逸は一応はネウィアに体裁の整った礼を示しつつ、
「傭兵家業が長かったもんで。腕ッぷしくらいしか自慢できるものはねぇんで、ご容赦を」
 と、やはり柄の悪さは隠しきれないままである。
 ともあれ、ふたりはランスロー卿たちとここで別れた。
「ペンドラゴも白水も、もう城下に入ってる」
 コリーンに先んじて城下に至った逸。
「よぉ」
 構えを解いた無防備なそぶりで門番に声をかけると、門番もまた「やぁ」と笑顔で返してきた。誰だったか……まぁ、友人だ。
「どうした?」
「いやなに、うちのコリーンお嬢様がどこに行っちまったかと思ってな」
「コリーン様? さて……?」
 門番は賓客の名前をひとりひとり知らされているわけではなかった。もちろん、そんな名前は招いた中にないのだが。
 しかし、困っているであろう逸にちょっとした手助けをしてやるくらいは当然であると思い、振り向いて指さす。
「城館の方なら、執事が応対に出てるはずだ。あの方ならご存じなんじゃないのか? ほら、ちょうどお客様方も集まってる」
「おう、そのようだな。助かったぜ」
 そちらに向かう途中にも逸は「きわめて友好的に」、賓客の従者たちや応接に出ているペンドラゴ家中の者に尋ねて回りながら、城館へと近づいた。行方を聞き込むというよりは、「自分という護衛の存在」を認識させるためである。
 城館の前にはすでに到着した賓客らが集まっており、会話に花を咲かせつつ、案内を待っていた。
 蛍もその中に交じっている。どこの領主の息女であったか、それともこの凛々しさから察するに女領主だったか、それをはっきりと知る者はいないのだが、この場にいるにふさわしい人物には違いないと賓客たちは思い込み、にこやかに振る舞っていた。
「いやはや。貴女のような美しい方にお会いできただけでも、今日は来た甲斐があった。ペンドラゴ卿には申し訳ないですがな。ははは!」
 その中のひとりがパッと馬から降りて、鞍上の蛍に手を差し伸べる。
「ありがとうございます。えー……」
「トリスター卿」
 蛍が耳元に手をやる。小さな通信機からは、アルトゥルの声が聞こえてきた。彼は路地に身を潜めて賓客たちの様子を窺っており、その紋章から男を判別したのである。
「いや、見なくてもわかる。相変わらずだ、トリスター卿は」
 苦笑するアルトゥル。
 それは聞かなかったことにして、
「ありがとうございます、トリスター卿」
 蛍は男に手を取られながら馬を降りた。従者たち、あるいはペンドラゴ家中の者たちが、馬を厩舎へと引っ張っていった。
「さぁ、参りましょう」
 蛍の手を取って促すトリスター卿であったが、蛍はそれをやんわりと断った。
「友人を待っていますので」
「おや。では、また後ほど。ゆっくりとお話しましょう」
 城館に入っていく後ろ姿を見送ると、アルトゥルの声がまた聞こえた。
「あぁ見えて、戦いとなると勇猛果敢な方だ」
「えぇ。そう見ました」
 頷く蛍。そこにやってきたのが、コリーンと逸である。
「アスティレーゼ様。それに伏見様も」
「おう。どうやら、集まった客は20人程度のようだな」
 馬から降りるコリーンの手を取りながら、逸は辺りを見渡した。従者がいるから人数はもっと多いが、宴に集まるのはそれくらいだろう。
 賓客たちが正面玄関から執事に案内されている。同時に家中の者たちは慌ただしく裏口から出入りしており、宴の準備もいよいよ大詰めのようであった。
「モルガナ様、ライエンス様はどこにいらっしゃるのでしょう?」
 辺りを憚って、蛍はクロノヴェーダにも敬称をつけて呼ぶ。しかし、その姿は見えない。企みがあるためというのがひとつ、そもそも宴の脇役に追いやられているというのがひとつであろうか。
 ともあれ、迂闊に姿を見られては正体がバレてしまいかねないから、姿が見えないならばそれはそれで好都合である。敵は、こちらがこの世界に入り込んでいることを察知している。

 気がつけば、ランスロー卿とネウィアも城館内に案内されているところであった。
「……必ず、あの惨劇は止めてみせる」
 おそらく、本人は声を漏らしたことに気づいていないであろう。アルトゥルの呟きが、通信機越しに聞こえてきた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【パラドクス通信】LV2が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
【プラチナチケット】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【フィニッシュ】LV2が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!

アルトゥル・ペンドラゴ
【奴崎組】(連携・アドリブ歓迎) ※呼び方は『名前+殿』、伏見逸さん(g00248)は『伏見殿』

例の事件に至る前に、仕込まれるだろう毒酒の始末をしよう
裏口から回り込むように潜入し、こちらが先導する形で厨房を目指す。【光学迷彩】を発動して、いつでも潜入できる物陰から様子をうかがう

(宿敵の姿を確認して)――兄上……

……ああ、あの人達が私の兄だ。竜鱗兵となっているので、厳密には違うが――『似ていない』だろう?
髪の色も、髪質も、目の色も。何ひとつ、私と重なる要素の無い……一つでも似た要素があれば、あの人達も血の繋がりを考えてくれただろうが……
……いや、今話すべきことではないな……すまない、忘れてくれ

事の成り行きを見届けたら、忍び込み毒酒をすり替えるとしよう
これで毒に苦しむ人はいなくなる。……そう思うと、胸中に安堵の情が満ちていく
――だが、それで終わるわけではない。問題はここからだ

あの方達に、決着をつける
兄上本人でないのが少々どころじゃなく複雑だが……これが私からの――最初で最後の、『兄弟喧嘩』だ


伏見・逸
【奴崎組】で参加(アドリブ歓迎)(仲間は基本苗字呼び)
(「アスティレーゼの従者」という設定は継続し、「コリーンお嬢様」と呼ぶ。言葉遣いも普段より丁寧)

広間にいる者とは【パラドクス通信】で連絡を取り合い、情報交換しながら動く
「毒酒が置かれるのを確認し、すり替えを済ませる」までは身を隠して行動(必要に応じ【モブオーラ】【光学迷彩】を借りる)。特にモルガナとライエンスには見つからないように注意
見つかった場合は、【友達催眠】を利用しつつ、館の中で道に迷った等と説明して誤魔化す

館の者に見つからないように、毒酒を自分の懐(【アイテムポケット】)にしまい込み、同様に【アイテムポケット】利用で持ってきた普通の酒を代わりに置く
(てめえらの企み…こいつは貰っていくぜ。他の誰の手も届かねえ所で、始末させて貰う)
完了したら仲間に連絡し、モルガナ達が動き出すのを待つ

(ペンドラゴの説明に「確かに、似てはいないな」「まあ似てねえ兄弟ぐらいいるだろう」とは思うが、口には出さない)
…兄弟喧嘩か、悪くねえ。存分にやるといい


コリーン・アスティレーゼ
【奴崎組】
事件が解決すればこの世界は消えてしまいますが、
その前に稀代の英雄像を押し付けられた過去のアルトゥル様の
お心を少しでも軽くしてあげたいです。

大広間で接客中の過去のアルトゥル様に接触します。
「お初にお目にかかります。アスティレーゼ家の息女、コリーンと申します」
アルトゥル様の容姿が稀代の英雄に似ていることを称えながら
しかし、と続けます。
「私が住まう地にも数多の英雄がいらしております」
この地まで知られてこそいないが、紛れもなく英雄と言える者達。
そう言ってディアボロスの勲を語ります。

私は思うのです。
英雄とはなるものではなく人々が語るもの。
大切なものを守って懸命に戦い抜いた、
その姿を見た人々の中に生まれるものではないかと。

アルトゥル様、どうかお心のままに。
ご自身が大切に思われるものをどうかお守り下さい。

話を終えたらネウィア嬢の方へ顔を向け、
過去のアルトゥル様の意識を彼女に向けておきます。
モルガナ達が正体を現した時、
彼は彼女や賓客の命を守るために行動してくれるでしょう。
人々を導く篝火の様に。


白水・蛍
【奴崎組】
引き続き、アドリブその他諸々歓迎
呼び方:今回は畏まった場なので苗字+様に統一
衣装:https://tw7.t-walker.jp/gallery/?id=181616 のものを使用。武器等はしっかり隠した状態。

会場にて周囲をひそかに見回してます。動向調査ですわね。
グラスを手に持って引き続き殿方らとお話しつつ情報収集。
相手の出方はある程度分かっていても。それをどうするかをうまく利用する状況を見定めなければいけませんからね。
得た情報は都度【パラドクス通信】で情報共有していきます。
【モブオーラ・友達催眠】を使用して周囲に上手くなじんでみせましょう。此処は腕の見せ所ですわ。
幾人でも捌いてみせましょう。状況監視も合わせて行きますわよ。


リューロボロス・リンドラゴ
【奴崎組】仲間は名前呼び捨て。二人称は敵は貴様、それ以外は“ぬし”
装束:https://tw7.t-walker.jp/gallery/?id=204402 お誂え向きに扇子で口元を隠せるしの。

竜は洞窟に潜むもの。
【モブオーラ】でひっそりと壁の花をしておった我である。
お国柄が違う故、コリーンほどとはいかぬが、実はまあ貴族的な立ち振舞は相応にできる我である。
故にまあそう意味でも目立たずおれたであろうよ。
その上でせっかくだ、幼子であることも活用させてもらうよ。
幼子が多少キョロキョロしておった所でおかしくなかろう?
立ち振舞は様になりつつも、まだまだこういった場に慣れていないのだな、とか、表情は取り繕えても興味を隠せてないのだな、位に見做されるであろうよ。
蛍が話をしたり聞いたりしてくれておるからの。
あやつが耳なら我は眼よ。
見ることに専念し、大広間の動向を【パラドクス通信】でアルトゥル達側に伝えようぞ。
仕込みが上手く行くようモルガナとライエンスのことは特にの。
広間を出たとか片方は残っておるとか。


「ようこそいらっしゃいました。宴はまもなく始まります。しばし、ご歓談を」
 執事は賓客たちに頭を垂れ、出迎えている。
 彼もまた、見知った顔である。父の忠実な腹心であった。3兄弟を分け隔てなく扱い……いやむしろ長兄であるモルガナを尊び、自分に対してはむしろ一歩引いた姿勢を取っていた。
 アルトゥル・ペンドラゴ(篝火の騎士・g10746)にとっては、穏やかに敬意を向けてくるその態度が、かえってありがたかったのである。
「伏見殿」
 アルトゥルが囁く。その姿は氷の鏡に隔てられ、前庭に集まっている人々の目には映らない。
「おう。どうした?」
 見事な大樹の幹に寄りかかっていた伏見・逸(禍竜の生き先・g00248)が、アルトゥルの方に身体を傾ける。
「……私は裏口から潜入する。仕込まれる毒酒の始末をしよう」
「わかった……また、後でな」
 その声を背で聞きながら、アルトゥルは身を低くして駆ける。家中の者たち……これも見知った顔ばかりだ……が慌ただしく働いている隙をつき、裏口から城館へと飛び込んだ。
 執事に案内されて中に通された賓客たちは旧知の間柄も多いらしく、和やかな場が出来上がっていた。
「おや、貴女は……?」
「『私』ですわ。このたびは、ペンドラゴ卿に賀辞を献じたいと思い、参りました」
 白水・蛍(鼓舞する詩歌・g01398)はまったく後ろめたいところはないと、背筋を伸ばして微笑む。すると執事も目を細め、
「ようこそ。我が君も喜ぶでしょう」
 と、蛍を通した。実のところ何処の者とも知れぬ状態に変わりはないのだが、人品卑しからぬことは間違いなさそうだ。美しい貴婦人が城館を訪ねることは、慶事と言ってよい。
 コリーン・アスティレーゼ(カーテシー・g02715)とリューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)も、同様にして城館へと潜り込んだ。
「コリーン様」
 ランスロー卿の娘・ネウィアがその姿を認め、声をかけてくる。ふたりはにこやかに談笑を始めたが、しばらくするとそこに逸が寄ってきた。
「コリーンお嬢様」
「失礼、ネウィア様」
 壁際にネウィアを置き去りにして、逸とともにその場を離れるコリーン。
「ペンドラゴも潜り込むことに成功した。俺も、向こうに行ってくる」
「……わかりました。お気をつけて」
「おう」
 ひらひらと手を振りながら、部屋を出ていく逸。
 蛍とリューロボロスもそれを見送りつつ、壁にもたれかかるようにして周囲を窺っていた。
「動向調査ですわね」
「うむ。竜は目立たず洞窟に潜むものよ」
 扇子で口元を隠しつつ、ほくそ笑むリューロボロス。このふたりが並んで目立たぬはずもないのだが、ともに気配を殺し凡庸なふりをしているために、注目してくる者はいない。
「はて、先ほどの麗しき貴婦人はいずこに……?」
 キョロキョロと辺りを見渡しているのは、トリスター卿である。
「ほれ、ぬしを探しておるぞ」
 リューロボロスが愉しげに笑うが、
「リンドラゴ様。今日は、魅力的な殿方を探りに来たわけではありませんから」
 蛍は睫毛を伏せて微笑み、それを受け流す。
「ふふ、そうよの」
 笑ったリューロボロスがキョロキョロと動き回っても、さしたる興味を向けてくる者はいない。それなりの立ち居振る舞いを身に着けてはいても、まだまだ子供なのだな……などと考えているのだろう。
「蛍が耳なら、我は眼よ」
 ふたりが耳目となって周囲の会話にさり気なく交じりつつ、情報を収集していく。
「ふむ、我らを応接するのはモルガナ殿とライエンス殿ではなく、彼か」
 トリスター卿が顎髭を撫でる。
「さて、これをどう見る諸君? ペンドラゴ卿が彼に嘱目しているらしいというのは、聞き及んでおるが……あるいは」
「まさか」
 ランスロー卿が顔をしかめる。彼は偏私を見せぬよう「他家の後継に口を挟むつもりはないが」と前置きしたうえで、
「それでは、ふたりの兄が黙ってはおりますまい。確かに、先が楽しみな若者というのはわかるが……モルガナ殿とライエンス殿に廃嫡されるほどの瑕瑾があるとも思えませぬ。
 所領の一部を割いて、一家を立てさせるなりするおつもりかと思っておりましたが……」
 親の過度な期待は、かえって子を萎縮させるものである。
「さて、どうであろうな?」
 ふたりの目が「彼」に向けられると、賓客たちの注目もそちらに向いた。
 居心地が悪そうに肩を揺らした「彼」のところに、コリーンが近づく。
「お初にお目にかかります。アスティレーゼ家の息女、コリーンと申します」
 スカートをつまんで「アルトゥル」に一礼したコリーン。
「あぁ、こちらこそ、お初にお目にかかる。……それに、ネウィアも。久しいな」
「は、はい、ご不沙汰しております!」
 ネウィアの様に、コリーンは目を細める。
「アルトゥルのご高名はかねがね聞き及んでおりました。稀代の英雄に似ているとのことでしたが、まさしくそのとおりです」
 しかし、その英雄像を押し付けられた過去のアルトゥルの心を、コリーンは少しでも軽くしてやりたいのだ。
「私が住まう地にも、数多の英雄がいらしております」
 そう言ってコリーンは、ディアボロスの勲を語る。傷つきながらも倒れぬ者、その身を盾として人々を守る者、不屈の闘志で敵を破る者……。
 集まった者たちには知らぬ話ばかりである。
「私は思うのです。英雄とは、なるものではなく人々が語るもの。懸命に戦い抜いた、その姿を見た人々の中に生まれるものではないかと。
 アルトゥル様、どうかお心のままに。ご自分が大切に思われるものを、どうかお守りください」
「あ、あぁ……」
 呆気にとられているアルトゥル。今の彼には、コリーンの真意はわかるまい。
 一礼したコリーンが、ネウィアの方に目を向ける。
「ネウィア様が、少しお疲れのご様子です。アルトゥル様。お忙しいところ恐縮ですが、案内していただけませんか?」
「え?」
 驚くネウィアであったが、コリーンは強引にその背を押し、アルトゥルも別室へと彼女を案内していった。
「見事な語りだ。あの御婦人は、さぞかし名のある詩人なのだろうか?」
 トリスター卿が手を叩いた。彼らにとっても、ディアボロスの英雄譚は実感を伴うものではなかった……今のところは。
「しかし、武勇伝ならば我も負けてはおらぬぞ。それ、ランスロー卿も存分に語られるがよい」
 表情を改め、笑顔を見せたトリスター卿が、集まった賓客たちを前に己の武勇伝を披露し始めた。
「……ふむ、賓客たちの中で尤物は、トリスター卿とランスロー卿のふたりか」
 壁にもたれかかり、リューロボロスは唸る。
 社交的で勇敢なトリスター卿、沈着で人当たりのよいランスロー卿は、賓客たちの中でも信望が厚いらしい。いざ「何か」があったとき、彼らならば狼狽えることはないだろう。
 それに勝るとも劣らないのがペンドラゴ卿であるが……彼の意中を、賓客たちは掴みかねていた。
 ところで計算違いと言えば、
「おぉ、先ほどの麗しの君ではありませんか。ささ、こちらへ。もし貴女が攫われたならば、私は竜の巣穴にでも挑みますぞ」
 蛍が、トリスター卿に見つかってしまったことか。人混みに紛れ、有象無象のふりをして話に加わっていた蛍。リューロボロスの耳にまで賓客たちの会話が筒抜けであったのは、蛍が身につけていた通信機が会話を拾っていたからだ。しかし会話に加わった以上、紛れているにも限度があった……ということである。
 熱心なアプローチをなんとか振り切って再び人混みに紛れた蛍が、リューロボロスのところに戻って来る。
「妬けるのう」
 心にもないことを言いつつ、クックッと笑うリューロボロス。
 彼女の身長からしたら大いに見上げることになる目の前の女は、なんなら自力で竜を撃破し、トリスター卿を抱きかかえて脱出できるような猛者であるのだ。
「さすがの眼力、と言っておきましょうか」
 蛍は微笑みながら、グラスを傾けた。
「さて。モルガナとライエンスの姿はこちらには見えませんでしたが……」
 応接はすべて「アルトゥル」と執事とに任されていた。
「ふむ……こちらのアルトゥルが巻き込まれぬよう、手は打てたようだ。そちらはどうなっておる?」
 リューロボロスは小声で、通信機に向けて話しかけた。

「おう、こっちも厨房に向かって……」
 ときに人波に紛れ、ときに姿を隠し、逸とアルトゥルとは厨房へと向かっていた。
「シッ!」
 前を行くアルトゥルが鋭く息を吐き、逸の手を引く。暗がりに身を潜めたふたり。逸もわざわざ「どうした?」などとは問わない。
 息を潜めている暗がりから少しばかり離れたところを、ふたりの男が通り過ぎていった。
「兄上、これでアルトゥルの奴を陥れる準備はできた。これからどうする?」
「逸ってはなりませんよ、ライエンス。宴が始まり酒杯が回るまで待ちなさい。賓客どもがのたうち回っているところに、飛び込めばよいのです。
 ……あぁ、『父上』に毒酒が回らぬよう、注意しなさい。『父上』には、下手人を裁いてもらわねばならないのですから」
「ははは、楽しみだ!」
「油断してはいけません。ディアボロスどもが、我らの世界に潜り込んでいます。……無論、ひとりとして生かしては帰しません」
「おう」
 やがて、声は遠くなっていく。永遠とも思える沈黙が過ぎ去ったあと、
「……兄上」
 と、アルトゥルが呟いた。その声はため息が漏れるようであった。
「あいつらがか」
「あぁ……あの人たちが、私の兄だ」
 竜鱗兵と化しているため、厳密には違うにせよ。
「似ていない、だろう?」
 自嘲するように、アルトゥルが肩をすくめる。髪の色も、髪質も、目の色も……なにひとつ一致していなかった。
 たしかに、似てはいない。しかしまぁ、
「似てねぇ兄弟ぐらい、どこにでもいるだろう」
 そう思った逸ではあったが、思い詰めているアルトゥルの前ではおくびにも出さない。
 代わりに口の端を曲げて渋面となった逸を前に、アルトゥルの自嘲は続く。
「ひとつでも似た要素があれば、あの人たちも血の繋がりを考えてくれただろうが……」
 苦渋の表情を浮かべたアルトゥルは、こちらをジッと見つめている逸に気づいて我に返った。
「……いや、いま話すべきことではないな。すまない、忘れてくれ」
 背を向け、厨房へと踏み込む。
「なんだぁ? なにをしに来た?」
 厨房で働く者たちが怪訝そうに振り返る。逸は「道に迷った」だの適当なことを言いつつ、中に入っていった。
「おや、アルトゥル様まで。またこんなところにまでおいでなさって。お客たちをお迎えするのにお忙しいのでは?」
 と、料理人たちが苦笑した。好意的な笑いである。
「いや、しかしそのお姿は……?」
 彼らの記憶にある姿と、今の彼とは大きく異なる。その怪訝な声を遮るようにアルトゥルは、
「料理のことで、執事が問いたいらしい。済まないが、行ってくれるか?」
 と、料理人たちを数人、厨房から追い出した。
 残っているのは下働きの者ばかりである。
「にゃん」
「あッ、待て!」
 そのとき彼らの足元で、どこから入り込んできたのか黒猫が鳴いた。それも、数匹。逃げる黒猫を彼らが追い回している間に、
「さて……やるとするか」
 逸が酒瓶をあさり始める。
「伏見殿、これだ」
「ふん……香りは、なかなか上等なようだ」
 逸は手渡された瓶を、【アイテムポケット】の中にしまい込む。見てもそれが毒だとはわからないが、これらの瓶が、モルガナによって指図された賓客たちに供される予定の酒だというのだから、間違いはない。
「てめぇらの企み……こいつはもらっていくぜ」
 代わりの瓶を置いた逸は顎をしゃくって、アルトゥルに退去を促した。この毒酒は、どこかで処分しておかなければ。
「これで、毒に苦しむ人はいなくなる」
 人気のないところまで退いたアルトゥルは、大きなため息をついた。それは、胸中に溢れる安堵の情が漏れたものである。
 だが。これで終わるわけではない。問題は、ここからだ。
 背筋を伸ばしたアルトゥルは、決然と逸を振り返った。
「あの方たちと、決着を付ける。兄上たち本人ではないのが複雑だが……」
 こんなことになるならば、もっとふたりと胸襟を開いて語り合えばよかった。たとえ嫌われていようと怒鳴られようと、あるいは殴り合い斬り合いになろうと、互いの本音をぶつけ合っていればよかった。
「……これが私からの、最初で最後の『兄弟喧嘩』だ」
「ふふ。兄弟喧嘩、か。悪くねぇ、存分にやるといい」
 逸がニヤリと笑うと、アルトゥルもまた、目を細めた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
【モブオーラ】LV2が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【ラストリベンジ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV2になった!
【命中アップ】がLV2になった!

アルトゥル・ペンドラゴ
【奴崎組】(連携・アドリブ歓迎) ※呼び方は『名前+殿』、伏見逸さん(g00248)は『伏見殿』

人々の避難が済んだのを確認して、皆に合流しよう
ここまで同道いただき、感謝する。どうか彼等との決着まで立ち会っていただきたい

――お久しぶりです。モルガナ兄上、ライエンス兄上
……いや、厳密に言えば私の兄上達ではないが。彼等の御心を知っているのなら、そう呼ばせていただこう
言いたい事もあるのでな

私が生まれた事で貴方達があらぬ不幸に苛まれた事を知っている
私がいなければ、貴方達は名君として、高潔な騎士として家に名を刻めただろうという事も
私は貴方達の事を心から尊敬していたし、誇っていた
――たとえそちらが、こちらをどれだけ疎んでいようとも

――だが、許せない事が一つだけある。私を陥れるためだけに、他人の命を利用した事だ
こちらを鬱陶しく思うのは良い。しかし、関係のない他人を巻き込むのは違うだろう?!

堕ちた貴方がたを、“弟”として全力で止めさせてもらう
いつもの得物で、いつもの構えで

「――こちら“篝火”、いざ尋常に」


伏見・逸
【奴崎組】で参加(連係アドリブ歓迎)(仲間は苗字呼び)
(「宿敵主が望むように事を運ぶ」を最優先事項とする)
必要に応じ仲間をディフェンス。特にペンドラゴは倒させないように優先して守る

罪には罰を、なんて柄じゃねえ
だが、目には目を、歯には歯を…なら毒には毒って奴だろう
(厨房ですり替えた毒酒を、パラドクスの仕込みの為に戦闘前にこっそり飲んでいる
懐(アイテムポケット)から空き瓶を出し、決闘の手袋よろしく敵に投げつける)
てめえらが他の奴に食らわせた、食らわせるはずだった苦しみを、じっくり味わえよ

仲間とは声を掛け合い連携
翼を広げて敵を威嚇し、仲間を守る
【禍竜の毒牙】使用
毒酒と相手の攻撃に仕込まれた毒を利用し、自らの身体を毒に変え
敵に張り付き、掴みかかって動きを妨害し、直接触れる事で毒で蝕む
自分の身も毒に蝕まれるが、血反吐を吐こうが動けりゃ上等、の姿勢

てめえらに引導を渡すのは、俺じゃねえ
俺達の騎士は…稀代のかは知らねえが、確かに英雄って奴だとも。しっかり焼き付けていけ
(敵へのトドメはペンドラゴに任せる)


リューロボロス・リンドラゴ
まずは【避難勧告】で避難誘導の手助けよ。

ふん。
アルトゥルが貴様たちを兄上と呼ぶのもそう間違ってはおらぬのであろうな。
貴様らは紛い物のクロノヴェーダだが、アルトゥルへのその憎悪、嘲りは本物よ。
奪った存在や感情エネルギーに引っ張られておるのか。
或いは……奪ってすらおらず、アルトゥルを殺すだけでは飽き足りなかった兄達が望んで差し出したか。
であらばこう呼ぶべきか。
亡霊、否、悪霊とな。

我が鱗を貫くか。
それに毒、毒だと?
つくづくと毒が好きと見た。
貴様らからすれば毒は憎きアルトゥルを貶めた勝利の証なのであろうなあ。
くだらぬ。
実にくだらぬよ。
そんなもの、アルトゥルはとっくに超えてきたぞ?
――我が闘気に慄け。戦慄させるは竜である。
悪霊共に闘気砲をぶち込んでくれる。

ああ、そういえば。
お前みたいな弱い奴が英雄になんてなれるわけがない、などと幼きアルトゥルにほざき続けておったようだの?
ならば、思い知れ。
貴様らが嗤った幼子が、どれ程までに至ったか。

アルトゥルよ。
かつての憧れを。
ぬしにとっての英雄を、超えていけ。


コリーン・アスティレーゼ
【奴崎組】
モルガナ達が正体を現したら、ランスロー卿に室内の避難誘導をお願いします。
室外にいる過去のアルトゥル様にお伝えしていただければ、
そこからは彼が人々を導いて下さるでしょう。
「人外に堕ちた者は私達にお任せを」

お兄様方にも葛藤や懊悩はあったのでしょう。
ですがアルトゥル様にしたことは許されるものではありません。
ましてやそれをクロノヴェーダが利用するなど言語道断。
「ここに私は誓います。アルトゥル様と共に必ず勝利せんことを」
堂々たる立ち居振る舞いで勝利を宣誓し、輝く覇気を放ちます。
「紡ぐのです。新たな勲を」

ドレスのままで呼び寄せたサイドカー「風の馬」に跨り、
側車の重機関銃で前線に立つ皆様を援護射撃します。
長年胸の内に秘めていた思いをぶつける機会がやっと巡ってきたのです。
アルトゥル様が思う存分戦えるよう、敵の動きを抑えるように立ち回ります。

ネウィア様のお気持ちはわかります。
あの方のお心は篝火となって、私の心を照らしてくれる。
だからこそ、篝火の騎士にはその御旗を自由に振って欲しいと願うのです。


白水・蛍
アドリブその他諸々参加
呼び方:今回は畏まった場なので苗字+様に統一
衣装:https://tw7.t-walker.jp/gallery/?id=181616 のものを使用。武器等はしっかり隠した状態。

敵が姿を現したらトリスター卿と一緒にまずは避難誘導いたしましょう。
「さあ、皆様安全な場所まで我々が案内いたしますわ」
そうして人ごみを作り出してあらかた捌いたところでトリスター卿にささやきます。
「ありがとうございました。卿。今度は私があなたを護る番です。どうぞ追ってくださいますな」
そのまま踵を返して。『シンデレラ』は終わり。
私は『王子様』……という柄でもないですわね。
私は――白水蛍。悪しきを裁く者。行きますわよ!
「鬼哭閃!!」
相手の胴めがけてただ<ブレイドハープ>の鋭い一閃を喰らわせましょう。
氷もまた寒くはない。私にとって戦いの熱はそれ位の氷を溶かす程だから。
「さあ……『遊びましょう』?」
トドメはペンドラゴ様に。


「皆様、ようこそ参られた。ささ、宴の準備も整ったようだ。広間にお集まりくだされ」
 ペンドラゴ卿が上機嫌に、賓客たちを招き入れた。
 しかしいざ宴が始まる段になったというのに息子・アルトゥルの姿が見えない。執事に問えば、
「御婦人の中に気分が悪くなられた方がおり、アルトゥル様は付き添っておいでです」
 とのことである。
「むむ……」
「モルガナ様、あるいはライエンス様に応接をお任せしては?」
「そうはいかんということは、お前もわかっているだろう」
 意中は、この信頼できる執事にももちろん話してある。
「……致し方ない。そなたが酒を注いで回れ。誰か、アルトゥルを呼んでこい」
 その様子を窺っていたのが、ライエンスである。
「兄上、アルトゥルがいないぞ。どうする?」
「……問題は、ない、でしょう。あの執事はアルトゥルに同情的です。奴が命じたことにすれば……」
 ライエンスは「兄」を振り返るが、答えるモルガナは上の空であった。この世界に踏み込んできたディアボロスどもが、いるのだ!
 一方でその頃、城館の一角で仲間たちと合流したアルトゥル・ペンドラゴ(篝火の騎士・g10746)は、
「ここまで同道いただき、感謝する。どうか彼らとの決着まで立ち会っていただきたい」
 と、頭を垂れた。
「ふん?」
 伏見・逸(禍竜の生き先・g00248)が豆鉄砲でも食らったような怪訝な顔をし、間の抜けた声を漏らす。
 そしてリューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)は、呆れたように首を振った。
「なにを、今さら。そのつもりがなければ、ここまでやってこぬわ」
「そのとおりです。アルトゥル様の過去に決着がつくというのなら、私はいくらでもお手伝いします」
「いまさら、気兼ねは無用ですよ」
 と、コリーン・アスティレーゼ(カーテシー・g02715)と白水・蛍(鼓舞する詩歌・g01398)は微笑む。
 仲間たちの視線を浴びつつ、アルトゥルは頷いた。それを合図に、一行は配置につく。
 コリーンと蛍は宴席につき、賓客たちとともに「乾杯!」と唱和して執事の注いだ杯に口をつけた。
 もちろん、アルトゥルと逸がすり替えた本物の酒である。
「……ずいぶん上等な酒と入れ替えたものだ」
 蛍が苦笑する。
 宴は穏やかな歓談の場となった。阿鼻叫喚の場とならぬことに戸惑ったのは、モルガナとライエンスである。
「馬鹿な……!」
「まさか、兄上の毒が効かないなど、まさか失敗……いや」
「えぇ。私が、失敗などするはずがありません。……で、あれば!」
「モルガナ兄上、ライエンス兄上ッ!」
 2体のクロノヴェーダの横合いから突進してきた影がある。刺突剣と盾を構えた、アルトゥルである。
「ぐぬッ!」
 モルガナが盾をぶつけられて吹き飛ばされ、ライエンスはとっさに立てかけていた槍を手にとって、立て続けに繰り出されるアルトゥルの突きを受け止めた。
 モルガナは大広間に倒れ込み、
「アルトゥル! いったいなんの騒ぎだ!」
 ペンドラゴ卿の叱声に、アルトゥルはかえって喜びを覚えた。「かつて」の自分とは、姿形もずいぶんと変わっているはずである。それでも……。
「この者どもは、兄上たちを装って悪事を為さんとするクロノヴェーダです、父上」
 そう言ってふたりの「兄」へと向き直り剣を下げ、
「お久しぶりです、兄上。……いや厳密に言えば、私の兄上たちではないが。
 彼らの御心を知っているのなら、そう呼ばせていただこう。言いたいことも、あるのでな」
 するとモルガナは嘲笑を浮かべ、
「……なるほど、あなたが侵入者でしたか」
 埃を払いつつ立ち上がる。
「ライエンス!」
「おうッ!」
 ライエンスが槍を構えて突進してきた。その穂先は冷気に包まれ、これを浴びたなら傷口はたちまちのうちに凍傷を起こして血は一滴も流れまい。
 アルトゥルは懸命にそれを凌ぎつつ、
「私が生まれたことで、貴方たちがあらぬ不幸に苛まれたことを知っている。私がいなければ、貴方たちは名君として、高潔な騎士として、家に名を刻めたであろうことも。
 私は貴方たちのことを心から尊敬していたし、誇っていた!」
「ははッ、あいにくと『こいつら』はそうではなかったようだがなぁ!」
 ライエンスの槍が、アルトゥルの二の腕を裂く。やはりその傷からは、血は流れなかった。
「……わかっている。たとえそちらが、私をどれほど疎んでいようとも、だ!」
 なおも繰り出される槍を、盾で弾くアルトゥル。押し合いながらライエンスに顔を近づけ、
「だが、許せないことがひとつある!」
 と、相手の胸を蹴った。たたらを踏むライエンス。
「私を陥れるためだけに、他人の命を利用したことだ。こちらを鬱陶しく思うのはいい。しかし、関係のない他人を巻き込むのは違うだろうッ?」
 それがクロノヴェーダの性質と知ってはいても。
「堕ちた貴方がたを、『弟』として全力で止めさせてもらう」
 改めて剣と盾を構え直したアルトゥルは、
「……こちら、『篝火』。いざ、尋常に」
 と、「兄」たちへと斬り掛かった。

 刺突の連打が、ライエンスの脇腹を抉る。
「ぐ……ッ!」
「ははは、私たちをまだ兄と呼ぶとは。いいでしょう、弟として殺してあげましょう」
 しかし、事が露見してかえって開き直ったものか。モルガナが哄笑しつつ、手にした杖を突き出した。魔術によって生み出された氷塊が襲いかかる。
「私の毒を、直に味わうといい!」
「罰には罰を、なんて柄じゃねぇ。だが、目には目を、歯には歯を……なら、毒には毒ってやつだろう」
 逸が、懐の【アイテムポケット】から酒瓶を取り出して、決闘の手袋とばかりにモルガナに投げつけた。
「む、これは……!」
 すり替えた酒瓶である。しかし、中に毒酒はない、
「上等な毒だったぜ!」
 人々を殺めた猛毒であれ、歴戦のディアボロスの命を奪うほどのものではなかったようだ。不敵に笑う逸の二の腕を氷の塊が斬り裂き、そこに含まれていた毒も、逸を苛む。
 しかし、
「てめぇらが他の奴に食らわせた……食らわせるはずだった苦しみを、じっくり味わえ。楽にいけると思うなよ!」
 石造りの床を蹴って、逸はモルガナの手首を掴む。
 今の逸の身体は、毒物そのものといってよい。毒酒、あるいは氷塊の毒。それら毒に侵された記憶をたどり、状態を再現しているのだ。
「ぐ、あぁッ!」
 ギリギリとひねられた手首はみるみるうちに青黒く変色していく。
「自慢していいぜ、大した毒だろう?」
 自分も脂汗を浮かべながら、ニヤリと笑う逸。
「おのれ……!」
「ディアボロスごときがッ!」
 逸の手を振り払ったモルガナは歯ぎしりしながら杖を掲げ、ライエンスは吠えながら槍を振るう。
「む……ッ!」
「これは、いったい……?」
 トリスター卿とランスロー卿が厳しい顔で立ち上がり、従者から受け取った剣を抜く。
 とはいえ、
「汝らがいかに勇猛果敢とは言え、クロノヴェーダには敵うまい。我らに任せよ」
 いつの間にか広間に入り込んでいたリューロボロスが、ふたりの肩を叩いて前に出た。
 モルガナとライエンスを交互に睨んだリューロボロスは、
「ふん」
 と、鼻を鳴らす。
「アルトゥルが貴様たちを兄上と呼ぶのも、そう間違ってはおらぬのであろうな。貴様らは紛い物、クロノヴェーダに過ぎんが、アルトゥルへのその憎悪、そして嘲りは本物よ。
 奪った存在や感情エネルギーに引っ張られておるのか?」
「だまれッ!」
 それは罵倒に聞こえたか。ライエンスが振るった槍の穂先が燭台を弾き飛ばし、絨毯に炎が燃え移った。
「きゃあああッ!」
「うわぁ!」
 呆然と事態を眺めていた賓客たちが、赤い炎を見つめたことで我に返った。悲鳴を上げ、慌てて席を立つ。
 恐慌が起こるのは、まずい。
「トリスター卿」
「うむ、心得た」
 蛍が声を掛けると、トリスター卿は意図を察して頷く。
「方々、恐れることはありませんぞ。我が剣にて、方々をお守りいたそう!」
 と、剣を出口へと向けた。
 蛍は苦笑しつつ、
「さぁ皆様、安全なところまで我々が案内いたしますわ」
 そう言って賓客たちを導く。
 ランスロー卿を促したのは、コリーンである。
「あなた様も、誘導をお願いします」
「うむ。しかし、ネウィアは……」
「室外にいる、過去のアルトゥル様にお伝えいただければ。そこからは彼が導いてくださるでしょう」
「過去の……? ふ、なるほど」
 ことの詳細までは知る由もない。しかしなにかしら感得するものはあったのか、ランスロー卿は頷いて人々を導く。
「人外に堕ちた者は、私たちにお任せを」
「……お頼みいたす」
 苦しげな表情を一瞬だけ浮かべるランスロー卿。いったい、どこで歯車は狂ったのか。モルガナもライエンスも、決して凡百の男ではなかったはずなのに。
「お兄様方にも、葛藤や懊悩はあったのでしょう。
 ですが、それをアルトゥル様に向けたことは許されるものではありません。ましてや、それをクロノヴェーダが利用するなど言語道断」
 コリーンはドレスの裾をふわりと膨らませながら、サイドカー『Windpferd(風の馬)』へと飛び乗る。
「ここに私は誓います。アルトゥル様とともに、必ず勝利せんことを!」
「これはなんと、美しい」
 蛍とランスロー卿が賓客たちを誘導する中、殿に残っていたトリスター卿がコリーンの勇姿に感嘆の息を漏らす。
「ありがとうございました、卿。今度は私があなたを護る番です。どうぞ私を追ってくださいますな」
 戻った蛍が、トリスター卿にも退去を促す。ペンドラゴ卿は、執事が連れ出してくれたようだ。
「はは。貴女の戦うさまも、さぞかし美しいのであろうな」
「さて、それは」
 名残惜しそうなトリスター卿に微笑んで、蛍は踵を返す。
「さて、シンデレラの時間は終わり……かといって、王子様という柄でもないですわね」
 蛍は刃を抜き放ち、
「私は……白水蛍。悪しきを裁く者。行きますわよ!」
 と、躍りかかった。
「ちッ!」
 ライエンスは怒涛の勢いで攻めかかるアルトゥルと打ち合っていた。
 そこに蛍は、復讐の念を媒介に呼び寄せた怨念や呪詛を込めた刃を、その胴に叩きつける。
「鬼哭閃ッ!」
「ぐおッ!」
 飛び散ったおびただしい血が、石造りの床を汚す。
「この程度……ッ!」
 ライエンスの振るう槍が蛍の太腿をかすめた。それだけで傷口は凍てつきせっかくの衣装も凍りついて砕けたが、
「寒くはありません。私にとって戦いの熱は、その程度の氷など溶かすほどだから。
 さぁ……『遊びましょう』?」
「ほざけッ!」
 なおも斬りかからんとするライエンスであったが、
「長年、胸のうちに秘めていた想いをぶつける機会が、やっと巡ってきたのです!」
 コリーンは全身から輝く覇気を発しつつ、重機関銃からありったけの弾丸を吐き出した。
「紡ぐのです、新たな勲を!」
 何発もの銃弾を腹に喰らったライエンスは退かざるを得ず、
「よくも……!」
 モルガナもまた銃弾を浴びて、肩を押さえてよろめいている。傷口を押さえる手は瞬く間に赤く染まっていった。
「よくも、私の策を邪魔してくれましたね!」
 毒を含んだ氷塊がコリーンを、そしてリューロボロスを襲った。
「ほう、我が鱗を貫くか」
 しかし、リューロボロスはゆとりを見せて笑う、決して、傷が浅いわけではないのだが。
「毒、毒だと? つくづく毒が好きと見た。貴様らからすれば、毒は憎きアルトゥルを貶めた勝利の証なのであろうなぁ?」
 膨大な闘気がリューロボロスを包む。幼い身体にはあまりに不釣り合いな、しかし龍の巨躯には相応しい闘気が。
「くだらぬ、実にくだらぬよ。そんなもの、アルトゥルはとっくに超えてきたぞ?
 兄たちが喜んで差し出した憎しみを未だ抱いている貴様らなぞ……しょせんは亡霊、否。悪霊であろうな!
 さぁ、悪霊よ。我が闘気に慄け! 戦慄させるは竜である!」
 大きく口を開くリューロボロス。そこから放たれた闘気は砲撃となり、背後の石壁ごとモルガナを吹き飛ばした。

「兄上。私は英雄になりたいわけではない。だが、兄上たちが悪行を為すならば……これを正すことは、厭わない!」
「思いしれ、貴様らが『英雄になどなれるはずがない』と嘲笑った幼子が、どれほどまでに至ったか」
 襲い来る氷塊を弾きつつ、リューロボロスが笑う。
「そうよ。てめぇらに引導を渡すのは、俺じゃねぇ」
「えぇ、トドメはペンドラゴ様に……いえ、もう畏まる必要もありませんか。アルトゥルさんに、決まっています」
 逸は翼を広げてモルガナを威嚇しつつ、『禍竜の毒牙』を浴びせていく。蛍の刃は再び、ライエンスの胴を抉った。
「アルトゥル様、どうか思う存分に!」
 コリーンの放つ銃弾がクロノヴェーダどもを襲った。
「下がれ、兄上!」
 ライエンスがモルガナを庇うように立つ。
「さぁアルトゥルよ、かつての憧れを、ぬしにとっての英雄を、超えていけ!」
 リューロボロスの声に後押しされるように、アルトゥルは床を蹴った。
「あなたごときが……ッ!」
 もはやモルガナの左手はピクリとも動かない。右手1本で杖を掲げたモルガナが放った氷雪が、アルトゥルに襲いかかる。そしてライエンスは槍を繰り出し、刺し貫かんとした。
 咄嗟に剣で弾いたアルトゥルであるが、あまりの衝撃に剣は手から飛ぶ。
 しかしアルトゥルはすぐさま『戦旗槍』を、ペンドラゴの紋章を背負わぬ無地の旗を翻しながら、突きこんだ。
 槍は深々と、ライエンスとモルガナをもろともに貫いた。
「俺たちの騎士は……稀代のかは知らねぇが、たしかに英雄ってやつだとも」
「はい。あの方の御心は篝火となって、私の心を照らしてくれる……だからこそ、『篝火の騎士』にはその御旗を存分に振ってほしいと思うのです」
 大きく息を吐いて座り込む逸の言葉に、コリーンはアルトゥルの横顔を見つめたまま頷いた。ネウィアの気持ちは、よく分かる。
「兄上……」
 崩れ落ちるふたりの顔を、アルトゥルは最後まで見つめていた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【託されし願い】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
【避難勧告】LV1が発生!
【プラチナチケット】がLV2になった!
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効果2【ガードアップ】がLV2になった!
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【先行率アップ】LV1が発生!
【フィニッシュ】がLV3(最大)になった!
【ダメージアップ】がLV3になった!

最終結果:成功

完成日2025年08月07日
宿敵 『静雪と嵐雪『モルガナ・ライエンス』』を撃破!