リプレイ
シル・ウィンディア
ディアボロスの、シル・ウィンディアです。
この度は、貴重な時間を頂きまして、ありがとうございます。
クロノヴェーダには色々な種族がいて、わたし達ディアボロスより個体能力や実力は上です。
前回の奪還戦みたいに、直接、皆さんへ害を及ぼす可能性もあります。
直接の命の危機やインフラ機構への打撃による間接的なものも含まれるかもしれません。
『そのような相手にどうやって勝つか?そして、どうやって守るのか』
前回は、規模が東京都内だったため、ディアボロス側の戦力が分散しても、防衛・攻撃のバランスが何とか保てました。
これが全世界規模になると、わたし達ディアボロスだけでは手が足りません。
だから、全世界の皆さんにお力をお借りしたいです。
対クロノヴェーダに対する剣には、わたし達ディアボロスがなります。
でも、剣だけでは守り切ることはできません。
全世界の皆さんの協力があってこその防衛になると思っています。
なので、皆さんの知恵と勇気を、わたし達ディアボロスに貸してくださいっ!
この会議が皆さんの力になることを願っています。
●南極世界会議開幕
この会議の為に南極大陸に建設された大会議場。
数千人が収容できる会議場の前列には、世界各国の大臣クラスが列席し、その後ろには各国の軍人を中心とした制服組が陣取っている。
中列には招待された企業や市民団体の代表、技術者などが中心に配されており、人種や年齢、性別様々な人々が、開幕を待っている。
その後方、会議場の後列には、一般公募の抽選参加者が会議場を見守っていた。
最後尾からは演台の様子は見にくいが、演題の後ろには巨大モニターが鎮座しているので問題は無い。
大会議場の様子は、会議場内の各施設で同時中継が行われている。
一般公募で当選した小さなお子様やお年寄りの中には、ホテルの部屋でゆっくり鑑賞するものも多いようだ。
この大観衆の中、南極世界会議最初の発表者として演台に向かうのは、シル・ウィンディア(虹を翔ける精霊術師・g01415)だった。
ふかふかの絨毯の上を歩き、用意された演台の前に立つシル。
リハーサルでも、同じ場所に立ってはいるが、本番の重圧というのは、やはりあるようだ。
「ディアボロスの、シル・ウィンディアです。
この度は、貴重な時間を頂きまして、ありがとうございます」
だが、勿論、ディアボロスであるシルが、緊張でトチるなどありえない。
心地よい重圧を味方につけ、シルが最初の挨拶を行うと、大会議場が万雷の拍手でシルを出迎えた。
その拍手の余韻が消えてから、シルは静かに語りだした。
「クロノヴェーダには様々な種族が存在しています。
天正大戦国の天魔武者、黄金海賊船エルドラードのアビスローバー、空想科学コーサノストラのワイズガイ、暗黒世界蝦夷共和国の新選組、そして、融合世界戦アルタン・ウルクのアルタン・ウルク。
彼らだけではありません。
これまでにディアボロスが勝利したディヴィジョンのクロノヴェーダも含め、クロノヴェーダは、皆、わたし達ディアボロスより個体としての戦闘力は勝っているのです」
シルの発言は、ディアボロスに任せれば世界は奪還できる。
既に世界の半数を取り戻しているのだから、今、必要なのは戦後の出口戦略だ……などと息巻いている政治屋などに冷や水を浴びせるものだったろう。
「先の奪還戦で、敵クロノヴェーダが最終人類史へ攻め込んで来たことは記憶に新しいことと思います。
《戴冠の戦》が始まれば、全てのクロノヴェーダが、同様に最終人類史に攻め込んで来るでしょう。
クロノヴェーダは、皆さんの命を直接害するかもしれませんし、都市を破壊し社会インフラを破壊するかもしれません。
戦場が世界中に広がり、防衛すべき地が地球規模となれば、その全てをディアボロスが守り切る事は不可能となるでしょう」
シルは、そう言って、人々に正しい戦力情報を伝えたのだ。
ディアボロスはこれまで着実に勝利を収め、決戦でも連戦連勝で来ている。
この南極大会議を、《戴冠の戦》を控えた全世界決起集会と考え、ディアボロスから、
「絶対に勝利するから安心して欲しい!」
と言った、景気の良い言葉が出る事を期待していた一般の人達表情は目に見えて曇り、不安そうな表情が顔を出す。
「ディアボロスが守る事が出来ないって、どうすればいいんだ?」
そんな小さな声が重なって、不安の種が会場にまかれ、その不安が芽吹き大きくなろうとする……。
シルは、その不安の思いが大きくなっていく瞬間に、大きく声を張り上げた。
「だから、全世界の皆さんにお力をお借りしたいです。
対クロノヴェーダに対する剣には、わたし達ディアボロスがなります。
でも、剣だけでは守り切ることはできません。
全世界の皆さんの協力があってこその防衛になると思っています!」
ディアボロスだけでは守り切れない。
だが、世界中の人々の協力があれば、最終人類史を守り切る事はできる。
世界を守るのは、ディアボロスだけで無く、一般人だけでも無い。
全ての人が一致団結して、世界を守るのだ!
シルは、会議場に集まった全ての人に自らの意志を伝えると、大きく頭を下げて協力を願った。
「どうか、皆さんの知恵と勇気を、わたし達ディアボロスに貸してくださいっ!」
一瞬の沈黙の後、不安をかき消すように、再び万雷の拍手が大会議場を包みこんだ。
勝利という目的に向かい、最終人類史の全てが力を合わせる。その機運が、大会議場に広がっていく。
人々の反応に安堵しつつ、シルは、演台を降りたのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【勝利の凱歌】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
ラウム・マルファス
話題ごとに質問時間を設けつつ進行するヨ
簡単で分かりやすい表現を心がけ、スライドも使って話すヨ
どんな質問にも真摯に答えよウ
最初の話題は、この会議の理念である人命最優先についテ
目指す雰囲気は融和・協力・相互理解だヨ
ここで想定する質問は、『人命に優劣は付けるのか』
答えはもちろん、付けナイ
先進国も途上国も、ボクたちに好意的な人もそうじゃない人もネ
回答に絡めて、次の話題として人類応援度の話をしよウ
博愛主義じゃないことを理解してほしイ
想定質問は2つ
まず『否定的な人を救うメリットがない』
これはいわゆる心理的安全性ってやつで説明するヨ
見捨てられるかも、って思ったら、心の底から応援なんてできないからネ
もう1つは、『その仕組みはクロノヴェーダと同じなのでは』
聞きにくい質問にお礼を言って、ボクもずっと考えてたと答えよウ
そのうえで否定するヨ
この質問が出ること自体が証明になるといいナ
最後に想定される侵攻ルートや初期の防衛の説明
具体的な話は分科会に任せるとして、避難や防衛についての検討状況を共有し、協力を仰ごウ
シル・ウィンディアが演台を降りた後は、それぞれの意見を持つディアボロスが、大会議場で講演を行っていく。
その多くは、《戴冠の戦》の危険を訴え、人々の結束を願うというものであった。
中には、《戴冠の戦》を直前に控えた戦況を説明し、ディアボロスの戦略方針を説明したり、ディアボロスが見据える未来の姿を語る者もいた。
それらの情報も含め、集まった人々に、これまでと違って危険は大きいが、皆の心を一つにすれば、勝ち抜く事ができるという、希望の思いを抱かせる事に成功したようだ。
だが、この流れに、ラウム・マルファス(研究者にして発明家・g00862)は一石を投じる。
『世界が一致団結すれば』
『皆の心が一つになれば』
といった、ふんわりとした『奇麗事』だけでは、《戴冠の戦》を戦い抜く事は出来ない。
そう考え、ラウムは、敢えて厳しい現実を指摘して見せたのだ。
「まずは、我々ディアボロスの行動理念について話をしようカ」
そう切り出すと、ラウムは『全ての人の命を最優先にする』という、ディアボロスの方針を説明した。
それ自体は、これまでの発表内容と大きく違いは無い。
だが、ラウムは、そこから、その方針が意味する現実的な問題へと切り込んでみせた。
「命が最優先という事は、つまり、命以外は最優先では無いという事ダ。
敵の侵攻が予測される地点からは、家財道具を捨てて、避難してもらう事になるだろウ。
勿論、避難先での衣食住は可能な限り満たせるように努力はすル。
だが、現在の生活レベルを完全に維持する事を、ディアボロスは約束する事は出来なイ。
また、既に奪還した地域についても、《戴冠の戦》までに防衛準備が整わない地域については、人々の帰還を控えているが、これも、人命最優先の考えによるものダ」
ラウムがそう言うと、特にEU圏の富裕層が否定的な反応を見せる。
その雰囲気のまま、環境系の市民団体の代表の女性が手を上げると、ラウムに質問を投げかけた。
「我々市民には、健康で文化的な生活を営む権利があります。
命さえ助かれば、それで良しとは、乱暴すぎるのではないでしょうか?」
ラウムへの質問に見せつつ、会議場の聴衆に訴えかけるような質問手法は、市民団体の常套手段だろうか……。
「当然、最善は尽ス。全ての命を救った上でなら、可能な限り個人資産や生活インフラの維持を目指そウ。
だが、命が最優先となル。人の命よりも優先すべきものが無いのだから、当然だろウ?」
ラウムは、その女性に対し、丁寧に、しかし毅然と言葉を返す。
が、市民団体の女性は、引き下がらなかった。
「仮にですよ。一人の犯罪者が、火事場泥棒を働こうと危険な場所に向かったとします。
彼を見捨てれば、都市を守り切れるが、彼を助ける為に動けば、都市を捨てなければならない……。
そういった場面であれば、命よりも優先すべきものがあるのではないでしょうか?」
女性の主張の目的は、『例外』を用意する事。
『場合によっては、命よりも、個人財産やインフラが優先される場合がある』という『例外』が認められれば、やりようは幾らでもある。
それらの『例外』は現代社会において、『あるのが当然』だ。
『例外』を自分と支持者が有利なよう我田引水する事こそが、政治家や市民団体の存在価値の一つと言っても良い。
原則と例外が無数に折り重なって、現代社会は成り立っている。
だが、この場において、その狙いは通らない。女性の主張を、ラウムは強い言葉で斬って捨てた。
「その質問が、ディアボロスが『人命に優劣は付けるのか』という問いであるのなら、答えは決まっていル。
もちろん、付けナイ……だ。
先進国の市民も途上国の市民も、老人も赤子も、金持ちも貧乏人も、ディアボロスに好意的な人もそうじゃない人もネ」
ラウムはそう宣言すると、不満を持つ多くの人に語り掛ける。
「犯罪者については、その量刑は、その者が所属している国や地域の判断に任せル。
裁判なりの結果で死刑となるのならば、それをディアボロスは否定しナイ。
ディアボロスは、クロノヴェーダから全ての人の命を守ル。
だが、クロノヴェーダが関わらない事には、望まれない限り手は出さナイ。
市民同士が殺し合ったとしてモ、クロノヴェーダの策略で無いのならば、その争いにディアボロスが介入する事もナイ。
ディアボロスは政治に口を出さナイ。
ただ、クロノヴェーダから人の命を守るために戦うんダ」
そう語り掛けたラウムは、更に言葉を重ねていく。
「ボクたちディアボロスは、クロノヴェーダに対抗できる超常的な力を持っていル。
だが、持っているのは、それだけなんダ。
誰を救って誰を見捨てるかの判断を、ディアボロスはつける事が出来ナイ。
いや、判断してはならないのだと思ウ。
ディアボロスが『自分に味方する都合の良い人を優先』して、それ以外の人を見捨てるような事をすれば、世界の秩序は崩れ去ってしまうだろウ。
世界の人々は、ディアボロスにおもねり、ディアボロスの気に入られるように行動しなければならなくなル。
それは、クロノヴェーダの支配と何の違いも無いだろウ?」
ラウムの言葉を、大会議場の聴衆が、ゆっくり咀嚼するように飲み込んでいく……。
会議場に来ていた小学生くらいの男の子の一人が、「ディアボロスは正義のヒーローなんだよね?」と、無垢な瞳でラウムを見上げて声をあげたが、ラウムはその問いにも首を横に振った。
「ディアボロスは正義のヒーローでは無イ。
キミには難しいかもしれないけど、正義の敵は悪では無いんダ。
正義の敵は、別の正義……。絶対的な力を持つディアボロスが、安易に正義を振りかざしてしまえば、それは、圧政に繋がってしマウ。
ディアボロスの力は、この世界の理の外の力なんダ。
政治に従属する事も無ければ、政治を担う事も無イ。
ただ、クロノヴェーダと戦って人々の命を守ル。この力は、そのために使うんダ」
そう言うと、ラウムは、男の子も含めた全ての人に、願いの言葉を発する。
「ディアボロスにも出来る事と出来ない事がアル。
そして、それ以上に、すべきでは無い事がアル。
だから、ディアボロスが出来ない事を、皆にはひとつづつ解決していって欲しイ」
そのラウムの願いの言葉に、反論する者は無く、一礼して演台を去るラウムを、静かな拍手で見送ったのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【フライトドローン】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
●南極世界会議、分科会と告知イベントの開始
南極世界会議が無事に開幕しました。
開幕からのディアボロスの講演により、世界会議の会場の人々は、《戴冠の戦》に向けてディアボロスに全てを任せるのでは無く、自分達の役割を果たし自分達の手で未来を掴むのだという意欲を強く持ってくれたようです。
この後のスケジュールは、国や地域の代表者や関係者を集めて重要課題を個別に話し合う分科会と、主に一般公募で参加している人々向けの告知イベントが予定されています。
分科会の成果は、それぞれの課題への世界の取り組み方に大きな影響を与えるでしょう。
告知イベントについては、《戴冠の戦》に向けて、同様のイベントが世界各地で開催される為、人々に情報を行き渡らせる事が事が期待できます。
《戴冠の戦》を戦い抜く為にも、世界会議を有意義なものとしてください。
エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
「分野間の連携を活かした、避難マニュアルの作成」を(防衛以外の)分科会で行う
「備え→敵襲の報せ→避難まで」の流れを横断的にマニュアル化し、各地での実現に繋げる
分野を超えた連携体制を作りましょう
・お願いする事項
警察・消防には「避難の実働部分」を
最適な避難経路、避難所への誘導、パニックの抑制等の手法を検討
火災や救助対応、救急車の出動から医療への連携
建設・土木・農林関係者には
避難所に適した建築や、既存建築の補強プラン作成
実際の建築と資材の確保計画
地方都市の首長には
プランに合った避難場所の選定と、確保
避難所運営の人員確保、避難マップを作成し住民への周知
避難所の物資、医療、教育の手配
流通企業には
建築資材・生活物資の運搬
避難時の移動にバス、タクシー等を持つ地元企業との連携
通信企業には
ディアボロスを含めた情報共有システムの提供
(質疑)
今から対策を始めて間に合いますか?
→各分野での連携体制を取ることで、既存の強みを活かします
突然の襲撃に、本当に対応できますか?
→マニュアルに基づき、避難訓練を行いましょう
●南極世界会議分科会
南極世界会議の開会式と、引き続き行われた大会議場での会議は一段落を迎えた。
会議場に集っていた参加者達は、それぞれに移動を開始する。
公募で参加した一般の方々は、興味を持った告知イベントへ。
招待された関係者は、軍事関係者は防衛系の分科会へ、消防や警察は避難に関係する分科会へと、各々の専門性に合った分科会へと向かっていく。
そんな中、大会議場の前列を占めていた政府高官の多くが集まったのが、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)の分科会であった。
エトヴァの主催した分科会の主題は『分野間の連携』だ。
その目的は、専門性のある分科会で話し合われる内容を、有機的に繋ぎ合わせる事を目的としている。
より高次の判断を行う政府高官にとって重要な案件であるのは間違いなかった。
軍隊、警察、消防、市役所、学校などといった公的機関だけでなく、民間企業や市民団体、宗教団体、町内会、地方の名士、土着の反社会的組織……。
これらの様々な組織が最高効率で協力し合うのは夢物語だろう。
だが、《戴冠の戦》という圧倒的な脅威から人の命を救うため、その夢物語に一歩づつでも近づこうとする意志が、政治には必要なのだ。
「この分科会の目的は、『備え→敵襲の報せ→避難まで』の流れを、横断的にマニュアル化する事です。
ですが、まずは、その前提について説明させていただきたいと思います」
エトヴァが分科会の目的を改めて述べると、参加者は同意の頷きで応えてくれる。
その反応を見て、エトヴァは、配布した資料と合わせて、『分野間の連携』の前提について説明を開始した。
「軍隊、警察、消防などは『避難の実働部隊』となります。
これらの組織が同じ現場で活動するにあたっては、その協調が重要になります。
組織間の縄張り争いや、管轄の違い、法律的な制限など、各国ごとに事情は大きく異なるでしょう。
ですが《戴冠の戦》という事態に際し、指揮の一元化が非常に重要となるのは間違いありません。
日本には『船頭多くして船山に上る』という諺があります。
《戴冠の戦》の間だけ有効な時限立法など、多少強引な手法をとっても、これは成し遂げていただきたい。
ですが指揮の一元化は『国家規模の中央集権』を意味しません。
緊急時に、首都に連絡を入れて指示を待つのでは、対応に致命的な遅れが生じてしまうからです。
クロノヴェーダの侵攻は、常識を疑うような奇想天外な方法で侵攻して来る場合がありえます。
実際に前線で、その状況を自分の目で見る事の出来る『指揮官』が避難において必要となる。その点に疑いの余地は無いでしょう。
例えば前線となる地方の首長などを担当する『指揮官』とし、その『指揮官』に一任する『地方分権』を行った上で、その地域の指揮の一元化を行うのです」
政府高官の中には、『地方分権』という言葉に、眉を顰める者も散見された。
だが、必要性についての理屈は理解できる。参加者の多くは、同意を示してくれた。
「先ほど仰られた『指揮官』というのは、地方自治体の首長、或いは政治家のみに限定される考えですか?」
この説明の後には、参加者から当然のようにその疑問が上がる。
「ディアボロスは政治に介入しませんので、その質問には答えられません。
《戴冠の戦》開始前からも、避難所や物資をどのように準備するかにおいて、多分野と連携する必要が生じる職務になる以上、地域の事情を鑑みて最善の選択をしていただく事になるでしょう。
一般論としては、最善の『指揮官』が政治家であるのか軍人であるのか民間人であるのかは、避難活動の成果とは直接的な因果関係は無いと思われます。
ただし、ディアボロス側が情報の提供を行う場合がありますので、地元の通信企業などとも連携し、連絡がつけられる状態にしていただきたい」
エトヴァは、そう答えを返す。
国や地域によっては連携を司る『指揮官』に国内の少数民族のリーダーを選任するか、あるいは中央から派遣された役人を選ぶかで、高度な政治的問題になりうるだろう。
地域性によっては、宗教指導者が、全体の指揮を取るのが最も効率が良いという地域もあれば、地方財界のドンが声を上げれば全体が動く地域もある。
多くの組織を束ねて指揮できるカリスマ性があるのならば、芸能人のような大衆からの人気しかない人が選択肢に入る可能性すら出て来るかもしれない。
このエトヴァの回答に、小役人タイプの参加者が非難の声をあげようとするが、大局が見えている参加者に窘められて席に座り直したようだ。
『地域』の大きさについてすら、エトヴァは特に指示することはなかったし、ディアボロスは内政に干渉しないのだから、あとは個々の国の中で対処するしかないのだ。《戴冠の戦》までの時間を考えれば、そんなことにこだわっている暇が無いことも明白である。
「それぞれの組織が出来る事については、それぞれの分科会で詰めている事でしょう。
一つ一つの組織は、『住民の避難』という作品を奏でる、楽器の奏者です。
彼らが、分科会での話し合いを通じて、自分が出来る最善を尽くしてくれると信じています。
そして、この楽器の奏者達を一つのオーケストラにまとめあげる、指揮者の役割を務めていただきたい」
エトヴァが演奏家らしくまとめると、某国の大物政治家が、大仰に手をあげた。
「その『指揮官』にはディアボロスが就く事もあるのですかな。そうであれば、全ての『指揮官』をディアボロスにしてしまうという手もあるでしょうな」
「私達ディアボロスは、《戴冠の戦》の主戦力ではありますが、指揮者とはなりません。
人数も足りませんし、ディアボロスは政治には関わるべきでは無いからです」
ディアボロスの立場について、改めて問いただす問いに、エトヴァがそう答えると、大物政治家は重ねて質問を発した。
「ならば、その地域のディアボロスは、『指揮官』に従うと考えてよいのだろうか?」
「いえ、ディアボロスは、ディアボロスの行動理念に従って行動します。
ディアボロスの行動は、ディアボロスの理念によって行われます。
ディアボロスの理念は『死者を1人も出さない』事であり、その目的をもって行動します。
避難がうまくいかないようならば、ディアボロスは逃げ遅れた市民を救うために全力を尽くすでしょう。
逆に、避難がうまくいくのならば、ディアボロスは、クロノヴェーダへの反撃、そして撃退に力を注ぐ事が可能となるでしょう」
堂々と否定してみせるエトヴァに、政治家の側も我が意を得たりと頷く。
「貴方がたが『指揮官』を求めるのも、戦いに集中できる環境を作るため。そういうことですな」
この質疑応答によって、ディアボロスの独立性と立場が確定する。
対クロノヴェーダの唯一の防衛戦力であるディアボロスは、どの国の政治にも干渉せず、またどこかの国の指示を受けることもない。
その一線を守る限り、最終人類史側も従来通り、ディアボロスを『人々を守り世界を取り戻すヒーロー』として遇することができる。
ディアボロスの発言には、各国個別の事情を無視しているように感じられるものがあるかもしれない。
だが、それを指摘したところで意味がない。ディアボロスは政治の専門家ではなく、その発言を政治的に利用しようとする行為に意味はない。そうした確認であった。
「ディアボロスからは、指揮官に対して、判明している最新情報を提供する用意がありますが、作戦の要請は行いません。
また、避難活動中の警察官や消防官などに対しての指揮も行いません。
全体の状況を確認せず、指揮官の統率を乱すような指示を出せば、避難活動にとってマイナスにしかならないでしょう」
「それは突然の襲撃に対しても、東京で用いられたような各種パラドクス効果の使用を一切行わない考えであるということですか?」
エトヴァの発言に、避難活動事態への参加者から指摘が飛ぶ。
火刑戦旗ラ・ピュセル奪還戦では、ディアボロスは多数の残留効果を使い、人々を守ることに成功した。
だが、残留効果が無ければ、それが不可能であったことは言うまでもない。
「避難がうまくいかない状況であれば、我々が現場に出向き、パラドクスの各種効果で支援を行う必要が生じるでしょう。
ですが、クロノヴェーダの撃退に当たれる防衛戦力はディアボロスしかいません。
我々ディアボロスは、戦闘にのみ集中できる状況となっているのが最善なのです。
各国政府が避難訓練などを通じ、ディアボロスの支援を必要としない状況にするだけの指導力を発揮して下さることに期待しています」
説明を加えたエトヴァは、端末を操って、スクリーンに画像を表示した。
組織間の相互連携について、考えられる問題と対処法、優先順位のつけかた等、考えるべきことは多数存在している。
分科会のメインとなる、『連携のための情報のすり合わせ』を、集った者たちは根気強く続けていった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【液体錬成】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
一ノ瀬・綾音
【医療関連分科会】
戴冠の戦でどうしても一般人への被害は出てしまうかもしれない
復讐者も頑張るけど、全ての一般人を何の怪我1つなく守り切ることは恐らくできない
とりわけ新宿島もあって復讐者は日本に多いが、日本では病院は閉鎖が続いている
手の空いたお医者さんや『国境なき医師団』の方とかがいればぜひ協力を願いたいな
医療に必要な医薬品、治療器具、場所の確保についてや実際に事が起きた時の手筈について会議をしていこう
もし野戦病院の経験がある方がいたらノウハウを聞いてそれを参考に色々固めていきたい
薬の輸送については輸送関連の分科会とも連携すればより良くなるかな?
『仮に薬がない、薬を輸送する手段が破壊されたなどで医療ができない場合は?』
万が一の時には回復に必要な時間を短縮する残留効果はあるよ
だけど、それを前提にしないでほしいんだ
復讐者は必ずいれるわけではないから
少しでも復讐者なしで出来る事は可能な限り皆の手でやってもらいたいから
そうすればその分復讐者が前線に出れるので結果的に傷病人の数は減ると思うんだ
政府高官が多く出席したエトヴァの分科会と打って変わって、一ノ瀬・綾音(色彩に溢れし少女・g00868)が主催した分科会は、医療従事者が多く集まっていた。
彼らは、パラドクス効果の【活性治癒】の効果に大きな興味を持っているようだ。
最終人類史では、パラドクス効果が10lvで発揮される……と言われているが、実際には、最終人類史の全ての地域でそうなるわけでは無い。
多くのディアボロスが住んでいる場所であれば、当然そうなる……というだけで、ディアボロスが一人もいない場所まで、その効果が行き渡っているわけでは無い。
つまり、ディアボロスが訪れないような僻地では、パラドクス効果の恩恵は受けられないのだ。
ディアボロスが出向けば、パラドクス効果が発生する為、ディアボロスには体感しにくいのはやむを得ない所だが。
綾音が目をつけたのは、この問題となる。
クロノヴェーダが攻めてくる事で、多くのディアボロスが駆けつけてくる為、パラドクス効果が10lvになるのだ。
つまり、【活性治癒】を始めとした、有益な効果が常に発生するようになる。
このパラドクス効果10LVになった場合は、通常の医療活動とは全く違う基準での医療行為が必要となるのだ。
「……と、このように、【活性治癒】のパラドクス効果がMAXである場合、回復速度が1000倍以上になるんだよ。
更に、この効果で24時間以内に回復するようになった人は、一瞬で全快してしまうんだ。
回復速度が1000倍で24時間ということは、全治3年程度の怪我は、瞬時に治ってしまう計算。
実際問題として、全治3年の怪我なんてまずないから、治る傷は瞬間で治る……と考えて貰えば、わかりやすいかな?」
持ち込んだラットでの実験を見せる綾音に、集まった医療従事者は感嘆の声をあげる。
中には、自分の手をメスで切って、瞬時に回復する様子を確認するものもいるようだ。
「注意点は『そのままでは、回復しない傷』には効果が無い事だよ。
【活性治癒】環境下での治療は、患者をいかに早く『このまま安静にしていれば回復する』という状態に持っていくかを重視しないといけないんだ」
綾音がそう言うと、集まっていた医療従事者は、手帳やスマホに素早くメモをする。
さすがは、世界各地から選ばれた優秀な医療従事者、勉強する意欲も人一倍のようだ。
なお、今回の分科会で対象としている負傷者は、クロノヴェーダからの避難中の事故や、戦闘の余波による建物の崩落で負傷した『一般人』だ。
ディアボロスの負傷は休憩を取れる状況であれば10分程度で回復するし、一般人が逆説連鎖戦に巻き込まれれば、その時点で命はないため、あえて述べることはしていない。
「『そのままでは、回復しない傷』で、一番多いのは大量出血だね。
少し切ったくらいの傷なら一瞬で回復するけど、そのままでは出血死するような怪我は、放置すれば死んでしまう……。
【活性治癒】環境下の治療行為の多くは、放置すれば死んでしまう患者の応急処置となると考えるのが良いと思うよ。
逆に、応急処置が成功して命の危機を脱すれば、一瞬で治癒が行われてしまうから、すぐに自分の足で避難できる。
骨折なども、折れた状態によっては『自然回復』しない場合もある。
この場合は、添え木などで応急手当てをする必要があるかな」
綾音は更に、【活性治癒】の効果で医療の仕事が無くなって別の仕事をしている医療関係者などに声をかけ、世界各地に医者として出向して貰うという計画も披露する。
ディアボロスが居ない地域では従来の医療活動が重要になるので、最先端の医療を学んだ日本の医療従事者の仕事は多い。
当然、日本の医療従事者は、【活性治癒】下での治療のノウハウも高いので、緊急時の応急手当などの対応にも不安も無い。
平時と緊急時の双方にメリットのある綾音の提案に、多くの医療従事者が、心から賛同を表すのだった。
最後に綾音は、クロノヴェーダに襲撃された場合の行動指針として、
====================
野戦病院の目的は『自然に回復できる状態まで治療する』事なので、その為に必要な物資を多く用意する。
一瞬で傷が治った患者にはすぐに避難を再開して貰い、常に新しい患者を受け入れる態勢を整える。
人命救助したディアボロスが、怪我人を運び込む事が出来るように、野戦病院を設置したら、位置情報をディアボロス向けに場所の告知を行う。
運び込まれる患者を受け入れる態勢を整えて、患者を連れて来たディアボロスがすぐに次の救助に向かえるようにする。
四肢の切断など、命に別状はないが完治が見込めず、自力での避難が困難な患者の避難方法について、現地の軍や警察などと協議して対応を決めておく。
====================
など、実際の現場に即した形で説明を行い、分科会を終了する。
参加した医療従事者たちも、この分科会の成果によって、手ごたえを感じる事が出来たようだった。
《戴冠の戦》後の医療体制は、大きく向上するだろう。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【友達催眠】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】LV1が発生!
リューロボロス・リンドラゴ
◯イベント
対クロノヴェーダTCG配布&試遊会
◯対象
子ども。カジュアルだと女児にも人気なのもあるからの。
その辺も参考にして、広く子ども受けするゲームに。
ルールもだがイラストも大事よ!
◯準備
TCG本体。
対人しにくい子用に筐体版も用意。
ルールは紙だけでなく、動画やデジタルマニュアルで視覚支援よ。
我自身幼子だからの。
ネットとかだけでなく学校とかでも宣伝よ!
幼子間の情報の広がり馬鹿にならんぞ?
◯狙い
クロノヴェーダや復讐者の特徴をルールや効果に落とし込むことで遊びながら学べるだけでなく。
両陣営やクロノオブジェクトのコストを、感情エネルギーや応援、季節イベント、避難といった一般人カード(子ども達の絵)で貯めれる形式にしておくぞ。
どれだけ強いカードも一般人カードあってこそ。
自分達の心や行動、存在そのものがとても大切なのを感じてもらいたいの!
◯当日
TCG告知勢とのデモンストレーション対戦などで魅せつつ!
負け続けたり、悩んでおる子にヘルプ!
遊びでもあるのだ!
楽しめるのが一番だからの!
さあ、我と共に遊ぼうぞ!
●南極世界会議告知イベント
リューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)が主催して準備した告知会場には、学生を中心とした者達が多く集まっていた。
彼らは、入り口で配布された母国語の『カードパック』を開封して、知り合った者同士で中身を見せ合ったり、書いてあるテキストについて、質問をしたりされたりと忙しない。
その周囲には、教育関係者や広告代理店、ゲーム会社社員などが、興味深そうに様子を伺っていた。
参加者たちの入城が一渡り終わった所で、リューロボロスが演台に立った。
人々の注目を集めるように、音楽が響き渡ったところで、リューロボロスが言葉を発する……。
「我は龍。我こそはドラゴン。牙無き子達の復讐者也。少年少女達よ、我が作りしTCGはしかと受け取ったか」
強者の雰囲気を漂わせて、リューロボロスがそう言えば、イベント参加者達が大きな声で返事をする
イベント参加者達が受け取ったのは、リューロボロスが企画したTCGカード。
楽しく遊べば、クロノヴェーダやディアボロスの戦い方が良くわかる。更には、自分達がどう行動すればよいかの指針にもなる、優れもののカードゲームなのだ。
勿論、教育関係者が、やっつけで製作するような『勉強の役に立つのは判ったけど、面白くない!』というものとは一線を画する。
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カードを見るだけで楽しく、デッキを考えるのが面白く、ゲームで遊べば盛り上がる
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そんなゲームに仕上がっている。
そして、更に、
「さて、ゲームを楽しむ前に、暫し、この映像を楽しむが良い」
リューロボロスがそう言うと、会議室の天上から大スクリーンが降りて来ると、この日の為に、最終人類史のアニメスタジオが製作した入魂のオープニング映像が主題歌と共に上映が開始された。
なお、主題歌やセリフは、スクリーンの後ろでディアボロスが肉声で歌ったり喋ったりしている。
こうする事で、多種多様な言語を持つイベント参加者全員が、歌の意味を理解できるのだ。
更に、カードは多言語対応で作成されており、配布時に自国語のカードを配布されている。また、ゲームを遊ぶ時は、スマホに専用アプリを入れれば、そのカードの自国語訳をすぐに確認する事も出来るという、至れり尽くせりの内容となっているようだ。
なお、ゲームアプリとしても配信される他、各国でのカード頒布時は、それぞれの国や地域にカスタマイズされて出荷される予定だ。
アニメ関係者入魂の映像が若い参加者達の心を鷲掴みにし、そして、ゲームへの期待を大きく膨らませていく。
その様子を、リューロボロスは、会心の笑みで見守るのだった。
そして映像が終わると、リューロボロスは、自らのデッキを持って前に出た。
「さあ、我と共に遊ぼうぞ!」
リューロボロスは、そう言うと、早速ゲームを開始する。
リューロボロスの所には、参加者達が次から次へと押し寄せ、リューロボロスにコテンパンにされていく。
しかし、暫くすると、トレードでデッキを強化した子供達が、リューロボロスに良い勝負をするようになり、最後の頃は、
「ぐぬ、この我を倒すとは、なかなかやるな」
リューロボロスに勝利する参加者も現れて、リューロボロスが逆にコテンパンにされる場面も出てきていた。
そうなれば、さらに熱狂するという好循環で、会場が熱気に包まれていた。
だが楽しい時間は永遠には続かず、遂に、イベントの終了時間がやってくる。
遊び足りないような若年の者達、彼らからルールを教えて貰いながら、勉強する教育関係者……。
ゲームの販売から流通をどうするか話し合う大人達が、見守る中、リューロボロスは、告知イベントの終了を宣言した。
「このTCGは、全世界同時に販売し、何処でも誰とでも遊べるようになる。
お前達は、このTCGの最精鋭であり、我に勝利したものは、世界最強といって過言では無い。
自国に帰った後も、地元の友達と、このゲームで遊ぶがいい!」
リューロボロスの言葉に、参加者達は大きな声で元気よく答え、そして、満面の笑顔と鍛え抜いたデッキを持って、会場を後にしたのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【水面走行】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
ファリダ・フェミフェミ
いやー、言っちゃったからにはねぇ?
「みんな~~、ディアボロスの水着がみたいかー!」
ドォォォ
見たくない?
いいや、女性だって男性のイケメン水着好きだよねー!!
後ろにどでかい昨年水着コンテスト総合1位の写真をドバーンと出して
「見てえよなぁ~~!!!!」
「あ、ごめん間違えた」
「こほん……地獄変エネルギー欲しいよなぁ!!」
おっけー!じゃあ今年の水着コンテストは8/9に大決定!!!
メーカーやデザイナー、ブランドの人は気合いれてけー!1
じゃ、みんな楽しみにね!
私も露出の高いやつで気合いれてくからねー!
あ、ちょっとまって警備員さんまだ私はなにも
リューロボロスのTCG会場から少し離れた告知イベント会場。
そこに集まったのは、公募で参加した紳士淑女の皆々様。
更に芸能関係者や雑誌記者などの業界人、そして、たくさんのカメラの群れ。
世界中に配信される南極世界会議には、プレス関係者も多く来ているのだが、その半数近くが、この告知イベントに集結しているような勢いだ。
そんな、ある種、記者会見のようなイベント告知会場に、魅惑の水着姿のファリダ・フェミフェミ(⋈◍>◡<◍)。✧♡・g06127)が、手を振りながら入城して来る。
「みんな~~、ディアボロスの水着がみたいかー!」
そのファリダの第一声に、紳士淑女と芸能関係者が腕を振り上げて歓声をあげた。
極寒の南極(体感温度は普通)で、水着を着た美女の登場に盛り上がっているのだろう。
更に、ファリダの仕込みで、男女とりまぜて水着のディアボロスが登場する。
後方の大型ヴィジョンでは、昨年水着コンテストの上位優勝者達の水着ピンナップを次々と表示されていく。
公式に発表されている映像以外にも、ディアボロス達が個人的にとったオフショットなども、手に入るだけ入れて流しているようで、紳士淑女達の幾人かはティッシュを捻って鼻に詰めているようだ。
「見てえよなぁ~~!!!!」
会場の反応に気を良くしたファリダの本音が漏れ出るが、さすがに、これでは、南極世界会議の品格が疑われてしまうだろう。
「え~、コホン」
小さく咳払いしたファリダは、スタッフから手渡されたパーカーに袖を通す。
その間に、仕込みの水着ディアボロス達もスタッフルームに引っ込み、大型ヴィジョンの映像も、美しい環境映像に入れ替わっていた。
「《戴冠の戦》を戦い抜くには、あなた達の熱い思いの力……人類応援度が必要なの!
あなた達の応援があれば、ディアボロスは何度倒れても、再び起き上がり戦い続ける事が出来る!
水着コンテストは、私とあなた達を繋ぐ、希望の絆。
《戴冠の戦》という大戦の前に、この絆を、最高潮に高め合おうよっ!」
ファリダはキラキラと目を輝かせ、集まった参加者とテレビカメラに向かって、お願いポーズを作り、あざとい上目遣いを披露する。
その目線にヤられた参加者達が、
「ファリダちゃんの為なら、なんだってするよ!」
「世界を救う為ならしょうがないよね!」
「べ、別に、水着には興味無いけど、クロノヴェーダと戦う為の助力なんだからね!」
「推しの水着が見れるという事実の前に、反対する理由などあるだろうか? いやない」
「ファリダちゃん、脱いでーー!」
と口々に賛意を表明し、カメラのフラッシュが焚かれまくる。
声援に後押しを受けたファリダは、折角羽織ったパーカーを脱ぎ捨てた。
飛び上がってポーズを取り、空中で声高らかに宣言する。
「おっけー! じゃあ今年の水着コンテストは8/9に大決定!!!
水着パワーで《戴冠の戦》もガンバろー!」
このファリダの宣言により、2025年の水着コンテストの日付が大決定されるのであった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【現の夢】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
●南極世界会議分科会と告知イベントの終了
南極世界会議の分科会は、エトヴァの提唱した避難関連の議題を中心に専門家との調整を続け、実りある成果を出す事に成功しました。
この成果があるのならば、現場で、ディアボロスが避難の指揮をとる必要は無くなるでしょう。
下手に指揮系統を乱す事で、被害が増える事を考えれば、避難は、指揮官の指示に任せる事が最善となるはずです。
他にも、防衛関連や科学技術に関する分科会も行われている。防衛関係では世界中の軍事関係者が一堂に集った事で、大きな成果を得る事が出来たようです。
科学分野については、まだまだ意識改革の段階であるので、即時的な効果は見込めないが、科学者による過度な行動などを抑止する効果は期待できるでしょう。
そして告知イベントも大いに盛り上がりを見せました。
地道な周知活動の成果によって人々の理解が深まり、ゲームやVRでの疑似体験などで、より直感的に情報を得る事が可能になったようです。
更に、世界各国で発売されるTCGゲームは、子供達への啓蒙活動として大きな成果が期待できるでしょう。
また、告知イベントでの宣言により、2025年の水着コンテストの日程は《戴冠の戦》直前の『8月9日』に前倒しされる事が決定されました(受付は、6月27日に開始となります。続報をお待ちください)。
そして、南極世界会議は遂にクライマックスへ……。
世界会議の最後を飾る、大会議場でのディアボロスの講演が始まろうとしています。
ピオニア・フィングストローゼ
議題は帰還地域です
今は予測するしかない事も多く、戴冠の戦で不測の事態は起きるでしょう
戦況がどれだけ優勢となるか、最終人類史が戴冠の戦に勝ったらどうなるか、今は考えるしかありません
ですが、私達は戴冠の戦に勝利します
世界を取り戻し、安全になれば、いずれ全人類の帰還を成し遂げることを目標とします
予想する質問:
『帰還の順序をどうやって決めるのか』です
答え:
今は社会的不安のある地域やディヴィジョンに近い危険地域では帰還を行なっていませんが、安全上の理由によるものです
帰還しても生活がままならない状況では、犯罪や飢餓や医療不足などの不幸な事態も起こり得ます
準備を整えてから帰還を行うことが、人命最優先の目的にかないます
それ以外の理由では、私達は帰還地域を区別しません
私達は全人類の帰還に向けて行動します
それまで、未帰還の土地への干渉は避けましょう
私達がそうすれば、世界の秩序が崩れてしまうかもしれません
ディヴィジョンの危険度も一見ではわかりませんので、攻略に帰還を待つ人口の多さを理由にすることはありません
●南極世界会議クライマックス
南極世界会議は、大会議から引き続いて行われた様々な分科会と、告知イベントを大盛況で終え、1週間の会期も終盤へと差し掛かっていた。
そして世界会議の舞台は大会議場へと戻って来る。
集まった顔ぶれは1週間前とほぼ同じだが、この1週間での体験や学習により、集まった人々の目は大きく輝いている。
そんな数千人の観衆を前にして、ピオニア・フィングストローゼ(一凛華・g11346)は、覚悟と共に演台へと向かい、そして慣習に向かって一例をすると話を始めた。
彼女の話す議題は、『最終人類史の『帰還』地域』について……多くの関係者の利害が対立する、最大の懸案事項である。
「私がお話しするのは、最終人類史への人々の『帰還』についてです。
この南極世界会議を行うに際して行った調査により、最終人類史に奪還されている一部地域の『帰還』が滞っている事への懸念が示されていました。
最終人類史に奪還されたというのに、『帰還』が行われていない地域は多くあります。
その多くは、『融合世界戦アルタン・ウルク』に接した地域です。
各地で防衛施設が建設されている事から、このディヴィジョンが《戴冠の戦》において、どれほど危険であるかは、理解して頂けるでしょう」
ピオニアの言葉と共に、会場のモニターには中国の都市部を守るべく建設の進む『対アルタン・ウルク大防壁』の様子が映し出される。
「現在、世界各地で建設されている防衛施設を中心に、アルタン・ウルクを始めとするクロノヴェーダから最終人類史を守る防衛戦を行うため、準備が行われています。
《戴冠の戦》ですので、これらの防衛戦を行う戦線を『戴冠戦線』と呼びましょう。
『戴冠戦線』ではこれまで、新宿島の国立競技場で開催していた『闘技場』のノウハウを結集し、ディアボロスがチームを組み、世界各地に侵略して来るクロノヴェーダを迎撃することになるでしょう。
《戴冠の戦》では、この『戴冠戦線』でクロノヴェーダの侵攻を受け止めている間に、パラドクストレインで敵地に侵攻したディアボロスが、敵勢力を打倒する作戦を実行する事になります。
『戴冠戦線』は激戦となります。戦況によっては戦線を後退させる事もありえるでしょう。
その為、『戴冠戦線』の戦場となる地域周辺での『帰還』は行われていないのです」
ピオニアの説明に、多くの人は納得の表情を見せる。
現在、『帰還』が行えていない地域といえば、融合世界戦アルタン・ウルクに隣接するロシアや中東、中国の農業地域を除く一帯だ。
《七曜の戦》の中国におけるアルタン・ウルクの攻勢の様子や、現在も起きている融合世界戦アルタン・ウルクでの戦いでの様子は情報収集の必要から、豊富な録画記録が残されている。
これから、アルタン・ウルクの脅威に晒される地域の住人を無理に『帰還』させ、犠牲者を増やすのは本末転倒である。
その地域の『帰還』は、安全になってからで良い……。
映像に映し出されるアルタン・ウルクの姿は、人々にそう考えさせるのに充分なものだった。
ピオニアは《戴冠の戦》までに防衛体制の整備が不可能と判断された地域の『帰還』については行っていない事も説明する。
紛争地域などが主であった為、こちらについては、論理的に考えて妥当であるとして、反対意見は特に出なかった。
しかし、全ての関係者が納得してくれたという事は無い。
蹂躙戦記イスカンダルの奪還以降もほぼ『帰還』できない状態にある中東の関係者をはじめ、対アルタン・ウルクの防衛戦ではディアボロスと密接に協力することになる中国等からも、大々的な『帰還』を望む意見は寄せられる。
『我が国の兵士は人類のための戦いを恐れることは無いので『帰還』させ、ディアボロスの戦いに協力させて欲しい』と好意を見せつつ語る意見もあれば、『危険があるというのならば、全てが終わり安全になってから『帰還』を行えば良かったのでは?』という極論すらある。
中でも最も多い意見は『天正大戦国と隣接している日本の地域では『帰還』が行われている。これは、恣意的なもので特権的な扱いではないのか?』というものであった。
その質問に、ピオニアは想定内だと冷静に答えを返す。
「ディアボロスがクロノヴェーダに勝利するには、『応援』の力が重要です。
日本の京都・奈良地域は、最も初期に奪還した地域であり、『帰還』した彼らの『応援』は絶対に必要でした。
これまでの最終人類史への『帰還』が行われなければ、我々ディアボロスは既に敗北し、最終人類史は失われていたに違いないのです。
また、ディアボロスの本拠地である『新宿島』である事から、周辺地域となる東京23区や、横須賀市の人々の『帰還』も必要でした。
勿論、天正大戦国と接している事で、この地域の人々は危険に晒されようとしています。
それでも、今も彼らは、ディアボロスを応援し続けてくれているのです」
この回答に対して、不満を表していた地域の関係者も、口を閉ざす。
当時必要であったが、現在は緊急性が低く、敵対ディヴィジョンと隣接しているので行えない……その状況の変化に対して、この場で不平を述べても意味は無い。
そう判断したようだ。
「勿論、私達ディアボロスは全ての地域の人々、全人類の『帰還』に向けて行動しています。
私達ディアボロスが、《戴冠の戦》に勝利すれば、必ず、全人類を『帰還』させます。
ですから、それまでの間、『帰還』業務については、ディアボロスに一任して頂きたいのです。
最終人類史に『帰還』した人々の応援がディアボロスの力になるのですから、私達ディアボロスが『帰還』を遅らせる理由はありません」
ピオニアはそこで一度言葉を切り、先の火刑戦旗ラ・ピュセル奪還戦を思い出すよう人々に促す。
「4月に東京へ攻め入ってきたキマイラウィッチは、私達ディアボロスと同じく『復讐』の感情を力とする種族でした。
彼女達は『復讐』の力を高めるため、あらゆる者に『復讐』心を抱かせようとしていました。
勝利のみを考えれば、奪還地域全ての一般人をただちに『帰還』させ……そして、死なせることで、最終人類史全体のクロノヴェーダに対する『復讐』の感情を強化する。そうした判断もあり得たかもしれません」
復讐の感情には未知の要素も多いが、おそらく、ディアボロスはそちらの手段を選ぶことも出来た。
だが、自分の仲間達が選んだ道がそうではないことに誇りを感じつつ、ピオニアは改めてこの大会議の理念を振り返る。
「しかし、ディアボロスは可能な限り、『全ての人の命を救うこと』を目的に行動します。
『帰還』を行った結果、多くの命を失ってしまうようであれば、『帰還』を行う事は出来ません。
『帰還』の判断は、『帰還』した一般人が生きていける準備が整ったかどうかで判断し、政治的な思惑は持たない事を、改めて明言させていただきます」
ピオニアが、こう総括すると、大会議場のあちこちから賛同の拍手が起こると、不平を持っていた人も、その拍手に加わり、万雷の拍手が巻き起こる。
こうしてピオニアは、多くの人に理解を得られたことへの達成感を得て、心地よい疲労と共に、演台を離れたのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【狼変身】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
クィト・メリトモナカアイス
こほん。今日ははお集まりいただきありがとー。
戴冠の戦まであと少し。
その時がくれば、きっと否応なしに皆戦いに巻き込まれることになる。
不安もあると思う。
けれども。
戦いは我ら復讐者だけで行っているものではなく、皆の協力あってこそ。
先日奪還したアフリカ大陸南部では、新宿島の皆に研究してもらった巨大神像が大きな役割を果たした。
汝らには出来る事がある。我らにも出来ない事がある。
力とは戦う力だけではない。
戦う力がないのならば、それは我らが力になろう。
会議本番では事前に募集した「人及び物資の移送がしづらくなった時の人々の生活に与える影響と課題」について議論。
特に日本から遠い欧州やアフリカの西部の人たちから生活が不安だと質問がきそう。
確かに陸路はアジアの2つのディヴィジョン、海路も南米を支配するディヴィジョンによって制限されている。
故に。
戴冠の戦までに南米を支配する「黄金海賊船エルドラード」の奪還をここに宣言する。
我らは必ず成し遂げる。その後の輸送の準備をお願いする。
いい感じに盛り上がる話題で〆る。
万雷の拍手を背に、ピオニアが壇上を離れる。
続けてその席に登ったのは、クィト・メリトモナカアイス(モナカアイスに愛されし守護者・g00885)であった。
クィトは、会議参加者の熱気が薄れるのを待ち、注目が集まった丁度良いタイミングで、
「今日ははお集まりいただきありがとー」
と元気よく挨拶をして見せた。
重い話題が多かった大会議で、クィトの元気さは、一服の清涼剤として、参加者の緊張感を緩ませる。
人々の表情を確認して、クィトは語り始める。
《戴冠の戦》の危険性や、それでも戦い抜く決意と勝利への展望を語り、人々に希望を与えるために。
「《戴冠の戦》まであと少し。
全てのディヴィジョン境界が失われれば、安全地帯だと思っていた地域に奇襲を仕掛けられるなど、状況によっては、否応なしに戦いに巻き込まれることもあるだろう。
クロノヴェーダは、最終人類史の常識が通用しない敵だから、不安も大きいと思う。
けれども。
戦いは我らディアボロスだけで行っているものではなく、皆の協力あってこそ。
先日のアフリカ大陸南部の奪還には、最終人類史の皆に研究してもらった『巨大神像』が大きな役割を果たした。
汝らには出来る事がある。我らにも出来ない事がある。
力とは戦う力だけではない。
戦う力がないのならば、それは我らが力になろう」
1週間の世界会議を経た人々にとって、クィトの言う危険は周知の物であり、そして、勝利への希望もまた、その心に焼き付けられている。抽選参加者や、ゲームを楽しんでいた子供達でさえ、その意志に揺らぐところは見受けられなかった。
(「善き哉善き哉。それでこそ、南極世界会議に参加した甲斐があるというもの」)
クィトは、内心でそう感心すると、これからのディアボロスの戦いについて、話を続けていく。
「この戦いは、わずか18平方キロメートルしかない『新宿』以外の全ての大地が、クロノヴェーダに奪われた事に始まった。
新宿に集った最終人類史の人々は、世界のほぼ全てを奪ったクロノヴェーダに怒り、復讐と大地の奪還を願った。
我らディアボロスの力は、この『復讐』の心が根源である。
だが、『復讐』だけで戦い続けていては、いつか、クロノヴェーダと同じ存在に堕ちてしまうだろう。
そうならぬために、我らは『人命最優先』という新たな理念を掲げたのだ。
『復讐』よりも『人命』を優先する、我らディアボロスの新たな戦いを、皆の思いと絆によって支えて欲しい」
クィトがそう言うと、初期からディアボロスと共に戦ってきた新宿出身者が大きく頷く。
最近帰還した人々も、その戦いの歴史に思いを馳せ、尊敬の眼差しでクィトを見上げる。
そんな人々の視線を感じたクィトは、元気いっぱいな声で会場に一つの宣言を行った。
「ディヴィジョンとの境界が失われる《戴冠の戦》において、大陸を隔てる海は、その重要度を増す。
ディアボロスの本拠地である新宿島から遠い欧州やアフリカ大陸に住む皆は、不安を覚える事があるだろう。
確かに陸路はアジアの2つのディヴィジョン、海路も南米を支配するディヴィジョンによって制限されている。
これは、由々しき事態である。
故に。
《戴冠の戦》開戦後、迅速に南米を支配する『黄金海賊船エルドラード』を奪還する事をここに宣言する!」
《戴冠の戦》まで後2か月を切った状況で飛び出したディアボロスの奪還宣言に、会場の人々は、最大の盛り上がりを見せる。
ある程度冷静であった政府関係者なども、冥海機ヤ・ウマトに引き続き黄金海賊船エルドラードを制し、制海権をディアボロスが得るという事実に、興奮を隠しきれなかった。
「全ての海、そして南米大陸の奪還に、海を渡るクロノヴェーダの打倒」
「それが成し遂げられれば、多くの沿岸部が安全を取り戻せる」
「行ける、行けるぞ!」
「《戴冠の戦》の勝者はディアボロス、そして我々最終人類史だ!」
勝利への決意が大会議場に伝播し、人々の心を一つにする。
この空気の高まりを読んだ、クィトは胸を張って両こぶしを頭上に掲げた。
聴衆の視線を一身に集め、彼女はディアボロスを代表し、厳かな口調で宣言する。
「我らは必ず成し遂げる」
彼女の言葉は、預言者の託宣であるかのように、人々の心を打った。
こうして、南極世界会議は、クィトの言葉と共に締めくくられる。
最終人類史の連携と希望の火は大きく燃え上がり、それを背負ったディアボロスも《戴冠の戦》に挑む決意を新たにしたのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【託されし願い】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
●????
「南極大陸表層部に、ディヴィジョン障壁の揺らぎを確認」
「数千人規模の人間による、強い意志の発現を確認した」
「歴史上、南極大陸に数千人規模の人間が集まった事例は無い」
「イレギュラーの可能性、大」
「現時点で侵入の試みや深層部への影響は認められない」
「状況の注視に留め、51日後の不可逆的統合に備える事を提言する」
「提言を支持する」