リプレイ
クロエ・アルニティコス
私たちの拠点はそんなところにはないのですが、結果的には嫌な手を打ってきましたね。
パラドクストレインで必要な場所に必要な戦力を送り込めるのが私たちの強み。
対処できぬほど戦線を広げられると苦しくもなります……が。
対応が間に合えば各個撃破の好機でもあります。せっかくの機会、利用させてもらいましょう。
静かに……あるいは斥候を出しながら進んでいる様子でもありませんし、待ち構えるのは容易そうです。敵の進路に隠れ潜み、敵がやってきたら【タロース・オフリス】を使用。ギリシャ神話の巨人タロースを象った植物の怪物を作り出し、攻撃を仕掛けさせます。
先制攻撃で敵の足取りを乱したら、その後は戦いながらじわじわと後退、撃破するではなく、時間を稼ぐことを第一に戦います。【泥濘の地】も使用し敵の移動を阻害することで時間稼ぎの効果をさらに上げましょう。
この後どう動かすかは状況次第……まずは第一目標の達成を成しておきましょう。
●高見から見下ろされるのは嫉ましい
敵部隊が移動する様は、大地が蠢いているかのよう。
地面に伏せたクロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)が双眼鏡で見たのは、まさしく魔物の群れだった。尾を含んだ『グリーディラミア』の全長は5mを超える。集団となれば大蛇の群れ、トループス級といえども圧巻の光景だ。
(オルレアン南方の拠点は偽情報ですが、結果的に敵は嫌な手を打ってきましたね……)
ある意味、大軍勢がブールジュを出撃した事実だけでもジル・ド・レ軍の支援になる。
こうしてディアボロスがリソースを割き、対処しなければならないのだから。
パラドクストレインで必要な場所に必要な戦力を送り込めるのがディアボロスの強みとはいえ、対処不能なほど戦線を広げられると苦しくもなる。
だが対応が間に合えば、各個撃破の好機。
「好機は利用させてもらいましょう。種子に宿るは我が憤激、芽吹け『タロース・オフリス』!」
蜂蘭の球根に魔力と尽きることなき怒りを注げば、現れ出るのはギリシャ神話のタロースを象った巨人。
この植物の巨人が大地を踏み鳴らして敵部隊へ進んでいく。
「何か来ますわお母さま」
「とても大きな巨人ですわお母さま」
「いかがいたしましょうお母さま」
グリーディラミアたちは進軍の速度を緩めず、『妬み嫉むインヴィディア』に指示を求める。
この部隊でのインヴィディアは『母』であり、グリーディラミアたちは『娘』だった。
部隊の統率と結束に疑似的な親子関係を用いるのが、このインヴィディアのアヴァタールのやり方なのだろう。
「ディアボロスの小細工でしょう。嗚呼、高見から見下ろされるのは嫉ましい……」
隊の中央で指揮を執るインヴィディアが、嫉妬心に満ちた眼を巨人に向ける。
「地べたを這いずる私たちを嘲るディアボロスめ! 娘たちよ、巨人を排除なさい!」
「お母さまの仰せのままに!」
グリーディラミアたちの先頭集団が速度を上げ、植物の巨人と激突する。彼女たちは麻痺呪文を詠唱しつつ、長大な胴体で巨人に巻き付き、締め上げんとする。
対する巨人、高熱を発して巻き付く敵を焼き焦がし、怪力で引き剝がしては投げ飛ばしていく。
「力自慢のつもりですか。娘たちよ、本隊の全員で襲いかかるのです!」
巨人が先頭集団をおおかた投げ飛ばしたところで、今度は後続の本隊が襲いかかってきた。
巨人は本隊のグリーディラミアたちと交戦しながらも、じわじわと後退をかける。
そうしてオルレアンとは別方向へ敵を誘導していく。
(撃破ではなく、時間を稼ぐことが第一……)
それがクロエの狙いだ。巨人が動けば【泥濘の地】により地面は泥と化す。これも敵の移動の阻害に一役買うだろう。
先に投げ飛ばされた先頭集団が本隊に合流したが、彼女たちは揃って巨人の撃破に躍起になっている。地面の変化にも、自分たちが誘導されていることにも気づいた様子はない。
「この後どう動かすかは状況次第……まずは第一目標、達成です」
敵の動きを注視しつつ、クロエも巨人を追って動き出した。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【泥濘の地】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
クロエ・アルニティコス
さて……他の戦場は概ね殲滅で動いているようですね。
攻略旅団でもブールジュ方面の追討作戦の実行が決まりました。
ならば、それが実現できるよう動きましょう。
十分に引き付けたところでこちらも姿を現し戦闘。
随分と気軽に寄り道をしますね。ジル・ド・レの方へ向かっていたのではなかったのですか?
私の言葉で作戦を思い出し引き返すなら背を狙いますが……そんなことは起きないでしょう。
ヒヤシンスの種に魔力を注ぎ、【ピュートーン・ヒアシンス】を使用。ピュートーンを象った植物の怪物を作り出します。
蛇の集団に対してこちらも大蛇の怪物を作り出し、グリーディラミアたちを締め上げ、喰らわせましょう。
妬みも嫉みも原動力ではあります。断片の王の策略で作られた、向ける矛先を間違えた「復讐」などより、余程お前たちの方が理解はできます。
ですが……それでも、魔女として。
お前たちはこの先へは進ませません。
反撃の蛇身の締め上げにはピュートーンを操り、引きはがすことで長時間締め上げられることがないようにします。
ピオニア・フィングストローゼ
キマイラウィッチに干支ですか。そう考えれば愛嬌が増すような事はありませんでした
どう見ても蛇ですね
火刑戦旗ラ・ピュセルの援軍に参じました
救援阻止を成し遂げましょう
援軍は貴女たちだけではありませんよ
大蛇の群れを見ると狩人の本能が疼きますね
我が物顔で危険を振り撒くようでは、人にとってのいい迷惑
ここで退治します
己の中の獣性を解放し、【ルナティックファング】で攻撃します
跳躍して飛びかかり、防具のない人体部分を狙い≪流麗銀爪≫の連撃を喰らわせます
体力の減った個体を狙い、【ダメージアップ】で深く爪を突き立てます
【蛇呪飛刃】の技に対して、≪流麗銀爪≫を蛇の頭部を払うように振り回し、刃が撃ち出されるのを妨害します
掠らないように刃を叩き落していきますが、触れた刃からは≪ウェアウルフコート≫で呪詛を防ぎます
多少のダメージはやむをえません。負傷の最中にも爪を研ぎ、即座に返す一撃を喰らわせます
生憎ですが、蛇より狼のほうが生命力があるものです
インディヴィアとやら、きっと下から見上げても妬ましいのでしょう
●愛嬌なぞ欠片もない蛇
敵部隊を監視するクロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)のもとには、ピオニア・フィングストローゼ(一凛華・g11346)が合流していた。
「他の戦場は概ね殲滅の方針、攻略旅団でもブールジュ方面の追討作戦の実行が決まりましたか……」
ピオニアから齎された情報を確認するように、クロエは声に出した。
敵救援部隊の殲滅だけでなく、追討作戦までも成功すればキマイラウィッチに大きな痛手を与えるのは間違いない。
「ならば、それが実現できるよう動きましょう」
クロエが敵部隊に目を向ける。『グリーディラミア』たちはタロースを象った巨人と未だ交戦中だ。
巨人には数多のグリーディラミアが巻き付いてた。流石に単体で相手にするには数が多い、今や巨人は引き剥がそうにも引き剥がせず、高熱で焦がしても敵に代わる代わる巻き付かれていた。
「キマイラウィッチに日本の干支……そう考えてみても、愛嬌が増すようなことはありませんね。どう見ても蛇ですね」
その蛇、グリーディラミアたちはついに巨人を引きずり倒し、体中を締め上げてバラバラに引き裂いた。
「やりましたわ、お母さま!」
「私たちを見下ろす巨人を殺しましたわ!」
歓喜の叫びを上げる彼女たちの姿には、愛嬌なぞ欠片もない。
「よくやりました、娘たちよ! 次はオルレアンで暴れるといたしましょう!」
指揮官である『妬み嫉むインヴィディア』は、グリーディラミア以上に醜悪かつ奇怪の姿。大蛇と人間が融合しただけでなく、胴にはこれまで呑み込んできた人間たちと思しき断末魔の顔が浮かんでいる。
巳年には全く相応しくない蛇の群れ、ここで殲滅するのみ。
クロエとピオニアは頷き合うと、敵の前へその身を躍らせた。
「随分と気軽に寄り道をしますね。ジル・ド・レの方へ急いでいたのではなかったのですか?」
「それに援軍は貴女たちだけではありませんよ」
オルレアンには向かわせない。クロエとピオニアは大蛇の群れと対峙する。
「新しい獲物ですわお母さま!」
「ディアボロスなぞ殺してしまいましょう、お母さま!」
次々に叫ぶグリーディラミアたちの表情は歓喜そのもの、しかし声には強い復讐心が滲み出ていた。
「おやおや可愛らしい姿のディアボロスですね……二本の足で立つのも見目麗しいのも妬ましい……娘たちよ、小娘どもを引き裂いてしまいなさい!」
ジル・ド・レの救援という当初の目的もそっちのけで、インヴィディアが配下へ攻撃指示を出した。
復讐心もさることながら、インヴィディアは嫉妬心がより強い。彼女は目につく全てが妬ましいのかもしれない。それがディアボロスであれば、殺す以外に考えられないのかもしれない。
「お母さまのお望みのままに!」
グリーディラミアたちが身をくねらせ、ディアボロスたちへ突撃する。
「種子に宿るは我が嫌悪、芽吹け『ピュートーン・ヒアシンス』!」
クロエがヒヤシンスの種に注いだのは己が魔力と抑えきれない負の感情。
急成長するヒヤシンスはギリシャ神話の『ピュートーン』を象った植物の怪物となる。
「相手が蛇の集団であるなら、こちらも大蛇の怪物です。覚悟なさい」
グリーディラミアの全長は5mを超えるが、クロエが操るピュートーンはそれを遥かに上回る。
この植物の大蛇が、突撃してきたグリーディラミアたちへ猛然と襲いかかった。
「大蛇の群れを見ると狩人の本能が疼きますね。我が物顔で危険を振り撒くようでは、人にとってのいい迷惑……ここで退治します」
解き放て、己の中の獣性。我は誇り高くも勇ましき狼。
敵を前にピオニアの中で獣の闘争心が呼び覚まされる。
「私たちを新しい獲物と呼びましたが、どちらが獲物なのか教えて差し上げましょう」
その爪は鋭く疾い。ピュートーンに跳ね飛ばされた個体を狙い、跳躍した彼女はルナティックファングで標的の喉を切り裂く、あるいは心臓めがけて爪を深く突き立てる。
荒れ狂うピュートーンが敵群をかき乱し、ピオニアが弱った個体を仕留める、この連携でディアボロスたちは敵に挑む。
「巨大で立派な大蛇! でもお母さまより立派な大蛇なぞ許しはしません!」
「こちらは人狼の小娘の相手をしましょう!」
対するグリーディラミアたちも復讐心と殺意を滾らせ反撃に出た。ピュートーンとこれを操るクロエには麻痺呪文を浴びせ、素早く動き回るピオニアには呪詛を帯びた刃を蛇の頭部から撃ち出す。
「巨体のピュートーンでも麻痺させれば容易く倒せると考えたのでしょうか、そうはさせません」
ピュートーンが暴れるたびに敵は長大な尾で跳ね飛ばされるか、強烈な力で締め上げられた。クロエを襲う個体もいるが、彼女とて巻き付かれたままでいる気はない。ピュートーンを操って敵を引き剥がし、逆に締め上げさせて撃破する。
「呪詛を帯びた刃でも、撃たせさえしなければ……!」
敵に囲まれぬよう立ち回りつつ、ピオニアは≪流麗銀爪≫でグリーディラミアの蛇の頭部を払い、刃が撃たれる前にその手段を奪っていく。しかし敵の数が数だから被弾はする。≪ウェアウルフコート≫で呪詛は防ぎつつ、その最中にも爪を研ぎ、即座に返す一撃を敵へ喰らわせる。
「生憎ですが、蛇より狼のほうが生命力があるものです」
ピオニアは絶命した敵から鉤爪を引き抜くと、背後から迫っていた別の敵を振り返りざまに薙ぎ払った。
「お母さまのお望みを叶えられずに死ぬ……誰か、私の代わりに復讐を遂げて!」
「貴女の復讐、私が遂げましょう! お母さまのお望み、残った私たちが叶えましょう!」
グリーディラミアたちはさながら狂信者の群れか。
1体倒れても、更なる復讐心で2体が同時に襲ってくる。死を恐れずに突っ込んでくる。
しかし数の多いトループスといえども限りはある。数が減るほどに反撃の密は薄くなる。
対してディアボロス側の攻撃は勢いを増す。
「妬みも嫉みも原動力ではあります。断片の王の策略で作られた、向ける矛先を間違えた『復讐』などより、余程おまえたちの方が理解できます」
クロエはピュートーンに残存するグリーディラミアたちを襲わせた。
「ですが……それでも、魔女として。おまえたちを先へは進ませません」
締められ、喰われ、植物の大蛇が通った後になお生きている敵の姿はない。
「オルレアンには1匹たりとも向かわせない……ここで殲滅します」
ピュートーンの攻撃を免れた個体たちはピオニアが仕留めていく。
空を切って振られる鉤爪の音色。
その音色が止んだ時、動くグリーディラミアは1匹も残っていなかった。
「インヴィディアとやら。きっと下から見上げても妬ましいのでしょう」
ピオニアの視線の先には、大蛇の胴をくねらせるインヴィディアの姿がある。
インヴィディアが体を起こせば、その姿は鎌首をもたげて威嚇するコブラのよう。
「ええ、妬ましいですとも! 貴女たちの美貌が! 私の可愛い娘たちを皆殺しにする強さが! 二本の足で大地を踏み締め立つことが!」
その瞳では嫉妬と復讐の炎が燃えていた。
「貴女たちを丸呑みにしてしまえば、この嫉妬心も少しは晴れるのでしょう……ええ、晴れますとも!」
嫉妬心に満ちた甲高い叫びが稲妻の如く轟き、大気を震わせる。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【エイティーン】LV1が発生!
【狼変身】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
クロエ・アルニティコス
さて、どうでしょうね。
無限にお前の妬み嫉みが湧くのならば、果たして気が晴れることがあると、そう呼ぶべきなのか。
無限に湧き出す泉から水をくみ上げることはできても、それで泉の水そのものに影響があるとはいえないでしょう。
まぁ、どちらでもいいことですね。
お前の望みどおりになることなどないのですから。
アマランサスの種に魔力を注ぎ、【ヒュドラ・アマランサス】を使用。ヒュドラを象った植物の怪物を作り出します。
ヒュドラを操り、インヴィディアへと噛みつかせ、毒の牙で攻撃を行いましょう。
敵の呪毒をまき散らされようと、憎悪で心を埋め、嫉妬に心が埋まらぬように。
私もお前とそう変わりませんよ。
愛する人が出来、隣に立つのに恥じない自分で在りたいとは思っていますが……復讐、憎悪、嫉妬……あらゆる負の感情が、敵を殺す原動力になる。
ならばそれも飼いならし、制御し、魔術へと昇華させる。
それが私の魔女としての魔術です。
マリアラーラ・シルヴァ
共闘アドリブ歓迎
話は聞いてるよ
貴女が蛇ベーダのお母さん…蛇オバサマだね!
無駄な抵抗はやめてやっつけられなさいなの☆
そう可愛く挑発すれば
あらゆる妬み嫉みをぶつけてくるでしょ?
でもマリアは涼しい顔
だってオバサマの妬み嫉みより酷い噺をするのだもの
スチャっと子供三味線を構えてマリアが謡うのは哀と幽鬼の物語
オバサマの事が怨めしくて恨めしくて…沈める為に淵から這い出てくるもののお話(ベベン)
魂が凍えるぬるい風がひゅるりと通り過ぎ
ゾッとする呻きが近づいてくる
「その妬む口が憎たらしい…ちぎれろ…!」
「命があるなんて烏滸がましい…許せぬ…!」
そうして何かが這い寄る
それは汚泥(泥濘の地)
浮かぶのは見覚えがある蛇の顔
瞳らしきものがぎょろりとこちらを見つめる
「胴体…カエセ…」
そうだ
蛇体は失った足の代わりだった
だから私は二本の足に執着して…
物騙りが魂を縛る間に蛇は泥蛞蝓になり
臓腑を這い登ってくる
死を経ず獄に沈めと染み込んで…(ベン!)
蛇さんから胴を奪った貴女が
他の人を妬み嫉むなんてダメだと思うよ
(ベンベン)
呉守・晶
連携アドリブ歓迎
さて、遅れちまったがその分はきちんと働かせてもらうぜ
まだアヴァタール級の討伐という仕事が残ってるようだからな!
しかし、童話の魔女グリムが統率した複数のジェネラル級が参加した軍勢なぁ?
複数のジェネラル級を纏め上げられるってことはそれだけの力があるんだろうが、一つだけ言いたい。グリム童話の成立はずっと未来だぞ!
グリム童話の発行は1812年で、ラ・ピュセルは1435年のディヴィジョンだろうが!
ハァ、まぁクロノヴェーダはその辺いい加減だし仕方ねぇか
なんともまぁキモイ姿としてやがるな!
それともアレか、その姿も妬みの復讐心を抱く為のものか?
と、まぁ軽く挑発するが乗ってくるか?
挑発は上手くいってもいかなくてもどっちにしろ向かってくるだろうから、魔晶剣アークイーターの封印を一部解除して刀身を淡い光の集合体で出来た大鎌に変異させて迎え撃つぞ!
巻き付き締め付けてこようとしたら光の大鎌で切り裂いてやる!とはいえ、こいつは肉体を傷つけずに魂だけを刈り取るけどな!
狩り取れ、アークイーター!
●妬み嫉む蛇の末路
ディアボロスたちを丸呑みにすれば嫉妬心も少しは晴れると、『妬み嫉むインヴィディア』は言う。
「さて、どうでしょうね」
クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)は、これに真向から疑義を唱えた。
「無限におまえの妬み嫉みが湧くのならば、果たして気が晴れることがあると、そう呼ぶべきなのか。無限に湧き出す泉から水を汲み上げることはできても、泉の水そのものに影響があるとは言えないでしょう」
「全否定なさるのね……私とて、妬み嫉む心を少しは抑えたいのですよ。寛容と穏やかさを心がけても抑えきれぬ嫉妬心、卑しき私の性情……それもこれもこの世の全てが私の嫉妬心を煽るから! ディアボロスはその最たる存在ですわ!」
嫉妬心そのものが暴風となって吹き荒ぶ、インヴィディアの叫びだった。
「聞くに耐えねーなぁ」
それは、インヴィディアには聞き捨てならない言葉。
「なんともまぁキモイ姿してやがるな! それともアレか? その姿も妬みの復讐心を抱く為のものか?」
声の主は呉守・晶(TSデーモン・g04119)。
魔晶剣アークイーターを肩に担いだ晶は、インヴィディアを煽りに煽る。
煽った本人は軽い挑発のつもり、しかし煽られた方は憤怒の形相だ。
「礼儀知らずの小娘め。私を侮辱する度胸だけは褒めて差し上げましょう……嗚呼、その度胸が妬ましい!」
挑発は効果覿面、まずは晶を丸呑みにすると決めたか、インヴィディアが猛然と突進する。
「遅れちまった分はきちんと働かせてもらうぜ。アヴァタール級討伐の大仕事! 魔剣アークイーター、第五封印解除。変異開始、コード魂葬剣『魂ヲ刈リ取ルモノ』っ!」
アークイーターの刀身が淡い光の集合体で出来た大鎌に変異、晶は正面からインヴィディアを迎え撃つ。
「影響の有無は、まぁ、どちらでもいいことですね。おまえの望み通りになることなど無いのですから」
クロエはアマランサスの種へ魔力を注ぎ込む。
「種子に宿るは我が憎悪、芽吹け『ヒュドラ・アマランサス』!」
現れ出たのはギリシャ神話の『ヒュドラ』を象った植物の怪物、9つの首を持つ巨大な毒蛇。
クロエはヒュドラを操り、晶に加勢させる。
「妬みも嫉みも疎ましくとも、妬みを抱かされたことへの復讐心は私の糧!」
優れた敵であるほどインヴィディアの妬みは強くなる。
蛇体で敵に巻き付きで締め上げる力も、より強くなる。
「目に映る全てを妬み嫉むといい! 私と同じ嫉妬心の怪物に堕ちるがいい!」
彼女の嫉妬心は呪毒となって撒き散らされる。それは標的の肉体ではなく心を蝕む毒のブレスだ。
対する晶の大鎌もまた、肉体や物質を傷つけずに魂を直接攻撃する。
敵の嫉妬心もろとも魂を刈り取るべく、大鎌が縦横無尽に振り回される。
クロエが操るヒュドラは9つの首でインヴィディアの蛇体に噛み付き、牙から毒を流し込んだ。
「この身を蝕み苦しめるほどの毒……嗚呼、なんて嫉ましい!」
ヒュドラの毒は猛毒、これに苦しみながらもインヴィディアはヒュドラの首に巻き付き、一気に締め上げて捩じ切った。
さらに長大な蛇身でクロエと晶をぐるりと囲む。とぐろを巻いた蛇の内側に閉じ込めてしまう。
「これで逃げられぬ!」
背中合わせに立つクロエと晶の頭上から、インヴィディアの蛇の頭部が覆いかぶさった。
そして2人まとめて丸呑みにしてしまう。
「うふふふふ……」
獲物が胃まで運ばれていく感覚と勝利の余韻を味わいつつ、インヴィディアは不気味に笑う。
しかし。
「嫉妬心、少しは晴れた?」
勝利の余韻を邪魔する声がした。それと、ベンベン、という聞き慣れない音色。インヴィディアは自分の尾の上に1人の少女が立っていることに気付いた。
「話は聞いてるよ。貴女が蛇ベーダのお母さん……蛇オバサマだね! 無駄な抵抗はやめてやっつけられなさいなの☆」
少女の名はマリアラーラ・シルヴァ(コキュバス・g02935)、ベンベンという音色は彼女が構える子供三味線から発せられたものだ。
「可愛らしい挑発ですこと……生意気盛りの年頃なのが妬ましい。貴女も丸呑みにして差し上げましょう。私のお腹の中で、お仲間が待っていますわ!」
蛇の顎を大きく開き、その奥の暗い喉を見せつけ、インヴィディアがマリアラーラを威嚇する。
だがマリアラーラは涼しい顔で、インヴィディアの蛇身の上をゆっくりと歩き出した。
「丸呑みにはされないよ。だってオバサマの妬み嫉みより酷い噺をするのだもの」
弦を撥で弾き、マリアラーラは謡い、語り出す。
「これからマリアが謡うのは哀と幽鬼の物語。オバサマのことが怨めしくて恨めしくて……沈める為に淵から這い出てくるもののお話」
ベベン、と弦が弾かれる。
インヴィディアの首筋を魂も凍えるぬるい風がひゅるりと通り過ぎる。
『その妬む口が憎たらしい……ちぎれろ……!』
『命があるなんて烏滸がましい……許せぬ……!』
ゾッとする呻きもインヴィディアに近づいてくる。
「そうして何かが這い寄る。それは汚泥、浮かぶのは見覚えがある蛇の顔、瞳らしきものがぎょろりとこちらを見つめる」
突然、目の前に蛇の顔が現れ、インヴィディアは息を呑んだ。
『胴体……カエセ……』
蛇から発せられる恨みと嘆きの声がインヴィディアの心を貫き、ある記憶を呼び覚ます。
「そうだ、蛇体は失った足の代わり、だから私は二本の足に執着して……」
インヴィディアは、いつの間にか人間だった頃の姿に戻っている自分に気が付いた。
だが足がない、彼女には大地を踏み締めて歩く足がない。
「物騙りが魂を縛る間に蛇は泥蛞蝓になり臓腑を這い登ってくる。死を経ず獄に沈めと染み込んで……」
ベン!
高らかに弦が弾かれた直後、インヴィディアの体を無数の泥蛞蝓が這い登り、喉から体内へ潜り込んでいく。
悲鳴を上げようにも声は出ず、呼吸もできぬ彼女は、悶え、苦しみ、そして。
「……これは私の記憶ではない!」
渾身の叫びをインヴィディアが発した。
途端に無数の泥蛞蝓が消える。彼女の体もキマイラウィッチとしての姿に戻っている。
「記憶まで捏造する……たいした幻術ですわね!」
マリアラーラのパラドクス、『夢魔の百物語』。
幻術のようなものに囚われていると気付いたからこそ、インヴィディアは抜け出すことができたのだろう。
「蛇さんから胴を奪った貴女が、他の人を妬み嫉むなんてダメだと思うよ」
と言って、マリアラーラは子供三味線をベンベンと鳴らした。
「騙し通そうとする、ふてぶしてしいその態度が妬ましい!」
インヴィディアが呪毒を吐こうとした、その時。
ザン、という衝撃を彼女は背中に感じた。
体を斬られたのではなく精神を刈られたような痛みに、インヴィディアの表情が驚愕に変わる。
「隙だらけだったぜ!」
不敵な笑みを見せ、晶がインヴィディアの前に現れた。
晶だけではない、首を捩じ切ったはずのヒュドラもインヴィディアに襲い掛かってきた。
当然、ヒュドラを操るクロエの姿もある。
「お、おまえたちは丸呑みにしたはず! それにこの大蛇……!」
ヒュドラの獰猛な首は、当初の9つよりもずっと多くなっていた。
「神話に曰く、ヒュドラの首は1つ落としてもすぐに2つ生えてくるそうです。そして正しい首を落とさなければヒュドラは決して倒せない。ご存知でしたか?」
地面をのた打ち回りながらヒュドラと交戦するインヴィディアに、クロエの声は届いただろうか?
確かなことはただひとつ、丸呑みにしたはずのディアボロスは未だ健在ということ。
すなわち、インヴィディアはディアボロスを丸呑みになど『していなかった』ということ。
「丸呑みにしたあの時、既に私は幻術に囚われて……?」
このことに気づいたインヴィディアは愕然とし、マリアラーラは『正解』と言うかのようにベベンと弦を弾いた。
「……やはり、ディアボロスこそがこの世で最も妬ましい!」
激怒するインヴィディアはヒュドラに巻き付かれようとも逆に巻き付き返し、牙から毒を流し込まれたならその倍は呪毒を撒き散らす。
「しかし、童話の魔女グリムが統率した、複数のジェネラル級が参加する軍勢なぁ?」
ヒュドラの首から首へ跳び移り、晶はインヴィディアへ斬撃を浴びせていく。
「複数のジェネラル級を纏め上げられるだけの力があるんだろうが、一つだけ言いたい。グリム童話の成立はずっと未来だぞ! グリム童話の発行は1812年で、ラ・ピュセルは1435年のディヴィジョンだろうが!」
「知識をひけらかして……その博識が妬ましい!」
「……ハァ、まぁクロノヴェーダはその辺いい加減なところがあるし仕方ねぇか」
大上段に構えたアークイーターを晶は一気に振り下ろす。
「狩り取れ、アークイーター!」
魂を刈り取るその刃。確かな手ごたえを晶は感じ取った。
精神のダメージが肉体にまで及んだか、インヴィディアの人間の口から赤黒い塊の如き血が溢れ出た。
「これで仕舞いといたしましょう」
クロエに操られ、ヒュドラの無数の首が一斉にインヴィディアの蛇身に噛み付いた。
全身を駆け巡るヒュドラの毒に、ついにインヴィディアは動けなくなった。
蛇の頭部も地面へ投げ出されるように倒れた。
「口惜しや……嗚呼、妬ましや……」
しかし彼女の人間の口は弱々しくも動き、呪毒を吐き続けていた。
「私の呪毒に耐え抜いた者への嫉妬で、狂い乱れてしまいそうですわ……」
蛇の頭部が倒れて、上下逆さまになった視界の中で、インヴィディアはクロエを見ていた。
「呪毒を撒き散らされようと、憎悪で心を埋め、嫉妬に心が埋まらぬように。私もおまえとそう変わりませんよ。愛する人が出来、隣に立つのに恥じない自分で在りたいとは思っていますが……復讐、憎悪、嫉妬……あらゆる負の感情が、敵を殺す原動力になる。ならばそれも飼いならし、制御し、魔術へと昇華させる。それが私の魔女としての魔術です」
毅然としたクロエに、インヴィディアが顔を歪ませた。
「魔女としての格の違いを見せつけて……嗚呼、妬ましい。嗚呼、嫉ましや……」
か細い声でインヴィディアは嫉妬心を吐き出し続け、やがてそれは聞こえなくなった。
呼吸も心臓の鼓動も止まった彼女の死に顔は、蛇身に浮かんだ犠牲者たちの断末魔の表情と全く同じだった。
「最後の最後まで嫉妬と呪いを吐く……往生際の悪い蛇だったな」
「妬み嫉む蛇の末路を謡って、此度の噺は終わるのでした」
晶は呆れ返った顔で呟き、マリアラーラは子供三味線をベベンと弾いた。
「オルレアンを目指した大蛇の群れも、嫉妬心の怪物も、ここで潰えました」
クロエはパラドクスを解き、ヒュドラが植物のアマランサスに変わっていく。
「おふたりとも、ご助力ありがとうございます」
アマランサスの花々が風に揺れる中、クロエは晶とマリアラーラへ丁寧に礼を述べた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【浮遊】LV1が発生!
【液体錬成】LV1が発生!
【プラチナチケット】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【リザレクション】LV1が発生!