リプレイ
瀧夜盛・五月姫
や、門番さん。こんばんわ。
答え? ん、枕詞がかかる語、だね。
『あづさゆみ』『うちなびく』『しらまゆみ』『ふゆごもり』。
これら、“はる(春、張る)”にかかる。
弓(あづさゆみ、しらまゆみ)、弦を張る。
うちなびく、春先に草木が萌えてなびく。
ゆふごもり、冬が籠る、つまり春が来る事。だった、かな。
でも、『なつごろも』は、春につながらない、よ。
夏から春、繋がったら、大変?
だから、仲間外れ。『なつごろも』かな。
菅原・小梅
◆行動
うーむ、クロノヴェーダと当人は別物とは言え
平安京の守護者である彼の坂上田村麻呂公がこの有り様とは嘆かわしいものです。
先ずは入場の為の試験を受けましょう。
さて【歌唱】や【伝承知識】から正解を導きますと……正解は『なつごろも』です。
いずれも古語であり、何らかの言葉に掛かる枕詞ではあるのですが
其以外はすべて「はる」と言う言葉に掛かるのですよ。
なつごろもだけは「ひとへ」や「うすし」と言う言葉
あるいは「たつ」に掛かるので
ある意味不吉な意味合いを持たせているとも言えますね。
まぁ、今回は『音の響き』と言う手掛かりを頂いてますので
難しくはありませんでしたが
此より先は何が待ち受けているのやら……
文月・雪人
歌会を幾つも開いて、クロノヴェーダも人材豊富だね
とはいえ俺達も負けてはないさ
先ずは入門試験から
五つは何れも枕詞
『あづさゆみ』と『しらまゆみ』は、弓を張る動作から『張る(はる)』を導き
『うちなびく』は、生い茂る草や葉が風になびく様子から『春(はる)』を導く
『ふゆごもり』もまた春(はる)を導くが
『なつごろも』が導くのは、『薄し(うすし)一重(ひとへ)裁つ(たつ)』等
故に仲間外れは『なつごろも』、いかがかな?
主要な枕詞は和歌の基礎知識
成程、師に教えを請うならこの程度は知っておけという事か
中々に気位高く気難しい先生の様だね
生徒が飽きぬよう分かり易く教えていた蟹坊主とはまた随分と対照的で
いや、実に面白い
神宮寺・琴
これを答えられぬ者が歌会に参加しようとするのでしょうか?
市井の民ならいざ知らず
貴族であれば基礎も基礎ではございませんか
歌が不得手なわたくしにもわかりますのに
袿姿なればおかしくもないでしょう
貴族の娘として屋敷に向いましょう
仲間外れは「なつごろも」ですね
五つの言葉はすべて枕詞
その中で四つは「はる」にかかる語
すなわち「春」
なつごろものみ「夏」の枕詞にございます故
…簡単すぎて逆に不安になるのですが
わたくしは何か見落として居りましょうか?
●小手調べ
歌会を催している邸の門。
「うーむ、クロノヴェーダと当人は別物とは言え、平安京の守護者である彼の坂上田村麻呂公がこの有り様とは」
菅原・小梅(紅姫・g00596)は、思わず深い溜め息をついた。
「……なんとも嘆かわしいものです」
水干装束をすっきりと着こなすいかにも上品な童女だ。
白絹の髪に紅玉髄の瞳、白磁の肌を持ち、いかにも生い先楽しみな容姿だが、その透き通る肌は寝る間も惜しむ本の虫なればこその副産物らしい。
一方。
「歌会を幾つも開いて、クロノヴェーダも人材豊富だね」
文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)はクロノヴェーダの多芸さへ素直に感嘆していた。
涼やかな青い瞳と短く整えた黒髪、白い直衣が爽やかな印象を与える、陰陽師の青年。
「とはいえ俺達も負けてはないさ。先ずは入門試験の突破から頑張ろう」
他方。
「や、門番さん。こんばんわ」
と愛想良く声をかけるのは、瀧夜盛・五月姫(無自覚な復讐鬼・g00544)。
喜怒哀楽の起伏をほとんど顔に出すことがなく、豊かな感情を内に秘めたカースブレイドの少女。
三つ編みにした白い髪と澄んだ青い瞳が美しく、また平安鬼妖地獄変出身なだけあってか、南瓜行列の際に着た十二単も大層よく似合っていた。
「良い月が出ましたな。ご上臈方も歌会に来られたなら、まずはこれを解いてくだされ」
門番が差し出すのは例の試験が記された檀紙だ。
それを見るなり、
(「これを答えられぬ者が歌会に参加しようとするのでしょうか?」)
神宮寺・琴(見鬼の孫・g01070)は、思わず言葉を失うぐらい驚いてしまった。
長い黒髪と穏やかそうな黒目が落ち着いた雰囲気の、重ねた単もしっくり馴染んでいる陰陽師の女性。
(「市井の民ならいざ知らず、貴族であれば基礎も基礎ではございませんか……」)
事実、琴は日頃から平安出身者らしく袿を羽織って、取り繕う必要もなく自然に歌会へ溶け込める身なりをしていた。
「答え? ん、枕詞がかかる語、だね」
五月姫が迷うことなく、あづさゆみ、うちなびく、しらまゆみ、ふゆごもりの四語を順に指して言う。
「これら、はる——春、張る——にかかる」
ぽつぽつと辿々しく説明する五月姫だが、その声音は確かな自信に満ちていた。
「そうですね。いずれも最終人類史から見れば古語であり、何らかの言葉に掛かる枕詞ではあるのですが……」
小梅も、造作もないと言わんばかりに涼しい面持ちで頷いた。
2人ともこの時代の良家の姫君であるゆえに、短歌への造詣が深いのであろう。
「ええ、五つの言葉はすべて枕詞……何度読んでも間違いは無さそうですね」
歌が不得手なわたくしにもわかりますのに——とは琴の弁だ。
「『あづさゆみ』と『しらまゆみ』は、弓を張る動作から『張る(はる)』を導き……」
「うちなびく、春先に草木が萌えてなびく。ふゆごもり、冬が籠る、つまり春が来る事。だった、かな」
雪人と五月姫が口々に誦じる。そう。先の四語は全て、春へと繋げるための掛詞である。
「でも、『なつごろも』は、春につながらない、よ」
「仲間外れと見て間違いなさそうですね。なつごろものみ『夏』の枕詞にございます故」
「なつごろもだけは『ひとへ』や『うすし』、あるいは『たつ』に掛かるので……ある意味不吉な意味合いを持たせているとも言えますね」
五月姫の指摘や琴、小梅の説明通り、唯一、春と無関係の掛詞なのだ。
「夏から春、繋がったら、大変?」
五月姫はかくりと小首を傾げた。げにごもっともなツッコミである。
「だから、仲間外れ。『なつごろも』かな」
「故に仲間外れは『なつごろも』、いかがかな?」
「ええ……正解は『なつごろも』です」
かくて、試験へ解答するディアボロスたち。
「……簡単すぎて逆に不安になるのですが、わたくしは何か見落として居りましょうか?」
数え歌殺人事件で多少なりと歯応えのある謎へ挑み続けてきたためか、琴は試験が簡単過ぎるのへ却って心配そうだ。
「お見事にございます。どうぞ、お通りくだされ」
門番は恭しく頭を下げて、邸の表門を開けてくれた。
(「まぁ、今回は『音の響き』という手掛かりを頂いてますので、難しくはありませんでしたが」)
と、密かに微笑むのは小梅。
「此より先は、何が待ち受けているのやら……」
彼女が気を引き締めて歌会に臨む傍らでは、
「主要な枕詞は和歌の基礎知識……成程、師に教えを請うならこの程度は知っておけという事か」
雪人が、わざわざ入門試験を設けた田村麻呂について、そう分析していた。
「中々に気位高く、気難しい先生の様だね」
しみじみと呟く間にも思い出すのは、ついこの前倒した蟹坊主のことだ。
「生徒が飽きぬよう分かり易く教えていた蟹坊主とはまた随分と対照的で……いや、実に面白い」
きっと田村麻呂は田村麻呂で、歌は心の声だと笑いを交えて説いた蟹坊主とはまた違う講釈を垂れてくれるのだろう。
そんな期待に胸を膨らませる雪人だった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【書物解読】LV1が発生!
【プラチナチケット】LV2が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV2が発生!
【ダブル】LV1が発生!
菅原・小梅
◆行動
首尾よく潜入が出来ましたね。
続いては歌会での【情報収集】を円滑にすべく動きましょう。
表は蘇芳、裏は黄白、櫨紅葉
の襲の色目とした水干装束、
私自身が調合した香をしかと焚き詰めて
成人前のとある貴族の子息として振舞えば宜しいでしょう。
その実性別以外は偽ってませんしね。
その上で歌を一つ
「しらまゆみ 秋ひくくもに しり込みし 取り負いし靫(ゆき)おろし置くべき」
雲でも良いのですが、【伝承知識(きおく)】では
坂上田村麻呂公は大蜘蛛退治もされていた筈ですしね。
取り敢えずは挨拶も致しましたし参加されている方々の装束を【観察】し
藤原所縁の方とのお話に移りましょう。
まぁ、私は菅家のものなのですけどね(ボソッ)
●くもとゆき
邸の母屋——几帳等で仕切られた寝殿造の中央部にて。
(「首尾よく潜入が出来ましたね」)
菅原・小梅(紅姫・g00596)は、居並ぶ上流貴族たちへ紛れるようにして座り、ひと心地ついていた。
櫨紅葉の襲が優美で目を引く水干装束も、小梅をいかにも将来有望な貴族の子息らしく見せていて、薫きしめている香ともども違和感なく溶け込んでいる。
(「その実、性別以外は偽ってませんしね」)
ちなみに櫨紅葉とは表は蘇芳、裏は黄白の色目のこと。
小梅自身が調合した香といい、秋らしい装いになるよう相当に心を砕いているのだ。
ともあれ、近くに座っている貴族たちと膝を突き合わせて一通りの挨拶を終えた小梅。
「では、歌のできた方から詠んでいただこう」
あくまでも歌の師として振る舞う田村麻呂への牽制の意味も込めてか、
「しらまゆみ 秋ひくくもに しり込みし 取り負いし靫(ゆき)おろし置くべき」
と、一句朗々と詠じたりした。
(「雲でも良いのですが、正史の伝承では、坂上田村麻呂公は確か大蜘蛛退治もされていた筈ですしね」)
だが、この場にいた貴族たちは一様に、くもを蜘蛛とは察しず白い雲と捉えた。
「前半の流れるような美しさと後半の動揺し乱れた音の対比が素晴らしい」
田村麻呂などは、まさか自分のこととは夢にも思っていないのか、小梅の歌を絶賛したものだ。
「『秋ひく雲』の一語だけでも、眩い雲を地から振り仰ぐような相手の女、その女に『飽き』られてもなお無理に逢瀬を遂げるものではないという男の戒め、或いは苦悶が『取り負いし靫』のやり場の無さで見事に表現されている」
意外なほどの賛美を聞きながら、素直に頭を下げておく小梅。
「枕詞の選び方も秀逸極まりない。しらまゆみ……弓なりに曲がる、反るという喩えがある通り、雲が示す女の輪郭をさらに明確に、妖しくも美しく想像させよう。靫としっくりいかなくなった悲哀すら感じる」
貴族たちも田村麻呂の評へ頷いて、
「若い公達の詠みぶりは素直ですなぁ」.「いかにも、取り負いし靫とは斬新な。とうの昔におろし置いてしまった私などには、到底詠めませぬ」
「ご冗談を。まだまだ使えるからこその毎夜の忍び歩きでしょうに」
口々に小梅の歌を褒めている。
(「これで藤原所縁の方を探しやすくなったでしょう」)
小梅は静かに座り直して、自分へ好意的な視線を向けてくる貴族たちの装束の観察を始めた。
大成功🔵🔵🔵
効果1【プラチナチケット】がLV3になった!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
神宮寺・琴
入り込むことは出来ましたが…
歌は不得手で良いものが浮かびそうにありませぬ
いっそのこと【エイティーン】で少しばかり齢を重ね
あまりに歌が下手すぎて通ってくれる殿方がおらず
後ろ盾が欲しい両親に恋歌を習ってくるよう言われた体でいましょうか
萩の襲ねの袿に檜扇で顔を隠しつつ
他に参加している貴族の陰となる位置へ
時に木簡や筆を手にして悩む素振りを見せ
また顔を隠して悩む振りをしましょう
時には田村麻呂や他の方に助けを求める視線など
しばらくしてもわたくしに気を留める者がいなければ
【プラチナチケット】の残留効果を用い
近くの参加者に相談する体で声をかけましょう
難しければ仲間に助けを求めるも止むをえませんね
●短歌入門
続いて。
(「入り込むことは出来ましたが……歌は不得手で良いものが浮かびそうにありませぬ」)
歌会の参加者らしく振る舞えるのか不安そうにしているのは神宮寺・琴(見鬼の孫・g01070)。
とはいえ、苦手分野も使いようによっては武器になる。
琴はあらかじめエイティーンを発動させて、『あまりに歌が下手すぎて通ってくれる殿方がいない老嬢』のフリをすることにした。
(「後ろ盾が欲しい両親に恋歌を習ってくるよう言われた体でいましょうか」)
現代ならばいくら19歳になったところで変わらず若々しい印象しか与えない琴だが、この時代の15歳と19歳の差は確かに明確。
身分が高ければ高いほど貴族の姫君の輿入れは早くなるし、19歳の琴の親が娘の縁遠さを嘆くのも至極自然なことなのだ。
(「だとするならば、始終控えめに恥ずかしそうにしていましょうか」)
萩の襲の袿を引き被るようにして、檜扇で顔も隠し、こそこそと他の貴族の陰へ移動した琴。
一応は木簡や筆を手にして、悩む素振りを見せる。
(「あまりに難しければ、仲間に助けを求めるも止むをえませんね」)
顔を隠して悩む演技の合間も、時には田村麻呂や他の貴族に助けを求める視線を送っていると、流石に生徒全体へ目を配っているのか田村麻呂が気づいた。
「初めてお見かけする方かな。何かお困りごとか?」
「師直々にお声がけいただけますとは、恐れ入ります……わたくし歌が不得手でございまして、親がそんなことではどんな殿御も三日と保つまいと心配いたしまして」
「姫君思いの親御様ですな。歌の不得手にも色々あろうが、して、ご自身はどのような」
田村麻呂は固い口調ながらも親身になって、琴の相談へ乗ってくれる。
「題材が浮かばないのです。花や月を綺麗だと思う心が無いわけではないと思いますが、そこからどう、短歌になるまでに感動を広げて良いのかがわかりませぬで」
だから琴もせいぜい悲しげに取り繕って、情趣に乏しい姫君を演じてみせた。
「なるほど。歌の題材は何も美しいものばかりではない。必要なのは、歌は美しいという先入観を取り去って、どんなくだらぬ、つまらぬ事柄でも歌になりうると知ることかもしれんな」
と、真面目に講義する田村麻呂。
「左様。無理に周りへ目を向ける必要すら無かろう。日々が退屈ならその退屈を歌に詠めばよろしい。体にカビが生えて蚊が孵ると……これは失敬、妙齢の姫に失礼でしたな」
「いいえ、仰ることはわかります」
「ともあれ、歌の題材は千差万別、美しくなくとも、何なら物でなくとも良い。両親や乳母、女房や下人への感謝を歌にしてもよろしい。物の美しさやつまらなさは後からついてくると心得よ」
飽きずに語り続ける田村麻呂へ、素直にうんうんと頷く琴であった。
大成功🔵🔵🔵
効果1【エイティーン】LV1が発生!
効果2【リザレクション】LV1が発生!
文月・雪人
さてと、いよいよご対面だね(笑顔
仲間と連携
【プラチナチケット】の効果も重ね
直衣姿に烏帽子を被り上流貴族らしく振る舞う
【歴史知識・演技・観察・情報収集】活用し
上流貴族の歌人達と、同じ趣味持つ仲間として打ち解けながら
件の少進と藤原の縁者に目星を付けて
後に振るべき話題を見定める
どちらもこのような歌会に通っているのだし
歌に関心が高いのは間違いないのだろう
折角なので、頂いた枕詞をお借りして一首詠み
坂上田村麻呂先生にも教えを請いたい
だってほら、純粋に興味あるしね♪
『秋風に うち伏す葦も うちなびく 春を願ひて うち忍ぶらむ』
韻を踏みつつ、野分に耐え忍び春待つ歌を
心落ち着かぬ彼を気遣う意味もひっそりと込めて
●うきうきうちうち
一方。
「さてと、いよいよご対面だね」
文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)は笑顔を抑えきれない様子でうきうきと歌会へ臨む。
この日の彼は白い直衣姿に烏帽子を被り、いかにも上流貴族といった風情だ。
「もうすぐ雪が見られるかと思うぐらい、寒くなりましたね」
「本当に。池も直に薄氷が張るでしょう」
実際、歌会にきている他の上流貴族も雪人を仲間と信じて疑わずに声をかけてくれる。
「なぁに、貴方様のように見目の良い方なら、夏でも薄氷を踏んで背筋が寒くなるご経験も多いのでは?」
「まさか、池のへりへ上がるにも至らぬ朴念仁でして」
幸い話も弾んだおかげで、雪人は同じ趣味人として貴族たちとすぐに打ち解けていた。
(「件の少進さまは、あの白髪の痩せたお人か……藤原の縁者さまは、さて、どなただろう……」)
後々接触すべき人物もこっそり探しつつ、彼らへ振るべき話題を見定めんとする雪人。
(「どちらもこのような歌会に通っているのだし、歌に関心が高いのは間違いないだろうし……」)
折角なので、彼らの気を引くような歌を詠めないかと思案した。
(「どうせなら、試験で頂いた枕詞をお借りして……そうそう、坂上田村麻呂先生にも教えを請いたい」)
こんな時、雪人を突き動かすのは、クロノヴェーダに歌を指南してもらえる貴重な機会を逃すまいという熱意だ。
(「だってほら、純粋に興味あるしね♪」)
知的好奇心に胸を躍らせれば、自然と頭の回転も速まって、良い歌が浮かぶ気もする。
「秋風に うち伏す葦も うちなびく 春を願ひて うち忍ぶらむ」
そんな雪人が難なく捻り出したのは、軽やかに韻を踏みつつ、野分に耐え忍んで春待つ歌だった。
しかも、呪いの重圧で心落ち着かぬ少進を気遣う意味もひっそりと込めてあり、優しい思いやりも感じさせる。
「うち伏すとうち靡くの連続が面白い。くどさを感じさせずに韻を踏むのも高度ながら、秋から春を待つ一足跳びな表現によって今がうち忍ぶべき冬とわからせるのも実に巧みである」
と、雪人の真意を知らない田村麻呂が褒める。
「音の流れも悪くない。必ずしも綺麗な響きばかりが短歌でもなければ天下でもない。世の中にはごつごつ、ざらざらといった耳障りな音、鈍い音も存在する。それを表現するにあたって音の調和が取れていれば、完成された耳障りな音となる。それは調和を崩した不協和音と明確に異なるところだ」
だんだんとわかりづらい感覚的な話になってきた田村麻呂だが、師に倣って貴族たちも感嘆する。
「敢えて同じ言い回しを使う潔さが素晴らしい」
「短い歌の中で夏以外の季節全てを表現するとは」
そして、口々に褒めそやす貴族たちの中で、ひときわ口数の少ない、大人しい上達部を雪人は見つけた。
(「もしかすると、あの方が……?」)
少進ほど挙動不審でもなければ紙のような顔色もしていないが、何か屈託のある様子で、それこそうち沈んでいるのが看て取れる。
貴族の誰もが笑っていた小梅の歌にも、今の雪人の歌にも反応がはかばかしくないのは、何か理由があるのかどうか。
(「機会を見計らって声をかけてみようかな……」)
大成功🔵🔵🔵
効果1【プラチナチケット】がLV4になった!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
菅原・小梅
◆行動
まさか、上達部にあられる方までも歌会に参加されていらっしゃるとは…
恐らくは『地獄変』についても何かしらご存知かとは思いますが
頃合いを見て、そっとお声掛け致しますのが寛容ですかね(【プラチナチケット】を使用し)
宮に咲く藤の花が色褪せては筑紫の梅は気もそぞろで実を付けぬかと思いますが…
如何なることが障りとなっていらっしゃいますか?
その様に尋ねれば何処の縁者か察して頂けるでしょう。
無論、却って貝の様に口を閉ざす可能性もございます。
その時は…
基経様は阿衡の紛議に置いても程好いところで手を打たれました。
貴方様も手元にある駒を上手く扱うのは悪くないかと諭してみます。(心の動きを【看破】し訴えつつ)
文月・雪人
いよいよ情報収集、上手く行くといいけれど
残留効果に更に【プラチナチケット】重ねて
【歴史知識・演技・観察・情報収集・看破】も勿論活用
気落ちする上達部を気遣う体で貴族の一人に話題振り
上達部の名前や役職を密かに確認しておく
頃合いを見計らい
上達部の親密な友として
気分転換に月でも眺めませんかと声かける
人目のない場所へと誘い出し
【観察・情報収集】で心の動きを【看破】確認しながら
沈む心に寄り添い距離を詰め
悩みを話すように促そう
何より貴殿のお身体が心配ですと
親身に相談に乗りながら
さり気なく地獄変の名前を出して反応を確認
極力自然な流れで『縁由の言霊』使用して
地獄変について知っている事を全部話してくれるように頼む
●枝葉の疎外感
歌会は続いていた。
ディアボロスたちがこぞって面白い歌を詠むので、皆が興がってなかなか帰ろうとしないのだ。
あれより良い歌を詠みたいという対抗心に火をつけられ、発奮したのかもしれない。
(「いよいよ情報収集、上手く行くといいけれど」)
そんな中、文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)は、まず上達部の素性を知ろうと、他の貴族へ話を振った。
「つかぬことをお尋ねしますが、あちらにおわす方は、どなたさまで……」
あくまでも表向きは気落ちする上達部を気遣うフリで、当人の名前や役職を自然に訊き出すつもりなのだ。
「ああ、確か弁官から参議になられた……藤原葛波様ですよ」
「左様でございましたか。先程から何やら落ち着かぬご様子でしたから……」
雪人は貴族へ礼を告げてから、改めて藤原葛波の様子を伺う。
(「まさか、上達部にあらせられる方までも歌会に参加されていらっしゃるとは……」)
一方で菅原・小梅(紅姫・g00596)も、藤原葛波をそっと目で追っていた。
「恐らくは『地獄変』についても何かしらご存知かとは思いますが……頃合いを見て、そっとお声掛け致しますのが寛容ですかね」
「同感です。今なら周りも人少なですから、良い頃合いかと」
「では……」
貴族相手の情報収集から戻ってきた雪人と頷き合って、いよいよ葛波へ接触を試みる小梅。
「宮に咲く藤の花が色褪せては、筑紫の梅は気もそぞろで実を付けぬかと思いますが……」
まさか地獄変についてご存じですか、などと数多の貴族が集う歌会の場で問うわけにもいかないので、それこそ平安貴族らしく婉曲に婉曲を重ねたものだ。
「花など端(はな)から咲きませぬ……いずこの実の成りを楽しみにするような身分には到底なれぬ私になぞ、梅の香を伝える追い風も吹きますまい……」
葛波は、暗い声でそう応じる。
「如何なることが障りとなっていらっしゃいますか?」
小梅は根気強く言葉を紡いだ。
「手元にある駒を上手く扱うのは悪くないかと存じますが……」
「…………」
歌会に集っているのは皆、貴族の中でもそれなりに身分の高い者ばかり。
当然ながら、己が家の抱える秘密を簡単に洩らすはずもない。
とはいえ、身分の高い家なればこそ、後継者争いなり公の出世競争なりで親族と争うことも格段に多くなる。
そんな時、秘密裏に使える手駒を増やしておくのはどうか——と小梅は言ったのだ。
「気分転換に、月でも眺めませんか」
雪人も努めて気負いのない様子で声をかける。
「……万一、遣り水に倒れ込んでも、お笑いくださいますな」
葛波はそんな事を呟いて、ようやく重い腰を上げた。
縁側から庭へ降りると、秋から冬への移り変わりを感じさせる寒空が、月の光を冴え渡らせていた。
「良い月なのに、何も浮かびませんな」
「……それだけ、お胸が別のことで占められているのでしょう」
葛波が月へ気を取られている隙を突いて、雪人は密かに縁由の言霊を発動させる。
「お胸を締めるのが慕わしいどなたかの面影ならまだしも、貴殿の沈みようからはそうとも伺えず……何より貴殿のお身体が心配です」
「何も喉を通らずみるみるお痩せになる恋もございましょうが、だとするならば花も咲かず実もつけぬとは面妖な」
小梅も雪人の話に調子を合わせて葛波の笑いを誘おうとした。
「……私は、藤原とは名ばかりの、一族の中でも端の端、枝葉の先に名を連ねる家の生まれでしてな」
そんな2人の会話で張り詰めていた神経もほぐれたのか、葛波は少しずつ語り始める。
「藤原本家とも関わりは薄く……なまじ家名が同じであるばかりに、余計憧れが募りました……本家で盛大な宴が行われる際、分家筋はその準備に駆り出されます。私も……数えるほどですが本家の門まで罷り出たことがありました」
葛波の家からは箱に詰めた衣装を届けたという。招待客への手土産なり女房や小者への被け物なり、臨機応変に使えるだろうと。
「その時……、……」
言葉に詰まってしまった葛波へ、雪人が優しく続きを促す。
「もしかして……地獄変、ですか」
「どうしてそれを……」
葛波は驚くも、すぐに気を取り直して、
「地獄変なる巻物について、その時初めて小耳に挟んだのですが……何やら『非常に重要な巻物で、厳重に守られているらしい』のです」
ついに飛び出した新たな情報に、雪人と小梅が視線を交わした。
「……同じ一族でも身内とも思わぬ扱いをする裏で——どんなに大切かは知りませんが——本家は人ですらない巻物を大切に守っているのかと思うと……家の生まれだけで出世も何もかも決まってしまう京の成り立ちすら恨めしく、何をする気も萎え果てましてな」
と、溜め込んでいた鬱憤を全て吐き出して、深い深い溜め息をつく葛波。
「家名も大切ではありましょうが……人々から敬われているのはやはりお人柄や実力の伴った人物かと存じます。葛波さまとてこうして歌の道を極められれば、いずれ、官位でなくとも藤原本家を見返す機会が生まれるのではありませんか」
「生まれとは時に枷にもなるもの。葛波様は出世の機会の代わりに、どこまでも限りのない自由を得なさったのかもしれません。誰にも注目されぬ立場だからこそ、きっとできることも多くございましょう……」
その後も、葛波の気持ちへ寄り添い、親身になって相談へ乗る2人であった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【プラチナチケット】がLV6になった!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!
嵐柴・暁翔
取り合えず少進さんからの返歌を引き受けますかね
物騒な時限爆弾を抱えたままでどこまで正気でいられるかなんて分かったもんじゃないしな
……しかしまあ随分と歌がお好きみたいだけどこの時代の貴族の方々はみんなそうなのかねぇ…?
いきなり会いに行って信用されるのかは不安ではあるけどその辺りは【プラチナチケット】と【友達催眠】に期待するしかないか
取り合えず陰陽師を名乗って自分は呪いの歌では死なないからこちらへ返歌をするようにと交渉します
まあ死なない理由は後で坂上田村麻呂へ返歌するからでしかないんだけど相手が妖怪で黒幕だと知らなければ抵抗もあるだろうし詳細を聞かれても秘術ゆえに答えられぬという感じで誤魔化します
神宮寺・琴
他の方にもお話を聞いてみたいと
小進さまに声をかけましょう
【プラチナチケット】の残留効果で
顔見知り程度の貴族の娘、程には思わせられましょうか
見知らぬ人に囲まれて気疲れしておりまして
少し離れて休みたいのですがひとりでは心細く
しばしお時間いただけませぬか
田村麻呂や他貴族たちと離れることが出来れば
小進さまに呪い歌が届いているとお聞きしました
その返歌、わたくしにくださいませ
その上で届いた歌と返歌についてご教授くださいませぬか
ご案じくださいますな
その呪いを滅することが出来るという方がおいでです
ほらそちらに
暁翔さまを指し示し合流出来ればと
さて敵に返す歌はどう詠めばよいでしょうか
アドリブ・連携歓迎
文月・雪人
親族だからこそ比べてしまう
貴族というのもまた窮屈なものだね
無事に情報を得てホッとするのも束の間
次は少進さまの方へ
他人へと呪いを移す事を躊躇う心の持ち主だ
必ずや助けたい
仲間と接触した少進へ声をかけ
彼等は信用できる者だと伝えて背中を押そう
呪いの歌がいつわが身に届くかと
不安になるのは誰しも同じ
だからこそ待つだけでなく
攻めに転じるのもまた一つの手
故に私達も力ある陰陽師にお願いして
被害者の出ない解呪の方法を調べて頂いたのです
自分も仲間である事を明かし
安心して任せて欲しいと『縁由の言霊』でお願いする
呪いの心配は要らないのだし
折角だから私も聞かせて頂きたい
どんな歌を思いついたのか
気になって仕方ありませんから
●傲慢と皮肉
未だ歌会が続く邸の母屋。
(「取り合えず、少進さんからの返歌を引き受けますかね」)
嵐柴・暁翔(ニュートラルヒーロー・g00931)は、修理少進を探して歩いていた。
(「物騒な時限爆弾を抱えたままで、どこまで正気でいられるかなんて、分かったもんじゃないしな」)
そんな暁翔の懸念も決して杞憂ではなく、返歌をしたくない葛藤や2日後には命尽きるという恐怖に押し潰されそうな少進は、2日経たずとも体を損じてしまいそうなほど憔悴していた。
(「……しかしまあ随分と歌がお好きみたいだけど、この時代の貴族の方々はみんなそうなのかねぇ……?」)
と、詠めもしない歌をわざわざ考える少進を、内心不思議に思う暁翔。
同じ頃。
(「想像以上に熱の入った講義を受けることになってしまいましたが」)
神宮寺・琴(見鬼の孫・g01070)もまた、密かに笑いを噛み殺しながら、少進の方へ近づいていった。
(「おかげで、顔見知り程度の貴族の娘、ぐらいには少進さまへも思わせられましょうか」)
暁翔も琴も念には念を入れて、プラチナチケットや友達催眠を発動させている。
そんな2人を遠巻きに見守っているのが文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)。
(「親族だからこそ比べてしまう……貴族というのもまた窮屈なものだね」)
無事に葛波から情報を得てホッと胸を撫で下ろすのも束の間、
(「そんな窮屈な世界にいながらも。少進さまは他人へと呪いを移す事を躊躇う心の持ち主だ。必ずや助けたい」)
そのためにも修理少進から呪いの返歌を詠んでもらわねば、と気合を入れ直していた。
「もし、しばしお時間いただけませぬか」
まずは琴が、少進へそっと接触を試みる。
「おや、いかがなされた」
ディアボロスたちの思惑通り、少進は琴のことを歌会仲間の貴族だと認識してか、愛想笑いを見せてくれた。
「見知らぬ人に囲まれていささか気疲れしておりまして、少し離れて休みたいのですがひとりでは心細く……」
「人酔いというやつですな。廂の間なら空いてるでしょうから、では、参りましょうかな」
場所の移動を提案されると、少進はどこか安堵した顔になって腰を浮かせた。
人の多い歌会で呪いの返歌の朗詠を我慢するのが、殊の外辛かったのだろうか。
「少進さまに呪い歌が届いているとお聞きしました。その返歌、わたくしにくださいませ」
ともあれ、廂の間へ移った琴は、早速本題を切り出した。
「何故それを……いいや、そんなことよりも」
少進は狼狽えて、一層沈痛な面持ちになる。
「あの歌を見た時、理由はわからぬがはきと悟り申した。三晩経てば命を失う危険な歌だと……返歌すれば呪いが姫君に移りましょう」
「ご案じくださいますな。その呪いを滅することが出来るという方がおいでです」
ほらそちらに——琴が扇で指し示したのは暁翔。
「自分はしがない陰陽師だが、呪いの歌で死なないための用意はある。どうか安心して返歌をしてくれ」
暁翔も少進の心痛を和らげるべく、自信を持って請け負ってみせた。
(「まあ、死なない理由は後で坂上田村麻呂へ返歌するからでしかないんだけど……」)
相手が妖怪で黒幕だと知らなければ抵抗もあるだろうし、もし突っ込まれたらどうにかしてはぐらかさねばと考える暁翔。
「ご心配は無用です。彼等は信用できる、少進さまの味方ですよ」
雪人も、少進を安心させようと控えめに声をかける。
「呪いの歌がいつわが身に届くかと不安になるのは誰しも同じ……だからこそ待つだけでなく、攻めに転じるのもまた一つの手」
少しでも気休めになればと縁由の言霊を発動させて、懸命に言葉を尽くした。
「故に私達も力ある陰陽師にお願いして、被害者の出ない解呪の方法を調べて頂いたのです。どうか安心してお任せください」
「ははあ……皆様は陰陽師に方々でいらっしゃいましたか」
「呪いの心配は要らないのだし、折角だから私も聞かせて頂きたい。少進さまがどんな歌を思いつかれたのか、気になって仕方ありません」
3人の説得が功を奏したのか、少進は納得したように頷いて、
「そういうことならば、お言葉に甘えて返歌をお伝え申そう」
僅かに血色の戻った顔でそう約束してくれた。
「その上でお願いがあるのですが、届いた歌と返歌の意味についてもご教授くださいませぬか」
歌は苦手だと自称する琴が、内心慌てて付け加えた。
「承りました……誰が送ってきたかは見当もつかぬが、呪いの歌は『むつかしく 吹きつる野分 拒むとも はやあやしかる 心うたてし』」
他人に聞かれまいと憚ってか、少進が小さな声で詠じる。
「野分(台風)は嫌な物であるはずなのに、実はわくわくしてしまう我が心の情けなさ……即ち、好きでもない男から懸想されて野分のごとく激しく降る文を、気味が悪いと態度では拒みつつ、本当はそれを喜んでいるけしからぬ心の情けないことよ……という意味ですな」
この辺りも、蟹坊主と坂上田村麻呂の性格の違いが現れている。
恋から遠ざかった年寄りの悲哀を詠った蟹坊主は、海産物の掛詞や、恋に縁遠い坊主という立場など、明らかに自分自身の感傷をそのまま詠っていた。
一方、田村麻呂は架空の女の立場で歌を詠んでいる。呪いの歌の出どころが自分だと悟られないための工作だとすれば、奴の用意周到さが伺えようというものだ。
「秋風の 過ぐだに知らず 長雨に うはの空など いかでわからむ……」
ふと、少進がこれも抑えた声量で詠む。
「風が吹いた——想いを寄せられた——ことすら気づかぬほどの長雨……孤独の中におりますと、懸想されて浮かれたお心の嬉しさのほども、到底想像だにできませぬ……という皮肉です」
先の浮かれ具合に水を差す内容だが、説明する少進の声は明るかった。
「意地が悪いと思われるやもしれませぬが、元がなかなかに興味深い歌でしてな。想う切なさでなく想われる喜びを詠う傲慢さが面白い。ならばこちらも通り一遍の恋歌らしい返しでなく、誰にも想われず捩じくれた歌を詠めば……と、年甲斐もなく頭を捻ってしまいました」
そんな少進の呪いの返歌に対して、果たしてどんな返歌を考えようかと3人は顔を見合わせる。
ともあれ、無事に修理少進から呪いの返歌をもらって、彼の身の安全を確保したディアボロスたちであった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【友達催眠】LV1が発生!
【書物解読】がLV2になった!
【プラチナチケット】がLV7になった!
効果2【ダメージアップ】がLV8になった!
【命中アップ】がLV2になった!
神宮寺・琴
これで小進さまのお心の憂いも晴れたことでしょう
自らの命が絶えるとわかっていても
わたくしに返歌を送ることを躊躇っていたお優しき方
助けられて本当に良かった
さぁ残るは田村麻呂を討つだけ
だけなのですが…(嘆息)
冴えない出来と笑われる覚悟で返歌を送りましょう
刻と鳴く 立つ鳥の如 射干玉の 闇の帳に さする月かも
夜が来ると知らせる鴉の体のように
暗く沈んだ私の心にも優しい光がさし込むでしょうか
呪いが深き黄泉へと魂を呼び込もうとしても
我らでぃあぼろすがそうはさせませぬ
「精神集中」し「高速詠唱」しつつ「観察」
[異界見聞録]で弱点を「看破」
召喚された鬼は「風使い」て「吹き飛ばし」攻撃を
アドリブ・連携歓迎
●歌は心by蟹坊主
邸の廂の間。
(「これで小進さまのお心の憂いも晴れたことでしょう」)
神宮寺・琴(見鬼の孫・g01070)は、ほっと胸を撫で下ろした様子で母屋へと向かう。
(「自らの命が絶えるとわかっていても、わたくしに返歌を送ることを躊躇っていたお優しき方……助けられて本当に良かった」)
後は、呪いの元凶である田村麻呂を討てば事件解決。
(「討つだけなのですが……」)
はあ、と我知らず洩れる嘆息を抑えられない琴だ。
「致し方ありませぬ。冴えない出来と笑われる覚悟で、返歌を送りましょう」
余程歌が苦手なのだろう、まるで合格率の低い難関試験にでも挑むような緊張を漂わせて、格子戸を開ける。
見れば、長く続いた歌会はようやく散会して、軍䰠『坂上田村麻呂』がひとり後片づけをしていた。
琴は、生徒たちの反故を掻き集めるその背中に生真面目さを感じつつ、いよいよ覚悟を決めて詠みかける。
「刻と鳴く 立つ鳥の如 射干玉の 闇の帳に さする月かも」
表向きは、夜が来ると知らせる鴉の体のように、暗く沈んだ私の心にも優しい光がさし込むでしょうか——との意味らしい。
反面、
「呪いが深き黄泉へと魂を呼び込もうとしても、我らでぃあぼろすがそうはさせませぬ」
これこそが琴の伝えたい真意——謂わば宣戦布告であった。
「……我が呪いが民を腐らせる前に跳ね返ってきたか……骨折り損なことよ」
田村麻呂は口の端を歪めて笑うも、初めて琴へ対して殺気を放つ。
ようやく敵だと認識したのだろう。
「此の世彼の世、人界神界妖界、かく得たりし知の集約、我が真眼とならん……」
すかさず精神を集中させて、高速詠唱を始める。
具に田村麻呂を観察してその弱点——慎重に慎重を期してなかなか攻めに移れない性格——を看破するや、護神刀を構えて斬りかかった。
「……己を鴉に例えるとは風変わりな姫よ。だが、誰の訪いもなく無聊を囲つ心境を、なかなか巧く詠めたではないか。生い先楽しみなお手筋だとお見受けした。姫ならば帳を潜り抜ける月の光のような頼みある男も自然と現れようぞ」
田村麻呂は、琴の刃を正面から受け止め、斬られた痛みを堪えながら歌の添削をしてみせた。
もちろん、その一方で鬼の群れを召喚し、琴へけしかけるのも忘れない。
(「……あくまで今の歌は軍䰠田村麻呂を挑発するために詠んだつもりでしたが……」)
だが、琴がうちのめされたのは襲い掛かってくる鬼たちの攻撃よりも、
(「……べ、別に決して独り身が寂しいわけではありませんのに、そう受け取られかねない歌に仕上がっていたなどと……これだから歌は苦手なのです……!」)
自らが詠んだ呪いの返歌から滲み出る本音の方であったとか。
大成功🔵🔵🔵
効果1【書物解読】がLV3になった!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
文月・雪人
少進様もまた随分と面白い歌を詠まれたものだ
新宿島風に言えば『リア充爆発しろ』ですかね?実に面白い
いつか一緒に酒でも酌み交わしたいものです
『軒下に 月は見えねど ともがらと ながめし坏(つき)に 時を忘るる』
この呪が酒(しゅ)であれば
田村麻呂先生ともまた、遡りし時を忘れ語り合えたのでしょうか
いえ、互いにクロノヴェーダとディアボロスの間柄では詮無き事ですね
返杯、受け取って頂けますか?(刀を抜いて微笑んで
動きを【観察・情報収集】
鬼の獲物が破魔の武具というのもまた面白い
攻撃の要の呪詛を【看破】し【衝撃波】で弾き返す
武具を刀で武器受けした後カウンター
【命中アップ・ダメージアップ】の斬妖閃で【一刀両断】に
●器に映る月
続いて。
「少進様もまた随分と面白い歌を詠まれたものだ」
文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)は、琴と共に母屋へ踏み入って戦闘に突入したものの、さっきから苦笑を抑えきれずにいた。
「新宿島風に言えば『リア充爆発しろ』ですかね? 実に面白い……いつか一緒に酒でも酌み交わしたいものです」
そのためにも田村麻呂を討たねば——と雪人も琴へ倣って、呪いの返歌を叩きつける。
「軒下に 月は見えねど ともがらと ながめし坏(つき)に 時を忘るる」
たとえ軒下から屋内へ月の光が射しこまぬ暗い夜でも、朋輩と坏を囲めたならそれだけで時間を忘れるほど楽しく過ごせよう——という意味か。
(「この呪が酒(しゅ)であれば、田村麻呂先生ともまた、遡りし時を忘れ語り合えたのでしょうか」)
そして雪人の中では、輩とは少進だけでなく軍䰠田村麻呂のことも指すようだ。
(「いえ、互いにクロノヴェーダとディアボロスの間柄では詮無き事ですね」)
けれども戦う運命なのは避けられないと覚悟を決めるや、刀を抜いて微笑んだ雪人。
「返杯、受け取って頂けますか?」
「……無論。歌の巧い弟子ならば殺し甲斐もあるというものよ」
田村麻呂はそんなことを言って、破魔の武具——こちらも距離を詰めてくる雪人に合わせて刀——を構える。
(「鬼の獲物が破魔の武具というのもまた面白い」)
雪人は田村麻呂の動きを観察し、出来うる限りの情報を頭に叩き込んだ。
数瞬とかからず導き出すのは、奴の攻撃の要——敵味方問わず侵食する呪詛への対処法だ。
(「斬妖閃の刃風に衝撃波を上乗せして弾き返せば……」)
そうと決まれば、雪人は積み重ねた世界法則の変容に後押しされつつ正確無比に狙いを定め、威力も相当に高まった斬妖閃で田村麻呂へ斬りかかる。
「軒下の一語が示す期待と寂しさ、月は見えねどの重苦しさ、そしてともがらの転機を経て、ながめし坏にという弾む心を表したかの如く軽やかな響き……素直な詠みぶりの中にもさりげない技巧の感じられる、良き歌である……」
田村麻呂は、衝撃波によって自分へも降りかかる呪毒に加えて雪人自身の剣戟を喰らい血を吐きながら、反撃にと刀を振り下ろしざま言ったものだ。
「月……恋人の訪れがなくとも苦楽を分かち合える友がいれば、人生は充分に楽しい……そこな姫の歌に上手く答えた、素晴らしき返歌であるな」
そう。雪人の歌は孤独を長雨に例えた少進の歌のみならず、ぬばたまの闇に月の光をと願った琴の歌へも返歌として通じる内容になっていたのだ。
先の琴の歌と同様、厳しい田村麻呂をも唸らせる、実に見事な歌である。
大成功🔵🔵🔵
効果1【一刀両断】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV4になった!
嵐柴・暁翔
安酒に 乱痴気騒ぎ よいの間は 見るも踊るも 己が意思なり
……うん
俺に歌の才覚はないのはよく分かった
よいの間は『酔い』でも『宵』でも好きに読んでくれ
色恋は酒に酔って泡沫の夢に興奮するようなもんなんだからどうするかは自分で決めるもんだ、という感じかな
小進さんへの返歌としてなら『モテ自慢なんて放っておけ』というところかね
まあ添削は好きにしてくれ
そもそも自分でそれが出来る程詳しい訳でもないしな
この後の戦い方の添削は自分の命を対価にやるしかないんだしな
しかも俺は《天元突破冒険者》を使って突っ込んで『風牙』で斬る位しか芸は無いしな
もし坂上田村麻呂が歌人として死ぬというなら末期の歌を詠む間位は待つとするさ
●全てうたかた
一方。
「安酒に 乱痴気騒ぎ よいの間は 見るも踊るも 己が意思なり」
嵐柴・暁翔(ニュートラルヒーロー・g00931)もまた、先の2人と共に母屋へ足を踏み入れるなり、軍䰠田村麻呂へ向かって呪いの返歌を叩きつけたものだ。
「……うん。俺に歌の才覚はないのはよく分かった」
暁翔自身、歌の出来に満足していないのか、すぐさまそう自嘲気味に呟く。
それでも当人曰く、色恋は酒に酔って泡沫の夢に興奮するようなもんなんだから、そもそもどうするかは自分で決めるもんだ——という感じの意味らしい。
「少進さんへの返歌としてなら『モテ自慢なんて放っておけ』というところかね。まあ添削は好きにしてくれ」
そもそも自分でそれが出来る程詳しい訳でもないしな、と語る暁翔の口調は平静そのもので、生きる時代によっていかに短歌の重要性が違うか看て取れる。
(「この後の戦い方の添削は、自分の命を対価にやるしかないんだしな」)
とすっかり臨戦態勢の暁翔。
早速、終焉破壊者なる存在から力を借り受けて田村麻呂の懐へ飛び込み、愛刀風牙で斬りかかった。
「ふんっ!」
田村麻呂も破魔の刀でこれに応戦、鍔迫り合いに持ち込む。
「……面白みは充分にあるが、歌にしては平坦な響きに終始しているのが惜しい。否、恐らく貴殿の『放っておけ』という冷めた気分の表れであろう。我ならば『うたかたの 乱痴気騒ぎ よいの間は 見るも踊るも やすきさけなり』とでもするところだ』
果たして暁翔を動揺させるためか、それとも歌人としてのただの使命感か、やっぱり歌の評価は忘れない軍䰠田村麻呂である。
言うまでもなく安き酒と易きさ気(け)を掛けている。ちなみに後者のさは接頭語。
「……俺の太刀に、斬れぬもの無し。……全てを斬れ……雷光烈斬牙……!」
ともあれ、身体を蝕む呪毒すらものともせずに競り勝ったのは暁翔。
破魔の刀を吹っ飛ばすや、返す刀で田村麻呂を袈裟斬りに一閃、かなりの深手を負わせたのだった。
大成功🔵🔵🔵
効果1【一刀両断】がLV2になった!
効果2【命中アップ】がLV5(最大)になった!
瀧夜盛・五月姫
アドリブ、連携、歓迎、だよ。
ん、もう、貴族たちの家、だからって、少し気合、入れすぎた……服、重いっ!
や、お久しぶり? 姫、知らない?
大丈夫、アレと、違うクロノヴェーダ。わかってる。
だけど、姫も倣って、詠もう、かな。
――忘れめや 我が身世に這う葛の花 後も逢わんと夢にぞ見つる
忘れてないよ、姫に纏わりついたこの怨み(葛の花→裏見草→怨み草)。
夢にまで見てた、よ。再開の時を。
【ダッシュ】で接近、鬼どもの群、飛び越えて、坂上田村麻呂、【小烏丸】で斬る、斬る、斬るよ。(【斬撃】【連撃】【捨て身の一撃】)
刀を振るう、なら、【フェイント】して、【一撃離脱】。
再び、薙刀、手に取って、斬りかかるよ。
面――ッ!
●鬼軍突破
他方。
「ん、もう、貴族たちの家、だからって、少し気合、入れすぎた……服、重いっ!」
瀧夜盛・五月姫(無自覚な復讐鬼・g00544)は、歌会への潜入だからとしっかり着込んでいた襲(かさね)に悪戦苦闘していた。
「や、お久しぶり? 姫、知らない?」
その傍ら、田村麻呂へ気やすく声をかける五月姫。
「知らぬな。裳着を済ませたかどうかの女童(めのわらわ)が歌の弟子なら、忘れたくても忘れ得ぬ珍しさであろう」
「大丈夫、アレと、違うクロノヴェーダ。わかってる」
田村麻呂が怪訝そうに応じるのへもめげず、五月姫は皆に倣って歌を詠む。
何故ならこの田村麻呂はアヴァタール級クロノヴェーダ。五月姫は前に同名同種の別個体と戦ったことがあるのだ。
「――忘れめや 我が身世に這う葛の花 後も逢わんと夢にぞ見つる」
葛の花の別名裏見草から裏見と怨みを掛けた、雪辱の再戦に奮い立つような勇ましい歌だ。
(「忘れてないよ、姫に纏わりついたこの怨み——夢にまで見てた、よ。再開の時を」)
そんな五月姫の血気に逸る様子を見て、田村麻呂も応戦すべく鬼の群れを召喚。
「これはこれは。大人よりも臈たけた歌を詠むものだ。女童と言ったことは謝らねばなるまい」
鬼たちを統べて五月姫へけしかけると同時に、彼女の歌へしきりに感心していた。
「我が身世に這う、夢にも見つるがそれぞれ、後も逢わんと願う過ぎた逢瀬の甘美さ、素晴らしさをよく表している」
ともあれ、五月姫は全力疾走で接近すると、床へ突き立てた大薙刀無銘瀧夜叉一振へ体重を預け、なんと棒高跳びの要領で鬼の大群を飛び越えてみせた。
次いで小烏丸を手にした刹那、守りを捨てて幾度も素早く斬撃を見舞う。
「面――ッ!」
宙から降りる勢いにも任せた最後の一撃が田村麻呂の脳天に決まり、白く長い鬼の角ごと頭の骨をも打ち砕いた。
「うつせみの 世はすべからく いみじけれ 見るも語るも 合戦(かっせん)にし(如)く 見事……なり。夜を識る女人よ……」
それが、アヴァタール級軍䰠『坂上田村麻呂』の最期の言葉であった。
ディアボロスたちの地獄変の調査は、ようやくとば口に立ったといえよう。
大成功🔵🔵🔵
効果1【落下耐性】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!