ドンレミ村掃討作戦:聖地から離れたくない者たち(作者 塩田多弾砲
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#火刑戦旗ラ・ピュセル  #ブルゴーニュ北部掃討作戦  #多方面同時攻略作戦  #ブルゴーニュ地方 

「君たちに、依頼をしたい。場所はラ・ピュセルの、『ドンレミ村』だ」
 彼、シャルル・ヴァロアの依頼を、君たちは聞いていた。
「知っての通り、ドンレミ村では『海鳥提督シャルル・ド・ラ・セルダ』と交戦。それが撃破された。これは君たちディアボロス諸氏の活躍のおかげだ。改めてお礼を言いたい。そして……」
 撃破した事で、フランス・ブルゴーニュ北部のキマイラウィッチたちの間に、大きな混乱が生じている、という。
「以前にこの『ドンレミ村』の攻略、それに参加した者ならわかるだろうけど。この村は、地理的にディヴィジョン境界に近いものの、戦略的な重要度は低い。しかし……」
 この辺境集落は、『断片の王、ジャンヌ・ダルクの生誕地』である。
 そのため、キマイラウィッチにとっては特別な意味がある土地なのかもしれない。
「で、皆にして欲しい事は、『キマイラウィッチ部隊の掃討』だ。現在このドンレミ村に集まっているキマイラウィッチたち、敵戦力を、可能な限り掃討し撃破して欲しい」
 今、キマイラウィッチたちはこのドンレミ村に集まってはいるものの、動揺し、混乱が生じているとのこと。その混乱に乗じ、敵を倒してほしい……と言う事だ。

「それで、現在集まっているブルゴーニュ北部のキマイラウィッチ達に関する事だけど……彼ら、彼女らも、『一時撤退』が正しい事とは理解している。けれど……今言った通り、ドンレミ村に対しては特別な思い入れがあるようだ。だから、逃げるべきか留まるべきか、方針が定まらず混乱しているようなんだ」
 曰く、
『留まってディアボロスを迎撃するべき』と考える部隊、
『ドンレミ村周辺に待機しており、もっと接近を試みる』部隊、
『遅ればせながら、撤退準備を今更始めた』部隊……、
「……と、敵は行動方針も、今後の予定や展望も、ろくに決めておらずバラバラの状態のようだ。なので……」
 この機会に、敵の数を減らせれば。ディアボロス側としては、今後の戦いや作戦、展開が、有利になる。
「……ではあっても、敵は『キマイラウィッチ』。こんな状態でも実際に相対し戦闘になったら、手ごわい敵になる。ディアボロスへの復讐心が消えたわけじゃあないからね。油断は禁物だ」
 無論、その通り。敵が混乱しているからといって、そこからこちらが油断したら、それこそ本末転倒。気を引き締めて行かねば。

「正直、ドンレミ村、およびその周辺地域は、完全に孤立している。ディアボロスにとっても、維持の必要性はあまりない。しかし……周囲を掃討する事でディアボロスの勢力圏を拡大するというなら、話は違ってくる」
 敵が本腰を入れて、ドンレミ村の奪還に来るならば、防衛が難しくはなるが。
「この『多方面からの同時侵攻』作戦を実行する事で、敵の狙いを決めさせないようにすれば、ディアボロスの勢力圏拡大も一気に進むかもしれない。ただ……こちらの勢いが止まれば、敵の反撃を受け各個撃破される可能性もある」
 反撃させない為には、今後の攻略旅団の作戦が重要となるだろう。君たちは、この勢いに乗る事を決意。
 更なる詳細をシャルルから聞くのだった。

 ドンレミ村近く、名も無き小さな集落。
『……で?』
 村の一角にある小屋、その内部で、
 まるで淫魔のように、二人の美女をはべらせている女性が聞き返した。
『ですから、ソレイユ様。言った通り。この部隊の規律を正さねばと言っているのです。あの海鳥提督……シャルル・ド・ラ・セルダ様が討ち取られた今、我々はどうすべきなのか……なのに、あなたは何をしているのです』
 目前でひざまずき、進言しているのも女性。美しい体型に、ビキニ水着のようにブラとパンツ、そしてブーツのみを着用している。
 煽情的な体つきと服装をしているが、頭部の角、背中のコウモリの翼、長く伸びる尻尾は、彼女が人外……アークデーモン『アラストルの乙女』だという事を示している。……そして、目前の女性がはべらせているのも、彼女と同族のデーモンだった。
『固い事を言わない。だからこそ、こうやって英気を養っているのよ。……あなたも混ざらない? セレイネ』
 セレイネと呼ばれた『アラストルの乙女』の進言を受けているのは、陽気で快活な印象を与える女性。
 しかし、裸になっているその身体の各所には、人形めいた関節が認められた。
 魔女化した自動人形『華麗なるソレイユ』。それが彼女の名前。
『……まだ勤務時間内です。それよりソレイユ様、この部隊は現在、不安を訴える部下たちにより士気が落ち、不安から自暴自棄な行動を起こしたり、互いに小競り合いを始めている者も出ております。規律を正すため、命令を下さい』
『士気が落ちている? そういえば、先刻より外が騒がしいけど……』
 と、マントだけを羽織り、立ち上がったソレイユは、外へ出て周囲を見た。
 集落内は、混乱していた。普段は整然と待機している『アラストルの乙女』たちが、あちこちで不安に嘆き騒いだり、木々や小屋を腹いせで殴りつけたり、互いに取っ組み合ったりしていたりと、不安に駆られたがゆえの騒ぎを起こしていたのだ。
『……おいお前達! 何を騒いでいる!』
 ソレイユの一括で、全員の騒ぎが収まった。
『命令を忘れたか! 別命あるまで全員待機といったはずだ! 早くしろ!』
 彼女の命令に、『アラストルの乙女』たちは即座に従った。騒ぎを止め、小競り合いも止め、集落の広場に集まっていく。
『……まったく、シャルル様が討たれたと聞いて、皆が帰還できるようにと派遣されたというのに。落ち着かせようと待機命令を出したのは、逆効果だったみたいね。ああもう、面倒くさい……』
 と、小屋の中に戻るソレイユ。
『……セレイネ。正直、私も不安よ。だからこうやって、淫魔らしい行為で、己を落ち着かせたのだけど……あなた自身は、どうすべきと思う?』
 その言葉を受け、セレイネも悩むような表情を浮かべていた。
『……正直、私もわかりません。ですが、部隊のこの現状を鑑みると、戦っても一方的に倒される可能性が高いかと』
『なら、逃げるべきよね?』
『……それが一番効率的かと。ですがそれは、我らが断片の王たるジャンヌ様の生誕地を、むざむざ敵に渡す事に他なりません。それには強い抵抗があります。事実、それが理由で撤退に反対する者も少なくありません』
『確かにね……でも、このまま留まっていたら、確実にやられる。数は揃っていても、今の皆の様子じゃ……勝てる見込みは、低い。でも、撤退して命が助かれば、いつかは奪還できるかもしれない。……ならば、選ぶべき選択肢は、おのずと明らかじゃあないかしら? 』
『…………仰る、とおりです。ソレイユ様』
 悔し気な顔のセレイネに近づくと、ソレイユは彼女を抱きしめた。
『……撤退するように、皆に伝えなさい。後で私からも、直接命令を伝える。あまりに逆らうようだったら、……この私自らが命じ……それでも拒むなら、私自身の手で引導を渡しましょう』
『……従って、くれるでしょうか?』
『従わせるわ。……聞いたわね? お前たち二人は、部隊の皆に『撤退準備せよ』と、私からの命令を皆に伝えなさい』
 と、ソレイユは、今まではべらせていた『アラストルの乙女』たちに言い放つ。
『『はっ、命令のままに』』
 命令に従い、服を着てそのまま小屋から出ていく二人。
『……では、私も……』
 セレイネも小屋から出て行こうとすると、
『……あなたは、もう少し私と居なさい。それに……勤務時間は、丁度終わったところよ?』
 ソレイユは、彼女の手を取り、自分が今まで座っていたベッドの上へ引っ張ると、
『あっ……』
 セレイネを、押し倒した。
『……『撤退する』。そう決めたのなら、多少の時間はできたでしょう? 私が、あなたを落ち着かせてあげる……』
『……はい。お願い、します……』
 マントを取り、素肌を露わにするソレイユ。
 彼女は、感じ取った。自分のビキニに、ソレイユが手をかけるのを。
 セレイネはそれを拒まず……目を閉じた。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【罪縛りの鎖】
1
周囲に生き物のように動く「鎖つきの枷」が多数出現する。枷はディアボロスが命じれば指定した通常の生物を捕らえ、「効果LV×2時間」の間、移動と行動を封じる。
【泥濘の地】
1
周囲の地面または水面が泥濘に変わり、ディアボロスは指定した「飛行できない対象」の移動速度を「効果LV×10%」低下させられるようになる。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【書物解読】
1
周囲の書物に、執筆者の残留思念が宿り、読むディアボロスに書物の知識を伝えてくれるようになる。効果LVが高くなる程、書物に書かれていない関連知識も得られる。
【乗物改造】
1
「60÷効果LV」分をかけて馬や馬車など「地上用の乗物」を改造し、最終人類史のオートバイまたは四輪乗用車のような外見に変化させる。改造後のオートバイは最大2人、乗用車は最大「4+効果LV」人まで搭乗可能で、最高時速「100+効果LV✕10」kmで走行できる。改造した乗物は破壊されない限り、24時間後に元の姿に戻る。

効果2

【命中アップ】LV1 / 【アクティベイト】LV1 / 【先行率アップ】LV1 / 【ドレイン】LV1 / 【ロストエナジー】LV1

●マスターより

塩田多弾砲
 こんにちは、塩田です。
 今回は、ドンレミ村で混乱している、ラ・ピュセルの戦力を掃討する事が目的です。
 正確には、ドンレミ村のすぐ近く、名も無き集落に待機しているクロノヴェーダ『アラストルの乙女』たちの掃討です。彼女らは海鳥提督、ラ・セルダが討たれ、混乱しているのみならず、ジャンヌの生誕地を死守すべきか、あるいは敵の手に落ちる事覚悟で撤退するか、迷っている状態です。
『華麗なるソレイユ』は、そんな迷っている『アラストルの乙女』たちに撤退を促していますが、彼女たちは『撤退すべきとは分かっているけど、このまま逃げて聖地を敵に渡したくない』とも思っており、積極的に逃げたくない状態です。
 最初に、①👾烏合のトループス級『アラストルの乙女』(👑5)で、『アラストルの乙女』たちとどう戦うかは、皆様にお任せします。
 現状では不安がピークになっており、集団としては瓦解しかかっている段階です。ここで不安を煽ったり、強大な力を見せつけ恐怖させたりするなど、様々な方法でトループス級の集団を崩壊させれば、各個撃破は容易です。また、不安を煽って同士討ちに導くようにしても良いでしょう。全て倒せられればベストですが、大多数を倒してしまえばパニックを起こし散り散りになりますので、それでも成功と見なします。
 ただし、烏合の衆とはいえ、かなりの数(一個師団ほど)が集まっているため、油断は禁物です。
 これがうまく行った後で、②👿アヴァタール級との決戦『華麗なるソレイユ』(👑11)になります。こちらも、単騎で集団を下すほどの実力を有しているので、確実に攻略できるように考えて行動して下さい。
 皆様のご参加をお待ちしています。
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このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


マリアラーラ・シルヴァ
ドンレミ撤退に落胆してる継戦派ベーダの所へお喋りに行くよ
撤退が決まってるから戦闘にはならないと思うの

ジェネラルが派遣された重要地を復讐者に捧げたら
魔女軍に身の置き場は無い
それは隊長も理解してるのに撤退って…変だよねって

囁きつつ周りを見渡せばベーダ達も
周囲が(復讐者と話してる)こちらの様子を訝し気に伺ってる事に気付くよね
そしたら不安と不信に襲われるベーダに隊長が姿を見せない理由も騙っちゃうの

なら撤退已む無しになる理由を作ればいい
貴女たち継戦派を排除すれば被害甚大という撤退名目ができる
だから隊長は勇士たる貴女達に会いに来ない
そして周りの蔑む視線の意味は…ね?

大丈夫
まずは日和見してる集団と結託するの
撤退しても命はないうえ
復讐者と戦って生き延びようとしても撤退派に背中を刺される
だから「先手」を打つしかないって
明確な損得を見せられれば引き入れるのは簡単
後は隊長不在の内に撤退派を粛正すれば
きっと隊長も覚悟を決めてくれる

そしたら正々堂々勝負してあげるね


継戦派か隊長派か
どっちが生き残るか見届けてあげるの


捌碁・秋果
…マリアちゃんの作戦、私も乗った!
マリアちゃんが継戦派のところに行くなら、私は隊長派のところに行くよ
もちろん、継戦派と隊長派の溝を深めてくるの
お互い頑張ってギスギスさせてこようね!

隊長派に話しかける
話はきいてるよ。意見が纏まらなくて困ってるんでしょ?
わかるなー、ディアボロスもそんな感じだから親近感あるよ(大嘘)

継線派は何を考えてるんだろう、撤退指示に反するなんて
あんなにステキな隊長の指示をきけないのはどうしてかな?
…そもそもなんでこの話しを知ってるか?
それはさ、ほら…
いるんじゃないかな、おしゃべりさんが
我々に貴重なお話を聞かせてくれるひとが、さ
ダメ押しでチラッと継戦派を見よう

疑心暗鬼に駆られて味方に刃を向けるのはどちらが先だろう
戦況は日和った方々を取り込めなかった分、こっちが劣勢?
被害を大きくしたいからすぐに決着がついてほしくない
私は隊長派と一緒に戦って泥仕合を長引かせよう
ふふっ、ディアボロスと一緒に戦う姿を見たらもう味方なんて思えないよね
どちらが勝っても被害は甚大じゃないかな


●推しを推すか死すべきか、それが問題だ
 ソレイユから命じられた、二人の『アラストルの乙女』……、
 その名を、『ミルア』『フリア』。この二人は、
『……ねえミルア、ソレイユ様の命令、どう思う?』
『……多分、あんたと同じ感想よ、フリア』
 ……『不満』を、覚えていた。
『ソレイユ様、ここに派遣されてきたのはいいけど、正直……』
『ええ、弱腰よね。なんでむざむざ、ジャンヌ様の生誕地を、あたしたちにとっての聖地を、敵に明け渡すのか……』
『ベッドの上では、情熱的なのに。あの情熱を、どうして戦いに活かさない?』
 そう、二人は撤退に反対だった。
 ……ソレイユの、淫魔としてのテクニックで篭絡されてしまいそうになったが。それとこれとは話が別。
 そんな事を考えていたら、
『……ちょっと、あんた誰?』
 仲間たちが、少女を囲んでいるところに突き当たった。

『……誰だい、お嬢ちゃんは。ひょっとして……ディアボロスか?』
 ミルアや、他の『アラストルの乙女』たちが戦闘態勢をとるが、
『やめときなさい。見たところ一人のようだし、それに……撤退が決まってるんだ。戦ったところで、お互い得にはならないでしょうよ』
 フリアがそれを止めた。
『とはいえ……ここは、偉大なるキマイラウィッチにとっての聖地。迷い込んだのか、遊びに来たのか……あるいは、一人で戦いに来たかは知らないけど……覚悟はできてんだろうね』
 しかしフリアは、凄味を以て、なかば脅かすような言葉を投げかける。が、
「……マリアは、マリアラーラ・シルヴァ(コキュバス・g02935)。マリアはね、ディアボロスだけど……ちょっと聞きたいことがあるのね」
 その少女は、臆することなく挨拶。そして、
「……ねえ、ここはジャンヌの生まれた、とても大切な場所、なのよね?」
 そんな事を言ってきた。

『! ちょっとあんた、どこでそれを!』
 ミルアがいきり立つが、
『落ち着きなさい、そんな情報、もうとっくに知れ渡ってるわよ』
 フリアがそれを止めた。
「……うん、噂話とかで聞いてるの。あのね、それで……マリアは『変だな』って思って。お姉さんたち、ここから引き揚げちゃうんでしょ?」
 そして、マリアラーラはそんな二人に、その二人の周囲に居る者たちに、言葉を畳みかける。
「……どうしてそんな事しちゃうの? ジャンヌって、みんなにとって大切な人、なんでしょ? 大切な人が生まれた場所は、同じくらいに大切。なのに、それを放置して逃げちゃうみたいで……それが、変だなって」
 それを聞き、
『知った口を聞くな! ……あたしたちだって、本当は撤退したくないさ!』
『ああ。しかし、ここに留まっていたら……お前らに攻め込まれるのは必至。ならばいったん引いて、体勢を立て直し、奪い返すべきだと言われて……』
 激昂しつつ、ミルアとフリアは言い放ち、周囲の『アラストルの乙女』たちも同意した。
 二人と、彼女らのその様子を見たマリアラーラは、小さく、周囲に気取られない程度の笑みを浮かべ、
「……へえ、それも……『変だな』ってマリアは思うの」
 煽るように、しかし、怪しいと思わせるように、
 そんな言葉を、皆に向かって言い放った。

『……変? 何がだ!?』
『お前……何を企んでる?』
 訝し気に思う『アラストルの乙女』たち。しかし、
「……なにも企んでないよ。マリアが変だなって思ったのは、『なぜ撤退するか』って事」
 まったく動揺する事無く、マリアラーラは涼しい顔でお喋りを。
「……ここは、ジェネラルが派遣された、重要な地点。ここを復讐者に捧げたら……魔女軍に身の置き場は無い。隊長も、その事は理解してるはず。なのに『撤退』って……変だよねって」
 囁くような声になり、周囲を見回す。
「…………ほら、気付いた? 周囲の、撤退に賛成している人たちも、こっちの様子を見てる。訝し気に、伺ってるよ……」
 マリアラーラの言葉を受け、ミルアとフリアは、そしてその周囲の乙女たちも、それに気づかされた。
 撤退準備している仲間たち、撤退すべきと考え、その命令に従っている仲間たち。彼女らは、確かにこちらを見て、怪しんでいる。
『……何が、言いたい』
「この様子を見て、分かっちゃったの。隊長さんが、姿を見せない理由が」
『理由? 言え! その理由とはなんだ!』
「……ああ、でもこれは、あくまでもマリアの、個人的な『見解』だからね?」
『なら、その見解を述べろ! 隊長は何を考えている?』
「……それと、念のために言っておくけど、マリアはこれを伝えても、あなたたちに何も強要しないし、何も手を出さないから」
『わかった! だから早く答えろ! 隊長が姿を見せない理由はなんだ!?』
「…………」
 マリアラーラは、迫られてもすぐに答えず、周囲を見た。
(「残るべきと考える、『継戦派』のベーダたち。……集まってるのね」)
 かなりの数の『アラストルの乙女』たちが、ミルアとフリアを始めとする彼女たちが集まり、マリアラーラを囲っていた。
 意を決したかのように、深呼吸したマリアラーラは、
「……隊長は、『撤退已む無し』になる理由を作ればいいと考えてる。そう思うの」
 静かに、そう述べた。

●聖地を守るか撤退するか、その解釈違いは何処に
『どういうことだ?』
 フリアが疑問を口にすると、
「……簡単に言えば、『撤退する大義名分』を、隊長さんは自分で作ったんじゃないかって」
 マリアラーラの返答に、フリアや数名の乙女たちは、まだ理解できていない様子。
『……こういう事か? このまま撤退したら立場が無い。だから、撤退せざるを得なかった『理由』を、ソレイユ様は自作自演している、と?』
 ミルアの答えに、マリアラーラは頷く。
『待て。だとしても、その『理由』とやらは一体何なんだ?』
 フリアの問いにも、マリアラーラは勿体ぶりつつ……呟いた。
「……もしマリアが隊長の立場だったら、『邪魔な派閥』を排除し、『撤退せざるを得ない理由』を作り出す、簡単な方法を思いつくよ。つまり……」
『……私達、留まるべきと考える者たちを、直接排除する。そういうことか?』
 ミルアが、答えを先回りし、マリアラーラはまたも頷く。
『ミルア、それって……ま、まさか!』
『いや、フリア。そう考えれば納得もいく。本来ここは死守すべき場所。なのに放棄し撤退したら、自分の命惜しさに逃げた事と同等。だが……味方が大勢敵にやられたという大義名分があれば、面目も立つ』
『……じゃあ、ソレイユ様は、あたしらを殺し、『ディアボロスにやられて逃げてきた』とか言うつもりなのか!?』
『おそらくはな。セレイネ様に言っていただろう、自分が撤退命令を出し、従わなければ手にかけると。撤退反対派を手にかけて帰還すれば、むしろ『死守は出来ずとも、敵に一撃を食らわせつつなんとか生き延びた』と、印象も違ってくる』
『……まさか、セレイネ様もそれに噛んでると……? あたしらのように抱かれて、篭絡されたと』
『……だろうな』
 ミルアとフリア、それに周囲のアラストルの乙女たちの様子を見つつ、
「……大丈夫」
 マリアラーラは、次の一手を打った。

(「マリアのパラドクス、『夢魔のナイショ話(キュートメア)』が、思った以上にうまく行ったけど……さて、向こうはどうなの?」)
 と、アラストルの乙女たちの様子を見つつ、マリアラーラは仲間の事を考えるのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『ディアボロス、一人で来た度胸だけは褒めてやる』
 セレイネと、撤退準備をしているアラストルの乙女たちに囲まれ、
 捌碁・秋果(見果てぬ秋・g06403)は、両手を上げていた。
「……いや、戦うつもりはないよ。ただ、どうなっているかの偵察と調査してたら、ここに迷い込んで見つかっただけで……それで、聞いちゃったんだけど……」
『聞いた?』
 乙女の何人かが身構え、攻撃しようとしたが、セレイネがそれを止めた。
『何をだ、言え』
「……ええと、意見がまとまらなくて困ってるんでしょ? わかるなー、ディアボロスの方もそんな感じだから、親近感おぼえるよー」
 心の中で「大嘘だけどね」と付け加える秋果。
『話はそれだけか? なら、貴様を殺して……』
「撤退指示に反し、隊長に逆らうなんて、何考えてるんだろうね」
 それを聞き、セレイネの顔色が変わった。
『待て! 今、何と言った?』
「撤退指示に反するなんて、継戦派は何考えてるんだろうね……って。そもそも、あんなにステキな隊長の指示を聞けないのは、どうしてかな?」
『……なぜ、それを知っている?』
 食いついたセレイネ、そして周囲の乙女たちの顔を見て、
 秋果は実感した。「これは、いける……!」と。
「……そもそも、なんでこの話を……というか、この『撤退する』って情報を知っているのか? それだけど……」
『……なんだ? 言え』
「いや、言ってもいいものか、ちょっと迷うけど……」
『言えと言っているのだ! 誰から聞いた!』
「ええと……ひっ!」
 秋果は、炎の鞭や、雷の剣を目前に突き付けられたのを知った。これ以上焦らすと、こちらが危ないだろう。
『これが最後だ。誰から、何を聞いた? 洗いざらい吐け!』
「……わかった、わかったよ。聞いたのは……あなたたちの仲間から。この場所を手放し、ディアボロスから逃げるんだろうって、そんな事も言ってたよ」
『! ……貴様、嘘を……!』
 セレイネは、炎の鞭を振り上げ、叩きつけんとしたが、
「……全員が、あなたみたいに隊長や上司に忠誠を覚えているわけじゃないでしょ?」
 秋果のその言葉に、寸前でそれが止まった。
『まさか……そんな、事は……!』
 迷うセレイネに、秋果は畳みかける。
「……人間だって、上司に反感を抱く者はいる。そしてその部下が、上司と敵対している誰かと会ったらどうなるか。口の軽い『おしゃべりさん』になって、上司の事を色々話すものだよ。聞かれたくない事とか、弱みがあれば特にね」
 そして、ひと息つくと、
「あなたたちの周りにも、居るんじゃあないかな。そういう『おしゃべりさん』が、……我々に、貴重なお話をきかせてくれるひとが、さ」
 言いつつ、秋果は、
 ちらっと……撤退反対派に、継戦派の方に、視線を向けた。

●さても解釈の議論は、尽きぬ事無く続くもの也
 マリアラーラは聞いた。
 秋果が居ると思しき方向から、大きなどよめきを。
 それを聞きつつ、
「……大丈夫」
 マリアラーラは、更なる一手を打った。
『何が大丈夫だ! おい貴様、ふざけたことを……』
『止めろ、フリア! ……マリアラーラ、とか言ったな。大丈夫とは、何がだ? 何か考えがあるのか?』
 ミルアに、マリアラーラは頷く。
「まずは、考えが定まっていない、日和見してる集団と結託するの」
『日和見、だと?』
「うん。マリアだったら、こういう時は『味方を増やす』ことが重要と思うのね。あなたたちの中でも、まだ考えが定まっていない人たちもいるでしょ? そういう人たちを味方に付けるべきと思うのね」
『だ、だが、どうやって……?』
「事実を伝えれば、それでいいんじゃないかな。撤退しても命はないうえ、生き延びても軍の中には居場所は無し。仮に復讐者と戦って生き延びようとしても、撤退派からは背中を刺される。だから……『先手』を打つしかないって」
『先手?』
「うん。皆で力を合わせ、ひとつにならないと。バラバラの状態では、勝つものも勝てない。でしょ? 方法は簡単だよ。明確な損得を見せてあげれば、引き入れるのは簡単。後は……隊長不在の内に、撤退派を粛清すればいい」
『……それで、ソレイユ様もお考えを変える、と?』
「うん。隊長が自分以外、撤退派がいないなら、多数決で従うしかないでしょ。きっと隊長も、覚悟を決めてくれる」
 そしたら、正々堂々勝負してあげるね。そう続けようとしたマリアラーラだったが、
『わかった! おいフリア! みんな! すぐに取り掛かれ!』
 ミルアが叫んだ。
『わかった! まだ覚悟が決まってない奴らを、こっち側に来るよう説得するんだな!』
 フリアも、そして他のみんなもそれに従う。
『説得? いや、あたしらもミルア、フリア、あんたらに従うよ』
『ああ。ソレイユ様にも、セレイネ様にも……もう従うつもりはない! ジャンヌ様の生誕地を、敵に明け渡すなんて!』
『あいつらが私たちを殺すつもりなら、私たちが先にやってやる!いくぞみんな!』
 いきり立った、撤退反対派、継戦派の『アラストルの乙女』たちは、
 大きな集団になり、ソレイユたちの元へと向かっていった。

 その後に、一人取り残されたマリアラーラは、
「……うまく、行ったのね。行き過ぎたようにも思えるけど」
 そう呟くのだった。
「さて、それじゃ見届けてあげるの。どっちが生き残るか」

 集落の、広場。
 そこで、二つの派閥が、相対し、にらみ合っていた。
『セレイネ……ソレイユに伝えろ! あたしたちはもう、ソレイユを隊長とは思わんとな!』
『ああ、このあたし、ミルアと、フリア、それにここにいる『アラストルの乙女』は、貴様に反乱を宣言する!』
『反乱の理由は、偉大なるジャンヌ様の生誕地を、敵に簡単に明け渡す事だ! そんな弱腰かつ、戦う気概に欠いた隊長など、存在自体が害悪! あたしたちが粛清してやる!』
 撤退反対の継戦派が、ミルアとフリアを先頭にして相対する。
『……ふん、血迷ったか』
 相対するセレイネも、その後ろには『アラストルの乙女』たち……撤退賛成派の者たちが控えていた。が、その数は反対派に比べかなり少ない。
『私もむざむざ、ここを明け渡す事に賛成していると思っているのか! だが、今のままでは我らは倒されるのみ! ならば生きて戻り、新たなチャンスをうかがうべきだろう! ソレイユ様もそうおっしゃっている! それに……』
 セレイネもまた、疑わしい口調に。
『……お前らこそ、撤退したくないからと、敵に情報を送っているじゃないか。なぜ敵であるディアボロスが、撤退する事を知っている? お前達が知らせたからだろう!違うか!?』
 その指摘に、
『あたしたちが、敵に通じているだと? それはお前らだろうが!』
『そうか、ミルア。読めたぞ! あいつら、敵と通じて、それをあたしたちがやったことにしたいんだ。そしてあたしたちを殺した後、『甚大な被害を受けて撤退した』ってキマイラウィッチにいい顔するつもりなんだよ!』
『ああ、違いない! 将来的に、キマイラウィッチ自体も裏切って、ディアボロスに投降するんだろうよ!』
 身に覚えのない事を言われ、セレイネは戸惑い、
『……なんだと? おい、何を……』
 問いたださんとした。が、感情が高ぶった集団相手に、『話合い』など通じない。
 感情的になった時点で、理性は失われ……、
『やれーっ!』
 ……実力行使、すなわち物理的な殴り合い、殺し合いが発生する。
『喰らえ!『復讐乙女』!』
 撤退派の乙女たちの影から、炎の鞭が飛び出し……襲い掛かる!
 数人が、同胞の炎の鞭に打ち据えられ、巻きつかれ、焼き殺された。
『なっ……本当に血迷ったな! ならば! 『復讐するは我にあり』!』
 だが、セレイネ率いる撤退派も、同じ『アラストルの乙女』たち。
 雷の剣として実体化させた、己が復讐心。それをかつての仲間へと叩きつける!
 少し前には、同胞にして仲間同士だった彼女たち。しかし、今は本気で憎み合い、殺し合いを繰り広げている。
『ええい! ……お前達! いい加減に……ぐああっ!』
 継戦派の者たちからの『復讐乙女』と『復讐するは我にあり』を受け、ダメージを食らうセレイネ。
『……こんな時に、ソレイユ様はどこにおられる!』
 これだけの騒ぎになっているのだから、すぐにでも戻って来ても良いはずなのに……!
 自分と寝た後に、『周囲に何やら、ディアボロスの気配を感じる。ちょっと見てくる』と言って、出て行ってしまった。
 それっきり、戻ってこない。まさか、彼女は本当に我々を見捨てる気か……!
 だが、セレイネも伊達ではない。肩書きは持たないが、その実力は……かつての隊長にも匹敵する。
『……『地獄の刑執行長官の名の下に』! お前達……いい加減に静まらんか!』
 その四肢に、地獄の炎と雷撃を纏たセレイネは、継戦派の同胞たちを次々に血祭りにあげていく。
『くそっ! やっぱりあたしたちを始末するつもりだったんだ!』
『そうして、撤退の面目を保つつもりなんだ! 殺してやる!』
 ミルアとフリアの言葉が投げかけられ、炎の鞭と雷の剣がセレイネに襲い掛かるが、
「おおっと! そうは問屋が卸さない!」
 秋果がセレイネを庇い、ミルアとフリア、それに圧倒的に数が多い継戦派たちを、
 見えない巨大な手が、上から押さえつけるかのように『這いつくばらせた』。
「『愛は金より重い(アイハカネヨリモオイ)』、深淵ならぬ新円の決済音、聞こえてるかな?」
 秋果が、美術館で消費した金額の重量をかけたと『錯覚』させるパラドクス。だがそれは、錯覚ではあっても重さを感じさせる事には変わりない。地面に這いつくばった、継戦派の乙女たちに、これ幸いと撤退派が襲い掛かり、血祭りにあげる。
『なっ……お前は、さっきの……!』
 セレイネは驚き、
『あれは! 別のディアボロスか?』
『やっぱりな! ディアボロスと通じていやがった! 裏切り者!』
 ミルアとフリアは、誤解を。
『違う! ……そうか、お前……こうなるように図ったな!』
 秋果へ憤るセレイネに、
「何のことですか? 私は、あなたの味方をしてるだけですよ?」
 しれっと、そんな事を言う秋果。
 だが、心の中では、
(「まさに、『計画通り』! 敵が使うとムカつくけど、自分や味方が使い、それがうまく行くと……いや、苦労しますね。スカッと感からの笑みを隠すのが!」)
 まさしく、セレイネの言う通り。こうやって互いを争わせるのみならず……、『ディアボロスである自分』が味方する様子を見せて、仲間の溝を深める効果も狙っていたのだ。そして、数の多い継戦派を減らし、戦況を平均化させ……事態を泥沼化させていた。

 近くの建物、その陰から見ているマリアラーラも、
「……どうやら、マリアが見届けるまでもなさそうなのね」
 この『アラストルの乙女』たちが、自滅するのは時間の問題。それを悟るのだった。

『卑怯者! 待て……ぐあああっ!』
 逃げる秋果を追おうとしたセレイネだったが、
『よそ見するな!』『このまま、あたしたちが……!』
 ミルアの炎の鞭が、その首に巻きつき、
 フリアの雷の剣が、彼女に斬りつけられた。
『……この……莫迦者たち……がああああっ!』
『『ひっ……!』』
 だが、セレイネはその攻撃に耐え、炎と雷を宿した自身の四肢で、
 二人に止めを、両拳を二人の胴体に貫通させ、引導を渡していた。

●推し活は、愛情で舗装された地獄への道が如し
『……セレイネ、これは一体?』
 数刻後。
 死屍累々となった集落にて、
『……申し訳、ございません……』
 ただ一人生き残った、セレイネは、
 戻って来たソレイユの前に、倒れ、呻いていた。
 ソレイユは、セレイネに寄り添うように座り込んで、膝枕する。
『私が周囲を見回っていたら、なぜか仲間同士で殺し合い、あなた一人だけが生き残っていました……って状況なわけだけど。一体何あったの?』
『……撤退に、反対する者と、賛成する者に……ディアボロスが、近づき……争うように、扇動、されて……』
『……なるほど、互いに騙されて、煽られて、こうなったわけね』
『も、申し訳……ございません……愚か、でした……』
『……いや、感謝するわ。セレイネ』
『そ、ソレイユ、様?』
『正直……面倒だったのよね。撤退に反対してる連中を、説得し連れ戻すなんて、本当に勘弁。面倒な事この上なし。でも……これで気兼ねなく解決できたわ。このまま、死んでちょうだい』
『え? ……がはっ!』
『……あなたはベッドの上では、悪くなかったけど……私は、面倒なのは嫌いなの。面倒なオンナも勘弁。だから正直、全員死んでくれてほっとしてるわ。命令も、説得も、必要なくなったからね』
 傷だらけの、セレイネのその身体にサーベルを突き立て、止めを刺したソレイユは、
 立ち上がり、離れると。息絶えたセレイネの身体を一瞥した後、
『あーあ。寝る相手としては、良かったんだけどなあ。ミルアとフリアも……死んじゃってるか。もうちょい可愛がって楽しんでも良かったけど……まあいいや、イイ女はいくらでも居るからね』
 そんな事を口にして、彼女たちの遺体に炎を放った。
『ま、せめてもの情け。直々に荼毘に伏してあげるわ。さてと……』
 次に、周囲を見回すと、
『ディアボロス! その辺りに潜んでいるんでしょう? 出てきたら?』
 ソレイユは大声で、言い放った。

『私は面倒なのが嫌いなのよ。だからこのまま撤退するつもりだけど……どうせ追って来るんでしょ? だったら、面倒だからこの場で相手してあげる』
(「まさか、随分と大胆な事を……」)
(「でも、逃げられるよりかはましなのね」)
 その声は、近くの建物の陰に隠れている秋果とマリアラーラの耳にも届いていた。
 出て行こうか、それとも隠れたままでいるべきか。考えていた二人だが、
『ただし、言っておくわよ。私はとても強い。私一人が一個師団、あるいは軍団だと思って、戦いを挑む事ね。単純な力押しゴリ押しの攻撃やら、小賢しい小細工やら、その程度で私を倒せるなどと……思わない事ね』
 結構明るめの口調の彼女だが、最後の言葉を述べる時のみ……、
 低い、ドスの聞いた声に、深淵から響くかのようなおぞましい口調に、変化していた。
 だが、マリアラーラと秋果は。その声に恐怖を覚えはしたものの、それは僅かな時間。一秒ほど。
 すぐに立ち直り、アヴァタール級と戦い倒すための、『闘志』の炎を心に燃やすのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【書物解読】LV1が発生!
【泥濘の地】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【アクティベイト】LV1が発生!

マリアラーラ・シルヴァ
隊長と正面から戦うのは厳しそう
搦め手を考えなきゃ

自信満々な隊長に
でも海鳥提督ほど強くないよねって水を差すね

きっと師団を口先で下した復讐者達に警戒心と興味を持ってる
なら面倒についての対話から自然にパラドクスできないかな

左右の鏡像が語り掛けるよ
ねぇ私
提督を弔い部下を纏めて帰還させようなんて面倒事…何故引き受けたの?
ねぇ私
復讐者警戒して見回りなんて面倒なことしたのは何故?

真ん中の鏡像が代弁するよ
分かってるでしょ?
面倒嫌いは言い訳

失敗したくない自らの底を認めたくないと張ってる予防線
部下を自滅全滅させてしまったのも面倒で本気じゃなかったから
そう責任逃れできる
力をつけても私の本性は意気地なし

自信がないから淫魔の真似をし
師団並の実力と喧伝するも
更に強い推しの提督が破れた不安が拭えない
弱虫なのよ…私は

隊長の炎が鏡像を陽炎にしても心の揺らぎは戻らない
実力ゆえの余裕で面倒くさがっていたハズが
弱い心を守るためだった
そう弱点を植え付け突破口にしたいな

もう隊長は逃げ腰になるよね
だって勇気を出すのは怖いし面倒だもの


捌碁・秋果
強すぎるなあ
正面突破は難しいし良い考えも無い
…今は、ね!
三十六計逃げるに如かず
【泥濘の地】で相手の移動速度を下げる
この泥地をヒールで走るのは厳しいでしょ
それに泥を跳ね上げてドレスが汚れたら落とすのは面倒だよ?

状況が変わるまで、策を閃くまで、逃げることに徹する
敵の攻撃は額縁を展開して威力を軽減させよう
そうして広場から集落へ、身を隠すところが多い所へ逃げる

集落に行けたら身を隠して体制を整える
小細工は通用しないって言ってたけど…正攻法じゃ無理すぎ!
狭い通路に逃げ込む。敵もすぐに気づいて追ってくるはず
ここで小細工しちゃう!Siècle des Lumières…手持ちの香水を2プッシュ
私の香り、覚えてね?
香水を定期的に撒きながら通路の先へ
T字路を曲がったら、私がいる逆の方向に蓋を取った香水を投げて香りを充満させる
敵が香りを辿って私のいない通路に足を進めたら背後から奇襲!
パラドクスの毒を滴らせた槍で薙ぎ払う!

毒は、私を倒してもあなたを蝕み続ける
復讐者なんて面倒なものを相手にしたこと、後悔するといい


シエルシーシャ・クリスタ
アドリブ・連携は歓迎だよ

んー、少し出遅れたか。
後から来た分まだ気づかれてないし、機を伺おう。
秋果の策に乗っかろうか。
香水瓶の投げられる通路に身を潜めておいて、秋果との挟み撃ちを狙おう。
策が効いてたら想定と違う敵の存在で動揺を誘って秋果の奇襲への援護になるだろうし、策を見抜いて秋果に向かった場合は伏兵になれる。

周辺一面に『門』を開き、呪詛の『手』を敵の足元から伸ばそう。
焼こうと切ろうと、その『手』たちは忍び寄る。縋り付く。
そしてお前の活力を……熱を啜り取るんだ。
熱戦はまともに食らうと危険だよね。
同じ熱の防壁で歪めたり散らしたり。盾や武器で直撃を防いだり。
少しでも威力を削るようにしよう。

一人で十分、一個師団に匹敵する強さ、かぁ。
仮にそれがそうだとして、その上で。
今この場にたった一人でも部下が残ってたら、戦況は違ってただろうね。
でも、助けてくれたかもしれない部下はお前が殺した。
ならもしかしたら、お前への致命傷はお前自身が刻んだことになるのかもしれないね。


●『火炎』使いは、その使い方を考えるべきである
『ディアボロス! その辺りに潜んでいるんでしょう? 出てきたら?』

『私は面倒なのが嫌いなのよ。だからこのまま撤退するつもりだけど……どうせ追って来るんでしょ? だったら、面倒だからこの場で相手してあげる』

『ただし、言っておくわよ。私はとても強い。私一人が一個師団、あるいは軍団だと思って、戦いを挑む事ね。単純な力押しゴリ押しの攻撃やら、小賢しい小細工やら、その程度で私を倒せるなどと……思わない事ね』

 ソレイユのその問いかけが終わるとともに、
 彼女は、携えていたサーベルから、強力な光線を放ち……近くの雑木林、その木々の何本かを、あっさりと薙ぎ払っていた。
 木の陰に隠れていたリスが、光線の直撃を受け、胴体を両断された後に蒸発していた。おそらく、自身が死んだことにすら気づいてないだろう。
『Le soleil splendide』、ソレイユのパラドクスの一つ。
 そして、その木々のすぐ近くに、身を潜めている二人が居た。
(「……怪しいと思って、うかつに姿を出さずにいたけど……正解だったみたいなの」)
 マリアラーラ・シルヴァ(コキュバス・g02935)と、
(「『警戒』していたけど……甘かったです……!」)
 捌碁・秋果(見果てぬ秋・g06403)は、焦げた臭いを嗅いでいる。
『……あら、そこには居なかったみたいね。まったく、どこに隠れているのやら……』
 ぶつくさ言いつつ、ソレイユはその場から離れ、集落内へと姿を消す。
 まだ二人とソレイユの間は、かなり離れている。用心のために距離を取っていたのが良かったが……、
「……どうやら、一個師団に相当する能力を持つって言葉は、伊達じゃなさそうなのね」
 マリアラーラは、それを実感した。実感『させられた』。
「さて……マリアちゃん、どうする?」
「……先刻に話し合った通り、『からめ手』で行くしかなさそうなのね。直接ぶつかったら……確実にこちらが『負ける』の」
 そんな事を話し合っていた、その時。
「……見つけた」
 その声とともに、
「「!?」」
 隠れていた二人は、見つかってしまった。

「……んー、少し出遅れたか、けど、助太刀に来たよ」
 見つけた彼女……シエルシーシャ・クリスタ(水妖の巫・g01847)が、鬼人の妖精騎士が声をかける。
「……良かった、味方なのね」
「……びっくりしたよ。あいつに見つかったかと思った」
 味方と知り、マリアラーラと秋果は大きく安堵の溜息を。そして互いの自己紹介もそこそこに、
「……で、『対策』は? あいつがかなりの力を持つ事は、先刻の光線で理解できた。でも、それに対向する『策』はあるんだよね?」
 シエルシーシャが、作戦を聞いて来た。
「うん。それじゃ、伝えるけど……」
 と、マリアラーラと秋果は、彼女にも、
 作戦の詳細を伝えていった。

「……ん? 待って……なんだか、暑くないか?」
 と、シエルシーシャは周囲の気温に違和感を抱いた。先刻まで、肌寒かったというのに……暖かいどころか、暑い。
「そういえば……暑い……いや、『熱い』! まさか、ソレイユ!?」
 秋果の指摘に、
『……御名答! 探すのが面倒だから……相手から出て来るようにと仕向けたら、大正解だったみたいね!』
 雑木林の木々がくすぶり、火炎が発生した。
『これは『Incinération』。私の周りに熱を放ち、燃やしていくパラドクスだけど……まさか、あなたたちがそんなところに隠れてたとはね』
 その言葉を背中に聞きつつ、三人は集落内部へと逃げていく。
『あらあら、逃げちゃうの? じゃ……ここからは『戦い』じゃあなく、一方的な『狩猟』、もしくは『虐殺』って事で、一人ずつ、丁寧に……』
『殺していってあげる』ソレイユのその言葉の響きには、特段変わった点は無かった。
 それが、逆に恐ろしさを醸し出していた。虐殺という行為自体が、ショッピングにでも赴く時のように……何も特別な事は何もない、ごくごく普通の当たり前な行為だという『ソレイユ自身の性根』が、そこに内包されていた。

「それじゃ、先刻言った通りに……」
 秋果たちは、そんなソレイユから逃げていた。逃げつつ、
「……三十六計逃げるに如かず。けど……『戦闘放棄』はしない」
「逃げながら、戦うのね!」
『策』を、実行に移していた。

『……! 見ーつけた!』
 ソレイユは余裕たっぷりの態度で、集落内に走り込む秋果を見かけ、とりあえず追う。
が、
 追っていくうちに、『違和感』を覚えていった。
『何よ、いきなり地面が泥っぽくなったわね……ああもう、足元に泥がまとわりついてる!』
 ソレイユが毒づいた。
 そのせいで、敵……いや、獲物との距離は離れていくが、
『……言ったはず。小細工は通用しないって!』
 彼女の熱が、即座に地面を乾かしていく。
 この泥濘もパラドクスゆえ、普通の炎熱は通用しない。が、この熱もパラドクス。互いに互いの力を打ち消し合い……、
 命がけの鬼ごっこは、続いていた。

●『火炎』は、全てを燃やし、無に帰す
「……ああもう! 泥地をヒールで走るのは厳しいはずなのに!」
 秋果は毒づいた。確かに敵の移動速度は下がったが、思ったよりも下がってくれない。それに加え、泥で汚れる事はお構いなしの様子。どうやら服が泥で汚れる事には無頓着らしい。
「『おしゃれや服に関する事は、面倒くさがる』タイプですか……でも!」
 それでも予定通り、集落内の入り組んだ通路の中に逃げ込み、そこに誘い込む事自体には成功した。
 途中で合流し、並走していたシエルシーシャと、
(「……お願いします!」)
(「まかせて」)
 目くばせで会話した秋果は分かれ、なお逃げる。
 ソレイユは、未だ自分を追って来る。物陰や曲がり角など、現在は互いに互いの姿が見えない状態であり、視認は出来ていない。
 ではあるものの……『熱』を、秋果は肌で感じていた。
 なんらかの『熱』の塊が、自分を追って来る。その事を、肌の感覚で悟っていた。
 悟りつつ、『香水』を撒き続け……さらに通路の先に進んでいく。この集落は、規模は大きめでないにしても、迷路のようにあちこち入り組んでいる。……敵を翻弄するにはもってこいだ。
 逃げる秋果の後方からは、『熱』とともに、
『……ほら、どうしたの。まさか雑魚しか相手にできず、強い私とは戦えないのかしら? こうやって逃げまくって、何か時間稼ぎしてるの? それとも……何か企んでる?』
 ……『罵倒』が、後ろから聞こえてくる。
「……答えるつもりは、ないですよ。相手に作戦を教える莫迦がどこにいるかと」
 そう小声でつぶやくも、この『策』がうまく行くかは神のみぞ知る。
「……香水の、この香り、伝わっていればいいんですが」
 香水『Siècle des Lumières』。瑞々しくも甘い芳香のそれは、白と黒の葡萄、および、ほんの僅かな月下香で調香されたもの。
 この甘い香りを、勝利の香りにして見せる。
 そう考えた、次の瞬間。
「!」
 光線が、先刻放たれた『Le soleil splendide』が、自分の背中から放たれ、
 肩を掠ったのを知った。かすった二の腕からの激痛と火傷が、秋果を襲う。
『ほらほらどうしたの! 逃げるだけ? 戦いなさいよ! それともこうやって一方的に嬲り殺されるのが好みかしら?』
 更なる熱線が放たれるが、それらは『わざと』外している。感覚的に、それを悟った秋果は、
「……このっ!」
 額縁を展開、盾代わりにして光線を防ぐ。
(「完全に防げはしないけど……なんとか、威力を軽くする事は……」)
 そう思いつつ、通路の先に進んだ秋果は、そこを曲がり、
 自分の逆の方向へと、蓋を取った香水の瓶を投げた。

「……秋果、苦戦してるみたいなのね」
 集落内、別の場所。
 そこではマリアラーラが、息を潜めつつ隠れていた。
 どうやら、正面から戦う事を避け、搦め手で攻める判断は正しかったようだが……、
 その『搦め手』も容易ではない。それを思い知らされていた。
「……けど、『容易』な事……簡単にうまくいく事なんか、そうそう存在しないのね。マリアたちがそうであるように、敵ベーダだって……」
 マリアたちを、『簡単に』嬲り殺すことなどできない。その事を、これから証明してみせる。
 マリアラーラは、待った。その時が来るのを。

 集落内。
 T字路。
 そこに駆け込んだソレイユは、香水の『におい』が漂う方向へと顔を向け、
『そこか!』
 己の剣で斬りかかった。
「……いいや、こっちだ!」
 そこを、背後から秋果が襲い掛かる!
 携えた『藍色の槍』、その穂先で突きかかるが、
「……熱っ!」
『……臭いで誘き出し、後ろから不意打ちする。まさか、この程度のチャチな小細工が、『作戦』とか言わないわよね?』
 その刺突は既に見抜かれていた。顔を、視線を向ける事無く、ソレイユは自身の剣……を使わず、もう片手で槍の穂先を掴み、攻撃を防いでいたのだ。
 それに加え、ソレイユは『Incinération』で、自分の周囲に熱を放ち続けていた。それは突きかかった秋果に、逆にダメージを与えている。
『がっかりさせないでよね。作戦があるなら、私はそれに『引っかかってあげたい』し、攻撃もあえて『受けてあげたい』の。なぜかわかる? ……ああ、返事は要らないわ』
 と、穂先を握った手を、突き飛ばすようにして離し、
『これから……殺してあげるから』
 剣を構え直した。

●しかし『火炎』は、それゆえに破滅ももたらす
 ソレイユが踏み込まんとした、その一瞬。
「……今だよ!」
 秋果が叫び、
『!?』
 一瞬、ソレイユが躊躇し、
「……ナックラヴィー、呪え、縋れ、啜れ……! 『水底の招き手(デッドリー・エンブレイス)』!」
 集落内の建物、その屋根の上に乗っていたシエルシーシャが、パラドクスの攻撃を、『呪詛』を放った。
 ソレイユの周囲に出現した、無数の『水たまり』。
 それは、呪詛の身を通す『門』。
 そして『門』から伸びるは、長大にして、おぞましき異形の『手』。
『……こ、これはああっ!?』
「少しは、驚いたか」
 冷淡に、シエルシーシャが言い放つ。
「これは、水妖ナックラヴィーの呪詛。それを水溜りの『門』を通し、『手』に象られ召喚する。この『水溜りの門』は無数に生じ、同じく生じた無数の『手』が、お前に縋り……そして!」
『……な、なんだ! ち、力が……!』
「……お前の活力を『啜り上げる』!」
 シエルシーシャの死刑執行の言葉とともに、
「そして、それだけじゃあない! はーっ!」
 動きを封じられたソレイユに、秋果は槍の穂先を突き刺す!
『! こ、これも……お前のパラドクス?』
「そう……私の、『葡萄色の毒』! 酩酊したかのような多幸感とともに……お前に『毒』を染み込ませる! シエルシーシャくんの『無数の手』と、私の『毒』! 終わりです!」
『ぐっ……ぐっ……ああああああっ!』
 秋果と、シエルシーシャの言葉の前に、ソレイユは『悲鳴』をあげ……、
『ああああっ! あーっはっはっはっはーっ!』
 ……『悲鳴』を徐々に、『哄笑』に変化させていった。

「? 笑う、だと? 何を……」
 シエルシーシャは、戸惑っていた。
 その笑いは、追い詰められた者のそれではない。自棄になった者のそれでもない。
『はあああああああっ!』
 次の瞬間、高熱がソレイユの周囲に放たれ、
「! なっ!」
『水底の招き手』の、無数の『手』と『水溜り』が、蒸発してしまった。
 周囲の、集落の建物も、くすぶり、一瞬で燃え上がる。
「そんなっ! ……え?」
 戸惑った秋果に、ソレイユは槍を抜き取り、サーベルとともに踏み込んだ。
「秋果、危ない!」
 とっさにシエルシーシャが飛び出し、秋果を守りつつ『水底の招き手』を再び放つが、
『……『Invitation passionnée』!』
 ソレイユは、『手』をものともせず、熱を纏い、舞うような動きで……無数の『手』をかわし、翻弄し、
 手にした鋭きサーベルで切り裂いた。否……切り裂くどころか、触れただけで『手』は蒸発し、『水溜り』も蒸発し、消されていく。
『! ……ぐっ……はああっ!』
 そして、高熱を伴ったステップは、最後に、
 秋果へと襲い掛かり、サーベルの一撃で槍を弾き飛ばし、二撃目で大きく斬撃を体に刻み付けていた。
「秋果! ……がはっ!」
 返す刀で、シエルシーシャにも一太刀浴びせる。
『……ちっ、この毒のせいで、斬り込みが浅かったわね。……ま、私の『Invitation passionnée』。なかなかのものでしょう?』
 ソレイユは、言い放った。得意気に、憎々し気に、倒れた秋果とシエルシーシャを見下しつつ、言い放っていた。
『……流石に、ちょいとダメージは負ってしまったわ。見事な作戦だった。けど……私の『火炎』と『熱』を過小評価した事が、あなた達の敗因ってとこかしらね』
 ふらつきつつ、ソレイユは改めてサーベルを構え直す。
『そう言えば、先刻言った『作戦に引っかかってあげる』事の理由、言ってなかったわね』
 秋果とシエルシーシャは、何とか膝をつき、立ち上がるが……返答はない。
『教えてあげる、作戦に引っかかったり、攻撃を受けたうえで……最後の最後に叩き潰すためよ。それを見せつける事で、敵に理解させられる……『この私、ソレイユには勝てない』ってね』
 ふらつきはあるものの、ソレイユのダメージは軽い。
 そして、『絶望』は、秋果とシエルシーシャを確実に蝕んでいた。ここから逆転できる経路が……『見えない』。
 もしも、自分たち二人だけだったら。そうなっていただろう。
「……確かに、強いのね」
 マリアラーラの声が、聞こえてきた。
『? まだいたの? ああ、そういえば小さくてかわいいお嬢さんが居たような。……どこ?』
 舌なめずりするソレイユ、その正面に、
「ここだよ」
 そして、その後方、左右にも、
「ここだよ」
「ここにもいるよ」
『……なに? 『私』?』
『ソレイユ』自身が、鏡に映したかのような姿の彼女らが、そこに居た。

●そして『火炎』は、燃え尽きる事もままある
「……確かに強いけど……海鳥提督ほどじゃあないね」
 一番目の鏡像が、ソレイユに言い放つ。
『なによ? 確かに私は、提督に及ばないけど。それがどうかした?』
「なら聞くよ。ねえ私……」
 二番目、右後方の鏡像が、問いかけて来る。
「なんで、提督を弔い、部下をまとめて……帰還させようなんて『面倒ごと』……引き受けたの?」
 それに続き、今度は三番目、左後方の鏡像が、
「ねえ私。復讐者警戒して、見回りなんて……面倒な事してたのは、何故?」
 続けて問いかけてきた。
『……はっ、なるほど。今度は幻術による目くらましと、精神攻撃? 下らないわねー。この程度で揺さぶりかけているつもり?』
 ソレイユ本人は、笑い飛ばさんとしたが、
「ねえ私。答えてよ」
「私に私の事、説明するのも面倒?」
 左右の鏡像に続き、
「……『いいわけ』」
 代弁するかのように、正面の一番目の鏡像が、言った。

 ソレイユは、鏡像に気を取られていたが、
「これは……」
「マリアラーラ、君のパラドクスか?」
 秋果とシエルシーシャも同様だった。
「そうなの、こっちへ」
 そして、姿を現したマリアラーラに手を引かれ、物陰へと導かれる。
「マリアの、『夢魔の三面鏡(ミラーリングマイリンク)』。これで、精神を揺さぶる事ができれば……『突破口』が開けるの」

 そして、ディアボロスたちに退避された事も気付かず、
 ソレイユは、自身の鏡像に反論していた。
『言い訳ですって? 私が、誰に、何を言い訳するというの? まったく、的外れな事を言えば、私が戸惑うとでも……』
「『失敗したくない』、そんな自分の『底』を認めたくない。そのために張ってる『予防線』。……分かってるよ。分かってるでしょ?」
 再び、二番目と三番目も口を開いた。
「そう、だから私は、私に対し、しきりに『面倒くさい』『面倒は嫌い』と口にしている」
「そうでしょ、私? そうすれば、部下を自滅・全滅させてしまったのも、『面倒で、本気じゃなかったから』と、言い訳になり……『責任逃れ』ができる」
「「分かってるでしょ?」」
 二番目と三番目が、同時に問いかけ、
「……力を付けても、私の本性は……意気地なし」
 一番目が、言ってのけた。
『! ふざけないで! 意気地なし? だったらこの力はどう説明するの! 私は現に、数十・数百の敵を、単騎で葬って来たのよ! 何度もね!』
 ソレイユは再び、『Incinération』を、それも強烈な熱量を放出する。
 秋果とシエルシーシャからのダメージもものともせず、更に周囲を燃やすが……、
 鏡像は消えず、陽炎のように揺らめくのみ。
「なら、なぜ荒れるの私? 自信があるなら、ムキになる事もないでしょ? 淫魔の真似して部下を抱くのも、自身の無さの表れ。違う? 私」
「そうよ私。師団並の実力と喧伝するのも……確実に自分より強い『推し』の提督が、敗れてしまった『不安』が拭えないから。違う? 私」
 左右のソレイユの鏡像は、言葉を淡々と述べていく。揺らめくため、まるでその顔は歪んだ笑みを浮かべているかのよう。
「本当に力ある者は、力を誇示する必要は無い。逆に力無き者は、誇示する事で自信の無さを誤魔化す。違う? 私」
『う、うるさい! 黙れ!』
 サーベルを斬り込むが、鏡像は消える事無く在り続ける。
「実力あるゆえ、余裕だったのかもだけど……その余裕からの『面倒くさがり』は、私の弱い心を守るためだった」
「そして、自分の弱さを認められない者が、真に強いわけがない。自分を認めず、自分に向き合わない。乗馬で例えると……」
「乗ってるのが小心者なら、大きく立派な名馬でもみみっちい走り方するし、大胆で手練の乗り手なら、小さな駄馬でもイイ感じに走るもの。単純な事だよ、私」
『黙れ、黙れ、黙れぇぇぇぇっ!』
 剣先をぶんぶんと切り込むが、鏡像はやはり何もない。
 が、次第にその剣さばきも……鈍く、雑なそれに。
『……な、なんだ……?』
「忘れたのか? 私の『葡萄色の毒』を食らった事を」
 と、応急手当てを施された秋果が、物陰から進み出て、その姿を見せた。
「その『毒』は、私を倒してもあなたを蝕み続ける。……面倒が嫌い、なんだろう?」
 秋果が、再び言い放つ。
「……『復讐者』なんて、最も『面倒なもの』を相手にした事……後悔するといい」
『だ、黙れ……私が……お前ら、ごときにぃぃぃぃっ!』
『毒』が身体に回り、周囲の、自身が火を点けた集落内の小屋や家屋に、
 ソレイユは踏み込み、炎に囲まれていく。
「……ああ、私からもいいか」
 先刻以上に、冷淡に、シエルシーシャが言い放つ。
「先刻、お前は言った。『あえて敵の罠に引っかかり、攻撃を受け、最後の最後にそれを叩き潰して絶望させる』と。なら、もう一度……私の攻撃を受けてもらえるかな? ……ああ、答えはいらん」
 言うが早いが、再び『水底の招き手』を、炎に囲まれたソレイユの足元から、無数の『異形の手』を伸ばし……新たに活力を啜り上げる。
『が、がああああああああっ! おのれ、この……このくそったれどもがあああああっ!』
 今度は、完全な断末魔。
「……ああ、それからもう一つ。『一人で十分、一個師団に匹敵する強さ』という、お前の強さ自慢だが」
 止めを刺すかのように、冷淡に、しかしはっきりと言葉を投げつけるシエルシーシャ。
「仮にそれが事実だとして、その上で……今この場に、たった一人でもいい。『部下』が残っていたら、戦況は違っていただろうね」
『…………』
「でも、助けてくれたかもしれない部下は、お前が殺した。なら……もしかしたら、お前への『致命傷』は、お前自身が刻んだ事になるのかもしれないな」
 もはや、その返答もできず、
『異形の手』に命を啜られ、或いは炎に巻かれ、毒に蝕まれ、
 ソレイユは倒れ、その動きを、命の鼓動を止めていった。

「……思ったより、手間がかかったのね。秋果、シエルシーシャ、傷の具合は大丈夫?」
 ソレイユの最期を見届け、マリアラーラは二人をいたわる。
「ああ、大丈夫……幸いにも傷は浅めだったからね」
「こちらも、問題はないよ。少し休みたいが……」
 その二人の口調から、マリアラーラは確信した。『疲れはあるが、元気は失われていないようなのね』と。
「……けど、あいつの実力は……」
 しかし、シエルシーシャは静かに呟く。
「……思った以上に高かったのも事実。私と秋果だけだったら、確実に倒せなかった。確かにそれなりに、手ごわかったな」
 彼女のその呟きに、
「……ああ、そうだね」
 秋果は頷き、
「うん。あのベーダ、言うだけの事はあったのね」
 マリアラーラもそれに続く。
「……それと、マリアは思うの。『ディアボロスは敵ベーダを倒すだけでなく、そこから色々学び省みるべき』って。学んだことが、次の戦いに役立つように、ね」
「……敵との戦いから、教訓を得る、といったとこですね」
「そうだな。私たちも、ソレイユのようにならない保証はない。改めて、気を付けないと」
 そして学んだ事が、更なるディヴィジョンのまだ見ぬ敵に役立ち、新たな勝利をもたらす礎になるようにと、
 ディアボロスたちは、燃える集落を後にしつつ、思いにふけるのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【乗物改造】LV1が発生!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!

最終結果:成功

完成日2025年02月24日

ブルゴーニュ北部掃討作戦

 攻略旅団より、海鳥提督シャルル・ド・ラ・セルダを撃破した、ドンレミ村周辺のブルゴーニュ北部の掃討作戦が提案されました。
 ドンレミ村は海に囲まれた飛び地でしたが、その南方にはディアボロスが制圧したディジョンがあります。
 このディジョンの北方から、更に北西のブルゴーニュ地方北部の制圧作戦を実行してください。
 火刑戦旗ラ・ピュセルは、狭い領域内に強力なキマイラウィッチが多数存在している事から、本来ならば、今回のような作戦は、激烈な反撃を受ける事になるのですが、今回は、火刑戦旗ラ・ピュセルに対する『多方面同時侵攻』の一環となるため、敵の反撃を避けて制圧作戦を進める事が可能となっています。
 海鳥提督が撃破され、ドンレミ村も制圧された事で、ブルゴーニュ北部のキマイラウィッチ達は動揺しています。その動揺が収まらないうちに次々と撃破して、ブルゴーニュ北部の制圧を進めてください。

!特殊ルール!
 期間までに、成功したシナリオ数により、ブルゴーニュ北部の制圧状況が変化します。
『4』シナリオ以上成功した場合は、近隣の拠点から、ジェネラル級が出撃して来る可能性が高まるでしょう。
『8』シナリオ以上成功した場合は、ブルゴーニュ北部を完全に制圧する事で、更なる攻略作戦を実行する事が出来るようになります。
(更なる攻略作戦を実行する場合は、作戦内容を攻略旅団で提案してください)

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#火刑戦旗ラ・ピュセル
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#ブルゴーニュ北部掃討作戦
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#多方面同時攻略作戦
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#ブルゴーニュ地方


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選択肢👾烏合のトループス級『アラストルの乙女』のルール

 なんらかの理由で統制を失ない、烏合の衆となっているトループス級クロノヴェーダ(👾)と戦闘を行います。
 統制を取り戻す前に撃破したり、統制を失っている間に強行突破して目的地に向かいましょう。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「沢山」出現します(現れる敵の数は、オープニングの情報やリプレイの記述で提示されます)。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、450文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★1個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は600文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 🎖🎖🎖 🔵🔵🔵🔵🔵
 超成功 🔵🔵🔵🔵🔵
 大成功 🔵🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔵🔴
 善戦 🔵🔵🔴🔴
 苦戦 🔵🔴🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『この選択肢の🔵が👑に達すると、この敵集団を倒す。完結までにクリアしていない場合、この敵集団は撤退する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👿アヴァタール級との決戦『華麗なるソレイユ』のルール

 事件の首魁である、アヴァタール級クロノヴェーダ(👿)と戦います。
 👿を撃破する事で、この事件を成功で完結させ、クロノヴェーダの作戦を阻止する事が可能です。
 敵指揮官を撃破した時点で、撃破していないクロノヴェーダは撤退してしまいます。
 また、救出対象などが設定されている場合も、シナリオ成功時までに救出している必要があるので、注意が必要です。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「1体」出現します。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、450文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★1個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は600文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 🎖🎖🎖 🔵🔵🔵🔵🔵
 超成功 🔵🔵🔵🔵🔵
 大成功 🔵🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔵🔴
 善戦 🔵🔵🔴🔴
 苦戦 🔵🔴🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、敵を倒し、シナリオは成功で完結する。ただし、この選択肢の🔴が🔵より先に👑に達すると、シナリオは失敗で完結する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※このボスの宿敵主は「冰室・冷桜」です。
※クロノヴェーダには、同じ外見を持つ複数の個体が存在しますが、それぞれ別々のクロノヴェーダで、他の個体の記憶などは持っておらず、個体ごとに性格なども異なっています。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。