ソーヌ川北西地域を転がす(作者 大丁)
#火刑戦旗ラ・ピュセル
#ソーヌ川北西地域強襲作戦
#多方面同時攻略作戦
#リヨン
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時先案内人ファビエヌ・ラボー(サキュバスの人形遣い・g03369)はぬいぐるみを操る。おチビさんたちがトレイン内につぎつぎと、複数枚の地図を掲出した。
準備の終わった車両を、端から端まで歩きながら説明するファビエヌ。
「ごきげんよう。攻略旅団の方針により、『火刑戦旗ラ・ピュセル』の各地を攻めている最中ですわ。まず、『オルレアン南方派遣軍分断撃破作戦』。『ボーヌ拠点強襲作戦』と『ブルゴーニュ北部掃討作戦』。そして、『ソーヌ川北西地域強襲作戦』です」
あちこちの地図を指し示していく。
「これらをまとめて、『多方面同時攻略作戦』としています。依頼がたくさんあるだけではなく、すべてに成功することでキマイラウィッチに大打撃を与えようという方針です」
地図とともに示された進行度は、四つのあいだでまちまちだ。
オルレアンの南方では、ジル・ド・レの派遣軍の一部隊を分断して撃破している。
ボーヌは、ディジョン奪回を諦めた魔女たちの集合地点になったところ。
ブルゴーニュ北部掃討は、ドンレミ村でジェネラル級を撃破したことから始まった。
ソーヌ川北西地域での活動は、『リヨン』強襲の前段階となっている。
「みなさまの活躍で、依頼の完了報告が続々と入ってきておりますわ。しかしながら、全部の目標依頼数を合わせると、かなりの数になります。使える時間も限られており、なにより『多方面同時攻略作戦』の全成功という課題は相応に厳しいものです」
言いつつ口元がほころんでいるのは、手応えを感じているからだろう。
「当列車が向かうのは『ソーヌ川北西地域強襲作戦』です。ソーヌ川はリヨンを東西に分断するように流れているので、その上流を制圧する事には意義がありましょう。ひとつひとつの依頼を果たして、多方面作戦の全成功を目指しましょうね」
ファビエヌはあらためて、リヨン北部の地図の前に立った。
「この地域の敵戦力は、ディジョン奪還の援軍として向かっている為、その数を減らしているようです。その代わり、リヨンのキマイラウィッチがディアボロスの接近を警戒する巡回を行っているようなので、その巡回部隊を狙って、攻撃を仕掛けてください」
敵部隊は、魔女化自動人形で編成されている。
指揮官のアヴァタール級は、多脚型の『ファニーサイス』。
配下のトループス級は、車輪を押しながら進む、『くるま裂き人形』。
「巡回部隊よりも先に、こちらが敵を捕捉できれば有利に戦う事が出来るでしょう。逆に、敵に先に発見されれば不利な戦いを強いられるので、いろいろ工夫してみてくださいね」
多数の地図と資料を車内に残して、ファビエヌはプラットホームへと降りた。
「ご説明のとおり、『多方面同時攻略作戦』の全成功があれば、火刑戦旗ラ・ピュセルの奪還に大きく近づくはず。このリヨンについても、多数のジェネラル級キマイラウィッチが居る重要拠点であるのは間違いありません。ぜひ、イイコトをなさってきてくださいませ」
『くるま裂き人形』が車輪を転がしているのは、なだらかな丘陵だった。
ローラー作戦という言葉があるが、ディアボロスを見つけだすために、主だった道だけでなく、端の茂みや木立、民家がかかる場合はその外壁までも潰して進んでいる。
後からくる多脚の指揮官とも連絡を密にし、復讐の機会を逃さぬ構えだ。
「さぁ、さぁ、出てきなさい、ディアボロス!」
「出てきなさい!」
魔女化する前は、無感情に人々を処刑する人形だったはず。生身の顔となり、復讐を想像して興奮すらしていた。
そのかわり、村人たちは無視されている。処刑も拷問もない。
恐ろしさが和らぐことはないだろうが。
リプレイ
リーシャ・アデル
・心情
まためちゃくちゃな動きでアタシ達を探してるわね……?
後々のことを考えても、ここでしっかりと食い止めなくちゃいけないわね
・行動
残留効果の《光学迷彩》を発生させて、木立に隠れつつ【観察】するわ
文字通りしらみ潰しに探してるってんなら、その前兆は派手な動きでわかりやすいだろうし、逆に探し終わった場所はひどい有様になっているだろうから、そこを辿れば敵に辿り着けると思うわ
どちら側に降り立つかわかんないけど、まぁそういった点を注視していくわね
・その他
アドリブ等は大歓迎よ
ラズロル・ロンド
アドリブ連携歓迎
各地での同時作戦、どこも重要なだけに手は抜けないね。頑張るぞっと。
ローラー作戦を地でゆく乱暴さ…流石はキマイラウィッチというべきか…
感心どころか呆れ顔でため息を零しながら【光学迷彩】を使い草原の色に近い森林迷彩のギリースーツを纏い、更に移動場所に実際に生えている草や枝葉も服に付け変えたりし、その場所に完全に同化してしまおう
移動地は身を隠せそうな草原や木立の中
持参した軍事用双眼鏡には反射防止のキルフラッシュも付け潜伏しながら索敵し進むよ
町に到達する前に強襲できるといいな…急ぎつつも慎重に
丘陵は見通しが良くなる小山の下りなどは要注意
周囲の坂の上に敵が居ないか、見える範囲を警戒し、居なければ迅速に移動
丘の上に立つ時もその先の谷間まで敵が居ないか確認して身を低くしつつ進もう
ローラー作戦なら一直線に横並びかな?
結構見つけやすそうな気がするね
人々にその殺意が向いてないのは良いけど
その我が物顔っぷりはへし折ってやりたい
双眼鏡で周囲を索敵しながら早く見つけられるよう索敵範囲を広げていこう
「まためちゃくちゃな動きでアタシ達を探してるわね……?」
村人から見つからないように注意しながら、リーシャ・アデル(絆紡ぎし焔の翼・g00625)は外壁の破片を拾った。
みたところ、『くるま裂き人形』が通過してからいくぶん、時間がたっているようだ。
「後々のことを考えても、ここでしっかりと食い止めなくちゃいけないわね」
「ローラー作戦を地でゆく乱暴さ……流石はキマイラウィッチというべきか……」
ラズロル・ロンド(デザートフォックス・g01587)は呆れ顔で、ため息までついたが。
「各地での同時作戦、どこも重要なだけに手は抜けないね。頑張るぞっと」
気合を入れ直し、敵への対応を決める。
予知で知らされたとおり、この敵がソーヌ川北西地域で行っているのは自前の車輪を転がすことだ。
「一直線に横並びかな? 結構見つけやすそうな気がするね」
「文字通りしらみ潰しに探してるってんなら、その前兆は派手な動きでわかりやすいだろうし」
リーシャはまた、頭を低くしたまま村の中のほうを覗いた。
こうして敵巡回部隊がディアボロスを探し終わった場所については、ひどい有様になっている。
さいわい、家が半壊してすぐに避難できたらしく、数名の大人が様子を確かめに戻ってきた感じだ。ラズロルとしては、励ましの声でもかけたいところ。
それを我慢し、車輪の情報を収集しただけで村のそばから離れる。
「人々にその殺意が向いてないのは良いけど、その我が物顔っぷりはへし折ってやりたい」
魔女化自動人形への感情は膨らむ。
ディアボロスたちの意見は一致し、車輪の痕跡を辿って敵部隊の位置を確定させ、先回りからの奇襲となった。
現地はなだらかとはいえ自然の起伏がある。
まったいらな地面に、まっすぐな道がひかれているわけではない。こちらを警戒しているとしても、敵に死角が生まれる場所があるはずだ。
辛抱強くそれを探す。隠密行動で。
移動は、身を隠せそうな草原や木立の中を渡り、丘陵の見通しのよくなる小山の下りなどは、特に注意した。
ラズロルが用意したのは、草原の色に近い森林迷彩のギリースーツだ。纏った服の上から、移動中に生えている草や枝葉も付け変えたりした。土地の特色へと完全に同化するわけだ。
さらに良かったのは、リーシャと合わせてふたりぶんの『光学迷彩』を重ねられたこと。
服装、行動と合わせれば、自動人形を欺けるだろう。
あとは、これもラズロル持参の軍事用双眼鏡。反射防止のキルフラッシュも付いており、潜伏しながら索敵し進む。
最初に被害後の状態を調べた甲斐もあり、村から続く車輪跡が、丘を登っていく途中にあるのを発見する。
あとは坂道での移動方法の逆だ。
丘を迂回して反対側から傾斜を登ると、稜線の手前を潜伏場所とする。
敵から見て、並ぶ車輪の斜め前方ということになる。稜線をまたごうとすると、上りが下りへと変わるので、自動人形とはいえ、意識の比重は車輪の転がりへと傾くであろう。
リーシャとラズロルの眼前に、車輪の外枠がきれいに重なった光景が現れる。
スポークがあるぶん、トンネルにはなっていないが、律儀な人形たちは横一列にきっちり並んでいた。これ以上ない、奇襲に適した瞬間だ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【光学迷彩】LV2が発生!
効果2【アヴォイド】LV2が発生!
リーシャ・アデル
・心情
それじゃあ、奇襲ということで一発ぶち込みましょうか
派手にふっ飛ばして、ディアボロスが来たってことを教えてあげるわ!!
・戦闘
残留効果の《光学迷彩》は引き続き使用しつつ、『翠焔・創像:バーニングサジタリア』による【貫通撃】で攻撃するわ
攻撃したら敵もこっちに気づくでしょうから、後はそのまま敵群に突っ込みながら【臨機応変】に対応していくわね
・その他
アドリブ等は大歓迎よ
ラズロル・ロンド
アドリブ連携歓迎
横からドミノ倒ししたくなる図!?
や~、キレイに並んでるね。
好機は逃さないのが鉄則だね!
潜伏場所に隠密で潜伏しタイミングを見計らい
リーシャ君に合わせて僕も攻撃開始するよ
デザートウォールを使い地面から巨大な砂の手を展開して握り潰す…というか一列に並んだくるま裂き人形の横っ面からデコピンの要領でスパーンッと弾いて全部横倒しにしたい気分だよ!
まぁ、物理的に無理だとしても、そうなったら楽しそうじゃんっ
と思うのは自由だよね
いやいや、真面目だよ、真面目に殲滅するよ、うん、もちろんっ
敵相手に油断はしちゃいかんですとも
反撃の車輪は横跳びに躱して捕まらないように
拘束されそうな時は砂の手で車輪を潰して拘束から逃れよう
最初の一撃の後は乱闘ばりに千切っては投げ
叩き潰し、ザッっと手で払う仕草で払いのけるなど
自分の手の動きに連動して一帯のくるま裂き人形を逃がさず倒し尽くそう
最後はペシャンとハイお疲れさまで手をパンパン払おう
「横からドミノ倒ししたくなる図!?」
服装と光学迷彩で潜みながら、ラズロル・ロンド(デザートフォックス・g01587)はあまりの幸運にむしろ驚く。
「や~、キレイに並んでるね」
「それじゃあ、奇襲ということで一発ぶち込みましょうか」
リーシャ・アデル(絆紡ぎし焔の翼・g00625)はエディットツールを手にした。リアライズペインターの力で、弓を『描雅』する。
「好機は逃さないのが鉄則だね!」
ラズロルも敵に悟られぬよう注意しつつ、傍らの岩塊を材料に砂の手を作りだす。弓の一射にタイミングが合うよう控えた。リーシャの『翠焔・創像(ブレイズ・リアライズ):バーニングサジタリア』は描きあがる。
「ディアボロスが来たってことを教えてあげるわ。派手にふっ飛びなさい!!」
炎の螺旋をまとった矢が放たれる。
横並びのトループス級のうち一番手前、『くるま裂き人形』の車輪中央を射抜く。
スポークを伝わって炎が、車輪全体へと放射状に広がった。
「あちっ……!」
顔がついたことで人形は、慌てたような感情を見せる。うっかり離した手から、大事な車輪がとりこぼれ、峰を越えた下り坂を、燃えながら転がりだす。
人形が次にとった行動は、リーシャでさえ意外に思うものだった。
自分の車輪に飛び掛かって、いっしょに転がっていってしまったのだ。パラドクスの炎が人形にも燃え移っている。残りの人形たちも驚きを隠せず、並んだまま静止して、下り坂を遠のいていく仲間の姿を目で追った。
その横っ面を、『砂の手』がデコピンの要領でスパーンッと弾く。
傾く二番目の人形と、あとに続く三番目以降の人形は、車輪をがっちりと支えていた。
おそらく、一番目が落ちた境遇に用心していたのだろう。もろとも倒れて隣の人形と車輪にぶつかり、さらに隣の人形、車輪と伝播していく。
「えええっ?! そうなったら楽しそうじゃんって思うのは自由だと……!」
ラズロルのほうこそ、意外さを感じていた。
一列に並んだくるま裂き人形が、全部横倒しになった光景に。
「ぶ、物理的に可能だったんだ。それとも運の力?」
『アヴォイド』がふたつ活性化されている。
ズレて重なりあった車輪を、人形たちに投げ返せるはずもない。
「ラズロル! ほら、せっかくのチャンスよ!」
平静を取り戻したリーシャが、倒れた敵群に突っ込んでいった。
動きが早いのは彼女の臨機応変さと、ドミノ倒しの結果を1秒後の未来視で得ていたおかげかもしれない。一体目の撃破は、坂の下を見れば確認できる。
「いやいや、真面目だよ、真面目に殲滅するよ、うん、もちろんっ」
ラズロルは自身の手を振り上げた。
より多くの砂の手が浮遊する。
ザッっと手で払う仕草で人形の重なりを崩すと、一体ずつ叩き潰していく。『デザートウォール』は術者の動きに連動し、くるま裂き人形を倒し尽くした。
ハイお疲れさま、とばかりに最後は手をパンパン払う。
「敵相手に油断はしちゃいかんですとも」
トループス級たちが来た方向を見下ろす、ラズロル。
巡回部隊の指揮官が、ガチャガチャと多足を操って丘を登ってくる。
🎖️🎖️🎖️🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【未来予測】LV1が発生!
【建物復元】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
リーシャ・アデル
・心情
……まぁ、トループス級にはちょっと面食らったけど、ともかく後は指揮官だけね!!
ここで引導を渡してやるわ!!
・戦闘
パラドクス『翠焔・創像:デモリッシュアーツ・クロス』による【斬撃】や【貫通撃】を叩き込んで攻撃するわ
・その他
アドリブ等は大歓迎よ
夜鳥・空也
(トレインチケット)
薬袋・明莉
(トレインチケット)
一恋・花束
(トレインチケット)
ラズロル・ロンド
こんなにうまく行くとは、やっておいて僕がビックリしちゃったよ
気持ち良く決まった所で残りも一気に倒しちゃいたいね
油断は禁物でファニーサイスが丘に顔を出し、状況を把握しきる前に
サンドストームに捕らえ風塵で鋭い多脚の先からゾリゾリ削いでいこう
身を引くし、丘の上から一番目を引くだろうくるま裂き人形達の残骸を横目に
横合いからファニーサイスに攻撃
相変わらず顔だけは愉快そうで何よりだよ
う…グランダルメの人形だったけど…キマイラウィッチ化で人の顔になってるとしたら……ちょっとイヤかも
反撃の光る狂気の笑顔は
光るなこっち見るなと言いつつ
僕に道化恐怖症の質は無いからダイジョウブだよ…と平気な素振りで耐え忍ぶ
リーシャ君と合わせ、サンドストームでゾリゾリ削って危険な多脚もバラバラにしておこう
「こんなにうまく行くとは、やっておいて僕がビックリしちゃったよ」
ラズロル・ロンド(デザートフォックス・g01587)は、あらためて『くるま裂き人形』たちの残骸を横目にし、姿勢を低くした。
「気持ち良く決まった所で残りも一気に倒しちゃいたいね」
「……まぁ、トループス級にはちょっと面食らったけど、ともかく後は指揮官だけね!!」
次の武器を『描雅』しはじめる、リーシャ・アデル(絆紡ぎし焔の翼・g00625)。
「ここで引導を渡してやるわ。『目録再描雅・全放出(インベントリーアウト・フルオープン
)』!!」
剣、槍、斧……と描く手がとまらない。
アヴァタール級の登攀速度はそのまま。単騎の自動人形が状況を把握しきる前にと、ラズロルは先制の『サンドストーム』に捕らえた。
「風よ、砂塵よ、削ぎ落とせ」
丘の頂上付近から吹き下ろす、風塵。
細かな粒子を浴びせて、前脚(?)の機構をゾリゾリと削いでいく。人形の歩みは遅くなり、風力で後ろに転がってしまわないよう、後脚を突っ張ったようだ。
『ファニーサイス』の外見は、多脚の下半身に道化姿の上半身をのせ、両手に大鎌を握らせたものとなっている。
そして、長く伸びた首の先に、戯画化した頭部がのっていた。
「相変わらず顔だけは愉快そうで何よりだよ」
ラズロルが口角をあげると、優勢を保つかのようにディアボロスの増援が到着する。
「よお。人形の生き残りって聞いてきたけど、カラクリって言うより、ありゃ完全に機械だな」
薬袋・明莉(情熱のアーティスト・g02002)は、トループス級の残骸を乗り越えた。
その脚こそ、精巧な機械で出来ている。
「明莉君、おつかれ。そうそうグランダルメの人形だったけど……う、ありゃちょっとイヤかも」
風塵を送るラズロルから、余裕が消えた。
一恋・花束(生徒会騎士団長・g00023)は推理、分析するときの仕草を見せる。
「キマイラウィッチ化ですし。お顔だけ生身で、表情がより気持ち悪くなってますし」
サキュバスのサウンドソルジャーが指摘したとおり、単純な線だったファニーサイスの目や口が、風に耐えるあいだに写実的で詳細なものへと変化してくる。
「自動人形の割に感情エネルギーに強いって話がありましたし。ラ・ピュセルとは相性いいかもですし」
「わぁ、みんな、精神攻撃に備えて! ……光るなこっち見るな!」
話の途中で警告を発する。
『フィアースマイル』により、話題に出ていた頭部が怪しく発光し、狂気の笑顔が見た者を恐怖で満たしてくる。
「ラズロル! 大丈夫!?」
とっさに庇われたアカネ・シュミット(元機械化兵試験体・g00622)が、サンドストームの維持で矢面に立つ仲間を気遣う。
「僕に道化恐怖症の質は無いからダイジョウブだよ……」
などと言いながら、平気な素振りで耐えている。
「アカネ君にお願い。リーシャ君たちと力を合わせて、あの危険な多脚をバラバラにしてちょうだい。僕はここから援護する」
「あいよ! 俺は堅さに物をいわせて最前線で暴れまわるのが専門だ。物理攻撃だったら、何発くらったって怪我しねえ」
ちょっと大げさだが、アカネが痛みに鈍感なのは本当だ。
描雅武器が揃い、リーシャは身体の周囲にそれらを浮遊させている。そのひとつずつの描きあがりを、彼女の傍でぼんやりと眺めていた夜鳥・空也(零落のアンピエル・g06556)が、ふらっと前に出た。
「むぅ……。突っ込んでいくなら、私を最初に行かせて」
儚げな女性に見えたのに、ひとたび坂を下り始めたらパワフル。
あっと言う間に自動人形のところまで走っていってしまった。
「なんだアレェ! 爆発的な加速じゃんか!」
明莉が続いて、機械の脚部『GA(グラフィティアームズ):ハウンド』を起動させる。改造された脚力に花束、アカネとリーシャもついていく。
『ファニーサイス』は手に持った鎌を高速で振りまわし、ディアボロスを順番に迎え撃つつもりだ。
最初の斬撃を、空也は片手で受け止める。
「ああ、痛い痛い。倍返しにされる覚悟は出来ているかい?」
血の付いた手が、鎌の刃から相手の腕、肩とつたって、道化服につつまれた襟元を掴んだ。空也の負傷は軽くないはずだが、 突進の勢いのままファニーサイスの背中を、地面へと叩きつけてしまう。
「爆発は、芸術だ!!」
喝采する、明莉。
義手が開いて、色とりどりの弾丸が発射された。人形の脚は、倒れた拍子に変な角度で曲っている。その一本ずつに塗料弾が付着し爆発を起こした。
機械部品を飛び散らせながら、多脚はワシャワシャともがく。
空也の『インビンシブルプレッシャー』は続いている。
「逃げられると思ったのかい? ここで終わりにしようじゃないか!」
折れ曲がった多脚が延び、人形本体は起き上がったものの、襟元に彼女がぶら下がったままだ。不安定な姿勢のまま、大鎌はデタラメな斬撃を繰り返す。
その眼前で、花束がまた分析のポーズをとっていた。
「先読み、直感、名推理…………理外の理であろうとも、認識に組み込みさえすれば」
「やぁ、敵の弱点は花束さんに任せておくか。俺ァ、絵描きとして出来ることをやってくだけだ」
明莉は塗料弾のぶっぱなしに勤しむ。
味方にくっつかないように注意しながら、道化服をより面白く塗り替えていった。絵の具が爆破されれば、その隙間から人形の地色が覗くこととなる。
「さあ、素敵な時間を始めますし!」
花束の先読みはまとまった。
「『《探偵技巧・錠前遊戯》(ディテクティブアーツ・シャーロックムーブ)』、てい!」
直感・推理力を近接戦に応用した技術だ。
動きの始点を潰す事で、近接戦そのものを行わせないまま一方的に攻撃する。素手を当てているように見えるが、魔法陣の一種だろう。小さな輝きが展開されるたび、ファニーサイスの大鎌は見当違いの方向へと弾き出された。
魔女化自動人形に残った武器は、砂塵と塗料でボロボロになった脚先だけだ。
大鎌ほどではないが、鋭く尖った金属の爪を連続で刺されれば、かなりのダメージになる。ファニーサイスは移動時よりも、大きく脚を伸ばし、強烈な振り下ろしをはかった。
『デッドリースタンプ』の内側へと、あえて飛び込む、アカネとリーシャ。
「こっちは、お仕事を頼まれてるんでね!」
「『翠焔・創像(ブレイズ・リアライズ):デモリッシュアーツ・クロス』!!」
交互に繰り出される爪を、宙に浮かんだ槍や剣が受け止める。
アカネの身体には普通にぶっ刺さっている。機械化のために気にかけず、むしろ胸元が破けそうな時だけ庇った。別に恥ずかしいからではない。
脚のあいだを抜け、胴体の真下に潜り込むと、アカネは胸部を開く。
「『メタリックプロミネンス』、発射ァー!!」
機械化帝国出身のサイボーグは、改造された肉体の動力炉から高熱の火炎を放つ。
「キキキ、キシキシキシ! ……お、おのれディアボロス!」
長い首のてっぺんについた顔が、甲高い笑いから、怨嗟の叫びに入れ替わる。
もう、笑っていない。
ラズロルはホッと息をついてから、アカネと空也の救出を大声で請う。明莉と花束が敵の上下から味方をひっぺがした。ファニーサイスの脚爪は彼らも狙うが、リーシャが全武器をいっぺんに操って立ち塞がる。
飛来するそれらは炎をまとい、動きすら芸術的だ。
剣と斧が前脚を斬り飛ばした。
立て続けに光輪とナイフが後脚を切断する。
「とどめよ!!」
槍はリーシャ自ら握る。天使の翼が広がり、真っ赤に燃えた。アヴァタール級魔女化自動人形にして、ソーヌ川北西地域の巡回指揮官、『ファニーサイス』は胸に貫通撃を受け、業火に包まれたのだった。
善戦🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【建物復元】がLV2になった!
【壁歩き】LV2が発生!
【完全視界】LV1が発生!
【熱波の支配者】LV1が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【フィニッシュ】LV2が発生!
【能力値アップ】がLV2になった!
【ロストエナジー】LV2が発生!