タイミル半島、冬将軍との決戦

 吸血ロマノフ王朝奪還戦の結果、大地の多くは最終人類史に奪還、あるいは融合世界戦アルタンウルクに強奪される事になりました。
 唯一、冬将軍が健在であった『タイミル半島の一部』が、彼を長とし、数千人の避難民と共に「吸血ロマノフ王朝が残った」形で残留しています。

 この地域はシベリアの不毛の地で、多く見積もっても数千人の人口しか持たない為、脅威となる可能性は低いでしょう。
 ですが強烈な環境操作能力を持つ『冬将軍』は、絶対に放置できない相手です。急ぎ、タイミル半島に向かい、冬将軍との決着をつけてください。

!特殊ルール!
【1】冬将軍を撃破することで、該当地域の大地を奪還できます。
【2】『冬将軍を撃破せずに撤退する』の選択肢は『冬将軍との対話』の選択肢が完結後、
====================
・その日のうちに『タイミル半島の決戦』の選択肢のリプレイが公開されていない
・『タイミル半島の決戦』の選択肢にプレイングが一通も無い
====================
 という条件を満たした上で、『冬将軍を撃破せずに撤退する』へのプレイングが3件以上存在している場合のみ、執筆されます。
【3】冬将軍を撃破しない場合は、リプレイの情報なども踏まえ、攻略提案を行ってください(見逃した後で提案がなければ人類応援度が下がります)。
・24年12月分:吸血ロマノフ王朝攻略旅団
・25年1月分以降:新たに攻略を開始するディヴィジョンの攻略旅団、もしくは特殊案件攻略旅団ワイルド・カード


冬将軍

冬将軍の晩節(作者 あき缶
26


#吸血ロマノフ王朝  #タイミル半島、冬将軍との決戦  #冬将軍  #吸血ロマノフ王朝奪還戦  #タイミル半島 


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●守るべき皇帝はすでに亡く
 タイミル半島のとある氷の洞窟の内部にて洞穴の外の雪を眺めながら、冬将軍は遠くを見つめている。
「吸血ロマノフ王朝は滅び、シベリアの大地の多くもアルタン・ウルクに奪われてしまった……」
 先般の吸血ロマノフ王朝奪還戦の結果、冬将軍だけが生き残り、ディヴィジョンもこのタイミル半島を残すのみという状況だ。
 その唯一の領土もアルタン・ウルクによって奪われてしまうのは時間の問題だ、と冬将軍は悟っていた。
「どうすれば、この事態を避けられたのか……ああすれば良かった、こうすれば良かったと後悔が浮かぶばかりじゃ」
 疲れた声音で悔恨を口にしつつため息を吐く冬将軍に、棺輸巨狼たちはキューンと鼻を鳴らしてすり寄る。
「おお、よしよし……気遣ってくれるのじゃな」
 棺輸巨狼の茶色い毛並みを撫でてやりながら、冬将軍は目を細める。
「アルタン・ウルクに滅ぼされるよりも、皇帝陛下を倒したディアボロスに滅ぼされた方がマシではある。じゃが、どうなることか」
 吸血ロマノフ王朝の最後の守護者は遠くを見つめる。
 あのとき、皇帝陛下とともに逝くべきだったろうか――。
「いや……いまのわしに出来ることは、せめて晩節を汚さぬようにすることだけじゃろうな……」
 鼻を擦り寄せてくる棺輸巨狼をあやしながら、冬将軍は目を閉じた。

●タイミル半島奪還
 アンリ・カルヴァン(氷華の人形遣い・g03226)は新宿駅グランドターミナルでディアボロスを迎えた。
「まずは吸血ロマノフ王朝奪還戦の勝利を祝おう」
 アンリとディアボロスは、『鮮血の革命術式』を無事阻止し、サンクト新宿ブルクのような事態に陥らなかったことを喜びあう。
「さて、吸血ロマノフ王朝は、シベリアの一部をアルタン・ウルクに強奪されたものの、おおむね、最終人類史に奪還できたね。でも少しだけ吸血ロマノフ王朝が残っている」
 残っている吸血ロマノフ王朝――それは冬将軍がいるタイミル半島だ。
「タイミル半島の一部だけだけれどね、現地はまだ新たな歴史改竄は起きていない。『吸血ロマノフ王朝が取り残された』ような状態になっているんだ」
 冬将軍を撃破すればタイミル半島も最終人類史に奪還できるのだ、とアンリは説明する。

 パラドクストレインは、ディアボロスを北極海側からタイミル半島の避難民集落へと運ぶ。
「集落の住民の多くは、かつて君たちが助けた人々だ。ディアボロスに友好的に接してくれると思うよ」
 避難民の集落には、奪還戦以前にディアボロスから送られた支援物資などがまだ残っているため、生活に困窮してはいないようだが、冬の厳しさはそれでも辛い様子だ。
「集落内に冬将軍の姿は見当たらなかったけれど……集落の住民に聞けば、居場所は知っていると思うよ。彼らから情報を得て、冬将軍との決戦に向かっておくれ」
 アンリは少しだけ言い淀んだ後、こう付け加えた。
「……望むならば、冬将軍と対話することも出来る。でも……これだけは忘れずにいてほしいんだ」
 冬将軍を倒さなければ、タイミル半島を最終人類史に奪還することはできない――。

 タイミル半島の人口は少ない。最終人類史に戻った一般人は、ロシア革命の頃の元の歴史に戻っていく。そのことが幸福かどうかは判じられない、とアンリは呟く。
「でもね、このままタイミル半島を放置した場合、遠からずアルタン・ウルクが侵攻してきて、冬将軍を滅ぼし、大地を強奪する。ディアボロスが奪還するのが一番良い方法の筈なんだ」
 人口が少ない地域であろうと、アルタン・ウルクに奪われるわけにはいかない。
 そう締めくくってアンリはディアボロスをパラドクストレインへと案内するのだった。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


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 冬将軍を撃破せずに、タイミル半島から撤退を行います。
 冬将軍は、ディアボロスの撤退を邪魔する事はありません。
 撤退した後の、冬将軍の扱いなどは、攻略旅団で話し合う事になるので、意見がある場合は、攻略旅団で提案を行ってください。

 撤退後の冬将軍の扱いは攻略旅団で決定する為、この時点で、冬将軍に何かを約束しても虚偽となる可能性があるので、撤退時に何か言い残す場合は、その点を踏まえるようにしましょう。
 詳しくは、オープニングやリプレイを確認してください。



特殊ルール 【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、安全に撤退でき、シナリオは成功で完結する(作戦目的は一部未達成となる)。
👑2

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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【動物の友】
1
周囲の通常の動物がディアボロスになつき、意志の疎通が可能になる。効果LVが高い程、知能が高まり、友好的になる。
【エアライド】
1
周囲が、ディアボロスが、空中で効果LV回までジャンプできる世界に変わる。地形に関わらず最適な移動経路を見出す事ができる。
【熱波の支配者】
4
ディアボロスが熱波を自在に操る世界になり、「効果LV×1.4km半径内」の気温を、「効果LV×14度」まで上昇可能になる。解除すると気温は元に戻る。
【冷気の支配者】
1
ディアボロスが冷気を自在に操る世界になり、「効果LV×1km半径内」の気温を、最大で「効果LV×10度」低下可能になる(解除すると気温は元に戻る)。ディアボロスが望む場合、クロノヴェーダ種族「アルタン・ウルク」の移動速度を「効果LV×10%」低下させると共に、「アルタン・ウルク」以外の生物に気温の低下による影響を及ぼさない。
【完全視界】
1
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【活性治癒】
1
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【水面走行】
1
周囲の水面が凪ぎ、ディアボロスが地上と同様に走行や戦闘を行えるようになる。ディアボロスと手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人も同行可能。
【口福の伝道者】
1
周囲が、ディアボロスが食事を摂ると、同じ食事が食器と共に最大「効果LV×400人前」まで出現する世界に変わる。
【おいしくなあれ】
1
周囲の食べ物の味が向上する。栄養などはそのまま。効果LVが高いほど美味しくなる。
【パラドクス通信】
3
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【アイテムポケット】
3
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。
【寒冷適応】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が、摂氏マイナス80度までの寒さならば快適に過ごせる世界に変わる。
【アイスクラフト】
1
周囲が、ディアボロスが、一辺が3mの「氷の立方体」を最大「効果LV×3個」まで組み合わせた壁を出現させられる世界に変わる。出現させた氷は通常の氷と同様に溶ける。

効果2

【能力値アップ】LV2 / 【命中アップ】LV4 / 【ダメージアップ】LV6 / 【ガードアップ】LV1 / 【反撃アップ】LV3 / 【リザレクション】LV1 / 【アヴォイド】LV1 / 【ダブル】LV1 / 【ロストエナジー】LV1

●マスターより

あき缶
 あき缶です。吸血ロマノフ王朝奪還戦お疲れ様でした。
 奪還戦で倒せなかった冬将軍との決着をつけに行きましょう。

 対話だけで撤退することも出来ますが、撤退には以下の条件(概要より転記)がありますのでご注意ください。
 『冬将軍を撃破せずに撤退する』の選択肢は『冬将軍との対話』の選択肢が完結後、
 ・その日のうちに『タイミル半島の決戦』の選択肢のリプレイが公開されていない。
 ・『タイミル半島の決戦』の選択肢にプレイングが一通も無い。
 という条件を満たした上で、『冬将軍を撃破せずに撤退する』へのプレイングが3件以上存在している。

 ちなみに冬将軍は逃げも隠れもせず、戦っている最中でも対話に応じてくれます。
 冬将軍のラスト、どうぞよろしくお願いいたします!
88

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


音羽・華楠
……ただ、冬将軍の居場所を聞くだけというのも味気無いです。
集落の避難民の皆さんは寒さでつらい思いをされてるみたいですし……何か温かくて美味しいものを振る舞いましょう。
……場所はロシアですが、ここは新宿島の冬の定番料理――『おでん』を作って振る舞います。
私たち復讐者が冬によく食べてる料理と言えば、避難民の皆さんも興味を持って食べてくれるのではないかと。
材料は新宿島で揃えて持ち込みます。
私が持てる範囲ですし、調理器具も含めるとそこまで沢山は現地では作れないかもしれませんが、足りない分は【口福の伝道者】で増やします。

……私個人は、今日この時に冬将軍と戦い、撃破するつもりでここに来てます。
本当にそうなるかはまだ不透明としても、この地の避難民の皆さんがもうすぐ本来の歴史に帰るのなら、その時代が決して恵まれてる時代じゃないのだとしたら――
……最後に少しでも良い思いを、お腹一杯美味しいものを食べたとか、そういう体験をさせてあげたいじゃないですか。

まぁ……偽善かもしれませんけどね。


イオナ・ガルバローゼ
久方ぶりの対冬将軍装備の出番ですね
防水性、撥水性の高い防寒具とゴーグル
外を出歩く時は目出し帽とスノーブーツも付けましょう

情報収集するには相手の心身に余裕がある状態でなければ
資材はあると云う事なので、何か温まる汁物などを作って振舞います。
ロマノフでは随分こうして食事を作って来ましたね……

これから冷気が止み温かくなっていく旨を連絡しに来た体で行きます
立場を設定しても齟齬が生まれ得るので相手の受け取るままに合わせましょう

持ち込みの食料とここにあるものを使い出来る限りの御馳走を作り振舞います
腕に寄りを駆け【おいしくなあれ】で一番おいしい御馳走にしてみせます

ドラキュラはディヴィジョンが更新される度に人や吸血鬼は生えると言っていました
この人達はディヴィジョン共に何処へ行くのか、僕には解らないけど
それは死んだ人の行く末を誰も知らないのと変わらないのかもしれない
土に還った人間を「ただ消えた」と言わないように
この人達が居た事を忘れなければ、どこか行く先があると、あればいいと祈りたい


キーラ・パーヴェルファング
……この寒さ、ロマノフ王朝が滅びた今、また味わえるかしら

いい人、というより、ディアボロスにとっては都合の良いだけだったのかもしれないけれど
この歴史で生まれた身として、最後のジェネラル級に、敬意を示すくらいのことはしたいというのは我侭かしら

パラドクストレインに運ばれたあとは、吹雪いていても負けないように【完全視界】で確かな視界を確保
住居や人の姿を捜し、避難集落を見つけましょう
もちろん、発見したら情報は共有するわ

避難民たちが、冬将軍をどう思っているかはきっと大事なことね
それに関して、正直に尋ねてみるわ
安心して。教えてくれた情報によっては冬将軍を殺してあげる

攻めた言い回しをしたけれど、その反応によっても避難民たちの心中を窺えるかもしれないから
最後かもしれないなら、隠したままにするのも誇りに傷がつきそうだもの

最後に、その上で、冬将軍の居場所を問う

……集落にいないのは、もしかして
せめて、あなた達を巻き込むのを避けたかったのかもね
ただの妄想に、過ぎないけれど


●いいひと
 未だ吸血ロマノフ王朝であるタイミル半島の集落は常冬である。
 今も寒風吹きすさび、ちらちらと雪が舞う。
 冷たい風のなか、温かな湯気と出汁の良い香りが漂い、集落に住まう避難民は皆、家を出てディアボロスの炊き出しへと並んでいた。
「まだまだありますからね、安心してください」
 と椀におでんをよそいながら音羽・華楠(赫雷の荼枳尼天女・g02883)は居並ぶ避難民に微笑みかける。
「場所はロシアですが、ここは新宿島の冬の定番料理で」
 新宿から持ち込んだ材料はせいぜい五人前というところだったが、【口福の伝道者】を発動させた華楠がおでんを食べれば、四百食ものおでんが並ぶのだ。
「これから冷気が止み、温かくなっていくはずでございます。もう少しのご辛抱。それまでこちらを召し上がって温まってください」
 防寒具とゴーグルで寒さを防備しつつ、おでんの椀を人々に配るイオナ・ガルバローゼ(空染めの一輪・g07485)はしみじみと呟く。
「ロマノフでは随分こうして食事を作ってきましたね……」
 イオナの【おいしくなあれ】のおかげで、おでんは絶品の味だ。
「おいしいねえ。ディアボロス様々だねえ」
 と避難民は温かな食事と美味に身も心も温まった様子であった。
 彼らの顔が緩むのを見て、イオナは胸を撫で下ろす。
(「情報収集するには相手の心身に余裕がある状態でなければ」)
 笑顔でおいしいと言い合う避難民を見やり、華楠は顔を少し曇らせる。
「……この地の避難民のみなさんがもうすぐ本来の歴史に帰るのなら」
 ロシア革命頃の当地は決して恵まれた環境ではない。
「最後に少しでも良い思いを、お腹一杯美味しいものを食べたとか、そういう体験をさせてあげたいじゃないですか」
 隣で呟きを聞いているイオナに、華楠は苦笑を魅せた。
「まぁ……偽善かもしれませんけどね」
 イオナはしばし考えてから口を開く。
「この人達はディヴィジョン共に何処へ行くのか、僕には解らないけど。それは死んだ人の行く末を誰も知らないのと変わらないのかもしれない」
 だが、彼らを『ただ消えた』と言わぬように。
「忘れたくない」
 彼らの行く末の幸福をイオナはそっと祈った。
 おでんをすっかり平らげた避難民の男に、キーラ・パーヴェルファング(大公の牙・g08440)は話しかける。
「ねえ、冬将軍のこと、どう思っているの?」
 急な問いかけに男は一瞬たじろぐも、感謝していると答えた。
 彼の返答は、キーラにとって予想外なものだった。
(「これじゃあ、『安心して。教えてくれた情報によっては冬将軍を殺してあげる』なんて言えないわね」)
 瞠目するキーラに、彼は言葉を継いだ。
「だって、アルタン・ウルクでしたっけ、外敵からシベリアを守ってくださっている」
 彼の隣の妻らしき女も言う。
「今だって、我々が凍えぬように、怯えぬようにと気を使われて、集落からずっと離れた洞窟におられるのです」
 集落に冬将軍の姿が見えないと聞いて、もしかしてとキーラが考えていたことが事実であると知り、キーラは思わずひとりごちる。
「そう、私の妄想じゃなかったのね……」
「はい?」
 きょとんとする避難民に、キーラは気を取り直して尋ねた。
「いいえ、こちらの話。冬将軍は洞窟にいるの?」
「はい、あちらに真っすぐ行った先、氷の洞窟があります。そちらを改築してお住まいなのです」
 避難民は素直に全てを話してくれた。
 それを聞いた華楠は眉を寄せ、小さく小さく呟く。
「私個人は、今日この時に冬将軍と戦い、撃破するつもりでここに来てます」
 しかし近くにいた避難民の少女が彼女の独白を聞いてしまった。
「そんな……。どうにか思い直してもらえませんか……!」
 華楠は答えない。少女は隣のイオナに向き直る。
「もしかして、もうすぐ温かくなるというのは、これから冬将軍様を倒しに行かれるからですか……っ?」
 すがるような少女の目からイオナは思わず目をそらす。
「あぁ……そんな、そんな……」
 言葉を失い立ち尽くす少女を置いて、ディアボロスたちは冬将軍の住まう洞窟へと向かった。
 雪原を歩きながらキーラは、吹雪く中でもクリアな視界の中、冬将軍のいる洞窟を見据える。
「いい人、というより、ディアボロスにとっては都合の良いだけだったのかもしれない、と思っていたわ。それでも、我侭でもこの歴史で生まれた身として、最後のジェネラル級に、敬意を示すくらいは、と思って、来たの。……でも、本当に」
 本当にいい人だったのかもしれない――キーラの声は冷たい吹雪に流されていく。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
【おいしくなあれ】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【リザレクション】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!

エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
冬将軍、久しいな
七曜の戦の後は度々顔を見たな
礼節を尽くし、挨拶を

あなたに感謝している
今の今まで、避難民たちを気遣い
アルタンから、シベリアを……集落を護ってくれてありがとう
あなたはひたすら役回りに忠実で、誠実であった
その誉れを称えこそすれ、俺達が汚す事はないだろう

俺も、じーさんのことは憎めない
積もる話をしたいが、今は……
全クロノヴェーダとディアボロス共通の敵、アルタン・ウルクについて貴方の話を聞きたい

貴方が今、断片の王の知識を得ているかはわからないが……
……このままでは
ロマノフだけではない、俺たちの世界も、この地球が……世界中が危うい

奴らを攻略する糸口が欲しい
貴方は七曜の戦でも、奴らと交戦している

融合決戦型という巨大な個体と、戦って得た情報はあるだろうか
本国の何処かと『交信』しているそぶりはなかったか?
生態や弱点……なんでもいい
打つ手がなくなる前に、どうか

俺たちは、民が平和に暮らせる世を
春夏秋冬、豊かに暮らせる世界を
護りたい…
これから、ロマノフであった場所を護るのは、俺たちだ
ただ真摯に問う


括毘・漸
…敬意を持ってるからこそ浮かぶ怒りもあるのですよ。


先の戦争での傷や疲労は癒えましたかな、冬将軍殿?
アルタン・ウルクに対する守り、見事でした。

戦争の事に触れつつ挨拶をし冬将軍の状態を確認しましょう。

その上で聞きます、冬将軍殿…このまま耄碌しませんよね?

聞きましたよ、人々を凍えさせぬように寒さを抑えていると、人々からは感謝の感情もありました。

…それでエネルギーは得られますか?
ヴァンパイアノーブルであるなら、人々を従属させる事でエネルギーを得るのでしょう?
ですが、貴方からはその気がないように思えます。
エネルギーが得られない中、極寒の冷気を発する大規模なパラドクスを使い続ければ消耗してジリ貧になるのは目に見えています。

貴方が倒れれば、この地と人々はアルタン・ウルクに飲み込まれます。
それは避けたいのです。
それに、この地を治める貴方が弱まれば排斥力も弱まり境界からアルタン・ウルクが来るのは必然です。
ディアボロスがここにいる事が排斥力が弱くなってる証拠です。


なあ冬将軍、あんたどうするつもりなんですか?


フルルズン・イスルーン
さて、ここからは【寒冷適応】だ。
汝、対話をせんとするならば敬意と身繕いをして背を正すべし。
震えながらじゃ格好付かないんだよ。

ブロッケン・ゴーレムくんおいでー。あ、対話の邪魔にならないように背景しててね。

んむ、まずは番犬やってそうな『棺輸巨狼』に戦意が無いことを示そう。
下手に近付かずじっと立って『冬将軍』に会いたいって伝える。
単なる狼でなくクロノヴェーダだ。意図は通じるだろうさ。
ゲリとフレキみたいだねぇ。ワインと肉を差し入れるべきかな?
北欧出身じゃないと分からないかな。

で、会えたらロマノフ奪還戦でのあらましを包み隠さず伝える。
最低限何があったか伝えておかないとね。こちらもこのディヴィジョンと『冬将軍』の状態を伺おう。
あまり例がない事態だ。今はジェネラルなのか断片の王なのか。その辺も聞いておきたいし。

ん? こうなった原因?
元々いつ裏切るかな関係だったけど、カーミラの置き土産でラスプーチンへの不信感が閾値超えたからだねぇ。
忠義の厚さと策謀の腕を語られるとどうにもね。
薄氷の差というやつだ。


ハインツ・ゼーベック
さて、敗軍の将に語ることなどないのかもしれんが、あいにくこちらには聞きたいことがある。

アルタン・ウルクを食い止めていた大規模パラドクス。
あれのメカニズムを教えてほしい。
いかにジェネラル級とはいえ長期間パラドクスを発動維持するのは難しいだろう。

我々ディアボロスに可能ではない?
構わんとも。いずれ可能にしてみせよう。

アルタンウルクに対抗するため?
その通り。
敢えて言おう。君らより上手くやってみせるさ。

まさかとは思うが、情報と引き換えに助命嘆願などしてくれるなよ。
これでも将軍のことは結構買っているんだ。
がっかりさせないでくれたまえ。


●こんにちは、冬将軍
 さて、とフルルズン・イスルーン(ザ・ゴーレムクラフター・g00240)は霜を媒介にした存在が不確かな巨大なゴーレムを呼び出す。
 ブロッケン・ゴーレムが現れるなり、ディアボロスは氷の洞窟の刺すような寒さが気にならなくなった。
「汝、対話をせんとするならば敬意と身繕いをして背を正すべし。震えながらじゃ格好付かないんだよ」
 と満足気に頷いたフルルズンは呼び出したゴーレムにはじっとしているように指示し、洞窟の中へと踏み出す。
 ぐるる……と唸り、耳を寝かせた『棺輸巨狼』が数匹じりじりと探るように近寄ってくるのを見て、フルルズンは立ち止まった。
「ゲリとフレキみたいだねぇ。ワインと肉を差し入れるべきかな?」
 フンフンと匂いを嗅いでくる『棺輸巨狼』のしたいようにさせつつ、フルルズンは優しく声をかける。
「『冬将軍』に会いたいんだ、通してくれるかな?」
 それを聞くなり引っ込んでいく『棺輸巨狼』。ディアボロスは彼らの後を追って奥へと進む。
 奥の玉座めいた氷の腰掛けに、冬将軍は座っていた。
「ディアボロスか、よう来たのう」
 目を細めて両手を広げる冬将軍に、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)が頭を下げる。
「冬将軍、久しいな」
 そして、エトヴァはアルタン・ウルクからシベリアを守りきった冬将軍への感謝を述べた。
「集落を護ってくれてありがとう。誉れを称えこそすれ、俺達が汚す事はないだろう」
 敬意を示された冬将軍はふぉっふぉっふぉと笑い、続きを促した。
「して、用向きはなにかの?」
「そうだね、まずは最低限何があったのか伝えておかないとね」
 フルルズンは吸血ロマノフ王朝奪還戦のおおまかな流れを伝え、そして尋ねる。
「今の冬将軍はジェネラル級クロノヴェーダなのか、それとも断片の王なのか、どっちなんだろう。あまり例がない事態だからねぇ。聞いておきたいかな」
 冬将軍は顎髭を撫でながら、ふぅむと唸った。
「そうじゃのう。……儂が倒されればディヴィジョンを奪われるという性質は備わっているようじゃな。つまり、断片の王に近いといったところかのう。しかし、儂に皇帝陛下のような力や知識はないんじゃ」
 独立したファラオと同じようなものだろうか、と話を聞くディアボロスたちは想像する。
 エトヴァは眉を寄せる。
「積もる話をしたいが、今は……全クロノヴェーダとディアボロス共通の敵、アルタン・ウルクについて貴方の話を聞きたい。奴らを攻略する糸口が欲しい。貴方は七曜の戦でも、奴らと交戦している。戦って得た情報はあるだろうか?」
 ロマノフだけではない、俺たちの世界も、この地球が……世界中が危うい――。
 勢い込んで尋ねるエトヴァに、冬将軍は申し訳無さそうな表情を浮かべた。
「そちらが喜べるような話はできんなあ。そうさな……アルタン・ウルクは、正常な思考を保持していないように見えたのう。もしかしたら、本来の目的とは違う、狂った行動をしているのやもしれぬ……。そちらが思うとおり、放置してはならぬ者だと儂も思うておる」
 エトヴァが期待するアルタン・ウルクの弱点やディアボロスの知らない特徴などの情報はないらしい
「しかし、そちらがアルタン・ウルクを食い止めていたことは事実。あれのメカニズムを教えてほしい」
 ハインツ・ゼーベック(猖獗・g00405)は鋭い視線を向けた。
「敢えて言おう。君らより上手くやってみせるさ」
 挑発的なハインツの物言いを、冬将軍は鷹揚に笑って受け入れる。
「ふぉっふぉっふぉ。いいのう、儂はそちらがどういう力を持つのか知らんのじゃが、その意気やヨシ。ディアボロスがアルタン・ウルクと戦う力を研究したいと言うなら、喜んで協力するとも」
 さて、メカニズムであったか……と冬将軍は顎髭を撫でる。
「そうさのう……儂の吸血ロマノフ王朝を極寒とした力を、アルタン・ウルクへの効果が高くなるように調整したもの、といえば分かるかのう」
 『冬将軍』はシベリア全土を凍土とするような超広域攻撃を使用可能なジェネラル級だ。
 力の長期間の発動は難しいと考えていたハインツだが、ずっとディヴィジョンを常冬にしていた彼にとって、長期間の力の発動維持は息をするようなものなのかもしれない。
(「我々の【冷気の支配者】のようなものだろうか」)
 冬将軍の説明を聞き、ディアボロスのパラドクス効果を連想するハインツ。
 ずっと友好的かつ命乞いもしない冬将軍の問答を聞きながら、括毘・漸(影歩む野良犬・g07394)はぎゅうっと拳を握りしめた。
(「……敬意を持ってるからこそ浮かぶ怒りもあるのですよ」)
 そして、一歩前に進み出る。
「冬将軍殿……このまま耄碌しませんよね?」
「ふむ? ジジイが耄碌しているように見えたかね?」
 漸は首を横に振りながらも、続ける。
「聞きましたよ、人々を凍えさせぬように寒さを抑えていると、人々からは感謝の感情もありました」
 冬将軍は微笑みながら漸の言葉が続くのを待っている。
「……それでエネルギーは得られますか?」
 避難民を従属させない冬将軍がアルタン・ウルクとの戦いで消耗していかないか心配する漸に、冬将軍は首を横に振った。
「別に儂は、配下をジェネラル級に昇格させようとか、特別なクロノ・オブジェクトを使おうとか、そういう大それたことは考えておらんからのう。わざわざ人々を威圧させる必要はないんじゃよ」
 漸の表情は一瞬緩んだが、続く冬将軍の言葉に顔を曇らせた。
「それにのう。いまいる人々を全員どうこうしようが、儂がアルタン・ウルクに勝てるほどの力は得られんからのう」
「そん、な……。貴方が倒れれば、この地と人々はアルタン・ウルクに飲み込まれます」
 冬将軍から寂しげな微笑みを向けられた漸は、ギリリと彼を睨み上げた。
「なあ冬将軍、あんたどうするつもりなんですか?」
 慈愛の笑みを冬将軍はディアボロスたちに向ける。
「……ディアボロスは、どうしたい?」
 人口数千人のディヴィジョンしか持たぬ冬将軍に未来はない――現状維持では、早晩タイミル半島がアルタン・ウルクのものになる結果にしか行き着かないからだ。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【熱波の支配者】LV2が発生!
【寒冷適応】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
【反撃アップ】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!

レイラ・イグラーナ
ご存じかもしれませんが、断片の王の元に統一された貴方がたと違い、私たちは一枚岩ではございません。
ですが、そんな私たちも一つの譲れない目的があるから共に戦うことができます。
「全土の奪還」。それはこのタイミル半島も例外ではございません。

……一年半前、シベリアを離れる私たちに閣下がされた約束「アルタン・ウルクに関わる攻防において出来ることをやり切る」。それを守って頂いた閣下への敬意はございます。
ですが、だからこそ。私たちも成すべきことを成す。それを違えることはできません。
一度戦い、二度目は戦わず別れ、同盟相手として過ごし……これが最後です。決着を付けましょう、冬将軍。

宣戦布告を行い、冬将軍とその護衛へと決戦を挑みます。
【寒冷適応】は引き続き使用し、雷の魔術を仕込んだ針を投擲する【既成奉仕・雷】で棺輸巨狼を貫き、感電させます。
爆発を推進力にした突進は脅威ですが、洞窟内部ですから平野よりは自由に走れるわけではございません。跳ね飛ばされようとすぐに空中で体勢を整え雷の魔術を込めた針の投擲を。


ガンドラ・ブラッディア
かつて戦った、あの時では、強さばかりに、目が行ってたが……困ったものだ。
その在り方が故に、ロマノフ王朝で、最も倒しづらい、優しい男よ。
此処で見逃し、共闘できたとて、問題が先送りに、なるだけというのは、ままならない。
いつかの訣別が、不可避である故に、残るお前達を、利用する形に、してしまうは、侮辱に他ならん。
……ここで、全てを断つ。

【寒冷適応】を使用し、宣戦布告次第、先ずは配下から、全力で当たろう。
竜呪剣『剣災』・竜開闢を、発動して、巨大化させた、我が手持ちの、竜呪剣……現二十五振りを、一斉に振り下ろし、棺輸巨狼を、蹴散らしていこう。
顕現せよ。我が身、我が竜呪剣。我が声に、呼応せよ……!

ダメージの、大きい個体を、巻き込む形で狙い、数を減らしていく。
突進を、してくるだろうが、【ガードアップ】・【アヴォイド】を補助に、我が竜呪剣群で、軽減していこう。

狼達よ。お前達が、付き添っていたから、冬将軍は孤独に、ならずに済んだ。
我輩はそれに対し、全力で戦う以外、敬意を表する、方法が無い。
休むと良い……!


イオナ・ガルバローゼ
棺輸巨狼は確か創造伯アレクセイの作品でしたね。
貴方達の前の主人はとても褒められたような方ではありませんでしたが。
主人が亡くなった後も生き延びて、冬将軍に従い最後の土地を守ろうと戦うとは貴方達は大した狼です。

しかし、だからと言って僕達も譲るわけにはいかない。
僕達にも守るべきものがあるのですから。

【熱波の支配者】、【寒冷適応】を使用
【完全視界】で視界を確保
Schneewittchenを使用して地を走る雪崩を呼び寄せ攻撃します

貴方達にとって最後の決戦でも。
僕達にとってここは通過点なんですよ。
この先のもっと先の、強い相手と戦わないといけない。
だから迷って居てはいけない。負けられないんです。


括毘・漸
『どうしたい』かって?
そりゃ、いまの貴方を見ていたら…もしかしたら真の意味で手を取り合えるかもしれないと思いましたよ。
しかし、その時間を周囲の状況は許してくれないでしょう。
ここに住む人々がアルタン・ウルクに飲み込まれるのは阻止しなければなりません。

冬将軍…貴方に人々を守る力がなくなっていくのであれば貴方を討ちこの大地を取り戻します。

ネメシス形態:三首の猟犬となり、棺輸巨狼と相対します。
主を慮るその心持ち、こちらも尊敬しますよ。
…まったくこんな感情が浮かぶ中戦うなんて初めてですよ。

だけど、戦わないといけない。
悔いも後悔も残しません。

銀のサーベルを咥え、両手にナイフを握り異形の三刀流を構える。
咥えたサーベルの間から、唸り声を出し威嚇をしながら【猟犬之斬・惨斬禍】を発動させ、三首で棺輸巨狼達に喰らいつき斬撃を放つ。

冬将軍…貴方には絶対なる極寒でいて欲しいと思うのは我儘かもしれません。
だけど、貴方の極寒を乗り越えなくては人々を守ることも出来ないと思うのですよ。


●忠義の巨狼
 氷の腰掛けに座ったままの冬将軍に見つめられた括毘・漸(影歩む野良犬・g07394)は、わずかに握りしめた拳を震わせる。
「『どうしたい』かって……?」
 冬将軍はただ穏やかに黙って漸の答えを待つ。
「そりゃ、いまの貴方を見ていたら……もしかしたら……」
 真の意味で手を取り合えるかもしれない。甘い期待、小さな希望、しかしアルタン・ウルクは迫りきており、この小さなディヴィジョンはもはや死に体だ。
「ここに住む人々がアルタン・ウルクに飲み込まれるのは阻止しなければなりません」
 ……さすれば、どうする。
 吸血ロマノフ王朝最後のジェネラル級の視線に漸はネメシス形態――三首の猟犬と変化して暁色の眼光を返した。
「貴方に人々を守る力がなくなっていくのであれば貴方を討ちこの大地を取り戻します」
 ヴーッと唸る声が複数聞こえ、冬将軍の座る腰掛けのまわりで伏せていた棺輸巨狼たちがディアボロスと冬将軍の間に割り込んできた。
 漸の眉間に皺が寄る。
「主を慮るその心持ち、こちらも尊敬しますよ」
「冬将軍に従い最後の土地を守ろうと戦うとは、貴方達は大した狼です」
 このトループス級を見て創造伯アレクセイを思い出したイオナ・ガルバローゼ(空染めの一輪・g07485)は、彼と冬将軍の差と棺輸巨狼の忠義に感嘆の息を吐く。
「だからといって、僕達も譲るわけにはいかない」
 棺輸巨狼が冬将軍を守ろうとするように、イオナにも守るべきものがある。
「迷って居てはいけない。……冬野に香れ、歴史を送る葬送の花よ」
 負けられない、とイオナは祈る。
 氷の洞窟にはありえない雪崩が巨狼を飲み込んでいく。氷の棘と雪の重みがトループス級を埋葬せんとするが、雪の破片を撒き散らし、高熱を帯びた巨狼は果敢に飛び出してくる。
「ギャウンッ」
 吠え、イオナに飛びかかる巨狼たち。
 その前に漸が滑り込む。威嚇の唸り声を放つ口に咥えた銀のサーベルと両の手に握りしめたナイフがひらめく。
「斬撃連結―――壱頭・弐顎・参首―――慚愧は戦慄の眼光となり、意志を剣と成せ」
 しろがねの三閃が、飛び込んできた灼熱のクロノヴェーダを斬り捨てる。
 肉塊となって赤をこぼしながら白い氷の床に落ちていく巨狼を横目に、レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)は冬将軍を正眼に捉えた。
「……一年半前、シベリアを離れる私たちに閣下がされた約束『アルタン・ウルクに関わる攻防において出来ることをやり切る』。それを守って頂いた閣下への敬意はございます。ですが、だからこそ。私たちも成すべきことを成す。それを違えることはできません」
 片足を後ろに下げ、スカートの裾をつまんでしゃがむカーテシーでレイラは冬将軍に礼を尽くした。
「一度戦い、二度目は戦わず別れ、同盟相手として過ごし……これが最後です。決着を付けましょう、冬将軍」
「それがディアボロスの結論なのじゃな。ディアボロスとクロノヴェーダは不倶戴天であるのならば、是非も無し。なれば、抵抗せねばなるまい。こちらも黙って頭を垂れるわけにもいかぬでな。なぁ?」
 と冬将軍は己の背後に話しかけた。
 主に肯定を返すかのように、グルルル……と唸りながら棺輸巨狼たちがノシノシと歩いてくる……と思うやいなや、水蒸気爆発の勢いで弾丸のようにレイラに殺到する。
「くっ」
 トループス級の激烈なタックルで空中に跳ね飛ばされつつも、レイラは冷静に氷の天井を蹴って体勢を整えると針を下へと投擲。
「瞬く乾坤、刻む遼遠。閃く轍が晴天を打つ」
 棺輸巨狼に刺さるなり、針が眩く放電し、全身に電流を流された巨狼はギャッと叫ぶ間もなく絶命した。
 残るトループス級に漸が食らいつき、斬りかかる。
「ご存じかもしれませんが、断片の王の元に統一された貴方がたと違い、私たちは一枚岩ではございません。ですが、そんな私たちも一つの譲れない目的があるから共に戦うことができます。
『全土の奪還』。それはこのタイミル半島も例外ではございません」
 巨狼の遺骸を避けて着地したレイラは冬将軍を見上げる。
「儂を倒し、この半島をディアボロスのものとしたいんじゃな」
 頷きを返す冬将軍を眺め、
「はぁ、困ったものだ」
 ガンドラ・ブラッディア(黒矛・g03101)は目を閉じ、ため息を吐く。
 かつてはただ強敵だと捉えていた。だが問答してみてガンドラは思う。
(「その在り方が故に、ロマノフ王朝で、最も倒しづらい、優しい男よ」)
 彼と共闘できればよかった。だがアルタン・ウルクの問題を先送るだけになるとガンドラは、ままならなさに歯噛みする。
「いつかの訣別が、不可避である故に、お前たちを、利用する形に、してしまうのは……侮辱に他ならん」
 敬意を表するが故に、全てを断つ覚悟を決めて、ガンドラは竜呪剣『剣災』・竜開闢を発動させる。
「顕現せよ。我が身、我が竜呪剣。我が声に、呼応せよ。形成りし、数多の剣群、我が呪い、我が力。築かれし、我が罪は今、万物を塵に還す……」
 ガンドラの頭上に無数の巨大な剣が現れるのを見て、銀の斬撃で傷つきながらも、主を守ろうと全力で走ってくる棺輸巨狼に、ガンドラは目を細めた。
「狼達よ。お前達が、付き添っていたから、冬将軍は孤独に、ならずに済んだ。我輩はそれに対し、全力で戦う以外、敬意を表する、方法が無い。休むと良い……!」
 棺輸巨狼たちは天井から豪雨のように降り注ぐ剣群になすすべもなく、声すらあげられぬままに粉砕された。
「……ふむ。もはや儂だけじゃのう」
 冬将軍は顎髭を撫でる。
 ここまでついてきてくれたトループス級たちを労わるように眺めてから、冬将軍はようやく氷の玉座から腰を上げた。
「では、最後の決戦と参ろうか」
 彼の言葉に、イオナはぐっと眉をしかめた。
「貴方達にとって最後の決戦でも。僕達にとってここは通過点なんですよ。この先のもっと先の、強い相手と戦わないといけない」
 と言うイオナを見て、冬将軍は慈しむように笑う。
「ふぉっふぉっふぉ。ならば、儂もお前さんたちにとって白けた通過点にならぬよう、全力で相手になるとしようか。長い付き合いじゃったしのう、出し惜しみは無しじゃ!」
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【パラドクス通信】がLV2になった!
【アイテムポケット】LV2が発生!
【冷気の支配者】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【アヴォイド】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV3になった!
【反撃アップ】がLV2になった!

音羽・華楠
……ここに到っても、色々と考えてしまいますね……。
避難民の女の子に言われた「考え直してもらえませんか」の言葉とか……。

でも、既に腹は括ってます。
冬将軍――あなたの最期を看取るのは、アルタン・ウルクたちじゃなく私たちです!
ここであなたを討つ!!

吹雪に視界を遮られないよう【完全視界】、極寒に対抗する為に【寒冷適応】と【熱波の支配者】は最大限活用します。

冬将軍に向け、私が放つパラドクスはこれ――
一つの改竄世界史の本当の終わりには、『ラグナロク』の名が相応しいでしょう。

――《雷幻想・滅界》!!

万感の思いを、この魔術的陽電子砲に籠めます……!

冬将軍の反撃の吹雪の渦は、地面に伏せて身体を丸め、吹雪を直に浴びる面積を出来る限り減らした上で耐えます。
それだけでも、削られる体力は大きく違うはず……!

【パラドクス通信】で、私が仕掛ける瞬間や方向は他の復讐者の皆さんにも伝えます。
即興で連携が出来るかもしれませんし。
また、些細でも冬将軍の変化、何処かを庇うような仕草なども共有を。
通信時は口元を隠し、読唇対策も。


フルルズン・イスルーン
その意気や良し。
『冬将軍』はボクの本来取り組むべき真の相手でもある。
では、残留効果を駆使して味方を守る陣形を敷いて攻撃だ!
人を寄せ付けぬ地を起こし作り変える。ああゴーレムとはまさに開拓の為の存在なのだ!

起き上がれ。永久が育みし氷河よ。グレイシャー・ゴーレム!

この地に熱を【熱波の支配者】で集め、それでも防ぎえぬ寒さの中を【寒冷適応】を帯びて我らは立つ。
【アイスクラフト】にて猛吹雪を隔てる壁を建て、白雪の覆いを【完全視界】で見通すは『冬将軍』のその姿。
進め、凍土より形作られし氷の戦士よ。盾を構え我らを守りたまえ。そして凍土の剣にて切り拓きたまえ。

開拓。それは大いなる自然に踏み込む御業。
人は従わざるを得ないのだ。この寒さに、この白さに、この重みに。
しかし時として風雪の覆いとなる岩を見出し、時として柵となる木々を打ち立て、時として土を掘りて火を起こし、人の法を広げてゆく。
そして人は克服する。その従属から抜け出すのだ。

ま、だからと言って消し去るものでもないんだけどね。
いつだって挑み続けるものさ。


レイラ・イグラーナ
エトヴァ様(g05705)と共闘します

吸血ロマノフ王朝は滅び、最早この剣に革命の大義はございません。
吸血ロマノフ王朝を寒気で覆い人民を苦しめ、その寒気でアルタン・ウルクより守護した貴方には思うところはございますが、敬意もございます。
ならば私は……ただ、最終人類史の人民を守るために。この剣を振るいましょう。

針状の細剣「惨禍鬼哭血革針」を抜き、戦闘を行います。
果敢に踏み込み冬将軍へと接近、【天上奉仕・白銀】で攻撃を行います。
エトヴァ様とは同時に攻撃を行い、敵の防御や耐久を越えて大きな打撃を与えることを狙います。
反撃の寒波を受けても防弾、防刃コートChat Noirで体を保護し、至近距離から退かず、こちらの次の一撃を叩き込みやすい位置取りを。
エトヴァ様がSPDで攻撃を受ける場合ディフェンスに入り、パラドクスで吹雪とその奥の冬将軍を切り裂きましょう。

吸血ロマノフ王朝最後の守護者、冬将軍。お覚悟を。

戴冠の戦でもアルタン・ウルクは確実に襲い来るでしょう。
この地を……そして最終人類史を守ってみせます。


括毘・漸
出し惜しみは無し?
そりゃあ、こっちもですよ!
正真正銘ロマノフ王朝の最後の決戦です!
冬将軍…貴方の極寒を耐え抜き、乗り越えて初めてこの大地を奪還したと言えるのです。
貴方を倒し、寒さで閉ざされた長い冬を終わらせます!

ネメシス形態:三首の猟犬の姿のまま冬将軍との戦いに臨みます。
冬将軍の極寒は、【寒冷適応】も貫いてくるので、【熱波の支配者】も発動し周囲の気温を上げます。
それでも足りなきゃ後は根性です!

寒さに負けていては、猟犬の名が廃りますからなぁ…寒さと飢えに耐え、絶好の機会を掴み取るのが猟犬です。

寒波に耐えるために、全身に橙色の炎を纏わせ、身体を巡る血に熱を持たせ雪と氷が舞う中を駆け抜ける。

凍てつかせるものか、未来へと進む歩みを!

自分を見失わぬように咆哮を轟かせ、手に握る銀のサーベルに背中の血と炎の猟犬の首を纏わせて【夕暮落とし】を発動させて、炎の斬撃を振り落とし、纏わせた熱と炎で寒波ごと冬将軍を灼き斬る。


さらばです、冬将軍。
厳しき極寒を与え、優しき冬で大地を包みこんだ貴方の事は忘れません。


ルィツァーリ・ペルーンスィン
アレンジ連携歓迎

心情
出し惜しみはなし、か
当然!
此方も己の全力を以て貴方を打ち倒すさ!
其れを以って貴方へ送る手向けとしよう!

〇熱波の支配者を用い寒さを和らげ〇寒冷適応で少しでも寒さに耐えられる様に準備
其の上で〇結界術で身を護り極光の壁による磁気を凌ぎつつ判断力が鈍っても間違えようがない位に単純明快な動きで〇ペルーン神の焔矢による一撃をぶちかます!
只ひたすらに己の全力の一撃を放ち続けるのみ!

本当に厄介な通過点だな
だが、だからこそ超え甲斐がある!
挑ませて貰うぜ冬将軍!
そして、誓おう!
俺達は貴方を倒し、立ち塞がる他のクロノヴェーダ達も倒し……俺達の未来を取り戻すと!

……っ、こいつは強烈だな
だが、機動力と判断力を鈍らせるなら……判断力が鈍った状態でも間違えようがない位に単純に小手先抜きで戦えば良いだけの話!
我が神の焔矢、己の全てを出し切った全身全霊の一撃を御身に放とう!

俺の一撃では貴方を討ち取る迄には至らないかもしれない
だが長い付き合いの貴方なら知ってるだろう?
俺達の強さは個の強さじゃないってな!


ガンドラ・ブラッディア
以前同様に、苛烈な極寒。
まさしく冬の、全てが凍て付く、自然の脅威だ。
だが、以前の戦いより、皆強くなった。
冬将軍。お前という、冬を越えて、我輩らは、春へ歩もう。
いざ……!

【熱波の支配者】での、気温上げと、【寒冷適応】での、環境耐性を加え、【完全視界】にて、洞窟内の構造確認と、吹雪で視界が、遮られないように、臨むとしよう。

先程の戦いで、精製をした、二十五振りの、竜呪剣。
それらを融け合わせ、最強の一振りに、精製する。
即ち竜呪剣『剣災』・竜之償。
収束せよ。我が身、我が竜呪剣。我が罪は今、此処に注がれる……!
自前の【能力値アップ】と、他に存在する、数多の残留効果を重ね、渾身の斬撃で、一気呵成に、攻め往かん!

苛烈な吹雪を、受けようとも、一点に集中して、【ガードアップ】【反撃アップ】【アヴォイド】を補助に、少しでも耐え、竜之償を以て、道を斬り拓く!

ここだ……。畳みかける。
竜呪剣『剣災』・竜之償。呪詛と魔力、その全てを――豪速の剣矢に。
我が全力の、投擲を以て、冬の嵐を晴らす!全ては世の、平和が為……!!


エトヴァ・ヒンメルグリッツァ
レイラさん(g07156)をディフェンスし共闘
防寒着を纏い、熱波の支配者、寒冷適応、完全視界を展開

初めてロマノフに踏み入れた時、極寒が肌身に沁みた
寒冷化を司る貴方を、初めてみたときも孤高であったな
先の密約の折、寒気を緩めたことにも、礼を……多くの民が餓えず、凍えずに済んだ
強すぎる力を御するに相応しい御仁だよ、貴方は

……これで最後だ

PD通信を用い連携
冬将軍の動きを観察し、レイラさんと息を合わせ仕掛けよう
レイラさんと角度をつけて冬将軍を挟撃の形に
両手の銃でPD攻撃
相手の動きを縫い留めるよう弾丸を連射し、踏み込むレイラさんを援護
彼女と攻撃を重ねるように、本命の一撃を撃ち込もう
ダメージアップで研ぎ、炎を帯びる渾身の一撃を
相手の攻撃には魔力障壁と防弾コートで低温を軽減して身を守り
打ち破るよう銃弾を放つ

俺達は最終人類史の守護者として在る
戴冠の戦でも、その先に襲い来る未知なる脅威からも、俺達がこの大地を守る
傲慢だろうかな
安心して託せ

貴方には笑われるかもしれないが
この極寒の大地に、春の訪れを、みたいんだ


イオナ・ガルバローゼ
オーロラの幻惑に前回は届かなかった
でも今回、この洞窟の中で判断が求められる要素は多くなく
一度貴方を討つと決めた決断は揺るがない

今度こそ極光の壁も破ってみせます
貴方が強くても、僕一人では及ばなくても、今回は同じ決意を抱いた仲間が一緒にいます


【寒冷適応】、そして【熱波の支配者】で少しでも冷気を和らげ
【完全視界】で洞窟内の地形をしっかり把握する

可能であればその時タイミングを合わせられる仲間と連携を取りつつ戦います

【ガードアップ】でオーロラの幻惑を中和しつつ【反撃アップ】で仕掛け
【命中アップ】で光の屈折を読み【ダメージアップ】を載せた【絶滅の火】を叩き込みます
貴方が冷気で熱を殺すのなら加減など不要
僕は判断も機動力も無くただ全力全開の熱の解放に貴方を巻き込むだけです!

ディヴィジョンでも史実でも貴方はこの国、この大地を守って来た。
でも、何時かこの地に住む人はそれを越えて行かなくてはいけない。
貴方の手を借りなくても自分の守りたい物を守れるように
凍てつく大地に根を張り、冬を越え、春を迎えるように


伏見・逸
(連携アドリブ歓迎)(味方は苗字呼び)
必要に応じ、味方をディフェンス

(冬将軍とは以前に交戦経験有)
久し振りだな。てめえが覚えてるかは知らねえが
今ならてめえに届くのか、それを確かめに来た
…全力を、見せてやるとも。今度こそ見物料に、てめえの命を貰う

相手に張り付いて近接戦闘
味方と連携し、味方の死角を減らす立ち位置を意識
必要があれば、【エアライド】を使用しつつ自分の身を味方の足場として使わせ、動きを立体的かつ複雑に、読みにくくする
攻撃時は【エアライド】も利用し動き回りながら相手を観察、隙を見極めて【禍竜の雷霆】使用
攻撃から相手への組み付きに繋げ、そこを味方に攻撃して貰う

最優先目標は「相手の動きを止め、味方の攻撃に繋げる」

…見た事のある光だ。だが、今の俺は、呑まれて楽になりてえなんて、夢は見ねえよ

相手の攻撃で思考が鈍るのは、「目標を絞り、研ぎ澄ます」事で抵抗
動きが鈍るなら、相手に長ドスを突き刺したり尻尾を巻きつけて、そのまま重石になってやる

自分の負傷は気にせず、動ける限りは攻撃と妨害の手を緩めない


●冬が終わり、やがて春が来る
 立ち上がった冬将軍を見やり、音羽・華楠(赫雷の荼枳尼天女・g02883)は密かに顔を曇らせる。
(「そんな……。どうにか思い直してもらえませんか……!」)
 集落で華楠自らおでんをふるまった避難民の少女に懇願された声が、華楠の頭の片隅にこびりついて離れないのだ。避難民たちは冬将軍を慕っていた。冬将軍も彼らを守っていた。
「でも」
 ここで討つ――それ以外に華楠に選択肢はない。
「冬将軍――あなたの最期を看取るのは、アルタン・ウルクたちじゃなく私たちです!」
 吸血ロマノフ王朝の最後のジェネラル級クロノヴェーダへと、腹をくくった華楠は詠唱する。
「大雷神、火雷神、黒雷神、析雷神、若雷神、土雷神、鳴雷神、伏雷神――術式、反転……!!」
 妖精たちの補助で雷術を反転、膨大な電子を反物質に変え、陽電子砲として万感の思いを込めて放つ。
「雷幻想・滅界!!!」
 そのパラドクスの名は『ファンタズム・ラグナロク』。北の終わりにはふさわしい名前だ。
 冬将軍の杖から怒涛の吹雪が陽電子砲のまばゆい光めがけて押し寄せる。
 弱められていく光、蒸発していく吹雪、押しあう中で吹雪もパラドクスも互いに届いた。
「ううっ」
 吹雪から少しでも身を守ろうと氷の床に丸まる華楠の上に厚く雪が積もる。重みと刺すような冷たさに、不随意にガチガチと華楠の歯が鳴った。
「凍てついたる 氷河の 闘争――起き上がれ。永久が育みし氷河よ。グレイシャー・ゴーレム!」
 間髪を入れずフルルズン・イスルーン(ザ・ゴーレムクラフター・g00240)がゴーレムを立ち上げた。
「『冬将軍』はボクの本来取り組むべき真の相手でもある。進め、凍土より形作られし氷の戦士よ。盾を構え我らを守りたまえ。そして凍土の剣にて切り拓きたまえ」
 冬、厳しい自然、それらに打ち勝つのが人類による開拓だ。人の法を広げてゆくためにゴーレムはある。大いなる自然に踏み込む御業を操って、フルルズンはゴーレムを冬将軍に襲いかからせた。
 永久凍土の鎧と氷の盾で身を守りつつ、ゴーレムは氷の刃で冬将軍へと斬りかかる。
「ふぉっふぉっふぉ」
 冬将軍は軽くゴーレムの剣戟を受け流し、凍土の芸術品を絶対零度結界で更に凍らせ砕いた。
「あれ。まぁいいさ。ボクはいつだって冬に挑み続けるさ」
 フルルズンは諦めることなく再びゴーレムを創り出す。
「貴方が冷気で熱を殺すのなら加減など不要」
 イオナ・ガルバローゼ(空染めの一輪・g07485)は冬将軍を睨めつける。
「僕は判断も機動力も無くただ全力全開の熱の解放に貴方を巻き込むだけです! 心臓は火、血は岩漿、咲き狂え紅焔!」
 イオナの全身から鮮血が吹き出した。
「おお」
 冬将軍が目を見張るそれは、もうもうと湯気をあげている。
 炎と化したイオナから溢れ出す熱波が冬将軍すら融かそうと襲いかかる。
 とたん、冬将軍から美しい光のカーテンが広がった。きらきらとゆらめくオーロラにイオナは惑い、対象を見失いかける。
 ――ああ、綺麗……なぜ僕はこんな場所に? こんな寒い所からはやく帰ってストーブを焚いた家であたたかいスープを……。
 脳裏をよぎる、あまい妄想をイオナは唇を噛んで振りほどいた。
「いいえ! 今度こそ極光の壁も破ってみせます。一度貴方を討つと決めた決断は揺るがない」
 対象が分からなければ巻き込めるくらい範囲を広げるだけのこと。
 ぐらぐらする視界の中、イオナは絶滅の火を燃え盛らせ続ける。
(「貴方の手を借りなくても自分の守りたい物を守れるように……凍てつく大地に根を張り、冬を越え、春を迎えるように……」)
 イオナの信念は遂に冬将軍に届き、冬将軍の手が焼けただれる。
「ほぉ、これが熱か……」
 面白そうに冬将軍は呟いた。
 冬将軍がひろげたオーロラを見上げ、伏見・逸(禍竜の生き先・g00248)は呟く。
「見た事のある光だ」
 以前もこの光を見た。呑まれて楽になりたいと惑ったこともある。
「だが、もうそんな夢は見ねぇよ」
 トループス級の骸を踏んで逸は駆ける。
 だんっ、ダンッ、と骸や洞窟の氷の突起、フルルズンがアイスクラフトで作った氷のブロック壁すら利用して跳ね、まるで八艘飛びのごとく縦横無尽に駆けた逸は、冬将軍に遂に肉薄した。
「久し振りだな。てめえが覚えてるかは知らねえが」
 逸のドラゴニアンの翼が広がる。冬将軍の好々爺めいた笑顔めがけて逸は足を振り下ろした。
「今度こそ見物料に、てめえの命を貰う。砕けて裂けて、塵にでもなれ」
 逸の足は冬将軍の顔面を踏み潰す――と思いきや、すんでのところで杖で払われ、眼前に広がったオーロラのきらめきをまともに見てしまった逸の脳がかき乱される。
「くぁっ」
 ゆらめきブレる視界に抗いながら、墜落しつつも体勢を戻して冬将軍の胴にどうにか蹴りを入れた逸は、着地後に執念深く冬将軍の足に己の尻尾を巻き付けた。気休めでもジェネラル級の動きを少しでも鈍らせられたなら御の字だ。
「繋げ!」
 逸の言葉にルィツァーリ・ペルーンスィン(騎士道少年・g00996)が応えた。
「本当に厄介な通過点だな!」
 苦戦する仲間を見ていたルィツァーリは、しかし不敵に笑っている。
「だが、だからこそ超え甲斐がある!」
 黄金色の髪と瞳、そして羽を持つ少年の背後に顕現するは巨大な砲筒。
「空駆けし天空の神よ、偉大なる雷神よ! 我が敵を討つ為に御身の焔矢を降らせたまえ!」
 火の矢を思わせる弾が砲筒から飛び出し、冬将軍へと迫る。
「挑ませて貰うぜ冬将ぐ……っ!?」
 ルィツァーリの周囲に赤や緑にゆらめく光の膜が広がった。強烈な磁気がルィツァーリの頭に激痛をもたらしてくる。
 ぐらぐらする頭を手で押さえながらルィツァーリは思わず呟いた。――こいつは、強烈だな。
 だが全身全霊の一撃はすでに放ったあとだ。誘導弾はオーロラなど気にもとめず、標的めがけて飛翔する。
 だからルィツァーリは自信を持って叫ぶ。
「誓おう! 俺達は貴方を倒し、立ち塞がる他のクロノヴェーダ達も倒し……俺達の未来を取り戻すと!」
 彼の叫びが冬将軍の耳に届くと同時に、雷神ペルーンの焔矢を称する砲弾が冬将軍の肩口に突き刺さった。
 クロノヴェーダの首元で爆ぜる炎。しかし極寒のなか、温度が下がって火勢はあっというまに鎮まっていく。
「貴方へ送る手向けとはならなかったか。だが長い付き合いの貴方なら知ってるだろう? 俺達の強さは個の強さじゃないってな!」
 ルィツァーリが言う通り、エトヴァ・ヒンメルグリッツァ(韜晦のヘレーティカ・g05705)が前に出た。
「初めてロマノフに踏み入れた時、極寒が肌身に沁みた。寒冷化を司る貴方を、初めてみたときも孤高であったな。先の密約の折、寒気を緩めたことにも、礼を……。多くの民が餓えず、凍えずに済んだ。強すぎる力を御するに相応しい御仁だよ、貴方は」
 エトヴァの言葉に、肩の炎を手で払いながら冬将軍は微笑む。
「ふぉっふぉっふぉ。ここで見苦しい戦いをしては、死んでいった者達に、申し訳が立たぬのよ」
「吸血ロマノフ王朝は滅び、最早この剣に革命の大義はございません」
 エトヴァの横でレイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)も言う。
「吸血ロマノフ王朝を寒気で覆い人民を苦しめ、その寒気でアルタン・ウルクより守護した貴方には思うところはございますが、敬意もございます。ならば私は……ただ、最終人類史の人民を守るために。この剣を振るいましょう」
「それがディアボロスの使命であれば、致し方あるまいて」
 という冬将軍の言葉を聞きながら、ずらりとレイラが抜き放つは、細身の剣こと惨禍鬼哭血革針。針にしか見えないその剣をレイラは成すべきことを成すべく振るう。
「エトヴァ様!」
 レイラの呼びかけにエトヴァも応え、両手に銃つまりΝέμεσις―α、そしてΝέμεσις―βを構える。
「レイラさん!」
 エトヴァが膨大な魔力を注ぐ銃口から青い炎が噴出、
「……これで最後だ」
 連射される復讐の華が超低温の結界を破って冬将軍へと迫る。
 レイラも弾丸に並走して冬将軍に迫る。どっと吹き付ける冬の嵐にコートで抗いながら惨禍鬼哭血革針を捨て身で振り上げる。
「お覚悟を!」
 しかし、冬将軍の操る猛烈な吹雪はレイラの剣先を鈍らせ、超低温の結界は高温の青い炎の温度を下げた。
 レイラとエトヴァの波状攻撃をもってしても、冬将軍をひどく傷つけつつも致命傷には至らない。
「ふぉっふぉっふぉ、この程度で終わっていては、吸血ロマノフ王朝の名折れよのう!」
 冬将軍はそう言うなり氷の杖を掲げ、洞窟中をロマノフ王朝全土を凍りつかせた嵐で満たす。
 びょうびょうと吹きすさぶ風雪、ぐんぐんと下がる気温、トループス級の骸が尽く凍りつき、砕け、洞窟が詰まる雪や氷で狭まっていく。
 完全視界の効果で視界は良好で、寒冷適応のおかげで寒さはディアボロスの動きを妨げないが、それでも冬将軍の能力は凄まじい威力でディアボロスの体力を削っていく。
 もはや早晩終わるとわかっているディヴィジョンの、たったひとりで残ったジェネラル級。ならば、きっと彼の心は折れているはずなのに、それでも冬将軍は笑い、立ち、凍てつく世界を創造する。
「以前同様に苛烈な極寒」
 猛烈な吹雪を身を持って受け止めながらガンドラ・ブラッディア(黒矛・g03101)は頷いた。
「まさしく冬の、全てが凍て付く、自然の脅威だ」
 冬将軍の力は衰えていない、と前にも彼と対峙したガンドラは確信する。
「収束せよ。我が身、我が竜呪剣。我が声に、呼応せよ。形成りし、数多の剣群、我が呪い、我が力。築かれし、我が罪は今、此処に注がれる……」
 ガンドラの詠唱とともに彼女が頭上に浮かばせていた二十五振りの竜呪剣がひとつに融合されていく。出来上がるは巨大な巨大な呪詛の魔力光剣『竜呪剣『剣災』・竜之償』。
「いざ……! 一気呵成に、攻め往かん!」
 苛烈に吹き付ける吹雪を魔力光剣で防ぎながら、ガンドラは機を待った。
 風の道行き、雪のひらめき、その間隙を見切り。
「ここだ……!」
 魔力光剣をぶんなげるガンドラ。
「我が全力の、投擲を以て、冬の嵐を晴らす! 全ては世の、平和が為……!!」
 剣は豪速の矢となって吹雪を振り払い、冬将軍の胸に突き刺さった。
 目が潰れそうな激しい光を放って『竜呪剣『剣災』・竜之償』が炸裂し、冬将軍の肉と血が弾ける。
「う、ぐ。見事、じゃ」
 ごほと血塊を吐き、冬将軍は目を細める。
 だがまだ、まだ彼を止めるには届かない。
 どぼどぼと血を流しながらも、なおよろめくことなく立つ冬将軍の前に三首の猟犬が立ちはだかる。寒さと飢えに耐え、絶好の機会を掴み取るのが猟犬の本領。今こそ、彼の刃が唸る時。
「そりゃあ、こっちも出し惜しみは無しですよ!」
 正真正銘の吸血ロマノフ王朝最後の決戦に、ネメシス形態で挑み続ける括毘・漸(影歩む野良犬・g07394)は吠える。
「冬将軍……貴方の極寒を耐え抜き、乗り越えて初めてこの大地を奪還したと言えるのです。貴方を倒し、寒さで閉ざされた長い冬を終わらせます!」
 全身に橙色をした衝動の熾火をまとい、全身に熱い血潮を巡らせて、漸は氷の床を犬の爪で蹴った。
 ――吹き荒れる吹雪、何するものぞ!
 冬将軍に使おうとしている『夕暮落とし』は、武器を硬いものにこすりつけ、摩擦熱を帯びさせるパラドクスだ。だが今、漸の周囲には氷壁しかなく、こすりつけたところで氷が溶けるばかり……武器に熱を帯びさせる環境にない。
 だが今の漸にはある、己が背負う血と炎の猟犬の首が。
 走る中、漸は握った血払いのサーベルへ猟犬の首をまとわせる。
 ――凍てつかせるものか、未来へと進む歩みを!
 咆哮をあげながら、漸は冬将軍に飛びかかった。
 ――時は過ぎ去り、日は落ちる。
 一閃。落陽色のあぎとが、冬将軍の首を掻き斬った。
「さらばです、冬将軍」
 その一撃が、吸血ロマノフ王朝の黄昏であった。
 どうっとクロノヴェーダが氷の床に倒れるなり、世界を満たしていた吹雪が止んだ。
「厳しき極寒を与え、優しき冬で大地を包みこんだ貴方の事は忘れません」
 だくだくと冬将軍からあふれていく赤に足を濡らしながらも漸は敬意をもって言葉を贈る。
「うむ……ここらが、潮時、じゃろうなぁ」
 ごほごほと血の混じる咳をしながら、冬将軍はゆるりと腕を天に伸ばす。
「吸血ロマノフ王朝が破れた今、儂は……この戦いの最後の勝者が、もはや誰になっても構わぬ。じゃが……」
 冬将軍は眦を厳しくした。
「じゃが、アルタン・ウルクだけには勝たせてはならん。このジジィの勘がそういっておるのじゃ」
 エトヴァとレイラが冬将軍の元へと進み出る。
「ええ、戴冠の戦でもアルタン・ウルクは確実に襲い来るでしょう。この地を……そして最終人類史を守ってみせます」
 と胸に手を当てたレイラは、冬将軍に見えるように頷いた。
「誰かがアルタン・ウルクを止めねば……この地球全てがアルタン・ウルクに融合されてしまうじゃろう」
「俺達は最終人類史の守護者として在る。戴冠の戦でも、その先に襲い来る未知なる脅威からも、俺達がこの大地を守る」
 エトヴァは思わず冬将軍が天に伸ばした手を取り、握りしめた。あんなに極寒をもたらすというのに随分と温かい手だ、とエトヴァはまるで他人事のように感じる。その温かみもどんどん失われていっている最中なのだが。
「安心して託せ。この極寒の大地に、春の訪れを、みたいんだ」
 エトヴァの言葉に、
「ふふ、若造がよう言うわぃ……」
 冬将軍は微笑むと、疲れたように目を閉じた。それっきりだった。

「冬将軍。お前という、冬を越えて、我輩らは、春へ歩もう」
 ガンドラが洞窟の外へと踏み出すのをきっかけに、他のディアボロスたちも彼女に続く。
 最終人類史のツンドラには春があり、緑が芽吹く。
 タイミル半島にやがて春が来る。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【活性治癒】LV1が発生!
【アイスクラフト】LV1が発生!
【水面走行】LV1が発生!
【熱波の支配者】がLV4になった!
【動物の友】LV1が発生!
【アイテムポケット】がLV3になった!
【パラドクス通信】がLV3になった!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!
【ダブル】LV1が発生!
【命中アップ】がLV4になった!
【反撃アップ】がLV3になった!
【能力値アップ】LV2が発生!

最終結果:成功

完成日2024年12月08日
宿敵 『冬将軍』を撃破!