リプレイ
黄泉王・唯妃
連携アドリブ歓迎
情報収集のためとはいえ、一般の方を襲うだなんて。
ええ、ええ。心苦しいですがこれも未来への勝利の為ですものね(微笑)
先ずは手足と頭を隠せる外套を用意しましょうか。
それを着込んで行商人の親子へと近づいていきましょう。
「こんにちは。大きな荷物ですけど、これからシュリーナガルへ?」
と同じようにシュリーナガルへ向かう人間を装います。
人間は共通目的が持つ者がいるとその態度は軟化します。その隙をついて巨大な蜘蛛の脚に変化させた右腕でお子さんを吊り上げてしまうとしましょう。
こういう時、インセクティアみたいなタイプはわかりやすく相手に恐怖心を植え付けやすくていいですね。
「ちょうど喉が渇いていたんですよ。この子の血はどんな味がするんですかねぇ」
別に表情を作る必要もありません。
いつも通り、微笑を浮かべたまま淡々と母親に向けて言い放ちますよ。
「どうなるかって? それは貴女達親子のこれからの行動次第じゃないですかねぇ」
蛇亀宇宙リグ・ヴェーダの林に停車したパラドクストレイン。
その扉が開けば、溢れかえる花の香りは黄泉王・唯妃(アトラク=ナクアの娘・g01618)の鼻腔をくすぐった。
この世界の風景は今まで渡ってきたディヴィジョンのどこよりも美しく、誰もが思い描く天国のよう。
こんな天国の監獄の中で人々は知らず知らずに飼い慣らされている。
彼らにとってはこの世界は、幸せの国なのだろう。
だがディアボロスは、そのまやかしの幸せを壊してまでも取り戻さねばならないものがある。
とはいえ。
今までディアボロスは人々に危害を加えるような作戦を取ることはなかった。故に、この作戦に抵抗感を抱く自分が確かにいる。
「……情報収集のためとはいえ、一般の方を襲うだなんて……」
呟いてため息をついた唯妃は、自分の胸にとんと手のひらを置いた。
「……ええ、ええ。心苦しいですがこれも未来への勝利の為ですものね」
そう自分に言い聞かせた唯妃は、インセクティア独特の手足と頭を隠せるほどの大きな外套をはためかせながら、この世界の土を踏み締めた。
ふと顔を上げれば。目前に窺えるは風光明媚な豊穣都市『シュリーナガル』。そして澄んだ蒼穹に浮かぶのは都市を見守るかの如くの天空寺院。
だが今は、あの都にもあの穹にも、この刃を突きつけるにはまだ情報が足りないのである。
「さて、ターゲットはどちらでしょう」
唯妃がキョロキョロと辺りを見回せば。目の前の街道を今、母と娘の行商人が手を繋いで歩いていくのが目に留まった。
唯妃は該当のフードを深く被りながら足早に林を抜けると、
「こんにちは。大きな荷物ですけど、これからシュリーナガルへ?」
と至極親しみのある明るく穏やかな声で、二人に話しかけた。
親子は一瞬、外套に身を包んだ人物を訝しみはしたものの、それが女性であるとわかるとすぐに表情を柔らかくさせる。
「シュリーナガルに行商に行くのさ。あんたは?」
「私も用があって、シュリーナガルへ向かっているんです」
人間は共通目的を持つものがいると、態度を軟化させる性質を持つ。
それが同性であれば、尚更だ。
母親はにこやかな微笑みを唯妃に向け、その様子を黙って見ていた娘も唯妃を怖がる様子を見せなかった。
だから尚更、その安堵が裏切られた時の絶望は大きいことを、唯妃は知っていた。
「――でも、いま、気が変わりました」
外套を脱ぎ払って姿を露わにした唯妃の手足は、巨大な蜘蛛そのもので。突如として現れた化け物に親子はヒッと息を呑んだが、彼女たちが逃げようと踵を返すのが早いか否か。
唯妃は右手で娘の右足を掻っ攫うと、高々と彼女を吊り上げた。
籠からたくさんの果物が街道に転がり落ち、
「いやぁぁぁ! お母さんっ!!」
「アーリアっ!」
親子の甲高い叫び声が世界いっぱいに広がる。
こういう時、異形のディアボロス――特に自分のようなインテクティアはわかりやすく相手に恐怖心を与えられる。
もし仮に。自分が人間や天使、エルフやヒルコなどの見た目であれば、こうは簡単には行かなかっただろう。
唯妃ははっきりとした真紅の双眸を妖艶に細めながらごくりと生唾を飲み込んで、『飢えている』というアピールをしてみせる。
「ちょうど喉が渇いていたんですよ。この子の血はどんな味がするんですかねぇ」
いつも仲間たちに見せている微笑みを浮かべながら、涙をポロポロ零して怯える娘に目線を送った。
すると娘はひっと息を呑むや否や。
「いやぁぁぁぁ! お母さん、お母さん!!」
さらに叫び声を上げながら、蜘蛛の糸から逃れようと踠く蝶のように体を捩らせたり手足をバタバタと動かしたり必死の抵抗を試みる。
だがしかし踠けば踠くほど蜘蛛の糸が絡まるかの如く。
野生動物であるならばこの時点で母親は安全圏まで逃げうせ、我が子の最期を静かに見届けるのであろう。
しかし人間は、特に母親という存在は強い。
母親は震えながら、目の前の異形の娘と交渉を始めたのだ。
「……頼むから娘を離しておくれ。代わりにわたしを殺しても構わないから。どうしたら娘を離してくれるんだい……?」
懇願しながら近づいてくる母親。唯妃はそれを左手を突き出して静止させる。
「どうしたらって? それは貴女達親子のこれからの行動次第じゃないですかねぇ」
さぁ。
もっと、怖がれ。
怯えろ。
泣き叫べ。
神様、助けてくださいって。
唯妃が望んでいたその言葉はこの穹いっぱいに響かせたのは、この右手で吊り上げている号泣していた娘だった。
「うわあぁぁん。神様ぁー! 助けてぇー!! 神様ぁーっ」
その叫び声が世界の空気を一変させた。
ふとシュリーナガルの空を見上げれば、都市を見守るように浮かんでいるあの天空寺院から飛び出してきたあの黒い点は、警備のアーティディアだろう。
やつらがここに辿り着くまでに、豊穣都市シュリーナガルの情報を聞き出さねばならない。
唯妃は号泣する娘を吊り上げたまま、次なる行動に移るのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【怪力無双】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
黄泉王・唯妃
アドリブ連携歓迎
はてさて、思いの外うまくいきましたが何を聞き出しましょうか。
母親の方は何度かシュリーナガルに来ているみたいな口ぶりでしたので、『シュリーナガルから天空寺院に出入りしている一般人がいるようだが何のためなのか』を聞いてみましょうか。
正直行商に訪れただけの親子が詳しい内情を知っているとは思えませんが、天空寺院で『ナニ』かを行うための人材を広く触れ回っていればそれでよし、もし何もなかったとしても『何かしら厳選した上で招いている』事が分かるはずです。
なるべく時間はかけたくないので母親が言葉を濁すようでしたら少し苛立った振りでもしてみましょうか。
情報を聞き出した後は親子に【現の夢】を使って急いでその場から離れます。この後の戦闘に巻き込んでも後味が悪いですし、誰かに話されても面倒です。夢だと思い込めば少しはマシになるでしょう。
「話すことが無ければ別にいいですよ。こちらは正直、どっちでもいいんですからね」とにこりと嗤う。
若い緑が揺れ、花が咲き乱れるシュリーナガル近郊の街道では。
まさに今、この世の地獄を味わう行商の親子が、天空寺院から出動したアーディティヤの到着を待っていた。
けたたましいサイレンのようにわんわんと泣く娘。
その娘を逆さ吊りにしながら必死に手を伸ばす母親に向けて異形の腕を伸ばして制止させるインセクティアの娘、黄泉王・唯妃(アトラク=ナクアの娘・g01618)は、どこまでも澄んだ青空からこちらへ近づいてくるクロノヴェーダの群れを目深に被ったフードの奥の深紅の双眸で見据えた。
(「はてさて、思いの外うまくいきましたが何を聞き出しましょうか……」)
まさか自分一人で行商の親子と対峙し、これほどあっさりアーディティヤを呼び出せるとは。
その考察は後でいい。
今はあの偽りの神が来る前に、この親子からシュリーナガルの天空寺院についての情報を入手しなければならない。
フードの奥のふたつの真紅をぎらりと輝かせて唯妃は、怯える母親に問うた。
「あなた。何度かシュリーナガルに来ている口ぶりでしたよね? シュリーナガルから天空寺院に出入りしている一般人がいるようですが、何のためかご存知ですか?」
正直言えば、行商で訪れただけの親子が詳しい内情を知っているとは思えない。
だが、シュリーナガルに度々訪れているのだとしたら、その事実を市民から聴いたり、一般人が迎え入れられている現場を目撃したりもしているだろう。
その上で、『何かしら厳選した上で一般人を招いている』ことがわかれば御の字だ
「……さぁ、教えてください」
この異形の姿と、フードの暗がりから覗く不気味な二つの紅。
その上で、耳もとでえんえんと泣きじゃくる娘のことなど気にも留めない至極丁寧ながらどすの
利いた声は、母親をさらに怯えさせた。
「……て、天空寺院に招かれる人っていうのは、さ、参拝を許されたか、仕事で呼ばれるかだよ……!」
震える声でようやく語り始めた母親。
「……仕事、とは?」
唯妃が問うと、顔を歪ませながら母親が答える。
「……う、腕のいい薬師や、職人だよ……。天空寺院でも仕事があるんじゃないのかい……?」
母親の肩越しの空では。
アーディティヤの群れが徐々に大きく見えてき始めた。
そろそろ潮時だろうか。
「……その選定方法は、ご存知ですか?」
「さ、参拝を許されることや仕事で呼ばれるのは誉だが、ど、どうやって選ばれるのかなんて、行商の私たちが知るはずないじゃないか……!」
「……そうですよねぇ。ありがとうございました」
母親が答えるや否や唯妃は、母親に突き出していた腕で被っていたフードを払い顔をあらわにすると、先ほどまでの無表情を一変。長い黒髪を靡かせながら微笑んで見せると、宙吊りにしていた娘をそっと母親の前に差し出した。
咄嗟に母親が両手を差し出せば、娘が母親の腕に収まるように優しくそおっと手を緩めて解放してやる。
「怖い思いをさせてごめんなさいね」
そして響かせるのは【現の夢】による淡く緩やかな子守唄。
この親子をこの後の戦闘に巻き込むわけにもいかないし、この出来事を誰かに話されても面倒だ。
だったらせめて、この出来事は夢であったと思い込んでくれれば、彼女たちの心の傷にもなりはしないだろう。
現に、どこからともなく流れてくる歌声を聴いた親子は、その場にへたり込んでぼんやりとし始めた。
「先ほどまでの出来事は全て夢ですからね……」
そう告げるや唯妃は、シュリーナガルへと続く街道を駆け始めた。
見据え迎え撃つは、自身が誘き出しに成功したアーディティヤだ。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【現の夢】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
大澄・蓮
おぉ、上手く釣れたみたいだね
カーリー以外のアーディティヤを見たのははじめてかも
俺は、唯妃さんが情報聞き出す時間を稼ごう
天空寺院から直接降りてきたんだ…
ってことは、少なくとも今回のトループス「キンナリー」には
飛行能力があるってことだね
…っていうか、此処は擬似ディヴィジョンなんだっけ?
アーディティヤに都合いいように更に世界を改悪されてたら厄介だなぁ
ともかく、今はキンナリーの相手をしなくちゃ
エターナルスリープで攻撃ソードハープを奏でながら
飛んでる敵に眠気を誘う歌を歌うよ
眠ったら、ワンチャン落ちてこないかな?
見た目可愛い鳥なんだけど
…前言撤回、間近で見ると思ったより大きいか
うん、迫力あるな
奇しくも歌対決?
歌と踊りで氷と炎の渦おこすってどんな仕組みなんだよ
まいったなぁ
流石に一般人の子達巻き込んだら不味いから
逃げ回る振りで、追ってくる氷と炎の渦を自分に引きつけよう
【ドレイン】効果で少しでもダメージ軽減できるといいな
アドリブ・連携◎
いまいち緊張感に欠ける現代人の三蔵法師
のんびり口調で感情の起伏は少なめ
●
唯妃が行商の親子と対峙する中。
パラドクストレインから下車した大澄・蓮(諸行無常・g09335)は、林を抜けて街道へと出るや、シュリーナガルの空を仰ぎ見た。
都市の上には絢爛豪華な天空寺院が浮いていて、そこから飛び立ったのであろうアーディティヤがこちらへと向かってくるのが窺えた。
半人半鳥のアーディティヤは、おそらく初めて見る個体だろう。
「おぉ、上手く釣れたみたいだね」
単体側を窺えば、大きな荷物を背おう女性と、その肩越しに唯妃。そして唯妃に吊り上げられてわんわん泣いている女の子が見てとれた。
まだ情報は聞き出せていないように見える。
「時間稼ぎは任せて」
多分自分の存在には気づいていない仲間の健闘を祈りサムズアップをしてみせた蓮は、シュリーナガルへ続く街道を走り始めた。
どこまでも澄んだ大空を見上げれば、大きな扇を手にしたトループス級アーディティヤ『キンナリー』は、腰から生える翼を羽ばたかせながらこちらへと迫り来る。
「……天空寺院から直接降りてきたんだ……」
他のアーディティヤがどうかは定かではないが、少なくとも『キンナリー』は飛行能力があるとわかる。
「……っていうか、此処は擬似ディヴィジョンなんだっけ? アーディティヤに都合いいように更に世界を改悪されてたら厄介だなぁ……」
のんびり口調で呟いて蓮は、ふるふると頭を振って一瞬思い描いてしまった未来を振り払う。
「ともかく、今は『キンナリー』の相手をしなくちゃ」
青みがかった黒い瞳で迫り来る半人半鳥のアーディティヤを見据えるなり、構えたソードハーブの弦を爪弾き始めた。
そして奏でるのは、敵の意識を奪わんとする、眠りを誘う心地よい歌。
(「眠ったらワンチャン落ちてこないかな、見た目、可愛い鳥なんだけど……」)
歌いながらそんなことを思っていると、心地の良い歌によって意識を失った『キンナリー』が空からどすんどすんと墜落して来るではないか。
意識を失った小鳥がポトリと落ちてくる――なんて可愛いものではなく、思わずドン引きの蓮。
「……前言撤回、間近で見ると思ったより大きい……うん、迫力あるな……」
そろりそろりと抜き足差し足で、未だ眠り続けているであろう『キンナリー』たちの顔を覗き込もうとした蓮だったが――。
『キンナリー』たちは蓮の気配を察知するや否やカッと目を覚まして起き上がった刹那、金色の宝石のような瞳で自分たちの意識を奪ったディアボロスを見据えた。そして、フォレストグリーンの翼を羽ばたかせると空中にて舞い踊り始めた。
彼女たちが歌うのは『蛇亀宇宙リグ・ヴェーダ』を賛美する歌。
その歌は同時に氷と炎の渦を発生させる。
「奇しくも歌対決? ……なんて感心してる場合じゃない。歌と踊りで氷と炎の渦おこすってどんな仕組みなんだよ。まいったなぁ」
迫り来る氷と炎の渦に困惑する蓮だったが、今この場にいる一般人である行商の親子のことも忘れてはいない。
ふと後ろを振り返れば、今しがた唯妃が行商の親子に自身の顔を晒したところ。
彼女の表情を窺えば、情報収集に成功したことが窺えた。
「よかった。……けど間違っても巻き込まないようにしなくちゃな」
蓮は再度『キンナリー』をしっかり見据えると、行商の親子から戦場を離すように、シュリーナガルの方へと走り出した。
氷と炎は容赦なく蓮を凍えさせ燃やそうとするが、この艱難辛苦も耐えてこそ三蔵法師。
反撃が収まるまで、蓮は足を止めることはなかった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【現の夢】がLV2になった!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
凍雲・雪那
連携アドリブ歓迎
お、おおう……尋問の仕方、手慣れてる、ね……
あれは、見習って、良いのだろうか……
ボクは、苦手な分野、だからなぁ。
さて。
久方振りの、戦働き、だ。
――アーディティヤ、死すべし。
敵は、天空寺院から、つまりは空を飛ぶ、訳で。
滞空できるなら、そりゃ空から、攻撃してくる、よね。
……でも。
幾ら暴風、巻き起こせても。そう遠くからって、無法は罷り通らない。
その程度の距離なら、ボクだって手が出せる。手が届く。
そして、届いてしまえば、此方の物。
風の隙間を縫うように、接敵。跳躍して、敵の身体に組み付き、【白霜凍躯】を発動。熱を奪い、縊り殺し、また別の敵に、飛び掛かる、よ。
暴風に吹き飛ばされても、Snowflakeを緩衝材にして、衝撃を緩和。
諦めずに、何度でも攻め込む。
仮に、相手が着地してくれれ、ば。
疾走る場所が、空中から地上に、変わるだけ。
何も、問題ない、ね。
ん。不謹慎、ではあるけど。
錆落としには、丁度良い、くらいかな。
軋む痛みも、奪った熱も。
そうだ。戦うとは、こういう事、だ。
草花が芽吹く林を抜けた凍雲・雪那(報仇雪恨の皓巫姫・g07783)がふと横を向けば、先行していたディアボロス行商の親子から情報を聞き出しているところだった。
一般人への接触から情報の聞き出しまでたった一人で行なったのであろうその手法に、思わず感嘆の声を上げる。
「お、おおう……尋問の仕方、手慣れてる、ね……」
けど、自分に真似できるだろうか。苦手な分野だからなぁ。
と考えながら彼らに背を向けて敵の元へと走り出せるのも、彼女のおかげだ。
「さて」
ならば自分は。と、雪那は少し気だるげな瞼の奥にあるアイスブルーの双眸を蒼穹へと向けた。シュリーナガル上空の天空寺院から飛んできた半人半鳥のクロノヴェーダ『キンナリー』は、先行して戦っていた蓮へと氷と炎の渦を飛ばしながら歌い踊っている。
よく見たら、全ての個体が傷を負っているのが見てとれた。
「久方振りの、戦働き、だ。――アーディティヤ、死すべし」
トループス級アーディティヤ『キンナリー』は、こちらへと駆けてくる雪那の姿を捉えるや、蓮への反撃の手をとめた。そして仲間同士で合図を取り合いながら空中に止まるや、転じるは攻撃だ。
上空で芭蕉扇を大きく振るえば、一帯に吹き荒れるのは激しい暴風。
風は地面の花々を揺らし、草木を靡かせ、花びらや葉が萼や枝から引きちぎられて大空へと巻き上げていく。
無論、暴風は雪那の淡雪色の髪を巻き上げ、その足すら風圧で止めようとする。
「滞空できるなら、そりゃ空から、攻撃してくる、よね」
前進しようと片足を上げれば、たちまち後ろへと吹き飛ばされかける。
雪那は体の重心を引く保つことで、なんとか暴風を耐え凌ぐ。
しかもこの暴風はパラドクス。暴風自体にダメージを負わせる力もあるし、万が一吹き飛ばされようモノならば、さらに後方へと飛ばされ深傷を負いかねない。
万が一の衝撃に備えるべくアイスシールド『Snowflake』も展開する。
「……でも。幾ら暴風、巻き起こせても。そう遠くからって、無法は罷り通らない」
暴風に曝される中、決意をもって前方を窺えば。芭蕉扇を仰ぐ最中、一瞬だけ暴風の止み間があることに気がついた。
「……それに、その程度の距離なら、ボクだって手が出せる。手が届く。そして、届いてしまえば、此方の物」
その暴風の止み間を縫うように駆け出した雪那は、芭蕉扇が扇がれる一瞬前を見定めて街道の地面を蹴り飛び上がるや、その半人半鳥の体に組みついた。
「cold,frost,coma,――Hypothermia」
その三節を詠唱すれば、雪那の両の手のひらは触れた対象の体温を奪う兵器となる。
この温暖なリグ・ヴェーダの大気が寒さに振るえ、氷結するのは大気中の水分と『キンナリー』の身体のありとあらゆる液体だ。
声を発するにも水分が必要で。だけどその唾液すら凍りついて叫び声も上げられぬまま氷塊と化す『キンナリー』。
その首を縊るや、雪那の反撃はこの場にいる全ての個体が対象だ。
生を奪われ墜落していく個体を足蹴にまた飛び上がれば、今度は一番間近にいた個体へと飛び移る。
慌てた『キンナリー』はすかさず着陸を試みるが、それは、雪那が疾走る戦場が空中から地上へと移っただけのこと。
「何も、問題ない、ね」
敵の首に掛けた手に魔力を込めれば、喉元から体の熱を奪い氷塊へ溶かしていく。
そして反撃からは逃れようがない哀れな神々と次々と凍らせ屠っていった。
「不謹慎ではあるけれど。錆落としには、丁度良い、くらいかな」
雪那は足元の氷塊を踏みしめて、未だ大気を凍らせる己の手のひらを見つめ、思う。
この体に軋む痛みも、相手から奪った熱も。
体が覚えているあの猛烈な風圧も、この手で砕く氷塊も。
「そうだ。戦うとは、こういう事、だ」
そして雪那が再びアイスブルーの瞳で空を見上げれば。
天空寺院からもう一体、美しい水を従えたアーディティヤがこちらへと降りてくる姿が見てとれた。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【寒冷適応】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
黄泉王・唯妃
アドリブ連携歓迎
おやおや。
頼りになる援軍が来てくれましたね。
ならば後残すはアヴァタール級『アプサラス』だけですね。
インド神話、とりわけリグ・ヴェーダでは水の精としての側面が強かったと記憶していますが。
他の方々が取り薪を片付けて下さったのですから、こちらの先陣は私が切るのが筋というもの。
「ごきげんよう。随分ゆっくりだったようですがそんな事でディアボロスに対抗できるとお思いで?」
軽く煽りながら注意をこちらに向けて戦闘開始です。
相手の蓮の花が高速回転するなら此方は【連射】力で勝負しましょう。
数は力、ただ多いというだけでそれは容易に暴力になりえますからね。
その澄ました顔を歪ませて差し上げるのが楽しみです。
「思いがけずお互い飛び道具を出すことになりましたし。どちらが先に膝をつくかひとつ試してみますか?」
エルフリーデ・ツファール
アドリブ連携歓迎
魔術の媒介の為、常にタバコを吸っています。
おっと、見知った顔がいると思ったら唯妃じゃねェか。
先頭も佳境って感じだがまあ援護くらいはしてやろう。
相手の属性的には水、相性は悪いが【吹き飛ばし】に特化させてるこのパラドクスならそれも関係ねェ。
他を狙ってる蓮の葉を巻き込みながら遠間から砲撃をぶち込むぞ。
こっちに飛んでくる相手のパラドクスは少しでも撃ち落とすことで直撃を避けようとする。
まあ無傷とはいかんがそこは我慢するのがディアボロスってもんだ。
「おいおいなんだよ、私も混ぜろよ唯妃。こんなおもしれーコト一人でやるとか水くせーぞ。まあ、相手が水の精だけどな」
「オラオラどうしたどうしたァ! こんな温い攻撃でディアボロスを相手に出来ると思ってんなら大間違いだぞコラァ!!」
凍雲・雪那
アドリブ連携歓迎
アプサラス……水の精、踊り子、なんだっけ?
後で、調べとかなきゃ、だね……
ん。善神気取りの、アーディティヤが重役出勤とは、笑わせる。
そこに転がる、雑兵共の、後を追わせてやるよ。
無様に往ね。神の名騙る不届き者が。
さて、相手は遠距離戦、得意そうだね。
手数も多そう、となると、数に頼ってのゴリ押しも、出来なくはないけど……うん。
もっと、スマートな力押しで、いこう。
有象無象では、話にならない、質量差の暴力を、教えてやる。
三節詠唱、パラドクス起動。
敵の頭上より、巨大な氷塊を降り下し、圧し潰す。
水流で押し流せると言うのなら、やってみるがいい。
それが、無意味な徒労に終わるかは、神のみぞ知る、ってね。
命のタイムリミット、見える形で置かれたら、少しは動揺、するだろうし。
他の二人への反撃にも、思考を割く必要があるのなら。
笑えないくらいには、消耗を強いれると、いいなぁ。
さあ。
これが、お前を潰すのが先、か。
お前が、ボク達を倒すのが先、か。
競争しようか、アプサラス。
●
トループス級アーディティヤ『キンナリー』の襲来を、凍雲・雪那(報仇雪恨の皓巫姫・g07783)をはじめとする頼れる援軍が迎撃してくれている。
行商の親子から情報を聞き出した後、自分もアーディティヤを迎え撃つべく、黒髪を風に靡かせながら駆けてきた黄泉王・唯妃(アトラク=ナクアの娘・g01618)は、優しい微笑みを以って仲間達を迎え、礼とした。
もう、トループス級は自分が手を出さずとも、皆が倒してくれるだろう。
ならば。
紅色の瞳で空を見据えれば、自分を見下ろしているのはアヴァタール級アーディティヤ『アプサラス』。
「貴様か。一般人を脅かす不届者は」
青い肌に赤い瞳を光らせて、冷静でいて精悍な表情をこちらに向けているアーディティヤは、自身の周りに清らかで美しい水を従えている。
(「『アプサラス』――インド神話、とりわけリグ・ヴェーダでは水の精としての側面が強かったと記憶していますが」)
この個体はさてはて。と思うまもなく、仲間の手によって『キンナリー』が倒された。
皆が取り薪である『キンナリー』を片付けてくれた。
ならば『アプサラス』の先陣は、私が切るのが筋というもの。
「ごきげんよう。随分ゆっくりだったようですがそんな事でディアボロスに対抗できるとお思いで?」
唯妃は紅の双眸を細めて軽く煽れば、敵はイラッと眉根を寄せた。
「……誰がゆっくりですって? ……ディアボロス。一般人に危害を喰話得ようとしたこと、後悔させてあげます」
告げるや否や。
『アプサラス』の足元でふっくらと開いている蓮の花が彼女の霊水を浴びた途端。瑞々しく水滴でその身を飾りながら高速回転したかと思った刹那。唯妃目掛けて放出される。
花弁の縁はまるで鋭い刃物。
うまく立ち回らなければ、自分が深傷を負いかねない。
と、その時。
後ろから、
「眩く輝く朝焼けのように――黄金色に染め上げろ!」
と詠唱する聴きなれた声がして、唯妃は後ろを振り返った。
見やると、そこにいたのは見知った姿。草臥れた三角帽子から茶色の髪をのぞかせ、咥えタバコの彼女はエルフリーデ・ツファール(紫煙の魔術師・g00713)だ。
「エルフリーデさんっ」
名を呼ばれた彼女はその焦茶色の鋭い眼差しで『アプサラス』をしっかりと捉え。放たれるのは昼のリグ・ヴェーダにおいても輝きを失わない黄金色の一点突破収束魔力砲撃。
砲撃は蓮の花を巻き込むやその威力減退させつつも『アプサラス』の澄んだ水も意ともせず、息を呑んだままのアーディティヤの腹に名地位するや、その体を吹き飛ばし地面へと転がした。
まさに『朝焼けは黄金色』に相応しい炎の一撃だ。
だが、蓮花は唯妃へと向かう。
唯妃はその場で踏ん張ると腕で蓮花の刃をガードしてみせたが、えいと蓮花を弾き飛ばして蜘蛛の腕に目を落とせば。大小さまざまな傷が硬化した腕に刻み込まれている。
だが、決して深傷にはなっていないのは、エルフリーデのおかげかもしれない。
振り返って彼女をみると、エルフリーデは、「あ」と声を上げた。
「見知った顔がいると思ったら唯妃じゃねェか」
そう言いつつも本当は、街道でアーディティヤを相手取り勇ましく戦うその後ろ姿が唯妃であるとわかってはいた。
対して。先ほどまであまり感情の起伏を見せずにいた唯妃の笑顔に少し幼さが現れるあたり、エルフリーデの参戦は彼女の心の安らぎを与えたのだろう。見慣れた人懐っこい笑顔にエルフリーデも眦を僅かに下げた。
「おいおいなんだよ、私も混ぜろよ唯妃。こんなおもしれーコト一人でやるとか水くせーぞ。まあ、相手が水の精だけどな」
と、唯妃に向けた優しい眼差しを一変。相手を挑発的に見据えれば、黄金色の朝焼けの如き砲弾を受けた『アプサラス』は、よろよろ起き上がるやエルフリーデを睨み返す。
そんな視線も一旦流し、タバコの先を赤く灯らせたエルフリーデ。
「戦闘も佳境って感じだが、まぁ援護くらいはしてやろうと思ってな」
「ありがとうございます、エルフリーデさん」
唯妃は微笑むと、「さて」と『アプサラス』に体を向けるなり、両手を胸の前でそっと広げた。
「其方の蓮の花が高速回転するならば、こちらは連射力で勝負しましょう。――この糸の先、生という迷宮の出口へと送って差し上げます」
すると手のひらの上に生み出されるのは、透明な蜘蛛の糸。
蜘蛛の糸はこのディヴィジョンの太陽の光を受けて輝くと、瞬く間に球体へと姿を変えた。
しかもそれは一つではない。数えきれないほど、無数だ。
数は力。ただ多いというだけでそれは容易に『暴力』になり得ることを、唯妃は知っている。
「思いがけずお互い飛び道具を出すことになりましたし。どちらが先に膝をつくかひとつ試してみますか?」
相手の返事など聞く必要などない。唯妃が無数の糸玉を『アプサラス』に向けて撃ち放つや、敵は、まず一つを往なしてみせた。
が、この糸玉。他の糸玉に接触すると反射で速度を上げる性質がある。故に、往なした糸玉が別の糸玉にぶつかり合えば、先ほどと比べ物にならないスピードを宿し、目標へと向かっていく。
初めのうちは糸玉を往なしたり交わしたりしていた『アプサラス』だったが、とうとうある時期から全てをまともに喰らい始めたのだ。
「……くっ……! 厄介な糸玉だこと……!」
自分の糸玉に翻弄されて冷静ではいられなくなっている『アプサラス』の姿を目の当たりにし、唯妃は楽しそうにふふと目を細めた。
「そう。私はその澄ました顔を歪めて差し上げたかったんですよ」
そんな唯妃の微笑みを一瞥した『アプサラス』が見据えるのは、エルフリーデ。
「よくも邪魔をしてくれたわね……。許さないわよ!」
言い切って射出するのは、清らかな水の恩恵を一身に受けた蓮の花。
先ほども同じ技で唯妃に攻撃をしている。故に軌道や動きのパターンは把握済みだ。
「オラオラどうしたどうしたァ! こんな温い反撃でディアボロスを相手に出来ると思ってんなら大間違いだぞコラァ!!」
エルフリーデは大声で挑発しながら大柄な体を駆使しダイナミックに蓮の花を躱すと、続いたのは、『キンナリー』の相手をし終えた雪那。
(「アプサラス……水の精、踊り子、なんだっけ? 後で、調べとかなきゃ、だね……」)
このディヴィジョンに関わる以上、またこのアヴァタール級とも出会うことになるであろう。そのために見聞を広げることも大切だと考えながらも、思い起こすのは先ほどまでの敵の戦い方。
花弁の縁が鋭利な蓮の花を飛ばす戦い方からして、遠距離戦が得意のようだ。
手数も多いだろう。そうなると、数に頼ってのゴリ押しも出来なくはないが。
(「もっと、スマートな力押しで、いこう」)
有象無象では話にならない。質量差の暴力を教えてやる。
雪のような青白い髪を揺らし、アイスブルーの双眸で見据える先にいるのは、水の精の名を関したクロノヴェーダ。
「ん。善神気取りの、アーディティヤが重役出勤とは、笑わせる。そこに転がる、雑兵共の、後を追わせてやるよ。――ice,fall,squash――Meteor Strike」
雪那が三節詠唱すれば、リグ・ヴェーダの空に現れたのは超巨大な氷塊。
氷塊は重力に従い、まるで隕石が地上を襲うかの如く『アプサラス』を圧し潰さんと迫り来る。
パラドクス由来のあんな巨大な氷塊に潰されようものなら、クロノヴェーダとてひとたまりもないだろう。
が、天から降り来る物質ゆえのタイムラグが生じることは術者である雪那も知ってのこと。
この時間差を利用しようと『アプサラス』は、自身の周りに怒濤の如き水流を呼び出したのだ。
「あの氷が地上に振り来るまでに、お前たちを倒せばいいだけのこと」
若干動揺しているのであろう。『アプサラス』の声が揺れているが、恐怖の感情をその澄ました表情で隠すだけの余裕もあるようだ。
「あれが、お前を潰すのが先、か。お前が、ボク達を倒すのが先、か。競争しようか、アプサラス」
水流で押し流せると言うのならやってみるがいい。
それが無意味な徒労に終わるかは、神のみぞ知る。
だが、歴史改竄が作り出した神に屈するほど、ディアボロスの覚悟は生半可ではない。
『アプサラス』から打ち出された怒涛に如き水流は、雪那を圧し流さんと轟々と音を立てながら街道を伝いインダスの方へと流れていく。
雪那はぐっと足を踏ん張って、その流れに逆らい続ける。
逆らい続ければやがて『その時』が来るのを知っているからだ。
轟々と音を立てる水流よりもさらに激しい爆音が、この世界の宇宙より響いてくるのがわかるだろう。
この温暖なリグ・ヴェーダの気候を物ともぜず、強烈な冷気を纏った氷塊が『アプサラス』を圧し潰さんと、迫り来る。
徐々に近づくそれは『アプサラス』が操る清らかな水をも冷たく凍らせる勢いで。その異変に気づく頃には、氷塊はもうすでに目と鼻の先。
「……っ」
自分の死期を察した『アプサラス』が息を呑んだのとほぼ同時。
「無様に往ね。神の名騙る不届き者が」
冷徹に雪那が告げれば氷塊は、まるで虫を潰すかの如く。『アプサラス』を圧し潰してしまったのだ。
同時に轟々と流れていた激流もぴたりと止みんだ所を見るや、それは『アプサラス』撃破の証左に他ならなかった。
行商の親子から、シュリーナガルの天空寺院の情報も無事聞き出すことに成功し、一般人の願いに反応して地上へと赴いてきたアーディティヤの撃破にも成功した。
唯妃がふと後ろを見やれば、夢現の行商の親子は未だ街道に座り込んで虚空を見つめている。だけど、夢から覚めるのも時間の問題だろう。
ならばこの地に長居は無用。
「早速最終人類史に帰還し、皆さんに情報をお伝えしなければ。ですね」
行商の親子の安全を確認して微笑んだ唯妃。
エルフリーデもふと笑んで煙草の煙を吐き出せば、雪那もわずかに口角を上げて「うん」と頷いた。
パラドクストレインが停車する森の奥でディアボロスたちがふと後ろを振り返れば、行商の親子がいつの間にか籠から転げ落ちていた果物を拾っている最中だった。
「神様に捧げる果物が台無しだ」
としょんぼりとする娘に、母親は告げる。
「慈悲深い神様だから、少しの傷は見逃してくれるだろう。――それにしても、この道は何で急にこんなに水浸しなんだろうね」
これ以上の長いは本当に無用。
早々に車内に乗り込んだディアボロスを乗せ、パラドクストレインは風光明媚な豊穣都市に背を向けたのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
【建造物分解】LV1が発生!
【冷気の支配者】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
【命中アップ】LV1が発生!