最終人類史のハロウィン2024
一般人の『鬼や妖怪、お化けなどが根底にある感情』をエネルギーとして集積できる『地獄変』は、ディアボロスにとって最重要のクロノ・オブジェクトです。
ハロウィンは数あるお祭りの中でも、地獄変のエネルギーを集める最大のチャンスです。最終人類史全土でハロウィンを盛り上げ、より多くのエネルギーを地獄変に集積してください。
蹂躙戦記イスカンダル奪還戦などで消耗した地獄変のエネルギーの補充だけでなく、鹵獲したクロノ・オブジェクトの運用や修復、改造などにもエネルギーが必要となるので、より多くのエネルギーを集めてください。
収集したエネルギーは攻略旅団の提案があれば、その目的に使用し、残りはディアボロス・ウォーにおける新宿島大結界の為に備蓄します。
最終人類史の一般人の皆様も、去年に引き続き『ハロウィンパーティーを楽しめば、ディアボロスと新宿島を護る事になる!』と、喜び勇んで準備を行っています。
ディアボロスの皆さんにも、ハロウィンを盛り上げる協力要請が来ています。
自分の考えた企画で人々を楽しませるも良し、人々の企画に加わって盛り上がるも良し。気軽に参加してください!
「ハロウィンパレード2024」アイコンフレーム対象
このハロウィンシナリオで一度でも採用(トレインチケット含む)されたディアボロスには、
色とりどりのキャンディをあしらったアイコンフレームをプレゼント!
来年は違うデザインになります。かならずゲットしよう!
ハロウィンの惨劇……つまり、劇(作者 ライ麦)
#最終人類史(新宿島)
#最終人類史のハロウィン2024
#🎃ハロウィン2024
⊕
タグの編集
現在は作者のみ編集可能です。
🔒公式タグは編集できません。
|
|
🔒
#最終人類史(新宿島)
|
|
🔒
#最終人類史のハロウィン2024
|
|
🔒
#🎃ハロウィン2024
|
「10月31日はハロウィンですね。今年も、最終人類史をあげてのハロウィンパーティーを行います」
新宿駅グランドターミナルで、サフィール・セレニテ(見習い少年執事・g08576)が恒例行事の始まりを告げる。今年は日本だけでなく、オーストラリアやヨーロッパ、さらに中国の一部でも行われるという。帰還済みの人々も増え、随分賑やかになってきた。これも皆さんの活躍のおかげですね、と微笑んだ後、サフィールは表情を引き締める。
「勿論、今年のハロウィンもただのパーティーではありません。去年に引き続き、『地獄変』でのエネルギーの集積が重要な目的となっています」
新宿島を護る、ラムセスの黄金アンクの防御結界のエネルギーとしてだけで無く、鹵獲したクロノ・オブジェクトの運用や修復、改造などに、多くのエネルギーを使用する可能性があり、ハロウィンの成果は、今後のディアボロスの戦略に大きな影響を与えるかもしれない。
「とはいえ、難しい事を考える必要はありません。ディアボロスが『ハロウィンパーティーを盛り上げる』だけで、膨大なエネルギーを得る事ができるのですから。地獄変のエネルギー集積の為、そして何より、多くの人々を笑顔にする為にも、ハロウィンを盛り上げてください!」
再び笑顔になった彼が、よろしくお願いします、と頭を下げた。
「今年は趣向を変えて、皆様には即興劇をやっていただこうかと」
面を上げたサフィールが、「ハロウィンの惨劇」と書かれたチラシを配っていく。チラシを見たディアボロス達は怪訝そうな顔になった。
「……ハロウィンの……惨劇?」
ハロウィンを楽しめという割には物騒なタイトルだが。しかし、サフィールはにこりと微笑む。
「ええ、ハロウィンの惨劇……つまり、『劇』です。とある富豪のハロウィンパーティーに招かれた招待客達……しかし、そこで何らかの事件が起きる、という大まかな筋書き以外は、何も決まっておりません」
何も決まっていない、ということは、何の事件が起きるかも配役もその後のストーリーも、こちらで自由で決めていいということだ。「ハロウィンの惨劇」というタイトル通り、凄惨な殺人事件を起こしても構わないし、誰かのおやつがなくなったとかいうほのぼのとした事件でも構わない。
「もちろん、殺人事件といっても本当に殺すわけではありませんよ。あくまでこれは劇、つまりお芝居なのですから」
サフィールが注釈を入れる。そう、これはあくまで即興劇。起きる事件は架空のものだ。同じ舞台上で、複数の事件が同時進行しても良いという。あっちでシリアスなミステリーをやっている傍ら、こっちは消えたおやつの行方を追うドタバタコメディをやっている、とかでも構わない。
「配役も自由に決めていただいて構いません。探偵役や被害者役、あるいは犯人役が何人いても構いませんよ」
そう言う彼だが、被害者役はまだしも、探偵役や犯人役が何人もいたら収拾がつかなくならないだろうか。そう心配するディアボロスだが、
「大丈夫。あくまでアドリブによる即興劇ということは、ご観覧の皆様も承知の上です。結果犯人や探偵が何人もいる、カオスな劇になったとしても笑って許してくださるでしょう」
サフィールはそう言い切った。まあ、アドリブによる即興劇にトラブルはつきもの。そうしたカオスやトラブルも含めて楽しむことが、即興劇の秘訣かもしれない。
「ハロウィンですし、それぞれの役柄に合わせた仮装をしても面白いかもしれませんね。もちろん、ハロウィンパーティーに招かれたという設定ですから、無理に役柄に合わせたものにしなくとも、どのような仮装をしていても構わないのですが」
そう言う彼自身は名もなき執事役として、裏方に徹する予定だという。
「ただ、もしこの役が足りない、などということがあればお声がけくだされば、どのような役でも精一杯演じさせていただきます。もちろん、それ以外の、例えば照明や音響等もご要望があれば。なんなりとお申し付けくださいませ。僕は、皆様の執事ですから!」
役とか関係なしに、普段から「皆様の執事」を自称している少年は笑顔でそう言った。
「注意点としては……あくまで即興劇ですから、上演に何時間もかかるような超大作ストーリーには向かないということと、あまり大掛かりな仕掛けは難しいということでしょうか」
次いで、真面目な表情に戻った彼はふむ、と顎に手を当てて考えるように言う。都内の大型劇場を貸し切っているとはいえ、やはり即興劇という性質上、事前に大きな準備が必要なものは難しいらしい。一応、舞台上にはいくつかの白いテーブルクロスがかけられた丸テーブルや模造の料理等、ハロウィンパーティーっぽいセッティングはしてあるようだし、小道具等は持ち込みも可能だが。大道具などは少々、難しいかもしれない。
「まあ、劇というものは演ずる人の演技力や観る人の想像力によって、そこにないものを『ある』ように見せるもの。大道具や大掛かりな仕掛け等はなくとも、演技でカバーできるでしょう」
そうは言われても、演技力に自信がない者もいるだろう。しかし、それでも良いと言う。
「何もプロによる演劇ではないのですから。多少演技が拙くとも、それもご愛嬌です。最終人類史の皆様は、ディアボロスの皆様による催しを非常に楽しみにしてくださっています。きっと、笑って受け入れてくれることでしょう」
そうしてハロウィンを大いに盛り上げる事が出来れば、地獄変の巻物に『ハロウィンの思い出』が、物語のように描き出される事だろう。ディアボロスが活用可能な膨大なエネルギーを得る、ほぼ唯一の機会だ。
「とはいえ、地獄変云々のためだけではありません。最終人類史の人々が、不安を忘れ、イベントを楽しみ、明日からの暮らしへのエネルギーになってくれるのが一番ですね」
そのために僕も微力ながら力を尽くすつもりです、と執事服の少年は締めくくった。
その劇場の客席では、老若男女様々な人々がディアボロス達による即興劇の開幕を今か今かと待ちわびていた。
「『ハロウィンの惨劇』かあ。どんな劇になるんだろ?」
「なんでも起きる事件もアドリブらしいよ。何が起きるか、楽しみだね!」
「ああ、ディアボロスって美男美女揃いだしなあ。観てるだけでも楽しそうだ」
などとワイワイ話しながら、期待を込めた目で舞台を見つめている観客達の前で今、一夜限りの劇の幕が上がる。
リプレイ
喩・嘉
【鳳】のみんなと
王道(?)のミステリーを劇でやるつもり
※アドリブ歓迎
俺はパーティに招待された怪しい客役だ。即興劇、どうなるかわからないが、しっかり演技するぞ
チャイナ服に肩からファーをつけ、丸いサングラスをかけた、いかにもなチャイニーズマフィアの雰囲気だけ出しておく
事前に占いをした結果、「このパーティでは何かが起こる」と出たんだ
俺はその混乱に乗じて館の中にある宝玉を盗もうと考えている
……と、俺の占いは的中し、招待客の伏見が殺された
捜査中、いっそう騒ぎを大きくするために、証拠品である毒入りワインは全て玄関ホールの床にまいてやった
想定通りに騒ぎが起きたので、その混乱に乗じて宝玉を盗み出した
さて、あとは無事に宝玉と共にパーティから帰るだけだ
騒ぎが大きくなることは望んでやったが、
逮捕されるのは困る
守都刑事、適当なことを言うんじゃない!
守都・幸児
【鳳】のみんなと
ミステリーの劇をやるぞ
※アドリブ歓迎
俺はたまたま居合わせた刑事を演じるぞ
的外れな推理をしちまうへっぽこ刑事だ
背広にロングコートを着ればそれっぽく見えるかな
怪しい言動をする萬に警察手帳を見せて
厄介ごとを起こすと逮捕だぞ、と釘を刺しながら自己紹介
事件が起きれば現場保存だ、皆落ち着けーっ
と自分が一番慌てながら叫ぶ
しらを切るソレイユにころっと騙されて疑いもせずに
現場検証しながら、殺人の陰で宝玉が盗まれていることを知って喩嘉を疑うぞ
怪しい奴め、犯人はお前だっ
証拠はほんのりお前から香るワインの香り
動機は盗みの現場を被害者に見られたことによる口封じに違いねえぞ
逮捕だぞーっ
だが、ほぼ勘で証拠のないつっこみどころだらけの推理だから
つっこまれたらしょんぼりして引き下がるぞ
そのもこもこ帽子…あんたがあのこあら探偵かっ
頼む、力を貸してくれっ
こあら探偵の活躍で真犯人がわかったら
素直に喩嘉に謝るぞ
疑ってすまなかったぞ…
だがこあら探偵の指摘で気付くんだ
そうだ窃盗も犯罪じゃねえかっ
まて喩嘉ー逮捕だぞーっ
伏見・萬
【鳳】の仲間と
(連携アドリブ歓迎)(仲間は苗字呼び、喩・嘉は「喩嘉」)
殺人事件…の劇ってか。死体役なら任せとけ
何しろ元々くたばってるンでなァ
パーティーにやって来た飲んだくれのチンピラ
派手なシャツを着て、持ち込んだスキットルで酒を呷り、時々ナイフを取り出して弄び、「近いうちにちょいと纏まった金が手に入る予定でなァ」などと嘯く
「何か事件でも起こしそうな悪党の雰囲気で登場するが、酒に毒を盛られあっさり死亡」という役どころ
占いで「何か起きる」って出たァ?
今日の俺ァ、最高にツイてンだ。何も怖くねェよ
「場違いな奴め」ってェツラしやがって。刑事?まだ何もしてねェぞ
…招待される理由はちゃんとあンだよ。俺にもツキが巡って来たってェこった…なァ、麗しの大富豪様?
大富豪様にオススメ頂くワインねェ、そりゃァ祝杯にぴったりだ
…ん、こりゃァイイ。いくらでもいけそうだぜ
このパーティーが終わったら…へへ、夢が広がるぜェ――ッ、ごふっ!
(苦しみ倒れ、動かなくなる)
(倒れた後は、死体のフリをしつつ仲間の演技を聞いて楽しむ)
ソレイユ・クラーヴィア
【鳳】の仲間と
アドリブ歓迎
アドリブは演奏で慣れたものですから、演劇も何となくいけるでしょう、たぶん
私はシャルワーニー姿にターバンを巻いた大富豪にしましょう
館の主人であり、毒入りワイン事件の犯人です
本日は私の館のパーティに来てくださってありがとうございます
なんて鷹揚に笑って招待客を案内します
萬には手ずからワインを勧めましょう
極上のワインは如何ですか?
事件が起これば
まさかこんな事件が起こるなんて…
としらを切りますが
参加者の中に刑事にこあら探偵がいるのは聞いてませんでしたね
とはいえ謎の中華マフィアが毒ワインの証拠をぶちまけてくださったお陰で、私と犯人を結びつける証拠は無い筈
これで事件は迷宮入り…
と思っていたら、名探偵こあらが謎を全て食べてしまう、ですって!?
おそるべしユーカりパワー
ええ、バレてしまっては仕方がありませんね
この事件の犯人は私
しかし、このまま捕まるわけにはいきませんよ
宝玉はくれてやりますから、その隙に魔法の絨毯で脱出です!
諸君、また会いましょう!
こんな感じで、大丈夫なんですかね…?
シャムス・ライラ
【鳳】の皆と参加
私はふわふわコアラ帽の「こあら探偵」で参ります
緩めな推理で迷走し
何故か解決に辿り着いてしまう迷探偵
手持ちのユーカリの葉をカリリと齧れば閃く推理!
さて今夜は…
招待されたパーティーで
待ち受けていたのは凄惨な殺人事件!
ほう、何やら不吉な占いが?
消えた宝玉
玄関先にぶちまけられたワイン
守都刑事、この会場には大いなる謎が渦巻いています
しかし、このユーカリを齧れば!
被害者(萬殿)はパーティー会場にも拘らず
自前のスキットルで酒を飲んでいる
つまり酒に目がないが毒殺を以前から恐れていた
ならば毒を盛ったのは油断を誘う面識のある人物
つまり犯人は明らかに怪しい見目の中国人(喩嘉殿)ではなく
招待客のリストを持ち、嗜好を把握していた人物
すなわち、館の主人(ソレイユ)に他ならない
謎は、全て食べた!(びしっと犯人を指差し)
宝玉の盗難に慌てていない所もこの状況を利用しようとしていることが見て取れます
ワインは偽装
外部犯が逃走の際に割ったように見せかけたのです
守都刑事、宝玉盗難はまた別の事件ですよ
アドリブ等歓迎
嵐柴・暁翔
黒のスーツにサングラス、肩からたらしたストールのマフィアのコスプレで借金取り役で参加します
おやおや皆さんお揃いで…
随分と景気が良さそうですが、これは期日までにはきちんと返済して頂けるのですかな…?
期限の延長…勿論構いませんよ、ただし利息はきちんと頂きますがね…
ご心配なく、うちは金銭以外での物納も承っております、それはもう立場でも友情でも身体でもなんでも清算させて頂きますので…
というような感じで怒鳴り散らしたりはしませんが冷酷に容赦なく相手を追い詰めていく悪徳金貸しでいきます
おや、臨時収入があったようですね
であればまず支払うべきものから清算して頂かないと…
死体でも案外金になるものなのですよ…
館の主が逃走すれば借金の清算と称して残った金目のものは全て回収しておきます
どうやら命だけで他はいらないようですので此方で有効利用させて頂きますよ
ええ、これはただの廃品回収ですのでなんら問題ありませんよね
……ところで、貴方の支払期日も近かった筈ですが…?
「本日は私の館のパーティに来てくださってありがとうございます」
シャルワーニー姿に、頭にはターバンを巻き。アジアの大富豪、といった風情のソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)が、鷹揚に笑って招待客を出迎える。その出迎えに、
「あァ……招待ありがとうなァ」
派手なシャツを着たいかにもなチンピラ……こと、伏見・萬(錆びた鉄格子・g07071)はニチャァ、とどこか含みのある笑みで笑った。手にはスキットルを持ったまま。どうにも堅気には見えない……見えないが、堅気じゃなさそうなのは彼だけじゃなかった。
「招待ありがとう、しかし……ひとつ、気になることがあるんだ」
神妙な面持ちで呟く、喩・嘉(瑞鳳・g01517)はチャイナ服に肩からファーをつけ、丸いサングラスをかけている。いかにもなチャイニーズマフィアの雰囲気だ。ここまで怪しい人しかいないが、特に気にした様子もなく、ソレイユは、
「おや、なんでしょう?」
軽く片眉を上げて尋ねる。
「事前に占いをした結果、『このパーティでは何かが起こる』と出たんだ」
嘉の返答に、ソレイユは眉をひそめた。
「何か、ですって? それは何が……」
「分からない。だが……何か、胸騒ぎがする」
胸中の心配を映したような、どこか物憂げな表情で会場を眺める嘉を小馬鹿にするように。どっかとソファに腰を下ろした萬は早速スキットルで酒を煽りつつ、ナイフを取り出して弄ぶ。
「ハッ、占いで『何か起きる』って出たァ? 今日の俺ァ、最高にツイてンだ。何も怖くねェよ。何しろ、近いうちにちょいと纏まった金が手に入る予定でなァ……」
口元を歪めてそう嘯く萬に、
「なんだ貴様! ナイフなんぞ持ち込んで! 厄介ごとを起こすと逮捕だぞ!!」
すっ飛んできた背広にロングコート姿の男が、警察手帳を見せながら釘を刺した。
「アンタは?」
嘉の問いに、男は胸を張って答える。
「刑事の守都・幸児だ! 見たとこお前はチャイニーズマフィアのようだが、何かしたらただじゃおかないぞ!」
この男……守都・幸児(祥雲・g03876)はどうやら、たまたま居合わせた刑事らしい。職務熱心で暑苦しい刑事に、萬は興を削がれたように鼻を鳴らす。
「刑事? 『場違いな奴め』ってェツラしやがって。まだ何もしてねェぞ。……招待される理由はちゃんとあンだよ。俺にもツキが巡って来たってェこった……なァ、麗しの大富豪様?」
そう言って、何やら主人の方に意味ありげな視線を送る萬。ソレイユはぎこちなく笑った。
「え、ええ……そうですね」
そう答える唇が、僅かに震える。そこに突然、
「おやおや皆さんお揃いで……随分と景気が良さそうですが、これは期日までにはきちんと返済して頂けるのですかな……?」
黒のスーツにサングラス、肩からたらしたストール。いかにもなマフィアといった出で立ちの嵐柴・暁翔(ニュートラルヒーロー・g00931)がやってきた。まさかのマフィア二人目である。刑事除いて堅気っぽい人いなくない?? というツッコミは置いといて。暁翔の姿を見た萬の背は、不意に緊張したように伸びる。
「あ、あァ……だが、もうちィっと、待っちゃくれねェか? もう少し経てば、纏まった金が手に入る予定なんだ……」
しどろもどろに言う彼に、暁翔はニコリと笑った。
「期限の延長……勿論構いませんよ、ただし利息はきちんと頂きますがね……ご心配なく、うちは金銭以外での物納も承っております、それはもう立場でも友情でも身体でもなんでも清算させて頂きますので……」
決して怒鳴り散らしたりなどはしない。しかし言っている内容も声音も、冷酷そのもので。恐怖を吞み込むように、萬は喉を鳴らした。何やら不穏な気配が漂う。その気配を振り払うように、ソレイユは手を叩いた。
「さあさあ、立ち話もなんですから。パーティーを始めましょう。せっかくの機会です。極上のワインは如何ですか? 天にも昇る心地になれますよ」
萬の隣に座り、手ずからワインを勧めるソレイユに、悪徳金貸しに怯えていた彼も相好を崩す。
「大富豪様にオススメ頂くワインねェ、そりゃァ祝杯にぴったりだ。……ん、こりゃァイイ。いくらでもいけそうだぜ」
一口飲んで唇を舐める萬に、それはよかった、と微笑んで。館の主人は他の招待客の相手をするために立ち上がる。彼が立ち去った後も、上機嫌でグラスを煽っていた萬は夢想するようなだらしない表情で天を仰いだ。
「このパーティーが終わったら……へへ、夢が広がるぜェ――ッ、ごふっ!」
突然、萬が口から赤いものを吐き出す。ワインなのか血なのか。周囲がざわめく中、苦し気に喉を搔きむしった萬はそのまま倒れ、動かなくなった。
「……!? な、なんだ……!? おい、しっかりしろ!!」
慌てて立ち上がった嘉が抱き起し、体を揺すってみたり頬を叩いたりしてみるが、萬の首はただガクリと垂れ下がるのみ。完全に事切れているようだ。
「し……死んでいる……」
呆然と呟く嘉。……まあ、リターナーだから元々死んでるんだが。死体役にはピッタリだったかもしれない。というメタい話は置いといて。楽しいはずのパーティー会場は一転、恐怖に凍り付く。
「そんな……何かが起きるとは聞いていましたが……まさかこんな事件が起こるなんて」
震えながら口を押さえるソレイユ。
「と、とりあえず……げ、現場保存だ、皆落ち着けーっ!」
そう言う自分が一番慌てながら走り回る幸児が何かに蹴躓いた、それがむくりと起き上がる。
「んん~? なんですかこの騒ぎ……」
寝ぼけ眼で目を擦る、ふわふわコアラ帽を被ったインバネスコート姿のシャムス・ライラ(極夜・g04075)その人だ。彼の姿を見た幸児はハッと目を見開く。
「そのもこもこ帽子……あんたがあのこあら探偵かっ! 頼む、力を貸してくれっ」
インバネスコートの襟元を掴み、必死で頼み込む幸児の横で、
「なに、こあら探偵ですって!?」
ソレイユは探偵、と聞いてなぜか驚いていた。
「参加者の中に刑事にこあら探偵がいるのは聞いてませんでしたね……」
などと呟いている館の主人。お前が呼んだんじゃないのか。ともあれ、ソレイユの言葉に自己紹介を頼まれていると思ったのか、ふわふわコアラ帽を被り直したシャムスはスックと立ち上がった。
「そうです、私こそがふわふわコアラ帽がトレードマークの、人呼んで『こあら探偵』! 緩めな推理で迷走し、何故か解決に辿り着いてしまう迷探偵。手持ちのユーカリの葉をカリリと齧れば閃く推理! さて今夜の事件は……」
探偵モノのナレーションみたいな口上を述べるこあら探偵に、
「実はかくかくしかじかで」
幸児はこれまでのあらすじをかいつまんで述べる。
「ほう、何やら不吉な占いが?」
頷いたこあら探偵はソレイユの方に向き直った。
「話を聞く限り……どうやら、被害者にワインを勧めたのはこの館の主人のようですが」
「そんな、私を疑ってらっしゃるんですか? 私は何も……」
後ずさり、助けを求めるように彷徨わせた視線が、ある一点で止まる。
「……おや? そういえば、あそこに飾ってあった宝玉がありませんね」
「何!?」
ガバっと主人が指さす方に振り向いた幸児。確かに、気づけばテーブルの上に目立つように飾ってあった宝玉がない! 刑事は頭を掻きむしった。
「なんてことだ、殺人事件に加えて盗難事件も起きるとは……! この館の主人も被害者だ、つまり主人はシロだな」
あっさり決めつける刑事は、動揺のせいか別の可能性を失念してしまっている。ソレイユが密かに口元を歪めて笑ったのにも気付かないほどに。そこに、どこかに行っていた暁翔がやれやれと頭を振りながら戻って来た。
「この機に乗じて、逃走したものがいないかと玄関ホールを見てきましたが……ひどいものですね、ワインが全て床にぶちまけられていますよ。年代物のワインのようですが……これでは金になりませんねぇ」
肩をすくめて言う彼に、
「何だと!? ……うわ、確かに……これはひどいな……貴重な証拠がパァじゃないか」
慌てて見て来た幸児は唸る。毒入りワインはこの事件最大の物証だった。それがなくなってしまうとは。他に何か、証拠になりそうなものはないか……血眼になって探している幸児をよそに、こあら探偵は難しい顔をして考え込んでいた。
「ううむ、消えた宝玉、玄関先にぶちまけられたワイン……これは……」
何か、何かが引っかかる。もう少しで何かが掴めそうで掴めない。もどかしそうにコアラ帽を突っつくシャムスの横で、犬みたいにあちこちの匂いを嗅いでいた幸児が、突如嘉を指差す。
「分かったぞ、怪しい奴め、犯人はお前だっ!」
「何だと!? 守都刑事、適当なことを言うんじゃない! 証拠はあるのか!?」
強気に言い返す嘉だが、その指先は落ち着きなく手にした鞄をなぞっている。そのいつ鞄どっから出てきた? というツッコミはさておき。
「証拠はほんのりお前から香るワインの香り! 動機は盗みの現場を被害者に見られたことによる口封じに違いねえぞ。逮捕だぞーっ」
鼻息荒く、手錠片手に飛びかかろうとする幸児を、シャムスが制止した。
「待ってください、守都刑事。その推理ですと、時系列が逆では?」
「……え?」
固まった幸児が、機械仕掛けの人形みたいにギギギ、とシャムスの方に顔を向ける。こあら探偵の方は冷静に彼の推理の穴を指摘した。
「館の主人が、宝玉がなくなったことに気付いたのは殺人事件が起きた後。それ以前に盗まれていないと、守都刑事の推測は成立しませんが……」
「そうだ、アイツが倒れた時、宝玉はまだそこにあったはず……」
嘉が宝玉があった方を見やる。だって自分が盗んだのは殺人事件が起きた後で……おっと。口をつぐむ嘉の横で、幸児は見るからにしょんぼりと肩を落としている。
「言われてみれば、確かに……でも、だとしたら他に一体誰が……」
気落ちしている彼の肩を、シャムスは力強く叩く。
「守都刑事、この会場には大いなる謎が渦巻いています。しかし、このユーカリを齧れば!」
カリッと手持ちのユーカリの葉を齧るこあら探偵。瞬間、カッとその青い瞳が見開かれる!
「被害者はパーティー会場にも拘らず、自前のスキットルで酒を飲んでいる……つまり酒に目がないか、もしくは毒殺を以前から恐れていた。ならば毒を盛ったのは油断を誘う面識のある人物……つまり犯人は明らかに怪しい見目の中国人ではなく、招待客のリストを持ち、嗜好を把握していた人物。すなわち、館の主人に他ならない!」
立石に水。すらすらと推理を述べたこあら探偵は、ビシィッとソレイユに指を突きつけた。
「謎は、全て食べた!」
「な……なんだってー!」
驚き、バッとソレイユの方を見る幸児。彼の方は動揺したように、小刻みに目を動かしている。
「名探偵こあらが謎を全て食べてしまう、ですって!? おそるべしユーカりパワー……」
などと呟いている彼に、シャムスはさらに畳み掛ける。
「宝玉の盗難に慌てていない所もこの状況を利用しようとしていることが見て取れます。ワインは偽装。外部犯が逃走の際に割ったように見せかけたのです。違いますか?」
ほぼ勘で証拠のないつっこみどころだらけの推理だった幸児と違い、論理的で筋の通った見立て。しかし、にわかには信じられない。幸児は恐る恐る尋ねた。
「その……本当なのか……?」
追い詰められて観念したのだろうか。館の主人はフッと笑ってターバンを脱ぎ、髪をかき上げて、これまでとは打って変わった、冷徹な瞳で述べる。
「謎の中華マフィアが毒ワインの証拠をぶちまけてくださったお陰で、私と犯人を結びつける証拠は無い筈。これで事件は迷宮入り……と、思っていたのですが。ええ、バレてしまっては仕方がありませんね。この事件の犯人は私……」
「そんな……どうしてこんなことを……」
「それは……」
ソレイユが美しい目を伏せる。その胸に去来するのは、
(「……肝心の……動機を考えていませんでした」)
という思い。しかし、アドリブは演奏で慣れたもの。演劇だってものにしてみせる。すうっと息を吸い、ソレイユは淀みなく話し始めた。
「実は……私はあの男に弱みを握られ、強請られていたのです。期日までに金を用意できなければ、あの秘密をバラすと……それで、私は全てを終わらせるために今宵のパーティーを企画し、あの男を亡き者にしようと企んだのです」
咄嗟のアドリブとは思えない、堂に入った演技。暁翔もそれに乗っかり、
「なるほど、臨時収入があるとか言っていたのはそのことだったのですね。死んで逃げられてしまいましたが……なぁに、死体でも案外金になるものなのですよ」
背筋も凍るような、残忍な笑みを浮かべてみせる。その笑みにゾクッとしつつ、幸児はソレイユに手錠を向けた。
「そんな事情が……しかし、罪は罪だ。大人しく捕まって……」
「いいえ、このまま捕まるわけにはいきませんよ。あの秘密を守るためにも……宝玉はくれてやりますから、私はここでおさらばします。諸君、また会いましょう!」
言うが早いか、突然その辺に敷いてあった絨毯に乗り、高笑いとともに去っていくソレイユ。いきなりのファンタジーだが、【飛翔】を使ってそれっぽく見せているだけである。最終人類史なら残留効果は使い放題だしな。とはいえ、観客がついてこられているか些か不安になったソレイユはチラと観客席の方を見る。
(「こんな感じで、大丈夫なんですかね……?」)
そう思うも、観客は突然のスペクタクルにおお~っと目を見張っている。大丈夫なようだ。
「あっ、待て! ……くそ~、飛ばれたんじゃ追いつけない!」
飛び去って行く彼の姿を追っていた幸児はしかし、途中で断念して悔し気に空を眺めながら、窓枠(あると信じれば見える)を叩く。暫し肩を落とした後、でも、と嘉の方に向き直った。
「犯人が館の主人ってことは、お前は無実……疑ってすまなかったぞ……」
頭を下げる幸児に、嘉は軽く手を振ってみせる。
「いや、いいんだ。目的の物は、もう手に入ったからな。これでおさらばだ」
さて、あとは無事に宝玉と共にパーティから帰るだけだ……と鞄を手に、悠々と歩いていく嘉。いつの間にか手に持っていた、その丸く膨らんだ鞄には一体何が入っているというのか……こあら探偵がちょんちょんと幸児を突っつく。
「守都刑事、宝玉盗難はまた別の事件ですよ」
その指摘に、刑事もハッとする。そういえば犯人(ソレイユ)も言っていた。『宝玉はくれてやる』と。つまり、宝玉窃盗事件は彼の自作自演ではないということで……そうなると犯人は。
「そうだ窃盗も犯罪じゃねえかっ! まてー逮捕だぞーっ」
手錠を振り回しながら追いかける幸児。ドタバタの逃走劇を、死体役として倒れたまま萬は笑いを噛み殺しながら聞いていた。
(「あァ……こんなハロウィンも、悪くねェな」)
密かに天を仰ぐその口元には、客席からは分からない程度の笑みが浮かんでいる。一方の暁翔は、
「どうやら命だけで他はいらないようですので、此方で有効利用させて頂きますよ。ええ、これはただの廃品回収ですのでなんら問題ありませんよね……」
などと呟きながら、残った金目のものを次々に回収して回っていた。その蛇のような瞳が、不意に残ったこあら探偵を射貫く。
「……ところで、貴方の支払期日も近かった筈ですが……?」
あくまでにこやかな笑みを浮かべたまま詰め寄る悪徳金貸しに、シャムスは呆然と立ちすくんだ。
「……え?」
……暗転。
……と、新たな事件も予感させつつ、(このままでは本当に収拾がつかなくなりそうなので)舞台の幕は下りる。客席からは、一瞬の静寂を置いて、割れんばかりの拍手が聞こえてきた。
「すごいすご~い! 面白かった!!」
「手に汗握る、本格的な王道ミステリー……!」
「アドリブとは思えない……!」
などと、観客達は興奮しながら口々に感動を語り合っている。再び幕が開き、カーテンコールで演者一同が手を繋いで礼をした後も、拍手は止まない。今宵、ハロウィン。一夜限りの劇は、どうやら大成功で終わったようだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【友達催眠】LV1が発生!
【平穏結界】LV1が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【グロリアス】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!