鬼に逢うては鬼を斬る(作者 秋月きり)
#天正大戦国
#肥後国三つ巴の戦い
#肥後国
#龍造寺氏
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改竄世界史天正大戦国、九州。
部下の報告を聞いたジェネラル級天魔武者『龍造寺隆信』は驚愕に染まった声を上げていた。
「龍造寺四天王の精鋭部隊が敗北しただと! ディアボロスとはそれほどの力を持つというのか」
一頻り驚愕の声を上げた後、ぐぬぬ、と唸る。
そう、彼は彼で、一度天魔武者に敗北した復讐者達など相手ではない。その考えが捨てきれなかったのだ。故に、此度の報告は寝耳に水であった。
「やむを得ぬ。一旦、百武が守る阿蘇まで戦線を下げるのだ。真の四天王である百武賢兼であれば、ディアボロスといえど、敵では無かろう」
如何に精鋭と言えど、龍造寺四天王達も所詮は量産型。真なる四天王達の足下にも及ばない。
だが、その思いだけに慢心する隆信ではなかった。流石は九州三国志の一翼を担う男である。ただの天魔武者と格が違うのだ。
「その間に、新たな軍勢を編成して再侵攻の準備をせねばな。準備は、直茂、お主に任せたぞ」
主の命に従い、隆信の後方に控えていた天魔武者が任せよ、途ばかりにこくりと頷く。
彼の名はジェネラル級天魔武者『比異狼・鍋島直茂』。隆信が信頼する真の龍造寺四天王の一体であった――。
「龍造寺四天王との戦い、お疲れ様でした!」
そして、最終人類史新宿島新宿駅ターミナル。復讐者達の前に立つ時先案内人、シルシュ・エヌマエリシュ(ドラゴニアンのガジェッティア・g03182)は満面の笑みで、彼らへと労いの言葉を口にする。
「皆様の活躍で、肥後国に集結していた龍造寺四天王軍は撃破。大友氏の支援を受けた龍造寺氏による肥後国制圧の意図を挫くことが出来ました」
現在、立像自軍は阿蘇山含む肥後国北部に後退し、防衛戦を構築しているようだ。
「今は防衛に徹しようとしているみたいですが、当然、時間をおけば援軍を加え、再度、肥後国の制圧を目指して侵略を進めるでしょうね」
ならば、肥後国北部の龍造寺軍を撃破し、肥後国制圧を進めたい。それが本音であった。
だが、そうは問屋が卸さない。その理由は、肥後国南部にあった。
「龍造寺軍が敗退したと言う情報を得た島津軍が、肥後国南部への侵攻を開始したようなのです」
島津軍の目的は、復讐者と龍造寺軍が争っている隙に漁夫の利を得ることだろう。
詰まるところ、肥後国を完全に制圧するためには、北部の大友・龍造寺軍と南部の島津軍、双方を相手取る必要があるのだ。
「片方を相手取るか、それとも双方とも下すか。それは今後の攻略旅団の方針となると思いますが、ともあれ、今は戦いを推し進める時でしょう」
急ぎ、肥後国に向かい敵軍を撃破して欲しい。
シルシュは復讐者達へそう告げるのであった。
「此度、皆様に向かって頂く場所は、肥後国北部です」
龍造寺軍配下のアヴァタール級鬼『鬼武蔵』が詰めている簡易的な防衛拠点となる。
ちなみにその防衛拠点の他、幾つもの防衛拠点が龍造寺軍によって造られているが、多くの拠点が短期間の内に制圧されれば、龍造寺氏も肥後制圧を諦めざる得ないだろう、と言うのが時先案内人達の読みであった。
「とは言え、防衛拠点の制圧になりますので、力押しのみでは少々分が悪いかも知れません」
分が悪い程度の為、数の暴力も一つの手段ですが、と微苦笑したシルシュは、そして、言葉を続けた。
「それと、今後を考えるに、策謀を巡らすのも手ですね」
アヴァタール級を護衛するトループス級の鬼達を敢えて逃がすことで、龍造寺軍、延いては大友軍に欺瞞情報を流すことも可能だ。
「皆様の行動次第で、今後の動きが変わってくるかも知れませんね」
紫色の視線には、些かの期待が籠もっているように感じられた。
「ともあれ、肥後は北部と南部、双方を同時に制する事が出来れば理想ですが、複数のディヴィジョンで大規模な戦闘が予測されています。また天正大戦国だけでも、大阪方面、相模方面に戦線を抱えているため、全て相手取るのは難しいかも知れません」
一石二鳥との諺もあれば、二兎追うものは一兎をも得ずとの諺もある。
ともあれ、もしも北部と南部、片方に攻撃を集中させるのであれば、その旨、攻略旅団で提案して欲しいと時先案内人は告げる。
「まあ、ここまで九州の大名達が争っているのは、新たな断片の王『徳川家康』の影響力が行き届いていない証左かも知れませんね」
そうであれば、それこそ、復讐者達の成果だ。誇って欲しいと彼女は微笑する。
「皆様の御武運、お祈りしております」
斯くして、時先案内人は復讐者達をパラドクストレインへと送り出すのであった。
「びえー。龍造寺四天王の精鋭部隊を撃破したディアボロス達が、こっちに攻めてくるらしいぞ」
肥後国北部。防衛拠点の一つではそんな噂話が飛び交っていた。
声を上げているのはトループス級天魔武者『井芹党・水練仕様』達。防衛拠点を強化すべく土嚢を積み上げ、壕を掘りながら、しかし、手と同様に口もまた動いていた。
「まさか龍造寺四天王の皆さんが敗北するだなんて……」
「面白い方々だったけど、強さだけは本物だったのに……」
あ、龍造寺軍でもそういう扱いなんだ。
「とほほ。覚悟を決めるびえ。コッチには鬼武蔵さん一行がいるびえよ。何とかなるでびえ」
その為に拠点を強化するのだと、井芹党・水練仕様の一体が口にし、他の面々も作業へと戻っていくのであった。
リプレイ
獅子堂・崇
アドリブ連携歓迎
今後の作戦がどうなるかはわからないが、動けるうちに動いておくか。敵を倒して損はないだろう。
とはいえ、いつもながら拠点攻撃は苦手なんだが、愚痴を言ってもしょうがないな。やれることをやるとしよう。他にいい案があるなら乗らせてもらおう。
発煙筒を敵の防衛拠点前に投げ込んで注意を引いたところで突撃する。仲間がいるなら別方向から進んで敵の狙いを分散したいな。
見つかって攻撃されるのは覚悟の上だ。【ガードアップ】もあるから近づく前に倒れるへまはしない。
近づきさえすればこっちの領域だ。土嚢もろとも井芹党たちを蹴り飛ばしていこう。
確かに龍造寺四天王たちの相手は色々大変だったな。あれに比べれば拠点攻撃も大した手間ではないのかもしれないな。
文月・雪人
※アドリブ連携歓迎
三つ巴の戦いか。
肥後国を奪った勢力こそが、九州統一へ一手先んじられる、だっけ?
さてディアボロスにとってはどうなのか。
まあ、有力なアヴァタール級がジェネラル級へ、ホイホイ取り立てられたりとかしても困るしね。
北も南も何処までやれるか、やってみるしかないのかな。
仲間と連携し、協力し合って攻め入ろう。
簡易的とはいえ防衛拠点、敵は自分達が戦い易い様に場を整えている事だろう。
水連仕様のトループス級が濠を掘ってるという事は、
【水中適応】で水中戦にも備えておいた方が良さそうかな?
地形や敵の配置など素早く状況を確認し、
敵の動きを見極めながら、『海月爆殺結界』のパラドクスを使用する。
ほら、郷に入れば郷に従えとも言うし?
濠があるなら此方も濠に入って戦う構え。
可能なら先制攻撃を仕掛けつつ【ガードアップ】でビームに備え、
或いはビームに『クラゲ型爆雷』をぶつけ、敵至近で爆破させ攻撃する。
ふうむ、機械的セクシーさより、着ぐるみの可愛さの方が好みではあったり?
なんて軽口も叩きつつ油断なく攻めて行こう。
改竄世界史天正大戦国、肥後国北部。
急ごしらえの防衛地点を遠目で見詰めながら、獅子堂・崇(破界拳・g06749)は眉を顰めた。
「いつもながら、拠点攻撃は苦手なんだよなぁ」
やるだけのことはやるが、と呟く彼の目に嘘はない。心底より吐露する表情であった。
「まあ、今回の砦は簡易的で、力押しでも何とかなる、って言ってたし」
同じく防衛拠点を見詰めながら、文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)が崇の背を押すよう、言葉を口にした。
「……ともあれ、『肥後国を奪った勢力こそが、九州統一へ一手先んじられる』……だっけ? それはディアボロスに取ってどうなんだろうね」
肥後には優秀なアヴァタール級が数多居る。故に、それを得る事で、勢力を増やす事が可能。それが彼らの言い分だった。
優秀なアヴァタール級が居れば、取り込めるのがジェネラル級以上を抱える歴史侵略者達の強みだ。そして、それは復讐者側には無い特性である。ならば、肥後国を抑えたところで、復讐者側には利益が無いのだろうか。
「どのみち、敵を倒して損はないだろう」
崇のシンプルな言葉に、成る程、と雪人は頷く。
「そうだね。有力なアヴァタール級がジェネラル級へ、ホイホイ取り立てられたりとかしても困るしね」
肥後の北も南も大騒ぎ。何処までやれるか判らないが、やってみるしか無いのだ。
「よし。ならば攻めよう」
「まずは砦攻め。そしてアヴァタール級を討つ。やれることは他にあるかも知れないけど、とりあえず、頑張ろう!」
心を決めたと二人は頷く。
そして、身を屈めながら砦へと近付いていった。
「敵襲だ!!」
実行されたそれは文字通り、急襲であった。
崇の投げ込んだ発煙筒が煙を吹き出すと同時に、二人は跳躍。声を上げたトループス級天魔武者『井芹党・水練仕様』の一体へパラドクスを叩き付ける。
それは天すら砕く勢いの上段回し蹴り。
それは浮遊し、敵と共に破裂する海月型爆弾。
「これは避けられないぜ」
「郷に入れば郷に従えとも言うけど……とりあえず、まずは陸戦で頑張らせて貰うよ!」
城壁の内外に掘られた濠を一瞥し、雪人はふぃっと微笑する。
「土嚢に壕に、何とか頑張りました! って体裁だな! だが、こんなんじゃ、俺達は止められないぜ!」
壕を飛び越え、柵を跨ぎ、そして土嚢を蹴飛ばす。
防戦にと放たれた水流は取り敢えず我慢。有効打にならなければそれで良いと、残留効果【ガードアップ】に任せ、そのまま井芹党達へと肉薄する。
事実、運が良かったのか。それとも残留効果のお陰か。
穢れを払う水流は、しかし、崇の勢いを止めるに至らない。
顔に浴びても怯まないのは、雪人が付与した【水中適応】の効果では無いだろうが、ともあれ、井芹党達のパラドクスは、勢いに乗る彼を止めるに至らなかった。
「ならば、後衛を!」
「吶喊なんて、敵陣を崩せば終わりよ!」
崇の勢いが止まらないことを悟ったのか、井芹党達のパラドクスは、彼を補佐する雪人へと矛先を変える。病魔撲滅に込められた艶やかな挙動は、その手の趣味の持ち主ならば虜になっていたの違いない。
だが――。
「ふうむ、機械的セクシーさより、着ぐるみの可愛さの方が好みではあったり?」
雪人にその手の趣味は無かった。
むしろ、井芹党に惑わされる趣味を持つ方が希有だろう、と思ったが、それは口にしないことにした。激昂させても良いことは何一つ無い。そういう判断であった。
「わ、我等のセクシーアマビェーム! が効かないなんて!」
「この誘惑22Lvに屈さないとは! どれだけ強靱な自我を持っていると言うの?!」
「……いや、そんなメタな」
思わず零した乾いた笑いと共に、再度、海月型爆弾を叩き付ける雪人。
ちなみにレベルだけで言えば、彼の方が分が悪かったが、それが勝利の優劣に結びつかないことを、彼は知っている。如何に技能が高くとも、残留効果やパラドクス程の優位は生じない。それは復讐者側も歴史侵略者側も同じだ。
「まあ、技能があるから俺が浄化されるって言われても困るしな」
たじろぐ井芹党を蹴倒し、崇もぽつりと呟く。
因みにレベル差だけで言えば崇のグラップル技能と井芹党・水練仕様の浄化は天と地程の差がある。だが、それでも、技能のみで優位に立てるほど、この世界が甘くないことも彼は認識していた。
「ま、龍造寺四天王達相手が色々と大変だったんだ。それに比べれば拠点攻撃なんて、大した手間では無いかもしれん」
何気ない呟きは、しかし、井芹党達の戦慄を呼ぶには十分だった様だ。
「ま、まさか、お前達があの龍造寺四天王達を――総計6体と言うべきか30体と言うべきか困る龍造寺四天王達を――」
当然、日向に攻め込もうとした龍造寺四天王達を制したからこそ、崇も雪人もこの場所にいるのだが、それをわざわざ口にするつもりはない。
龍造寺四天王達を倒した。その功績だけで十分なのだ。
「あ、敵側でもそういう認識なんだ」
故に、雪人は軽口を零し、共に海月型爆弾を投げつける。
再度巻き起こった爆発の中、崇の化鳥の如き鋭い蹴りが、井芹党の一体を貫き、地へと沈めていった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【エアライド】LV1が発生!
【水中適応】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV2が発生!
文月・雪人
策略情報戦を行える余地が在るのは有難い。
会話に偽情報を混ぜつつ、
龍造寺と大友の同盟関係を邪魔したい。
龍造寺・大友連合軍とはね。
まさかあれだけの戦力を失ったのにまだ気付いていなかったとは、
どうやら龍造寺隆信は権謀術策には疎いらしい。
俺が言うのもなんだけど、手を組む相手は選んだ方が良いと思うぞ?
大体さ、日向襲撃の引き換えに肥後の領有を譲るだなんて、
同盟の条件からして話が上手過ぎるとは思わなかったのか。
何故知っているかって?
俺達もまた龍造寺軍の動向を大友軍から聞いたからだよ。
日向へ手を出そうというのなら、俺達だって黙っちゃいない。
大友宗麟は、俺達が先手を打つ事を計算した上で、
お前達龍造寺軍を肥後へと誘い出したのさ。
俺達と潰し合わせた上で、大友軍が漁夫の利の勝利を得る為にね。
そんな相手に背中を任せるなんて、俺達から見れば正気の沙汰とは思えないけど、まあいいさ。
利用されたのは癪だけど、お陰で厄介な龍造寺四天王達相手に先手を打って戦えた。
その事実に対してだけは、礼を言っておくべきなのかもしれないね。
肥後の防衛拠点を巡る戦いは続く。
自身等を襲い来る歴史侵略者達を前に、文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)はふむ、と一言唸る。
そして。
「龍造寺・大友連合軍とはね。まさかあれだけの戦力を失ったのにまだ気付いていなかったとは、どうやら龍造寺隆信は権謀術策には疎いらしい」
周囲に響く声でハッキリと口にした。
「戯れ言をっ?!」
否定の一喝がアヴァタール級鬼『鬼武蔵』から飛ぶ。
龍造寺の将として、流石に雪人の言葉は看過出来なかったようだ。
だが、その反応ににんまりと微笑んだ雪人は、更に言葉を続けた。
「さて。戯れ言かどうか。ともあれ、言っておこうか。手を組む相手は選んだ方が良いと思うぞ? と」
「黙れっ!」
気合い一閃。
鬼武蔵から放たれた蹂躙の一撃は、雪人を唐竹割りに斬り裂き、しかし。
「だいたいさ、日向襲撃の引き換えに肥後の領有を譲るだなんて、同盟の条件からして話が上手過ぎるとは思わなかったのかな?」
斬り裂いた筈の雪人は、無傷で言葉を紡いでいた。
その刹那、鬼武蔵は悟った。
今し方、自身が斬り裂いたのは雪人が造り上げた幻――幽体じみたデコイである事を
「「――ッ!」」
息を飲む声が聞こえた。
それを零したのは鬼武蔵を護衛するトループス級『『鬼馬軍団』弓術兵』達であった。
「敵の言葉に耳を貸すな!」
トループス級はアヴァタール級に逆らえない。
それは命令系統のみの話では無い。トループス級はより上位の歴史侵略者の命令に無条件で従う性質があり、故に広がった動揺も、鬼武蔵の一喝で、刹那に終息していく。
だが――。
(「厄介な事をっ!」)
鬼武蔵は認識している。彼らに走った動揺は、おいそれと拭えないことを。
何故ならば、雪人の言葉は相応の説得力を有していたからだ。
「大友宗麟は、俺達が先手を打つ事を計算した上で、お前達龍造寺軍を肥後へと誘い出したのさ。俺達と潰し合わせた上で、自軍が漁夫の利を得る為にね」
そんな相手に背中を任せるなんて正気の沙汰では無い。
雪人は大仰に肩を竦めると、再度と鬼馬軍団達へパラドクスを叩き付ける。
その破壊や斯くや。
簡易柵が吹き飛ばされ、その周囲を駆け抜ける鬼馬軍団の一角もまた、同じく弾き飛ばされていった。
「ああ。そうだね。俺達も腹立たしい。だが、それによって俺達は島津を牽制し、厄介な龍造寺四天王相手に先手を打てた。その事実だけは礼を言っておくべきかもしれないね」
「ま、まさか、龍造寺四天王様が討たれたのは、大友の差し金――?!」
正史を鑑みれば、耳川の戦いで弱体化した大友に変わり、興隆したのが竜造寺氏だ。
だが、天正大戦国での耳川の戦いは、事情が異なる。
戦いそのものを制したのは復讐者達であれど、島津と大友との諍いは痛み分けに終わっている。即ち、大友側が正史ほどの被害を出したのかと問われれば、微妙と返さざる得なかった。何より、豊後王の異名を誇った大友宗麟が未だ健在なのが、天正大戦国の九州地域なのだ。
ならば、正史の通りに事が進む筈も無い。
雪人の浮かべる薄い笑いは、鬼馬軍団達にそう告げる様であった。
(「……まあ、トループス級が正史を理解している筈も無いけれども」)
天正大戦国から見れば、最終人類史は遙かな未来。それは、平安鬼妖地獄変を出自とする雪人にとっても同じ事だ。そして、ここは改竄世界史。正史語りに何処までの意味があるかは不明だし、それを一概に言及することは出来ないだろう。
「はっ。否定するなら否定すればいい。もっとも……そんな材料があれば、だけどね」
不和の種は此処に撒かれた。
雪人の言葉が何れどの様な芽を育むか。それは彼自身にも判らなかったけれども。
その種は確かに撒かれていたのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!

三苫・麻緒
(トレインチケット)
「ふむ。つまり、敵を逃がし、欺瞞作戦を行うのが此度の本懐のようだな」
仲間達の動きを分析し、ハインツ・ゼーベック(猖獗・g00405)はふむ、と頷いた。
「成る程にゃ~。嘘情報を敵に流し、持って帰らせるのにゃね」
彼の独白に追随するのはフラーニャ・ポラット(ウェアキャットの亜人スレイヤー・g08918)。猫口調であるが故、軽薄にも聞こえるが、しかし、芯は捉えているとハインツは彼女に頷き掛けた。
「だったら、私達のすることは一つだね」
三苫・麻緒(ミント☆ソウル・g01206)は意気込み、びしりと沸き立つ敵陣営を指差す。
実の処、露払いに来たつもりだったが、その考えは今し方、きっぱりと捨てた。
情報戦を展開する以上、取り巻きであるトループス級鬼『『鬼馬軍団』弓術兵』達は残し、龍造寺隆信の元へ帰投して貰わなければならない。それこそが本作戦の要となるのだ。
麻緒は細かいことを気にしない性格だ。だが、持ち前の性格と本質を見抜く目は別物でもあった。
「しかし、全て大友軍の策略と言う事にして、同盟の瓦解を目論むなんて、なかなかどうして」
何処か皮肉げなハインツの微笑に、だにゃぁ、とフラーニャは同意じみた微苦笑を浮かる。
歴史侵略者の中には復讐者達との同盟を求める者もいた。その結果を鑑みれば、此度の作戦はむしろ、復讐者達のやって来た事をなぞっているとも言えた。
「まあ、でも、此度のみでそれが叶う筈も無い。だが、種を撒くことは無駄にならないだろうね」
欺瞞作戦も、ただの一つの情報のみではそれこそ、戯れ言や法螺と処理されてしまうだろう。
これもまた、どれだけ数を積み重ねられたか、が鍵となる筈だ。
「じゃ、それのお手伝いが出来る様、頑張っちゃおう」
萌葱色の瞳を輝かせ、麻緒がおーと片手を上げる。
それに釣られたのか、ハインツもフラーニャもこくりと頷き、そして、三者は戦い続く敵陣へと向かっていった。
「前線に必要な物資は用意してあるとも」
騎馬、もとい鬼馬入り乱れる戦場へ駆け付けたハインツは、刹那に輜重部隊を呼び出し、アヴァタール級鬼『鬼武蔵』の元へと吶喊させる。
本来ならば前線を支援する筈の補給部隊がそのまま突入してきたのだ。これには鬼武蔵も驚愕の声を上げざる得なかった。
「何とぉ?!」
「まあ、援護する身である以上、パラドクスは選べないからね。致し方ないと諦めてくれ」
大人の事情という奴だ、とハインツは片目を閉じる。
「それでも、攪乱は出来るにゃっ。いけっ。スフィンクス! フラーニャ達が怒ったら怖いところを見せるにゃっ!」
そこに飛び込むのは、巨大な猫神の幻影を携えたフラーニャであった。精神を惑わす光を鬼武蔵へ叩き付け、返す刀の緑色した水塊にうにゃにゃと騒然とした声を上げていた。
「おのれっ。ディアボロス!」
「滑り落ちるは儚い白。……さて、音はどこから?」
呻きと怒号の声は、しかし、即座に掻き消されていく。
麻緒が召喚した吹雪はそんな鬼達を包み込み、純白へと染め上げていった。何より特筆すべきはその雪に付与された魔力だ。融解の力は氷片ではなく、それが付着した鬼武蔵へと作用する。即ち――。
「ぐわっ。俺の身体が、溶ける?!」
麻緒の吹雪の込められたそれは、侵蝕の魔力だ。それらが鬼武蔵の身体に食い込み、そして爛れさせて行く。まるで酸を掛けられたかのような惨事が、彼の纏う鎧とそして皮膚、血肉に発露していた。
「簡単に終わるなんて思わないでねっ!!」
彼女の一喝に対し、再び緑色した水塊が飛ぶものの、それらを受け、全身を濡らしながら麻緒は再度のパラドクスを紡いだ。
緑色の水塊はパラドクスそのもの。故に痛い。だが、それで脚を止める麻緒ではなかった。
「貴方達にも色々とあるかもしれない。けど、そっちの事情に興味はないよ。だから、覚悟して!」
敵は歴史侵略者。そして、何やら画策している。その情報だけで麻緒には十分だった。
敵ならば倒す。それだけの話だ。
吹雪の中、更なる輜重部隊――荷駄馬や荷駄車の群れが、そしてそこに追随するよう、巨大なスフィンクスの幻影が駆け抜ける。
「さて。君達を討つ本命は残すが、この命令だけは下させて貰おう」
小隊までに膨れ上がったパラドクス群の背後で、ハインツが指揮者の如く腕を振るう。
涼しげな顔に浮かぶそれは、ある種の怒り。そして冷徹な高揚感であった。
「――全軍攻撃開始」
「オーライだにゃ! ウララララララ!!」
静かな命に従うよう、フラーニャの高らかな声が、肥後の駐屯地へと響き渡っていった――。
善戦🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【おいしくなあれ】LV1が発生!
【泥濘の地】LV1が発生!
【照明】LV1が発生!
効果2【リザレクション】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
文月・雪人
※アドリブ連携歓迎
■心情
情報の流布に関しては何とか上手く運べそうだね。
ならば次は大将戦だ。
敵陣に広がった動揺を見逃さず、隙を突く形で鬼武蔵を討ち取って、
この地の戦いを制しつつ、自然な流れで弓術兵を撤退させよう。
■
さて、お喋りはここまでだ。
肥後の地を奪った勢力こそが、九州統一へ一手先んじられるのだろう?
ならば俺達も負ける訳にはいかない。
この戦いを制して、肥後国を九州をディビジョン全土を奪還する為の大きな一歩としてみせよう。
今こそ勝負の時だ、その首貰い受けるぞ鬼武蔵!
『光明一閃』のパラドクスを使用する。
雪月花の刀を構えつつ、
パラドクスで高めた観察眼と洞察力で、敵の本質と弱みを読み取り【命中アップ】。
猛然と迫り来る鬼馬の進路を冷静に見極めて、刀を合わせて『光明一閃』!
踏み潰そうとする鬼馬の攻撃に対して【ガードアップ】で持ち堪えつつ、
相手の鬼馬の勢いもまた上乗せして利用する形で刃を走らせ攻撃する。
【パラドクス通信】で仲間と情報共有しながら連携し、
着実に攻撃を重ねてダメージを蓄積させていこう。
獅子堂・崇
アドリブ連携歓迎
雪人のおかげで敵に隙ができたな。立て直される前に鬼武蔵を倒させてもらおう。
これ以上敵に情報を渡す必要もない。けりをつけさせてもらうぞ。
さっき見た鬼武蔵の動き、容易い相手じゃないな。だからこそ連携させる前に畳み掛けさせてもらう。
今の俺にできる最大火力で短期戦を仕掛けよう。
空高くジャンプして念動力を纏った急降下の飛び蹴りを食らわせて、突っ込んでくる鬼武蔵を真っ正面から迎え撃つ。
敵の反撃は【ガードアップ】を活用してダメージを抑えるように立ち回ろう。致命傷さえ避ければまだ戦える。
弓術兵たちが撤退するならよし、まだ戦う気概があるようなら不自然にならないよう鬼武蔵との戦いでの傷を理由に退くとしよう。
この一戦が九州の現状を動かす一手に繋がればいいな。
「てめぇら、気張りやがれ! ディアボロスなんかに押されるんじゃねぇ!!」
複数名の復讐者、そしてトループス級やアヴァタール級が入り交じる多対多の衝突の最中、アヴァタール級鬼『鬼武蔵』の怒声が響き渡った。
龍造寺の名に掛けてここは退くつもりはない。そう叫ぶ彼らに、しかし、と首を振る人物がいた。
白銀の刀を構え、悠然と立つ文月・雪人(着ぐるみ探偵は陰陽師・g02850)であった。
「さて、お喋りはここまでだ」
既に言うべきことは言い、やるべきことは行った。
ならば、後は敵を討つのみ。
(「そして、大友の偽情報を持ち帰って貰うよ」)
動揺走るトループス級達を一瞥し、雪人は挑発的な笑みを形成した。
「肥後の地を奪った勢力こそが、九州統一へ一手先んじられるのだろう? ならば俺達も負ける訳にはいかない」
この戦いを制し、肥後国を、そして九州、延いては天正大戦国のみならず全ての改竄世界史を奪還する足掛かりとさせて貰う。
その決意と共に、雪人は白刃の切っ先を鬼武蔵へと突き付けた。
「今こそ勝負の時だ、その首貰い受けるぞ鬼武蔵!」
「ああ。そうだ。けりをつけさせてもらうぞ」
雪人に同調し、獅子堂・崇(破界拳・g06749)もまた拳を鬼武蔵へと突き付ける。
そして挑発紛いの弁舌を叩き付けるのだった。
「これ以上貴様らに情報を渡す必要もない。貴様らを粉砕し、この戦いを終わらせてやろう」
「ふざけんな! 死ぬのはお前らだ!」
ここまで挑発され、反論しないのは鬼が廃るとばかりに鬼武蔵は声を上げる。
それは鬼としての矜持もあった。歴史侵略者としての矜持もあった。何より、アヴァタール級の自身が高々復讐者如きに揶揄されている。その事実を憤慨とばかりに叫び、回転鋸式の槍を唸らせる。
「そのよく回る口から斬り裂いてやろうか! ディアボロス!」
「はんっ。やれるもんならやってみな!」
「この戦いを制するのは俺達だ」
激怒の叫びに、二人の不敵な表情が重なった。
「オラオラオラオラオラオラオラ!!」
その一撃は、まさしく疾風怒濤であった。鬼馬を駆る鬼武蔵は、雄叫び混じりの咆哮と共に、雪人と崇へと突っ込んでくる。鬼馬の蹄、そして鬼武蔵の機械式長槍。その双方が二人を打ち砕き斬り裂くべく、蹂躙の勢いを叩き付けてきた。
だが、二人とも、その吶喊を黙って受ける理由は無かった。
「見えた、進むべき道はこの先に!」
「蹴り貫く!」
雄叫びを上げる鬼武蔵へ、対の光が奔る。
一つは白銀。雪人の繰る日本刀、雪月花の一撃は鬼武蔵を斬り裂くべく、空を走る。
そしてもう一つは蹴打。勢いよく跳躍した崇の跳び蹴りは鬼武蔵の胴鎧を捉え、そのままの勢いで彼の身体を弾き飛ばす。
「ぐぬっ?!」
人馬一体とは正にこのこと。
双方の衝撃を受け、しかし、鬼武蔵は崩れない。人であれば踏鞴を踏むと言ったところか。堪え、落馬を免れた彼はそのまま、肉薄した二人を断切すべく、己が長槍を振り下ろす。
だが――。
「甘いね!」
ガリガリと白銀を梳り、火花が飛び散る。
雪人の構えた刃に回転鋸が喰い付き、それを梳る――その筈だった。
響く鋭い音はそれを為す証左の筈だ。だが、それ以上刃を断つ事が出来ない。表皮を梳り、鉄粉を撒き散らすが、力の大半は受け流され、地面を切り崩すに留まってしまう。
「お前の動きは既に見切った」
如何に回転鋸であろうとも、それが刃である以上、受け流す手段はある。雪人の洞察力と観察眼はそれを可能としていた。
そして、それは彼のみでもなかった。
「これで、終いだ!」
地面を梳る長槍を踏み台に、崇が遙か彼方へと跳躍する。
まるで化鳥の如きそれを打ち払うべく、鬼武蔵は己が長槍を引き上げようとし、しかし、それが叶わない事を知る。
猛回転する穂先は地面に食い込み、そして柄は雪人の刃に抑えられている。如何に鬼の膂力とは言え、それら全てを弾き飛ばし崇を迎撃するには刹那の時間を有してしまう。そして、その隙は、崇にとって充分と言える時間でもあった。
「雪人が稼いでくれた隙だ。立て直す時間は与えん!」
その宣誓の元、彼の蹴りが鬼武蔵へと降り注ぐ。
まるで流星の如き一蹴を、しかし、鬼武蔵は回避も防御も出来ない。ただ無防備にそれを受ける事しか、彼には許されていなかった。
「ぐぎゃぁあっ!」
如何にアヴァタール級の体力と言えど崇の全身全霊の一撃を受け止める事は出来なかった。まして、彼は雪人のパラドクスどころか、此処に至るまでに幾多の復讐者のパラドクスを受けているのだ。
致命傷に至る一撃は、止めとなった蹴撃であった。だが、其処に至った全てが彼の命を奪ったのだ。
身体を貫かれ、絶命した鬼武蔵は、そのまま、鬼馬の上から崩れ落ちる。ぐしゃりと何かが潰れる音が響き渡り、そして、地へと叩き付けられた彼はそのまま、二度と動くことは無かった。
「お、鬼武蔵様がやられた?!」
「た、退却っ。退けっ。根切りにされる前に、竜造寺様へ報告するのだ!!」
アヴァタール級の死と言う現実に、トループス級達から動揺が走る。
だが、彼らもまた、訓練された兵であった。主の仇と散ることでは無く、今後の戦いを有利にすべく、己が役割を全うする。その思いと共に叫びながら四方八方へと散っていく。
「……ま、それが目的なのだけども」
深追いはしないという体で微苦笑を浮かべた雪人は、自身等も撤退すると、崇へ振り返る。
崇もまた、同じ笑みを浮かべ、そして、雪人へと言葉を告げた。
「この一戦が九州の現状を動かす一手に繋がればいいな」
「ああ、……ま、そうなるべく踏み出した大きな一歩だよ」
この一歩がどうなるのか。それはまだ判らない。この一歩で途切れさせないよう、二歩三歩と続ける必要があるだろうし、もしかしたら、続かない可能性もある。良き方向に向かうこともあれば、裏目に出る可能性もある。そう、世の中に絶対が無いことを雪人は知っている。
だが、それでも踏み出した一歩だ。ならば、この先どうなるか。それを見届けたいと思う気持ちもまた、彼の本心であった。
「さて。俺達も帰ろう」
雪人の言葉に、崇は是と頷く。
そして二人は、崩壊する竜造寺軍の駐屯地を後にするのであった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【建物復元】LV1が発生!
【落下耐性】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV2が発生!