リプレイ
ゼキ・レヴニ
◎
一旦仲間にはトレインで待って貰い
先行して独り戦場へ
先ず隊の奴らを安心させにゃ
それにあの野郎とは一度サシで話したい
転移後、即【防衛ライン】を己の真後ろに引き
鉄条網に変じた『躯』を絡みつかせてヘルデンを抑えつつ、隊に呼びかける
ラナ、エド。皆を頼む
今までおれが何度死に損なってきたか、忘れたって事はねえだろ?
煙草を銜え、余裕ぶった笑みで
きっとそれだけで分かってくれる
ああ。
迷子がやっと家に辿り着いた気分だぜ
「スラグ」の皆が生きて此処にいる
なァ、お前だってそうだろ、ヘルデンブッフ…いや、「ヨハン」
『躯』に込めるは共に潜った死線の記憶
思い出してくれ、なあ!
裏切ったお前を最初は憎んだ
引きちぎったお前のポケットの中のコインが、裏切りの対価だろうと
だが違った。お前もただ家族を守ろうとしただけだった
おれに全員を守る力があれば、お前は裏切る事もなかった
だからこの一瞬の為に力をつけた
お前が家族を二度と失わねえように
共に戦場を駆け、共に地獄へ行こうと約束したお前を独り、地の底に叩き込む為に!!
…恨んでくれ、ヨハン
「……——フゥ」
深呼吸をする。
この緊張に何と名をつけたらいいのかなど見当もつきやしない。ただ、
「いってくる」
そう告げた背を叩き、言葉なき声で支えてくれる幾つもの手がある“今”も、離したくなかった隊員たちの手を取れなかった“過去”も、きっときっと全てをひっくるめてゼキ・レヴニ(Debaser・g04279)は“ゼキ・レヴニ”なのだ。
『隊長!』
『うぉん!っうぉん!おん!』
パラドクストレインから踏み出した瞬間、ゼキの鼻腔を土と咽る木々と汗の臭いが綯交ぜになったものが抜けてゆく。
空気の海に落ちたような感触と確かに“自分”と視線が合ったのを認識した直後、戻ってきたリアルな重さと匂いを得た瞬間に耳を打った声二つ。
忘れていなかったはずの声を記憶と合致させ、名前を呼ぼうとしたゼキはごくりと息を呑む。
『早くしろ!』
『みんな、さがって!!』
「(ああ、)」
切羽詰まった“鋼”と“茨”の声も、二人が逃げろと声掛けする隊員たちが一緒に逃げようとゼキを呼ぶ声も、軍用犬たる彼が賢く立ち回ろうとしてヘルデンブッフへ躊躇い交じりに威嚇するような咆哮も。
何もかも、ゼキは知っている。
記憶より鮮明な隊員の声に涙を呑めば、ぐうっと喉が鳴りそうになりゼキは歯を嚙みしめてやり過す。
——感傷に浸る暇など、在りはしない。ヘルデンブッフが得物を握りしめるのが、ディアボロスたるゼキの目には見えたから。
“顔を上げろ”と言った相棒を、“承った”と凛と笑った友を、“望む結末へ”と微笑んだ友を、“いっしょにがんばるぞ”と拳を打った友を、“思うように、悔いなきように”と背を押してくれた友たちが待っている——!
あの時できなかったことを、今。
手を伸ばし掴んだラナとエドを背の隊員へ投げたゼキは踏み出す、燃えるような瞳でヘルデンブッフを見据え一歩。
「……迷子がやっと、家にたどり着いた気分だぜ」
●その日、古い傷跡に爪を立てる
『死ね——悉くッ!! ……疾くッ!!!』
「ラナ! エド! 皆を頼む!」
『『っ、隊長
……!?』』
吼えるように手中の得物をゼキへ振り下ろすヘルデンブッフに、躊躇いはない。
その一撃を防ぐようにゼキが腕でガードしながら振り返らず叫んだ時——鋼の剛腕が、白日に晒された。
ゼキの言葉に重ねるように叫んだラナも、若い隊員に受け止められたエドも、二人を必死に受け止めた隊員も、鉄の剛腕に息を呑んだのは無理もない話。
——彼らの“記憶”のゼキは“人”だったから。
「今までおれが何度死に損なってきたか……忘れたって事は、ねえだろ?」
問う視線に気付かぬフリをしヘルデンブッフの得物を殴り上げたゼキは振り向き、まるで日常の延長線のように笑うと次の瞬間には背を向けていた。
打ち込まれるヘルデンブッフの攻撃も余波も食い止め、口元から棚引いた葉巻の煙を霧散させながら。
『……何よあの顔』
震える声で呟いたラナの肩を、エドの手が軽く叩く。緩やかに首を振るのに反し軋むほど握りしめた拳を隠し、ひどく凪いだ声で。
『……ラナ』
『…………わかってるわ』
“どうして”と問うほどの時間は無い。“なによ”と絞り出すようにラナが呟いたことと、その頬に一粒の涙が滑り落ちたことを“隊長”は知らぬまま。
『……隊長に頼まれて、断る隊員がいると思っているのかしら』
『さぁな。だが、隊長は分かっているんじゃないのか』
『……男同士だから肩を持つ、ってワケ?』
『まさか。俺たちの隊長、だからに決まっている』
“なによそれ”と笑って目元を摺ったラナの号令は早かった。惜しむように振り返りながら立ち上がった隊員たちが、ゼキと反対方向へ進んでゆく。
『——隊長! 合流は必ずいつもの合図を忘れるな!』
「——おう」
エドの言葉に振り返り、たしかにゼキは全ての隊員を見送った。
去り行く背を惜しみ、惜しまれながら。互いに言い残した言葉の全てを、喉の奥へと押し込めて。
『余所見ヲッ——するなぁ
!!!!』
「しちゃいないさ。送ってたんだよ、俺の“家族”をっ……!」
頭上から力一杯叩き下ろされる一撃に蹈鞴を踏む。
軋む腕で受け止めたゼキが歯を食いしばりヘルデンブッフを睨み上げるも、その内心は笑っていた。
どうしたってクロノス級である試作機 ヘルデンブッフの一撃は重く、幾度も受け止めては押し返し続けた利き腕が軋んだのだ。
だがそんな痛みも、踏み込んだ瞬間にゼキが己の真後ろへ引いた一直線の防衛ライン—―PD―走狗の檻―を切らせない強い決意のもとに吹き飛ばす!
『ハハ……クク……お前たち人間は、哀れだ。人間など、っ——どうせ等しく死ぬのだから!!!』
「そうだ、いつかは死ぬ。“生きてる”からなっ!」
飛び退き体制整えたヘルデンブッフは、突如反撃は転じたゼキに、一瞬面食らうのさえ織り込み済み。
突き出されたゼキの拳を咄嗟に仰け反り寸で躱したヘルデンブッフの無防備に突き出された腹へ見舞われた、ゼキの鋭い一蹴。
『っ逃がした、ところでっ……ゲホッ——!』
舌打ち一つ、吹き飛ばされ何とか踏みとどまったヘルデンブッフの身へ被る影。
ゼキの手で力一杯襟首を掴まれ咽たヘルデンブッフがギロリとゼキを睨み至近距離から拳を見舞おうとした、その時。
「……——こんなこと、前にもあっただろうが」
“ヨハン”
耳管機構を打つ、古き名。捨てさせられた名。
試作機 ヘルデンブッフ——……否、スラグ小隊副隊長 ヨハンは瞠目し、振り上げたはずの拳がだらりと力をなくすと同時、ヨハンがマスクの裡ではくりと唇を動かし呼んだ名が音にならずとも、至近距離でのぞき込んでいたゼキには届いていた。
『 、』
「なァ、お前本当は全部巻き込めただろ……けど、しなかった。そうだよな……スラグの皆が生きてたんだ、できるはずもねえ」
——今のゼキなら、ヨハンの事情も知っている。
同じ“家族”をもつ同士、理解者であったはずなのに。決して守りたいもののせいで隙が生まれたわけではなく、ただ互いの心に差した魔が道を違える起因になっただけの話だと。
「……あの時、最初はお前を憎んだ」
『ソ、れは——おれ、ハッ……!』
「裏切りの対価が、お前のポケットにあったコインだろうと……いや、違うよな。お前も、家族が守りたかっただけだ」
『——お、レは。おれは。俺はっっ……! 離せっ!! ァァァアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛!!!! お前も!! 奴らも!! 殺す!! 我らが——“王”のために!!!』
ゼキの手を振り払い、素早く飛びのいたヘルデンブッフが頭を抱えのたうち回ると唸り声をあげ叫ぶ。眉間に皺をよせ、くぐもった声で叫ぶのは先程から繰り返される“入力された命令”のみ。
一瞬穏やかになったかに見えた瞳を、今は人間性を排除したように爛々とさせ携えた得物を握り締め軋ませながら獣のように呼気を荒げ——踏み出す!
『死ネ——アァァァアアアアア死ね!!! おまえはスクラップにしろと!! 我らが王はっ、命じられたのだっっ!!!』
「……おれに全員守る力があれば、お前は裏切らずに済んだ。だが、」
もう、互いに戻れないところにいるのならば“今”どうすべきか。
「お前がもう二度と家族を失わねえように、おれがする」
『うるさいっ! うるさいうるさい黙れぇっぇえええ!!!』
鈍く輝く戦斧へと得物を変じたヘルデンブッフが振り抜く一歩をしゃがみ躱したゼキが、もう手に馴染む己の得物を握り締めた。
「地獄みてえな戦場は、お前と駆けた。だが、地の底にはお前を独り叩き込む!!」
長き友を送るのは、朽ちた英雄が悉く送られた場所。
いっそ恨んでほしかった。
いっそ罵ってくれればよかった。
いっそ。
いっそ、
「……なんで、打ち明けられなかったんだろうな」
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【防衛ライン】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
ゼキ・レヴニ
◎
相変わらず
正反対なのに、似たモン同士だ
おれもお前も全てを賭けて
何もかもを溢しちまった
打ち明けて欲しかったなんざ今更か
だから今度こそは
あいつらの命も…本当のお前も!
復讐者のおれの全てを賭けて取り戻す!
来てくれッ、皆!!
信頼する仲間や相棒と共に立てば
心が奮い立ち負ける気がしない
それは懐かしい感覚で
思い出さねえか、ヨハン
血と泥に塗れ、共に死線を潜り抜けた日々を
焚火を囲み、語り明かしたあの夢を…!
銃剣で刺されたら
抜けん様刃を掴み記憶を流し込む
本当の英雄が何処に居るか
んな事ぁ分かってるだろうが…!
思い出せッ!!
隊の一人一人の記憶を『躯』に宿し叩き込む
生きるも死ぬも共にと誓い
それでも道を違えた盟友への想いは拳へ込め
終わらせようぜ、お前の悪い夢を
おれたちの、長い夢を
帰路につく前に立ち止まる
この時代のおれは…隊の奴らと行けるんだな
約束通り、地獄の底まで
きっとお前にもすぐ追いつく
だからもう忘れんなよ…兄弟
ヨハンが逝く前に己のドッグタグを握らせ
涙を拭って差し出された手を取ろう
…帰ろうかね
もう一つの”家”に
ジズ・ユルドゥルム
◎
「穹き金瞳の翼」を起動
戦場に風を吹き荒れさせ、ケレイに急降下攻撃の合図を出す
同時に斧を抜き放ち
ヘルデンブッフの眼前に躍り出、正面から斬撃を放つ
やぁ、ヨハン。不躾な挨拶ですまない
君にゼキを、スラグの皆を――家族を殺させはしない
手荒く止めさせてもらうぞ
銃剣は「鋼の要塞」の如き大盾の記憶を読むことだろう
ははッ、見慣れた盾が出て来たな
叩き伏せられる側になるのは、初めてだがな…!
大盾を槍で受け止めると同時
側面からケレイの趾による蹴撃を見舞おう
目覚めの一撃だ、ケレイ!
戦面を外し、ヨハンへ語り掛ける
貴様は黙っていろ、ヘルデンブッフ。私達は「ヨハン」に話している
…もしもゼキと重荷を分かち合えていれば
君がこれほど苦痛に苛まれることは、なかったんじゃあないか
…君も、彼のきれいな光を、曇らせたくなかったのか?
だとしたら…
…気持ちは、分かるよ
帰路、ゼキの足が止まるのを見て
しばし見守った後、手を差し出す
この手を取ってくれるなら、思いっきり引っ張ろう
過去の暖かさに、足がすくんでしまわないように
一緒に帰ろう、相棒。
オード・レヴニ
◎
馬鹿兄貴には来るなって言われたけど…
言う事なんて、聞く訳ない
あの人にお別れを言わなきゃ
わたしがスラグに居たのはこの事件が起こる間際のたった数ヶ月
けど、彼らはわたしにとっても家族だった
遠ざかる背に、生きてと心の中で念じ
ヘルデンブッフに呼びかける
ねえ。「父さん」
あなたと過ごせたのは数ヶ月だけど
穏やかで真面目なあなたは、沢山愛情を注いでくれた
…全てを犠牲にしても、わたしを守ろうとしてくれた
あなたのおかげで、わたし、天使になったんだよ
あなたが気づかせてくれたんだ
善も悪もないんだって
ねえ、だから、秤を均等に戻そう
あなたに罪はない、傾かせる錘もない
そんなものはここで取り払っておくから
もう、自分を許していいんだ
わたしは戦闘経験は浅いけど
怪我したら友達のほろぶが悲しむし
【能力値アップ】で底上げして
木々を蹴り、動きで撹乱しつつ空間ハック
0と1の壁で動きを阻害し、弾けさせて攻撃
攻撃を受けたなら、優しかった父さんの記憶を送り込もう
…ありがとう、父さん
心配ないよ、わたしも、兄貴も
だから、さよなら
いい夢を
海・ほろぶ
◎
聞いた話を繋ぎ合わせて浮かぶ不確かな推測は
届いた「父さん」の台詞で、あってたらしいと内心嘆息
おじさま呼びで揶揄うのは今日は無し
衝動がとる形はもう破壊だけじゃない
「心残りの表題」で描き出すイメージの中
誰が居て、誰が笑っていて、ヨハンさんがどれ程幸せそうな表情か
本当に叶ってたらよかったのにって、出力しただけの私でも思う位の
もしかしたらそこに私も知ってる顔だってあるかもしれなくて
このイメージがもう叶わなくても
こっちで幸せにしますよなんて傲慢を言えなくても
幸せだといいと願ってる
ね、絵の描き方、あなたの娘さんが教えてくれたんですよ
兵器でない物が変形する様は
前に相対してぼこぼこにされた、ゼキさんの武器みたい
今はあの時以上に、やられたって退いてらんない
ゼキさんの事を家族と呼ぶ人が最終人類史にもいる
私の友達に不義理な事したら横から勝手に怒りますからね
それに私だって、ゼキさんにこっぴどく『指導』頂いたのを返せてないし
揶揄う呼び名は止めても生意気な態度は元通り
優しくするのは他の人がいっぱいしてくれるでしょ
ケペシュ・ナージャ
◎
ゼキ殿
俺は別に貴方の過去をこの目で見てきた訳じゃない
貴方の大事な家族と顔を合わせたこともない
…それでも、居場所を与えてくれた貴方に柄にもなく恩義を感じているんです
助太刀する理由としてはそれで十分でしょう?
それに、この場合はゼキ殿の墓場には相応しくありませんから
扱い慣れた双剣を手に戦場に向かいます
素早い動きで相手を撹乱するのが俺の戦い方
折を見て死角に入り、好機を狙いましょう
この大事な局面、己の負傷は気にしません
「暗夜の一撃」は急所を外して当てる
機械ではなく肉の部位を狙います
体勢を崩して隙を作れたなら上々
影の役目はここまでです
決着はゼキ殿自身が付けるべきですから
あとは任せましたよ、隊長さん
俺は正直、貴方に家族と呼ばれる人達が羨ましい
温かな心根を持つ貴方に愛される人々が
困らせたくないので言葉にはしませんが
…今、貴方の周りにいる人達のように、かつての戦友たちもきっと良い顔をしていたのでしょうね
サアシャ・マルガリタ
◎
さてさて。ワンちゃんも隊員の皆さんも退避済みーですね!
そしてあのひとがゼキの宿敵ですか
……ゼキの妹さん……の、お父さん
…………?
あ、義妹だって仰っていたから、ええと
……??(首を右に傾げ、左に傾げ)
……細かいことは後で聞くです!
きちんと決着をつけられるように、サアシャはお手伝いに徹するですよう
【光学迷彩】を使って物陰に潜んで、攻撃のタイミングを窺うです
敵が体勢を崩したり、銃のリロードをしたりで隙ができたら
素早く死角から近づいて銃撃
体外に出ているコードを狙うです
欲張らずにすぐに引っ込むヒットアンドアウェイ戦法で
ゼキの攻撃チャンスをつくるですよ
心残りは晴れました?
それじゃ行きましょっか
無事におうちに帰るまでが依頼ですよう、ふふりふふり
……酒飲みたちは、トレインの揺れで悪酔いしないようにお気をつけてーです……?
乾・玄辰
◎
心得た――開幕を告げる主役に応え、舞台に上がろう。
機械仕掛けの英雄に敬意を払い相対する……娘御がこの場に居ると知れば、猶更。
我が名は乾玄辰。
貴殿を止めねば己が一分立ち行かぬ漢のため、助太刀に馳せ参じた。
【勝利の凱歌】に昇華した祝詞を唄い"劍神楽・韴霊剣"発動。
ジズさんの巻き起こす風に身を躍らせ神楽舞い、白光の大剣で銃剣と斬り結ぶ。
汚染と解析の電気信号は、剣の神気を逆流させ打ち消す。
四方の軍兵も音に聞け。これなるは刀剣束ね万軍統べる剣神の剣なり。
僕から差し出せる記憶は何もない。それは貴殿の魂が記憶している筈だ。
最も強き友の背を。守るべき者の面差しを。
銃剣を跳ねのけ、渾身の一太刀を振るう――黒き森の悪夢を断ち斬れ、韴霊剣。
僕の役どころはこれで仕舞いだ。
後は一騎当千の戦友たちが。彼の相棒たる頼もしき人が。
何より英雄の家族である彼と娘御が。自らの手で幕を引いてくれるだろうさ。
去り際のまなこに映る光景を、僕は決して忘れまい。
多くを背負い歩み続けたであろうゼキさんの背は……少し親父殿に似ているな。
マティアス・シュトローマー
◎
ああ、もちろん
伏せていた顔を上げ、一歩前へと踏み出す
ヘルデンブッフ――ゼキがヨハンと呼ぶ彼と対峙すれば、口元はいつもの悪戯な笑みを形作る
強敵だからこそ、油断も臆する事も無く向かっていきたい
同じ時代、同じ場所で、かの帝国に運命を歪められた同志として
新宿島で日々を過ごし、肩を並べて戦った仲間として
前座くらいの役割は果たそうか
掌を地に翳し、パラドクスを発動。仲間へと向かうヘルデンブッフの足元に毒を含んだ熱砂のトラップを展開し、その脚を引き込みながら装甲にダメージを負わせる
【泥濘の地】の効果も合わせれば、機動力を低下させる事が出来るだろうか
機関銃から放たれた弾丸は、頭部を守るように装備したライオットシールドで弾く。四肢への被弾は無視し、ゼキとヨハンに向けて声を張り上げよう
ゼキは君の事を決して諦めないし、必ず取り戻す!
…なんて。俺が言うまでも無く、君の方が良く知ってるよね
だから、安心してそのモーニングコールを受け取ってよ
トレインに戻れば、アルコールに沸く大人達を横目に元気だなあと肩を竦めてみたり
オズワルド・ヴァレンティ
◎
戦場内を見渡して
隊員が1人でも残っているようなら
速やかな撤退補助と声掛け行う
身を挺してでも護衛するよう
命じたドローン数機も向かわせ乍ら
ひとりでなんて戦わせたくない想いも理解するし
其れらの気持ちは後で十二分に伝言しておくので、
今日という刻を越えて明日が在るように
キミ達の隊長に生きていてほしいと
願う者たちが此処に集っているから
事が片付けばきちんと送り届けるとも
帰るところであるレヴニ隊として
後ほど迎え入れてあげてくれ給え
隊員全ての安全圏への退避が確保できる迄は
ヘルデンブッフに追撃などさせぬ様にと
翠石の杖の捌きと
振るう流星群で防衛にも務めて
反撃には精神汚染でもあったか
幾ら強き者の情報だけ得ようと
僕の師である魔法使いは機械兵ごときに
模倣しきれる代物ではないのだけどね
…誰ひとり欠けることなく共に居られたなら
どれ程よかったという想いを
ディアボロスとしての僕自身も抱きはすれど
此処がひとつの岐路だと云うならば
どうか声よ届いてくれ彼の、
彼らの共に帰りたいという願いよ
クーガ・ゾハル
◎
おう
とゼキにこたえたら
今日は、さいしょからホンキだ
不規則に左右へ地を蹴って砲火を避け駆ける
一番ねらえるのは、どこだ
弾けた眼帯パーツの下からのびる回路
灼かれながら、うるさい剣まで這わせて
一片の隙を看破し『穿葬』でつらぬく
首、じゃない
はがねの手足の一本
ことばを遮るマスク
あのヒトを、しばるカセのひとつでも
壊し落としてやれたらきっと
もっと、ゼキが、ちかくまで
家族と
こんな風に
…デンキよりも、ピリピリするな
ゼキは、くやんでたけど
このヒトや、仲間のやつらだって
あいつについていきたくて
えらんでそばにいたんだって、思ってる
いまのおれたちと、おなじように
「ヨハン」の声は、きこえなくても
きっと
おまえが、そんなふうになっても
……あえて、よかったよな、かぞくに
安心してくれ
このさきのゼキ、ひとりじゃないから
いままでと、おなじように
おつかれ、おやすみ、砂のなかで
おれの家族が、もしいきてたら
…おれなら、えらべるか、わからないけど
ぶんぶん頭から追いはらう
かえるところがあったかいと、うれしいから
すぐちかくを歩いてもどろう
アリア・パーハーツ
◎
戦場での憂いは戦場で晴らすべきだよね
その手伝いをするのは武器商人の役目なのだぜ
ゼキさんの願いが叶うように、ボク様も戦場に在ろう
彼を今日まで生かしてくれてありがとう
でも今日は僭越ながらボク様たちが代わりを務めよう
大丈夫、キミ達には劣るだろうが上手くやるから、どうか力を貸してね
攻撃は最大の防御というよね!
大量の銃火器を召喚し、武装を展開
「四六式砲撃術」
魔弾を繰り出し弾幕を張り、砲撃による援護を
怯むものか
獣の如き狂気など、戦場で当たり前の気配
そんなものに臆していたら武器商人の名が廃る
狂気には狂気を返そう
いくら銃で撃ち抜こうと拳で砕いて来ようと刃で貫こうが退く気はないぞ
彼が、ゼキさんが、諦めない限り
だからどうかこちらは気にしないで
貴方は前を向いていて
お疲れ様
それと、おかえり
皆で一緒に帰ろうね
さて…憂いが晴れたのならば、祝杯が必要だと思わない?
新たな門出には酒が必要なのだぜ
ビールとワインで乾杯だ!
一番大きなジョッキを彼に渡して、皆と一緒に帰りのトレインに乗り込もう
あ、ちゃんとジュースもあるぞ
ルーシド・アスィーム
◎
紡ぐは【悠遠のアルジャンナ】
森よりも古き時、神秘の力に満ちた刃が如き森羅にて彼の人を引き裂きます
併せて樹木の結界を展開し、相手の攻撃を弱めましょう
可能であれば「氷雪使い」「風使い」「結界術」の力で局所的な悪天を作りサポート
人は神に、或いは信念に敬虔であろうとも違える事はある
時にその選択は裏切りの謗りを受け、多くを喪う事もあるでしょう
……けれどその咎は、選んだ人が最後まで抱えるべきものです
ーーヨハン殿、しかとその眼を開かれよ!
貴殿の思いは悪しき者に阻まれる程か!
瀆され、冒涜される事を由とする為に貴殿はこの場にいるのか!
防壁を維持しながらヨハン殿の意識に呼び掛け、繋ぎ止める為に尽力を
全てが終わったら、退去するのみ
……けれど、スラグ隊の方はこの時代のゼキさんと会えたのかな
そうでないなら風の力で声を拡散し、無事を伝えたい
……何時か、未来で。この邂逅が善きよすがとなるよう祈りましょう
神にではなく、懸命に抗った強き戦士達に
その時までは……ふふ、楽しい時間を過ごしましょうね
僕にもお酒を下さいなっと!
アヴィシア・ローゼンハイム
◎
ええ、任せて頂戴
全てを取り戻す……その尊き願いのために、全力を尽くしましょう
その為に、私は此処にいるのだから
ゼキの号令と共に飛び出して、まずは武器の生成を
蒼く煌めくカンテラ、幽冥の導より零れ落ちた蝶達を束ねて青き大鎌へ
振るうは魂を導き、安息の地へと誘う鎮魂の刃
嵐のような銃や拳の攻撃をくぐり抜けて、大鎌で切り結びつつ受け止めて
結果として、悲劇となってしまったけれど
仲間を、家族を想って戦った人達の最後が、悲しみだけで終わってはいけないから
せめて、お互いに想いを伝えられる様に願い込めて
ヨハン……といったかしら
貴方に声を、願いを届けたい人たちが沢山いるわ
そのためにも、悪しき夢から覚める時よ
さあ、導きなさい。幽冥より来たりし、夢現の胡蝶よ
この者を縛る悪しき枷を切り裂いて、尊き魂を解き放ちなさい
魂を縛る澱みを断ち切り、ヨハンに声を、想いを伝えたい人達への一助となればと
この特殊な空間で解き放たれた魂は、どのような軌跡を辿るかわからないけれど
せめて、現世で迷わず、安らかに眠れますように
タオタオ・ザラ
◎
ひとまずお疲れ、と言いたくなる気持ちを飲み込んで
まだまだこれからなんじゃよなァ、ゼキくんよ
タオは湿っぽいのは嫌いだ、小難しいこと考える頭もねえ
だからマ、ぱーっとド派手に、楽しくやろうぜ、なァ?
にゃはは!それくらいしか能がねえもんだからよ、すまんな!
賑やかしは得意なんだ、目にもの見せてやるよ
――大切な友人に貰ったタオのコレクションだ、その身に刻めよ
なァに、遠慮するなよ
餞別にあれもこれもぜえんぶくれてやる
派手に五月蠅く立ち回ろうと、決して前に出過ぎることはせず
兵器から繰り出される厄介な攻撃の露払いに徹する
ただただ純粋に戦えるように、言葉が、想いが、届くように
毒だろうがなんだろうが喜んで受けて立とう
にゃは!こう見えて、我慢比べは得意でね!
辛いも、苦しいも、悲しいも
きっときっとあるだろう
でもそれはタオには計り知れぬこと
だったらせめて、受け止めるくらいはしなくちゃなァ
全てが終われば、よっしゃ酒盛り大歓迎とけらけら
トレインで真っ先に潰れたヤツに、新宿島で奢ってもらうんでどうよ
この一瞬を惜しみ振り返れる日がくればいいと皆が思った。
昨日の続きの崩れ去ったあの日を、
釦掛け違えた一瞬を取り戻せるかもしれない今日を、
数多の柵へ抗い続けるこれからを——共に、歩めればいい。
停滞する“友”へ。
「……はは、正反対だってのに」
『ディアボロスッ——!!』
“相変わらず似たモン同士だ”
「……おれもッ!お前もッ!何も変わっちゃいなかったなあ!」
『誰が貴様なんぞと!』
力強く踏みだし迫った至近距離。ヘルデンブッフと己の拳が強かに腹を捉え打ち据え合う一瞬さえ、ゼキ・レヴニ(Debaser・g04279)は笑っていた。
——だが“疲労”とは蓄積する。
苛烈な戦闘で呼吸さえ忘れた代償を払おうとしたゼキの喉を捉えるのは即時変形させた機兵の黒き戦斧!
「“前座の役割くらい果たさせて”って言ったの、ゼキさん忘れちゃった?」
差し入れられたのは透明なる膜——ではなく、マティアス・シュトローマー(Trickster・g00097)のライオットシールド。
打ち破れぬ盾にヘルデンブッフが片眉を上げた時、黒き戦斧を蹴り飛ばした脚線美がほんの一瞬全ての視線を奪う。
「まったく合図をしろと言っただろう」
ゆらり踊った夕日彩の赫髪眩しいアリア・パーハーツ(狂騒・g00278)のリップラインが弧を描く。
「再会には祝砲を!砲のことならボク様の店に連絡を!そうは思わないか、隊長殿!」
『新手……!』
「皆……!」
パラドクストレインで待機していたメンバーが稼いだ一瞬で、ゼキと機兵の距離は保たれた。
その間にゼキが呼吸を整えながら眼前を見据える一方、ヘルデンブッフは想定外の新手に苛立ち吊り上げた眉間に深い皺を刻む。
苛立つ機兵と相対したマティアスとアリアは目配せ一つで合図もなく、同時に地を蹴った。
『祝ってなどなるものか。この地に踏み入った者は我が王の採択通り、死ね——!』
ヘルデンブッフ——否、ヨハンとの過去を憂い葛藤しながら、後悔と共に打ち明けるゼキの横顔を見た時……呑んだ言葉はいくつもある。
そのあとの日々を共に紡いだ友として、“ゼキの葛藤”へ使い古された言葉を向けるのではなく、友たるゼキが葛藤の末に取り戻したかった者を救うために此処へ来た。
「“王”ねぇ……全く、随分と遠くを見ながら話すじゃないか!」
「俺は君とはまた違うけどっ……ゼキとは、肩を並べて戦った仲間だから、ゼキが君を取り戻すことを決して諦めない限り俺も諦めない!」
“分かってるんでしょう?”と悪戯な微笑みを向けるマティアスへヘルデンブッフが噛みつくより早く、パラドクスが輝いた。
PD—四六式砲撃術—!
PD—アーマイゼン・レーヴェ—!
抗い戦い続ける“あなた”へ祝砲を。
苦痛の道を今尚歩み続ける“君”を止めよう。
アリアの砲撃を一発は機械の左腕で殴り飛ばし凌いだヘルデンブッフだが、間髪入れずに捻じ込まれた次弾に踏鞴を踏む軍靴をマティアスの蟻地獄が捉えた。
熱砂に軋み、孕む毒が鋼の歩みを俄かに腐食させる!
『っ、!お、の、れっぇええええ!』
だが、終らない。
即座に左腕を機関銃へと変化させたヘルデンブッフが咆哮と共に射出する徹甲弾。その重い一撃がマティアスの盾を弾き、連射された次弾がその脇腹を貫く!
「ぐ、げほっ……アリア!」
競りあがる血を吐き捨てたマティアスの手が地を離れ緩んだ隙に、得物伸ばしたヘルデンブッフは棒高跳びの要領で地獄を抜け様に狙うのはアリア!
『遅い!』
「わかっ——ぐ、ぅ……!」
躊躇いなく揮われる強蹴。
体重の乗った蹴りをアリアは砲という盾で直撃は免れるも追って形振り構わず鉄棒がその身を襲う!
“当たる!”とアリアが身を縮めた時、飾り揺れた聖杖の放つ風が全てを遮った。
「ヨハン殿、しかとその眼を開かれよ」
ルーシド・アスィーム(轍つ祈星・g01854)が玲瓏な声で増幅させた風の一撃をヘルデンブッフが咄嗟に飛び退けると、徐に構えを変える。
『既に俺は貴様らよりも先を見据えている。見知らぬ貴様らの言葉に傾ける耳など——』
「人は神に、或いは信念に敬虔であろうとも違えることはある」
ルシードはハッキリ“何が”と言わずに言葉を紡ぐ。まるで皆まで言わずともヘルデンブッフが理解できるとでも言いたげに。
だが、ルシードへの答えは躊躇いなく振るわれる銃剣が全て。
「時にその選択は裏切りの謗りを受け、多くを喪う事も——!」
『煩い——うルさいウるさいウルサイ!!』
諭すような言葉を、機兵は明確に拒んだ。その人間染みた行為にルシードは“ヘルデンブッフ”という鉄壁を崩す切っ掛けを見出し踏み出す。
「っ、ぐ……け、れどっその咎は……!“選んだ人”が最期まで抱えるべきものです!!」
PD—悠遠のアルジャンナ—!
『やめろ!!』
迸った紫電纏う銃剣の切っ先が頬を掠めようと、腕を裂こうとルシードは止まらない。返すように葉刃でヘルデンブッフを刻みながら、ヨハンに届いているこの言葉を止めるわけにはいかない!
「もう一度言う!——ヨハン殿、しかとその眼を開かれよ!貴殿の想いは、悪しき者に阻まれる程か!瀆され冒涜される事を由とする為に貴殿はこの場にいるのか!」
『~~~違う!!俺は!オ、れはっ!』
畳みかけるような言葉にヘルデンブッフではなく“ヨハン”は絶叫した。
愛する妻を、守ると誓った娘を、決して帝国などに触れさせまいと願い誓って歩んだ地獄。
『お——レ、は』
「 、」
は、と酷く混乱した目で“ヨハン”は見た。
猛然と向かいたかった先に立つ、泣きそうな眼を美しい目の少女を。
そんなヨハンの口を突いて出た言葉は、脳裏で“Error”と吐き出す禁句の名。
『███』
「とう、さん」
機兵の口元がガスマスクで覆われていようと、オード・レヴニ(頌歌・g01759)には彼の口から己の名が呼たのが、よく分かった。
そして同時に、タイミングを見計らいPD—狐の悪戯—で潜んでいたサアシャ・マルガリタ(えいえいお!・g05223)も微かな空気の揺れから音を察し、思わず右に左に首を傾げてしまう。
「(ゼキの妹さん……の、お父さん
…………?)
可能性は察していたものの、それが事実となると気にもなる。しかし今は戦いの時。聞くのは後とヘルデンブッフへ照準合わせた時——機兵は動いた。
「っ、とうさ」
「オード!」
「えっ、」
オードが海・ほろぶ(君の番だよ・g04272)の名を呼ぶより早く、ほろぶはオードを抱え地を転がり何かを避けた。
同時にサアシャも発砲し僅かにヘルデンブッフの射線を逸らすことに成功したものの、抑えるには至らない。
「(オードも、ほろぶも無事……よかったです。けどっ
……!)」
「ハッ、は……間に合ったっ!」
「……!」
元オードの立っていた場所は砲弾によって抉り吹き飛ばされ、濛々とした硝煙は暴雨と氷雪振るルシードの結界内から棚引いている。
視界の晴れた一瞬にヘルデンブッフが藻掻きながら射出した砲弾が、恐ろしい精度で射出されたのだ。
「ヨハンど、グッ!」
『ヴヴヴッ!俺はっ!』
ほろぶの安堵にオードがハッとすれば、ヨハンを呼び戻そうとするルシードの腕に銃剣が突き立てられ、紫電が迸る。
「——それ以上させませんです!」
ルシードとオードに集中する今こそ!と出力増強を担う背のコードを狙い撃てば、数本断ったところでヘルデンブッフの眼がサアシャを射抜く。
出力弱まったように感じたルシードが抵抗しようとしたその時、二人の合間に差し入れられる刃が二つ。
『!』
「始めましょう」
「ん。……今日は、さいしょからホンキだ」
サアシャの発砲を合図に息合わせたケペシュ・ナージャ(砂蠍・g06831)とクーガ・ゾハル(墓守・g05079)の刃は踊る。
刃渡りが異なる二種の刃は間断ない攻撃となりヘルデンブッフのマントを裂き、硬質な機械の手足へ細かな傷を刻みゆく!
『~~~っ、何故!何故お前達はこうも肩入れする!』
「俺は……ゼキ殿の過去をこの目で見ていなくとも、信ずるに足る人物だと知っている」
「——ゼキは、おれたちに“かえるところ”をくれた。おまえや、仲間のやつらとおなじように」
人は全てに敏感で鈍感で、少しの違いを受け入れがたいもの。埒外の時逆という事象がなければ、ゼキと自分達とて互いを知らぬまま生きそして死んでいただろう。
それでも出会い、互いに小さな救いを知らぬ間に与え、受けたと感じられる“友”となれた。
「「それだけで十分!」」
『 、 』
クーガは僅かに目を見張った。
ヘルデンブッフが酷く懐かしむような瞳で“また、お前は”と言ったように見えたのも、一瞬。
『だから何だというのだ!殺す……貴様らもまた、王の採択に平伏しろ!!』
即座に目の色を変え苛烈な攻撃で捻じ伏せようとしてくるヘルデンブッフは吠える。数の不利を計測しているのか、素早く腕を作り替え射出される弾丸をケペシュが弾き落とした瞬間クーガは爪先に焔を燈し迫る。
「おまえは、ゼキとはなすんだ……もっと、しっかり。おれが、てつだう!」
PD—穿葬—!
熱く深い爪痕を冷たく固い腕へ刻み、更に踏み出したクーガが腹へ突き立てられた刃をより深く埋めてでも削いだのはヘルデンブッフのガスマスク!
「っ、けぺしゅ!」
「——落とします」
『やめっ、』
PD—暗夜の一撃—!
『き、さま、らぁあああ!』
ガスマスク越しより鮮明になったその言葉は、怒りに満ちる。
クーガの腹に捻じ込んでいた刃の手を引き抜いたヘルデンブッフが勢いのままにケペシュの頬を裂いた時、閃く一刀が機兵の首に一筋の赤を刻む。
「機械仕掛けの英雄殿、その行いは貴殿の娘御に見せたい姿ではないのではないのかね」
『——!』
真っ直ぐに首を断つよう振り抜かれた乾・玄辰(最後の魔法使い・g01261)の一刀を紙一重で仰け反り躱したヘルデンブッフが軽やかなバク転で飛び退き、反撃に出んとした影が濃くなる天に、光。
「生憎、“彼ら”は隊長たちの無事を願っている。言葉無き賢き友も……僕は、その想いに応えたい。彼方より照らそう、お前の行くべき道を」
『なに、』
——その名は、軌跡を齎す者のみが扱う光。
PD—Code:Z—!
光降らすオズワルド・ヴァレンティ(終演の魔法使い・g06743)の揮うOzが灯す碧き灯火を目印に注がれる星々がヘルデンブッフを追い詰め、ケペシュとクーガから引き剥がした。
ならば次にすべきは予定通り——!
「素早いな。だが我々も一枚岩ではないのだよ……!」
『死ね』
星の雨降らせるオズワルドと間断なく刃揮う玄辰が吹きつけられた毒霧に口を覆った時、絶交のタイミングで吹き荒ぶ風が悪しき毒煙を攫い行く!
「やぁヨハン、不躾な挨拶ですまない」
『っ、な——』
真上。
守護者の戦斧叩き下ろしたジズ・ユルドゥルム(砂上の轍・g02140)が確かな重みを以って銃剣に深き亀裂を刻み込む!
「悪いが君にゼキを、スラグの皆を——家族を、殺させはしない」
『……貴様らの理想を理解した。——だから何だ。言ったはずだ、貴様らは此処で諸共死ぬと』
言葉を交わしながらジズが玄辰の斬撃がヘルデンブッフを肉薄すれば、肩や腕に傷増やした機兵は歯噛みした。
殺意衰えぬ炎熱の瞳で二人を見据え、双剣が如く両手に握った銃剣で果敢に挑み返す足は力強い。
「(……なんとも、恐ろしい御仁だ。だが、僕も貴殿を止めねば己の一分立ち行かぬ漢だ)」
『——疾く、死ぬがよい』
「僕も遅れたが今、名乗ろう。——我が名は乾玄辰! 機械仕掛けの英雄殿、いざ!」
玄辰の名乗りと淡く発光し始めた大剣から放たれる一撃を察したジズがヘルデンブッフの放つ麻痺煙を巻き上げ遥か彼方へ霧散させる最中、玄辰は踏み込む!
「——四方の軍兵も音に聞け これなるは、刀剣束ね万軍統べる剣神の剣なり」
意図して避けずに紫電の銃剣を甘受する姿に皆が瞠目しようと玄辰はうたい、白刃を掲げわらった。
「……っ生憎、僕から差し出せる記憶は無い。だが、貴殿の魂は記憶しているはずだ」
ヘルデンブッフに銃剣を引き抜かせまいと玄辰が腹に力を入れれば、眼前の男の眸が揺れた。
「皆までは言わぬ。目覚めの時間だ、その悪夢——今断つ一手を受けろ!」
PD—劍神楽・韴霊剣—!
『っグ……オォォオオ!』
「まだ耐えるか」
「それでこそ、だろう」
玄辰渾身の一撃をギリギリで引き抜いた銃剣で受けきったヘルデンブッフは星色の眼を爛々とさせながら、真っ二つに断たれた銃剣を両手に荒い呼吸を吐き捨てる。
『フゥゥゥウウウ……こ゛の゛、て……イど!!!』
ジズとオズワルドが目配せすると同時に、オズワルドの掲げたOzの合図で再び降るは星の雨!
『おのれ!』
「おや、その足捌きは先程と同じか?」
ニヤリとジズが挑発すれば、油と血滴らせる肩と腐食に軋む足に構わずヘルデンブッフは吠えた。
『黙れ!』
携えた戦斧で既に再生された銃剣を弾いて一撃。二撃目に斧を槍へ変化させ天を指したジズが鋭く叫ぶ!
「さぁケレイ、目覚めの手荒い一撃をくれてやれ!」
PD—穹き金瞳の翼—!
『——させるか!』
星雨を縫い迫るは上空でタイミングを伺い続けていた金瞳の鷹。鋭爪の抉るような一撃へ、捨て身で突きこまれるヘルデンブッフの銃剣が切っ先——!
『ガッ、ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛!』
「随分と——見慣れた大盾が出て来た、な゛!」
ジズの肌に突き立つ銃剣と、擦れ違うように機兵の傷を抉るアカシアの槍が交差する。
両者至近距離で歯を食いしばり、迸る紫電を物ともせず歯を剥いたジズが地に足を突き立てた瞬間、鋭くその頬ごと半身を大盾が打ち据えた。
大盾が叩きつけられ吹き飛んだ戦面に振り返らず、血を吐き捨てて尚、ジズは立つ。
「ヨハン」
『黙れ!』
「ヨハン!」
『だま——、』
「貴様こそ黙っていろ、ヘルデンブッフ! 私達は“ヨハン”と話しに来たと言っている!!」
拳で大盾を弾き、ヨハンを押し倒すように槍捻じ込んだジズは叫んだ。
「なぜ、一人で抱え込む!分かち合えば……その重荷を、ゼキと分かち合えば——」
『……——家族に!! 友に!! 背負わせたい者がいるのか!!!』
「 、」
“それは”——続く言葉を思わずジズは呑み込んだ。
ジズも、ゼキも、そしてヨハンにも……等しく“守りたい家族”が、“友”がいたのだ。両者を無傷で救う選択を求める中、選べた少ない手札の最良が——自己犠牲だとすれば?
瞬間にもよるが、選べる選択肢には常に限りがある。万能の答えはなく、いつだって誰かの最良は誰かの最悪だ。
『失せろっ!!!』
拒絶は鋭い蹴りとなってジズを蹴り飛ばし、絶叫と共に銃剣を振り上げ——
「父さん!!!」
まるで時を止められたように、ぴたりと機兵の動きが止まる。
この場へ同行した仲間の引き出したヘルデンブッフ——否、ヨハンの選択の理由を知ってしまったオードの眦からは、熱い涙が零れるばかりで止まりやしない。
「(父さんは、そっか……)」
最愛の家族と、ほんとうに離れたい者がいるだろうか?
置いて行かれる方の気持ちになってよ! と何度遺児たるオードは涙の夜を越えただろう。
「っ、ねえ……秤は、均等に戻さなきゃ。“あなた”に罪はない——傾かせる錘は、」
震える声を内心で叱責しながら手を翳すオードを、懐かしむような慈しむような瞳で見つめていたヨハンが頭を抱え呻き、藻掻きだす。
やめろと頭を掻き毟り、ギリギリと歯を食いしばって身を掻き抱いて——その瞳が再び開いた時には、機械的な彩へと落ちていた。
『っ゛、グ、ガッ、ウ゛ウ゛ウ゛! ディ、アボロ……スしね、しぬがよい! それ、こそ、が!』
「——その武器変化、ゼキさんの武器みたい。けどそれ、オードには向けさせない」
猛然と迫るヘルデンブッフから一歩も逃げないオードへそっとほろぶが寄り添った。戦うのならば共にと、言葉にせずとも伝える優しさに“ほろぶ”とわらったオードが掌へ広げた0と1の世界へ、ほろぶの筆先が色を燈す。
「そんなもの、わたしがここで取り払っておくから——!」
PD—mythcraft—!
PD—心残りの表題—!
「その衝動の“ほんとう”、わたしが描くよ——!」
木々の合間を羽搏き蹴って、オードはヘルデンブッフの振り回す銃剣の合間を抜ける。
限定的な効果でいい。地獄に身を置き続けたあなたを今一時、安全な場所へ掬い上げたい——……それは玄辰とはまた異なる祈り。
硝子のようなオードの世界へほろぶの手で描かれるのは、ヨハンという父親が求めた極楽。
それは微笑む娘のオードと妻らしき女性と、ゼキ、そしてちらりと見えたスラグ小隊の面々らしき人々の笑顔——いや、日常と思しき光景。ヨハンもまたディアボロスに同じ、昨日の続きを求めた結果が“今”なのだ。
「(これは、絶対引けな——)」
描ききったのちにほろぶが筆を握り直したその手へ赤き飛沫が掛かる。
「へ、」
『——やめろ。やめてくれ。やめろやメろやめろやめロ、ヤ……めロッッ』
オードの腹へ捻じ込まれる銃剣。
はらはらと儚く硝子のように砕け散る安全なお城も笑顔に溢れたいつかの夢も、真っ黒な森という現実へと返された。
「わ、たし……戦う経験——あさい、けど。逃がす気、ないっ……から!!」
細い腹へ捻じ込まれる銃剣に縋りつき叫んだオードが心から伝えたのは“優しいお父さん”の記憶。世界で一番強くって、かっこいい——わたしをまもってくれた、さいこうのひと。
『 、あ ぁぁあぁぁあああああああああ!!!!███、っ███!!』
自身で刺した娘に唇を戦慄かせ絶叫していたヨハンが呻き、慟哭し、そしてガクンとこと切れた様に虚ろな瞳になるや天を仰いだ。
『——ッ、あぁぁぁあああああああああああ
!!!!!ころすころすころすしね!あぁ、ぁぁあああああ!!!』
その狂乱は毒を孕む。
すべて振り払うように放たれた毒霧に皆が口元を押えた時——一人の悪魔喰らいがわらっていた。
「——ゼキくんよ、まだまだこれからなんじゃよなァ」
仲間の力で引き出されたヨハンの苦悩にどこか呆然としていたゼキを覗き込み笑うタオタオ・ザラ(大喰らい・g05073)の眸が、蠱惑的な宝石めいた輝きで“眼前の現実を見ろ”と言う。
「さて。タオは湿っぽいのは嫌いだ、小難しいことを考える頭もねぇ」
咽る毒霧の中、両手を広げたタオが恭しく礼をしまるで道を整えるように風使い達へ目配せすればゼキの目の前は開かれた。
「砲弾はタオが腐たし還す。ぱーっとド派手に楽しくやろうぜ、なァ? アヴィシアもそう思うだろう?」
「私はそうね、全てを取り戻す……ゼキさんのその尊き願いのために、全力を尽くしましょう」
その為に私は此処に、と天上の青纏う天使 アヴィシア・ローゼンハイム(Blue・Roses・g09882)が輝きの青溢すカンテラ揺らし花のように微笑んだ。
「さて弾丸の観客共、タオが目に物を見せてやろう。——そう、大切な友人に貰ったタオのコレクションだ。撃った奴共々その身に刻めよ」
PD—死せる黄金—!
PD—St. Elmo—!
「導きましょう、その苦悩。解きましょう、その懊悩。魂戒める鉄錆の枷——断つべき場所を示しましょう」
狂乱するヘルデンブッフより無作為に四方八方へ射出された数多の弾丸を相手取り触れた全てを腐食させる宝剣無数に打ち出しタオが“にゃはは”と笑う間に影すら残さず鉄砲玉は皆死んだ。
更に舞うように伸ばされたアヴィシアの指先の指揮へ導かれ舞い飛んだ青い蝶の群れがヘルデンブッフの視界を覆い、オード抱いた鉄の腕が蝶の成す鎌に振り払われ。
「「「「「「「「「「「「「「ゼキ
!!!」」」」」」」」」」」」」」
数多の声に送り出されたゼキは、踏み出した瞬間に握った“躯”が嫌に手に馴染む形をしていると思い手中へと視線を落とした。
見れば忌々しくも懐かしく、散々振るってきた形——“あの時の銃剣”とは、なんとも。
「はは。どうやら俺らはこっから離れられないんだとよ!!」
叫ぶ。
踏み出す。
「さあ——本当の英雄が何処に居るか、思い出せヨハンッ!!」
悪い夢はもうお終い。
長い長い、おれたちの夢はもう醒めなきゃなあ。
●天使の呼吸 —sid:O—
いくつもいくつも、傷に染みる塩辛い涙がオードの頬を滑り落ちる。
「……あのね、わたし——天使にっなったん、だよ」
——音にならない言葉は涙と嗚咽になって冷たいヨハンの手へ伝わってゆく。
小さく震えるオードの背を摩りながら、ほろぶはぽつりと呟いた。
「……あの絵の描き方は、あなたの娘さん——オードが教えてくれたんです。それに去年の冬とか、炬燵の楽しみ方も教えてくれたんです。オードはわたしに、色んなことを教えてくれるんですよ」
「ほろぶ?」
未だはらはらと涙を溢すオードが眦赤くしながら小首を傾げれば、永き眠りについたヨハンを見つめていたほろぶの眸がオードへと移り、緩やかに弧を描く。
「だから私の自慢の友達のオードはさ、さっき私が描いたみたいに笑っていたらいいよ。もちろん“おじさま”もね」
「……、うん。ねぇ父さん——ありがとう。もう心配いらないよ、わたしも……兄貴も。だから、」
オードが涙を拭い告げた“さよなら”は、木々揺らす爽やかな風に浚われ聞こえたのはヨハンだけ。
いい夢を、素敵なあなた。
わたしに“純然たる善はなく純然たる悪も無し”——等しく事情があり、生き物は生きるのだと教えてくれた“お父さん”。
✧
●綯交ぜの鈍痛 —side:Z—
親子の別れをぼうっと眺めていたゼキは視線でほろぶに促され、ヨハンの隣へどかりと腰を下ろした。
「やっぱりお前の拳の重さは何も変わっちゃいなかった」
ふぅ、と煙草の煙を天に吐く。
“落ちてくる煙が目によくないからやめろ”とヨハンは言っていたなと頭の片隅で思いながら、ゼキは静かに眠るその頬で輝く涙を拭い——そっと触れる。
冷たくとも“人”らしい感触の頬に呼び起こされるのは昔の記憶。敵の不意打ちでヨハンが大怪我をした夜、ゼキは救護テントであまりに綺麗に眠るヨハンの呼吸を確かめたことがあった。
——もちろんバレて“生きている”と顰め面で静かに怒られたのだ。
「……あの頃の訓練と、お前の拳はなんも変わっちゃいない。重てぇ痛てぇしかも捻りを入れてきやがる。だがまぁ……お互い、硬くなりすぎなんだよ」
己の拳も元の生身より重くなった。
時折油を注さねばならない面倒な、生身の時にサボっていたメンテナンスを丁寧にしなければ十全たる馬力の出にくくなったのは同じかとゼキは苦笑いを溢す。
「……あの夢、叶うといいな」
答えがないのは百も承知。焚火を囲んで語り合ったあの夢は隊の大人だけの秘密でよくて、ただ家族を想う盟友の強さを信じたことにゼキ自身後悔はない。
血の雨を潜り、時に泥を舐め時に肩を組み笑った思い出は今も生きている。
「きっと俺もすぐに追いつく、だからもう忘れんなよ——兄弟」
酷く穏やかな顔でねむるヨハンの手に“Zeki Levni”と刻まれたドッグタグを握らせたゼキは、パラドクストレインへ向かおうとして——向こう側へと目をやった。
「(……“この時代のおれ”は、隊の奴らと行けるのか)」
木々の向こうの更に向こうで今か今かと隊長たるゼキを案じ、待つ彼ら。
悔いがないかと言われれば、きっと嘘だ。
彼らに追いつく己という夢の続きを見たくないかと聞かれれば、頷きたい己がいる。
しかしその心はここに置いていくと、ヨハンを取り戻す戦いへ踏み出そうと決めた瞬間からゼキは決めていた。
その背を静かに見つめていたジズが手を差し出しながら声を掛けた時、無理やり手袋で涙を拭ったゼキが小さく頷き差し出されたその手を取った。
「帰るぞ、相棒」
「……——おう」
ジズに強く手を引かれた勢いで歩みだしたその先には、祝杯の酒瓶を開けたくて疼く面々が日差しに煌めく硝子のジョッキ片手に待っているから。
「さぁて、帰ろうかねェ……あの“家”に」
先へ、行かねば。
“誰一人欠けなかった今日”と共に、明日へ。
ひらり舞った青い蝶が、小さな輝きと共に空を目指す。
●——Jedes Mal, wenn ich das Album Today umdrehe, frage ich mich, wie oft ich an dich denken werde.
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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【反撃アップ】LV2が発生!
【リザレクション】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!
最終結果:成功 |
完成日 | 2024年11月11日 |
宿敵 |
『試作機『ヘルデンブッフ』』を撃破!
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