騙し合いなら任せろ?(作者 秋津透)
#火刑戦旗ラ・ピュセル
#オルレアン戦争前哨戦
#パテー
#オルレアン
#ジル・ド・レ
#オルレアン戦争
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火刑戦旗ラ・ピュセルディヴィジョン、オルレアン城。
人間の死体が数多く飾られた悪趣味極まる広間で、ジェネラル級キマイラウィッチ『ジル・ド・レ』が苛立たしげに吠える。
「ディアボロスの拠点は、まだ突き止められぬのか! 相変わらず、偵察部隊はまったく帰ってこないのか! 馬鹿どもが! 卜ループス級などに任せておくから、そういう無様なことになる! きちんと指揮官を付けて、きちんと探すべき場所を探し、きちんと情報を得て戻ってこい!」
居並ぶアヴァタール級の家臣たちに向け叱責の咆哮を浴びせると『ジル・ド・レ』は少し考え込む様子になって続ける。
「ディアボロスは一般人を助ける性質がある。だが、助けた一般人を連れて帰る場所は無い。つまり、助けられた一般人は、まだ元の集落に残っている。そこにディアボロスが訪れ、偵察部隊を潰し、去っているだけのはずだ。で、ある以上、排斥力の影響はあるだろうが、集落の住民を締め上げればディアボロスが訪れた場所は突き止められるはず…」
最後の方はぶつぶつと呟くと、いきなり『ジル・ド・レ』は大声を出す。
「オルレアン周辺の集落を虱潰しに調べろ! 軟弱な偵察隊などではない、きちんと指揮官をつけた部隊を送り集落の住民をぎゅうぎゅうに締め上げて、ディアボロスの情報が得られるまで続けるのだ!」
「ははーっ」
結局、ああだこうだ言った挙げ句、探索隊の規模を大きくしただけで片っ端から虱潰しの方針は変わらないのか、と内心思ったかどうかはわからないが、アヴァタール級の家臣たちは一斉に恭しく頭を下げた。
「腹が減っては戦ができぬ。喰いながら話を聞いてくれ」
時先案内人の陳・修賢(人間の特級厨師・g03221)が、いつものように手製の饅頭を配りながら告げる。
「火刑戦旗ラ・ピュセルディヴィジョンで、攻略旅団の方針によって行われたパテーの拠点化は、キマイラウィッチに察知されることなく無事に成功した。しかし、パテーのすぐ南にある重要拠点オルレアンを支配するジェネラル級キマイラウィッチ『ジル・ド・レ』は、偵察部隊や巡回隊が次々に消息を絶っているので、近くにディアボロスが拠点を作ったのではないかと疑っている。幸いと言うか何と言うか、まだパテーと確定はできておらず、オルレアン周辺の集落を片っ端から襲って一般人を締め上げ、ディアボロスの拠点を見つけ出そうとしている。これは、いろいろな意味で座視できん」
そう言って、修賢は一同を見回す。
「まず、襲われることが予見された集落に駆けつけ、集落の人々をパテーの拠点に避難させて欲しい。そして襲撃部隊を撃破するわけだが、今後の戦いを見据えて布石を打つ事も可能だと、攻略旅団からは言ってきている」
そして修賢は、メモを見ながら言葉を続ける。
「今回、オルレアンからの襲撃部隊が向かう集落は、今までディアボロスと接触したことはない。つまり空振りなのだが、襲撃部隊を率いるアヴァタール級は魔女化自動人形『魔女裁判官』で拷問のプロを自称している。こいつの思うままにやらせようものなら、どれほど悲惨な事態になるか知れたものじゃない。そのため前もって住民をパテーに避難させるわけだが、襲撃部隊配下の卜ループス級は『クール家商人』で、何と言うか小賢しい分だけ引っ掛け甲斐のある相手だ。連中に都合がいい偽情報を聞かせて、隠れているのを気づかないふりをして見逃してやれば、オルレアンに駆け戻って『ジル・ド・レ』に注進してくれる可能性が高い」
もちろん偽情報の提示方法や内容は吟味しなきゃならんし、決して馬鹿ではない『ジル・ド・レ』が『クール家商人』の報告を真に受けるかどうかは知らんが、敵は極端に情報に飢えている状態だ。仕掛ける価値はあるだろう、と、修賢は告げる。
そして修賢は、一同を見回して告げる。
「キマイラウィッチとの戦いも、あちこちで大きな転機を迎えているように思う。要衝オルレアンの喉元に拠点を得られたのは大きなアドバンテージだが、だからこそ潰されないよう用心しなくちゃならん。一方『ジル・ド・レ』が戦力を分散してそこらじゅうに派遣しているのは、各個撃破の好機でもある。うまいこと逆手に取って、オルレアンを混乱させ戦力を削減させてくれ。よろしく頼むぜ」
「ディアボロスを知らないか? 見たことはないか?」
「知らない! 見たこともない! そもそも、何なんだ、そのディアボロスというのは?」
真鍮製の馬に縛り付けられた男が、アヴァタール級『魔女裁判官』の問いに悲鳴のような声で応じる。
しかし『魔女裁判官』は3つの顔を一斉に横に振る。
「質問をしているのはこちらだ。しかも、ディアボロスが何か知らないなら、なぜ見たこともないと言えるのだ?」
「そ、そんなことを言われても……ぎゃああああ!」
アヴァタール級の目配せを受けた卜ループス級『クール家商人』が真鍮製の馬に赤熱した鉄を近づけ、伝わった熱で身を焼かれた男が絶叫する。そして『クール家商人』は男が絶命する前に鉄を遠ざけ、男はヒクヒクと全身を痙攣させて呻く。
「知らない、知らない、何も知らない…見たかどうかも知らない…何もわからない…」
「ふむ」
力なく呻く男を見やって『魔女裁判官』は再び首を横に振る。
「熱では錯乱するばかりか。では、次は水に落とせ」
「かしこまりました」
どうせ何も聞き出せないでしょうけれど、まあ、死んだら死んだで次の奴を責めればいいのです、と『クール家商人』は冷淡に嘯く。既にこいつらの乏しい財産はすべていただいてある。何か白状しようがしまいが、死のうが生きようが知ったことではない。
この予見は、間違いなく覆すべきものだ。
リプレイ
バトラ・ヘロス
アドリブ、連携歓迎であります。
策を打つかどうかは後で考えるとして、まずは村の人達を避難させるでありますね。
【友達催眠】を使いながら、有効的に村人に話しかけるであります。
オルレアンの支配者がここに攻めて来ようとしている事を伝えて、避難するようにお願いします。
パテーという安全で生活環境の整った避難場所の存在を教えます。自分達が案内するので、出来るだけ急いで準備して下さい。
老人などの長旅が難しい人達の避難を手伝いましょう。無双馬に乗せたり馬車を引いて貰う等して、迅速に往復して避難を進めます。
嵐柴・暁翔
虱潰しに集落を周って住民を拷問していくって…
いかにも復讐心を好むキマイラウイッチらしいやり口ではあるな
……ただ、無関係だった集落の方々にしてみれば間接的には復讐者のせいで締め上げられるとも取れるから対応を間違えると厄介な事になるかもな…
集落の正門へ向かいます
門番なりいるだろうし、下手な嘘をつくよりは正直にオルレアンの支配者が派遣した襲撃部隊がこの集落へ向かっていると伝えて、パテーまで辿り着ければ当面の生活はどうにかなると避難を提案します
オルレアンの支配者の悪名のおかげで余計な手間が省けるならそこだけは好都合かもな
集落全員での移動となるとそれなりに持ち運ぶものも多いだろうし、老人や子供のような体力に問題のある方もいるだろう
怪我人や病人でもいれば先に【活性治癒】で治して、移動中も適時使用して住民達に負担をかけないように注意します
「策を打つかどうかは後で考えるとして、まずは村の人達を避難させるでありますね」
「ああ、まったくだ」
バトラ・ヘロス(沼蛙・g09382)の真っ当極まる言葉にうなずきながら、嵐柴・暁翔(ニュートラルヒーロー・g00931)は内心の思いを言葉には出さずに呟く。
(「虱潰しに集落を周って住民を拷問していくって…
いかにも復讐心を好むキマイラウイッチらしいやり口ではあるな……ただ、無関係だった集落の方々にしてみれば間接的には復讐者のせいで締め上げられるとも取れるから、対応を間違えると厄介な事になるかもな…」)
まあ、オルレアンの支配者は復讐者とは無関係に近隣に悪名を轟かせるような所業をしているようだから、そこだけは余計な手間が省けて好都合かもな、と、暁翔は小さく肩を竦める。
そして目的の集落に到達し、粗末な柵を巡らせた門前で呼ばわると、バトラが用意した【友達催眠】の効果もあって、間もなくオルレアンの支配者が誰彼構わず拷問する略奪隊を送ってくるという通報は、少々あっけないほど抵抗なく受け入れられた。
「パテーに隠し砦を作ってあるので、そこへ逃げ込めば当面は安全だ。付き添っていくので、すぐに移動の用意をしてほしい」
「かしこまりました。ありがとうございます」
礼の言葉もそこそこに、集落の長…時先案内人の予見で拷問にかけられていた男性が、住民全員に声を掛けて早々にパテーへの移動準備を開始する。荷馬車も何台か用意されており、住民の家財のまとめも呆れるほど迅速で、暁翔とバトラに手伝いを頼んでくることもない。というか【友達催眠】が発動しているにも関わらず、一般の住民たちは見知らぬディアボロスたちを内心警戒し、恩を受けることを避けているようにも思える。それはつまり「友達の善意であっても無条件に依存することは危ぶむ状況」ということなのだろう。
(「……これは、相当に避難というか、逃亡し慣れてるな……」)
史実でも、いわゆる百年戦争の時期には、民衆は戦場になりそうな地域から逃れて半ば放浪し、戦闘や略奪が収まると戻って来ていたという話を思い出し、暁翔は言葉には出さずに呟く。まあ、人間同士の戦争では、逆に軍隊についていって糧食や軍需品の商売やら何やらで利益を得る者もいたようだが、キマイラウィッチ相手ではそういうわけにもいくまい。ましてや「商人」がキマイラウィッチと化しているのでは、もたもたしていたらすぐに命以外は全部奪われてしまうのだろう。
「病人や弱っている人がいたら言ってくれ。薬や精のつく食べ物もあるし、ある程度手当できると思う」
「ありがとうございます。伝えます」
集落の長に告げ、暁翔とバトラは落伍者が出ないよう気を配る一方、あまり特定の人と馴れ馴れしくしないように注意して、パテーへの避難に同行する。深刻な病者はいないようだったが、老人、妊婦、幼児などの足弱な人々は荷車に乗り、それ以外の人々は少々驚くほど足早に進む。
(「…逞しいもんだな」)
半分安堵、半分苦笑して、暁翔は声には出さずに呟いた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【友達催眠】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
嵐柴・暁翔
偉そうにしていて自分は利口で騙されたりしないと思っているような方こそあっさり騙されるのは歴史が証明しているからな
情報操作はクロノヴェーダの専売特許ではないという所を見せてやるぜ
……欠片程も自慢できないどころか、自分は性格が悪いと大声で喧伝しているようなものだけどな…
古来から人が信じたがるのは耳が痛い事実ではなく自分に都合のいい物語だ
『ジル・ド・レの策が次々に失敗するのは復讐者が内通者から情報を得ているからだ』という偽情報を贈ります
今までの異様な精度での復讐者の作戦妨害にもある程度説明がつくし、責任転嫁できる相手がいるというのもプライドが高い方にしてみれば好都合だろう
ついでに時先案内人の予知という正答へのミスリードにもなるしな
伝える方法は『クール家商人に全力で攻撃をして、運良く(不幸にも?)生き残っていた方に気付かない振りをして、いい気になって内通者の存在について口を滑らせたのを敢えて聞かせて逃がす』という感じでいきます
疑心暗鬼を招く為にも内通者の具体名や伝達方法は出さないのがポイントだな
バトラ・ヘロス
アドリブ、連携歓迎であります。
内通者の存在を匂わせるのでありますね。
誤情報で敵を陥れる為に、事前にしっかり打ち合わせて齟齬のないようにしておきます。
敵と対峙した際には、「トループス級をいくら倒しても意味はありません、指揮官に攻撃を集中させるであります」などと言って、クール家商人を見逃す状況を作ります。
商人達が隠れて姿を現さないなら、無理に見つけずアヴァタール級だけを相手にするように作戦を調整してはどうかと具申します。
嵐柴さんが口を滑らせたのに対して「その事は機密事項です。迂闊に口にしない方がいいであります」などと補足します。
高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応するであります。
どんな事を言おうと、策士というのは裏の裏の裏まで読む生き物です。そう簡単に信じたりはしないでしょう。
それでも、上手く情報を打ち込んでいけば考え過ぎさせる事は出来るでしょう。とりあえず、状況を混乱させられれば良しとするであります。
「古来から人が信じたがるのは耳が痛い事実ではなく自分に都合のいい物語だ。『ジル・ド・レの策が次々に失敗するのは復讐者が内通者から情報を得ているからだ』という偽情報をオルレアンのキマイラウィッチに贈ってやろうと思う」
もぬけの殻になった集落で拷問部隊の襲撃を待つ間に、嵐柴・暁翔(ニュートラルヒーロー・g00931)はバトラ・ヘロス(沼蛙・g09382)に向かって『ジル・ド・レ』への情報工作をどうするか、おおむねの構想を告げる。
(「……偉そうにしていて自分は利口で騙されたりしないと思っているような方こそあっさり騙されるのは、歴史が証明しているからな……情報操作はクロノヴェーダの専売特許ではないという所を見せてやるぜ……欠片程も自慢できないどころか、自分は性格が悪いと大声で喧伝しているようなものだけどな…」)
内心で苦笑混じりに呟く暁翔に対して、バトラは思案顔で大真面目に応じる。
「内通者の存在を匂わせるのでありますね。どこの誰が…たとえば他ディヴィジョンから漂着してきたと称している大天使が実は内通しているとか、そういう話にするでありますか?」
「いや、疑心暗鬼を招く為にも内通者の具体名や伝達方法は出さないのがポイントだ。ごく自然に…そう、この部隊の指揮官は拷問に長けた危険な奴だと聞いている。何が何でもここで討たないと、ぐらいに口を滑らせるか」
こちらも思案顔になって暁翔が告げ、バトラも真剣な表情でうなずく。
「そうですね。卜ループス級を生き残らせて情報を持ち帰らせないといけないわけですから、指揮官のアヴァタール級が危険だと断じて優先するのは一石二鳥かもしれないですね。でも、それだけで内通者がいるらしいと気づいてくれるでしょうか?」
「『クール家商人』は卜ループス級にしては小知恵が回るらしいから、そのへんに期待するかな。アヴァタール級が『なぜ、私が拷問に長けると知っているのだ?』とか反問してくれると好都合なんだが」
今度ははっきり苦笑を浮かべて暁翔が応じ、バトラは眉を寄せて訊ねる。
「もし反問されたら、教えてくれる奴がいるのさ、とか言うのですか?」
「いや、それは機密事項だ、ぐらいにしておくさ。そうだな、もしアヴァタール級が反問しなかったら『その事は機密事項です。迂闊に口にしない方がいいであります』とか突っ込んでもらった方がいいかもな」
「そうですね。少々わざとらしい気もしますが、そのくらいやった方がいいのかもしれませんね……さすがに、冥土の土産に教えてやろう、とかはやらない方がいいと思いますが」
いったいどこで覚えたのか、バトラが大真面目な顔で「機密を漏らすドジな悪役の定型句」を告げ、暁翔は肩を竦める。
「まあ、俺もそうは思うが、場合によってはそこまでやった方がいいかもしれない。そのへんは、あくまで相手次第だ」
「そうですね。高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応するであります」
そう言って、バトラは最後まで思案顔を崩さず続ける。
「どんな事を言おうと、策士というのは裏の裏の裏まで読む生き物です。そう簡単に信じたりはしないでしょう。それでも、上手く情報を打ち込んでいけば考え過ぎさせる事は出来るでしょう。とりあえず、状況を混乱させられれば良しとするであります」
「…ああ、まったくだ」
こっちが策士策に溺れるになったんじゃ意味ないもんな、と、暁翔は言葉には出さずに呟き苦笑した。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
【強運の加護】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!
【グロリアス】LV1が発生!
バトラ・ヘロス
アドリブ、連携歓迎であります。
作戦は組みました。後は、状況に応じて調整しながら実行するだけであります。
襲撃部隊を待ち構え、現れたら打ち合わせ通りの手順で攻撃を仕掛けます。
無双馬に騎乗して、長槍サリッサと魔力盾スクトゥムを構えて、仲間と合わせて攻撃を開始します。
「突槍陣」で槍と盾の複製を無数に具現化し、前方に並べ立ててファランクス陣形を形成し、騎馬突撃を仕掛けます。
真正面から盾を叩きつけて体勢を崩しつつ、槍衾で刺し貫くであります。
反撃は盾群で受け止めてダメージを軽減します。
全滅させないように注意しておきます。
嵐柴・暁翔
クール家商人達には《悪魔召喚》を発動させて『さあ、大天使の威を示せ』というような、まず言わないような言葉で二人に攻撃をお願いします
でたらめな絵図面の欠片を持ち帰らせるんだし、欠片は少しでも多い方が良いだろう
……そんな言葉尻を捕らえられる程気が利くのかは怪しいけどな…
攻撃は相手を全滅させてしまっても仕方がない位の感覚でやります
今まで他の部隊は全滅しているのに今回に限って生存者がいるというのも不自然ではあるし、クール家商人達には命辛辛逃げ出したと思って貰わないとな
クール家商人の生き残りが隠れたなら敢えて見逃して、聞こえる程度の声量で『指揮官は拷問吏としては有能でも、部下がこの有様では肝心の指揮能力はそれ程でもないのかもな』というように勝利後に気が緩んで口を滑らせたような感じにやってみます
もしその場に残ったなら『指揮官の所へ案内しろ、逆らうなら俺と指揮官とどちらが拷問に長けているのか身体で知ることになるぞ』というような気付かずに情報漏洩をしながら脅迫しているような感じでやってみて後で逃がします
「……来たな」
街道の向こう、オルレアンの方向から土煙をあげて猛然と押し寄せてくるトループス級キマイラウィッチ『クール家商人』の群れを集落の見張り台から見やり、嵐柴・暁翔(ニュートラルヒーロー・g00931)は小さく呟いた。
「なるほど、あんな勢いで押しかけて来られたら、いくら一般人がいつでも逃げられるように備えていても、とても間に合わないな」
「パテーの近くでうろうろしていた偵察部隊とは、同じ『クール家商人』でも勢いが違うでありますね…やはり、真面目に進めと指揮官に急き立てられているのでしょうか?」
生真面目な口調でバトラ・ヘロス(沼蛙・g09382)が訊ね、暁翔は思案顔で応じる。
「それもあるだろうが、何か異変が起きていないか探りながら進む偵察部隊と違って、あれは目的地がはっきりしている襲撃部隊だからな。ただ一目散に進んでくるから速いんだろう」
集落が既に空だと示してやる必要も今回はないな、と呟いて、暁翔はバトラを促す。
「街道が森をかすめるあたりで仕掛けよう。普通なら森に逃げ込まれると厄介だが、今回はその方が自然に逃がせる」
「了解であります」
作戦は組みました。後は、状況に応じて調整しながら実行するだけであります、と小さく呟き、バトラは暁翔に続いて【エアライド】で集落から街道へと跳ぶ。
そして狙い通りの場所に着地すると、暁翔はパラドクス「悪魔召喚(サモン)」を発動。契約した大天使の姉妹、セレスティアとアリスティアを召喚する。
「セレスティア、アリスティア、さあ、大天使の威を示せ!」
「ぬわあああああああああっ!? こ、こんなところで大天使ですとぉぉぉぉぉ!?」
暁翔が今回のためにわざわざ変更した召喚セリフにまで気づいたかどうかはわからないが、街道を塞ぐように出現した大天使姉妹には気づいたようで『クール家商人』たちは驚愕の叫びをあげて足を止める。
そして大天使姉妹は、当然ながら情けも容赦も躊躇もなく、トループス級キマイラウィッチに向かって強力な攻撃魔法を炸裂させる。
「ぬわあああああああああっ! 裏切りだ! 裏切りだ! 大天使の裏切りですぞぉぉぉぉぉ!」
絶叫しながら『クール家商人』部隊の前衛は壊滅するが、同時に反撃のパラドクス「欺瞞の金銭交渉」を発動する。とはいえ、大天使姉妹が交渉になど乗るわけはないので、ほんの僅かな生命力を奪って小ダメージを与える効果しかない。更に、召喚存在の大天使姉妹は召喚主の暁翔にダメージを肩代わりさせるので、見た目は何の変化もない。
「だ、ダメです、いかんです、歯が立たないです、ここはひとます逃げましょー!」
「馬鹿者! たわけ者! 逃げてはいかん、戦え!」
続く中衛、後衛のトループス級が総崩れになり、更に後方にいると思われるアヴァタール級指揮官『魔女裁判官』の怒声が響く。上級クロノヴェーダの命令で逃げるに逃げられなくなった者もいるが、命令が間に合わず森に飛び込んだ者もいる、と見て取って、バトラがパラドクス「突槍陣(ファランクス)」を発動させる。
「ファランクス、プロスボレー!」
「ぎょええええええええええ!」
槍と盾の複製を無数に具現化し、前方に並べ立ててファランクス陣形を形成し、無双馬『青縞』に騎乗したバトラが騎馬突撃を仕掛けると、不本意ながら街道に残っていた『クール家商人』がものの見事に蹴散らされ、盾で跳ね飛ばされ、槍で突き通される。死に際に反撃のパラドクス「満たせず尽きぬ金銀財宝」を発動し、魔力で作成した財宝を降らせるものの、とてもファランクスを押しつぶすほどの力はなく、ぱらぱらと当たって小ダメージを与える程度にしかならない。
そして、少数の『クール家商人』が森に逃げ込んで身を伏せ息を潜めているのを承知の上で、暁翔とバトラは街道を進み、孤立したアヴァタール級と対面する。
「あんた、拷問吏としては有能かもしれんが、部下を掌握も鼓舞もできずむざむざ全滅させるとは、指揮官としてはまったくなっちゃいないな」
いかにも挑発っぽく暁翔が告げると『魔女裁判官』は声を荒げ、まさしく狙い通りに反応する。
「拷問吏としては有能だと? 貴様、どこからそんな情報を得た?」
「あのなあ、そう問われて素直に話すと思うか? 機密事項だよ、機密事項」
嘲弄するように暁翔は応じ『魔女裁判官』はますますいきり立つ。
「よかろう。貴様らを死なない程度に叩きのめし、その機密事項とやらの出どころがいったいどこの誰なのか、汚らわしい裏切り者の名を我が得意の拷問で吐かせてやろうではないか」
「言うのは自由だが、さて、実際にできるかな?」
聞いてるか? 森の中に潜んでる生き残り連中、このやり取りを聞いてるか? と、暁翔はもちろん声には出さずに呟いた。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【パラドクス通信】がLV2になった!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】がLV2になった!
【命中アップ】LV1が発生!
バトラ・ヘロス
アドリブ、連携歓迎であります。
ここまでは作戦通りに進んでいる……のでしょうか。やはり策謀の類いは難しいであります。
おそらく、隠れているクール家商人達に情報は入っているでしょう。後は、迅速にアヴァタール級を倒して逃げ帰らせるであります。
【百盾槍】を使用します。再度槍と盾の複製を無数に具現化し、自身の周囲に展開します。
ファランクス陣形を形成して、騎馬突撃を仕掛けます。
陣形の両翼の盾を敵を包み込む様に動かして、動きを抑えながら盾の隙間から繰り出す槍衾で刺し貫きます。
反撃は、展開した盾による面防御で連続攻撃に対抗します。可能な限り受け流して、ダメージを軽減するであります。
嵐柴・暁翔
取り合えず謀略の種は蒔いた
……小賢しくてやたらと口が回るクール家商人達だし、逃げ出した言い訳に妙な尾鰭を付けて報告しそうな気もするけど、まあそれはそれで
細工は流流仕上げを御覧じろ、というやつだな
実はこれも機密事項だけど、お前の次の行動は俺を極刑と判断して首を刎ねようとする、だ
こんな感じに…な
《融通無碍》を発動して《即断極刑裁判》を写し取り、判決死刑、とかそれらしいことを言いながら『風牙』で相手の首に向かって斬撃を飛ばします
反撃をしない訳にもいかないだろうから言葉通りに動くしかないわな
これで更に混乱してくれればクール家商人達に更に話のネタを提供できるな
どれだけ強力だろうとどこに斬撃が飛んでくるか分かっているならやりようはある
『風牙』を翳して首元を防御しつつ、可能ならしゃがむか仰け反るかして斬撃を回避します
(「取り合えず謀略の種は蒔いた……小賢しくてやたらと口が回るクール家商人達だし、逃げ出した言い訳に妙な尾鰭を付けて報告しそうな気もするけど、まあそれはそれで……細工は流流仕上げを御覧じろ、というやつだな」)
声には出さずに呟くと、嵐柴・暁翔(ニュートラルヒーロー・g00931)は激昂状態のように見えるアヴァタール級『魔女裁判官』に向け、殊更に挑発するような態度で告げる。
「実はこれも機密事項だけど、お前の次の行動は俺を極刑と判断して首を刎ねようとする、だ。こんな感じに…な」
「ぬおわっ! な、なぜ、それを!?」
どうやら図星で言い当てられたらしく素っ頓狂な声を出す『魔女裁判官』に向け、暁翔はパラドクス「融通無碍(シュピーゲル)」を発動。対象が反撃に使用するパラドクス…この場合は「即断極刑裁判」を写し取り、同じような効果の攻撃…愛刀「風牙」を振るって頸部への苛烈な斬撃を見舞う。言い当てられた衝撃か、アヴァタール級の防御反応は鈍く、ものの見事に首をはねられ三面の頭部が宙に飛ぶ。そして暁翔は、飛んだ頭部に視線を向けて嘯く。
「判決、死刑…だけど、どうせこの程度じゃ死なないんだろ?」
「ど、どこまで見抜いているのだ!? 貴様、恐ろしい奴!!」
宙に飛んだ頭部が白目を剥いて喚き、首無しの胴体が剣を持った腕を平然と振るって暁翔の首へと「即断極刑裁判」の斬撃を飛ばす。どうせそんなことだろうと思った、と呟いて、暁翔は跳び下がりながら「風牙」で『魔女裁判官』の剣を弾くが、パラドクス攻撃の衝突は物理防御では防ぎきれず、衝撃波で首に薄い傷がつく。
(「ダメージ些少、皮一枚…とはいえ、首をやられるのは気色のいいもんじゃないな」)
お互い様とはいえ、読み切っていても防ぎきれないのがパラドクスか、と、暁翔はやや苦い表情で呟く。一方、斬り飛ばされて宙に飛んだはずのアヴァタール級の頭部は、まるで何事もなかったかのようにすぽんと元の位置に戻るが、三面の表情は驚愕によって大きく歪んでいる。
「私が拷問を得意とすることのみならず、使う技まで事前に知られているとは……これは本当に情報漏れによるのか? それとも、ディアボロスの未知の能力で見通されているのか?」
(「…あ、これはまずいか? やりすぎたか? この推測、トループス級に聞かれているか?」)
ぶつぶつと疑念を呟くアヴァタール級の言葉に、暁翔は一瞬、しまった、という表情になりかかるのをかろうじて抑える。相手を混乱させているのは目算通りなのだが、内通者が情報を漏らしているのではなくディアボロスが異能で情報を得ているのではないかと、偶然であれ何であれ事実に近い推定をされては逆効果になりかねない。
そしてバトラ・ヘロス(沼蛙・g09382)が、相手にあれこれ考える余裕を与えまいと配慮したのか、それとも単純に早いところ始末をつけたいと決意したのか、パラドクス「百盾槍(ファランクス)」を発動させて突撃する。
「ファランクス、アポクリズモス!」
「どわあああああああああっ!」
無数に具現化した盾と槍に突き飛ばされ刺し貫かれ『魔女裁判官』は絶叫しながらきりきり舞いするが、さすがにアヴァタール級だけあって一方的に蹂躙されはせず、反撃のパラドクス「人形秘剣ジルエット」を発動して応戦する。六本の腕が忙しく動き盾を裂き槍の穂先を斬り飛ばすが、どう頑張っても歩兵三人分の働きにしかならず、ファランクスには抗し得ない。ちなみに召喚存在の盾や槍を傷つけられると召喚主のバトラにダメージが跳ね返るが、いわば盾や鎧越しに打撃をうけているようなもので、超絶技で一気に一掃されでもしない限りは深刻な事態にはならない。
とはいえ、一度は首を飛ばされ、何本もの槍で突き通されているにもかかわらず『魔女裁判官』の動きそのものには大きな乱れはない。自動人形にせよキマイラウィッチにせよ、やはり上級アヴァタール級のタフさは侮れない。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【神速反応】LV1が発生!
【未来予測】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【先行率アップ】がLV3になった!
バトラ・ヘロス
アドリブ、連携歓迎であります。
勘の良い敵でありますね。
これ以上余計な事を口走らない内に、仕留めて闇に葬るであります。
武具を構え直して、再度騎馬突撃を仕掛けます。
【集槍陣】を使用して、槍と盾の複製を再び具現化してファランクス陣形を組み直します。
【ダメージアップ】して、速攻で倒すであります。
無数の槍と盾を其々一つに融合させて、高密度高質量の重武器にします。
強化した槍を、突撃の勢いを乗せて真正面から投射して、防御を貫く勢いで差し貫きます。
同時に、強靭化させた盾を前方に構えて斬撃を受け止め、衝撃に耐えます。
自身と無双馬の首を重点的に防御です。また怪しまれるでしょうか。
でも、アヴァタール級って複数個体いるのですから、能力が知れ渡っててもおかしくないですよね……。いえ、藪蛇になりそうな事は言いません。とにかく倒してしまいましょう。
嵐柴・暁翔
もしクール家商人達が先程の魔女裁判官の呟きに反応している気配があるか、或いは魔女裁判官が復讐者の異能という考えに固執して妙な事を口走りそうなら納得出来る答えをプレゼントしておきます
……ところで、残念ながら俺は魔女ではないけど火炙りにされるのかな…?
とでもいうような感じに相手を更に混乱させつつ、いかにもいい気になって口が軽くなっているような感じで"間違いではないが正答でもない"答えを伝えます
冥途の土産にいい事を教えてやる
大元が同じアヴァタール級は能力も一緒だよな
幽霊の正体見たり枯れ尾花、というやつさ
そこまでする必要はなさそうなら《悪魔合体》を発動させていかにも大天使っぽい言動と攻撃をして終わらせます
アリスティアの真似でもすればそれらしいかな…?
ついでに排斥力が働く直前辺りでクール家商人の生き残りに気付いて慌てる振りでもしておきます
勝手に慌てる理由を妄想してせいぜいいい感じに報告してくれ
……もっとも、どれだけ有益っぽい報告をしたとしてもトループス級の逃亡兵なんてあっさりと粛清されそうな気も…
「アヴァタール級の自動人形がしぶといのは毎度のことですが……意外に勘の良い敵ですね」
アヴァタール級『魔女裁判官』に猛撃を浴びせながら、バトラ・ヘロス(沼蛙・g09382)が嵐柴・暁翔(ニュートラルヒーロー・g00931)に向け、他者には聞こえない【パラドクス通信】を使って小声で囁くように告げる。
「ですが、アヴァタール級って複数個体いるのですから、能力が知れ渡っててもおかしくないですよね……」
「確かにな。ディアボロスと『魔女裁判官』の戦闘記録はあまり多くないというか、ほとんどないみたいだが……そのへんで惑わしてみるか」
なるほど、それは道理だな、と内心うなずきながら、暁翔はパラドクス「悪魔合体(フュージョン)」を発動。殊更に天使の翼を顕現して大きく広げ、森の中に潜む生き残りのトループス級『クール家商人』にも見えるように後光をぴかぴかと光らせながら、アリスティアの装束を借りて甲冑を身にまとい、満身創痍の『魔女裁判官』に向かって嘲弄気味の傲岸な口調で告げる。
「……ところで、残念ながら俺は魔女ではないけど、あんたの能力で火炙りにされるのかな…? まあ、あんたと御同類の能力が同じと決まったものでもないかもしれんし、そもそも俺の火炎魔法で先に潰れなければの話だけどさ」
「き、貴様、やはり、大天使……!」
暁翔が放った火炎魔法で全身を焼かれながら『魔女裁判官』は憤慨と怨嗟に満ちた声で叫ぶ。
「汚らわしい、裏切り者が……!」
「裏切っちゃいない。表返ったのさ」
そもそも、もともと天使はクロノヴェーダだけじゃない。召喚存在にもディアボロスにもいるんだぜ、ややこしいことに、と、暁翔は声には出さずに続ける。そして『魔女裁判官』が放つ反撃のパラドクス「魔女狩の火」により足元から噴き上げる炎を、これ見よがしに跳躍して避ける。
「冥土の土産に教えてやるよ。タネのバレてる手品は容易に躱せる。幽霊の正体見たり枯尾花、ってやつさ」
実際にはパラドクスの炎は直撃されなくても完全に避けることは難しく多少のダメージは受けているが、そこは痩せ我慢の涼しい顔で暁翔は告げる。
そして暁翔の定型句というか戲言というか、論理的には相当に怪しい言葉をアヴァタール級が検討する間を与えず、バトラがパラドクス「集槍陣(ファランクス)」を発動。具現化した無数の槍を一点集中突破陣形に配置し、盾は反撃に備えて自分と無双馬『青縞』の首回りに集中。万全の構えから、満身創痍の『魔女裁判官』に寸毫の容赦もない苛烈な突撃をぶちかます。
「ファランクス、アッセンブル!」
「ぐわあああああああああああああああっ!」
まさに槍衾というべきか、無数の槍で一斉に全身を突き通され『魔女裁判官』が断末魔の絶叫をあげる。自動人形の本体は多すぎる槍の貫通で残骸と化す…というかほとんど消滅するが、さすがの執念というべきか反撃のパラドクス「即断極刑裁判」で剣を持った腕だけが飛び、バトラの首を狙う。しかしその斬撃は無数の盾に阻まれ、盾を切り裂いた分の跳ね返りダメージのみは届かせたものの、致命的には程遠い状態で消える。
そして大天使姿の暁翔は、少々わざとらしく叫ぶ。
「ま、待てっ! 指揮官へのとどめは、まだ…森の中の生き残りを先に…」
暁翔は叫ぶと同時に、しまった、手順を誤った、という表情を殊更に作ったが、森の中のトループス級にそこまで見えたかどうかはわからない。いずれにしても、アヴァタール級の絶命により強大な排斥力が発動し、作戦に参加したディアボロスは全員、新宿島に戻るパラドクストレインへと強制移送された。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
【活性治癒】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【ドレイン】がLV2になった!