【ラ・ピュセル奪還戦】恐怖と殺意（作者 ゆうきつかさ）

2

リプレイ

●きっと来る
「ディアボロスが来る……きっと来る」
「だったら……殺す……殺さねば……！」
　解体少女達が不安そうにしながら、両目をギロギロさせた。
（……何やら凄まじい殺意を感じますね。同時に抱いてる強い恐怖のせいで、最初から酷く混乱をしてるように見えますが……）
　そんな中、音羽・華楠（赫雷の荼枳尼天女・g02883）が物陰に隠れて、解体少女達の様子を窺った。
　解体少女達は殺意と恐怖が同居しており、色々な意味で……壊れていた。
「ならば……、その混乱を突きましょうか」
　すぐさま、華楠が【雷幻想・蜈蚣（ファンタズム・ニーズヘッグ）】を発動させ、雷の化身たる大百足の式神を招き寄せ、解体少女達を蹴散らしていった。
「やっぱり、来たァ！」
　解体少女達は不信感の塊としているせいか、単独もしくは少数で行動している者も多かったため、突然現れた大百足の式神に動揺してパニックに陥り、逃げ惑った。
　だが、逃げたところで、何の解決にもならない。
　むしろ、逆効果。
　その事を解体少女達が理解した途端、大百足の式神が雷の如く速さで引き潰し、強靭な顎で噛み砕いてきたため、反撃する間もなく、思考を停止させた。
「ひ、ひぃ！」
　それを目の当たりにした解体少女達も、撃破された仲間の悲鳴を聞き、残骸を目にして、さらに恐怖が増しているようだった。
「やらなきゃ……やらねば……」
「ひひ……ひひひひひひ……ひぎぃ！」
　その事が引き金となって、解体少女が不気味な笑い声を響かせた。

●恐怖と絶望
（こっちのベーダは、とっても怖がってるね。……そういうことなら見逃してあげてもって思ったけど、『殺すっ！　殺すっ！』まで行っちゃうと、ここで手を出さなかったとしても、どこかの村とかに流れ着いて、怖がりベーダを怖がった村人と全面抗争に発展するのが目に見えるの。だから、あんまり気が進まないけど……仕方ないよね」
　一方、マリアラーラ・シルヴァ（コキュバス・g02935）はサクッと気持ちを切り替え、怪力無双で新宿島から持ってきた太鼓を鳴らした。
　最初はコンコン、カッカッカッ。
「な、何っ！？」
「……何が起こったの！？」
　小さい音だが、解体少女達が気づいた。
　それがコンコン……ドンドン……ガツンッ、ドズンッと響いてきたため、解体少女達がガタブルと身体を震わせた。
「何よ、何よ、何よっ！　一体何なの！」
「も、もう……無理ィィィィィィィィィィィィ！」
　こうなってしまうと、冷静な判断力が行方不明になってしまい、統制が取れなくなってしまうため、後先考えず散り散りになって逃げ始めた。
「せめて純粋な自動人形なら、いまわの際にナポレオン皇帝を思い出させてあげたりできたかもだけど……仕方ないよね」
　それと同時に、マリアラーラが【こちょこちょアタック（アルティメットフィンガー）】を発動させ、解体少女の弱点を看破し、こちょこちょした。
「ぎゃは、ぎゃはははははははははははははっ！」
　そのため、解体少女達は恐怖と絶望の中、その気持ちに反して、狂ったように笑い声を響かせた。

●怖いものは怖い
「どうやら、あちこちで酷い目に遭っているようね。そう言った意味で、ちょっと気の毒な気もするけど……」
　アンネリーゼ・ゾンマーフェルト（シュタールプロフェート・g06305）がパラドクス通信で、仲間達と情報を共有しつつ、解体少女達の状況を確認した。
　解体少女達はパニックに陥っており、思考停止状態に陥っているものの、いつ殺意が恐怖に勝っても、おかしくない状況にあるようだった。
「まあ……、いちいち情けをかけていたら、本当に救うべき人たちを救えないわね。その恐怖ごと終わらせてあげましょう」
　次の瞬間、アンネリーゼが【#電磁 #広域放電 #感電注意（シュプレンダー・ブリッツ）】で電磁銃を広域放電モードに移行させ、扇状の広範囲をカバーする人工稲妻を対ゾルダート電磁銃の銃口から解き放った。
　雷鳴のように響く発射音と共に、電撃が広範囲に広がって、解体少女達がビリビリと痺れて、激しく身体を震わせた。
「来るな、来るな、来るな、キィィィィィィィィ！」
　それと同時に、解体少女達がパニックに陥り、鋸剣の刃を高速で振動させ、次々とアンネリーゼに襲い掛かってきた。
　それをリヒトシュヴェーアト（レーザーブレード）で受け止め、高熱の光刃で切り刻み、弾き飛ばす事で、解体少女達の身体に幾つもの風穴を開けた。
　そのため、解体少女達はアンネリーゼの傷ひとつつける事が出来ず、糸の切れた人形のように崩れ落ちて動かなくなった。
「これだけ倒したら、そろそろ頃合いかしら」
　その間に、アンネリーゼが安全を確保しつつ、その場から撤退するのであった。

●恐怖の向こう側
「うわぁ……なんか、ちょっと同情心すら覚えるような敵だなぁ……。しもか、怯える方向に精神異常きたしてるから、すごく戦いづらい……」
　一ノ瀬・綾音（色彩に溢れし少女・g00868）が、気まずい様子で汗を流した。
　ここで解体少女達に同情してしまうと、戦う気力が一気に削がれてしまうのだが、それでも思うところがあるようである。
「お、お前はディアボロスゥ！」
「私達を殺す気なの？　そうよね？　絶対、そう！　そうに違いないわ！」
　その事に気づいた解体少女達が、殺気立った様子で鋸剣を握り締め、ジリジリと距離を縮めてきた。
「……って、何だか誤解されているし……。でも、まあ、状況的に考えたら、そうなっちゃうよね……」
　綾音が遮蔽物や壁などを使って、自分の身を守りながら、【色彩天泣（カラードレイン）】で空中に展開した魔方陣から様々な色の光の矢を降らせ、解体少女達の身体を貫いた。
「やっぱり、やっぱり、やっぱりィ！」
　解体少女達が悲鳴にも似た叫び声を上げ、剣から精神を揺さぶるおぞましき波動を放った。
「精神の揺さぶりが、なんぼのもんじゃ。綾音ちゃんはこれまで、どれほどのクロノヴェーダを仕留めて、どれほどの恨みを買ったことか！　それを思えばこそ！」
　即座に、綾音がガードアップを使いながら、破竜剣で自分の身を守りつつ、解体少女達に対して言い放った。
「だから何？」
「動揺しているせいで、動きが鈍っているわよ」
　解体少女達が、不気味に笑う。
　瞳孔の開いた目をギョロつかせ、ケタケタと……。
「……と言うか、これ以上戦ったら、夢に出そう……」
　その事に危機感を覚えた綾音が、背筋に寒気を走らせ撤退した。

●希望と狂気
「何を、そんなに怯えている？　私が怖いか？　お前等にとっての死神が……。まあ、それも必然。その恐怖ごと、ここで終わらてやる。最終人類史の復讐者として、これがお前たちへの最後の慈悲だ」
　青沢・屏（静かなる炎・g00202）がリボルバー銃『運命（デスティニー）』と『信念（ベリーフ）』の銃口から魔力の刃を展開し、次々と襲い掛かってきた解体少女達を撃ち抜いた。
「何が慈悲よっ！」
「私達を滅茶苦茶にしたいだけなのに！」
　解体少女達が憎悪と殺気を膨らませ、剣から精神を揺さぶる、おぞましき波動を放った。
　それが屏に食らいつく勢いで、徐々にスピードを上げて迫ってきた。
「まあ、ある意味……間違ってないか」
　屏が解体少女達に理解を示しつつ、おぞましき波動の威力をガードアップと結界術で軽減し、【クロス＝デスティニー】で展開した魔法陣を使って、乱射した魔力弾を解体少女達のところにテレポートさせ、容赦なく撃ち抜きながら、生成した魔法の刃で『×』の形で切り裂いた。
「なんで、こんな酷い事を……」
　奇跡的に無事だった解体少女が、最後の力を振り絞り、鋸剣を握り締めた。
　だが、身体のあちこちが悲鳴を上げ、両腕を振り上げる途中で、ゴトリと落ちた。
「それが、ここに来た理由だからだ。だが、これ以上、お前達を追い込むつもりはない。もう十分、数を減らしたからな。それでも、不満があるなら、本番の戦場で相手をしよう」
　そう言った後、屏がパラドクス通信で仲間達と連絡を取り、他の状況を確認しながら、その場を後にした。

最終結果:成功
完成日	2025年04月18日